青山学院大学 国際マネジメント研究科 履修体系図 Full‐time MBA、Flex

青山学院大学 国際マネジメント研究科
【基礎情報】
◎ 履修体系図
専門科目(選択)
300番台
基本科目
(必修)
基本科目
(選択)
100番台
200番台
マネジメント
マーケティング
専門科目
500番台
ファイナンス&アカウンティング
OIS(オペレーションズ・情報システム)
法務研究科目 400番台
出所:同校ウェブサイトをもとに大和総研作成
◎ Full‐time MBA、Flex-time MBA のカリキュラム抜粋
基本科目(100)必修
経営戦略基礎
ファイナンス基礎
マーケティング基礎
アカウンティング基礎
オペレーションズ・情報システム基礎
企業倫理とコンプライアンス
企業経営の経済学
統計分析Ⅰ
組織行動
マネジメント専門科目(300)
イノベーション・マネジメント
新事業とベンチャー
アントレプレナーシップ
基本科目(200)選択
プレゼンテーション・スキル
マクロ経済学
マクロデータ分析
制度と市場
経営史
異文化マネジメント
リスク・マネジメント
経営倫理と宗教
等
マーケティング専門科目(300)
グローバル・マーケティング
マーケティング環境
消費者行動論
等
等
ファイナンス&アカウンティング専門科目(300) オペレーションズ・情報システム専門科目(300)
コーポレート・ファイナンス
起業とIT
国際ファイナンス
ネットビジネス
インベストメント
ITソリューション
等
等
法務研究科目(450)
民事法特講B
消費者法
グローバル・アクション・ラーニング科目(500)
マネジメント・ゲームⅠ・Ⅱ
Global Seminar
FASTⅠ・Ⅱ
ABEST21セミナー
インターネット・ビジネス・プロジェクトⅠ・Ⅱ
中国セミナー
ファンド・マネジメント・シュミレーション
海外招聘教員講座
ビジネス・プランニング
Macquarie講座
(網掛けは同研究科が指定する「2008年度 起業家教育関連講座」に該当するもの)
出所:同校ウェブサイトをもとに大和総研作成
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(ⅰ)起業家教育の経緯
青山学院大学国際マネジメント研究科は、1990 年 4 月に開設した、私立大学初の夜間大学院
「国際ビジネス専攻修士課程」を前身としており、長い歴史を有している。2003 年に専門職大学院
国際マネジメント専攻として改組され、今日に至っている。現在までに 1350 名の修了生を輩出し、
専門職大学院としても 500 人の修了生を送り出したが実績がある。博士課程のクラスも含め、現在、
約 200 名が本研究科に在籍している。
理念としてはグローバル、アントレプレナーシップ、IT を掲げており、修士課程では「“企業家精
神”をもって事業構築や組織変革を行う能力を持つ経営プロフェッショナル」の養成を目指してい
る。“起業家”ではなく“企業家”を掲げているのは、ベンチャー起業だけではなく、既存の組織の中
でイノベーションを目指す者も含まれていることを示している。
(ⅱ)起業家教育の構成
履修生の様々なニーズに応えて複数のプログラムが用意されているのが強みである。修士課程
では以下の 3 つのプログラムがある。
①「Full-time(フルタイム)MBA」・・・主として昼間に科目履修を行う。2 年間で修了する。
②「Flex-time (フレックス)MBA」・・・主として平日夜間および土曜日に科目履修を行う。3 年以
上の職業実務経験が必要。標準修業年限 2 年間のコース以外に標準修業年限 3 年間のコースも
ある。
③「Executive(エグゼクティブ) MBA」・・・15 年以上の職業実務経験が必要で、指定企業推薦
が必要。1 年間で修了するプログラムである。
①のフルタイム MBA と②のフレックス MBA のクラスは、授業時限が異なるだけでカリキュラムの
構成は同じである。すなわち、同じ内容の授業が昼と夜とで開講されている。
専門職大学院であるため、いずれも、修士論文の提出は必要がないが、修了要件として、後述
の「グローバル・アクション・ラーニング科目」(8 科目)から 1 授業を選択することや、修了までに
TOEIC の試験で 730 点以上を取得することなどが課せられている。
1回生の内訳においては、100 名中、60-70 名がフレックス MBA で、学生の平均年齢は 35 歳
