自己教育力や創造性を引き出す学習指導に関する研究 − 課題研究の実践を通して − 愛知県立碧南工業高等学校 電子工学科 1 黒木 政幸 概要 本研究は科目「課題研究」における学習指導の在り方を色々な角度から考察し、生徒一人ひとり の自己教育力、創造性を引き出すための学習指導について研究を行った。今回新学習指導要領にあ る「問題解決能力や創造力の育成」を目指した指導方法を探るため、前任校の愛知県立豊川工業高 等学校におき課題研究で実践した 、システム技術習得に関わるものづくりの授業についてまとめた 。 2 製作実習装置について 近年、FA( Factory Automation)の中でPLCはシーケンスを制御するコントローラとして、様 々な設備・機械に組み込まれ使用されている。また、これらの設備・機械の高機能化に対応するよ うに 、PLC自身もネットワーク対応 、モーション制御 、計測制御 、情報処理等の機能を取り込み 、 かつ高性能化している。 豊川工業高等学校電気科PLC実習において、生徒の理解力を育てる制御装置の教材が少ないた め、シーケンサによる総合実習装置を製作した。この装置は基礎から応用までの技術を習得させ、 先端技術に対応できる技能と技術を育てることに重点をおいた。 3 課題研究の取り組みに関する共通理解 本課題研究のメンバーは5人であり、PLC装置の製作に当たり、基本的な心構えについて徹底 的に話し合い、以下の内容について共通理解を行った。 重点項目 ※チームワークを大切にする ※挨拶を励行する (写真1 課題研究メンバー) 4 実習装置の製作ポイント (1) 装置の大きさはコンパクトにし、1人でも持ち運ぶことが可能にする。 (2) 基礎学習と応用学習をこの装置で行うようにする。 (3) 応用実習において出力機器の制御は理解しやすい製作を作る。 (4) 装置全体の構造は、メカニズムが容易に理解できる構造にする。 (5) 安全面に配慮した実習装置にする。 5 完成品 (写真2 電気科のPLC総合実習装置) 6 (写真3 搭載したエアシリンダ装置) 製作過程の主なポイント (1) 新装置「エアシリンダ」について 電子機械科PLC装置を参考にしてそこから問題点を抽出、対策を考えた。そこで新装置とし て「エアシリンダを使ってみたら」という意見がゲーム感覚をヒントに生徒から提案され、イン ターネットや他の先生方の意見を聞いて徹底的にエアシリンダについて調べた。 理解点(生徒報告書を抜粋) 今回、なぜエアシリンダを設けたか。従来から使われていた、パイロットランプやモータは出 力のみの確認となってしまいます。しかしエアシリンダを使うことにより、この実習の狙い「入 力と出力の関係」が成立し、基礎的・基本的な実習となりさらに企業現場ではエアシリンダを多 く取り入れてるので、多少なりとも知っておくことが必要であると考えたからです。 7 おわりに 私の試みた課題研究での実践(ものづくり製作)は、指導者である私と生徒の直接の触れ合いに よって成立している。生徒任せ、他人任せにすることはできない。 課題研究を始めた最初の年からうまく進行したわけではなく、またいつも予測したように進むと も限らない。予定通りに進行しなくても、生徒にはそれなりの満足感は得られたと思う。 課題研究の指導ポイントの一つは、生徒を生き生きと活動させることであり、そのためには、指導 者は「時間の共有 」「空間の共有」という気持ちを大切にしたい。それは生徒と時間を共にし、気 持ちを一つにしていつも一緒にその場面におり、同じ気持ちになって支える。理屈ではなく、実際 にそれができるかどうかが大切なことであると考える。教育者として大事なことは、生徒と一緒の 目線でものごとを見て、一緒の気持ちになってやることだと思う。そうして初めて生徒の痛みも苦 しさも本当に理解できるようになると思う。かたくなな気持ちでは、同じ目線、同じ気持ちにはな れないのである。 ものづくりに取り組むことはとても厳しいことであるが、このことを通して個性豊かな人間性を 育てられることが確認できものづくりで得た経験、そして共に泣いたり笑ったりした仲間との想い 出は、ダイヤモンドのように強く美しい心を培ってくれるはずである。 この想い出は、長い人生を生き抜くうえでも大切なことである。
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