電磁波の放射

 電磁波の発生
九州東海大学 大学院 工学研究科
情報工学専攻
井手口 健
目次
7.1 電磁波の発生を理解する基本的なこと・・・・・・・2
7.2 線状アンテナからの電磁波放射・・・・・・・・・10
7.3 メタル平衡対線からの電磁波放射・・・・・・・・27
7.4 放電に伴う電磁波の発生・・・・・・・・・・・・32
1
7.電磁波の発生
本章では通信線や回路の導線などに誘導現象を引き起こす元となる電磁波の発
生のしくみと特性を解説する。
特に様々な通信の用途に用いられる線状アンテ
ナから放射する電磁波のしくみを理解することは、
不要電磁波の放射を理解して
予測するのに役立つ。
7.1 電磁波の発生を理解する基本的なこと
[質問7.1]
電磁波はどのような場合に発生するのですか?
[回答]
電荷に加速度運動が加わった場合に電磁波が発生します。
この回答を理論的にちゃんと知るためには物理学の教科書をじっくり勉強する
必要がある。ここでは物理学の教えるところを概念的に理解してみよう。電磁気
学の「電磁波の輻射」の項で最初に説明されることは、電荷が加速度運動をする
と電磁波が発生するということである。すなわち、電荷が静止している場合や等
速運動をしている場合には電磁波が発生せず、
電荷に力が働いて急に動き始めた
り止まったりする場合や、
振動したり進行方向が曲げられたりする場合に電磁波
が発生するのである。直感的に理解するためにつぎのような説明がされている。
電荷が加速されると電荷から出ている電気力線に折れ曲がりを生じて、
これが電
荷を中心にして動径方向外向きに光速で伝搬していき、
遠方ではこの電気力線の
折れ曲がりが横波のパルスとして観測されるとある。この説明から、導線を流れ
る交流は電荷の振動運動であるため電磁波が発生することになる。また、電荷を
加速器で円形運動をさせるとそこから電磁波を発生させること
(シンクロトロン
放射)や、プラズマ中で高速で飛び回っている電子が原子核と衝突して進路が大
きく曲げられることにより電磁波が発生すること(制動放射)なども伺える。
2
電気・電子機器からの不要放射については、ほとんどの場合が回路中の導線を
流れ時間的に変化する電流によって発生する電磁波を考えることになる。
[質問7.2]
導線に交流電流が流れると電磁波が発生するしくみを
概念的に表すとどうななるか?
[回答]
振動する電流により発生した磁場が電場を生みだし、
更にその電場が磁
場を生み出す。このように連鎖的に電場と磁場が発生し電磁波となる。
図7.1に示すように、導線の中を電流を行ったり来たりさせて振動させる
と、導線の周りに磁場が発生し(①アンペールの法則)
、その方向は電流の進行
方向に対応して右回りと左回りに変化する。磁場がこのように変化すると、電磁
誘導により磁場の変化を打ち消すような電場が磁場と直交する方向に発生する
(②ファラデーの法則)。ふたたび電流が逆に流れると磁場の向きが逆になり、そ
の変化を打ち消すように電場の向きが逆になる。
その電場の変化を打ち消そうと
電場と直交した磁場が発生する(③変位電流を考慮した広義のアンペールの法
則)。このように、お互いに直交する磁場と電場が繰り返して発生し、その電場
と磁場は空間に放出されることになる。この仮説はマックスウェル によって唱
えられ(1864年)
、このように導線中の電流の振動により空間に放出された
電場と磁場は空間を波として伝搬するので電磁波 と名付けられた。また、この電
磁波の伝わる速さは当時既に知ら
れていた光の速度とも一致するこ
とも示された。実験によってこの
磁
界
磁
界
①
現象を確認したのがヘルツである
② 電
界
③
(1888年)。マックスウェル以
⇩
電
流
前は、電場と磁場は常に電荷の周
Hds =
s
りに存在するものであったが、実
(J+ε
S
dE
) dS
dt n
図7.1 電磁波発生の概念
は電磁波が電荷の束縛から開放さ
3
れて存在したのである。
私たちも導線を流れる電流によって電磁波が発生するしくみをこのように理解
しておくといよいであろう。
[質問7.3]
電磁波の発生を数式で理解したいのですが?
[回答]
まず導線を流れる電流を微小区間の電流素片の集まりと考え、
電流素片
を+の電荷と−の電荷の接近した対(電気ダイポール)で表します。その
電気ダイポールが時間的に変化する場合に作られる電磁場を計算すること
により電磁波の発生を理解することができます。
まず、電流は電気ダイポールのつながり
であることを図7.2で説明しよ
う。長さLの導線に電流Iが流れている場合、導線の両端にI=dQ/dtを満
足する+Qと−Qの電荷が存在すると考えることができる。
この導線を2分割し
て各々の導線の両端に+Qと−Qの電
荷が存在すると考えても電流値はIと
−Q
+Q
I
なるし電荷の量も保存されている。こ
l
のように分割を無限に繰り返し各導線
の両端を+Q、−Qの電荷の対が接近
して存在すると考えても導線全体とし
て電流Iが流れ、電荷の量も保存され
+Q
−Q
ていることになる。すなわち、電流が流
l/2
l/2
れている導線は、微小区間の電荷+Q
と−Qの対(電気ダイポール)のつなが
りで表すことができる。
−Q
+Q
例えばここで電荷Qが一定値である
としよう。この場合I=dQ/dtで
あるので電流はゼロである。この状態
4
図7.2 ダイポールのつながり
で表される電流
の電気ダイポールを静電ダイポー
ルという。また、電荷Qが時間に対
して直線的に増加する場合を考えて
みよう。この場合、I=dQ/dt
より、電流は一定値、すなわち直流
となる。この状態の電気ダイポール
を直流ダイポール という。電荷Q
の変化がQcosωt、あるいはQ
sinωtの場合は電流値もcos
図7.3 静電ダイポール
ωtあるいはsinωtの変化をす
る。この状態の電気ダイポールを交
流ダイポールという。先にも述べたが、電荷に加速度運動が加わった場合に電磁
波が発生する。ということは、静電ダイポールも直流ダイポールも電荷に加速度
が加わっていないので電磁波は発生しないが、
交流ダイポールは電荷に加速度が
加わっているので電磁波が発生することになる。
このことを、
上記の各種電気ダイポールが作る電磁場を考察して理解してみよ
う。図7.3は静電ダイポールを表している。+Qの電荷から−Qの電荷に向
かって電気力線が存在し、電界が電気力線の接線方向に存在することになる。こ
のことを図7.4に示す極座標系で数式で表してみよう。任意の点での電界は、
+Qによる電位と−Qによる電位の和であるVを求め、r、θ、φ方向の電位傾
度を求めれば良い。すなわち、
V=
Qδ
cosθ
Q
1
1
・(
−
)=
・
(7.1)
r1
r2
4πε
4πε
r2
となり、電界の成分は、
E r =−
Qδ
2cosθ
dV
・
=
(7.2) dr
4πε
r3
1
dV
Qδ
sinθ
E θ =− r ・
・ 3 (7.3)
=
dθ
4πε
r
5
z
Er
・
P
z
静電界
Eθ
r1
直流ダイポール
dQ
I=
dt
r2
+Q
●
Hφ
Eθ
+Q●
r
δ
●
−Q
y
●
−Q
y
δ
x
Hφ=
x
図7.4 静電ダイポールの極座標表示
E φ =−
1
・
r・sinθ
Er
Iδsinθ
4πr2
図7.5 直流ダイポールの極座標表示