程度である。昼間は通勤し、夜間に通学する社会人学生が中心であり、割合として最も多い。フル
タイム MBA 履修者は 20-30 名であり、平均年齢は 25-30 歳とフレックス MBA に比べるとやや若
く、留学生が多い。EMBA は 10 名強であり、企業の役員クラスの履修者もいるように、平均年齢は
比較的高い。
講師は、20 名が専任教員、50 名が非常勤教員である。3 分の 1 が米国 MBA 経験者、3 分の1
が実務経験者、3 分の1が学者であり、バランスの取れた講師構成となっている。
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フルタイム MBA およびフレックス MBA の開講科目は、「基本科目(必須・選択)」、「専門科目」、
「法務研究科目」、「グローバル・アクション・ラーニング科目」で構成されている。
1 年次の春学期において「基本科目(必須)」を履修し、経営各分野の共通の基礎となる企業倫
理、経済学、組織行動などを学習する。その後、1年次の秋学期から 2 年次にかけて「基本科目
(選択)」を履修し、高い倫理観と国際的視野などビジネスに欠かせない資質を身につける。
1年次の秋学期から 2 年目にかけては「専門科目」を履修し、4 つの専門分野(マネジメント、マ
ーケティング、ファイナンス&アカウンティング、オペレーションズ・情報システム)から 1 つの分野を
専攻し、自らの専門性を伸ばしていく。また、他学科にあたる法務研究科(法科大学院)、会計プロ
フェッション研究科(会計専門職大学院) の授業も履修することができ、「法務研究科目」として単
位認定される。
2 年目(3 年コースの場合は 3 年目)には、「グローバル・アクション・ラーニング科目」を履修し、
企業経営を模擬学習するマネジメントゲームや、資産運用のシミュレーション等を通じて、それまで
学習してきた知識を実際に活用していく。経営各分野における知識の統合、分析ツールの実践的
活用、グループワークなど、応用的な訓練を行っていく。
国際マネジメント研究科では、図表 1 に示すとおり起業家教育関連講座として 5 つの講座を提
示している。「アントレプレナーシップ」「起業と IT」「新事業とベンチャー」が専門科目に該当し、
「ビジネス・プランニング」がグローバル・アクション・ラーニング科目に該当する。また、「新事業開
発戦略とベンチャー」は 1 年間で修了する EMBA の授業になっている。これらの受講者数を足し
合わせると、2008 年度は延べ 139 人となり、在学生数約 200 人のうち 70%が受講したことになる。
図表 1 起業家教育関連講座 2008 年度
講座名
アントレプレナーシップ
起業とIT
新事業とベンチャー
講 師
熊平美香 (非常勤講師)
藤原 洋 (専任教授)
前田 昇 (専任教授)
前田 昇 (専任教授)
ビジネス・プランニング
・高橋文郎(専任教授)
新事業開発戦略とベンチャー 長谷川博和 (非常勤講師)
単位数
2単位
2単位
2単位
受講対象
1,2回生
1,2回生
1回生
受講生人数
14人
16人
55人
2単位
2回生
41人
2単位
EMBA
13人
出所:国際マネジメント研究科資料に基づき大和総研作成
「アントレプレナーシップ」は、ハーバード大学 MBA を取得した熊平美香氏が非常勤講師を務
める。熊平氏は、起業家としての経験も持ち、現在はコンサルタント会社を経営している。「起業と
IT」は、インターネット総研株式会社の代表取締役であり、日本のインターネットの揺籃期から専門
家として活躍してきた藤原洋氏が専任教授として担当している。「新事業とベンチャー」は、日本
IBM、ソニーで要職を務め、その後、複数の大学で起業家教育に携わってきた前田昇氏が担当し
ており、今年度始まったばかりだが、履修生約 100 名のうち 55 名がとる人気授業となっている。以
上はフルタイム MBA またはフレックス MBA で履修できる授業であるが、前述のとおり、EMBA で
もベンチャーキャピタリストの長谷川博和氏により、「新事業開発戦略とベンチャー」を開設してい
る。
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前田氏と研究科長である高橋文郎氏の 2 人で担当する「ビジネス・プランニング」はグローバル・
