サービサー評価

ストラクチャード・ファイナンス
サービサー評価
りそな債権回収株式会社
アナリスト
住宅ローン
・ スペシャル
・ サービサー
(日本)
住宅ローン・
スペシャル・
サービサー(
村上和聡
東京
電話 03-4550-8673
フィナンシャルアナリスト
吉澤亮二
東京
電話 03-4550-8453
総合評価:
スタンダード&プアーズは 2 0 0 6 年 3 月、りそな債権回収
株式会社(以下「りそな債権回収」)に対して、住宅ロー
能力が高い
ン・スペシャル・サービサーとして「能力が高い」の総合
評価を付与した。りそな債権回収は、株式会社りそな銀行(BBB +/ポジティブ/ A2 )を中核とするりそなグループのサービサーである。
評価は、主に以下の要因に基づいている。
住宅ローン・スペシャル・サービサーとして、実績を蓄積しつつある。
経営陣および各担当者が関連業務において豊富な経験を持っている。
離職率が極めて低い。
業務推進手順が綿密に規定され、かつ理解しやすくまとめられている。
適切な内部監査を実施している。
社内の情報管理体制が整備されている。
社内教育・研修が充実している。
適切な災害復旧計画を設定しているとともに、システム復旧テストを実施してい
る。また、データのバックアップ体制が整っている。
効率的に業務運営をサポートできるコンピューターシステムが整備されている。
過去の詳細な債権管理回収データが蓄積されている。
回収戦略の策定過程が適切である。
資金管理の方法が適切である。
委託者および投資家に対するリポーティング体制が整備されている。
業務委託している第三者の管理方法が適切である。
アウトルック:
2006 年 5 月
りそな債権回収の主要業務は、不良化する恐れのある、も
しくは不良化した住宅ローン債権および法人向けローン債
安定的
権の管理回収である。当面は、りそなグループの不良債権
および延滞債権の管理回収に注力していくと思われるが、将来的には、第三者から
りそな債権回収株式会社
住宅ローン・スペシャル・サービサー(日本)
の管理回収業務の受託拡大も期待される。スタンダード&プアーズは、1 )りそな債権回収の業務
計画の進捗状況、2 )証券化案件の進展などに伴って高まるサービシング業務に対する投資家や
マーケットの期待、3 )そのような環境変化に対する同社の対応姿勢--などを注視していく。
プロフィール
りそな債権回収(旧あさひ債権回収株式会社)は 2000 年 10 月に設立され、2001 年 1 月に国内で 43
番目のサービサーとして法務大臣から認可を取得し、同年 2 月から営業を開始した。当初は、旧あ
さひ銀行グループの不良化した個人向け債権の管理回収に特化していたが、2003 年 10 月にりそな
債権回収株式会社に社名変更すると同時に、法人部門を設立した。現在は、りそなグループにおい
て、個人・法人両部門における債権の管理回収、事業再生を担う戦略性の高い子会社と位置づけら
れている。
東京に本社を置くほか、浦和、大阪、名古屋に拠点を設置している。2 0 0 5 年 9 月末時点の総役職
員数は 365 名である。
組織と経営:能力が高い
回収実績
住宅ローンのスペシャル・サービシングにおける取扱債権の大半は、グループ傘下のりそな保証株
式会社(以下「りそな保証」)と大和ギャランティ株式会社(以下「大和ギャランティ」)から委託
されたものである。りそな債権回収の債権回収実績は、以下の通り。
りそな保証と大和ギャランティから委託された債権の回収実績
( 単 位 : 億円)
2002 年 3 月
2003 年 3 月
909.4
34.0
642.5
110.1
635.2
124.7
654.8
139.1
674.8
180.0
32.0
28.9
103.0
59.1
116.7
69.2
130.2
77.3
163.8
87.4
競売
任売比率(② / ①)
3.1
90%
43.9
57%
47.5
59%
52.9
59%
76.4
53%
その他の方法による回収額
2.0
7.2
8.0
8.9
16.2
受託残高
総回収額
抵当権実行による回収額 ①
任意売却 ②
2004 年 3 月
2005 年 3 月
2006 年 3 月
管理職および担当者の業務経験
管理職、担当者ともに住宅ローンのサービシングにおいて豊富な経験を有している。東京、浦和、
大阪、および名古屋の個人事業各部には、計 2 人の管理職と 40 人の住宅ローンのスペシャル・サー
ビシング専担者が置かれている。
