11月号 №67 金生山の小型有孔虫

Nov
2016
No.
67
大垣市金生山化石館
化石館だより
コラム
金生山の小型有孔虫
海岸の砂浜を歩くと、波打ち際に添って海藻類が細い筋状に打ち上げられていることがあります。こ
れらの中からはビーチグラスや美しい貝殻が見つかることがあり、これを拾って歩くのも楽しいもので
す。また砂浜に打ち上げられた海藻や貝殻の下にある砂を少々持ち帰って顕微鏡で観察すると、小さな
貝殻やウニの棘、有孔虫の殻などを観察することができ、いつの間にか砂の中の小さな生物の世界に引
き込まれてしまいます。
有孔虫は石灰質の殻をもつ単細胞の生物
です。大きさは殆どが1㎜以下の小さなもの
ですが、化石種では1㎝を超える大型の種類
もあります。金生山で最も多く見つかる化石
にフズリナがありますが、フズリナは絶滅し
た大型の有孔虫です。現生の大型有孔虫では
左:パラロタリア
右:シビシデス
いずれも現生種
星砂(ホシズナ・タイヨウノスナ)が比較
的良く知られています。
有孔虫の仲間は、カンブリア紀初期の地層から見つかっており、現在も世界中の海域に様々な有孔虫
が生息しています。有孔虫類は生息数が多く、殻の形体も極めて多様であり進化的な変化を調べるのに
適しています。そのため地層の堆積年代を比較検討するのに用いられています。また環境に合わせて異
なる種が棲み分けていますから、有孔虫の種類や種構成を調べることで古環境を推定していくのにも役
立っています。
赤坂石灰岩からも様々な小型有孔虫の化石が見つかります。通常
は大型有孔虫であるフズリナ類を調べるため薄片標本を観察して
いる場合に見つかるのですが、比較的大きな種であれば、石灰岩の
表面を磨き内部構造を見やすくすればルーペで見つけることも可
能です。金生山では、フズリナ類について良く調べられていますが、
小型有孔虫についての報告は少ないように思います。図鑑類にもあ
まり紹介されていませんので、馴染みのない方も多いと思います。
しかし、金生山からは実に多くの小型有孔虫が識別されており、未
確定のものを含めると 60 種にものぼります。
(小林文夫、2012)
研磨面で見られる小型有孔虫
右上はフズリナ
小型有孔虫化石については、新生代や中生代を対象とした研究が多
くなされています。これらの研究では、化石の入った岩石を砕き、様々
な手法で単体の有孔虫化石を取り出して観察がなされますが、金生山
の石灰岩中からはうまく取り出せませんので、薄片による観察が中心
でした。しかし、金生山の石灰岩からも単体の小型有孔虫化石を取り
出すことは可能です。それは、風化が進み泥質化した地層を探して洗
い出せばよいのです。
金生山の石灰岩層には稀に風化の進んだ泥質層が挟まれていること
があり、この泥質層から得られる半固結の石灰岩は容易に砕くことが
できますので、これを水洗して篩分けをした後、顕微鏡で確認しなが
ら丹念に調べて取り出すのです。以前は単体のフズリナや、巻貝、二
枚貝の化石を得るために行われていた採集方法ですが、その頃は細か
な砂泥を洗い流し捨ててしまっていました。しかし、捨てていた細か
な砂からも、微小な巻貝や二枚貝、更には貝形虫や石灰藻、有孔虫な
単体で取り出した小型有孔虫
どの微化石が取り出せることに気付き、単体の小型有孔虫化石が採集で
きるようになりました。大きな化石は破損していることが多いのですが、微化石の場合は破損が少なく
魅力的です。
古生代の小型有孔虫化石を単体で取り出した事例がないかと調べてみると、金生山でも単体の小型有
孔虫類を、裂罅堆積物から取り出したという報告(沖村雄二 他、2009)がありました。この報告では、
標本はいずれも殻が溶解した内型雄型であり、分類には不完全であるとしながらも4属が紹介されてお
り、内一つには新属の可能性あると指摘されていました。
以前は全く見ようとしていなかった細かな砂の中にも有孔虫化石が保存されていることが分かってき
ましたので、根気よく採集を続け資料を増やしていこうと思います。殻表面の様子を詳しく観察できる
ようになれば、また新しい発見があるかもしれません。
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後期企画展
「
期
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お知らせ
山にも貝がいた!
間
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―金生山の陸産貝類―
」開催中
10月8日(土)から1月30日(月)
展示説明をします。
ご希望の方は受付に声をかけてください。
(但し、館長不在の場合はご容赦ください)
問い合わせ: 大垣市金生山化石館
電話 (0584)71-0950
Email
(ファックスも同じ)
[email protected]