F–1

まえがき
F-1団
団長
高田 彬成
近年、我が国の子供たちを取り巻く環境は、大きく変化してきました。交通機関の発達
等による利便性の向上や情報化社会の進展等により、子供たちの多くが便利で快適な生活
を送ることができるようになりました。その一方で、朝食の欠食やアンバランスな栄養摂
取、就寝時間の遅れや睡眠不足、遊び場の減少やスクリーンタイムの増加など、様々な要
因が絡み合い、子供たちの体力・運動能力の低下及び、運動する子としない子の二極化傾
向が懸念されています。
体力は、子供たちが豊かな人間性を培い、自ら学び自ら考えるといった「生きる力」の
重要な要素です。子供の体力の低下は、将来的に国民全体の体力の低下につながり、生活
習慣病の増加やストレスに対する抵抗力の低下など、心身の健康に不安を抱える人々が増
え、社会全体の活力が失われることになりかねません。子供の体力の向上は、次代の担い
手の心身の健全な発育・発達のため、社会全体で取り組まなければならない大きな課題と
なっています。
そこで今回、私たちF-1団は、こうした我が国の子供たちの現状を踏まえ、諸外国で
も我が国と同様な課題があるか、課題となっていればどう対処し改善しているか、課題を
解決していればどんな取組が功を奏しているか等について、ニュージーランドを対象国と
し、我が国の現状と比較しながら実地調査を行うことにしました。
ニュージーランドでは、首都ウェリントン、ロトルア、タウランガ、ハミルトン、オー
クランドの5都市において、スポーツ行政機関や各学校等、計12の施設等を訪問し、ス
ポーツ振興の現状及び、子供たちのスポーツを取り巻く環境や運動・スポーツに対する意
欲等について、主に関係者からの聞き取りを中心に調査しました。
その結果、ニュージーランドでは、スポーツに対する国民の意識やスポーツを取り巻く
環境・施設等だけでなく、日本の学習指導要領に相当するナショナルカリキュラムの内容
や各教科等の指導内容及び指導方法、教育委員会制度をもたない教育行政の仕組、学校理
事会による学校経営の方法等、多くの点において我が国と異なる実情を垣間見ることがで
きました。
本調査を通して、ニュージーランドの大変示唆に富んだ取組を学ぶことができた一方、
我が国のスポーツ行政や学校体育に関するこれまでの取組の利点等も再認識できたことは、
参加した各団員にとって大きな財産となったものと確信しています。調査結果の詳細につ
いては本報告書にまとめることとしますが、今回の経験や英知をもとに、各団員がそれぞ
れの地域で、我が国の学校体育のさらなる充実に向け、指導的役割を担われることを願っ
てやみません。
最後に、今回の私たちの訪問に快く対応してくださったニュージーランド教育省はじめ
各スポーツ行政機関の皆様、各学校関係者の皆様、各地域スポーツ施設関係者の皆様、並
びにシニアアドバイザーである東京成徳大学の出雲輝彦先生、現地通訳者の大竹一雄様、
向井征道様はじめ小田急トラベルの皆様、独立行政法人教員研修センターの皆様に、心か
ら感謝申しあげます。
-1-
目
次
まえがき
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
派遣日程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
※個人情報保護の観点から、名簿の記載を差し控えます。
派遣団名簿
Ⅰ
調査研究
1
ニュージーランドの現状
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(1)ニュージーランドの概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(2)ニュージーランドの教育制度
・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(3)ニュージーランドの保健体育
(4)ニュージーランドのスポーツ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
2
日本国内における派遣テーマに関する課題
(1)体力・運動能力の低下
(2)運動経験の二極化
・・・・・・・・・・・・・10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
(3)生活環境等の変化と子供たちの身体活動
・・・・・・・・・・・・・14
3 調査研究課題の設定理由、事前送付質問事項
(1)ニュージーランドの学校体育の現状と課題
(2)ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
・・・・・・・・・・・・15
・・・・・・・・・・・・15
・・・・・・・・・・・15
(3)ニュージーランドの学校運営制度
・・・・・・・・・・・・・・・・15
(4)ニュージーランドのスポーツ文化
・・・・・・・・・・・・・・・・16
(5)事前送付した機関区分別質問事項
・・・・・・・・・・・・・・・・16
4 現地調査結果の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(1)行政、体育・スポーツ関係機関(3か所) ・・・・・・・・・・・・18
(2)学校(6か所)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
(3)地域スポーツ関係組織(3か所)
5
・・・・・・・・・・・・・・・・32
まとめ
(1)ニュージーランドの学校体育の現状と課題
・・・・・・・・・・・・39
(2)ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態 ・・・・・・・・・・・42
(3)ニュージーランドの学校運営制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・45
(4)ニュージーランドのスポーツ文化
Ⅱ
研修成果の活用レポート
Ⅲ
研修概要
・・・・・・・・・・・・・・・・46
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
1
要約版
2
3
全体のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
実施要項、実施計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74
あとがき
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
-3-
平成 26 年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム
「体力・運動能力の向上」F-1団 日程表
日
次
月/日
1
11/17
成田発
2
11/18
午前 移動
ウェリントン着
(オークランド経由) 午後 ●オリエンテーション
※「現地調査のポイント」の確認他(於:ホテル会議室)
3
4
11/19
11/20
発着地・滞在地
調査機関、調査内容等
出国
ウェリントン
午前 ●ニュージーランド教育省(Ministry of Education)
※訪問(教育制度、カリキュラム、保健体育授業等の説明)
午後 ●スポーツ・ニュージーランド(Sport New Zealand)
※訪問(機関の概要、
「Young People's Survey」
「Kiwi Sport」
「Sport in
Education」等の主な取組の説明)
ウェリントン
午前 ●スポーツ・ウェリントン(Sport Wellington)
※訪問(組織の概要、地域スポーツクラブ、学校での取組等の説明)
午後 ●リッジウェイ小学校(Ridgway School)
※訪問(学校の概要、体育の考え方等の説明、スポーツアフタヌーン参観、
同校教師らとのディスカッション等)
5
11/21
ウェリントン
午前 ●ファーガソン中学校(Fergusson Intermediate School)
※訪問(カパハカによる歓迎、授業参観、生徒たちとのスポーツ交流、学
校の概要、身体教育等の説明)
午後 ウェリントンでの調査のまとめ、グループ別協議(於:ホテル会議室)
6
11/22
ウェリントン発
ロトルア着
午前 移動
午後 教育課題に関する調査研究
7
11/23
ロトルア
終日 教育課題に関する調査研究
タウランガ
午前 ●ニュージーランド身体教育協会(Physical Education New Zealand:
PENZ) ※PENZ の概要、主な活動内容、体育授業での指導方法・内容等の
説明(於:ホテル会議室)
午後 ●マウンガタプ小学校(Maungatapu Primary School)
※訪問(2013 PENZ Award を受賞した取組「Everybody Counts:EBC」に関
する授業参観、児童たちとのスポーツ交流、体育授業での指導方法・内容
等の説明)
ハミルトン
午前 ●ナイトン・ノーマルスクール(Knighton Normal School)
※訪問(学校の概要、健康・身体教育等の説明、2013 PENZ Award 受賞教員
のレクチャー、水泳他授業の参観)
午後 ●スポーツ・ワイカト(Sport Waikato)
※訪問(組織の概要、学校・家庭・地域との連携等の説明)
オークランド
午前 ●オークランド・グラマースクール(Auckland Grammar School)
※訪問(学校の概要、NZ の教育システム、同校の保健体育カリキュラム等
の説明、校内・スポーツ施設見学)
午後 ●ポンソンビー・ラグビークラブ(Ponsonby District Rugby Football
Club) ※訪問(クラブの概要、活動内容、NZ ラグビーの現状等の説明)
8
9
10
11/24
11/25
11/26
11
11/27
オークランド
午前 ●リンフィールド・カレッジ(Lynfield College)
※訪問(校内・スポーツ施設見学、ソフトボール大会見学、学校の概要、
保健体育授業、2013 PENZ Award を受賞した取組である「Junior PE program」
等の説明)
午後 グループ別協議、現地調査のまとめ(於:ホテル会議室)
12
11/28
オークランド発
成田着
移動
帰国
-4-
Ⅰ
調査研究
1
ニュージーランドの現状
(1) ニュージーランドの概要
ニュージーランド(首都:ウェリントン)は南半球の南太平洋に浮かぶ島国であり、
オーストラリアの東海岸から約 1,600km のところに位置する。日本の7割ほどの国土
(269,652 ㎢)に約 447.1 万人(2013 年)の人々が生活をしている。人口(民族)構成
は欧州系 74.0%、マオリ系 14.9%、アジア系 11.8%、太平洋島嶼国系 7.4%、その他
2.9%(2013 年国勢調査、複数回答)となっている。「マオリ語法(Māori Language Act
1987)」が制定された 1987 年からニュージーランドの公用語は英語とマオリ語とされ、
2006 年には「ニュージーランド手話法(New Zealand Sign Language Act 2006)」によ
って、それに手話が加えられた。
ニュージーランドのマオリ語名「アオテアロア(Aotearoa)」は「長く白い雲のたなび
く地(land of the long white cloud)」を意味し、14 世紀半ばにカヌーでこの地に辿
り着いたマオリの祖先がそのように呼んだことに由来するという説がある。同国をヨー
ロッパ人として最初に発見したのは 1642 年のオランダ人アベル・タスマンであり、初め
て上陸を果たしたのは 1769 年のイギリス人ジェームズ・クックである。18 世紀末まで
にヨーロッパ人らによる太平洋の島々の探検は終わり、その後、ニュージーランドは交
易、捕鯨等の拠点として活用されるようになった。その結果、1830 年までに約2千人の
ヨーロッパ人がニュージーランドに移り住むようになり、ニュージーランドは 1840 年の
「ワイタンギ条約」によりイギリスの植民地となった。1907 年には英国自治領となり、
1947 年にはイギリスのウェストミンスター法受諾により独立した立法機能を取得し、ニ
ュージーランドは独立国家となった。
ニュージーランドはイギリスのエリザベスⅡ世女王を元首とする立憲君主国であるが、
実質的には総督が置かれその代理を務めている。現在の総督はジェリー・マテパラエ
(2011 年8月~、任期5年)である。議会は一院制で議員の基本定数は 120、任期は3
年である。現在の政権は国民党政権が担っており、ジョン・キー(国民党)が首相を務
めている。キー首相は 2008 年 11 月に就任し、2011 年 11 月及び 2014 年9月の総選挙を
経て今日まで政権を継続している。
国と地方の役割については、国が外交、防衛、経済、教育、医療、福祉等を担当し、
地方公共団体が環境保護、防災、交通機関等を担当している。地方公共団体には 11 の広
域自治体(regional council)と 67 の基礎自治体(territorial authority)がある。
なお、2014 年8月現在、基礎自治体には 12 の City council と 54 の District council
と Auckland Council がある。
2013 年のニュージーランドからの主要輸出品目は酪農製品(18.6%)、食肉(8.5%)、
木材(5.5%)、また、主要輸入品目は石油・石油製品(13.0%)、機械類(9.3.%)、車
両(8.5%)となっている。ニュージーランドの貿易相手国は輸出入ともにオーストラリ
ア、中国、アメリカ、日本の順となっており、2012 年の国民一人あたりのGDP(国内
総生産)は 38,211 米ドルであった。
-6-
日本とニュージーランドの関係は深く、政治・経済・文化・教育等の様々な分野で二
国間の良好な関係が構築されている。2011 年2月のニュージーランド地震により日本か
ら同国への入国者数の落ち込みは幾分あったものの現在は回復基調にある。ニュージー
ランドを訪れる日本人観光客は多い。
(2) ニュージーランドの教育制度
第2次世界大戦後、イギリスという安定的な輸出先を抱えていたニュージーランドは
経済的に大いなる発展を遂げ、1960 年代には国民所得や医療・福祉等の面で世界最高の
水準に達していた。しかしながら、イギリスのEC加盟(1973 年)にともなう安定市場
の喪失や2度のオイルショック(1974 年、1979 年)によって同国の経済は傾き、財政赤
字を抱えることとなり、それまでの高福祉・高負担の政策からの脱却を余儀なくされた。
そこで、1984 年に誕生した労働党ロンギ政権ではロジャー・ダグラス蔵相が強いイニシ
アティブを発揮し、いわゆる「ロジャーノミクス」により、補助金の全廃、国有財産の
売却、国営企業の民営化、規制緩和、自由競争の推進等の行財政改革を断行した。教育
分野も例外扱いされることはなく大改革が行われ、
「教育委員会法(1876 年)」や「1877
年教育法」によって約 100 年間続いてきた教育行政の中央集権体制が「1989 年教育法」
により学校分権化に力点を置いた教育制度に変更されることになった。具体的には、教
育省が機能別に分割・縮小され、100 年以上続いた教育委員会制度が廃止され、公立学
校に保護者代表を中心に構成される「学校理事会(Board of Trustees:BOT)」が設
置され、教育内容の質を保証するために「教育機関評価局(Education Review Office:
ERO)」が設置された。すなわち、各学校の管理・運営を任されることになったBOT
は学校予算の立案・運用、校長・教員の任免、カリキュラム編成、地域との連携促進活
動、校長評価などを行い、その規制・監督業務を教育省から独立したEROが行うこと
となった。
クライストチャーチ郊外にある公立のセント・マーチンス小学校(St Martins School)
の学校理事会(BOT)の場合、保護者の中から3年に1度の選挙で選ばれる理事5人、
校長、学校職員代表の計7人で構成され、毎月第3火曜日に会議が開催される。議長の
報酬は4万5千円(年)、理事の報酬は3万5千円(年)となっている。BOTが「ガバ
ナンス」を担当し、校長が「マネジメント」を担当する。なお、BOTについては、保
護者代表らによる教育の素人集団で学校の運営が上手くいくのかという疑念も生じると
ころであるが、全国学校理事会協会(NZSTA)が新任理事に対して経営管理のノウ
ハウや決算書の読み方などについての研修をしたり、電話相談に応じるなどサポートを
行う仕組みがある。また、EROがBOTにとって参考になる学校評価を通じた様々な
情報を提供をしている。
ニュージーランドでは5歳の誕生日から 19 歳の誕生日後の1月1日まで、すべての公
立学校で無償で教育が受けられることが保障されており、この間、6歳から 16 歳までの
11 年間が義務教育とされている。13 学年(year1~year13)
あり、8年間の初等教育(year
1~year8)、5年間の中等教育(year9~year13)に大きく分けられるが、対象とする
児童生徒の学年の幅は日本のようにシンプルではなく学校や地域事情により異なってい
る。
-7-
ニュージーランドの教育行政の基本原理は「全国教育指針(National Education
Guidelines)」に示されており、それらを具現化するために「全国教育目標(National
Education Goals)」「教育内容(Foundation curriculum policy statements)」「ナショ
ナル・カリキュラム(National curriculum statements)」「ナショナル・スタンダード
(National Standard)」「全国学校経営指針(National Administration Guidelines)
」
が策定されている。
2007 年に策定された「ニュージーランド・カリキュラム」では、4つのビジョン (「積
極的であること」
「他者との関係を構築すること」
「社会に貢献すること」
「常に学び続け
ること」)、5つのキー・コンピテンシー(「考察」
「言語、記号、テキストの活用」
「自己
管理」
「他者との関係」
「参加と貢献」)、8つの学習領域(「英語」
「芸術」
「保健体育」
「言
語の学習」
「数学と統計」
「科学」
「社会科学」
「技術」)について示されている。なお、8
つの学習領域については8段階(level1~8)の到達目標とそれらを修得する上での標
準学年幅が示されている。(図1参照)
図1
学年とカリキュラムレベルの関連
(出典:Curriculum achievement objectives by level:
http://nzcurriculum.tki.org.nz/The-New-Zealand-Curriculum)
(3) ニュージーランドの保健体育
ニュージーランドの保健体育(Health and Physical Education)は「健康や運動に関
する学習を通じた児童生徒、他者及び社会のウェルビーイング(幸福、良好な状態)の
実現」を目標としており、基本コンセプトとして「ハウオラ(Hauora:健康の意)
」「態
度 と 価 値 観 ( Attitudes and values )」「 社 会 生 態 学 的 観点 ( The socio-ecological
-8-
perspective)」「健康促進(Health promotion)」の4つを掲げている。ニュージーラン
ドの保健体育には以下の7つの学習主要領域(key areas of learning)が設けられてい
る。
「メンタルヘルス(mental health)」
「性教育(sexuality education)」
「食品と栄養(food and nutrition)」
「ボディケアと身の安全(body care and physical safety)」
「身体活動(physical activity)」
「スポーツ学習(sport studies)」
「野外教育(outdoor education)」
また、カリキュラムは絡み合った数本の糸が綱を形成するように例えて描かれ、一つ
一つの内容項目をストランド(strand:撚り糸)と呼び、保健体育においては4つのス
トランドとそれぞれの到達目標(achievement objectives)が以下のように示されてい
る。
【個人の健康及び身体的発達】