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Standard & Poor’s ス ト ラクチャ ード ・フ ァイナ ン ス
2006 年 5 月
管理職は平均約 1 1 年の不良債権関連の業務経験を含む、平均 2 3 年の業界経験を有する。
専担者は平均約 5 年の住宅ローンのスペシャル・サービシングの経験を含む、約 1 5 年の業界経
験を有する。
りそな債権回収には、住宅ローンの初期督促から延滞段階においてもサービシングを実行する部署
がある。それらの部署との連携により、各債務者の特性の分析が可能であり、求償権の回収の極大
化に貢献している。
サービサー業務開始以来、スペシャル・サービシングの専担者など、重要な役割を任う職員の離職
率は概ね低く抑えられている。一方、同社はりそなグループの 1 部門であることから、経験を積ん
だ管理職やスタッフがグループの他の部署へ異動する可能性がある。ただし、同社は不良債権処理
におけるスキルの高い人材の育成・確保を目指しており、新たな人員が配属される場合も、不良債
権の管理回収経験のある人材が充てられるとみられることから、サービシング・レベルの維持とい
う点については大きな懸念はないと考えられる。スタンダード&プアーズは、同社の方針に鑑み、
今後も住宅ローンのスペシャル・サービシングにおいて、人員の面では比較的安定的な環境が維持
されると考えている。
業務展開計画
りそな債権回収の中期経営計画には、以下の点が含まれている。
りそなグループの不良債権処理の集約
中小企業の再生支援への取り組みの強化
グループ外債権の受託拡大を通じた収益力の強化
当面、りそなグループの不良債権処理に重点が置かれると考えられる。一方、将来的には、第三者
向けサービシング業務の展開に軸足が移っていくことも十分に思料される。スタンダード&プアー
ズは、サービシング業務の委託者や投資家からの期待に対する同社の対応姿勢についても注意深く
見守っていく。
業務推進手順
りそな債権回収は業務関連事項を網羅した各種規程類を整備している。住宅ローンのスペシャル・
サービシング部門で活用している主要マニュアルは、以下の通り。
管理回収マニュアル
業務関連マニュアル
オンライン・オペレーション・マニュアル
コンプライアンス関連マニュアル
情報管理関連マニュアル
「管理回収マニュアル」には、取扱債権の詳細な管理、回収方法などの詳細な記載のほか、債務者
に対する督促の方法などについても具体的な事例を交えた説明があり、使用しやすいように作成さ
れている。「業務関連マニュアル」には、不動産競売申立マニュアル、証券化住宅ローン事務取扱
要領など、案件をスムーズに処理していくために、詳細な業務手続きを規定したマニュアルが準備
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2006 年 5 月
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りそな債権回収株式会社
住宅ローン・スペシャル・サービサー(日本)
されている。「コンプライアンス関連マニュアル」には、倫理網領、民事介入暴力対応、反社会的
勢力の管理手続き、訴訟等管理要領、インサイダー取引防止マニュアルなどが含まれている。また、
「情報管理関連マニュアル」には、個人情報の取り扱いや業務委託者の管理方法などが記載されて
いる。
スタンダード&プアーズは、同社のマニュアル類は極めて充実しており、各担当者の効率的な業務
推進に大いに役立っていると判断している。また、すべてのマニュアルがオンライン化されており、
社員が容易にアクセスできる点も評価している。
監査体制
「サービサー法遵守」を最大の課題と位置づけた監査体制を構築している。規則に基づいた業務徹
底のため、自主検査を含めた内部監査と銀行内部監査部による監査制度を有する。
■業務監査部による内部監査
業務監査部は、主として「サービサー法における行為規制の遵守状況」「法定帳簿の作成状況」「個
人情報をはじめとする社内情報の管理体制」を把握し、業務リスクの所在を明確にする目的で、定
期的に各部の監査を実施する。監査には年 1 回の頻度で行われる実地監査と、半期に 1 回の頻度で
行われる書面監査とがある。監査が実施された翌月には、社長を含む役員に報告書が提出される。被
監査部門は、監査で指摘された事項について原則 1 カ月以内に対応策を策定することが求められる。
■部門別自主検査
社内の検査規則に基づき、検査項目に応じて、毎月または四半期ごとに、数名の社員が検査担当者
