夏の思い出 写真館 - 東京愛育苑 金町学園

専門学校生・
専門学校生・大学生と
大学生と共に
夏の思い出 写真館
副園長 野口 陽子
金町学園を開かれた学園に、という課題解決の
一つとして、施設実習生・介護等体験学生を受け入
れてきました。平成19年度は、施設実習生14名、
介護等体験学生72名を受け入れています。施設実
習と介護等体験では多少目的が異なりますが、参加
発
する学生達は、都内にある聴覚障害児の養護施設は
北海道サマーキャンプ2007
本学園だけであることや学園の役割、両親の離婚や
平成19年10月1日
第10号
行 社会福祉法人東京愛育苑金町学園長 濱崎久美子
125-0032 東京都葛飾区水元3-13-8
TEL 03-3607-0786 FAX 03-3607-0845
家庭の事情等により家庭で養育することが出来な
くなり金町学園へ入園している子ども達の毎日の
『3 年かけて、
かけて、やっと0
やっと0(ゼロ)
ゼロ)の線まで育
まで育つ』
東京愛育苑金町学園長 濱崎久美子
生活を知る事などから、勉強を始めます。
実習開始時の学生からは、「暗い所というイメー
ジで来たが、子ども達の居室はきれいで、明るくび
ベビーベッドの様な柵に囲まれ柵に掴まって育っ
一方、判断力をもたない児童達が、
「管理するの
っくりした。」とか「児童指導員が子ども達に接し
てきた子どもが、突然柵を外されたらどの様になる
ではなく育てること」に方向転換した児童指導員
ている光景は自分が子どもの時、親にしてもらった
でしょうか?
の対応を受けて、何をしても罰はないと欲求丸出
金町学園の児童達は、管理生活という柵で育ち、
しの生活に変わったのは、あっという間でした。
そして、実習が進み後半になると、「保育園か幼
学園の職員による不祥事発覚後、急に柵を外される
そのうちに、必要なことにも耳を貸さない児童も
稚園で働こうと思っていたが、児童養護施設もいい
という、まさにそのような状況に置かれました。そ
出てきました。
な、と思うようになった。」「学校で働く際、クラ
れから3年、児童達は、その後、物事の判断に迷い
それから 3 年、悪戦苦闘の中で、事件当時の職
スには必ず障害のある子どもがいると思うが、その
ながら頑張っております。きっと、近い将来、日の
員 24 名中 23 名は退職等されました。児童は、時
目を見ることが出来ると期待しています。
にはけんかをしますが、以前の様な児童が職員へ
ことと同じだ。」という感想が寄せられます。
時に、どのように対応したらよいか、少し学べた。」
英語キャンプ2007
平成 15 年秋に不祥事が発覚し、金町学園での児童
暴力行為を行うことや警察への通報が必要な事態
の生活が世間に知られるまで、児童達は職員と上級
もなくなりました。やっと小さな灯りが見え始め
さらに、「聴覚に障害のある子ども達と出会った
生から、管理され指示され、出来なかったりしなか
ています。
ことで、今後、街で障害児・者が困っている場面に
ったりすると体罰を与えられる生活を延々と続けて
その一つが、部活動への取り組み姿勢です。
ぶつかっても、気軽に言葉をかけられると思いま
きておりました。小中学生に至っては、学園と学校
この夏、中央ろう学校の野球部では 1 週間の休
す。」など障害に対する認識の変化を垣間見る事も
の空間しか知らない生活体験の状況でした。
等、障害児への理解や将来の進路への意欲的な意見
も出てきます。
み以外土日も関係なく、毎日々々部活動が実施さ
金町学園には、3,4 歳で入園している児童が多く、
れました。本園の中学生の大部分は、いろいろと
実習等責任者として、これからを担う若い学生
もの心つく頃からの、管理され強制される生活では、
