近代文学 明治文学の概観 明治文学・西洋近代文学の影響を強くうけた新しい文学が作 り出されていった。すなわち、啓蒙主義、写実主義、ロマン主義、 自然主義と発展した四十年あまりの明治文学史の間に、従来の漢詩 文、和歌などの伝統的文学に代わってヨーロッパ近代小説の影響を 強く受けた小説が、文学の主流を占めるようになり、西洋の近代詩 にならって新しい叙情詩が生まれた。その他、短歌、俳句などのジ ャンルでも、それぞれ文学改良運動がおし進められたのである。 しらかばは た ん び は 大正文学・「白樺派」の文学は、 「耽美派」の文学と同じく、 反自然主義の立場をとった。また、この「白樺派」の文学のあとを 受けて「新現実主義」の文学が生まれたが、一方プロレタリア文学 も隆盛に向かった。 昭和前期文学・昭和前期の文壇では、西洋二十世紀前衛的文 へいめん 学の影響を受けながら、自然主義の平面的な描写と対立した新感覚 派の文学が起こったが、実験の域をぬけ出ることはできなかった。 この流れをくんだ新興芸術派がつづいて起こった。一方プロレタリ ア文学は、一時大きな文学運動となったが、きびしい弾圧と深刻な 24 内部分裂とによって解体していき、1934 年ごろから「転向文学」を 生むことになった。 戦時下に入っては、小数のすぐれた作家達は、芸術性を守り つづいていた。 戦後文学・戦後文学は多様に展開した。まず、敗戦と同時に ろうたいか 永井荷風・谷崎潤一郎・志賀直哉などの老大家の作品が発表され、ま た、プロレタリア文学の作家達も「新日本文学会」を中心に活動し どうじん たが、それとともに「近代文学」の同人たちによる批評活動、新し い戦後派作家の出現が注目された。つづいて、昭和二十五年ごろの おおおかしょうへい 状況を背景に、大 岡 昇 平 ・阿部公房などの作家たちが、第二次戦後 しんじん 派作家として登場した。このあと、「第三の新人」と言われる、戦争 中に青年時代をすごした、戦中時代の作家たち、さらに混乱した戦 後に育った戦後世代の作家たちがつづいた。 25
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