受賞作品

【タイトル】
「風をつかまえた少年」ウィリアム・カムクワンバ 【優秀賞】
【ブロック】3ブロック
【学校名】上壱分方小学校 【保護者/教員】保護者 【氏名】阿部 智枝子
アフリカ最貧国の中学校を中退した 14 歳の少年が、お金もなしに、独学で風力発電をつ
くった、本当の話です。ウィリアム少年の住む国マラウイでは、電気を使えるのは人口の
たった 2%。旱ばつに襲われ、飢えがあり、エイズやマラリアが流行し、住民は魔術を信じ
ています。そのような環境にある少年が、風力発電を作りました。それも図書館の本を頼
りに、そして廃品で。この本を手に取ったのは、信じられないからでした。
ウィリアムはとくに優れた子供ではありませんでした。ただ、金持ちの友達の家で、壁
に手をふれるだけで灯りがともる仕組みを知りたいと思っていました。旱ばつで学費が払
えなくなり中学校を中退したウィリアムは、知ることへの欲望を満たすために NPO の図書
室に通いました。国が貧しくて学校に図書館はなく、この図書室も棚が 3 つしかない小さ
なものです。そこで一冊の本に出会いました。
その本で発電の仕組みを学び、貧しい国マラウイに神さまが絶え間なく与えてくれる数
少ないもののひとつ、風をつかまえてエネルギーにすることを思いつきます。まさに自然
エネルギーの活用です。お金がないので、廃品置き場をあさるウィリアムは、元のクラス
メートにみつかって、
「頭がいかれた」といじめられます。やがてそれは大人たちにも伝わ
り、周囲の人たちは彼を非難します。そのような状況に置かれても、友人2人は彼に理解
を示して力を貸してくれました。
風力発電に成功したウィリアムの評判はやがて世間に知られ、援助者のもと、5 年遅れで
中学に復学し、その後アメリカの大学に進学します。一冊の本との出会いが人生を変えて
いくストーリーにわくわくします。
さらに教育が、特に資源に恵まれない国において、人材の育成にどれだけ重要なことも
教えてくれます。そして何より、辛い状況にあっても、必ず理解してくれる人が、手を差
し伸べてくれると勇気付けてくれます。この本は、きっとあなたの背中を押してくれる力
をもっていることでしょう。
【タイトル】
「おおきな木」 【優秀賞】
【ブロック】1ブロック
【学校名】第四小学校 【保護者/教員】教員 【氏名】船引 容子
「むかしりんごの木があって…」と始まるこの本は、アメリカのシェル・シルヴァスタ
インが書いた絵本『おおきな木』です。読み終わると、木の包容力にほのぼのと心が温ま
る一方、なんだか哀しくなります。子供だけでなく大人にもぜひ読んで欲しい 1 冊です。
登場するのは、タイトルになっている大きなりんごの木と、その木が大好きな男の子で
す。男の子は、かわいいちびっこで、毎日、大きな木にやってきて遊びます。木の葉を集
めてかんむりを作ったり、幹によじ登って枝にぶらさがり、りんごの実を食べたり、かく
れんぼをしたり、遊び疲れて木陰で昼寝をしたり。木は、男の子が自分のことを大好きで
いてくれてとても嬉しかったのです。でも、男の子が少し大きくなって、あまり木に遊び
にこなくなってしまいました。
そんなある日、男の子がひょっこりやってきました。木は嬉しくて、
「わたしの幹にお登
りよ。わたしの枝にぶらさがり、りんごをおたべ。木陰で遊び、楽しくすごしておゆきよ。
」
と言ったのですが、男の子は、
「ぼくは、もう大きいんだよ。木登りなんておかしくて。買
い物がしてみたい。お金がほしい。おこづかいをくれるかい。」と木にお金をねだります。