アクション・ラーニング科目にあり、履修の総仕上げ的な科目の 1 つとなっている。
前期 14 回、後期 14 回の授業のうち、「ビジネス・プランニング」では、ほぼ講義 1/3、体験談 1/3、
実践 1/3 という構成となっている。講義だけでなくベンチャー経営者の体験談を聞いたり、ビジネス
プランを作成したりすることにも重きを置いている。ベンチャー経営者の誰に体験談を語ってもらう
か、グループワークをどう持っていくかは大事なポイントとなる。
同授業では、ビジネスアイデアやビジネスプランの作成等を通じて自ら考え創り出すことを重視
している。具体的には、実現性の高い新規ビジネスの事業計画(約 30~50 ページ)を少人数のグ
ループ(約 3 人)で練り上げ、最終的にはベンチャーキャピタルやエンジェルに提出可能なレベル
になるまで完成度を高めていく。これにより、社内起業も含めたベンチャービジネス起業実現をめ
ざす能力を養成する。実際に、中国人留学生などは、同授業を履修した後、そのビジネスプランを
もとに本格的な事業を開始している。
起業家教育において“修羅場における決断力”と“マーケティング”を教えることが重要だと考え
られている。ここでいう“修羅場”とは、経営者としての真価が試される、会社経営における危機の
状態を指している。また、“マーケティング”は、そもそもどこにビジネスチャンスがあるかを見極める
センスを磨くために軽視してはならない要素である。
(ⅲ)課題と展望
例えば、受講生の多い授業に関する課題が挙げられている。起業家教育に対する人気が高い
ことはよいことであるが、一方で、受講生に対して十分に配慮が行き届かなくなる可能性もある。そ
のため、ある程度、選抜によって人数を絞ることも重要であると考えられている。
今後の展望としては、目的別に履修モデルを作ることを検討しようとしている。「起業家を目指し
たい」「経営をサポートする立場に就きたい」「企業の中堅クラスとしてマネジメント力の強化を図りた
い」等、様々なニーズがあり、それにふさわしい授業がどれなのかを示すことで、より効率的な授業
の選択が行えるようになろう。
留学生を除けば、原則社会人経験者しか受け入れてこなかったが、2009 年度より学部卒業生も
入学できることになる。社会経験がなければ経営センスを身に着けることや、ディスカッションに参
加することは難しいとされ拒まれ続けてきたが、学部卒業生が加わることで、新たな挑戦が試みら
れることになろう。
(ⅳ)学生に対するヒアリング
「ビジネス・プランニング」については実際に授業に出席し、学生側の意見についてもヒアリング
した(図表 2 参照)。起業、起業家についてはさまざまな意見が聴かれたが、総括すると「起業家教
育はベンチャーの設立をめざす人にとっては勿論、それ以外の人にも十分役に立つ」、「起業(家)
は決して自分に縁のないものではなく、親近感を持つようになった」という意見が大勢を占めた。
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図表 附 2-4 「ビジネス・プランニング」の受講生に対するヒアリング結果
MBAの履修動
機
青山学院大学
を選んだ理由
起業してみたい
か?
Aさん
男性
社会人5年目
法学
Bさん
女性
社会人8年目
理工・情報理工
Cさん
男性
社会人12年目
法学
Dさん
男性
社会人26年目
政治学
Eさん
男性
社会人11年目
文学
Fさん
男性
社会人11年目
化学・博士課程
Gさん
女性
社会人15年目
文学
小売業
総合電器メーカー
飲料製造メーカー
化学製造メーカー
人材サービス業
外資系化学製造メー
カー
外資小売
自分の仕事しかわから
ず、視野が狭くなるのが
いやだった。体系的に
ビジネスを学んで、今
やっている業務を見直
したい。
よくMBAを受講する人
はキャリアアップを考え
るそうだが自分は転職
は考えていない。ただ、
今いる会社の中でマネ
ジメント能力を活用でき
るように、スキルアップ
し、業務のエキスパート
になると同時にゼネラリ
ストにもなりたい。
今いるところは海外の
MBAホルダーが多く、
彼らが用いる経営の専
門用語を理解したかっ
た
経営企画本部の人間と
して事業戦略・経営戦
略を理解したかった。身
近にMBAホルダーがい
て、どういう勉強をして
いるかが気になってい
た。
会社はベンチャー的気
