広告代理店のビジネスモデル~メディアバイイング主体からの脱却

広告代理店の
ビジネスモデル
メディアバイイング
主体からの脱却
07W1404017K
細田咲恵
1
はじめに・・・
前回のプレゼンではPR会社のビジネスモデルについて広
告代理店と比較して研究しようとしました。しかし、PR
と広告はそもそもまったく違ったビジネスであり、比較
の対象にはならないとわかりました。
そして、PR会社の業績の差は主にサービスの質により生
じています。(最も利益を上げているPR会社とそうでな
いPR会社で、サービスの種類にたいした差はない。宣伝
効果の差が生じるのは主に今までのノウハウ・人脈を生
かしたサービスを行えるか、という要素が関係してい
る。)そのため、教科書に載っている理論で分析したい
点が私には見つかりませんでした。
よって、これからは今回はもう一方のテーマであった広
告代理店の方に焦点を変え、研究していきたいと思いま
す。
2
今回のプレゼンでは・・・
広告業界不況の今、広告代理店のビジネスモ
デルの転換が叫ばれている。
そこで、メディア環境の変化に対応した広告
代理店の新しいビジネスモデルを考案する。
今回は広告代理店の現状を把握し、問題点を
挙げ、改善方法を収益構造、報酬体系に着目
して考案する。
3
プレゼンの流れ
1、広告代理店概要
2、広告代理店の現状
3、近年の広告業界不況の要因
4、不況要因への解決策
報酬制度の転換 エージェンシー理論による分析
5、今後の研究方向
6、参考文献
4
1、広告代理店概要
5
1、広告代理店概要
①取引数の最小化
広告業者の基本業務
広告主
②媒体社のコスト削減と効率化
③広告主のコスト削減と効率化
商品・ブランドサービス
営業担当
④広告会社の金融機能
広告会社
媒体担当
マーケ担当
広告コンセプト開発・広告表現制作
媒体購入・媒体企画立案実施
メディア
消費者
出典:嶋村和恵「新しい広告」株式会社電通
6
1、広告代理店概要
広告代理店とは
大まかに説明すると、クライアントから仕事依頼を受
け、広告を制作し、媒体社から買い取った広告枠に広
告を流す。
広告業務の流れ
クライアン
トによる
オリエン
テーション
課題の発見
課題解決戦
略立案
PLAN
広告代
理店に
よる
プレゼ
ンテー
ション
広告制作作
業
メディアバ
イイング
広告実施
(出稿)
DO
成果評価
広告効果測
定
SEE
出典:嶋村和恵「新しい広告」株式会社電通
7
1、広告代理店概要
現在の広告業界は電通、博報堂、アサツー・デイ・ケイ
(ADK)による寡占状態。
1位
電通
1兆9104億円
2位 博報堂DY 1兆895億円
3位 アサツーディ・ケイ 4138億円
4位 東急エージェンシー
5位 ジェイアール東日本企画
1338億円
878億円
8
2、広告代理店の現状
9
2、広告代理店の現状
業界最大手、電通の赤字!
当期純利益(百万円)
電通、純損失204億円
1902年度以来の赤字
電通が11日発表した2009年3
月期連結決算は、広告受注の低迷や
株価下落の影響で、純損益が204
億円の赤字に転落した。赤字決算は
01年の株式上場後初めてで、創業
期の1902年度以来となる。10
年3月期の売上高は13・4%減、
営業利益は63・4%の大幅減を見
込んでいる。
(2009/5/11 共同通信より)
40.000
36.246
30.688
30.000
20.000
10.000
0.000
(10.000)
(20.000)
(30.000)
2007年
2008年
2009年
20.453
10
2、広告代理店の現状
2番手、博報堂DYホールディングスも赤字!
