SELHiの報告書は - 米原高等学校

は
じ
め
に
滋賀県立米原高等学校は、平成14年度~16年度の3年間、文部科学省の「スーパー・イングリッシュ
・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」の指定を受け、強い使命感をもって研究開発に取り組みました。
研究開発指定校に応募の打診があったのは、英語コースを新設してまだ1年が経過していない頃でした。
その1年間試行錯誤を繰り返しながら、英語コースの体制を整えようと懸命に取り組んでいた時であったた
め、私たちにはその上さらに研究指定の仕事を受ける自信はありませんでした。しかし、SELHiの目指して
いるものが、私たちが英語コースで試みようとしていることと符節を合するものであることを知り、滋賀県
教育委員会の強い推薦に押されて、研究開発指定への応募を決意しました。
英語コースの立ち上げの原動力となったのは、「英語教育を変えたい」という、米原高等学校英語科教員
の強い問題意識でした。大学合格の夢をかなえるべく、一生懸命に教えた生徒たちの「英語力」と英語を学
ぶ意欲が、大学受験をピークとして急激に落ちていくのを目の当たりにして、「何のための英語教育なの
か?」という懐疑が芽生えたのでした。そして、受験にも将来にも役立つ英語の総合力を伸ばすことを目的
とし、英語教育の改善を目指して、英語コースが生まれました。
一方、SELHi研究開発指定は、「英語教育を重点的に行う学校をスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・
ハイスクールとして指定し、英語教育を重視したカリキュラムの開発、一部の教科を英語によって行う教育、
大学や海外姉妹校との効果的な連携方策等についての実践的研究を行う」という趣旨のもと、今後の英語教
育改善に資する有益な提言をすることを事業のねらいとしています。
私たちは、SELHi研究開発を始めるに当たって、文部科学省が求めていることのすべてを実践することは
できなくとも、米原高校英語コースで取り組み始めたことを継続・発展させ、自分たちにできる範囲の実践
を愚直に、しかし最大限の努力を傾けて行っていこうと決意しました。SELHi研究開発指定を受けて何かを
大きく変えなければならないという意識ではなく、試みようとしていることをSELHiによって強化するとい
う姿勢を取ったのです。その考え方を持ち続けたことが、SELHiを米原高校の英語教育を改革・推進する大
きな力とすることができた原因だと考えています。
私たちがSELHi研究開発の3年間で追い求めてきたものは、豊かな予算がなく、留学生・帰国子女がいない
普通の学校でも、教員の努力とチームワークさえあれば、英語教育を大きく変えることができる、というこ
とを証明することでした。私たち英語科教員は、無から有を創り出す難しさを意欲に変え、SELHi研究開発
指定という力強い追い風を受けて、発信型の骨太な英語力を育む仕事に努力を傾けてきました。授業改善の
ために常に授業を公開し、専門家の授業指導を受け、生徒と一緒にTOEICを受験し、力を合わせて課外活動
を組み立ててきました。
その甲斐あって、生徒の英語力と意欲の向上とともに、英語科教員にとっての意識改革に成功し、地域や各
方面から大きな信頼と高い評価を得ることができました。米原高校を訪問される外部の方々が、異口同音に
英語コースの生徒の意欲的な態度と、英語力に高い評価をくださいます。米原高校を巣立った英語コースの
卒業生たちは、
「大学に入って改めて米原高校で受けた英語教育の価値がわかった」と言ってくれます。そ
して、それぞれの大学で積極的に英語の学習を続けています。
このようなことが、英語コース設置の目的であり、SELHi研究開発の成果であることを、指定期間が終わ
る今、私たちは大きな満足とともに実感しています。
この冊子は、文部科学省に提出した「平成14年度~平成16年度 SELHi研究開発実施報告書」です。
3年間の研究開発の内容や実績をまとめることは大変難しいことでしたが、英語科教員全員が、現場の高等
学校の先生方の参考に資するということを第一の目的として書き上げたものです。3年間の英語教育の集大
成としてのこの冊子では、実際の授業の様子や教材をふんだんに再現し、教える手順や方法をつぶさに記し
ました。また、私たちの考え方も随所に盛り込みました。
大部になったために、まとまりに欠け、冗長な部分も多いのですが、この冊子が高等学校における英語教
育改善のよすがになれば、これに勝る喜びはありません。
滋賀県立米原高等学校
校長
同 英語コース主任・SELHi研究開発主任
平成17年3月
山中健一
山岡憲史
SELLHi研究開発・英語コースにおける英語教育の基本方針
1.授業において、4つの技能を総合的に伸ばす指導法を研究する。
2.授業外英語活動を授業と有機的に関連づけ、楽しい活動とchallengingな活動とを織り交ぜる。
3.英語的環境がない地域・学校であっても、校内的努力によって英語力を伸ばす方途を模索する。
4.教員の努力さえあれば、普通の学校で実現可能な実践を積み重ねて提言する。
5.英語科教員全員で取り組み、それぞれが自分にできる範囲の中でさまざまな試みをする。
6.外部の人材を積極的に招致し、英語学習体験を豊かなものにする。
7.教師の力を高めるために、研究授業を重ね、外部にも積極的に公開する。
8.教師も生徒と同じ学習者であることを常に念頭に置いて、英語力向上に努める。
9.モティべーション・意欲を高める仕組みを作り、自ら学ぶ姿勢を育てる。
10.コミュニケーション能力の育成が大学入試にも通じることを証明する。
11.高等学校を卒業してからも、英語学習に意欲を持って取り組める生徒を作る。
12.SELHi前もSELHi後も方針を変えることなく、経済的な負担をかけずに英語力と意欲を伸ばす。
SELHi研究開発の基本的な方法
1.英語の各科目の中で、特定の技能を伸ばす教授法と、多技能を伸ばす指導法とを研究する。
2.どの科目においても、自己表現活動を保障し、学んだ情報や考えをを発信する訓練をする。
3.口頭における表現活動を書く活動と連動させて、発話能力を高め定着を図る。
4.英語教育を専門とする大学教授に直接授業指導を受け、授業力の向上を図る。
5.内部的な独自の評価方法と外部試験による評価をバランスよく配合する。
6.外部講師を招く機会には、事前指導を徹底して多くのことを吸収できるreadinessを作る。
7.授業を効果的にするための教材開発に重点を置き、定着度や効果を検証する。
8.特定の課題に特化せず、多くの取り組みを行い、それらを収斂する形で成果を検証する。
9.音声指導と書く指導を発話能力の伸長の基礎とする。
10.読む指導と聞く指導を理解力養成だけにとどめず、言語材料と情報の習得活動に位置づける。
11.テストを評価のみの手段とせず、学んだことを強化するために役立てる。
12.スピーキングテストにおいて発話能力を測りかつ伸ばすとともに、発話を分析して伸びを測る。
英語教育における指導で大切にしていること
1.生徒との人間関係・信頼関係を築く努力をし、それを大切にする。
2.できなくてもやらせることによって、できなかったことへの悔しさを味わわせる。
3.できなかったことが少しでもできるようになったことを褒めて自信を持たせる。
4.意欲とモティべーションを高めながら生徒にかける負荷を多くしていく。
5.競争心を大切にし、互いに切磋琢磨をさせる。
6.上級生の良きモデルを下級生に示し、学年を超えた交流・指導のシステムを作る。
7.教師の努力と問題意識を生徒にも正当に認知・評価させ、学習の動機の強化を図る。
8.基礎基本を定着させるために、「型」の訓練にコミュニケーションの練習を取り入れる。
9.ペアやグループでのコミュニケーション活動を繰り返し、有意義な訓練の場にする。
10.言語材料の学習・定着には形態・意味に加え、その使用場面と働き、スピーチレベルにも配
慮する。
11.授業外活動で重視しているスピーチやプレゼンテーションを、授業でも意欲的に取り入れる。
12.ディベートやディスカッションでは言語材料の定着を図るとともに、調査能力・問題意識の
向上を目指す。
目
次
はじめに
SELHi研究開発・英語コースにおける英語教育の基本方針等
1.SELHi学校名
1
2.研究開発実施期間
1
3.研究開発課題
1
4.研究開発課題研究開発課題の設定理由
1
5.研究開発の内容
①「読む」力を伸ばすための指導
1.「多読」による読解力の伸びの研究
1)3年間の指導と研究方法および成果
2) 外部試験や定期考査から見る読解力と得点・偏差値の相関の研究
3) 速読指導の方法の研究
4) 多読指導と読解力の推移
2.ラウンド制を活用したレッスン
1) 英語
2) リーディング(3年普通科文系)
3) リーディング(3年普通科理系)
2
2
2
2
4
5
6
9
9
15
18
②「読む」力を「話す」力につなげる取り組み
1.input→intake→outputへの指導法
2.「読む」活動から「話す」能力を育成するための指導と具体的な検証法
19
19
23
③「書く」力を伸ばす指導法
1.ライティングの指導法と評価分析
2.平成16年度のライティング指導-3年英語コース
3.平成16年度のライティング指導-2年生英語コース
26
26
31
35
④「話す」力を伸ばす指導法
1.OCI inputをoutputにつなげるコミュニケーション指導
2.スピーキングテストにおける生徒の発話能力の比較研究
44
45
46
⑤4技能を総合的の伸ばす授業形態としてのディベートの指導
1.ディベートのシラバス
2.Practical Communication(「実践コミュニケーション」におけるさまざまな指導方法)
3.OCCにおけるディベート指導
4.OCⅡにおけるディベート指導
5.アカデミック・ディベートの指導法
56
56
57
60
62
68
⑥スピーチ・プレゼンテーション能力養成のための指導
1.2年生英語コースimpromptu speechの指導について
2.1年生英語コースで取り組んだimpromptu speechの指導について
3.プレゼンテーションの指導
72
72
73
74
⑦4技能を総合的に伸ばすための教育活動統合の実践
1.4技能を伸ばす指導形態
2.4技能の伸長に効果のある授業指導・学習法の精査と検証
3.読解ストラテジーをリスニングに応用するための研究
4.複数の技能を伸ばす教授法・教材開発
75
75
80
81
82
⑧基礎力の定着・知識の定着をコミュニカティブな方法で図る指導
1.SELHi研究開発初年度の生徒の実態
2.生徒の基礎力をつけるための指導
84
84
84
⑨高大連携のあり方の研究
1.京都外国語大学との高大連携
2.授業指導による連携
90
90
92
⑩イマージョン教育の取り組み
101
⑪CALL教室活用の指導実践
102
6.3年間の英語コミュニケーション能力の向上と評価について
1.本校の評価体系
2.外部テストの活用法
3.生徒のアンケート結果より
108
108
117
119
7.校内の英語教育(特に授業)の改善状況
1.授業改善の取り組み
2.校内組織について
124
124
125
8.研究組織について
1.校内研究開発組織
2.運営指導委員会での指導事項
3.運営指導委員会の助言により英語教育の改善に貢献した事例
126
126
126
128
9.授業外活動等の記録・外部講師の講演
1.授業外活動の記録
2.本校の授業外活動に対する考え方
3.外部講師を招いての講演会
128
128
130
131
米原高等学校の英語授業を参観して(鳥飼玖美子)
133
こころに届く英語教育(東後勝明)
134
米原高校の英語教育(遠山顕)
135
平成14~16年度SELHi研究開発実施報告書
1
SELHi学校名
2
研究開発実施期間
3
研究開発課題
滋賀県立米原高等学校
平成14年度
~
平成16年度
英語の4技能をコミュニケーション活動を主体として総合的に伸
ばし、積極的な自己表現の意欲と能力を高めるための指導法の研究
4
研究開発課題の設定理由
SELHi研究開発課題の設定理由を述べるために、本校が本指定を受ける1年前に設置した英語コース
の設置理由に触れておきたい。
滋賀県立米原高等学校は、昭和45年度~平成12年度に至る30年間、普通科4クラス、理数科2ク
ラスの中規模校として、大学進学を目指す生徒たちに手厚く地道な指導を続け、地域から信頼を勝ち得て
きた。理数科は座学とともに実習や演習を重んじ、有能な研究者を育てる学校としての地位を獲得し、そ
の特色を鮮明に打ち出してきた。しかし、普通科にあっては、ごく普通の進学指導を行い、大学進学の実
績は上げるものの、科としての特色や地域のニーズに応じた教育を展開することはなく、どこにでも見ら
れるような受験のための指導が行われてきた。
英語教育についても同じで、大学受験のために断片的な知識を詰め込み、文法と訳読を重視し、模擬テ
ストの偏差値を上げるために長文読解の補習をするという、いわゆる従来の進学指導を行っていた。この
ことはもちろん成果を上げ、進学率の向上に寄与したことは評価すべきことであるが、生徒の英語運用能
力という点に関しては極めて低く、知識が試験問題を解くためだけのものにとどまってしまうという欠陥
が顕著に見られた。英語を話す訓練がほとんどないために、口頭におけるコミュニケーションは単語レベ
ルでしかできず、英語を聞く活動も少ないので、リスニング力も非常に乏しいのが実情であった。読むこ
とに関しても、生徒たちはすぐに和訳を求め、一文一文は日本語に訳せても全体的な理解ができず、読む
速度も大変遅かった。書く力については、和文英訳のみの訓練をしていたために、英語を書く目的や意味
がわからないまま、機械的に日本文を英語にするということが唯一の活動であった。そのため、授業や生
徒への課題は、単語集で文脈なく訳語を暗記したり、英文を丸暗記することを求めたり、教師がひたすら
文法のルールを説明し生徒がそれをノートに取るだけの授業や、英文を解析することに終始し、和訳を与
え生徒がそれを書き取り続ける授業が主体となっていた。授業中生徒が英語を発するのは、指名されて答
えを言う時や、時折、教師の後について教科書を読むという場合だけで、あとはただ説明を聞き、板書を
写すというスタイルが取られていた。こういった方針や授業は、受験を目前に控えた生徒に対してはある
程度のモティべーションを与えるが、1年生・2年生については、ただ生徒の勤勉さに助けられて成立し
ていたにすぎず、生徒の英語学習への意欲、興味・関心を伸ばすことはできなかった。生徒たちは、英語
を生きた言語ではなく、ただ暗記し解読するという苦痛を伴う作業とみなしていた。
そのため、いったん受験が終わり大学に入学すると、ほとんどの生徒が英語への学習動機を失い、また
必要があったとしても、高等学校までの学習の延長として解読や解析を続ける。その結果、一部を除いて
依然として英語の総合的な力は伸長せず、むしろ意欲の低下とともに英語力が低下するという状況を見て
きた。このことは、英語を専門に勉強しているはずの大学生が、教育実習に来た時に、満足なコミュニケ
ーション能力を持たず、また英語の基礎的知識すら十分でないという状態を繰り返し見聞した折りにも、
再三実感したことである。
訳読文法中心の受験英語教育の効率性を維持しながら、4つの技能に関連性を持たせてを総合的に伸ば
し、発信することを目標として言語材料を習得させるにはどうすればいいか、また、高校卒業後にも英語
への学習意欲を維持し、それを生きる力に変えられるような指導ができないものか、という問題意識が英
語教員の間に芽生えた。
このような英語科教員の改革への意識と、滋賀県の北部の高校に英語に関わるコースを求める地域の声
- 1 -
と、本校普通科の特色作りへの学校側の模索とが相まって、平成13年度に英語コースが新設された。
「本
物の英語力を伸ばしたいという生徒のために、英語に触れる多くの機会を提供し、米原の地から将来英語を使って
国際社会で幅広く活躍出来る人を育てたい」という願いを実現すべく、英語コースでの英語教育は真のコミュニケ
ーション能力の育成を目指してスタートを切った。
平成14年にSELHi研究開発指定を受けたが、その課題の設定理由は、英語コースが創設される以前の問題点
を改善し、英語コースで取り組み始めたことの成果を実証的に検証することであった。そのため、SELHi研究開発を
受けても、方針や方法は全く変えず、コミュニケーションを単なる日常的場面における口頭での情報交換の
みと捉えず,社会的な課題について情報を収集し,それを統合して自らの意見を英語で発表できることを
最終目標とし、有意義な情報のやりとりのあるコミュニケーション活動主体の授業で、4つの技能を総合的に伸ば
すことを目標として、ディベートやスピーチ,プレゼンテーションを中心とした指導に力を入れることにし
た。課外活動では,集中的な訓練や自己表現練習を通じて,授業と有機的な関連を持った活動を展開し,
よりオーセンティックな場面でのコミュニケーション活動の開発と評価を多角的に行おうと考えた。研究
開発の方向を、あくまでも、技能を総合的に伸ばすのに有効な授業のあり方とし、生徒の将来の学習意欲
と英語力向上への努力へとつながり、かつ大学入試にも有益な指導の体制を作り上げることを究極の目的として取
り組むことにした。
求められる成果は、社会的・国際的・時事的な問題に関して口頭で自分の意見を述べたり書いたりする
ことができる能力を育成し、英語力の向上を目指して意欲的に学習できる態度を涵養することとし、検定
試験では高校卒業までに実用英語検定2級を取得しTOEIC公開会場試験で650点を目標とした。
5
研究開発の内容
①「読む」力を伸ばすための指導
書かれた情報を正確にかつ早く理解できるための「読む」力を持った independent readers(独立した読み手)
を育てることが、他の諸技能を向上させる基礎となるという共通理解のもと、多読・速読の訓練を重ねた。
また、単に情報を読み取るだけでなく、読んだ言語材料や得た情報を自分の表現に活用し、発信につなげる
ことを目指して、ラウンド制をはじめとする精読にも意欲的に取り組んだ。
1.「多読」による読解力の伸びの研究
教科書だけでは絶対的な量の不足があるので、教科書以外に様々な読み物を与えて多読させることにより
不足分を補うとともに、読解力や速読力がどのように伸びるのか研究した。
1) 3年間の指導と研究方法および結果
<使用教材と指導手順>
以下に3年間で使用した教科書とその他のテキストを列挙し、簡単に指導手順を記す。
1年次… New Horizon English Ⅰ(東京書籍)
*英語Ⅰの授業においては教科書以外のテキストは特に使用しなかった。しかし、OCC の授業に
おいて多くの投げ込み教材を読ませた。
2 年次 …New Horizon English Ⅱ(東京書籍)
*英語Ⅱ 4 単位の内 1 単位を「速読」の時間とし、易しめの英語で書かれた物語を短い時間ででき
る限り多く読ませた。PENGUIN READERS の Pre-Intermediate レベル Matilda を皮切りに、Island of
the Blue Dolphins、1月からは Intermediate レベルの Crime Story Collection を使用し、内容理解に重点を
置いて学習させた。
*英語Ⅱの授業の一環として、社会科の内容を英語で教えるイマージョンを取り入れた。ネイテ
ィブの講師を京都外国語大学から招き、教材はアメリカから中学生レベルの社会科のテキスト
World Cultures and Geography (McDougal Littell)を取り寄せて使用した。今年度初の試みということも
あり、「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」ことへの移行をできる限り生徒が無意識的にできるよ
うになるための布石といった位置づけで行った。また、テキストを読むほかに、テキストの内
容に関連した補助的なプリントを配布し読ませたので、生徒は1時間のレッスンで多くの英文
に触れることになった。
- 2 -
3 年次 …The Crown English Reading(三省堂)
ラウンド制を導入。ラウンド1で各段落のタイトル選択問題、ラウンド2で CD を聞かせた後
で TF Questions と内容理解をさらに細かく問う wh-questions に答えさせる。ラウンド3で文法事
項の解説等を行いながら、生徒が理解しにくいと思われる箇所を解説していく。ラウンド毎に
1lesson を最初から最後まで通読することになり、より定着度が高まった。また、ある程度速
いスピードで読むことが必要となるため、返り読みをせず Top-down で英文を読む速読力がつい
た。
* Crime Story Collection(PENGUIN READERS)
前期に週1時間、2単位時間につき1話(約 3,000 語)のペースで読み進め、多読・速読のため
の補助教材として使用した。あらかじめ読ませておき、授業では教師がパートごとに区切って
音読し、配布した handout にある comprehension questions に答えさせるといった内容理解に重点
を置いた指導を行った。
* 10 月頃に教科書を終え、Polite Fictions in Collision(金星堂)を読ませた。1 Lesson を 2 時間で読み、
内容理解を問う質問に答えさせながら読み進める形をとった。
* 10 月下旬に CALL 教室が完成したのに伴い、コンピューターを使った速読の授業を行った。イ
ンターネット上にある「英文速読ツール」を使い、コンピューター画面上にチャンクごとに区
切った英文を表示しては消すという手法で英文を読ませ、内容理解問題に答えさせた。一つの
チャンク(5~8語程度)を 3 秒で読まなければならず、速く英文を読む意識づけができた。
同時に、返り読みが出来ず Top-down で英文を読まなければならないため、次に来る語句(要素)
を予測して読む姿勢が養われた。扱ったトピックは Second Presidential Debate, Final Presidential
Debate(インターネットより)Lightning(インターネットより)Trial by Jury(Debating the Issues:
MACMILLAN LANGUAGE HOUSE より)の4つ。それぞれのトピック(600 ~ 1,200words)を速
読以外に音読・ディクテーションなどの活動を入れて2~3時間で読んだ。
< WPM の測定>
11月下旬から、センター試験に向けた演習の授業に切り替えた。
「クイック40」(増進会出版)を
使用し、大問6の長文問題ではWPMを生徒に計らせ、速読を意識させた。
(資料1に抽出生徒の計4回
分のWPMと計算式)
資料1
生徒A
生徒B
生徒C
生徒D
生徒E
生徒F
第1回
111.8
146.0
139.8
139.8
79.9
118.4
第2回
179.7
99.0
112.5
78.0
88.0
131.9
第3回
153.5
96.0
89.5
76.0
87.8
102.0
第4回
119.8
116.0
80.0
80.0
79.9
107.8
平均
141.2
114.3
105.5
93.5
83.9
115.0
<WPMの計算式>
成果と課題
生徒 A、B(英語の平均偏差値 65 以上)
、C、D(同 55 前後)
、E、F(同 45 前後)の 6 名を抽出した。
その結果から速読力と内容理解力には相関があるといえる結果が出た。しかし、生徒Fのように英文
を速く読んで内容理解を問う選択問題は解けるが、他の文法や語彙の面が弱く全般的に見て英語力
が弱いような生徒はこの相関には当てはまらなかった。また、回を重ねればWPMが伸びるかというと
そういうわけでもなく、生徒にとってその内容が読みやすいかどうかや問題数が大きく影響するた
め、WPM自体にこだわることにはあまり意味がない。それよりも、幅広いトピックの英文にいかに数
- 3 -
多く触れさせるかということが、結果的に生徒の読解力を伸ばす大きな力になると感じた。
<他のクラスと英語コースの各模試(長文問題)における得点率の比較>
英語コースの生徒には上に列挙したように教科書以外に多くの教材を与えてきた。英語コースの
Reading の単位数は普通科の他のクラスと同じ(理系・理数科とは1単位違う)ことを考えると、教
科書しか読んでいない普通科の生徒に比べて英語コース生の読んだ分量はかなり多いことになる。
OCC(2 単位)のクラスでもディベート前にはかなりの量の英文を読ませていることから、単純計算
(速読以外に2単位時間につき平均700語程度の投げ込み教材を与えたと想定)で週単位2,000語以上
の開きがあったものと思われる。この量の違いは各模擬試験や、センター試験の長文読解問題の成
績に明らかに現れている。(資料2に各模擬試験とセンター試験の長文読解問題における得点率の比
較)
資料2
進研6月マーク
全国
校内
英語コ
全統8月マーク
全国
校内
進研9月マーク
英 語
全国
校内
英語コ
コ
図表読み取り
47.7
49.1
79.4
61.4
58.3
76.6
73.4
79.7
90.9
読解(会話文)
長文読解
59.1
60.0
78.1
67.5
65.0
79.1
67.8
71.3
85.0
46.0
46.7
67.6
52.9
52.2
75.6
56.2
57.6
82.0
全統10月マーク
進研11月マーク
センター試験
全国
校内
英語コ
全国
校内
英語コ
図表読み取り
56.9
55.7
65.4
82.0
83.1
84.9
英語コース
66.5
読解(会話文)
60.0
51.9
70.6
55.9
55.9
74.7
82.8
長文読解
52.2
47.3
69.1
49.6
49.3
63.3
88.9
成果と課題
資料より、長文問題の形式(図表、会話、長文)に関わらず英語コース生の得点率は高い。しかし、
特に顕著にその差が出ているのがマーク模試の長文読解(センター試験の第6問)においてである。
平均して全国平均を22ポイント上回る成績を残している。これは多読を続けてきたことによって長
文を読むことに対する抵抗感がなく、枝葉末節にとらわれず全体的な内容を理解する力がついたこ
とを示している。センター試験第6問では89パーセントの得点率であった。ただし、図表読み取り
形式(センター試験の第4問)では得点率の変化が激しい。このことから大まかな内容理解はでき
ていても、緻密な読みを問われた時に全体的な話の流れから勝手に推測して誤答を選択しているこ
とがうかがえる。今年度のセンター試験第4問では、前半部分の1センテンスをしっかり読まなか
ったために小問1でつまずき、得点率を大幅に下げてしまった生徒が多数出た。今後は多読・速読
に正確さを加えていく精読力を如何に養成していくかが課題であると感じた。
2)外部試験や定期考査から見る読解力と得点・偏差値の相関の研究
多読と読解力の伸びは、外部試験や定期考査にどのように反映されてくるのか、得点や偏差値からその
相関を調べた。
< TOEIC(Reading Part)と模擬試験偏差値の相関>
3年生英語コースは毎年9月の TOEIC を受験することになっているが、その Reading Part の得点と
模擬試験の偏差値の相関を下の表(資料3)にまとめた。クラスを上位層 12 名(模擬試験の英語の
平均偏差値 60 以上)、中位層 13 名(同 54 ~ 59)、下位層 10 名(同 53 以下)の3つに分けて、それ
ぞれの Reading Part の平均点を記してある。
資料3
各層の平均偏差値 TOEIC (Reading Part)の平均点
上位層( 12 名)
63.7
266.3
中位層( 13 名)
56.3
199.6
下位層( 10 名)
48.7
162.5
- 4 -
成果と課題
模擬試験の偏差値と TOEIC は非常に高い相関があることがわかった。特に上位層にその傾向は顕著
であり、上位層の中で平均偏差値 63 を越える生徒7名中5名が 300 点を上回っていた。多読により
力をつけた生徒が、速読力が問われる TOEIC の Reading Part でも高得点を挙げることができたこと
で、速読力の養成にも多読が有効であると考えられる。
<定期考査の得点と外部試験やセンター試験との相関>
生徒 A ~ L の 12 名を抽出し、外部試験やセンター試験の得点との相関を見ることで、定期考査の問
題の妥当性との関連を調べた。(資料4に定期考査平均点を降順にソートした表)
資料4
定期考査平均
上 生徒 A
位 生徒 B
層 生徒 C
生徒 D
中 生徒 E
位 生徒 F
層 生徒 G
生徒 H
下 生徒 I
位 生徒 J
層 生徒 K
生徒 L
TOEIC 得点
86.6
81.8
78.8
77.2
69.0
63.4
62.0
56.6
43.0
40.0
38.8
36.2
センター偏差値 模試平均偏差値
720
665
650
665
475
510
590
495
400
430
490
420
65.2
61.2
65.0
59.9
57.5
60.2
54.5
62.3
53.2
58.0
44.7
54.8
69.0
66.7
64.0
66.7
57.7
57.7
58.8
59.9
51.7
51.2
49.3
49.1
成果と課題
資料4より、定期考査の得点と模擬試験の偏差値やセンター試験の得点の間には非常に高い相関関係
が見られた。Reading の定期考査は内容理解を問う問題から、英作文や和訳に至るまで幅広い出題形
式を取っているが、その作問は妥当であることがわかった。また、センター試験や TOEIC、模擬試
験の問題の約半数は文法・語法を問うものであるため、ここで得られた相関は内容理解に関する分
野に限られたものではない。多読によって文法・語法の力も間接的に高められていることがうかが
える。今後の課題としては、模擬試験などの結果から分野別の弱点補強を行うことと、多読と精読
を限られた時間内に如何に両立していくかということである。
3)速読指導の方法の研究(平成16年度) ~W.P.Mと理解力との相関性~
・研究対象
35名英語コース3年生
・対象教材
センター試験第6問用演習問題
・測定回数
4回(6月、9月、10月、12月)
1. wpmの研究
資料1:正答率(平均)とWPM(平均)
W.P.M
第1回
第2回
第3回
第4回
106.1
94.3
106.5
99.0
*時間は各自に計らせ、質問順に解答させた。同じ質問を再度解くことはさせない。
総語数
正答数
× 60×
*WPM=
所要時間
総問題数
検証①
第1,3回のWPM が100を超えたが、相対的に「読む」速度としては遅い。これは、質問数
が8であることに大きな要因がある。
検証②
- 5 -
語彙レベルを一定にするため、センター試験第6問用の英文を研究対象教材に設定したが、
正答率とWPMは比例しない。これは、設問内容によるところが大きいことと解答しなければならな
い問題数が多いことによる。
検証③
語彙レベルの高低差にそのWPMは左右される。WPMの伸長のみを追求すること自体にはさほど意
味がないように思われる。
2. 速読研究
次の2つの速読演習方法を2つのグループに分け、比較した。
グループA
・得たい情報を事前に知らせる。その後英文を読み、その情報を得る試み
グループB
・従来の問題演習形式で、英文を読みながら情報を得る試み
研究対象
グループA:20名英語コース2年生
グループB:20名英語コース2年生
検定教科書(英語Ⅰ)
4回(6月、9月、10月、12月)
対象教材
測定回数
Aは、問題演習にたとえるなら comprehension question を事前に読んだあと、英文を読み進めな
がら解答していく方法であり、Bは、英文を読み進めながら、comprehension questions に答えてい
く方法である。情報収集にかかる時間を計らせた。
なぜこの研究をしたのかは、ただ文を読み進めるのではなく、明確なターゲットとなる情報のみ
を得ようと目的意識をもたせて読ませることが、より速読読解力が増すという仮説にたったから
である。
資料2:正答率(平均)とWPM(平均)
Group A
6月
9月
10月
12月
WPM
112.4
121.5
123.8
130.6
Group B
6月
9月
10月
12月
WPM
92.8
108.6
100.3
110.8
上記資料2から検証すると、目的をもった「読み」が効果的であるとわかる。Bの方法では、一
度読み終えた後、設問を読んで再度英文を読み返した生徒がほとんどであった。このことから、
何を情報としてとらえるかを予測する力が必要であることがわかる。
4)多読指導と読解力の推移
多読指導において、トップダウン式の読みが訳読より効果的かどうかについて検証した。
研究対象
英語コース2年生40名
対象教材
Penguin Readers
- 6 -
*読解力測定指定使用教材一覧
回
使用時期
指定使用教材
1
4月
'MARCEL and THE MONA LISA'
1000
300 headwords
2
5月
'FLYING HOME'
1000
300 headwords
3
6月
'ISLAND FOR SALE'
1650
300 headwords
4
6月
'LISA IN LONDON'
1500
300 headwords
5
7月
'MICHAEL JORDAN'
2000
300 headwords
6
9月
'RUN FOR YOUR LIFE'
1600
300 headwords
7
9月
'THE WINNER'
2100
300 headwords
8
10月
'SURFER'
2500
300 headwords
9
10月
'A LITTLE PRINCESS'
2000
400 headwords
10
11月
'FOOTBALL CLUB OF SOUTH AMERICA'
6100
600 headwords
11
1月
'NELSON MANDELA'
6100
600 headwords
総語数(概数)
語彙レベル
(1)研究方法
1) 週1単位時間をExtensive Readingに充てる。
2) 300語レベルから始め、生徒自ら選択したPenguin Readers を読ませ、読み終えた後その本の紹
介を簡潔に書く。同時にその時間(分)を記録する。
3) 月に1回、全生徒に指定の教材(上記一覧参照)を与え、その読破した時間と*その本の紹介を
簡潔に書かせる。
(*今回の調査では、本の紹介文を内容理解としてとらえているため、少しでも内容から逸脱して
いれば、読解できていないということで調査から除外した。その結果欠席等で測定できなかっ
た生徒を除き、25名の生徒を対象とした。)
4) 語彙数÷時間(単位:分)で、「読む」スピード(W.P.M)の推移を測る。
(2)研究指示事項
1) *第4回目までは、読み方については指示は与えていない。(*上記一覧表参照)
2) 第5回以降、サイトトランスレーション方法の読み(トップダウン式読み)を指示する。また
*Subvocalization method による読みを指示した。
(*他人には聞こえない程度の音量で、絶えず口を動かしながら、音読する方法をいう。)
(3)調査結果(次ページグラフ参照):4月~6月は訳読式での読み、7月~1月はトップダウン式での読みの指示
(4)研究結果:訳読式読みとトップダウン式読みの差異
1) 訳読式では、読む速度は伸びてはいるもののその速度には限界がある。
2) トップダウン式での読む速度の最高値は高い。
3) 読解力には差異がない。
(5)検証:英語Ⅰ、Ⅱでの取り組みとの有機的な関連から
「トップダウン式での読む速度の伸びは、以下の訓練によるものが大きい。」
1) 英語Ⅰ、Ⅱのテキストの教材を使って、さまざまな音読から内容を理解する訓練を行っている。
(shadowing, silent shadowing, repeating, retention)
- 7 -
2) 英語Ⅰ、Ⅱの「読み」において、sight translation や slash reading といったトップダウン式で読む
訓練を行っている。
(6)課題
1) 語彙レベルが600語(Elementary level)までであるため、1200 語(pre-intermediate)や 1700 語
(intermediate)、2300 語(upper intermediate)、3000 語(advanced)の高い語彙レベルに対応する
には、語彙力や文構造といった言語知識の豊富さが必要となる。
2) 今回は、読解力を大意把握形式によって確認したが、comprehension questions で行いたい。しか
しながら、その質問レベルを一定にしなければ正確な変化の差異を認めることができない。
(7)結論
トップダウン式の「読み」は訳読より効果的である。
・ 参考資料-多読による読解力の推移
4月~6月は訳読式での読み、7月~1月はトップダウン式での読み
調査結果①
4月~6月、7月~1月の25名の平均W/P/Mの変化
W/P/M 180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
4月 5月 6月 6月 7月 9月 9月 10月10月11月 1月
300語レベル
300語レベル 400~600語レベル
調査結果②:25名の中から無作為に6名を選び、4月~6月、7月~1月の平均W/P/Mの推移を
検証した。
W/P/M
180
生徒 A
W/P/M
180
160
160
140
140
120
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
生徒 B
0
0
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
300語レベル
300語レベル
400~600語レベル
- 8 -
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
300語レベル
300語レベル
400~600語レベ
W/P/M
180
生徒 C
W/P/M
180
160
160
140
140
120
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
生徒 D
0
0
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
300語レベル
W/P/M
180
300語レベル
400~600語レベル
生徒 E
300語レベル
W/P/M
180
160
160
140
140
120
120
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
0
300語レベル
400~600語レベル
生徒 F
0
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
300語レベル
300語レベル
400~600語レベル
4月5月6月6月7月9月9月10月10月11月1月
300語レベル
300語レベル
400~600語レベル
2.ラウンド制を活用したレッスン
1)英語Ⅰ
(1)取り組み目標
英語Ⅰを、高等学校3年間で英語の4技能をバランス良く伸ばすための基礎力をつけさせる科目
と捉えた。そのためには、次の3つのことが必須であると考えた。
1.読解のための基本技術と情報収集能力を習得させること。
2.基礎的な英語のインプットとコミュニケーション活動によりそれらを定着させること。
3.学んだことを自己表現の道具として使用できる段階にまで密着させること。
これらの点を各レッスンで実現させるための効果的な指導手順を構築することを目標とし、京
都教育大学教授 鈴木寿一氏に御指導いただいた、「ラウンド制」を取り入れることにした。
○脱却したい授業モデル例(1レッスンが、導入部分と本文 Part 1 ~ 4、章末問題で構成されて
いる場合。
)
第1時限 レッスンへの導入
第2時限 Part 1
問題点
第3時限 Part 2
・1時限に扱う英語の量が少ない。
第4時限 Part 3
第5時限 Part 4
・反復学習の機会が少ない。
第6時限 文法事項のまとめ
- 9 -
第7時限
第8時限
コミュニケーション活動
章末問題
○ ラウンド制による授業モデル
第1時限
導入とレッスン全体のパート毎の概要把握(生徒に予習を求めない)
第2時限
レッスン全体のパラグラフ毎の概要把握(生徒に予習を求めない)
第3・4時限 レッスン全体のパラグラフ毎の細部にわたる内容理解
(生徒に予習をさせておく)
第5・6時限 様々な音読によるより深い内容理解と言語材料の内在化
第7時限
英文のリプロダクションと復習
第8時限
コミュニケーション活動
○ ラウンド制による授業モデルの利点
(1)第1時限では初見の英文に対する概要のみを把握させるので、未知の語句を含む英文に対し
ての抵抗を軽減することができ、実践的な読解力を伸ばすことができる。
(2)レッスン全体を扱うことが多いので、繰り返し英文に触れることができ、言語材料の内在
化を促進することができる。
(3)トップダウン式に英文を読ませるので、メッセージをとらえる力や情報を収集する力を伸ば
すことができる。
○ 授業を実施する上で留意したこと
(1)授業を極力英語で行う。ただし、文法の説明などは日本語で行う。
(2)英文を読むときは、チャンクで区切って朗読するが、ポーズは入れても全体のスピードを
落として読むことは避ける。
(3)内容理解の過程において、未知の語いは難解なものから順に少しずつ説明をし、内容理解
の助けとさせ、一度に多数の未知語を説明することを避ける。
(4)内容理解には授業者の朗読を聞かせ、読解のペースをコントロールする。
(5)ペアワークやグループワークを取り入れて、生徒間で英語を使うチャンスを増やす。
(2)ラウンド制によるレッスンの実践例
1使用教材:UNICORN ENGLISH COURSE Ⅰ Lesson 5 LIFE WITH COLORS
2レッスンの構成:Before You Read, Part 1-4 Comprehension, Language Focus, Communication
Activities, Developing Your Skills(章末問題)
3 Lesson 5 本文
PART 1(朗読する場合にポーズを入れるところに、スラッシュを入れたもの)
In every culture around the world, / people have been / strongly influenced / by colors / since early
in history.// Today, / colors still influence / our moods and feelings, / yet / we are often / not aware
of this.//
Each color has / its own influence / on us.// When you are tired or unhappy, / for example, /
certain colors / may give you energy / or cheer you up.// When you are worried about something,/
certain colors may relax you.// Colors can be really helpful / for you / when you choose / the right
one.// We are often / naturally attracted / to a certain color / or colors.// Which colors / are we
attracted to?// It depends on our mood / at that time.// When you wake up / in the morning / and
can find / "nothing to wear," / it is probably because / the color you need / is not there.//
PART 2
No other color / can give us / as much energy as red.// When you need more energy / for study
or work,/ a red sweater, / a room with some red objects, / or even red flowers / on your desk / will
help. // Also, / when you have lost confidence, / the color red may be helpful.// However, / with
too much red / you may easily / lose your mental balance / and get irritated.// People who like the
color red / very much / are often more active, / both mentally / and physically.// They move and
speak quickly / and work hard / to reach their goals.//
One scientist named G. Brighouse / proved / that the colored can make our bodies and minds /
more active.// He used different colors of lights / to test the reaction time / of several people. He
found / that our bodies react 12 percent quicker / under red light / than under usual white light.//
PART 3
Orange is one of the most cheerful colors.// When you are sad or depressed,/ the color orange will
help.// It is also a creative color.// If you need / to create something new, / the color orange may
- 10 -
be helpful / for you to get new ideas.//
An interesting study was done / at a factory in London. // The factory changed the color of the
machines / from gray to orange.// After that,/ the mood of the workers / changed greatly.// Some
workers / who usually looked sad and unhappy / became much happier. // Some were even humming
a song / from time to time! // They probably wondered / what brought about this big change of
mood. // Soft orange colors are also good / for a dining room / because they put us in a cheerful
mood / and increase our appetite.// Usual light bulbs / have this same good influence / because they
give off a soft orange light.//
PART 4
If you need to calm down or relax,/ blue is the best color.// Most of us live a busy life / that may
sometimes cause mental or physical problems. // After a busy day, / a light blue room can relax you.//
Even during the day, / a window with blue blinds / can make the room more comfortable. // Some
doctors are using the color blue / to help their patients.// Patients who can't sleep / are sometimes
placed in a room / with blue lights. // Also, / research has shown / that blue can lower your blood
pressure, / so those who suffer from high blood pressure / are often told / to wear blue pajamas.//
Generally speaking, / the deeper the blue, / the more relaxing.// However, / too much dark blue /
can be depressing.// If you need to cheer up, / choose happier colors / such as orange and red.//
(3)指導手順の例とラウンドの各段階における成果と課題
第1時限 導入とレッスン全体のパート毎の概要把握(予習をさせないで取り組む)
1.導入―教科書の Warm Up を利用してコミュニケーション活動を行い、スキーマの活性
化を図る。レッスンの話題に興味が持てるよう、比較的容易で活発に英語を使用できる
活動を採用した。
(例)様々な国旗について同じように説明させる活動
・次のフォーマットを紹介し、各自1つずつ説明させる。
The flag of (the name of a country) has ( a number ) colors: ( the name of the colors). (More
information)
(生徒の解答例)
The flag of Italy has three colors: red, white, and red. Green stripe is on the left side and white is
in the middle and red is on the right side.
成果:レッスンの話題を平易な英文や会話で提示することができ、実際に生徒が使用する場面
もあったので、本文へ入るまでのスキーマ活性化には大変有効であった。
課題:教科書の導入にある'Conversation'を利用することが多かったが、その会話の表現などを
を定着させようとすると時間がかかりすぎ、中途半端になることもあったので、"What
do you know about this topic?"といった問いかけで、ペアで話し合わせるなど、より簡潔
な導入の方法の方がよいと思われる。
2.パート毎の主題の把握(第1ラウンド)
(例)授業者のポーズ入りの朗読をパート毎に聞かせ、その主題を3択から選ばせる。正解
の確認のとき、必要最小限の言語材料の解説も行うが、英語による Paraphrasing でそ
れを行うよう努める。
・Part 1 第1段落の主題の選択肢
1 色の歴史
2 色の影響
3 色の感情
・解説すべき言語材料・・・[ influence ]
・その他取り組んだ例
グループで話し合わせて主題を決めさせる。
成果:1) ほとんどの生徒が正解を選んだ。history, influence, feelings のいずれも本文中に出て
いたので迷う生徒がいたが、間違う生徒がいることで、本文の paraphrase や説明の
機会を持つことが出来た。
2) この方式を始めた当初は生徒にもとまどいがあり、どうしても未知の単語にとらわ
れて朗読に合わせて理解を進めることが困難であった。しかし朗読のポーズの長さ
を変えながら回数を重ねる毎に、スムーズに解答を出せるようになった。
- 11 -
課題:本文のパラグラフは比較的短いので、主題を探すことは難しくはないが、トピックセン
テンスが必ずしも冒頭にあるとは限らず、場合によっては教科書の本文がまとまりを欠
いたものである場合もあり、そのようなパラグラフについては、主題を設定すること自
体に無理がある場合もあったので、これに変わるパラグラフの概要把握のタスクを考え
る必要がある。
3.パート毎の概要把握(第2ラウンド)
(例)あらかじめ、T/F 問題に目を通させ、授業者のポーズ入りの朗読を本文を見せながら
パート毎に聞かせる。問題文は本文を paraphrase したものや、よく似た表現を使った
ダミーなどにする。また、1文を理解すれば解る問題と、複数の文を理解しなければ
解らない問題を混ぜた。解答の確認の際、必要最小限の言語材料の解説をする。
・Part 1 第 2 段落の T/F 問題
1 Colors influence on our feelings. (T)
2 Colors are always useful for us. (F)
・解説すべき言語材料・・・[the right one]
成果:paraphras した文を問題文できるだけ使用し、英文を英文で理解させることを試みた。
定期考査の内容理解問題にも、本文を paraphrase した文を選択肢にするなどして、生徒
にも内容理解とは何か、ということを理解させることができた。内容理解の問題は定期
考査では約8割の生徒が全問正解するようになった。
課題:T/F 問題の文中に未知の語いがあると解答を出せないことが多かった。また、本文中の
表現を利用して、False の問題文を出すと、視覚的に true と判断する例がいまだ見られ
る。語句レベルでの理解ではなく、全体の内容把握が定着した生徒と、そうではない生
徒の差が大きく開いたように思われる。
第2時限 レッスン全体のパラグラフ毎の概要把握(第3ラウンド)
(例)まず新出単語の発音練習をし、語いレベルにも目が行くようにする。授業者のポーズ
入りの朗読を本文を見せながらパラグラフ毎に聞かせ、制限時間内に記述型の内容理
解問題に答えさせる。解答はグループもしくはペアで確認させ、完成させた後、数名
の生徒に発表させる。
・Part 1 第3段落の問題
1 What decides the color you like?
2 When you can find "nothing to wear," what does it probably mean?
・解説すべき言語材料・・・[attract / depend on / nothing to wear]
成果:より細かな内容に関する問題を本文からの借文ではなく、他の表現で言い換えた問題文
でできるだけ問うようにした。このことにより、チャンク毎の意味の確認にとどまらず、
チャンク同士の関係を予測しながら読ませる有意義な意味理解をさせることができた。
また、制限時間を設けることで、授業者の朗読に集中しできるだけそれに合わせて内容
を読み取ろうとする姿勢が培われた。
課題:問題のレベル設定が難しい。容易な問題なら制限時間以内に解答できるが、少し踏み込
んだ問題になると、時間がかかる。グループやペアで解答を相談させる際、その解答の
根拠を話し合うように指導するが、それでも他人の解答をそのまま自分のものにしてし
まう生徒がいる。
第3・4時限 パラグラフ毎の細部にわたる内容理解(第4ラウンド)
(生徒に予習をさせておく)
(例)授業者のポーズ入りの朗読を本文を見せながら聞かせた後、本文の流れに沿った形で記
述式の質問を口頭で行い、解答も口頭でさせる。問題は、これまでに出したものも含め
語いや文法を意識したものも入れる。ペアで取り組ませ、互いに答えを言い合わさせた
直後、授業者が正解を与える。
・Part 1 第 1 段落に関する問題
1 What are not we aware of ?
(be aware of を習得すべき言語材料として意識した問題)
・解説すべき言語教材 [be aware of]
成果:ここまでに生徒が読解のために読んできた文章を、語句レベルで切り取り、用法や例文
と共に伝えることができた。本文はここまでに繰り返し聞いているので、語句レベルの
定着も早い。特に、本文の文脈の中でそれらの語句の文法や語法がどのような役割を果
たしているのか、ということについては理解が早い。
課題:語句の解説は内容に沿って行いたいが、既に確認済みの質問などをすることも多く、無
- 12 -
駄がある。もっと合理的に語句レベルの解説、文法解説をしていく必要がある。
第5・6時限 様々な音読によるより深い内容理解と言語材料の内在化(第5ラウンド)
このラウンドでは、パートごとに次の手順を繰り返す。
(1)チャンクに区切らせ、授業者の朗読をリピート
(2)個人でチャンク毎に読む
(3)生徒は教科書を見ないで、授業者がチャンクで区切った朗読をした後にリピートさせる。
(2回繰り返す。2回目はパラグラフに1つ程度、内容理解の問題を口頭で提示してから取
り組ませる。)その際、解答が出にくいようであれば、再度授業者の朗読を聞かせる。また、
解りにくいチャンクについては意味を説明する。
(4)ペアで相手のチャンク毎の朗読をリピートする活動を行う。
(5)本文の穴埋め問題に取り組ませ、言語材料がどの程度定着したか確認する。
成果:文法や語いの解説の後の音読は、単語の発音やイントネーション、ポーズの取り方など
に生徒個々の工夫が見られる。これは、言語材料が定着していることを示していると思
われる。また、チャンク毎に音読をしているので、チャンク内の連音を生徒は自然に体
得していた。
課題:生徒個々の発音を確認する機会を持てるようさらに工夫が必要である。
第7時限 英文のリプロダクションと復習
(1)章末の COMPREHENSION CHECK にペアやグループで取り組ませる
(例)教科書の問題
1 When you need to relax
2 When you have lost your appetite
3 When you are sad or depressed
4 When you have lost confidence
5 When you need to lower your blood pressure
6 When you need to create something new
7 When you need more energy for study or work
(会話の例)
Student A: What color is helpful when you need to relax?
Student B: Blue is helpful. What color helps you when you have lost your appetite?
Student A: The color orange helps us.
成果:内容が定着しており、スムーズなコミュニケーション活動が出来た。"The color blue will
lower your blood pressure." という文でも、すらすらと間違いなく言えるようになってい
た。この時限の活動は、教科書の COMPREHENSION CHECK を使うことが多かったが、
さらに発展的なタスクを課す必要があった。本文のサマリーを書かせる活動をしたこと
もあったが、本文の一文を抜き出してサマリーとすることが多かった。
課題:レッスン全体の復習としては、スピーキング活動に偏らず、英語の4技能を活用できる
様なタスクが必要である。
(2)章末の LANGUAGE FOCUS にある文法事項を簡潔に説明し、例文の音読、暗唱をさせた
後、教科書の'ACTION!'にペアで取り組ませる。ACTION!の会話は、ペアで覚えさせ、発
表させる。
(例)教科書の LANGUAGE FOCUS
A S+V(+O)+O(=疑問詞節)
1. They wondered what brought about this big change.
2. I don't know why she is so depressed.
3. I asked him when he was going to paint the room.
ACTION! 下の[ ]の中から適当な語句を選んで,会話を完成しなさい.
1. A: Have you made dinner yet?
B: No. I didn't know ________________.
2. A: Do you know ________________?
B: I'm not sure, but he looked a little ill yesterday.
3. A: What are you thinking about?
B: I'm just wondering ________________.
[ why he missed class today / what I should do this weekend / when you were coming home ]
B 比較構文
1. No other color can give us as much energy as red.
- 13 -
2. Our bodies react 12 percent quicker under red light than under usual white light.
3. Our new school is twice as big as the old one.
ACTION! (
)の中に適当な語を入れて,会話を完成しなさい.
1. A: Is this room bigger than that one?
B: No, it's not as big as that one. In fact, that room is twice (
) (
)(
) this one.
2. A: Who can speak English well in your class?
B: No other student can speak English as well as Keiko. Her vocabulary is (
)(
)
any other student's.
成果:文法の解説は手短にして、実際に使わせることによって、理解も深まる。問題をpすぐ後
に解かなければならないという状態で解説をすることは、大変有効であった。
課題:音読や会話の暗唱、発表に時間がかかりすぎる。宿題などで練習問題に取り組ませる必
要があった。
第8時限 コミュニケーション活動
(例)色に関する Casual Talk
1 自分の好きな色を1つ選び、そこからイメージできる語句を名詞・動詞 形容詞に分けて
書き留める。
2 書き留めた語句と、好きな色の名前を使って、英文を作らせる。
3 自分の好きな色について、クラスメイトと Casual Talk をする。
4 会話をした相手の話をメモする。ペアを3回変えて同様に行う。
5 会話した相手の話についてクラスで発表する。
(生徒の会話例)
Student A: My favorite color is pink, because pink is very cute color. If I buy something, I sometimes
choose pink. Pink makes me happy and cheerful. How about you?
Student B: I like blue very much. There are many kinds of blue. For example, light blue, dark blue, sky
blue. When I want to relax, I see the sky. It's very comfortable.