ご指導をいただきながらではありますが、その部
に、一層充実した実習や体験を提供できるよう、プ
力の強い先輩や職員の行動や考え方が全て正しく、
活動に何とかついていくことができました。これ
ログラムの作成やマネージメントに力を入れなく
自らもそれに従うという受け身の生き方しか育ちま
を見ますと、ようやく児童達が自分の足で立ち上
てはならないと感じております。
せん。また、自分で判断する必要がありませんから、
がれ始めた様にも思えるからです。
出来、とても嬉しく思います。
考える力も判断する力も育ちません。
小さく点り始めた灯りに改めて触発され、
「育て
そこで、暴力や体罰を否定し社会常識の通じる学
ることは時間がかかるが、かけた手間は必ず実を
園にするために様々な分野で改革し、通学校の幅を
結ぶ」という教訓を胸に、確実な灯りに繋げるた
暑かった夏も終わり、過ごしやすい季節とな
広げることなどもして、児童の自立を意識した育て
めの一層の努力を思う昨今です。
りました。学園のこども達は野球部活動や文化
直しを始めたのが3年前です。学校の先生方に辛抱
聴覚障害のある職員も複数名採用し、専門学校
祭にむけての準備・練習に忙しい日々を送って
強くご指導いただいたり児童指導員に忍耐強く対応
や大学生の施設実習や介護等体験を受け入れ、N
います。学園便り制作にも何とか慣れてきまし
させたりしてきました。
PO等との連携を図るなど様々な改革と試行を行
夏の部活動
~編集後記~
この間、児童達が、周囲を取り巻く状況が変わっ
たので、今回は見出しをカラフルに演出してみ
ました。 (田島・中川・柿沼)
っています。今後とも、東京愛育苑金町学園への
たことを受け止め、理解出来るまでに、1年はかか
4
りました。
ご理解とご支援をお願いいたします。
1
夏季の
夏季の試行事業から
試行事業から
園長 濱崎久美子
英語キャンプ
英語キャンプ
北海道サマーキャンプ
北海道サマーキャンプに
サマーキャンプに参加して
参加して
副園長 星名孝行
7月14日(土)及び15日(日)の1泊2日、アメリ
カの聴覚障害高校生等9人と日本の聴覚障害中高
校生20名(学園生含む)で開催しました。
本学園の小学生の児童達も、プログラム外の生
活時間では外来の受講生と親しく交わりました。
それぞれが初めての対面にもかかわらず、10年
来の知古のごとく、戸惑いながらも和気あいあい
と異なる言葉や文化を超えて交流していました。
参加した生徒達は、相手の立場を尊重しながら、
自分の考えを正しく表現していく難しさを経験で
きたのではないかと思います。
夕食は、アメリカの高校生がはるばる運んで来
られた特別製のドーム型グリルを使ってのバーベ
キューでした。フーフーと口に運ぶ焼きたての肉
は、弾む会話をさらに味付けした様でした。
NHKの取材をも受けた今回のプログラムは、児
童達への良い刺激と励みになって、今後の社会自
立に役立つものと期待しています。
自立支援法の施行を機会に、金町学園の児童指導の
幅が広がり児童の社会自立や今後の施設のあり方を
期して、この夏もいくつかの試行事業を行いました。
1.米国高校生の来日交流事業(初年度)
7 月 10 日から 20 日の間、米国聴覚障害高校生 6
名、引率 3 名が金町学園に滞在し、都立中央ろう学
校・神奈川県立平塚ろう学校と交流した。聴覚障害
のある日米の生徒同士の交流は、NHK「ろうを生
きる、難聴を生きる」の番組に取材・編集され、全
国に放映された。金町学園の児童には、新しい体験
ばかりだったが、戸惑いながらも精一杯対応するこ
とが出来た。
2.英語キャンプの開催(第 2 回)
NPO聴覚障害教育支援大塚クラブと共催し、全
国聾学校PTA連合会後援の下に、「アメリカ人教