dV
dφ
=0 (7.4) となる。
この静電ダイポールでは磁界は存在しないが、
正負の電荷が時間に対して直線
的に増加する場合、
すなわち直流電流I=dQ/dtがダイポール間に発生する
直流ダイポールになって初めて磁界Hφが発生する。これはビオサバールの法則
から理解できよう。図7.5に示す極座標系において、任意の点においては、上
述した静電ダイポールの電界Er、Eθに加え、
H φ =
I・δ
4π
・
sinθ
(7.5)
r2
が存在することになる。
次に、電荷Qが時間tに対して正弦波で変化、すなわちQcosωtで変化す
る場合を考えてみよう。このダイポールには、I=dQ/dt=Qωsinωt
の交流電流が流れていることになる。このようなダイポールを交流ダイポール
と言う。この交流ダイポールが作る電磁界分布を求めるには、このダイポールの
微小長さδの区間にわたって一様な線電流Iが正弦波的時間変化で流れる素電流
としてマックスウェルの方程式を用いる。
具体的にはヘルツベクトルを用いて求
めることができるのであるが、その計算過程が複雑であるため、ここでは結果だ
6
けを記す。
このようにマックスウェルの方程式を適用する時点で電磁波が存在す
るものとして取り扱っているのである。
I=jωQ (7.6)
E r =
E θ =
H φ =
Qδcosθ
2πεr 3
Qδsin θ
4πεr
3
Iδsin θ
4πr 2
(1+jkr )exp(-jkr) (7.7)
{1+jkr+ (jkr) 2 }exp(-jkr) (7.8)
(1+jkr)exp(-jkr) (7.9) ここで、kは位相定数であり、角周波数ωと光速cを用いて、k=ω/cで表
すことができる。上記の式より、z軸に沿って流れる電流により生ずる磁界はφ
成分だけであり、電界はr成分とθ成分を有する。電界の各成分ErとEθの第1
項は、静電ダイポールから得られた静電界の式と一致しており、磁界Hφの第1
項はビオサバールの法則によって得られる磁界の式と一致している。したがっ
て、ダイポールから観測点までの距離が波長に比べて十分近い場合は、kr≪1
となり、第2項以降が無視でき、かつexp(ーjkr)≒1となるため、電界
は静電界と等しくなり、磁界は直流ダイポールにより得られる磁界と等しくな
る。また、これらの式の中で、EθとHφの最後の項に着目すると、1/rに比例
した式になっている。それより前の項が1/r2、1/r3に比例した項であるた
め、ダイポールから観測点までの距離が波長に比べて大きくなると最後まで残る
項となる。つまり、1/rに比例するこの項を遠方界あるいは放射界と呼び、ダ
イポールにより近い段階で減衰してしまう1/r2、1/r3に比例した項を近傍
界と呼んでいる。近傍界と遠方界の寄与が同程度になるのは、kr=1付近、す
なわちr=λ/2π付近である。これは波長の約1/6の距離であり、これより
近い距離では近傍界 が支配的となり、これより遠い距離で遠方界 が支配的にな
る。この遠方界が電磁波なのである。
7
[質問7.4]
そうすると交流ダイポールから発生する電磁界は全
てが電磁波ではないのですね。
[回答]
そうです。 交流ダイポールに近い場所で発生する電界、
磁界はまだ電磁
波とは言えません。
先に述べたように、交流ダイポールに距離的に近い場所では、距離rに対して
3乗、2乗で反比例して減衰する項がある。交流ダイポールに極めて接近した場
所では3乗に反比例する電界が支配的となる。これが静電誘導 を引き起こす元
である。また、少し離れると2乗に反比例する電界と磁界が支配的となる。これ
が電磁誘導 を引き起こす元となる。交流ダイポールから約1/6波長離れると
1乗に反比例する電界、磁界、すなわち電磁波が支配的となるのである。この場
合、電界と磁界の比が377Ω一定となり、平面波となって空間中を伝搬してい
くのである。
[質問7.5]
線状体から放射する電磁波は交流ダイポールからの電磁波
の重ね合わせによって求めることができるのですね?
[回答]
そうです。 任意の長さの線状からの電磁波は、
微小区間の交流ダイポー
ルによる電磁波の重ね合わせにより求めることができます。
質問7.3の回答に示したように、線状体に交流電流が流れれば電磁波が発生
する。線状体の微小区間δを正負の電荷Qからなり、その時間変化が電流Iとな
るダイポールにより遠方に発生する電界強度は、
8
z
E θ =4π・10
ー7
θ
fIδ
sinθ r
(7.10)
となり、周波数、微小区間長、電流値に比
例する。またこの時に放射される電波の方
x
y
φ
向に対する変化の様子を指向性 と言うが、
図7.6に示すようにEθ成分の大きさの
z
指向性が8の字型になっている。この区間
θ
Eθ
長を徐々に大きくした任意の長さの線状か
x、y
らの遠方電界強度は、微小区間のダイポー
ルによる遠方電界強度の重
図7.6 微小ダイポールのE面指向性
ね合わせにより求めること
ができる。
I
d (1)伝送線路モデル
例えば図7.7に示すよ
I
うな伝送線路から放射され
る電磁波を考えてみよう。
(2)ある瞬間に流れる電流 I
(t=0)
この伝送線路は端末を特性
インピーダンスで終端され
Q
(3)伝送線の各場所での交
ているものとする。伝送線
流ダイポール値の時間変化
路は2本の導体線に互いに
反対方向の電流が流れてい
るので、各々の導線では、
t
図7.7 伝送線路からの電磁波放射
図7.7(1)に示すよう
に正負が反対の 微小ダイ
ポール で表現できる。伝送
線の長さが1波長とした場
d=0.01λ
合に、ある瞬間(t=0)に
d=0.1λ
流れる電流を図7.7(2)
に示す。この電流値は右方
図7.8 1波長の伝送線路からの電磁波
放射計算例放射
9
向に伝搬する進行波となる。したがって、伝送線のある場所で観測すると、ある
時間の電流値はその場所の微小ダイポール値の時間微分で表すことができる。
さ
らに時間の経過とともに各場所での電流値が正弦波で変化するが、その値は図
7.7(3)に示すような微小ダイポールのQ値の時間変化で表すことができる。
すなわち、各場所における電流値と位相が180゜異なる正弦波となる。
この伝送線路からどのような電磁波が放射されるかは、
各伝送線の箇所での微
小ダイポールから放射される電界強度を式7.10に従って計算し、その総和を
求めれば知ることができる。図7.8に計算結果例を示す。1波長の伝送線路が
放射する電磁波Eθの1/rの項のみ計算したものである。2本の導線間の間隔
が0.01λの場合と0.1λの場合である。上下の導体線には反対方向の電流
が流れているため、
2本の伝送間隔が小さいほど2本の線からの交流ダイポール
の電磁界が打ち消しあい放射電磁界が弱くなる。
伝送線路のディファレンシャル回路から放射される電磁波が無視できる目安
は、2本の導体線の間隔が約(1/100)λ以下の場合となる。例えばTV
フィーダ線の場合は、2本の導体線の間隔が約1cmであり、伝送電流の周波数
が200MHz(波長1.5m)とすると、
(1/150)λとなる。すなわち、
TVフィーダ線からの放射は無視できることになる。
7.2 線状アンテナからの電磁波放射
[質問7.6]
導線からできるだけ強い電磁波を放射させるに
はどうすればようのでしょうか?