児童生徒は個人のウェルビーイング及び身体的発達を維持及び向上するために必要と
する知識、理解、技能及び態度を深める。
【運動概念と運動技能】
児童生徒は運動技能、運動についての知識及び理解並びに身体活動に対する積極的態
度を養う。
【他者との関係】
児童生徒は児童生徒間の交流及び対人関係を高める理解、技能及び態度を養う。
【健康的な地域と環境】
児童生徒は責任ある批判的な行動をとることによって健康的な地域と環境に貢献する。
(4) ニュージーランドのスポーツ
ニュージーランドでスポーツを所管する中央行政機関は文化・遺産省(Ministry for
Culture and Heritage)であり、スポーツ・レクリエーション担当大臣も置かれている。
現在はジョナサン・コールマン(Jonathan Coleman)保健大臣がスポーツ・レクリエー
ション担当大臣を兼任している。ニュージーランドの国全体のスポーツ行政を実際に担
っているのは「スポーツ・レクリエーション法(2002 年)」に基づき設立された政府認
可法人(crown entity)の「スポーツ・ニュージーランド(Sport New Zealand)」であ
る。スポーツ・ニュージーランドは国民の健康増進やスポーツ機会の提供に資するスポ
ーツ振興策を展開するとともにその内部機関であるHPSNZ(High Performance Sport
New Zealand)が国際競技力の向上を図っている。なお、地域スポーツの振興については
公益信託団体(Charitable Trust)である全国 17 カ所の「地域スポーツトラスト(Regional
Sports Trust)」が主として担っており、スポーツ・ニュージーランドや地域トラストな
どからの補助金をもとに活動している。
「ニュージーランドの青少年身体活動に関する通信簿(The New Zealand Activity
-9-
Report Card for Children and Youth)」(2014 年)によると、ニュージーランドの子
供たち(5~19 才)の「総合的な身体活動」の評価は“B”であった。また、「国際
ラグビーボード(International Rugby Board)」の世界ランキング(2014 年8月)は
“1位”であり、ラグビー・ワールドカップにおいて過去2度優勝(1987 年、2011
年)している。
(主要参考文献・資料)
・青木麻衣子・佐藤博志編著(2014) 『新版 オーストラリア・ニュージーランドの教
育』 東信堂
・青柳まちこ編著(2008) 『ニュージーランドを知るための 63 章』 明石書店
・池本健一(1998) 『ニュージーランド A to Z』 丸善
・石出法太・石出みどり(2009) 『これならわかるオーストラリア・ニュージーランド
の歴史 Q&A』 大月書店
・石附実・笹森健編(2001) 『オーストラリア・ニュージーランドの教育』 東信堂
・日本ニュージーランド学会・東北公益文科大学ニュージーランド研究所編(2012)『「小
さな大国」ニュージーランドが教えるもの』 論創社
・大友信彦(2011) 『オールブラックスが強い理由』 東邦出版
・朝日新聞 2012 年 10 月 10 日・11 日朝刊「NZの教育事情(上・下)
」
・外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nz/)
・ニュージーランド統計局ウェブサイト
「New Zealand in Profile 2014」
(http://www.stats.govt.nz/browse_for_stats/snapshots-of-nz/nz-in-profile-2014.aspx)
2
日本国内における派遣テーマに関する課題
(1) 体力・運動能力の低下
体力は、人間のあらゆる活動の源であり、健康な生活を営む上でも、また物事に取り
組む意欲や気力といった精神面の充実にも深く関わっており、人間の健全な発達・成長を
支え、より豊かで充実した生活を送る上で大変重要なものである。こうしたことから、
幼児期から活発な身体活動を行うことは、成長・発達に必要な体力を高めることはもとよ
り、病気から身体を守り、より健康な生活を送ることや運動・スポーツに親しむ身体的能
力の基礎を養うことにもつながる。
ところが近年、外遊びやスポーツの重要性の軽視などの国民の意識の問題、都市化・
生活の利便化等の生活環境の変化、睡眠や食生活等の生活習慣の乱れといった様々な要
因が絡み合い、結果として子供たちが体を動かす機会が減少し、体力や運動能力の低下
といった課題が生じている。
文部科学省の平成 25 年度体力・運動能力調査報告書には、「児童生徒の体力・運動能
力は、いくつかの種目や一部の年齢で横ばいまたは緩やかな向上傾向が認められている
が、依然として多くのテスト種目では、体力水準が高かった昭和 60 年頃と比較すると、
きわめて低い水準のまま推移している」とある。
具体的に現在の児童生徒とその親の世代である 30 年前との調査結果を比較すると、ほ
- 10 -
とんどの項目で児童生徒の世代が親の世代を下回っているが、身長、体重などの体格に
ついては、親の世代を上回っている状況がみられる。また、最近では、
「靴のひもを結べ
ない」、「スキップができない」、「転倒した際、とっさに手が出ない」、「リズムに合わせ
て身体を動かせない」など、自分の身体を操作する能力の低下が指摘されているところ
である。
これらの状況は、身体活動量が十分確保されないまま、かつ、動きの習得が未熟なま
ま成長してきているということが背景となっていることが推察される。このことは、い
わゆる「二極化傾向」にも関わるが、地域のスポーツクラブや部活動で運動・スポーツ
をしている子、あるいは、1日の運動時間が長い、または、運動頻度の高い子は、新体
力テストの合計点が高く、一方、そうでない子は低いと示された前述の報告書からも十
分理解できることである。
このような子供の身体活動量の低下という課題は諸外国でも見られ、イギリス、カナ
ダでは 2011 年に、オーストラリアでは 2004 年に、「毎日 60 分以上の中強度以上の身体
活動を行う」という身体活動ガイドラインが示された。
日本でも平成 24 年3月に幼児期運動指針(文部科学省)で「幼児は様々な遊びを中心
に、毎日、合計 60 分以上、楽しく体を動かす」という指針が示されたところである。ま
た、学習指導要領の体育・保健体育には、体力の向上を重視し、
「体つくり運動」の一層
の充実を図ることと示されている。また、第1章総則第1教育課程編成の一般方針には、
学校における体育・健康に関する指導について、学校の教育活動全体を通じて適切に行
うものとするとある。さらに現在、体育の授業はもちろん、「時間・空間・仲間」(いわ
ゆる三間)を確保した体育的活動や地域のスポーツクラブ等と連携した取組をするなど、
各校種それぞれが様々な工夫に努めているところである。しかし、先に述べたとおり 30
年前の水準にまで体力・運動能力を向上させるまでには至っていない。
一方、今回の派遣研修国ニュージーランドは、旧 SPARC(Sport & Recreation New
Zealand:現スポーツ・ニュージーランド)の戦略プランにより、「学校に通う子供たち
の 80%が、少なくとも週に3時間はスポーツ・レクリエーション活動に参加する。」
「よ
り多くの高校卒業後の若者がスポーツ・レクリエーション活動にとどまる。」ということ
を 2015 年までの到達目標として掲げている。実際、『青少年身体活動に関する通信簿』
の指標によると、総合的な身体活動において「B」という高い評価を得ている。同時に、
ラグビーの強豪国であり、さらに、自転車競技、ボート、セーリング、水泳、トライア
スロンなどを重点強化種目に指定するなど、自国の特徴を最大限に生かした政策により
トップアスリートの競技力向上にも取り組んでいる。
児童生徒の体力の低下は、将来的に日本の国民全体の体力低下につながり、生活習慣
病の増加やストレスに対する抵抗力の低下などを引き起こすことが懸念され、日本の社
会全体の活力が失われるという事態に発展しかねない。
したがって、今後ますます、学校独自の取組を充実させることはもとより、保護者
が、子供の体力の重要性について正しい認識を持つように家庭への啓発に努めたり、子
供を惹きつけるスポーツ環境の充実を図るために学校と地域の連携をより強めたりする
- 11 -
ことなどが望まれる。
(参考・引用文献)
・「平成 26 年度体力・運動能力調査結果について:文部科学省」
・「子供の体力向上のための総合的な方策について(答申:平成 14 年 9 月 30 日 中央教
育審議会)
・「子供の体力向上ホームページ:公益財団法人日本リクリエーション協会」
・
「教育課題研修指導者海外派遣プログラム(体力・運動能力の向上)」事前研修会資料:
東京成徳大学教授 出雲輝彦)
(2) 運動経験の二極化
現在、インターネットや携帯電話(スマートフォン)、ゲーム等が子供たちの日常生活
の中で大きく時間を占めている。中学生を対象とした調査でも、携帯電話(スマートフ
ォン)を持っていると答えた生徒は全体の 76.5%であった。テレビゲーム(携帯式ゲー
ム含む)に関しても、1日平均1時間以上使用している割合は全体の 81.2%と非常に多
い。(参考:平成 26 年度「全国学力・学習状況調査」検証シート)
我々が幼少期であった頃、携帯電話は今のように普及しておらず、ゲーム機も多くな
かった。遊びといえば、外でかけっこやボール遊びなどをして体を動かすことが大半だ
った。それに比べると、現在は外で体を動かして遊ぶ子供の比率が少ない。一方、部活
動や外での習い事に日々取り組む子供は少なくない。このような背景が「運動の二極化」
という問題を大きくしていると考えられる。
子供たちの体力・運動能力の現状について、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」
を基に考えてみたい。
まず、1週間の総運動時間の分布を 60 分単位に区分して、小・中学校別、男女別に示
されたものが図2である。
図2
1週間の総運動時間の分布(平成 26 年度)
- 12 -
中学校においては、男女とも、運動やスポーツの実施時間が1週間に 60 分未満の生徒
の割合が最も多く、男子では 6.9%、女子では全体の3分の1に近い 21.8%が1日に平均
して 10 分足らずしか体を動かしていないという実態が示されている。そして1週間の総
運動時間が 300 分前後を底としたU字を描き、総運動時間数が 900 分前後を頂点とした
分布が見られることから、運動時間の二極化を読み取ることができる。
この集団を 420 分(1日平均で 60 分)を境に2群に分けて、各群の体力合計点の分布
を表したのが図3である。中学生は、男女とも、正規分布した二つの山が見られ、平均
値において差が見られることから、積極的に運動をしている子供とそうでない子供の体
力においても二極化している現状が認められる。
小学校については、総運動時間数 60 分未満の児童の割合は、図2に示すように、男子
で 6.3%、女子で 13.3%である。420 分(1日平均で 60 分)を境に2群に分けると、図
2に示すように、体力合計点の分布は中学生と同様である。このことから小学生におい
ても、体力の二極化の傾向が認められる。
図3
1週間の総運動時間と体力合計点との関連(平成 26 年度)
このことから、運動時間の少ない子供たちに対する働きかけが、体力向上にとっての
課題であることが分かる。つまり、体育・保健体育の時間以外には週に 60 分未満(平均
すれば1日 10 分以下)しか運動をしていない児童生徒の運動時間を増やすことが、全体
の子供の体力を向上させる重要なポイントであると考えられる。
(参考・引用文献)
- 13 -
・文部科学省「子どもの体力向上のための取組ハンドブック(第2章)」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/201
2/07/18/1321174_05.pdf
(3) 生活環境等の変化と子供たちの身体活動
日本の子供たちを取り巻く環境が、現在の親世代の子供時代の環境に比べると、大き
く変化してきている。経済の発展で生活が便利になったり、生活様式が変化するなど、
子供の生活全体が歩いたり、外で遊んだりするなどの日常的な身体運動が減少する方向
に変化した。さらに、子供が運動不足になった原因として、スポーツや外遊びに不可欠
な要素である時間、空間、仲間の減少が考えられている。子供たちの生活の過ごし方が
変わり、小中学生の休日の過ごし方を見ると、テレビを見たり、テレビゲームをしたり
するなど室内で過ごすことが増加しており、外遊びは減少している。学校外の学習活動
(塾)に追われているなど外遊びやスポーツをする時間がなく忙しい生活をしているよ
うに思える。
また、都市化や自動車の普及に伴い、子供たちの手軽なスポーツや外遊びの場である
空き地や生活道路がなくなっていった。都市公園や学校開放、公共のスポーツ施設は増
加しているものの、子供たちが自由に遊びに使えないという問題点がある。
さらに、少子化が進み、子供の数が減り、近所に遊べる仲間がいないという問題が出
てきた。仲間が少ないので群れることがなくなり、自分たちで外遊びを考え出すことが
なくなり、テレビゲームなどの室内遊びが多くなる。仲間と集団で集うことはあるが、
一人一人が個別にゲームをしているという光景も見られる。
また、日本全体が都市化や核家族化、夜型の生活など国民のライフスタイルの変化が
進んでいる。深夜テレビや 24 時間営業の店舗など人々を夜型に導くものが世の中にあふ
れている。大人のこのような生活に子供が巻き込まれて、子供たちの生活習慣の乱れが
指摘されている。食生活についても、朝食の欠食や脂肪分や糖質のとりすぎなどの問題
も見られる。睡眠や食生活など子供の生活習慣の乱れは、健康・体力のみならず気力や
意欲の減退、集中力の欠如など精神面にも影響を及ぼすといわれている。
こういった子供を取り巻く環境の変化とともに、国民の意識の中で、子供の外遊びや
スポーツの重要性を軽視する傾向が進んできた。その意識の中には、人を知識の量で評
価しがちであり、子供の外遊びやスポーツが、身体や精神を鍛え、思いやりの心や規範
意識を育てるという意識が少なくなってきた。そのことが、子供の学力に意識を向けさ
せ、子供を積極的に外遊びやスポーツをさせなくなり、体を動かすことが減少した理由
であると考えられる。
(参考・引用文献)
・文部科学省「子供の体力の低下の原因」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/attach/1344534.htm
- 14 -
3
調査研究課題の設定理由、事前送付質問事項
(1) ニュージーランドの学校体育の現状と課題
日本では、小・中学校の体育科・保健体育科における指導内容の明確化や発達の段階
を踏まえた指導内容の体系化が図られ、各学校においてはその趣旨を踏まえた充実した
授業づくりが求められている。
しかし一方では、子供の体力・運動能力の低下、習慣的に運動・スポーツをする子供
とほとんど運動・スポーツをしない子供とに二極化している傾向、特に女子中学生に顕
著な傾向があり、これらの課題解決が急務だと言われている。さらには、小・中学校の
連携や小学校の担任間における指導の分断の問題など、指導上の課題も山積している。
このような現状から、1班では、
『ニュージーランドの学校体育の現状と課題』をテー
マに揚げ、ニュージーランドでの学校体育の充実に向けた先進的かつ具体的な取組を視
察することにより、課題解決に向けた情報や知識を取得したいと考えている。そして、
ニュージーランドでの取組と日本の取組を比較・検討し、今後の指導の参考事例とした
い。さらに、現在の日本の学校体育の取組の良さも再確認したい。
(2) ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
日本の子供を取りまくスポーツ環境の課題として、まず、一種目に限定し勝つことを
目的とする活動がスポーツ離れをおこしていることがあげられる。また、スポーツ活動
への参加の二極化も著しい。一方、ニュージーランドの子供たちは、基本的に地域のス
ポーツクラブで活動するといわれており、スポーツ活動への参加率も高いという。そこ
で、ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態を知るべく、各地域における施設・設
備の整備状況や育成プログラム、子供だけではなく親や地域の大人の意識や考え方を調
査してみたい。
(3) ニュージーランドの学校運営制度
小学校では平成 23 年度から、中学校では平成 24 年度から学習指導要領が全面実施と
なり、高等学校では平成 25 年度から年次進行で、新学習指導要領に基づいた指導が行わ
れている。
「生きる力」を育むという理念のもと、体育科では「生涯にわたって運動に親
しむ資質や能力の基礎を育てる」「健康の保持増進」「体力の向上」を重視した取組を進
めているところである。また、学習指導要領解説では、具体的な運動例示が掲載され、
指導する内容がより明確に示されるようになった。しかし、体力の低下や運動の二極化、
偏った運動経験など、まだまだ課題は山積しているのが現状である。
一方、ニュージーランドにおいては、
『ニュージーランドの青少年身体活動に関する通
信簿』の指標による総合的な身体活動の評価は『B』と高く、子供のころから、多岐に
わたって運動に親しんでいるといわれている。また、学校理事会と言われる日本にはな
い制度も取り入れられているようだ。
これらのことを受けて、ニュージーランドの教育の現状や教育制度、教員養成の手法
などを調査したいと考えた。日本が抱えている課題と照らし合わせながら、日本の学校
体育の充実と発展、そして社会体育へとつなげる一助となることを期待しこのテーマを
設定した。
- 15 -
(4) ニュージーランドのスポーツ文化
ニュージーランドは日本と比べて、人口も少なく、オリンピック等で活躍している競
技もそう多くない。しかし、世界的に見ると、
『ニュージーランドの青少年身体活動に関
する通信簿』の指標による総合的な身体活動の評価はBであり、高い評価が得られてい
る。さらに、ラグビーにおいては、
「オールブラックス」が世界一のチームになっている
ことからも、体力・運動・身体能力の高い一面を見ることができる。
そこでニュージーランドの人々の生活にスポーツがどのように根付いているのか、ス
ポーツに対する価値観について調査したいと考えた。とりわけ、学校見学等で子供たち
やニュージーランドの人々の生活習慣や子供の実態を調査したり、「オールブラックス」
の歴史等を学んだりするなかで、ニュージーランドの人々のスポーツに対する取組や根
本的な考え方が明らかになると期待している。また、
「オールブラックス」の歴史や世界
一になっている理由を学ぶことによって、我が国のスポーツに対する取組方の参考に出
来るのではと考えている。この調査によって、我が国のスポーツ文化がさらに、浸透し
発展する一つのきっかけになることを期待している。
(5) 事前送付した機関区分別質問事項
F-1団は、前述の(1)~(4)の調査研究項目に関する情報を効率よく収集する
ために、現地調査前に視察・ヒアリング先機関区分別の質問事項を作成した。そして、
それらを英文に翻訳したものを各関係機関に送付した。
学校(小・中・高校、各学校理事会)
1.貴校の体力・運動能力向上策について
1-1.貴校の体力・運動能力テストの方法とその結果について教えてください。
1-2.授業内での体力・運動能力向上策について教えてください。
1-3.授業外での体力・運動能力向上策について教えてください。
2.保健体育の授業について
2-1.保健体育の授業内容を具体的に教えてください。
2-2.保健体育の授業で重視していることを教えてください。
3.運動意欲の低い児童生徒に対する体育の指導について
3-1.運動への興味・関心を高めるために工夫していることを教えてください。
3-2.運動を好きにさせる体育の授業の指導方法や取組について教えてください。
3-3.女子のスポーツ活動を活発にする方法を教えてください。
4.個人のウェルビーイングと他者との関わりの具体的指導について
4-1.保健体育を通じて、個人のウェルビーイングをどのように実現させようと
していますか?
4-2.保健体育を通じて、他者との関わりをどのように実現させようとしていま
すか?
