平成 26 年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等

平成 26 年度海外炭開発支援事業
海外炭開発高度化等調査
「インドネシアの新鉱業法施行後の石炭資源に係る各種規制
の最新動向と今後の見通し及び石炭資源開発状況調査」
平成 27 年 2 月
平成 26 年度海外炭開発支援事業
海外炭開発高度化等調査
「インドネシアの新鉱業法施行後の石炭資源に係る各種規制
の最新動向と今後の見通し及び石炭資源開発状況調査」
平成 27 年 2 月
はじめに
海外炭開発高度化等調査は、我が国への海外炭の安定的かつ低廉な供給確保に資するため、主
要産炭国の石炭生産動向やインフラ整備状況及び主要消費国の石炭消費動向等に係る最新の情報
収集・分析を実施し、本邦民間企業等へ情報提供することを目的としている。
インドネシアは世界最大の石炭輸出国(インドネシア税関統計によると、2013 年の石炭輸出量
は合計 4.2 億トン)で、2014 年、我が国は全石炭輸入量の 19%(3,583 万トン)をインドネシアか
ら輸入しており、オーストラリアに次ぐ第 2 位の石炭輸入相手国となっている。インドネシアは
約 1,200 億トンの石炭資源量(埋蔵量ベースでは約 300 億トン)を有する有数の石炭資源国であ
るが、2009 年に公布された新鉱業法の下で、石炭生産・開発・輸出等に係る各種規制を次々と打
ち出しており、今後の動向が注目される。また、発熱量 6,100kcal/kg 以上の高品位炭は、全資源
量の 10%程度(約 120 億トン)と全体に占める割合は少なく、我が国石炭ユーザーのニーズの高
い高品位炭(主要産出地は東カリマンタン州、中央カリマンタン州)の供給能力が今後も従来通
り維持できるか把握しておくことは、我が国への石炭の安定供給確保上からも重要である。
このため、インドネシアにおける、エネルギー政策・石炭政策の動向、石炭資源に対しての新
鉱業法の運用状況、新鉱業法施行後の採掘、輸出、石炭資源開発時の環境保護等に係る各種規制
等の現状と見通し、石炭資源量、石炭生産・国内消費・輸出動向、インフラを含めた炭鉱開発状
況、外資による炭鉱権益獲得状況等を調査するとともに今後のインドネシアの石炭輸出見通しに
ついて検討した。
本調査結果が、我が国の石炭需要家や商社をはじめ、石炭取引に係る企業等の参考になれば幸
甚である。
平成 27 年 2 月
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
石炭開発部
要
約
本報告書は 3 部構成になっている。第Ⅰ部(第 1 章~第 5 章)では、石炭の資源賦存量、開発、
需給ならびに輸送インフラの現状について、第Ⅱ部(第 6 章~第 9 章)では、エネルギー・石炭
に関連する各種の政策について、第Ⅲ部(第 10 章~第 11 章)では、石炭の需給および輸出の見
通しについて調査した。各章の調査概要と得られた結果は以下の通りである。

第Ⅰ部石炭の資源賦存量、開発、需給ならびに輸送インフラの現状
【第 1 章】では、インドネシアの石炭の資源賦存量について調査した。
インドネシアの地質年代は、古生代の石炭紀‐ペルム紀から新生代の古第三紀と新第三紀まで
多様であり、石炭鉱床を経済的に開発できる地層は、主にスマトラ島とカリマンタン島の第三紀
層に分布している。インドネシア地質局が 2013 年に公表したデータによると、インドネシアの石
炭資源量は合計 1,205 億トンで、うち埋蔵量は 313 億 6,000 万トンに達している。埋蔵量のうち、
確認埋蔵量は約 90 億トンで、埋蔵量全体の 28.4%を占める。
(出所)エネルギー鉱物資源省(MEMR)
図 1 インドネシアの炭田分布
また、推定埋蔵量は 224 億 6,000 万トンで、埋蔵量全体の 71.6%を占める。2013 年の石炭生産
量 3 億 8,000 万トン1~4 億 4,000 万トン2を基に算出すると、可採年数(R/P)は 70~82 年である。
1
2
BPS-Statistics Indonesia「Statistical yearbook of Indonesia 2014」
エネルギー鉱物資源省「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2014」
-1-
(注)上記データはインドネシア地質局が発表する毎年 1 月 1 日時点の石炭資源評価。
(出所)インドネシア地質局「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia」各年版より作成
図 2 インドネシアの石炭資源量および埋蔵量の評価推移(2000~2013 年)
石炭の地域別賦存状況をみると、2013 年末時点の石炭埋蔵量は主にスマトラ島 42.4%(132 億
9,000 万トン)とカリマンタン島 57.6%(180 億 6,000 万トン)に集中している。石炭発熱量別の
賦存状況では、
2013 年末時点の石炭埋蔵量のうち、
発熱量 5,100~6,100kcal/kg の石炭は全体の 64.1%、
5,100kcal/kg 以下の石炭は 30.2%で、6,100kcal/kg 以上の石炭はわずか 5.6%であった。
【第 2 章】では、炭鉱開発の現状について、3 つのテーマ(高品位炭炭鉱の開発状況、2013 年
石炭生産量トップ 10 社の概要、外国資本による炭鉱権益獲得状況)を切り口に調査した。
まず、インドネシアの Petromindo 社の「Indonesian Coal Book 2014/2015」のデータをもとに、発
熱量(adb)6,100kcal/kg 以上の石炭(石炭ブランド)を生産している主な石炭企業(炭鉱)や探
査、FS、建設段階の企業・炭鉱を洗い出した。高品位炭炭鉱はカリマンタン島、スマトラ島、ニ
ューギニア島西部に分布し、特に、東カリマンタン州には PT Harum Energy Tbk.(ハルム・エナジ
ー・グループ)
、PT Bayan Resources Tbk.(バヤン・リソーシズ・グループ)、2013 年石炭生産量第
1 位の PT Kaltim Prima Coal(KPC)
(カルティム・プリマ・コール社)の炭鉱がある。スマトラ島
には、国営石炭公社の PT Bukit Asam Tbk.(PTBA)
(ブキット・アッサム・グループ)がある。
次に、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」の情報を基に、2013 年石炭生産量トップ 10 社と企業
概要をまとめた。上位 6 社が CCoW 第 1 世代で、6 社の合計生産量(2 億 1,050 万トン)でインド
ネシア全体の石炭生産量(4 億 2,150 万トン)の 49.9%を占める。さらに、「Indonesian Coal Book
2014/2015」のデータ及び各社公式サイト等の情報を手がかりに、外国資本によるインドネシアの
炭鉱権益獲得状況の把握に努めた。出資企業の国別ではオーストラリアの存在感が大きい。
-2-
【第3章】 では、インドネシアの石炭需給動向について調査した。

一次エネルギー消費量、生産量、輸出入量
エネルギー鉱物資源省(Ministry of Energy and Mineral Resources:MEMR)の「Energy Handbook」
によると、2013 年のインドネシアの一次エネルギー消費量は 2 億 1,534 万 toe である。エネルギ
ー源別シェアを見ると、
石炭は 2000 年の 9.0%から 2013 年には 25.7%に大幅に増加し、石油は 2000
年の 36.0%から 2013 年には 33.0%に減少した。
(出所)MEMR の「Energy Handbook」各年版より作成
図 3 一次エネルギー消費に占めるエネルギー源別シェアの比較(2000 年と 2013 年)
一方、2013 年の一次エネルギー生産量は約 4 億 toe で、エネルギー源別では、石炭 2.5 億 toe(一
次エネルギー生産全体に占める割合は 64.3%、以下同じ)、石油 4,061 万 toe(10.3%)、天然ガス
5,429 万 toe(13.7%)
、水力・地熱の合計 781 万 toe(約 2.0%)
、バイオマス 3,849 万 toe(9.7%)で、
石炭の割合が圧倒的に高い。2013 年のエネルギー輸出量は 2 億 1,000 万 toe で、エネルギー源別
では、石炭 1 億 9,000 万 toe(輸出全体に占める割合は 87.0%、以下同じ)
、石油(原油と石油製品
の合計)1,964 万 toe(同 9.2%)
、天然ガス 813 万 toe(同 3.8%)である。

最終エネルギー消費量
2013 年の最終エネルギー消費量は 1 億 5,162 万 toe で、うち、石炭消費量は最終消費量全体の
15.9%にあたる 2,416 万 toe である。部門別では、工業部門 5,396 万 toe(最終エネルギー消費全体
の 35.6%、以下同)
、家庭部門 4,576 万 toe(30.2%)
、輸送部門 4,369 万 toe(28.8%)
、商業部門 504
万 toe(3.3%)
、その他の部門 318 万 toe(2.1%)である。さらに、工業部門の石炭消費量は 2,416
万 toe で、工業部門のエネルギー消費量全体の 44.8%を占める。

電力需要と電源構成
インドネシア国営電力公社の Perusahaan Listrik Negara(PLN)の統計によると、2013 年のイン
-3-
ドネシアの電力需要(販売量)は 187.5TWh であった。内訳は、家庭部門 77.2TWh(電力需要全
体の 41.2%、以下同じ)
、工業部門 64.4TWh(同 34.3%)、商業部門 34.5TWh(同 18.4%)である。
2000 年以降、インドネシアの電力需要は急増しており、電力供給不足が懸念されている。このた
め、政府は 2 段階のファスト・トラック・プログラム(Fast Track Program)、通称「クラッシュ・
プログラム(Crash Program)
」を策定した。2013 年の発電電力量は 216.2TWh で、うち石炭火力発
電電力量は 110.5TWh で全体の 51.1%を占める。また、同年の発電用燃料消費量は石炭が 3,127 万
toe で全体の 63.5%を占める。2015 年 1 月 16 日の大統領令では、総額 5,500 兆ルピア(約 51 兆 5
千億円)のインフラ開発 5 ヵ年計画(2015~2019 年)が打ち出され、合計出力 3,500 万 kW の電
源開発計画も含まれている。

石炭需給、地域別の石炭販売量と生産量
「Energy Handbook」によると、2013 年の石炭生産量は約 4 億 5,000 万トンで、2000~2013 年の
年平均増加率は 14.5%である。また、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」では、同年の石炭生産量
は 4 億 3,000 万トンであり、2 つの統計には 2,000 万トンの開きがある。
「Indonesian Coal Book 2014/2015」によると、2013 年の生産地別石炭販売量は、東カリマンタ
ン州 3,750 万トン(インドネシアの全販売量の 38.4%、以下同じ)
、南カリマンタン州 3,646 万ト
ン(同 37.3%)である。これに中央カリマンタン州を含めた石炭販売量でインドネシア全体の販
売量の 8 割以上を占める。南スマトラ州は 1,233 万トンで全体の 12.6%を占める。また、同年の石
炭生産量は、東カリマンタン州 2 億 3,000 万トン(インドネシアの全生産量の 52.5%、以下同じ)
、
南カリマンタン州 1 億 7,000 万トン(同 39.3%)で、中央カリマンタン州を含めた生産量の合計で
インドネシアの全体の 94.1%を占める。南スマトラ州は 1,358 万トンで全体の 3.2%を占める。
表 1 インドネシアの石炭生産、消費、純輸出と誤差
(出所)MEMR、BPS、インドネシア税関統計
-4-
【第 4 章】では、インドネシアの石炭輸出動向について調査した。
2013 年のインドネシアの輸出総額に占める石炭類の輸出額は 227.7 億ドルで、輸出総額全体の
12.5%を占める。また、インドネシアの輸入総額に占める石炭類の輸入額は 8,331 万ドルで、輸入
総額全体の 0.04%である。輸出炭の炭種別内訳は、瀝青炭 1.7 億トン、亜瀝青炭 2.1 億トン、褐炭
4,294 万トン、その他(無煙炭など)35 万トンである。
(出所)インドネシア税関統計
図 4 炭種別のインドネシアの石炭輸出量
また、仕向け地別石炭輸出量トップ 3 は、中国 1.3 億トン(輸出量全体の 30.7%、以下同じ)
、
インド 1.2 億トン(同 27.9%)
、日本 3,785 万トン(同 8.9%)であった。
表 2 仕向地別の瀝青炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB)
順位 国名
1
日本
2
フィリピン
2005
2010
2011
2012
2013
39.6
81.4
108.8
104.6
89.9
39.8
79.0
96.7
95.2
83.6
3
ベトナム
33.3
69.5
98.4
85.3
75.5
4
台湾
37.3
71.5
95.5
87.5
74.8
5
タイ
30.2
58.5
78.4
86.0
74.8
6
香港
33.1
71.6
88.6
78.1
69.6
7
中国
21.3
60.4
84.1
75.6
66.8
29.3
29.4
32.2
34.7
72.7
53.3
60.1
66.8
93.6
79.9
71.2
88.6
82.6
69.7
68.7
81.8
68.2
63.0
58.9
70.7
8
マレーシア
9
インド
10 韓国
平均輸出価格
(出所)インドネシア税関統計
2013 年の炭種別平均輸出価格(FOB)は、瀝青炭 76.1 ドル/トン、亜瀝青炭 50.4 ドル/トン、褐
-5-
炭 40.6 ドル/トン、無煙炭 56.8 ドル/トンである。輸出量と輸出金額をもとに 2013 年のインドネシ
ア炭の平均輸出価格を算出すると 57.8 ドル/トンになる。さらに、この平均輸出価格を 2013 年の
対米ドル公式為替レート(1 ドル=10,461.2 ルピア)で換算すると、トン当たりの輸出価格は 60
万 4,194 ルピアとなり、
PLN 統計の同年の PLN 石炭購入平均価格 93 万 8,560 ルピアより 33 万 4,366
ルピア安くなる。ただ、PLN への聞き取り調査では、PLN が使用する石炭はほとんどが低品位炭
で、購入価格も安価であるとしており、インドネシアの統計上の問題があることも否定できない。
【第 5 章】では、インドネシアの石炭輸送インフラ整備状況について調査した。
インドネシアの炭鉱開発の多くは、沿海地域や内陸河川にアクセスしやすい地域で行われてお
り、石炭輸送の主流は水上輸送である。カリマンタン島では、東カリマンタン州のMahakam(マ
ハカム)川と中央・南カリマンタン州のBarito(バリト)川が主要輸送ルートである。
現在、陸上積替地点の石炭ターミナルとして利用されている積出港は全部で23ヵ所あり、年間
の積出能力は1.2~1.5億万トンである。その他、15ヵ所の沖合の積み替え施設が稼働しており、こ
れらの設備の年間取扱い能力は合計1.7億トンに達している。沖合の積み替え施設の年間取扱い能
力は、300~500万トンクラスの小規模施設から1,500万トンクラスの大規模施設まで様々である。
スマトラ島の主な石炭積出港は Tarahan(タラハン)港と Teluk Bayur(テロック・バユール)
港で、国営石炭公社ブキット・アサム社(PTBA)が所有している。取扱能力はそれぞれ 3 万トン
/日と 8,000 トン/日である。
(出所)本調査
図 5 カリマンタン島(左図)とスマトラ島(右図)の石炭積出港建設の候補地・港
次に、トラックによる石炭輸送では、輸送量急増に伴い、渋滞、交通事故、大気汚染問題など
が深刻化したため、地方政府は企業に石炭専用輸送道路を建設するよう求めている。
-6-
さらに、鉄道による石炭輸送に関しては、PTBA が2つの鉄道ルートの新規敷設(PTBAの炭鉱
からタラハン港までの280 km、PTBAの炭鉱からTanjung Api Api(タンジュン・アピ・アピ)港ま
での270 km)を計画している。東カリマンタン州政府は、Russia Railway(ロシア鉄道社)との鉄
道建設に関するMOUを締結し、2016年に着工、2018年に完成する計画である。