[回答]
一本の導線に大きな電流が流れるように共振現象を起こせばよいのです。
1/4波長の伝送線路に定在波電流を発生させ、
その片端を広げて強い電
磁波を発生させる半波長ダイポールアンテナが基本的なアンテナである。
10
λ/4
電流
λ/2
先端を開放した長さが1/4波長の
伝送線路
図7.9 半波長ダイポールアンテナ
電磁波を意図的に放射しようとする場合は、
2本の伝送線間隔を広げれば良い
し、さらに1本の導線にすれば電波を打ち消すこともなく大きな放射が得られる
ことになる。伝送線路は大きな電流を流し易いが、1本の導線に同じような大き
な電流を流すことは困難である。そこで図7.9のように電流が共振現象を起こ
して大きくなるような長さの先端を開放した伝送線路の終端を広く広げることに
より1本の導線に流す比較的大きな電流を流すことができ、
大きな放射を得るこ
とができる。
1本の導線の長さを1/4波長とすることによって最も大きな
、このようなアンテナを半波長アンテナ といい最
共振現象を得ることができ
も基本的なアンテナである。
このようなアンテナを定在波アンテナ ともいう。今述べたように効率的に電
磁波を放射するには線状体の長さの条件がある。
それは線状体に流れる電流が定
在波になるとよいである。大きな定在波が発生する条件を考えてみよう。図7.
10は伝送線路の電圧、電流分
布の計算モデルであり、100
I(x)
MHzの伝搬を計算してみる。
交流電源の出力インピーダンス
Z1と伝送線路の終端インピーダ
Z1
V
合、図7.11に示すように電圧
2次定数 特性インピーダンス:Z0(オーム)
減衰定数:γ(dB/m)
図7.10 伝送線路の電圧電流分布
の計算モデル
11
Z2
x=l
x=0
ンスZ 2 を伝送線路の特性イン
ピーダンスZ 0に等しくした場
V(x)
電圧(V)
0.3
0
2.5
0.004
0
2.5
5
0.002
0.001
0
0.5
0
2.5
5
2.5
5
0.006
0.002
0
1
0
5
電流(A)
電流(A)
0
有効電力(W)
Z2≠Z0の時(Z2=10オーム)
0.6
有効電力(W)
電圧(V)
Z1=Z2=Z0の時
0
2.5
0.003
0
0
0.001
0
5
伝送線路の位置 x(m)
0
2.5
5
伝送線路の位置 x(m)
図7.11 進行波と定在波
z
V(x)
、電流I(x)と
z
もに伝送線路長手方向に
向かい単調減少する。こ
の現象を進行波 と呼ぶ。
これに対してZ1,Z2が
特性インピーダンスに等
しくない場合は、電圧V
y
y
x
図7.12 半波長ダイポールアンテナの
放射指向性
(x)、電流I(x)ともに
位置が移動しない振動現象が現れる。これを定在波 という。特に、伝送線路長が
1/4波長に等しく、端末が開放の場合、図7.9に示すように終端部のみを節
とした定在波となる。
しかしこのような伝送線路の形状であると電磁波は2本の
線間に閉じこめられた状態になり、外部に広がりにくいが、図7.9のように直
線になるまで伝送線を広げると、
もはや電気力線や磁力線を閉じこめるところが
ないから外部に広がりやすくなる。この状態をアンテナとして利用しているの
が、半波長ダイポールアンテナである。電流分布がアンテナ両端部を節とした定
在波となり、大きな電磁波を放射することになるのである。これは、あたかも弦
12
楽器の弦の両端を固定して弦を振動させると大きな音が空気を伝わって伝搬する
現象のようである。半波長ダイポールアンテナのE面指向性を図7.12に示
す。微小ダイポールの指向性とほぼ同じ8の字型の指向性となっている。
[質問7.7]
ダイポールアンテナの長さが半波長とは異なる
と電磁波の放射の強さはどう変化するのですか?
[回答]
半波長より短いダイポールの場合、 ほぼダイポールの長さの比の2乗に
比例して放射エネルギが小さくなる。
半波長ダイポールアンテナがいかに大きな放射を発生するのかをアンテナロッ
ドの長さを変えて比較してみよう。
ダイポールアンテナからの放射の大きさの目
安として放射抵抗 が用いられる。放射抵抗はアンテナの給電点に電流Iを流し
た時に放射電力がWとなった場合、次式により求める。
Rr=W/I2 (7.11)
すなわち、アンテナから放射する電磁波エネルギを同じくエネルギを消費
する抵抗としてカウント しており、
抵抗値が高いほど放射電磁波エネルギが大
きいことを意味する。
放射電力は十分大きい半径の球面上でポインティングベク
トルを積分することにより
d/λ
求められ、その結果放射抵
1/4
抗は次式で近似される。
Rr=80π2(d/λ)2
(7.12)
ダイポールアンテナの放射
抵抗の計算値例を図7.1
3に示すが、放射電磁波の
波長に比べてアンテナ長が
73
1
1/10
8
0.1
1/20
2
0.03
1/50
0.3
0.004
1/100
0.08
0.001
(半波長ダイポール)
d
Rr(Ω) Rr/73
図7.13 ダイポールアンテナの放射抵抗
短くなるほど極端に放射し
13
にくくなることがわかる。
[質問7.8]
中波放送アンテナや携帯電話のアンテナのように1本の
ロッドのアンテナをよく見かけるが、ダイポールアンテナ
とどのように異なるのですか?