成果:自分のことを題材にすることで、生徒は意欲を高めたようである。また、先に準備をさ
せてから会話をさせたことにより、既習の表現や文法事項などを積極的に使っていた。
また、手順の5で発表させることを事前に伝えておくことで、相手の話にも真剣に聞き
入り、目的を持ったノートテイキングが出来ていた。これ以外にも、レッスンのトピッ
クについて、調べ学習をさせ、発表させたり、自分の意見を述べさせたりしたが、自己
表現できる機会があると、生徒は非常に生き生きと英語を使うことがわかった。
○ ラウンド制を活用した英語Ⅰの指導の成果
・インプットからアウトプットまでの流れを確立できた。
・本文の朗読を繰り返し聞かせたり、音読のチャンスも多かったので、聞く力が伸びた。
・常に自己表現の活動を最後に取り入れたので、表現力がついた。
・レッスンの導入段階では予習を必要としないため、内容理解に対する姿勢に緊張感が見られ、
集中度も高かった。
・暗唱や発話の機会を設けたので、語いの定着が図れた。
○ ラウンド制を活用した英語Ⅰの指導の課題
・本文が長すぎると、時間がかかりすぎる。
・語い、語法や文法の説明の時間を減らしたが、日本語によるそれらの定着度が弱くなった。
特に、日本語訳では、不自然な日本語訳や不完全な日本語訳が増えた。必要に応じて、1文
にきちんとした日本語訳をつけさせることも必要である。
資料) 進研模試 1年生 記述式における設問別得点率平均
実 施 月
7 月
11 月
リスニング
発音・アクセント
文法・語法
長文読解
長文読解
表現力
全国
平均
58
32.5
35
24
24.8
40
クラス
平均
70
40
39.2
46.5
48.5
58.1
差
12
7.5
4.2
22.5
23.7
18.1
- 14 -
全国
平均
30.8
25
35
36.3
31.2
33.5
クラス
平均
51.7
32.5
39.2
55.8
52.8
58.3
差
20.9
7.5
4.2
19.5
21.6
24.8
2) リーディング(3年普通科文系)
1.授業のコンセプト
① 大意把握から始め、繰り返して文章を読む中で徐々に内容理解を深めていく読み方をする。
次に、単語・表現のすり込みを徹底して行い、自己表現に使えるようにする。
② 様々な形態の音読指導を継続的に行うことにより、単語・表現の定着を図るとともに自然と英
語の感覚を磨くことをねらいとする。
③センター試験を意識し、トップダウン方式の読み方を定着させるとともに多読をさせ速読力養
成をねらいとする。
④大学入試の記述試験にも対応できるよう、正確な読解力を身につけ、和訳や内容説明の解答法
にも慣れさせることをねらいとする。
2.生徒の初期の英語力
まず語彙力が不足しており、センター試験レベルの英文でも頻繁に理解できない英単語が現れ、
一気に読破することができない状態であった。そのため、もちろん長文読解にも時間がかかり、
模擬試験等でも「時間内に解答できない」と嘆くものが多かった。知らない単語が出てきても文
脈から推測して読み続けることに慣れさせる必要があった。また、記述試験の和訳においては、
出てくる単語をつなぎ合わせて感覚的に日本語に置き換えており、構文をとらえた正確な読みが
できていなかった。
3.授業内容
テキスト: 三省堂 The CROWN English Reading
・4月当初より、学年統一してラウンド制を導入(教材は第3ラウンドまでは学年共通のものを使
用。その後は、学科・コースによって内容が違う。)
Round 1 予習なしで1課分の英文を通して読み、大意把握をする。パラグラフ毎の大まかな内
容を把握し選択肢の中から、そのパラグラフのタイトルを選ぶ。
Round 2 各パラグラフ2問程度のTF Questions に解答する。Key Word となる新出単語は、
英語の定義を与える。その他、どうしても気になる単語だけ辞書を引いて意味の確認
をしてもよい。
Round 3 各パラグラフ2問程度のW h-Questions に解答する。更に、必要ならば辞書を引いて
意味の確認をする。
Round 4 重要構文を含む英文や難解な構造の英文の和訳や内容理解の問題に解答しながら読み
を深める。
Round 5 本文の重要単語やイディオム、重要構文の箇所を空欄にしたプリントを活用して、音
読を行う。
Round 6 要約文の適語補充、英問英答、自己表現で内容理解の確認。(インプットからアウトプ
ットへ)
・特に音読指導に重点を置き、オーバーラッピング、シャドーイング、教科書を見てできるだけ早
く読む、空欄のあるプリントを見てできるだけ早く読む、CDを止めたところから覚えているだけ
続ける等、いろいろな音読活動を取り入れた。継続的に、授業の始めに音読活動を入れるように、
すでに済んだパートの音読を再び行ったりした。
・教科書の他に、「リーディングジム 英語速読テスト(数研出版)」を用いて、速読力の養成と語
彙力の強化を図った。
・11月中旬より大学入試対策のため、センター試験対策問題集を持たせて演習中心の授業に切り
替えた。
4 成果
・ラウンド制により、同じ文章を繰り返し読むので、理解が深まるとともに表現が身に付く。また、
未知の単語があっても読み進める中で推測していく力を伸ばすことができた。辞書を引く際にも、
新出単語に出くわすたびに引くのではなく、理解の過程において重要性の高いものを判断し、必
要なときに引く習慣が形成された。
・チャンク毎に、前から前から読み進めていくことに慣れ、速く長文を読めるようになってきた。
また、必要に応じて適切な和訳をつけることにも慣れてきた。
・徹底した音読により、語句・表現を定着させることができた。授業では、クラス全体で音読した
り、グループやペアで音読したり、個人で音読したり様々な形態を取り入れたので、家庭で繰り
返し練習をしてこなければならず、家庭学習の中に音読練習がしっかりと位置づけされた。
・生徒達は音読の必要性や効果について理解してくれたので、卒業後の英語学習に活かしてくれる
ものと確信している。
・受験という大きな目標も相まって、この1年間で語彙力はかなり強化できた。教科書と速読教材
- 15 -
を併用したことで、偏らず幅広い分野の単語をインプットできた。
5 今後の課題
・ラウンド制をとると、1課を終えるのに時間がかかりすぎる。3年なので、できるだけ教科書を
早く終えて演習に切り替えたいと考えていたが、なかなかそうはいかなかった。授業時間内にし
かできないことと、家庭学習でもできることを再考し、ラウンド制を活かしながらも早く進め、
量を読めるようにしていかなければならない。
・11月頃からは、生徒は目先のセンターテストばかりを意識するようになり、「とにかく選択肢
の中から選べたらいい」という考えを持つようになる。和訳や自己表現は4月からもっと充実さ
せておくべきだった。「生徒は、どの時期にどんな心理状態になり、何を求めるのか」を含めて
年間計画をたてる必要がある。
・語彙の定着を音読ばかりに頼っていたため、定期テストをしてみるとスペルミスが目立つ。音と
綴りが結びついていないためで、フォニックスを早い時期にどう取り入れるか考える必要がある。
効果的な確認テストの配置についてもっと検討すべきである。
・3年生でやっと「やる気」が出てくるのだが、時間が限られている。
「定着にかける時間」と「読
む量にかける時間」のバランスが難しい。
・3年生のリーディングともなると、1課の英文が長く特に Round 1/2/3 を行う時に、1時間の
授業内容が単調になってしまい、中には集中力の持たない生徒が出てくる。1時間の内に一気に
Round 3 ぐらいまで進めるように、長文をパートに分けて Round 方式の授業を行うべきである。
その他、1時間の活動が単調にならない工夫が必要である。
・今年度、大変雰囲気の異なる2つのクラスを担当した。1つは、成績がよく英語好きも多いのだ
が、おとなしく音読活動の声も小さいクラスと、もう1つは元気で積極的で音読でも大変よく声
の出るクラスであった。テストをするといつも5~10点、声の小さなクラスが上であった。ほ
ぼ同じ活動を両クラスにさせてきたが、いつも反応は声の大きなクラスのほうがよく、「そのう
ちにきっと成績も逆転する」という仮説をたてていた。ところが、結局最後まで成績の開きは同
じで、センターテストでも約10点声の小さなクラスが上回っていた。声の大きさと成績の伸び
にあまり相関が見られなかったのは残念である。クラスの雰囲気の良さをもっと利用して英語力
を伸ばす方法がなかったのかと反省している。模擬試験のクラス別・分野別分析で、声の大きな
クラスの方が発音・アクセント・文強勢の分野で声の小さなクラスを上回ったことがあったの
で、他の成績は悪くても発音の分野では「声の大きなクラスが成績もいい」と仮説をたて、過去
の模擬試験の結果を調べてみた。しかし、結局4回の進研マーク模試において、声の大きなクラ
スが上回ったのはその1回だけであった。やはり声の大きさと成績には相関はなかった。
・資料 学習指導案
指導者 桂本 佳代子
英語科 学習指導案(リーディング)
1 対 象
第3学年4組(普通科)
男子 18 名
女子 23 名
計 41 名
2 日 時
平成 16 年 11 月 1 7日(水)
第4限(11:50 ~ 12:40)
3 場 所
3年4組教室(本館3F)
4 教 材
The CROWN English Reading
5 単 元
Lesson 10 Preparing for the Twenty-first Century
6 単元設定の理由
世界の人口は、2025 年までに 90 億人近くに、そして 2050 年までには 100 億から 140 億人
になると予測されている。その上、世界の貧しい地域で人口が急増し、富める社会では人口増加
は停滞するか国によっては人口減少が始まっており、バランスは崩れる一方である。食糧不足・
資源不足は、ますます深刻になっていくであろう。21世紀が抱えるこの難題について、「人口」
と「科学技術」の関係の観点から考えさせたい。
7 単元目標
(1) 人口爆発の問題について、過去と比較しながら、現在は更に深刻であることを理解する。
(2) 辞書に頼らずに英文を読み通して大意を把握する。
(3) 長く複雑な英文の構造を正確につかみ、訳し、指示代名詞の内容を理解することができる。
(4) さまざまな形の音読ができる。
(5) 文章中の表現を使い英文を作ることができる。
8 単元指導計画
第1時限目:①導入 ② Round 1(予習なしで、各段落のタイトル選び) ③ Round 2(段落毎
に2問程度のTF-Questions)途中まで、残りは課題
第2時限目:① Round 2 解答 ② Round 3(段落毎に2問程度の WH-Questions)途中まで、
- 16 -
残りは課題
第3時限目:③ Round 3 解答
第4時限目:③ Round 3 解答の続き ④ Round 4 内容理解プリント(記述形式の内容理解問題)配布
第 5 時限目:① Round 4 段落1~4内容理解 ② Round 5 発音・音読、音読プリント No.1
第 6 時限目:①音読プリントによる音読 ② R4 段落5~7内容理解 ③ R5 発音・音読、音読プリ
ント No.2
第 7 時限目:①音読プリントによる音読 ② R4 段落8~9内容理解 ③ R5 発音・音読、音読プリ
ント No.3
第 8 時限目:①音読プリントによる音読 ② R4 段落 10 ~ 11 内容理解 ③ R5 発音・音読、音読プ
リント No.4
第 9 時限目:
【本時】①音読プリントによる音読 ②表現の定着・拡充 ③本課のまとめ ④自己表
現
9 本時の目標
(1) 繰り返し音読することによって、文章中に出てくる表現に慣れる。
(2) 文章中の表現を使って英文を作ることができる。
(3) 人口増加の問題について理解を深め自分の意見を持つことができる。
10 生徒の実態・生徒観
普通科文系クラスで、一部の生徒が就職・専門学校に内定している他は、大部分の生徒が国公
立または私立の4年制大学を目指している。文系クラスでありながら英語力は低く、理数科や普
通科理系クラスとあまり変わらないときもある。入試が迫って来て、英語の学習にも力が入って
きたので、これからのスパートに期待している。
11 本時の展開
過
活
動
教師の指導内容
程 (指導形態)
導 リスニング CDを聞かせる。
入
(一斉)
3
5
適語補充音読
(個別)
3
適語補充音読
(一斉)
3
シャドーイング
(一斉)
生徒の学習活動
留意点
教材
教具
空欄のある文章を見な 空欄には何も書 音 読 フ ゚リ
がら、CDを聞き空欄 き込ませない。 ン ト (配 布
に入る語を確認する。
済)
CD
くじで数人を選び、空欄 くじで選ばれた生徒は、 他の生徒は真剣 音 読 フ ゚リ
のある文章を、語句を補 空欄のある文章を、語 に聞かせる。
ント
充しながら音読させる。 句を補充しながら音読
くじ
する。
全員立たせて適語補充音 各自で、できるだけ早 タイマーを セットし 時 音 読 フ ゚リ
読をさせる。
く音読をし、読めたら 間 内 に 読 ま せ ント
座る。
る。
タイマー
CDを流し、シャドーイング シャドーイングをする。
間違いを恐れず CD
をさせる。
大きな声を出さ
せる。
数人をくじで選び、立た 選ばれた生徒は立ち、 音 読 プリン トは 見 くじ
せて、語彙問題を出す。 答えがわかったら手を させない。
上げて発表する。
展 V o ca bu la ry
開 &
Idiom
7
Quiz
(個別)
口答英作文 本課で学んだ表現を使っ ペアで、英語に直す。 音 読 プリン トを 見 音 読 フ ゚リ
(ペア)
て、ペアで簡単な英作文 指名された生徒は、考 てもよい。
ント
10
Lesson 10 の
10
まとめ
(個別)
ま
自己表現
と
(個別)
め
をさせる。指名し、発表 えた英文を発表する。
させる。全員にリピートさ 全員でリピートする。
せる。
Comprehension Ⅰ-A に 要約した文章の空欄に
解答させる。
適語を入れる。発表す
る。
Comprehension Ⅱ-C 本課で学んだことを材
に解答して、エッセイを書か 料に、人口問題の21
せる。(課題の指示)
世紀の展望について、エ
ッセイを書く。
(* )「世界がもし100人の村だったら」(池田香代子
- 17 -
難しい単語はパ
ラフレーズして、理
解させる。
ライティングで学 習
したエッセイの形式
を取るようにさ
せる。
教科書
教科書
ハンドアウト
(*)
エッセイシート
再話、マガジンハウス)
12 評価
(1) 【音読】 教科書の英文を制限時間以内に読むことができたか。
(2) 【表現】 本文の中に出てきた表現を覚え、使うことができたか。
(3)【理解】 本文の内容を理解しているか。要約文を完成させることができたか。
3) リーディ ング(3年普通科理系)
テキスト The CROWN English Reading (三省堂)を使用
【ラウンドの組み方】
①ラウンド1 【概要理解】各パラグラフ毎のタイトル選び
②ラウンド2 【要点把握】各パラグラフ毎にQ&AまたはTorFの形で答えさせる
・質問の中身は、「書かれてある事実を問うもの」「推測を要するもの」
「自分の意見を求めるもの」等
・本文のチャンク毎にスラッシュを入れたプリント、設問プリントを配布する。
(①②は全クラス同じプリントを使用、)
③ラウンド3 【精読】
予習プリント(各担当者毎)をもとに、本文の細部に関わる理解を深めさせる。
・質問の中身は「指示代名詞の内容を問う」「内容についての質問を求める」
「重要構文を含んだ難解な英文については訳を求める」等
④ラウンド4 【復習①】
a)音読による復習
・重要構文・表現の一部分をブランクにしておき、パラレルリーディングで
空所に必要な語を挿入させながら、音読させる。
必要に応じて、コーラスリーディング、シャドウィング等を用いて各パラグラフ毎の内
容や重要表現等の定着を図る。
⑤ラウンド5 【復習②】
b)教科書の Comprehension Questions を利用して、理解度をチェックすると同時に重要表現
等の理解定着をはかる。
【ラウンド制による指導・その成果と課題】
○ラウンド制は Essay Reading のより効果的な手法として、ただ単に本文の「繰り返し読み」を重ねる
のではなく、その指導上のねらいから、大きく3段階に区分けできると考えられ る。第一段階では
一つ一つのパラグラフの主題把握に始まり、各主題の展開部分の流れを つかませる(ラウンド1・
2)。第二段階では、更に詳細について精読していく。(ラウンド3)。第3段階では音読、問題演習
を通しての復習(ラウンド4・5)。各ラウンドでのねらいは当然異なるわけであるが、これらの一連
のラウンドがパラグラフを基本単位としているという点に、ラウンド制の特徴がある。つまりパラグ
ラフリーディングを基軸にして、大意把握→詳細理解→定着という循環が、段階的におこなわれ、
Essay Readingの基本にあるパラグラフリィーディングを大意把握から精読にいたるまで自然な形で
より深めていけるという点で、授業で取り組んでゆくリーディングの形態としては無理のないスタイ
ルと言えるかも知れない。基本がパラグラフ単位であることから、理解を深めさせることもより容易
であり、生徒も無理なく次のラウンドに進んでいけるという利点がある。
○課題として考えられるのは、Essay を題材にした単元は比較的取り組みやすいが、物語文等の場合は
物語の全体の進行の中での各パラグラフの存在意義や中身の濃淡、長さの相違等において特に第一段
階においては、各パラグラフ間でのアンバランスが生じ易かったり、標題のつけにくいパラグラフが
あったりするので、ややラウンド制が馴染まない部分があることも事実である。もう一点は、本文を
繰り返す分、どうしても、1Lessonを終えるのに時間がかかること、同じ文章を何度も見るので内容
はよく理解させることはできるが、もっと短時間でできるようにするにはどうしたら良いかも今後の
課題と言える。
- 18 -
②「読む」力を「話す」力につなげる取り組み
1.input → intake → outputへの指導法
1)取り組みの経緯及び理由
従来の英語Ⅰに対する考え方の主流をなすものは、リーディング活動を中心とした内容把握・理解であると推察で
きる。本来の英語Ⅰの目標である4技能の統合はなかなか実現できていないのが現状である。このような状況を改善
するための breakthrough の一つとなったのは、2年前に米原高校転勤を機に知った、米原高校での英語教育の理念
の一つである、 input → intake → output という考え方である。教材を input し、それを内在化(intake)し、それを自
己や自己の生活と結びつけながら output していくという考え方である。この考え方は英語のどの教科においても多少
の差こそあれ反映されている。これまでの自分の指導を考えると input, intake の段階止まりで、 output まで到達して
いないということを痛感した。そして、この考え方を基本にして、英語Ⅰにアレンジしていくことが reading, listening,
speaking, writing の統合につながり、しいては英語Ⅰが目指すべき方向と合致すると考えられる。
本校で教えて一番ありがたいと感じることは、大学の先生に来校いただいて授業を観ていただけることである。特に
関西大学斎藤先生、京都教育大学鈴木先生には幾度となく学校に足を運んでいただき有益な示唆をいただいた。
その過程で英語Ⅰ、英語Ⅱ、リーディング等の指導においてラウンド制(指導{読解等}過程をいくつかの段階に分け
て指導する方法)が有効であることを知った。以前から、全体から部分へ読み進める指導や formal schema に関する
知識の重要性は意識して指導してきたつもりではあるが、理論的な裏付けを両先生からいただいた。また音読に対す
る意識も大きく変わった。例えば、黙読しているときでさえも、心理的音声化(subvocalization) というような活動が我々
の頭の中で行われており音読は内容理解の強化において重要な役割を果たすことを再認識した。このような貴重な
示唆や経験と今までの自分の教え方を統合したものが下記の具体的指導手順である。
2)具体的指導
指導過程は、大きく pre-reading , while-reading, post-reading に分けられる。
pre-reading :
schema activation を図ることを中心にする。
while-reading : 内容把握、理解、内在化を図る。
post-reading : 教材と自己を結びつける personal involvement を output 活動を通して目指す。
3)指導手順
1 Pre-reading
この段階ではテキストの教材に関わる他の教材、例えばビデオ等を見せながらこれから読む内容についての
背景的知識(schema)の強化、読解の目的意識の高揚を図る。
例)
Unicorn English Course Ⅰ Lesson 7 One Step Beyond では、文英堂のビデオライブラリーから主人公であ
るクリスムーンがNHKの「未来の教室」に出演して彼の生き方や考え方を伝えるビデオを借り、授業に入る
前に観て、クリスについての背景的知識や世界における地雷設置の現状や問題点等に関する知識を強化
し目的意識を高めてレッスンが読めるよう工夫をした。
2 While-reading
新出語彙の提示法については、試行錯誤を繰り返している。鈴木先生の語彙指導に対するアドバイスにより
生徒の新出語彙の推測の負担を軽減する方がよいことを知った。以前は英語の持つ冗長度の高さ故、20~
30%の新出語彙の推測が可能であると考え推測を奨励していたが、そのような可能性があるのは英語と姉妹
語を母国語にしている国の学習者であり、日本のように本質的に言語特性を異にするEFLの学習者には
100語に2~3語程度の推測を求めるのが現実的であり妥当である。
以上のことから、新出語彙を指導する際に、語彙を3つのジャンルに分類して提示することにした。
1 読解前に理解しておくべき語彙
2 容易に推測可能また内容理解において無視してもよい語彙
3 文脈や自己の持つすべての力を総動員して果敢に推測すべき語彙
の3種類である。
- 19 -
3
4
5
6
具体的提示法としては、 definition 及び paraphrasing を中心に指導した。また語彙によっては、 drawing,
実物提示, 動詞や名詞(特に抽象名詞)等は例文提示等他の様々な指導方法を使用するように心がけ
た。
Pre-viewing
この段階ではレッスン全体の概要を掴むこと、言い換えると、 What is this part about? → What is this lesson
about? を目指す。
具体的には、生徒には大まかなパラグラフリーディングについての知識を年度初めに与えておく。
この段階では、
・ レッスンの中で特に最初のパート(Part )に注意すること
・ 次にパート内では特に第1段落に注意すること
・ 更に各段落では特に最初の部分に注意すること
に 注目させ、用意した簡単な設問に答えながらレッスンの全体像を掴むとともに各パートに書かれてい
る内容について予測しながら目的意識を持って読み進められるように注意した。60%前後の正解率を求
めた。
Skimming
この段階では、パート毎に更にパラグラフリーディングを進め、 What is this paragraph about? → What is
this part about? の答えを探す。
指導手順
1 第1段落全体を読む、その際、最初の部分に細心の注意を払う。この部分にはそのパート
のトピック又は主題が現れるのが普通であるからである。
2 第2段落~最後から2番目の段落:段落の最初の部分を読み各段落のトピックをつかみ、
第1段落で提示されているトピック・主題との関係を掴む
3 最後の段落を通読する。その際(最初と)最後の部分に注意し、まとめ・結論を掴む。
*指導としては、事前に生徒に phrase reading sheet を配布し(フレーズリーディングについては年度当初に
その意義、及び方法について指導している)
* Skimming では各パートの主題をつかむのが目標で、教師がフレーズごとに音読していく英語を生徒は
目で追いながら読み、フレーズ単位で理解し内容を把握してタスクに取り組む。目標正答率は60~70
%を目指す。
Scanning
Previewing と Skimming で概要把握はだいたいできているので、次の Scanning の段階では理解をさらに深
められるようなより specific な情報を求める。まずタスクとなる設問を読み、その答えを求めるつもりで、段落
ごとに探し読みをする。この際も、できるだけフレーズを意識して1回の固視で最低1フレーズをとらえ、読み
に緩急をつけながら、素早く必要とする情報のみを求めるよう注意を促す。
この Scanning 活動は純粋な意味での Scanning とは異なるかもしれないが、ただ漠然と読むのではなく、タ
ーゲットとなる情報を、意図をもって探す習慣をつけるねらいがある。ここではできるだけ正確に情報を求め
ることを要求し、目標正答率は100%を目指す。
Sight Translation
Scanning までで内容把握・理解はほぼ終わっているが、更にサイトラと呼ばれる通訳訓練の練習で直読直解
をはかる。ただサイトラと言っても、初歩的なもので、とにかく前から前から意味をつかむ練習である。狙いは
返り読みをせずに、英文を前から理解する姿勢を身につけることである。
指導手順
1 教師がフレーズ毎に音読し、生徒にはフレーズ毎の意味をどんどん求めていく方法
2 英語コースでは、ペアワークで、生徒Aがフレーズ毎に音読し、生徒Bが通訳役としてフレーズ毎
にどんどん意味をとっていくような方法を採用した。
前者では、クラス全体の前でのフレーズ和訳は少し緊張を強いる部分もあるが、パート全体をやるのに
ほとんどの生徒があたることになり、テンポよく全員で取り組めるという利点がある。後者では、音読役と
通訳役が一通り終了したら、役割を交代して、もう一度取り組むので時間がかかりすぎたり、教師のモ
ニターリングが行き届かない点、またパート全体の意味を一人がつかむのでより高度な力が要求される
- 20 -
というようなマイナス面もあるが、ペア活動として主体的に取り組め、実際に通訳になったような気分で
楽しく取り組めるようなメリットもある。
7 Fill in Japanese
この活動は家庭学習課題として課す場合もある。1つの safety-net としての活動で、一通り内容が理解でき
ているかを、英語を読み、日本語の空所補充する活動を通して理解度を再度確認する。和訳を渡す方法も
あるが、1つの確認作業として課している。
8 Interpretation/Explanation
CD・MD等を聞きながら、内容理解のために必要な説明を行う。内容理解に大切な部分やその課の文法
上のターゲットとなるような部分について重点的に説明する。
この段階では説明一辺倒になり、単調な指導になりがちである。ここでも変化を持たせる1つの方法として段
落毎また時にはターゲットとなるような表現・文法項目について、説明した後演習し、その後音読を通して理
解の深化をはかり、その英文はもとより、その文法項目を使って自分である程度自己表現できるようなレベ
ルに少しでも近づけるよう努力した。
具体例としては、1分間でターゲットとなる文を10回以上音読し、 read and look up などを強制されなくても
自然に使えるような状況を作り出し、1分後いろいろな生徒に発表を求め、慣れてくるとその英文に対応す
る日本語を要求したり、文法項目によっては英文の一部を入れ換えるようなパターンプラクティス的な練習も
入れてターゲットの表現を使って自己表現できることを目指した。ここでも、以前の、すべて内容が理解でき
てから集中的に音読練習するという自分の固定観念に対して、鈴木先生からアドバイスをいただき、文単位
でも、段落単位でも、パート単位でも必要に応じて音読練習を入れることによって理解を深められると同時
に授業にアクセントをもたせることができ、しいては授業の活性化にもつながることに気づいた。当たり前の
ことであるが、授業を続けていく中で上記のような思いこみや固定観念に自分が無意識のうちに縛られて自
分の指導が硬直していることに気づけたことも大きな収穫であった。
9 音読
音読については、以前は内容理解後に確認の意味程度に行っていたが、前述の示唆を得て、音読は内容
理解を助け、 enhance する強力な武器であることを再認識した。音読の重要性は、昨今の明治大学の斉藤
氏らの提唱により一世を風靡している一大音読ブームにも如実に表れている。
音読については、下記のような手法を用いた。その配列については、未だ試行錯誤中であるが、最後に一
応のモデルを提示する。
音読は原則的にフレーズリーディングシートを用いて行う。フレーズリーディングシートは Skimming や
Scanning 等の内容理解の活動でも使用するが、スラッシュ以外に○印によってそのフレーズで強く読まれる
部分又フレーズの中で最も強く読まれる部分(音調核)等についての情報も併せて書き込み、音読の際の
助けとなるようにしている。ただ、フレーズの区切り方等についてはスラッシュを入れる位置により変化するの
でMDやCDとは異なる場合もある。
最初はフレーズリーディングシートを使い、何回かの音読で慣れた後に、参照する英語として cloze 式に英
文に空所をもうけたハンドアウトを数種類用意してそれを見ながら音読活動を行うようにした。
以下音読の際に行っている手法を列挙する。
Model Reading
教師による範読
Chorus Reading
教師に続く一斉読み
Buzz Reading
生徒各自のペースで読む個人読み
(read and look up を積極的に利用する)
Parallel Reading モデルに続いて被せるようにテキストを見ながらフレーズ毎に音読する。意味を考え
ながら読む。
教師 → 生徒
生徒(1) → 生徒(全体)
生徒(1) → 生徒(1)(ペアワーク)
Delayed Repetition(Retention)
これは、モデルのすぐ後について言わせるのではなく一定の時間(教師が2~3回ぐらい頭の
中で繰り返すくらいのポーズ)を入れてから、 repetition させる。狙いは、生徒に delayed された時
間にその英語を何回も頭の中で繰り返すことによって記憶の定着を促し、音読により強化すること
である。
- 21 -
Shadowing
テキストを見ないで音声とほぼ同時に又は少し遅れて英文を再生する活動。 Shadowing の効
用は、関西学院大学の門田氏の著書等で明確であるのでここでは記述を控える。 Shadowing に
は prosody shadowing, content shadowing, text shadowing 等色々あるが、ここでは他の音読練習を
十分にした後で
教師 → 生徒(全体)
MD/CD → 生徒(全体)
生徒(1)→生徒(1)(ペア)
のような形で shadowing できるようにしている。
Pair Shadowing
教師 → 生徒全体の shadowing ではどうしてもモニタリングが曖昧になるので、生徒Aが先
生役でフレーズ音読をし、生徒Bが shadowing していくようなペアワークもとり入れている。狙いは
生徒の心理的負担の軽減ととともに教師によるモニタリングをより充実させることである。
*音読のモデル例
Model Reading → Chorus Reading → Parallel Reading → Buzz Reading(read and look up を利
用) → Retention → Pair Parallel → Pair Shadowing → Teacher-Student Shadowing →
MD/CD Shadowing
*音読の際にもう1点注意したことは、音読活動の中で音読は内容理解を強化する点を考慮することで
ある。そのためにも上記一連の音読活動の途中に Q &A や True or False 等の comprehension check
を何度か入れて内容理解がさらに強化できるように配慮した。
10. Post-reading
前段階まで、 Input, Intake のレベルまで達し、言語材料は生徒の中に内在化している状態になっている。
Post-reading では、内在化した言語材料を使用して自己表現したり、言語材料の内容と自己の生活を結び
つける personal involvement を可能にするような活動に取り組む。
活動としては、 summarization, key-word reproduction, presentation 等をはじめ様々なものが考えられる。
ここでは Unicorn English Course Ⅰ Lesson 7 で行った Presentation の例を紹介する。
Lesson 7 One step beyond では、一連の活動により、クリスムーンの生き方を通して地雷問題等につい
ての理解を深めた。レッスン全体を読んだ後で、サマリーを書かせ、内容を自分の言葉でまとめさせて理解
の確認をした。次にこのレッスンを通して最も印象に残った点や最も興味を持った点を挙げさせ、これに関
連して自分がさらに調べたい点を搾らせ、一定の時間、調べ学習をさせた。その結果をワークシートを利用
し、まとめさせた。
具体的指導手順(授業時)
1 自分が最も印象に残ったこと、それに関して自分が調べたこと、それに対する自分の感想・思いをそれ
ぞれ1つの段落にまとめさせ3段落で構成されるエッセイを presentation worksheet にまとめさせる。
2 エッセイからプレゼンテーションに必要な key words ・ key ideas をピックアップさせて発表メモを作らせ
る。
3 4人のグループで1人ずつが発表する。他の3人はメモをとり、発表後発表者に質問したり、感想を述
べたりして発表内容がより深められるようにする。 feedback sheet を利用してメモ・感想・質問・コメントを
書き込み、 peer evaluation をする。
4 グループでのプレゼンテーション終了後ボランティアを募り2~3人の生徒がクラスでのプレゼンテーシ
ョンをし、クラス全体で内容を深め合った。
以上がプレゼンテーションの取り組みの概略である。
その他
生徒が取り組みやすいように、 useful expressions for making presentations, presentation worksheet,
key words and key ideas for presentation, feedback sheet, useful expressions from Lesson 7 等のハンドア
ウトを準備して、できるだけスムーズにプレゼンテーション活動に取り組めるように心がけた。
4) 成果
1 input, intake で止まりがちであったこれまでの指導が output まで、少しずつではあるがつながりつつある。内
在化した知識や言語材料を利用して、自分の考えや生活と徐々にではあるが、結びつけながら発信する姿
勢・能力が芽生えつつある。
- 22 -
2 音読作業が、単に確認作業程度また儀式的な程度のものであったものが、内容理解の確認や内容理解を
深める上で不可欠の活動と位置づけられた。上記のような様々な手法で取り組み、生徒の英語理解のため
の大切な方法であることも再確認できた。同時に音読活動を様々な指導過程で取り入れることによって授業
に変化をもたせ、授業の活性化にもつながった。
3 formal schema が一定形成され、パラグラフの構造やディスコースマーカー等に対する理解も、まだ不十分で
はあるが、意識の上では進んだ。いわゆる従来の can’t see the forest for the trees 的な読みを避け全体から
部分へ入っていくような読み方をある程度身に付けられた。 efficient reader になるための土台作りの一助とな
った。
5) 課題
課題は成果と表裏一体をなしている。
1 input → intake → output の指導手順を踏むよう心がけているが、まだまだ、 output 活動の充実度が不足し
ている。各レッスンの内容や特色に応じてバラエティに富んだ output 活動を更に用意していく必要がある。前
述の鈴木先生は、本来 OC Ⅰ、 OC Ⅱは不要であり、英語Ⅰ,Ⅱの中で、 output の段階まで持っていくことが
あるべき姿であり、また是非実現すべき目標であると話されたが、これは至言である。英語Ⅰ,Ⅱで、どこまで
output 活動に取り組めるかが今後の英語教育の鍵と言っても過言ではない。
2 音読の指導手順は、まだまだ試行錯誤の域を出ていない。より効果的な配列を模索していく必要がある。更
に音読活動からレシテーションやスピーチ活動等につなげていく余地は十分ある。すでに筑波大学付属高校
等で先進的な取り組みがなされている。他校での取り組みを参考にしながら音読からより productive な output
活動へどのように繋いでいくかが今後の課題となる。
3 上記の一連の procedure で授業を進めていくと、どうしても時間的に負担が大きくなっていく。時間効率を考え
ながら、3つの段階を無理なく積み上げていけるような指導方法を模索していく必要がある。
2.「読む」活動から「話す」能力を育成するための指導と具体的な検証法
1)スピーキングテストの分析
(1)研究方法
#1 6月と11月にスピーキングテストを実施する。
6月:
「多読による読解力の伸びの研究」で述べたように、この時期まで訳読式での読みを
行っていた。
11月:6月以降トップダウン式の読みを徹底し、他人には聞こえない程度の音量で、絶えず
口を動かしながら、音読する方法を訓練させるという、いわゆる通訳訓練に関する用
語であるサブボーカライゼーション方法をとり、頭の中で意識的に声を出して読むこ
とを徹底した。
#2 スピーキングテストのテスト項目に、*即興スピーチを加える。
(*ここでは、即興スピーチとは、あるトピックを与え、2分後そのトピックについて
スピーチをすることをいう。)
#3 即興スピーチから「話す」能力の変化をみる。
* スピーチを録画し、それをテープ興しすることによって、生徒の発した内容を記録
する。
(2)調査結果-6月と11月のスピーキングテスト(即興スピーチ部門)の変化《テープ興し》
与えられた時間はそれぞれ1分である。
*注:6月については、uh, uh-mm, well 等の語句は省略している。
<生徒A>
6月:Topic: Summer Vacation
-- I'd like to tell you about kinds of summer vacation. is to read many books. Summer vacation
has a long day, so I have a long time, a free time. So I want to read many kind of books. I
haven't read a kind of suspense and fancy novels. In summer vacation I want to read a book.
I want to get many ideas from many books. (67 words/minute)
11月:Topic: My grandmother
-- I have a grandmother, and she is about sixty-eight years old… She is strict about studying. So
I don't like to talk with her about studying, but I like to talk with her about playing. She is…
- 23 -
she know many kinds of playing, like cat's cradle, origami, and old Japanese song. So, I often
when I was children, I often play with her cat's cradle…. Recently, recently, this September, I
went to America. At that time, I bring cat's cradle to America. And I could play it with
American elementary school children. That was really good memory for me. So, I want to
thanks to my grandmother. (107 words/minute)
<生徒B>
6月:Topic: My Motto
-- I talk about my motto. So my motto is to like, to enjoy.... My life enjoy to dead every day. So
every day I practice hard my club. So I study hard for health now. So I like to smile, like to ..
(42 words/minute)
11月:Topic: My Junior High School
-- I'd like to talk about… my… junior school's, high school. So, I, I'm from the Inae Junior High
School. So, … my junior high school's life is kind of boring because a school's rules are very,
very strict. So, we have to wear a white sox, white scarf. So, everyone hate this rule...
But I have one, I have good experiences. So, this is… uh, win the first prize in music chorus
contest. So, I, I was a leader of this contest. So… this is very … impress, impressive. So…
(88 words/minute)
<生徒C>
6月:Topic: A Person You respect
-- I'll talk about a person I respect most. In my family there's a proud father. He has a lot of
knowledge about, in every field. I talk with him often, often I talk with him. And when we are
absorbed in his knowledge about history or science or about movies, I respect him. And I
want to be like him and I can improve myself from, by talking with him. (70 words/minute)
11月:Topic: Japanese Tradition
-- Let me tell, tell, tell you about trad-, Japanese traditional music. When I… when I was in the
junior high school... junior high school, I belong to brass band. And when… I… when we
had a contest of brass band, I played Japanese traditional music written by… Tetsunosuke
Kushida. The… the music was so energetic. So… and… we, of course, we are Japanese.
So, we could play the music, that music naturally. And… but, today, many young people forget
to, to, to touch the traditional music, Japanese music, music. (89 words/minute)
<生徒D>
6月:Topic: What a Family Means
-- I'd like to tell you about what my family means to me. I think my family is very, very
important to me. If I have trouble, perhaps they give me advice or they saw my trouble. In
my family we talk about many things: for example, study or school life or drama and so on.
So I think to talk is very important.... (63 words/minute)
11月:Topic: Sports
-- I'd like to tell you about my first tennis game. Uh… When I was, when I was, when I was
first grade of high school student, high school, I will, I entered, I entered, I played tennis firs
time. But… uh…and on August… uh… I… I had a game, I had a game… It was my
first time and… uh… At first, I was very very nervous, and my friend also very very nervous
And while at the game, uh, I didn't, I couldn't play the tennis… very well. And I lost the
game. Uh… The count was zero to six. And so, I was very very sad. But my friend give me
gave me advice, and now I practice, I practice tennis very well, I practice very hard.
(130 words/minute)
<生徒E>
6月:Topic: What Makes You Feel Relaxed
-- What makes me feel relaxed is taking bath. I belong to basketball club and I practice basketbal
every day. I'm tired, I take a bath and I mean, hot water makes me relax. I sing a song in a
bathroom or I sing in a louder voice. After taking a bath I drink cold .... (54 words/minute)
- 24 -
11月:Topic: My grandmother
-- My grandmother is my second mother because my mother and my father is very busy with
business. So, my grandmother always makes dinner for us. And when I have a cold… when I
have a cold, she always takes care of me. So, I like my grandmother. And I hope… ah, shhh
… ah… I hope she, I want, I want to… my grandmother to see my children[z]. So, I hope
she… she'll… she is in this world… ah… longer and longer. And I'll want to help her…
… until she die. (91 words/minute )
<生徒F>
6月:Topic: What a family means
-- I'd like to talk you about what my family means to me about my family. My family is my
important thing, because if I have some trouble, they help me and if I have some difficulties, they
make me good solution. If I forgot my family, I'll be very sad, I can't be.... When I learn a lo
from my family, .... (61 words/minute)
11月:Topic: My Future
-- I'd like to talk about my future. I have a lot of dreams. But… uh… now I'll … uh… talk
about two my dreams. Uh… if I have a lot of money, I wanna learn about music. But to
learn music means to cost a lot of money. So, I cannot learn music… So, my… uh… dream in
fact is to learn about social welfare. A lot of help, a lot of people… uh… who have some
problems or some difficulties… And if I learn social welfare, I can help them, help them
or I can do something for them. So, I wanna learn social welfare in university. And then I
wanna work as a social… uh… I wanna work. (119 words/minute)
(3)研究結果
#1 話すスピードは増した。
#2 accuracy, fluency の分野で成長の跡が伺える。
#3 発話の中で、well, let me see, uh等の詰ることの回数が減り、発話における1つの
フレーズが長くなった。
#4 情報量が大幅に増えた。これは調査した生徒全員に当てはまる。
#5 スピーチに一貫性がでてきた。
(4)検証
#1発話の中で、音の連結や脱落が使えている。イントネーション、ストレスの使い方
が上手くなった証拠であると考える。これは、語彙レベルの低いまとまった英文を
音読した成果であると考える。
#2「多読」活動によってのみ話す速度が増したと言うことはできないが、一定の成
果は伺える。
(5)課題
#1「話す」活動を取り入れることはたやすいが、その能力を測る手段でよりいいもの
の開発をしなければならない。
#2 トピックの設定が難しく、その難易度を統一しなければならない。
(6)結論 「読む」活動から「話す」能力育成とは有機的に関連する。
2)「読む」速度と「話す」速度の相関性 -「読む」速度が増せば「話す」速度は増すか
(1)相関表
*注1:
「読む」速度の6月の値は、訳読式による読みでの速度を測定したもの
「読む」速度の10月の値は、トップダウン式で、サブボーカライゼーション方式に
よる読みでの速度を測定したもの
*注2:伸び率(読む速度)=10月の速度÷6月の速度
伸び率(話す速度)=11月の速度÷6月の速度
- 25 -
生徒A
生徒B
生徒C
89
82
103
100
110
166
126
165
140
142
67
42
70
63
54
61
107
88
89
130
91
119
伸び率(読む速度)
141 %
187 %
154 %
160 %
140 %
129 %
伸び率(話す速度)
160 %
210 %
127 %
206 %
169 %
195 %
「読む」
6月 110
速度
(WPM) 10月 156
「話す」 6月
速度
(WPM) 11月
生徒D
生徒E
生徒F
(2)検証 - 上記一覧表の結果から
#1 「話す」速度の伸びはほとんどの生徒で「読む」速度の伸び率より優れている。
#2 訳読による「読み」は、「話す」速度の伸長に大きな影響を与えているようだ。一方、
音読を交えたトップダウン式での「読み」は、「話す」速度を増す効果があるようだ。
(3)結論: 音読しながら「読む」ことによって、「話す」速度は伸びるとは一概にいえないが、音
読しながら読解することが、「話す」速度を伸ばす大きな要因だと考えられる。
③「書く」力を伸ばす指導法
「書く」力は、学び取った英語を使うことによって、真の定着を目指し、口頭でのコミュニケーションの
出発点になる。よりよく正確に書けるための指導を、1年次から丁寧に行った。
1.ライティングの指導法と評価分析
1)3年間の具体的な実施内容
<1年次>
① Debate の授業の中で、各自の情報収集と準備の段階で英語を書く。(Debate については別記)
自分の意見をまとめる。考査の中で説得力のある英文を書く。
② 英語Ⅰ New Horizon English Course Ⅰの授業の中で英語を書く
* Lesson 5 から日本語や英語による summary writing を導入
Lesson 5・6 The Girl with the White Flag
Summary Writing
Lesson 7 “The World and You” グループで TV show を作り発表する活動(シナリオを書く)
Lesson 8 The Lonely Girl 少女の心の動きを英語で表にまとめる活動
少女とその友人との会話を作り発表する活動(シナリオを書く)
Lesson 11 Different Cultures, Different Manners
Summary Writing
少年と友人との会話を作り発表する活動(シナリオを書く)
*学年統一 summary writing (次ページ資料1)
手順(説明 5分
読解+要約 約45分)
1 長文(H14年度センター試験第6問)を読む。知らない単語は鉛筆で印を付けながら読み
進める。読み終わるまでにかかった時間を記録する。
2 ストーリーを英語で要約する。かかった時間と書いた語数を記録する。
3 印を付けた単語の数を記録する。
③ 様々な行事の中で英語を書く。
英語合宿での活動(スキットのシナリオ書きなど)
スピーチコンテスト(各自の定めたテーマについてスピーチの原稿を書く)
④ 学級日誌を英語でつける。
<2年次>
① ライティングの授業の中で英語を書く。
*文法配列の教科書を用いての授業(桐原書店 SPECTRUM English Writing)
基本文の音読練習や暗唱を徹底して行う。
- 26 -
教科書の練習問題に解答しながら、基礎基本の確認をする。
教科書準拠のワークブックおよび補充プリントで更に基礎力の定着・深化を図る。
*エッセイライティングの指導
エッセイを書くための1つの形式を提示し、さまざまなテーマについてのエッセイを、家庭で書
かせ毎週1つ提出させた。ALTに添削・評価・コメントしてもらい、生徒に返した。授業の中
で、ALTによくある間違いについて解説してもらったり、よりよいエッセイを書くためのアド
バイスをしてもらったりもした。これは、長期休暇中も1週間に1つの割合で書かせた。ALT
によって添削されて返ってきたエッセイは全てファイルさせ、間違いを文法項目ごとに分類させ
た
*海外高校生との E-mail 交換
7月よりオーストラリアの高校生と E-mail の交換をしてきた。まず、こちらから自己紹介のメー
ルを送った。2回目からは、返ってきたメールの質問等に答えてから、「米原高校の紹介」
「滋賀
県の紹介」「日本文化の紹介」
「修学旅行」など、毎回設定したテーマについて文章を書き、オー
ストラリアではどうか尋ねる形式のメールを5回送った。
* 4月、10月、2月に学年統一エッセイライティングを実施した。
* 3月に英語コースエッセイ集を作成した。
② 英語ⅡやPCの授業で、英文を書く。
③ さまざまな行事の際に英語を書く。
英語合宿でのスキットメイキング、学園祭での英語劇の脚本作り、プレゼンテーション大会の原稿
作り等
④ 学級日誌を英語で書く。
<3年次>
ライティングの授業の中で
* 文法配列のテキスト(2年次から継続使用)を使って基本例文の刷り込み。
(暗唱、口頭英作文)
パラグラフライティング、エッセイライティングの仕方の再確認。
教科書の練習問題、ワークブック、補充問題集で定着を図る。
*エッセイライティング 家庭学習として、与えられたテーマについて英語の文章を書く。
【教科書が終わってから】
* プリントによる日本語英訳演習(毎時)
* センターテスト第3問タイプの問題演習(毎時)
* 「英語標準問題1000」を用いての、文法・語法問題対策(毎時)
* 英語コースエッセイ集を作成(12月)
② 英語ⅡやOCの授業で、英文を書く。
③ 学級日誌を英語で書く。
①
2) 成果と課題
1.【summary WritingからEssay Writingへ】 英語コースでは1年の早い時期から、summary writing
を取り入れ、与えられた英語をもとにまとまった文章を書くことから始め、2年生で何もないところ
から自分で文章を作り上げる essay writing へと、発展させていった。初めは、もとの英文をそのま
ま引用して要約していることが多かったが、授業中に英英辞典を引いたり、paraphrase したりするこ
とを繰り返して、だんだんと自分の英語で要約できるようになっていった。こうして、1年のうちか
ら英語の文章を書くことに慣れていたので1年次の終わりに実施した統一 summary writing では、
1分あたりに書く単語数が他クラスより抜きんでている。英文も、他クラスはもとの英文の抜き出し
表現が多いのに対し、英語コースは自分でまとめようとしている。【資料1】
「ライティングは2年生から」ではなく、1年のうちからどんどんと書く活動を取り入れておくと、書
くことに対する抵抗感は薄れ、2年次では文法や表現を意識したライティングへと発展させていける。
- 27 -
クラス
読 む の に か 書 く の に か 書けた語数
1分当たりに
知らない単語
かった時間
書けた語数
の数
12 【 普 通 科 】
13 【 普 通 科 】
15 【 英 コ ー ス 】
16 【 理 数 科 】
かった時間
1 0. 0
1 3. 2
8 .9
1 4. 2
資料1
2 9. 7
2 6. 7
2 8 .8
2 5. 8
12 1. 7
13 3. 9
19 0 .2
10 0. 5
4 .1
5 .0
6 .7
4 .1
25 . 2
18 . 2
12 . 1
19 . 9
1年3月に行った学年統一summary writingの結果
2.【一定時間内に書く量の飛躍的な伸び】2年生でエッセイライティングを始めると、一定時間内に書け
る英文の量は飛躍的に増大した。エッセイの指導はどのクラスでも行ったのだが、英語コースでは特に
エッセイの指導に割く時間を多くしていたこと、E-mail など動機付けが多かったこと、PCや英語Ⅱ
でも英文を書いていること、そして何よりも生徒の意識が違うことが相まって、他クラスより伸び率が
大きい。
400
350
300
250
200
150
100
50
0
組
6
ー
ス
)
5組
(英
語
コ
4組
組
3
組
2
1組
4月10日
10月20日
2月16日
資料2
2年次の統一エッセイライティングで書けた語数のグラフ
3.【量から質へ】量的に書けるようになると、次に求められるのは正確さである。英語コースでは、返っ
てきたエッセイの間違い分析をさせ、次に活かすように指導してきた。2年次に行った間違い分析の結
果、予想通り、動詞にまつわる間違い(時制、SVの一致、語法など)と名詞と冠詞にまつわる間違い
が多かった。その結果をふまえ、3年次には特に動詞を意識したエッセイライティングを行ったところ、
中・上位層の生徒はほとんど間違わずに書けた。下位層については、文法語法の理解がともなっておら
ず、意識していても間違ってしまうようだ。
4.【他クラスとの比較】1年4月の進研スタディサポートの英語力テストにおいては、英語コースの生徒
と普通科他クラスの生徒の得点率の差が、文構成パートで8.9、文法パートで6.1と一桁台の開
きであった。その後どのように変わっていったかを記述模擬試験のデータをもとに見ていくと、表現
力に関する設問の得点率(資料3)において、12.2から28.3まで、1年間でぐんぐんと他ク
ラスを引き離している。これは、DebateやOCB、英語Ⅰのどの科目においても、コミュニカティブ
な活動やインプットからアウトプットに発展させた活動を多く取り入れてきた効果であるといえる。
2年生になると、他クラスでもライティングの授業でエッセイライティングを始めたためや、ある程
度伸びてしまうとその後伸ばすことが難しくなるため等の原因で、伸びが停滞し、他クラスや全国平
均より20~25%上のところで安定していることがわかる。
- 28 -
*
資料3
記述模試(表現力パートの得点率)他クラス・全国平均との比較
進 研 記 述7 月(表 現 力 )
7月
1 進 研 記 述1 1月 (表現 力
年 進 研 記 述1 月(表 現 力 )
1 1月
1月
進 研 記 述7 月(表 現 力 )2年 7月
2 進 研 記 述1 1月 (表現 力
年 進 研 記 述1 月(表 現 力 )
1 1月
1月
進 研 記 述7 月(表 現 力 )3年 7月
3 河 合 塾 記述 9月 (英 作 文
年 進 研 記 述1 0月 (表現 力
河 合 塾 記述 10 月(英 作
9月
1 0月
1 0月
クラス 1
クラ ス2
ク ラス 3
クラ ス4
46.7
35.0
36.8
20.5
31.6
28.4
26.0
31.1
33.0
23.8
45.8
37.3
42.3
20.5
37.9
32.3
29.6
28.7
31.3
21.1
51.3
35.9
43.2
24.7
40.5
35.9
31.6
29.6
36.3
26.7
45.8
36.8
40.9
20.5
34.2
29.3
25.4
30.9
32.8
22.2
1~ 4平 均 英 語 コー ス他 ク ラス との 差 全 国平 均 全 国 平 均と の差
47.4
36.3
40.8
21.6
36.1
31.5
28.2
30.0
33.4
23.6
59.6
56.8
69.1
41.1
62.6
54.1
52.6
47.8
56.3
46.2
12.2
20.5
28.3
19.5
26.5
22.6
24.4
17.8
22.9
22.7
39.6
30.0
36.4
20.5
31.6
27.3
28.6
33.6
32.8
30.9
20.0
26.8
32.7
20.6
31.0
26.8
24.0
14.2
23.5
15.3
英語コース平均と他クラス・全国平均と得点率の開き(表現力)
35.0
30.0
得点率の差
25.0
20.0
他クラスとの差
全国平均との差
15.0
10.0
5.0
0.0
7月
11月
1月
2年7月
11月
1月
3年7月
9月
10月
10月
一方で、文法・語法に関する設問の正答率(資料4)をみると、1年生のうちは他クラスと5~10%ほ
どしか変わらないが、ライティングで文法を学びだした2年生から3年生にかけて、だんだんと差が大きく
なってきている。これは、この学年は1年次には全く体系的な文法の授業をもうけず、間違いをおそれずに
アウトプットさせようと試み、2年生のライティングで初めて文法に触れだしたため他の技能に比べて遅れ
て伸びだしたと言える。しかし、2年生からでは定着せず、改めて基礎基本の重要性を認識した。1年生で
文法の導入を行い、2年生で文法の完成度を高め、3年生では正確に使いこなせるぐらいが望ましく、文法
の指導については反省すべき点が多い。生徒のアンケートの中にも、「もっと文法を教えて欲しかった。」と
いう回答があった。量と正確さの両方を伸ばせるように、制限されたカリキュラムの中で1年生からどのよ
うな形で文法を教えていくかが課題である。
*資料4
記述模試(文法・語法パートの得点率)
7月
進研記述7月(文法・語法)
1 進研記述11月(文法・語法)
年 進研記述1月(文法・語法)
進研記述7月(文法・語法)
2 進研記述11月(文法・語法)
年 進研記述1月(文法・語法)
進研記述7月(文法・語法)
11月
1月
2年7月
11月
1月
3年7月
3 河合塾記述9月(文法・語法)
年 進研記述10月(文法・語法)
10月
河合塾記述10月(文法・語法
10月
9月
他クラス・全国平均との比較
クラス1
クラス2
クラス3
クラス4
27.7
29.2
16.7
28.2
36.5
29.1
37.1
46.0
45.0
50.5
26.9
26.7
15.0
28.8
33.5
30.9
39.7
46.5
49.5
52.5
28.5
29.2
18.3
30.0
37.1
29.8
38.6
50.5
51.4
58.0
30.0
30.8
16.7
27.6
35.9
29.3
39.7
45.5
55.0
54.5
- 29 -
1~4平均 英語コース 他クラスとの差
28.3
29.0
16.7
28.7
35.8
29.8
38.8
47.1
50.2
53.9
34.6
40.0
26.7
42.4
52.9
42.4
55.1
70.5
62.3
68.5
6.3
11.0
10.0
13.7
17.1
12.6
16.3
23.4
12.1
14.6
全国平均 全国平均との差
33.1
35.8
21.7
30.6
35.3
36.2
40.6
51.5
50.0
64.0
1.5
4.2
5.0
11.8
17.6
6.2
14.5
19.0
12.3
4.5
25.0
得 20.0
点 15.0
他クラスとの差
率
10.0
の
差 5.0
全国平均との差
0.0
7月
11月
1月
2年7月
11月
1月
3年7月
9月
10月
10月
英語コース平均と他クラス・全国平均と得点率の開き(文法・語法)
5.【文章構成力の向上】エッセイライティングを継続的に行ってきため、文章構成については理解力・
運用力ともに高まった。センター試験第3問形式の問題(文整序・連結語句等)では正答率が高くなっ
ているし、エッセイを書く際にも構成を考えてから始めるようになった。今後も、個々の英文ばかりに
とらわれて文章全体がまとまりのないものにならないよう指導をしていきたい。
6.
【学級日誌に見られる3年間の変化】英語コースでは、1年次より英語で学級日誌を書いてきたが、
3年間のライティング力の伸びは、学級日誌のコメントを見ても明らかである。
資料5
学級日誌の様式(1年次)
F ir s t o f a ll , s e e t h e f r o n t p a g e a n d k n o w w h a t t o d o t o d a y !
Date
W eat her
In f o r m a t io n
Subject
[ C he ck
A bsent
Teacher
Tardy
W h a t w e h a v e le a r n e d
1
2
3
4
5
6
7
W h a t is h a p p e n in g in J a p a n a n d t h e r e s t o f t h e w o r l d ?
W h a t 's b e e n o n y o u r m in d l a t e l y ?
T o M r ./ M s .(
1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 ]
Name
)
K a y o k o 's C o l u m n
- 30 -
L e f t E a r ly
A bsent
例)同一のM.Aという生徒の英文
項目:What is happening in Japan and the rest of the world?
1年次
12月の日誌より
Government of South Korea taked some Japanese people away from Japan. This became very serious
scandal. Victims of kidnapping came home at last. But they can’t meet children. I think they are very
pitiful.
3年次
10月の日誌より
A mother killed her nineteen-year-old daughter by neglecting her. Her daughter’s weight was 13kg and her
height was about 140cm when she died. It was a very tragic story. What made her do so? I can hardly
believe it. Recently, such a case is not rare. How can we solve this problem???
1年次と3年次の日誌を比べて言えること(上の例に限らず)
・1年次、動詞の3変化が曖昧であったが、3年次にはほとんど基本的な動詞の3変化のミスはなくなった。
・1年次には、名詞に可算名詞と不可算名詞があることを意識してなくて、冠詞が付いていないことが多か
ったが、3年次には意識できるようになった。
・1年次には、ほとんど単文であるが3年次には、接続詞や関係詞を使い複文・重文を頻繁に使うようにな
った。
・3年次には、英語的な表現や、既習の構文・表現を積極的に使おうとしている。
7.できるだけ多くエッセイを書かせたいのだが、誰がどうやって添削・評価するかが問題である。本校の
ようにALTが2名常駐していても、2年生、3年生の12クラス分のエッセイを添削してもらうこ
とには無理があり、遠慮してしまう。JTEでは、「こういった表現ができるのだろうか」と不安にな
ることも多いし、やはり時間的にそれだけのエッセイは見られない。また、ALTとJTEでは評価
が異なることもよくある。
8.以上、ライティングスキル向上のために取り組んできたことの成果と課題について述べてきたが、やは
り、向上は Debate や他の科目の中での書く活動との複合的な効果であるところが大きい。また、何よ
りも生徒の意識・意欲が大切である。スピーチコンテスト、著名人の講演などの行事、また、E-mail
交換等の楽しい活動を、「動機付け」「
・ 刺激剤」として適当な間をあけて配置し、向上心を持続させる
ことが大切である。
2.平成16年度のライティング指導
ー
3年生英語コース
1) 授業のコンセプト
①「書くことに対する抵抗をなくす」「
・ 量を書く」から「正確な英文を書く」「論理的な文章を書く」
へステップアップを図る。
②大学入試に対応できる力を付けるため、正確な語法・文法・構文を身につけることをねらいとする。
③習熟度別にクラスを2分割し、能力に応じた指導をする。定期考査毎にクラス変えを行い意識の喚起
を図る。特に遅進者のクラスを少人数化し個々の生徒に配慮する。
(35人を20人と15人に分け
た。
)
2) 生徒の初期の英語力
2年次に繰り返し80~120語程度のエッセイを書く練習をしてきて、英語で文章を書くことに
抵抗を感じることはなくなっていた。また、トピックを与えられてから40分間で平均 356.7 語、つ
まり、考える時間も含め1分間に約9語のスピードで書けるようになっていた。しかし、個々の英文
を見ると文法的・語法的間違いが多く、ごく少数ではあるが、未だに日本語的語順から脱却できてい
ない生徒が見られた。また、既習の構文も理解はできるが使えるまでには至っていなかったので、書
く英文は平易なものであった。3年生になって、課題は「量から質へ」ということであった。
また、この学年の生徒達は文法を体系的に学習する時間がなかったので、文法・語法に対する苦手
意識が強く大学入試にもかなり不安を感じていた。
- 31 -
3) 授業内容
テキスト:桐原書店 SPECTRUM English Writing
(2年次より継続使用。3年は Unit 1 Lesson 31 の「人や物を説明する」から)
<授業パターンの例>
[Interact]
①教科書の挿し絵を見てペアで質問をしあう。
Yes-No Question や Wh-question を4問
② Your Turn の指示に従ってペアで話し合う。
Ex.) Talk with your partner about your ambitions.
