破壊的イノベーション(ディスラプション)がもたらす 投資リスクと

2016 年 9 ⽉
破壊的イノベーション(ディスラプション)がもたらす
投資リスクとオポチュニティ
AMP キャピタルでは、破壊的イノベーション(いわゆる「ディスラプショ
KRISTEN LE MESURIER
ン」)がポートフォリオに与える影響に関する検討を数年前から実施し
ESG 担当シニア・アナリスト
ています。ここでは、⾃動運転⾞が保険企業や経済に与える影響を
取り上げます。
「ディスラプション」は 2016 年の流⾏語とも⾔えるでしょう。新聞記事
のヘッドラインには Airbnb(エアービーアンドビー)、ウーバー、テスラと
いった企業らが名を連ね、企業役員らはツイッターやフェイスブック、グー
グルなど⼤⼿ IT 企業の幹部とのミーティングのために、シリコンバレーに
⾜を運んでいます。
「デジタル(化)」の進⾏が急激な変化を引き起こしており、世界はよ
り速いスピードで回転しているようにさえ感じられる今⽇において、この
カーシェアと⾃動運転⾞
⾃動運転⾞の出現とシェア経済の成⻑は、保険セクターにおける最
⼤の⻑期的課題と⾔えるでしょう。
成熟した⾃動⾞保険業界にとってのリスクとオポチュニティは、次の 3 つ
の質問に凝縮されています。
急速な変化に対応できなければ、何⼗年もの間成功を収め続けてき
1.
もし⼈々が⾃動⾞を所有しなくなったら、どうなる?
た企業でさえも、⾰新的なスタートアップ事業や IT 企業らに、その座
2.
もし⾞運転が⾃動化されたら、どうなる?
3.
⾞を⾃分で所有せず、⾞事故が減少するとしたら、⾃動⾞保
を脅かされることになるでしょう。
AMP キャピタルでは、破壊的イノベーション(ディスラプション)は重要
な ESG 要素であると考えます。豪州の保険・⾦融サービス・セクターに
おける破壊的イノベーションの主な源となっているのは、「⾃動運転⾞」、
「シェア経済」、「ブロックチェーン」の 3 つであることが当社の分析結果
から明らかになっています。
これとは相対的に、これまでの伝統的な ESG リサーチは、エシカル
(倫理上)⾯や企業統治におけるリスクやオポチュニティを企業がどう
管理しているいかにフォーカスしたものであり、投資判断において重要
険は必要なのか?
実際の所、カーシェアは既に浸透してきており、⾃動運転⾞の技術も
既に存在します。⾃動運転⾞は、センサー、カメラ、GPS 技術、短距
離無線を活⽤し、他の⾞や道路、その他インフラと「会話」から得た情
報を、⾃動運転に活⽤する⾞です。
豪州では 2025 年までに⾃動運転⾞が⾛⾏開始となるという⾒⽅も
あれば、それが主流になるのは 2040 年頃であろうという論もあります。
な要素である社会⾯の要素を無視したものでした。
技術やその他の様々な要因が普及のスピードや度合に影響を与えま
世界は着実に変化しています。この変化に対する保険や⾦融サービ
があります。ただ⼀つ確実なのは、その影響は莫⼤だという事です。
ス企業の対応⽅法を分析する事は、興味深い投資インサイツを提供
してくれます。
すが、その影響を評価する上では、⾃然な抑制要因も検討する必要
ESG 課題の理解がより良い投資結果を導く
AMP キャピタルにおける ESG 調査結果からは、企業による短・中・⻑
期の ESG リスクとオポチュニティの管理⽅法と投資パフォーマンスには、
強い相関があることが⽴証されています。
「⾃動運転⾞」、「シェア経済」、「ブロックチェーン」の詳細な分析を通
じた⾦融サービス・セクターのレビュー結果からは、ESG スコアのトップ企
業 5 社は、ESG スコアのボトム企業 5 社を 5 年連続でアウトパフォー
ムしていることが明らかになっています。
保険会社への影響
豪州やグローバルの保険会社において、⾃動⾞保険は収益の⼤きな
より⻑期(10 年)で⾒た場合、7 年を除き、このアウトパフォーマンス
幅はより拡⼤します。7 年で⾒た場合のアンダーパフォーマンスは、世
界経済危機と 2009 年の株価上昇によるものであると考えられます。
部分を占めます。バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチによると、保険料
収⼊のうち個⼈保険や CTP(強制賠償責任)保険が占める割合
は、サンコープでは約 50%、IAG では 44%となっており、⾃動⾞保険
コーポレート・ガバナンス・レポート(英語)は、次のリンクからご覧いた
は世界の財産・損害保険料収⼊の 42%を占めています。新興市場
だけます:
では、⾃動⾞保険が占める割合はより⼤きくなっており、財産・損害
www.ampcapital.com/about-us/esg-and-responsibleinvestment/corporate-governance
保険料収⼊の 58%を占めています。
転換時期がいつ訪れようとも、⾃動ブレーキ・システム、⾞線変更警
告システムなどの⾃動運転⾞を⽀える技術が普及するに従って、保険
会社は短〜中期の影響を受けることとなります。
⾃動化(オートメーション)技術を受けて、⾃動⾞事故が想定通り
に減少したと仮定すると、利鞘に影響を与えることなく⾃動⾞保険料
を 50%程度引き下げる事が可能となると⾒込まれています。これは
ディスラプションの実例であり、保険会社にとってのオポチュニティとチャレ
ンジの両⽅を提供しています。
これと同様に、シェア経済も保険会社に影響を与えると⾒込まれます。
『 ⾃動化(オートメーション)技術を受けて、
都市部におけるウーバーや格安レンタカー・サービス「ゴーゲット」の出
⾃動⾞事故が想定通りに減少した場合、
現を受けて、⾃動⾞所有のピークは既に過ぎたと指摘する研究結果
利鞘に影響を与えることなく、⾃動⾞保険料を
も発表されています。KPMG によると、⽶国において⾃動⾞所有にか
かる費⽤は1マイル当たり平均 82 セントであるのに対し、カーシェアの
費⽤は1マイル当たり平均 44 セントです。
50%程度引き下げる事が可能となると
⾒込まれています 』
豪州では、18〜24 歳の年齢層で⾃動⾞所有が低下しています。豪
ビクトリア⾃動⾞連盟によると、ビクトリア州における同年齢層の 1/3
は運転免許さえ持っていません。2014 年における同年齢層の運転免
許保有率は、2001 年から 12%低下しています。
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