麻酔科 - 安房地域医療センター

麻酔科
1.2013年度の目標および方針
手術中における麻酔の医療過誤は患者の転帰に重大な影響を与えるために、その予防は麻酔科医にとっ
て不変な重要課題である。さらに、現在では、単に麻酔が安全に行われるだけでなく、積極的な術中術後
疼痛管理、ストレスコントロールを行うことにより、快適に周術期を過ごし、術後合併症を減少すること
も期待されている。亀田病院麻酔科においては、安全な麻酔、周術期の疼痛管理、手術ストレスコントロ
ールを重要な目標としている。
また麻酔科は、その特性より重症患者の術後管理に適任であり、積極的に関与することで、周術期管理
の質的向上に寄与できる。今年度はスタッフが整い次第、ICU管理にも力を入れていきたい。
以上より、今年度も我々亀田総合病院の麻酔科としては、以下5項目を2013年度の目標として定めて、日
常の麻酔業務に取り組む所存である。
1)安全な麻酔管理の徹底。
2)積極的な術後疼痛管理・ストレスコントロールの実施。
3)手術件数の増加に対応する麻酔科医師の確保。
4)周術期医療への積極的関与。
5)臨床研究の推進と、積極的な学会活動。
2.2012年度評価
昨年度の中央手術室における手術件数(前年度数)は、7,260(6,688)件であり、麻酔科管理の手術件
数は(前年度数)、5,881(5,380)件と、前年度と比較して増加した。この理由としては、外科系スタッ
フの充実と、近隣の病院からの紹介症例の増加により外科系全般に手術件数が増加したことによると思わ
れる。
一方、昨年度は手術室看護師スタッフ数が減少し手術件数増大のlimiting
factorとなった。昨
年度も麻酔過誤による医療事故は皆無であり、過去20年間においても麻酔事故による患者死亡はゼロであ
り、麻酔に伴う医療訴訟も無かった。これは亀田病院麻酔科として誇るべき数字と考えている。
昨年の
学会活動は、日本麻酔学会、地方会、日本臨床麻酔学会、ペインクリニック学会、日本集中治療学会にお
いて発表を行った。
3.スタッフ紹介
→ 亀田メディカルセンターホームページ スタッフ紹介へ
http://www.kameda.com/medi_services/information.php?d=44&i=6
いずれも常勤医であり、このうち8名は日本麻酔学会において認定された指導医・専門医であり、6名は
厚生労働省の認定した麻酔標榜医の資格を得ている。
4.年間活動内容と実績
昨年度の麻酔科依頼の各科の手術件数(前年度数)を示す。
外科
乳腺外科
呼吸器外科
894(898)
整形外科
870(788)
脳外科
脊椎外科
168(140)
心臓外科
169(137)
耳鼻科
483(455)
176(208)
スポーツ外科
形成外科
産婦人科
口腔外科
252(154)
泌尿器科
1028(849)
精神科
118(90)
56(69)
296(299)
289(177)
301(281)
小児外科
666(647)
その他
96(142)
19(45)
年間の麻酔科依頼の手術件数は、5,881(5,380)件であり、そのうち緊急手術件数は、750(568)件あま
りであった。特にKタワーのオープンにより、クリニックにおける眼科や外科、整形外科、形成外科の日帰
りの手術件数を加えるとその数は、年間8,000件を優に超えている。
今年度も各外科診療科において手術は活発に行われており、その症例は新生児から超高齢者まで多岐に
わたっている。麻酔方法は、全身麻酔を主体として、体幹の手術に関しては硬膜外麻酔を併用している。
術後、硬膜外鎮痛が出来ない患者にはIV-PCAを行っている。
麻酔に関する説明を患者に対してきちんと
行い、医学的に問題がなければ麻酔方法は、患者の希望を最大限尊重して行うことを基本としている。
麻酔科依頼件数は、前年度と比較すると増加しており、その内の高齢者の占める割合は確実に増加して
いるために、その麻酔管理は年々複雑化して困難なものになっている。
新しい病棟の建設に伴い、手術室も従来の10室から16室に増加し、今後の手術件数の増加に設備面では
十分対応できるようになったが、手術件数の伸びはそれを上回るペースになっている。
現在、最大13列で手術室が稼働しているが、看護師、麻酔科医のスタッフを確保し、今後の件数の増加