に任命され、各部門の事務処理や情報管理の正確性、厳格性、社内規程の遵守状況などを確認・検
証する。検査結果は検査後、被検査部門から業務監査部を通じて社長に報告される。不備事項対応
状況については、業務監査部が改善策の実施状況を検証の上、社長に報告される。
■銀行内部監査部による監査
6 - 7 名の監査専門担当者による監査。概ね年に 1 度実施され、業務全般にかかる内部管理が維持
されているか、内部統制が機能しているかを監査する。監査後、約 1 カ月で詳細な報告書がまとめ
られ、社長に提出される。改善必要事項については、指摘後約 2 カ月以内に対応策を提出するよう
要求される。2 0 0 5 年 8 月に実施された監査では、重要と判断される不備事項はなかった。
同社の監査や検査は、内部統制の機能を点検する上で包括的かつ十分なものと判断できる。
上記の監査に加え、以下の 2 種類の外部監査を受けることになっている。
サービサー法に基づき法務省司法法制部審査監督課が行う検査
監査法人による会計監査
個人情報保護法および情報漏洩防止対策
グループ共通の規程とマニュアルを活用しつつ、りそな総合研究所株式会社のコンサルティングに基
づいて、個人情報ならびに社内の重要情報に関するセキュリティー管理体制の構築に注力している。
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りそな債権回収の重要情報に対する安全管理措置の主要点は、以下の通り。
組織的対応:情報管理責任者を任命。情報取扱基本方針、情報取扱規程、個人情報取扱基本規
程、情報セキュリティー対策基準をはじめとする各種の情報管理・保護に関する規程の整備。
技術的対応:入退出、PC ・記録媒体の管理、情報システムへのアクセス権限の管理、保守運用委
託先の管理。
人的対応:情報安全管理措置の周知徹底。研修の実施。
業務委託先の管理:業務委託先選定基準の明確化。委託先に対する監査の実行、委託先からの業
務報告の受領。
上記とは別に、情報漏洩事故発生時の対応についても詳細に規定されている。
社内研修
専門性を備えた人材の育成をめざし、各種の社内研修を実施している。全社的な研修については、
経営管理部企画室がプログラムの企画、コーディネートを担当している。研修の講師は主に、サー
ビシングにおける特定の問題に関して専門知識を持つ管理職や社内外の弁護士などである。主な研
修プログラムは、以下の通り。
新任担当者研修:新任担当者の早期戦力化を目的に実施される研修。主な内容はサービサー法の
概要、回収業務に関する基礎知識、事務、システムなど。
コンプライアンス関連研修:サービサー法をはじめとする関連法務の研修。コンプライアンスに
かかる知識・意識の向上を目的に実施される。
個人情報保護関連研修:業務執行における個人情報の取り扱いの留意点、個人情報保護法遵守の
重要性等を社員に理解させることを目的に実施される。
業務関連研修:交渉記録記載事項、競売手続きなど、サービシング実務に直結した内容の研修
で、業務の効果的かつ効率的な遂行の支援を目的としている。
好事例発表会:社内における業務知識の共有化を目的として実施される。概ね半期に 1 度の頻度
で開催される。
これら内部研修のほか、社員に対してサービシング業務に関連する社外研修への参加や通信講座の
受講が奨励されている。
各社員の年間研修時間は概ね 2 0 - 4 0 時間である。スタンダード&プアーズは、現在の研修プログ
ラムは概ね適切であると認識している。加えて、りそな債権回収が過去の研修の効果を分析するこ
とで、研修をより効果的なものにしていくことを期待している。
システムのバックアップおよび災害復旧計画
スペシャル・サービシング業務遂行については、NTT コムウェア株式会社(以下「NTT コムウェア」
)
と共同開発した「りそな債権回収管理システム(RS システム)
」を使用している(詳細は「スペシャ
ル・サービシング」の「業務サポート・システム」の項を参照)。本社には I T 専門スタッフが 4 人
常駐しており、システム障害に備えている。比較的重大なシステム障害が発生した場合は開発業者
に対応を依頼するが、連絡後およそ 6 0 分以内に担当者が来社することになっている。
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住宅ローン・スペシャル・サービサー(日本)
災害に備えた日々のデータ管理やバックアップ方法は、以下の通りである。
N T T コムウェアの都内の運用センター内のサーバーを二重化しており、障害発生時には自動的に