木は困ってしまいますが、男の子のために、りんごを売ってお金ができるよう、自分のり
んごの実をみんなあげます。木は、男の子の役に立って喜びます。そして、また長い間男
の子は木に行かず、木は悲しんでいました。ひょっこりもどって来た時には、男の子は大
人になっていました。温かな家が欲しいとりんごの木に家をねだり、りんごの木の枝すべ
てを持っていってしまいました。それでも大きな木は、男の役に立てて嬉しかったのです。
次に男が来たときには、おじさんになっていて、遠くへ行きたいから船が欲しいとねだり、
大きな木の幹を切り倒して持っていってしまいました。それでも木は、嬉しかったのです。
考えさせられる一文は「だけどそれはほんとかな。
」です。男の子のために、りんごの実
をあげ、枝をあげ、幹をあげ・・・、見返りを求めず、無償の愛を与え続けていたのですが、
それだけで木は満足だったのか考えさせられます。この木の複雑な思いは自分が親である
今、理解できます。子供には、この複雑な思いはわからないでしょうが、大きなりんごの
木が「男の子のために」してくれたことは、子供に、大きな木の大きな心を感じさせてく
れるのではないでしょうか。
【タイトル】「人類がうまれるための12の偶然」(岩波ジュニア新書)眞 淳平【優秀賞】
【ブロック】4ブロック
【学校名】散田小学校 【保護者/教員】保護者 【氏名】渡辺 順
さて、人類である。皆さんの周りにも、ウンザリする程大量にいるであろうこの生物。ま
るで万物の霊長みたいな顔して、太古の昔からこの宇宙にあり、その中心のつもりでいる。
そんないけすかない連中である。これは、そんな鼻持ちならない、しかし何処か憎めない生
物の誕生前夜(いや、前夜ドコロじゃない)から現在の文明を築くに至る、12 の事件の物語で
ある。
人類はどのようにして生まれたのか?人類に限らず、生命が産まれるためには、その揺り
籠となる土壌が必要(ま、海だね)。そのためには何は無くとも取り敢えず宇宙が必要だろ
う。じゃ、作るか。これが第一の事件。宇宙出来たけど、恒星が無いと寒くてしょうがない。
太陽作ろう。うーん、いくら暖かくたって、太陽には住めないので、やっぱ惑星だよなぁ。
でも、惑星と言ってもいろいろで…。あ、忘れがちだけど、月って大切ですね。と、いつに
なったら桶屋が儲かるんだ、とばかりに事態は飛躍、展開する。
更に言えば、生命が生まれりゃいいってもんじゃぁない。なんせ、奴らは自らを万物の霊
長と勘違いする程度には知能が発達してなきゃいけない。シアノバクテリアが幅を効かせて
る世界、見たいかな?(まぁ、大切な存在だが、あえて…。実際、十億年くらい前には…。)
そんな、宇宙の誕生から、恒星(太陽ね)、惑星の成り立ち。その後の生命の誕生、進化(変
化?)の謎をひとつひとつ解説していく。この中の一つとして欠けていればわれわれ人類は
誕生しなかったのだ。あなたも、わたしも、ひいては、アンパンマンやピカチュウさえ、生
まれることはなかった。
人類はいつ誕生したのか?そんなことは、知ったこっちゃないかもしれないが(実際、わ
からないんだよね。中にはほんの六千年前だ、なんて、謙虚な方々もいらっしゃるが。)な
が~い宇宙の歴史のなか、どんな偶然があってか、人類が、ここまで進化してきたのか?エ
コだの温暖化だのと、かまびすしい今日、また、火星に生物の痕跡を探す昨今、好奇心、そ
そられませんか?最後に…。めっちゃくちゃ難しいぜぇ。読めるものなら、読んでみて!
