千田桃葉さん

大地連携ワークショップ
“厳しい北海道の自然を生き抜いたアイヌの人たちの知恵から学ぶ”
彫刻専攻 2 年
千田 桃葉
体験日時:2016 年 8 月 23 日~27 日
体験場所:北海道 平取町二風谷
五日間、北海道平取町の二風谷という地域でアイヌ文化体験をしてきた。
ワークショップ参加前はアイヌ文化についてまったくと言っていいほど知らず、さらに他大学の人達との交流が
しっかりできるのか、不安を抱えながらワークショップに臨んだ。
1 日目
札幌大学副学長の本田先生から、今アイヌ文化が注目され始めていること、そして平取町二風谷のアイヌ文化
とその地域の人たちについて重点的にお話しを伺った。一般的にアイヌとは、北海道特有のものだと捉えがちだ
が、そうではなく、日本の先住民族の一つであると考えることが世界(特にオーストラリアやアメリカなど先住
民族文化が広く伝わっている国)から見ても偏りのない見方であるとお聞きした。
2 日目
午前中は博物館と歴史館で学芸員さんや館長さんから直々に、現代のアイヌ文化の在り方、継承方法について等
お話しをお聞きし、貴重なアイヌ文化の資料を見せて頂いた。中でも印象に残ったお話しは、当時使われていた
アイヌ文化の生活品を展示していくだけではなく、当時の生活環境ごと現代に合わせて再現できないかという試
みをしているというお話しだ。博物館の活動として、「古い物だけを保存していく」のだと考えていた私にとっ
て、驚きだった。
(※画像1)
午後からは二風谷民芸組合の方々に教えて頂きながら、木彫りでアイヌ文様をコースターに彫った。
アイヌの彫りは独特で、浅くても奥行を感じる彫り方である。文様にも意味があり、途切れず繋がったかたちで
あるというのもアイヌ文化独特だ。
3 日目
1 日かけて二風谷民芸組合の方たちから、アットゥシ織り(※画像2)はじめ、オヒョウの木という汗や水に
強い繊維を編んで作るブレスレットづくりを体験した。初めての体験に戸惑いながら、染色してやさしい色合い
のオヒョウの木の繊維や、織りやブレスレット(※画像3)が出来上がっていく過程を楽しんだ。先生方は丁寧
に教えてくださっただけではなく、完成したものを一緒に喜んでくださったのがとても嬉しかった。
4 日目
ムックリというアイヌ文化独特の楽器(画像3参照)づくりと、お昼にアイヌ伝統料理をいただいた。
ムックリとは竹でできており、左手で紐を引っ張り口の前に固定し、右手でもう一方の紐を引っ張り割れた部分
を素早く動かし、唇に響かせながら鳴らす楽器である。大人数で鳴らすものではなく、一人で音色を楽しむもの
で、当時は川辺で女性が鳴らしていたという。
(男性は音色を聴いてどの女性の音色か分かったそうだ)
参加者全員失敗することなくムックリが完成できたが、二風谷民芸組合の方が鳴らす音色と私たちが鳴らす音色
は響きが大きく違い、感動した。
5 日目
副町長さんはじめ二風谷の役場の方々、二風谷民芸組合の方々、ワークショップ参加校の諸先生方の前で、二
班に分かれて発表報告会を行った。この日の為に初日からグループワークを重ね、前日も日付が変わるまで発表
の準備を行った。発表の形式は口頭と模造紙の掲示で、発表時間は一班 15 分質疑応答 5 分だ。より優秀だった
班には、副町長さんから二風谷の特産品を贈呈される。
私が所属していた班は、4 日間の体験を通して得たことを元に、「アイヌ文化を残す=文化が残っている町を残
す」という考えを軸にして、文化面ではどのような方法で現代に継承していくべきか、町を残す=観光面では、
平取町二風谷の特産品を生かした商品や試みを提案させていただいた。
発表報告会の結果は、私が所属していた班の優勝となり、副町長さんから平取町二風谷の特産品である、和牛と
トマトのスープカレーをいただいた。他に二風谷民芸組合の方からアイヌ織りの写真のカンバッジやポストカー
ソをいただいた。
(※画像5)
感想
不安だらけで臨んだワークショップもあっという間に終わってしまい、最終日の報告会が終わったあとは出会
った二風谷のみなさんや他大学の人たちとの別れが惜しかった。
大学生活や日常の中で、真剣に話し合い、自分の思った事を口にして、それに対する意見をもらえるという機会
は中々ない。今まで知り得なかったアイヌ文化を体験し、勉強できたことも大きな成果であるが、こうした、人
とのコミュニケーションは本当に貴重である。自分が普段勉強していることが、自分の知らない知識や考えに結
びつき、発表という目に見えるかたちで生かされること、本気で話し合うからこそ打ち解けていった班員との関
係性は、美術大学という特殊な環境で、一人で制作しているだけでは絶対に体験できないものだった。
今回の体験を糧に、限られた大学生活を有意義に過ごしたいと思う。
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