バックアップ・サーバーに切り替えられる。なお、同センターは震度 7 までの地震に耐えうる構
造を有している。
サーバー内のデータについては、D L T (磁気テープを利用した大容量記憶装置)により日次で保
管される。
週次ベースのデータも D L T に記録され、名古屋にあるデータ保管センターに送付される。なお、
名古屋のデータ保管センターも、震度 7 までの地震にも耐えうる耐火耐震構造を備えている。
近い将来にサーバーの容量を拡大する計画があり、その結果、業務が数倍に拡大しても十分に耐
えうる水準が確保される予定である。
「システム障害対策規程」が 2 0 0 2 年 8 月に制定されているほか、「危機管理基本方針」、「危機管理
体制に関する規程」、「災害対策規程」、「災害対策マニュアル」が 2 0 0 5 年 4 月に整備された。また
「災害時ハンドブック」が 2 0 0 5 年 9 月に制定され、社員に携行用として配布されている。
2005 年 7 月には、都内の NTT コムウェア運用センターおよびりそな債権回収の本社ビルが被災したとの
想定のもと、バックアップ・テープからのデータ復旧、ならびに浦和および大阪を代替オフィスにした
場合の災害復旧テストを実施した。バックアップ・テープを活用した復旧テストでは、別のサーバーを
利用することによって、バックアップ・テープ到着後約 5 時間でデータを復元できることを確認した。
データの保管体制が確立されていること、災害発生時の復旧計画が詳細に策定されていることから、
災害発生時にも比較的短時間で重要業務が再開できると思料される。スタンダード&プアーズは、
同社が今後、各拠点において、1 2 - 1 8 カ月ごとにシステムダウンを想定した復旧テストを実施す
ることを推奨する。
社員への報酬
りそなグループ共通の人事制度に基づく評価・報酬体制が適用されている。グループ業績、会社業
績、および個人業績に応じた「業績インセンティブ」が年 1 回支給される。
保険
情報漏洩に備えた保険への加入を検討している。
訴訟関連
現在、りそな債権回収自身が被告となっている訴訟はない。
スペシャル・サービシング:能力が高い
りそな債権回収の住宅ローンのスペシャル・サービシング・ポートフォリオは主として、りそな保証
および大和ギャランティから受託した債権で構成される。2006 年 3 月期末の受託残高は約 675 億円で
ある。住宅ローンのサービシングについては、東京、浦和、大阪、および名古屋の個人事業各部が、
各拠点の業務と業績の責任を負っている。個人事業各部の主な責務は、不良債権化した住宅ローンを
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扱う他のサービサー同様、回収額の極大化と回収期間の短期化である。債権回収の実行にあたっては、
「委託会社が代位弁済実行後、早期に競売を申し立てた上で、物件所在地別、物件種類別の競売配当
率などを見極めながら任意売却を中心に回収の極大化を図ること」を基本方針としている。回収期間
については、約 80%の債権で受託後概ね 1 年以内に回収を終了させている。なお、同社のスペシャル・
サービシング・ポートフォリオ構成債権の約 8 0 %が国内の三大都市圏に集中している。
りそな債権回収は、不良債権に加えて、初期段階からの延滞債権も取り扱っており、延滞債権の正
常化、延滞期間の短縮化に注力している。延滞債権の取扱額は、2006 年 3 月期末時点で約 3,300 億
円である。
業務サポート・システム
住宅ローンのサービシング・システムとして、N T T コムウェアと共同開発した「りそな債権回収管
理システム(R S システム)」を使用している。同システムを用いて、全ポートフォリオの債務者お
よび保証人概要、受託債権概要、担保物件の詳細情報、回収履歴、延滞状況、競売・任売進捗状況、
交渉履歴、自己査定、償却事務関連データ、返済シミュレーションなどを管理している。システム
の操作は容易で、包括的かつ理解しやすいマニュアルが用意されている。担当者が必要な情報に迅
速にアクセスできる点も、業務の効率的な遂行に役立っているとみられる。
担当者への受け持ちローンの割り当て
担当案件は、住宅ローン・スペシャル・サービシングを担当する各社員の業務経験・知識、業務量
などを考慮のうえ、東京、浦和、大阪、名古屋のそれぞれの個人事業部長によって割り当てられる。
各担当者は平均 1 5 0 件のローンを受け持っており、これはわが国の市場においては適切な数である