に対応できる体制を整えたい。
当院の中央手術室における手術の特徴としては、緊急手術もしくは準緊急手術が多く、当院が地域にお
ける救急センターとして機能していることを示している。こうした当院の性格を考えて、夜間休日を問わ
ず、365日24時間緊急手術が行える体制を整えるために、麻酔科スタッフは平日休日を問わず、2名の拘束
体制を引いて、緊急手術に備えている。さらに重症患者の術後管理にも積極的に関与すべく集中治療室に
おける管理を専任スタッフで行うようになり、24時間体制で当直を行っている。
【ペインクリニック】
南房総において唯一のペインクリニックを開設しており、帯状疱疹後神経痛のような難治性の疼痛疾患
を中心に、神経ブロックを主体とした治療に当たっている。外来は、月曜日から金曜日の週3回、午前10時
から12時まで行っている。現在脊椎脊髄外科、消化器内科、神経内科からの紹介患者も増加している。
5.教育・勉強会関係など
現在亀田総合病院においては、臨床研修医のプログラムの中に、麻酔科 3 ヶ月のトレーニングが必須
となっており、常時 4 名の研修医が麻酔科研修を行っている。研修医は、常に麻酔指導医とともに麻酔
の研修を行い、経験年数の少ない研修医が 1 人で麻酔業務を行うことは決してない。
3ヶ月間において、約100例の症例の麻酔を経験することによって、救急蘇生において必須である気管内
挿管手技や、静脈確保、腰椎穿刺、観血的動脈圧測定と言った手技や、出血性ショック患者や、慢性疾患
患者の急性期管理についての知識を学べるように配慮している。
また現在週2回(火・金)の午前7時から継続して、抄読会を行い、研修医の教育に当たるとともに、スタ
ッフにおいては現代の麻酔学の成果を臨床に取り入れるための努力を行っている。
初期研修後の麻酔専従医の後期研修プログラムは、麻酔標榜医の資格を取得後に、麻酔指導医の資格を
取ることを目標として、外科一般の麻酔管理とともに、心臓外科手術管理、集中治療室管理を行いつつ、
ペインクリニックにおける適切な手技の修得を目指している。
そのために必要であれば、院外の適切な指導病院の紹介を行い一年間の院外研修を行うことも可能とし
ている。
6.学会発表
廣井一正
体外循環補助下 Debranched TEVAR 施行時の周術期合併症
日本麻酔科学会第59回学術集会
2012年6月7日~9日
吉沼裕美 牧野佐和
ダーマボンドは大腿神経カテーテルの脱落を減少させるか?
日本ペインクリニック学会第46回大会
2012年7月5日~7日
西田千賀 吉沼裕美
人工股関節全置換麻酔術後の術後鎮痛法としての腸骨筋膜下ブロックの有用性についての検討
日本ペインクリニック学会第46回大会
2012年7月5日~7日
H.Yosinuma、 K.Otome
Dermabond
topical skin adhesive is useful for preventing continuous femoral nerve catheter dislodgement.
ESRA 31st Annual ESRA Congress 2012, Bordeaux, France
5-8 September, 2012
杉村憲亮 廣井一正
重症筋無力症患者4例の麻酔経験
関東甲信越・東京支部第 52 回合同学術集会
2012年9月22日
西田千賀 高橋幸雄
術後 MRI にて perineural cyst を認めた脊髄くも膜下麻酔の効果が不十分であった1症例
関東甲信越・東京支部第 52 回合同学術集会
2012年9月22日
廣井一正 小林収
漏斗胸患者の腹臥位脊椎手術において遷延する低血圧の管理に難渋した麻酔症例
関東甲信越・東京支部第 52 回合同学術集会
2012年9月22日
牧野佐和 亀田奈々
出血性ハイリスクの予定帝王切開術における IABO 導入症例の麻酔経験
日本臨床麻酔学会第32回大会
2012年11月1日~3日
杉村憲亮 吉沼裕美
帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛に対するリドカイン軟膏の有用性についての検討
日本臨床麻酔学会第32回大会
2012年11月1日~3日
中村京一 杉村憲亮
頸動脈ステント挿入術
麻酔 2012年11月 第61巻11号 1205-1215
文責:小林収