風が強く、自ら変革し、
オーナーシップを持った
人材が求められてい
る。また、人材サービス
業という立場から雇用
責任というのを重要なこ
とと考えており、重大な
判断を迫られることもあ
る。その際的確な意思
判断ができるように、学
びたいと思った。
博士号を持って研究開
発を行なっていたが、マ
ネジメントもやりたかっ
た。勤めている会社に
はPh.D取得者にMBAを
持たせる助成があっ
た。
元SEで、多忙だったが
ため転職し、社内SEと
なったが自分の業務が
アウトソースされるかも
しれないと危機感を感じ
た。そこでMBAでスキル
アップを狙っている。
立地の便がよく、他大
学と比較してバランスの
取れた科目構成で体系
だった知識を学ぶのに
役立つと思ったから。
授業構成のバランスよ
く、働くものに配慮した
時間設定となっており、
専門分野もはっきりして
選びやすかった。
修士論文がなく、その
分余裕があり、自分の
目指しているゼネラリス
ト教育に向いていると
思った。また英語教育
が充実している点も動
機となった。
-
-
1年目のビジネスプラン
のアイデア出しから始
まって、体系的にかつ
実践的にマネジメント・
スキルを育成し、総仕
ABSの講座を 上げまでしっかりと教え
受講してよかっ てくれる点
た点
ABSの講座で
改善すべき点
-
若いので社長と会う機
会などあまり無かった。
接してみると普通の人
のようにも思えるが、思
この講座を受け い込み・信念の強さは
て起業家のイ 感じる。
メージはどう変
わったか?
どういう起業家
教育を受けて
みたいか?どう
すれば起業は
増えると思う
か?
-
-
-
-
-
-
講座間の差別化をはっ
きりさせることや人数の
面での調整も必要かと
考える。カリキュラムは
さらに体系化したほうが
よく、実績のある教員を
今以上に招き入れて
ニーズに合わせたコー
ス構成を期待したい。
今までのイメージは良く
なかった。野心むき出し
のタイプを想定していた
が、話を聴いてみて、何
よりも理念・動機という
ものが大事だということ
がわかった。
-
-
-
-
-
-
起業というのは思った
以上にリスクが大きい
のがわかった。成功の
確率は低く、正直起業
はやめた方がよいと
思った。むしろ企業家か
らは人付き合いや人と
のつながりをどう構築し
ていくかを教わりたい。
人脈力を学びたい。
-
独立しようと思う学生に
とっては、アイデアや時
代の波、方向を教わる
ことができ、自らが持っ
ているビジネスのコンセ
プトも鍛えてもらえる。
スピンアウトしようという
人にも有意義。今まで
無かった知識を得て、
経営というものの流れ
がわかりつつある。
企業でいえば経営企画
のポストにあるような
(優秀な)人材が授業し
てくれる点
-
-
-
どちらかといえばアウト
ローな人をイメージして
いた。しかし授業で接し
てみて、むしろ純粋な
人、そして自分の人生
を賭けてまで(目標を)
やりとげる意思のある
人だということがわかっ
た。
別世界の人だと思って
いたが、むしろ取っ付き
やすい人のように感じる
ようになった。確かにリ
スクを背負う必要はあ
るが。そういえば母方の
祖父は今で言うスピン・
オフ・ベンチャーの社長
だった。自分にも起業
家の血がながれている
ことを感じるようになっ
た。
-
-
会社間留学みたいなも
のができると良い。違う
文化に触れたい。安定
的にそういうスキームが
あると起業はもっと増え
ると思う。
出所:ヒアリングに基づき大和総研作成
5
できれば起業してみた
いなと考えている。起業
というものを自分から程
遠いものとしては考えな
くなった。
-
どちらかといえば起業 仕事では中小企業の60
家は金儲け主義の人が 代、70代の社長さんに
なるものと考えていた お会いする機会が多
が、前期13回の授業を い。自分の枠を決めて
受けて理念が大事だと しまわずに、すべてをな
わかった。生の社長の げうって起業する、自分
声は凄く財産になった より若い世代あるいは
ので、毎年別の人が来 同世代の人の話を聴き
てくれると嬉しい。一方 たい。
起業は綺麗事では済ま
ないということも知った。
失敗例を学ぶ授業を受 中国の工場で実際に見
けてみたい(成功事例も 学してみて始めて現地
交えて、ではなく失敗例 の経済環境等が理解で
だけで構成された授業) きた。自分はやはり起
業家の多い西海岸に
行ってみたい。
-
-