[基本例文A,B]
① 基本例文の重要文法・構文・語句の部分を空欄にしたプリントをあらかじめ配布しておき、空欄に
単語を補いながら音読する。徹底して音読をさせ、制限時間内に読ませる。その後、暗唱させる。
② 覚えた暗唱文を応用し、口答英作文をさせる。
[PRACTICE]
① ボランティアで答えさせる。または、あてて答えさせる。
② 音読。
③ 重要な英文は暗唱させる。
[WRITE]
① ボランティア、または、あてて黒板に書かせる。
② 必要ならば修正。他の表現の紹介。
③ 音読。
* 付属のワークブック、補充問題集は宿題とする。
* ライティングでも、音読は重視し
* 「Part 3 パラグラフを書く」に入ってからは、課によって進め方が異なるが、教科書に従って進
めた。
<エッセイライティング> 4月・5月
1週間に1つのペースで、家庭学習でエッセイを書きALTに添削してもらう。
Topic 例:
* Should students come to school on Saturdays?(新聞の「学力低下」についての投稿を読んで)
* Suppose a time machine is invented. What would you like to do with it?(2003年度 大学入
試問題より)
* Which do you prefer, a paper dictionary or an electronic dictionary?
<テキスト終了後の授業パターン>
①
②
③
日本語英訳
問題プリントを予め配布しておき、生徒はそれに解答してくる。毎時3~4人に、
授業開始までに黒板に自分の英訳を書かせておき、始まったらすぐにその添削を始める。完成した
英文の確認、音読。
文章構成の演習
センターテスト第3問対策も兼ね、教科書の Unit 2で学んだ、Linking Words
を文章中に入れたり文章の流れに合うように英文を並べ換えたりする演習問題に制限時間内に解答
させる。
文法・語法
「英語標準問題1000 (桐原書店)
」解答と解説
<一斉エッセイライティング>
授業中にテーマを与え、辞書を引かずに制限時間内(約35分)にエッセイを書き上げる。
11月実施エッセイライティングのトピック
* Traditionally in Japan, and other countries as well, many people have placed a high value on
loyalty to the employer and job stability. Recently, however, an increasing number of people
feel it is perfectly acceptable to change jobs more freely and frequently. Think of the advantage
and disadvantages of these two positions. Then indicate which position you agree with and
- 32 -
why. (2004 群馬大学入試問題)
12月最後の授業でのエッセイライティングのトピック
* Write about the things you have learned since you entered the English Course and how you
think they will benefit you in the future.
4) 成果
・エッセイの間違い分析
3年生になって文法や語法の理解度が深まり、間違いの数が減ってきたことがわかる。資料1(次ページ)
において2年生で書いたエッセイの間違いの数と3年生で書いたエッセイの間違い数を見ると、2年生のエ
ッセイは家庭学習で辞書を引きながら時間をかけて書いたものであり、3年生のエッセイは授業時間中に辞
書を引かずに制限時間内に書いたものであるという条件の違いにもかかわらず、3年次の方が間違いが少な
い。間違いの内容も、
「明らかに間違っている」あるいは「何を言おうとしているのかわからない(日本語
にしてみるとわかる)
」ものから、
「いいたいことはわかるが別の表現の方が良い。」といった間違いへと変
化している。
また、資料1の2段目「会社への忠誠心」についてのエッセイライティングでは、始める前に動詞の時制
とSVの一致・語法に特に注意を払って書くように指示した。意識させるだけで、間違いは明らかに減った。
資料は、上位、中位、下位の各層から抽出した6人の合計であるが、上位層に限って見ると動詞の間違いは
無かった。下位層では文法・語法力が低いため、意識していても間違いが出てくる。このエッセイライティ
ングでは、書く前に英文を理解しなければならなかったし、内容的にも難しかったので、時間が足らない生
徒が多く proof reading はほとんどされていないが、できていれば更に間違いは減っていたことだろう。
資料1
エッセイライティング間違い分析(間違いの数は、抽出した6人の合計)
語
数
名
詞
動
動
致詞
詞
/
語S
時
法V
制
の
一
形
・
副
間
違
い
前
置
詞
違
い
前
置
詞
抜
け
不
要
冠
詞
間
違
い
冠
詞
抜
け
(
)
)
文
の
数
一
文
の
語
数
(
各
た
層
6
よ
人
り
の
抽
合
出
計
し
接
続
詞
ス
ペ
ル
違
い
文
の
構
造
意
味
の
な
い
文
語
使
い
違
い
連
語
違
い
そ
の
他
2年次資料とした25
回分のエッセイの平
均
664
56.8 11.9
7.4
6.1
4.3
3.5
3.7
4.0
2.6
7.2
3.1
2.4
3.7
2.6
7.6
1.9
1.0
100語あたり
100
8.6
1.1
0.9
0.7
0.5
0.6
0.6
0.4
1.1
0.5
0.4
0.6
0.4
1.1
0.3
0.2
1000
66
9
4
3
9
6
0
9
4
0
1
4
0
22
0
19
100
6.6
0.9
0.4
0.3
0.9
0.6
0.0
0.9
0.4
0.0
0.1
0.4
0.0
2.2
0.0
1.9
1123
69
13
23
9
9
6
4
2
7
2
4
3
2
8
6
12
100
6.1
1.2
2.1
0.8
0.8
0.5
0.4
0.2
0.6
0.2
0.4
0.3
0.2
0.7
0.5
1.1
会社への忠誠心
100語あたり
英語コースに入って
100語あたり
15.2
16.3
・文章構成力(資料2 模擬試験設問別分析表)
進研6月マーク
進研9月マーク
進研11月マーク
代ゼミプレ12月
全国
校内
全国
校内
全国
校内
全国
校内
アクセント・文強勢
63.1
62.5
64.4
68.8
58.1
60.0
70.0
72.0
文法・語彙語法・会話・整序
46.6
49.2
47.1
43.7
51.8
48.4
64.0
65.0
連結語句・文整序・文補充
48.5
51.8
37.9
39.1
53.8
55.0
50.0
53.0
図表読み取り
47.7
49.1
73.4
79.7
82.0
83.1
59.0
59.0
読解(会話文)
59.1
60.0
67.8
71.3
55.9
55.9
53.0
54.0
資料2のマーク模試の設問別得点率を見ると、文章構成力を問う第3問では安定して校内の方が高いこと
がわかる。2年次から継続して、パラグラフライティングの指導をしてきたこと、Linking Words の使い
- 33 -
方について指導してきたこと、さらに、リーディングでもパラグラフリーディングをされてきたことにより、
文章構成力を伸ばすことができた。3年でも文章構成に関わる演習問題を多く取り入れて行ってきたため、
模擬試験においても連結語句・文整序・文補充の分野では、平均してよくできていた。
・文法・語法の定着度(資料3 文法・語法問題のクラス別得点率)
資料 模擬試験設問別クラス別得点率
1組(普・理系) 2組(普・混合) 3組(普・文)
6月マーク
第2問 文法・
語彙語法・会 9月マーク
話・整序
11月マーク
4組(普・文) 5組(英語コース) 6組(理数科)
46.3
44.5
53.7
46.3
64.7
42.2
38.7
40
45.3
38.4
69.5
33.7
44.2
46.1
50.3
48.4
66.3
38.4
7月記述
37.1
39.7
38.6
39.7
55.1
35.4
10月記述
45
49.5
51.4
55
62.3
46.8
7月記述
26
29.6
31.6
25.4
52.6
25.2
10月記述
33
31.3
36.3
32.8
56.3
30.5
文法・語彙語法
表現力・英作文
受験を意識しだして、文法・語法の知識も定着してきた。授業への集中度もよく、授業後の質問もかなり
詳細な文法についての質問に変わってきた。また、習った構文を使おうという姿勢がエッセイライティング
にもよく現れていた。
5) 課題
・エッセイの評価基準はALTの主観によるところが大きい。年度途中でALTが変わったので、間違いの
直し方や評価基準も変わってしまった。
・エッセイの添削はALTに頼っているが、負担が大きい。ライティングの添削ソフトを利用するとどうな
るか、今後の課題である。
・この学年は「情報」を習っていないが、新カリキュラムでは「情報」の授業がありコンピューターもよく
使っているので、エッセイは今後、電子データで提出させるとよいのではないだろうか。ALTも添削
しやすいし、ワードなら「変更履歴の記録」の機能を用いれば訂正した箇所もわかる。
・3年生は受験のため、授業が12月までと短い期間の中で、いつどの時期に何を教えるのが効果的か、シ
ラバスについて再考する必要がある。今年度は、教科書を終えてから語法・文法にかける時間が多くな
り、表現力の強化とのバランスがとれていなかった。また、語法・文法・構文にしても、ひと通り行う
のが精一杯であったため正しく使えるまでには至っていない生徒が多い。
・最後に書かせたエッセイは、「英語コースに入って良かった点、それを今後どう活かすか」についてであ
ったが、この文章の中では過去・現在・未来の時制が混在してくる。そのため、時制の間違いがぐんと
増えた。やはり、時制の概念が定着し、正確な英文を書けるようになるには時間がかかる。
- 34 -
DATE:
/
/
C LASS
NO.
Traditio nally in Japan, and other countries
on loyalty to the e mp loyer and job stability.
pe ople feel it is p erfectly acceptable to change
advantage s and disad vantages of these two
agree with and why.
NAM E
as well, m any p eople have placed a high value
Recently, howe ver, an increasing number of
jobs m ore freely and frequently. Think of the
po sitions. The n indicate which position you
Yo u are supposed to write more than 150 words.
(
( 文 の数
)( 一文 あ たり の 語 数
)
そ の他
連 語 違い
文 章 構成
語 使い違 い
文 の構 造
意 味 のな い文
接続詞
スペル違い
冠 詞抜 け
冠 詞 間 違い
前 置 詞 違い
前置詞抜 け
形 ・副 間 違い
動 詞 ( の一 致 )
V
S
名詞
動 詞 (時 制 )
資料4
) w ords
英語コースで用いたエッセイライティングの用紙
3.平成16年度のライティング指導
ー
2年生英語コース
1) 取り組みの目標
① 教科書の機能別表現や文法事項別表現を通して基礎力の定着を図る。
② 自分の考え、意見、気持ちや情報などを、場面や目的に応じて英語で表現する能力を養う。
③ エッセイ・ライティングを通して、物事を論理的に筋道立てて表現する力を養う。
2) 取り組み概要
テキストは、PRO-VISION English Writing(桐原書店)を使用した。このテキストは基本的な文
を書く力の定着を目標とした UNIT 1(Lesson 1 ~ 25)とパラグラフを書くことを身につける
UNIT 2(Lesson 26 ~ 31)で構成されている。UNIT 1 における各課の構成は機能項目別の例文
(例:計画、希望、祝う、喜ぶ、依頼、賛成、反対、落胆、許可等)であり、また各課に文法項目
別の表現も例文として記載されている。PRACTICE で基礎から応用問題に取り組み、簡単なエッ
セーを書く流れになっている。2年生ライティングでは、UNIT 1 に取り組むことにより、まずは
基礎力の定着を図り、簡単なエッセイを書くことから始め、次第に論理的に書く能力を習得でき
るよう指導をした。さらに3年生への橋渡しとなる最終的な段階として、自分の書いたエッセイを
添削記号により自分で校正することで、生徒ひとりひとりが自分の作品に責任を持って訂正し、そ
のことにより気づき、新たに学び、より豊かな英語表現を確実に身につけられることを試みた。
3) 各目標を主眼とした具体的な取り組みについて
目標① 教科書の機能別表現や文法事項別表現を通して基礎力の定着を図る
1) Listening Task を聞かせたり、ALT との会話の中にターゲットとなる機能表現を用い、実際の
会話の中でどのように使われているかをイメージできるようにした。
2) FUNCTION と GRAMMAR の例文を通し、よりその場面や状況にふさわしく、正確な表現を
学べるようした。
3) 基本文の定着のため、徹底した音読練習【資料1】と暗唱、暗記テスト【資料2】を実施し
た。
【資料1 音読練習】
目的
形態
全体活動
教科書の例文を英語らしく読む。発音しにくい単語の練習をする。
教師
→ 生徒 1) chorus reading
2) Read and Look up
効果 後のペアワークを意識させておくことにより、全体の音読の重要
性を次第に学び、真剣に取り組む姿勢を持続できるよう心がける。
- 35 -
目的 日本語も英語もできるだけ速く読ませることで、読むことに集中
させ、音読への抵抗感を和らげる。
ペア活動1) 形態
生徒 A:例文の日本語を読む
生徒 A:例文の英語を読む
生徒 B:例文の英語を読む
↓(役割交代)
生徒 B:例文の日本語を読む
効果 ペアワークの責任上、日本語を読む生徒の声量、スピードに応じ
て、大部分の生徒が一生懸命音読をする。
目的 Chunk を意識した Read and Look up を試みることで、発声しなが
ら意味を意識することを目指す。
ペア活動2) 形態
生徒 A:Read and Look up
生徒 A:間違いを直す
生徒 B:間違いを直す
↓(役割交代)
生徒 B:Read and Look up
効果 間違えると直されて、やり直しなので真剣に取り組む。また、時
々、無作為にペアを選び、実演してもらうのでなお一生懸命にす
る
【資料2
暗記テスト】
Lesson 18 ご迷惑をおかけしました
Class(
)no(
)name(
)
1.遅刻したことをお詫びします。(5語)
____________________________________________________
2.ご迷惑をおかけして申し訳ありません。(7語)
I really ________________________________________________________________
3.許してください。---気にしないでください。謝る必要はありません。
(2語・5語)
Please __________________ --- Don’t worry. _________________________________
4.私の言葉があなたを傷つけるとはとても想像できませんでした。(9語)
I could ____________________________________________________________
5.あなたに電話することも手紙を書くこともできませんでした。(6語)
______________________________________________________ to you.
6.その出来事を思い出すと後悔しないではいられません。
(8語)
______________________________________________________________________
7.それはあなたの責任ではなく私の責任です。(7語)
______________________________________________________________
8.私が冷蔵庫のアイスクリームを全部食べたわけではありません。(11語)
________________________________________________________________________
4) PRACTICE A は基礎的なのでコミュニケーション活動に利用し Speaking においてもターゲッ
ト事項の基礎的運用力の定着を図った。
5) PRACTICE B, C または復習用教材を用い表現の確認、定着を図った。
実践例)前後黒板を利用して課題の解答をできるだけ多くの生徒に板書してもらう工夫
<前後の黒板の分割方法>
利点:前後両方の黒板を左図の
ようにチョークで分割し、前上
側・後上側、前下側・後下側の
ように時間差で指名していくと、
短時間で20人の生徒に解答の
機会を与えることができる。
目標② 自分の考え、意見、気持ちや情報などを、場面や目的に応じて英語で表現する能力を養う
1) ペアワークやグループワークを活用し、ある程度コントロールされた対話を通してターゲット・
エクスプレッションを使い対話をできるようにした。
2) 簡単なテーマを与え、ペアで1分間の即席演説をし合い、その後2~3人の生徒を無作為に選び
発表をした。
3) 予習の一環として pre-writing に取り組み、ペアで読み合ったり、感想を言い合ったりした。
- 36 -
4) 前期は、教科書の EXPRESS YOURSELF や生徒にとって身近なことからエッセイのテーマを与え、
課題【資料3】として書かせた。始めは40語を目標に始め9月には、60語の指示に対し、平
均80語を超えるようになった【資料4-1,2,3,4】。各エッセイは2人の本校ALTが添削、A~
Dの4段階評価をして返却した。
目標③
エッセイ・ライティングを通して、物事を論理的に筋道立てて表現する力を養う。
1) 後期(10月)より、論理的に書く指導に力を入れ、エッセイのテーマ【資料3】も自分の考え
を述べかつその理由づけをして、結論を述べる演繹法を徹底させた。【資料5】
【資料3 エッセイ・テーマ】平成16年4月~平成17年2月
学期 月 # Essay Titles
4 1 My Name
2 My Hometown
5 3 My Dream
前
4 My Club Activity
6 5 高体連中にしたこと
6 My Family / My Pet / My Hobby
7 7 The TV program/The book/The movie I have recently found very interesting
期
8 What I saw on my way to school this morning
8 9 My Diary
10 My Opinion ※夏休みの読み物から1つトピックを選んで書く
9 11 Is school uniform necessary or not?
12 Should high school students be allowed to have a part-time job or not?
後
10 13
14
11 15
12 16
17
1
18
期
2
19
20
What do you think is the most important subject you learn at high school?
The School Trip to Ishigaki Island
Should students be able to choose their classes?
Is it good for teenagers and adults to read comic books?
A person who I respect most
Should everyone study English?
Is it good for high school students to go to juku?
What can we do to reduce trash(garbage)? ※ No.18 ~ 20 は各1つ選んで
書く
My Best Experience during the School Trip
My Worst Experience during the School Trip
The First Day of Our School Trip
After graduation which do you think is better to go to university or to work?
Who do you think will win the soccer game, Japan or North Korea?
Which do you think is more comfortable, living in the country or in a big city?
【資料4-1 最初のエッセイ課題】
Topic: My Name
☆ Pre-writing questions:
1. What is your name?
2. Who named you?
3. What does your name mean? or Why did he/she/ they name you your name?
☆ Here is an example:
My name is Mariko.
My friends call me "Mariko" but my mother used to call me "Mako".
Mariko means "truth-child".
My parents named me this because they wanted me to be an honest girl.
I like my name very much.
【資料4-2 4月2回目のエッセイ課題と生徒Xの取り組み例】生徒Xの英語力は平均的である。
Topic: My Hometown ~あなたの町(県)を紹介してみよう~
☆ Pre-writing questions:
1. Where are you from? - I'm from Maibara town.
2. What is the population of your hometown? - The population of my town is about 12,000.
3. What is your town known for? - Jizo River
☆ Express Yourself(40語以上であること)注意:添削用の行を狭くしました。
- 37 -
I am from Maibara town.
The population of my hometown is about twelve thousand.
It is known for the Jizo River.
There are hariyo which is a natural monument in the river.
Certainly, there are a lot of fish and beautiful waterweeds the others in the river.
So, many tourist visit my hometown every year.
※生徒のエッセイをそのまま記載しています
55
words
A
B
C
D
【資料4-3 9月のエッセイ課題と生徒Xの取り組み】
論題: Is school uniform necessary or not?
(注意事項) ・Introduction --- Body --- Conclusion を考えて書くこと。
・論題に対して、自分の意見の理由を少なくとも2つ考えて書くこと。
・説明や例を挙げて理由をサポートする情報を補うこと。
I think the school uniform is unnecessary. I believe this for several reasons.
First, people of my generation are an age which want to express ourselves.
Wearing clothes is one way of expression. According to wear school uniform our one way
of expression. If the above is true, it is not too much to say that we will fall into frustration.
In addition, depriving freedom of expression may be unconstitutional.
Surely, wearing school uniform shows features of each school, but I think school uniform
isn't good. Since it is like a military uniform, why we should wear it?
In conclusion, we don't have to wear school uniform.
※生徒のエッセイをそのまま記載しています
(107
語数)
評価
A
【資料5 Essay の書き方】夏休み明けの授業で配布、説明- Essay の書き方
Introduction →
主題の文(課題)を繰り返して書きながら自分の考えを書く
(理由は書かない)
(例)主題:What do you think the most important subject that you study in school?
Introduction の書き始め:
I think the most important subject that we study in school is Japanese.
Body → 自分の考えの根拠や理由を順序立てて述べる
Body の書き始め:
I believe this for several reasons.
First, ..... / Second, ..... / Third, .....
Also,......
Moreover,..... / In addition, ..... / What's more, .....
例を挙げる場合:
for example, ..... / for instance, ..... / such as ......
- 38 -
だから:
so, ..... / and so, .....
therefore, .....
as a result, ..... / consequently ......
最後に:
Finally, .....
It is true that(対立する考えを書く), but(その意見に反駁して自
文の意見を正当化する)
Conclusion
→ 新しいことを書かないで Indroduction で述べた意見をほかの言葉に言い換え
て、印象を強烈にして締めくくる。
締めくくりの表現:
In conclusion, .....
In short, .....
As mentioned above, .....
Like this, .....
On the whole, .....
*3月までにこの形式が使いこなせるようになってください。
*今までに学習したいろいろな文型を駆使して、より内容の濃い、より美しい英文を書
くという意識をもって、エッセイに取り組んでみましょう。
2) 4月、10月、3月(予定)に、40分間、辞書等に頼らずに英語を書かせ、語数・文の数を
比較してみた。4月のテーマが"The TV program /The book/The movie I have recently found
interesting." 10月は"The school trip to Ishigaki Island."について書いてもらった。右のグラフが
示す通り4月の平均語数は128語、10月は187語と語数だけを比較すると 1.46 倍に伸
びている。また、1文当たりの語も4月は 8.53 語、10月は 10.4 語と増加している。しかし
ながら、このデータだけにより生徒の Writing 能力が向上したとは言い難い。確かに Writing に
対する慣れが生じ、英語で書くことに対する抵
【資料6 エッセイ・ライティング語数】
抗感は薄まったものの、より正確に、論理的に、
12
200
言わんとすることが表現できているかという
180
10
160
と疑わしい部分も大いにある。極端に言え
平均語数
140
8
ば、単語さえ知っていて、思いつくままにそ
120
6
100
れらを並べていれば語数は伸びることになる
1文 当 た り
80
4
の平均語
のである。
60
【資料7
40
20
0
生徒の偏差値別エッセイ・ライティング語数】
350
300
250
語 200
数 150
100
50
0
70
60
50
40 偏
差
30 値
20
10
0
A
B
C
D
生徒A~F
E
F
2
0
4月
4月
10月
偏差値
数
10月
【資料7】は、外部模試による英語の偏差値が異なる
6人の生徒を無作為に選び、4月と10月のエッセイ
・ライティング語数を比較したものである(英語の偏
差値は、2年7月と11月に受けた外部試験の平均値で
ある。)
【資料8 生徒A~Fの評価】
また、【資料8】は各生徒のエッセイ評価であ
生徒 4月評価 10月評価 英語偏差値
るが、4月と10月の評価に相関性はなく、明確
A
A
B
48
な基準のない絶対評価である。言うなれば、制限
B
B+
A
53
時間を駆使し、なんとか自分の意見なり思いを伝
C
A-
B
56
えようと努力していて、読み手が内容を理解でき
D
A
A
57
ればA評価がもらえる。一見、評価が甘いのでは
E
C+
A
58
という感もあるが、エッセイ・ライティングを長
F
A
A+
65
く続けていくには、生徒の意欲を見て生徒の励みになる評価をしていくことが不可欠であると考え
た。
これら2つの資料から考察すると、偏差値を生徒の英語総合能力を見る参考値とすれば、生徒A
- 39 -
は能力が低くても語数は多く、生徒Cはエッセイ内容は悪くないが語数が少ない。また生徒D・E
・F については、10月次のエッセイ語数、評価、偏差値ともにバランスがいいことがわかる。し
かしながら、生徒Aに見られるように、必ずしも語数と英語の総合的能力の相関関係が成り立つ
わけではないことを示唆していると言える。そこで各エッセイの二次的な段階として、"Correcting
My Essay" と称して、まず添削前のエッセイと添削後のエッセイを自分で比較し、間違いを含む英
文を書き出し訂正し、間違いの分類をすることを試みた。
【資料9】は、上記生徒Bの記録である。
このような作業をすることで、より正確で、わかりやすい英文を書く意識づけを図った。
【資料9 生徒B"Correcting My Essay"(10月)の例】
注意:該当のエッセイは制限時間40分、辞書を使用せず書かれたものである。
Correcting My Essay 2) October 2-nen Class(
) No.(
) Name(
生徒B )
before: When we arrived Ishigaki Island was good whether and hotter than Maibara.
after : When we arrived at Ishigaki Island, it was good weather and hotter than
Maibara.
(分類)
before: In addition, kura needed 100 yen in an hour.
前置詞
主語抜
け
スペル
単語
冠詞
after : In addition, the air conditioner needed 100 yen an hour.
before: I think canoe is very tired sports.
単語
冠詞
形容詞
after : I think canoeing is a very tiring sport.
before: On October 5, I play syunokeling.
動詞表
現
スペル
after : On October 5, I went snokeling.
before: In the sea bed, many beautiful fishes swimed.
動詞
(時制)
after : In the sea bed, many beautiful fishes swam.
before: Almost fishes I had never saw.
副詞
動詞
(活用)
after : Almost all the fishes I had never seen before.
before: That night, we played recreation.
動詞の
表現
単語
after : That night, we did recreation activities.
訂正箇所の分類
スペル
2
単語関連
3
動詞関連
冠詞関連
前置詞
4
2
1
形容詞副詞 文の構成
2
1
このようにして各生徒が自分の間違いを書き出し分類することにより、エッセイを書く際に注意
すべき点、自分の弱点を認識しやすくした。しかしながら、この訂正箇所の分類方法は生徒自身が
取り組むことが肝要でありながら、分類しにくい要素も多々あるという声を聞くことになった。
実際に生徒の分類はこちらの意図とは違うもの(例えば、動詞の活用の誤りをスペルミスに分類 し
ている等)もあったので、こちらで前出生徒A~Fについての訂正箇所の分類抽出統計【資料 10】
を以下のように取ってみた。
- 40 -
【資料 10
生徒6名による4月・10月エッセイ・ライティング 訂正箇所の分類抽出統計表】
名詞 動詞
形容詞
語順
関 係 代 語彙
生徒 スペル 代名詞 助動詞 冠詞 前置詞 副詞
接続詞 表現
名 詞 / その他
時制
副詞
A
2
3
2
2
3
0
0
6
0
2
B
3
1
5
4
1
2
0
1
0
2
C
3
4
6
2
3
0
0
1
0
1
D
3
1
6
0
1
1
0
2
1
5
E
5
3
3
0
0
3
1
2
0
0
F
0
3
4
2
4
1
0
2
1
1
合計 16
15 26
10 12
7
1
14
2
11
概してこの表からわかることは、まず第一に圧倒的に動詞の誤りが多いということである。
単純な時制の間違いから、高いレベルになると<現在/過去完了>や<助動詞+完了形>を試み
たものの完全には使いこなせていないものもある。その傾向は4月のものよりは10月のものに
多く見られ、より高度な表現を試みた結果と言える。
次に多いのがスペルミスであるが、辞書を使わないことによりシーン、カヌー、シュノーケル
などカタカナ英語が意外と書けないようである。また、名詞・代名詞に関しては複数形になるべ
きところが単数形のままであったり、代名詞が適切に使われていなかったりした。
さらに、語順や表現においては、日本語に影響されたものがよく見られた。例えば、「この映
画は3部作である。( The movie is divided into three parts.)」を"The movie is three stories."としたり、
「
(3人姉妹の)真ん中の娘が・・(the middle sisiter)」が"the medium sister" と表現されている。ま
た、冠詞や前置詞は習得が難しい上に、文法項目としては未習であったため、誤りも目立ったと
思われる。
3) 生徒によく見られる間違いを使ったエッセイの例文を作成し、生徒が校正することにより、客
観的にエッセイを見て、より正確で論理的な英語を書くことへの意識を高めた。また、校正
後の例文エッセイを提示することにより、より豊かな表現を学んだ。【資料11-1.2.3】
4) 9月から導入した演繹的なエッセイ・ライティング
Introduction --- Body --- Conclusion が
12月の時点であまり浸透していないことや、添削にかかるALTへの負担を考慮して、添削
記号【資料12】を作成した。この添削記号を生徒のエッセイに書き込み、生徒が添削記号を
頼りに自分のエッセイを校正し、エッセイの再提出を試みた【資料13-1,2】。この添削記号は
まだ完成とは言えないので、何度か試行していくことでより生徒にとって使いやすいものにし
ていく予定である。
【資料11-1. 生徒によく見られる間違いを使ったエッセイの例文】
Example Writing (good)
Directions: Read the example and check the mistakes. Be careful there are a lot!
Topic: It is good for teenagers and adults to read comic books.
I agree. I have too reasons. First, adulte and teennagers don't many time. They need them.
Second reason is peoples can learn a lot of word by comic. For example, when we read comic books
we watch new kanji and learn them. While it is true comic books are bad, I think it is good. In
conclution, I think it is good for teenagers and adults to read comic books for their precious future.
(74 words)
Directions: Checking the mistakes you found, please write a new version of the essay.
【資料11-2. 生徒による校正例文】
I agree that it is good for teenagers and adults to read comic books. I have two reasons.
First, adults and teenagers don't have a lot of time. So they need to relax with comic book
The second reason is people can learn a lot of words from comic books. For example, when
we read comic books, we see new kanji and learn them. While it is true that comic books
sometimes contaminate us, I think they are good because they give us dream, hope and
courage.
In conclusion, I think it is good for teenagers and adults to read comic books.(102 words)
- 41 -
【資料11-3. 校正後のエッセイ例文】
Example Writing (good)
Directions: Read the example and check the mistakes. Be careful there are a lot!
Topic:
It is good for teenagers and adults to read comic books.
I agree that it is good for adults and teenagers to read comic books. I have two reasons.
First, adults and teenagers don't a lot of time. They need comic books to relax because they are easy
to read. Second reason is peoples can learn a lot of word by comic. For example, when we read comic
books, we see new kanji and increase our vocabulary. While it is true comic books are sometimes show
bad things, I think they are good because we can find a dream for our future. In conclusion, I think it
is good for teenagers and adults to read comic books. (107 words)
【資料12
記号
SP
添削記号】Essay correction guide
意
味
例
Spelling mistake
単語のつづり誤り
I bought too aples from the shop.
TNS
Wrong tense
時制の誤り
She run in the marathon last year.
WW
Wrong word use
間違った単語の使用
Going shopping made me feel very exciting
PN
Pronoun
代名詞の誤り・代名詞の
不足
We should choose their own subjects because
it is for our future. He lended me
pen.
Wrong word order
語順の誤り
We need to have a safe place to play for children.
P
Preposition is needed
前置詞が必要
in / at / of / on / from / etc.
OT
Off the topic
話題から外れている
NL
This sentence should start on a new paragraph
EX
Example / explanation
具体例や説明が必要
UC
The meaning is unclear
意味が不明瞭
WWO
/
F
A
The beach was very beautiful and we went swimming.
The nightclubs in Hong Kong are very exciting and fun.
新しい段落にする
The word is unnecessary
in the sentence. 不必要な語
The shop was too busy at the lunchtime for me
to buy my book. I like the shopping.
Fragment sentence
不完全な文
My friends and I talking on the street.
An article is needed to make
the sentence grammatically
correct.
a / an / the
There were too many people in shop for me to buy
book. My father is doctor.
VB
Wrong verb used
is / are
The students is going to Tokyo in March.
The contest was hold in Osaka.
V
Another word(or words) is needed in the sentence.
PU
Incorrect puctuation
語が不足している
comma(,) full stop(.) Capital letter(C) Apostorophe(')
【資料13-1, 添削記号を生徒 Y のエッセイに書き入れた例】
Essay Writing 英語 WRITING
Class:
No.:
Name:
- 42 -
論題: 下記より1つ選んでエッセイを書きなさい。
・After graduation which do you think it is better to go to university or to work?
・Who do you think will win the soccer game, Japan or North Korea?
・Which do you think is more comfortable, living in the country or in a big city?
(注意事項) ・Introduction --- Body --- Conclusion を考えて書くこと。
・論題に対して、自分の意見の理由を少なくとも2つ考えて書くこと。
・説明や例を挙げて理由をサポートする情報を補うこと。
v
v
I think that Japan will win North Korea the soccer game.
SP v
v
vA
v
I belive for thre reason. First, Japan team has a lot of great players.
SP
For exmple, Tamada, Nakamura and Takahara. Nakamura and Takahara
WW
vA
v
is belong to the foreign soccer teams. Second, Japan team has played
v
the soccer game with many countries. This experience must help Japan
vA
v
team in the next game. Third, a head coach of Japan team is very
PU b
vA
PN
famous. Because he was very good succer player in the old days.
UC
I expect Japan team too much. I'm going to watch the soccer game on
vA
v
the TV. In conclusion, Japan team will win.(105語数)
【資料13-2, 添削記号をもとにして校正された生徒 Y のエッセイ】
I think that Japan will win the soccer game against North Korea. I believe this for
three reasons. First, the Japanese national team has a lot of great players. For example,
Tamada, Nakamura and Takahara. Nakamura and Takahara belong to foreign soccer
teams. Second, the Japanese team has played soccer games with many countries. This
experience must help the Japanese team in the next game. Third, the head coach of the
Japanese team is very famous because he was a very good soccer player in his old days.
I strongly hope the Japanese national team will win the game. I'm going to watch the
soccer game on TV.
In conclusion, I believe the Japanese national team will win the game. (119 語数)
4.取り組みの成果と3年生ライティングへ向けての課題
成果をまとめるにあたり、2月に対象生徒197名にライティングの取り組みに関るアンケー
トを実施し、うち80名の回答を無作為に抽出統計したので、参考にした
【資料 14 アンケート抽出統計 抽出数80】
質
問 内
容
はい
いいえ
わからない
1.予習や宿題をして取り組めた
40
39
1
2.授業にまじめに取り組んだ
70
9
1
3.暗記テストを頑張った
44
31
5
4.復習ができた
26
48
6
5.エッセイ・ライティングは必ず提出した
58
22
0
6.4月からエッセイが書けるようになった
70
10
0
7.9月より論理的に書けるようになってきた
65
12
3
8.論理的に書く取り組みは他教科にも役立てられる
53
12
15
9.英語を書くことは、将来的に必要である
70
8
2
- 43 -
成果
①4月から2月まで、20のエッセイ【資料3参照】に取り組んできたが、多くの生徒が英語で
エッセイが書けるようになったと感じている。上記のアンケートによると、87.5%の生徒が「書
けるようになった」と答え、追加質問で「語数はいくつまでが、課題として適当だと思うか?」
に対し、
「平均 97.8 語」と答えている。この数字は、4月当初40語ぐらいから始めたことを
考慮すると、エッセイを書くことに対する抵抗感がなくなっただけではなく、ある程度の進歩
が見られたと考えてもよいだろう。また、エッセイを順序立てて、論理的に書く取り組みにお
いても自分の成長を感じている者が8割以上いることは一種の成果に値すると考えられる。ま
た、この取り組みが小論文や現代文の読解などで役立てられそうだと考える生徒も少なからず
いることに注目したい。
②週2回の授業のうち、1回はALTとのティーム・ティーチングを試みた。本校のALTは2
名だが、エッセイの添削クラスとT.Tに入るクラスを同様にすることで、エッセイ添削に関
して生徒にフィードバックをすることができた。T.Tのクラスでは、コミュニケーション活
動や音読が中心になるのではないかと懸念していた生徒もいたが、きめ細やかなフィードバッ
クや英作文で幾通りもの書き方を指導してもらえたことを積極的に受け止めることができたと
考えられる。
③徹底的な各種の音読活動【資料1】をコンスタントに続けたことにより、語彙や表現の一人歩
きがなかった。音とともに語彙や表現を覚えることができた。また、ペア・グループ活動でも
積極的に取り組むことができたのも声に出す・話すことに対する抵抗感がなかったからであろ
う。
④教科書の構成が、機能別表現と文法事項別表現の2本柱であったことで、文法の基礎的な復習
を兼ねることができた。この学年では、1年次より、週に1時間文法の授業を実施してきたが、
時間的な制約により、復習をする時間が家庭レベルでしか取れなった。
課題
①アンケートの結果からわかるように、87.5%の生徒が授業にはまじめに取り組んだと答えている
ものの、48.7%の生徒が予習や宿題ができていなかったり、60%生徒が復習に取り組まなかった
と答えていることは反省に値する。予習→授業→復習のサイクルを確立させることを提唱して
きた
つもりであったが、まだまだ徹底できていなかったようである。生徒の自主性に任せていたが、
2年になって間もないうちは何らかの手だてが必要なのだろう。3年生は、1学期は意欲的に
スタートできると考えられるが、夏休みを過ぎてから、受験を意識しすぎて基本的なことが疎
かにならないようにしたい。
②エッセイ・ライティングの素地はある程度できたように思うが、3年になったら、添削記号を
本格的に導入し、自分のエッセイを校正することで、生徒ひとりひとりが自分の作品に責任を
もち、より論理的に筋道立てて表現する力を養っていくことを試みる必要がある。
③エッセイのテーマについて、対象生徒197名にアンケートを取ったところ、以下の5つが上
位に選ばれた。
1.My Name
2.The School Trip to Ishigaki Island
3.My Dream
4.A Person Who I Respect Most
5.My Club Activity
このことより、生徒は自分のことや自分が経験したことを書くことを好むようである。しかし、
論理的なエッセイを求めるに従い、テーマは主張的になり、日頃考えたこともないようなテーマに
ついて考えることになる。そのことを好意的に捉えている生徒もいるようであるが、苦手意識を持
つ生徒も少なからずいるようである。3年生のエッセイ・テーマについては、このことに留意して
選んでいきたい。
④ 「話す」力を伸ばす指導法
スピーキング能力にはいくつかの要素が絡み合う。本校の取組から抽出した要素は、大きく分けて次の4
つである。
1) 正確な音・音の法則の習得
2) 基本的語彙・表現・文法構造の定着
3) コミュニケーション・ブレークダウンが生じたときの方略の習得
- 44 -
4) 英語をトップダウン的にとらえて保持(retain)する能力
5) 積極的な意思疎通への意欲
このような観点を踏まえた指導法について記す。
1.OCⅠ
inputをoutputへつなげるコミュニケーション指導
1) 指導方針・目標
日常生活の身近な話題についての英語の学習を通して、情報や相手の意向などを理解したり、
自分の考えなどを表現したりできる実践的なコミュニケーション能力を養う。指導目標は次の通
りである。
・コミュニケーションに対して積極的に取り組む姿勢を育てる。
・コミュニケーション活動に効果的な語彙・表現の理解、定着、習得をさせる。また習得した語
彙や表現の使用レベルを input から intake の段階まで高め、active vocabulary としてコミュニケ
ーション活動で利用することができるようにする。
・日常会話だけにとどまらず、自らの体験や理想について話すことができる。
・自らが得た情報を相手に伝えることができる。
・モデルカンバセーションを使っての集中的演習を通して useful expressions はもとより、自然な
リズムやイントネーション等の習得をはかる。
・オーセンティックな会話のリスニング活動を通してそこで使われている表現とその活用法を習
得する。
・他人の会話を聞き取り、簡略に記録し、自分の表現として活用する。
2) 指導方法
クラスを名簿の前半後半二つに分け、JTLとALTが 2 人 1 組でそれぞれのクラスに入り、
同様の活動をしていく。前期は Nice Talking With You(マクミラン ランゲージハウス)を、後期は
Departure Oral Communication I(大修館)をテキストとして用いた。
・前期指導形態
1 単元 3 時限を基本に
語彙・表現の理解・習得→ controlled reproduction
→ less controlled reproduction → Automatic reproduction
テキスト Nice Talking With You における授業形態(1単元3時間)
第 1 時限目:①導入(オーラル・イントロダクション-単元のテーマの提示-)
(知識・理解)
② Vocabulary test(生徒はすでに新出単語・語彙は予習済み)
(知識・理解)
③テキストの語彙の理解及び習得(知識・理解)
④語彙の音声練習(知識・理解)
第 2 時限目:①導入(デフィニションゲーム-語彙の復習-)(知識・理解・意欲)
② Useful expressions の理解及び習得(知識・理解)
③表現の活用(timed conversation につなげる素地を作る)
(理解・表現の能力・意
欲)
④ターゲットエクスプレッションの習得・反復練習(timed-repetition)、グループ活動
(知識・表現の能力・意欲・態度)
⑤グループ活動の結果の発表(表現の能力・意欲・態度)
第 3 時限目:①導入(ペアで会話練習-テーマの提示-)
②テキストのリスニング練習+スクリプトの音読練習(Timed role play practice と
Read and look up)(知識・理解)
③ Timed Conversation 活動(グループによる会話練習)
(表現の能力・意欲・態度)
・後期指導形態
1単元2時間を基本に
後期テキスト Departure Oral Communication I(1単元2時間)
第 1 時限目:① Vocabulary test(生徒はすでに新出単語・語彙は予習済み)
(知識・理解)
② Impromptu speech(単元のテーマの提示)
(理解・活用)
③導入(オーラル・イントロダクション-単元のテーマの提示-)
(知識・理解)
④テキストのリスニング練習(知識・理解)
第2時限目:① Vocabulary test(生徒はすでに新出単語・語彙は予習済み)
(知識・理解)
② Impromptu speech(単元のテーマの提示)
(理解・活用)
③ Sound focus(音声的理解)
- 45 -
④ Useful expressions の理解及び習得(知識・理解)
⑤ Dialog の音読練習(知識・理解)
⑥ Useful expressions を用いた活動(理解・活用)
・後期テキスト Departure Oral Communication I を用いた1単元2時間の授業形態と分析
前期に用いたテキスト Nice Talking With You により、生徒のコミュニケーションに対する積
極的な取り組み姿勢とその土台となる基本的な英語会話能力を育てた。その上で後期は多様なテー
マを通して、生徒の語彙力・音声的な能力(リスニング能力・発話能力)を育てることに的を絞っ
て前期の授業形態を踏襲しながら授業を進めていった。また後期からは毎時間 impromptu speech の
練習を取り入れ、生徒の一定量の内容をよどみなく伝えられる能力育成にめた(Impromptu Speech
については⑫で詳述)。
① Vocabulary test
Vocabulary test を毎時間実施した理由に前期 6 月上旬に行ったスピーキングテストの結果を分析
した結果、日常会話で使われる表現をどの程度習得しているかを図る部門において平均得点率が
66.5 %であった。さらに会話能力を見るスピーキング部門では平均得点率 58.0 %であった。これら
の結果より、生徒が日常会話の中で活用できる Active vocabulary の習得が不可欠である結論に達し
た。そのため毎時に語彙のテストを生徒に課した。
事前に配布した vocabulary sheet(このシートにはターゲットとなる語彙とその定義が掲載されて
いる)を生徒が予習し、それを毎回確認している。ここでの狙いは、生徒が日本語を介さず英語を
通して理解する姿勢を育て、かつ、いろいろな語彙を自分でパラフレーズする能力の定着を目指し
ている。また、全員に配布している英英辞典(Wordwise English-English Dictionary)をできるだけ機会を
見つけて引くように指導している。
生徒に配布する vocabulary sheet は分野別にかつその単元に関連した語彙が体系的に配列されてい
る。そのためこの取り組みを通して彼らの語彙力はより体系化したメンタルレキシコンの一部とな
ったと思われる。その結果次に述べる Impromptu speech の練習にも色濃く反映され、生徒の話す情
報量、語彙の量質ともに向上したと思われる。
②音声的な能力の育成
前期で用いたテキスト Nice Talking With You を使った指導では特にスピーキングの育成を目
指し、生徒は自分の考えや意見を表現する姿勢を身につけた。後期ではスピーキングはもちろんの
こと、スピーキングと表裏一体をなすリスニングにも焦点を合わせながら指導してきた。様々な角
度からそのテーマに基づいたリスニング活動を多く取り入れた Departure Oral Communication I
をテキストとして用いた。
このテキストを用いる際に心掛けたことは、リスニング活動に入る前にそのレッスンでターゲッ
トとなる語彙をボキャブラリーシートにまとめ集中的に指導し、後に続くリスニング活動がスムー
ズに進むようにしたことである。リスニング活動をする際には text-based にこだわらず、取り組む
活動の順序を入れ替えたり、他から投げ入れ教材を利用したりした。また、聞きっぱなしにならな
いように、スクリプトを必ず用意して、視覚的確認をし、timed reading などの活動を通して発話能
力の向上にも努めた。
音声的には、外国語として英語学習者のピットホールである微妙な違いの子音や母音をミニマル
ペアとして提示されている部分は、ALT を有効に活用し生徒の音声的な育成を図った。
3) 成果と今後の課題
前期当初の狙いどおりコミュニケーションに対して積極的に取り組む姿勢については十分身につ
いているようである。また Impromptu speech や timed conversation などでの生徒の活動のモニタリン
グから、生徒の語彙や表現力の顕著な伸びが確認されている。多量な英語に触れる事によって英語
の自然なリズムやイントネーションが身についた。
後期の目標であった音声的な能力の育成については、7月に行われた進研模試の英語リスニング
ではその得点率において全国平均を 100 とした場合に 120.1 であった。11 月に行われた進研模試の
英語リスニングでは 169.5 と大きく伸びた。これは Departure Oral Communication I による効果
的な指導の成果であると考えられる。
2.スピーキングテストにおける生徒の発話能力の比較研究
1 スピーキングテストについて
- 46 -
*研究方法:2年間で4回実施したスピーキングテストのビデオのテープ興しをした。
*対象生徒:以下のスピーキングにおける3レベルの生徒
生徒A:low level
生徒B:intermediate level
生徒C:high level
*比較項目
(1)発話総語数
(2)発話総時間
(3)発話速度(words/min.)
(4)発話回数(=英文の数)
【1】1年次6月のスピーキングテストの内容
(1)日常生活でのfamiliar topic について本校ALT が質問し、それに答える形式。
(2)即答式であり、事前に質問内容を知らせていない。しかし、OCⅠの授業でこのトピックは扱っ
ていた。
(3)1対1のインタビュー形式で行った。時間は7分間。
【2】1年次3月のスピーキングテストの内容
(1)英語Ⅰの題材にでてきたcurrent world problem (child labor)を取り上げた。
(2)ディスカッション形式で行い、5人1グループとした。司会は本校ALT である。
(3)即答式であり、事前に討論する内容を知らせていない。しかし、英語Ⅰや資料1にあるような
内容については扱った。討論時間は7分間
【3】2年次6月のスピーキングテストの内容
(1)スピーチテーマを与え、1分間でスピーチ内容を考え、1分間の即興スピーチをする。
(2)ディスカッション形式で行い、4人1グループとした。
(3)即答式であり、事前に討論する内容を知らせていない。しかし、定期購読させていた毎日ウ
ィークリーのトピックから出題することは伝えてある。討論時間は7分間。
【4】2年次12月のスピーキングテストの内容
(1)スピーチテーマを与え、1分間でスピーチ内容を考え、1分間の即興スピーチをする。
(2)2対2のディベート形式で行った。出題論題(4つ)とペアについては、実施の1週間前に
提示した。該当する論題と肯定側か否定側かについては、テスト実施寸前に明らかにした。
準備時間を2分間与え、立論と反駁のみで、試験時間は10分間とした。
2 生徒A (low level)の比較研究-下線部の発話を研究対象とした。
【1】1年次6月の発話内容抜粋とその時間。(
)内は発話にかかった時間(単位秒)を表す。 発話
にかかった時間とは、ALT の質問が終了した時点から生徒が発話し終わった時点までを測定した。
J: 本校ALT
A: 生徒A
イタリック体の文字が生徒Aの発話
J:
What do you want to do in the future?
A:
① Future? I want to help many people. (10 sec.)
J:
Oh, sounds interesting. So what do you eat for lunch in Japanese high school?
A:
② Lunch? We eat lunch box. (12 sec.)
J:
Oh, what's in lunch box?
A:
Rice, meat.
J:
Sounds delicious. Do you make your own lunch?
A:
No.
J:
Who makes your lunch?
A:
My mother.
J:
Oh, you are very lucky. Have you been abroad?
A:
........
- 47 -
J:
A:
J:
A:
J:
A:
J:
A:
J:
A:
Have you ever been abroad?
No, I haven't.
If you could go any countries in the world, where would you go?
③ I want to go to America.. (8 sec.)
Oh, why?
④.... I'm interested in America. (14 sec.)
Oh, America is a very big country, where do you want to go in America?
New York.
New York. I have been to New York five times.
⑤ Sounds great. (4 sec.)
【2】1年次3月の発話内容抜粋とその時間。(
)内は発話にかかった時間(単位秒)を表す。発話に
かかった時間とは、相手の発話終了時点から生徒が発話し終わった時点までを測定した。討論形式
なので、ここでは前の発言から生徒の発言を抜粋してある。
D: 相手 A: 生徒 A
イタリック体の文字が生徒 A の発話
D:
Do you agree or disagree? More ideas?
A:
① Children in developing country can't go to school because they don't have money to go to school. (13 sec.)
D:
I think Japanese company should build factory in developing country and people work there and
enough pay so.
A:
② There are NGO in the world, non-government organizaiton. They should active more, we can belong to them.
(20 sec.)
【3】2年次6月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載。...は発言の詰まりやポーズを表す。
(
)内は1分間の発話語数(言い直した語は語数に含まない)を表す。
A:生徒 A
スピーチテーマ:The most beautiful place I have ever seen.
A: Most beautiful place I've ever ...I've ever seen is Nagasaki. When I was a junior high school
student, I went to Nagasaki on school trip and we can... we could see many dolphins. They were
very cute and the sea is very very beautiful. So I was moved... moved ... uh... . I thought I want
to see more beautiful places. So this year we'll go to Okinawa. I'm looking forward to go to
Okinawa.(67語)
2年次6月のディスカッションでの発話内容抜粋とその時間。(
)内は発話にかかった時間(単
位秒)を表す。発話にかかった時間とは、相手の発話終了時点から生徒が発話し終わった時点までを
測定した。討論形式なので、ここでは前の発言から生徒の発言を抜粋してある。
D1, D2: 相手 A: 生徒 A
イタリック体の文字が生徒 A の発話
D1: She should have more rest?
D2: Yes.
A : ① I think she ... she has ... she was pressured than we have expected, so I think princess Aiko can ... can succeed
her father. Uh... some people think men ... man is higher position in society than women, but it is formal, so ..
(39 sec.)
D1:
A:
I think formal rule is bad for Princess Masako, so I think we should change the formal rule.
② I think so, too. I think she was pressured by the voice of nations, so we can help her and we can change rules,
formal rules.(18 sec.)
D1:
A:
Japan is change, is different from ... Japan is changing, so rule also is changing.
③ Japanese idea also changing. Japanese idea, thinking will change ... (10 sec.)
【4】2年次12月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載。
A:生徒 A
スピーチテーマ:Sports
- 48 -
A:
From June, I quit volleyball club because I have to work well to go to university. And in summer vacation, I
worked very hard. But working is so hard I, than I had expected I have, now, I have no job. I have, I don't take
part-time job. And Monday, I saw volleyball club members playing volleyball so hard. And then I decided to work
very hard in summer, uh, in winter vacation because I decided to work, I decided to go to university. I keep, I have to
keep working and ...(92語)
2年次12月のディベートの発話内容抜粋とその時間。
A:生徒 A(否定側)
ディベート論題:A boring job with a high salary is better than an interesting job with a low salary.
A: That's true, but in the future, uh... children can earn, earn money for ... uh, themselves. For example, uh, to go to
university, they can borrow money from the, a kind of ... uh... kind of group, group. Uh... So, uh... money is very
important, but... but family had to understand their work. So, children have to do themselves in the future. (80 sec.)
◆生徒Aにおける考察
(1)発話総語数
(2)発話総時間
(3)発話速度(words/min.)
(4)発話回数(=英文の数)
【1】
インタビュー・テスト
1年次
(1)24語
(2)48秒
(3)30words/min.
(4)7回
6月
【2】
ディスカッション
1年次
(1)36語
(2)33秒
(3)66words/min.
(4)2回
3月
【3】
即興スピーチ
2年次
(1)67語
(2)60秒
(3)67words/min.
(4)7回
6月
ディスカッション
(1)69語
(2)67秒
(3)62words/min.
(4)6回
考
察(表現など)
テーマ:日常会話
発話がすべて短文に終始し、質問に対し適切な情報を返す
のに時間がかかっている。しかし下線部⑤にあるようにAL
T との会話をよく聞いていたためALT が会話の中で使った
Sound+(adj.)の表現を使うことができた。
テーマ:Child Labor
発話速度が約2倍速くなり、その語彙力の向上も一目瞭然
である。不定詞の形容詞的表現を使うことができたのは英
語Ⅰでコミュニカティブな授業をしてきた成果だと考え
る。また自分の意見に対して、理由や知識をその発話の中
で取り入れられているのは、英語による討論の練習の成果
だと考える。また発話自体は流暢にできるようになってき
てはいるが正確性の面で欠ける部分があった。
テーマ:The most beautiful place I've ever visited.
発話速度は1年次3月と変わりない。スピーチテーマが与
えられてから、1分間考える時間があるものの、即興スピ
ーチは初めてであるため、かなり緊張したようだ。しかし、
内容が身近であったため、うまくまとめている。
テーマ:Princess Masako
受動態、現在完了や比較級を使おうとする試みは評価した
い。表現が幅広くなりつつある。また、
(she was pressured by the voice of the nations)のような高度な
表現も取り入れている。
【4】
即興スピーチ
2年次
(1)92語
(2)60秒
(3)92words/min.
(4)7回
発話速度は1年次6月と比べて3倍、2年次6月と比べて
約1.4倍になっている。スピーチのテーマがSportsとい
う漠然としたものであったためか、考えながらの発話がで
きていたが、言い直しが目立った。正確性の面も課題が残
る。
ディベート
テーマ:A boring job with a high salary is better
than an interesting job with a low salary.発
12月
(1)48語
(2)80秒
(3)36
(4)4回
テーマ:Sports
話速度はポーズがかなり長いため大幅に落ちた。
良かった点は、That's true, but ...のようなディスカッ
ションやディベートにおける定番表現が使用できている。
また、自分の意見を陳述する際に、For example ...と具
体的に例を挙げて説明を試みていることから発話内容の表
現力に伸長が伺える。
- 49 -
3
生徒 B (intermediate level)の比較研究:下線部の発話を研究対象とした。
【1】1年次6月の発話内容抜粋とその時間。
J: 本校 ALT B: 生徒 B
イタリック体の文字が生徒 B の発話
J:
I'm curious about Japanese high school. Please tell me about Japanese high school life?
B:
① Japanese high school life? Is they are study hard and they are, they are,... They belong, ... club, any many club.
(23 sec.)
J:
B:
J:
B:
J:
B:
J:
B:
J:
B:
J:
B:
J:
B:
What do you eat for lunch in Japanese high school?
② Every student can eat 'bento.' (8 sec.)