5.身体活動によるニュージーランドの教育課題の解決について
5-1.貴国の教育課題について教えてください。
5-2.上記のうち身体活動を通じて解決を図ろうとしている教育課題は何ですか。
- 16 -
6.学校理事会について
6-1.貴校の学校理事会の学校への関わり方や運営・活動について教えてくださ
い。
6-2.貴校の学校理事会の保健体育領域への期待や関わり方について教えてくだ
さい。
スポーツ関係機関(スポーツ・ニュージーランド、スポーツ・ウェリントン等)
1.ニュージーランドのスポーツ政策について
1-1.貴国のスポーツ政策について教えてください。
1-2.貴国のスポーツシステム(法律、機関、予算、補助金等)について教えて
ください。
2.子供のスポーツ活動の実態や取組について
2-1.子供のスポーツ実施状況について教えてください。
2-2.子供に対するスポーツプログラムについて教えてください。
2-3.子供と地域スポーツとの関わりについて教えてください。
3.地域スポーツクラブについて
3-1.貴国の地域スポーツクラブの実態について教えてください。
3-2.地域スポーツクラブの運営方法について教えてください。
3-3.地域スポーツクラブの指導者の養成システムや資格について教えてくださ
い。
3-4.地域スポーツクラブと学校の連携について教えてください。
教育省、学校理事会
1.ニュージーランドの教育について
1-1.貴国の教育課題について教えてください。
1-2.貴国の教育制度の概要、特徴、課題などについて教えてください。
1-3.貴国における保健体育の位置づけとカリキュラムについて教えてください。
2.学校理事会について
2-1.学校理事会の役割、機能、運営、課題などについて教えてください。
2-2.学校理事会へのサポート体制について教えてください。
3.教員の資質向上について
3-1.貴国の教員養成制度や資質向上の取組について教えてください。
3-2.上記のうち、特に保健体育の教員の養成及び資質向上について教えてくだ
さい。
スポーツ関係組織・団体(スポーツ・ウェリントン、スポーツクラブ等)
1.ニュージーランド人の生活実態とスポーツについて
1-1.ニュージーランド人の一般的な生活実態について教えてください。
1-2.ニュージーランド人にとってスポーツはどのように位置づけられています
か?
1-3.貴国において生涯スポーツという考えは根づいていますか?
- 17 -
1-4.貴国の子供たちのライフスタイルやスポーツ実施状況について教えてくだ
さい。
2.ニュージーランドのラグビーについて
2-1.貴国のラグビーはどうして世界一なのですか?
2-2.貴国のラグビークラブの運営・活動、練習方法、選手育成方法について教
えてください。
2-3.ラグビー以外で貴国において盛んなスポーツについて教えてください。
4
現地調査結果の概要
(1) 行政、体育・スポーツ関係機関(3か所)
①
教育省(Ministry of Education)
1) 所在地:ウェリントン
(L2 Public Trust Building 117-125 lambton Quay Wellington)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 19 日(水)9:30~11:30
3) 担当者:Steve Benson 氏(Senior Advisor, International Engagement,
International Division)
Francie Beng 氏(Senior Advisor, Senior Seconddary Curriculum
Teaching & Learning Student Achievement Group)
4) 説明等の概要
(ア)ニュージーランドにおける教育、学校等について
ニュージーランドの人口
ヨーロッパ系(パケハ)
67.6%(学生の 54%)
マオリ系(先住民)
アジア系
15.1%(学生の 23%)
9.3%(学生の 10%)
太平洋島嶼国系
7.1%(学生の 10%)
ニュージーランドの学生の数
公立学校
646,836 人(85%)
以前は私立で現在公立学校
私立学校
マオリ語の教育について
87,540 人(11%)
27,952 人(4%)
マオリ語に力を入れており、81~100%マオリ語で授業を受けている児童生
徒は 12,028 人。また、51~80%マオリ語で授業を受けている学生は、5,315 人
いる。(親の意向で決められる)これを実施している学校数は下表のとおりで
ある。
primary school
(小学校)
secondary school(中等学校)
composite school(複合)
- 18 -
62 校
3校
46 校
教育改革(1989 年)による変化
1989 年の教育改革以降、教育省(Ministry of Education)と教育機関評価
局(Education Review Office:ERO)の 2 つ の中央行政機関が教育を担当
している。教育省は学ぶための土台づくり、カリキュラム作成、学校等への補
助金の交付等を担い、EROは教育の質を高めるための取組を主として担って
いる。この改革により教育委員会がなくなり、学校それぞれが独立したものと
なり運営・管理することになった。その他の主要な教育関係機関は以下の通り
である。
New Zealand Qualifications Authority(NZQA)
※学校の科目
Tertiary Education Commission(TEC)
New Zealand Teachers Council(NZTC)
Careers NZ ※就職
Education New Zealand(ENZ)
※教師の登録、質を監督
※留学生関係
ニュージーランドのカリキュラム
英語とマオリ語の2つのカリキュラムがあり、国の基準も2つ。
学力の成果が上がっていない子供のためのカリキュラムに力を入れる。
16 歳から 18 歳のために教育と技術訓練の機会を与えるカリキュラムも作成(就
職や将来のためのコース)
ニュージーランド教育省の目標
Early Learning … 2016 年までに 98%の子供が幼児教育に参加
Literacy & Numeracy … 2016 年末までにすべての児童生徒の 85%が読み書
き算数が国家基準より上に
NCEA Level 2 … 2017 年までに、18 歳の 85%がレベル2に
NZQF Level 4 … 2017 年までに、25 歳~34 歳の 55%は国家基準のレベル4に
ニュージーランドカリキュラムの8つの教科
「英語」「美術」「体育」「語学学習(選択科目)」
「数学と統計」「科学」「社会科学」「技術」
(イ)ニュージーランドにおけるカリキュラムと体育の授業について
○Health and Physical Education(保健体育)は、ニュージーランドカリ
キュラム(教育省によって作成されたもの)によって実施されている。
○保健体育に自然環境を生かした野外活動などの内容が入っているのが特徴
である。
○保健体育の焦点は学生が健全で健康であることであり、また、学生が健康
に関する知識を持つことにより、人だけでなく社会も健全で安全であるこ
とが目指されている。
○学校が保健体育の学習内容を決定する際には、その地域性を踏まえ柔軟な
選択が可能となっている。
○保健体育は1~10 年生で扱う。また 11 年生からは選択制により、学ばな
- 19 -
い児童生徒も出てくる。よって基礎の部分をしっかりと教えるカリキュラ
ムとなっている。
○基礎となる主要な概念は「Hauora」という「マオリの幸福(健康に関する
こと)」についての考え方(自分や友達が健康であること、社会の公平性、
何が自分の身体にいいのかという価値観を作ることなど)である。
○保健体育の4つの要素として、「個人の健康や安全の開発」「運動の概念と
運動技能」「他の人との関係」「健康なコミュニティと環境」があり、これ
に対する指導内容はすべて学校に任されている。
○保健体育には7つの主要学習分野(「メンタルヘルス」「性教育」「食品
と栄養」「ボディケアと物理的な安全」「身体活動」「スポーツ研究」「野
外教育」)がある。
○7つの要素は、小・中学校の保健体育の学習プログラムに含まれている。
(1年生~10 年生まで)
○健康とセクシュアリティ教育のプログラムを実施する際には、地域社会と
協議して行わなければならない。
○教育省は、保健体育の教材の開発や提供、シニア・セカンダリ教育の学習
ガイドの作成、教師の専門的能力を高めるための取組(教師間の連携、
教師のリーダーシップ発揮)などを行っている。
○ラーニングガイドは、オンラインで提供している。
5) 質疑応答の概要
Q:学校にカリキュラムを任せているが、体育の時間数はどのようになっている
か?
A:学校に任されている。ある小学校の例としては、1 日 40 分(毎日)、水泳の
日、アスレチックの日などもある。しかし教師が得意でないと、体育の授業を重
視していない面もある。中等学校では週に 2 時間から 3 時間である。
Q:子供たちの学校以外でのスポーツとの関わりは?
A:地域のクラブ(同好会など)で活動(ラグビー
サッカー
ネットボール
ク
リケットなど)している。
Q:子供たちの放課後の過ごし方は?
A:塾はほとんど行っていない。主にスポーツやアルバイトをしている。
②
スポーツ・ニュージーランド(Sport New Zealand)
1) 所在地:ウェリントン
(Ground Floor AMP Building 86 Customhouse Quay Wellington 6011)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 19 日(水)14:00~16:00
3) 担当者:Jo Colin 氏(Young People Lead, Expertise and Development
Community Sport)
4) 説明等の概要
(ア)スポーツ・ニュージーランドの概要
- 20 -
スポーツ・ニュージーランドは、スポーツ・レクリエーション法(2002 年に
基づき設立された政府認可法人である。ニュージーランドの国全体のスポーツを
担っている。
ビジョンは「すべてのニュージーランド人が、日々のスポーツやレクリエーシ
ョン活動を通じて、喜びや成長を見いだすこと」であり、ミッションとして「ス
ポーツ・レクリエーションにもっと子供たちを参加させる」「スポーツ・レクリ
エーションに参加する人々をもっと増やす」「国際舞台におけるニュージーラン
ド人選手の成功を増やす」の3点を掲げ、政策の調整や予算の配分、すべてのス
ポーツ・レクリエーション団体に対しての助成を行っている。また、障害者スポ
ーツをはじめ、オリンピック種目以外のス
ポーツも業務に含んでいる。現在の体制で
は、高水準スポーツ(High performance
sport)と青少年スポーツに重点が置かれ
ている。
学校のスポーツ・レクリエーション環境
の充実については、教育省(Ministry of
Education)と国民の健康づくりに関係す
る身体活動の振興を所管する保健省(Ministry of Health)などの関係機関と連
携をとりながら業務にあたっている。
(イ)主な取組
「Young people」「Community sport」「Active recreation」「High performance」
「Partner Capability」の5つのカテゴリーに分け、それぞれ重点戦略を立て
取組を行っている。
「Young People's Survey」の結果
※5歳から 18 歳への調査
○「スポーツをしたい」と回答した割合:男子 72.6%、女子 60.3%
○回答している割合の高さは世界一(モザンビークと並んで)であるが、年
齢が進むにつれて低くなる傾向がある。
「なぜスポーツをするのか?」の理由について調査を行った結果
Waitakere Youth Sport
Participation Research 2009
Otago Youth Sport Study 2010
Fun
Friends
Health
Fun
Competition/Winning
Competition/Training
Friends
Health / Fitness
To keep fit
To develop skills
※Otago(白人系)Waitakere(マオリ系)
○子供たちにとっては、
「楽しいから」
「友達と一緒に」がスポーツを行う理
由の上位にある。子供たちが望む環境をつくっていくことが大事。
- 21 -
○スポーツからドロップアウトさせないようにするため、状況を把握し、施
策に反映させている。
キウィスポーツ(Kiwisport)
オーストラリアのオージースポーツを参考に、小学生にあたる子供たちのス
ポーツ振興プログラムとして開発。現在では、5歳~18 歳を対象にプログラム
を展開。支援を必要とする学校やクラブに直接資金を支給している。
運動能力を上げるためだけでなく、子供たちが運動・スポーツを好きになる
ことが重要であり、基礎となる初等教育の中で、きちんとした教育が子供たち
に提供されるために、教師の指導力を向上させることに力を入れている。17 の
地域スポーツ機関と連携している。
過疎地域の子供たちに、どのようにスポーツの機会を提供していくか取り組
んでいる。地方では、資金や手間がかかる。イベントの機会が限られている。
そこで資金援助をし、スポーツの機会を広く与えることができるようにしてい
る。
Sport in Education
スポーツを媒体として人間形成する。児童生徒の学校内外における態度を正
したり不登校をなくしたりする取組。スポーツを通じて、モチベーションを高
めたり、読み書きやアカデミックな部分でも実務的かつ役に立つ、わかるよう
な勉強の仕方を教えていく。また、きちんと説明できる能力(例:サッカーを
コメントする活動)を身につけさせる。
その他
○放課後の時間のうち約 80%を子供たちはスクリーンの前で過ごしている。
このことが体力を低下させる要因になっているのかもしれない。バランス
の取れた生活ができるようにする。
○スポーツ・ニュージーランドの重要な3つの方針
・アンチドーピング
・八百長をさせない
・子供が安心して安全にスポーツに親しめる
5) 質疑応答の概要
Q:大人のスポーツとの関わりについては?
A:ニュージーランドでは、スポーツに対して意識が高く、「スポーツをするも
の」という考え方が強い。サーフィン、ランニング、サイクリング、ラグビー、
フロアボールなどのスポーツに親しんでいる。仕事が終わってからの余暇の時間
を使って、スポーツを楽しんでいるアクティブな大人が多い。
③
ニュージーランド身体教育協会(Physical Education New Zealand:PENZ)
PENZはニュージーランドの体育関係者で構成される全国的な非営利団体で
あり、国の関係機関の諮問機関的位置づけにある。1940 年代から同国の学校体育
を充実させるための助言や体育カリキュラム開発への関与等の活動を行っている。
- 22 -
1) 所在地:マウント・マウンガヌイ(333 Maunganui Road Mt Maunganui)
2) ヒアリング日時:2014 年 11 月 24 日(月)10:00~12:00
※於:ホテル会議室
3) 担当者:Ross Merrett 氏(Chief Executive, PENZ)
Libby Paterson 氏(Subject Advisor, PENZ)
Kirsten Petrie 氏(Senior Lecturer, University of Waikato)
4) 説明等の概要
(ア)小中学校への第一の関係先
(イ)学校への視察・調査
(ウ)教員に対するセミナーを実施(定期・臨時)
(エ)国内にPENZ支所が8~10 ヶ所あり、各支所において教員向けのセミ
ナーを開催するなど体育教師の質の向上を図っている。
(オ)地域スポーツトラスト(スポーツ・ニュージーランド、スポーツ・ウェリ
ントンなど)と連携
(カ)決められた教科書がないため、それに対するアドバイスを行う。
(キ)学校体育では精神衛生、男女教育、食、身体教育などを学んでいる。
(ク)学校では体を動かすことだけでなく、頭を使うことも学ばせている。
体育に関する壁新聞や様々な物を作成し、教室等に掲示している。
(ケ)二人組になり、神経系と身体を連動させ、コーディネーション能力に働き
かけるような数種のエクササイズを実施した。
(コ)指導内容は教師が決める。既に決まっているものを教えるのではなく、子
供を見て、子供が理解するためには、何が必要かを考えて指導内容を決定
する。
5) 質疑応答の概要
Q:ニュージーランドは、カリキュラムに必要なものを教えると示されているが、
その見極めはどのようにするのか?
A1:セミナー等を通して、教師に子供たちの判定の仕方について教える。「バ
ランス」を例にとると、児童生徒が、いくつものレベルのグループから選択でき
る場を設定する。
A2:ニュージーランドのカリキュラムは、細かな内容についての記述はなく、
「こうしたほうがいいよ」という程度のもの。
A3:競争、協同、作戦、戦略などを学ばせる。ただ、体を動かすだけでなく、
アクティブになって欲しいと考えている。
A4:ニュージーランドでは、すべての者が楽しめるものを取り入れている。
A5:小学校では、基礎的な動きができない子がいる。始めからスポーツを取り
入れると、できない子がやらなくなる。それを避けたいと考えている。体を動か
すことを通して、スキルや協力することも学んでほしい。Fun(楽しむこと)だ
けでなく、頑張ることや我慢することも学んでほしい。
- 23 -
Q:身につけさせたいものの判断基準は?
A1:国の基準などはなく、テストはしない。生きていくうえで必要なものを教
え、目標を持たせ、自分にとって何が必要かを考えさせる。例えば、テストのた
めに跳び箱を教えるようなことはしない。
A2:訪問する小学校での実践を見て欲しい。自分でグループを選択し、子供た
ちで活動内容を決めている。特別支援の子も一緒にできることを考えて行ってい
る。当然テストなどしない。
Q:日本の学校では評価をするが、ニュージーランドではしないのか?
A1:評価しない。それは、日本とニュージーランドのシステムの違い。
A2:近年、ニュージーランドでもその声が上がっているが、PENZが頑張っ
て何とかそれを阻止している。
Q:PENZの財源は?
