広告の四つの顔 情 01-518 吉田恵美 指導教官 加藤雅人

情 01-518 吉田恵美
2004 年度
卒業研究
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広告の四つの顔
情 01-518 吉田恵美
指導教官 加藤雅人
序論
広告は広告主が利益を得るために行われる活動として捉えることが一般的であると思うが、ACC
CM FESTIVAL (全日本シーエム放送連盟が毎年、開催している、明日を見据えた優れたラジオ、
テレビ CM を選び、これらを賞揚するフェスティバル)の歴代入賞作品リストを見た際に、広告に
はもっと違う見方があるのではないかと思った。このフェスティバルを通じて、広告を、芸術作品
として価値のあるものや社会を映し出しているものといった見方で改めて見直す機会になった。そ
して、その見方から言えば、資金を投じてテレビや新聞に試みた広告が売上面でも企業イメージ面
でも広告主になんのプラスももたらさず、
そのような広告は失敗したと広告主側が言ったとしても、
広告の社会や消費者に及ぼす影響や芸術作品としての価値を考えたなら、それは一概に失敗である
とは言えないと思う。
このように広告は一面的ではなく多面的である。ここではその多面性を整理して述べていきたい
と思う。清水滋さんは著書の中で「広告には四つの顔がある」と述べているものがある。その詳細
は文化的・社会的側面、消費的側面、経済的側面、経営的側面の四つの側面である。その各側面に
沿って広告の多面性を述べていく。
概要
第一章では文化的・社会的側面について述べた。
人々の記憶に残るよい広告というのは人間性、文化性、環境的美しさがある。タレントがただ笑
っているだけではその崇拝者に受け入れられても文化性はないため人の心には何も残さない。文化
的側面があるからこそ人々はその広告に興味を感じる。
だからこそ広告としての効果がある。
また、
広告はいつも社会のありようと共にあり「時代」の上に乗っている。私たちはその広告と広告的情
報の上に乗っている。私たちは広告と広告的メディア情報によって自分たちの考えを作り、買うも
のを決め、行くところを決め、することを決める。よって、広告を読むことは、時代を読むことに
つながり、社会を読むことにつながり、そこに生きる人間のありようを読むことにつながる。シオ
ノオギ製薬の鬱の広告、ベネトンのオリビエロ・トスカーニ制作の社会派広告、公共広告機構の CM
などがその例に挙げられる。
第二章では消費的側面について述べた。
消費者にとっての広告の役割は、商品・サービスの情報、また企業情報を消費者に伝達すること
である。消費者は広告を活用し消費生活を行う。また、消費者の広告以外の情報源には、商品を眼
で確かめ、あるいは販売員から説明を聞く、知人、友人より説明を受ける、諸々の口コミに接する、
などあるがいずれにも、問題点があり消費者にとって決してよいことではない。よって広告が消費
者の情報源としては最適である。消費を授け得ない広告として、商品・企業に関する事実を、過大
に伝えようとする広告、虚偽を伝えようとする広告、扇動的であり過度に誘導型である広告、無意
味な広告、消費の援助になんら貢献し得ない広告が挙げられる。
消費者が広告の情報によって商品購入を決める際、生活様式、欲求目標などの各項目を踏まえ取
捨選択を行うという一連のコミュニケーション過程をたどると考えられる。
広告の効果として、
「関与」や「連呼」というものがある。それらを使うことによって、AIDMA
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の A「注目させる」と I「興味を持たせる」が活性化し心に刻まれ、そのことによって D「欲しい
と思わせる」は、実はどうでもよくなるという現象が起こる。
第三章では経済的側面について述べた。
マクロ経済への影響の順機能としては、広告が需要を刺激し経済成長に寄与することが挙げられ
る。逆機能としては、広告が欲望を過度に刺激し、資源の浪費を招くという批判がある。ミクロ経
済への影響の順機能としては、需要創造と価格低下機能がある。逆機能としては、広告支出の多い
企業がより多くのマーケット・シェアを獲得し、寡占状態では価格が下方硬直的となり、また後発
企業の参入が困難になることが指摘されている。
民放ラジオとテレビの登場、高度経済成長、オイルショック、バブル・バブル崩壊などの経済的
な動きと広告費の変化は密接に関連していて、年代別の広告費のグラフからもそれを読み取ること
ができる。
第四章では経営的側面について述べた。
広告主から見た公告のコミュニケーションの意味として「伝達」
、
「説得」
、
「意味付け」
、
「対話」
の4つがあり、それぞれ果たす役割が異なる。
「伝達」的コミュニケーションは広告の情報提供機能
を果たす。
「説得」的コミュニケーションは、潜在的なカテゴリー・ニーズを顕在化し、ブランド選
好や行動意図を形成することである。
「意味付け」に重点を置いたコミュニケーションとは、広告主
の意図したブランドの象徴的意味を受けての頭の中に作ることである。
「対話」とは、広告主の使命
(ミッション)や理念の表明が受け手からの共感や自発的支持を得ることにより、長期的信頼関係
を形成するようなコミュニケーションである。
日本広告主協会の調査、AD 懇談会の調査の両調査から、広告主が公告に求めることは、どちら
も販売の強化、ブランドイメージや企業イメージの強化、ブランドへの理解や認知を求める公告、
そして、
「統合」といった内容であった。ブランド力のある企業としソニーが例にあげられる。その
ブランド力を培った理由は、常に一貫した公告活動を行ってきたためである。
広告主が求めることして、
「統合」があげられたが、プロモーション活動を組み合わせ、包括的コ
ミュニケーション計画の付加価値を認識したマーケティング・コミュニケーション計画を行うこと
を IMC(統合型マーケティング・コミュニケーション)という。
文献表
・ADSEC(星野克美、岡本慶一、福田敏彦、紺野登、青木貞茂)
『広告の記号論』日経広告研究所、
1990 年
・相沢秀一『世界の広告を読む』電通、2001 年
・井上光央『なにわの新聞広告』社団法人大阪公告協会、2002 年
・内田東『ブランド公告』光文社、2002 年
・岸志津江、田中洋、嶋村和恵『現代広告論』有斐閣、2000 年
・ケネス・ローマン『売れる広告 効くメッセージ』日経広告研究所、1996 年
・小林太三郎『新しい広告』電通、1991 年
・小林豊彦『新聞広告で企業戦略を読む』日本経済新聞社、2000 年
・佐野山寛太『現代広告の読み方』文藝春秋、2000 年
・嶋村和恵『新版 新しい広告』電通、1997
・清水公一『広告の理論と戦略』創成社、1998 年
・清水滋『広告のマーチャンダイジング』日経広告研究所、1990 年