第Ⅱ部 エネルギー・石炭に関連する各種の政策
【第 6 章】では、ジョコ・ウイドド大統領(以下、ジョコ大統領と略す)の就任以前に策定さ
れたエネルギー・石炭政策を調査した。
インドネシアのエネルギー政策は「エネルギーに関する法律」(2007 年 8 月 17 日)と「国家
エネルギー政策に関する政令」
(2014 年 10 月 17 日)に基づいて実施されている。エネルギー法
により、政府によるエネルギー資源の管理(統制・規制)、エネルギーの安定供給(輸出より国
内供給を優先)、貧困層に対する政府補助金の供与、資源開発の促進(国内調達率の拡大)など
とともに、国家エネルギー政策の策定のための「国家エネルギー審議会」の設立が定められてい
る。なお、個別のエネルギー・鉱物資源政策の策定と実行を担当する官庁はエネルギー鉱物資源
省(MEMR)である。
インドネシアの石炭政策の基本方針は次のように規定されている。国内需要最優先で供給する。
石炭企業による投資を促進し、国家財政収入増に繋げ、鉱物資源の付加価値を増すために、選炭、
石炭の改質などを進める。地方の石炭消費増などの手段を通じて、地方の財政収入や雇用を拡大
する。新鉱業法や関連法規に基づく監督・管理を強化し、違法行為を取締り、鉱山開発を進める。
【第 7 章】では、新鉱業法およびその他の関連法規について調査した。
インドネシアの石炭事業を管轄・規制する法律は、2009 年に公布された鉱物・石炭鉱業法(以
下、新鉱業法と略す)であり、また、同法に関連して、多くの政令、決定などが制定されている。

石炭開発に関連する規制
(1) 新鉱業法は旧鉱業法と比較すると、鉱物・石炭鉱業を営む事業について、コントラクト
(contract)方式ではなく、ライセンス(license)方式を採用している、という特徴を持っ
ており、鉱業事業許可(IUP)
、市民鉱業許可(IRP)および特別鉱業事業許可(IUPK)の
3 種類の事業許可が規定されている。なお、外国企業には IUP が適用される。
(2) 旧鉱業法と比較しての新鉱業法のもう1つの特徴は、許可権限の地方政府への移譲である。
(3) IUP 保有者に対するロイヤルティは、露天掘り炭鉱について見ると、石炭販売価格の 3~
7%と定められているが、引き上げが検討されている。
以上の他、外国人の持株比率の上限および持株の内国人への移譲、環境対策の義務などが定
められている。
-7-

石炭輸出に関連する規制
(1) 国内供給義務および生産規制
(2) 石炭基準価格の設定
(3) 高付加価値化の要求
(4) 石炭輸出管理の強化
新鉱業法に関しては、次のような問題点が指摘されている。
(1) 鉱業事業は巨額な投資を必要とし、利益回収までに長い時間がかかる上、リスクが大きく、
収益率が低いことから、投資しやすい環境を作ることが重要である。それにも拘らず、この
法律はナショナリズムの色彩が強く、外国投資家の意欲を削いでいる。
(2) IUP はいつでも政府が取り消すことが出来るので、事業契約者の立場が弱くなる。
(3) 地方への権限の移譲が行われたので、地方毎に異なる鉱業規制の制定や運用、異なる手数
料、鉱区の過剰許可、鉱区重複などの問題が生じている。
【第 8 章】では、新鉱業法以外の各種規制と石炭開発・利用に伴う環境問題について調査した。
資源開発時の環境保護に係わる新鉱業法以外の各種規制としては、環境保護・管理法、森林法、
それらに関連する諸規制がある。2009 年の環境保護・管理法は中央政府および地方政府に対し
て戦略的環境計画を策定することを求めている。2004 年の森林法の下で、森林の利用に関する
規制が行われている。
石炭の開発・利用に伴い発生している主な環境問題は以下のものである――石炭の道路輸送に
伴う大気汚染、道路渋滞など。河川上流の資源開発に伴う河口の土砂堆積、バージ運行への影響
など。炭鉱における酸性廃水の問題。露天掘りのために森林を伐採することによって温室効果ガ
スを吸収する樹木が失われること。企業は環境対策を講ずるべきである、と感じてはいるが、現
在は環境保全事業に対する政府の優遇策がないので、環境対策を進めていくためには、何らかの
インセンティブが必要になると考えられる。
【第 9 章】では、ジョコ新大統領の下でのエネルギー・石炭政策の展望についてまとめた。
新政権は 2015 年 2 月中旬現在、まとまった形でのエネルギー政策および石炭政策を明らかにし
ていない。そこで、まず、選挙対策チームが発表した「政権公約」の中の関連個所を確認し、次
いで、大統領就任後に発表された関連政策を整理した上で、今後、打ち出されると予想される政
策を既存の諸情報の中から整理するとともに、
「政権公約」を含め、新政権が打ち出すと予想され
る諸政策の実行可能性を占うための注意点につき検討を行った。
2014 年 5 月、正副大統領候補の選挙対策チームは「政権公約」を発表し、さらに、ジョコ大統
領当選決定後の 2014 年 9 月には、エネルギー関連政策案が発表された。この政策案では、Pertamina
傘下の貿易部門、Petra の業務を監査し、燃料に関する密輸および汚職を止めさせること、Pertamina
-8-
の大改革を行うこと、発電所向け石炭(特に低品位炭)の供給を拡大することなどが謳われた。
2014 年 10 月 20 日の大統領就任式以降、新政権はエネルギー関連の人事および政策をかなり矢
継ぎ早に打ち出したが、そこには、エネルギーおよび石炭に関するまとまった政策は含まれてお
らず、目立ったのは、石油・ガス関係マフィア排除のための調査開始、および燃料に対する補助
金撤廃の動きであった。特に石炭に関しては、上述の通り、一定の方針が示されたとは言え、こ
の方針については、その後も何ら詳しいことは発表されておらず、しかも、その他の石炭関連政
策についても、何らの発表はない。

第Ⅲ部
石炭の需給および輸出の見通し
【第 10 章】では、インドネシア国家エネルギー委員会が 2014 年 12 月に公表した「Indonesian
Energy Outlook 2014」のエネルギー需給見通し(2050 年まで)の概要をまとめた3。この Outlook
には、BAU シナリオ(Business as usual case)と国家エネルギー政策シナリオ(KEN)があるが、
KEN については、第 6 章で触れたため、本章では BAU を中心に説明する。

インドネシア政府による将来予測の前提条件
表 3 インドネシア政府による将来予測の前提条件
指標
単位
2015
2020
2025
2030
2040
2050
人口
百万
255
271
284
296
314
335
伸び率
GDP (2000 price)
%
billion USD
1.4
1.2
0.9
0.8
0.6
0.6
386
567
832
1,206
2,452
4,349
年平均成長率
一人当たりGDP
%
都市化率
%
電化率
%
USD
7.7
8.0
8.0
7.7
7.4
5.9
1,514
2,089
2,928
4,080
7,796
13,000
64
70
100
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」

最終エネルギー消費に関する予測
最終エネルギー消費は、基準年の 2013 年には 1.7 億 toe であったが、2030 年に約 3.8 億 toe、2050
年に 8.9 億 toe になるとしている。また、最終エネルギー消費の年平均伸び率は、2013~2030 年
4.9%、2030~2050 年 4.4%である。エネルギー源別の最終消費では、石炭消費は 2030 年に 6,430
万 toe となり、最終エネルギー消費全体の 17%を占める。また、2030 年の石炭消費量は 2013 年の
1,830 万 toe より 4,600 万 toe 増加する。2030 年の電力消費は 5,640 万 toe(同 14.9%)で、2013 年
より 4,020 万 toe 増加すると予測されている。
3
この予測は 2013 年を基準年としているが、Outlook の 2013 年実績値はインドネシアエネルギー鉱物資源省の
「Energy Handbook」の統計値と異なっている。
-9-
百万toe
石炭
天然ガス
石油
電力
バイオ燃料
バイオマス
1,000
その他
893.5
900
740.9
800
700
602.2
600
482.5
500
378.8
400
298.5
234.7
300
200
168.6
100
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 6 エネルギー源別の最終消費
さらに、2050 年の最終エネルギー消費を見ると、石炭消費量は約 1.8 億 toe に達し、最終エネ
ルギー消費に占める割合は 19.6%に、2013~2050 年の年平均伸び率は 6.3%になると予測されてい
る。
2050 年の最終電力消費量は 1.6 億 toe 強で、
2013 年の 1,620 万 toe の約 10 倍、
2030 年の 5,640toe
の約 3 倍となり、2013~2050 年の年平均伸び率は 6.5%になる。

発電用燃料の消費に関する予測
発電電力量は 2030 年に合計 744TWh となり、2013 年の 208TWh より 536TWh 増加する。また、
2013~2030 年の発電電力量の年平均伸び率は 7.8%である。発電電力量のうち、石炭火力発電は
455TWh で、発電電力量全体の 61.2%を占める。また、2013~2030 年の石炭火力発電の年平均伸
び率は 8.2%である。
2050 年の発電電力量は 2,162TWh で、2013 年の 208TWh の 10 倍以上となる。
2013~2050 年の石炭火力発電量の年平均伸び率は 7.0%である。
石炭火力発電は 1,463 万 TWh で、
発電電力量全体の 67.6%を占め、2013~2050 年の石炭火力発電量の年平均伸び率は 7.0%である。

一次エネルギー消費と石炭輸出のポテンシャルに関する予測
2013 年に 2.2 億 toe だった一次エネルギー消費は、2030 年に 5.7 億 toe に増加し、2013~2030
年の年平均伸び率は 5.7%である。石炭消費は 2013 年の 5,600 万 toe から 2030 年には 1.5 億 toe 増
の 2.1 億 toe となり、一次エネルギー消費に占める石炭比率は 36.1%となる。2050 年の一次エネル
ギー消費は約 13 億 toe で、2030~2050 年の年平均伸び率は 4.2%である。うち、石炭消費は 5.3 億
toe で、年平均伸び率は 4.8%、一次エネルギー消費に占める石炭比率は 40.6%に達する。
- 10 -
表 4 一次エネルギー消費に関する予測(BAU シナリオ)
エネルギー源
合計
石炭
ガス
石油
その他
バイオマス
シェア(%)
石炭
ガス
石油
その他
バイオマス
実績
2013
221
56
39
78
15
32
2020
334
107
63
105
32
26
2025
448
153
88
131
55
22
予測(百万toe)
2030
2035
2040
570
726
893
206
282
350
115
148
189
163
199
248
69
86
100
17
11
6
25.5
17.8
35.3
6.8
14.5
32.2
18.9
31.5
9.7
7.7
34.1
19.6
29.2
12.2
4.9
36.1
20.2
28.5
12.2
3.0
38.9
20.4
27.4
11.8
1.6
39.1
21.2
27.8
11.2
0.7
2045
1,087
436
232
305
115
0
40.1
21.4
28.0
10.5
0.0
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
1,299 5.7
4.2
4.9
528 7.9
4.8
6.2
272 6.5
4.4
5.4
365 4.4
4.1
4.3
134 9.4
3.3
6.1
0 ▲ 3.7
40.6
21.0
28.1
10.3
0.0
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
一方、2030 年の一次エネルギーの国内生産は合計で約 5.1 億 toe となり、2013 年の 3.9 億 toe よ
り 1.2 億 toe 増加する。また、一次エネルギーの消費と生産をもとに試算すると、2030 年のエネ
ルギー自給率は 88.8%になる。2030 年までにインドネシアはエネルギー純輸出国に転じる。2050
年の一次エネルギー生産は約 8 億 toe で、2030 年より 2.9 億 toe 増加し、2030~2050 年の年平均
増産率は 2.3%となる。2013~2030 年の年平均増産率 1.6%よりは高いが、エネルギー消費の伸び
率よりは低く、エネルギー自給率は 61.3%にダウンし、エネルギーの対外依存度がさらに高まる。
石炭生産は 2013 年の 2.3 億 toe から 2030 年には 3.5 億 toe に増加し、一次エネルギー生産に占
める石炭比率は 69.9%になる。2030 年の石炭輸出は 1.5 億 toe で、2013 年の 1.8 億 toe より 3,000
万 toe 減少する。また、2050 年の石炭の輸出は 6,800 万 toe に大きく減少すると予測されている。
インドネシア政府は、石炭輸出は 2013 年時点ですでにピークに達し、今後は輸出量が徐々に減少
すると見ている。
しかし、2013 年時点のインドネシアの経済構造、政府歳入、対外貿易の石炭輸出依存状況をも
とに総合的に判断すると、石炭輸出を短期間で大幅に減らすことは難しいであろう。石炭の安定
生産はインドネシアの重要課題であり、エネルギー需給や輸出入バランスをとるためには、石炭
の輸出が不可欠である。
- 11 -
表 5 一次エネルギー供給に関する予測(BAU シナリオ)
エネルギー源
エネルギー総供給
生産
輸入
輸出
石炭供給
生産
輸入
輸出
石油供給
生産
輸入
輸出
天然ガス供給
生産
輸入
輸出
その他エネ
生産
バイオマス供給
生産
実績
2013
221
387
51
216
56
234
0
177
78
42
51
14
40
64
0
25
15
15
32
32
2020
334
443
81
190
107
283
0
176
105
36
81
12
63
66
0
3
32
32
26
26
2025
448
483
142
177
153
318
0
165
131
36
105
10
88
52
37
1
55
55
22
22
予測(百万toe)
2030
2035
2040
570
726
893
507
571
625
221
288
378
157
133
109
206
282
350
354
408
452
0
0
0
148
126
102
163
199
248
36
36
36
135
170
218
9
7
6
115
148
189
30
30
30
86
118
159
1
0
0
69
86
100
69
86
100
17
11
6
17
11
6
2045
1,087
700
476
89
436
519
0
84
305
36
274
5
232
30
202
0
115
115
0
0
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
1,299 5.7
4.2
4.9
796 1.6
2.3
2.0
576 9.0
4.9
6.8
73 -1.9
-3.8
-2.9
528 7.9
4.8
6.2
596 2.5
2.6
2.6
0 0.0
0.0
0.0
68 -1.1
-3.8
-2.6
365 4.4
4.1
4.3
36 -0.9
0.0
-0.4
334 5.9
4.6
5.2
5 -3.0
-3.0
-3.0
272 6.5
4.4
5.4
30 -4.3
0.0
-2.0
242
5.3
0 -18.7
-13.5
-15.9
134 9.4
3.3
6.1
134 9.4
3.3
6.1
0 -3.7 0 -3.7 -
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
【第 11 章】では、高品位炭の輸出ポテンシャルについて予測した。
「Indonesian Coal Book 2014/2015」および企業の公式サイトなどの情報をもとに石炭生産企業の
一部生産状況を統計した結果、2013 年の高品位炭(6,100kcal/kg 以上)の生産量は 1 億トン前後
になると推定される。
本調査の集計では、2013 年時点の高品位炭の生産企業は合計 78 社で、うち、カリマンタン島
が 63 社で、残り 15 社はスマトラ島に分布している。また、カリマンタン島の 63 社のうち、東カ
リマンタンに 30 社、南カリマンタンに 17 社、中央カリマンタンに 12 社、北カリマンタンに 4 社
がある。スマトラ島の 15 社は、ブンクル 6 社、西スマトラ 3 社、残り 7 社はリアウ、ジャンビ、
南スマトラなどに分布している。
短中期的には、カリマンタン島、特に東カリマンタン州の高品位炭生産能力が高く、中心的な
生産拠点、国内外への供給地となると思われる。
- 12 -
(出所)
「2014/2015 Indonesian Coal Book」
図 7 2013 年時点の主な高品位炭生産企業の分布
国内外の需要が高まれば、既存炭鉱と新規炭鉱の生産能力を拡大し、高品位炭と低品位炭の生
産規模を拡大することが可能である。インドネシア国内の石炭火力発電所に供給される石炭はほ
とんどが低品位炭であるため、国内に賦存量の多い低品位炭の開発がさらに進むと予測される。
また、2030 年の石炭生産全体に占める高品位炭比率は 2013 年より低下するが、高品位炭の年間
生産量は 2013 年より増加すると予測される。
- 13 -
Summary
This report is divided into three sections. Section I (Chapters 1 to 5) investigates the quantity of available
coal resources, coal development, coal supply and demand, and coal transportation infrastructure. Section II
(Chapters 6 to 9) investigates policies relating to energy and coal. Section III (Chapters 10 and 11)
investigates projections of coal supply and demand and export. Overviews of the investigations in each of
the chapters are provided below.