What is bento?
③ In morning my mother cook it. Onigiri, do you know? (15 sec.)
What is Onigiri?
Rice ball.
Have you ever been abroad?
④ Oh, yes. I have been to Canada and Hawaii. (11 sec.)
Oh, where did you go to Canada?
Vancuver and .... I don't know.
When did you go to Canada?
When I was 14 years old.
Did you go to Hawaii alone?
⑤ No, I went to Hawaii with my family and my cousins. (13 sec.)
【2】1年次3月の発話内容抜粋とその時間。討論形式なので、ここでは前の発言から生徒の発言を抜粋し
てある。
M: 司会者
D: 相手
B: 生徒 B
イタリック体の文字が生徒 B の発話
M: Compared to developing country, why are children forced to work?
B:
① Because their... their parents cannot get enough money to live, so they have to make money to live. (16 sec.)
D:
B:
M:
B:
D:
B:
There are no people to say 'stop child labor', because they don't receive an education and they can't
understand what child labor is.
② So, they can't receive good education. So they, they don't have... don't have write skill or read skill so they, they
can't they can't learn. So they have to work.
(34 sec.)
What can we do to end the child labor?
③ I don't think we can end it soon. First, I have to, People in developed country have to know about this
problem and they learn about this problem more.
(31 sec.)
I think so, too. First we should think and learn about developing country and what child labor is.
And then we have to take action. For example, we have to build school first and education is
necessary.
④ I agree with D. People in developing country need to... need developing... People need still teacher and we have to,
we need to raise money. (34 sec.)
M:
B:
Japanese NGO is only sending money. It's not enough, we should think and give money.
⑤ We can send, send, send some teachers who can teach something to children and if I have a chance I want to go to
developing country and want to teach something to children.
(22 sec.)
【3】2年次6月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載。
B:生徒 B
スピーチテーマ:A Person I respect
B:
I'll tell you about my... tell you about person I respected... most.
- 50 -
As you know, I'd like ... I respect my karate instructor. His name is Okada.
He is the teacher. He has been teacher when I was 7 years old and he is very fine person and strong... . I was
taught by him lot of thing, whi... which couldn't learn at school... (58語)
2年次6月のディスカッションでの発話内容抜粋とその時間。討論形式なので、ここでは前の発言か
ら生徒の発言を抜粋してある。
D1, D2: 相手 B: 生徒 B
イタリック体の文字が生徒 B の発話
D1: I agree with Haruka beause the mass media focus on child of Princess Masako, so it is hard for
Princess Masako to hear her child beause mass media are wating for her child
B : I think we should change the rule that emperor is man. I suggest that Aiko sama is next emperor.(14 sec.)
D2:
B:
I agree with Yuki and Akifumi. Princess Masako has been pressured to hear their son. I think it is
a chance to change a royal system. What do you think about Prince Naruhito?
I think he is good one because he protected Masako sama from the mass media. (8 sec.)
【4】2年次12月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載。
B:生徒 B
スピーチテーマ:Animals
B:
I like to talk about animal. I like animal because I have two dogs..... About five years ago, I bought one a dog.
We named her Minto. And three years... ago, Minto born three puppies at... at my home. Those are very cute. And
two of them, we gave two of them to my friend, and we kept one of them. We named her Buzz... When I get home,
they always welcome me. (70語)
2年次12月のディベートの発話内容抜粋とその時間。
B:生徒 B(否定側)
ディベート論題:A boring job with a high salary is better than an interesting job with a low salary.
B: If you work a boring job for all life, you will, you can't stand the boring job. (12 sec.)
B: But now, but now in Japan, if you make money... even if you make money, much money, but you, you, you don't
everything it then now. (17 sec.)
◆生徒Bにおける考察
(1)発話総語数
(2)発話総時間
(3)発話速度(words/min.)
(4)発話回数(=英文の数)
【1】 インタビュー・テスト
1年次
6月
(1)55語
(2)70秒
(3)47 words/min.
(4)5回
【2】 ディスカッション
(1)135語
1年次 (2)137秒
(3)59 words/min.
(4)13回
3月
【3】 即興スピーチ
(1)58語
(2)60秒
2年次 (3)58 words/min.
(4)6回
考
察(表現など)
テーマ:日常会話
発話がすべて短文に終始し、質問に対し適切な情報を
返すのにそう時間がかかってはいないが、下線部①の
ように頭の中で文法的に正しい英文を話さなければと
いう概念が根付いている。ただ下線部⑤にあるように
ALT の質問にたいして正確な返答をしている。
テーマ:Child Labor
全てのデータに著しい向上が見られる。例えば raise
money や receive good education 等、語彙力が驚くほど
上がっている。発話速度も速くなり、長い時間発話し
ようとする意欲が伺える。全員 accuracy, fluency とも
大きく向上した。if 節や関係代名詞節などを使った表
現が発話の中でできてきている。prompt response の面
での向上が顕著である。これは討論において積極的に
自己表現をしようとしてきた成果だと考える。
テーマ:A Person I Respect
発話速度に変化は見られないが、即興スピーチなので
考えながらの発話であることを考慮すると、多少の誤
りは見られるものの、受動態や関係代名詞の叙述用法
を使っているところが進歩である。
- 51 -
6月
ディスカッション
(1)34語
(2)22秒
(3)93 words/min.
(4)3回
【4】 即興スピーチ
(1)70語
(2)60秒
2年次 (3)70 words/min.
(4)9回
12月
ディベート
(1)38語
(2)29秒
(3)79 words/min.
(4)2回
テーマ:Princess Masako
発話時間が短かった。
生徒の多くがそうであるように、
冠詞について意識が向けられていない。また、既習事
項である suggest that S (should)+ V ... が活かされてい
ない。この生徒 B に関しては、1 年生 2 月に英検 2 級
を取得しており、ペーパーテストも毎回高得点である
が、正確さに重きを置きすぎるため発話量が減少して
いると考えられる。
テーマ:Animals
発話速度も発話時間もまずまずといったところだが、
せっかくの豊富な語彙力が活かせてない。また、発話
内容の論理性にも問題がある。例えば、I like animal
because I have two dogs が成立してしまうところに、一
度日本語で考えて、英語に直しているのではないかと
いう疑問が残る。
テーマ:A boring job with a high salary is better than
an interesting job with a low salary.
初のディベート形式のテストであったので、総体的に
見ても発話速度、発話時間ともに大幅にダウンした。
生徒Bに関しては、即興スピーチ同様に、正確さを追
求するあまりか、発話に伸びが見られない。既習のデ
ィベート表現も利用していなかったのが残念である。
4 生徒 C (high level)の比較研究
【1】1年次6月の発話内容抜粋とその時間。
J: 本校 ALT C: 生徒 C
イタリック体の文字が生徒 C の発話
J:
Can you tell me about Japanese high school life?
C:
① O.K. First we come to school until eight thirty-five and we have four classes in the morning, and we have lunch
for about 30 minutes. And we have two or three classes in the afternoon.
(37 sec.)
J:
C:
J:
C:
What do you eat for lunch?
Everyday? Rice and junk food.
Is there anything you don't like to eat?
② I dislike, dislike greenpepper, but I can eat everything.
J:
C:
J:
C:
J:
C:
J:
C:
If you could go anywhere, where would you go?
③ I want to go to New Zealand.
(4 sec.)
Really? Why?
④ My English teacher in my junior high school days was very kind. We are friends.
Is she Japanese?
No. She is from New Zealand, so she lives there now.
If you could go to New Zealand, what would you do there?
⑤ I want to talk to her. I want to see her and her baby. (12 sec.)
(8 sec.)
(21 sec.)
【2】1年次3月の発話内容抜粋とその時間。討論形式なので、ここでは前の発言から生徒の発言を抜粋し
てある。
M: 司会者
D: 相手 C: 生徒 C
イタリック体の文字が生徒 C の発話
M: Compared to developed country, why are children forced to work?
D:
Because their... their parents cannot get enough money to live, so they have to make money to live.
M:
C:
That's a good idea. What else?
① There must be more people to work and company, because people in company have to make more things to export
to get more money. (16 sec.)
- 52 -
C:
② There are no people to say 'stop child labor', because they don't receive an education and they can't understand
what child labor is. (14 sec.)
M:
C:
Does anyone disagree anything?
③ Our economic potential is established in developed countries, while it's not established in developoing countries. So
they have to work to produce more things.
(21 sec.)
M:
D:
What can we do to end the child labor?
I don't think we can end it soon. First, I have to, People in developed country have to know
about this problem and they learn about this problem more.
④ I think so, too. First we should think and learn about developing country and what child labor is. And then
we have to take action. For example, we have to build school first and education is necessary.(22 sec.)
C:
【3】2年次6月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載。
C:生徒 C
スピーチテーマ:A Person I respect.
C: I'd like to talk about who is... my...uh...I...who I most respect is, I respect my father very much. Because he had
many difficulties in his life, and so he knew...uh...knows a lot of things and he talks...when I talking with him, he
tells me how to go through life or what human beings are. I really impressed with his story. I think he's clever and
great. That's why I respect him. Also I love him. when I got married with someone, I'd like him to be a father like
my father.(95語)
2年次6月のディスカッションでの発話内容抜粋とその時間。
D: 相手 C: 生徒 C
イタリック体の文字が生徒 C の発話
C: I think it made her tired living in imperial life, but... but also she thinks about Aiko samas's future, so it makes
her tired, too.(24 sec.)
D:
C:
Recently private thing is important for everyone, also for princess...
I think I don't want to be Masako sama or Aiko sama because I want to go abroad and speak... uh... English and
talk to other country's people. If I were Aiko sama, I will be limited everything by imperial for through life. (31 sec.)
【4】2年次12月の1分間の即興スピーチ内容をそのまま記載
C:生徒 C
スピーチテーマ:Elementary School
C: I'd like to talk about the memory of elementary school. Uh... in... fi-, fifth and sixth grade of elementary school, I
had a lot of friends. We played every day. For example, playing soccer, or... uh... dodge ball, or basketball. Or, we
acted... acted like interviewer. Sometimes, we ran and dashed in the school, so my teachers scold, scolded us. We were
so friendly. We entered the same high school. So, we had been friend, there, too... Now, we entered, uh, separeated
high school, but we have been friends now, too. (84語)
2年次12月のディベートの発話内容抜粋とその時間。(
)内は発話にかかった(単位秒)を表
す。発話にかかった時間とは、相手の発話終了時点から生徒が発話し終わった時点までを測定した
C:生徒 C(肯定側)
ディベート論題:We should abolish the school trip at Maibara SHS.
C:
C:
I believe that we should abolish the school trip at Maibara SHS because it... it is harmful for studying, because it
takes a lof time off during classes or studying. Also, it takes time to parepare for it. (18 sec.)
So I understand what you mean, but I remember that there was a big excitement for the school trip. I didn't...
couldn't concentrate on studying because I was really looking forward to have... having the school trip. So it's
harmful for studying. (20 sec.)
- 53 -
◆生徒 C における考察
(1)発話総語数
(2)発話総時間
(3)発話速度(words/min.)
(4)発話回数(=英文の数)
【1】 インタビュー・テスト
(1)80語
1 年次 (2)63秒
(3)76 words/min.
6月 (4)12 回
【2】 ディスカッション
1 年次
(1)108語
(2)73秒
(3)89 words/min.
3月 (4)12回
考
察(表現など)
テーマ:日常会話
accuracy, fluency とも高い値を示している。下線部④に
見られるように主語を修飾する高度な発話能力も備え
ている。一方でこの生徒のレベルから考えると語彙力
不足の感は否めない。
テーマ:Child Labor
全てのデータに著しい向上があるわけではない。しか
し発話文がより高度になってきている。語彙力に大き
な向上が見られ、討論形式やディベート形式の英語の
やりとりが十分できるようになった。
文法的にも正しい文が発話できるようになり、疑問詞
節などなかなかでてこない語句が自然と発話できるよ
うになった。
テーマ:A Person I Respect
【3】 即興スピーチ
(1)95語
2年次 (2)60秒
(3)95 words/min.
(4)6回
6月 ディスカッション
(1)66語
(2)55秒
(3)72 words/min.
(4)3回
語彙力、表現力ともに向上している。例えば、 go
through life, what human beings are, That's why ... などの
をほぼ使いこなせていることは評価に値する。また、
発話速度もかなり早いので、スピーチの中身が豊富で
聴く者を楽しませることができる。
テーマ:Princess Masako
使役動詞を使った S V O C の表現や完全ではないも
のの仮定法過去 If I were Aiko sama... の表現が用い
られている。また、ディスカッションやディベートの
ように考えながらの発話にも関わらず、発話速度はか
なりのレベルを維持することができた。
テーマ:Elementary School
【4】 即興スピーチ
(1)84語
2年次 (2)60秒
(3)84 words/min.
(4)10回
1月 ディベート
(1)77語
(2)38秒
(3)122 words/min.
(4)6回
小学校時代を思い出しながらの発話であったが、時制
がしっかりと使い分けられていた。多少の詰まり、誤
りはあったものの、過去のことは過去形で表現し、そ
の頃の友人とは今も友達である、の件りでは、現在完
了形を使っている。内容が具体的でわかりやすい。
テーマ:We should abolish the school trip at Maibara
SHS.
OCII の授業で学んだ定番表現を使いこなしている。
例えば、I believe that (topic), I understand what
you mean, but ... である。また、harmful, concentrate on,
などの語彙も淀みなく使っている。最後に自分の意見
を念押しする論法もしっかり身につけている。発話速
度は、かなりのスピードなので、発音の正確さやわか
りやすく話すことが今後の課題である。
5 生徒 A(low level), B(intermediate),C(high level)のグラフを比較研究
生徒A,B,Cの発話速度の変化
140
120
100
W.P.M
生徒A
生徒B
生徒C
80
60
40
20
0
1年次6月
1年次3月
2年次6月
2年次6月
年月
- 54 -
2年次12月
2年次12月
発話速度に関しては、ディスカッション(1 年次3月・2年次6月2つ目)やディベート(2年次12
月2つ目)において、考えながら話す必要があるので、発話速度は落ちるが、総体的にいうと、徐々にでは
あるが、発話速度は伸びていると言える。また、総じて語彙力や表現も豊かになっていることを考慮すると、
1年次からのスピーチ、プレゼンテーション、ディスカッションやディベートを通じたコミュニカティブな
取り組みが「話す」能力に与えている効果は大きいと考えられる。
下の3つのグラフは、各生徒 A・B・C における発話速度と外部模試偏差値の比較である。外部模試とは
進研模試の総合学力記述模試であり、(1)リスニング(2)文法・語法(3)長文読解(4)表現力を総合して出題され
ているので、英語の総合力(
「話す」能力を除く)として見ることができると判断した。よって、英語の総
合力と発話速度の相関関係を見てみたい。
生徒Aの発話速度と外部模試偏差値の比較
70
60
50
40 偏
差
30 値
20
10
0
100
80
発
話
速
度
60
40
20
0
1年次6月
1年次3月
2年次6月
2年次6月
発話速度
偏差値
2年次12月 2年次12月
年月
生徒Bの発話速度と外部模試偏差値の比較
100
80
発
話
速
度
60
40
20
0
1年次6月
1年次3月
2年次6月
2年次6月
90
80
70
60
50 偏
差
40 値
30
20
10
0
発話速度
偏差値
80
78
76
74 偏
72 差
70 値
68
66
64
発話速度
偏差値
2年次12月 2年次12月
年月
生徒Cの発話速度と外部模試偏差値の比較
140
120
100
発
話
速
度
80
60
40
20
0
1年次6月
1年次3月
2年次6月
2年次6月
2年次12月 2年次12月
年月
- 55 -
これらのグラフより、生徒の発話速度と外部模試偏差値が必ずしも相関しているとは、完全には言い切れ
ないが、共通して言えることは、1年次6月から1年次3月までの9ヶ月間でどの生徒も発話速度と外部模
試偏差値の両方において一定の伸びを見せているところに着目したい。また、データとしては表れないが、
多くの生徒が徐々に発話して伝えようとする積極的な姿勢を見せるようになることはぜひ特記したい。1年
次の入学当時から、全英語科目において英語による少人数制授業の実施、英語合宿(年4回)、レシテーシ
ョンコンテスト、スピーチコンテストなど英語コース生徒には、大きな負荷がかかる。と同時に生徒は挑戦
し、やり遂げることにより達成感を感じ、また教師も積極的に関わり、激励しきっちりと評価していく。そ
のようなことがまた次への大きなモチベーションとなっている。うまくいかない生徒はうまくいった友人を
見て、次こそがんばろうとする。全員に負荷をかけることは英語教師全員に負荷がかかり大変ではあるが、
1年次のこのような取り組み如何で、生徒のモチベーションをあげることになるのであれば、たやすいこと
ではないか。1年次にどれだけ多くの負荷をかけ、どれだけモチベーションをあげるかが大切であると考え
る。
⑤ 4技能を総合的に伸ばす授業形態としてのディベートの指導
1.ディベートのシラバス
ディベートは4つの技能のすべてを伸ばすために大変有効な指導法として、本校が重点的に取り組んだ授
業形態である。個々の年度・学年によってその指導の方法は若干異なるが、シラバスとしておおよそ次のよ
うな考え方で取り組んだ。
1年次(入門期)-1) ディベートの意義や方法を理解させる。
・言語操作能力の大切さ
・相手の意見を聞くことの大切さ
・多角的な思考力の大切さ
・論理的思考の大切さ
・情報処理能力の大切さ
・調査能力の大切さ
2) 日本語によるディベートの導入
・テーマは、少し調査を要するが、生徒が関心を持てるもの
例)「見合い結婚と恋愛結婚」「留学をするなら高校時代か大学時代か」
・肯定側・否定側に分けて、立論する理由を考えさせる。
・相手側の立論に対する反駁の訓練(反駁シートで正しい観点かどうかを書かせる)
・グループでディベート
・グループディベートの全体発表
・クラス全体を肯定側と否定側に分けて全体ディベート
3) ディベートに必要な英語表現の定着
・立論や反駁に必要な表現を教える。
例)We're going to argue that love marriage is better than arranged marriage. The first
reason is that.... / We see your point, but..
・定型表現を使って、簡単なディベート
テーマは生徒の考えの範囲でできる簡単なもの
例)「週休2日は週休1日よりよい」「ペットとして、犬は猫よりよい」
・テーマを論じるのに必要な語句は生徒自身に調べさせる。
・時間をかけて指導する。
1年次(前半)- 英語によるディベートの基礎作り(1)
・学校生活・家庭生活に関わるテーマで肯定側・否定側にわけて、その理由を英語で
書かせる訓練
「学校には給食があるほうがよい」
「共学のほうがよい」
「制服があった方がよい」
「一人っ子のほうが兄弟があるよりよい」
「親は共稼ぎの方がよい」
・ペアで互いに理由を読みあって伝える練習(反論は十分にできなくてもよい)
1年次(後半)- 英語によるディベートの基礎作り(2)
- 56 -
・(1)の書かせる訓練を続け、ペアの相手に意見を伝えるときに、できるだけ書い
たものから目を上げて言う練習
・相手の意見を聞いて、その反論を書く練習
・書いた反論についても、できるだけ書いたものから目を上げて言う練習
・グループディベート、クラス全体のディベートを行う。その際にも、ペアでの練習
の時に書いたものを、できるだけ書いたものから目を上げて言う。
2年次(前半)- 即興で意見を述べられる準備の訓練(1)
・テーマはあまり難しくせず、書いたものを見ないで意見を述べる練習。
例)「映画を見るのは映画館の方がビデオよりよい」
「通勤には電車の方が車よりよ
い」
「忙しくても給料の高い仕事の方が、暇でも給料の安い仕事よりよい」
・反論はできるだけ即興で言う練習。
2年次(後半)- 即興で意見を述べられる準備の訓練(2)
・テーマを少し難しくして、キーワードのみを書いておいて、それを見ながら意見を
言う練習
例)「都会の生活の方が田舎の生活よりよい」
「学校年度は9月に始める方が4月に
始めるよりよい」「障害を持った子は障害児学校に行く方が普通校に行くより
よい」「学校の授業はすべて選択制にする方がよい」
・相手の言うことをメモして、反論を即興で言う練習。
・グループディベート、クラス全体のディベートを行う。その際にも、キーワードや
メモを見ながら意見や反論を言わせる。
3年次(前半)- 社会的・国際的なテーマについて実際のディベートの訓練(1)
・テーマを社会的・国際的なものにして、事前に調査をさせて、それをもとに意見を
書くことから始める。
例)「死刑制度はあるほうがよい」「陪審員制度があるほうがよい」
「環境ルールは
途上国が作るべきだ」「英語は選択科目にすべきだ」
「大学入試センター試験に
リスニングを導入すべきだ」
「核兵器は廃止すべきでない」
・書いたものを見ないで、ペアやグループでディベートをする。
・全体でのディベートは全く何も見ないで行う。
3年次(後半)- 社会的・国際的なテーマについて実際のディベートの訓練(2)
・事前に調査をさせて、それをもとにキーワードや重要な情報のみのメモを作って、
自分の言うべきことを考えさせる(全文を書かせない)
。
例)
「外国人はある程度権利を奪われても仕方ない」
「英語を第二公用語とすべきだ」
「英語教育は小学校から導入すべきだ」「大学入試を廃してすべて内申書で合否
を決めるべきだ」
「代理母の制度を認めるべきだ」
「脳死は人の死と認めるべきだ」
・メモだけで、ペアやグループでディベートをする。
・全体でのディベートをメモだけを頼りに行う。
このように段階を経て、まずは書くことから始め辛抱強く指導する。その際、書いた英語はできる限り
正しく直してやり、ディベート後も定期テストやスピーキングテストで再度、書かせたり言わせたりする。
テーマ的になるべく似たものを続けることによって、使用できる語彙が継続するので定着はよくなる。
ディベート指導において大切なことは、早急に結果を求めないということ、形式にこだわるのではなく、
英語による総合力を伸ばすという目的を常に持って、テーマにふさわしい言語表現や語彙を定着させるこ
とを主眼に行うことである。
2.Practical Communication(実践コミュニケーション)における様々な指導方法
1) 科目の概念および目標
Practical Communication(以下PCとする)は本校独自の科目として1年生で1単位、設定して
いる。2年生、3年生で行う本格的な Debate Activity の準備段階ととらえ、英語による自己表現
を積極的にしようとする姿勢を養う。また、与えられた題材について、情報収集したり、ペアデ
- 57 -
ィスカッション、グループディスカッション、ペアディベート、 グループディベートの中で意
見交換をしたりするなかで、自らの考えを論理的に構築する力も養う。
2) 授業の形態
日本人教員2名、ALT2名で、40名全体を指導する場合と、20名ずつの分割で指導する
場合とがある。
3) 取り組みの内容
(1)Self Introduction(4月第1回目の授業)
クラスの前で1分程度、自分のことについて発表させる。
(2)Pronunciation Practice (4月)
英語の正しい発音の仕方(基礎編)(岩村圭南著・研究社)に沿って、発音の訓練を機械的に
行う。また、(リズム・イントネーション編)を用いて、語句・文レベルでの単語の発音の変化
を解説しながら、発音の訓練をする。
(3)Dabate の導入(5~6月)
1 日本語で討議
「ペットとして飼うにはイヌがよいかネコがよいか」
1.1 グループで、どちらがよいか話し合わせる。
1.2 ディベートの手順
犬派の1つ目の理由 → 猫派からの反駁 → 犬派からの反駁 …
→ 猫派の1つ目の理由 → 犬派からの反駁 → 猫派からの反駁 …
(1つの理由について議論をした後、次に移り、同様に繰り返す。)
2 英語でのディベートの導入
"Country Life or Urban Life?"
2.1 それぞれの利点、欠点を、英語で出させ、正しい文に直して板書していく。ただし、生徒の
文法的な間違いなどには言及しないようにして、活発に意見を出せる雰囲気を作る。
2.2 板書した意見の中で、理論の表裏となっているものを結びつけて解説し、論理的思考を養う。
また、補足的に他の意見を紹介する。
3.3 トピックうち、どちらかの立場を選ばせ、エッセイを書かせる。その際パラグラフライティ
ングの指導をする。
(4)英語によるスピーチの書き方(7月から8月)
1 前年までの優秀なスピーチのビデオを複数見せ、スピーチの原稿作成までの手順を説明する。
手順は次の通り。
1. 自分の身の回りで気になっていること、強く主張したいこと、新聞やニュースから強く感じ
ることなどをいくつがあげてみる。
2. 1.の中から1つ選び、主張したいこと、疑問に思うこと、調べてみたいことなどを書き上げ
る。(ブレインストーム)
3. 2.の中で調べておくべき事を調べたり、他人に聞いたりする。
4. 段落構成を考える。導入、主張、実例、展開、まとめに何を書くかを決める。
5. 英語で書く。(日本語で書かない。)どうしても英語で表現できない場合には、日本語の部
分があっても良い。
2 (授業外の取り組み)英語科の全教員が6~7名ずつ担当して、原稿作成から発表までの指
導を個別に行う。
3 英語コース1年生スピーチコンテストを行い、上位6位までを表彰する。さらに、校内スピ
ーチコンテストに出場する上位15名を選出する。
(5)英語でのディベート(9月~2月)
Impact TOPICS (Longman Richard R. Day, Junko Yamanaka)を使用する。
・指導手順
1. 教科書で語いや表現、意見を学習し、それらを使った意見交換をさせる。
2. トピックを提示して自分の意見を書かせる。
3. ペアで意見を交換させ、自分の意見を補強させる。
4. 2人対2人のグループディベートに取り組ませる。
5. その後、意見を挙手で発表させ、板書する。その際、英文の間違いは直して、書く。
Topic 1 The Guy with Green Hair - 高校の制服について
Topic 2 Earning Money
- 仕事と趣味(ライフスタイル)
Topic 3 Please let me smoke
- 喫煙と禁煙
Topic 4 I can't stop (Addiction) - のめり込むと危険なもの
- 58 -
Topic 5 Who pays?
-
デートではどちらがお金を出すべきか
資料1 Topic 1 の課題
1-5 PC
Weekend Assignment
Topic: Maibara High school should abolish school uniform
Please write more than 2 sentences for each point. The beginnings of the 1st sentences are
written below. Please finish the sentences with your own ideas. In the 2nd sentences, you have to
explain each point. You can write an example, statistics, or a fact, and so on to prove your
argument or statement.
Topic: Cats are better than dogs as pets.
Positive side: The 1st point is that keeping cats is easier than keeping dogs. If you keep a dog, you have
to walk it almost everyday, but if you keep a cat, you don’t have to be worried about it.
Positive side - The 1st point is that...
The 2nd point is that... The 3rd point is that...
Negative side- The 1st point is that...
The 2nd point is that... The 3rd point is that...
資料2 手順2(Topic 2)
1-5 PC Chapter 2 Earning Money
Here are two stories of the ways of life. Read them and answer the following questions in English. If you
find the words that you don’t know, please look them up in your dictionary and make “New
Word-List” in your notebook.
Isogashio: I work for a newspaper company. As you can guess, work here is quite hard. I work
almost 12 hours a day and very often on weekends, too. When something serious happens, I go there,
no matter when it is. I often bring my work home. My salary is 500,000 yen, and I believe it is an
important job. I find it very enjoyable, so I don't complain, but I sometimes feel like having a totally
different lifestyle: enjoying myself with my hobbies and with my family. You know, my hobbies are
playing the guitar and mountaineering. I enjoyed them a lot when I was in college, but now I have
little time to practice the guitar and no time at all for mountain climbing. But I can save these activities
for my retired years, when I have a lot of money to spend for my family and for myself.
Himanosuke: I work as an public office worker. I admit that I am not a capable public servant
and I have already given up being promoted to a higher position. My work is easy. I clean the office,
open the envelopes and give them to each department, and writing two or three official letters each day.
I get 200,000 yen a month. Nobody seems to expect much of me, and I don't think it so bad. I come
home exactly at 5.30. After dinner with my family I have plenty of time to play with my children and to
enjoy painting pictures. Believe it or not, I am something of a painter. On Sundays I always go out to
paint. It is so nice to have this hobby. Of course I have no intention to be a professional painter or to
sell my paintings, but I can say I'm living to paint. I hope I will be able to live this way until I die.
Q1
Q2
Q3
Q4
Q5
What are the good things about Isogashio's life?
What are the bad things about Isogashio's life?
What are the good things about Himanosuke's life?
What are the good things about Himanosuke's life?
Which way of life do you think is better? And why?
4) 取り組みの成果
・生徒がそれぞれのトピックについて、自分の意見を持つことができた。
・物事には様々な観点があるということを、色々な意見を提示することで知らせることができた。
・学んだ英語を使い、自分の意見を表現する力を伸ばせた。
・毎回必ず課題として意見を書かせていたので、まとまりのある英文を書く力がついた。
・生徒同士が英語で会話することが自然に定着した。
・即興で反駁する中で、自分の言いたいことがうまく言えないストレスが、もっと英語を習得し
たい、という意欲の原動力となり、多くの生徒が授業の後で授業者に質問をしにくるようにな
った。
5) 課題
・多くても週1回しかない授業で、継続した指導が困難であった。また、議論を深めるには、
- 59 -
意見を書かせる活動は自宅学習に任せていたが、生徒によっては出来ればALTの添削を授業
の前にできるとよかった。
3.OCCにおけるディベート指導
1) 指導の目標
社会的な課題について情報収集し、それらを統合して自らの意見を構築し発表する力を養う。また、
他人意見に対しても即座に同意したり反論したりする力を養う。
2) 指導方法
DEBATING THE ISSUES - Opposing Views on Value Topics(Machmillan Languagehouse)を主に使用した。
授業は全てALTとのT.Tで英語で行う。1つのトピックについて2~3時限で取り扱う。
(1) 予習として、テキストにある英文や資料を読ませて問題に答えさせておく。必要な場合には英字
新聞や英文エッセイなどでインプット材料を補強する。
(2) 授業でテキストの問題の解答を確認しながら、語いの確認、トピックに対する賛成・反対の意見
の解説などを行う。教科書に紹介されている意見を参考にしながら、ペア・ディベートをさせる。
(3) ペア・ディベートを受けて、意見を発表させる。表現上の誤りは授業者がその場で修正して復唱
し、全体に提供する。
(4) 生徒の出した意見に、他の生徒からの反駁を受け付ける。次にその反駁に対する反駁を受付ける。
適宜、きちんと反駁出来ているかどうかのコメントや解説、助言をし、議論の展開方法を示す。
これをいくつかの意見について繰り返す。
(5) ジャッジ付きのディベートをさせる。事前に情報収集をさせたり、自分の意見をまとめてこさ
せる。3人のグループで賛成・反対・ジャッジの役割を決め、10分間のディベートをさせる。
全員がこの3つの役割全てを網羅するように3回行う。ジャッジはどちらが優勢であったかを判
定する。場合によってはクラスを3つの役割に分けてディベートをさせることもある。
(6) トピックに賛成の立場と反対の立場の両方でエッセイを書かせる。
3) 利用したディベートのトピック
(1) Should English be excluded as an entrance exam subject.
アメリカと日本の高等学校教育、入試制度の違いをALTに書いてもらい、それをもとに相互の
メリット・デメリットを出させてディベートさせる。
(2) Why do you go to college?
大学教育制や入試制度をどのように変えるべきかディベートさせる。
(3) Who rebuilt Iraq?
「イラクの復興は誰がすべきか」についての英文の英語要約を宿題にして、ALTが添削する。
生徒をアメリカ、国連、イラク国民などの立場に立たせてディベートさせる。
(4) SARS - All travel from countires with SARS should be banned.
SARS についての新聞記事を元に上記のトピックでディベートさせる。
(5) Should Japan make English the second official language?
「日本における英語第二公用語論」についての英文を読ませ、ディベートさせる。
(6) Sould we have mandatory voting?
Voter trunouts について、各自調べさせておき、気付いたことを発表させる。その後、ペアディベ
ートさせる。
(7) North Korea
核開発をやめさせる方法についてペアディベート。
(8) Women's late marriage and declining birthrate
トピックに関する新聞記事(日本語)を読ませ、その原因を考えさせておき、全体で意見を出さ
せる。また、Women should stay home after they have a baby until the (youngest)child becomes six years old.
のトピックでディベートさせる。
(9) A traditional or trendy lifestyle?
テキストを使用。茶髪やピアス着用などの是非についてディベート
(10) International Relationship
"What qualities are important as a husband?"でグループディスカッションをさせる。
- 60 -
(11)Corporal Punishment
テキストを使用。しつけと体罰、虐待についてディスカッションさせる。
(12) Abortion - Right to Live or Right to Choose
テキストを使用。
(13) Euthanasia - Right to Die or Duty to Live
テキストを使用。
(14) Life imprisonment or Death Penalty?
テキストを使用。We should abolish death penalty. のトピックでペア・ディベートさせた後、グルー
プディベートさせる。
(15) Jury System
テキストを使用。ALTの作った裁判の事例を元にした英文について、自分が陪審委員となった
場合、その刑についてどう思うかを議論させる。
(16) Organ Transplantation
人と人との臓器移植だけでなく、動物を使った臓器移植や、そのために動物が飼育されることな
どについてのディベート。また、臓器提供に関わってドナー登録についても議論する。
(17) Surrogate Mothers
"mother"の定義を確認し、代理母制度について解説する。代理母制度についての是非を、実際の新
聞記事を使い、ディスカッションさせる。
4) 指導の際の留意点
・英字新聞の記事やエッセイ、時には ALT 作、自作の英文でインプットの量を増やした。
・インプットの際、正確な表現を身につけさせるため、必要があれば語いの発音練習や日本語による
丁寧な解説も行った。語句の難易度にかかわらず、ディベートやディスカッションで必要になると
思われるものについて取り上げた。
・1つのトピックに関して多面的な捉え方、考え方を紹介し、どちらの側の意見も言えるように指導し
た。
・ペア・ディベートの際、授業者は期間巡視するが、できるだけ生徒の使う英語を聞き、修正を加え
たり、補足したりして、ディベートが深まるように補助した。
・自分の意見を準備して行うディベートと、その場で考えて発表しなければならないものの両方を適
宜取り入れた。特に、相手に反駁する際には、即興でさせることが多かった。
・定期考査では、トピックに関する Knowledge Questions 以外に、ある意見に対して賛成の意見を書か
せたり反対の意見を書かせたり、エッセイを書かせる問題も出題した。
(例)Knowledge Questions
[1]Answer the following questions about things we have studied. (2 points each)
1 .Name two countries that have a lot of SARS patients.
2. What is one country that has English as a second official language?
3. What do American universities use to choose who will enter the university? (write two things).
5 .About what percentage of Japanese people in Shiga voted in the last local elections?
a. 10-20%
b.30-40%
c. 50-70%
d. 80-100%
6. What is the "lingua franca"? Explain in English?
(例)Writing Section
[1] Write one reason for each topic. All your reasons should be affirmative. Write more than two sentences
for each reason. (5 points each.)
1. People who live in countries with SARS should be free to travel if they do not seem sick.
2. The Japanese school system is better than the American school system.
3. English should be the official language of Japan.
[2] Write three two advantages and two disadvantages of the jury system.(20)
- 61 -
5) 生徒の評価
・ 定期考査で意見を書かせた場合はすべて、Accuracy, Logic, Challenge の3つの観点で評価した。
(Accuracy: 英文の正確さ Logic: 説得力があるか、論理的であるか Challenge: 授業で学んだ語彙・
表現を多少のミスはあっても積極的に使って表現しようとしているか。
)
・ 授業中には、予習として課題文を読み、自分の意見を書けているかどうか、また、それらを他人に
伝えようとしているかどうかを評価した。また、グループディベートでの発言の回数を評価した。
・ スピーキング能力については、年に2回行っているスピーキングテストで、試験官との即興ディベ
ートや生徒のグループディベートで測った。
6) 3年次でのディベートの授業の効果
・ 時事英語、長文に対する慣れができた。
・ 常にディベートすることを目標に英文を読んだり、授業者の英語による解説を聞いたり、自分の意
見を書いたりしたので、表現の定着率が良かった。未知の語彙を5~10与えても、自分の意見を
述べるためにそれらを頻繁に使おうとする。また、授業者が解説に使った表現を自分の意見を述べ
る際に使用するなど、効率のよい学習ができた。
・ エッセイライティングを各トピックごとにさせるので、自分の意見を論理的に述べる訓練ができた。
・ 社会問題に常に触れることで、ニュースや新聞に関心を寄せ、毎日触れるようになった。また、物
事の多面性を知り、視野を広げる一助となった。
・ 反駁する際に、瞬時に自分の意見をまとめて述べなければならないので、英語に訳せない日本語を、
知っている言葉で paraphrase するようになった。
7) 改善すべき課題
・電子辞書を使う生徒は、相手に解らないような語句を使うことがあり。コミュニケーションに支障
をきたす。電子辞書の使用については制約が必要であると思われる。
・授業中のペア・ディベートやグループディベートの評価をどのようにするべきか、さらに研究を続
けていかなければならない。
8) まとめ
ディベートは、4技能を総合的に伸ばしながら、Content-based の授業が組み立てられるという点
で、有効な授業方法である。「意見を述べる」というアウトプットを強く意識して授業を行うので、
インプットから、語彙の理解、定着のスムーズな流れができる。その中に4技能を使う活動を取り
入れることで、それらを総合的に伸ばすことができる。また、大学入試を控えた3年生に、社会問
題や時事問題に取り組ませ、それらの多面性を学ばせられる点でも大きなメリットがある。
生徒の評価についてはまだ確立していない部分があるので、さらに研究を続けたい。
4.OCⅡにおけるディベート指導
1) 目標
①特定のテーマに基づいて英語で情報を収集し、それに関して自分の意見を構築し、英語で意見発表を
行うことを通じて、英語における情報収集力、表現力、発表の能力を総合的に高める。
②対話やディベートをする相手の意見をよく聞いて、即興的に自分の感想や質問、反論などを述べる能
力をつける。
③既習の表現、語彙、文法事項を言語材料にして、「話す」「
・ 書く」活動に積極的に生かしていく。
④議論の勝ち負けのディベートではなく、コミュニケーション・スキルとしてのディベートを身につけ
る。また自分の意見と関係なく肯定側または否定側に立つことにより、物事を多角的に捉え、論理的
な表現力を養う。
2) 授業概要
OCIIは、平成15年度入学生より新課程になったことを受けた2年生英語コースのみの科目である。授
業形態は生徒40名を2クラスに分け、日本人教師一人、ALT 一人ずつの分割授業で行っている。教科
書 BirdLand(文英堂)を用いて英語による意見構築、質の高い語彙や表現を用いた発信型の英語表現能
- 62 -
力を学び、それらを実践的に活用している。また、教科書のトピックだけでなく身近なテーマやユニーク
な論題を用いてのプレゼンテーション、ディスカッション、ディベートを効果的に授業に導入している。
1単位であるため、プレゼンテーションの準備などは放課後を活用している。授業の始めには、1分間の
即興スピーチを毎回行っている(6~12月まで)。その場でトピックを与え、まずペアで各1分間練習
させた後、1~2人生徒を選び、みんなの前で即興のスピーチをさせ、英語の流暢さを高める練習を入れ
ていくことで英語表現能力の向上を目指している。前期(4月~10月上旬)は、プレゼンテーション、
ディスカッションを中心に活動し、後期(10月上旬~3月)は、教育的な主眼から、ディベートを本格
的に取り入れ、相手の話を聴いて反駁したり、自分の意見とは関係なく肯定側また否定側に立つことによ
り、客観的なものの見方を養い、より論理的な思考や表現方法を学び、3年生のOCIIへの足がかりにする。
3) 本年度の流れ
<1年次 英語カリキュラム> ※
は、英語コースのみの学校設定科目
英語I(4単位)
OCI(2単位)
PC*(1単位)
↓
注意:PC*=Practical Communication
<本年度 英語カリキュラム>
英語II(5単位) ライティング
(2単位) OCII(1単位)
↓
<3年次 英語カリキュラム>
リーディング
(3単位)ライティング
(2単位) OCII(2単位)
本年度は、1年次に履修した科目、特に学校設定科目PCにおける「話す」技能の運用能力を高める指導
を受けて、OCIIにおいては、プレゼンテーション、ディスカッションに加え、ディベートといったより高
度なコミュニケーション活動を取り入れ、生徒の自己表現の意欲と能力を育成する。
4) 年間指導報告(概要)
学期 月
主 な 取 り 組 み
4
(1)プレゼンテーション準備と発表
前 5
(2)ディスカッション準備と発表
6
(3)インプロンチュ・スピーチの取り組み (2)ディスカッション (4)第1回スピーキングテスト
7
↓
↓
期 8
9
(3)インプロンチュ・スピーチ
(5)新ALTのintroduction、NZ情報収集とプレゼンテーション
10
↓
(6)ディベート(入門、表現、反駁)
後 11
↓
↓・反駁練習、段階的な表現のインプット
12
↓
↓・(7)第2回スピーキングテスト
1
(8)ディベート(米原高校形式 18分)の実施
期 2
↓(9)リスニング、ライティングテスト
3
(10)ディベート大会
(1)4月-
・プレゼンテーションを通して情報収集力、表現力、発表の能力を総合的に高めた。
・Activity 1-5人のグループに分け,米原高校についてのプレゼンテーションを行う。
・準備から発表までの推移を書いたフォーマットを生徒に配布し説明する。
Activity 2 -グループに分かれて英語でプレゼンテーションの準備をさせる。
・ブレインストーミングを行い,発表の本題を決めさせ,生徒各自の役割分担を決めさせ
る。
Activity 3 -グループで調べたことを皆の前で英語でプレゼンテーションを行う。
・各グループのプレゼンテーションの後に任意に生徒を2人選び、その発表に関する感想
と発表したグループに対する質問を英語でさせる。
- 63 -
●成果と課題
①テーマが生徒に一番身近な「学校」であったということもあり,発表する生徒も発表を聞く生徒も興
味を持って活動に参加していた。
②発表に際し、図や表などのビジュアル・エイドを用いて説明をするなどの工夫ができた。
③原稿を読まないように指導していたため、多くの生徒がメモを片手に、できるだけ自分の言葉で英語
表現ができた。しかし、何人かの生徒は準備不足からか原稿を読むに終わっていたのが非常に残念で
ある。
④1年生から各英語科目や総合学習の中で何度もプレゼンテーションをする機会があったことが総じて、
プレゼンテーションの準備だけでなく発表においても質の高いプレゼンテーションになった。
(2)5月~7月
・ディスカッションを通して生徒の社会に対する関心を引き出し、即興的に自分の感想や質問、反論
などを述べる能力をつける。
Activity 1 -テーマ:bad manners
・ALT が日本で見かけた悪いマナーについて生徒に問題提起する。
・生徒を4人のグループに分け、日本人の悪いマナーについて英語で話し合いをさせ、
5つのリストを作らせる。
・新たなグループを作り、前のグループで上げた悪いマナーのリストを発表し合う。
・最終的に3つの悪いマナーをリストアップし、それについての問題解決を考える。
・グループで代表を決め、話し合った内容を壇上で発表する。
Activity 2 -テーマ:food
・課題として、18種類の食料から無人島へ持っていける食料を4つ決め,それらを選
んだ理由を英語で書いてくるように指示する。
・5人グループに分け、それぞれが意見を出し合い、最終的に4つの食料に絞らせる。
・各グループの代表が、ディスカッションの内容を簡単に説明し、グループで決めた結
論を発表する。
Activity 3 -テーマ:daily lives
・ミシガンからの交換留学生2人、ALT 2人を交え、日本と外国との日常生活について
話し合う。
・グループに分かれ、日常生活についてのいくつかの質問に、英語で答えていく。
・最後に、留学生と各グループの生徒代表がグループで話し合った内容を発表する。
●成果と課題
①小グループに分けることにより、一人一人が自覚を持って討論を進めていこうとする姿勢がついた。
②グループ内の発言をしていない生徒に意見を促す生徒も出てきて、ディスカッションが円滑に運ぶよ
うになった。
③語彙・表現がまだまだ少なく、生徒たちは言いたいことを英語でなかなか伝えられないフラストレー
ションを感じているようだった。
④語彙・表現の指導を各活動と連動させる方がよかった。
(3)6月~12月
インプロンプチュ・スピーチ
Activity 1 - OC Ⅱのみでなく、英語Ⅱの授業を用いて、週4回以上それぞれの授業の約5分間をスピ
ーチ練習に使った。短時間の活動ではあるが、継続的に行われた。
・授業毎時にスピーチ・テーマを与え、各自1分間で考える。
・ペアでそのテーマについて1分間交互にスピーチを行う。
・無作為に2名の生徒を選び、クラスの前でスピーチをさせる。
・フィードバックとして、生徒のスピーチを例に良い点、生徒が留意しなければならない点を
説明し指導する。
(スピーチテーマの例)
- 64 -
-
What I did last weekend / yesterday / last night
My horrible / wonderful experience
The place I like to go to for ~ (shopping, dating など)
What I am going to do this weekend
My favorite ~
The recent news that made me ~ (sad, happy)
What I know about ~
What I learned from ~ (SELHi 講演、学校行事)
●成果と課題
①最初は、インプロンプチュ・スピーチでは、自分の言いたいことがうまく言えないことを理由に嫌がる
生徒が多かったが、次第に慣れ、自分たちなりに1分間で話すことをまとめられるようになった。
②インプロンプチュ・スピーチの中では生徒は自分たちの使い慣れている語彙・表現を多く用いるため,
依然として文法の授業や英語Ⅱなどで新しく学んだ語彙・表現が生かされなかったケースが多かった。
③インプットした語彙・表現をスピーチの中にアクティブボキャブラリーとして用いて、語彙力・表現力
を向上させていくことがこれからの課題である。
(4)6月
スピーキングテストの実施(別項報告)
(5)9月
New Zealand からの新しい ALT の話を聞き、文化的知識を取り入れてディスカッションする。
Activity 1 - ALT が用意したハンドアウトの質問に、ALT の話を聞いて答える。
Activity 2 -前回の授業で聞いた ALT の話と New Zealand についての資料を参考に、グループごと
に担当する事柄について、要約しプレゼンテーションをする。
●成果と課題
① New Zealand 独特の文化に触れることで生徒の異文化への関心が向上した。
②プレゼンテーションに関しては、多くの情報を要約しパラフレーズする力が身についた。
(6)10月から11月
Activity 1-ディベート入門として、高校生によるディベート甲子園における競技ディベートビデオ
を、ディベートの形式や概要を掴むために鑑賞させた。
・
(
)付きのフローチャートを作成し、生徒に鑑賞しながら書き込ませた。
・本校指導教員、平安女学院大学の中邑光男教授にディベートの楽しみ方について生徒に話し
ていただいた。(下記参考)
(指導教員からの提案)
競技ディベートはその性質上勝ち負けを争う面が強いため、勝ち負けにあまり重点をおかず、その
過程で論理的思考や表現方法、またユーモアなどを身につけながらコミュニケーション・スキルを学
ぶという視点を大切にすることを本校指導教員である平安女学院大学中邑光男教授にアドバイスいただ
いた。また中邑教授は次の3点を提案された。
①論題は英語との関わり合いを考えて、英語でしやすいものを選ぶ。
②英語で話したいことと実際に話せることとのギャップより生まれるフラストレーションにより進
歩が生まれるので、生徒に負荷をかけるべきだ。
③定番表現を教材化し、ディベート練習で積極的に使うように指導する。
Activity 2 -"I don't think so, because........"ゲーム
・4人ずつのグループに分かれ、簡単な論題を与える。
例)Doing a sport is is good for your health.
- 65 -
Appearance is important.
・話す順番を決め、最初の生徒が論題を書くまたは言う。
・次のものは必ず、"I don't think so,"または"I disagree."で始め、続けて理由を付け加える。
例)A: I think doing a sport is good for your health.
B: I don't think so, because some sports such as boxing or car racing is dangerous.
C: I disagree with you because it is true that doing some sport is good.
My grandmother says she is healthy because she plays ground golf.
D: I don't think so. Doing too much exercise is not good for your health, but we don't
know how much we should do or shouldn't.
Activity 3 -論題"All English teachers at Maibara SHS should be English native speakers"を用いた反駁練習
・定番表現のインプット
・4人グループで活動
・まず、各自メリットとデメリットを3つずつ考える。
・グループとしてのメリットとデメリットを相談して決める。
・グループを2つに分けてペアを作り、2対2の反駁練習をする。
・対戦相手を代えて反駁練習(10分)を繰り返す。
Activity 4 -テーマ"Rebuttals VS. Counter-Arguments - What is the difference?"とし、リバトルとカウンタ
ー・アーギュメントの違いについて学び、正しい反駁の練習を実施した。
2つの定義は次のように設定した
Rebuttal = To give evidence against your opponent's idea or supporting data.
Counter-argument = To give a different idea against your opponent's idea.
・いくつかのトピックを与え、反駁の練習を書面にて実施する。
例)- I believe that Japanese students should stop wearing uniforms to school, because 75% of
American students don't like school uniforms.
- Tokyo is a better city than Osaka, because it is bigger and has Disneyland.
・添削によるフィードバックと反駁における良い例と悪い例を教材化し、説明を加える。
●課題と成果
① 初めは、自分の意見に関わらず、肯定側または否定側に立って反駁練習をすることに抵抗があったよ
うだが、次第にタスクとして捉えられるようになってきた。
② 定番表現を教材化し、音読練習などをすることで、定番表現と反駁練習がリンクできるようになって
きた。
③ 相手の意見に対し、別の話題で相手を不利に持ち込もうとする技法(カウンター・アーギュメント)
を使う生徒が多い。相手の意見をよく聞いてそのことについて反駁するように繰り返し指導する必要
がある。
(7)12月上旬
第2回スピーキングテストの実施
①6月と12月とを比較検討した。
3名の生徒(発話レベル上、中、下)の発話をテープ興しして資料に載せた。
以下の項目について検討した。
検討項目:#1 発話語数
#2 発話速度
#3 定番表現がアウトプットできているか否か
●成果と課題
①検討項目#1、#2において向上した
②上記①の結果は#3の定番表現を使った場合、より顕著であり、定番表現を使うことでより円滑に発
話ができたと考えられる。
- 66 -
(8)1月から2月
ディベート(米原高校形式 18分)の実施
Maibara SHS Debate Format
Affirmative Opening Statement
3 Minutes
Negative Opening Statement
3 Minutes
(1 minute break)
Negative Rebuttal
3 Minutes
Affirmative Rebuttal
3 Minutes
(1 minute break)
Affirmative Closing Statement
2 Minutes
Negative Closing Statement
2 Minutes
total
18 Minutes
(補足説明)限られた時間の中でより多くの生徒にディベートの機会を与えるため、 このフォーマット
を作成した。
Activity 1 -論題"In Japan, people have happier lives after marriage."
・4人グループで活動する(ディベート大会も同じメンバー)
。
・上記フォーマットを考慮し、ディベートの立論を考える。
・立論を指示するデータをインターネットを利用して探す。
・肯定側、否定側どちらになってもよいように準備する。
・発言は4人がバランスよく分担し、ディベート時も助け合う。
・実際にフォーマットに従って、ディベート練習を実施する。
●成果と課題
① 初めてにしては、どのグループも積極的に発言できた。
② 相手の意見が聞き取りにくい場合が多々あるので、Cross-Examinationの時間を設けた方がよい。
③ グループによっては、発言がある特定の生徒に偏った傾向が見られたので、バランスのいい発言を促
す必要がある。
④ 設定時間が大幅に余るグループや時間の足りないグループも見られたので、時間管理をグループ内で
助け合う必要がある。
(9)2月下旬
ディベートのリスニングおよびライティング・テストの実施
・リスニング(20点)
ALTによるペア・ディベートをビデオ鑑賞し、質問に答える問題
・ライティング(20点)
4つのトピックに対してリバトルをする問題
・ディベートに関するライティング(10点)
ディベートに関する一般的な問題から定番表現に関する問題
(10)3月上旬
3年生への足がかりとして、初のディベート大会を実施する予定。前記の米原高校フォーマットに
Cross-Examinationの時間を肯定側および否定側に1分ずつ設定することにした。トーナメント形式で
勝ち抜き戦である。グループは4人×10グループである。競技ディベートと区別するために、審査基準
は(1)分かりやすさ、(2)チームワーク、(3)反駁内容などを重視して審査していく。
(兵庫県立三木高校における、第2回高校生・英語ユースフォーラムへの参加)
今回、特別時間割と2年英語合宿を利用して、初のディベート大会を実施することになったきっかけは、
去る12月18日に兵庫県三木高校において実施された、第2回高校生・英語ユースフォーラムに参加し
- 67 -
たことである。後期の中間テストを終えたばかりで、準備期間は2日ほどしかなかったが、有志を集め参
加する運びとなった。兵庫県内外から10校、67人が参加。ディベート大会と一般討論があったが、本
校からは7名が参加、うち3名の生徒が勝ち抜き式のディベートに参加した。論題は、「日本では女性に
生まれた方がいいか」。大会では、今まで授業で取り組んできたコミュニケーションを重視したディベー
トを展開した。つまり相手の話を聴いて反駁する、全員が発言することを心がけ、準備してきたことを活
用するなどである。準決勝、決勝と進むにつれ、相手は流暢な英語で攻めてきたが、結果発表で「チーム
ワークの良さ」と「相手の話を聴いていた」ことを評価したと審査員に講評され、優勝することができた。
このことが、刺激となり、競技ディベートじゃなくても勝ち抜き戦をすることができると確信することが
でき、ディベート大会を実施しようと考えた。
5.アカデミック・ディベートの指導法
1) アカデミック・ディベートの指導手順
(1) スキーマの活性化 - テーマの提示、テーマ設定の理由を英語で説明
(2) 情報の注入 - テキストを読ませ、テーマにかかるさまざまな考え方、データ、問題点など
を理解させる。
(3) テキストの言語材料の収集 - テキストからテーマについて論じるときに使える表現、語彙
などの言語材料を習得させる(手法については⑤「4」技能を総合的に伸ばす授業形態として
のディベート指導」で詳述)。語彙等が不足の場合は、別途語彙
集を与える。
(4) ペアでディベートをさせる。
1. Affirmativeの1st reasonを述べる。
2. Negativeの反駁
3. Affirmativeの再反駁
4. どちらかの反駁が尽きるまで1st reasonについてディベートする。
5. Negativeの1st reasonを述べる。
6. 以下2からの手順に同じ。
社会的・国際的な問題についてのディベートでは、単に自分の意見を感想的に根拠なく述べる
だけでは議論が続かない。そこで、生徒に調査をさせたり、こちらからデータを与えたりする。
たとえば、
「リスニング試験を大学入試センターテストに導入すべきかどうか」という教育的な
テーマに関して、次のようなデータを与えて、そこから読み取れることを話し合わせる。
英語力テスト比較(満点50
1st-year high school
students
college freshmen
リーディングとリスニング)
China
Japan
S. Korea
Singapore
48.9
42.5
47.1
45.7
41.9
37.6
51.4
40
32.3
33.9
49.2
college seniors
その上で、次のような観点で考えさせる。(中邑光男先生の指導による)
① 現状の問題点は、現状を変更しなければならないほど深刻か?
