タイマーIC 555で遊ぼう『10分間ピッ&ニカド電池充電器』 - So-net

CQ ham radio 1992 年 9 月号 364~368 頁
のデータブックに示されています。
でも、私の手元には 555 を使うと
きに絶対に手放せない技術資料が
今月は何を作ろうかなあと思案
一つあります。それは、今から十
しているところに、編集部から本
数年前にシグネティックスの日本
誌が 9 月号で 555 号を迎えるので
総代理店をしていた旭硝子が作っ
タイマーIC の 555 を使った製作を
た A4 判 76 ページほどのもので、
やってみてほしいという希望があ
あまり何度も見たものですから表
りました。そこで、喜んでこの希
紙がとれてしまっています。写真
望に乗ることにしました。
1 は現在残っている最初の頁に今
タイマーIC 555 のオリジナルは、 月使う 555 を乗せたところです。
シグネティックスの NE555 です
では、この技術資料から 555 を
が、今ではセカンド・ソースが各
紹介してみることにしましょう。
社から発売されており、3 端子レ
タイマーIC555 の特徴は、
ギュレーターの 78 シリーズと同
・マイクロ秒から数時間にわたっ
じように、お店に買いに行くとき
てのタイミング。
には“555 をください”で完全に通
じます。
そのようなわけで、555 のデー
タや応用回路は各社のリニア IC
応用範囲の広い
タイマーIC 555
タイマーIC 555
364
・単安定/非安定モードの動作。
・デューティ・サイクルが加減で
きる。
・200mA の大出力電流(吸込みま
たは吸出し)
。
・温度安定度は 1℃あたり 0.05%。
など、また応用例は、
・正確なタイマー。
・パルス発生器。
・規則的なタイミング。
・パルス幅変調、パルス位置変調。
・パルス誤り検出。
といったことがあげられています。
第 1 図がタイマーIC 555 のブロ
ックとピン接続です。これを見る
と 2 個のコンパレーターとフリッ
CQ ham radio
プ・フロップで構成されており、
中には 20 個を超えるトランジス
タが入っています。
第 1 表は NE555 の最大定格と電
気的特性の中で必要と思われるも
のを抜粋してみたものです。使用
可能電圧範囲が広く電源電流が少
ない、また出力電流を 200mA も取
り出せる、といったところが、こ
のタイマーIC の人気の秘密でし
ょう。
写真 1 に示した NE555 の技術資
料の中でとてもよくできていると
思うのは、タイマーの動作を説明
するために使われているマンガの
カットです。
この 555 をタイマーやパルス発
生器に使うときには CR の時定数
を利用しますが、この場合の C へ
の充放電は第 1 表のスレシホール
ド電圧(2/3VCC)とリセット電圧
(実は 1/3VCC)の間で行われます。
その様子を説明したのが第 2 図で、
見ていると思わず笑ってしまいま
す。いかにも、アメリカ人のセン
スのよさが出ています。
September 1992
表紙がどこかにいってしまった
のは残念ですが、この技術資料は
これからもきっと私の役に立って
くれることでしょう。
この技術資料には 555 について
多くの応用回路が紹介されていま
すが、今月はその中から、555 の
最も基本的な使い方である非安定
マルチ・バイブレーターを応用し
た“10 分間ピッ”と、555 を電圧検
出に応用した自動 ON/OFF 機能
付きの“ニカド電池充電器”を作っ
てみることにします。
“10“10
分間ピッ”の作り方
分間ピッ”の作り方
この“10 分間ピッ”というのは、
ID(コールサイン)を入れる合図
を 10 分ごとにピッと鳴って教え
てくれるものです。スイッチを入
れたときから 10 分ごとに、ピッ・
ピッと鳴り続けます。
第 3 図が技術資料に示された非
安定マルチ・バイブレーターの回
路です。
この非安定マルチ・バイブレー
ターでまず t1(10 分間)を無音で
過ごし、t2 でピッと電子プザーを
鳴らそうというわけです。
この t1 や t2 は RA や RB、それに
C の値で決まりますが、t1 に対し
て t2 が十分に短いとして検討して
みた結果を第 3 図の右側に示して
あります。そこで、C を 1000μF、
t1 を 10 分(600 秒)として RA の値
を計算してみると、
t
R =
≒ 866[kΩ]
0.693C
となります。
まあ、これくらいのあたりをつ
けておいて製作にとりかかること
にしましょう。
第 4 図が実際に製作する“10 分
間ピッ”の回路です。
この回路では RB を 1kΩ としま
したが、この場合の t2 を計算して
みたら 0.693 秒となりました。こ
の時間だけ電子ブザーがピッと鳴
ります。
365
次に、電源電圧のことを検討し
ておきましょう。このようなタイ
マーを作るときには時間の精度を
出すためには、電源電圧を安定化
しなければならないのが普通です
が、555 の場合には C の充放電は
第 3 図にも示したように電源電圧
の何分の 1 というかたちで決まる
ので、ひよっとして電源電庄の影
響は少ないかもしれません。そこ
で完成したもので試してみたら、
VCC=5V のときと 9V のときの違
いは 10分間に対して7秒ほどでし
た。これならば、電源を定電圧化
する必要はなさそうです。
ところで、第 4 図を見ると第 3
図にはないトランジスタが一つ付
366
いていますが、これは何のためで
しょうか。実は、第 3 図の回路を
働かせると、第 5 図(a)に示した
ように第 1 回目のコンデンサーへ
の充電が①のようにゼロから始
まるために、t1 の時間が t2 や t3 よ
りも 30%ほど長くなってしまいま
す。これでは困るので、(b)のよ
うに最初に 1 回だけ急激に C を充
電し、t2 からをタイマーに利用し