Section I: The current quantity of available coal resources, development, supply and demand,
and transportation infrastructure
【Chapter 1】features an investigation into the quantity of available coal resources in Indonesia.
The geologic age of Indonesia’s territory is diverse with land dating from the Carboniferous Period to the
Permian Period of the Paleozoic Era, and the Paleogene Period to the Neogene Period of the Cenozoic Era.
Strata with economically developable coal beds are primarily distributed through the Paleogene and
Neogene Period strata of the islands of Sumatra and Kalimantan. According to data released in 2013 by the
Geological Agency of Indonesia, Indonesia has coal resources totaling 120.5 billion tons, and of this, a
reserve of 31.36 billion tons. 28.4% of this reserve, or approximately 9 billion tons, is proven reserve.
Source: Ministry of Energy and Mineral Resources (MEMR)
Chart 1: Indonesia’s coalfield distribution
The estimated reserve is 22.46 billion tons, accounting for 71.6% of the total. Making a calculation based
on the coal production in 2013 of between 380 million tons1 and 440 million tons2, the ratio of reserves to
production (R/P) is 70 to 82 years.
1
2
BPS-Statistics Indonesia: “Statistical yearbook of Indonesia 2014”
Ministry of Energy and Mineral Resources (MEMR): “Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2014”
i
Note: The graph above is based on coal resource evaluation data (as of January 1 each year) published by the Geological
Agency of Indonesia.
Source: The “Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia” published each year by the Geological Agency of
Indonesia
Chart: 2 Indonesian coal resources and reserves evaluation data trends (2000 to 2013)
Looking at the available coal resources by region, as of the end of 2013 coal reserves were mainly
concentrated in the islands of Sumatra (42.2% or 13.29 billion tons) and Kalimantan (57.6% or 18.06
million tons). Available resources by calorific value for coal reserves as of the end of 2013 are as follows:
5,100kcal/kg to 6,100kcal/kg coal accounted for 64.1% of the total, coal under 5,100kcal/kg accounted for
30.2%, and coal over 6,100kcal/kg accounted for only 5.6%.
Chapter 2 investigates coal mine development conditions from three different angles: development of
mines with high-grade coal, an overview of the top 10 coal-producing companies of 2013, and the current
situation regarding the acquisition of stakes in coal mines by overseas investors.
First of all, based on data from the Indonesian company Pt. Petromindo’s “Indonesian Coal Book
2014/2015,” the reports takes a close look at the main coal companies (mines) producing coal (coal brands)
with calorific values exceeding 6,100kcal/kg, as well as companies and mines that are in the exploration,
feasibility study, and construction phases. There are mines with high-grade coal located in Kalimantan and
Sumatra Islands and the western half of New Guinea Island. Representative mines in eastern Kalimantan
include those of Pt. Harum Energy Tbk. (Harum Energy Group), Pt. Bayan Resources Tbk. (Bayan
Resources Group), and Pt. Kaltim Prima Coal (KPC), and on Sumatra Island they include the state-owned
Pt. Bukit Asam Tbk. (PBTA, Bukit Assam Group).
Next, based on information again from the “Indonesian Coal Book 2014/2015, the report contains an
ii
overview of the top 10 coal-producing companies of 2013. The top 6 are first-generation CCoW companies
and their total production volume (210.5 million tons) accounts for 49.9% of Indonesia’s total production
volume (421.5 million tons). Taking clues from data from the “Indonesian Coal Book 2014/2015” and the
official websites of each company, the report seeks to provide a picture of the current situation regarding
acquisition of stakes in coal mines by overseas investors. Looking at the stakes held by investing
companies by country, those held by Australian companies are significant.
【Chapter 3】features an investigation into coal supply and demand in Indonesia.
 Primary energy consumption, production, exports, and imports.
According to the Energy Handbook released by the Ministry of Energy and Mineral Resources (MEMR),
Indonesia’s primary energy consumption volume in 2013 was 215.34 million toe. Looking at consumption
by energy source, coal consumption’s share increased markedly from 9.0% in 2000 to 25.7% in 2013, and
crude oil consumption decreased from 36.0% in 2000 to 33.0% in 2013.
Source: The MEMR “Energy Handbook” for each year
Chart 3: Comparison of primary energy consumption share by energy source (2000 and 2013)
On the other hand, primary energy production in 2013 was approximately 400 million toe, and by energy
source: coal accounted for a significant proportion with 250 million toe (64.3% of total primary energy
production), crude oil 40.61 million toe (10.3% of the total), natural gas 54.29 million toe (13.7% of the
total), hydro and geothermal combined 7.81 million toe (roughly 2.0% of the total), and biomass 38.49
million (9.7% of the total). In 2013 energy exports totaled approximately 210 million toe, and by energy
source, the export volume was: coal 190 million toe (accounting for 87.0% of total energy exports), oil
(crude oil and petroleum products) 19.64 million toe (9.2% of total energy exports), and natural gas 8.13
million toe (3.8% of total energy exports).
iii
 Final energy consumption volume
Final energy consumption in 2013 was 151.62 million toe, and of this, coal consumption accounted for
15.9% of overall final energy consumption with 24.16 million toe. By sector, final energy consumption
was: industrial sector 53.96 million toe (35.6% of the total), households sector 45.76 million toe (30.2% of
the total), transport sector 43.69 million toe (28.8% of the total), commerce sector 5.04 million toe (3.3%),
and “others” sector 3.18 million toe (2.1%). In addition, the industrial sector’s coal consumption volume
was 24.16 million toe, and this accounted for 44.8% of the industrial sector’s overall final energy
consumption
 Electricity demand and electricity source structure
According to statistics from the Indonesian state-owned company Perushaan Listrik Negara (PLN),
Indonesia’s electricity demand (retail volume) was 187.5TWh. Of this, the household sector accounted for
77.2TWh (41.2% of the total), the industrial sector accounted for 64.4TWh (34.3% of the total), and the
commerce sector accounted for 34.5TWh (18.4% of the total). Indonesia’s electricity demand increased
rapidly from 2000, and there are concerns about potential electricity supply shortages. Therefore, the
government drafted a two-stage Fast Track Program, commonly referred to as the “Crash Program.” In
2013 216.2TWh of electricity was generated, and of this, electricity generated from coal-fired power
stations accounted for 110.5TWh, or 51.1% of the total. Of the fuel consumed for electricity generation in
the same year, coal accounted for 63.5% of the total, or 31.27 million toe. A presidential decree on January
16, 2015, saw the announcement of a 5,500 trillion rupiah (approximately 51.5 trillion yen) five-year
infrastructure development plan (2015 to 2019), which includes a 35 million kW power supply
development plan.
 Coal supply and demand, and coal sales and production volume by region
According to the Energy Handbook, coal production for 2013 totaled approximately 450 million tons,
meaning an average annual increase of 14.5% from 2000 to 2013. According to the Indonesian Coal Book
2014/2015, coal production for 2013 was 430 million tons, so there is a 20 million ton discrepancy between
the two publications’ statistics.
According the Indonesian Coal Book 2014/2015, by region, coal production volume for 2013 was: East
Kalimantan province 37.5 million tons (accounting for 38.4% of the total sales volume in Indonesia), and
South Kalimantan province 36.46 million tons (37.3% of the total sales volume). If one includes Central
Kalimantan province, the three provinces account for over 80% of Indonesia’s total coal sales volume.
South Sumatra province accounted for 12.33 million tons, or 12.6% of the total. Coal production volume
for 2013 was: East Kalimantan 230 million tons (52.5% of total coal production in Indonesia), South
Kalimantan province 170 million tons (39.3% of total coal production), and if one includes Central
Kalimantan province, the coal production volume of the three states accounts for 94.1% of the national
total. South Sumatra province accounted for 3.2% of the national total with 13.58 million tons.
iv
Table 1: Indonesian coal production volume, consumption, net export, and margin of error
Year
Production
Mton
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
77
93
103
114
132
153
194
217
240
256
275
353
386
449
Total
Mton
Consumption
Net Export
Stock or Error
Mton
22
27
29
39
36
41
49
61
53
56
67
80
90
98
58
67
74
90
106
129
184
196
201
235
299
354
384
424
-3
-2
1
-15
-9
-18
-39
-41
-14
-35
-91
-80
-88
-73
80
94
103
129
142
170
233
257
255
291
366
433
474
522
Source: MEMR, BPS (Statistics Indonesia), Indonesian customs statistics
【Chapter 4】features an investigation into Indonesia’s coal export trends.
In 2013, the value of coal exports from Indonesia was $US22.77 billion, accounting for 12.5% of the total
value of Indonesia’s exports. The value of coal imports to Indonesia was $US83.31 million, accounting for
0.04% of the total value of Indonesia’s imports. The breakdown of exported coal types was as follows:
bituminous coal 170 million tons, subbituminous coal 210 million tons, lignite (brown coal) 42.94 million
tons, and “other” (anthracite, etc.) 350 thousand tons.
Million ton
Bitumnous coal
Subbituminous coal
Anthracit coal
Brown coal
424
450
400
350
299
300
207
250
200
129
150
100
58
174
50
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Source: Indonesian customs statistics
Chart 4: Indonesian coal export volume by type
v
The top three export destinations were, China with 130 million tons (30.7% of total coal exports), India 120
million tons (27.9% of the total), and Japan 37.85 million tons (8.9% of the total).
Table 2: Average annual price of bituminous coal exports by destination ($/ton, FOB)
Ranking Country
2005
2010
2011
2012
2013
1
Japan
39.6
81.4
108.8
104.6
89.9
2
Philippines
39.8
79.0
96.7
95.2
83.6
3
Vietnam
33.3
69.5
98.4
85.3
75.5
4
Thailand
30.2
58.5
78.4
86.0
74.8
5
Taiwan
37.3
71.5
95.5
87.5
74.8
6
Hong Kong
33.1
71.6
88.6
78.1
69.6
7
Malaysia
29.3
72.7
93.6
82.6
68.2
21.3
29.4
32.2
34.7
60.4
53.3
60.1
66.8
84.1
79.9
71.2
88.6
75.6
69.7
68.7
81.8
66.8
63.0
58.9
70.7
8
9
10
China
India
Korea, South
Average
Source: Indonesian customs statistics
The average export price (FOB) for coal in 2013 by coal type was: bituminous coal $US76.1 per ton,
subbituminous coal $US40.6 per ton, and anthracite $US56.8 per ton. Calculating the average Indonesian
coal export price from figures for export volume and export value gives $US57.8 per ton. Converting this
average export price into rupiah using the official $US/rupiah exchange rate for 2013 ($US1=10,461.2
rupiah) gives an export price of 604,194 rupiah per ton; 334,366 rupiah less than the PLN average coal
purchase price for 2013 of 938,560 rupiah stated in PLN statistics. However, based on interviews with PLN,
PLN says that almost all of the coal it uses is low-grade, and that the purchase price is low, meaning that
issues with Indonesia’s statistics cannot be ruled out.
【Chapter 5】features an investigation into Indonesia’s coal transportation infrastructure development.
Much of Indonesia’s coal mine development takes place in easily accessible areas such as coastal areas and
inland areas with river access, and water transportation is the primary coal transportation method used. On
Kalimantan Island, the primary transportation routes are the Mahakam River in East Kalimantan province
and the Barito River in South Kalimantan province.
Currently, there are 23 shipment ports used as onshore coal transshipment terminals, and the annual
shipment capacity is 120 million to 150 million tons. There are also 15 offshore transshipment facilities in
operation, and these can handle up to 170 million tons annually. There are a wide variety of offshore
facilities from small-scale 3 million to 5 million ton-class facilities to large-scale 15 million ton-class
facilities.
The main coal shipment ports on Sumatra Island are Tarahan and Teluk Bayur, and these are both owned
vi
by the state-owned coal company Bukit Assam (PTBA). Per day, the ports can handle 30,000 tons and
8,000 tons respectively.
Source: In-house research
Chart 5: Proposed sites for coal shipment port construction on Kalimantan Island (map on left) and
Sumatra Island (map on right)
As a rapid increase in truck-based coal transportation volume has exacerbated traffic congestion, traffic
accidents, and air pollution issues, regional governments are requesting the construction of dedicated coal
transport roads.
With regard to rail transportation, PTBA has plans to lay two new railway lines (a 280km line from
Tarahan Port to a PTBA mine, and a 270km line from Tanjung Api Api to a PTBA mine). The East
Kalimantan provincial government has signed a memorandum of understanding with Russian Railways,
with construction to begin in 2016 and conclude in 2018.

Section II Policies relating to energy and coal
【Chapter 6】features an investigation into policies relating to energy and coal drafted prior to Joko
Widodo’s inauguration as president.
Indonesia’s energy policies are implemented in accordance with the Law on Energy (August 17, 2007) and
the Government Regulation Concerning National Energy Policy (October 17, 2014). The energy law
stipulates the government’s management of energy resources (control and regulation), stable energy supply
(domestic supply is prioritized over exportation), provision of subsidies to the poor, advancement of
resource development (expansion of domestic procurement rate), and other energy-related issues as well as
vii
providing for the establishment of a National Energy Council to draft national energy policy. Note however
that the drafting and implementation of individual energy and mineral resource policies is the responsibility
of the Ministry of Energy and Mineral Resources (MEMR).
Indonesia’s basic coal-related policies are as follows. Supplying domestic demand is given top priority.
Increasing national income through encouraging investment by coal companies, and increasing the added
value of mineral resources through the promotion of coal cleaning and improving coal quality. Increasing
regional government revenue and boosting employment through initiatives such as increasing regional
coal consumption. Reinforcing oversight and management, cracking down on illegal activities, and
facilitating mine development through the new mining law and related regulations.
【Chapter 7】features an investigation into the new mining law and related regulations.
The law administering and regulating Indonesia’s mining industry is the mineral and coal mining law
(hereinafter referred to as the new mining law), which was promulgated in 2009, and a large number of
additional regulations and rulings have been issued in relation to this law.

Regulations relating to coal development
(1) Comparing the new mining law with the previous one, one can see that with regard to mineral and coal
mining business, it is characterized by a license-based system rather than a contract-based system, with
the three following different types of business license: IUP (a mining business license), IRP
(community mining license), and a special mining business license (IUPK). Note that the IUP applies
to overseas companies.
(2) Another aspect that characterizes the new mining law when compared with the previous one is the
transferal of approval rights to regional governments.
(3) Royalties paid by IUP holders for open-pit coal mining is 3% to 7% of the coal’s sale price, but an
increase is currently under consideration.
In addition to the above, the new law also stipulates upper limits on foreign ownership, transfer of
stockholdings to Indonesian people, and obligations relating to environmental measures.