[回答]
原理的には同じです。アース面を利用してロッドの鏡像をもう片方の
ロッドアンテナとしてダイポールアンテナと見なすのです。
図7.14に示すように1/4波長のロッドをアース面に垂直に立て、アース
面との間で電圧を供給するとロッドの鏡像と併せて1/2波長のダイポールアン
テナと見なせるのです。その理
由を考えてみよう。アース面上
1/4波長モノポールアンテナ
半波長ダイポールアンテナ
に存在する+Qの静電荷からの
電気力線はアース面に垂直に到
達する。この電気力線の発生の
仕方は図7.15に示すように、
アース面
アース面を介して反対方向の等
鏡像
+Q
図7.14 モノポールアンテナの原理
h
I
−
+
+
I
h
−
h
h
h
−Q
図7.15 静電荷の鏡像
+
−
I
+
h
I
−
図7.16 大地面に水平、垂直な電流の鏡像
14
位置に−Qの電荷が存在すると仮
定し、アース面を取り除いた状態
での+QとーQの電荷間で発生す
内部導体
1/4波長
る電気力線と等しい。すなわち、
地板
アース面上の+Qの静電荷の鏡像
として−Qの静電荷を仮定すれば
外部導体
よいのである。電流はーQから+
Qへの電荷のつながりの方向に発
図7.17 同軸線路で給電した
モノポールアンテナ
生すると考えられる。そうする
と、アース面の上でアース面に平行に流れる電流の鏡像は図7.16に示すよう
に、アース面から反対方向の等距離に反対方向の電流を考えればよいことにな
る。これは、アース面上に敷設された1本の送電線の帰路と見なすことができる
のである。アース面に垂直な電流の鏡像は、図7.16に示すようにアース面か
ら反対方向の等距離に同一方向の電流を仮定すればよいことになる。これは、ダ
イポールアンテナの2本のロッドを流れる電流の向きが同一方向になることと合
致しているのである。
このようなロッドアース面上でアース面との間で給電されている1本のロッド
を有するアンテナをモノポールアンテナ と称している。実際のモノポールアン
テナは、図7.17に示すように、同軸ケーブルの外部導体を有限の面積の地板
に接続し、内部導体を1/4波長だけ突出させて作られているものが多い。地板
がアース面となるのであるが、
携帯電話機のように地板を十分広くとれないアン
テナは、ダイポールアンテナの指向性とは少し異なったものとなる。ダイポール
アンテナはロッドに垂直方向に指向性の最大値が得られるが、地板が小さいと、
斜め上の方向に指向性の最大値がシフトする。
[質問7.9]
定在波アンテナとして放射効率の良い線状アンテナは他
にないのですか?
[回答]
15
1波長ループアンテナ、 スロットアンテナ、 マイクロストリップアンテ
ナというものがあります。 これらは磁流アンテナと称されるものです。
前
項で述べたダイポールアンテナは電流源によって電磁波が発生したのに対
し、磁流源によって電磁波が発生するものです。ただし、実際には独立し
た磁荷はないので磁流は存在しないのですが、
仮想的な量として考えると、
電流に対応して種々のアンテナの特性を理解するのに有用なのです。
電流と磁界の関係は図7.18(1)のように書ける。空間のある閉曲線に
沿って磁界Hを積分した時にその値がIになっておれば、
その閉曲線の中には電
流I=∫H・dsが流れていることになる。そこで、図7.18(2)に示すよ
うに空間のある閉曲線に沿って電界Eを積分した時その値がImになっておれば、
その閉曲線の中に Im=−∫E・ds という物理量が流れていると考えられ
る。この仮想的な物理量 を磁流 と呼んでいるのである。この仮想的な磁流を用
いると、磁流アンテナ の放射電磁界は、電流源によって得られた線状アンテナ
の放射電磁界に対応して求めることができるのである。すなわち、マックスウェ
ルの方程式からもわかるように、電流源によって得られる電磁界の電界を磁界、
誘電率εを透磁率μ、電流Iを磁流Imと読み替えて求めることができる。
具体例としては、原点を中心にx−y面上に置かれた微小ループアンテナ は
z軸に置かれた微小磁流アンテナとして電磁波を発生する。しかし、微小ループ
アンテナは放射抵抗が低く効率が悪いので、巻き数を増やしたり、ループ長を
1波長 にして用いるのである。
また、スロットアンテナ は導体
Im
I
板に切った細い溝に給電したもの
c
c
であるが、これはスロットに沿っ
て流れる磁流アンテナとして電磁
ds
ds
波を発生する。 マイクロスト
リップアンテナ は、プリント基
∫H・ds=I
板の片面に矩形や円形のパッチを
E
H
(1)電流と磁界
∫E・ds=−Im
(2) 磁流と電界
作製してアンテナとしたものであ
図7.18 電流と磁界および磁流と電界
16
り、パッチと導電層間に生ずる電界を磁流に置き換えて電磁波特性を得ることが
できるのである。
ここで、各々の磁流アンテナの電磁波特性を見てみよう。
(1)微小ループアンテナ
図7.19に示すように、x−y面内に置かれた面積ΔSの微小ループに電流
Iが流れている場合、Qmδ=μIΔSという磁気ダイポール を考えると、この
磁気ダイポールと電流ループが作る磁界が全く同じとなることがわかっている。
そして、磁気ダイポールの作る電磁界は、式7.13∼式7.16の電界を磁界
に、磁界を電界に、電荷Qを磁荷Qmに、誘電率εを透磁率μと置いて、次式の
ように変換できる。
I m =jωQ m (7.13)
H r =
H θ =
Q m δcosθ
2πµr 3
Q m δsin θ
4πµr
E φ =−
3
(1+jkr )exp(-jkr) (7.14)
{1+jkr+ (jkr) 2 }exp(-jkr) (7.15)
I m δsin θ
4πr 2
(1+jkr)exp(-jkr) (7.16) z
θ
Qmδ=μIΔS
I
r
●
磁気ダイポール
ΔS
+Qm●
δ
y
x
z
x
●
ーQm
θ
r
●
y
φ
φ
図7.19(1)
x−y面内に置か
れた微小ループアンテナ
図7.19(2) 等価な磁気ダイポール 17
上式は仮想的には磁気ダイポールアンテナ
z
による電磁界であるが、実際には微小な面
積のループに流れる電流が発生する電磁界
x
である。これも先に述べた微小ダイポール
による電磁界と同様に右辺の持つ物理的な
意味を次のように把握できる。すなわち、
これらの式の中で、HθとEφの最後の項に
図7.20 微小ループアンテナの
H面指向性
着目すると、1/rに比例した式になって
いる。それより前の項が1/r2、1/r3に比例した項であるため、ダイポール
から観測点までの距離が波長に比べて大きくなると最後まで残る項は1/rだけ
となり、この項が放射界となるのである。
つまり、x−y面上に置かれた微小ループアンテナの放射電磁界は、z軸上に
置かれた微小ダイポールアンテナとはθ成分とφ成分のEとHが入れ替わってい
る。遠方に発生する電界強度は
E φ =131.6×10
ー16
f 2 IΑ
sinθ (7.17)
r
となり、電波の周波数の2乗、電流I、ループ面積Aに比例する。またこの時に
放射される電波の方向に対する変化の様子を示す指向性は、図7.20に示すよ
うに8の字型になっている。これは微小ダイポールアンテナと同じである。
次にループ長が長くなった場合を見てみよう。図7.21(1)に示すように、
電流の振幅と位相がどこにおいても同じループの場合、
すなわち周囲の長さが波
長の1/4より小さい範囲でのループがこの条件を満たすのであるが、
この場合
を考えてみる。図7.21(2)のように微小ループに分割すると、微小ループ
電流
(1)一様な電流
(2)ループの分割と電流
図7.21 大きいループに流れる一様電流
18
に流れる電流は互いに打ち消しあって、
外側の大きいループに流れる電流のみが
残る。ということは、電流がどこでも同振幅、同位相と考えられる程度の大きい
ループから発生する電磁波は、
微小ループから発生する電磁波の和として考える
ことができる。この時の指向性は微小ループの指向性とほとんど変わらない。す
なわち、ループの側面が最大放射となるパターンとなるのである。
(2)1波長ループアンテナ
ループの長さが波長の1/4以上になると、
電流はループの各場所で同位相で
なくなってくる。放射は全体として減算されることになり、効率が落ちてくるこ
とになる。そして、ループ長が1波長に等しくなった場合、一転して異なる放射
特性を示す。そのことを説明しよう。図7.22(1)は、終端を短絡した長さ
が半波長の線路を流れる電流を示している。図7.22(2)は、この線路の中
央を膨らませて円形にした1波長ループアンテナ である。線路と同じ電流分布
が保たれるとすると、中央部の・印の位置で電流の方向は反対になり、ループア
ンテナの左右には同じ方向の一対の電流が流れることになる。これは、半波長ダ
イポールアンテナを2本並べたアンテナと見なすことができ強い電波の放射が得
られるのである。この結果、先に述べたループアンテナと全く異なり、図7.2
3に示すように電波はループ面に垂直な方向に放射されるのである。
このアンテ
ナは14MHz帯や21MHz帯の短波帯でよく使われている。しかし、この場
合、波長が20m程度になるので円形ループを作るのは困難であるため、四角形
長さ1波長のループアンテナ
λ/2
●
電流
●
(1)先端を短絡した長
さが半波長の伝送線路
(2)中央を膨らませて
円形にした導体線ループ
図7.22 1波長ループの電流の向き
19
z
電
流
+
x(実線)
H面
y(破線)
E面
電
流
図7.23 1波長ループの 放射指向性
ー
図7.24 面に垂直なループ
電流の鏡像
に巻いたカッドアンテナが使われてい
る。半波長ダイポールアンテナに比べる
と横幅が小さくなり、
特定の方向に通信する場合アンテナを回転できる有利さが
ある。また、地板に対して垂直に設置した1波長ループアンテナの電流は、図7.