ようというのが、このトランジス
タの役目です。これは、最初の 1
回目だけをトランジスタの助けを
借りて第 3 図の RA を極めて小さな
値にしていると考えればよいでし
ょう。
なお、第 5 図(b)の t1 は、t2
以降が 10分なのに対して1 秒以下
と短時間です。また、このやり方
だとスタートした瞬間に 1 回ピッ
と鳴ってしまいますが、これは動
作の確認として利用でき、結果と
しては一石二鳥です。
では、さっそく“10 分間ピッ”
を作ってみることにしましょう。
なお、誌面がなくなってきました
し、回路も簡単なので、いつも用
意している部品表は今月は省略し
ます。使っている部品のうち、タ
イマーの時間を決める C には本当
はタンタル電解コンデンサーを使
いたいところですが、本器はあま
り正確な時間は必要ないので、ふ
つうのアルミ電解コンデンサーで
CQ ham radio
我慢しました。
第 6 図がプリント板を作るため
のプリント・パターンです。なお、
このプリント・パターンの取り付
け穴は、ケースにアイデアルの
GM-20-WM を使う場合のものと
なっています。
プリント板の加工が終わったら、
部品を取り付けて組み立てます。
写真 2 にプリント板の組み立てが
終わったところを示しておきます。
プリント板の組み立てが終わっ
たところで、第 7 図のようにつな
いで働かせてみました。時間合わ
せは 1MΩ のボリュームで行いま
すが、ストップ・ウォッチを相手
にやるとわりあい簡単に 10 分近
くに調整できました。
プリント板がうまく働いてくれ
たところで、前にもちょっとふれ
た ア イ デ ア ル の ケ ー ス
GM-20-WM に第 7 図のようにつ
ないで入れてみました。写真 3 が
ケースの中、またタイトルに示す
写真が完成した外観を示したもの
September 1992
です。なお、このケースは 006P
用の電池ケースが付いています。
ケースに入れて完成したところ
でスイッチを ON にしてみたら、
最初にピッと鳴り、そのあと約 10
分ごとにピッと鳴ってくれました。
なお、006P は連続して使っても
10 時間くらいはもつはずです。
“ニカド電池充電器”
“ニカド電池充電器”
というよりも…
というよりも…
タイトルには一応“ニカド電池
充電器”と書きましたが、これは
第 8 図のようなもので、電池電圧
のモニターをタイマーIC に自動
的に行わせようというものです。
その結果として、ニカド電池の充
電を自動的に管理できます。
第 8 図を見ると、ニカド電池が
回路の中につながりっぱなしにな
っています。これから察すると、
充電器というよりも“無停電電源”
といったほうがよいのかもしれま
せん。
D1 のツェナー・ダイオードは基
準電圧を作り出しているもので、
出力側には ON/OFF の調整用ボ
リュームが見えます。ON という
のは電圧が下がったときの充電開
始電圧を設定するもので、0FF と
いうのは充電が進んで電圧が上が
ったときの充電終了電圧を設定す
るものです。
というわけで、この回路は実際
に使うときにどのように働くのか
いまひとつはっきりしませんが、
とにかくできるだけ第 8 図に忠実
に作ってみることにしました。
第 9 図が実際に作ってみた回路
です。ピン 3 の出力には LED をっ
なぎましたが、これは 555 から出
力電圧が出ているかどうか(とい
うことは、充電が ON か OFF か)
がわかるようにしようと思ったか
らです。
2 個のボリュームは第 8 図では
25kΩ となっていますが、この値
のボリュームは手に入らなかった
ので、入手可能な 30kΩ としまし
た。また、ON のほうの VR1 に直
列に つなぐ抵抗が第 8 図 では
68kΩ となっていますが、これで
はうまくいかなかったので、第 9
図のように 47kΩ に替えてありま
す。
第 10 図がプリント・パターンで、
これは一応タカチ電機の SS-90AB
というケースに入れることを想定
して描いたものです。ですから、
取り付け穴の位置はこのケースに
あっています。
プリント板の加工が終わったら
部品を取り付けて組み立てますが、
そのとき、D2 の 1S1885 だけはボ
リュームの調整の都合で取り付け
ないでおいてください。組み立て
を終わったプリント板を写真 4 に
示しますが、D2 は差してあるだけ
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でハンダ付けはしてありません。
では、D2 を外したプリント板に
LED などを第 11 図のようにつな
ぎ、ON-VR と OFF-VR の調整を
しましょう。やり方は、定電圧電
源②の電圧を 10V から下げていっ
たときに 7.40V で LED が光るよう
に ON-VR を、また同じく電圧を
5V から上げていったときに 8.40V
で LED が消えるように OFF-VR
を調整します。この調整は一筋縄
ではいきませんが、根気よくやれ
ばなんとかなります。
なんとか二つのボリュームの調
整ができたところで、
第 12 図のよ
うにニカド電池をつなぎ、負荷を
かけて使ってみました。写真 5 に
その様子を示しますが、放電して
DTM の指示が 7.40V を下回ると
LED が光って自動的に充電を開
始します。このときの充電電流は
5mA くらいでしたが、IN に加える
電圧を 13.8V まで上げたら充電電
流は 10mA くらいまで増えました。
第 12 図の状態でほっておいた
ら、1~2 時間おきに LED が光っ
たり消えたりする(もちろん、LED
368
が光っているときに充電してい
る)のが観察できました。どう
やら、これがこのニカド電池充
電器の働きのようです。
このニカド電池充電器をどの
ように役立てるかは思案のいる
ところですが、皆さんも一つ考
えてみてください。
CQ ham radio