世界の おもてなし - さくらコミュニケーションズ

キラリと光る
おもてなしの心⑦
世界の
おもてなし
のが、サッカー W 杯が開催された南アフリカです。犯罪率
の高さや感染症の不安、不充分なインフラなど様々なこと
が懸念されましたが、南アフリカ政府と地元組織委員会に
よる並大抵ではない努力の結果、大会は大成功を収めまし
た。地元の子供たちが他国のユニフォームを着て応援する
姿が連日世界中のテレビで放映されたように、何より5,000
万人の国民がホスト意識を持って、自らも心から大会を楽
しんだことが、近年稀にみない喜びにあふれた大会につな
がったのでしょう。
株式会社
さくらコミュニケーションズ
代表取締役
古川智子
インタビューで「現地の人からあたたかい言葉をたくさ
んかけられました」と日本人サポーターが熱く話していま
したが、南アフリカの人々の「おもてなしの心」が世界の
人々を喜ばせたのです。
☆すべてのおもてなしに通じる心の豊かさ
☆見えないものを大切にするフランス
弊社では、各地のおもてなしについて情報交換を行う
日本政府は、観光立国の実現に向けた様々な施策を展開
「おもてなし研究会」を私の主宰で年に数回開催しており
しています。
「JNTO 国際観光白書 2009」によると、日本
ます。日本や世界のおもてなしについて「自称・特派員」が
の外国人旅行者数は世界 28 位ですから、観光においては
情報を持ち寄ります。犬・蛙・蛇・サソリ・ラクダ・蚕・虫
まだ発展途上の段階にあるようです。今回は「世界のおも
を食べるという中国珍味ツアーやモンゴルでのゲル宿泊な
てなし」についてお話させていただきます。
ど旅行代理店の企画による「商品化されたおもてなし」か
外国人旅行者数の第 1 位は、フランスです。フランス人
ら、イギリスの紅茶のおもてなし、アメリカのバーベキュー
はもてなし上手だと言われていますし、私も大好きな国の
パーティーのおもてなし、中国の満腹な食事のおもてなし、
ひとつです。フランスは個人主義の国ですが、これは「人
アラブの水タバコのおもてなし、フィンランドの家庭サウ
に迷惑を掛けない」というのが大前提だからです。自分も
ナ入浴のおもてなし等、旅行者向けではない家庭的・友人
人から干渉されたくないし、人にも干渉しない、お互いの
的なおもてなしについて、さらにはテレビ番組を見て知っ
個人生活を尊重しようという文化なのです。個人主義とい
た世界のおもてなしや歴史上のおもてなしの話などにも及
う言葉のイメージは冷たい印象を受けますが、そうではな
びます。
く、
「自分を大切にしているからこそ、他人を大切にする」
この研究会はとても楽しく、私の講演会やセミナーを充
という精神が根底にしっかりと根付いているのです。ちな
実させていく上でも大変有意義な場となっております。私
みに、フランスでは日本のような中元・歳暮など贈り物の
はこの研究会を通じて「おもてなし」を世界視野で研究し
習慣はありませんが、大切な人を自宅に招待し、楽しい会
ておりますが、そこには「飲食」
「案内」というキーワードが
話と、心のこもった料理を振る舞うのが、最高のプレゼン
現れます。これについては、別の機会に触れます。
トでありおもてなしなのです。
ところで、研究会の特派員が W杯期間中にアフリカを
また、フランスは、古いものを大切にする国民性でも有
訪れたときのことを次のように話しておりました。
「食べ
名です。建物や家具、食器類は、何百年もの月日を経て代々
ることに困る生活をしているにも関わらず、現地の人から
その家に受け継がれています。物を大切にする精神は、人
農産物や昼食をごちそうになりました。感動してしまい、
に対する付き合い方にも共通しているように思えます。こ
アフリカの人々の心の豊かさに圧倒されてしまいました」
れはまさしく「見えないもの」を大切にする、古き良き日本
―。かつて私の師匠が笑顔でこう語られました。
「心の
の伝統文化にも相通じるものと言えるでしょう。
豊かさとは、自分のことではなく相手のことを考えるとき
☆不安、不十分を心でカバーした南アフリカ
観光立国ではない国のおもてなしで最近印象に残った
に感じるものだよ」と。
次回は、地域性におけるおもてなしについてお話し
ます。
No.263 2010.9-