例:
(肯定側)日本人の英語力は大変低く、そのために、実際に被害が出ている。(そ
の具体的証拠を示せるか?)→だから現状を変えなければならない。
例:
(否定側)日本人が英語を実際に使用する機会が少ない。英語力が低くても大き
な問題ではない。(その具体的証拠を示せるか?)→だから現状のままでよい。
また、日本人の英語力は徐々に上がってきているので問題はない。
② 現状の問題点を生み出す原因は何か?
例:
(肯定側)日本人の英語力が低い理由は読み書きに偏った英語教育にある。→だから
センター試験にリスニングを導入し、音声重視の英語教育に変えるべきである。
例:
(否定側)日本人の英語力が低い理由は実生活で英語を使う機会の少なさにある。→
だからセンター試験にリスニングを導入しても、実質的な効果はない。
③ このプランは問題の原因を解決するのか?(Plan の desirability)
- 68 -
例:
(肯定側)リスニングテストをセンター試験で導入することにより、リスニング力の
強化に全国の高校や塾が取り組むことになる。従ってプランの望ましさは高い。
例:
(否定側)リスニングテストをセンター試験で導入しても、話すことをしないため、
英語が使えるようにはならない。したがって、プランの望ましさは低い。
④ このプランは英語のコミュニケーション能力を正しく測れるか?
例:
(肯定側)人とのコミュニケーションは音声を通して行うことがほとんどであり、聞
く力と話す力は表裏一体である。実際に何が言われているかわからないため、英語でコ
ミュニケーションがスムーズに取れないことはよく経験するところである。従って聞く
力を測定することは話す力を測定することになる(証拠となる資料が示せるか?)
例:
(否定側)リスニングの能力は話す力よりリーディングの力と関係がある。(その具体
的証拠を示せるか?)従って、聞く力を測ろうとするならリーディングの力を測るだけ
でよい。また、実際のコミュニケーションは人と直接向かい合ってやるものであり、た
とえ聞き取れなくても聞き返したりやさしく言い換えてもらって理解できる。だから機
械で流される音声を聞き取れたかどうかで本当のコミュニケーション能力は測れない。
話す力は書く力とむしろ連動する。リスニングテストを導入するよりセンター試験にラ
イティングテストを導入すべきである。
⑤ このプランはメリットを生むかデメリットを生むか?
例:
(肯定側)OCの授業を軽視して文法ばかりを教えている学校が考え方を改め、コミ
ュニケーション重視の英語教育に切り替える。ALTの能力もより活用され、生徒がよ
り真剣にOCの授業に取り組み、ALTの話にも耳を傾けるようになる。コミュニケー
ションに必要な英語は読んで覚えるより、イントネーションやリズムを覚えながら聞い
て覚えるのである。だから、リスニング試験を導入することによって、高校生は一生懸
命聞く練習をし、その結果受験勉強をしながら話す力が伸びる。
例:
(否定側)リスニング教材を使いこなすだけの力量が教師にない場合が多く、テープ
教材の問題を解かせるだけで、リスニング指導が適切になされることは期待できない。
教師も生徒もリスニングに必要以上に学習上の力点を置くために、文法やライティング
などを学ぶ時間が減少する。
⑥ このプランは公平性を生み出すか。
例:
(肯定側)機械的・技術的な問題は、これから解決可能。だから、そのことを理由に
反対論を唱えるのは、雨が降るかもしれないから、遠足をやめようと前もって決めてい
るようなもの。リスニングの教材は誰にでも手に入り、勉強しようとすれば誰でも平等
にできる。
例:
(否定側)ALTが配置されている学校とそうでない学校、OCに熱心な学校とそうでない
学校で有利不利が生じる。海外体験のある生徒や帰国子女に有利。
⑦ 肯定側のプランは実行可能か?(Plan の practicability)
例:
(肯定側)音響の悪い教室があることを考えて、使い捨ての機械を使うことが決まっ
ており、実行可能である。
例:
(否定側)使い捨ての機械がうまく機能するとは限らない。例えば、外を救急車が通
ったり、飛行機が飛んだりしたら、どうするのか。
このような観点は生徒自身の調査やデータ探しからだけでは到達することが難しい。そこで、
以上のような内容を英語で口頭で伝えたり(生徒はメモを取る)、日本語で与える(生徒はそ
れをもとに英語で意見を書く)。さらに、このような観点で資料を探して、意見のサポートと
する。
アカデミック・ディベートは、英語力だけにとどまらず、データを収集する能力、データ
活用能力、論理的な思考力などが必要である。さらに、複雑な概念を英語で表現するという高
度な能力も必要である。しかし、これを続けることによって、議論を根拠に基づいて行う力が
つき、英語を書く際の論理展開もうまくなった。このことは、英語に限らず、日本語による小
論文でも、大いに与って力があった。
なお、中邑光男先生から指導していただいたディベート表現の「型」と指導の例を、上記
のテーマに基づいて記す。このような本格的なディベートは、あまり行う機会がなかったが、
上記のような本校独自のディベートにおいても大いに参考にした。
ア)ディベートに使える英語表現の「型」
① 議論を起こす時
- 69 -
I would argue that a listening test should/should not be incorporated into the center test for
these two reasons:
Reason No. 1:
Reason No. 2
For these reasons we have believe that listening should be part of the test the the center test.
② 議論を evidence で支持する時
I would like to [Let me] quote two pieces of evidence to support our argument.
According to Ms. Torikai, a professor of English education at Rikkyo University, who answered
our questionair, QUOTE “ ~ ” UNQUOTE. As you can see, Professor Torikai emphasizes
that incorporating listening tests in the Center Test causes a lot of trouble and supports our
position.
Let me quote another piece of evidence to further prove the validity of our argument. Here
we have data showing the relationship between the speaking ability and listening ability of a
certain group. This tells us that people who have high listening ability cannot necessarily speak
fluently. So, even if we incorporate listening tests in the Center Test, these will not evaluate
the examinees' communicative ability.
③ 質問をして相手の議論を確認する時
Let me ask you two questions so that I can see your arguments [constructive speech] clearer.
Please answer these questions either with Yes or No.
Did you say that ~?
④ 質問をして相手の議論の深みが足りないことを暴く時
(ただしこの種の質問は相手側に自由に時間を使って説明する機会を与えることにな
るので要注意。)
You mentioned that the incorporation of listening comprehension tests into the center test will
put poor students at a disadvantage. Please briefly explain that point [Please give us an
example.]
⑤ 相手側の意見に反論する時
The opponent team said that testing listening ability doesn't mean evaluating communicative
ability. We don't agree with this opinion, because the teachers will put more emphasis on
listening comprehension practice in class and try to incorporate speaking activities. ALTs will
also try to do their best to improve our listening ability with a lot of speaking practice. So
testing listening ability can also measure speaking ability because they improve together.
⑥ まとめを行う時
We have proved, by quoting two professors' opinions, that listening IS what we need to
improve our communication skills in English greatly. Indeed, listening comprehension tests
alone cannot measure the examinees' communicative ability, but this will surely be a great step
toward a better direction. In many countries where listening comprehension tests are given
in the entrance examinations, their communicative ability is high. Japan should start by
incorporating the same kinds of test into the Center Test. Then it will be much easier for
students to improve their speaking skills when they go up to universities. Thus we firmly
believe our argument is right.
(イ) 生徒に練習させる工夫の例
① formula expression memorization practice: 上記の表現を暗唱させる。プリントの左に日本
語、右に英語を書き練習させる。
② evidence card reading practice: 引用しようとする evidence card を 5 つ決めさせ、それを音
読させる。重要な単語に下線を引かせ、それを大きく読むように指導する。最後に、
出来るだけ顔を上げ生徒の方を見ながら、evidence card を時間以内(例 15 秒ほど)で
読む練習をさせる。
③ rebuttal practice: 相手からの反論として予想できるものを 5 つほど列挙し、それをカー
ドに書く。それに対する反論を考えた後、カードをグループ内で回し、そのカードに
書かれた議論に対して反論をする。時間を決めて、時間が来れば、強制的に次の人に
そのカードを回す。
④ question practice: 議論の流れがどのようなものになっても、必ず相手に対して行う質問
のストックを作らせる。一人 2 つくらいでいいが、それを英語にしカードに書かせる。
- 70 -
カードを読む練習は evidence card と同じ。余裕があれば、相手の答えを予想して、follow
up の質問を誰がするのかを決める。
⑤ chart explaining practice: 議論を理解するのに便利な表などを模造紙などに書かせ、それ
をプレゼンする練習をさせる。練習用のシナリオは全て京大式のカード程度にまとめ
させ、だらだら行わせない。
⑥ constructive speech practice: 肯定側の立論はほとんど完成原稿を作成する。それをグル
ープ内の誰でも暗記するくらい読み込ませる。否定側の立論の原稿も 7 割方は相手の
議論に関係なく準備が出来るので、肯定側の立論のように準備をさせる。
2) 高度な英文を読ませた後、その情報を発信につなげさせるための指導法
手順1 教師自作の英文を読ませる
It has recently been pointed out that Japanese university students' academic abilities have decreased
greatly. Many university mathematics teachers say that their students, even if they major in science,
cannot solve easy math problems at junior high level. Teachers are also frustrated that their students
cannot read fundamental academic books in Japanese, not to mention English books. In some
universities they hire high school or cram school teachers to teach the students basic knowledge that they
are supposed to have learned in junior high school.
Likewise, Japanese high school students' academic abilities have become lower. They don't study as
much as students in the past. They have more holidays now, and they don't need to take all the subjects
offered at high school. So, many students graduate from high school without studying much about
mathematics, physics or world history.
In addition to fewer hours of studying, universities have become easier to enter because there are fewer
children around the country. In order to get more applicants, universities include fewer subjects in
their entrance exams. So, a student who wants to study English can enter an English-related universitiy
without taking an English exam.
Once students go to university, they don't need to study hard. They have part-time jobs, they join a
lot of leisure activities and don't study. Universities are called a great leisure land.
This problem is very serious. Japan is a country with few natural resources. The only way for this
country to compete with other countries in the international market is to improve industry by raising
superior citizens. For this purpose, education is the key. But under these circumstances, we should say
there is no bright future for Japan.
To solve this serious situation, we should take some drastic measures.
1. We should abolish all the club activities so that high school students will concentrate on studying
more.
2. Universities should make it more difficult for students to pass classes and graduate.
手順2 英文を次のような観点でまとめさせる。その際、本文にある英語を極力使うように指示
する。これは、英文の論旨を整理し、英文中の意見と言語材料を取り込むために行う。
1) Examples to indicate the declining academic abilities of university students.
2) Reasons why high school students' academic abilities are getting lower.
3) Reasons why university students don't study so hard.
手順3 英文を読み、それをまとめたことによって取り入れた情報および言語材料を発信へとつ
なげるために、summaryを見ないで口頭で上の質問に答えさせる。その際、教師と他の生
徒は、必要な情報がすべて網羅されているか、本文中にある言語表現をいくつ使っている
かをチェックする。
手順4 ディベートを行う。トピックに対する肯定側の立論は、手順3で発表した内容を根拠に
構築させ、rebuttalでもYou said ...と同じ内容を反復してから反論させるようにする。
手順5 ディベートの後、自分の意見を論文に書かせ、英語の完成度を評価する。
成果:後述するようにディベートは本校英語授業の中核を成すものであるが、そこへ至らせる過
程には、様々な意見の理解と言語材料の習得が必須となる。その意味で、この方法は大変
効果的で、ディベートがやりやすくなるというメリットが大きい。書かせた論文でも、ほ
- 71 -
とんどの生徒がテキスト本文の情報や英語表現をうまく使って自分の意見を表現できる。
生徒の作品例) I think if they abolish all the club activities, we won't concentrate on studying.
Because the reason why we don't study hard is that we don't think studying interesting. We will
instead watch television for long time or play TV games or read comics. And if we concentrate
on studying and improve our academic abilities to enter unversities, we will forget almost things
when we become university students. This doesn't solve the problem of university students' low
academic abilities. To solve it, most important thing is to make classes interesting. If it is
interesting, we will concentrate on studying math, not to mention English.
課題:ディベートに至るまでに多くの時間がかかり、summaryを一人ひとりにさせていると、内容
的に同じことの繰り返しになり、授業が単調になる。これをペアで行うとチェックが曖昧に
なったり、それぞれの英語を評価することができない。
⑥ スピーチ・プレゼンテーション能力養成のための指導
スピーチ・プレゼンテーションは、英語による自己表現の能力や態度を身につけさせるために、1年次か
ら意欲的に取り組んだ。
1年次最初には発音訓練を十分に行った後、レシテーションに取り組ませる。英語科1人の教員につき5
~6名の生徒を割り当て、約1ヶ月かけて、発音を徹底的に訓練するとともに、デリバリーの指導を行う。
この指導によって、自己表現が苦手な生徒もそれを克服し、発音がよりよくできることで自信を深めた。
5月の全校コンテストに1年生英語コースの生徒は全員必修で参加させ、1年生で上位12位に入った者を
6月の虎姫高等学校ESSとの合同コンテストに参加させる。このことによって、多くの生徒がさらに自信を
深め、自己表現能力が養われる。
8月には1年生英語コーススピーチコンテストを実施し、それに向けて夏休み約1ヶ月をかけて、レシテ
ーションの場合と同じように、教員が分担してテーマの選び方、原稿の書き方等も含めて指導する。この大
会の上位者は秋の全校大会(滋賀SELHi合同コンテストを兼ねる)に出場させる。
1年次のレシテーション、スピーチを必修にすることによって、英語を話す技術的基礎が養われ、生徒の
自覚の高まりも著しが、コンテストだけでは本当の英語力は養われないという考え方から、授業においても
積極的にスピーチ・プレゼンテーションに取り組んだ。
1.2年生英語コースImpromptu speechの指導について
1) 目標
英語コース創設以来、生徒の英語でのコミュニケーション能力は着実に向上しつつあったが、会話
中のロングポーズや文構造の不正確さ、討論における発言の論理性の弱さはまだ多くみうけられた。
そのため、OC Ⅱで後期より実施する本格的なディベートの活動の下地(文の正確性、論理性、即興
性)をつけるために、毎授業約5分間の Impromptu speech 練習を取り入れた。
2) 指導法
OC Ⅱ、英語Ⅱ、Writing の授業を用いて、週4回以上それぞれの授業の約5分間を Impromptu
speech の練習に使った。短時間の活動ではあるが、毎日必ず各英語教科の授業で継続的に行った。
① 授業毎時に関係のあるテーマまたは時事的な出来事について考えさせ、各自が1分間で考えさせる。
② ペアでそのテーマについて1分間交互にスピーチを行わせる。
③ その後任意に2名の生徒を壇上に上げ、クラスの前でスピーチをさせる。
④ 壇上にあがった生徒のスピーチを例に良い点、悪い点、
(生徒が特に留意しなければならない点)
を教師が板書しながら説明し指導する。
①のスピーチテーマの例:
- What I did last weekend
- My horrible / wonderful experience
- The place I like to go to for ~ (shopping, dating など)
- What I am going to do this weekend
- What I learn from ~ (SELHi 講演、学校行事)
- My favorite ~
- The recent news that made me ~ (sad, happy)
- What I know about ~
④において生徒が特に留意しなければならない点については次のことがあげられた。
・英語の活用に関する留意点:
People who are marriaged → married などに見られる Word formation
famouser → more famous など形容詞の変化
- 72 -
文の中における冠詞 a, the の活用
単数形、複数形
・Posture に関する留意点:
ジェスチャーを有効に用いること
アイコンタクト
聞き手を意識した発表
・Delivery に関する留意点:
発音・イントネーション
・イントロダクション・ボディー・コンクルージョンの構成:
スピーチの基礎となるフォーマットの理解および活用
ボディーをサポートする examples, explanation, description の使用
スピーチのフォーマットは Impromptu speech 用としては特別に生徒に提供はせず、それぞれ
の授業で用いられているフォーマットを生徒自身に参考にさせてそれにもとづいて行わせる。例えば
OC Ⅱではプレゼンテーションを授業で行っていたため、そのフォーマットを生徒は流用できる。ま
た Writing ではエッセイライティング指導時に用いたものがある。④の留意点の指導はそれぞれの
英語の科目担当の教員の観点で行われた。
3) 成果
Impromptu speech の成果は次にあげられる。
① OC Ⅱのプレゼンテーションの指導や Writing の授業で学んだエッセイライティングなどのフォ
ーマットを参考にすることで、スピーチの構成力が以前より増した。
② 発話量はもとよりスピーチ中の情報量が増加した。
③ どのようなテーマでも自分の意見を率直に述べることができるようになった。
④ 自らの述べる英語の構造を考えながら、正確に英語を話そうとする姿勢が身に付いた。
⑤ 自分の言いたいことを英語にできないというフラストレーションを感じ、なんとか言えるように
しようとする姿勢が身に付いた。
⑥ 相手のスピーチを聞き、相手の用いた表現を積極的に取り入れていく姿勢が身に付いた。
⑦ 文の構造の判断力のスピードが身についた。
⑧ 各英語の科目において良いウォーミングアップとなり、スムーズにその後授業に入ることができ
4) 課題
生徒のオーラルな活動における意識や能力は向上したが,Impromptu speech の中で生徒は自分た
ちの使い慣れている語彙・表現を多く用いるため,依然として文法の授業や英語Ⅱなどで新しく学ん
だ語彙・表現が生かされなかったケースが多かった。いかにして生徒がインプットした語彙・表現を
即興のスピーチの中にアクティブボキャブラリーとして用いて、彼らの語彙力・表現力を向上させて
いくかがこれからの課題であるといえる。
2.1年生英語コースで取り組んだimpromptu speechの指導について
【1年生英語コース Impromptu speech 指導例】
前期は毎授業ウォームアップとしてテーマに基づくスモールトークを生徒に課し、また3時限目
に Timed conversation にて会話能力の向上に努めてきた。その結果ペアやグループ内で自分の考
えや意見を表現する態度は養成できた。しかしながら「トーク」のレベルの域を超えず、あるテー
マについてまとまった内容を理路整然と表現するスピーチのレベルへのステップアップが必要であ
ると痛感した。その実現への第一段階として Impromptu speech を導入することにした。
・指導方法
その単元に関係のあるテーマ(2種類)を与え、各自が1分間で考えペアでそれぞれのテーマに
ついて1分間スピーチをする。その後任意に数名の生徒を壇上に上げ、クラスの前でスピーチをさ
せる。それに伴って、毎時スピーチの基礎となるフォーマットの理解および活用の徹底を毎時行う。
授業時に用いたテーマ例
-My favorite movie
-My favorite place
-My favorite book
-My favorite music
-My favorite actor / actress
-My favorite relatives
-My favorite place
-My future
-What I know about America
-What I know about Japanese culture
・授業時に用いたフォーマット例)
① I am going to talk about ~
- 73 -
My favorite ~ is ~
② There are three reasons.
First, _____________A____________ _____________B______________
Second, _______________________ ____________________________
Third, ________________________ ____________________________
③ In conclusion,
My favorite ~ is ~
・フォーマット作成に関わるコンセプト
① そのテーマに関わる導入文で始め聴衆にこれから述べる話題を知らせる。テーマにより若干のフ
ォーマットの変化は必要である。
② 次に①で述べた内容を指示する少なくとも3つ以上の文を述べさせる。A では主題に関わる自分
の意見を述べ、B ではその意見を支持する事実(例)を挙げる。意見の羅列に終わらないように
し、自分の意見や考えを客観的に支持できるような事実を添え、より説得力のある構成になるよ
うに心掛ける。
③ 最後に導入文を別の表現で言い換え、自分の主張を強調する。
・まとめ(成果と課題)
慣れるにつれて、より洗練されたトランジショナルワードや論理展開の方法が身につけられる
ように指導する。一方的な主張にならないように自分の意見や主張を事実や例を利用してできるだ
け客観的に伝えられるような素地を作る。これは、上級学年で取り組むディベートにおける基本的
な考え方とも合致し、できるだけ早い段階から慣れるように工夫した。
当初にフォーマットなしで行っていたスピーチとフォーマットを用いたスピーチとを比較する
と、言葉の羅列だけで展開されていた生徒のスピーチがフォーマットの導入により、イントロダク
ション・ボディー・コンクルージョンというスピーチの柱ができ、どの生徒のスピーチにおいても
安定性が増した。しかしボディーの点で自分の考えや意見の羅列に終わり、それを支える部分が欠
如していたり、不十分であったりする生徒もいる。アキュラシーの面でも情報伝達の根幹に関わる
ようなグローバルエラーは少ないものの、冠詞の欠如や三人称単数現在の S の欠如、複数表現の
間違いのようなローカルエラーは、まだまだ多くその改善に向けて関連科目の英語Ⅰ等との連携を
図り指導を強化していく必要がある。
3. プレゼンテーションの指導実践
1) 各自が関心のあるテーマに沿ってのプレゼンテーション
平成14年度に2年生の生徒に英語Ⅱで取り組ませた。
・自分が関心のあるテーマを選ぶ(学問的なテーマが望ましいが、日常的なものでも可とする)
・できる限り絵や図表のある資料をB4用紙1枚で用意させる。その中に使用する言語は英語のみと
する。
・各自、5分以内で原稿を読まずに発表する。資料は全員に配布する。
・聞いている者は、発表内容に関して英語で質問をする。発表者はそれに英語で答える。
成果 ・非常に興味深いテーマで、各自がよく調べて発表をしたために有意義な取り組みとなった。
・資料提示の仕方もよく、他の生徒の作り方を学ばせることができた。
・質問時間を設けたことにより、発表者は即興で答えなくてはならず、英語の運用能力向上につ
ながった。
課題 ・1クラスを2分割で行ったが、それでも大変時間がかかる。いい発表を全員が聞けないという
欠点があった。
・質問が出にくく、教員がすることが多かった。
2) 各自が読んだ英語の本に関する紹介のプレゼンテーション
平成15年度に2年生の生徒に英語Ⅱで取り組ませた。
・春休み中にPenguin Books, Bookworm Seriesから、1冊ずつを課題として読ませ、その内容につい
て説明する。
・聞いている者は、ストーリーのアウトラインをメモする。
成果 ・発表しなくてはならないという課題があるために、真剣に読ませることができた。
・読んだ内容をわかりやすく説明するために、要約の能力が身に付いた
課題 ・発表によってはわかりにくいものがあり、聞いている者の集中力が続かなかった。
- 74 -
・聞いている者の理解を助ける資料を用意させるとよかった。
3) 総合的学習の時間におけるプレゼンテーション
平成16年度の2年生英語コース生には、1年次より授業や英語合宿で英語による発表やスピーチ
を頻繁にさせてきた。プレゼンテーションやスピーチに必要なdeliveryの訓練に加え、明瞭な発音、
声のコントロールやアイコンタクトに至るまで、個々に指導し、次第に堂々とした態度でわかりやす
い発表ができるようになった。1年生最後の3月には「総合的学習の時間」でパワーポイントやpropに
よって、自分たちが調べた国や地域のことについてプレゼンテーションをさせる取り組みを行った。
この時は、ほとんどの生徒が自分の書いた原稿を見て、それを読んで発表するにとどまったが、今
年度は、即興でスピーチをする練習に取り組ませた。
また、年度末のプレゼンテーション大会に向けて、2人一組で調査から発表に至るまで、3ヶ月にわ
たって、準備をさせた。
・指導方法 1) 2人一組で、自分たちの最も関心のあるテーマを設定させ、それについて5分間で情報
量豊かでわかりやすいプレゼンテーションをするよう指示する。
2) いいプレゼンテーションの要素について考えさせた後、教師が大切だと考える要素を
教える(いいプレゼンテーションのための5つのi)。
A good presentation should be informative, impressive, interesting, involving and intelligible.
3) それぞれのテーマについて、どのような観点から、何を発表するか、与えられた時間
をどう割り振って2)の5つの要素を満たすかを考えさせる。
4) 発表に使うデータ・資料を探して、調査させる。
5) 調査したデータをどのように活用し、何を伝えるかを考えさせる。
6) 発表の結論を押さえさせる。
7) 発表の骨子と流れをもとに英語で原稿を書かせる。
8) どのデータをどこで、どのように使うかを考えさせ、発表用の資料として制作させる。
9) 二人の分担を決め、原稿をもとに練習させる。
10) 原稿を暗記するのではなく、話す内容のポイントを箇条書き的に書き出させ発表内容
のマッピングをさせる。
11) マッピングしたシートをもとに、プレゼンテーションの練習をさせる。
12) 3月23日に実施したプレゼンテーション大会で、1年生英語コース生徒全員と英語教員
全員を聴衆として、発表をさせる。
・成果
1) 1年生の前で発表するという状況を真剣に受け止め、各グループが意欲的に取り組み、
興味深く、すばらしい発表を行った。
2) 1年生次から継続してきたパブリックスピーキングおよびディベート等の指導の成果
がよく現れ、自然な英語と発表態度で、聴衆を引きつける感動的なプレゼンテーショ
ンするグループが多く、実りの多い大会となった。
⑦ 4技能を総合的に伸ばすための教育活動統合の実践
1.4技能を伸ばす指導形態
まず、4技能統合のための諸教育活動の概括的特徴を、授業以外のものも含め、これまで取り組ん
できた種々の教育活動を分類して考察を加えたい。
これまでに行ってきた、英語に関わる諸教育活動の概要は次のとおりである。
1) 授業をコミュニカティブな活動を中心にして、確かなコミュニケーション能力と基礎力・応用
力の伸長を目指す。
2) 英語によるコミュニケーションにとって欠かせない、しっかりした発音と態度を身につけさせ
るため、コンテストに全員を参加させ、それに向けての指導を個別に徹底することによって、
コミュニケーションにとって必要な資質を身につけさせる。
3) 英語合宿、ミシガン州立大学連合日本センターでの研修などで、伸び伸びと英語でコミュニケ
ーションができる機会を多く与え、意欲を喚起する。
4) 高大連携や外部講師招聘により、英語の様々な側面に触れさせることにより興味・関心を刺激
する。
この仕組みを私たちは「米原フォーマット」と呼んでいるが、その特徴を総合的に述べれば、
1) 基礎力の養成
基礎的な学力や資質の育成についてはかなり重い負荷をかけ、評価は減点法的に行う。足りな
いところや努力を要する点に厳しい指導を施し、accuracyの錬磨を目指す。テストにおいても同
様で、正確な読みや語彙力、基礎的表現力を規範に基づいて計り、間違いや不正確さを少なくす
- 75 -
ることを目的に行う。
2) 態度の育成
ダイナミックに情報を授受する活動や、コミュニケーションへの態度を育成するための活動で
は、自由な空間やゆとりの部分を多くし、負荷をかけることなく闊達に自己表現をさせ、評価は
加点法で行う。意欲やfluencyを高く評価し、テストにおいても、意欲的に自己表現をする姿勢
に高い得点を与え、さらに意欲を高める。
上の1と2を総合力を計る評価の尺度は大変指標作りが難しく、方法は確立できなかった。しか
し、総じて言えば、コミュニケーションへの意欲のある生徒は英語の基礎力も着実に伸ばすという
ことである。
次の2つのグラフは、平成14年度入学の英語コース生徒の、コミュニケーションへの意欲と基
礎力を、*意欲点の高い者から順にならべたものである(2つ並んだバーは、同一生徒の点数で、左
側のバーがスピーキングテストで計った意欲の点数、右側のバーが基礎力テストの点数)。グラフ1
は、入学時後2ヶ月のもので、グラフ2は3年次6月の成績である。
(*コミュニケーションへの意欲は、スピーキングテストにおいて、態度面、発話量、コミュニケ
ーションを続けようとする方略などを、スケールを変えず計っている。基礎力は学んだことをい
かに定着させているかを、語彙、読解力、英作文力などで計った。)
入学当初は、コミュニケーションを図ろうとする意欲の高い生徒が必ずしも基礎学力が高いとは
限らないが、2年後には、かなりの相関を持ってくることがわかる。このことから、「米原フォー
マット」で確立した、負荷を課して基礎力を高める指導と、意欲的にコミュニケーションを促す指
導とが連動し、英語の総合力を上げていることが顕著に伺える。
グラフ1
90
80
70
60
点 数
50
40
30
20
10
0
1
4
7
10
13
1 6
1 9
順
22
25
2 8
31
34
22
2 5
2 8
3 1
34
位
グラフ2
点 数
1 0
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
4
7
1 0
13
1 6
順
1 9
位
4つの技能を総合的に伸ばすために、最終年度に重点的に取り組んだことは次のとおりである。
- 76 -
1) 「読む」活動を情報やメッセージの受け取りのみにとどめず、音読を多用することによって、触
れた英語を自己表現のための材料にできるまでに発展させる。
2) 「読む」活動によって得た情報や考え方を分析・批判し、その読解を通して学んだ英語表現を用
いて自分の意見を述べられるよう指導する。
3) 「書く」活動では、言語表現の持つ機能や構造を捉えさせ、それを適切な場面で使ったり、他の
場面で応用する練習を口頭で徹底的に行う。
4) 「書く」ための言語材料に習熟させてから、機能面を重視したテーマを設定し、学んだ英語表現
を使いながら、自らの経験や意見について書かせ、それを口頭で発表させる。発表の後には、意
見交換やディベートを行い、再度文法や語法に留意しながら書かせて提出させる。
5) 「聞く」活動においても、「読む」活動と同じく、単なる情報の受け取りやリスニングテストに答
えさせることだけを目的とするのではなく、聞いたことをもとに、教師と生徒間、生徒同士でメ
ッセージのやりとりを行わせる。
6) 「話す」活動を主とした授業では、対話練習や問題解決のための意見交換の活動を極力読解と関
連づけながら行う。そのための指示もすべて英語で行う。
例1) 「読む」活動を中心にして4技能を総合的に扱う指導例
テキスト:Debate is a Western idea, and discussions among Westerners always contain an element of this
kind of exchange. A successful meeting is one at which all those involved assert what they think.
But Japanese, unlike Westerners, are not accustomed to speaking out on their own behalf.
A well-liked person in Japan is one who listens to others. Such a person may have a great deal
of intuitive understanding, and be able to show this without words. This kind of unspoken
understanding is highly valued. in business as much as in private life, for it enables things to proceed
smoothly. Speech, as a consequence, is often vague.
In the West, however, social conditions make this kind of intuitive approach impossible. Where
so many different nations live in close proximity to each other, people must speak up clearly if their
voices are to be heard.
活動1 【内容理解】英問英答による理解度チェック
Q.1 What is the difference between Westerners' meetings and Japanese meetings.
→生徒に求める答のレベルを次のように位置づけ、徐々にテキストの英語表現に捉
らわれない自己表現へと近づける。
レベル1) 質問に合った答の形式を考慮せず、内容的に答を含んでいる部分の表
現をテキストからそのまま答える- A successful meeting for Westerners is one at which
all those involved assert what they think. But Japanese, unlike Westerners, are not
accustomed to speaking out on their own behalf.
レベル2) テキストの表現を使って質問の形式と一致する形で答える- At
Westerners' meetings, there are discussions among them, but at Japanese meetings people
are not accustomed to speak out on their own behalf.
レベル3) テキストの表現を一部使うが、できる限り自分の英語でパラフレーズ
して、質問の形式に一致する形で答える- At Westerners' meetings, people involved
try to assert what they think, but at Japanese meetings people hesitate to speak out. .
レベル4) テキストの表現にとらわれず、内容をうまく要約し、自分の言葉で質
問の答としてふさわしい形で答える- Westerners' meetings are full of heated
discussions, where people participate in discussions actively by asserting their own ideas.
In contrast, Japanese meetings are inactive and quiet because attendants, who are not used
to making assertions, hold back from giving their opinions
この活動の要点:口頭で答えさせる時に、理解度を確認するだけでなく、できうる限り
自己表現を訓練する機会とするためには、答の質についてしっかり教え込むことが大
切である。その際、語彙レベル、表現レベル、構文レベルの他、質問文に対する適切
な答え方になっているか否かも大切な要素として理解させる。例を挙げながらこのよ
うなことを指導し、かつ、適宜パラフレーズする際に使うとよい語や、構文上使える
表現を与えて訓練する。(上記レベル3)で言えば、tryやhesitateなど。)口頭での問答
で求めるのは、レベル3)までが限度であり、レベル4)はライティングの課題とし
書ける最高のレベルと捉え、模範例を挙げて徐々に指導していく。
活動2 【音読】1)教師・CDの後に続けてチャンク毎にリピーティングをさせる- Debate is a
Western idea, /and discussions among Westerners / always contain / an element /
- 77 -
of this kind of exchange.
2)ペアでチャンク毎にリピーティングをさせる。続けて言う生徒にはテキストを
見ないで行わせる。
3)チャンクを長くし、できるだけ長いフレーズをリピートする練習をペアで行わ
せる- Debate is a Western idea, /and discussions among Westerners always
contain /an element of this kind of exchange.
4)Read and look up により、教師が読んでいる間はテキストを見て、その後テキ
ストを見ずに再生させる。
5)各文の前半や冒頭の部分を教師が言って、生徒にテキストを見ずに後半を再生
させる- Debate is a..., and discussions among Westerners always contain ....
この活動の要点:音読の方法はここに挙げた以外にも shadowing やペアで片方の生徒が読ん
だチャンクをもう一方の生徒が書き取る活動など、生徒の習熟度やテキストのレベルに合
わせて種々行ってきたが、ポイントはテキストの英語を表現の手段として頭に焼き付ける
ことである。定着させる言語材料は文そのものの暗唱である必要はなく、チャンクや構造
上のまとまった単位・表現様式でよい。これを学び取ることによって、自己表現の材料を
増やすことを目的とした音読指導でなければならない。
活動3 【自己表現活動】内容を理解し、テキスト中の表現に習熟した段階で、この文章のテー
マに関わる内容について観測や意見を形作らせて発表させ、意見交換をさせる。
Q. Do you think Japanese people should be more self-assertive?
A.-テキストの表現を使って答えさせる:No. It will be difficult because Japanese people
are not accustomed to speaking out. / Yes. In today's world, if Japanese people's voices are
to be heard, they should speak up in international meetings.
-他の表現や語彙を与えて答えさせる:It depends. In our own society, it sometimes
causes trouble to be self-assertive because we value harmony. If you are too self-assertive,
you may stand out and be alienated. But at international negotiations, we should be more
self-assertive in order to get our demands through to other nations. (下線部があらかじ
め与えておく語句)
この活動の要点:この活動にはコミュニケーション能力の伸長を図る上で2つの重要な
要素がある。
1)読解で学んだ語彙・表現・構文等を自分の意見を述べる際に援用できること。
2)読解で学んだ表現以外で関連するものを同時に学び取り、より広い視野で意見を
述べられるようにすること。
2)では、口頭による発表の前に、しっかりと英語を書かせて自らの英語をチェックさせ
た後に行うと効果的である。また、定期テストやスピーキングテストで再度意見を述べ
させれば、確実な定着を図ることができる。
例2) 「書く」活動を中心にして4技能を総合的に扱う指導例
テキスト(桐原書店 Pro-Vision English Writing):Function: 主張する
1. My opinion is that we must reduce the consumption of electricity.
2. I firmly believe that we should reach a compromise on the issue.
3. In my opinion, the death penalty should be abolished.
4. What is important is not to buy what you want but to buy what you need.
Grammar: 関係代名詞・関係副詞
1. Japan is not what it used to be before World War II.
2. The world (that /which) we live in is threatened by overpopulation.
3. Global warming is a problem about which everyone should be concerned.
4. There are countries where children cannot go to school.
5. I hope the time will come when there are no nuclear arms on the earth.
(日本語訳はすべて省略)
Practice 文法問題(省略)
Express Yourself 次のトピックについて自分の考えを書いてみよう。
Should everyone study English? (他のトピックは省略)
活動1 【表現の定着】Function, Grammar の解説の後、
1) シャドウイング、リピーティング、Read and look up, ペアによる英文完成(片方
が文の途中まで読み、もう片方がテキストを見ずに英文を完結させる)などによ
- 78 -
り表現を定着させる。
2) Function の構文を定着させるために、与えられた状況・話題について、指定された
表現を用いて意見を述べる練習をさせる。
・「制服を廃止すべき」→ My opinion is that we must abolish school uniform.
・
「英語を学ぶ者はもっと辞書を使う」→ What is important for English learners
is to use dictionaries more often.
3) Grammar で示された事項を使って、与えられた表現に続けて英文を完成させる。
・The prefecture we live in has ....
・There are schools where ...
この活動の要点:この活動はパターン・プラクティスの要素を含み、機械的ではあるが、
表現は文法事項を定着させる基礎的練習として欠かすことはできない。しかし、単なる
言葉の入れ替えではなく、生徒たちの身の回りの出来事や生活に密着した状況設定で文
を作らせることによって、身近なことを表現する幅が広がる。
活動2 【意見の発表】Express Yourself のトピックについて、意見を発表する。
1) 自分の意見をまとめて書かせる。その際、compulsory subject, a waste of time など、
使えそうな語彙をあらかじめシートにして渡す。
2) ペアで意見交換をする。同意見の場合は、互いにそう考える根拠を交換させる。意
見が異なる場合は相手の意見に対する反駁を行わせる。
3) 全体の場で意見を発表させる。聞いている者は、それに対するコメントや反駁を行
う。
4) ペアでの意見交換と発表で聞き知ったことをもとに、よりよい英語を書くことを目
指して再度書くことを課題とし、次の時間に提出させる。
・生徒(2年生)の作文例:My opinion is that all school students should learn English.
Now, English is a common language in the world. In many companies in Japan, workers
have to take English tests like TOEIC and STEP. English is an important tool to survive
in companies and necessary when they communicate or negotiate with foreign companies.
According to an article on a newspaper, companies want people who have English ability,
not just ability to speak but ability to read and write. So, everybody will need English in
the future.(原文ママ)
この活動の要点:上記のタスクにおいては、Function の表現は必ず使うことができるが、
Grammar については敢えて使おうとさせず、書いているうちに必然性が出てきた場
合のみ使うように指示する程度でよい。さもないと、表現が内容より優先されてしま
い、自由な意見の発露を妨げることになる。また、関連する語彙については、考えを
誘導するという欠点はあるが、ある程度与えておいてやらないと我流の表現をよしと
してしまうという弊害を生む。
・4技能を総合的に伸ばすために-これまで授業で行ってきた方法を統合し、Reading, Writing といっ
た科目の枠に捉らわれないで、最終目標を自己表現に置き、それによって学んだ言語材料を定着さ
せることをねらいとする教授法のメリットは次のとおりである。
1)生徒が常に自己表現を目的として言語材料の学習を行うため、定着が早い。このことはただ解
釈のみで理解させることを主眼にした授業との比較で顕著に表れる。
データ:テストにおけるテキスト再生問題解答率(英語コース3年生 Reading)
(日本語訳を与えて、2~3語の範囲で空所を多く作って埋めさせる問題)
授 業 の
形 態
解 答
自己表現活動を最終目的とした授業後
79%
音読を含み、解釈のみで終わった授業後
52%
率
2)自己表現の手段として意欲的にテキスト以外の語彙や表現を発展的に学習するため、語彙力・
表現力が伸びる。学んだ語彙や表現を次の自己表現活動に生かすことにより active vocabulary
として定着する。
3)生徒の問題意識や知的好奇心が育成され、ディベートの授業に好影響をもたらす。生徒の知的
- 79 -
関心や高い意識が、総合的学習の時間などにも波及し、自ら学ぶ意欲の向上につながっている。
4)英語の授業では常にペアワーク・グループワーク、プレゼンテーションなどを行うため、生徒
たちは仲間同士やクラス全体に英語を話すことに全く抵抗を示さなくなった。このことにより
活気のあるコミュニケーション活動が展開される。
5)自己表現活動を保証するには指導する教員に豊かな英語の表現力が要求される。最初は当意即
妙に生徒の発言に反応したり、適切な語句を与えてアドバイスをするということが難しかった
が、このような形態の授業を続けることにより、徐々にそれが可能になり、教員の側の力量が
高まった。生徒の総合的な力と同時に教員の総合的運用力にも資する方法である。
・この指導形態については、高大連携ににより指導をしてもらっている大学の先生方からも高い評価
をもらっている。この方法は基礎的な理解・定着力と同時にそれを実際に運用する能力をつける上
で効果的であり、従来の知識注入のみの英語教育や、活動はあるが学びは少ない指導形態の両方の
欠点を補う方法と言える。
・評価については、後述する。
2.4技能の伸長に効果ある授業指導・学習法の精選と検証
コミュニケーションを最終目的とする授業を始める以前は、生徒の学習は概ね次のようなものであ
った。
・読解の授業
予習:1) テキストをノートの左側に写す
2) 最初から未知の語を辞書で逐一調べ、ノートの右側に書き写す。
3) 返り読みをしながら、ノートの左側に写した英文の下に和訳を書く。
授業 1) 教師・CDなどの音声を聞く。全員でコーラス・リーディング。指名されれば読む。
2) 教師が一文一文を読んでいき、指名されて読んでからその文を和訳する。
3) 教師の解説と和訳を聞いて、それをノートに書き写す。自分の和訳と異なる場合は、
それを赤で消して教師の訳を書く。
・OCの授業
予習:なし。ワークブック等がある場合は、指示に応じてタスクを行う。
授業:ウォーム・アップ, リスニング活動、ダイアローグなどをCDを聞いたり、教科書の指示通
りに転換練習等をする。時にゲーム的な活動を行うが、それによって何かを学び取るとい
うことは少ない。発展的コミュニケーション活動は多くの場合、割愛される。
・ライティングの授業:
予習:1) 基本文を読み、指示がある場合はそれを覚える。
2) Exerciseの答をノートに書く。
授業:1) 基本文の説明や文法事項の説明を聞く。
2) 指名され、Exerciseの答を言うことを求められて答える。教師が訂正すれば、それを
書き写したり自分の答を訂正したりする。和文英訳については、板書を求められて、
黒板にそれを書く。他の生徒は、教師が訂正した文を書き写す。模範解答書かれれば
それも書き取る。
このような学習の形態における欠点は、
1) 教科書を学ぶが、それが解釈や知識の段階でとどまってしまい、表現の手段として定着しな
い。
2) 音声を伴う活動が機械的な反復練習程度にとどまり、音声化された言語として記憶に残りに
くい。
3) 解釈は日本語を介して行われ、ライティングでも日本語からの移し替えに終始するため、理
解が常に日本語を通して行われる。そのため、部分的には学習があるものの、日本語が干渉
して英文全体を大きく把握したり、再生する能力が養われにくい。
4) 授業に活気がなく、生徒が受動的・機械的にタスクをこなしているだけで、モティべーショ
ンが上がらないため、学習率が低い。
昨年までの2年間、このような指導方法の欠点を解消するため、コミュニケーションを中心とし
た授業に転換した。すなわち、
1) 読解では和訳は行わず、文法解説もしない。英語で内容を説明し、意見を求める活動を多く
する。
2) OCでは、教科書を短い時間で終わり、発展的活動に多くの時間を割く。
3) ライティングでは、自由作文を多くし、解説や細かい文法にはこだわらない。
このようなコミュニケーション主体の授業によって、生徒たちの表現への意欲やfluencyは高ま
- 80 -
った。しかし、このような方針のもとにコミュニケーション活動を優先し、1年生時に文法指導を
全く行わず、個々の自宅学習に任せた、平成14年度入学の英語コースの生徒たちは、基礎的な語
彙や文法、英文構造の理解が曖昧で、話したり書いたりする英語の質が向上せず、難しい概念につ
いては表現が完全にストップしてしまうことに気づいた。
、2年生後半になっても、英文が崩れて
いたり基礎的なミスが散見することは、英文の作り方に対する基本的な認識が大きく欠落してたの
である。生徒たちも、そのことに不安と懐疑を抱き始めた。本校の授業指導に来ていただいていた
齋藤栄二先生にも、地道な基礎力向上の努力が要ることを指摘された。
そこで、あまりにもコミュニケーションの方向に触れすぎた振り子を、基礎基本の充実という方
向に引き寄せる必要が生まれ、今年度は、コミュニケーションの前に基礎的学習をさらに徹底させ
ることにした。コミュニカティブな活動における基礎力の伸ばし方については④に譲るが、ここで
は、指定期間2年目より始めて最終年度に充実させたいくつかの方法について具体的に述べる。
3.読解ストラテジーをリスニングに応用するための研究
トップダウン式のリーディング指導によって、生徒は英文の意味を文頭から取る習慣が身に付
いた。こうして身につけたストラテジーはリスニングの際にも必ず有用である、との仮説のもと、
いくつかのタイプのリスニング問題を実際に行わせて、その結果を分析した。
まず、現在、検定テスト、資格テストなどで用いられている客観問題形式のリスニング設問の
タイプをすべて挙げる。
1) 絵や写真を見て、その描写として読まれる最も正しいものを選ぶ。
スクリプト
a) The mem are discussing seriously.
b) Three men are about to leave the coffee shop.
c) Every chair is occupied.
d) They are taking a rest.
2) 短い対話を聞いて、それが行われている場所や状況、話している人物は誰かなどを、問題用
紙に書かれた選択肢から選ぶ。
a) A teacher and a student
b) A pilot and a passenger
c) A waitress and a customer
d) A driver and a police officer
スクリプト
W: May I have a look at your driving license?
M: Here you are. Is anything wrong?
Q. Who are probably talking?
3) 短い対話を聞いて発話の真意を、問題用紙に書かれた選択肢から選ぶ。
a) That the man should tell a lie.
b) That the man should keep the truth secret.
c) That the man should know the truth.
d) That the man should tell the truth.
スクリプト
M: I'm wondering if I should tell Jim just what happened.
W: He will get angry if you don't.
Q. What does the woman imply?
4) 短い対話を聞いて、その詳細な内容についての質問に対する最も適当な答を選ぶ。
a) 10 dollars b) 15 dollars
c) 50 dollars d) 85 dollars
スクリプト
M: How much is this jacket?
W: 100 dollars.
M: Including tax?
W. Yes, 15 percent of the price is tax.
Q. How much is the jacket without tax?
5) 発話または短い対話を聞いて、その後に続く応答を選ぶ。
a) It is a big wagon type.
b) It sounds great. I don't like a used car.
c) I always drive very slowly and carefully.
- 81 -
d) Very much except the color.
スクリプト
M: How do you like your new car?
6) 長い対話を聞いて、その内容についての複数の質問に対する最も適当な答を選ぶ。
例省略
7) 長い説明文・物語・通知などを聞いて、その内容についての複数の質問に対する最も適当な
答を選ぶ。
例省略
これら全ての形式の問題を、回を重ねて2年生英語コースの生徒にさせてみたが、どの問題に
ついても、8割以上の正解率を示した。しかし、これは問題の難易度、読まれる英語の速度によ
って左右されるため、有為なデータは取れなかった。ただ、5)の形式の問題では、スピーキング
の能力の高い者の正解率が高く、コミュニケーション能力を計るには良問であると考えられる。
読解ストラテジーがリスニングストラテジーに影響を及ぼすのは、6)7)であり、短い対話や発
話を聞いて客観問題に答える形式では、キーワードや情報のメモなどでかなり対処できるため、
読解のスキミング能力との関連性が強いが、対話全体の理解がなくとも解答可能である。しかし、
長い対話やモノローグの内容を十分理解するには、トップダウンの読解力が大きな力となる。早
く正確に読める生徒は、6)7)タイプの問題の正解率は比較的高いことは、緻密なデータはないが、
明らかな傾向として言える。この結果は、速読力を計るテストと6)7)タイプのリスニングテスト
の結果の相関が0.89であったことからも十分伺える。ただし、客観テストでは部分的な情報
や概要についての質問が多いため、読解力がそのまま聞き取る力につながっているかについては、
疑義が残るところである。
リスニングの問題は、国公立大学入試問題にあるような、英文で答えさせたり、日本語でまと
めさせる形式のものが読解力との関連を探るにはよりふさわしいと思われる。そして、トップダ
ウン式の読み方を訓練すればするほど、詳細な内容にまで理解ができるリスニングの能力は上が
ると思われる。この種のリスニングテストを実施した回数が少なく、有為なデータで検証できな
かったが、日常の授業におけるリスニングによる解釈力が高まってきたことから考えても、リス
ニング力は多肢選択形式の問題ではなく、聞いた内容を言葉で表現できるような問題が望ましい
と考えられる。
読解ストラテジーをリスニングストラテジーに応用するには、読解におけるスキャニングやス
キミングの訓練も役に立つが、視覚で理解するのと聞いて理解するのでは差があり、必ずしもリ
スニング力の向上につながらないと考えられる。それよりも、トップダウン式の読み方を何度も
練習させ、徐々に1つのチャンクを長くして意味を取らせていくようにすると、聞いて理解する
力は伸びるというのが、これまでにたどり着いた結論である。
4.複数の技能を伸ばす教授法・教材開発
教授法については、これまでに述べたもののほとんどが、特定の技能に特化せず、複数の技能を伸
ばすことを目的としている。口頭や文字によるより正確で情報量の多いコミュニケーションをめざし
て、読む活動や聞く活動に明確な目標と方向性を持たせているため、1つ1つの活動は次へのステッ
プとなる。
基礎的な訓練においても、単に文法事項を注入したり、聞いたことを書き取ったりするだけを目的
とせず、常に発信の観点を取り入れて教えたり活動をさせたりしている。この時大切なことは、それ
ぞれの活動がどのような力をつけることを目的としているか、次のどんな活動に結びつき、それがで
きれば次に何ができるのかを生徒に知らせることと、ある程度長期間にわたって根気強く続けること
である。
本年度行った基礎的訓練のいくつかを紹介する。
・Oral summarization(
「読む」「話す」「聞く」「書く」)
1) さほど難しくない100語程度の英文を渡し、その場で時間を計って黙読させる。
2) キーワードを教師が指摘し、それをハイライトさせた後で、もう一度黙読させる。
3) キーワードを板書し、テキストを閉じさせる。
4) キーワードをもとに、ペアでテキストの要約をさせる。
5) 最後に、要約を書かせて提出させる。
例) When Jim started work in a shop at the age of sixteeen, he had to go there every morning by bicycle
and come back the same way because he did not have enough money to buy a car, but after a year he
had saved enough to buy a very old one. However, he often had trouble starting it, especially on cold
- 82 -
mornings. He sometimes took it to the repair shop, and there they always said, "What you need is a
new car --- at least a new engine!" But Jim did not have enough money to buy a new car, so he went
on using his old one.
One day he was driving to work in it when he came to a red light and stopped. The engine stopped,
too. Jim cursed and swore, and tried to start the engine again, but nothing happened. The lights
changed to green, and the cars behind him began to blow their horns, but that did not help. Then
suddenly the girl who was driving the car behind Jim's got out and came to him. She was holding
something in her hand. Jim expected her to say something rude to him --- or even to beat him with the
thing she had in her hand --- but all she did was to hang it on the front of his car.
When he got out to see what she had put there, he saw that it was a notice which said 'FOR SALE'.
He was very surprised, but the girl said to him, "Try starting your engine now." Jim got back into his
car, and the engine started at once.
"That's always successful with my car, too," the girl said with a smile. "It probably thinks it's going
to be sold."
キーワード・キーフレーズ:
Jim, work, bicycle, not enough money, after a year, an old car, trouble starting, / one day,
stopped, a red light, a girl, held something. expected her to say something, a notice, FOR SALE,
successful, is going to be sold
バリエーション) キーワード、キーフレーズにテキストにない英語を入れる。動詞はすべ
て現在形にで与える。
Jim, job, bicycle, afford to buy, after a year, purchace, a shabby car / one day, got stuck, on a
red light, a girl, hold, angry, unexpectedly, a FOR SALE notice, work well
・One-sentence listening and paraphrasing(
「聞く」「話す」)
1) 6~10語程度の短い英文を聞かせ、すぐにそのとおりにペアの相手に再生して伝える。
2) ペアでその英文を繰り返し練習させる。
3) その英文の意味を別の英語で言い換えさせる。2文以上になってもかまわない。
4) 言い換えのバリエーションをいくつか挙げて、練習させる。
例)
・語彙レベルの言い換え:→ Are you going to accept the job offer? → Are you going to say yes to
the job offer?
・文レベルの言い換え→ He is not so happy as he used to be.→ He was happy before but he is not
now.
・Picture describing(「話す」
「聞く」「読む」)
1) ペアで別々の絵を持たせ、自分の絵について相手に説明する。
2) 聞く側は、相手の描写をもとに絵を描く。
3) 類似の絵に正確な描写をつけたものを渡して読ませる。
4) 正確な描写の英語を参考に(それを見ないで)もう一度自分の絵について相手に説明する。
5) 聞く側は相手の描写をもとに描いた絵を修正する。
教材は、既存のテキストを使う以外に、独自で多くの教材を製作した。複数の技能を伸ばすと
いう観点から、読解から入り、口頭および文字による発信へと完成する教材が多い。
ディベートで使用した教材の一例を示す。
例)単元のテーマ: It cannot be helped that the Japanese should feel antagonistic toward foreigners.
"Internationalization" and Xenophobia
"Interenationalization" in Japan gives many citizens opportunities to meet and interact with people from
other coutries, and help them to become more multi-cultural. On the other hand, "internationalization" has
increased the chances of cultural misunderstandings and an increased foreign population has resulted in a
higher crime rate. It has become a big problem since Japan has started to accept foreign workers. The
increasing mumber of illegal foreign residents and crime groups coming into Japan has made Japan more
dangerous and its people more xenophobic. As a result of these negative aspects of "internationalization,"
Japanese people tend to generalize all foreigners as troublesome or sometimes dangerous. For some Japanese
people it is a logical conclusion to think that the rights of foreigners should be eliminated. They know that
this will cause problems to those foreigners who are trying hard to live in harmony with Japanese, but they
also think it cannot be helped because they don't know the difference between "good" foreigners and "bad"
ones, and because most foreigners will not try to mingle with Japanese.
In Hamamatsu, a jewelry shop owner told a Brazilian woman to get out just because she was a Brazilian.
In the same city a bus driver announced that the passengers should be careful of their belongings when a
- 83 -
Brazilian got on the bus. In Aichi Prefecture, a Brazilian boy was linched to death by a group of Japanese
people. You will find a police notice warning "If you think it a Chinese, you may well call the police."
From the foregners' points of view, the increasing crime rate may be the result of Japanese exclusive and
antagonistic attitude toward foreigners. If they feel they are pushed into a small corner of the society, treated
as outsiders, it is natural that they should feel very alienated and are likely to commit crimes. They simply
think that the Japanese are racists who will not try to interact with or understand them, and regard them as
inferior.
It is true that many bad foreigners commit crimes in Japan, but this mere fact causes Japanese to think
that all foreigners are dangerous and attribute the cause of unsafe society to foreigners, making the foreigners
scapegoats. In the increasingly "internationalizing" country, Japanese people seem to have beome more
xenophobic by looking upon foreigners as dangrous, unwelcomed outsiders after all.