A:45%が政府からの補助金(Sport NZ を通して)。40%が学校から(年会費な
ど)。15%が会議やワークショップにおける参加費。
Q:PENZ Award を取る意味は。
A1:プロとしての名誉
A2:ユニーク、質の良い取組の学校の評価
(2)学校(6か所)
①
リッジウェイ小学校(Ridgway School)
1) 所在地:ウェリントン(Mornington Road, Brooklyn, Wellington)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 20 日(木)14:00~16:00
3) 担当者:Sue Campbell 氏(副校長:Deputy Principal)
4) 説明等の概要
(ア)学校について
・5歳~13 歳までの Primary School。
・市内中心部から車で 10 分位の市街地にある。
・木曜日の午後からスポーツアフタヌーンを行っている。
・Decile(富裕度)…ランク9(10 が一番富裕度が高い)
(イ)体育に関する基本的な考え方
・いろいろなスポーツに触れさせ、スポーツに対する興味・関心を高める。
(ウ)スポーツアフタヌーン参観
スポーツアフタヌーンとは、毎週木曜日の午後から全校児童がグラウンドで
いろいろなスポーツに親しむ時間である。参観したときに行われていたスポーツ
「バトン渡し」、
「クリケット」、
「サッカー」、
「タッチラグビー」の4つであった。
- 24 -
(エ)リッジウェイ小学校の先生方とのディスカッション
ニュージーランドのスポーツの現状として、保護者は、子供たちにいろいろな
スポーツ経験をしてほしいと望んでいる。ニュージーランドの国民性として、ス
ポーツが好きでイベント好きである。親の多くもスポーツクラブに所属しており、
その影響もあって、多くの子供たちがいろいろなスポーツクラブに所属している。
スポーツクラブへの所属費用は、リーズナブルで、親に負担がかからないという
ことであった。
また、子供たちのスポーツへの関心が高いのは、お手本となるスポーツ選手が
いるからということであった。例えば、オールブラックスの選手である。子供た
ちは、オールブラックスの選手にあこがれ、いつか自分もなりたいと思っている
ということであった。
次に授業では、子供たちをスポーツ好きにするために先生方は一緒に活動し、
がんばっていることをほめ、自信をもたせるようにしているということであった。
また、勝つことよりも参加することに意義があることを常に子供たちに語ってい
る。なぜならば、年齢が上がってくると、スポーツをしたくないという子供たち
が増えてくるからである。例えば、水泳ができないと、スポーツをしたくない子
供が増えてくる。よって、年齢にふさわしいスポーツや目新しいスポーツをたく
さん子供たちに経験させて、楽しませるようにしているということであった。
体育で子供たちに取り組ませているスポーツは、
「ハンドボール」
「ネットボー
ル」「ソフトボール」「アスレチック」「クロスカントリー」などである。また、
週に2時間 30 分程度体育の時間を行っている。体育の時間は1年間を4期に分
けて実施している。第1期「水泳」、第2期「ボールゲーム」、第3期「クロスカ
ントリー」、第4期は「陸上競技」を行っているということであった。
体育の時間の評価については、目標を立てて、評価をしている。例えば、クロ
スカントリーでは、上位トップ4に目をつけ、能力があるかどうかを判断する。
トップ4の子供たちは、インターゾーン(地域の競技会)に出場させるというこ
とであった。基本的な考え方として、みんなが参加してスポーツに取り組むこと
が大事である。また、技能の向上よりも、運動は楽しいものだと感じられるよう
にすることが大事だと考えて指導に当たっている。よって、運動技能が下位の子
供たちへも、技能の向上よりもスポーツを楽しんでいればいいということであっ
た。
最後に、体育の授業力を高めるために、スポーツコーディネーター同士で集ま
って、学期に1回話し合いを行っているということであった。スポーツコーディ
ネーターには、特に資格はなく、保護者と意見交換をしたり、学校同士の連携を
図ったり、地域との連携を図ったりしているそうである。地域との連携では、ス
ポーツウェリントンやクリケットクラブなどと連絡を取り合い、外部の専門家に
学校に来てもらってスポーツの指導を行ってもらっているということであった。
- 25 -
②
マウンガタプ小学校(Maungatapu Primary School)
マウンガタプ小学校は、PENZ(ニュージーランド身体教育協会)がユニークで
質の良い体育科教育を行っている学校に贈る「PENZ Award」を 2013 年に受賞した小学
校である。この小学校では、デュガン先生を中心にPENZと連携をとりながら、E
BC(みんなで一緒にやっていこう)というプログラムに取り組んでいる。子供たち
が自ら考え、意見を出し合いながらルールや練習内容を決めて、一般的なものからマ
オリ族の伝統的なものまで、様々なスポーツを楽しんでいた。このプログラムで最も
重視していたことは、スポーツを通して、子供たちがお互いの違いを認め合い、一人
一人の存在を大切にすることであった。
1) 所在地:タウランガ(164 Maungatapu Road, Maungatapu-Tauranga, Tauranga)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 24 日(月)14:00~16:00
3) 担当者:Ross Merrett 氏(Chief Executive, PENZ)
Deirdre Duggan 氏(同校の senior クラスの担任の先生)
4) 説明等の概要
(ア)ディアドリー・デュガン先生のプログラムについての説明
EBC(Everybody Counts)というプログラムをPENZで履修した。子供
たちがみんなで一緒にやっていくことの大切さを学んでいる。
(イ)子供たちのEBCについての発表
7名の児童が、EBCというプログラムを通じて自分が感じたこと考えたこと
を自分の言葉で発表してくれた。
(ウ)ネットボールを簡単にしたゲームの紹介と体験
SCOOP BALL
SHOOT AND SCORE
○Reflection(振り返り)
・うまくいったこと
・ゲームをよりよいものにするために変える必要のあること
・ネットボールと同じところ、違うところ
上記の3つのことについてクラスの児童が意見を出し合い、学習のまとめを行
っていた。
5) 質疑応答の概要
Q:ニュージーランドの小学校では男性の先生が少ないと聞いたが、どうか?
A:確かに少ない。本校では、20 人中4名である。児童の家庭では、母子家庭の
- 26 -
ところが多く、男性のモデルになる人が必要である。また、男性であれ女性であ
れ、子供たちにとって良い先生であることが大切である。男性の中には小学校の
先生になりたいなどと言うと、性的な問題があるのではないかと勘違いされるこ
とを恐れる人もおり、問題になっている。また、給料にも魅力を感じられない。
Q:教育委員会がなくなり、教育改革が行われたが、その後の学校教育はどのよ
うに変化したのか?
A:学校理事会ができてから先生の意識が変わった。また、中央主義的だった教
育が学校ごとの特色を生かせるようになった。
Q:学校体育とスポーツクラブとの違いは何か?
A:学校体育は全員参加で子供に応じて用具を準備したり、ルールを工夫したり
して行っている。一方、スポーツクラブでは、一部が参加し、子供の成長段階に
応じていないこともある。
③
ナイトン・ノーマルスクール(Knighton Normal School)
1) 所在地:ハミルトン(Knighton Road, Hillcrest, Hamilton)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 25 日(火)9:30~12:00
3) 担当者:Jeff Freeman 氏(校長:Principal)
Joel Devcich 氏(教諭:ICT担当)
4) 説明等の概要
(ア)学校について
40 の人種の子供たちが集まる児童数 630 人の小学校(1~6学年)である。
ノーマルスクールとは国内の大学教育学部と連携して教育実習生を受け入れる
学校(機関)で、全国で 27 校ある。同校の富裕度(ディーサイル:School decile
ratings)はレベル5である。
(イ)健康・身体教育について
※ジョエル先生
○自己紹介:6年目、5・6年担任、ICT担当、身体教育研究担当
○健康教育(health education) → 仲良くする、身を守る、栄養を取る
○身体教育(physical education)
(以前)時間割の中で決まった形でスポーツ種目を教える(仕組み・ルール)
(変革)教室から出てゲームをする。スポーツを教えることでフィットネス
の向上、校外・地域でのイベント・大会に参加できる。
- 27 -
(ウ)ジョエル先生の研究について
○体育科の課題:
・健康について
→
見た目でしかとらえられていない
・体育について
→
単にスポーツをするだけ
○よりよい体育科授業とは:自己の内面的な Wellbeing の重視
・健康・・・相互理解・受容・尊敬
・体育・・・元気に動き回る
・子供が何に興味を持ち、何を求めているかを探る。
・違い・個性を認めることが重要
・3つの必要な力
考える力(thinking skill)
人間関係の力(people skill)
体を動かす力(moving skill)
・基盤となる能力 ⇒ 「バランス」
・個の関心に合わせ、学ぶ力をつけるプログラムを開発する
※二極化・運動離れを起こさせないために
・多種多様な運動を経験させるため、どれかに興味を持つ
・自分のペースで行うことで他人の目を気にしない
・その子の能力に合わせる ⇒ うまい子はもっと伸ばせる機会を
・学校体育(スポーツ)→
生涯スポーツの視点
(エ)授業の参観
○水泳学習
事故から身を守るための泳ぎ方指導 ⇒ 四泳法指導は行わない
○バランス学習 ひざを曲げた姿勢を練習後、多様なバランス種目を楽しむ
○ゲーム学習 コミュニケーション・チームワークを学ぶ
○スキル練習(クリケット式投法、ひざをついた受け方)
○クリケットを工夫したゲームを楽しむ
- 28 -
5) 質疑応答の概要
(ア)モーニング・ティー(アーリーランチ)ついて
変えたくても変えられない現状がある。家庭の問題で親が子の健康に興味がな
ためスナック菓子の持参も多い。
(イ)個に合わせた授業について
能力別グループやチームを自分で選択している。
(ウ)このプロジェクトの課題は
現状には満足している。活動の選択の余地がもっと広がればいい。
(エ)教育制度について
現システムのほうがいい。校長はビジネスマネジャーである。
(オ)運動嫌いをなくすには
様々な運動を経験させる。自分のペースで行い、ライフスキルにつなげる。
(カ)師の指導は
校長が巡回して業績評価する。教師の資質向上の資金がある。研修・伝達講習
をする。資質の向上が見られないなら契約を解除できる。
(キ)体力測定・評価、メジャーの是非について
昔は行っていた。競技会や運動会で競うことはある。小学校では必要ないと考
える。等級づけや劣等感を持つことにつながってしまう。どれだけ力をつけたか
かチェックはする。
(ク)体育の指導性について
基本の技やコツについて、明確にわかるまで教えることも必要である。
④
ファーガソン中学校(Fergusson Intermediate School)
1) 所在地:アッパー・ハット(Hikurangi Street, Trentham, Upper Hutt)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 21 日(金)9:30~12:30
3) 担当者:Paul Patterson 氏(校長:Principal)
Nathan Russell 氏(副校長:Deputy Principal)
4) 説明等の概要
(ア)1966 年にバーナード・ファーガソン総督(当時)によって開設された7・
8学年(11~13 才)の生徒(13 クラス、405 人)が通っている中学校(中間
学校:Intermediate School)である。13 人のクラス担任教師、4人の専門技術
教師(家庭、金木工、パフォーマンスアート、美術)、特別支援教師、司書、カ
ウンセラー他のスタッフがいる。富裕度6の学校である。
(イ)すべての子供たちに高い期待を(High expectations for all)」という
スローガンのもと「最良の市民への成長」「生徒の達成」「生徒の関与」の3つ
にフォーカスされる教育を実践している。
(ウ)保健・身体教育カリキュラム
2014 年度の保健科(2014 Health Unit)の柱は「スポーツ科学(Sports Science)」
生き方教育(Life Education)
」
「前向きな思春期(Positive Puberty)
」の3つである。
- 29 -
(エ)体育とフィットネス
体育の授業は週3回あり、学期
(1~4term)ごとにテーマが設定されている。
種目については、陸上競技(Athletics)、スモールボール種目(Small Ball
Skills)、ラージボール種目(Large Ball Skills)、打撃種目(Striking)、判
断力ゲーム(Game Sense:TGfU のようなもの)フィットネス、クロスカントリ
ー、キャンプ(Education Outside the Classroom:EOTC)が設定されている。
なお、フィットネスについてはランニング、サーキット、フィットネスゲーム、
ドリル、スキップテスト(ビープテスト)などの中から毎日行われている。
(オ)校内外スポーツとして、生徒たちは木曜日の午後(Thursday afternoons)
にクラス対抗のスポーツ大会などを行う機会があったり、外部指導者によるスポ
ーツ指導を受けられるファーギー・スポーツ(Fergy Sport)というプログラム
にも参加することができる。後者の経費は Kiwisport の援助資金で賄われている。
(カ)学校の方針として、すべての生徒に平等に教育を受けされるということ
がある。53 の人種・文化の家庭から生徒が集まっているので社会・経済的な格
差も当然あるので、様々な教育プログラム(キャンプなど)に参加するのにお金
を出せない家庭もある。したがって、校長の特別資金を活用して全員が参加でき
るようにすることもある。
5) 質疑応答の概要
Q:教育委員会がないことに注目しているが、個々の学校で改革を行う場合、イ
ニシアティブを握っているのは学校理事会(BOT)と校長のどちらなのですか?
A:会社で言えば、BOTは役員会で校長は社長(CEO)である。BOTで教
員の雇用、学校の方針等を決めるが、それらを現場で実践するのは校長の責任で
ある。したがって、校長がイニシアティブをもつことになる。しかし、保護者の
代表であるBOTや地域と良好な関係をもたなければ上手くいかないので、それ
を心がけている。
Q:日本では不登校の問題もある。ニュージーランドの不登校の現状は?
A:中間学校では少ないが、高校に進むと増えてくる。中間学校では1人の先生
が1日中生徒を見ている。しかし、高校になると科目ごとに先生が変わり、精神
的に不安定な時期の子供たちがコミュニケーション上対応できない場合がある。
それが不登校につながっていることもある。こういったことから、私見であるが、
中間学校の期間を3~4年間にした方が良いと考えている。
Q:小学校の体育の授業との連携はあるのか?
A:ニュージーランド・カリキュラムがあるので、その中でのつながりはある。
Q:体育に関する教員のスキルアップについてはどうなっているのか?
A:外部から講師を招き、2時間程度のワークショップを行うこともある。
Q:午後3時に学校が終わってから子供たちはどのように過ごしているのか?
A:地域にスポーツクラブがあるので、そこに参加する子供もいれば、すぐに家
に帰る子供もいる。希望があれば1時間無料でホームワーククラスに参加するこ
- 30 -
とができる。
⑤
オークランド・グラマースクール(Auckland Grammar School)
1) 所在地:オークランド(Mountain Road, Epsom, Auckland)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 26 日(水)9:30~12:00
3) 担当者:Mark Vella 氏(副校長:Deputy Headmaster)
Grant Hansen 氏(Director of Sport)
4) 説明等の概要
(ア)学校について
1869 年創立、ニュージーランドで最も由緒正しい伝統と歴史のある男子校で
ある。生徒数 2,500 名(Year9~13、13~18 歳)、留学生 100 名。学業はもちろ
ん、スポーツ・芸術・文化においても優秀な人材を育成している。文武両道を目
指している。施設も大変充実している。
(イ)ニュージーランドの教育システムについて
学校教育、教育における目標、カリキュラムとその根本的方針、主たる学習領
域、評価、学校独自のカリキュラム、教育全体に対する考え方や目標など
(ウ)体育の位置づけ
カリキュラムに沿ったスポーツや文化的活動は、学校生活における必要不可欠
なものである。
(エ)保健体育について
各年次(Year9-13)における体育について、スポーツの成果について
5) 質疑応答の概要
Q:どのような評価をつけるか?
A:様々な適正テストを実施し、フィットネス・技能・スタミナ・態度において
A~Eの評価をする。(コメントを書く)
Q:体育の授業で特にどのようなことに焦点を当てるのか?
A:主たる目的は、授業における積極的な関わり(アクティビティ・様々なスポ
ーツ)を通して動く能力高め、技術を習得することである。
Q:生徒の興味を引くための教育法はどのようなものか?
A:生徒たちが活動的に楽しむことができるよう様々な種目を紹介する。
Q:コミュニケーション能力の育成をどのようにしているか?
A:コミュニケーションが取れるとチームが強くなることを理解させ、コミュニ
ケーションを取ることを奨励する。
Q:学校目標は?
A:全てにおいてバランスの取れた生徒の育成を目指しており、スポーツ及び体
育教育はその大きな役割を果たしている。91%の生徒が学校のためにスポーツを
行っている。
- 31 -
⑥
リンフィールド・カレッジ(Lynfield College)
1) 所在地:オークランド(191 White Swan Road, Mt Roskill 1041, Auckland)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 27 日(木)10:00~12:30
3) 担当者:Russell Christie 氏、Greg Burne 氏、Kathryn Wells 氏
4) 説明等の概要
○授業(ソフトボールトーナメント)見学
○取り組み内容の説明
○体育・保健担当者の紹介
○各学年の授業時数と指導内容
○9年生:
体育(3h)スポーツに対する考え方、スポーツそのものを教えるのでは
ない
保健(1h)自分を知る、well-being、仲間づくり
○10・11 年生:
体育(3h)9年生時の復習、未知の種目(レスリングなど)
保健(2h)ミスバスターズ(薬・アルコール)、性教育
○12・13 年生:選択科目として実施
※本年度は 12 年生も 13 年生も 100 人程度が選択
○キャンプの存在が重要、biomechanism、fitness、olympic など
○Junior PE program で「2013 PENZ Award」を受賞
※スポーツをさせるだけの前プログラムからスポーツとは何かを教える
プログラムに変更したことが受賞の対象となる
5) 質疑応答の概要
Q:小学校との連携はあるか?
A:13 年生が sports study で行く。先生との交流はない。
Q:放課後の運動習慣はどうか?
A:30 種の競技を 80 のチームにわかれて実施。指導は教師と親。
Q:保健体育が選択制でどのように意欲をもたせているのか?
A:秘策はキャンプの存在である。
Q:前プログラムと現プログラムで授業時数は変わったか?
A:時数は変わらない。
Q:座学で理論の学習をするのか?
A:座学ではしない。活動の中に理論ではなくセオリーを指導する。
(3)地域スポーツ関係組織(3所)
①
スポーツ・ウェリントン(Sport Wellington)
1) 所在地:オークランド(Level 1, 223 Thorndon Quay, Thorndon, Wellington)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 20 日(木)9:30~11:30
3) 担当者:Phil Gibbons 氏(Chief Executive)
- 32 -
Georgina Duindam 氏(Young Person's Advisor)
Henry Iona 氏(Active Families Advisor)他
4) 説明等の概要
(ア)スポーツ・ウェリントンの概要について
○ビジョン:生涯にわたってスポーツに親しめ
るようにしたい。
○5~17 歳の若い人をターゲットにスポーツイ
ベントの運営をしていく。
○600 人(20 校)の子供たちに 20 種類以上のス
ポーツを試す機会を作る。
○スポーツに興味のない子を集めて個に応じたプログラムを紹介していく。
○メダリストなどトップアスリートの話を聞く機会を持つ。
(イ)子供たちが活発に運動するために
~健全なニュージーランド人の育成に向けて~
○現状:2~14 歳
肥満傾向
33%
15 歳以上
肥満傾向
60%
横ばい傾向
○6ヶ月~12 ヶ月間かけて個々や家庭訪問で調べる。
※イベントの企画と実施
→ 居住地の近くで好きなスポーツを手頃で安くできる方法を紹介する。
→ 目標とするゴールを示してがんばれるようにする。
→ 1人で参加しづらい場合はグループで参加できるようにする。
(ウ)リーダーシッププログラムについて
○9~10 年生を対象に4週間の運動プログラムの開発と
実施(各学校に出向く)
○伝統的な『マオリゲーム』の指導
○ルールや歴史的背景など → リーダーシップの育成
(エ)地域のスポーツクラブについて
○能力・技能の向上に力を入れない。→ 楽しむための活動
○伝統的なスポーツ以外にも目がいくような機会を作る。
○14 の競技…幅広い年齢層の人が取り組みやすい運動を紹介
○課題:リーダーシップ・指導者・ボランティア・コーチをどうするか
○コーチの開発
選手の育成と同様、コーチの質も向上させていくプログラムの作成
(親や上級生からスタートし、徐々に質の高いコーチを指名していく)
(オ)小・中学校の取り組みについて
○各学校の目的や課題を聞き、最終目標を決める。
○子供たちには、まず運動の楽しさを味わわせる。
○学校や地域によって様々な格差はあるがその場にあるものを使う工夫をす
る。
- 33 -
○リーダーシップを育てる。→ そのための教師を育てることが必要
※PALs(Physical Activity Leaders)システムを広げる。
(学校のニーズに合わせて新しいゲームや遊びを紹介していくプログラム)
○基本的な動きの育成や経験をできるように各学校の教師を指導する。
※スポーツの意義や理解を深めるための研究会を実施
(カ)スタジアム・スポーツフェスティバルについて
○いろいろなスポーツを経験してもらうための企画
○5~6年生を対象に 20 校(600 人)が参加
○Westpac Stadium(ニュージーランドの代表的な競技場)で実施
○5つのスポーツをする機会を作る(基本的な動きを重要視)
。
→他の学校と交流することで横のつながりを広げる。
(キ)Kiwisport について
○青少年に対して国から与えられている唯一のプログラム
○資金の分配は子供の頭数によって決められる。
○5~18 歳までのプログラムを作成して国に申請をして資金をもらう。
5) 質疑応答の概要
Q:ニュージーランドで課題と言われていた肥満傾向について教えてください。
A:現状は横ばい傾向、活動(運動)はしているが、体重が減っていない。食生
活の問題もある。
Q:食生活の問題で正しい食事指導とは、どんなことをしているのですか?