当期純利益(百万円)
32億円の連結最終赤字に転落
博報堂DYホールディングスは4
月24日引け後に、2009年3月期通
期連結業績予想の修正を発表し
た。売上高を1兆0430億円から1
兆0333億円に、経常利益を159億
円から171億円に修正し、純損益
については23億円の黒字予想から
32億円の赤字予想に下方修正す
る。
(2009/4/24 ダイヤモンドZAiより)
14.000
12.000
10.000
8.000
6.000
4.000
2.000
0.000
(2.000)
(4.000)
(6.000)
12.055
10.021
2007
2008
2009
-3.277
11
2、広告代理店の現状
大手広告代理店の相次ぐ業績不
振に伴い、広告業界全体が危機
に瀕している!
12
3、広告業界不況の要因
13
3、広告業界不況の要因
考えられる大きな要因は・・・
①マスコミ4媒体広告効果の減少
→メディアバイイング主体の収益構造では利益を出せない
②企業の広告費削減
→景気底入れしてきたとはいえ、内生的費用である広告
費はまだコスト削減の対象になっている。
→より明瞭な金額提示、広告効果が求められる
※内生的費用・・・生産量決定に関わらない費用。企業はこれら
の支出を売上の増加がコストの増加を上回る限りにおいて行う。
(ベサンコP87)
14
3、広告業界不況の要因
①マスコミ4媒体の広告効果減少
昨年(2008年)の日本の総広告費は6兆6926億円
前年比4.7%減!
広告費内訳(%)
プロモー
ションメ
ディア
39%
インター
ネット
11%
マスコミ4
媒体
49%
衛星メディ
ア関連
1%
株式会社電通「日本の広告費」より
総広告費の約半分を占める
マスコミ4媒体広告費用の減少が続いている。
15
※マスコミ4媒体=テレビ・新聞・ラジオ・雑誌
3、広告業界不況の要因
①マスコミ4媒体の広告効果減少
情報流通量の推移
(出典 総務省「平成18年度情報流通センサス報告書」*改図)
60000
ここ10年間で世の中
に流れている情報量は
531倍に!
99%の情報は処理で
きない。
50000
40000
30000
20000
選択可能情報量
消費可能情報量
10000
0
その為、今まで通り、ただ大々的にCMを流す、新聞に広
告を載せる、などの単純な方法では消費者に認知されにく
くなってきてしまった!
16
3、広告業界不況の要因
マスコミ4媒体の広告費がとれなくなってきている
ということは・・・
クライアントに請求する広告費の約64%は媒体費に使われている
(日経広告研究所調べ)
そのため、今までの広告代理店は媒体を大量に購入し、一括して
大量に広告を流すことで規模の経済性を得ていた。
しかし、そのマス広告が減ってきているということは、媒体費に
依存した広告収入では利益を出せないということ。
メディアバイイング主体の収益構造を
変えなければならない!
17
4、不況への対応策
18
4、不況への対応策
メディアバイイング主体のビジネ
スモデルからの脱却、より明瞭な
広告費用提示へ向けて
今回は報酬制度に着目する
19
4、不況への対応策
広告代理店の報酬制度はコミッション制
コミッション制とは、媒体手数料を収入とする制度。
株式会社電通四半期報告書第161期 第1四半期より
報酬+媒体費を広
告主に請求
報酬何%?
媒体費
広告代理店は媒体社から媒体を買取り、広告主に
売る。その手数料が広告代理店の利益となる。
広告主に請求する広告費は媒体費、広告代理店
への報酬などの内訳が明示されていない!
メディアバイイング主体のビジネスモデルには
適しているが、
脱却を図るには不都合な報酬制度である。 20
4、不況への対応策
エージェンシー理論による分析
広告主
プリンシパル
エージェントは隠された情報(広告費内訳・宣伝効果な
ど)を持っている。
効果が同等であるが費用が高い媒体を薦めたり
手数料に見合わない努力水準で仕事を行う
モラル・ハザードの発生!