【タイトル】
「もったいないばあさんと考えよう世界のこと」 【優秀賞】
【ブロック】5ブロック
【学校名】由木東小学校 【保護者/教員】保護者 【氏名】鈴木 洋子
これから「もったいないばあさんと考えよう世界のこと」という本を紹介します。皆さん
は何歳ですか。この本には、世界中の 10 人の子どもが登場します。みんな 9 歳です。9 歳っ
ていうと、日本では小学校 3 年生か 4 年生ですね。平和でお金持ちの国である日本の 9 歳の
子どもは、毎日学校に行って、勉強して、お友達と遊んで、好きなものを食べて嫌いなもの
は残して、お誕生日やクリスマスにはプレゼントをたくさんもらって、そういうのが当たり
前です。でも、世界を見渡すと、全部の子どもがそんな生活をしているわけではないのです。
インドのアムルータちゃんは、うちにお金がなくて、学校に行けません。じゅうたんを作
る工場で1日 12 時間も働いています。ずっと座ったままの同じ姿勢でいるので、背骨がま
がってしまって息をするたびに苦しくなるそうです。ネパールのサビトリちゃんは、水道が
ないので、毎日家族のために 4 時間かけて川まで水をくみに行きます。15 キロの水がめを運
び、疲れて学校には行けないのです。インドネシアのカリムくんは都会のスラム街に住んで
いて、家族みんなでゴミを拾ってそれを売って暮らしています。学校に行く時間はありませ
ん。シエラレオネのソロリスくんは、小さいころにさらわれてむりやり兵士にされました。
銃をうつ練習をして戦場に送られ、
「こわい」って言うと、こわくなくなる薬、麻薬を注射さ
れるそうです。
この本の中では、こんな世界の 9 歳の子ども達をもったいないばあさんが紹介していきま
す。学校に行けなくて、1日中ずっと仕事をしなければならなくて、遊ぶことも知らなくて、
きれいな水も十分な食べ物もなくて、平和で安全な暮らしがなくて…そんな中で懸命に生き
ている子ども達が世界中にはたくさんいるのです。学校に行って勉強を教えてもらうことも
ないから、何がよくなくて、どうしたらよくなるかもわかりません。
こんなことをいきなりいわれても、みなさんもすぐにはどうしたらいいのかわからないと
思います。でも、世界中には同じ 9 歳でもこんな子ども達もいるんだということを知って、
どうしたら世界が平和になって、みんなが幸せに暮らしていけるか、考え始めてほしいと思
います。
【タイトル】「さよなら、アルマ」水野宗徳・著 サンクチュアリ出版 【優秀賞】
【ブロック】4ブロック
【学校名】浅川小学校 【保護者】保護者 【氏名】渕上 明美
あなたは、昔、戦場に送られた犬がいることを知っていますか? 戦争で犠牲になったの
は、人間だけじゃなかったの?私はそんな驚きから、この本を手に取りました。いまから約
65年前、第二次大戦下の日本では、およそ10万頭ともいわれる犬が兵器として利用され
ました。人間と同じように出兵した「軍犬」と呼ばれた犬たちです。その多くは地雷を踏ん
だり、狙撃手の標的となったりして尊い命を散らしました。運良く生き延びられた犬も、終
戦後には戦地に置き去りにされる運命だったのです。
幼いころから犬好きな主人公の青年・太一は近所の人に頼まれ、賢いシェパードのアルマ
を預かります。貧しくアルマのえさ代も満足に稼ぎだせない太一は、「軍用犬にすれば国か
ら支給がある」ことを知り、アルマの訓練に力を注ぎます。アルマが急成長していく喜びと、
殺人兵器へと次第に変わっていく不安に揺れ動くなか、アルマは試験に合格し、出兵命令が
下されます。それから太一はどんな決断をしたのでしょう…。
この物語は、著者が図書館で偶然見つけた一枚の写真からうまれた物語です。「祝出征・
アルマ号」と書かれた幕の隣で、首から日の丸を下げたシェパードが座っています。本では
その姿を「凛々しく」と表現していますが、私には無邪気に笑っている姿にしか見えません。
犬を飼っている私は、アルマと愛犬をつい重ねてしまいます。写真から目が離せなくなり、
涙があふれました。人と犬との絆は、今も昔も変わらないものだったはずです。大好きな家
族から遠く離れた戦地で、犬たちは何を思いながら、永い眠りについていったのでしょう?
そして、人々はどんな気持ちで愛犬を戦地へ送り出したのでしょう?