A:テイクアウェイ(持ち帰り)の食べ物は、太る食べ物だという意識を持たせ
る。朝食(糖分が少ない)を毎日取るように啓発する。昼食のランチボックスに
自分で作った物を入れ、加工食を減らす努力をする。水と牛乳を飲む習慣を作る。
野菜と果物を勧める。
Q:日本では、スポーツイベントを開催しても人数が集まらないことが多い。ニ
ュージーランドで人数を集める工夫はどんなことをされているのですか?
A:イベントが好きという国民性がある。地域のニーズにあったイベントを一番
に考えている。主催者側がしたいことをするわけではない。医者から社会的貢献
に参加したらどうかと紹介してもらう。
② スポーツ・ワイカト(Sport Waikato)
1) 所在地:ハミルトン
(Brian Perry Sports House, Wintec Rotokauri Campus, Akoranga Road, Hamil
ton 3200)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 25 日(火)13:30~15:30
3) 担当者:Heremaia Samson 氏(Kaiwhakahaere o Tainui)
Kasha Latimer 氏(Energize Development Manager)
- 34 -
4) 説明等の概要
(ア)組織の概要
ハミルトン市区の一つであるワイカト地域に
ある 1986 年設立のスポーツ機関(NPO法人)
の一つである。地域の人々、プログラム、支える
人・協力者が一つになって、個人、グループ、団
体が連携し「みんなの生活がよくなるように努力
しましょう」と活動している団体である。また、スポーツの推進を通じ、地域の
ために健康的なライフスタイルを開発することを目的としている。
(イ)スポーツ・ワイカトの取組について
ワイカト地域は5部族から成り立っており、タヌイ民族の拠点となっている。
そのため、みんな(個人、グループ、地域)がよりよい生活が送れるようコミュ
ニティプログラムを作成して取り組んでいる。
具体的には Kiwisport がある。主な内容としては、5 歳 か ら の 教 育( 体 育 )
Kiwisport(外に出て)を実践している。これは、学校の子供たちが低コストの
中で地元のスポーツに参加する機会を与えている取組である。他には、Project
Energize とよばれ、子供の健康的な食生活と地域の全体的な健康を改善するた
めに、小学校及び地域の学校で指導を進めている。現在ハミルトン地域には、4
1 校の学校があり、そのほとんどがスポーツ・ワイカトの取組に参加している。
(ウ)学校や家庭、地域との連携について
ニュージーランドでは糖尿病、肥満、心臓病が大きな問題となっている。「子
供も大人も健康な生活を送り、アクティブな生活を送れるように」という願いか
ら、地域の医療機関と連携して「緑の処方箋」というプログラムを作成している。
これは、健康のためにふさわしい運動が何なのかを考え、医療機関からカルテが
届けられ、スポーツワイカトが個人の処方箋を作成する。内容は、1日最低 30
分は体を動かすことや、少ししんどいことを楽しんで取り組むよう推進している
プログラムである。2004 年から開始した健康向上のための取組では、63 の学校
に 62 のプログラムを提供し、2年間のプログラムで、「授業では1日 20 分体を
動かす」「自宅では 60 分体を動かし健康な食生活を送ろう」と指導している。これ
らの取組を行うにあたっては、教育省、文化・遺産省、保健省の協力を受けるこ
とができ、現在はワイカト地域全体に広まっている。学校との連携においては、
全ての学校に、体育教員、スポーツコーディネーターが配置されており、課外の
活動(競技会やレクリェーション)をアレンジしている。体育が学校に位置付い
ているのはとても重要なことであるが、学校だけでは無理なところもあるため、
子供たちと地域のスポーツクラブをつなぐ役割もスポーツ・ワイカトは担ってい
る。
- 35 -
③
ポンソンビー・ラグビークラブ(Ponsonby District Rugby Football Club)
1) 所在地:オークランド
(1 Stadium Rd Western Springs Auckland City Auckland 1022)
2) 訪問日時:2014 年 11 月 25 日(火)14:30~16:00
3) 担当者:Bryan Williams 氏(President/Director of Rugby)
※ブライアン・ウイリアムス氏:元オールブラックス、ポンソンビー・
ラグビークラブ会長、ラグビー統括責任者
Sandra Ioane 氏
※サンドラ・イオアネ氏:副事務局長、ジュニア管理者
Susan Thomas 氏(Secretary/Manager)
4) 説明等の概要
(ア)はじめに
ニュージーランドにおいて、ラグビーは国技であり、子供はボールを抱えてシ
ューズを履いて生まれてくる、一家に一つボールがある、と言われるほど国民か
ら愛されているスポーツである。
英国では上流階級のスポーツであるが、ニュージーランドでは、様々な人々が
一緒に行うゲームとして栄えてきた。ニュージーランドのラグビーは以下のよう
なピラミッド構造をしている。
まず、ニュージーランドでは、各地域にラグビー協会がある(例:オークラン
ドラグビー協会)。そこには「クラブチーム」がある。このクラブチームは、地
区ごとにいくつかあり、子供から大人まで、様々な年齢のラグビープレイヤーが
所属している。そして、その上に「NPC(ニュージーランド州代表選手権:
National Provincial Championship)」がある。これは、ニュージーランドの地域
ごとの対抗戦で、クラブチームの中から選手が選ばれ、リーグ戦を行っている。
さらに、その上が「スーパーラグビー(SUPER RUGBY)」。NPCで活躍した
プレイヤーが選ばれ、ニュージーランドであれば、ブルーズ、チーフス、ハリケ
ーンズ、クルセーダーズ、ハイランダーズの5チームが編成されている。
最後の頂点がオールブラックス。言わずと知れた世界一のニュージーランド代
表である。ここでは、オークランド・ラグビー協会に属するポンソンビ-・ラグ
ビークラブを視察した際の報告をする。
(イ)クラブの概要について
ポンソンビー・ラグビークラブは、オークランドに拠点を置くラグビーユニオ
ンクラブで、ラグビーだけのクラブである。クラブは 1874 年に設立され、今年
(2014 年)で 140 周年を迎えた。オークランドラグビー協会と提携している。
クラブは、オークランドに現存する最古のクラブであり、オークランド地域で二
番目に古いクラブである。クラブには、競技志向で真剣にラグビーに打ち込む人
だけでなくソーシャルゲームとしてラグビーを楽しむために所属している人、そ
して、女性も所属している。
- 36 -
ジュニアチーム(U6~U12 のカテゴリー)は、現在 56 のチームが属してい
る。プライマリースクールの子供たちは、学校が終了後、クラブに来てトレーニ
ングをしている。U6には3歳の子も所属しているという。毎週、月曜日と金曜
日にトレーニングをして、週末にはクラブ対抗の試合をしている。
ニュージーランドでは伝統として、13 歳から 18 歳までの子供たちは、学校(セ
カンダリースクール)でラグビーをプレーするために、一度クラブのラグビーか
ら離れることになる。そして、この 5 年間のセカンダリースクールで、子供たち
は初めてスポーツとしてのラグビーを学ぶことになる。学校を卒業すると、クラ
ブとしては、多くの生徒にクラブに戻ってきてほしいと考えている。そのため、
クラブは、セカンダリースクールを 17 歳や 18 歳で卒業した生徒に対して、再び
クラブに戻りプレーするように呼びかけている。また、U19 だけでなく、85 ㎏
以下のカテゴリー及びU21 のプレーヤーもクラブに呼び戻そうとしている。ク
ラブは、生徒がまたポンソンビー・ラグビークラブでラグビーをプレーしたいと
思うような、魅力あるクラブにするように努めている。
(ウ)クラブの活動について
U6~ U 12 のトレーニングは週1回(曜日によりカテゴリーが異なる。)、
15:00 以降に 45 分~60 分間行われる。土曜日は試合が組まれる。U6~U12 の
クラブ員は登録料のほか、施設使用料等年間( 3 月 ~ 8 月 )70 ド ル を支払っ
ている。
これらのカテゴリーでは、地域(例えば、オークランドラグビー協会)によっ
て異なる取り決めやメソッドによりトレーニングが行われている。例えば、ポン
ソンビー・ラグビークラブでは、タグを使用するなどの工夫をしている。自分の
子供に、もっとラグビーをさせたいと考えている親もいるが、伝統的にシニアで
あっても週2回のトレーニングのみで、学齢期であるU6~U12 は、週1回の
トレーニングとなっている。したがってトレーニングがない日は、他のスポーツ
をすることになる。もちろん、ラグビーのために自主的なトレーニングを行った
り、ジムへ通ったりしている子もいる。
U6からU9は 15 人いなくてもハーフフィールドでゲームを楽しんでいる。
U6、U7はタグラグビー、U8からはハーフフィールドでタックルあり。U12
になると 11 人でチャンピオンシップを競うラグビーになり、プレーの質もシリ
アスになってくる。プレーヤーの人数が増え、フィールドも大きくなる。チーム
も一度決めたらそのままメンバーを固定してトレーニングやゲームをしていく。
(エ)女子の活動について
女子については、U12 以下のカテゴリーでは、男女一緒にプレーしているの
で問題はないが、セカンダリースクールにラグビーを行う環境があるかどうか
で、その後、ラグビーを続けるか、続けないかが決まってしまう。中にはセカン
ダリースクールでラグビーができないため他のスポーツをしていたが、17・18
歳になるとラグビーをしたいがためにクラブに戻ってくる女子もいるとのこと
- 37 -
である。ちなみに、女子のラグビーチームは、1980 年代後半に始まったとのこ
とである。
5) 質疑応答の概要
Q:学校現場にクラブから何か働き掛けているか?
A:母校のマウント・アルバート・グラマースクールで、ジュニア・ラグビー・
アカデミーの学長として、9・10 歳の子供たちに週2回指導している。ラグビー
の歴史、ルール、技術、心構えなどを教えている。夜は生徒がクラブに練習をし
に来ている。
Q:クラブの運営資金はどうなっているのか?
A:スタジアム(ウエスタン・スプリングス・スタジアム:Western Springs
Stadium、30,000 人収容)は、市所有のものを安く借りている。フィールド(芝
生)等の整備は市が行う。メンバーシップフィー(会費)、スタジアムの貸出し、
他に宝くじ協会等の慈善機関からの寄付等で運営している。オフシーズンはスタ
ジアムを貸し出し、カーレースやコンサートなどが行われている。また、木曜日
には、ジュニアが南島大会のためにタッチラグビーのトレーニングをしたり、1
~2月はラグビー7(7人制ラグビー)で使用したりしている。他にフライデー
ラグビーという日を設け、スタジアムを開放し、子供たちがフィールドでラグビ
ーをし、親子で食事をしたり、仲間と食事をしたりするなど、コミュニティ作り
にも一役買っている。現在、スタジアムの芝生を人工芝に張り替えて、通年活用
できるように考えている。いずれにしても、年間を通してできる限りこの施設を
有効に活用することで、クラブを運営している。
Q:日本とニュージーランドの違いは何か?
A1:(回答 過去、日本の女子ラグビーチームと対戦したサンドラ氏)日本の
女子チームは、例えばコンタクトプレー等において、予想以上にフィジカル的な
強さを感じなかった。また、真剣度も不足していると感じた。もう少しがんばれ
るのではないだろうか。
A2:(回答 全般について:ウィリアムス氏)ニュージーランドには、オール
ブラックスがあるから自慢ができ、誇りをもてる。その思いが強いため、負ける
とつらい。国全体が、全ての国民が、本当に心底落ち込んでしまうという状況に
なる。
※このブライアン氏の回答から、国民的スポーツに対する国民の意識が、日本
とニュージーランドの大きな違いであり、差であるということを感じた。
Q;ニュージーランドにはたくさんのチームがあるが、グラウンドの確保はどの
ようにしているのか?
A:このクラブについては、元々グラウンドを所有していたが、経営が苦しいの
で売りに出し、現在のスタジアムを借りている。草を求めて動いてきた。他にも
サテライト用のグラウンドがいくつかある。市はスポーツをする場を与えなくて
はならない。これは当たり前のことである。他のクラブについては、自前もある
- 38 -
が、ほとんどがリースである。大切なことは、子供たちのためにラグビーの場を、
そして、選手にもラグビーの場を与えることである。ラグビーを与えることのみ
が全てである。
Q:なぜニュージーランド代表をオールブラックスと言うのか?