広告主は提示された金額を支払うのみ。(内訳不明
瞭)
広告代理店
エージェント
広告効果は広告代理店が独自で行うアンケートなど
によって報告されるが、効果が少なかった場合で
も広告代理店に支払う報酬は減らせれることはな
い。
観察可能性が不確実!
現在のコミッション制は、エージェントであるはずの広告代理店
21
の利益が優先される仕組みとなっている。
4、不況への対応策
次善契約
プリンシパルの視点から最もバランスのとれた行為を
もたらすような、リスク・シェアリング契約。
W=A+BX
W=エージェントへの報酬
A=固定料金
B=報酬の業績との連動の程度
X=測定された業績
22
4、不況への対応策
この式に当てはめると
広告代理店への報酬=媒体費+労働時間、広告効果×B
Bの値は以下の4つの要因に依存する。
①エージェントのリスク回避度
②エージェントの努力回避度
③努力による収益性への限界貢献
④業績測定におけるノイズの程度
→低い
→低い
→大きい
→多い
ノイズの程度以外は、強い業績インセンティブが好ましい要
因となっている。
業績測定(広告効果測定)のノイズを減らし、業績インセン
23
ティブを採用した報酬制度に変えてはどうか?
4、不況への対応策
媒体社―広告代理店のエージェンシー関係
媒体社
プリンシパル
現在の広告代理店は媒体社とのつながりが強
い。
媒体金額は広告代理店、媒体社によって決定され
る。手数料も媒体社が広告代理店に払うシステ
ム。
媒体社が主催の大規模なイベントへの広告代理店
の積極的な関与。歴史的に、自らリスクを負い、
「買い切り」や「責任セールス」を行なう。
(例:TBSの24時間TV)
広告代理店
結果、長期的に培ってきた関係によ
エージェント
る、大手広告代理店による各マスメ
ディアの独占状態が生じている。
相互依存的関係が生じている。
広告代理店は広告主の意向を100%酌むわけにはいかない状態。
24
4、不況への対応策
媒体社
プリンシパル
媒体購入社
エージェント
媒体購入専門社を設立し、広告代理店はマーケ
ティング、戦略立案、広告制作案などのみに特
化した企業になってはどうか?
最低限度の手数料のみ、広告主に請求する。
これが先ほどの式のAの部分になる。
25
4、不況への対応策
まとめると・・・
広告代理店はメディアバイイング主体のビジネスモデルか
ら脱却を図るべき。
その為には現在のコミッション制を変えなくてはならない。
労働時間や広告効果を考慮した強い業績インセンティブの
ある報酬制度にしてはどうか。
媒体購入専門会社を設立し、広告代理店はマーケティン
グ、戦略立案などに特化した、一種のコンサルティング会
社のような業務形態にしてはどうか。
26
5、今後の研究
27
5、今後の研究
広告効果測定のノイズを減らし、成果連動型の報酬体系
にするにはどういった基準で効果測定を行うべきか。
媒体専門社の設立はできるのか。アメリカで成功してい
る例を分析し、日本でも適応できるか考えたい。
新しい広告代理店の在り方をより具体的にする。
28
6、参考文献
ディビッド・ベサンコ他『戦略の経済学』ダイヤモンド社、2002
スィッツェ・ダウマ他『組織の経済学入門』文眞堂、2007
嶋村和恵 監修『新しい広告』株式会社電通、2008
佐藤尚之『明日の広告』アスキー新書、2008
猪熊建夫『新聞・TVが消える日』集英社新書、2009
栗原信征『外資系企業が日本の広告界に要求している取引のスタンダード』上武大学商学部紀要第13巻2号、2002
総務省『平成18年度情報流通センサス報告書』
株式会社電通『2008年 日本の広告費』
株式会社電通 四半期報告書
株式会社電通 投資家情報
第161期 第1四半期
http://www.dentsu.co.jp/ir/index.html
博報堂DYホールディングス IRライブラリー
http://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/library/
29
ご清聴ありがとうございました。
30