終戦から長い月日が流れ、戦争を語り継ぐ本やテレビの特集も年々少なくなっていると感
じています。つらい事実や、悲惨な出来事に向き合うのは避けたいという弱虫な気持ちも、
人には確かにあります。軍用犬についても「知らなかった」のではなく、私が「知ろうとし
なかった」事実なのかもしれません。太一やアルマのように平凡な人たちが参加せざるを得
なかった戦争とは何だったのか?ぜひこの本を読んで、彼らの思いに寄り添ってほしいと思
います。
【タイトル】
「キツネ山の夏休み」
(富安陽子/あかね書房) 【入賞】
【ブロック】1ブロック
【学校名】第四小学校 【保護者/教員】教員 【氏名】小久保 諭子
小学生のころ、休み時間や放課後に図書室へ行って本を借りることが、とても楽しみだ
った。本棚に並べられたたくさんの本から1冊を選ぶことがわくわくした。それでも、ク
ラスで流行っている本や表紙のきれいな本ばかりを選んでいた。そんな時、何気なく「キ
ツネ山の夏休み」という本を手に取った。
表紙は作者が描いた色鉛筆の絵であるし、背表紙も日に焼けていて普段だったら絶対に
手に取らないような本だった。ちょうど 6 年生の夏休みがもうすぐだったこともあり借り
たことを覚えている。家に帰って読み始めると、それまでに味わったことがないくらい夢
中になってこの本を読んだ。その日の宿題にも手をつけず、母の声にも返事をせず、ただ
ただ夢中になって読んだ。
物語の主人公は、小学校 4 年生の弥である。夏休みの間、弥は遠く離れた稲荷山に暮ら
すおばあちゃんに預けられる。ある日弥が稲荷山のお祭りに行くと、榎稲荷のキツネが化
けた「オキ丸」という少年に出会う。オキ丸は弥以外の人間には見えず、一緒に空を飛ん
だり、泥棒を退治したりして徐々に二人は仲良くなっていく。オキ丸以外にも、猫股の大
五郎や水グモの精など様々な妖怪たちが出てくるのだが、妖怪が暴れたり人間を脅かした
りするのではなく、人間に気付かれないように共に暮らしている。そして物語全般をとお
して、稲荷山の穏やかな夏が描かれているのである。
本を読み終わると、外は真っ暗になっていた。本を閉じて、自分が稲荷山から帰ってき
たような錯覚と長時間本を読んでいた疲れが混ざって、しばらく呆然としていた。そして
これほどおもしろい本があるのかと、強い衝撃を受けた。この本を読んだことをきっかけ
に、表紙がきれいな本や流行の本だけではなく、中身がおもしろい本を選ぶようになって
いった。
「キツネ山の夏休み」を読んだ日から、夢中になったり感動したり衝撃を受けたり
した本は何十冊もある。しかし、小学生の時に読んだ本の中で間違いなく一番自分に影響
を与えたのは「キツネ山の夏休み」だと思う。
同じ本を読んでも読み手の感想は様々であり、そういう意味では本はその時の自分自身
の生活や感情と深く関係している。だからこそ、小学生には親や先生が薦める本でなくて
もいい。これは自分に合っているという「自分だけの 1 冊」をぜひ見つけてほしいと思う。
【タイトル】
「ストライプ」 【入賞】
【ブロック】2ブロック
【学校名】第九小学校 【保護者/教員】保護者 【氏名】松﨑 美和子
私が小学生のうちにぜひ読んでもらいたい本は、デヴィッド・シャノンの『ストライプ』で
す。
「たいへん!しまもようになっちゃった」とサブタイトルがついています。表紙の女の子
の絵は、なんとも言えないくらいとてもインパクトがあります。
この絵本の主人公、カミラ・クリームは、周りの目がすっごく気になるお年ごろ。新学期の
第一日目の朝、学校に行く前に(どんな格好で行ったらいいのかしら。みんな、私をどう思
うかしら)と鏡の前で四十二着の服を次々に着替えています。やっと洋服が決まったカミラ
は、突然、金切り声を上げるのです。なんとカミラの身体は、頭のてっぺんからつま先まで
しま模様になっていたのです。新学期初日こそ休んだカミラも、次の日からはしま模様のま
ま学校へ。いきなり、しま模様になったカミラを見てみんなは大笑い。それでも、カミラは
なんでもないように一生懸命振舞いますが、カミラの身体は次々と変化を遂げて行き・・・。
どんなに有名なお医者さんや専門家たちでもカミラの身体の変化はどうしても分かりません。
カミラはなぜ、しま模様になってしまったのでしょうか?
