14 DANCE ナチョ・ドゥアト 15 スペインの大地のごとく強い生命力と 深い情感を湛えたダンスで観客を魅了するナチョ・ドゥアト。 『ロミオとジュリエット』 でも、 現代の男女にも通じる 個性的で人間味溢れる不朽のヒロイン・ヒーローたちを、 のびやかで活力に満ちた身体の動きで体現する。 5月、 バルセロナのサン・クガット・テアトル・オーディトリで 8 年振りに再演されたこのドゥアト版『ロミオとジュリエット』 を、 今秋のさいたま来日公演に先駆けて現地取材した。 文= 佐藤友紀(ジャーナリスト) PROFILE ナチョ・ドゥアト Na c h o D u a t o ナチョ・ドゥアトの『ロミオとジュリエット』 リアルに、エモーショナルに蘇る! Nacho Duato スペイン・バレンシア生まれ。ランバート・スクール、ムードラ、アルヴィン・ エイリー・アメリカン・ダンス・センターで学ぶ。クルベリ・バレエ団を経て、 1981年、イリ・キリアンの招きによりネザーランド・ダンス・シアター (NDT) に入団。1983年、処女作『ジャルディ・タンカート』でケルン国際振付ワーク ショップ第 1 位。1988 年にはNDTの専属振付家に就任。パリ・オペラ座バ レエ、ロイヤル・バレエ、ネザーランド・ダンス・シアター、アメリカン・バレエ・ シアター等、世界の著名バレエ団に数多く作品を提供している。1990 年 よりスペイン国立ダンスカンパニー芸術監督。過去 2 度の来日公演はいず れも大きな話題となった。 聴こえてくるのはバレエの舞台ではお馴染みの、最近では某 流れにある。 いった深読みもできるのだろう。ロミオへの愛が何より上に来 携帯電話のCMにも使わているプロコフィエフの『ロミオとジュ 対する常にクールさが目立つティボルト率いるキャピュレッ ることを除いても。 リエット』なのに、目で観る印象が全然違う。ジュリエットやロミ ト家の若者たちは、より貴族的と言おうか。そう、 『 ロミオとジュ こうした「生きる歓び」を体現するダンスを、ナチョはあくま オはもちろん、ロミオの親 友マキューシオやジュリエットの両 リエット』の 物 語を20 世 紀 のNY に置き替えたミュージカル でもクラシック・バレエを基盤にしながらも、トゥシューズを脱 親が愛娘と結婚させたがっている青年貴族パリスなど、脇役の 『ウェストサイド物語』のジェット団とシャーク団にも似た両家 がせたスタイルでダンサーたちに踊らせている。ゆえに、ジュリ 1 人1 人に至るまで皆個性的で、ちゃんと意味のあるムーブメン の外見& 雰囲気の違いが、舞台を観ている私たちをこれまでよ エットとロミオの有名なバルコニーの愛を語らうシーンも、朝 トを見せるなんて。噂には聞いていたが、このナチョ・ドゥアト り深く、物語に入り込ませてくれるのだ。 の鳥の声におびえる初床のシーンも、パの美しさを極めるバレ 振 付版『ロミオとジュリエット』、近年の名作と呼ばれるのも納 そして、ジュリエット! マキューシオら友 人に囲まれたロミ エというよりもっとリアルなエモーションをともなって私 達を 得の面白さだ。 オと違い、常に世間知らずの箱入り娘としての側面を強調され 直 撃するのである。つまり、よく観れば 計算され 尽くされた振 まず 幕 開け早々、舞 台を支 配するモンタギューとキャピュ ることの多かったこの不朽のヒロインの、なんと人間らしいこ 付けの一つ一つが、ジュリエットやロミオがたった今感じた心 【会場】 レット家の争い。これまでどっちがどっちか、くんずほぐれずに とか。もちろん清純なイノセントさは保ちつつも、ナチョ版ジュ の動きの延長としてそこで展開されているような新鮮さ、驚き。 【演目】 (1998 年初演) 『ロミオとジュリエット』 【振付】ナチョ・ドゥアト なればなるほどわからなくなっていたが、ナチョ版はあえて両 リエットは生きる好奇心と活力にあふれ、常に自分の直観に従 聞けばナチョ自身、ゼフィレッリ監督版『ロミオとジュリエッ 家に違いを出した。ロミオの属するモンタギュー家は、マキュー い、自分で決断する。だからこそ、父親と風 貌がよく似たパリス ト』のオリビア・ハッセーが 演じたジュリエットの 行動力に幼 シオのひょうきんさを際 立たせたのと相 応して、より牧歌 的。 との結婚を、自分の人 生を操る独 裁 者が替わるだけじゃない ない頃から魅了されてきたとか。そんな彼の想いも観てとれる ヴェローナの町をイキイキと彩る庶民風でもあり、踊りもその か、と本 能的に感じ取り、ああまで 拒否反 応を見せるのか、と 好舞台だった。 ●●●●● DANCE ● ● ● ● ● ナチョ・ドゥアト スペイン国立ダンスカンパニー 『ロミオとジュリエット』 11 月 22 日(土) 開演 18:00 23 日(日) 開演 15:00 24 日(月・祝) 開演 15:00 ※23 日の公演終了後、ナチョ・ドゥアトによる 【日時】 ポスト・パフォーマンス・トークを行います。 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ ※音楽は録音テープを使用します。 【出演】スペイン国立ダンスカンパニー 【チケット(税込) 】一般:S 席7,000 円/A 席5,000 円/学生A 席3,000 円 メンバーズ:S 席6,300 円/A 席4,500 円 【発売日】一般:7 月26 日(土) メンバーズ:7 月19 日(土) photo:Fernando Marcos
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