褥瘡予防のための背抜きの方法 介護の知識 50 褥瘡予防のための背抜きの方法 介護現場での褥瘡の要因はいくつかあります(テキスト 27「褥瘡 (じょくそう)のケア 原因と好発部位、予防ケア、除圧の事例」参照) が、 『圧迫とズレ』が主な要因です。 『背抜き』は。圧迫の解消、緩和やズレを予防する技術です。とく に、 「ズレ」による褥瘡を予防するために有効です。 ≪ 背抜きを必要とする場面 ≫ (ア) ベッドのギャッジアップ後 (イ) ギャッジダウン後 (ウ) 車椅子への移乗後 (エ) 長時間、座っている時 など 注意が必要で忘れがちになるのが、(エ)の長時間、座っている時で す。ベッドのギャッジアップ後やギャッジダウン後は、体位交換を時 2時間前後で行うため、長時間の同じ姿勢・体勢のままで休みことが 1 少ないと思います。 『体位変換=寝ている時』という意識が強く、長時間、車椅子や椅 子に座っている場合は、座っている間に除圧されないことが見受けら れる施設があります。 2時間近く、車椅子や椅子に座っている場合は、寝ているときの体 位変換同様に背抜きすることが、褥瘡予防には大切です。 車椅子での背抜きの方法と、ベッド上での背抜きの方法を紹介しま す。 全国高齢者ケア研究会 褥瘡予防のための背抜きの方法 Ⅰ.車椅子での背抜きの方法 ~ 効果や手順について ~ ( 引用1 ) 第8 回介 護 Web ゼミ|車いすに 座らせた後が大事、「座 A)体を右に傾け、左の坐骨を浮かす。上体を左に傾け、右の坐骨を 浮かす方法 り直し」を忘れないで! >>>HP アクセス QR ① 介助者は利用者の後ろに立ちます。利用者に腕を組んでもらいま す。 ② 介助者は利用者の脇の下から腕を通して手を前腕に添えるように 置きます。指は伸ばします。決して利用者の前腕を握らないでく ださい。 2 ③ イラスト左側のように、この状態から介助者は身体を右横に倒し、 利用者の上体が右横に倒れるよう誘導します。左側の坐骨が軽く 浮いたなと思ったら元に戻ります。 決して利用者の身体を浮かせようと引っ張り上げないでくださ い。利用者の腕が押しつぶされ胸を圧迫し、息苦しくなって不快 です。利用者の背筋が伸びる程度に軽く引き上げて止め、そのま まの形で横に倒れれば、自然と左側坐骨が浮きます。 ④ イラスト右側のように、今度は反対の左横に倒れて同じ要領で右 側坐骨を浮かせます。浮いたら上体を元に戻します。 全国高齢者ケア研究会 褥瘡予防のための背抜きの方法 B) イスへの座り変えと背抜きの方法 《 イスへの座り変え 》 車椅子は移動手段で使用し、本来はイスに座りかえることが望まし いと言われています。(テキスト 12-1 食事姿勢参照) イスに座りかえる移乗支援も、移乗時に臀部や背中の圧をリセット し、褥瘡予防につながります。 また、車椅子の座面、背面のクッション性とイスやソファーの是面 や背面のクッション性の違いも褥瘡の予防に大きく影響を与えます。 写真:車椅子からイスへの座り変え支援 3 写真:車椅子の座面とイスの座面のクッション性 全国高齢者ケア研究会 褥瘡予防のための背抜きの方法 《 座位の際の背抜き 》 座位姿勢が1時間以上続く場合は、背抜きをします。 寝ているときより、座っているときの方が圧がかかると考えるなら ば、体位変換を2時間に1回要する方は、1時間から1時間半に1回 は、背抜きや圧抜きの支援が必要ということになります。 状態をゆっくり前へ倒してもらい、衣類のしわを伸ばして背中を2 ~3回大きくなでます。 注1)車椅子の場合は、足をステップから降ろしてから背抜きをして ください。 4 Ⅱ.ベッド上での背抜きの方法 ~ 効果や手順について ~ A) 背上げ後 ベッドの背上げをした後、マットレスと背中に生じるズレを解消し ます。上の写真では、矢印の方向に体が引っ張られています。 ※ 研修などで実際に職員に体感してもらうことが大切です。 全国高齢者ケア研究会 褥瘡予防のための背抜きの方法 ○ 背中をさする 背を上げたあと、衣服のしわをのばし、背中を2~3回大きくなで ると、気持ちがよいです。初めは、背中がぎゅーっと引っ張られる感 覚がありますが、背抜き後はとても楽になります。 ○ 尻抜き 5 上半身を左右に動かし、お尻を半分ずつ浮かせます。シーツと衣服 のしわも一緒に直します。 ○ 足抜き かかとの他、足全体を上げます。シーツと衣服のしわも直します。 全国高齢者ケア研究会 褥瘡予防のための背抜きの方法 B) 背抜き(背下げ後) ベッドを下げた時も、上げた時と同様に、全身に引っ張られる力が 働きます。体位交換の要領で、背中、足全体をマットレスから浮かせ、 ズレを解消します。衣服やシーツのしわをなおし、背中を大きくなで ます。 衣類やシーツのしわを直すことは、圧の分散を的確に行うために必 要であり、介護技術として現場で行われていますが、最後に背中を大 きくなでる、ひと手間がとても大事です。 これも研修で職員に体感してもらうことをお勧めします。1時間か ら2時間圧迫を受けていた背中を大きくなでることで、背中がスッと します。 6 全国高齢者ケア研究会
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