小学校中学年の子どもたちは、カミラのように自分が周りにどう思われるのかとても気に
なるお年ごろではないでしょうか?ちょっとしたことがきっかけで、カミラのような分かり
やすい形ではなく、眼に見えない形でなにかしらの変化をきたすかも知れません。
カミラは、身体がどんどんと変化していくことで大切なことに気が付きます。そして、す
っかり元の身体に戻ったカミラの心にも変化が起こって・・・。カミラの身体に異変を引き
起こした原因はなんだったのでしょうか?
周りの目ばかりに気が行って、自分を見失ってしまいそうなとき、
“本当の自分”
“素直な
自分”が大事なんだということに気が付いてもらえるきっかけになればと思い推薦いたしま
した。
【タイトル】
「ふしぎなかぎばあさん」 【入賞】
【ブロック】2ブロック
【学校名】第九小学校 【保護者/教員】保護者 【氏名】田中 光子
もし家の鍵をなくしてしまったら…。みんなはどうしますか?この本の主人公は小学 3 年
生の男の子。お母さんが働いているかぎっ子です。ある冬の日、玄関の前で鍵をなくしたこ
とに気付いて学校まで探しに戻ります。道にも校庭にも教室にもない。雪も降ってきて、お
しっこもしたくなってきた。団地の仲良しの友達も、今日はみんな遊べない。おまけに算数
のテストで 35 点をとっちゃった。お母さん怒るだろうな…。泣きっ面にはち。もう気分は
最悪です。そんな時、何百という鍵の束を持つおばあさんに声をかけられます。そんなにた
くさんの鍵があれば、家の鍵も開けてもらえるかもしれない!さあ、この不思議なおばあさ
んは一体誰なんでしょう。
私がこの本に出会ったのは 4 年生の頃でした。学校で本をプレゼントしてもらえるという
話があり、希望者多数の高倍率をくぐり抜け、最後のあみだくじで見事大当たり。
「やった!」
あの時の嬉しさは今でも忘れません。何の本がもらえるのかな?そして手にしたのが、この
本『ふしぎなかぎばあさん』でした。当時私はかぎっ子でした。外で遊ぶのも大好きだった
けど、本を読むのがもっと好きだった私と、この本は運命の出会いだ…そんなふうに感じて
いました。私のところにも、かぎばあさんが現れるかもしれない。落ち込んだ気分の時、誰
にも話せないで困っていたら、きっと魔法みたいにおいしいごちそうを作ってくれて、夢の
ように幸せな気分にしてくれたりして。会ってみたいなぁ。
かぎっ子で寂しいと思った記憶はあまりないけれど、実際はどうだったんでしょう。小学
生の私にとって「いざとなったら来てくれるだろう、かぎばあさん」は、ちょっとしたヒー
ローだったのかもしれません。今年から家の小 4 の息子も、かぎっ子デビューしました。口
では強がりを言ってても、きっと寂しいだろうな。そうだ、あの本をすすめてみよう。きっ
とかぎばあさんは息子の力になってくれるだろう。
私は今でも大切に持っていたこの本を
「読
んでみたら?」と息子に渡しました。ドキドキのお留守番を体験するみんなに。時代を越え
て、かぎばあさんがみなさんの心の支えになってくれたら素敵だなと思います。
【タイトル】
「蜘蛛の糸」 【入賞】
【ブロック】5ブロック
【学校名】椚田小学校 【保護者/教員】教員 【氏名】篠山 哲雄
君たちは「スパイダーマン」を知っているね!そう、アメリカンコミックのヒーロー、
最近は3D 映画でもおなじみの正義の味方だ。普段はまじめでおとなしい青年がいざという
ときはクモ男に変身、クモの糸を自由にあやつって摩天楼(まてんろう)の立ち並ぶニュ
ーヨーク市内を自由に飛び回って事件を解決するお話だね。スパイダーマンのようにくも
の糸をあやつる男を主人公にしたお話が、100 年近く前の日本にもあったこと知っているか