Coal export-related regulations
(1) Domestic supply obligations and production regulations
(2) Setting of standard coal prices
(3) Demand for higher levels of added value
(4) Strengthening of coal export management
The following issues relating to the new mining law have been pointed out.
(1) Since mining business requires a huge amount of investment and a substantial period of time before
viii
profits can be made, the risk is high and profitability is low, meaning it is important to provide an
environment in which it is easy to invest. In spite of this, the law has strong nationalistic overtones and has
reduced the willingness of overseas investors to invest.
(2) Since IUPs can be withdrawn at any time by the government, the position of business contractors has
been weakened.
(3) By transferring approval power to regional governments, problems are now arising due to differing
mining regulations being legislated and put into effect in each region, differing fees, over-licensing of
mining areas, overlapping of mining areas, etc.
【 Chapter 8 】 features an investigation into regulations other than the new mine law as well as
environmental issues connected with coal development/utilization.
Regulations other than the new mining law that deal with environmental conservation issues to be
considered while developing resources include the environmental protection and management law, the
forest law, and other regulations related to these laws. 2009’s environmental protection and management
law requires the central and regional governments to draft strategic environmental plans. Forest utilization
is regulated under 2004’s forest law.
The main environmental issues that occur in conjunction with coal development and utilization are as
follows:
Air pollution and traffic congestion due to road transportation of coal. Sediment deposition in estuaries
caused by upstream resource development and related issues such as effects on river barge navigation.
Acidic wastewater from mines. Loss of trees that absorb greenhouse gases due to deforestation at open-pit
mine sites. Companies feel that they ought to be implementing countermeasures, but there are currently no
government incentives in place for environmental protection projects and this presumably needs to be
rectified in order to promote further environmental conservation.
【Chapter 9】features an investigation into the outlook for policies relating to energy and coal from the new
administration of President Widodo.
As of mid-February 2015, the new administration has yet to shed light on any comprehensive policies
relating to energy or coal. The report looks into the relevant details of the manifesto released by the
administration’s election campaign team, sorts through the related policies announced following the
president’s inauguration and the policies that are predicted to come into effect based on currently available
information, and covers the main points to consider when predicting the feasibility of both the policies in
the manifesto and the policies that the new administration is predicted to announce.
The election campaign teams of the candidates for president and vice-president released manifestos in May
2014, and in September 2014, following confirmation of Joko Widodo’s election as president, draft
energy-policies were released. The policies state that the business of Pertamina’s subsidiary trade division
Petra will be audited, that fuel smuggling and corruption will be eliminated, that Pertamina will undergo
ix
major reform, that the supply of coal for power stations (particularly low-grade coal) will be expanded, and
so on.
Following the President’s inauguration ceremony on October 20, 2014, energy-related staff were rapidly
added to the new administration team, but there appears to be no comprehensive energy or coal-related
policies in evidence—what stood out was the launch of an investigation aimed at eliminating oil and gas
mafia groups, and abolishing fuel subsidies. With regard to coal in particular, although policy direction has,
as mentioned above, been indicated to a certain extent, there have been no subsequent announcements
made to further clarify the details, nor have any further coal-related policies been announced.

Part III Coal supply and demand and export projections
【Chapter 10】provides an overview of the energy supply and demand projections (up to 2050) included in
the Indonesian Energy Outlook 2014 report3 published by the Indonesian National Energy Council in
December 2014. The report includes a “business-as-usual” (BAU) scenario and a national energy policy
scenario (KEN), but as the KEN scenario is dealt with in Chapter 6, Chapter 10 focuses on explaining the
BAU scenario.
3
These projections use 2013 as the base year, but figures for 2013 in the “Indonesian Energy Outlook 2014” differ from the
statistics in the “Energy Handbook” released by the Ministry of Energy and Mineral Resources.

