大腸菌による遺伝子組換え Ⅰ 概要 大腸菌に GFP 遺伝子を持つプラスミド DNA を導入することにより、遺伝子組換え大 腸菌を作出する。ヒートショックを行う際の温度を変え、温度による組換え体出現個 体数の違いを比較する。 Ⅱ 研究目的 米国研修に行ったときに下村先生の研究に触れ、光るタンパク質に興味を持ち、そ れを使って実験したいと思った。ヒートショックを行う際の温度を変え、温度と遺伝 子組換え個体の出現数の関係を考察する。 Ⅲ 実験の方法 (1)LB 培地の作成 ① LB 寒天培地に蒸留水 500ml を加えて よく混ぜ、培地を完全に溶解する。 ② 121℃、20 分以上のオートクレーブ処 理をし、60℃まで冷ます。 ③ クリーンベンチ内でシャーレを開け、 6 枚の LB 寒天培地を作成する。 培地をシャーレの半分の高さまで入れ て、ふたを閉め、固まるまで半日置く。 ④ 図1.オートクレーブ前の培地 残っている培地にアンピシリン溶液 250μℓを加え、泡立てないように混ぜた後、 ③と同様にシャーレ 14 枚の寒天培地を作る。 ⑤ 培地が固まったら、パラフィルムでふたを固定する。 ⑥ 冷蔵庫で保存する。 (2)LB 液体培地の作成 ① LB 液体培地に蒸留水を 100ml 加えてよく混ぜ、 培地を完全に溶解する。 ② 121℃、20 分以上オートクレーブ処理をし、 室温まで冷ます。 ③ 250μℓずつマイクロチューブに 12 本分注す る。 ④ 冷蔵庫で保存する。 図2.実験の様子 -1- (3)大腸菌プレートの作成 ① クリーンベンチ内で大腸菌グリセロールストックを開け、25μℓを LB 寒天培地に のせ、ループでのばす。 ② 30℃のインキュベータで、大腸菌プレートを 2 日培養する。 (4)組換え(DNA 量・温度条件を変えて行った) 実験前に以下のものを用意しておく。 ・発泡スチロールに粉砕した氷を詰めておく。 ・ヒートショックのため、お湯の温度を温度計を使って調節しておく。 ・クリーンベンチ内で LB/Amp 培地と LB 培地を 1 時間乾燥させる。 ・マイクロチューブに分注した、形質転換溶液とプラスミド DNA、LB 液体培地を氷にさ して冷やしておく。 <実験> ① 大腸菌プレートのコロニーをループですくい取り、形質転換溶液に混ぜる。このと き塊が残らないように注意する。混ぜた溶液は氷上に置く。 ② ①のマイクロチューブにプラスミドDNAを加える。 (DNA の混合量は、二回目では それぞれ 5μℓ、10μℓ、15μℓ、三回目は全て 10μℓで行った。) ③ マイクロチューブを氷上に戻し、10 分置く。 ④ 冷やしたマイクロチューブをお湯に 50 秒間浸し、ヒートショックを行う。(ヒート ショックの時間は、それぞれ二回目は 37℃、42℃、47℃、三回目は 20℃、42℃、 55℃、60℃、70℃に調節した。) ⑤ マイクロチューブをすばやく氷上に戻し、2 分置く。 ⑥ 氷から取り出し、LB液体培地 250μℓを加え、10 分間室温に置く。 ⑦ ⑥の溶液 100μℓをLB/Amp培地かLB培地にのせ、新しいループで薄くのばす。 ⑧ 培地の表面が乾いたら、シャーレのふたを閉めて、パラフィルムでふたを固定し、 30℃のインキュベーターに上下逆にして入れる。 図3.ヒートショックの様子 図4.ちびたん(遠心分離機) -2- (5)観察 それぞれコロニーの個数を数える。 図5.組換え後のコロニー Ⅳ 実験結果と考察 *温度はヒートショックを行った際の温度である。 *①②③は各シャーレを区別するためにつけた番号である。 *対照とした、アンピシリンなしのLB培地では、どのシャーレも光るコロニーは観 察されなかった。 一回目…全てのシャーレでコロニーが確認されなかった。 失敗の原因として考えられること ・培養温度が低かった。 ・培養した時間が短かった。 ・培養するときに逆さにせず、コンタミネーションした。 ・ヒートショックの時間が正確でなかった。 ・準備不足だった。 改善点 *二回目は十分な培養時間をとるために、2 週にわたってコロニー数を調査した。 *操作ミスを減らすために、十分事前準備し、実験操作に注意を払った。 -3- <二回目結果> 表1.温度と DNA 量の関係(二回目) DNA量(μℓ) 温 度 (℃ ) 5 10 15 37 ― 48 ― 42 116 ①15 ①54 ②45 ②135 ③46 ③99 46 ― 47 ― 60 140 コロニー数 50 コロニー数 120 コ ロ 40 ニ ー ー コ 100 ロ ニ 80 数 30 ( 数 ( 個 20 60 ) 個 ) 40 10 20 0 0 37℃ 42℃ 5μℓ 47℃ 温度 10μℓ 15μℓ 図7.DNA量と組換え 大腸菌 コロニー数 図6.温度と組換え大腸菌 コロニー数 *DNA量の差とコロニー数の関係は、この実験からはよくわからなかった。 *温度によるコロニー数の差がはっきりしなかったので、三回目は温度の幅を広げ、1 つの温度条件につき 3 実験区行い、平均をとった。 *二回目ではDNA量を 10μℓで固定し、ヒートショックの温度のみを変えて実験を行 った。三回目も同様に DNA 量 10μℓで実験を行った。 -4- <三回目結果> 表2.温度とコロニー数の関係(三回目) コロニーの数(個) 平均(個) 温 度 (℃ ) 20℃ ①40 ②39 ③124 68 42℃ ①86 ②257 55℃ ①95 ②170 ③236 167 60℃ ①25 ②26 ③115 55 70℃ ①5 ②38 ③29 24 172 ・表には示さないが、60℃と 70℃でヒートショックした大腸菌も 42℃で処理した大腸菌と 同程度増殖することが確認された。 200 180 160 コ ロ ニー 数 (個) 140 120 100 80 60 コロニー数 40 20 0 20℃ 42℃ 55℃ 60℃ 70℃ 温度 図8.温度と組換え大腸菌コロニー数 *42℃で最も多く組換え固体が出現したが、55℃でも出現数にあまり差がみられないこ とから、42℃から 55℃の間で実験を行っても、同様のコロニー数が得られると考えら れる。 *60℃では組換えコロニー数が大きく減少しているので、55℃と 60℃の間のある温度を 境に、組換えが起こりにくくなると想定される。 *同様に 20℃と 42℃の間にも、組換えが起こりにくくなる温度があると考えられる。 -5- Ⅴ 感想 何気なく決めたテーマで研究を始めたので、実験に失敗してコロニーが観察できな かったこともあったけど、回を重ねるごとに原因を考察し、次の実験につなげること ができて良かった。 一回目の実験は、もう少し長く培養すればコロニーが観察できたかもしれないと思 った。 今後の課題としては、ヒートショックを行う際の、20℃と 42℃の間の温度と、55℃ と 60℃の間の温度で調査区を細かく設定し、組換えが起こりにくくなる温度を確認す ることがあげられる。 学校の授業では出来ないような実験をしたので、自分で考えてやらなければならず、 いろいろ大変だった。 これからは、実験に関わる機会が増えると思う が、細かいところまで気を配って、失敗してもめ げずにやろうと思った。 図9.コロニー -6-
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