教材の開発は、基礎演習の問題シートやコミュニケーション活動のワークシートなどももちろん
重要であるが、授業で取り扱う話題やテーマに関して、教師自らが生徒の問題意識や知的関心に訴
える英文を作ることが最も大切だと考える。インターネットや英字新聞からも教材を得ることはで
きるが、目指すテーマや問題とずれていたり、英語が難しすぎて生徒に合わなかったりということ
が多い。教師が生徒のレベルや関心にふさわしい英文を提示し、ディベートの際に使える語句を適
宜文中に配置し、その内容に基づいて問題を投げかけていく方が、教師自身のモティべーションも
上がり、英語を書く力も伸びる。
なお、教師自身の作った英文を読ませた後は、次のような教材を用意する。
1) 内容把握を助ける英語による質問用紙
2) ディベートに使える語彙集
3) 参考となる意見を記したシート(これも教師が作る)
4)データ(英文・日本文)- 統計資料から借用
⑧ 基礎力の定着・知識の定着をコミュニカティブな方法で図る指導
1.SELHi研究開発初年度の生徒の実態
(英語コース1年生40名対象 平成14年4月17日 スタディーサポートより)
○ 中学生のとき 平日の平均英語学習時間 36分
(ほとんどしなかった 32.5%)
休日の平均英語学習時間 50分
(ほとんどしなかった 25.0%)
○
1
2
3
英語の語句の調べ方
辞書で文意に適当なものに見当をつける
辞書で文意に適当なものに見当、例文も確認
辞書の一番目の意味だけ確認
45.0%
27.5%
15.0%
○
1
2
3
英語の長文の読み方
パラグラフの意味を押さえ、主旨を理解する。
一文一文の意味を押さえながら読む
全体に目を通し、何に関する文章かまずつかむ。
30.0%
30.0%
25.0%
○
1
2
3
4
英語の苦手な事項
英語を正しく発音すること。
英語で文を作ること。
単語・熟語や例文を覚えること。
長文を読解すること。
40.0%
25.0%
12.5%
12.5%
2.生徒の基礎力をつけるための指導
前述のごとく、基礎的な知識を身につけさせて、それを発信への確かな力とつなげるために、地道な
反復練習や基礎事項の理解を欠かすことはできない。しかし、それがあまりにも単調で無味乾燥なもの
- 84 -
であれば、生徒の意欲は減退し、効率も悪くなる。基礎基本は後のコミュニケーション活動のための手
段として忍耐強く取り組むべき苦痛を伴うトレーニングである、という側面があることは否めないが、
そこにもまた有意義な情報の交換を伴うコミュニケーションの要素が取り入れられないかを、辞書指導、
発音、語彙、表現、文法の面から研究した。
1) 辞書活用指導
辞書の例文にまで目をやっている生徒が27.5%にとどまることをを受け、4月の英語Ⅰの授業
では毎時間辞書指導を行った。GENIUS 英和辞典とその活用問題集を使用した。辞書の特徴と活用の
方法について、15分程度説明と辞書を引く演習を行った。特に、品詞の理解と多義語などに焦点
を当てた。以後、テキストなどの未知の語句については、ノートにリストアップし、品詞、発音記
号、複数の意味を辞書で調べて書き写すよう指導した。
2)
発音指導
英語の苦手な事項で、発音がトップにあがっていたことを受け、本校独自設定科目である「実践コ
ミュニケーション」(以下PC)では、4月~5月にかけて、発音指導を集中的に行った。テキスト
として「英語の正しい発音の仕方(基礎編)
(リズム・イントネーション編)」
(岩村圭南著・研究社)
を使用した。授業ではALTのモデルの後にリピートする機械的な訓練を繰り返し行った。
・ 発音の訓練
発音指導は、例年と同じように、1学年当初から重点的に行った。
1. 『英語の正しい発音の仕方』(研究社)で音素・発音記号と実際の音とを繰り返し教える。
2. レシテーション大会に向けて、各自が選んだテキストの1語1語について、発音記号を参照
させながら、正しい発音を身につけさせる。
3. 発音を重視してレシテーション大会を実施し、表彰する。
発音の指導は、授業でも時間を割いて行い、1年次の夏休みまでに基礎が身に付くようにする。
この指導によって得られた成果は、次のとおりである。
1. 中学校まで何となく我流で身につけていた発音を体系化でき、音素やリズム・イントネーシ
ョンなどの法則性を理解することによって、発話に対する抵抗が減り、話す意欲が大いに高
まる。
2. 発音のルールが定着することによって、音読にリズムがつき、意味のまとまり(チャンク)
を考えた読みができるようになると同時に、英文の即解力が高まる。
3. 音を聞き分ける力がつき、ミクロレベルの聞き取り能力が伸びる。
これらの能力の伸びについては、実証できるほどの顕著な有為なデータは取れなかったが、生
徒の得た自信に裏打ちされる意欲の高まりにより、授業態度が非常に活発になったことに特に
注目したい。アンケートの結果、「発音がうまくなったことにより、英語を話す自信がついた」
と答えた生徒が85%であったことが、このことを物語るであろう。
3) 例文の暗唱・暗記
基本的な英文の structure を定着させるため、英語Ⅰで文法指導に利用している参考書「総合英語
FOREST」に付属の暗唱例文集を利用して、英訳の小テストを継続して繰り返し行った。また、長期
休業後には、まとめてテストに取り入れた。
4) 語彙の定着
語彙指導では、単語の意味をすぐ日本語に結び付けて覚えさせるのではなく、語の意味や使
い方を、そのイメージとともにコミュニケーション活動でしっかり定着させることが肝要であ
る。
指導例)
1. 新しい単元に入ったときにその単元のテーマについて思いつく語を述べさせ、ブレイン
ストーミングをする。生徒に発言させてそれらを板書する。
単元テーマ:Dating
生徒の出した例:go shopping, go to a movie, play at home, restaurant, kiss, a lot of
money, night view, Parco, Kyoto など
2.JTL と ALT が今度は交互に Dating に関わる語彙の定義を英語で述べ、生徒に当てさせ
る(生徒は予習してきている)。正解の単語を板書する。
- 85 -
例)S(Student) J(JTL) A(ALT)
J: You share the cost of the bill at a restaurant, movies. What do you say?
S: ① Split a bill.
A: OK. It has the same meaning as “split a bill.” What do you say? You go …
S: ② Go Dutch.
3.(①②を板書し、生徒全員で ALT の後について板書したものをリピートさせる。
)
J: When you go out with your girlfriend, do you usually go Dutch?
A: No! I normally ③ pay for everything.
(③を黒板に板書し同様にリピートさせる。)
J: Now, what do you say, if you have a date with someone other than your
boyfriend or girlfriend? You …
S: Cheat.
J: That's right. Also, you can say cheat or ④ cheat on.
(④を板書し同様にリピートさせる。)
J: So, Have you ever cheated on your girlfriend, David?
A: No! Never! We have been ⑤ going together for 2 years. I’ve never cheated on
her!
S: (Laugh)
J: You’ve never cheated on her? You never ⑥ go on a date with some girls when
you have been ⑦ going out with her?
A: I swear I haven’t done. Otherwise my girlfriend is killing me!
(⑤⑥⑦それぞれを板書しそれらの語彙の活用例も含めて説明し、例文を生徒にリピー
トさせる。)
4.あらかじめ作っておいた単元のワードリストを生徒に配る。
5.ペアを作り 2 分ずつ生徒に彼氏彼女との体験談か、理想の彼氏彼女との空想の体験談を
英語で話させる。始める前に 1 分間ワードリストを見ながら考える時間を生徒に与える。
聞いているパートナーは話し手がいくつそのワードリストの単語、フレーズをスピーチに
用いたかをチェックしていく。
6.ペアでのスピーチ練習の間、JTL,ALT はモニタリングし、生徒が正しく語彙を活用しな
がら話しているかをチェックし、その活用に誤りがあればその場で正す。
ワードリストの例
□ go out
□ make me happy
□ fun to be with
□ go together for 2 years
□ always late
□ have a nice smile
□ ask someone on a date
□ fight
□ cheat on
□ hang out
□ make up
□ cute
□ go shopping
□ split the bill
□ pretty
□ go Dutch
□ pay for everything
□ gentle
成果 この語彙関わるコミュニケーション活動では以下のような 3 段階のレベルアップを図るこ
とができた。
1.各単元のテーマに関わる語彙を予習段階で各自が確認する段階(語彙表現の理解認識)
2.授業時の JTL と ALT のターゲットとなる語彙や表現を用いての現実的なやりとりを通して、
どのような場面でどのように使うかを理解する Pre-active vocabulary の段階(適切な使用
場面・用法の習得)
3.最終的にはターゲットとなる表現を適切な状況・場面または適切な形・用法で使用し、自己
表現できる段階(ターゲットの語彙・表現を active-vocabulary/expression として使用でき
る)
課題 このような活動は time-consuming な部分があり、時間的な効率を上げながら指導していく
必要がある。このタイプの指導を集中的に指導する場合は威力を発揮するが、指導すべき語
彙が多い場合には更に改善工夫を要するだろう。
5) 表現の定着
多様な表現を定着させる際には、重要表現を機械的に覚えさせるのではなく、「言語の使用場
- 86 -
面と働き」に十分な配慮をして行う。言葉の機能を重視し、同じ機能を持つ表現を場面やニュ
アンス、スピーチレベルとともに教えた後、擬似的な場面を教室で設定して、練習させる。
指導例) Function - a「怒る」, b「不満を言う」, c「批判する」
1. これらの機能を持つ表現で、生徒の理解の範囲にあるものを抽出して提示し、英語で各表
現が持つ意味やニュアンスを教えた後、音読によって反復練習させる。
a. When you say something you felt angry about, you say something like,
I felt[was] very angry when I found she was lying.
I hated it when he cut in the line.
It made me crazy when he slapped me on the cheek.
I was going to explode with anger when he broke my camera on purpose.
I was furious at her for deceiving me.
b. When you want to express your complaint to somebody who upset you, you say something like,
I hate to say this, but your work fell short of our expactations.
To be perfectly honest with you, I think your attitude is not polite enough.
To be frank, I don't like your sloppy attitude.
I wish you wouldn't have called me late at night.
I don't like the way you treated me.
c. When you want to tell your criticism to somebody who you disapprove of, you say something like,
You should[ought to] have come earlier. Then you would have been able to meet him.
If you had been more careful, you could probaby avoid the accident.
It would have been better if you had done it my way.
I'm sorry to contradict you, but I don't think it a good idea..
To tell the truth, I don't really like the way you talk.
2. 擬似的な場面を設定し、ペアで口頭練習させる。生徒は、学んだ表現を使って、それぞ
れの場面における気持ちを表現する。片方が終わったらもう片方は別の表現を使って同
じ場面での練習をする。
a. You are riding a crowded train. Someone steps on your foot hard, but he doesn't apologize to
you. Tell this experience to your mother.
b. You hear that your friend was telling a bad joke on you to somebody else. You think you should
complain about it to your friend.
c. Your friend has had his bicycle stolen at the station. He says he locked it but that he left it where
nobody is supposed to leave their bicycle. You think you should say something to him.
3. その時間および次の時間に復習をし、確実に定着するよう配慮する。
成果:このような方法は、表現をその意味や込められた感情を理解して身につけられるため、
大変イメージしやすい。そして、それを場面をイメージしてすぐ使うため、使い方や
表現の持つ意味やニュアンスを身をもって身につけられ、定着は大変よい。
課題:1) 定着はしても、同じような使用場面に頻繁に遭遇しないと、使える状況でもなかな
か口をついて出てこない。合宿などでできる限りを話す機会を与えているが、それ
でも実際の使用場面が少ないことは否めない。身につけた表現を、英語を話す人が
少ない環境で訓練するには、トレーニング的な訓練も併用する必要がある。
2) 文法事項が既習の場合は定着が早いが、そうでない場合は使えるようになるには時
間がかかる。文法を教えてから演繹的に表現のバリエーションを教えるのか、表現
を覚えさせてから機能的に文法事項を学ばせるのかに悩むことが多かったが、理解
し使えるようになる、という観点からすれば、前者の方が効率はよいという結論を
得た。
6) 文法事項の定着
文法事項の定着を図り、それを実際のコミュニケーションで使えるようにするには、次のス
テップが必要である。
- 87 -
文法構造の持つ働きと意味範囲の理解 → 構造の理解 → 使用場面の理解 →
疑似的場面での使用練習 → 実際の場面での適切な使用
理解の段階でとどまると、文法問題はできても、実際の使用にはつながらないので、この段
階でもダイアローグなどによって場面を設定して理解させる。文法事項の解説はできうる限り
簡潔明瞭に行い、例外や細かい規則などは避けるようにする。以下に理解の段階から擬似的使
用練習直前のテキストとタスクを示す。
指導例) 文法事項 「助動詞」
Dialog James: You know, Masako is going to move to Tokyo.
Masao: Oh, no. That can't be true. She did say she was going to Tokyo to visit the
Disneyland, but she didn't say anything about moving.
James: Really?
Masao: She must be joking or you may have misunderstood her Japanese.
James: You may be true..
Masao: You should have made sure. She must have said, "I will go to Tokyo," not "I will
move to Tokyo."
解説
1) 助動詞 can ,may, must には別の意味がある。
(1) can 「~でありうる」 (2) may 「~かもしれない」
(3) must 「~にちがいない」
*これらの意味では、いずれも後に be が来ることが多い。
2) cannot, may, must の後に have 過去分詞が来ると
(1) cannot have 過去分詞「~であったはずがない」
(2) may have 過去分詞「~であったかもしれない」
(3) must have 過去分詞「~であったにちがいない」
*should have 過去分詞は「~すべきであった」の意味で、主語が I, we の場合は
しなかったことへの後悔を表し、それ以外の主語の場合はしなかったことへの
非難を表す。
TASK
can, may, must, cannot have, may have, must have, should have を入れて意味の違いを考
えてみよう。
1) The work ( ) be very difficult.
2) Tom ( ) studied very hard..
For Your Referece 助動詞と進行形
Masao: Oh, I forgot! I had an appointment with Masako at the park at four o'clock.
James: Really? Dash to the park. She may still be waiting.
Exercise
1. 次の絵の状況を英語で説明してみよう。
1) Jiro が英字新聞を読んでいる。横から友達が「読めるの?」と尋ねている絵
2) Kenji はがパーティーに誘われて、「行ける」と尋ねている絵
3) Yuriko がドアをノックして、「入っていい?」と尋ねている絵
4) Yoshio が時計を気にして「急がなくっちゃ」。と言っている絵
5) Akira がガラスを割って困っている。横から友達が「お母さんに謝った方がいいんじ
ゃない?」と言っている絵
1) Jiro asks his friend, "
?"
2) Kenji
3) Yuriko says, "
"
4) Yoshiko says
5) Akira's friend is saying to him, "
- 88 -
2. 次の空所を完成しよう。
1) Jiro is now studying English hard, but he cannot speak it so fluently. In a few years,
however, he'll
.
2) Kenji made many mistakes in the math test. The teacher will give another test for students
with poor scores. Kenji will probably
the make-up test.
3) Yuriko's dream is to study abroad. But her father doesn't like it and he is very stubborn.
She will not
.
4) Akira will have a tennis match next Sunday, but he is not so confident. He may
the match but chances are fifty-fifty.
1)
2)
3)
4)
3. 次の絵の状況を英語で説明してみよう。
1) Jiro が友達を見て「きっと疲れているんだよ」と言っている絵
2) Kenji が「お腹減ってる」と言う友達を見て「そんなはずないよ」と言っている絵
3) Yuriko が友達を見て「寂しいのかも」と言っている絵
4) 「本当,まさか」と言っている Akira の絵
5) Yoshio が「雨になるかも」と言っている絵
1) The man says, "Jiro, you
"
2) Kenji thinks Goro
3) Yuriko thinks Sam
4) Can it
5) It
4. 次のような場合,それぞれの人はどんなことを考えたりどんな気持ちになっているか
表現してみよう。
1) Jiro was not careful and dropped a dish. The dish broke to pieces.
2) Kenji came home and he found something unusual in the house. The whole house was a
mess and money was missing.
3) Tomoko's boyfriend Kazuo loves her very much. But the other day her friend said, "Kazuo
doesn't love you any more. He said so. Tomoko doesn't believe it.
4) Yoshiko is waiting for her friend Yuko. Yuko said, "I'll take the 8:10 train., but Yuko is late.
She ofen gets up late and misses train.
1) I should
2) Someone
3) Kasuo
4) Yuko may
成果:文法事項を使うコンテキストをできる限り与えながら、それを使った表現の表出する感
情やニュアンスを大切にして基礎を教えることによって、文法構造の持つ意味真性や働
きを理解させることができ、大変効果的である。定期テストなどで書く課題を出しても、
練習して身につけたことが確実に定着していることが伺える。
課題:1) 1つ1つの文法事項を扱うのにかなり時間がかかり、細かい規則などは教えていな
いので、1年間に進める範囲が限られる。
2) 文法の参考書などで、再度自学自習をさせる必要があるが、その場合に十分な練習
問題をさせるなどの方法しか考えられず、コミュニカティブな方法には限界がある。
*文法指導にコミュニカティブな活動を取り入れる実践例
・活動:仮定法過去および仮定法過去完了の機能・意味・構造を理解させた後、課題として、仮
定法過去または仮定法過去完了を用いた簡単なスピーチを書いてくるように指示する。
その際次回への準備として、書いたスピーチをそのまま覚えるのではなく、Key points
- 89 -
をメモして、それを見ながら話すのはよいことにした。
(活動時間予定20~25分)
・活動の目的: ①仮定法過去および仮定法過去完了の復習と定着を図る。
②文法的に正しく話しているかを、聞いている者が判断できる力を養う。
③ Key points のみを頼りに話すことで、自分の言葉で英語を話す力を養う。
・活動過程: ①クラス(40人)を6グループ(6~7名)に分割する。
②グループごとにスピーチをし、聞き手は質問をする。<所要10分>
③グループの中で、代表者を決める。(じゃんけんや話し合いにより)
④各グループより発表者が前で発表する。
⑤他グループの者は、自発的または指摘されたら質問や感想を言う。
(所要10分)
・評価とフィードバック:
①スピーチの中で、話し手が使った仮定法過去または仮定法過去完了の文が正しい
文脈の中で、正しい形で使われているかどうかを、聞いている全員にチェックさ
せる。
②授業者が、スピーチをした生徒の仮定法過去または仮定法過去完了の使い方につ
いて、コメントし、改善を要する場合は訂正をする。
③教師のコメントをもとに、スピーチ原稿を訂正させ、併せて Key points を書い
た用紙を提出させて、添削返却する。
・スピーチと Key points 例 (原文ママ)
◆仮定法過去完了を使ったスピーチの例
When I was 14 years old, I went on a trip to China. During the trip, we bought lottery tickets. I chose
some numbers and then my father wrote down three of them at randam. Few days later, the winning
ticket's numbers were announced. To my surprise, the numbers were almost the same as mine. But my
father didn't write all of them. If my father had written these numbers, we could get a lot of money and
gorgeous house. (教師の指導 could get → could have gotten)
Key points 例
- went on a trip to China
- bought lottery tickets
- chose some numbers
- to my surprise
- my father didn't write
◆仮定法過去を使った例
If I were a wizard, I could do anything by mysterious power. For example, I would fly in the sky as Harry
Potter. I could score 100 on the test without hard studying. I could run very fast without tiredness and I
could turn into cool guy, so I were loved by all women as Yon-sama.
(教師の指導 were loved → would be loved)
Key points 例
- my power
- fly
-Harry Potter
- score
-study hard
- tiredness
- cool guy
- be loved
-Yon-sama
⑨ 高大連携のあり方の研究
3年間で取り組んだ、高大連携は大きく分けて研究を行った。
1) 京都外国語大学との連携
2) 英語教育が専門の大学教員との連携
いずれも本校の英語教育や英語教員にとって、大変有意義であり、SELHiの研究開発に資するも
のが多かった。
1) 京都外国語大学との高大連携(平成15年度~16年度)
・大学から日本人の教員とネイティブに来てもらって2時間連続のTTの授業を受ける。
・「総合的学習の時間」のフィールドワークで大学を訪問し,平成15年度・16年度とも講義を2時
間受けるとともに留学生との交流をもった。
平成16年度は、1時間目のCALLを使った授業においては実践的・効率的な演習を体験し、映画を題
材にした教材を使う授業では、普段学んでいる英語が実際の生活の中で使われるいきたものであると
いうことを再認識できた。2時間目は、「国際人になるためには何が必要か、また、何が大切か」を
テーマに講義を受け、生徒たちは、英語コースで学習する上で貴重な指針や心構えを学ぶことができ
た。
留学生との交流でも、生徒たちは大変楽しく、貴重な体験をすることができた。
・地歴公民科のイマージョン授業計8時間(イマージョンの項に詳記)
- 90 -
・平成16年度は、京都外国語短期大学で本校教員が、米原高等学校で試みている教授法で授業をす
るという機会を与えられた。受け持ったテーマはBasic Grammarで、コミュニカティブな方法で英文
法を教え、定着を図るというものである。
わずか5回、8時間程度の授業であったので、すべての文法項目を網羅することはできなかったが、
時制、態、法・助動詞について、大学生用の独自の教材を製作して講義・演習を行った。
教材製作については、本校が重視している、個々の文法事項が使われる実際の使用場面を詳しく提
示し、そこで、どのような意味や感情を持ってそれが使われるかを説明した。
例)be supposed to も多くの場合義務を表すが、これにはさまざまなニュアンスが伴う。
1) Students at this school are supposed to wear white socks.
(白いソックスを履かなくてはならないことになっているのだが、守っていない生徒も
一部にはいる)
2) What are you doing? You're supposed to be in bed.
(寝ていなければならない時間なのに、なぜ起きているのか!)
3) You're not supposed to park here.
(建前ではここに駐車してはいけないことになっているのだが、実際は大丈夫だろう。)
あるいは(ここでは駐車禁止ということになっているからご遠慮願いたいのですが)
4) We're supposed to be there by 6 o'clock, but we are not likely to arrive on time.
(6時には着くことになっているのだが、間に合いそうにない)
5) This drug is supposed to work for cancer.
(癌に効くということになっているけど、評判とは違って効果は疑わしい)
6) A: Your sister has an interesting look.
B: What is that supposed to mean?
(それって一体全体どういう意味よ!)
このような教材をもとに、京都外国語大学の助教授とともに、ティーム・ティーチングを行い、
場面を与えて使わせる練習をさせた。また、『エイザーのわかって使える英文法』
(プレンティス
ホール)もよく活用した。
教材は同大学との共同研究としてWebページに公開した。また、最後に実施した大学生に対す
る試験もできる限り上記のコンセプトやコミュニケーションの視点を取り入れて製作した。
例1)次の文はどんな働きを持っていますか。下から選んでください。(10)
1) If I knew his home telephone number, I could get in touch with him more quickly.
2) If I had no homework, I would not study at all.
3) If I found a purse on the street, I would probably bring it to a police office.
4) What would you do if you won 100, 000, 000 yen in a lottery?
5) If you were a little more broad-minded, you would be relied upon by more people.
6) If I were you, I would not believe such a sweet talk.
7) If I were not this busy, I would help you.
8) If I had waited for her five minutes longer, I would have married her.
9) If you hadn't been wearing a seatbelt I'd have been seriously injured.
10) If you had read the letter carefully, you could have understood her true feelings.
ア)本当に後悔してるよ
イ)それが当然の義務だと思います
ウ)あなたに忠告します
エ)私は怠け者なんです
オ)あなたの価値観を知りたい
カ)申し訳ないけど、あなたの申し出をお断りします
キ)あなたも不注意でしたね
ク)よかった、よかった
ケ)何て面倒なんだろう
コ)だからあなたはだめなんですよ
例2) 次の文の後に例にならって、可能な文を自由に続けてみましょう。
ex) He spoke difficult English, so I didn't understand his lecture at all.
1) He's just gone to be bed, so
.
2) I haven't seen Tom this morning. I wonder
.
3) I've never been late for school. I usually
.
4) I haven't seen my best friend since our graduation.
.
- 91 -
5) If only I had been more careful,
.
高大連携と言うと、大学の先生に高校へ授業や講演にきてもらうことが主流であるが、高校現
場の教員が大学生に教えたり、大学教員とティーム・ティーチングをすることも、今後は試みる
必要があるであろう。大学の英語教育も変革が求められている。高校での実践を大学でも応用す
ることで、高校の教員にとっても大学の教員にとっても発見できることが多い。また、協同で教
材開発を行ったり、教授法の研究を推進することが真の高大連携であると考える。
その意味で貴重な試みであったと言える。この講義についての学生への授業評価アンケートの
結果は次の通りであった。この評価方式も、私たち高校現場の教員には参考に資するところが多
かった。
2) 授業指導による連携
4名(平成16年度は3名)の英語教育が専門の教授に来てもらって、授業の指導をお願いした。
来ていただいた先生は、関西大学の齋藤栄二教授、京都教育大学の鈴木寿一教授先生、平安女学院
大学の中邑光男教授、平安女学院大学の瀬川俊一教授(平成14年・15年)である。齋藤教授と瀬川
教授に はすべての科目を、鈴木教授には主としてリーディング科目を、中邑助教授にはディベー
ト科目を見てもらって、事後個々の授業に対する評価、アドバイスなどをもらった。また、英語授
業に対する考え方や改善のためのアイデアなどももらった。授業改善のためには、教員の謙虚な学
ぶ姿勢が必要で、飾ることなくありのままから出発し、徐々に力量を高めていけばよいということ
を、4人の先生方から教えていただいた。教員は授業の手法について、評価を受けたり助言をもら
ったりして、少しずつ自信を深め、意識を変えることができた。授業を公開することに対する抵抗
も完全になくなり、自らの授業を高めようという意識が、それぞれの研究テーマを見つけての意欲
ある取り組みにつながり、成果は非常に大きいものがあった。
個々に教えていただいたことは、これまでに記した各授業での取り組みに反映させているが、い
ずれの先生も、基礎的な訓練の大切さ、学んだことを発信につなげる授業のあり方、生徒の意欲を
高め、より真の英語力へつなげる手法を事細かく教えてくださった。さらに、授業の改善に対して
高い評価をいただいたことも、我々の自信につながった。
平成14年度~16年度にいただいた主な指導事項や感想を転載する。これらの助言の多くを、授業
改善に取り入れた。
[1]平成14年度
齋藤栄二先生
・OCCの授業では、活動の内容が多彩になると同時に、生徒の参加が意欲的になっている。
- 92 -
・スピーキング中心の授業では、話をするときメモを書いた紙を読み上げないことが大切。
・発音については、モデル・リィーディングの後のコーラス・リィーディングだけではなく、一
人ひとりの生徒が発音練習をして、それをクラスの全員が聞くという設定にすると、生徒の緊張
感も生まれより丁寧に発音するようになる。
・語彙の説明はできるだけ最小限に抑え、コミュニケーション活動をもっと増やすべきである。
・スピーキングの活動を増やす方向として、ペアワーク→グループワーク→全体の前でのデモンス
トレーションというシステムを全体の合意のうえで各授業において構築するとよい。
鈴木寿一先生
・使用している教材が非常に読んで楽しい内容で、大人でも先が読みたくなるほどおもしろい。ま
ずこの授業はこの点で成功している。
・リーディングの授業であるが、授業全体がほとんど英語で進められていて、いかにもコミュニケ
ーションを重視した授業であると感じられた。
・リーディングの授業にありがちな、黙読中心で内容理解の問題に答えを書くというようなよくあ
るパターンでなく、導入時の英語によるsmall talk 、生徒による教材の音読、英語による内容
についてのQ&A、教材中の登場人物の会話をテキストを見ないで自分の英語で再現する練習な
ど、多彩な活動が組み込まれていて、50分の授業があっという間に済んでしまった。
・参観者にとっても時間が経つのがわからないほどの楽しい授業であった。生徒たちもリラックス
して先生の質問に答えたり、ストーリー中の対話をテキストを見ないで再現していた。
・英語には多少の難はあるが、予想以上に英語で意思を伝えていた。誤りをおそれずに話す態度が
身に付いているようであった。1年生からの積み重ねがこれらのことを可能にしているものと思
われる。
・語彙についてもQ&Aをしながらパラフレーズなどの手法を用いてすぐれた指導をしておられる
ことにも感心した。導入した語彙は、次の授業以降でも繰り返し提示しておられるとのことで、
語彙指導の良いお手本になると思われる。
・使用している教材にはテープがないので、ALTに録音をお願いしてはどうか。
録音する場合、ALTだけでなく、日本人教師も役割分担してテープ教材作りに参加してはどう
だろうか。単なる朗読ではなく、気持ちを込めて朗読すると生徒の音読にも反映し、効果が期待
できると思われる。
・音声教材のない教材を音読させているが、一部に上手に朗読ができる生徒がいるが、やはりあち
こち詰まったりする生徒が多いので、次のように指導過程を変えてはどうか。一つの章を以下の
ように扱っては?
○前時の章の復習
パラレルリーディング and/or シャドウイング
対話の再現
○本時の新しい章
教師またはCDによる朗読をペースメーカーに黙読
英語によるQ&A
○次の時間の新しい章
予習なしで教師又はテープで朗読を聴きながら、テキストを黙読させる。
おおざっぱな内容のQを与える。TorFでも可
○家庭学習
習ったところをテープでパラレルリーディング and/or シャドウイング
授業で朗読をペースメーカーに黙読したところを予習
・できれば1冊読み終わった時点で、章ごとに劇化して演じさせるとよい。
中邑光男先生
・一チームだけがディベートを行うのではなく4チームが同時にディベートを行う。
・MCやタイムキーパーも生徒に任せる。
・ディベートにもっとプリゼンテーションの手法を入れる。議論をことばだけで伝えるのでなく、
チャートなどを利用して、ヴィジュアルな情報も使うことによって、より正確なコミュニケーシ
ョンを心がける。
- 93 -
・リバタルで誰が話をするのかを明確にする。出来ればその責任を形で表すために話す人はその場
に立つ。
・ステージ上で生徒同士が相談することは基本的に禁じる。
・どうしても生徒が困った場合に使うことが出来る"Help us!"カードを作成しそれを回数を決めて
使わせる。困っていると教師が察するのではなく、生徒に困った時を自覚させ、行動をとらせる
ことで、行動にメリハリをつけることが期待できる。
・現在のテクニカルタームのリストでは名詞のリストになってしまうので、その名詞を使いこなす
ためのコロケーションの情報が不足する。そこでグループに表現したい内容を英語で書かせて、
その間違いを直したものを生徒に配る。このプリントに関してはその中から試験をするなどして
知識の定着化をはかる。
・ディベート中に生徒が沈黙する時間が多かったが、それは英語で言われたことに対してそれを情
報処理するという作業に慣れていないこと、分からない場合にどのように対応すればよいのか分
からないこと、などが主な理由であると感じた。つまり生徒の力のisと生徒の力のshould beと
いうべきものが大きく乖離しているのがこの沈黙の根本的原因のように感じた。それを埋めるた
めの「ブリッジ」作りがうまくいけば、将来かなり白熱するディベート作りも不可能ではないと
思う。
瀬川俊一先生
・Teaching Plan通りに進行しなくてもよい。ワークシートの表に何を記入するか混乱のないように指示徹底。
描出話法を意識させるレベルに至るまでの指導は高度だが、やりがいがある。
・生徒に多くの作業を課し、発表の機会を与える授業は動機付けに効果的。
・発音について、子音結合の発音指導を今後もっとすべき。
[2]平成15年度
齋藤栄二先生
1 教師集団が変わらなければ、英語の授業は変わらない。
筆者はSELHi指定校としては、滋賀県立米原高校(運営指導委員)のほかに、大阪府立千里高
校(学校協議会委員長)、京都市立紫野高校(学術顧問)の三校に関係してきた。また三重県の
SELHI指定校である県立川越高校の招請に応じて授業研究会に参加した。比較的多くのSELHi指定
校を訪れる機会に恵まれたといって良いと思う。それらの訪問の結果から言えることは、結局
(1)そこにどういう人がいたか。
(2)それらの教師集団がどういう協力体制を組んだか。
が成功のキーポイントであると言える。
世の中はIT時代に入ってきて、パソコンを始めとする先進機器の導入が進んでいる。それらの
機器が重要でないとは言わないが、それらを動かすのは教師集団であり、その教師集団に力がな
ければ効果を発揮しない。そこで改めて考えたいことがある。それは教える上での4要素である。
教える上で欠かせない4要素とは、
(1)生徒がいること。
(2)教師がいること。
(3)教材があること。
(4)指導法があること。
である。そして、その中心には教師がいる。教師が生徒に働きかけ、教材を選定し、そして指導
法を決めるのである。その中心にいる教師が力を発揮しなければ、教育効果は上がらない。米原
高校がSELHI指定を受けて、従来の英語の授業を大幅にレベルアップ出来たのは、米原高校英語
科の先生方の努力とそれに答えた生徒諸君の力の結集の賜物であった。まずそのことを強調して
おきたい。
2 積極的な授業公開
本音でいえば、教師は自分の授業を見られるのを嫌がる。しかし米原では、当初からそういう
ことはなかった。Everybody is welcome.というのが基本姿勢であった。外部の方々、特に教え
る専門家である他校からの教師に授業を見られることは、ある意味ではつらいことである。普通
はどうしても授業を見られることを避ける方向に行く。米原高校ではそういう方向をとらなかっ
- 94 -
た。これは米原高校英語科教師集団を率いた英語科主任山岡教諭の当初からの方針であった。そ
してそれに協力した米原高校英語科の先生方のチームワークのおかげであった。見られるために
は、それぞれの教師が、やはり自尊心をかけて、良い授業をお見せしようと心がけるのは当然の
ことである。この辺は、やや舞台俳優に似たところがある。観客の目にさらされることによって、
演技は進化する。それと同じような現象が米原高校に起こった。米原高校では「自由に授業をみ
てください」というスタンスである、ということが自然に伝わり、それによってかなり多くの訪
問者が同校を訪問することになった。筆者自身もその一翼を担わせていただいた。筆者が大学院
で担当している博士課程後期の院生も筆者と何度か米原を訪れた。彼らもいずれ高校の英語教師
を経験したベテランである。
その結果、英語科の先生方は、絶えざる緊張感の中におかれることになった。この緊張感から
逃れようとしなかったことが、英語の授業のレベルアップに繋がったことは間違いない。米原高
校英語科の先生方に拍手を送りたい。
3 普通の高校における普通の生徒を対象とした授業実践
米原高校に通い始めた最初のころ、私は先生方の一人から「グランドに猿が現れることがある
んですよ」と聞いた。これからもわかるように、周りが大都会のような教育的環境があるわけで
もない。ひとことで言うと「普通の高校における普通の生徒を対象とした授業実践」というのが
特徴である。SELHi指定の目的は、特別な英語のエリート高校を作り出すことではない。それよ
りも日本全体の普通の高校生の実践的コミュニケーション能力の向上が狙いである。その意味で
は、米原の実践は他校にとっても「手が届きやすく」「モデルにしやすい」実践を提供している
と考えられる。米原高校の英語授業実践のひとつの意義の深さはここにあったと見てよい。たし
かに最初のころは、旧来の訳読式のやり方を彷彿とさせる授業、フレッシュに新しいやり方に挑
戦している授業、英語での自己表現力を生徒から引っ張り出そうとしている授業などさまざまで
あり、スタートライン一直線上にすべての教師が並んでいたわけではなかった。しかしながら先
生方の trial and error の中で次第に良い授業に対する共通理解が生まれてきた。しかもある一
定のやり方を個々の先生方に枠組みとして強制するようなことはなかった。その意味では各人の
工夫は尊重されてきた。それぞれの先生方の個性の上に立った共通理解と努力が、普通の高校の
普通の実践を成功に導いたといってよい。
4 計画の緻密さ
たとえば15年の前半だけをとりあげても、(4月)1年生英語コース、オリエンテーション
合宿に始まり、
(5月)1年生英語コースには必修の米原高校レシテーションコンテスト。
(6月)
虎姫高校ESSとの合同レシテーションコンテスト。1,2年英語コース対象の面接によるスピー
キングコンテスト。(7月)1、2年英語コースの夏季英語合宿。
(8月)一日かけての英語リー
デイングマラソン。1年英語コースのスピーチコンテスト。3年生英語コースのTOEIC講習。1
年生ミシガン州立大学連合日本センター研修。国際情報滋賀学園・米原合同スピーチコンテスト、
英語コース3年生TOIEC公開受験、と詳細な計画が次々と実施されてきている。これらのプロセ
スに全力を挙げて、生徒諸君が参加していけば、力がついてくることは間違いない。
なおTOEIC公開受験は教頭先生も含め英語科8名の教員全員が受験している。これらはすべて
英語科の先生方の立案によるものと思われるが、計画の緻密さがSELHi指定を効果的に導いたと
いえる。
5 今後の方向
実践的コミュニケーションの最終目的のひとつは、生徒それぞれが自分の考え方や、感じ方、
意見をしっかり英語で述べられる力をつける、というところにある。これは原稿を準備して意見
を述べる、というところからスタートするが、最終的には即興でも述べられる力というところへ
持ってきたときに、限りなく本物に近くなる。これはいうほど簡単ではない。そのための方法論
をどうするのか、そしてそれをどう実践していくのか、それらが今後の実践的課題と思われる。
鈴木寿一先生
I. 気づいた点
1.
英語科の先生方の協力体制
- 95 -
米原高校の英語科の先生方の協力体制がすばらしいことは特筆に値する。山岡憲史先生を中
心にみんなで力を合わせて、より良い英語教育プログラムを作ろうという意欲が感じられる。
特に平成15年2学期には、1ヶ月以上にわたる文部科学省の中央研修に山岡先生が参加され
て学校を留守にされていたリーダー不在の間も、全員一致協力して乗り切られたことは、日頃
のチームワークのよさがなければできなかったことであろう。
2.
英語科の先生方の研修意欲と人柄
次に特筆すべきは、英語科の先生方の研修意欲と人柄である。「英語教員として必要な指導力
を伸ばし、生徒により良い英語教育を提供したい。
」という気持ちがすばらしいことである。英
語教育を専門とする大学教員を招き、日頃の生の授業を公開して、指導助言を受けるという、
これまでほとんど行われなかったことを実行しておられる。さらに素晴らしいのは、私たち大
学教員が、指導助言させていただいたことを取り入れて授業を改善しておられるのがまた素晴
らしい。誰しも、自分の欠点を指摘されるのは嫌なもので、時には心を閉ざしてしまったりし
がちだが、米原高校の英語の先生方は、謙虚に受け止め、少しずつ授業を改善しておられるの
は、先生方の人柄の良さを表すものである。
3.
授業を受ける生徒の英語学習に対する積極性
授業を受ける米原高校の生徒たちの英語学習に対する姿勢が非常に良い。ことばの学習を楽
しんでいる生徒が多いように感じる。私は仕事の関係で米原高校と同レベル、あるいはそれ以
上のレベルの学校を卒業した大学生に接することが多く、彼らの高校時代の英語授業について
「よかったこと」と「よくなかったこと」を書いてもらうと、入学試験で点を取るための学習
に終始している授業が行われている学校がほとんどであることがわかっている。教師中心の受
験対策授業では、生徒の授業に対する姿勢は受け身になる傾向があるが、米原高校の英語授業
は、コミュニケーション能力の育成を中心に行われていて、授業に取り組む生徒の姿勢が非常
に良いのが印象的である。私といっしょに授業を見学した二人の学生も感心していた。
4.
授業中の英語使用率の高さ
米原高校の英語授業の特長はその英語使用率の高さである。長時間にわたって日本語の説明
が続くことがない。日本語の使用は、英語だけでは理解が不十分になる場合に限られていて、
生徒にもできるかぎり英語を使う機会を増やす努力がなされている。
Ⅱ.
これからの英語教育に還元できそうなこと
米原高校には*CALL教室やLL教室などの特殊な設備もなく、教材は検定教科書中心で、
英語の授業時間数も一般の学校と比べてそれほど多くないことを考えると、米原高校での授業
実践はほとんど全て一般の学校の英語授業にも適用できると思われる。たとえば、①英文和訳
から脱却した授業により、十分に読解力をつけることができ、入学試験でも効果を発揮するこ
とや、②英語をコミュニケーションの手段として学習し、用いる姿勢を生徒に持たせることに
よって、単に大学合格で終わらず、大学入学後も英語を情報獲得、伝達の手段として用いる若
者を育てることが可能であることは、日本の高校英語教育の改善のための手本となるであろう。
(* 平成16年度の段階ではまだなかったが、平成17年度にCALL教室が設置された。
)
Ⅲ. 提言したい点
1. 言語処理能力を効率よく伸ばす工夫を!
句や節単位にポーズをおいて聴かせたり、スラッシュを入れた文を読ませることによって、
リスニング力やリーディングスピードを向上させることができることが分かっているので、リ
スニングやリーディングの指導においてポーズやスラッシュを活用することが望ましい。、
- 96 -
2. コミュニケーション能力の基礎となる音読指導の充実を!
ESLの環境ではコミュニケーション活動を十分に行えばコミュニケーション能力は自然に伸び
ていくと考えられるが、EFL の環境ではコミュニケーション能力を伸ばすためには十分な学習
活動が不可欠である。コミュニケーション能力を伸ばすのに最も効果的であると考えられる学習
活動は音読で、すべての授業で多様な方法で徹底した音読指導が必要である。多様な方法による
徹底した音読指導は、4技能の向上だけでなく、それらを支える文法や語彙の習得にも効果を発
揮する。
3. より効果的な語彙指導を!
語彙学習は単語集によって行われることが多いが、効果的な語彙学習にはなりにくい。語彙学
習の中心は、生徒が家庭での予習復習、学校での授業を通じて学習した教材に出てきた語彙を覚
えることであるべきで、単語集は補助的に用いられるべきである。新しい語彙を指導する場合、
TPRの手法を用いると定着率が高まる。また、教材である英文の内容を問う質問などを与えて、
その答えを求めて、教材を聞いたり読んだりさせることも有効である。また、音読させるのも有
効である。
さらに、適切な間隔をおいて授業で用いた教材を復習させることが必要である。その方法とし
ては、多様な方法による音読指導のほか、英語による Q&A やサマリーを言わせたり書かせたり
するなど、ほかにもいろいろな方法が考えられる。
4. 聴き、話し、読み、書くための文法指導を!
最近は文法指導が軽視される傾向にあるが、コミュニケーション能力を育成するためには文法
指導は不可欠である。コミュニケーションのための基礎力を育成するには、文法指導を4技能と
結びつけて行う必要がある。特に、文法をライティングとからませて指導すると効果的である。
和文英訳は避けられる傾向にあるが、文法学習の観点からは不可欠なものである。もちろん、従
来のように和文英訳に終始せず、自分の考えなどを述べる練習も必要であることは言うまでもな
い。
5. 授業中の諸活動につながりを!
授業では多様な活動が行われているが、一つ一つの活動の間につながりがない場合があるので、
一つ一つの活動の目的を明確にし、活動間につながりを持たせる必要がある。
Ⅳ. 米原高校の英語教育の課題
1. 量的データと質的データによる効果の検証の必要性
米原高校の英語教育が成功しつつあることは生徒たちの英語学習に対する積極性などから明ら
かであるが、さらなる改善のためには、さまざまな面から量的デ-タと質的デ-タによる検証
が必要となる。
2. さらに成果を上げるための課題
(1) 教育行政面の課題
現在の米原高校の英語授業は、時間的にも労力的にも、一人一人の教員の努力によるところが
大きい。よりきめの細かい効果的な指導を行うには、もっとゆとりが必要である。そのためには、
教育行政側からの人的なバックアップも必要で、それによって授業担当時間を減らし、教材研究
や授業準備、添削などの質を高めるだけでなく、週1回程度の研修日を確保することにより、研
究会やセミナ-への参加、大学院での再研修などの機会を担当教員に与えることによって、指導
力の向上を期待することができる。
(2) 設備面の課題
- 97 -
教員の数を大幅に増やすことができない限り、現在よりも効果的な指導システムを作り上げる
ことは困難なので、リスニングやリーディングなど、どちらかと言えば、コンピューターに任せ
ても可能なスキルトレーニングはコンピューターに任せることにより、スピーキングやライティ
ングや、人と人とのインタラクションが必要な、少人数でなければできない授業を効果的に行う
ことが可能となるので、近い将来はCALLシステムの導入とそのためのソフトウェアを充実さ
せる必要がある。
(3) 指導面の課題
現状よりも効果をあげるためには、Ⅲ.での提言にあるように指導法や教材ののほか、3年間
のカリキュラムの修正が必要であろう。そのためにも、上の 1.で述べたように、様々な観点から
量的質的なデ-タによる検討が必要であろう。
中邑光男先生
・始めに
報告者は、米原高校の英語教育は非常に成功していると判断する。
その最も重要な理由は、米原高校の英語教員によるさまざまな授業の仕掛けや、さらには英語教
育プログラム全体の仕組みが機能しているからであろう。米原高校の英語プログラムを一つの「シ
ステム」と見なす場合、それに如何に「情報」という「栄養」を取り込むかが、英語教育を一定の
水準に保つために、最も重要な点であったと思われる。この点、米原高校はわれわれ高大連携研究
者から提案を得ることに貪欲ですらあったことを報告したい。これに加えて、複数の高校で開催し
たスピーチコンテスト、英語合宿、特別講師による指導など、米原高校が常に情報のインプットを
心がけ、しかも生徒に恩恵が及ぶように直接的に情報を取り込んだことは特筆すべきである。
今後、少なくとも滋賀県でスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールに指定される
高校は、米原高校の成功に勝るような仕掛けを施すことができるのか、という非常に要求度の高い
目標が与えられたと言えるだろう。
・報告者の役割
報告者は主にディベートのクラスを観察し、それに対するコメントを求められてきた。言うまで
もなく、私のコメントを教室でどのように活用するかを判断するのは、米原高校英語教師である。
当然、この判断は、生徒と教師とのラポールの有無、生徒個人や集団の様子・動機付けの高さ、ま
たは授業進度の有り様や進め様などによって異なり、それは「一見」恣意的なものと思われるだろ
う。ただこの判断が恣意的なもので終わるのか、それともある目的達成を目指した計画的なものに
なるのかは、教員の総合力の高さ、というべきものによると感じる。着実に伸びる米原高校生徒の
様子を観察して、私はこの点でも米原高校英語教師の判断を高く評価するものである。
・ディベート教育をどのように英語教育に取り入れるべきか
ディベートは、スピーチと並んで、発信型英語の中心的仕掛けのように見なされることが多い。
しかし生徒の観点から見れば、スピーチはインプットするべき英語や練習するべきデリバリー内容
がハッキリしており、そのために「分かりやすい」活動だと思われるに違いない。一方ディベート
は十分な準備に基づく思考力と即効力の両方を求められる活動は、高校生にとっては知的負荷が強
すぎることが多く、どうすれば上達するのか「分かりにくい」活動である。
教師の立場から見ても、fluencyとaccuracyの両方を求めることのできるスピーチと比べると、
ディベートではfluencyがはるかに重要視されるために指導がしにくい。とりあえず生徒にディベ
ートをさせたものの「生徒はディベート体験から何を得ることができたのか」という最も重要な点
が、教師にとっても生徒にとってもブラックボックスに入ったような状態になることが多い。
付け加えて、ディベートの指導をさらに困難なものにしているのは、ディベートに見られる形式
やルールをどこまで英語教育の中に取り入れるべきか、という点が判断しにくいことである。
例えば、ディベートでは話し手の発言時間に対して強い制限が加えられる。話す時間を5分間許
されれば、ちょうど5分間話すことが最善であって、5分以上を必要とするような話し手には競技デ
ィベートでは大きなマイナス点が与えられる。一方教育では話す時間がたとえ5分を超えようとも、
生徒が話し続ける場合、それを止めたり、それに対してマイナスの評価を下したりすることは生産
- 98 -
的ではない場合が多い。
以上の点から、高校の英語教育でディベートを取り入れる時には、目標を「生徒にディベート的
討論を経験させる」こととするのが、最も現実的であろう。
報告者が観察したディベートのクラスは、まさにこの「ディベート的討論」であった。時間制限
を与えることはなく、生徒の発言内容とその量に注目し、教師が適切だと考えた時に生徒に議論を
切り上げさせた。私は原則として、このようにディベートを英語教育へ取り入れる判断に賛成する。
・ディベート教育をより効果的なものとする若干の提案
上記のように米原高校の英語プログラムについて私は高く評価しているが、高大連携研究者とし
ては「建設的な批評」を書き記すことが期待されているだろう。現在までも授業見学後、米原高校
にレポートを提出しているが、最近(2月26日)に見学した授業に対する若干のコメントを書きたい。
(1)論題について
取り上げる論題によって、ディベートは「価値ディベート」と「政策ディベート」に分類するこ
とが多い。大学で行われるディベートは後者である場合が多いが、これは準備に非常に時間がかか
るという欠点がある。そのために米原高校が主に「価値ディベート」に取り組んだという方針は肯
定できる。
ただ「通勤にはバスがよいか電車がよいか」というような価値ディベートの場合、時折、重要な
議論とそうでない議論を識別することが難しい場合がある。そのため、高校の教育現場では「状況
ディベート」と呼ぶべきものを主に取り上げることが望ましいと考えている。ある判断の難しい点
を含む状況を生徒にディベートさせるのである。(例:生徒に予算額と休暇日数を示した上で、2種
類の旅行先とパンフレットを提示する。生徒は2つの旅行先のどちらが優れているかを論じる。この
際、エヴィデンスはパンフレットに書かれてある内容に限るなどの工夫が可能である。)
(2)書きことばの練習について
ディベートは話し言葉を教育するための仕掛けと見なされるが、実は「立論」の準備、質疑応答
の準備、リバタルの準備、エビデンスカードの準備、ノートテイキングをするために、しばしば英
語を書くという作業が必要となる。そこでディベートに入る前に、ある論題に対する自分の「賛成
意見」を短時間に文章にし、その後同じ論題について「反対意見」を文章にするなどの練習をする
ことも考慮できると考える。
(3)表現形式のインプット強化について
ディベートでは、論題にかかわらずに必要とされる公式的表現(例: For these reasons we contend
that the car is a better and more convenient means of commuting to the office.)、ある論題について特に必
要とされる表現(例: Cars are not dependable enough as a means of commuting because you may get caught
in a traffic jam any day.)の二種類がある。前者には、生徒の考えをディベートに見られる型にはめる
ことができるというメリットがある。また後者には、他の英語のクラスで生徒が学んだ内容を取り
上げ、表現集を作ることができるというメリットがある。
そこである論題に関するディベートの準備をする時でも、教師が用意したこの2種類の表現集の音読
などによって、授業を始めることが望ましいと考える。
(4)発言する生徒の偏りについて
ディベートでは発言する生徒が偏る場合が多い。米原高校も例外ではない。そこである生徒に意
見を主張する時間を確保するという作業に加えて、特に集団ディベートをさせる際には、できるだ
け多くの生徒が話したチームが勝つ、という分かりやすい判断基準を導入することも可能である。
できるだけ多くの生徒に話す機会を与えることにより、表現したい内容と表現できる内容との隔離
に戸惑い、苛立ち、フラストレーションを感じる生徒が増えることになる。米原高校の生徒の多く
は、そのフラストレーションを肯定的に解決するように努力するであろうと考える。その意味では、
他の高校よりも、多くの生徒に発言させるような仕掛けが米原高校では求められていると考える。
提案者は、上記にあげた提案を米原高校が実践していないとは考えていない。むしろ、英語教師
はカリキュラム上のバランスを考え、上記の提案を時折実践していると確信している。そう考えな
がらも上記を提案するのは、ディベートの指導に提案の要素をもう少し増やすことがより好ましい
結果につながると感じるからである。同時に上記の提案は非常に細かな点に関するものであること
を認めなければならない。これは報告者が、米原高校の英語プログラムが大筋において満足行くべ
きものだと感じている証左であると考える。
- 99 -
[3]平成16年度
齋藤栄二先生
私は米原高校のSELHi指定中間報告に、「SELHi指定滋賀県立米原高校に2年間通って」という一文
を寄せた。その中で今後の方向に関して次のように述べた。
「実践的コミュニケーションの最終目的の一つは、生徒それぞれが自分の考え方や、感じ方、意見をし
っかり英語で述べられる力をつける、というところにある。これは普通では書いたものを準備して意見を述
べるというところからスタートする。最終的には即興でも述べられるというところへ持って来たときに、限りなく
本物に近くなる。しかしこのことは言うほど簡単なことではない。そのための方法をどうするのか、そしてそ
れをどう実践していくのか、それらが今後の実践的課題と思われる。」
以上の文章は平成15年の中間報告に書いたものである。それから2年がたった。この2年の間に、何回
か米原高校を訪れて先生がたの授業を拝見させていただいた。私はこの間、昨年実施された大阪での全
英連大会の高等学校の授業の助言者であった。「ごく普通の高校において、英語の授業を英語で進める
にはどうしたらよいか」というテーマでプロジェクトチームを組んだ先生がみんなで努力した。別に特別英語
の勉強に対してモチベーションがあるわけではない生徒を相手にして、大阪府立羽曳野高校の藤原和美
先生の努力が続いた。ステージでのデモンストレーションが終わった次の日の分科会で次のような質問が
出た。「デモンストレーションの間中、先生は英語を話す努力をなさっていたが、なぜもっとテープやCDを
使わないのか」という質問である。それに対して私は助言者として次のように答えた。「目的がリスニングの
力を伸ばすことなら、テープやCDを使うことは大切である。しかし、英語の話せる生徒を作ることが目的な
ら、教師自ら英語を話さないで、そういう生徒を作ることはできません。」というものであった。私が米原高校
の山岡先生の授業を拝見するたびに感じるのはこのことである。私の心づもりでは、初めの段階では教師
の話す英語の量が7に対して生徒はようやく3程度発話するだろう、というものであった。山岡先生の授業
では、私の試算では最初の段階では8から8.5の量の英語を生徒に浴びせかけている。そして少しずつ、
その時の話題の内容について質問の数を増やしていく。最初ほとんど英語で反応できなかった生徒が、
それこそ少しずつ、少しずつ発言し、その量が増えていくのである。その土台の上に立って、生徒はスピー
チやディベートへの道を歩んでいく。そこまで持ってくるのに最低1年や1年半はかかるのである。まとめて
みるならば
1 教師が生徒に理解できる大量の英語を話しかけること
2 それを粘り強くやること
実に平凡な結論であるが、これは英語を話せる生徒を育成していくための秘訣である。その努力を米原
高校の先生がたは、倦まずたゆまずに続けられたということである。
中邑光男先生
米原高校高大連携研究指導員として,過去 3 年間,米原高校における英語教育を観察した経
験から,同高の英語教育の顕著な長所を3点述べる。
米原高校の入学生の英語語学力は,他の高校の生徒に比べて,特に高いとは思えなかった。私
はディベートの指導に携わってきたが,高校一年生時の生徒にペアワークによるディベートとい
うタスクが与えられたとき,全員の生徒が発言内容の英訳を電子辞書で調べるのに忙しく,実際
に発言した生徒はほとんどいなかったことがこの証左である。
特に英語力が高いとは限らない入学生と向き合う中で,米原高校での教育への取り組みは,非
常に「生徒中心」であった。その取り組みの中でも特筆するべきは,できるだけ多くの第三者に
授業を見学する機会を提供し,授業の感想を求めたことである。
たとえば,生徒のディベート力を上げようとする場合を考えよう。この場合,まず教師がディ
ベートに慣れ親しみ,その上で生徒にディベートを教えるべきだ,と考えられることが多い。そ
のため,教員用のディベート・ワークショップはしばしば開催されている。しかし米原高校では,
生徒への指導を教育活動の中心に据えるという考え方を貫くために,当該生徒にはどのような英
語ディベートが適しているのか,また授業ではどのような指導が可能なのか,をまず考える。そ
の上で授業に関して第三者の意見を聞き,その中で実行に移すべきものについては,迅速に対応
する,というプロセスをとったように思われる。非常に高度の帰納的な教育実践形態であると言
えるだろう。セルハイに与えられた時間はあまり多くない。そのために,生徒への教育に直結し
- 100 -
た形で教育の向上を考えるのは,リードタイムの短縮というメリットをもたらしたと思われる。
教員が授業を公開するのは簡単ではない。米原高校も例外ではなかっただろう。しかしその中を
公開に踏み切った教員の熱意と寛大さは多くの教育機関で見習うべきだと考える。
次に,同校のスピーチ教育に典型的に見られることだが,指導上の継続性を重んじていること
である。スピーチ大会や英語合宿などの,英語学習「イベント」は広く実施されている。しかし
教育の「中核作り」と関連づけながら,このイベントで生徒に学ばせたことをフォローアップす
ることは難しい。米原高校でも英語合宿を行う。そこで生徒は発音を練習し,スピーチを実践す
る。その後の学内大会で生徒全員がスピーチに取り組む。その中で優秀な成績を収めた生徒は他
校生徒の参加するスピーチ大会に出場する。その挑戦に関する情報をクラスメートが共有する。
そのような機会を数回提供するのである。このように長期的な継続性を確保することにより,生
徒は,米原高校の英語教育が「優れた思いつきの集積」ではなく,「到着点を意識した継続性の
ある計画」だと実感するであろう。また教師もどのように生徒を育てるのかをまず考え,そこに
達するにはどのような指導が必要かを「逆算」することが求められるであろう。
上記のような着実な教育活動に加えて,著名人によるワークショップと講演会を開催したこと
も重要な点である。生徒は,そのような会に出席することにより,高校やそのプログラムに対し
て誇りを持つはずである。この誇りは学校や教員に対する信頼感を育む。著名人に対して講演会
だけではなく,長時間にわたるワークショップを依頼し実行してきたことも興味深い。教育には
情熱が必要である。米原高校の教育活動に関係する人に等しくその熱意を求めることにより,生
徒に対する「一枚岩」の指導が可能になるはずである。この点を理解し,著名人の中には米原高
校のファンになった人もいる。よい教育実践に教育者は惹きつけられるということだろう。
以上の 3 点を含む,多くの長所を持つ米原高校の英語教育に関わることができたことは光栄
であった。米原高校の先生方,生徒諸君に心よりお礼を申し上げる。
⑩ イマージョン教育の取り組み
平成15年度は、高大連携授業の一環として、外部講師を招いてのイマージョンを行った。
その成果は次の通りである。
1) 外部講師の専門性により、広範囲の視点から他教科の学習ができる。
2) アメリカの教科書を使うことにより、よりオーセンティックな教材で学習ができる。
3) 英語で教えられることにより、英語を通しての理解が図れる。
しかし、次のような課題もあった。
1) 講師(ネイティブ)の専門性と日本の高校生が学ぶべき事柄と必ずしも一致しない。
2) 英語の学習や活動が入るため、時間をかけている割には、他教科の内容を広く覆うことができ
ない。
3) 学ぶべき英語のターゲットが絞りにくく、英語の定着度が低い。
4) 月に1・2度の講義では系統性がない。
要するに、英語を通じて他教科を学ぶという知的な動機付けにはなるが、英語学習にとっても他
教科の学習にとっても中途半端になったという反省があった。また、他教科を教えることができる
外部講師は常に見つかるわけではかく、予算的な措置がなければ頻繁に来てもらうことはできない。
そこで、平成16年度は私たち自身でできるイマージョンの可能性はないかを探った。
使用したテキストは、McDougal Littell 社の World Cultures and Geography と Great Source Education
Group A Houghton Mifflin Company の Science Saurus である。いずれも、アメリカの中学生向けの教科
書であり、分野にもよるが、私たち英語教員が読んでも非常に興味深く理解できるところが多い。
両方とも、図書館に1クラス分そろえているため、生徒は授業の前に借り出して利用する。
これらの教科書を使って、総合的学習の時間で取り組んだ。
1)1つのセクション(2~3ページ)を辞書を使わずに読んでおくよう指示する。どちらの教科
書も図や絵が多く、生徒が既習の内容で、専門的な語があっても、なにについて述べているか
おおよそ想像できるようなセクションを選ぶ。
2)英語教員と地歴公民あるいは理科の教員で2名のティーム・ティーチングとし、まず、英語教
員が英語を音読する。
3) 地歴公民または理科の教員に、テキストに書かれている内容について、専門的立場から日本語
で解説をしてもらう(テキストを和訳するのではない)
。
4)英語教員がテキストをもう一度読み、専門用語や内容について生徒に質問を投げかける。他教
- 101 -
科の教員の説明を聞いた後なので、生徒は専門的な説明や語についても容易に意味が想像でき、
テキストを完全に理解できる。
5)英語の教員が補助しながら、他教科の教員にもテキストを読んでもらう。
6)ペアで生徒にテキストを読ませる。
例) In the food chain shown in the picture above,the pondweed is the producer. As shown by the
arrow,energy moves from the pondweed to the snail that eats it. The snail is the primary consumer
in this food chain because it is the first to feed. Energy next moves from the snail to the minnow.