師やアメリカのろう高校生と共に、生の英語と手話
にふれるレッスン体験」として 7 月 14 日午後から
15 日午後 2 時まで金町学園を会場に開催した。本
園の生徒を含め東京都他関東近県の聴覚障害のあ
る中高校生20名が参加し、非常に積極的に生徒同
士が日米の文化交流を図った。ろう学校教員等ボラ
ンティア関係者 10 名も来園した。
「米国のお
米国のお客
のお客さんを迎
さんを迎えて」
えて」
-スコットプロジェクト-
スコットプロジェクト-
非常勤児童指導員
非常勤児童指導員 中川美幸
2007年の夏はスコット先生が米国のろう学
校の高校生を連れてやってきました。金町学園の
子ども達はスコット先生にまた会えたことで大喜
びです。もちろん、生徒さんとの交流にも興味津々
です。彼ら達ともっと話したいからアメリカ手話
を教えて下さいという子どもが去年より多かった
のです。
去年は初めてだったということもあり、子ども
達に緊張感がかなりみられましたが、今年はなん
と子ども達が先生や生徒さんの部屋に入って積極
的に話しかけていました。この2回目のスコット
プログラムを振り返ってみると、本当に子ども達
の成長を強く感じました。
そして、とてもうれしかったことは、子ども達
が彼ら達のために、折り鶴を折ってくれたことで
す。その折り鶴はもちろん、彼ら達にプレゼント
し、今でも金町学園に飾ってあります。生活ルー
ルやマナー、文化、言語が全く違うことでとまど
いもありましたが、彼ら達が来たことで子ども達
はあらゆることを身をもって学ぶことができたの
ではないかと思いました。このスコットプロジェ
クトでいろいろな問題や課題も沢山出てきました
が、子ども達にとってはかけがえのない夏の大切
な思い出としてインプットされたのではないかと
信じています。このプロジェクトをきっかけに子
ども達がいつか日本・世界を駆け回り、活躍する
ことを願っています。
3.(株)IBM主催「ITキャンプ」への協力
(第 2 回)
8 月 1 日~3 日、全国聾学校PTA連合会後援・
(株)IBM主催の「ITキャンプ」をNPO大塚
クラブと共に支援した。本園の生徒を含む参加者等
10 名は、金町学園を宿舎に、IBM箱崎事業所や大
和研究所でのITキャンプ(研修講座)に参加した。
ロボットの機動や乗用車、洗面台、携帯電話等日常
生活品での最先端のIT活用技術に直に触れるな
どして、目を輝かせた 3 日間であった。また、筑波
大学医学部の聴覚障害学生に引率されたので、休憩
時等には進路についての議論なども交わされ、有益
な経験となった。
4.北海道サマーキャンプを共催(第 2 回)
NPO大塚クラブと共催し、全国聾学校PTA連
合会後援の下に、8月12日~26日の間、北海道の
NPO「森の仲間たち」の協力により、北海道立森少
年自然の家を宿舎に実施した。本園の児童を含め、福
岡、千葉、東京葛飾、大塚、中央、坂戸の各ろう学校
の児童・生徒 13 名が参加した。山の立木の状態から、
炭が焼き上がり自宅に発送するまでの工程すべてを
経験し、さらにその炭を使って、畑で収穫したジャガ
イモ、トウモロコシ、カボチャ、海で拾った貝を材料
に野外調理を繰り返した。テントの設営や撤収、カヌ
ーも漕ぎ、充実したサバイバル体験であった。
2
北海道サマーキャンプ
北海道サマーキャンプに
サマーキャンプに参加して
参加して
児童指導員 田中美紀
非常勤児童指導員 笹野泰賢
去る 8 月 12 日(日)~26 日(日)までの 14 泊 15
8月12日から26日まで、毎年恒例となった北海
日間を、スタッフとして同行してきました。このキャ
道サマーキャンプに参加してきました。金町学園から
ンプは NPO 大塚クラブとの共催で、今年で 2 回目の
