粋 J03107 松岡 悠 絶望的な結末が待っている事を知り、 それを運命であるかのように受け止めつつも、意地を見せる。 古い日本の映画によくあるようなシチュエーションである。 私は日本の映画を多く見るが、北野武の映画を見た後は、ある共通した気持 ちが湧いてくるのがわかる。また、これに似たストーリー展開が多く含まれる。 例えば『BROTHER』という作品である。 画像1 内容は、日本を追われたヤクザがアメリカに渡り、一時 は周囲のギャングを吸収し自分の組織を作るが、元々その 場所を仕切っていた大きな組織の制裁を受けて、仲間も主 人公も死んでしまうというものだ。 その組織が消えていく話の流れの中で、主人公は逃げる 気になれば逃げることができるという選択肢があるにも かかわらず、抵抗を続けた。 私はそこから、頭の中にある古風な人間の姿、 無骨な力強さと凛とした美しさを感じた。 そしてそれは『粋』という言葉に繋がったの である。 九鬼周造の『粋の構造』によると、《粋》 とは、日本人の感じることのできる微妙な美 しさであり、また、対義語に《野暮》を持ち、 画像2 粋と野暮は都会的洗練と田舎的粗野。派手と 地味などと対比される。例えば、髪の毛をきちんと撫でつけて乱れがないのは 粋ではない。女性のちょっとした鬢のほつれ、そこに粋と媚態を見るのである。 着物では襟をきちんとたてず、少しすかす。このようなものを《粋》とする美 意識がある。 粋というものは相対的である。派手な服があるから、地味な服を着る意義が あるのだし、厚化粧があるから薄化粧をする。粋というものは基本的にお金が かからない。それは身分制度や、貧富の差に対する、庶民の階級から権力への 異議申し立てとしても機能した。つまり、粋であるということは、服装や振る 舞いにより、周囲にメッセージを放つということである。 参考文献:「粋の構造」 九鬼周造著 岩波書店 画像1:www.taiyosha.co.jp/eiga/ pic/brother.jpg 画像2:www.bandaivisual.co.jp/kitano/ images/brother/story1.jpg
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