25に示すようにイメージのループにおいても同じ方向に電流が流れることにな
るため、地板を利用して利得の高いアンテナを実現できる。
(3)スロットアンテナ
大きい導体板に図7.2
5(1)に示すように極め
Jm
て細いスロットを開け、a
E2
−b間に電圧を印加すると
H2
図のような電界Eが発生す
電
源
a
b
=
等価
る。
J
E1
H1
磁
C
流a
源
b
d
補対
C
電 a
源
d
b
ここで開口面で電磁界が
変化する場合、マックス
E
ウェルの方程式からも言え
(1)スロットアンテナ
るように変位電流が存在
し、それにともない磁流を
仮定することができる。図
(3)補対板状ダイポール
(2)等価磁流ダイポール
図7.25 スロットアンテナと補対
板状ダイポールアンテナ
20
7.25(1)のようにス
ロットに現れる電界は、図
補対
7.25(2)のように流れ
る磁流と等価となる。スロッ
ト長を半波長にすると共振
が発生し、大きな磁流が流
れ、大きな電磁界を放射する
ことになる。このようなアン
モノポールアンテナ
ノッチアンテナ
図7.26 ノッチアンテナと補対
モノポールアンテナ
テナをスロットアンテナ と
いう。半波長スロットアンテナは、導体板の両側に放射し、電磁界は半波長ダイ
ポールアンテナから発生する電磁波の電界と磁界を入れ替えた状態と同じにな
る。図7.25(3)に示すように、電流源により給電された導体アンテナと、
磁流源により給電されたスロット(導体と同じ形にくりぬかれた穴)アンテナの
関係は、補対の関係にあるという。ここで、導体アンテナが作る電磁界をE1,H
、補対関係にあるスロットアンテナが作る電磁界をE2,H2とすると、
1
E1=±Z02H2 (7.18)
H1=−(±E2) (7.19) で表すことができる(バビネの原理)
。この関係からスロットアンテナのa−b
から見たインピーダンスZと、
ダイポールアンテナのc−dから見たインピーダ
ンスZ’の間には、 Z=Z02/4Z’≒(60π)2/Z’ (7.20)
が成り立つ。
ここで、補対アンテナの1例を示そう。図7.26のように導体板に切れ込み
を入れて給電するアンテナをノッチアンテナ という。これはスロットアンテナ
を半分に切ったものであるが、
同図に示すアース面との間で給電される導体板か
らなるモノポールアンテナの補対アンテナになるのである。
このようなスロットアンテナの放射の考え方は、
筐体にスリットを施し
た装置からの不要電磁波放射特性を推測する上で役に立つ。
例えば図7.27に示すように、シールド板にスリットが存在する場合を考え
てみよう。
(a)のように電磁波によってシールド板上に流れる電流は元の電磁
21
波を打ち消すように働く。(b)
のようにシールド板にスリット
部があるとシールド板上を流れ
る誘起電流が異なった方向に流
れ、その部分で元の電磁界を打
(a)
(b)
ち消す効果は小さくなる。電流
が異なった経路になればなるほ
どシールド効果がなくなり、そ
の部分からの電磁波の漏洩が増
(c)
えることになる。(b)と(c)
(d)
図7.27 シールド板上のスリットの
誘起電流に及ぼす影響
に示したように、漏洩量はス
リットの幅ではなく、長さに依
存する。このことから、総面積
が同じ場合、大きな孔より(d)のように多数の小さい孔のほうが漏洩量
が小さくなる。
(b)、
(c)に示した長方形のスロットはスロットアンテナを形成することか
らもこの現象を説明できる。
スロットの長さが波長の1/2になったときスロッ
トからの放射が最大となる。波長λの1/2に等しいか、それより小さな寸法d
のスロットの遮蔽効果は、 S=20log(λ/2d)となる。スロットの長
さが1/2波長のときの遮蔽効果を0dBとすると、
長さdが1/10になるご
とに20dB増加することになる
(4)マイクロストリップアンテナ
プリント基板上に細い導体線を残し
z
y
てエッチングしたものをマイクロス
トリップ線路 という。図7.28の
ように、線路長をλ/2として、裏面
・
λ/2
から同軸給電する場合を考えてみよ
う。この場合、先端開放線路であるた
め、図7.29のように電界は両端で
22
図7.28 同軸給電したマイクロ
ストリップアンテナ
x
λ/2
y
電界
x
図7.29 マイクロストリップ線路の
長手方向断面での電界分布
図7.30 パッチの電界分布
最大となり向きは逆になる。ただし両端部
y
においては、電界は地板に対して垂直には
ならず線路の長手方向にはみ出してくる。
マイクロストリップ線路は地板に対してイ
x
メージを考えると平行2線であるので両端
部からの漏れを除いては電磁界は外部に放
射されない。しかし、このマイクロスト
リップ線路の幅を広げて端部の漏れを大き
図7.31 等価磁流
z
くすれば電磁界が発生するようになる。す
なわち、図7.30に示すようにマイクロ
ストリップ線路を上から見た場合、端部で
はみ出した電界が線路幅にわたり同相電界
分布を持つ開口面が作られることになる。
これは(3)で説明したスロットアンテナ
x(実線)
E面
y(破線)
H面
図7.32 正方形パッチアン
テナの指向性
と同様に、電界は等価定理により、図7.
