第3話は,「怒り -誰にもある感情-」です。

福山市立東村小学校
【大成館中学校区】
No.58
心豊かに自立・貢献・感謝する児童の育成
H28.2.25
-主体的に学び,地域を愛する子どもの育成-
校長 大村 良人
日本の発達障害研究の草分け的存在で,川崎医療福祉大学特任教授,横浜市総
合リハビリテーションセンター参与,アメリカ・ノースカロライナ大学医学部精
神科臨床教授,子育て協会顧問をされている佐々木正美先生のお話からです。
今からでも十分間に合います。一緒に考えてみましょう。
第3話は,
「怒り
-誰にもある感情-」です。
人間は誰でも,自分の思い通りにならない状況にぶつかると,腹が立ち,怒りを覚
えます。しかしまた人間は,一人ひとり怒りを感じる事柄や内容が違うばかりか,
感じ方の程度も異なりますし,自分の置かれている状況によっても,同じことに違
った内容や程度の怒りを感じる動物です。
今回は,母親がわが子に感じる怒りと,子どもが母親に感じる怒りの感情について,
考えてみます。
《人間関係と心のたくわえ》
怒りっぽくなっているのは,互いに「安らぎあえる人間関
係」によってもたらされる「心のたくわえ」が不足がちに
なっていることを意味します。
ささいなことで過度の怒りを表現しなくてもよくなるには,
夫婦関係をはじめ,地域社会,親類縁者,友人や知人との
交わりを深めながら生きることを心掛けるのが大切です。親子関係における怒りの最
も不幸な例が,子どもへの虐待です。虐待をした何人もの親にこれまで面接をしてき
ましたが,例外なく家庭の内外で孤立したままで生き,
「心のたくわえ」など全くな
い状態で日々を過ごしている人たちでした。
《悪い子
と
悪いこと》
親に叱られる子どもの気持ちを考えてみましょう。大事な原則は,「悪いこと」を
したから叱るのであって,「悪い子」だから叱るのではないということです。この
区別は,どんなに幼い子どもでも,思春期を迎える大きな子どもたちでも,実感的
に理解ができます。
「悪いこと」をして叱られたときは,母親の怒りに触れても仕方がないという気持
ちになれます。しかし,「悪い子」だから怒られたときには,自分が根底から母親
に拒否されたことを感じて自己否定的になり,自尊心が傷つきます。
子どもを育てるときに,最も気をつけなくてはいけないのは,子どもの自尊心を傷
つけないことです。自尊心が傷ついた子どもは,自己否定的になるだけでなく,同
時に相手を否定し,軽んじる振る舞いが多くなり,よい友だちが得られなくなって
しまうからです。
《怒ったあとの反省》
とはいえ,私たちの感情はいつも冷静に,理屈どおり処理でき
るものではありません。子どもの行動に腹を立て,叱り飛ばし
た後に,しまった,と思うこともあるでしょう。そのときは,
あまり時間が経過しないうちに,「さっきはごめんね」と謝っ
てあげるのがいいと思います。こちらが素直に謝れば,子どもは必ず許してくれま
す。許す気持ちが生まれれば,心に傷を残すこともなくなるでしょう。
また,腹を立てて叱ったときは,あとで,気持ちが落ち着いてから,どうして怒っ
てしまったか,自問自答しながら反省することが,自分のためにも,子どもの気持
ちを考える意味でも,価値のあることです。
叱られたことのない人間はいません。それがどんな不愉快な体験だったか,みんな
忘れているのでしょうが,もう一度,しっかり思い出してみることをお奨めします。
そして,叱ったのは子どもの躾や教育のためだなどと安易な自己弁護などせず,静
かに反省してみてください。こういう経験の繰り返しが,自分の怒りの感情を和ら
げていくのです。
《1 週間一度も叱らない,怒らない》
私は各地の母親勉強会などに招かれるたび,「1 週間でいい
から,一度も子どもを叱らないでみてください」と,いつも
話します。
それは,子どもの好き放題にさせることではありません。親か
ら見て好ましくないことをしたときは,声を荒げず,できるだ
け穏やかに,注意をしたり,言って聞かせたりはするのです。
そして 1 週間,そのことがきちんとできたら,ほぼすべての母親が,わが子が見違
えるような爽やかないい子になっていることに気づくでしょう。だまされたと思っ
て,試してみてください。
(第3話 完)
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