As the second consumer in the food chain, the minnow is the secondary consumer. When the
perch eats the minnow, it takes in energy. The perch is the tertiary consumer in this food chain the third feeder. The final link in a food chain is filled by the bacteria and fungi that act as
decomposers. These organisms feed on and break down the remains of the perch when it dies.
成果 1)英語科の教員と他教科の教員が一緒に行うため、互いに補い合い生徒にわかりやす
い授業ができる。
2)専門的説明を聞いた後で英文を再度読むことによって、理解が非常に深まり、英語
の認識もよくなる。
3) 専門的な語や概念を英語で理解した達成感で、生徒の関心意欲が高まる。
課題 1)英語科の教員の理解できる範囲でしか行えない。
2)1時間に覆うことのできる範囲が少なく、広範囲をカバーするには時間が多くかかる。
⑪ CALL教室活用の指導実践
3年間の研究開発課題には挙げなかったが、9 月に県教委の配慮により CALL(Computer Aided/Assisted
Language Learning)が設置され、その活用方法について研究を進めてきた。CALL 教室研究主任を中心に、
英語科教員相互の研修を行うとともに、外部より講師を招き、指導を仰いだ。指導をしてもらった講師
は、関東学院大学助教授 奥聡一郎先生、立命館大学教授 朝尾幸次郎先生である。
3年生 Reading および 2年生 英語Ⅱ
「CALL教室を使ったReadingの授業の研究」
経緯
本校に CALL(Computer Aided/Assisted Language Learning )教室が平成 14 年 10 月に完成し、computer、
internet、e-learning 等を活用した授業を3年生の「Reading」の授業に取り入れ、SELHi 指定校に向けた
研究授業発表会(11 月17日実施)で授業公開(資料1に指導案)することとした。3年生は 11 月の下
旬よりセンター試験対策のため問題演習の授業に切り替えたため、この報告書に記載する内容は 10 月
下旬より研究授業発表を行った 11 月中旬までのものである。それ以降は 2 年生の「英語Ⅱ」の授業の
中で行っている活動の内容である。
授業の方針
① CALL 教室だからこそできる、CALL の設備・機能を生かした授業をする。
②生徒の自習学習になってしまわないように、全員が同じ進度で学習できる内容にする。
③生徒が声を出す活動を必ず取り入れ、なるべく interactive な活動を取り入れる。
④なるべく時事問題に関連した内容を取り入れる。
⑤学習した内容が手元に残るようにするため、全てをコンピューターの画面上で済ませるのではなく、
適宜 handout 等を配布する。
⑥今後、教科書を使った普段の授業の中に CALL 教室の活用を組み込んでいけるようなフォーマットを
模索する。
以上の6点に留意することとした。
授業指導上の留意点と活用事例
①インターネット上には多くの英語学習者支援のためのページがあるので、授業に使えそうなページや
Topic 等をストックしておく必要がある。具体的には文部科学省が管理している「NICER」というペ
ージの中の「e 授業」に全国の先生方から提供されているソフトがストックされており、3年生の
Reading では「英文速読ツール」を活用させていただいた。他にもネットワーク上にはコンテンツは
ほぼ無限にあるが、時事問題は海外の新聞や日本の新聞社の英語ページはそのままテキストに使いや
すい。また、2年生の授業では Listening コンテンツが豊富にストックされている海外のホームペー
ジ「Rondall’s ESL Cyber Listening Lab」などを活用している。
② computer にインストールされているソフトも使い方しだいで大いに役立つので活用するよう努める。
本校の CALL に採用されている ALSI 社の「calabo 2000」には問題作成ソフトがあり、そのソフトで
- 102 -
作成した comprehension questions(資料2)に対する生徒の解答の正答率等はコンピューターに保存
されていくので、成績管理も行いやすい。また、「PowerPoint」などのソフトも画像や音声を添付し
たプレゼンテーション活動に使えるのはもちろん、アニメーション機能を使って速読演習や長文読解
力養成などに活用できる。
③ computer や internet が使える環境なので、積極的に最新のニュースや映像・イラスト・写真を活用し
ていく。海外のニュースメディア等のホームページには動画を含むニュースが多くあるため、音声の
みよりも生徒の興味・関心を引きやすい。また、授業の導入時に扱う予定の Topic に関連した DVD
を見せて具体的なイメージを持たせた。3 年生で取り上げた Topic は3つ。
「Presidential Debate」では
CNN のホームページ上の動画を、
「Lightning」の Lesson では Discovery Channel の DVD、
「Trail by Jury」
の Lesson では「Runaway Jury」の DVD を導入時に見せた。
指導手順
3年生 Reading
① Topic に関連した DVD を見せる。
*ねらい*
これから学習する内容について具体的なイメージを持つことにより、授業への motivation が高まる
ことを期待する。
②英文速読ツールを使ってテキストを 2 度速読させたあと comprehension questions に答えさせる。
*ねらい*
英文は chunk ごとに区切られた文章が 3 秒ずつ画面上に表示されては消えていくため、返り読みが
できず、top-down で文章の意味を取っていく必要がある。その繰り返しにより、次にどのような語
句(要素)が来るのか予想しながら読めるようになることを最終的な目標とする。また同時に、文章
の表示時間を指定することで早く英文を読む癖をつけさせることをねらいとする。
③解説を加えた後で本文を音読する。あらかじめ ALT に録音してもらっていた model reading をヘッド
ホンで聴きながら、オーバーラッピングやシャドウイングさせる。
*ねらい*
普通の教室では他人の声に model reading の音がかき消されてしまい、効果の薄かったシャドウイ
ングなどの音読活動を、ヘッドホンを使うことにより、一人一人がクリアな音声を聞くことができ
るため、その効果が高まることを期待する。
④ model reading を聞いて dictation を行う。
*ねらい*
文章の意味を理解したところで、新出単語等の定着を計り、Text の内容を確認するために、単語
レベルの Dictation をさせた。問題作成ソフトで作問するため生徒はコンピューター上で解答し、そ
の結果はコンピューターにストックされていくため、後の成績判定に活用することとする。
⑤ text の内容について自分の意見をまとめさせる。
*ねらい*
学んだ内容を自分のものとするため、学んだ内容に対して自分の意見を持たせ、同時に書くことに
よって表現や単語の定着を狙う。
⑥ペアになってお互いの意見を交換したり、クラス全員に向けてプレゼンテーションする。
*ねらい*
書いてきた自分の意見を発表することで、input、intake、output の流れを完結させる。
2年 英語Ⅱ
①授業の最初に Topic を提示し、関連した話題でペアトークさせる。
*ねらい*
単調になりがちな CALL の授業に interactive な活動を取り入れることとする。CALL ではランダム
にペアを組みかえてヘッドホン越しに会話できるため、移動することなく複数人と効率よく会話がで
きる機能を生かす。
②インターネット上にある listening コンテンツを聞き、comprehension question に答えさせる。
*ねらい*
native の日常的な会話を natural speed で聞き取り、その内容をつかませる。コンテンツは海外の ESL
または EFL 向けのホームページ上のものを使う。
③教科書の本文を Power Point で加工しておき、速読演習させる。その後、comprehension question に答
えさせる。
*ねらい*
- 103 -
chunk reading の手法を Power Point を利用して取り入れ、速読即解力を養う。
CALL を利用した授業の利点と課題、これからの活用案
1.いつ使うか?
* Lesson の導入と Lesson のまとめに使うのがもっとも効果的ではないか?
Lesson の導入時
① Lesson の最初に本文を速読ツールや Power Point を使ってフラッシュリーディングを(難易度により
1、2回ほど)させて、その後 smartHTML を使った comprehension questions に答えさせていく。
② comprehension questions に答えた後、該当箇所を確認させ簡単な解説をしておく。
③その後、oral reading につなげていく。教師の音読の後に続いて chunk ごとに repeat させる。もしくは、
ソフトテレコ(音声学習支援ソフト)を使って slow speed での repeat、overlapping。(ソフトテレコを
使った shadowing はこの時点では不可能と思われる。)
【利点】
・1 lesson を効率よく通読させることができる。
・chunk reading の読み方が身につく。
・internet を使って簡単に Lesson の内容に関連した事柄を調べることができる。
・ヘッドホンを使うことによって、CD の音声、自分や級友の発音に集中することができるため、生
徒が発音に気を配るようになることが期待できる。
【課題】
・pre-reading exercise をどのように行うか。(必須)
・新出単語の input をどの時点で行うか。(pre-reading exercise の中でできないか?)
・如何に interactive に授業を進めるか。
・この時点で oral reading をやることに意味はあるのか。
・如何に生徒全員に音読をさせ、それを教師や他の生徒に聞かせるか。
Lesson のまとめ
① ソフトテレコを使った shadowing。
② 音声教材と smartHTML を使った dictation、単語テスト。
③ 「回収」機能を使った本文の summary などの提出。
④ 「会話」機能を使っての意見交換・presentation 等。
【利点】
・単語テスト等の点数が自動集計される
・shadowing 時に他人の声にじゃまされない。
・summary などを書くことや、意見を発表することで output につながる学習ができる。
【課題】
・文法項目の確認をどのようにするか。(ノートをとるような活動を効率的に取り入れていけるか。
)
・summary の添削等をどのような形で行うか。またいつ書かせるのか。
(授業中はタイムロスにつな
がるので宿題としてやらせたいが自宅のパソコン保有率がどの程度かによる。
)
・意見交換やプレゼンを「CALLだからできる」形でやらせることができるか。
(Power Point を使ったプレゼンは相応の準備時間を要する。)
2.何にターゲットを絞るか?
* CALL の機能を使った、CALL でしかできない活動を必ず 2 つ以上組み合わせることが必要。
4技能別の CALL 活用例:
① Listening
・ヘッドホンを使って CD や ALT の英語をクリアに聞かせる。
・ヘッドホンを使って自分や級友の声を聞かせることにより、正しい発音に対する意識を高める。
・ソフトテレコを使った shadowing をさせる。
・DVD や internet 上のコンテンツを有効に活用する。
② Reading
・英文速読ソフトや Power Point を使って、返り読みをせず top-down で英文を早く読む習慣をつけさ
せる。
・海外のホームページや、新聞各紙の English version を、internet を通じて up-to-date な Topic や英文
に数多く触れさせる。
・英文を読ませるだけではなく、DVD や動画、写真などの映像を駆使して内容理解を助けることに
- 104 -
より、生徒の motivation をあげ、導入をスムーズに行う。
③ Writing
・自動翻訳ソフトなどを使った、英訳・和訳演習。
・
「配布」「回収」機能を使った課題の配布、回収。
・映像や音声を見聞きしながらの Dictation。
④ Speaking
・
「会話」機能を使って、ペアトーク・グループトークのランダムな組み替えを効率的に行う。
・内容によっては Power Point などのソフトを活用したプレゼンテーション。
・映像を見ながらの describing。
・生徒各自に recording させた音声の提出、プレゼンテーション。
3.書かせる活動を如何に取り入れるか?
*コンピューターの画面が切り替わると Text も消えてしまうため、内容や語句の定着が難しい。
そのため、全てをコンピューターの画面上だけで済ませることなく、handout 等を適宜利用する。
・ターゲットを Text の何に持ってくるのかをはっきりさせ、それに応じた handout を作成する。
・Lesson の終わりに essay や report を提出させる。
・internet 上で読んだ文章も形が残るように、印刷して配布する。その紙に文法説明時の要点などを
書き込ませる形式にしておく。
・教材作成ソフトで作問するときは番号選択式の問題に偏ることのないように、空所補充形式の問題
も取り入れ Dictation 等に活用する。
4.定着をどう図るか?
* internet や Power Point で読んだ内容について必ず自分の意見を書き、発表する手順を踏むことによ
って、Text 中の語句や文法を使おうとする姿勢を養う。
・映像や音声は復習可能な形として残っていかないので、必ず書かせる活動を取り入れる必要がある。
・将来的には、電子媒体を用いた持ち帰り学習をさせ、家庭学習時に音声や映像を活用していけるよ
うな方法を考えたい。
・また、録音機能を用いて、電子媒体を使った音声の提出をさせてみて speaking 能力の伸長を測って
みたい。
5.宿題や課題の与え方・提出のさせ方をどうするか?
*全てペーパーレスで行うことは現実的に難しいうえに、本当に定着したのかどうか測れない。
・word などのワープロソフトは自動的に英文の誤りを指摘してくれるため、電子媒体で提出された
essay などを見てもその生徒が実際にどの部分が弱いのか測れない。そのため、CALL 教室を使用し
ない授業の中である程度時間を制限して英作をさせるような時間を設けるなど、CALL の機能を制
限するような使い方をする必要があるかもしれない。
CALL を使用しての感想とまとめ
以上、CALL 教室が本校に設置されてから現在に至るまで約3ヶ月の間に取り組んできた内容を振り
返ってきたが、実際に CALL を利用して「生徒がどのように変わったか」
、「どの力が伸ばせたか」とい
った具体的な結論を導くには至っておらず、また、
「その結果からどのように授業を改善していったか」
といった踏み込んだ内容の報告を行うことは現時点ではまだ出来る段階ではない。そこで、3年生に
CALL を使った授業(延べ 11 回)が終わった後、生徒にアンケート(資料3)をとって、生徒の反応
と今後の授業改善の方向を探ってみた。(その結果と考察は資料4に抜粋してまとめることとする。
)
アンケートの結果からは、概ね好評な回答が得られた。特に英文速読ツールを使った速読演習は速読
即解力を伸ばすのに有効だと多くの生徒が実感している。ただし、受験直前期に行ったこともあり、操
作に不慣れな教員の授業運びの段取りの遅さに苛立ちを覚えた生徒も少なからずいた。こちらはかなり
の教材準備を行って授業に望んでいるつもりでも、生徒側から見るとかなりの時間のロスがあると感じ
るようだ。CALL を使ってスムーズに効率的な授業を行うためには教員の操作に対する習熟が不可欠で
あるとともに、空白の時間を作らないシームレスな教材提示が求められる。
この報告書の中で述べた問題以外にも、膨大な時間を要する教材作成を持ち回りで分担したり出来る
かどうかなど課題は山積しているように思えるが、一方で、CALL を使った学習は教師のアイディアと
熟練次第で無限の可能性を持っているようにも感じている。
- 105 -
資料1
(Reading)
学習指導案
指導者
富岡
正臣
1
対
象
第 3 学年 5 組(英語コース)
2
日
時
平成 16 年 11 月 17 日(水)第 3 限(10: 50
3
場
所
CALL 教室(理数棟 1 階)
4
教
材
男子 7 名、女子 28 名
~
計 35 名
11: 40)
“Runaway Jury” (DVD)
Debating the Issues
(MACMILLAN LANGUAGE HOUSE)
Chapter 9 “Judges or Jury?”
5
単
元
6
単元設定の理由
近年、法曹界の改革が進む中で、平成 21 年度までに「裁判員制度」を復活させることが決定した。そのモデルとなって
いるアメリカの陪審員制度を学ぶことにより、陪審裁判の利点と問題点を考える。
7
単元目標
(1) 日本の司法制度に大きな変革をもたらすであろう「裁判員制度」について、利点と問題点を考える。
(関心・態度・意欲)
(2) 様々な未習得語・法律関係用語等の input。(知識・理解)
(3) 英文速読ソフトを使って英文の意味を即座に理解し、smartHTML の内容確認問題に答えることができる。(速読即解の
能力)
(4) ソフトテレコを使ってオーバーラッピング、シャドウイングなどの音読ができる。(表現の能力)
(5) smartHTML の内容理解問題を解くことができる。(知識・理解)
(6) アメリカの陪審員制度を知り、その利点と問題点を知る。(知識・理解)
(7) 陪審裁判の利点と問題点について議論することができる。(表現の能力)
8
単元指導計画
第 1 時限目:
【 本時】①導入(オーラルイントロダクション、語句の解説、 DVD 視聴による語句の確認)
②教材英文の速読(英文速読ソフトを使っての速読即解)
③ smartHTML 教材の 4 択問題で内容理解 ( Round 1 )
④ソフトテレコを使って音読練習 ( Round 2 )
⑤ smartHTML 教材の空所補充問題で語句の定着 ( Round 3 )
*本文を3つのパートにわけ、上記 Round 1 ~ Round 3 を繰り返す。
⑥まとめ(次時に向けての宿題指示)
第 2 時限目:①語彙の確認
②全体を通しての内容理解の口頭質問・応答
③全体を通しての音読練習
④陪審裁判の利点と問題点についてまとめてきたことをペアワークで共有する。
⑤導入肯定派と否定派に分けてグループ討論。
9
本時の目標
CALL を使って「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を使った学習を通して、日本で裁判員制度の復活が決定されたこ
とと、そのモデルとなっているアメリカの陪審員制度についての基本的な知識を持つこと。
10
生徒の実態・生徒観
各学年に 1 クラスずつ設置されている英語コースの 3 年生である。英語に対しての学習意欲は総じて高めだが、生徒間
の英語力にはかなりの差がある。また、基本的に真面目で大人しく、授業中に積極的に発言をするというよりはこつこつ
と予習と宿題を怠らずに力を伸ばすタイプの生徒が多い。CALL という最近導入されたばかりのシステムを使って生徒の興
味や関心を刺激し、一人一人の積極的に学ぶ姿勢を引き出したい。
11
本時の展開
過程
教師の指導内容
指導形
生徒の学習活動
留意点
教具・教材
評価
態
導入
12分
①オーラルイントロダ 一斉
・質問に答える。
クション
を明確に説明す ド
②新出・関連用語の意 随時指 ・新出語句の意味を把
味確認
名
握する。
る。
る。
・展開の活動をス
③DVDを流して、語句
と映像を一致させ
・本時のトピック ホ ワ イ ト ボ ー ・聞いて理解
ムーズに行うた DVD
・DVDを見て、語句の意
味を確認する。
め、新出語句の セ ン タ ー モ ニ
意味を把握させ ター
る。
- 106 -
する力
・発言への意
欲
展開
36分
①Round 1
英文速読ソフトを使っ 一斉
・センターモニターに
セ ン タ ー モ ニ ・直読直解能
て、本文を読ませる。
映される英文を読み、
ター
その後、Round 1の4択
意味内容を理解する。
イ ン タ ー ネ ッ ・内容理解の
問題を解かせる。
個別
・smartHTMLの4択問
②Round 2
力
ト
題に答える。
力
smartHTML
ソフトテレコを起動
・音声を正確
し、オーバーラッピン
に発音する
グ、シャドウイングを 個別
・ソフトテレコで音読
させる。
・音読練習ではモ ソフトテレコ
練習を行う。
力
デルの音声にで
③Round 3
きるだけ忠実に
Round 3の語句穴埋め
イントネーショ
問題を解かせる。
ンやアクセント
*以上、本文を3パー 個別
・語句穴埋め問題に制
トに分け、Round 1~3
限時間内にできるだ
をパートごとに繰り返
け多く答える。
・語句を正確
に注意して練習 smartHTML
に書く力
する。
す。
ま と 宿題の指示
12.
一斉
・宿題として陪審裁判 ・新しく学んだ語
め
の利点と問題点をまと 彙を使って意見を
3分
めてくる。
まとめる。
評価
指導内容
学習内容
学習活動における具体的評価基準等
到達目標
観点別評価基準
努力を要 する場
面での支援
・本文についての内 ・jury,trial,verdict, ・読んだ文章の内容に関 ・英文の内容がどれだ ・英文の 表示時
容理解問題への解答
civil court などの語 して理解すること。
・ソフトテレコを使 句のinput.
った音読
け理解され、定着して 間を長くする。
・語句の意味・発音を習 いるか。
・英文を 繰り返
・陪審裁判に関する文 得すること。
・内容理解問題に正確 し表示する。
章の読解
に答えられるか。
・陪審裁判について ・陪審制度の利点、問 ・読んだ文章の内容をも ・習得した言語材料を ・うまく 表現で
のディスカッション
題点を述べる。
とに、自分の考えを英語 積極的に使っているか。 きない生 徒には
で述べられること。
教師が語 彙を与
えたり、 パラフ
レイズし たりす
る。
資料2
Trial by Jury (R-1.1)
Choose the correct answer to each question.
1. What kind of trial system has been widely accepted in the western
countries?
Trial by judge.
Trial by jury.
Civil trial.
Criminal trial.
①
②
③
④
2. Who is selected as a juror?
①
②
③
④
A
A
A
A
person
person
person
person
who
who
who
who
(25)
has been arrested.
won an election.
has the right to vote.
is selected by the President.
(25)
- 107 -
3. Who do lawyers present evidence and arguments to?
①
②
③
④
To
To
To
To
a judge and hearers.
the court and prosecutors.
the court and jury.
the jury and TV reporters.
(25)
4. What do you call the conclusion made by jurors?
①
②
③
④
Verdict
Judgment
Decision
Verge
(25)
6
3年間の英語コミュニケーション能力の向上と評価について
1.本校の評価体系
1) コミュニケーションのための言語学習
~ the study of foreign language for the purpose of communication ~
本校は、英語による4技能(読む、聞く、話す、書く)の力をコミュニケーションを主体として総合的
に伸ばすことを研究開発にしてきた。そのための1つの重要な手段として、評価の与え方があげられる。
2) 絶対評価の重要性
~ the emphasis on criterion referenced evaluation ~
(1) 相対評価(norm referenced evaluation)と絶対評価(criterion referenced evaluation)
(a) SELHi 研究指定以前、本校はどの技能(科目)においても、その評価は、ペーパーテスト(小テスト
等含む)の平均値を基準に相対的に評価を行っていた(T-score 評価)
。従って、定期考査等具体化さ
れた数値が、生徒の力を示すものとなっていた。しかしながら、本校の研究開発にあげているコミュ
ニケーション活動を主体に4技能を伸ばそうという目的遂行には、生徒中心の積極的な英語活動を取
り入れる必要があった。SELHi 指定後、たとえば、生徒が英語を使ってコミュニケーションを図ろう
とする意欲や態度、読むことにおいては、多読と要約など、また書くことにおいては、どれくらい正
しい英語運用ができるかなど、聞くことや話すことににおいては反応速度と口頭での理解力など、と
いった数値では表すことができない能力を加味しなければ真の言語運用能力を測ることはできない
し、正確な評価ができないと考え、絶対評価を取り入れることにした。(特に言葉のやりとりや英語
を書いて相手に伝えるメールのやりとり等コミュニケーション能力の評価は、T-score で測ることは
できないため、すべて絶対評価によるものでなければならない。)
(b) さまざまな評価方法の採用
Written test, Listening comprehension test, Interview test, Free composition
Reports and other materials from students, Observation during class
(2) 絶対評価から得られた効果
本校は、「話す」コミュニケーション活動を各授業の中にとりいれている。その活動は、ペアやグルー
プで行うことが能率的であるため、教師一人でその活動の個人評価をすることは困難である。以下の2つ
の評価を実施したが、評価以上に思わぬ効果が現れた。
(a) 自己評価(Self-evaluation)での効果
自己評価は、適宜評価シートを使って、1単元毎に行うことが効果的である。その評価の基準について
は、定期考査等数値化されにくい部分についての評価項目とする。
自己評価から以下の2点において効果があった。
- 108 -
・自意識の向上-生徒の学習に対するモチベーションがあがった。
(予習の定着)
・自己適応能力の向上-履修した事柄を見つめ直すことができた。
(復習の定着)
資料1.評価シートの例(授業の最後に記入)
Interest, willingness and a positive attitude
toward communicating in English
A
B
C
Ability to express oneself in English
A
B
C
Ability to understand English
A
B
C
Knowledge and understanding of language
A
B
C
A: Top stage
B: Middle stage
C: Bottom stage
資料2.予習および復習の定着の変化
第1回
第2回
第3回
第4回
予 習
14
33
23
27
復 習
5
19
14
14
単位:人
アンケート実施時期
第1回:自己評価実施前
第2回:実施後2ヶ月
第3回:実施後6ヶ月
第4回:実施後1年
(b) 相互評価(complementary evaluation to evaluation by others)での効果
月に1回、コミュニケーション活動に関して生徒同士互いに評価させた。
相互評価から以下の2点において効果があった。
・Attitude toward listening の向上-「聞く」姿勢の高揚
・学習意欲の向上-いい評価を得たいという気持ちの高揚
資料3.評価シートの例
Interest, willingness and a positive attitude
toward communicating in English
A
B
C
Ability to express oneself in English
A
B
C
Ability to understand English
A
B
C
Knowledge and understanding of language
A
B
C
A
B
C
Summative Evaluation
Comments:
A: Top stage
- 109 -
B: Middle stage
C: Bottom stage
資料4.アンケート結果(感想)より抜粋
・いい評価を得たいから頑張って発表を練習した。
・人の意見をしっかり聞くようになった。
・相手が英語を上手に話していてびっくりした。自分も負けないようにしたい。
・家で音読する回数が増えた。
・以前に比べてうまくできたと思う。
・聞く力をもっと付けないといけない。
・この評価が成績に影響するのか不安だ。
・評価の観点が多くて一瞬では判断できない。
・評価が難しい。
(c) 絶対評価の重要性
自己評価や相互評価は、平常の生徒の英語運用能力を測る一つの手段となるだけでなく、上述した効
果が得られた。これは、評価という生徒の力を測る目安という位置づけではなく、生徒の積極的な学習
意欲の向上や家庭での英語学習への興味・関心に大きな影響を与える手段となっている。
3)4技能を測定するテスト
(a)テストの形式
・速読力・・・比較的易しい英語を一定の時間内に読んで、
理解の度合いを多肢選択形式で答える。
・リスニング力・・・ダイアローグ、モノローグ30問を聞かせ、理解の程度を多肢選択形式で答
える。
・スピーキング力・・・日常的な話題についての発話、場面に即した発話、問題解決にかかる発話、
ディベート的な意見陳述について、発話量、fluencyを基準を設けて採点。
・ライティング力・・・日常的な話題、ディベート的な意見陳述について、論理展開、正確さを中
心に採点。
(b)テスト結果の相関
これらのテストについて、同一受験者の結果の相関を取ると、最も高いのは速読力とリスニング力
であり、続いて速読力とスピーキング力、リスニング力とスピーキング力であった。スピーキング力
とライティング力の相関はもっと高いと予想していたが、64%にとどまった。
各技能別テスト結果の相関係数
速読力とリスニング力
0.79
速読力とスピーキング力
0.75
速読力とライティング力
0.61
リスニング力とスピーキング力
0.75
リスニング力とライティング力
0.64
スピーキング力とライティング力
0.64
(c)外部試験による結果と分析
上記(b)の結果を、外部試験との関連で次のように分析した。
1.早く正確に読める力は、リスニング力を引き上げる。
実際に、読む速度と正確さが伸びるに従って、リスニングの正確さも伸びることは、同一の
生徒が1年次に受けたTOEIC Bridgeと3年次に受けたTOEIC公開会場試験の成績を比較すれば
明らかである。この生徒たちには、2年次から3年次にかけて、毎週1時間10ページの速読練
習をさせてきた。その成果がTOEIC公開会場試験におけるリスニング部門の好成績(平均289点)
につながったと考えられる。
- 110 -
TOEIC Bridge Reading と Listening の相関(平成 15 年 2 月受験)
0 .59
TOEIC 公開会場試験 Reading と Listening の相関(平成 16 年 9 月受験)
0 .80
2.早く正確に読める力は、話す力を引き上げる。
これは、早く英語を読み、言語処理能力が高まるに従って、英語の発話量も増えるからであろ
う。
TOEIC 公開会場試験 Reading とスピーキングテストの発話量の相関
0 .78
3.聞く力が伸びれば、話す力も伸びる。
読む力が聞く力を伸ばし、この2つが連動して、話す力を伸ばす。どれほど多くの英語を頭で
処理しているか(記憶するということではない)が、アウトプットの潜在力を引き上げ、時間は
かかるが徐々に発話量を増やすのだと考えられる。
TOEIC 公開会場試験 Listenig とスピーキングテストの発話量の相関
0 .76
各技能間の相関や相互影響については以上のことのみの分析にとどまったが、本校では、書く
訓練を大変多く行っているので、書く力は他への好影響を及ぼしているはずである。スピーキン
グテストの結果には結びつかなかったが、これには、スピーキングテストの話題が、日常的なも
のや身の回りの問題解決のテーマ、場面や状況での対応能力を試すもの等が多く、また、accuracy
よりも fluency により重点を置いて評価している(accuracy も評価しているが、ライティングでの
評価より基準が甘い)ため、ライティングにおける社会問題や国際問題といったテーマの論述と
相容れにくい、という原因があると思われる。
(d) テストで総合力を測る工夫
本校では独自のスピーキングテストを実施しているが、定期テストなどでも、できうる限りコミ
ュニケーション能力を測定できるものとすべく改善を続けている。ほとんどのテストで、知識や記
憶を試すだけでなく、創造的なライティングの問題を課し、英語を書かせる機会を多く持っている。
例1)リーディング(3年生)
The American assumption of mutual independence has an interesting effect on the asking and
refusing of favors. In Japan, when someone asks a favor, the unconscious polite fiction that "I
depend on you," which involves the corollary that I am helpless without your aid," makes it very
hard to refuse the request. Consequently, a considerate person does not ask favors lightly. And
since favors are not asked lightly, they cannot be refused lightly.
But in America, the polite fiction that "you and I are independent" involves the corollary that "if
you don't help me, I can cope by myself." Thus, for both parties, a refusal is not such a serious
matter. So it is much easier to say "no" without being impolite.
One can ask a favor rather lightly, too, because the other person is not politely obliged to grant it
unless it is convenient for him. "I'm sorry, I can't" is a perfectly polite response, and no elaborate
explanation is needed.
問1 次の質問に英語で答えよ。本文の英語表現をそのまま写さず、自分の英文で答えよ。
(1) Why is it so difficult for Japanese people to refuse other people's requests?
(2) Why is it easy for American people to refuse other people's requests?
問2 下線部の具体例を次の応答に続けて書け。
A: John, may I ask you a favor?
B: Oh, what is it?
A: I'd like you to help me with this report next Sunday.
B: I'm sorry, I can't.
例2)OCI(1年生)
Which of these activities do you think the Government should have laws about? Choose two topics
and write your opinions in about 50 words for each topic.
raising children, number of children, religion, the language you speak, the safety of food, traffic,
sexual harrassment, drinking
(e)ライティングの評価法
ライティングの力をどのように評価するかについて、これまで様々と試みてきたが、今年度誤答
分析や添削といった指導に加えて、次のようなクライテリアで評価する方法を定着させた。
1. 書く量(語数)・・・情報伝達の際には、できる限り詳細に伝えることが欠かせない、という観
点から語数の多い作文を高く評価する。
2. 論理展開・・・一貫した明解な論旨、的確な論理展開・パラグラフ構成に配慮がなされている
かという観点を重要視する。
3. 英語の正確さ・・・文法や語法、綴り字などが正しいかという観点で評価するが、英文の構造
や英語理解の根幹に関わる部分(global errors)は大きな減点をし、部分的なミス、綴り字ミ
ス(local errors)などは減点を少なくする。
- 111 -
4. 英文の質・・・間違いを怖れて単純な英語で書く生徒の作文の評価を低くし、間違いがあって
も意欲的に習った英語を使おうとしたり、複雑な構文で書こうとしている作文には高い評価
を与える。
例) 「学級崩壊」の実態を告げる記事を英語で読んで,その問題について考えを書く(50点)。
指示:Read the following passage and write what you think in more than 150 words.
課題文:Now in Japan, one of the most serious problems of education is what is called classroom
collapse. You will see many classes even in elementary school where children are not under the
teacher's control; some go to the restroom without asking the teacher's permission, some walk around
the classroom, and some keep on chatting with their neighbors. They do these while the teachers
talking! Thus class is disturbed and collapsed, and there is little or no teaching and learning in it. It
is like a lawless jungle. Teachers are at a loss what to do. Even the strictest teachers find it
impossible to discipline those uncontrolable children.
Some people say that parents are responsible for this miserable situation. There are still others
who attribute this to the failure of education. Rapidly changing lifestyles may be a cause of this
deplorable breakdown. What do you think?
生徒の作品
Mass media has featured juvenile delinquency and classroom collapse very often recently, but I
think a gulf(→ gap) between classroom and the world is the most important factor in(→ of)
these problems. It has passed(→ been) about 130 years since the education style of today was laid
in the Meiji Period. During that time, we have experienced may wars and social systems have
changed one after another. However, this educational style has hardly ever changed. Students still
don't flower(→ improve) one's (→ their) own self(→ individuality) at all. On the contrary,
they're required closing(→ to close) oneself(→ themselves) obstinately in classroom.
Especially elementary school do it(→ Especially this is true at elementary school). Whatever
teachers don't take a clear attitude(→ Whatever attitude teachers take), children sense what teachers
are thinking suppose to have to live as everyone(→ children sense what they tell them is just that
they have to live the same way as everyone). This present scene is the same as prewar days.
In a word, it hasn't been improved. On the other hand, what is making remarkable progress is
the outside of classroom. People say "personality" in chorus there(→ There people emphasize
the importance of "individuality"). It is inconsiderate for children not having(→ not to have)
formed their own self to be caught in these two facts(→ to be 以下を when these two totally
different values are imposed on them). Because they want to find which of these two is good.
As a result, they spit their unrest out at school. If you want to help them in earnest, you have to
study these facts and make an effort to ease the educational bound.
Then(→ Even then), the
problem won't solve(→ be solved) 100 percent, but it will be smaller.(226 語)
1. 書く量(語数)・・・10/10
2. 論理展開・・・・・1段落で書いており、接続詞の使い方などで改善すべき点はあるが、論理的
に結論を導こうとしており、linking wordsの使い方もよい。10/12
3. 英語の正確さ・・・global errors と考えられるものは下線部の 3 カ所。local errors は多いが、語
選択の間違いがほとんどで、理解を妨げるほどではなく、英文の構造は大変しっかりしている。
10/18
4. 英文の質・・・語彙・構文などで大変意欲的に知っている言語材料を使おうとしている。
10/10
(f)スピーキングテストの評価法
1) 本校独自のスピーキングテスト
本校は、6月、11月の年2回(昨年は3月も実施で3回)スピーキングテストを実施している
(スピーキングテストの内容、結果および検証は別項参照)。これは生徒の「話す」力の到達度を
測るだけでなく、以下の観点から評価することにより、accuracy, fluency 両面からその能力を向上さ
せることを主旨としている。。
評価法その1:直接的評価
評価法その2:間接的評価
2)評価法その1~直接的評価~《impromptu speech》
(1)直接スピーチを聞き、評価する。Judge は3人。
評価観点
-各項目の評価はそれぞれ A:Excellent B:Pretty good C:Good D:Not Good である。
① Content, Organization
② Attitude
③ Pronunciation(fluency)
*②の観点では、自分の言おうとすることを相手に伝えようとする積極性、意欲を評価する。
*③の観点では、流暢さ(リズム、イントネーションを含む)を主に評価する。
(2)この評価の特徴
従来のスピーチコンテストと同じである。発話者の表情がみてとれ、声量も適切であるか否か、
自分の言おうとすることを相手に伝えようとする積極性、意欲があるか否か、判断することがで
- 112 -
きる。音声学的能力の評価については言及しないが、スピーチの流暢さについては評価する。そ
れ故、スピーチ内容に集中することができ、内容についてより適切な評価を下せる。
(3)この評価の課題
発音や話す文の正確さを判断することが難しい。また瞬時に評価を下さなければならないため、
文法構造をどこまで使っているかの判断が難しい。
3) 評価法その2~間接的評価~《impromptu speech》
(1)スピーチをテープに取り、それを媒体として、間接的に評価する。
評価観点
-各項目の評価はそれぞれ A:Excellent B:Pretty good C:Good D:Not Good である。
① Expression
② Pronunciation(accuracy)
(2)この評価の特徴
発音やイントネーションの使い方等音声学的な観点からの評価が正確にできる。発話の中の表
現や既習したことをどこまで使っているかの定着度を測ることができる。発話者に音声指導や英
語表現の使い方の指導ができ、正しい音声を身につけさせることができる。
(3)この評価の課題
発話者の意欲を測ることが難しい。
4)スピーキング能力から見た生徒のコミュニケーション能力の伸び
スピーキング能力を測定するには、発話状況においてどのくらい英語を使って話しをすること
ができるかを測ることになる。その中で流暢さと正確さを併せ持つ力の育成が必要であるが、で
きるだけ長い(語数の多い)文を発話させるために直接的評価を利用する。限られた時間の中で、
できるだけ多くの情報を聞き手に伝えることを指導した。これは1分間に話した単語数の相違か
ら生徒の流暢さを判断し、英語の運用力をあげる。(下記資料参照)
資料1:発話語数の変化(40名の平均) impromptu (one-minute)speech
6月
11月
発話語数
73.5語
105.3語
発話文数
7.7文
9.6文
備
考
uhh, well等の語は除いた。
最後の文は途中でも数に入れた。
一方、間接的評価は、英語運用能力の向上において大きな判断材料になる。実際発話の中で
は、文法的に誤りがあっても言いたいことが聞き手に伝わればいいのであるから、伝える内容
が大きく変容しなければコミュニケーションとして成立する。また発音においても、間違った
発音をしていても(例: kindergarten's ([-denz]) homeroom teacher)伝える内容が大きく変容しな
ければコミュニケーションとして成立する。しかしながら、正確性に欠ける。
資料2:11月 speaking test 実施の一例(テープ興し)
dabete: A boring job with a high salary is better than an interesting job with a low salary.
(生徒A) I'm going to argue for the opinion, uh…, for the opinion because when we have our family
… in the future, we need a lot of money. So, high salary is better than it. Uh, I think boring with
high salary is ok./
(進行)Alright. Negative side, please./
(生徒B)But, I see your point. But… we… even if, even if we we can get high salary, it is boring job. So,
we can't enjoy our job./
(進行)Uh-mm, their opening statement's, it was talking about the family. So, if you have a family in the
future, it's ok to have a boring job with a high salary. So, please rebut it about family./
(生徒C)That's true, but in the future, uh… children can earn, earn money for… uh, themselves. For
example, uh, to go to university, they can borrow money from the, a kind of… uh… kind of
grou(p), group. Uh… So, uh… money is very important, but… but family had to understand their
([ðéaƳ]) work. So, children have to do themselves in the future./
(生徒A)You said children have to work ([w ǝƳ k]) themselves in the future, but it is after children grown
up. So… when, when… when……… when children child, we, we have to work for children./
(生徒A)(???)--(進行)Alright. We're all out of time. So, please, negative side, make an opening statement./
(生徒B)I'm going to against for the opinion that a boring job with high salary is better than an interesting
job with low salary because if you have a boring ([bo:r]) job, we might quit the, quit the job because
it isn't interesting for us. But if we have interesting job for our, us, we can keep working the job
because it is interesting. So, we can enjoy working. Therefore, our job will be satisfied us./
(生徒A)I don't think so because, uh, I think we might quit ([kwaIt]), quit ([kwaIt]), quit ([kwaIt]) our job,
boring job. Because, uhm, maybe I have family, so I can't, I can't quit ([kwaIt]) job uh for the
family. Interesting job with low salary and maybe maybe uhm unbalanced daily life. Hmm… and
daily life. So, if I have interesting job, I'm… maybe I can't, I can't, I can't… I can't… I can't quit
money to my family./
- 113 -
(生徒B)But if you don't have money, you can [kw], quit the job when you, when you want to. And you
said [seId] unbalanced. Why is it unbalanced?/
(生徒A)Because… uh… I, I have to keep the money for, to family. Uh, we almost save money uh every
month because interesting job is uh… this month is low, next month is high. It is, it is, if I have
family. If I don't have family. Mmm… interesting… maybe I'll have interesting job, but…--(進行)Alright. We need to end the debate. Thank you.//
5)スピーキング能力が向上したのかを検証できる方法を研究してきた。外部試験では,GTEC や
TOEFL でスピーキング力をはかるためにスピーキングテストを導入することになったが、これ
は間接的かつ客観的な試験形態によるものである。また英語検定では、2次試験の面接試験があ
るが、これは直接的な評価による。本校では、これら外部試験の特徴を利用し、生徒の英語運用
能力向上には直接・間接両面から検証することが、生徒の欠けている「話す」能力がよくわかり、
効果的である。
5) その他
リーディング、ライティング、リスニングの力の伸びについては、
「5 研究開発の内容」の中で詳
述したので、ここでは割愛するが、数値で測ることは難しいが、能力伸長にとって技術の向上と並んで
大切な意欲やモティべーションについて述べてみたい。
学習者に英語を積極的に学びたいという意志があるときには、学習効率は大いに上がり、多少の苦痛
を伴う機械的練習にも意欲的に取り組むことができる。逆に、モティべーションが下がっている状態で
は、効果的な学習法や教授法を駆使しても能力の伸びが低いことは自明のことである。意欲やモティべ
ーションを上げる要素は、学習者が固有に持っている目的意識や英語に対する興味・関心に左右されるが、そ
れらがさほど強くない平均的な生徒の意欲・モティべーションを高めるには、いくつかの重要な要素がある。
(1) 興味付け - 1. 知的興味付け
2. 遊技的興味付け
(2) 環境作り - 1. 英語へのexposureが多い環境
2.英語を意欲的に学べる学習環境
3. 心理的負担の少ない環境
(3) 目的意識の涵養 - 1. モデルとなるような英語力に触れさせる
2. 英語が使える職業や可能性を教える
3. 技術向上のための到達度を知らせる
(4) 進歩の実感 - 1. 伸びを認めてやる
2. できるようになったことを自覚させる
(5) 競争 - 仲間と競わせる
このような要素を授業や授業外活動に取り入れることによって、自然と英語力向上の意欲が高まり、集団の相
乗作用で互いが刺激しあって飛躍的に伸びるというメカニズムが生まれる。
・生徒の声から
生徒の声をもとに、意欲とモティべーションを上げるのに大切なことを述べる(「『英語が使える日本人』育成の
ためのフォーラム2005」分科会発表用資料より)
1.生徒が変わる・授業が変わる
質問:「どんなときにやる気になりましたか?」
1) 教師の姿勢
ア)熱意
・先生方が授業に真剣に取り組んでくれることで、それに応えようと思う。
・先生がいろいろな行事を計画してくれること。
・熱意ある指導に触れ、誰かの期待に応えなければならないから、という気持ちからではなく、自分自身の
ためにがんばろうと思えたとき。
・先生が一緒にがんばってくれるとわかって、自分もがんばろうという気持ちになった。
・先生の明るく親しい接し方と、厳しく真剣な指導とで、深い信頼感を持つようになった。
イ)励まし・褒め言葉
・先生に励まされてコンテストに出ようと思った。
・先生にほめられたり、みんなに理解されると自信がつく。
- 114 -
・先生が自分のことを認めてくれたとき。
・「前よりうまくなった」と褒めてもらえたとき。
・「君たちならできる」という気持ちで先生が引っ張ってくれること。
・先生の言葉、「You're great! 君らはいいものをもってるんだから」に励まされた。
・先生の言葉「自分が超えるのが大変な山を乗り越えたら成長できる。」
・先生の言葉「毎日続けていれば必ず伸びる」に実感。
2) 教師の英語力・英語に向き合う姿勢
・スピーチやレシテーションの練習などで、先生の英語力に触れ、感動した。
・先生の英語の勉強体験を聞いたとき。
・尊敬できる先生がいるからこそ、刺激を受ける。
・先生自身が英語に大変興味を持っていること。
・先生自身がTOEICを受け、自分を高めようとしていることに感動。
3) 授業の雰囲気・活動
・授業中の楽しい雰囲気を先生が作ってくれること。
・間違った英語を話しても平気というクラスの雰囲気。
・自分の言ったことに、Good question! Good job!のようにコメントをもらうとすごくやる気になる。
・テンションの高い授業でクラスが生き生きとなる。先生が盛り上げてくれる。
・授業中にactivityを入れることでモティべーションが上がる。
・ディベートのおかげで、自分の意見を主張できるようになった。
・ディベートの準備はしておかないと参加できない。だからやる。
・教科書以外の英語を教えてもらえる。
・shadowingの練習を繰り返して、英語のリズムや意味を理解できるようになったとき。
・授業を英語で進められることによって、集中力が増しやる気になる。
4) 生徒を揺さぶる
ア)達成感を持たせる
・レシテーションで練習を重ねて、やっと難しい音が発音できたとき。
・何とか相手に伝わった時の喜びがやる気を上げた。
・自分の英語が通じる喜び。
・ペアワークで自分の意見を言えたとき、相手にうまい英語を聞かせたいと思う。
・行事などで自分が満足できる活動ができたとき。
・ひとつの課題を終える達成感を感じる。
・自分で決めてやろうとしたことが達成できたとき。
イ)帰属感・誇りを高める
・「英語コースにいる」という誇りによって、いろいろなことに挑戦するようになった。
ウ)楽しさを味わわせる
・合宿でのALTとの活動。映画のシーンを聞き取る活動が楽しい。
・英語のサブタイトルを付ける活動。聞き取れて充実感。
・英語合宿でいっそう英語に興味がわく。
エ)負荷をかける
・忙しくてあれこれやることがあることが、かえってやる気を維持する。
・自分たちで調べ上げ、作り上げていく過程で、多くの勉強をした。
・課題をやるとどんな力がつくのかを話されて納得できたとき。
・プレッシャーをやる気に変えられるようになった。
・難しい課題に挑戦する過程で得られるものは大きい。
オ)うまくできないフラストレーションを身に染みこませる
・ディベートなどで自分の考えを伝える難しさを知り、言いたいことがうまくいえないもどかしさで努力するよう
になる。
・どのクラスでもみんなの前で発表する機会が多くあり、それに向けて少しでもいい発音といい英文で話そう
という意欲がわく。
カ)仲間からの刺激を受けさせる
- 115 -
・下級生の意欲や上級生のすごさを知ったとき。
・がんばっている友人を見ること。
キ)意識の変化を引き起こすきっかけを作る
・人前で話すことに自信がなかったが、思い切ってコンテストに出ようと決めて努力したこと。これをきっかけ
に堂々と話せるようになった。
・劇に出て人前で話す勇気を得た。
・積極的に英語を学んで、自分から話そうとしたこと。
・スピーチやレシテーションで発音の訓練をしたことで、英語をがんばろうと思った。
・正確に伝えたい・聞き取りたいという気持ちが英語力向上につながる。
ク)環境を作る
・多くの人と英語を話せること。
・クラスのがんばる雰囲気。
・英語を話す機会が多く、自分の言いたいことを言えるようになろうと休日も話す練習をする。
・人任せにできない状況に陥ると否が応でもやる気になる。
・クラスの雰囲気でモティべーションが上がる。
・いろいろな人が授業を見に来ることで、緊張して真剣に取り組める。先生たちも、それを楽しんでいるよう
だ。先生たちの自信が私たちの自信につながっているのかも。
ケ)競争させる
・勝ち負けがあると意欲がわく。
・コンテストでもっと上位に入りたいという気持ち。
・スピーチなどで褒めてもらう、賞をもらう、人のうまい発表を聞くことが刺激になる。
コ)英語への意識を変える
・こうも言える、あのようにも言えるということが、英語に対する視野を広げてくれる。
・英語にまつわる教養的な話、おもしろい表現や、語彙の深い部分を知って知的好奇心を刺激される。
・メールなどで実際に英語をコミュニケーションに使っているとき、英語を学ぶ喜びを感じる。
サ)外部の力を活用する
・講師の見事な英語に触れる時、意識がすごく高まる。
・萩野先生の授業のブレーンストーミングで、英語の文章構成を理解できた。
・外部の先生と接して新しい発見がある。
・朝尾先生のCALLでの漫画作りがとても楽しかった。
2.モティべーションを上げるためには、まず、モティべーションを下げるファクターを取り去る。
・peer pressure
・embarrassment to use Englishを感じる雰囲気
・間違いを恐れる雰囲気
・高圧的な指導
・competenceの低さから来る自信のなさ
・唯一の正解しかないと思わせる指導
・目的がはっきりしない指導・訓練の意味を理解できない活動
・発見のない授業
・楽しくない授業
・教師の生き方が見えない授業
本校英語コースのように、入学当初から英語学習へのモティべーションが高い生徒が集まる環境は恵まれ
ている。とはいえ、3年間それを維持し、かつ生きる力となる意欲へと高めていくのはさほどたやすいこと
ではない。中学校の段階で、短期留学の好ましい思い出や、ALTとの気軽な会話で得た心地よい体験程度の
関心で英語コースへ入学する生徒も多い。そのような生徒が、英語学習には努力を要する訓練があることを
知ると、急激に意欲が低下することがある。その意識を変え、より高い次元のモティべーションを持たせる
ためには、飽くことなくさまざまな手練手管を用意できる教員側の熱意が欠かせない。その熱意によって、
生徒の信頼を勝ち得て、教員も努力を重ねながら人格を磨くことによって、良好な人間関係を築いていくこ
とが最も大切なことであると、3年間の指導を経て実感している。
- 116 -
2.外部テストの活用法
(SELHiフォーラム2005 分科会資料より)
1 過去3年間本校が活用している外部試験
・英語検定(日本英語検定協会)
高校1、2、3年生で各年3回受検
・TOEIC Bridge (国際ビジネスコミュニケーション協会)
高校1年生で年1回受検
・TOEIC(国際ビジネスコミュニケーション協会)
高校3年生で年1回受検
・英語コミュニケーション能力テスト(ベネッセコーポレーション)
高校1年生で Basic コース
高校2年生で Advanced コース
2 外部試験(TOEIC Bridge および英語コミュニケーション能力テスト)導入の動機
(1)英語の授業の改善ー receptive activity から productive activity へ
teacher-centered class(receptive activity)
#1 生徒の自発的な発言がない
#2 英語を運用させる機会がない
#3 知識注入型である
→授業にコミュニケーションがない、授業が楽しくない、退屈である。型にはまった
英語の使い方しかできない。
→自己表現能力が乏しい。
→将来英語を使ってコミュニケーションしようとする意欲、積極性がなくなる。
(全校聞き取りコンテストの実施 1999 年度
低い聞き取り能力)
student-centered class(productive activity)へ授業の改善
動機①
外部試験でその授業の成果と課題を測りたい
(2)定期考査問題の精査-英語の能力を系統立てて測るための問題作成
定期考査(本校は前期2回、後期2回実施)において、1つの大問の中に、文法・語法や語
句補充、英作、日本語訳等を組み込みながら出題するという総合問題形式をとっていたが、そ
れぞれの問に、何を問い、どの能力を測りたいのかという目的意識をもった分野別の問題の出
題形式に変えたいという意識が芽生えた。つまり、教師が、生徒のどの能力が乏しいのかを容
易に知ることができる。
動機②
外部試験の出題形式を参考にしたい
資料1:過去6年間の英検2級の申込者数と合格者数と合格率の推移表とグラフ
1999年度
2000年度
2001年度
2002年度
申込者数
54
76
103
100
89
*52
合格者数
13
12
12
27
30
23
合格率
24.1 %
15.8 %
27.0 %
33.7 %
44.2 %
11.7 %
SELHi 指定前3年間
単位:年間合格人数
*3回目は除く
2003年度
2004年度
SELHi 指定後3年間
数値提供:(財)日本英語検定協会
- 117 -
度
4年
度
3年
20
0
20
20
0
02
年
度
度
01
年
20
00
年
20
19
9
9年
度
度
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
資料2:1999, 2002, 2004年度の定期考査問題の相違(年4回実施英語Ⅱ)
1999年度
2002年度
2004年度
問題形式
総合問題形式
分野別形式
分野別形式
聞き取り
×
○
○
発音・アクセント
△
○
○
文法・語法
○
○
○
語句補充問題
○
△
△
要点理解
×
○
○
大意要約
×
×
△
日本語訳
○
○
○
英作
○
△
△
自由英作
×
○
○
○:4回全部出題
△:全回ではないが出題
×:出題なし
*分野別での出題形式は、その大問数は多くなる。
(3)英語運用能力の測定
生徒一人一人に、自分の今の英語能力を、グローバルな観点から認識させ、各人の苦手と
する技能(
「読む」「聞く」「話す」「書く」)の克服を目標にさせながら、自己啓発につなげ
たい。
動機③
(4)学習意欲の向上
資格試験として位置づけることで、将来の英語学習への動機付けとさせたい。
動機④
3 外部試験の活用
(a)本校スピーキングテストと関連
*スピーキングテストのスコア(年3回(本年度は2回)
)
+
外部試験のスコア(Listening, Reading, Writing)
=
4技能の能力の測定
- 118 -
*本校のスピーキングテスト
# 実施時期 6月、11月(対象学年:第1、2学年)
# 内容
《第1学年》(6月、11月)
【第1問】日常会話表現を題材にした英語による口頭試問
(例)Interviewer(teacher):What do you say when you meet your old friend after ten years?