は2人の小学生が去年に引き続いて参加しました。核
取り組みです。
となる活動である、炭焼き体験では、林の中から木を
参加者ははるばる福岡から 2 名、千葉が 4 名、葛飾
切り出すことから始め、炭を窯から取り出し、実際に
が 2 名、大塚が 3 名、坂戸と中央が各 1 名の計 13 名。
バーベキューに使うまでを子どもたち自身がほぼ全
学年は、小学 4 年から中学 1 年までが揃いました。本
ての行程に関わり、やり遂げました。また、午前中は、
学園からは 5 年と 6 年の児童が参加しました。
毎日、全員で、ログハウスを会場に学習、午後からの
サマーキャンプの最初の目玉はフェリーによる 1
活動では森高等学校手話部、函館ろう学校との交流会
泊 2 日の船旅でしたが、なんとオーバーブッキングの
など、今年度からの新たな試みも子どもたちは意欲的
ため乗船不可と、いきなり波乱の幕開けとなりまし
に活動し、他では決して得られない貴重な経験を積ん
た。が、先行きを危ぶむ大人を尻目に子どもたちはす
できました。学園の2人の子どもたちにも、大きな成
ぐに打ち解け、和気あいあいのうちに旅行が始まりま
長が見られました。特に、自己紹介や、他人に感謝の
した。
言葉を述べるなどの場面では意識して手話に声を添
このキャンプは、炭焼き体験やテント設営、カヌー
えたり、内容を高めるために考えたり、自ら積極的に
体験、野菜の収穫、ジンギスカンやカレーなどの野外
発言する意思を表したりと、こちらが目を見張るよう
調理等、都会では味わえない体験活動で構成されてい
な姿を見せてくれました。同時に、金町学園以外の子
ます。特に炭焼きは木の伐採から始まって薪割り、窯
どもたちとの集団生活で、コミュニケーションのとり
入れ、火入れ、窯止め、窯出し等一連の作業を殆ど子
かたの課題などが新たに分かりました。このような経
どもたちがやりました。中でも窯止めは予定を変更し
験を今後の支援に活かしていきたいと考えます。
て朝早く起こされての作業となり、子どもたちは教科
書通りには行かない事を身をもって理解したと思い
部活動への
部活動への取
への取り組みから
ます。また、同じ宿舎で合宿中だった地元の高校手話
児童指導員
森田富美
部との交流や函館ろう学校を訪問しての生徒との触
れ合いも、忘れ難い貴重な体験となった事と思いま
毎日の気温が 35 度以上という猛暑の中、子ども
す。
達はほぼ毎日早起きをして、野球部の活動に参加し
本園児童の2人は 2 回目の参加なので身体が覚え
ました。帰ってくると、暑さと疲れの所為か、食欲
ていた部分もあったのでしょう、コツが分かってくる
もなくなり夕食も半分以上残しテレビの前でうた
と動きもよくなり、周りをよく見ながら行動できまし
た寝をする有様でした。私達も初めての経験で、こ
た。自己紹介や挨拶の場面では、健聴者がいる時は手
の状況で 9 月まで体力が持つのか心配でした。
話と一緒に声も出して発言しており、学園での集団生
しかし、9 月には、真っ黒に日焼けし体力のつい
活とはまた違った面を見る事ができ、成長を目の当た
た子どもの姿がありました。休みが少ないことに
りにして非常に嬉しく思っています。学園でもさらに
時々不満を言うことはあっても、次の日には、また、
伸ばしていけるよう、日々支援していく所存です。
早く起きて 6 時 20 分には出発する子どもの姿に、
運動部の精神が少しずつ育っていると思えました。
夏休みの宿題を残してしまった子どもが多く、勉
強面との両立は今後の課題ですが、精神面、体力面
では、成長を感じることの出来た夏でした。
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