Preconditions of the Indonesian government’s projections
Table 3: Preconditions of the Indonesian government’s projections
Indicator
Unit
2015
2020
2025
2030
2040
2050
Population
Million
255
271
284
296
314
335
Annual Growth Rate
%
1.4
1.2
0.9
0.8
0.6
0.6
GDP (2000 price)
billion USD
386
567
832
1,206
2,452
4,349
Annual Growth Rate
%
7.7
8.0
8.0
7.7
7.4
5.9
GDP per capita
USD
1,514
2,089
2,928
4,080
7,796
13,000
Urbanization rate
%
Electrification rate
%
64
70
100
Source: The Indonesian National Energy Council’s “Indonesian Energy Outlook 2014”
 Projections relating to final energy consumption
Final energy consumption in the base year of 2013 was 170 million toe, but it is projected to reach 380
million toe in 2030, and 890 million toe in 2050. The projected average annual growth rate from 2013 to
2030 is 4.9%, and from 2030 to 2050 it is 4.4%. In 2030 coal is projected to account for 17% of the overall
final energy consumption, or 64.3 million toe. Coal consumption in 2030 is projected to be 46.0 million toe
x
higher than 2013’s 18.3 million toe. In 2030 electricity consumption is projected to account for 14.9% of
the overall final energy consumption, 56.4 million toe; a 40.2 million toe increase from 2013.
Million toe
Coal
Natural gas
Oil products
Electricity
Biofuel
Biomass
1,000
Others
893.5
900
740.9
800
700
602.2
600
482.5
500
378.8
400
298.5
234.7
300
200
168.6
100
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
Source: The Indonesian National Energy Council’s “Indonesian Energy Outlook 2014”
Chart 6: Projected final energy consumption by energy source
Looking at final energy consumption projections for 2050, coal consumption is projected to reach 180
million toe, or 19.6% of final energy consumption, and the projected average annual growth rate between
2013 and 2050 is 6.3%. Projected final electricity consumption for 2050 is over 160 million toe—roughly
10 times more than the 16.2 million toe of 2013, and roughly 3 times more than the projected 56.4 million
toe of 2030. The projected average annual growth rate between 2013 and 2050 is 6.5%.
 Projections relating to fuel consumed for electricity generation
By 2030, electricity generation is projected to reach 744TWh, a 536TWh increase over 2013’s 208TWh.
The projected average annual growth rate between 2013 and 2030 is 7.8%. Coal-fired electricity generation
is 455TWh, accounting for 61.2% of overall electricity generation. The projected average annual growth
rate of coal-fired electricity generation between 2013 and 2030 is 8.2%. Electricity generation is projected
to be 2,162TWh in 2050, which is more than 10 times higher than 2013’s 208TWh. The projected average
annual growth rate of coal-fired electricity generation between 2013 and 2050 is 7.0%. Coal-fired
electricity generation is projected to be 1,463TWh, accounting for 67.6 of overall electricity generation,
and the projected average annual growth rate of coal-fired electricity generation between 2013 and 2050 is
7.0%.
 Projections relating to primary energy consumption and coal export potential
Primary energy consumption was 220 million toe in 2013, and is projected to increase to 570 million toe by
2030 and the projected average annual growth rate between 2013 and 2030 is 5.7%. Coal consumption is
projected to increase from 56 million toe in 2013 to 210 million toe in 2030 (an increase of roughly 150
million toe), and coal is projected to account for 36.1% of primary energy consumption. Primary energy
xi
consumption in 2050 is projected to be approximately 1.3 billion toe, and the projected average annual
growth rate between 2030 and 2050 is 4.2%. Of this, coal consumption is projected to be 530 million toe,
with an average annual growth rate of 4.8%, and is projected to account for 40.6% of overall primary
energy consumption.
Table 4: Projections relating to primary energy consumption (BAU scenario)
Energy
Total
Coal
Natural Gas
Crude Oil & Oil Products
Others
Biomass
Share (%)
Coal
Natural Gas
Crude Oil & Oil Products
Others
Biomass
Actual
2013
221
56
39
78
15
32
2020
334
107
63
105
32
26
2025
448
153
88
131
55
22
25.5
17.8
35.3
6.8
14.5
32.2
18.9
31.5
9.7
7.7
34.1
19.6
29.2
12.2
4.9
Forecast (Million toe)
2030
2035
2040
570
726
893
206
282
350
115
148
189
163
199
248
69
86
100
17
11
6
36.1
20.2
28.5
12.2
3.0
38.9
20.4
27.4
11.8
1.6
39.1
21.2
27.8
11.2
0.7
2045
1,087
436
232
305
115
0
2050
1,299
528
272
365
134
0
40.1
21.4
28.0
10.5
0.0
40.6
21.0
28.1
10.3
0.0
Annual average rate of change (%)
30/13
50/30
50/13
5.7
4.2
4.9
7.9
4.8
6.2
6.5
4.4
5.4
4.4
4.1
4.3
9.4
3.3
6.1
▲ 3.7
-
Source: The Indonesian National Energy Council’s “Indonesian Energy Outlook 2014”
Domestic primary energy production, on the other hand, is projected to be 510 million toe, a 120 million
toe increase from 2013’s 390 million toe. Calculations based on primary energy consumption and
production figures gives an energy self-sufficiency rate in 2030 of 88.8%. Indonesia is projected to become
a net energy exporter by 2030. Primary energy production in 2050 is projected to be approximately 800
million toe, a 290 million toe increase from 2030, and the projected average annual growth rate between
2030 and 2050 is 2.3%. This is higher than the projected production growth rate between 2013 and 2030,
but it is lower than the energy consumption growth rate, leading to a decrease in the energy self-sufficiency
rate to 61.3% meaning a further increase in dependence on overseas energy sources.
Coal production is projected to increase from 230 million toe in 2013 to 350 million toe in 2030,
accounting for 69.9% of primary energy production. Coal exports in 2030 are projected to be 150 million
toe, a 30 million toe decrease from 2013’s 180 million toe. Coal exports in 2050 are projected to be 68
million toe—a significant decrease. The Indonesian government projects that coal exports peaked in 2013,
and will continue to gradually decrease.
However if one makes a comprehensive appraisal based on information from 2013 regarding Indonesia’s
economic structure, government revenue, and the level of dependence on coal exportation, significantly
reducing coal exports over a short period of time would likely be a difficult thing to achieve. Stable coal
production is an important issue for Indonesia, and coal exportation is crucial for maintaining a balance
between energy supply and demand, and exports and imports.
xii
Table 5: Projections relating to primary energy supply (BAU scenario)
Energy
Total Primary Energy Supply
Production
Import
Export
Coal
Production
Import
Export
Crude Oil & Products
Production
Import
Export
Natural Gas
Production
Import
Export
Other Energy
Production
Biomass
Production
Actual
2013
221
387
51
216
56
234
0
177
78
42
51
14
40
64
0
25
15
15
32
32
2020
334
443
81
190
107
283
0
176
105
36
81
12
69
66
0
3
32
32
26
26
2025
448
483
142
177
153
318
0
165
131
36
105
10
91
52
37
1
55
55
22
22
Forecast (Million toe)
2030
2035
2040
570
726
893
507
571
625
221
288
378
157
133
109
206
282
350
354
408
452
0
0
0
148
126
102
163
199
248
36
36
36
135
170
218
9
7
6
117
149
190
30
30
30
86
118
159
1
0
0
69
86
100
69
86
100
17
11
6
17
11
6
2045
1,087
700
476
89
436
519
0
84
305
36
274
5
233
30
202
0
115
115
0
0
2050
1,299
796
576
73
528
596
0
68
365
36
334
5
272
30
242
0
134
134
0
0
Annual average rate of change (%)
30/13
50/30
50/13
5.7
4.2
4.9
1.6
2.3
2.0
9.0
4.9
6.8
-1.9
-3.8
-2.9
7.9
4.8
6.2
2.5
2.6
2.6
0.0
0.0
0.0
-1.1
-3.8
-2.6
4.4
4.1
4.3
-0.9
0.0
-0.4
5.9
4.6
5.2
-3.0
-3.0
-3.0
6.6
4.3
5.4
-4.3
0.0
-2.0
5.3
-18.7
-13.5
-15.9
9.4
3.3
6.1
9.4
3.3
6.1
-3.7
-3.7
-
Source: Indonesian National Energy Council’s “Indonesian Energy Outlook 2014”
【Chapter 11】provides forecasts relating to the export potential of high grade coal.
Estimating the 2013 production volume for high-grade coal (6,100kcal/kg and above) based on information
about the production circumstances of a certain number of coal companies derived from the Indonesian
Coal Book 2014/2015 and official company websites, etc., gives a figure of approximately 100 million
tons.
According to a study for this report, as of 2013 there were 78 companies producing high-grade coal, with
63 based on Kalimantan Island and the 15 remaining companies based on Sumatra Island. Of the 63
Kalimantan companies, 30 were based in East Kalimantan, 12 in Central Kalimantan, and 4 in North
Kalimantan. Of the 15 Sumatra companies, 6 were based in Bengkulu, 3 in West Sumatra, and the
remaining 7 companies were based in Riau, Jambi, South Sumatra, and other provinces.
The high-grade coal production capacity of companies on Kalimantan Island, and in particular in East
Kalimantan are high, and in the short- to medium-term, it is likely to become the central production hub
supplying domestic and overseas markets.
xiii
Sumatra others
8%
West Sumatra
4%
Bengkulu
8%
East Kalimantan
38%
North Kalimantan
5%
Central
Kalimantan
15%
South Kalimantan
22%
Source: The Indonesian National Energy Council’s “Indonesian Coal Book 2014/2015”
Chart 7: Geographic distribution of main high-grade coal producing companies as of 2013
If domestic and overseas demand increases, it is possible to increase the production capacity of existing and
new coal mines, and expand the scale of production of both low- and high-grade coal. Since almost all of
the coal supplied to coal-fired power plants in Indonesia is low-grade, further development of low-grade
coal resources, which are plentiful in the country, is predicted. Although the proportion of overall coal
production accounted for by high-grade coal is projected to be lower in 2030 than it was in 2013, the
production volume of high-grade coal is projected to be higher than it was in 2013.
xiv
目
次
第 I 部 石炭の資源賦存量、開発、需給ならびに輸送インフラの現状 ............................................ 1
第 1 章 石炭の資源賦存量 ........................................................................................................................ 1
1.1 インドネシアの地質概況・石炭資源量とその分布 ....................................................................... 1
1.1.1 地質概況 ........................................................................................................................................ 1
1.1.2 石炭資源量と埋蔵量 .................................................................................................................... 7
1.2 発熱量別・州別・精度別の石炭の資源量と埋蔵量 ....................................................................... 9
第 2 章 炭鉱開発の現状 .......................................................................................................................... 14
2.1 高品位炭の炭鉱開発状況 ................................................................................................................. 14
2.1.1 高品位炭の分布状況 .................................................................................................................. 14
2.1.2 主な高品位炭生産企業・炭鉱と開発状況 .............................................................................. 19
2.2 主要石炭会社(生産トップ 10)の概要 ........................................................................................ 28
2.2.1 インドネシアの石炭生産状況 .................................................................................................. 28
2.2.2 インドネシアの主要石炭会社(2013 年生産量トップ 10 社) ........................................... 28
2.3 外国資本による炭鉱権益獲得状況 ................................................................................................. 53
2.3.1 主な石炭生産企業・炭鉱の外資出資状況 .............................................................................. 53
2.3.2 その他 .......................................................................................................................................... 57
第 3 章 石炭需給動向 .............................................................................................................................. 59
3.1 2013 年の経済動向 ............................................................................................................................ 59
3.2 エネルギー需給動向 ........................................................................................................................... 62
3.2.1 一次エネルギー消費・生産量と輸出入量 .............................................................................. 62
3.2.2 最終エネルギー消費量 .............................................................................................................. 67
3.3 電力需要と電源構成 ......................................................................................................................... 75
3.4 石炭の需給動向 ................................................................................................................................. 80
3.4.1 石炭の生産量 .............................................................................................................................. 80
3.4.2 石炭の消費量 .............................................................................................................................. 80
3.4.3 地域別の石炭販売量と生産量 .................................................................................................. 86
第 4 章 石炭輸出動向 .............................................................................................................................. 89
4.1 インドネシアの輸出入動向と石炭の位置付け ............................................................................. 90
4.2 インドネシアの石炭輸出動向 ......................................................................................................... 92
4.2.1 炭種別の輸出動向 ...................................................................................................................... 92
4.2.2 仕向地別の輸出動向 .................................................................................................................. 94
4.2.3 仕向地別、炭種別の輸出動向 .................................................................................................. 95
4.2.4 地域別の石炭輸出動向 ............................................................................................................ 102
4.2.5 統計誤差の問題 ........................................................................................................................ 103
I
4.3 FOB コストの構成(生産、選炭、輸送、港湾料等) .............................................................. 105
第 5 章 石炭輸送インフラ整備状況 .................................................................................................... 120
5.1 国内炭の輸送インフラ整備と輸送の状況 ................................................................................... 120
5.1.1 カリマンタン島 ........................................................................................................................ 122
5.1.2 スマトラ島 ................................................................................................................................ 127
5.2 石炭輸送インフラに係わる課題 ................................................................................................... 135
5.3 インドネシア国内の石炭輸送コスト ........................................................................................... 138
第Ⅱ部 エネルギー・石炭に関連する各種の政策 ............................................................................ 145
第 6 章 エネルギー政策および石炭政策 ............................................................................................ 145
6.1 エネルギー政策 ............................................................................................................................... 145
6.1.1 エネルギー法 ............................................................................................................................ 145
6.1.2 国家エネルギー政策 ................................................................................................................ 146
6.1.3 国家エネルギー政策に関する政令 ........................................................................................ 146
6.2 石炭政策 ........................................................................................................................................... 149
第 7 章 新鉱業法およびその他の関連法規 ........................................................................................ 150
7.1 新鉱業法の特徴と基本的な性格 ................................................................................................... 150
7.2 新鉱業法の主な条項および新鉱業法の体系 ............................................................................... 152
7.2.1 新鉱業法の主な条項 ................................................................................................................ 152
7.2.2 新鉱業法の体系――各種の規制・規則 ................................................................................ 152
7.3 新鉱業法の主な条項 ....................................................................................................................... 158
7.3.1 石炭開発に関連する条項 ........................................................................................................ 158
7.3.2 石炭輸出に関連する条項 ........................................................................................................ 166
7.4 新鉱業法に係る問題点 ................................................................................................................... 173
第 8 章 新鉱業法以外の各種規制と石炭開発・利用に伴う環境問題 ........................................... 176
8.1 環境保護・管理法 ............................................................................................................................. 176
8.2 森林法 ............................................................................................................................................... 178
8.3 石炭開発・利用に伴う環境問題 ................................................................................................... 179
第 9 章 新大統領の下でのエネルギー・石炭政策の展望 ................................................................ 180
9.1 「政権公約」を通じて見る新政権の基本方針とエネルギー政策 ........................................... 180
9.1.1 基本方針 .................................................................................................................................... 180
9.1.2 エネルギー政策および環境政策 ............................................................................................ 181
9.2 新政権が打ち出したエネルギー関連の政策 ............................................................................... 184
