*診断主義と機能主義の論争の背景 ・第 1 次世界大戦(1914~1918

5.24.2014
SW 入門補足資料
*診断主義と機能主義の論争の背景
・第 1 次世界大戦(1914~1918)
1918 年、スミス大学ソーシャルワーク大学院に「戦闘神経症やその他の神経症を病んでいる兵士
たちのリハビリテーションを援助する精神医学ソーシャルワーカーの訓練学校」が開設されるこ
とに始まって、精神医学的観点が浸透、支配されるようになる
⇒「精神医学の氾濫」と表現されるまでになる
特にフロイトの精神医学に依拠するようになり、個人中心、1 対 1 のあり方をとる方向に傾いて
いき、治療関係を基本とするセラピー(psychotherapy)に重点をおくようになった。
・大恐慌をへて、公的福祉が拡大
⇒ それまで救済を行っていた民間機関はカウンセリング・サービスを発展させるようになった
・診断主義を批判する立場として、機能主義が登場する
*診断主義と機能主義の違い
アメリカ家族サービス協会の「ケースワーク実践の基礎概念検討委員会」による結論(1949 年)
・診断主義派は診断にもとづき、かつ目標をめざして治療がすすめられるという考えを支持する
・機能主義派は、
(ケースワークは)クライエントが自己<self>を新しくかつ建設的に用いていく
よう援助するために整えられた経験を提供する援助過程であるという考えを持つ
「委員会は一致して、両派の理念、目的、方法が本質的にかつ激しく相違しているために、両派
をうまく和解させたり、結合させたりできないと確信するにいたっている。
」
ただ、診断主義、機能主義どちらも、環境的、社会的なものを強調せず、心理的あるいはパーソ
ナリティの要因に目をむけていた。
診断主義では、調査 ⇒ 診断 ⇒ 治療(処遇) といった過程を重視
機能主義では、開始 ⇒ 中間
⇒
終結
といった時間的な過程を重視、「治療」より「援助」
*一般システム理論
1947 年 生物学者 ベルタランフィが提唱
あらゆる学問、科学、技術、実践の諸領域に浸透
精神医学の領域ではグリンカーによって「第 3 の革命」とすら指摘されたこともあった。
(第1、第 2 は精神分析と行動主義)
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・ソーシャルワークのおける一般システム論(ピンカス&ミナハン)
①クライエント・システム(個人、家族、グループなど)
②ワーカー・システム(ワーカーとその所属機関)
③ターゲット・システム(目標達成のために変革しなければならない人々や組織)
④アクション・システム(目標達成のためにターゲットに働きかける人々や組織)
システム論にもとづいたソーシャルワークでは、システム間、システムと下位システム・上位シ
ステム間のインターフェース(相互接触面)に働きかけ、相互作用の調整、変容を行うことが援
助活動であると考える。
・一般システム論の問題点(太田義弘、1992)
①無機質的であり、機械的であること
②価値観が不在であること
③高度に抽象的であり、具体性に欠けること
④論理性、分析制覇もつが、実態的感覚がもてないこと
⑤人為的であり、自然性に欠けること
*上記システム論の問題点を補う新たな視点として、生態学アプローチ
*生態学アプローチを機軸にして「生活モデル」をギッターマン&ジャーメインが提唱
*医学モデルが「原因⇒結果」の直線的な考え方だったのに対し、生活モデルでは円環的認識論
といった循環的な考え方をする
*生態学にもとづいたソーシャルワークの視点
①交互作用と互恵関係
②ストレスとコーピング(対処)
③アセスメント
*エコ・マップの使用 人と環境との関係をマップとして表す
*一般システム論と生態学アプローチをさらに発展させたエコ・システム論
一般システム論に加え、環境に生きる生体としての人間を生活主体、生活世界、環境世界の三
者の有機的連携として統合的にとらえる。人間の生活が自然環境、物的環境、社会環境、人間環
境からなる統合的全体の視点をもちながら、同時に人間個人を生きるものとして校正している諸
要素との関係性をも重視していくことを指向
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さらに、一般システム論、生態学アプローチ、エコ・システム論をベースとして統合を図られた
⇒ジェネラリスト・ソーシャルワーク
*生活モデル/ジェネラリスト・ソーシャルワークでは
・利用者の生活を中心に、それを取り巻く人、環境、両者の相互関係を有機的にとらえていく
・利用者の問題を個人の問題、社会の問題としてとらえるのではなく、個人と環境との不調和に
よって起こると考える。したがって、問題の解決にあたり、直接的に個人の変容をうながすため
の介入、社会の変容をうながす介入というより、個人と環境の接点に介入すると考える。
ソーシャルワークの歴史やリッチモンドの生涯などに興味がある人に下記の本をオススメします
・小松源助(1993)
『ソーシャルワーク理論の歴史と展開』川島書店
・岡本民夫(1975)
『ケースワーク研究』ミネルヴァ書房(出版年が出版年なので手に入りにくいかも…)