31に示す等価磁流 に置き換え電磁界の放射を解釈することができるのである。
このようなマイクロストリップ線路の形状をパッチと言い、
これに給電をすると
上記のようにアンテナとなり、
このようなアンテナをマイクロストリップアンテ
ナあるいはパッチアンテナ と言う。放射電磁界分布の導出は簡単ではないので
ここでは述べないが、パッチの長さと幅がλ/2の正方形パッチを見てみると、
図7.32のようにパッチ上方が最大利得方向となる。パッチ面内においては、
磁流に垂直なx軸方向には放射があるがy軸方向には放射がない。また、放射は
地板側には発生せずパッチ上方だけに発生し、
放射パターンは1波長ループアン
テナに極似している。
23
このパッチアンテナの原理から、伝送線路に導体板が近接している場合に
導体板が放射源になることが推測される
。
[質問7.10]
線路上で定在波が発生せず進行波だけであっても電磁波
が放射するのですか?放射するのであれば定在波による放
射と進行波による放射の違いは何ですか?
[回答]
放射します。 定在波アンテナは電流の共振現象を利用しているため狭帯
域の電磁波放射が得られるのに対し、 進行波アンテナは広帯域の電磁波放
射特性が得られます。また、指向性と利得については、定在波アンテナは
多素子にして向上を図りますが、 進行波アンテナは1素子でかなり鋭い指
向性と利得が得られます。 代表的なアンテナとして、 ロンビックアンテナ
(菱形アンテナ) や受信アンテナとしてのウェーブアンテナ等があります。
進行波アンテナは、
大地上に張られた長尺導線の終端に特性インピーダンスと
等しいインピーダンス負荷を設けたアンテナである。図7.33に示すように、
始端に電源を設け電力を供給すると、
この電力は導線−大地間を伝搬し全部負荷
に吸収され、導線−大地間には電圧、電流の反射波は生じない。したがって、こ
の導線上には始端から終端に向かって進行する電圧、
電流の入射波だけが存在す
るので、導線上の電圧、電流の振幅は、導線に抵抗損失がなければいたるところ
で一定である、場所による位相の変化がある。この位相の変化は、電源から負荷
にxだけ進んだ場所においては、
波長をλとすると、−(2π/
λ)x(ラジアン)だけ位相が遅
れている。なお、9ページの図
R
7.11には抵抗損失がある場合
の電圧、電流の振幅を示してい
図7.33 進行波アンテナ
24
る。この場合は電圧、電流ともに
E’
漸減しているが、終端を特性イ
E’eーj2πx(1−cosθ)/λ
ンピーダンス終端していない定
在波のような振幅の腹と節を
E
Eeーj2πx/λ
持った変化はない。このように
電流の共振現象が見られないの
θ
に指向性を持った電磁波がどう
して放射されるのであろうか。
ここでは導線の抵抗損失がな
x
い場合について考えてみよう。
図7.34 微小ダイポールによる 指向性の説明
この導線のいたるところに振幅
Iの電流が流れている。そこで、
近接した2つの微小区間をとると図7.
34に示すようにそれぞれ微小ダイポー
ルとなり、
電波は各々の微小ダイポールの電流と直角の方向に最大指向性を示す
ことになる。しかし、互いにλ/2離れた微小ダイポールの電流による電流とは
直角方向の電界強度は互いに反対位相となり、合成電界強度もゼロとなる。この
ことは波長より長い導線の場合は導線に直角方向へは電波が放射されないことを
意味する。また、導線方向については、各微小ダイポールの指向性がゼロである
ため、この方向にも電波は放射されない。しかし、θがこの間の角の場合には、
θが小さくなるにしたがって電界強度の大きさは小さくなるが、
2つの微小ダイ
ポールからの電界強度の位相差は反対位相からだんだん同相位相に変わり、
合成
電界強度はゼロではなくなる。
従って電波は斜め前方に放射される
ことになる
のである。ここでは指向性特性の詳細な導出過程は省略するが、多数の微小ダイ
ポールの集合体の合成電界強度を積分計算することにより、
求めた電界強度の指
向性は次式となる。
E θ =
θ
60I
cot(
)sinπ(1−cosθ) (7.21)
r
2
この指向特性は図7.33のようになる。
ただし、図7.35に示すような平衡対線の場合は、両方の導線が近接してお
り、かつ反対方向の電流が流れるため強い電磁波は放射されにくい。そこで、こ
25
電流
I=V/R
(波長に関係無く一定)
特性インピー
ダンス
R
特性インピー
ダンス
R
先端を特性インピーダンスで終端した
伝送線路
伝送線路の中央を膨らませて
菱形にしたアンテナ
図7.35 ロンビックアンテナ
の平衡対線の中央を広げると電磁波が放射されやすくなる。
このようなアンテナ
をロンビックアンテナ(菱形アンテナ)
と呼んでいる。また、大地上に架設
されている導線の場合は、
導線と大地の仮想帰路との離隔が大きくなるため電磁
波が放射するのである。
ここで述べた進行波アンテナ として積極的に受信アンテナとして利用されて
いる例が、図7.36に示すウェーブアンテナ である。 長中波の広帯域指向
性受信アンテナである。発明者の名前をとってBeverage anntena ともいう。
地上2∼7mほどの高さに、
1∼2波長の長さの水平導線を電波の到来方向に合
わせ、1直線状に架設したアンテナで、一端を特性インピーダンスで終端し、他
端を受信機に接続する。原理
は、地表波の水平方向成分の
電波到来方向
地表波の波面
電界による誘起電流が、導線
EH
上に蓄積累加される作用を利
受
用している。1例として垂直
機
特性インピーダンス
信
大地
編波である中波放送波の場合、
l
損失のある大地上を伝搬する
到来電波
時、電界は進行方向に少し傾
き(Zenneck波)、水平電界成
分が発生し。この電界を受信
l=λの水平面指向性(上から見た図)
することになる。
図7.36 ウェーブアンテナ
このアンテナの効果から、
26
架空通信線への放送波誘導や誘導雷サージの発生機構が理解できる。
7.3 メタル平衡対線からの電磁波放射
[質問7.11]
メタル通信線から電磁波はどのように放射するのですか?
[回答]
主要因は、メタル平衡対線と大地帰路回路からなるコモンモード電流の
定在波によるものと考えられます。
したがって、 メタル導線長かそれより
短い波長の電流がコモンモード回路に発生した場合、
大きな電磁放射が発
生する可能性があります。
通常メタル通信線は対線間を信
号伝送路として用いるため、通信
コモンモード給電
平衡−不平衡変換トランス
3m
線の敷設により必然的に構成され
110Ω
50Ω
る大地帰路回路 については端末の
50Ω
とんどの場合、高周波になると定
(1)放射電磁波測定系
在波が発生する。したがって、ほ
とんどの場合、進行波アンテナと
120
してではなく定在波アンテナとし
100
80
電界強度(dBμV/m)
て働いているものと考えても良い。
図7.37は、3mのツイスト
10cm
発信器
インピーダンスが不定であり、ほ
60
40
ペア線 を大地上10cmに敷設
20
し、ツイストペア線と大地間のコ
0
0
モンモード回路 の始端に高周波の
50
100
150
200
周波数(MHz)
(2)電界強度測定結果例
電圧を印加した場合に、3m離れ
図7.37 コモンモード放射
電磁波の測定
た場所でバイコニカルアンテナで
27
250
測定した電界強度の例である。
3mが1/2波長となる50MHzで電界強度が
極大となり、3mが1波長となる100MHzで電界が極小となっており、定在
波電流による電磁界放射の特性を示している。
[質問7.12]
メタル通信線のコモンモード回路電流はどのようにして
発生するのですか?