9.2.1 政権移行チームによるエネルギー関連政策案の発表 ........................................................ 184
9.2.2 エネルギー関連人事および政策の発表 ................................................................................ 185
II
9.2.3 MEMR 新大臣の就任と石油・ガス関係マフィア調査の開始 ........................................... 186
9.2.4 燃料補助金の撤廃 .................................................................................................................... 188
9.3 新政権が打ち出すと見られる政策 ............................................................................................... 191
9.3.1 国家中期開発計画(RPJMN)とエネルギー政策 ............................................................... 191
9.3.2 新政権による政策実行の可能性を占うための注意点 ........................................................ 195
第Ⅲ部 石炭の需給および輸出の見通し ............................................................................................ 200
第 10 章 インドネシア政府の最新のエネルギー需給見通し .......................................................... 200
10.1 将来予測の前提条件 ....................................................................................................................... 200
10.2 最終エネルギー消費に関する予測 ............................................................................................... 201
10.2.1 エネルギー源別の最終消費 .................................................................................................. 201
10.2.2 部門別の最終消費 .................................................................................................................. 202
10.2.3 部門別、エネルギー源別の消費 .......................................................................................... 203
10.3 発電用燃料の消費 ......................................................................................................................... 206
10.3.1 発電電力量 .............................................................................................................................. 206
10.3.2 発電設備容量 .......................................................................................................................... 206
10.3.3 発電用燃料の消費 .................................................................................................................. 208
10.4 一次エネルギー消費と石炭輸出量に関する予測 ..................................................................... 209
10.4.1 一次エネルギー消費 .............................................................................................................. 209
10.4.2 エネルギー生産と石炭の輸出量に関する予測 .................................................................. 210
第 11 章 高品位炭の輸出動向に関する予測 ...................................................................................... 214
11.1 高品位炭の生産能力に関する予測 ........................................................................................... 214
11.2 高品位炭輸出能力の推測 ........................................................................................................... 220
III
IV
図
目
次
第 I 部 石炭の資源賦存量、開発、需給ならびに輸送インフラの現状 ............................................ 1
第 1 章 石炭の資源賦存量 ........................................................................................................................ 1
図 1.1.1
インドネシアの炭田分布 ......................................................................................................... 1
図 1.1.2
東カリマンタン州と北カリマンタン州の地質および炭鉱分布 ......................................... 2
図 1.1.3
南カリマンタン州の地質および炭鉱分布 ............................................................................. 3
図 1.1.4
中央カリマンタン州の地質および炭鉱分布 ......................................................................... 4
図 1.1.5
リアウ州の地質および炭鉱分布 ............................................................................................. 4
図 1.1.6
ジャンビ州の地質および炭鉱分布 ......................................................................................... 5
図 1.1.7
南スマトラ州の地質および炭鉱分布 ..................................................................................... 5
図 1.1.8
ブンクル州の地質および炭鉱分布 ......................................................................................... 6
図 1.1.9
南スラウェシ州の地質および炭鉱分布 ................................................................................. 7
図 1.1.10 インドネシアの石炭資源量および埋蔵量の評価推移(2000~2013 年) ........................ 8
図 1.2.1
インドネシアの発熱量別の石炭賦存状況 ........................................................................... 11
第 2 章 炭鉱開発の現状 .......................................................................................................................... 14
図 2.1.1
東カリマンタン州にある PT Harum Energy Tbk.の石炭生産企業 ..................................... 21
図 2.1.2
B34 プロジェクトの位置 ....................................................................................................... 23
図 2.1.3
Harum Energy の石炭の生産量と販売量............................................................................... 26
図 2.1.4
インドネシアの高品位炭生産企業・炭鉱の例(生産、探査、FS、建設段階) ........... 27
図 2.2.1
2013 年生産量トップ 10 社の生産量の推移 ........................................................................ 30
図 2.2.2
2013 年生産量トップ 10 社の輸出量の推移 ........................................................................ 30
図 2.2.3
インドネシアの 2013 年石炭生産量トップ 10 社の主要炭鉱 ........................................... 31
図 2.2.4
KPC の傘下炭鉱の位置と石炭ブランド .............................................................................. 35
図 2.2.5
AI の 3 炭鉱の位置と Coal Terminal までの輸送ルート ..................................................... 37
図 2.2.6
Adaro Energy の石炭生産量の推移........................................................................................ 39
図 2.2.7
Kideco の Pasir 炭鉱の位置 .................................................................................................... 40
図 2.2.8
Arutmin の炭鉱及び NPLCT の位置 ...................................................................................... 42
図 2.2.9
Berau Coal の 3 炭鉱とバージ港及び積み替えポイント .................................................... 44
図 2.2.10 2013 年の Berau Coal の石炭販売先とシェア(売上ベース) .......................................... 45
図 2.2.11 Indomico と Trubaindo の炭鉱の位置 .................................................................................... 46
図 2.2.12 PTBA の傘下炭鉱の位置 ........................................................................................................ 47
図 2.2.13 SAR が権益を有するインドネシアの炭鉱と関連事務所の位置....................................... 50
図 2.3.1
BHP Billiton の IndoMet Coal Project(ICP) ............................................................................. 55
図 2.3.2
Adani の採掘鉱区(東カリマンタン州 Bunyu 島)の位置 ................................................ 56
図 2.3.3
Reliance のインドネシア産低品位炭の供給ルート ............................................................ 56
V
第 3 章 石炭需給動向 .............................................................................................................................. 59
図 3.1.1
アジア主要国の経済成長率の推移 ....................................................................................... 59
図 3.1.2
2013 年のインドネシアの産業構成比 .................................................................................. 60
図 3.2.1
インドネシアの一次エネルギー消費の推移 ....................................................................... 62
図 3.2.2
一次エネルギー消費に占めるエネルギー源別シェアの比較(2000 年と 2013 年)..... 63
図 3.2.3
インドネシアのエネルギー自給率 ....................................................................................... 65
図 3.2.4
インドネシアの一次エネルギーの純輸出量 ....................................................................... 67
図 3.2.5
エネルギー源別の最終消費量 ............................................................................................... 68
図 3.2.6
分野別のエネルギー最終消費量 ........................................................................................... 70
図 3.3.1
インドネシアの電力需要の推移 ........................................................................................... 75
図 3.3.2
2013 年の電源構成比 .............................................................................................................. 76
図 3.3.3
エネルギー源別の発電電力量 ............................................................................................... 77
図 3.4.1
セメント生産と石炭消費 ....................................................................................................... 85
第 4 章 石炭輸出動向 .............................................................................................................................. 89
図 4.1.1
日本の石炭輸入量の推移 ....................................................................................................... 89
図 4.1.2
2014 年の日本の主な石炭輸入相手国とシェア .................................................................. 90
図 4.1.3
2013 年のインドネシアのエネルギー輸出入額と石炭 ...................................................... 91
図 4.2.1
炭種別のインドネシアの石炭輸出量 ................................................................................... 92
図 4.2.2
輸出炭の炭種別構成比の比較 ............................................................................................... 93
図 4.2.3
インドネシア炭の主な輸出先 ............................................................................................... 94
図 4.2.4
2013 年のインドネシアの瀝青炭の輸出相手国と輸出比率 .............................................. 96
図 4.2.5
インドネシアの瀝青炭の主な輸出相手国と輸出量の推移 ............................................... 97
図 4.2.6
2013 年のインドネシア産亜瀝青炭の仕向地別輸出割合 .................................................. 99
図 4.2.7
インドネシアの亜瀝青炭輸出量の仕向け地別推移 ........................................................... 99
図 4.2.8
PLN の石炭購入平均価格と輸出平均価格の比較............................................................. 102
図 4.3.1
露天掘り炭鉱の石炭採掘~船積みまでのフローチャート ............................................. 105
図 4.3.2
HBA と代表的な HPB(8 種類)の推移(2009 年 1 月~2014 年 11 月) .................... 116
第 5 章 石炭輸送インフラ整備状況 .................................................................................................... 120
図 5.1.1
インドネシアの石炭輸送フロー図 ..................................................................................... 121
図 5.1.2
カリマンタン島における石炭積出港建設の候補地・港 ................................................. 125
図 5.1.3
スマトラ島における石炭積出港建設の候補地・港 ......................................................... 129
図 5.1.4
スマトラの既設鉄道の走行ルート ..................................................................................... 132
図 5.1.5
タンジュン・エニム炭鉱の鉄道輸送状況および建設計画 ............................................. 134
図 5.1.6
タンジュン・エニム炭鉱の鉄道輸送状況および建設計画の詳細図 ............................. 134
図 5.3.1
インドネシアにおける輸送手段別コストの比較 ............................................................. 138
図 5.3.2
国別の一般炭輸出コストの比較 ......................................................................................... 138
図 5.3.3
国別の石炭生産コストの比較 ............................................................................................. 139
VI
第Ⅱ部 エネルギー・石炭に関連する各種の政策 ............................................................................ 145
第 7 章 新鉱業法およびその他の関連法規 ........................................................................................ 150
図 7.3.1
インドネシアの鉱業地域と事業許可 ................................................................................. 159
第 9 章 新大統領の下でのエネルギー・石炭政策の展望 ................................................................ 180
図 9.2.1
燃料補助金と「社会的移転」の対 GDP 比(インドネシアと 9 ヵ国) ....................... 190
図 9.3.1
国民議会(DPR)の議席配分 ............................................................................................. 196
第Ⅲ部 石炭の需給および輸出の見通し ............................................................................................ 200
第 10 章 インドネシア政府の最新のエネルギー需給見通し .......................................................... 200
図 10.2.1 エネルギー源別の最終消費に関する予測 ......................................................................... 201
図 10.2.2 部門別の最終エネルギー消費に関する予測 ..................................................................... 203
図 10.3.1 発電設備容量に関する予測 ................................................................................................. 207
図 10.3.2 発電分野のエネルギー源別の消費に関する予測 ............................................................. 208
図 10.4.1 一次エネルギー消費に関する予測 ..................................................................................... 210
図 10.4.2 石炭の国内生産、純輸出入に関する予測 ......................................................................... 213
第 11 章 高品位炭の輸出動向に関する予測 ...................................................................................... 214
図 11.1.1
2013 年時点の主な高品位炭生産企業・炭鉱の分布 ...................................................... 217
VII
表
目
次
第 I 部 石炭の資源賦存量、開発、需給ならびに輸送インフラの現状 ............................................ 1
第 1 章 石炭の資源賦存量 ........................................................................................................................ 1
表 1.1.1
島嶼別の石炭資源量および埋蔵量(2013 年 1 月 1 日時点) ............................................ 8
表 1.2.1
発熱量別、地域別、精度別の石炭の資源量と埋蔵量(2013 年) .................................... 9
表 1.2.2
州別の石炭の資源量および埋蔵量(2013 年 1 月 1 日時点) .......................................... 10
表 1.2.3
インドネシアの発熱量別・州別・精度別の資源量と埋蔵量(2013 年末)1/2 ............. 12
表 1.2.3
インドネシアの発熱量別・州別・精度別の資源量と埋蔵量(2013 年末)2/2 ............. 13
第 2 章 炭鉱開発の現状 .......................................................................................................................... 14
表 2.1.1
インドネシアの主な高品位炭の生産企業・炭鉱 1/2 ...................................................... 15
表 2.1.1
インドネシアの主な高品位炭の生産企業・炭鉱 2/2 ...................................................... 17
表 2.1.2
BBM Project の石炭性状 ......................................................................................................... 20
表 2.1.3
Bayan Resources 傘下の石炭生産企業と関連データ........................................................... 22
表 2.2.1
2013 年のインドネシアの石炭生産量上位 10 社と近年の生産量 .................................... 29
表 2.2.2
2013 年生産量トップ 10 社の販売量に占める輸出割合 .................................................... 29
表 2.2.3
2013 年インドネシア石炭生産量トップ 10 社の主要データ ............................................ 33
表 2.2.4
KPC の資本構成 ...................................................................................................................... 35
表 2.2.5
KPC の石炭ブランドと石炭性状 .......................................................................................... 36
表 2.2.6
KPC の石炭の生産量と販売量(国内、輸出) .................................................................. 36
表 2.2.7
AI の資本構成 .......................................................................................................................... 37
表 2.2.8
AI の Envirocoal(E5000、E4700、E4000)の石炭性状 .................................................... 38
表 2.2.9
AI の石炭の生産量と販売量(国内、輸出) ...................................................................... 39
表 2.2.10 Kideko の資本構成 .................................................................................................................. 40
表 2.2.11 Kideco の石炭性状(オーストラリア炭との比較、鉱区別の石炭性状) ....................... 41
表 2.2.12 Kideko の石炭の生産量と販売量(国内、輸出) .............................................................. 41
表 2.2.13 Arutmin Indonesia の資本構成 ................................................................................................ 42
表 2.2.14 Arutmin の石炭性状 ................................................................................................................ 42
表 2.2.15 Arutmin の石炭の生産量と販売量(国内、輸出)............................................................. 43
表 2.2.16 Berau Coal の資本構成 ............................................................................................................ 44
表 2.2.17 Berau Coal の生産量と販売量(国内、輸出) .................................................................... 45
表 2.2.18 Indominco Mandiri の資本構成 ............................................................................................... 46
表 2.2.19 Indominco Mandiri の生産量と販売量(国内、輸出) ....................................................... 46
表 2.2.20 PTBA の資本構成 .................................................................................................................... 47
表 2.2.21 PTBA の石炭ブランドと石炭性状 ........................................................................................ 48
表 2.2.22 PTBA の生産量と販売量 ........................................................................................................ 48
表 2.2.23 MSJ の資本構成....................................................................................................................... 49
表 2.2.24 MSJ の石炭生産量と販売量(国内、輸出) ....................................................................... 49
VIII
表 2.2.25 JMB の資本構成 ...................................................................................................................... 50
表 2.2.26 Jembayan 炭鉱と Sebuku 炭鉱の石炭性状 ............................................................................ 50
表 2.2.27 Jembayan 炭鉱と Sebuku 炭鉱の石炭の生産量と販売量 .................................................... 51
表 2.2.28 Trubaindo Coal Mining の資本構成 ........................................................................................ 51
表 2.2.29 PT Trubaindo Coal Mining(TCM)の石炭性状 ................................................................... 52
表 2.2.30 Trubaindo Coal Mining の石炭生産量と販売量(国内、輸出) ........................................ 52
表 2.3.1
インドネシアの主要石炭生産企業と外資の出資状況 ....................................................... 54
表 2.3.2
その他の外資の採掘鉱区の例 ............................................................................................... 55
表 2.3.3
インドネシアにおける外資系企業による石炭探査プロジェクトの例 ........................... 58
第 3 章 石炭需給動向 .............................................................................................................................. 59
表 3.1.1
インドネシアの主な対外輸出品(単位:百万ドル) ....................................................... 61
表 3.2.1
2000 年以降の一次エネルギー消費と年平均増加率 .......................................................... 63
表 3.2.2
インドネシアの一次エネルギー生産量とエネルギー源別構成比 ................................... 64
表 3.2.3
インドネシアのエネルギー輸出量と輸入量 ....................................................................... 66
表 3.2.4
インドネシアのエネルギー源別の最終消費と構成比 ....................................................... 68
表 3.2.5
一次エネルギーに占める最終エネルギー消費の比率 ....................................................... 69
表 3.2.6
分野別の最終エネルギー消費と構成比率 ........................................................................... 69
表 3.2.7
工業部門のエネルギー源別の消費量 ................................................................................... 70
表 3.2.8