と思われる。割り当ての見直しは部長により適宜行われる。
回収戦略の策定
スペシャル・サービシング担当者は、物件と債務者について得られるすべての情報に基づいて新規
に割り当てられたローン債権を分析し、各債権の回収方針および戦略を策定する。ローン債権引き
受け後、担当者とその上司は概ね 30 日以内に債権の回収計画を策定することが求められている。回
収方針の最終決定責任者は各個人事業部の部長である。決定された回収方針は委託先に報告される。
当初計画による債権回収が困難と判断された場合は、随時、回収計画の見直しが行われる。計画の
見直しや進捗状況についても、随時、委託先に報告される。また個人事業各部の回収の進捗状況に
ついては、月次開催の部長会で報告される。
システムへのローンデータの入力およびチェック体制
りそな保証および大和ギャランティのローンに関するデータは、専用回線を通じて直接システムに
送られる。これらの入力データの検証は委託者側でも行われる。データを取り込む際に支障が生じ
た場合には、社内のシステム担当者、あるいは必要に応じて N T T コムウェアの社員が対応する。第
三者オリジネートローンについては、同社が指定するフォーマットでデータを受領することで入力
が可能である。この場合も、システム担当者と N T T コムウェアの社員が二重に検証した上で、委託
者に確認を求めることで入力内容の正確性を確保する。
ローンデータの入力、チェックは適切に行われていると判断される。
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資金管理
債務者から入金があった場合、確認とリコンサイルが当日中に実行される。
回収金は委託者ごとに別口座で管理されている。債務者には、原則として口座振り込みによる支
払いを要求している。
経理担当者が、回収担当部署作成の入金依頼書類と実際の入金額を突き合わせ確認する。金額の
相違がある場合は、回収担当部署が確認した上で対応する。
債務者が物件売却などで、比較的多額の金額を直接支払うことを希望する場合には、2 人の担当
者が物件購入者に同行し、銀行で支払い手続きを完了後、回収金を指示された口座に送金する。
送金は、以下の手順で実施される。
回収担当部署の事務担当者が R S システムに入力した内容を回収担当者が確認した上で、さらに
回収担当部署の上席の承認を経た後、委託者に回収データが送信される。
実際の送金については、経理担当者が上席の承認を経て実行する。
委託者側において、回収データと送金額が一致していることが確認される。
スタンダード&プアーズは、同社の資金管理について、適切な職責の分離がなされており、不祥事
発生のリスクを回避する手段が採られていると評価している。
投資家・委託者向けリポートおよび回収データ管理
りそな債権回収は、過去の住宅ローンの管理および回収についての詳細なデータベースを整備して
いる。委託者および投資家向けリポートは基本的にこのデータベースを利用して作成される。リ
ポートは、委託者とりそな債権回収で合意したフォーマットに従って作成される。
このデータベースを活用することで、これまでの住宅ローンの回収結果について、物件種類別、地
域別、回収手法別、ローンのオリジネート時期別などによる分析が可能となっている。将来的には、
第三者がオリジネートしたローン債権の物件種類や所在地などのポートフォリオに応じて、回収見
込み額、回収予定期間などに関するより適切な試算、ポートフォリオに対する値付けの妥当性の検
証、回収戦略立案の短期化に寄与することも可能であろう。
不動産仲介業者の利用
不動産仲介業者を活用するにあたって、地域特性、取り扱い実績、財務内容、提示金額などを考慮
し、個別案件ごとに業者を選定している。
今後は、仲介業者から得たデータを蓄積し、システム内でデータベース化して、業務の一層の発展
と効率化を図ること、および不動産仲介業者の効率的な管理が期待される。
法律事務所の利用
りそな債権回収は、同社の業務を熟知している篠崎総合法律事務所と親密な関係を維持している。
必要に応じて社員が適切な弁護士に連絡がとれる体制が敷かれており、業務遂行に役立っている。
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財務的信用力:懸念なし
スタンダード&プアーズは、りそな債権回収の財務状況について、現在特に重大な懸念はないと判
断している。
りそな債権回収株式会社
英文名
所在地
Resona Servicer Co., Ltd.