[回答]
通信装置を出る段階で最初からコモンモードに流れる電流と、
対線間に
流れる電流が伝搬経路でコモンモードに変換する電流があります。
図7.38に示すように、メ
タル通信線のコモンモード電
通信機器
流は、通信装置の中にあるス
通信線
伝送信号
イッチングレギュレータやク
ロック信号によって励起され、
信号のコモンモード変換分
最初からメタル通信線のコモ
コモンモード電圧
ンモード電流として流れる分
と、伝送信号のように対線間
コモンモード電流
図7.38 メタル通信線からの電磁波放射機構
だけの伝搬を意図しているの
にも関わらず2本の導線の大地に対するインピーダンス/アドミタンス不平
衡のためコモンモード電流に変換されて流れる分がある。
現象としては前者によ
るコモンモード電流の方が圧倒的に大きいのであるが、
通信線の2導線の大地に
対する不平衡が大きくなると後者によるコモンモード電流も無視できなくなる。
[質問7.13]
ノーマルモードから変換したコモンモード電流による
電磁波放射の特徴は何ですか?
28
[回答]
メタル通信線の平衡・不
平衡・不平衡変換
バイコニカルアン
バイコニカルアンテナ
テナ
トランス
平衡変換特性の大きさに応
じて発生していますが、こ
メタル導線
の場合もコモンモード電流
0.1cm
の定在波が電磁波の励振に
大きく関わっています。
図7.39に示すように、
3m
図7.39 ノーマルモード、コモンモード
給電時の放射電磁波測定系
屋外の大地面上に3m長のメ
コモンモード給電
平衡−不平衡変換トランス
タル通信線を配置し、その2本の
3m
110Ω
50Ω
線間 (平衡回路) に平衡 ・ 不平衡
50Ω
変換トランス を介して電圧を供給
10cm
発信器
し、メタル通信線から放射される
電磁波の電界強度を広帯域アンテ
ノーマルモード給電
3m
50Ω
ナで測定を行った結果例について
発信器
110Ω
述べる。アンテナは、メタル対線か
50Ω
10cm
ら、離隔3m、近端から1.5mの
地点に設置されている。また、同時
(1)給電系
に近端で有効電力の平衡不平衡変
120
換特性も測定されている。
100
まず、図7.40にツイストペ
80
行った場合とコモンモード給電
電界強度(dBμV/m)
ア線に ノ ー マ ル モ ー ド 給 電 を
60
40
を行った場合の電磁界の電界強度
コモンモード給電
20
ノーマルモード給電
特性を示す。先に述べたように。
0
0
ノーマルモードからの変換分は相
50
100
150
200
250
周波数(MHz)
当小さくなっており、トランスの
(2)測定結果例
不平衡分だけ発生している模様で
図7.40 ノーマルモード給電、コモン
モード給電時の電磁波放射特性
ある。
29
Conversion factor (dB)
Electric field intensity (dBμV/m)
80
60
40
20
0
-20
TV feeder lines
Twisted pair lines
0
40
80
120 160 200
Frequency(MHz)
図7.41 ノーマルモード給電時
の放射電界強度特性
0
-20
-40
-60
TV feeder lines
Twisted pair lines
Transformer
-80
-100
0
40
80
120 160
200
Frequency(MHz)
図7.42 近端での平衡・
不平衡変換特性
図7.41はツイストペア線とTVフィーダ線にノーマルモード給電した場
合の放射電磁波特性、図7.42は平衡不平衡変換特性の測定結果例である。
平衡不平衡変換特性でハンプを打ち始める周波数以上では、放射特性もハンプ
を打ちその極大値はほぼ一定になる。このことから、ノーマルモードからの変
換による電磁波放射も、変換されたコモンモード電流の定在波が励振源
に
なっているものと思われる。また、TVフィーダ線とツイストペア線を比べる
と放射特性、変換特性とも極大値間の差が30dB程度となっている。このこ
とから、高周波信号が流れている撚り無しメタル対線における電磁波放射特性
と、近端で測定した平衡・不平衡変換特性には強い相関があると言える。ただし、
高周波における両者のハンプの周期、および極大・極小値の周波数値が異なるこ
とから、放射電界強度を平衡・不平衡変換特性から推定する場合、近端での平
衡・不平衡変換量をポイント周波数で評価せず、極大値の包絡線で評価しておく
ことが 重要である
[質問7.14]
メタル導線対に撚りを施すことによりノーマルモード
からの放射電界強度を小さくすることができることが期
待できますね?
[回答]
30
ツイストペア線がTVフィーダ線より放射電界強度が小さくなることか
らわかるように期待できます。 ただし、撚りのピッチは放射する波長に比
べて十分小さくないと効果が出ません。
3mのTVフィーダ線の2本の導線が作る面を大地に垂直に敷設し
(下部導線
の高さは1mm)、線長の1/4、1/8のピッチで撚りを施した場合に発生す
る放射電界強度特性の測定例を示す。図7.43は撚りの形状である。電界強度
の測定系は図7.44と同様である。撚り
は2本の導線をクロスして導線の上下を入
TVフィーダ線
れ替える方法を採っている。図7.44に
測定結果を示す。撚りを施していないTV
フィーダ線が測定可能な30MHz以上の
周波数帯域で極大極小の周波数特性を有し
ツイストペア線
ながら高い電界強度を放射している。ピッ
図7.43 撚りの形状
チの大きい撚りを入れる毎に低
電界強度(dBμV/m)
周波領域の放射電界強度が低減
100
しているが、数十cm程度の
80
ピッチの撚りであると200M
60
Hz付近以上の周波数帯域では
40
電界強度の低減効果は見られな
20
撚り3回
撚り7回
ツイストペア
ケーブル
0
い。さらに撚りピッチの短いツ
イストペア線になると少なくと
撚りなし
-20
0
200
400
周波数[MHz]
も200MHz程度の高周波ま
図7.44 ノーマルモード給電時の
放射電界強度
では放射電界強度の低減効果が
得られている。
31
7.4 放電に伴う電磁波の発生
[質問7.15]
放電現象も電荷の加速度移動を伴っているので電磁波
が放射しているのですね?