A:選手、誰もがバックスのように走力を生かしたプレーをし、着ているジャー
ジ(ユニフォーム)も全員、黒(ブラック)。つまりオールバックスでオールブ
ラックだからオールブラックスとなった。国として、またはニュージーランド人
としてのアイデンティティを与えてくれるのがラグビーであり、その象徴がまさ
にオールブラックスなのである。
6) 所感
今回、歴史と伝統のあるポンソンビー・ラグビークラブを視察することができた。
ウィリアムス氏やサンドラ氏からは、クラブの経営や活動、クラブと学校の関係な
どの話を具体的にお聞きすることができた。言葉の端々から、クラブの哲学や思想、
そして、何よりもラグビーというスポーツに対する強い愛情をうかがい知ることが
できた。
今回視察した民間のスポーツクラブ及びこれまで視察した学校や関係各機関の
話から、さらには日常の早朝や昼休みなどに見られたスポーツに親しむ(エンジョ
イする)ニュージーランドの人々のライフスタイルなどから、ニュージーランドで
は年齢・性別・所属を問わず、草の根レベル(グラスルーツ)からトップアスリー
トまで、文化としてのスポーツが、広く国民に根付いているということを改めて強
く感じることができた。
5 まとめ
(1)ニュージーランドの学校体育の現状と課題
①
全体を通して
ニュージーランドは教育委員会がないため、教育省が作成したカリキュラムをもと
に、学校理事会と学校とが協力して詳細なカリキュラムを作成している。そのため各
学校や地域の実態に合った運動プログラムを作成することができる。視察を行った学
校は、どの学校も学校理事会と協力し、独自の運動プログラムを作成していた。さら
に、スポーツをしている親が多く、子供たちにもいろいろな分野のスポーツを幅広く
経験してほしいという願いを持っているなど、スポーツへの関心が高いのが現状であ
る。
また、PENZやスポーツ・ウエリントン、スポーツ・ワイカトなど、学校体育に
対して支援を行う団体が多くあり、講師の派遣や教員向けのセミナー、子供たちを対
象にしたスポーツイベントの開催などを行っている。日本においても、文部科学省や
教育委員会だけでなく、民間団体や組織とも積極的に関わり、協力していくことが、
生涯にわたって運動に親しんでいく上で大切であると感じる。
学校を視察して驚いたことの1つに運動の施設・設備の充実が挙げられる。どの学
- 39 -
校も校庭がとても広く、すべてが芝であった。遊具が設置してある場所には地面にク
ッションが敷き詰められていて、子供たちが安全に運動できる配慮がなされている。
教具も充実していて、クリケット、ネットボール、ホッケー、ラグビーなど、様々な
スポーツに対応できる用具が揃っていた。中学校や高等学校になると、トレーニング
ジムが設置されていて、個人にあったトレーニングができるようになっていた。
業間の時間には、ほとんどの子供たちが校庭に出て、思い思いの運動をし、元気に
体を動かしているのが印象的であった。裸足で走り回る子も見られた。このような環
境が子供たちに体を動かしたいと思わせるのだと感じた。
②
小学校段階において
小学校では、日本の体育科とは異なり、各運動の技能の習得を目指すことに重点を
置くのではなく、
「楽しく活動する」という点に重点を置いている。とにかくやってみ
る、いろいろなスポーツに取り組んでみる、その中で自分に合ったスポーツに出会え
ればよい、そういった願いがどの小学校での授業参観や教師からのヒヤリングを通じ
て強く伝わってきた。理由は始めから技能的な指導を行うと、できなくて運動をしな
い子ができてしまう恐れがあるからだ。この技やこの動きができるようにさせたいと
いうスモールステップの目標や、ここまでできればよいという公式な評価はない。
2013 PENZ Award を受賞したマウンガタプ小学校では、EBC(できることをみん
なでやろう)という取組を行っていた。授業の前に子供たちがEBCの取組について
発表した。
「ばかにしたりしない」
「ミスしても責めない」
「みんなが責めないのでいろ
いろなことに挑戦できるようになった」などを聞くことができた。その結果、体育の
授業でも、何もせずに一人で立っている子が減った、たくさんのスポーツを楽しくや
るようになった、みんな自信を持って取り組むようになった、といった成果を聞くこ
とができた。
その後のネットボールの授業では、2つのグループに分かれてゲームをし、その後、
反省を行った。ボールを3つ入れることにより、みんながボールをさわれるようにな
った、チームワークが良かった、などの意見が出された。この声を生かして子供たち
自身がルールを作り実践している。担当教諭へのヒヤリングでは、
「みんなが動いてい
た、子供たちの声を大切にしている」という話があった。
クリケットの授業では、どのグループでやりたいかを子供たちが決め、結果、習熟
度別に3つのグループでゲームを行った。自分に合ったグループに自分たちで判断し
て作り、ゲームを行うことにより、体を動かす楽しさを味わうことができていた。特
に印象に残っているのは、ゲームは必ず、いくつかのチームに分け、ルールや教具を
工夫して行っている点である。画一的な指導でなく、子供たち全員が楽しむためには
どうすればいいかということが伝わってきた。
ニュージーランドでも日本と同じように二極化や積極的に参加したがらない女子や
体育嫌いな子も存在する。そういった子たちを参加させるための手立てを質問したと
ころ、いろいろなスポーツを紹介する、自分のペースでできるような環境を作る、レ
ベルに合わせた練習の機会をつくる、将来にも役立つことを教えていくといった回答
- 40 -
が返ってきた。画一的な指導ではなく、ルールを工夫したり、場を増やしたりして、
自分が最も楽しめる方法を考え、実践していることは、技術の習得に目が行き、時と
して単調な練習やゲームに終始する恐れもある日本の体育の授業にも取り入れていく
べきであると考える。
体育の年間計画については、体育の授業メニューを中心になって考えるコーディネ
ーターを教員の中から配置し、学校理事会の要望を受け、取り組む運動の内容を考え
ている。リッジウェイ小学校の1年間のカリキュラムでは、第1期に水泳、第2期に
ボール運動、第3期にクロスカントリー、第4期に陸上競技(ラン、ジャンプ、スロ
ー)がある。重点としているのは、将来にわたって役に立つかどうかとうことである。
授業以外の取組として、スポーツアフタヌーンがある。これは木曜日の午後、全校
児童が校庭に出て、いろいろなスポーツに親しむというものである。10~15 分ごとに
タッチラグビーやクリケット、サッカーなど、各種目を行う場所があり、10 分~15
分ごとに移動しながらそれぞれのスポーツを楽しんでいた。学年を解体して異年齢の
子たちとも触れ合うきっかけにもなっていた。みんなが楽しみながら様々なスポーツ
をする様子は、運動好きの子を増やすための良い取組で、日本でも、積極的に取り入
れてよいのではと考える。
体力テストは結果を出すことで子供たちが消極的になってしまったり、測定するこ
とに意味がないので行われていない。
③
中学・高等学校段階において
中学・高等学校段階では、自分がやりたいスポーツを見つけ、その技能を伸ばすこ
とにも重点を置いている。週3時間の保健体育の授業の他に、毎日 15 分程度のフィッ
トネス(サーキットトレーニングなど)やスポーツアフターヌーンを実施している学
校も見られた。
保健の分野の授業も積極的に行い、週3時間程度の保健体育の時間の中で1時間を
使って行っている。筋肉や心臓の仕組みなどを学び、どうしたら健康的に生活してい
けるかを考え、目標を立て実践している。また、栄養、ドラッグ、アルコール、思春
期についても知り、Wellbeing を実現するためにどのように生活していけば良いかを
学習する。
体育の学習では、小学校段階と同じように根底にあるものは「楽しむ」ということ
である。楽しむための手段として、いろいろなスポーツを紹介する、作戦を考えたり
チームワークを高めたりする機会を多くとり、コミュニケーション能力の育成をする、
何を学びたいのか、どんなことをしたいのかを見て、数多くのゲームを行わせている。
また、視察したどの学校でも2泊3日程度のキャンプを行い、そこで様々なスポー
ツやレクレーション活動を行う。生徒たちが大変楽しみしている行事である。そこで、
体を動かすことの楽しさや、仲間と協力し合う大切さなどを体験を通して学ぶ。
2年目からは身体能力や取り組む運動に配慮し、男女別に体育の授業を行っている。
地域からそれぞれのスポーツの専門の指導者を呼び、より本物の指導を受けているこ
とも1つの特徴である。本物の技を間近で見ることで、憧れを抱き、自分の意識を高
- 41 -
めることができる。日本でもこういった動きは広がってきているが、まだ十分ではな
いのが現状である。
さらに、競争することも大切であると考えている。数多くのトップアスリートを輩
出しているオークランド・グラマースクールでは、優れた成績を収めた生徒は、全校
生徒の前で表彰される。それは大変名誉なことであり、生徒たちの励みにもなってい
る。ケンブリッジのテスト(実技とペーパー)なども積極的に取り入れている。最後
の学年になると、動きの分析を行い、自分が選んだゲームについてデモンストレーシ
ョンをしながら説明し、論文を作成する。また、地域の競技大会も盛んに行い、切磋
琢磨している。リンフィールド・カレッジでは、例としてソフトボールについてゲー
ムの理解、作戦の理解、動きについて段階的に習得し、最後はソフトボールトーナメ
ントで競わせる。トーナメントの様子を視察することができたが、ルールをしっかり
理解し、技術もしっかり備わっていて、何より白熱したゲーム展開は、見ていて飽き
なかった。縦のつながりが段階的にしっかりとできているからこそこのようなトーナ
メントになるのだと感じた。
ニュージーランドの課題としては、年齢があがるにつれて、運動から離れていく傾
向があるということ、家に帰って運動する子が減ってきているということが挙げられ
る。これは日本でも問題になっている運動経験の二極化と同じような傾向である。そ
のため、放課後のクラブ活動に、保護者のボランティアを募るなど、地域と連携した
取組をしたり、地域スポーツトラストが中心になって様々なスポーツを体験する機会
を提供したりしている。放課後や休日も、体を動かす取組を積極的に行い、子供が対
象だけでなく、大人も対象とする、すなわち親子での参加を促す機会も多くある。親
がスポーツを行えば、子供も自然とスポーツをするようになるという考えからである。
日本から見た課題としては、小学校段階では、運動の特性に応じた喜びを味わわせ
るための技術的な指導をもう少し取り入れてもいいのではないかと考える。また、目
標を明確にし、反省を次に生かすような手立ても必要ではないかと考える。しかし、
朝早く街を散策してみると、たくさんの大人がジョギングをしたり、サーキットトレ
ーニングをしたり、ダンスをしたり、カヌーをしたりと、それぞれにスポーツに親し
んでいて、驚いた。評価をするより、技能を高めることより、
「とにかくやってみよう」
「運動を楽しもう」
「やりたいことを見つけよう」と「生涯にわたって役立つことであ
るかどうか」を重視した体育教育が大人になった今でも多いに役立っていることを強
く感じた。学校体育が、生涯にわたって運動を楽しむことの基盤を作っている点は、
日本が参考にするべき面であると考える。
(2)ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
①
はじめに
More young people engaged in sport and recreation.
(より多くの青少年にスポーツ、レクリエーションに親しんでもらう。)
More adults engaged in sport and recreation.
(より多くの大人にもスポーツ、レクリエーションに親しんでもらう。)
- 42 -
これが、ニュージーランドにおけるスポーツ振興の目標(our goal)である。
ニュージーランドは豊かな自然に恵まれ、アウトドア・アクティビティは、人々に
とって大きな楽しみの一つになっている。また、もともと活動的な国民性で、週末に
は個人で、家族で、仲間と、様々なスポーツやレクリエーション、アクティビティを
楽しむという生活が一般的だと言われている。
② ニュージーランドの子供の実態
Spors NZ が 2011 年に行った子供たち(8~15 歳)のスポーツ活動調査では、全男
子の 72.6%、全女子の 60.3%が「運動をするのはとても好き」と答えている。これは、
世界中の調査の中で、モザンビークと並び高率の二国であるという話であった。この
ような結果からも、非常に活発な実態がうかがえる。
訪問先の学校で聞いた子供の余暇の過ごし方においても、
「親がスポーツを楽しむ家
庭の子供はスポーツをする割合が高い。」「放課後(小学校レベル)は、約6割が地域
スポーツクラブに所属している。」「週末は、地域スポーツクラブに加入している子供
は試合に参加していることが多い。」という話が聞かれた。
その地域スポーツクラブの一つである、ポンソンビー・ラグビークラブを視察する
ことができた。このクラブは、創立 140 年を迎える。6歳から 13 歳までの少年期だけ
でも約 900 人が登録されており、年齢毎に 56 ものチームがある。スポーツ(クラブ)
が文化として根付いており、ことラグビーに関して「ラグビーボールを手に乗っけて、
靴を履いて生まれてくる」といわれるゆえんであると感じた。
3月から8月のシーズンに、週一回、約一時間の練習と週末に試合を行う。他のス
ポーツを行ったり、年齢が上がってくるとジムでトレーニングをしたりするので、練
習頻度はこれで十分であるという話であった。また、チームメンバーはほぼ固定され
ており、年齢に合わせた人数やコート、ルール等でゲームを行う。すべての子供がで
きるだけ平等にゲームを楽しむ仕組みになっている。
今後、スポーツクラブを存続するためには、収益を増やす必要がある。シーズンオ
フ時に、グラウンドをイベントなどで貸し出したり、ラグビー以外のスポーツもクラ
ブの対象にしたりして参加者や会員を増やさなければならない。多種目、多世代とい
う総合型のクラブ運営が望まれている。
③ 課題と対策
このように、スポーツやレクリエーションが活発なニュージーランドにおいても、
スポーツ離れ・運動機会の減少と肥満という二つの課題を抱えている。スポーツ離れ・
運動機会の減少に関して、前述のスポーツ活動調査では、全体としてスポーツに対す
る関心が微減傾向にあり、文化・民族別に見たときパシフィックピープルに非運動層
が増えているという結果であった。また、生活習慣が変化し、53%の子供が1日に2時
間以上テレビを見ているという現実や、子供たちの動きがぎこちなくなっているとい
う話も聞かれた。
これらの現状に対し、様々な対策が講じられている。国が行っている Kiwisport は、
学齢児童のためのスポーツをサポートする政策として、学校のみならず地域のスポー
- 43 -
ツ機関にも資金を提供し、放課後のクラブ活動や、運動機会の提供、農村部へのサポ
ート等を行うことで学校と地域がリンクする機会にもなっている。今まで重視してこ
なかったスイミングの学習を地域クラブが担っている所も多い。
地域や文化等よるスポーツ活動の違いを分析し、その地域や子に合わせた振興策を
展開している。スタジアム・スポーツイベントでは、国際的な試合が行われるスタジ
アムに子供たちを募り、未体験の様々な種目を経験する機会をつくっている。また、
特にスポーツ無関心層の子供たちの事態を把握しながら、苦手な集団種目よりも個人
種目を体験する機会を学校のランチタイムや放課後等を使って作り出すといった取組
もしている。
これらの活動が、生涯スポーツに向けた楽しさ体験とスポーツ実施の手助けとなっ
ており、イベント後も続けることで、学校との関係構築にも役立っている。
さらに、地域スポーツ団体やクラブが中心となり、学校へスポーツ・プログラムを
提供する取組もしている。マオリの伝統的なゲームをカリキュラム化することでリー
ダーシップを培い、非行問題にも効果をもたらしたり、小学校で基本的な運動技能を
体験する機会を作るだけでなく、先生のためのプログラムを作ったり、広がりの中で
上級生のリーダーが組織化されたりするなどの成果が上げられている。
肥満に関しては、ニュージーランド最大の健康問題であると感じた。2歳から 14
歳までの 11%が obase(BMI30 以上)であり、15 歳以上になると 31%(日本全体では、
約4%)もがそこに該当する。
スポーツ・ウェリントンでは、「Active Families」として、ニュージーランド人の
健康の為にスポーツイベントや食事の摂り方をイベントを通じて指導するものがある。
ニュージーランド人は、イベントに対する関心は高いので、
「手軽に、お安く!」を合
言葉に、地域ごとに好まれそうなイベントを企画すれば、参加する。居住地の近くで
あれば交通費もかからないし、参加費も無料であれば、家族のアクティビティの一つ
として参加する家族は増える。運動への誘いとして、家庭訪問をしてイベントへの参
加を呼びかけたりもする。
スポーツ・ワイカトでは、
「Eat Healthy、Be Active、Have Fan」を合言葉に、
「Project
Energize」「Active Families」「Green Prescription」等の活動をしている。
「Project Energize」は、ワイカト市民を元気づける計画で、学校で 20 分、家で
40 分、1日 60 分の運動をしようと呼びかけるものである。
「Active Families」は、上記のスポーツ・ウェリントンの対策と同様である。
「Green Prescription」は、緑の処方箋といわれるもので、医療機関とも連携し、
医者・ナースからの情報をスポーツ・ワイカトが入手して、個人への指導をするもの
である。これは、食や運動に関する指導で、面会指導をしたり、いくつかの家族をグ
ループにしてグループ活動をさせたり、本を渡したりメールや電話での指導をした後、
医者・ナースにフィードバックするものである。
このように見ると、少しでも多くの人がスポーツやレクリエーションに親しみ、生
涯にわたってスポーツと関わりを持つという目的に対し、スポーツ本来の楽しさや魅
- 44 -
力を伝えるような取組から、健康問題への対策としてスポーツの必要性を啓発し、ス
ポーツ実施者を増やすといった取組まで、地域スポーツ組織やスポーツクラブが担っ
ている役割は大変大きなものがあると言える。
④
まとめ
視察で訪れたどの学校も、街で見かけるクラブや公園も、広々とした緑のフィール
ドが広がっていた。走っても転んでも痛くなく、けがの心配もない芝生は、スポーツ
離れに歯止めをかけ、スポーツをしたい、体を動かしたいという気持ちを起こさせる
環境の一つとして大きな魅力を感じた。
学校教育においても、地域コミュニティにおいても、スポーツやアクティビティと
の関わりは、まずやってみること(play)そして、楽しむこと(fun、enjoy)が最も
重要視される。その中から、自分の興味やレベルにあった種目や方法を見つけ、生涯
スポーツとして、生活を豊かにしている。
週末には、たくさんの人が地域のスポーツクラブでスポーツ活動を楽しむことがラ
イフスタイルとして、文化として定着している。早朝にもジョギングやサイクリング、
サーキットトレーニング、ジムなどで汗を流す人々をたくさん見かけた。
もともとは、
「気晴らし」
「楽しみ」
「遊び」等を意味したスポーツ本来がもつ価値や
意義をしっかりと見つめ直さなければならない。
スポーツ離れや健康問題等の諸課題は、程度の差こそあれ日本でも共通している。
ニュージーランドにおけるスポーツ観、スポーツ環境、対策等、参考にすべき点はと
ても多かった。
日本の実情に合わせて、まずは、できることから、とにかく!