本社
〒102-0074
東京都千代田区九段南1丁目5番6号
経営管理部 企画室 TEL 03-3288-7969
FAX 03-3288-7999
代表取締役
林 清美
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スタンダード&プアーズ
サービサー評価
サービサー評価とは、種々の債権の回収に従事するサービサーのサービシング能力の客観的かつ総合
的な評価です。この評価は当社の通常の格付けと同様、アナリストによる評価委員会が最終決定いたし
ます。サービサー市場のリーダーである当社は、米国において 1 0 年以上前からこのサービスを提供して
きており、全世界で約 3 0 0 社を評価しています。日本においても、1 9 9 9 年 1 0 月に、格付会社として初め
て評価を開始して以来、着実に実績を積み上げつつあります。
サービサーの対象
サービサー評価は、以下のような種類のサービサーを対象とします。各々のサービサーをスペシャル、
プライマリー、マスターに分類した上で評価します。
商業用不動産担保付債権を取り扱うサービサー
住宅ローン債権を取り扱うサービサー
金銭債権(無担保商業用ローン、個人向け債権)を取り扱うサービサー
評価のランキング
サービサー評価は、「能力が極めて高い」「能力が高い」「能力が十分である」「能力に不十分な点があ
る」「能力が不十分である」の 5 段階のいずれかの評価が与えられます。「能力が十分である」以上の評価
を取得したサービサーは、スタンダード&プアーズの「セレクト・サービサー」リストに加えられます。
サービサー評価のプロセス
1 .同意書締結
サービサーと当社との間で、評価の過程、期間、および費用などについて同意書を締結します。
2 .サービサーによる資料の提供、および実査
評価の対象となる、サービシング業務に係る詳細な資料、情報を提供して頂きます。また業務をより
正確に把握するため、サービサーを訪問し、実査を行います。さらに、必要に応じ、追加資料ならび
に情報の提供をお願いすることがあります。
3 .評価の決定
提出された資料・情報に基づき、当社のアナリストチームが分析を行います。評価委員会における討
議を経て、評価を決定します。
4 .分析結果の通知
サービサーにその結果と理由をお知らせします。評価結果をニュース・リリースすることも可能です。
5 .レポートの作成・公表
評価の根拠とともに、サービシング体制について詳細なレポートを日本語ならびに英語で、作成しま
す。ご希望により、そのレポートを公表いたします。
6 .毎年のレビュー
サービサーの能力の変遷を確認するために、毎年レビューを実施します。
スタンダード&プアーズ(ザ・マグロウヒル・カンパニーズの一部門)より発行 ©2 0 0 5 ザ・マグロウヒル・カンパニーズ
本誌の無断転写・複製を禁じます。ザ・マグロウヒル・カンパニーズ 会長兼社長-ハロルド・W・マグロウⅢ
本社- 1221 Avenue of the Americas, New York, NY 10020, U.S.A.
スタンダード&プアーズ:55 Water Street, New York, NY, 10041, U.S.A.
スタンダード&プアーズ東京:東京都千代田区丸の内 1 - 6 - 5 丸の内北口ビル 2 8 階
スタンダード&プアーズ・レーティング・サービシーズが提供する分析サービスは、 格付け意見の独立性と客観性を保つために、
他の機関から分離・独立して行われています。格付けは意見であり、事実を表明するものではなく、また、証券の取得・保持・売
却を推奨するものではありません。スタンダード&プアーズは、格付け作業の過程で入手する非公開情報の機密を保持するため
の方針と手続を確立しています。
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サンティアゴ
サンパウロ
サンフランシスコ
シカゴ
シンガポール
ストックホルム
ダラス
東京
トロント
ニューヨーク
パリ
ブエノス・アイレス
フランクフルト
ボストン
香港
マドリッド
メキシコ・シティ
メルボルン
モスクワ
ロンドン
ワシントン D.C.
www.standardandpoors.co.jp