[回答]
その通りです。
放電によって電磁波が発生していることは今では当たり前になっている。
これ
を最初に発見したのはヘルツである。有名なライデン瓶を用いた実験である。な
んと、この実験は、放電により電磁波が発生する事実を発見したことよりは、
マックスウェルが予言した電磁波の存在を初めて確認した実験として有名なので
ある。ヘルツの実験の概要は次の通りである。
オランダのライデン大学で電荷をためるために作られた瓶がライデン瓶であ
る。ガラス瓶の内側と外側に銀箔を貼って各々に反対符号の電荷をためる。この
状態で、内側の銀箔に接触した導線の端と、外側の銀箔に接触した導線の端を近
接させると火花放電が発生する。この火花放電が発生するときに、約10m離れ
た場所でループ状の導線の閉じられていない近接した端部間で火花放電が発生す
ることをヘルツは発見し電磁波の
存在を確認したのである。すなわ
光源
ち、ライデン瓶の放電部からは電
導波路
プリント電極
シングルモー
ドファイバ
磁波が発生し、この電磁波が10
9.5
mm
m離れたループ状の導線内の電荷
に力を及ぼし導線に電流を発生さ
せ、ループの両端部に反対符号の
偏波面保持
ファイバ
2mm
LiNbO3基板
電荷が蓄積され、端部間がある程
光検出器
レベル
メータ
度の電界強度に達して放電が発生
したのである。
図7.45 プリント型電界センサの構成
32
身近で発生する放電の代表的なものとしては、静電気放電や雷放電がある。
(1)静電気放電による電磁波
静電気放電時に発生する電磁波を比較的精度よく測定したのは馬杉等である。
測定で用いられたアンテナが図7.
45に示す光変調器を利用したプリント型電
界センサである。 このアンテナは基本的にはダイポールアンテナであるが、
ロッド間に発生する電界強度を導波路型光変調器に印加し電気光学効果に変換さ
れた量を光ファイバで測定するものである。
アンテナを広帯域にできれば従来困
難であったインパルス電磁波の測定も可能になる。
この電界センサは広帯域性を
実現するために、導波路に接するアンテナエレメント(全長9.5mm、幅2m
m)をLiNbO3基板に蒸着してできるだけ短く作成されている。感度特性は
少し悪くなるが、100Hz∼2.5GHz以上の周波数範囲でほぼフラットな
特性を持っており、
高速のインパルス電磁界の計測も可能なレベルにまで達して
きている。
10
気パルス電磁界の測定系である。ここ
5
電圧(mV)
図7.46は電界センサによる静電
では静電気発生器を静電気放電発生源
0
として使用し、アース線に接続された
ー5
ー10
0
50
時間(ns)
100
(a)充電電圧:2kV
10
電圧(mV)
5
0
ー5
ー10
0
50
時間(ns)
100
(b)充電電圧:20kV
図7.46 静電気放電によるインパ
ルス電磁界の測定系
33
図7.47 電界センサにより検出
されたインパルス電磁界 金属棒の先端に放電プローブを近づけて単発の放電を発生させ、
放電点から50
cm離れた位置で電界センサにより静電気パルスを検出している。
充電電圧2k
V、20kVの場合の測定例を図7.47に示している。静電気パルス電磁界が
単発の過渡現象として再現されており、
充電電圧が低い場合に波形の立ち上がり
が速く半値幅が小さくなっている等の結果が得られている。
従来は静電気放電によるパルス電磁界については狭帯域のアンテナによりパル
ス電磁界を振動波形として取り込み、
ピーク値やエネルギの観点からしか評価で
きなかったことを考えると格段の進歩である。
なお、
この静電気放電時の電磁波によって電磁妨害現象が引き起こされる
問題がクローズアップされている。
帯電したスチールパイプが他のスチー
ルパイプと衝突した場合に発生する電磁波によりコンピュータシステムの記憶制
御部にエラーが発生するケースが出てきている。この場合、椅子の帯電電圧があ
る程度低い(3kV以下)方が誤動作し易い場合が多いことが知られている。
上述した測定結果によると放電電圧が低いほど高い周波数成分のエネルギ
の割合が増加しており、 ディジタル回路に誤動作を引き起こす静電気放電
電圧が低い との実態を裏付けている。
静電気放電に伴って発生する電磁波の発生メカニズムについてはまだ研究途中
にある。よく参照されている研究例として、Wilson等の研究がある。これは、静
電気放電を微小ギャップ電極間放電で表し、
電極に流れる放電電流を電流源とし
た微小ダイポール放射源により電磁界が発生するというものである。
しかし、これは、電磁界の実測が1GHzまでの周波数成分しか測定できな
かった時期に妥当であると考えられたものである。最近、石上等が6GHzの周
波数成分まで測定を可能とし、電界、磁界ともにWilsonのモデルによる計算波
形より立ち上がりの急峻になっていることを報告している。
このことから石上等
は、放電初期の放電路形成時による電流と放電中電極を流れる電流の2種類の放
射源をモデル化する必要があるとしている。
(2)雷放電による電磁波
雷放電に伴って発生する電磁波の発生メカニズムについても同様のことが言え
る。基本的には、先駆放電と帰還雷撃に分けられており、帰還雷撃が支配的であ
34
るとして様々なモデルが提案され
ている ( I E E E
磁束密度
tr a ns . E M C
November 1998)。1979年に
LIn ,Uman 等により雷放電によ
る電界と磁界の測定結果が図7.
50に示すように発表されてい
る。この図は雷放電点からの距離
の違いによる帰還雷撃による電磁
界の変化を表したものである。電
界、磁界波形ともに距離の変化に
対して急激に減衰している。ま
た、1回目の帰還雷撃による電磁
界(実践)に比べ2回目の帰還雷
撃による電磁界(破線)は波形は
実線:最初の帰還雷撃
破線:後続の帰還雷撃
ほぼ同じであるがレベルが小さく
図7.50 帰還雷撃による放射電磁界変化
なっている。
ただし、 通信線に接続されて
いる通信装置にダメージをあたえるような誘導雷現象は、
雷放電から1k
場合である。この場合は、帰還雷撃電流
m以内の極近傍に通信線が存在する
による電磁波が支配的ではなく、7.1節でも述べたように、近傍界である静
電界および電磁界が支配的
な領域であることに留意すべきである。
帰還雷撃によって発生する電磁界の計算方法については、まず、大和や
Chowdhuriによって1960年代に報告されている。雷放電電流が大地から上
昇し、その大きさも時間的に変化するという実際に近いモデルでの解析である
が、大地を完全導体と仮定しており、電界は大地に垂直な成分のみを計算する事
となっている。
これに対して古賀等は大地の導電率が有限である場合の計算方法
を提案している。
これは、まず大地を完全導体として空間の垂直電界を求め、
次に大地が有限の導電率の場合に電界が電磁波の振興方向にすこし傾くと
いうZenneckの表面波の理論を利用して電界の水平成分を導く
的な方法である。
35
という近似
このように帰還雷撃に
雷雲
より発生した電界の垂直
水平電界
成分と水平成分が、図
7.51に示すように架
雷
放
電
空に張られた通信線や送
電線に印加されて誘導電
垂直電界
電話局側の雷
サージ電圧
加入者側の雷
サージ電圧
架空ケーブル
加入者
電話局
圧が発生するのである。
このことは、大地上の垂
直モノポールアンテナか
地下ケーブル
図7.51 雷放電による電界の通信線への印加モデル
ら発せられた垂直偏波で
ある中波放送波についても言え、
同様に発生する電界の垂直成分と水平成分が架
空通信線に誘導電圧を発生させるのである。
このメカニズムについては第8章で
述べる。
なお、ここでは帰還雷撃に焦点を当てているが、より高速な波形観測が実施さ
れると、
先駆放電による電磁波発生分が抽出されてくるのではなかろうか?ただ
し、ノイズとしての影響の程は不明である。
36