い。それではそのお話を紹介しよう。
題名は、ずばり「蜘蛛の糸」
(くものいと)
、書いた人は「芥川龍之介」
(あくたがわりゅ
うのすけ)
、
お話の主人公は KANDATA=「犍陀多」
(かんだた)だ。ある日、
主人公の KANDATA
は踏んでしまいそうになった蜘蛛と蜘蛛の小さな命に気付き、あやうく踏むのをやめた。
そんな優しい心を持つ KANDATA だけど、正義の味方ではないんだ。むしろ、極悪非道の大
悪人というのが KANDATA の正体だ。
『大悪人のお話なんかよみたくない。
』そうだね、そう思うのが君たちのような普通の小
学生だと思う。だけど、KANDATA は悪人だけど、というより悪人だからこそ、人間らしい
心の長所も短所も持っている。君たちだって「友達に優しくする」
「みんなのために頑張る」
という気持ちと「自分さえよければいい」って気持ち、両方あるよね。君たちの心と
KANDATA の心の違いはほんの少しかもしれないよ。
君たちは、君たちの今の心の状態をだれかに試されたらって考えたことあるかい?お話
の中で、KANDATA の心を試されるチャンスが巡って(めぐって)きた。大のつく悪人の
KANDATA だって、超人では無いんだ、危機一髪のときにこそ本当の心があらわれてしまう。
その時、KANDATA は「極悪非道」と「蜘蛛を助けた心」のどちらを選ぶのだろう。そし
て、君たちが選ぶのはどっちかな。多感な世代のうちに繰り返し読み、考えてもらいたい
一冊です。
【タイトル】「タマゾン川」山崎充哲 著 【入賞】
【ブロック】4ブロック
【学校名】浅川小学校 【保護者】保護者 【氏名】山口 寿比
皆さんは「タマゾン川」ってどこにあるかわかりますか。地図で探してもみつからないは
ずです。実は、そんな名前の川はありません。でも、八王子にも流れている多摩川は知って
いる人が多いでしょう。この本を書いた山崎充哲さんは多摩川と外国にあるアマゾン川をく
っつけてタマゾン川と呼びました。それは、今の多摩川には、アマゾン川の魚がいるはずが
ないのにたくさん住んでいるからです。アマゾン川の魚だけではありません。世界中のいろ
いろな国の魚が住むようになっています。そして、多摩川だけではなく日本中の川がそうな
っているのです。どうしてでしょうか。そして、それは良いことなのか、それとも悪いこと
なのでしょうか。
「どうして」の答えはこの本を読んで、皆さんが自分で確かめてください。そして、それ
がどういうことなのかをみんなに考えて欲しいのです。理由について少しだけ種明かしをし
ますが、それは全部人間がやったことの結果なのです。
私はこの本を読んで、今の多摩川の自然は人間が作った「自然」なのかな、と変な気持ち
になりました。でも、アマゾン川の魚たちがいたりして、人間の思い通りに作ったというわ
けでもないのです。昔、人間は多摩川を汚してしまいました。そのあと、頑張ってきれいな
川にはしたけれど、前と同じ自然には戻せない。それが今の多摩川、「タマゾン川」なので
す。作者の山崎さんはその過程をずっと見てきて、今でもいのちを守るために大変な思いを
しています。
多摩川だけでなくたくさんの川や山がある八王子。皆さんは自然に触れる機会はたくさんあ
るでしょう。でも、なにも考えずに行動すると、思ってもいない結果になることがあるので
す。「タマゾン川」だけではなく本を読んで学んでから自然に接する。それで興味を持った
ことについてまた本を読んでみる。友達や大人達と話をしてみる。そんな風につながってい
けば、自然にも君にも限りない可能性が広がっているのではないでしょうか。