附属牧場の地域貢献として (牛の健康を考える・フットケアー) 池田 正則

附属牧場の地域貢献として
(牛の健康を考える・フットケアー)
池田 正則
東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場
1.はじめに
当牧場では地域貢献の一つとして、牛の爪の病
気(蹄病)予防と護蹄管理の重要性を普及啓発す
3. 日本装削蹄協会主催による牛認定削蹄師の認
定試験
る事を目的とした、JRA 畜産振興事業の「牛フッ
トケアー普及啓発事業」を公益社団法人日本装削
蹄協会主催により開催した。また、牛認定削蹄師
1級および2級の試験会場にもなっており北海道
から九州まで受講生が集まる。
2.酪農家を対象とした削蹄講習会
写真2 受講生の削蹄試験と審査員による審査
牛の爪は一ヶ月に1㎝伸びると言われている。
野生の牛であれば移動距離が長く自然と擦り減り
牛のフットケアーの専門家として日本装削蹄協
丁度よい状態となるが、産業動物として飼育され
会主催の認定牛削蹄師1級と2級の試験が当牧場
ている牛は擦り減る量よりも伸びる量が多い。そ
で行われており多くの受講生が集まる。
の為に定期的に爪を削る削蹄を行わないと、歩行
以前は各県の試験場や酪農家が牛や場所を提供
困難や爪の病気等に罹ることから、不健康になり
してくれたが、牛へのストレスや作業の遅延また
生産性が下がる。多くの酪農家は牛の爪を削る専
は、牛海綿状脳症(BSE)や感染力の強い口蹄疫
門家である削蹄師に依頼し削って貰うので、自分
等の発生により防疫が強化されたことや感染のリ
で爪を削る酪農家は少ない。自分で爪を削る技術
スクもある事から、試験会場の確保が困難となっ
を身に付ければ、牛は常に健康な状態を保て生産
てきている。この様な背景から当牧場を会場とし、
性も上がる事になる。
認定試験も行っている。
学科試験終了後に実技試験が行われ、写真2左
側は実技試験中で制限時間内に牛1頭の削蹄を行
う。写真2右側は審査委員2名による審査が行わ
れる。
今回の削蹄講習会と認定牛削蹄師試験の実技指
導講師は、全国牛削蹄競技大会で何度も日本一に
写真1 指導級認定牛削蹄師の実技指導
なった指導級認定牛削蹄師である。
当牧場の乳牛を使用して指導級認定牛削蹄師に
よる蹄の説明と削蹄道具の使い方の説明後に、基
本となる削蹄を見学し、酪農家も削蹄を体験した。
写真1左側は後脚の蹄の底を削り土ふまずを作っ
た。これだけでも足に加わる負荷が軽減されると
の説明があった。写真1右側は前足の蹄は硬いの
でバーナーで炙り柔らかくしてから削る指導を受
けている。
写真3 伸びた爪と綺麗に削蹄された爪