Student:
It's been a long time. How have you been?
【第2問】自己描写問題
(例)Please talk about yourself.
《第2学年》(6月)
【第1問】即興スピーチ
あるトピックを与え、2分後1分スピーチをさせる。
【第2問】グループディスカッション
あるトピックを与え、自由に英語で討論させる。
《第2学年》(11月)
【第1問】即興スピーチ
あるトピックを与え、2分後1分スピーチをさせる。
【第2問】デベート
あるトピックを与え、2人対2人のディベートをさせる。
# 評価者 ALT 2名 英語教員2名
(b)問題作成
授業で使うリスニング問題や全校一斉聞き取りコンテストでの問題作成にあたっては、
外部試験の問題種別を参考にした。(別紙資料参照)
またリーディングの速読能力(情報収集力)を養うための題材として、参考にした。
(c)生徒への動機付け
(a)英語教師の授業改善効果
#1 コミュニケーションを主体に、4技能を総合的に伸ばす授業形態の取り組み
#2 ペアワークやグループワークによる発信的な活動の推進
#3 grammar-translation method からの脱却
#4 英語を媒体とする教材の使用(英字新聞等の利用)
#5 視聴覚機器(ビデオ等)の使用
#6 コミュニケーションを主体とした活動の開発
student-centered class
(b)生徒個々への還元
#1 どの能力が弱いか等についての自己認識
#2 効果的な学習方法の理解
大学入試への対応
4
外部試験への課題等
(1)客観問題形式でリーディング能力の判断について
日本語訳問題での読解力をどう判断するか。
国公立大学入試問題の二次試験の読解問題の設問形式別出題割合では、日本語に
訳させる問題が約16%という統計がある。
(2)TOEIC Bridgeは、主にListeningとReading での能力が測れ、英語コミュニケーション能力
テストでは、Listening 、Reading およびWriting (GTEC for STUDENTS では、スピーキン
グテストが導入されたが、現在本校では取り入れていない。
)の能力を多角的にはかること
ができるが、「話す」「書く」能力の測定については、未だcriteriaがはっきりしない。
3.生徒のアンケート結果より
SELHi指定校としての本校の取り組みも完成年度を向かえた。その間様々な実践に果敢に挑戦してきたが、
その取り組みの成果や課題、またこれから取り組むべき方向等について各学年の英語コースに意識調査を実
施した。下記がその結果および生徒の意見の抜粋である。
- 119 -
質問項目1
あなたは、常にコミュニケーションの観点を重視した米原高校英語コースの授業方針に対して
どんな考えや意見を持っていますか。
項目
学
年
1年
2年
3年
大 い に 満足 し てい る
34
34
25
ほ ぼ 満 足し て いる
4
6
5
ど ち ら とも 言 えな い
1
0
3
不満
1
0
2
概ね生徒たちはコミュニケーション重視の授業方針に賛成であり、英語コースの授業に高い満足度を示し
ている。以下に代表的な意見の抜粋をする。
*コミュニケーション能力はこれからの時代に益々大切になっていくと思うので、この方針は変えずに
続けてほしい。
*英語コースの授業で学んだ表現が実際に使えたときなどは、本当に米高の英語コース生でよかったと
思える。
ただし、3年生の中にはどちらとも言えない、不満と答えた生徒が5名いた。これらの生徒の意見はほぼ
共通して、「コミュニケーション重視のために文法の時間が削られ、大学入試において問われる文法力が身
についているのか不安」という内容だった。
質問項目2
米原高校英語コースの授業では他の学校やクラスにはない特徴がありますが、あなたはそれぞ
れの英語の科目をどのように評価しますか。また、どの科目や授業中のどのような活動が自
分の伸びに役立っていると思いますか。
特に評価の高い科目としては下記のようなものであった。
科目
学
年
1年
2年
3年
実 践 コ ミュ ニ ケー シ ョン
35
OCⅠ
34
OCⅡ
36
OC( デ ィベ ー ト)
31
*空欄部分は当該学年では実施いていない教科を表している。複数回答
やはり、実践的なコミュニケーション能力を伸ばしていける教科への評価が高い。以下生徒の意見を抜粋
する。
* 実践コミュニケーションでのディベートは授業の予習のときから自分で自分の言いたいことを英語
にするという難しい作業を行い、それをみんなの前で発表するといことで英語力が伸びている。
* 少人数に分けて授業を行うので一人一人が発言できるし考える時間も十分取れると思う。
* OCでは日常会話のとき使うフレーズや単語を十分に使う時間があり何よりも授業を受けていて楽し
い。
* OCの1分間スピーチ(impromptu speech)で1番はっきりと力の伸びを感じます。実践コミュニケー
ションでも相手の意見を認めつつ、反論したり、同意したりする活動の中で、英語という範囲じゃ
なくて、社会的な規模で自分が成長していることを実感している。
* 実践コミュニケーションやディベートでは、自分で調べたり、書く作業にも重点がおかれているの
で、論理的に話す力はもちろんのこと、しっかりとした文章を書けるようになった。
質問項目3
あなたは米原高校英語コースの正規の授業以外の活動や行事についてどのような評価をします
か。
学
年
1年
2年
3年
大 い に 満足 し てい る
39
39
32
ど ち ら とも 言 えな い
1
1
3
- 120 -
次に内容別に特に満足度の高いものを挙げる。どの学年も英語合宿に対する評価が一番高い。
学
年
1年
2年
3年
英語合宿
29
30
26
各 種 コ ンテ ス ト
22
18
17
外 部 講 師の 講 演等
20
20
18
ミ シ ガ ンセ ン ター 研 修
20
24
16
*複数回答
生徒意見の抜粋
*コンテストは、個人指導をしていただいたり、自分でもその練習期間絶えず練習するので、普段注意で
きない点を直していただいたりできて良い。合宿はほぼ英語漬けになるので能力がつくし、仲間と楽
しみながら勉強できるのがよい。なにより、友達と「仲間意識」が生まれるので楽しい。
*合宿の取り組みは大変楽しく様々な知識をゲームなどで学ぶことができ、工夫されていて興味深い。こ
れは米高ならではのすばらしい行事です。
*コンテストは自分の力を試す絶好の場だと思う。特にスピーチコンテストは自分の思いを他の人たちに
伝えることができるし、話す時の表現の仕方なども身につけられ、人間として成長できる場でもある。
*合宿について1日、2日で何ができるだろうという疑問が最初あった。しかし合宿後家に帰って気が付
いたのは「格段に話せるようになっている」「発音がうまくなっている」という点でした。短期間で集
中的に英語を学ぶため、急激な上達が見られるのだと思う。なにより素晴らしいのは精神面で励まさ
れるし、悔しくも思うし、強くなれる。合宿は私にとって、「英語をしよう」と奮い立たせてくれる機
会です。
*東後先生や遠山先生の訪問は自分の将来の夢に向かってのアドバイスなども聞けたし、すごく刺激を受
けることが多くて益々英語って深い学問なんだなって思ったし、英語を深く学びたいと思った。
*合宿やミシガンセンターでは「英語を話す」ではなく「英語を使って~をする」という1段階上の活動
を通して自分の弱点やその逆に長所を知ることができましたし、1泊をともにして友達との仲もより
深まり、お互い刺激しあっていけた。
質問項目4
あなたの英語力はこの1年でどの技能がもっとも伸びたと思いますか。それはどんな活動や学
習や姿勢が原因だと思いますか。
項目
学
年
1年
2年
3年
Speaking
21
15
10
Listening
7
8
6
Reading
5
8
10
Writing
6
8
10
発音
9
2
2
語彙
2
4
8
英 語 へ の取 り 組み 方
3
2
3
*複数回答
1年生ではspeaking能力が伸びたと答えている生徒が圧倒的に多い。これは中学生時に比べ英語によるコ
ミュニケーションを図る機会が格段に増えたことによると考えられる。
生徒意見の抜粋
*OCⅡでのディベートやプレゼンテーションの練習は役に立った。他校でのディベート大会に参加して、
自分たちの力を計れ、また他校の英語学習者と意見を交換したり交流できたことは貴重な体験とな
った。
*英語コースにいると1日に最低1時間は英語で話す機会があるので段々と慣れ使える語彙や表現が多
くなっている。
*人に自分が思っていることを正確に伝えようとする力が伸びたと思います。ALTと話せる機会がとて
も多く、他国の人と話すことの難しさを毎日のように実感できるからだと思います。このように、
どうにかして伝えようという気持ちが自然と生まれます。
- 121 -
*実践コミュニケーションやOCなどの授業で自分が言いたいことを書きまとめることが多いから書く力
が伸びたと思う。
*とにかく自身を持てるようになったこと。スピーチコンテストまでに夏休みに学校に行って何時間も
発音練習したり、発表の練習したりしてがんばったことがいい結果につながった時はすごくうれし
かった。それから自分の英語に自身が持てた。感謝です!!
質問項目5 あなたの英語に向かう姿勢や態度は英語コースに入って変わりましたか。
この項目については、「3学年を通してほとんどすべての生徒が英語に向かう姿勢が変わった」と回答
している。主な意見を抜粋する。
*英語コースに入って、授業中に発表や質問をすることに対して、「恥ずかしさ」がなくなった。これ
は、英語コースにいるみんなが英語の学習に対する気持ちが前向きで、授業の雰囲気が失敗しても
恥ずかしくないという風になっているからだと思う。
*英語を聞くこと、話すことがクラスの中で「当たり前」になっていて、楽しくなった。
*英語の授業で、英語を話すということが当たり前に感じるようになりました。難しい、なんて言った
らいいかわからないなどとはよく思うけど、やめたいとか面倒だとはまったく思いません。
*先生から伝わってくる熱意とびっくりするほどの周囲の友達からのやる気によって大いに変わった。
*英語を話したい、聞きたいという気持ちはダントツに増えました。また英語が好きから、バツグンに
好きになりました。
*かなり変わった。貴重な経験ができる環境で英語を勉強できるということに感動した。
また、講演や行事を通し将来の夢を実現させたいと思うほど、英語の重要さがわかったし、好きにな
った。
*以前は英語を話すことに恥ずかしさやためらいを感じていたが、英語コースで学ぶことにより英語に
対して積極性が養われ、より国際的なオープンマインドな人間になれたと思う。
質問項目6
米原高校英語コースには多くの学校訪問や見学者があり、緊張をする場面も多いと思いますが、
あなたはどう受け止めていますか。
学
年
1年
2年
3年
よい経験と受け止めている
34
34
29
普通
5
5
4
悪い
1
1
2
概ね生徒は、学校訪問や見学に対して好意的な印象を持ち、刺激を受けて自分の学習姿勢に
反映させようと心がけているのがわかる。。以下主な意見を抜粋する。
*入学した頃は、見学者が来られると少なからず緊張していたけれど、最近では慣れてきました。人に見
られる経験をしておくことは、度胸もつくし、社会に出てからもこのような経験は役に立つと思いま
す。
*いつも緊張しますが、普段通りにできればと思います。見学に来こられる方は、いつものとおりの授業
で私たちが何を、どのような姿勢で受けているのかを見たいと思っておられると思うので。
*たくさんの方が来られて、授業の感想や意見をもたれたら、それはこれからの英語コースの活動とかに
よい刺激となっていくと思う。見られていることで、私たちは、
「もっと頑張らな!」と思う。だから、
良いことだと思う。
*緊張もするが、はりきれる。もっと私たち(米高英語コース)の良さを知ってほしいと思っていつもよ
り積極的になれる。
質問項目7
あなたは高校生活の英語学習の努力目標をどのように設定していますか。また、これからどの
ように米原高校英語コースの英語指導を受け止めようと思っていますか。
- 122 -
この項目については1,2年生の回答を中心に結果を記す。
項目
1年
2年
communication能 力 の 向 上
15
17
4 技 能 の build up
6
6
日頃の地道な取り組みの強化
8
5
資 格 を 取 る ( 英 検 /TOEIC等 )
3
3
authenticな 英 語 に 触 れ る
1
文法
2
語彙
1
入試
1
貪欲にいろいろな知識を吸収
8
5
*複数回答
授業に積極的に参加しながら、communicative な英語運用能力また、その基礎となるような力を身につけ
ていこうという前向きな姿勢がうかがえる。以下生徒の意見の抜粋。
*「英語コース」という看板に見合うくらいに英語を話せる・読める・聞ける・書けるようになりた
い。
「授業を受ける」のではなく、「授業に参加」したい。
*努力目標は無限でありたいです。
*英検2級、準1級を取りたい。またTOEICにも挑戦したい。
*授業に受身的に参加するのではなく、自分たちから進んで作り上げていく授業をしていきたい。
質問項目8
あなたは米原高校英語コースの取り組みに満足していますか。
項目
学
年
1年
2年
3年
大 変 満 足し て いる
31
32
26
ほ ぼ 満 足し て いる
6
5
6
ど ち ら とも 言 えな い
2
2
3
不満
1
1
0
概ね生徒たちは英語コースで学ぶことに対して満足している結果が得られた。以下生徒の代表的な意見を
抜粋する。
*授業以外にも行事が充実しており、周りの人たちも英語が得意な人が多く良い刺激になる。
*他のクラスの人よりやることが多く休む暇がなくて大変だけど、その分発表の場、自分の努力してき
たものを広める場が十分にあって結果的には苦労が報われるし、他の人よりも得られるものが多い。
「どちらとも言えない」
、「不満」と答えた生徒は1~3年に共通して「入試に対応できる文法力がつけら
れるのか不安」という答えが多かった。実際には各模擬試験の結果においても文法面で点数が伸び悩ん
でいるわけではないが、漠然とした不安を抱えているようだ。今後の課題として、文法力とコミュニケ
ーション能力が密接に結びついていることを意識させていく指導が必要である。
質問項目9
今後、米原高校英語コースがより、特徴を出し、将来にわたって進歩する人間を生み出すため
にどのようなことが必要だと思いますか。
この項目については生徒たちは様々な角度から意見を出しているので以下主なものを列挙する。
*昨年9月に設置されたCALL教室の利用頻度を高め有効活用する。
*イマージョン教育のような英語を使って何か別のことを学んだりしてみたい。
*校内外を問わず、生徒がもっと発表できる場を作る。
*ディベートの力は将来にわたって絶対必要になるのでもっと時間を増やしてはどうか。
*英語コースにいることへの自負と自覚を持つこと。これさえあれば、どんどん進化していける。
*コミュニケーションを重視することは貫くべきだと思います。
*外国の大学・高校や日本の大学と連携を図り、よりコミュニケーション作りを図れる環境が必要だと
思う。
- 123 -
質問項目10
最後に、SELHi研究指定校の生徒として、どのような学習法や教授法が学習者にとって有効
かについて意見やアドバイスをお願いします。
この項目については生徒たちの意見は多種多様であり一括りにできないので、主要な意見を以下に記した
い。
*それは、学習者による部分が多いと思います。大切なのは授業においても自主学習においてもチャレ
ンジすることです。例えば、私は今、英語のDVDを英語で書き取って、発音記号を予想して辞書で確
認する方法が気に入っています。
*まずは、授業に積極的に参加し、貪欲に吸収することに尽きる。
*以前京都外大に行った時、留学生から「読むことが大切」というアドバイスをもらった。読むことに
よって様々な知識や語彙・表現力が身につき、英語を話すときなどにも内容を深めることができる
ことを自分で実践して実感できた。
*声に出し、書くという作業がどんな学習についても有効だと思う。耳で目で声で手で。体全体を使っ
て学習する。
*英語学習は、目的ではなく、英語を学んで「それを使って何をするか」が重要だから「それから」考
えていれば、生徒にとっても教師にとってもより洗練された授業になるのではないかと思います。
*分割での少人数学習はとても効果的である。
*授業の中にできるだけ4技能を使う活動やタスクを入れていくとバランスの取れた授業になると思
う。
*理解したことをただ理解のレベルにとどめるのではなく、それを自分が実際に使用できるレベルにま
で引き上げることが大切だと思う。そのためには、それを機会あるごとに使うことが必要で、米原
高校にはその機会があるからうれしい。
*私が一番英語の力をたくさん使ったと思うのは、興味のあることを調べ、英語でまとめること。自分
の好きなことだとより知りたいと思うし、英語でどう表現するんだろうという表現意欲が高まるか
ら。また、文章にすることで、どの表現を使うと一番自分の気持ちが伝わるかを考えながら英語を
書く。そこから新しい疑問や興味が出てきてまた調べる。自主的に取り組むという姿勢が一番大切
だと思う。
7
校内の英語教育(特に授業)の改善状況
1.授業改善の取り組み
本校の研究開発課題は「指導法の研究」であるため、指導法、授業改善には最も力を尽くした。3
年間にわたって、研究授業、公開授業を頻繁に持ち、互いの授業を研究して批判・評価し合い、外部
の多くの来訪者・指導者に授業を公開した。教員互いの切磋琢磨、外部からの多くの指導により、各
教員の授業の質が大きく改善されたことが、SELHi研究指定を受けて最も有意義であった点である。
○授業の質的変化
1)英語コースの授業は、コミュニケーションの力を伸ばすことを大きな目的としているため、教師
は授業のほとんどを必要に応じて、英語で進められるようになった。そのため、英語の運用力向
上に努め、わかりやすく、生徒の学習にとって益になるような英語を話すよう研鑽を積んだ。そ
の結果、英語コースだけでなく、他のクラスにおいても授業の5割以上を英語で進められるよ
うになった。
2)英語コースにおいてコミュニケーション能力育成のための活動を多くするという前提があった
が、それは単に楽しいゲームや一過性の、いわゆる「学びのない活動」であってはならない、と
いうことに気づき、「活動あって学びもある」授業にするよう努力を続けた。その具体例は「5
研究開発の内容」に詳しく書いたが、複数の技能を伸ばし、基礎力を定着させるためのコミュニ
ケーション活動を研究し、それを英語コース以外のクラスでも援用することができるようになっ
た。
3)コミュニケーションを重視した授業では、教師と生徒の間にも豊かな意思疎通がなければならな
い。かつては、一方的に知識を押しつけたり、高圧的な指導をしていたことを反省し、生徒の努
力や達成を褒め、信頼関係を大切にした授業を展開できるようになった。
4)基礎力養成のため、時には訓練や講義的な授業も必要である。しかし、その際にも、生徒の理解
- 124 -
や反応を大切にし、興味関心を引きつけられる授業展開に心がけ、こまめに理解度をチェックし
たり、個人指導をするなど、指導が綿密にできるようになった。
5)英語コースではほとんどが分割授業であり、日本人教員2名またはALTを含めて4人が1クラスを
担当しなくてはならない。そのため、授業の進め方や活動内容などを緻密に打ち合わせ、同質の
授業ができるよう努力した。このことによって、授業に対するアイデアや教授法をより洗練され
たものにすることができた。また、一斉で教える場合でも日本人教員同士のティーム・ティーチ
ングで行い、役割分担をしたり、互いの進め方を学び合ったりできたことも授業改善に役だった。
6)3年間にわたり3名の英語教育専攻の大学教授に直接授業をみてもらって指導を受けた。授業後
には、細かい点にまで個々に指導をしてもらい、改善点を次の授業に生かすことができた。
○教員の意識の変化
1)最初は、自分の授業を人に見られることは苦痛であったが、研究授業や来訪者への授業公開で授
業を見せる機会が多くなり、徐々に抵抗感がなくなった。また、大学教員に授業を指導してもら
えることにより、自分が気づいていなかった長所や改善すべき点を指摘されることを、前向きな
授業改善の原動力になった。その結果、進んで授業指導を受けるようになり、授業を公開するこ
とに対して非常に意欲的になった。さらに、公開した授業が参観者に感銘を与えることによって
自信を得ることができ、授業への大きな意識改革ができた。
2)SELHiの研究テーマに沿って、意識的に新しいことに挑む姿勢が身に付いた。3年目には1年目
・2年目の指導法を改良したり、取り組みの中から新たなテーマを見いだしたり、研修で学んだ
ことをすぐに本校の生徒に対して試してみたりという前向きな姿勢が生まれた。
3)平成15年度から、3年生英語コースには9月にTOEIC公開会場試験を受験させた。この機会に、
教員自身も自分の英語力を試し、TOEICの試験について知るために、生徒と同じ会場で受験した。
本校教員の今年度のTOEIC公開会場試験の平均は、平成15年度は877点、平成16年度は850
点であった。
4)多くの教員が研修に積極的に参加し、講演やワークショップで英語教育についての考え方や教授
法を学んだ。県教委の実施する資質向上研修はもちろん、ミシガン州立大学日本連合センターの
実施する教員研修、県教委の「確かな学力向上プロジェクト」研修会などのほか、私的な研修会、
大学が主催する研修会にも多数参加した。また、県教委の派遣により、平成16年度には海外視察、
高校生海外体験事業への引率(合衆国)、実用英語検定協会主催のイギリス研修にそれぞれ1人が
参加した。さらに、本校の英語教育の取り組みから得られたことについて、外部で講演する機会
も与えられた。
・第33回中部地区英語教育学会岐阜大会(平成15年6月)
・外国語メディア学界(LET)第43回全国研究大会(平成15年8月)
・滋賀県総合教育センター 学校作り支援講座 (平成15年8月)
・滋賀県高等学校教育研究大会 (平成15月11月)
・ミシガン州立大学連合日本センター(平成17年2月)
・兵庫県高等学校英語教育研究会但馬支部研修会(平成17年3月)
また、SELHiに関してのアドバイスを求められ、帝塚山高校に授業指導に招かれ、授業の参観お
よび意見交換をした。
5)SELHiの経費で、英語教師用の文献を購入することができ、授業改善に活用している。
○教材提示や教材活用にかかる変化
1)読解教材の多くとディベート教材の一部は、海外で出版されたものや大学生向けのものを使用し
ている。そのため、教材の精選に時間を使い、よりよい教材を探し、それを研究する機会に多く
恵まれた。
2)ディベート教材の多くは、生徒にとってふさわしいテーマに沿って、教員自らが作る。また、ワ
ークシートも生徒の実態に合わせて自作する。このように自分たちで教材を作ることによって、
その提示の仕方、生徒への負荷のかけ方などのコツを習得でき、このことも授業改善に大きく資
する要素となった。
2.校内組織について
本校のSELHi研究開発は、英語科教員全員で取り組むことを大切な要素としてきた。このことに
- 125 -
よって得られたものは次のようなことである。
1)全員が研究開発の使命感を持ち、目標を持って取り組むことができた。
2)校内で開く研修会にも全員が参加し、共通の問題意識を持つことができた。
3)課外活動や行事に対して、仕事や任務を分担し協働で作り上げるため、質が向上するとともにそ
れぞれの教員にとっての体験が貴重なものとなった。
4)全員の意思統一が図れ、互いに教授法や教材を交換したり意見交流ができるため、教師集団とし
ての力量が向上した。
5)かつては教師間を隔てていた壁が取り払われ、自分の英語力も授業の力もオープンにして、いい
人間関係ができあがった。
8
研究開発組織について
1. 校内研究開発組織
校内研究開発組織は、前項の記述のごとく、英語科教員全員がこれに加わり、力を合わせて取り
組んだ。他教科の教員の理解は年を経る毎に深まり、英語科で取りくんだ公開授業が、他教科も巻
き込んだ全校的なものに発展した。イマージョンの授業で他教科と連携することもでき、課外活動
や英語関連行事にも関心を持って協力してくれる教員も増えた。
反省点としては次の2つがある。
1)国語科との連携が果たせなかった。特に自己表現の手段としての言語力という観点から、国語科
にも呼びかけてディベートやディスカッションをともに取り組むべきであった。また、言語操作
能力の基礎の部分の定着のさせ方などを共同研究することができなかったことも大きな反省材料
である。
2)本校の研究開発が指導法に重点を置いたため、評価や生徒の伸びを測るデータを取ったり処理し
たりすることがあまりできなかった。研究開発の大切な要素である、緻密なデータ処理に関して、
他教科の情報教育担当の教員を組織に加えるべきであった。
2.運営指導委員会での指導事項
○平成14年度
・こういうプログラムを成功させる鍵は3つくらいあると考える。1つは教員、2つ目はクラス・サイズ、3つ目は時
間である。教員以外の2つの条件は県レベルで考える問題であるが日本ではなかなか整わない。英語の4
技能の重視は勿論大切だが、それと同時に「学習者の心的態度」つまり、人間としての心の持ち方の問題も
大事である。これは意外に日本の外国語教育は軽視してきたことであるが。概して、歴史上の英語の達人
は 「困った人」とよく言われてきた。国粋主義的な人か、英語に飲まれてしまう人。その両方を見通して「外
国語をやった人は違うなー」と思わせる人は意外に少ない。第二公用語論の提案の根拠に、シンガポール
に触発されてということもあろうが、シンガポールや台湾の実状をもっと認識する必要がある。台湾の人は
mainland に統合されるよりはアメリカの植民地になることを望んでいる。そのためには、なりふりかまわず英
語をやる。シンガポールの67%の中国系の人は、母語を捨てていて、「中国と違って資源も何もないところ
では文化なんていっていられない」などと言っているところの英語の学習を我々は見習っている。
・外国語、特に英語の先生は山登りの先導役である。日本と英米の2つの側面を見ながら、峰から峰へ稜線
を歩く、大きな責任のある仕事である。外国語教員はそういう重い使命を持っている。運用技能の重視も大
事な問題だが、併せて評価が難しい問題ではあるが、「心的な態度」も大切である。異文化理解とは、アメリ
カ人の習慣を知ることではなく、それに対する心の持ち方を考えることである。それが斉藤先生の言われた
あとに残された問題として1つ付け加えておきたい。
・教員の立場とこの米原高校の成果をどうして広めてゆくかという観点で話すと、英語、特にReadingを使う時
にどういうバランスで英語を使うのかという問題になる。米原高校という進学校である現状と、今やっているこ
ととの対応関係を明確にする必要がある。例えば「直読直解」ではやりにくい大学入試問題があることも事
実。やってよかったことだけではなく、どの部分でどれを使い、どれが不必要だった(意味がなかった)とか又
はこの部分ではこれも必要だとかいう「課題」をあげていただければ更に良い。
・Readingのスタイル・コンテントと教授方法との関わりにおいて、どの先生にも理想型はあると思うが、ここは
発想を変えてこういう点が必要だということをあげていただければ更に良い。昨日立命館宇治高校のイマー
ジョン教育の実状についての講演を聴いたが、ディベートだけだとどうしても中味が薄くなるということであっ
- 126 -
た。中味を深める ためには限られている時間の中でどのようなReadingのinputが必要か?何をもって内容
を濃くするのか?という問題も指摘されていた。今後米原高校でもある程度関わる問題ではないかと思う。
○平成15年度
・米原の実践を他校へも広げていきたいと思う。(目標とする)4技能の総合的な発展に加えて、教員の情熱、
優秀なスタッフの一致協力の賜物として感謝したい。
・いい点ばかりで終始し、問題が残らないということはあり得ない。それをはっきりさせることが次年度の
improvement に必要である。それぞれの授業の改善点を見つめ直す必要もある。改善の視点として「問題
点は何だったのか」ということを洗い出す意味で再度、考え直す機会を持って欲しい。
・グランド・デザイン」を考えることが必要である。SELHiを受けている米原として来年度こういう目標でそこに集
結してやりますということを考えることにより、米原のレベルアップと共に全国知名度もまだ上がると思う。神
戸市の英語教育改善懇話会では(構成員は実業界が半分で英語教育関係者が半分)、4回の会議を終え、
アクションプランを立て、スタートラインとしての目標を作り上げた。その中で中心になったのは、結局「人を
どう育てるか」であった。実業界の方からは数値目標を立てる、即ち年度目標を立てて、何年まではこういう
ことをやり何年後にはそういう結果を見せよという意見が出ている。企業ではそういう厳しさは当たり前であ
る。本校でも、問題点の洗い直しと、グランド・デザインの確立が必要。いままでのお話を聞いていると 「自
己表現のできる 英語力を備えた生徒を育てる」でも良いのでは? 例えば input 1/3, practice 1/3, output
1/3 の授業を実現するとか、そういうことを目標としていただいてもよいと思う。
・Writingの評価方法であるが、13年前に発刊されたプロセスライティング(バンリー著)によると、Writingはプ
ロセスでありアイデアを出して、その文章を構成して、文法の添削はラストでよいとあった。たまたまその2年
後のイギリス研修時の私の質問に対してWritingにはevaluationは不要であり、本人がやればよいという答え
であった。Eメール交換においては、相手に質問を書いてもらう、即ち相手が分かりにくかった又はもっと聴
きたいという部分に関する質問に答えることで、その子のEssayがより完成度が高まる。プロセスライティング
においても、Essayとは何であるか?という問いに対して内容面を重視し、文法はラストにするとある。私のや
っていた時には、分かりにくかったことを相手校から質問を受けることにより、情報付加してE-mailの効果を
得た。
○平成16年度
・成果をどのように数値化するかについては、年度当初と最後のアチーブメントテストによりある程度成果の
進捗状況を数値化することは可能である。
・生徒や保護者による評価を取り入れていくのも一つの方法である。
・シラバスの整理等もしていく必要がある。
・研究報告なども対象をどこに置くかによって大きく変わってくる。やはり対象を地域に向け、地域に還元で
きるような報告であってほしい。
・研究授業等を見せるのは、結果だけを見せることになりがちである。先日のSELHi講演会の公開授業のよ
うにそこまでの過程を見せる授業があったほうが良い。
・研究授業の場合、本時とそれまでの授業を含めたレッスン全体の教案を提示したほうが良い。また、研究
を進めるうえで、教材の評価、教材の練習の評価もやってみることも必要である。生徒の見方と教師の見
方では食い違う部分も多々ある。
・米原高校では、文法力をどのように身につけているのか。特に何か特別な方法を取り入れているのか、ま
たその文法力や基礎学力をどのようにディベートができるレベルまで引き上げているのか、を明らかにして
いく必要がある。さらに、テストはどうなっているのか、について報告するとよい。研究報告書には映像など
も入れられるのでCD-ROMを添付してほしい。
・公開授業を見学する人を、3つくらいに分けて、見学してもらい、午後の研究協議会も3会場に分けて実施
したほうが内容が深まるのではないか。直接授業者に質問したりする時間を取ったほうが良い。
全体会→分科会→全体会のような形ではどうか
3時間目の授業についての分科会(30分程度)-3会場程度
4時間目の授業についての分科会(30分程度)-3会場程度
- 127 -
3.運営指導委員会の助言により英語教育の改善に貢献した事例
運営指導委員のうち2名は、平素授業指導に来てもらっている先生であるので、日頃から有益なアドバイス
をもらっている。また、運営指導委員ではないが、中邑光男先生にも、多くの示唆をもらった。この3先生の指
導を受けて改善した授業の指導法は多く、5に記した指導の例に詳しく記したので、ここでは割愛するが、齋
藤先生に指導してもらった減点法・加点法による評価法の違い、鈴木先生に指導してもらったラウンド制によ
るリーディング授業の改善、中邑先生によるディベートの指導法は、本校の英語授業改善に特に大きな影響
を持った。
9
授業外活動等の記録・外部講師の講演
1.授業外活動の記録
平成14年度~16年度に取り組んだ英語コースを中心とした主な英語関係の授業外活動を示す。
合宿
・平成14年度
1) 1年生英語コース オリエンテーション合宿 4月13日~14日
2) 1・2年英語コース合同 夏季英語合宿 7月21日~22日
3) 1年生英語コース冬季合宿 12月14日~15日
4) 2年生英語コース冬季合宿 2月1日~2日
5)1年生英語コース春期合宿 3月22日~23日
・平成15年度
1) 1年生英語コース オリエンテーション合宿 4月18日~19日
2) 1・2年英語コース合同 夏季英語合宿 7月18日~19日
ゲスト講演:翻訳家 脇坂あゆみ氏
3) 1年生英語コース冬季合宿 12月5日~6日
4) 2年生英語コース冬季合宿 2月6日~7日
この中でベネッセ 英語コミュニケーション能力テスト受験
5)1年生英語コース春期合宿 3月19日~20日
・平成16年度
1) 1年生英語コース オリエンテーション合宿 4月23日~24日
2) 1・2年英語コース合同 夏季英語合宿 7月23日~24日
ゲスト講演:東後勝明先生講演と実習を含む
3) 1年生英語コース冬季合宿 12月22日~23日
4) 2年生英語コース冬季合宿 3月4日~5日
5)1年生英語コース春期合宿 3月18日~19日
コンテスト
・平成14年度
1) 米原高校レシテーションコンテスト 5月26日
(1年生英語コースは全員必修・他は自由参加)
2) 米原高校・虎姫高校ESS 合同レシテーションコンテスト 6月8日
(米原高校レシテーションコンテストの1年生上位者12名参加)
3) 1年生英語コース スピーチコンテスト 8月22日~23日
4) 滋賀学園・米原 合同スピーチコンテスト 9月28日
(1年生英語コース・スピーチコンテスト上位20名・他学年希望者参加)
5) ミしがンカップスピーチコンテスト 11月29日 優勝
6) フレンドシップカップレシテーションコンテスト 2月16日
最優秀賞1名 優秀賞1名 優良賞2名
7) 近畿高校生英語スピーチコンテスト参加
・平成15年度
- 128 -
1) 米原高校レシテーションコンテスト 5月24日
2) 米原高校・虎姫高校ESS 合同レシテーションコンテスト 6月7日
3) 1年生英語コース スピーチコンテスト 8月21日~22日
4) 国際情報・滋賀学園・米原 合同スピーチコンテスト 9月27日
5) ミしがンカップスピーチコンテスト 11月18日 第2位
6) フレンドシップカップレシテーションコンテスト
1月31日
最優秀賞1名 優秀賞3名
7) 近畿高校生英語スピーチコンテスト
第2位 1年英語コース
・平成16年度
1) 米原高校レシテーションコンテスト 5月22日
2) 米原高校・虎姫高校ESS 合同レシテーションコンテスト 6月5日
3) 1年生英語コース スピーチコンテスト 8月21日~22日
4) 国際情報・滋賀学園・米原 合同スピーチコンテスト 10月17日
5) ミしがンカップスピーチコンテスト 11月19日
優勝 3位 6位
6) フレンドシップカップレシテーションコンテスト
1月21日
優秀賞1名 優良賞2名
7) 近畿高校生英語スピーチコンテスト
2月20日
第5位
ミシガン州立大学連合日本センター研修
・平成14年度
1) 1年生英語コース研修 9月9日~13日
2) 2年生英語コース研修
3月25日~3月27日
・平成15年度
1) 1年生英語コース研修 9月9日~13日
2) 2年生英語コース研修
3月25日~3月28日
・平成15年度
1) 1年生英語コース研修 9月6日~10日
2) 2年生英語コース研修
3月28日~3月29日
スピーキングテスト
・平成14年度
1)1・2年生英語コース 第1回スピーキングテスト 6月27日~7月2日
2)1・2年生英語コース 第2回スピーキングテスト 11月11日~15日
・平成15年度
1)1・2年生英語コース 第1回スピーキングテスト 6月23日~26日
2)1・2年生英語コース 第2回スピーキングテスト 11月10日~17日
3)1年生英語コース 第3回スピーキングテスト 3月11日
・平成15年度
1)1・2年生英語コース 第1回スピーキングテスト 6月7日~11日
2)1・2年生英語コース 第2回スピーキングテスト 12月1日~4日
SELHi講演会・ワークショップ
・平成14年度
鳥飼玖美子先生 1月30日~31日
・平成15年度
東後勝明先生 2月17日~18日
・平成15年度
遠山顕先生
10月21日~22日
3年生英語コースTOEIC講習
・平成15年度
8月24日
- 129 -
・平成16年度
8月21日
講師はいずれも石井辰哉氏(Tips English Qualifications社長
TOEIC全国1位)
3年生英語コースTOEIC公開会場受験
・平成15年度
9月28日
・平成16年度
8月26日
いずれも英語科教員8名も受験
英語リーディングマラソン
・平成14年度 1月19日
・平成15年度 8月18日
・平成15年度 7月31日
リスニングコンテスト
・平成14年度 3月17日
・平成15年度 3月16日
・平成15年度 3月15日
その他
・高校生ユースフォーラム参加(三木高校)
・2年生英語コース プレゼンテーション大会
平成16年12月19日
平成17年3月23日
2. 本校の授業外活動に対する考え方
・授業を補い、それを強化する目的で実施する。従って、授業との関連を持たせて、課外活動で行
ったことが授業に反映され、授業で取り組んだことが課外活動で発展できるようにする。
・授業と関連を持たせるとは言え、授業の延長であってはならない。授業とは異なった切り口や手
法で行い、できる限り実際的な場面で英語を使用できるように配慮する。
・著名講師を招いての講演会では、生徒が高いモティべーションを持って臨めるように、事前指導
を丁寧に行う。
・合宿はできる限り楽しい雰囲気で自由に英語を話せる機会を多く持つ。また、ALTなど外部からの
講師に役割を持ってもらって、講師とともに活動できる場面を多く作る。
・コンテストでは、緊張感を持って取り組めるように、事前に意義を説明し、それに向けて計画的
な個人指導をする。また、競争心を刺激するよう賞を設ける。
・コンテストが校内から外部の大会につながるようにし、目的意識を強化する。
・積極的に外部のフォーラムや集いに参加するよう奨励する。
・コースでの取り組みをできる限り全校に広める努力をする。
本校の授業外英語活動に対する考え方や、そこから得た教訓を述べる(大修館書店「英語教育」平
成17年年4月号より抜粋)
英語コースは普通科の1クラスであり、英語の授業に多くの時間を割くことはできない。
授業で英語に触れさせる機会が限られるという制約の中でいかに英語学習への意欲を高め,
コミュニケーション能力を伸ばしていくか。その問題意識の中から、目的をはっきりさせ周
到な計画を立てて課外活動を組み立てている。
・意欲を高め、英語を使う楽しさを味わわせるための授業外活動
英語合宿の第一の目標は、英語を使う楽しさを体感させることにある。普段の授業でも話
す機会は多いが、一人ひとりに十分な時間は保証できない。そこで、ALTを10人ほど招
いてふんだんに英語を話す場面を作る。英語を話すことに対する生徒のモティべーションを
維持するため、1泊2日で回数を多くする。内容は、普段授業ではなかなかできない活動を
取り入れる。映画を使ったコミュニケーション活動、長時間のディベートなどのほか、英語
- 130 -
の集中読書、教養講座、リスニング訓練、スキットの発表なども取り入れる。あくまでも楽
しい雰囲気の中で英語を学ぶことが大切と考えるので、高圧的な指導はしない。教師も競い
合って 、「おもしろくてためになる」活動を考えようとする。
ミシガン州立大学日本センターでの研修も、同様の目的で実施している。TESLの専門家で
あるネイティブの先生から授業を受けることで、生徒たちはちょっとした留学の雰囲気を味
わう。
・高いハードルを乗り越えることで成長させる指導
コンテストは1年生必修とし、春にレシテーション、夏にスピーチを実施している。40
人の生徒を英語科教員9人分担して指導する。レシテーションの目的は、正確な発音と効果
的なデリバリーの方法を身につけさせ、パブリックスピーキングの基礎を養うことにある。
生徒は10編のテキストから1つを選び、約1ヶ月をかけて徹底的に指導される。スピーチ
は夏休みの前半で原稿を完成させ、担当教員に送付して添削を受ける。何度かのやりとりの
後原稿が完成すれば、担当教員の指導のもと、学校で繰り返し練習をする。
コンテストを実施することによる効果は大きい。夏の終わりまでに発音は見違えるほど上
達し、人前で話すことに抵抗感がなくなる。さらに、スピーチを自分で書き覚えることで、
発話能力やライティングの力も伸びる。
コンテストが、校内の大会を実施して終わりなら、モティべーションがそこでストップす
る。そこで、上位者により上の大会に出場する権利を与える。レシテーションでは、虎姫高
校のESSとの合同コンテストに、スピーチでは滋賀SELHi3校の合同コンテスト、さらにその
入賞者に県大会への出場権を与える。このようにして生徒たちは自信を身につけ、発表への
意欲も身に付き、上位に入れなかった生徒の多くがクラスの仲間の成功を刺激として、2年
生に再度スピーチに挑戦する。その成果は、県内大会で上位に多くの生徒が入賞するという
形でも現れている。
・課外活動を成功させるために大切なこと
1.楽しい体験と、チャレンジ体験を織り交ぜる。
2.授業の延長にならないように配慮しながら、授業との密接な関連を持たせる。
3.競い合わせ、常に高い目標を持たせる。
4.常に新しい発見や感動がある。
5.上級生が下級生に指導する場面を多く作る。
6.クラスや課・コースでの活動をできるだけ全校規模に広げる。
7.英語科教員全体で取り組む。
8.全校的な協力を得て、英語科教員以外にも協力を求める。
9.外部からの応援者(ALTなど)が楽しいと思ってくれるように仕組む。
10.思いつきでやるのではなく、毎年の恒例行事として、年間計画に組み入れる。
・課外活動が失敗する原因
1.生徒が課外活動の目的をはっきり理解しない場合。
2.楽しいだけで学ぶことが少ない場合。
3.負荷が多い活動を生徒が苦痛と感じる場合。
4.教師が課外活動を余分な仕事と感じる場合。
5.活動の成果を評価しない場合。
また、課外活動は外からの多彩な人材をどんどん導入し、色彩豊かな活動を展開するとよ
い。そのためには、まず教師自身が広くネットワークを持ち、柔軟に外部の力を活用するこ
とが大切であろう。
3.外部の講師を招いての講演会
1) 著名講師の招聘
(1)でも記したが、SELHiの3年間で、3名の著名な講師に来ていただき、2日間にわたって、英語コー
スへのワークショップ、全校対象講演会、教員対象講演会を開いてもらった。講演のみで終わりとせず、
講師に触れられる絶好の機会を最大限利用することにより、生徒たちだけでなく教員もまた。多くのこと
- 131 -
を学ぶことができた。講演会等を開く上で大切だと考えていることは次の通りである。
・名声や著名度だけに頼って講師を決定するのではなく、教員自らが著書を読み、業績を調べ、
かつ英語教育に対する関心や考え方を熟知して決定すること。
・講師自身の業績や考え方について十分な事前指導をし、モティべーションを高めておくこと。
著書を読ませることが望ましい。
・事前に 、講師自身に学校の様子や英語教育の取り組み等について十分な理解をしてもらうこと 。
・高等学校現場にふさわしい講師の条件は、
1)日本人としてモデルにすべき域にある英語力の持ち主であること
2)英語教育に洞察が深いこと
3)人格的に立派な人であること
4)できれば、多くの人が知っていて、外部の参加者を惹き付けることができる人、であること
思われる。
・事前に講師と十分な交渉や相談をして、生徒・教員のために一番いい形を考えること。講
演だけでなく、できれば、授業を公開して見てもらうことが、学校にとって大きな力とな
る。
・一流の講師に生徒が直接触れあえる機会を作ること。
・講演と公開授業は外部に公開し、地域や県内のできる限り多くの人に講演を聴く機会と、授
業を参観してもらう機会を提供すること。
・講師自身に、学校・生徒・授業の様子・教員の英語教育に対する考え方などを知ってもら
う意味で、できれば2日間連続で日程が組めるとよい。
・事後には、生徒の感想や礼状に加え、教師たちも全員感想を書いて送ること。
・事後にも折に触れ、コンタクトを保ち指導をしてもらうこと。
2) その他の特別講義
その他、京都外大との高大連携で招聘した講師以外に、平成16年度には次のような講師を招いた。
萩野俊哉先生(新潟南高校) 1年・2年英語コース特別講義(各2時間)
コミュニケーションの基本や総合的活動を取り入れた講義
奥総一郎先生(関東学院大学)1年・2年英語コース特別講義(各2時間)
CALL教室における講義
朝尾幸次郎先生(立命館大学)2年英語コース特別講義(各2時間)
CALL教室における講義
このうち、萩野先生と奥先生には、私たちの授業も公開して見てもらった。
3) 成果
・学校の英語教育の目的に添い、英語科教員が必要としているテーマ・内容にふさわしい講
師を招いたことで、生徒と教師の双方にとって得るところが多かった。萩野先生からは、
授業における生徒の惹き付け方や、授業の組み立て方、教材の作り方や提示・使用の仕方、
4つの技能のバランスをとった指導法、活動のさせ方等を学ぶことができた。奥先生と朝
尾先生にはCALL教室の有効な活用法についてのアイデアや活動のさせ方について多くの示
唆を得ることができた。
・現場に立脚した指導者であったので、教員にとって大きな刺激となった。
特別講義に講師を招く際に大切なこと
・大学の教員だけでなく、高校現場で実績のある教員に講義をしてもらうことで、教員自身
が学ぶことが多い。
・いずれの場合も、授業公開をして指導を受けるとよい。
*授業で使用した教材、英語合宿の内容・教材、スピーチコンテストの作品集、著名講師の講演
録等は、別途冊子資料として添付する。
- 132 -
米原高等学校の英語授業を参観して
立教大学教授・同時通訳者・NHKテレビ「英会話」講師
鳥飼玖美子
米原高校の試みは、高校段階の英語力では困難とされるデイベートを見事に導入してい
ることが印象的であった。
成功の鍵は以下の点にあろう。
1
事前にテーマについて読ませるなどしっかり準備させている
2
高校生の能力に合わせた方法を工夫し、自信喪失などの悪影響がないよう、
決して無理せず生徒たちが楽しく主体的に参加することを主眼としている
3
日本人教師がリーダーとなり、ALTを含む複数の英語教員のチームワークが抜
群である
以上の点は、他校においても参考にすべきものである。
なお、このような試みは、成果を数値にして表すことは至難であると同時
に意味
がないように思われる。
ネイテイブ教員と日本人教員が協力しての授業を体験し、その中で生徒が
考え、自分の意見を英語で表現することを学ぶ、という米原高校の日
は、おそらく生徒が社会に出た後になって実感されるもので
常的教育の成果
あり、生かされるもので
あろう。
これは長期的に見て数字にまさる教育効果であると信じて疑わない。
- 133 -
自らが
こころに届く英語教育
早稲田大学教授・元NHKラジオ英会話講師(1972~1985)
東
後
勝
明
昨年の今頃、米原駅に着いた時、出迎えの先生方が開口一番「何の変哲もない街、それが米
原です。そして何の変哲もない普通の高校、それが米原高校です」と。私が出向いた理由は、そ
の米原高校が数年前から Super English Language High School に指定され、独自の英語教育を
展開していると聞き、そのプログラムの一環としてとにかく生徒と接し、じかに話をして欲しいとい
うお招きを受けたからのこと。
私もこれまでに随分いろんな所で授業見学や講演をする機会があったがこれほど、心に残る
体験をしたのも極めて希なこと。確かに先ほどの出迎えの先生のことばにあるように、校内に足
を踏み入れても、また教室に入ってもごく普通の学校。特に目立った設備があるわけでもなく、随
所にネーティブの先生の顔が見えるわけでもない。しかし、そこには他では感じられない何かが
あった。底抜けに明るい笑顔、熱い視線、話すことばのひとことひとことがまるで乾いた砂に水を
そそぐように吸い取られる。こういう体験は私にも珍しい。恐らく私が伺うまでに、先生方による事
前指導が十二分に行われていたことが寸時にわかった。先生方の陰のご苦労がかいま見られ
た。
授業も生徒が生き生きとしていた。実践的コミュニケーションを目指すディベートの授業。決し
てみんなが、目を見張るような素晴らしい英語を口にしているわけでもない。でも楽しそうに、そし
て一生懸命、自分の意見を伝えようとする。そのけなげな態度が感動を呼んだ。そこにはなんと
も言えない爽やかさがあった。思わず That's the spirit!と声をかけたくなるような。
英語教育の在り方がいろいろ問われる昨今、ここでは、こころに届く、いわば「手作り英語教
育」の原点を見たような気がした。大切なことは教える側がどのように生徒と向き合うかだ。それ
によって生徒は見事に変わる。
そんな確信をもって帰路の新幹線に乗り込んだ時、一枚の色紙を渡された。そこには全生徒
からの感謝のメッセージがぎっしりと詰まっていた。ひとつ、ひとつ読んでいくうちに目頭が熱くな
った。「夏の合宿にも来てください!」という声がだんだん大きくなってきた。その年の夏、私は躊
躇なく米原行きの新幹線に乗り込んでいた。
- 134 -
米原高校の英語教育
コミュニカ代表 NHKラジオ英語講座講師
遠山
顕
この度、米原高校が文部科学省主催のフォーラムでSELHi代表として模擬授業を行う学校に選ばれたこ
とは、昨年秋に同校に招かれ、2日にわたり英語ワークショップ等を行い、公開授業を楽しませてもらった
者にとっても欣喜雀躍のニュースである。まずは月並みながら関係者の皆様と学生さんたちにCongratula
tions! を申し上げたい。
同校の取り組みは大胆かつ地道である。夏休みの1日に50ページほどの英語の本を読み切る自由参加の
プログラムはその例である。また、レシテーションやスピーチのコンテストをはじめ、スピーキングテスト、
合宿などが課外で、また、クラスでは少人数のディベートやディスカッション、ALTとのチーム授業など、
英語でのレッスンが常に行われ、4技能を総合的に使わせる取り組みが、英語のみのテキストなども使って
熱心に行われている。ただ、レッスンを常時公開するというポリシーを立てている点が、米原高校の真の大
胆さである。そのプレシャーに慣れさせ、級友たちとの馴れ合いを越えた次元で授業を受けさせるチャンス
を与える方針は、生徒の発表力と社会性を向上させるバネとなっているようであるし、同じ教師として私は、
先生方の感じられるプレシャーに同情しつつも、そのご努力への賛嘆の言葉を禁じえない。
しかしながら“短期滞在中”に見聞した公開授業の中で、私がなによりも強く肌で感じたのは、そうした
ポリシーの核ともいえる、学生に考えさせ、その反応を待つことを厭わない教える側の姿勢である。急に投
げかけられた質問にすぐ反応できないのは外国語のクラスでは日常茶飯事である。参観した公開授業では、
すぐぺらぺらと形よく答えるモデル授業のようなフルーエンシーは奨励されてはいなかった。代わりに、間
や沈黙に対して寛容で、「考えさせ反応を待つ」という姿勢が、ファカルティーによって意識され、実行さ
れているという印象を持った。これは、教師がその優位性を誇示しない教え方であり、生徒を一個人として
のレベルに持ち上げ、いうなれば水平な人間関係を作り、コミュニケーションをしやすくする。また、間違
いを正すより、良いものを評価する方向性が実際に感じられ、学生もそのあたりから教師を信頼している空
気が感じられたのは新鮮であった。
こうした風通しのよいコミュニケーションレベルこそ、将来、多様な価値と文化に満ちた国際社会へ巣
立つ者の心構えの土台となるべきもので、そうした「こころ」という計量できぬ部分にまでケアの手を伸ば
す地道な努力を、コースレベルで行っておられる点が、今回の快挙に貢献しているのではないかというのが
私の率直な印象である。
また、先生方は定期的に検定試験を受けておられるとのこと。力のある先生がさらなる向上とメンテナン
スを行っておられる地道さも、また特記すべきであろう。同校では、授業の前に生徒に好きな本を読ませる
朝読書も覗かせて頂いた。これは推測だが、学生の個を忘れずに行われるこうした取り組みは、おそらく全
学的レベルで行われているのやも知れず、その要の校長先生をはじめ、コース主任、ファカルティーのアイ
デア力とご尽力を形容する言葉を探すことは至難である。
最後に、米原高校の学習環境に触れたい。山林に囲まれた校庭を歩くとき、空気のうまさを実感した。森
からの新鮮な空気が脳の活性化に一役かっているに違いない。
Go for it, Maibara High!
Keep on smiling!
- 135 -
報告書・資料執筆担当者
米原高等学校
青山吉伸
桂本佳代子
高畑良彦
富岡正臣
富岡真理子
濱川 綾
原田好造
森谷祥久
山岡憲史
寄稿者(敬称略)
鳥飼玖美子(立教大学)
東後勝明(早稲田大学)
遠山 顕(コミュニカ代表)
齋藤栄二(関西大学)
中邑光男(平安女学院大学)
鈴木寿一(京都教育大学)
平成14年度~16年度
滋賀県立米原高等学校
スーパー・イングリッシュ・
ランゲージ・ハイスクール
研究開発実施報告書
発行
平成16年3月
編集者 滋賀県立米原高等学校
校長 山 中 健 一
発行所 滋賀県長浜市宮司町1148
(株)柴 原 印 刷
- 136 -