特集1 保存鉄道(その2)

apan
Railway & Transport Review
第三十一号(2002年6月)
変わる価値観
論説
特集1
保存鉄道
(その2)
カリフォルニア州立鉄道博物館
スティーブン・E・ドリュー
カイル・W・ワイヤット
キャサリン・A・テイラー
州立鉄道博物館主任学芸員
同学芸員
同館長
交通博物館の将来における展示の役割
アルバロ・コスタ
クリスティナ・ピメンテル
オポルト公共交通サービス
理事会役員
オポルト市電博物館長
イタリアの鉄道保存―トスカーナの
「自然列車」
ステファノ・マッギ
シエナ大学政治学部研究員
梅小路蒸気機関車館と山口線の
蒸気運転
田仲 文郎
JR西日本広報室担当室長
ローマと中世の遺跡しか歴史として認めないイタリアでは、鉄道遺産の保存はきわめ
て最近はじまったことである。古都シエナに近い自然公園の中を走る「自然列車」の起
源は1 9 9 1 年に旅行会社が始めた貸切列車にさかのぼるが、現在ではシエナ県の補助金
を受けて、退職した鉄道員や愛好家が組織するヴァル・ドルチア鉄道が運営している。
依然として抵抗や障害が多いが、ヴァル・ドルチア鉄道やロンバルディアのバッソ・セ
ビーネ鉄道を範とするイタリアの保存鉄道は、ようやく勢いを得つつある。
英国の例に倣って1968年に設立された日本ナショナルトラスト(JNT)は、文化遺産、自
然遺産とともに鉄道遺産の保存も行っている。トラスト・トレインは一両の旧国鉄タ
ンク機関車と三両の客車からなり、その運転と保守は大井川鉄道に任され、財源は個
人と企業からの寄付である。J N T は日本鉄道保存協会を組織し、多数の公益法人、地方
自治体、鉄道事業者を傘下に擁している。
日本ナショナルトラスト
本州中部にある大井川鉄道は、
日本最初の保存鉄道として、現在 5 両の蒸気機関車を
動態保存している。
同社の車両保存の始まりは1 9 7 0 年代にさかのぼり、
現在では年
間20万人の訪問者を迎え、地域の最大の観光資源になっている。
大井川鐡道の蒸気機関車保存
白井 昭
博物館にとって展示というものは、人々と対話し自らを主張するための重要な媒体で
ある。愛好家たちの運動の結果1 9 9 2 年に設立されたオポルト市電博物館は、当初は歴
史的路面電車の保存を主な目的にしていた。数年後、博物館の管理は市の交通局の関
与から分離し、再編された博物館は教育ならびに市民との対話を志向した結果、交通
史と同様に社会史の側面にも重点をおいた企画展示を2001年に開くに至った。
J R 西日本の二大保存鉄道事業の起源は、
いずれも国鉄時代にさかのぼる。
京都駅に近い
梅小路蒸気機関車館は鉄道開業百年を記念して1972年に開館し、
本州西端の山口線にお
ける蒸気列車の運転は1 9 7 9年に始まった。
前者の保有する1 8の蒸気機関車のうち6 両は
動態で保存されており、
毎年17万人が訪れる。
後者は年間約6万人の乗客を迎える。
日本ナショナルトラストの活動と
「トラスト・トレイン」
米山 淳一
カリフォルニア州立鉄道博物館は、南太平洋鉄道サクラメント地区現業建物群の保存
を含めて、米国でも最大級の鉄道保存プロジェクトである。1 9 6 9 年、私的に蒐集された
多数の歴史的鉄道車両がカリフォルニア州に寄贈されたことに始まり、このプロジェ
クトは次第に発展して、今やサクラメント最大の観光資源となり、世界でも最も入館
者の多い鉄道博物館の一つとなった。その沿革、現状、将来展望に関する概説。
大井川鐡道顧問
3フィート6インチ軌間の起源
蒸気機関車史の卓越した研究者である著者の旅は、
日本の鉄道が1067mmゲージを採用
3フィート6インチの源流を尋ねて
した理由を解明するために、英国ウェールズ、マン島を経てノルウェーに及んだ。ノル
特集2
齋藤 晃
慶應義塾大学鉄道研究会三田会会長
ウェーの山岳地方の鉄道は、
技術・財政両面の理由から、ロバート・スティーヴンソンの
薫陶を受けた技師ピールによって、
1 8 6 0 年代にこのゲージで建設された。
今も日本、
イ
ンドネシア、
豪州北部、
ニュージーランド、
アフリカ諸国などで広く使われる1 0 6 7 m m
ゲージの起源にせまるユニークな考察。
ノルウェイ鉄道の発達1854̲1998
ロア・ステネルセン
1 8 9 6 年、ノルウェーの狭軌鉄道は延長1 0 5 5 k m に達したが、これを頂点に縮小に転じ、
1 9 0 4 年、ベルゲン鉄道開業の準備のために関連線区が標準軌に改築され、1 9 4 9 年まで
に一線区を除いて全ての狭軌線の標準軌改築が終わった。最後の一線は1 9 6 2 年に廃止
されたが、一部が保存鉄道として今日まで残っている。1 8 5 4 年の開業から現在にいた
るノルウェー鉄道全史の簡潔な要約。
ノルウェイ鉄道博物館
技術担当学芸員
もう一つの視角から 日本のモビィリティ:フラ
ンスの交通政策のモデルと
なり得るか?
ナターシャ・アヴリーヌ
日仏会館研究員
日本の鉄道事業者5 北および東関東地方
岸 由一郎 交通博物館学芸員
過去2 0 年間にフランスの都市交通は大きく変化した。自家用車の普及はモビリティー
を高めたが都市のスプロール化を促し、新しい巨大商業施設には車を保有する中産階
級だけしか近づけない。公共交通は都心と近接した郊外にしか及ばず、多くの低所得
者は不便な遠い郊外に住む。車やバスに向けられるヴァンダリズムの破壊行為は、こ
れらの欲求不満の表現である。これに対して日本では、交通システムの改善やイン
ターモーダルな交通の促進という点で優れているように思われる。土地経済学の研究
者による、日仏の異なる都市交通の経験から教訓を得ようとする試み。
シリーズ第五回は東京の東北部郊外を含む北関東と東関東の鉄道事業者を紹介し、J R
東日本の都市間および近郊輸送、大手私鉄の東武鉄道と京成電鉄、千葉モノレールを
含む中小の諸鉄道、JR貨物と私鉄の貨物輸送などを紹介する。
トピックス
2001年11月から2002年1月まで
写真特集
日本の鉄道遺産(2)
:駅舎建築
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