輸送部門のエネルギー源別の消費量 ................................................................................... 71
表 3.2.9
家庭部門のエネルギー源別の消費量 ................................................................................... 71
表 3.2.10 商業部門のエネルギー源別の消費量 ................................................................................... 72
表 3.2.11 その他部門のエネルギー源別の消費量 ............................................................................... 72
表 3.2.12 2013 年のエネルギー需給簡易バランス表 .......................................................................... 73
表 3.2.13 2013 年のエネルギーバランス表 .......................................................................................... 74
表 3.3.1
エネルギー源別発電電力量(GWh) .................................................................................. 77
表 3.3.2
インドネシアの発電設備容量と構成比率 ........................................................................... 78
表 3.3.3
発電用燃料の消費量 ............................................................................................................... 78
表 3.3.4
発電用エネルギー消費原単位 ............................................................................................... 79
表 3.4.1
インドネシアの石炭生産量の推移(万トン) ................................................................... 80
表 3.4.2
分野別の石炭消費量(万トン) ........................................................................................... 81
表 3.4.3
国内供給義務(DMO)による産業別の石炭消費(単位:百万トン) .......................... 82
表 3.4.4
統計の誤差(万トン) ........................................................................................................... 83
表 3.4.5
インドネシアの石炭生産、消費、純輸出と誤差(万トン) ........................................... 83
表 3.4.6
発電部門の石炭消費 ............................................................................................................... 84
表 3.4.7
インドネシアのセメント生産能力、生産と消費動向 ....................................................... 85
表 3.4.8
石炭生産地別の石炭国内販売量 ........................................................................................... 87
表 3.4.9
地域別の石炭生産量 ............................................................................................................... 88
IX
第 4 章 石炭輸出動向 .............................................................................................................................. 89
表 4.2.1
年別、炭種別の石炭輸出 ....................................................................................................... 93
表 4.2.2
インドネシアの石炭輸出量上位 20 ヵ国・地域の推移(2000~2013 年) .................... 95
表 4.2.3
仕向地別の瀝青炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB) .............................................. 97
表 4.2.4
2013 年のインドネシアの原料炭と一般炭の輸出量と FOB 価格..................................... 98
表 4.2.5
仕向地別の亜瀝青炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB) ........................................ 100
表 4.2.6
仕向地別のインドネシア褐炭の輸出量 ............................................................................. 100
表 4.2.7
仕向地別の褐炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB) ................................................ 101
表 4.2.8
無煙炭の輸出先と年平均価格(FOB) ............................................................................. 101
表 4.2.9
インドネシアの州別の石炭輸出量 ..................................................................................... 103
表 4.2.10 各仕向地の輸入統計とインドネシアの輸出統計の差(2013 年) ................................ 104
表 4.3.1
炭鉱開発・生産関連コストの分類 ..................................................................................... 106
表 4.3.2
2012 年の東カリマンタン州における露天掘り炭鉱開発の単位数値と関連コスト .... 107
表 4.3.3
東カリマンタン州 A 社の操業コストの内訳(2012 年) ............................................... 108
表 4.3.4
東カリマンタン州 B 社の操業コストの内訳(2011 年) ................................................ 109
表 4.3.5
2014 年における C 社の石炭生産コストの構成................................................................ 109
表 4.3.6
インドネシアの石炭輸出価格(FOB)の内訳(2010 年)............................................. 110
表 4.3.7
2010 年の石炭 FOB 価格における平均コストと石炭生産企業 3 社の生産コスト ....... 110
表 4.3.8
剝土比と生産コスト、減価償却費、ロイヤルティ、地方税の関係 ............................. 111
表 4.3.9
インドネシアの石炭ロイヤルティ(IUP 鉱業許可) ...................................................... 112
表 4.3.10 2014 年 11 月 1~30 日の HBA と HPB ............................................................................... 114
第 5 章 石炭輸送インフラ整備状況 .................................................................................................... 120
表 5.1.1 カリマンタン島沿海部の主な石炭ターミナルと取扱能力 ............................................... 124
表 5.1.2 カリマンタン島各州政府の道路使用制限に関する法令 ................................................... 126
表 5.1.3 東カリマンタン州の公道建設状況 ....................................................................................... 126
表 5.1.4 カリマンタン島の石炭輸送鉄道建設計画 ........................................................................... 127
表 5.1.5 スマトラ島の主な沿岸石炭ターミナルの設備状況 ........................................................... 128
表 5.1.6 PT. Bukit Asam の港拡張計画................................................................................................. 128
表 5.1.7 スマトラ島の鉄道による石炭輸送ルートの概要 ............................................................... 133
表 5.1.8 スマトラ島の鉄道による石炭輸送計画 ............................................................................... 133
表 5.2.1 インドネシアの石炭輸送の長所、短所 ............................................................................... 137
表 5.3.1 港湾のサービス費用 ............................................................................................................... 142
表 5.3.2 鉄道会社(PT. KAI)とブキット・アサム社の鉄道輸送契約 .......................................... 144
第Ⅱ部 エネルギー・石炭に関連する各種の政策 ............................................................................ 145
第 6 章 エネルギー政策および石炭政策 ............................................................................................ 145
表 6.1.1 インドネシアの「最適な 1 次エネルギー構成比」の見通し ........................................... 146
表 6.1.2 発電設備の見通し ................................................................................................................... 148
X
表 6.1.3 BATAN による原子力発電の規模の見通し ......................................................................... 148
第 7 章 新鉱業法およびその他の関連法規 ........................................................................................ 150
表 7.3.1 予測生産量と国内供給義務量 ............................................................................................... 167
表 7.3.2 国内供給義務量の部門別割当量 ........................................................................................... 167
第Ⅲ部 石炭の需給および輸出の見通し ............................................................................................ 200
第 10 章 インドネシア政府の最新のエネルギー需給見通し .......................................................... 200
表 10.1.1 インドネシア政府による将来予測の前提条件 ................................................................. 200
表 10.2.1 エネルギー源別の最終消費とその構成比率に関する予測 ............................................. 202
表 10.2.2 部門別の最終エネルギー消費とその構成比に関する予測 ............................................. 203
表 10.2.3 工業部門のエネルギー源別の需要とその構成比率に関する予測 ................................. 204
表 10.2.4 工業部門以外の部門別、エネルギー源別の需要とその構成比に関する予測 ............. 205
表 10.3.1 発電電力量の予測 ................................................................................................................. 206
表 10.3.2 発電設備容量のエネルギー源別予測 ................................................................................. 207
表 10.3.3 発電分野のエネルギー消費に関する予測 ......................................................................... 208
表 10.4.1 一次エネルギー消費に関する予測 ..................................................................................... 209
表 10.4.2 一次エネルギー供給に関する予測(BAU シナリオ) .................................................... 211
表 10.4.3 一次エネルギー供給に関する予測(KEN シナリオ) .................................................... 212
第 11 章 高品位炭の輸出動向に関する予測 ...................................................................................... 214
表 11.1.1 石炭資源量、確認埋蔵量に占める高品位炭の比率 ......................................................... 215
表 11.1.2 高品位炭生産企業と生産量 ................................................................................................. 216
XI
XII
第 I 部 石炭の資源賦存量、開発、需給ならびに輸送インフラの現状
第 1 章 石炭の資源賦存量
1.1
インドネシアの地質概況・石炭資源量とその分布
1.1.1 地質概況
インドネシアには 11 ヵ所の炭田があり、主にスマトラ島とカリマンタン島に分布している。ス
マトラ島には、中央スマトラ炭田(Ache(アチェ)炭田を含む)、Ombilin(オンビリン)炭田、
南スマトラ炭田、Bengkulu(ブンクル)炭田がある。カリマンタン島には、北 Tarakan(タラカン)
炭田、Kutai(クタイ)炭田、Barito(バリト)炭田、Pasir and Asem Asem(パシル及びアセム・ア
セム)炭田、Berau(ベラウ)炭田がある。また、ジャワ島には、Jatibaran(ジャティバラン)炭
田が、スラウェシ島には、南西スラウェシ炭田がある。
(図 1.1.1 参照)
インドネシアの地質時代は、古生代の石炭紀‐ペルム紀から新生代の古第三紀と新第三紀まで、
多様である。石炭鉱床を経済的に開発できる地層は、主にスマトラ島とカリマンタン島の第三紀
層に分布している。スラウェシ島とジャワ島には、小規模鉱床が多数存在する。古第三紀の始新
世に分布する石炭は、一部は陸地内の盆地に堆積した非海成層に賦存するが、分布が限られてい
る。しかしこの地質時代に分布する石炭鉱床は、一般に炭化度が大きく上昇している。この始新
世に属する炭田としては、オンビリン炭田、ブンクル炭田および北タラカン炭田がある。南スマ
トラ炭田およびクタイ炭田には、新第三紀に属する石炭鉱床が海成堆積層中に広く分布している。
これらの石炭は水分を多く含む褐炭である。地域によっては、火成岩貫入の影響により局所的に
炭化度が上昇し、瀝青炭から無煙炭あるいは天然コークスまで幅広く分布する場合がある。
(出所)エネルギー鉱物資源省(MEMR)
図 1.1.1 インドネシアの炭田分布
-1-
(1) 東カリマンタン地域の炭田分布
前述のように、東カリマンタン地域には、主にクタイ炭田、ベラウ炭田、北タラカン炭田の 3
つの石炭鉱床が分布している。ベラウ炭田と北タラカン炭田(北半分)は、東カリマンタン州か
ら分割され、北カリマンタン州6に属すようになった。図 1.1.2 に示すように、この地域の石炭資
源は主に新第三紀と古第三紀の地質時代の地層に分布している。マレーシアのサラワク州との境
には、一部前第三紀の地質時代の地層も分布している。北タラカン炭田は、陸地内の盆地に堆積
した非海成層で、石炭鉱床の一部はマレーシアのサバ州まで延伸している。クタイ炭田では、新
第三紀に属する石炭鉱床が海成堆積層中に広く分布しており、東カリマンタン州の石炭生産は主
にこの地層に集中している。
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.2 東カリマンタン州と北カリマンタン州の地質および炭鉱分布
6
2012 年 10 月、国民協議会で東カリマンタン州分割方案が可決され、北部の 4 県および 1 市を北カリマンタン州
として新自治体とすることとなった。州政府の設置は 2013 年に行い、2014 年末に州議会が設立され、2015 年に
州知事選を実施する予定である。分離後の東カリマンタン州は、従来の 24.5 万平方キロメートルから 7.1 万平方
キロメートル減り、州面積は 29.0%減少した。北カリマンタン州は、インドネシアの第 34 番目の州となり、2013
年末時点の人口は 73.8 万人で、主に原住民から形成されている。4 つの県(マリナウ県、タンジュン・セロル県、
ティデン・パレ県、ヌヌカン県)は、オランダ植民地になる以前は 4 つの王国であったが、植民地化される過程
で吸収された。タラカン島は、タラカン市として北カリマンタン州の中に取り込まれている。
-2-
(2) 南カリマンタン州の炭田分布
南カリマンタン州は、バリト炭田とパシルとアセム・アセム炭田の 2 つ炭田が左右に分かれて、
北部から南部まで延伸した地質構造を形成している。現在開発が進められている炭鉱の多くは、
バリト炭田に位置し、新第三紀に属する地層である。インドネシアの石炭生産大手、PT Adaro
Indonesia(アダロ社)の傘下炭鉱は南カリマンタン州にある。この地層は新第三紀に属する石炭
鉱床が海成堆積層であるため、
石炭埋蔵量の 64%は発熱量 5,100~6,100 kcal/kg の中品位炭である。
2013 年 1 月時点のインドネシア地質局の評価によると、南カリマンタン州の石炭埋蔵量は 36 億
1,000 万トンである。
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.3 南カリマンタン州の地質および炭鉱分布
(3) 中央カリマンタン州の炭田分布
バリト炭田は、主に中央カリマンタン州に分布しており、南部の沿海部は新第三紀の地質時代
が広がっており、北部は古第三紀が分布している。石炭鉱床は海成堆積層であるため、炭層の炭
化度が比較的に低く、水分が多い低品炭~中品位炭層である。沿海地域は多くの泥炭地が分布し
ており、炭鉱の開発は北部の炭田で進められている。しかし、北部の古第三紀では、発熱量 6,100
kcal/kg 以上の高品位石炭の埋蔵量は 5 億 4,000 万トンと評価されている。
-3-
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.4 中央カリマンタン州の地質および炭鉱分布
(4) リアウ州とジャンビ州の炭田分布
オンビリン炭田は、主にリアウ州に位置している。オンビリン炭田の石炭鉱床の多くは内陸地
域に分布しており、始新世に形成されている。リアウ州の場合は確認されている埋蔵量のほとん
どが発熱量 5,100 kcal/kg 以下の低品位炭である。2013 年時点では、年産約 70 万トン規模の石炭
生産企業、PT Riau Bara Haram が採掘している他、小規模な炭鉱会社が生産活動を行っている。
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.5 リアウ州の地質および炭鉱分布
-4-
(5) 南スマトラ地域の炭田分布
南スマトラ炭田は、ジャンビ州と南スマトラ州に跨って広がっている。石炭鉱床は主に新第三
紀の地質時代の地層に分布しており、海成堆積層で形成されており、主に低品位の褐炭が形成さ
れている。炭田の沿海に沿って多くの泥炭地が分布している。炭鉱開発の多くは、南スマトラ州
の Tanjung Enim(タンジュン・エニム)炭鉱の周辺地域で行われており、国営石炭公社の PT Bukit
Asam(ブキット・アッサム)がこの鉱区の代表的な石炭生産企業である。
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.6 ジャンビ州の地質および炭鉱分布
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.7 南スマトラ州の地質および炭鉱分布
-5-
(6) ブンクル炭田
ブンクル炭田は、古第三紀の始新世の陸地内の盆地に堆積した非海成層で形成されている。こ
の地域の炭層は炭化度が比較的高く、インドネシアの地質局の評価によると、発熱量 6,100~7,100
kcal/kg の石炭埋蔵量は 1,516 万トンある。しかし、全体資源量は 1 億 9,200 万トンと評価されて
おり、それほど高くない。
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.8 ブンクル州の地質および炭鉱分布
(7) 南西スラウェシ炭田
南スラウェシ州に分布している古第三紀の地質年代には、石炭鉱床が存在することが確認され
ている。インドネシア地質局によると、石炭資源量は 2 億 3,000 万トンで、そのほとんどは発熱
量 5,000 kcal/kg 前後の低品位炭である。同地質局によると、可採埋蔵量は 6 万トン程度で、現状
では小炭鉱が生産を行っており、年生産量はわずか 2,000 トン前後である。
-6-
(出所)インドネシア地質局
図 1.1.9 南スラウェシ州の地質および炭鉱分布
1.1.2 石炭資源量と埋蔵量
インドネシアの石炭埋蔵量は、探査の進行や新しい炭層の発見に伴い、増え続けている。2013
年のインドネシア地質局の発表によると、インドネシアの石炭資源量は合計 1,205 億トンで、う
ち、埋蔵量は 313 億 6,000 万トンに達している。埋蔵量のうち、確認埋蔵量は約 90 億トンで、埋
蔵量全体の 28.4%を占めており、推定埋蔵量は 224 億 6,000 万トンで、埋蔵量全体の 71.6%を占め
る。また、2013 年の石炭生産量(3.8 億トン7~4.5 億トン8)を基に算出した可採年数(R/P)は 70
~82 年である。
一方、2000~2013 年のインドネシア地質局の発表資料9によると、同期間の石炭資源量は 389
億トンから年平均 9.1%のペースで増加し、1,205 億トンであると評価された。同期間の埋蔵量に
関する評価も同年平均 14.5%増のペースで増えており、2013 年は 314 億トンと評価された(図
1.1.10 参照)。インドネシア石炭鉱業協会は、今後、石炭資源量はさらに増え続けると見ており、
インドネシア政府が国内供給不足を懸念するには及ばないと考えており、DMO の実施を必ずしも
7
BPS-Statistics Indonesia 「Statistical yearbook of Indonesia 2014」
エネルギー鉱物資源省「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2014」
9
インドネシア地質局は、毎年 1 月 1 日時点の石炭資源量の評価を発表している。この評価結果は、エネルギー鉱
物資源省が毎年出版する「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia」に記載される。
8
-7-
歓迎していない10。また、石炭の資源量および埋蔵量は、探査活動によって今後も増えるだろうが、
炭鉱開発の急拡大により、可採年数が減少し、資源の枯渇が早まる可能性があると指摘する。中
央政府のエネルギー政策策定部門は、この点に注目しており、純輸入国に転じた石油資源の二の
舞になることを危惧し、資源の持続可能な開発という視点が今後の石炭政策に盛り込まれる可能
性が高い。
(億トン)
1,400
埋蔵量
資源量
可採年数(R/P)
1,203
1,200
97
1,048
86
905
800
53
600
200
100
79
70
934
73
634
1,205
1,052
1,000
400
1,194
(年)
120
75
70
80
77
60
578
46
389
54
70
70
2000
2004
2005
187
187
188
211
2006
2007
2009
2010
290
280
314
40
20
0
0
2011
2012
2013
(注)上記データは、インドネシア地質局が発表する毎年 1 月 1 日時点の石炭資源評価。
(出所)インドネシア地質局「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia」各年版より作成
図 1.1.10 インドネシアの石炭資源量および埋蔵量の評価推移(2000~2013 年)
一方、石炭資源の分布状況をみると、表 1.1.1 に示すように、石炭埋蔵量は主にスマトラ島(132
億 9,000 万トン)とカリマンタン島(180 億 6,000 万トン)に分布しており、それぞれインドネシ
ア全体の 42.4%と 57.6%を占める。ジャワ島、スラウェシ島、マルク諸島とニューギニア島(パプ
ア)は、石炭資源の分布が確認されているものの、埋蔵量として評価されている石炭鉱床は西ジ
ャワのジャティバラン炭田と南西スラウェシ炭田だけである。
表 1.1.1 島嶼別の石炭資源量および埋蔵量(2013 年 1 月 1 日時点)
島別
ジャワ島
資源量
(億トン)
比率
(%)
埋蔵量
(億トン)
比率
(%)
0.2
0.0
0.0
0.0
スマトラ島
559.0
46.4
132.9
42.4
カリマンタン島
642.4
53.3
180.6
57.6
スラウェシ島
2.3
0.2
0.0
0.0
マルク諸島
0.1
0.0
0.0
0.0
パプア
1.3
0.1
0.0
0.0
1,205.3
100.0
313.6
100.0
合計
(出所)インドネシア地質局「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2014」より作成
10
インドネシア石炭協会へのヒアリングによる。
-8-
1.2 発熱量別・州別・精度別の石炭の資源量と埋蔵量
インドネシアの Ministry of Energy and Mineral Resources(MEMR)(以下、エネルギー鉱物資源
省または MEMR とする)の統計によると、2013 年末時点の石炭資源量(Coal Resource)は 1,205
億トンで、うち高品位炭は石炭資源量全体の 4.5%を占める。なお、インドネシアでは未探査地域
が多くあるため、今後の探査の進展に伴い、石炭の資源量や埋蔵量が更に増加すると見られてい
る。ただ、石炭埋蔵量に占める高品質炭の割合が大きく変化する可能性は薄く、インドネシア政
府は、国内での低品位炭利用や炭質改良に関する政策を打ち出している。
地域別の石炭の賦存分布状況(石炭埋蔵量)を見ると、カリマンタン島は 180 億 6,229 万トン
で、インドネシア全体の 57.6%を占める。スマトラ島は 132 億 9,543 万トンで、全体の 42.4%を占
める。その他の地域の石炭埋蔵量はわずかである。また、発熱量 6,100 kcal/kg 以上の高品位炭の
分布状況を見ると、カリマンタン島の埋蔵量は 14 億 3,787 万トンで、インドネシア全体(17.4 億
トン)の 82.4%を占めており、スマトラ島は 3 億 614 万トンで、インドネシア全体の 17.6%を占め
る。
表 1.2.1 発熱量別、地域別、精度別の石炭の資源量と埋蔵量(2013 年)
(単位:百万トン)
資源量
州
熱量 (kcal/kg)
スマトラ島
5,100 以下
埋蔵量
仮定
13,134.60
予想
14,228.87
推定
16,401.19
確定
12,134.89
合計
55,899.54
推定
10,193.91
確認
3,101.52
合計
13,295.43
1,743.00
6,093.20
8,476.97
9,079.49
25,392.65
4,844.72
2,530.78
7,375.50
5,100 ~ 6,100
11,378.30
7,987.26
7,580.33
2,638.53
29,584.42
5,270.98
342.81
5,613.79
6,100 ~ 7,100
13.30
148.41
343.57
416.50
921.78
78.21
227.24
305.45
7,100 以上
0.00
0.00
0.32
0.37
0.69
0.00
0.69
0.69
ジャワ島
5,100 以下
7.53
484.34
11.71
7.42
511.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.90
0.00
0.00
0.90
0.00
0.00
0.00
5,100 ~ 6,100
5.47
2.78
4.81
2.67
15.73
0.00
0.00
0.00
6,100 ~ 7,100
0.00
376.66
5.58
3.27
385.51
0.00
0.00
0.00
7,100 以上
2.06
104.00
1.32
1.48
108.86
0.00
0.00
0.00
6,314.07
17,280.93
12,896.23
27,254.33
63,745.55
12,267.92
5,794.37
18,062.29
0.30
2,007.54
1,623.42
1,539.43
5,170.70
875.68
1,229.59
2,105.27
5,100 ~ 6,100
5,468.34
11,867.22
9,345.68
21,859.39
48,540.62
10,881.26
3,637.89
14,519.15
6,100 ~ 7,100
833.88
2,392.67
1,602.80
3,396.98
8,226.32
418.98
763.29
1,182.27
7,100 以上
11.55
1,013.50
324.33
458.53
1,807.91
92.00
163.60
255.60
その他
5,100 以下
101.26
85.77
129.22
53.09
459.43
0.06
0.06
0.12
カリマンタン島
5,100 以下
0.91
1.98
0.00
0.00
92.98
0.00
0.00
0.00
5,100 ~ 6,100
92.84
38.98
128.44
53.09
313.35
0.06
0.06
0.12
6,100 ~ 7,100
7.51
19.28
0.78
0.00
27.57
0.00
0.00
0.00
7,100 以上
0.00
25.53
0.00
0.00
25.53
0.00
0.00
0.00
19,557.46
32,079.91
29,438.35
39,449.73
120,615.52
22,461.89
8,895.95
31,357.84
1,744.21
8,103.62
10,100.39
10,618.92
30,657.23
5,720.40
3,760.37
9,480.77
5,100 ~ 6,100
16,944.95
19,896.24
17,059.26
24,553.68
78,454.12
16,152.30
3,980.76
20,133.06
6,100 ~ 7,100
854.69
2,937.02
1,952.73
3,816.75
9,561.18
497.19
990.53
1,487.72
13.61
1,143.03
325.97
460.38
1,942.99
92.00
164.29
256.29
インドネシア
5,100 以下
7,100 以上
(出所)Geological Agency of Indonesia, Indonesian Coal Book 2014/2015
-9-
次に州別の石炭賦存状況を見ると、石炭の資源量と埋蔵量の大半が南スマトラ州と東カリマン
タン州に集中している。特に、東カリマンタン州の埋蔵量は 140.2 億トンに達しており、2013 年
のインドネシア全体の埋蔵量に占める割合は 44.7%でトップである。次いで多いのは南スマトラ
州の埋蔵量 121.0 億トンで、インドネシア全体の埋蔵量に占める割合は 38.6%である。3 番目に多
いのが南カリマンタン州の 34.9 億トンである。石炭資源量に対する評価は、埋蔵量と同様、その
他の州に比べて、上記 3 州が圧倒的に多い。
表 1.2.2 州別の石炭の資源量および埋蔵量(2013 年 1 月 1 日時点)
資源量(百万トン)
州別
バンテン
西ジャワ
中央ジャワ
東ジャワ
アチェ
北スマトラ
リアウ
西スマトラ
ブンクル
ジャンビ
南スマトラ
ランプン
西カリマンタン
中央カリマンタン
南カリマンタン
東カリマンタン
南スラウェシ
中央スラウェシ
北マルク
西イリアンジャヤ
パプア
合計
埋蔵量
(百万トン)
仮定
予想
推定
確定
合計
5.47
0.00
0.00
0.00
0.00
0.25
12.79
20.41
0.00
691.27
12,409.88
0.00
2.06
197.58
0.00
6,116.48
0.00
0.00
6.69
93.66
0.91
5.75
0.00
0.82
0.08
346.35
7.00
243.14
294.50
2.12
865.19
12,363.62
106.95
477.69
1,817.76
4,312.41
11,150.76
48.81
1.98
0.00
32.82
2.16
4.86
0.00
0.00
0.00
13.89
0.00
643.83
231.16
118.81
452.99
14,940.51
0.00
6.85
749.88
3,616.65
8,529.69
129.22
0.00
0.00
0.00
0.00
2.72
0.00
0.00
0.00
90.40
19.97
901.75
249.45
71.14
213.97
10,587.26
0.94
4.70
990.56
4,658.23
21,605.53
53.09
0.00
0.00
0.00
0.00
18.80
0.00
0.82
0.08
450.64
27.22
1,801.51
795.52
192.07
2,223.42
50,301.27
107.89
491.30
3,755.78
12,587.29
47,402.46
231.12
1.98
6.69
126.48
3.07
0.00
4.00
0.00
0.00
0.00
0.00
689.23
158.43
18.95
323.89
12,104.24
0.00
0.00
559.05
3,488.02
14,015.22
0.12
0.00
0.00
0.00
0.00
19,557.45
32,079.91
29,438.34
39,449.71
120,525.41
31,361.15
(出所)インドネシア地質局「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2014」より作成
一方、石炭の発熱量で見ると、2013 年 1 月時点の石炭埋蔵量のうち、発熱量 5,100~6,100 kcal/kg
の石炭は全体の 64.2%である。6,100 kcal/kg 以上の高品位石炭埋蔵量は全体のわずか 5.6%である。
同年の石炭資源量も基本的に埋蔵量と同じ傾向であるが、6,100 kcal/kg 以上の石炭資源量が全体
の 9.5%で、埋蔵量より 4 ポイント高い。
- 10 -
6,100 ~
7,100
8%
5,100 ~
6,100
65%
資源量
6,100 ~
7,100
5%
7,100以上
2%
7,100以上
1%
5,100 ~
6,100
64%
5,100以下
25%
埋蔵量
5,100以下
30%
(出所)Geological Agency of Indonesia, Indonesian Coal Book 2014/2015
図 1.2.1 インドネシアの発熱量別の石炭賦存状況
2013 年時点のインドネシアの石炭資源について、インドネシア地質局の 2013 年 1 月 1 日の評
価(表 1.2.3)に基づき、下記の通り特徴をまとめた。