“He orange ngakau He pikinga wairoa”(マオリ語で「前向きにがんばろう」の意)
を心がけていきたい。
(3)ニュージーランドの学校運営制度
ニュージーランドの学校運営制度については、教育省や地域のスポーツトラストでの
取組を聞いたり、実際に学校へ訪問して現場の様子を聞いたり授業の様子を見学したり
して調査を行った。教育省では、ニュージーランドでは 1989 年に教育改革を実施し、
ニージーランドの教育を根本的に変え、新たにニュージーランド・カリキュラムを作成
したり、教育委員会を廃止したりしたことが分かった。また、教育省の任務は、政策立
案、政策実施過程の監督、効果的な財源の配分とその運用に関する助言となっていた。
保健体育・スポーツ教育についは、若い人が自信を持って生きていくために必要な教
科と位置づけ、ウェルビーイング(幸福、良好な状態)の実現を最大の目標と定め、カ
リキュラムとしては大まかな方向性だけが示されていた。そして、学校の特色が出せる
ように学校理事会(BOT)が設置され、そこに運営が任されていた。細かい指導法に
ついては、教育省が作成した指導法をオンラインで送付し、教育省や地域スポーツトラ
ストが教師を集めて直接指導したり、近隣学校の教師で集まって互いに学びあったりし
て教師の指導力の資質向上が図られていた。
BOTのメンバーは保護者代表・地域の代表・校長・教師・生徒代表など、学校によ
- 45 -
って構成や人数は様々であった。BOTは校長を選出し、校長が教師を任命するが、学
校運営に関しては多くの権限を校長が握ることができ、地域の実情に合った運動プログ
ラムを作成しやすくなっていた。訪問した学校では、BOTとの関係も良好でスポーツ
に限らず、子供たちや保護者が満足行く教育が展開されていた。特に小・中学校では
『sports afternoon』と呼ばれる木曜日の午後に様々なスポーツに親しむ機会を作り、
子供たちが積極的に体を動かす機会が与えられていることは、運動の二極化を解消する
ための参考になった。しかし、校長の権限が強く、その力量によって格差ができてきて
いる現状があることも分かった。
教員の資質向上については、各学校にスポーツコーディネータが配置され、近隣の学
校と連携しながら実施するスポーツが考えられていた。基本的な内容はフィットネスや
サーキットトレーニングを楽しみながら行ったり、様々なスポーツが紹介されていた。
また、地域スポーツトラスト(スポーツ・ウェリントン、スポーツ・ワイカト)が開催
するセミナーに参加したり、コーチを呼んでワークショップを開いて教師間のつながり
ができる工夫がされたりしていたことが分かった。根底には子供たちに『スポーツを楽
しんでほしい』『とにかく体験させたい』という教師の思いがあり、それが、ウェルビ
ーイングにつながると考えられていた。
つまり、ニュージーランドでは、教育省が提唱するスポーツカリキュラムのもと、各
学校が地域や子供たちの現状に合わせた教育を展開しやすくさせることで、生涯にわた
って運動に親しむ習慣や環境を作りあげ、スポーツ離れを防ごうとしていることが分か
った。このような組織や取組は、日本の抱えている体力の低下や運動の二極化を防ぐ施
策につながるのではないかと感じた。
(4)ニュージーランドのスポーツ文化
① ニュージーランドの人々のスポーツに対する思い、価値観について
ニュージーランドの人々は、スポーツ、アウトドアスポーツ等が元々好きな国民気
質があり、多種多様の民族で国家が形成されている。ほとんどの国民がスポーツを介
して健全で健やか(well-being)な社会人になりたい、なってほしいという願いを持
っている。そのために必要な価値観や習慣を持つ社会人になるためにニュージーラン
ドの教育がある。
保護者は、幼児期から子供たちに色々なスポーツを経験させたいと思っている。
Activity スポーツに参加することが大切であるという気持ちを大人たちは持ってい
る。日本のように「放課後は塾」という概念はなく、スポーツに参加させるというの
が一般的な考え方である。一般論であるが「親の背中を見て子は育つ」、すなわち親が
スポーツに勤しむ家庭に育った子供たちは自然とスポーツに親しむ。逆に親が運動し
ないと子供も運動しない。ニュージーランドでは元々スポーツが好きな風土がある故、
親から子へと背中で伝えることが歴史的に繰り返されてきたように思われる。但し、
昨今のテレビ、ゲームの浸透によりニュージーランドでも子供たちのスポーツ離れが
やや顕在化しているようだ。この辺りの意識改革をどうするかといったところがニュ
ージーランドにおいても課題である。
- 46 -
ニュージーランドは、多種多様の移民で形成されているが故に、色々な人種の考え
方、文化を柔軟に受け入れる土壌がある。学校だけでなく、地域クラブやスポーツ基
金団体があり、
「Kiwi sport」という国家プログラムから、都市の子供たちだけでなく、
地方の子供たちにもスポーツ経験をさせるために資金提供をしている。国の隅々にま
でスポーツを普及させ、かつ競技スポーツとして能力の高い選手を育て発掘する素晴
らしい手段である。
また、ニュージーランドでは、ラグビーが国技であり世界に誇れる強豪国である。
イーデンパークをはじめとする何万という集客能力のあるスタジアムが点在する。ラ
グビー選手が、国民全体のアイドル、あこがれの人物であり、ニュージーランド代表、
オールブラックスのキャプテン:リッチーマコーは、老若男女にとってのまさにスー
パースターである。
② ニュージーランドの人々の生活習慣(運動、食文化、時間の使い方)について
ニュージーランドでは、子供にも大人にも 1 日のうちに運動する機会がある。小学
校では、毎朝 15~20 分、フィットネスのエクササイズ(縄跳び、大縄跳び、マオリゲ
ーム、サーキットトレーニング等)をしている。ただ、日本の現状とよく似ていて、
子供たちがテレビやゲームに夢中になり、だんだんアクティブでなくなってきている。
スポーツに向き合っている時間が少なくなってきている。その原因として、多種多様
民族の文化の違いがあり、スポーツをしない文化の人種の人々も少なくない。
大人も意識の高い人々は早朝からランニングやウォーキングする人々も多く散見で
き、集団でサーキットトレーニングに取り組むグループもある。また、大人に対して、
年齢を追うごとにする時間は減っていくが、出来るだけ機会や時間を増やすために、
地域スポーツトラストが設置され、スポーツイベントを計画している。個人で参加す
るだけでなく、家族やグループで参加させやすくする企画を使っている。なかなか参
加できない家庭については、個別の訪問を行っている。大人にだけでなく、子供に対
しても行っている。大人のスポーツへの取組は、当然ではあるが、最終的には個人の
意識レベルになってくる。
ニュージーランドの課題の一つに肥満があげられる。15 歳以上になると、65%が肥
満である。その原因としては、やはり食習慣に問題があると考えられる。具体的に言
うと、ニュージーランドの小学校や中学校には、モーニング・ティーという習慣があ
り、午前 10 時頃に間食がある。学校にクッキーやパンを保護者が持たせている。子供
たちが持ってくる食べ物は、カロリーが非常に高く、低栄養のものが多い。親の健康
意識や栄養に関する知識が乏しい。民族性として食文化の違いはあるものの、食事に
関する知識、栄養に関する知識等、学校での健康教育が必要となっている。国が資金
提供している地域スポーツトラストが、地域、家庭に肥満指導に関する啓蒙活動を行
っている。
ニュージーランドに限った話ではないが、余暇や自由時間にテレビやゲームなどを
して過ごす人が増えてきた。栄養の摂取と消費のバランスやスポーツ・運動との兼ね
合いで肥満を解消することが、医療費の削減や健康寿命の伸長を目指す国家としての
- 47 -
今後の課題のようである。
③
ラクビー文化
オールブラックスは、ニュージーランド人のアイデンティティである。
「赤ん坊は、生まれて来るときにはラグビーボールを持って、ラグビースパイクをは
いてくる。」という名言まで生まれている。また、「オールブラックス敗戦の日は、ニ
ュージーランド中がお通夜になる」と冗談交じりに紹介されるほど国内での関心度が
高い。移民の国で、世界に誇れるものが数少なかったニュージーランドでは、まさに
国技のラグビーが象徴であり、国のステータスであった。
親がラグビーに参加したりラグビー競技を見ていれば、子供もラグビーをやってみ
たいと思ってくる。その繋がりでラグビークラブが盛んになり、歴史と伝統を作って
きた。地方自治体として、住民が健全に生活していく「well-being」ために、積極的
に市民がスポーツに参加できその環境を整えることは、大きな仕事の一つである。ラ
グビーは、国民全体の興味関心が非常に高く、行政からの資金援助等のサポートも手
厚い。それぞれの地域をはじめ、国全体でラグビー競技をサポートしている。
④
まとめ
今回のヒアリングや視察の調査を通して、ニュージーランドでは、大人も子供もス
ポーツや体を動かす機会が多数有り、地域社会や国家レベルで資金援助や施設整備が
スポーツに対してなされていることが分かった。スポーツを楽しみ、気軽にスポーツ
に親しみ、健全に生活していく「well-being」という考え方がニュージーランドのス
ポーツ文化形成の根底にあると思われる。そして、ニュージーランドのスポーツ文化
の象徴がラグビーであり、オールブラックスと言えよう。
日本では、ニュージーランドほどスポーツの価値があまり高くなく、スポーツ文化
としてはまだまだ未成熟な部分が多々あるように思われる。風土や習慣の相違はある
にせよ、学校体育、社会体育などにおいて、ニュージーランドの良き制度や考え方を
取り入れ、我が国のスポーツが更に国民に浸透し発展し「well-being」となることを
期待している。
- 48 -
Ⅱ
研修成果の活用レポート
<研修成果の活用レポート1>
(団名)F―1 (テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
鞍手地区中学校教育研究会
2
目的
ニュージーランドから学ぶスポーツ・学校体育の取組
3
対象
鞍手地区中学校教員
4 日程・技法及び内容
(1) 時間 50 分
(2) 技法
講義
(3) 内容
①
本プログラムの概要
ア
目的
イ
ウ
各班のテーマ
訪問先
②
ニュージーランドの教育事情
ア
教育制度について(1989 年の教育改革、BOTなど)
イ
カリキュラムについて(ビジョンや領域)
ウ
エ
保健体育について(目標や領域)
スポーツシステム(文化・遺産省、Sport NZ、地域スポーツトラスト)
③
ニュージーランドの学校体育
ア
④
訪問先での実践
ニュージーランドの地域スポーツ
ア スポーツ振興の目標
イ
⑤
子供たちの実態
まとめ
ア
成果と課題
- 49 -
<研修成果の活用レポート2>
(団名)F―1 (テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
郡市小中学校体育主任研修会
2
目的
生涯にわたり児童生徒が運動・スポーツに積極的に関わる資質や能力
を高める体育・保健体育の授業の在り方を考える。
3
対象
小学校体育主任、中学校保健体育教員
4 日程・技法及び内容
(1) 時間 60 分
(2)
技法
(3)
内容
講義形式
①
ニュージーランドについて
②
日本とニュージーランドの比較
③
ニュージーランドの教育について
ア
ニュージーランドの教育制度
イ
ニュージーランドの保健体育
④
ニュージーランドのスポーツシステム
⑤
ニュージーランドの学校体育
ア
ニュージーランドの学校体育の課題
イ
ニュージーランドの小学校の体育について
ウ
視察した学校の取組
(リッジウェイ小学校、ナイトン・ノーマル・スクール)
エ ニュージーランドの中学校、高校の体育について
オ
視察した学校の取組
(ファーガソン中学校、オークランド・グラマースクール)
⑥
ニュージーランドのスポーツ文化
ア
イ
ニュージーランドの人々のスポーツに対する思い、価値観について
ニュージーランドの人々の生活習慣について
⑦
ニュージーランドの学校視察から見えてきたこと
⑧
生涯にわたってスポーツを楽しむ児童生徒を育成するためには
- 50 -
- 51 -
- 52 -
<研修成果の活用レポート3>
(団名)F―1 (テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
校内研修会
2
目的
ニュージーランドにおける体育科教育の現状について、視察を通して得
た情報を校内教員に伝える。
3
対象
小学校教員
4 日程・技法及び内容
(1) 時間 30 分
(2)
技法
(3)
内容
①
講義形式(別紙パワーポイント資料を活用し、説明)
ニュージーランドについて
ア ニュージーランドの概要
イ
ニュージーランドの教育制度
ウ
ニュージーランドのスポーツシステム
②
スポーツトラストの取組
ア
イ
③
訪問先の様子
地域スポーツトラスト(スポーツウェリントン)の取組
各学校の体力向上に向けての取組
ア
ファーガソン中学校での取組
カリキュラムの中での運動の取り入れ方
イ マウンガタプ小学校での取組
PENZ(ニュージーランド身体教育協会)との連携
④
まとめ
- 53 -
- 54 -
<研修成果の活用レポート4>
(団名)F-1
(テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
学校と家庭、地域が協力して行う体力・運動能力の向上
2
目的
ニュージーランドの生涯スポーツ実践から学ぶ体力・運動能力の向上
3
対象
学校体育指導者
4
日程・技法及び内容
(1) 時間
60 分
(2) 技法
講義形式
(3) 内容
①
ニュージーランドの概要
ア 国土・人口・民族・言語
②
教育行政制度
ア
教育行政機関
③
教育の学校分権化~学校理事会(BOT)の設置~
ア BOT の構成
イ
BOT の権限と責任
ウ
BOT 会議の開催
エ
課題
④
ニュージーランドの学校体育の現状と課題
⑤
ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
ア
スポーツ振興の目標
イ
ニュージーランド の子供の実態
ウ
子供の余暇の過ごし方
エ
オ
ニュージーランドのスポーツ文化
課題
カ
ラグビーー文化
⑥
総合型スポーツクラブの推進
ア
⑦
総合型スポーツクラブとは
まとめ
- 55 -
<配布資料>
ニュージーランドの生涯スポーツ実践から学ぶ体力・運動能力の向上
1
ニュージーランドの概要
・国土面積は日本の約7割
・人口はオークランド(Auckland)、クライストチャーチ(Christchurch)、ウェリント
ン(Wellington)、ワイカト(Waikato)に集中。
・ヨーロッパ系民族、先住民であるマオリ、太平洋島嶼系民族(サモア、クックアイ
ランド、トンガ等)、アジアを中心とする移民。
・英語とマオリ語
2
教育行政制度
(1) 教育行政機関
教育省(Department of Education)と学校との間にあった教育委員会が廃止。
<図
3
ニュージーランドの教育システム(義務教育段階)>
教育の学校分権化~学校理事会(BOT)の設置~
在籍する生徒の父母(保護者)により選出される父母代表を中心に組織される学校経
営主体であり、各学校のカリキュラム作成から学校財政、人事政策に至る学校の経営計
画全般にわたる。
(1) BOT の構成
生徒の父母(保護者)により選出される父母代表3~7名、校長、教職員代表1
名、生徒代表1名(中等学校の場合)、共同選出による代表(父母代表の数を超え
ない範囲)から構成される。
(2) BOT の権限と責任
全国学校経営指針(National Administration Guidelines)及び「1989 年教育法」
に規定。
学校予算の立案・運用、校長・教員の任免、カリキュラムの編成。
(3) BOT 会議の開催
・委員会ごとに、月1~3回程度の会議。審議をふまえ、月1回 BOT の全体会議が
- 56 -
開かれる。
(4) 課題
・BOT と校長のパートナーシップの問題。
・校長の多忙化の問題。
・研修を含めた BOT に対する支援体制の整備・確立の問題。
4
ニュージーランドの学校体育の現状と課題
「現状」
・カリキュラムは学校に任されている。
・ペンズやスポーツウエリントンなど、支援を行う団体が多くある。
・小学校ではコーディネーターを教員の中から配置し、保護者の要望を受け、学校
で取り組む運動の内容を考えている。
・「楽しく活動する」という点に重点を置いている。
・校庭が広くすべてが芝である。また、遊具が設置している場所には必ずクッショ
ンがあり、子供たちが、安全に運動できる配慮されている。
・スポーツアフタヌーン。
・中学・高等学校では、自分がやりたいスポーツを見つけ、その技能を伸ばすこと
を重視する。
「課題」
・年齢があがるにつれて、運動から離れていく傾向がある。
・家に帰って運動する子が減ってきている。
・食生活や肥満に関すること。
5
ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
(1) 「More sports and recreation.」スポーツ振興の目標
①
More young people engaged in sport and recreation.
(より多くの青少年にスポーツ、レクリエーションに親しんでもらう。)
②
More adults engaged in sport and recreation.
(より多くの大人にもスポーツ、レクリエーションに親しんでもらう。)
③
More winners on the world stage.
(より多くの優れた選手を世界へ送る。)
(2) ニュージーランドの子供の実態
・「運動をするのは好きですか。」というアンケート調査
≪すべての男子≫
≪すべての女子≫
- 57 -
(3) 子供の余暇の過ごし方
・親がスポーツを楽しむ家庭の子供はスポーツをする割合が高い。
・放課後は(小学校レベル)、約6割が地域スポーツクラブに所属している。
・週末に地域スポーツクラブに加入している子供は試合に参加していることが多い。
(4) ニュージーランドのスポーツ文化
・スポーツ、アウトドアなどがもともと好きな国民である。
・健全で健やかな社会人(well-being)になってほしいという願いをもっている。
・幼児期からいろいろなスポーツを経験している。
・Activity スポーツに参加している。
・スポーツ基金団体がある。
・国民全体のアイドル、あこがれのスポーツ選手がラグビー選手である。
・小学校で 15~20 分毎日、エクササイズ(フィットネス)をしている。
・地域スポーツトラストが設置され、スポーツイベントを計画。
(5) 課題
・15 歳以上になると、65%が、肥満である。
・モーニングティーという食習慣があり、午前 10 時頃に間食をとる時間が設けら
れている。
(6) ラグビー文化
・オールブラックスは、ニュージーランド人のアイデンティティである。
・ニュージーランドは、スポーツを楽しみ、気軽にスポーツに親しむことという考
え方である。
6 総合型スポーツクラブの推進
(1) 総合型地域スポーツクラブとは
・子供たちのスポーツ環境を一層充実させるためには、部活動とも連携した総合型
地域スポーツクラブが望まれている。
・現在の運動部活動では補いきれない場合もある子供たちのスポーツニーズに応え
る。
・完全学校週5日制に伴う子供たちのスポーツ活動に対する場の提供。
・開かれた学校づくりの一環として学校体育施設の共同利用を促進。
7
まとめ
・「More sports and recreation.」スポーツ振興の目標。
・子供たちの意欲を大切にしたスポーツ活動の推進。
・多くの子供たちが継続してスポーツが続けられる環境作り。
・総合型スポーツクラブの推進と発展。
・スポーツを楽しみ、気軽にスポーツに親しむという考え方を取り入れる。
- 58 -
<研修成果の活用レポート5>
ニュージーランドの「体力・運動能力の向上」
1
はじめに
ニュージーランドは北島と南島に別れた島国で、国土面積が 27 万k㎡(日本 38 万k
㎡)の中に 450 万人(滋賀県 140 万人)が住む小さな国である。
(人口より羊の数(3190
万頭)の方が7倍多い)ニュージーランドにおいて、体力や運動能力について関心がよ
せられている理由は以下の2点である。
(1) 『ニュージーランドの青少年身体活動に関する通信簿(The New Zealand Activity
Report Card for Children and Youth)』(2014 年)によると、ニュージーランド
の子供たち(5~19 歳)の「総合的な身体活動」の評価が“B”であった。
(2) 少ない人口でありながら、「国際ラグビーボード(international Rugby Board)」
の世界ランキング(2014 年8月)は“1位”である。ま
た、ワールドカップにおいて過去2度優勝している。
これらの現状をふまえ、現地のニュージーランドでの
調査研究のため、行政、体育・スポーツ関係機関(3か
所)、学校(6校)、地域スポーツ関係組織(3か所)を
訪問した。
2
ニュージーランドの教育制度
ニュージーランドの教育制度は、近年、教育改革が行われ『1989 年教育法(Education
Act 1989)』が制定された。その結果、教育省が機能別に分割・縮小され、教育委員会制
度は廃止された。また、『学校理事会(BOT : Board of Trustees)』(以下BOT)が設
置されたり、規制・監督業務を担う第三者機関として『教育機関評価局(ERO : Education
Review Office)』が設置されたりするなど、学校分権化に力点を置いた教育制度となっ
た。
5歳の誕生日から19歳の誕生日後の1月1日まで、全ての公立学校で教育を無償で
受けることが保障され、6歳から16歳までが義務教育という制度であった。
3
現地調査より
(1) 『運動が好き』という国民性と『運動がしたい』と思える環境面の充実
ニュージーランドの人々は『健全で健やかな社会人になる
(Well-being)』という願いを持っているため、運動に対して
の関心が高い。実際、早朝や昼食時などの公園には、大勢の
大人がサーキットトレーニングやランニングをしている姿
をいたる所で見ることができた(右写真)。国民の理念とし
てアクティブに運動することが根付いているため、保護者が我が子に幼児期から
- 59 -
様々なスポーツを経験させているという傾向があることも分かった。
また、全国で17ヶ所ある地域スポーツトラスト(地域レベルのスポーツ振興
を担う機関)が、地域の実態に合わせたスポーツイベントを企画したり、各地域に
訪問したりすることで運動する機会を多く与えられていることも運動を好きにさ
せる要因のひとつであった。
訪問した学校では、グラウンドがとても広くて一面
芝が整備されていた。また、遊具が設置されている下
部には、やわらかい素材のものが敷かれているなど安
全に運動できる工夫がなされていた。地域では、多く
のラグビー場や様々なランニングコースが設置されて
いるなど、様々な場所で運動がしたくなる環境が整っ
ていると感じた。
(2)学校独自の取り組みが行いやすいシステム
ニュージーランドの教育は、教育省が定めた『ニュージーランドカリキュラム 2007』
をもとに、BOTが中心となって学校ごとに運営されている。そのため、学校長に
多くの権限が与えられ、その地域の実情に合わせた教育を展開しやすくなっていた。
保健体育領域においても、「健康や運動に関する学習を通じた児童生徒自身、他者
および社会のウェルビーイング(幸福、良好な状態)の実現」という目標のもと、
各校の特色が見られた。
特に印象に残ったのが、リッジウェイ小学校やファ
ーガソン中学校で実施されていた『スポーツアフタ
ヌーン』といわれるものだ。毎週木曜日の午後は全
校の児童生徒がグラウンドでスポーツに親しむ時間
が確保されていた。
ラグビーやサッカー、クリケットなどの様々なス
ポーツを10分~15分交代で経験することで、自
分が『楽しい』と感じるスポーツと出会う機会を作ることを目的とされていた。そ
こでは、教師は細かな技能指導はせず、
『とにかく経験してみよう!』
『楽しもう!』
ということをねらいにルールを教えたり、ともに運動したりしていた。子供たちの、
意欲的に参加する姿が見られた。
これらのことを円滑に運営していくために、各校にスポーツコーディネータが設
置され、近隣の学校と連携したり、地域から指導者(コーチ)を招いたりしながら、
様々なスポーツを経験できるように工夫されていた。
4
まとめ
今回の研修でニュージーランドの教育(保健体育領域を中心)を実際に見聞きするこ
とができ、体力・運動能力向上の施策についてたくさん学ぶことができた。上述しなか
- 60 -
ったが、ニュージーランド人のアイデンティティーとまで言われているスポーツにラグ
ビーがある。そのラグビーで有名な『オールブラックス』というチームは国民の憧れと
して存在し、
『子供が生まれたときには、ボールをもって、ラグビースパイクをはいてく
る。』という名言が生まれたりするぐらいラグビーの人気が高く、国をあげてサポートさ
れていることも知ることができた。一方で、ニュージーランドが抱える課題(肥満傾向
や指導の偏りなど)も知ることができたとともに、日本全国を押しなべて同様の指導が
受けられる日本教育の良さを実感することもできた。今後、それぞれのよさを融合しな
がら、自分の学校や市町の子供たちのために、運動能力や体力が向上する方策を模索し
ていきたいと思う。
最後に、全国各地の体育関係の方々とともに今回の研修に同行させていただく中で、
多くのご示唆をいただけたこと、そして、学校現場が多忙な時期に快く研修に参加させ
ていただいた、学校長をはじめ、本校職員の皆様に感謝したい。
- 61 -
<研修成果の活用レポート6>
(団名)F-1 (テーマ)体力・運動能力の向上
市保健体育科研究部会
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
市教育研究会
校内研修
2
目的
ニュージーランドにおける体力・運動能力の向上に関する取組調査報告並
びに、児童のスポーツ離れ、スポーツ経験の二極化、体力・運動能力の低下
等の問題を克服するための授業改善について協議する。
3
対象
市内小中学校体育主任教員・校内全職員
4
日程・技法及び内容
(1) 時間
1時間 30 分
(2) 技法
調査報告(パワーポイント資料
30 分)及び研究協議(60 分)
(3) 内容
①
研修課題の設定
体力テストにおける結果から、本校児童の体力・運動能力の向上が大きな課題と
なっており、児童生徒が生涯にわたってスポーツに関わっていけるような環境づく
りが必要である。そこで、ニュージーランドの行政や学校が取り組む体力・運動能
力向上策や現状などの報告から、体力・運動能力の向上に結び付く効果的な取組に
ついて考える。
②
ニュージーランドの教育
ア ニュージーランドの教育制度
イ
ニュージーランドカリキュラムについて
ウ
ニュージーランドの保健体育
③
研究協議
ア
研究協議の目的
ニュージーランドの取組も参考にしながら、本校児童の体力向上につながる
取組について考える。
イ
協議の課題(各ブロックに分かれての協議)
体力向上の実践に結び付く取組
(イ)
本校での実践可能な取組
ウ
(ア)
④
各ブロックからの発表
まとめ
- 62 -
- 63 -
- 64 -
<研修成果の活用レポート7>
(団名)F-1 (テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
校内研修
2
目的
ニュージーランドの学校体育の現状や取組の報告
3
対象
校内職員
4
日程・技法及び内容
(1) 時間
(2) 技法
30 分
講義形式
(3) 内容
①
海外研修の目的
ニュージーランドの体育・スポーツの実態に関する調査を通じて、日本の
教育現場が抱える諸課題を解決するための方策を考える上での示唆(ヒント)
を得る。
②
ニュージーランドの調査・研修テーマについて
ア
学校体育の現状と課題
イ
地域スポーツ環境の実態
ウ
学校運営制度について
エ
スポーツ文化
③
視察場所
④
調査・研修テーマの結果について
⑤
まとめ
⑥
質疑応答
- 65 -
- 66 -
<研修成果の活用レポート8>
(団名)F―1
(テーマ)体力・運動能力の向上
(訪問国)ニュージーランド
1
研修名
市教育センターフォーラム
2
目的
ニュージーランドの学校における体育科授業や、外部団体等の取組につい
ての考察を通じた日本の学校での今後の展望
3
対象
市内小中高等学校の教員
4
日程・技能及び内容
(1)
時間
20 分
(2)
(3)
技法
内容
発表形式
①
ニュージーランドのスポーツ文化について
ア
国民性とラグビー文化について
イ
スポーツに対する考え方と課題
② ニュージーランドの学校の取り組みについて
ア スポーツアフタヌーン(リッジウェイ小学校)
イ
フィットネスタイム(ファーガソン中学校)
ウ
アルティメット・ミニラクロス(マウンガタプ小学校)
エ 「バランス能力」の向上に重点をおいた体育科学習(ナイトンノーマルス
クール)
オ
カ
③
オークランドグラマースクール
リンフィールドカレッジ(ソフトボール大会?)
まとめと今後の展望
ア
本市における、運動能力向上のための考察
- 67 -
Ⅳ
研 修 概 要
1
要約版「体力・運動能力の向上(F-1団)ニュージーランド」・・・・・・・71
2
全体のまとめ
「ニュージーランドから学べるもの」(東京成徳大学
3
出雲
輝彦)・・・・・・72
平成 26 年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム実施要項、派遣実績 ・・・74
平成 26 年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム
派遣テーマ:体力・運動能力の向上(F-1団)
要約版
派遣国:ニュージーランド
派遣期間:平成 26 年 11 月 17 日(月)~11 月 28 日(金) ※12 日間
調査研究項目
ニュージーランド(NZ)には教育委員会制度や教科書制度がない。
「NZ カリキュラム」
(2007 年)において、学習
領域ごとの 8 段階のレベルとそれらを身につける学年・能力・技能が明示されているだけで、教えるべき具体的な
内容や方法は学校(教員)に任されている。
「青少年身体活動に関する通信簿」
(2014 年)によると、NZ の子供たち
の「総合的な身体活動」は“B”評価であった。NZ は人口規模で小国でありながらもラグビー世界ランキング(2014
年 8 月)が“1位”であり、ワールドカップにおいて過去2度優勝している。そこで、本団はこのような特徴をも
つ NZ の体育・スポーツの実態に関する調査研究を通じて、日本の教育現場が抱える諸課題(体力・運動能力の低下、
運動経験の二極化等)の解決策を考えるうえでの示唆を得るため、以下の 4 つの調査研究項目を設定した。
1)ニュージーランドの学校体育の現状と課題
2)ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態
3)ニュージーランドの学校運営制度
4)ニュージーランドのスポーツ文化
調査結果
1)NZ の学校体育では、恵まれた環境のもと「楽しさ」に力点を置いた指
導がされており、このことが NZ 人が生涯にわたって運動を楽しむことの基
盤を作っていると考えられる。
2)アクティブな国民性をもつ NZ と言えども、日本と同様に子供の運動離
れが進んでいるが、日本以上に深刻なのは“肥満”の問題である。こうし
た背景もあり、地域のスポーツ環境を整えるための国、民間団体等からの
サポートが充実している。また、地域スポーツをめぐる地域・学校・家庭
の連携も積極的になされている。
3)教育委員会のない NZ の学校運営では、ガバナンス面を学校理事会(BOT)が担い、マネジメント面を校長が担
うことを原則としているが、日常的な学校運営のイニシアティブを握っているのは校長である。各学校の地域性や
実情を反映した柔軟な学校運営が可能である一方、校長の権限が強くその力量によって格差も生まれている。
4)NZ のスポーツ文化は、国、民間団体、地域等のサポート、環境の整備、プログラムの提供等により子供から大
人までスポーツや体を動かす機会が多くあることに支えられており、その根底にはスポーツを楽しみ、気軽にスポ
ーツに親しみ、健全に生活していく“Well-being”を目指そうとする考え方がある。こうした NZ のスポーツ文化の
象徴の 1 つがラグビーであり「オールブラックス」である。
まとめ
体力・運動能力の低下の本質が子供たちの身体活動量の不十分さにあると考えた場合、特に幼少期の身体活動の
量の確保とその習慣化が重要になってくる。そのためにも、大人も含めた国全体(国民性)がアクティブになる必
要がある。また、そういった生涯スポーツ社会の実現に向けては、学校における体育・スポーツが真にその具現化
に資するものでなければならない。今回の現地調査により NZ からは、幼少期に運動嫌いの子供を作らないための個
に配慮した「楽しさ」を重視する体育等の指導方法、地域に根差した学校運営の仕組み、スポーツ文化の地位向上
の意義など、日本の教育現場の抱える諸課題を解決する上での多くの示唆を得ることができた。
調査結果を教育現場で生かすために(研修成果の活用事例)
●ニュージーランドから学ぶスポーツ・学校体育の取組
●生涯にわたり児童生徒が運動・スポーツに積極的に関わる資質や能力を高める体育・保健体育の授業の在り方
●ニュージーランドにおける体育科教育の現状
●学校と家庭、地域が協力して行う体力・運動能力の向上
●ニュージーランドの「体力・運動能力の向上」
●ニュージーランドにおける体力・運動能力の向上に関する取組調査報告並びに、児童のスポーツ離れ、スポーツ
経験の二極化、体力・運動能力の低下等の問題を克服するための授業改善
●ニュージーランドの学校体育の現状や取組の報告
●ニュージーランドの学校における体育科授業や、外部団体等の取り組みについての考察を通じた日本の学校での
今後の展望
- 71 -
ニュージーランドから学べるもの
シニアアドバイザー
出雲
輝彦(東京成徳大学)
(1)未知なる国を調査対象として
平成 24 年度の本海外派遣プログラム(スポーツ・健康教育の推進:カナダ)のシニアア
ドバイザー(SA)を務めて以来、2度目のSAである。カナダのスポーツ法・政策研究
を専門とする私にとって、カナダと同じ英連邦の一員とは言えニュージーランドは未知の
国であった。しかしながら、2010 年バンクーバー冬季五輪においてカナダのメダル獲得数
を飛躍的に向上させた取組(組織)として当時注目されていた「オウン・ザ・ポウディア
ム(Own the Podium :OTP)」のCEOがスポーツ・ニュージーランドの同種の機関である
HPSNZのCEとしてヘッドハンティングされていたこともあり、ニュージーランドの
スポーツ政策の動きに若干注目していたところであった。なお、現地調査で分かったこと
だが、スポーツ・ニュージーランドでプレゼンをしていただいた Jo Colin 氏も青少年スポ
ーツプログラムの専門家としてイギリスの Youth Sport Trust からヘッドハンティングさ
れてきたとのことであった。同国において体育・スポーツの充実が政策課題に上がってき
た証左と言えるのではないか。
この未知なる国ではあったが、F-1団の事前研修会前にニュージーランドでの現地調
査のポイントを探るべく、同国の概要、教育制度、保健体育、スポーツ等に関する参考文
献やインターネット情報を手掛かりに、その全体像の把握に努めた。その結果、調査対象
国からでしか得ることのできない示唆を見出すことに繋がるニュージーランド固有のポイ
ントを幾つか絞り込むことができた。
(2)現地調査のポイント
ニュージーランドには教育委員会制度も教科書制度もない。
「ニュージーランド・カリキ
ュラム」(2007 年)では、学習領域ごとに身につけるべき8段階のレベルと、それらを身
につける学年が明示されている。ただし、各レベルで提示されているのは、身につけるべ
き能力や技能だけである。したがって、教えるべき具体的な内容や方法は個々の教員に任
されている。保健体育の授業において教員はどのような工夫をしているのか。教育委員会
が廃止されて以降、すべての公立学校に設置され学校の経営を任されている学校理事会(B
OT)は保健体育をどのように位置づけ、サポートしているのか。必ずしも教育や経営の
専門家ではない保護者代表らからなるBOTに対する関係機関の助言、協力、支援等の体
制はどのように構築されているのか。
オークランド大学の国立健康イノベーション研究所(National Institute for Health
Innovation, University of Auckland)の調査チームがとりまとめた「ニュージーランド
の青少年身体活動に関する通信簿(The New Zealand Activity Report Card for Children
and Youth)」
(2014 年)によると、ニュージーランドの子供たち(5~19 才)の「総合的な
身体活動」の評価は“B”であった。ニュージーランドの子供たちは運動好きなのか。日
本の子供たちと比較して体力・運動能力に違いはあるのか。
ニュージーランドの人口は約 450 万人で人口規模の面では小国であるにもかかわらず
「国際ラグビーボード(International Rugby Board)」の世界ランキング(2014 年 8 月)
は“1位”である。ワールドカップにおいて過去2度優勝(1987 年、2011 年)している。
強さの秘密はシステムや環境にあるのか。地域スポーツクラブはどの程度根づいているの
- 72 -
か。また、ニュージーランド人のラグビー以外のスポーツへのかかわり方はどうなのか。
(3)現地調査のフレームワーク
派遣テーマ「体力・運動能力の向上」を掲げるF-1団のミッションは、ニュージーラ
ンドの体育・スポーツの実態に関する調査研究を通じて、日本の教育現場が抱える諸課題
の解決策を考えるうえでの示唆を得ることにある。そして、本プログラムを通じて得られ
た経験・知見を団員がそれぞれの現場に還元することにある。したがって、現地調査に基
づく本報告書はその際の手引きになることが求められる。現地調査のフレームワークは以
下の通りであった。
【主問】
「体力・運動能力の低下」及び「運動経験の二極化」を改善するにはどうすれば良いか。
【副問】
①ニュージーランドの学校体育の現状と課題は?
②ニュージーランドの地域スポーツ環境の実態は?
③ニュージーランドの学校運営制度は?
④ニュージーランドのスポーツ文化は?
【現地調査】
行政機関・スポーツ関係組織・学校・スポーツクラブ(計 12 か所)へのヒアリング
【分析・考察】
資料整理、①~④ごとの分析・考察・まとめ
【結論】
主問に対する答え
(4)まとめ
体力・運動能力の低下の本質が子供たちの身体活動量の不十分さにあると考えた場合、
特に幼少期の身体活動の量の確保とその習慣化が重要になってくる。そのためにも、大人
も含めた国全体(国民性)がアクティブになる必要がある。また、そういった生涯スポー
ツ社会の実現に向けては、学校における体育・スポーツが真にその具現化に資するもので
なければならない。今回の現地調査によりニュージーランドからは、幼少期に運動嫌いの
子供を作らないための個に配慮した「楽しさ」を重視する体育等の指導方法、地域に根差
した学校運営の仕組み、スポーツ文化の地位向上の意義など、日本の教育現場の抱える諸
課題を解決する上での多くの示唆を得ることができた。
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- 74 -
- 75 -
- 76 -
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- 78 -
あとがき
F-1団
副団長
磯
宜男
夏をイメージして訪れたニュージーランド(以下 NZ とする)首都ウェリントン。強
い風の中、ジョギングやサイクリング等のスポーツに親しんでいる現地の人々が非常に
多いことに驚きました。
今回、日本の子供たちの課題の一つである「体力・運動能力の向上」を解決するため
の示唆を得るため、ウェリントン、オークランド等を訪問させていただきました。
NZ は、SPARC(スポーツ&レクリエーション・ニュージーランド)の戦略プランを掲
げ、様々な施策を展開しています。「青少年身体活動に関する通信簿」の指標によると、
総合的な身体活動において「B」という高い評価を得ています。また、トップアスリー
トの競技力向上にも取り組んでいる国でもあります。
NZ 教育省や地域のスポーツ関係機関、プライマリースクールからハイスクールまで多
くの施設訪問を通じて、様々なヒントを得ることができましたが、中でも2点が課題解
決に向け大変参考になりました。
1点目は、学校と行政機関、また、スポーツ関係機関との強力な連携体制であります。
スポーツ関係機関のスタッフが実際に学校に出向いて子供たちに関わったり、プログラ
ムの実施に際し教職員にアドバイスを行ったりと学校の取組を支援していました。
2点目は、学校長の強いリーダーシップです。訪問させていただいた多くの学校にお
いて校長自ら「子供の体力向上」についてビジョン、計画等を説明してくれました。学
校によって取り組み方は異なるものの、子供の実態を踏まえ、子供一人一人の体力・運
動能力を向上させるといった校長の情熱がひしひしと伝わってきました。
事前研修から半年。12日間 NZ で得られた知見をそれぞれの所属校や地域に還元し、
取組に活かしてこそこの研修が実を結びます。今後は、各学校及び行政機関、スポーツ
関係機関が連携し、日本の子供たちの体力・運動能力が向上するよう、団員一同努力し
ていきたいと思います。
最後になりましたが、強力なリーダーシップと温かい心遣いで団をまとめてくださっ
た高田団長、派遣テーマに迫るため適切に導いてくださったシニアアドバイザーの出雲
教授、団員と心を一つにして名通訳をしてくださった大竹様、献身的なアテンドをして
くださった向井様を始め、このような研修機会を与えてくださった関係各位に感謝申し
上げ、あとがきといたします。
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