石炭資源の探査・開発に伴い、石炭の資源量および埋蔵量は今後も増加し続ける。石炭の資
源量および埋蔵量は、それぞれ 1,205 億トンと 314 億トンと評価されており、可採年数(R/P)
は 70~82 年である。

石炭資源の分布は、新第三紀に属する石炭鉱床に広がっており、鉱床は海成堆積層に形成さ
れており、石炭の炭化度が比較的低く、水分を多く含む褐炭や亜瀝青炭が多く分布する。

石炭可採埋蔵量のうち、発熱量 5,100~6,100 kcal/kg の石炭は全体の 64.1%、5,100 kcal/kg 以下
の石炭は 30.2%を占める。6,100 kcal/kg 以上の石炭はわずか 5.6%である。

石炭可採埋蔵量は、主に東カリマンタン州(140.2 億トン)と南スマトラ州(121.0 億トン)
に集中している。インドネシア全体の可採埋蔵量に占める両州の割合は、それぞれ 44.7%と
38.6%である。
- 11 -
表 1.2.3 インドネシアの発熱量別・州別・精度別の資源量と埋蔵量(2013 年末)1/2
資源量(百万トン)
州
熱量 (kcal/kg)
アチェ
<5,100
5,100-6,100
北スマトラ
<5,100
5,100-6,100
リアウ
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
西スマトラ
5,100-6,100
6,100-7,100
ジャンビ
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
ブンクル
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
>7,100
南スマトラ
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
ランブン
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
バンテン
5,100-6,100
6,100-7,100
中央ジャワ
<5,100
東ジャワ
<5,100
西ジャワ
6,100-7,100
>7,100
仮定
0.00
0.00
0.00
0.25
0.25
0.00
12.79
0.00
0.00
12.79
20.41
19.90
0.51
691.27
48.88
642.39
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
12,409.88
1,693.87
10,716.01
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
5.47
5.47
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2.06
0.00
2.06
予想
346.35
20.92
325.43
7.00
0.00
7.00
243.14
106.35
115.80
20.99
294.50
284.36
10.14
865.19
125.12
717.86
22.21
2.12
0.00
0.00
2.12
0.00
12,363.62
5,840.81
6,522.81
0.00
106.95
0.00
14.00
92.95
5.75
2.78
2.97
0.82
0.82
0.08
0.08
477.69
373.69
104.00
推定
13.89
7.19
6.70
0.00
0.00
0.00
643.83
590.70
20.11
33.02
231.16
46.49
184.67
452.99
0.00
433.45
19.54
118.81
11.34
0.81
106.34
0.32
14,940.51
7,867.74
7,072.77
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
4.86
4.81
0.05
0.00
0.00
0.00
0.00
6.85
5.53
1.32
確定
90.40
64.14
26.26
19.97
19.97
0.00
901.75
836.46
14.81
50.48
249.45
22.97
226.48
213.97
0.00
200.35
13.62
71.14
10.58
5.86
54.33
0.37
10,587.27
8,147.40
2,368.28
71.59
0.94
0.94
0.00
0.00
2.72
2.67
0.05
0.00
0.00
0.00
0.00
4.70
3.22
1.48
- 12 -
埋蔵量(百万トン)
合計
450.64
92.25
358.39
27.22
20.22
7.00
1,801.51
1,533.51
150.72
117.28
795.52
373.72
421.80
2,223.42
174.00
1,994.05
55.37
192.07
21.92
6.67
162.79
0.69
50,301.27
23,549.81
26,679.87
71.59
107.89
0.94
14.00
92.95
18.80
15.73
3.07
0.82
0.82
0.08
0.08
491.30
382.44
108.86
推定
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
54.50
32.66
12.25
9.59
0.00
0.00
0.00
174.85
0.00
167.19
7.66
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
9,964.56
4,812.06
5,091.54
60.96
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
確認
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
634.73
587.82
13.95
32.96
158.43
2.83
155.60
149.04
0.00
125.52
23.52
18.95
0.00
3.79
15.16
0.69
2,139.68
1,942.96
196.72
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
合計
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
689.23
620.48
26.20
42.55
158.43
2.83
155.60
323.89
0.00
292.71
31.18
18.95
0.00
3.79
15.16
0.69
12,104.24
6,755.02
5,288.26
60.96
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
表 1.2.3 インドネシアの発熱量別・州別・精度別の資源量と埋蔵量(2013 年末)2/2
資源量(百万トン)
州
熱量 (kcal/kg)
中央カリマンタン
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
>7,100
南カリマンタン
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
東カリマンタン
<5,100
5,100-6,100
6,100-7,100
>7,100
南スラウェシ
5,100-6,100
6,100-7,100
中央スラウェシ
<5,100
北マルク
5,100-6,100
6,100-7,100
西パプア
5,100-6,100
6,100-7,100
>7,100
パプア
<5,100
5,100-6,100
Total
仮定
197.58
0.00
43.15
154.43
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
6,116.49
0.30
5,425.19
679.45
11.55
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
6.69
3.21
3.48
93.66
89.63
4.03
0.00
0.80
0.91
0.00
19,557.45
予想
1,817.76
33.52
468.12
504.25
811.87
4,312.41
757.72
2,464.79
1,089.90
11,150.76
1,216.30
8,934.31
798.52
201.63
48.81
34.91
13.90
1.98
1.98
0.00
0.00
0.00
32.82
1.91
5.38
25.53
2.16
0.00
2.16
31,268.03
推定
749.88
0.00
333.33
262.85
153.70
3,616.65
649.87
2,418.29
548.49
8,529.70
973.55
6,594.06
791.46
170.63
129.22
128.44
0.78
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
29,284.64
確定
990.56
0.00
289.44
396.29
304.83
4,658.23
585.96
3,431.43
640.84
21,605.54
953.47
18,138.52
2,359.85
153.70
53.09
53.09
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
39,144.89
埋蔵量(百万トン)
合計
3,755.78
33.52
1,134.04
1,317.82
1,270.40
12,587.29
1,993.55
8,314.51
2,279.23
47,402.48
3,143.63
39,092.07
4,629.27
537.51
231.12
216.44
14.68
1.98
1.98
6.69
3.21
3.48
126.48
91.54
9.41
25.53
2.96
91.00
2.16
119,255.02
(出所)Geological Agency of Indonesia, Indonesian Coal Book 2014/2015
- 13 -
推定
242.46
0.00
6.80
144.23
91.43
1,104.52
316.43
623.69
164.40
10,920.94
559.25
10,250.77
110.35
0.57
0.06
0.06
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
22,370.46
確認
316.59
0.00
146.83
27.32
142.44
2,383.50
500.09
1,669.51
213.90
3,094.28
729.50
1,821.55
522.07
21.16
0.06
0.06
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
8,752.82
合計
559.05
0.00
153.63
171.55
233.87
3,488.02
816.52
2,293.20
378.30
14,015.22
1,288.75
12,072.32
632.42
21.73
0.12
0.12
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
31,123.28
第 2 章 炭鉱開発の現状
2.1 高品位炭の炭鉱開発状況
2.1.1 高品位炭の分布状況
インドネシアでは、気乾ベースの発熱量(adb)6,100kcal/kg~7,100 kcal/kg の石炭を高品位炭
(High)
、7,100kcal/kg を超える石炭を超高品位炭(Very High)に分類しているが、周知の通り、
国や地域によって高品位炭の発熱量の定義は異なる。以下、本章ではインドネシアの高品位炭の
定義(発熱量(adb)6,100kcal/kg 以上)をベースに調査を行った。
「Indonesian Coal Book2014/2015」
(2013 年 1 月 1 日時点のデータ)によると、インドネシア全
体に占める高品位炭の割合は、資源量が約 10.0%、埋蔵量が 3.7%である。
(本報告書第 11 章の表
11.1.1 を参照)
。
また、発熱量(adb)6,100kcal/kg 以上の高品位炭の資源量と埋蔵量の島嶼別賦存状況を見ると、
カリマンタン島とスマトラ島に高品位炭が多く賦存している。(第 1 章の表 1.2.1 を参照)
さらに、高品位炭が多く賦存すると見られる地域の高品位炭生産企業(炭鉱)を把握するため
に、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」の地域別・企業データから、①発熱量(adb)>6,000kcal/kg
の石炭(及び石炭ブランド)を生産している主な企業・炭鉱、②発熱量(adb)>6,000kcal/kg の石
炭(及び石炭ブランド)の生産を目指して探査、FS、建設が進められている企業・炭鉱を抽出し、
表 2.1.1 を作成した。
以下、表 2.1.1 及び関連情報をもとに、インドネシアにおける高品位炭の開発状況について得ら
れた結果をまとめた。
なお、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」のデータを活用する上で、次の 2 つの課題が存在する
ことについて申し添えておく。①高品位炭のみに絞った生産・販売(国内、輸出)データは存在
しない、もしくは入手困難である(インドネシアの石炭企業は、低品位炭~高品位炭まで複数の
石炭ブランドを生産・販売しているケースが多い)
。②インドネシアでは、高品位炭は海外輸出向
けの他、国内供給炭にブレンドされ、発熱量を調整する用途にも利用されている。このため、企
業の石炭生産量と石炭販売量(国内販売量と輸出量の合計)の数字が一致しないケースが多く、
企業間で売買される石炭量が統計上ダブルカウントされている可能性が高い。
- 14 -
表 2.1.1 インドネシアの主な高品位炭の生産企業・炭鉱 1/2
州
地域
英語
リアウ
Riau
West Sumatra
スマトラ島
Jambi
Bengkulu
リアウ
西スマトラ
ジャンビ
ブンクル
南スマトラ
Lampung
ランプン
West Kalimantan
西カリマンタン
カリマンタン島
(ボルネオ島)
IUP(石炭公社)
P
CCoW(第2世代)
P
PT Allied Indo Coaljaya
IUP
P
PT Bangun Korin Utama
IUP
E
IUP(石炭公社)
P
PT Bukit Asam Tbk
中央カリマンタン
BA 55-76
灰分
全水分
(adb)(%)
(ar)(%)
生産量(万トン)
5,500-7,600
0.7-1.2
4.0-8.0
5.0-30.0
1,239
1,373
1,508
471
535
5,700-6,200
0.8-2.0
10.0-16.0
17.0-19.0
155
117
133
147
30
6,860-7,220
0.43-0.51
7.1-11
3.6-4.4
0
0
0
0
0
6,400-7,338
0.9-1.5
10.36
7.78-14.56
―
―
―
―
―
―
5,500-7,600
0.7-1.2
4.0-8.0
5.0-30.0
―
―
―
―
―
―
インドネシア政府
PT Surya Prisma Indah
2011年
2012年
輸出量(万トン)
2013年
2011年
2012年
備考
326 インドネシア政府/生産量第7位
22 PT Permata Prima Sakti Tbk
0 PT Pemata Energy Respirces
P
6,500
2.2
10
14
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
C
6,307-,7999
0.53-1.08
3.2-13.9
1.4-3.6
―
―
―
―
―
―
PT Prima Perkasa Abadi
IUP
E
5,500-7,060
0.56-3.30
5.20-22.10
4.00-10.70
―
―
―
―
―
―
7,653
0.51
8.8
3.1
―
―
7,150
0.78
8.0
20.0
PT Beruang Putih
―
―
出資企業/大株主/その他情報
2013年
IUP
―
―
―
(豪)Adavale Resources Limited
―
―
IUP
E
CCoW(第3世代)
P
PT Bara Indah Lestari
IUP
P
5,400-6,300
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Bukit Bara Utama
IUP
P
6,500
0.8max
13max
12max
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Bukit Sunur
IUP
P
6,500
0.8max
13-15
13-14
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Cipta Buana Seraya
IUP
P
6,300-7,100
0.8
9.0
11.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Danau Mashitam
IUP
P
5,800-6,300
0.5-0.7
22.0
13-17
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Kusuma Raya Utama
IUP
P
6,800
0.8
17.0
12.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Batualam Selaras
CCoW(第3世代)
P
Kikim
4,782-6,626
0.19-0.67
0.8-8.8
20.9-34.5
4
0
0
0
0
0
PT Bukit Asam Tbk
IUP(石炭公社)
P
BA 55-76
5,500-7,600
0.7-1.2
4.0-8.0
5.0-30.0
―
―
―
―
―
―
IUP
P
6,100-8,252
1.5-3.95
3.7-12.5
0.9-12.5
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
7,306/7,384
1.9/2.49
6.08/6.28
6.83/4.98
―
―
―
―
―
―
7,100
0.5
10.0
6.0
―
―
―
―
―
―
西カリマンタン最大石炭企業
PT Baramulti Suksessarana Tbk.
PT Saptajaya Menjak Sengewari
PT Tenaga Perkasa Nasional
Seam C
Spec.1
Sample-1,2
112
76
72
0
0
0 PT Permata Prima Sakti Tbk
インドネシア政府
―
IUP
E
CCoW(第2世代)
FS
PT Baradinamika Muda Sukses
IUP
P
Betung/Benuang
6,100-7,900
0.13-0.3
1.8-6.9
4.7-17.1
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Duta Tambang Rekayasa
IUP
P
gad
6,800
3
9.0
6.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Duta Tambang Sumber Alam
IUP
P
gad
6,900
2.5
5.0
8.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Pipit Mutiara Jaya
IUP
P
Sebakis
6,900
0.9
4.5
11.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Agung Bara Prima
IUP
P
6,300
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Anugerah Alam Katingan
IUP
E
7,300
0.76
4.9
7.5
―
―
―
―
―
―
(豪)Cokal Limited (Cokal)
PT Anugerah Alam Manuhing
IUP
E
7,283
n/a
3.9
9.2
―
―
―
―
―
―
(豪)Cokal Limited (Cokal)
PT Aqso Indopratama
IUP
E
6,145
0.25
1.43
30.38
―
―
―
―
―
―
PT Asmin Bara Bronang
CCoW(第3世代)
P
PT Asmin Bara Jaan
CCoW(第3世代)
P
PT Asmin Koalindo Tuhup
CCoW(第3世代)
P
Bahandang/M iyangun
6,700-7,000
0.8
13.0
6.0-8.0
0
0
33
0
0
5,184-6,361
0.20-1.74
1.30-12.40
14.40-24.60
0
0
0
0
0
8,300
0.85
7.5
9.0
286
323
191
152
242
IUP
P
PT Batubara Duaribu Abadi
CCoW(第3世代)
C
Block B
PT Bharinto Ekatama
CCoW(第3世代)
P
M CV.LS/M CV.HS
6,600/6700
0.8/1.6
PT Borneo Bara Prima
IUP
E
Sample 1~3
7,525-,8663
0.70-0.79
PT Bumi Barito Mineral
IUP
E
Seams B,C,D(PCI)
8,100
0.42
Seam J(Coking)
8,300
0.42
0
0.8-1.6
10max.
10max.
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
5,276-6,438
0.82-3.71
3.90-13.80
18.20-44.10
―
―
―
―
―
―
5.5
13.5
―
―
―
―
―
―
3.5-5.3
5.89-6.9
―
―
―
―
―
―
6.5
1.0
―
―
―
―
―
―
5.3
0.7
―
―
―
―
―
―
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
IUP
P
6,000-6,300
n/a
n/a
n/a
CCoW(第2世代)
P
Thermal
7,000
0.6-0.8
10.0
11.0
96
77
129
85
112
PT Multi Tambangjaya Utama
CCoW(第3世代)
P
gad
6,800-7,000
2.0
8.0
14.0
45
0
0
43
0
IUP
P
5,800-6,300
0.8
7.0
24.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
1.4
8.0
12.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
n/a
IUP
P
CCoW(第3世代)
C
PT Telen Orbit Prima
IUP
P
6,300
0.47
10.5
13.7
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Amanah Anugerah Adi Mulia
IUP
P
6,300-7,200
0.3-0.6
8.0-12.0
8.0-14.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
CCoW(第2世代)
P
6,200-6,700
0.5-1.5
10.0-16.0
10.0-12.0
PT Anugerah Bara Hampang
IUP
P
5,700-6,900
0.26-0.88
3.9-25.8
2.3-10.3
PT Bahari Cakrawala Sebuku
CCoW(第2世代)
P
5,900-6,537
0.85-0.98
8.0-9.8
14.8-16.2
151
57
0
168
48
PT Bangun Banua Persada Kalimantan
CCoW(第3世代)
P
5,800-7,300
0.5
15.0
8.0
94
99
58
0
0
PT Bara Pramulya Abadi
CCoW(第3世代)
C
Tanjung Formation
5,979-7,753
0.4-2.61
1.9-22
2.1-16.1
PD Baramarta
CCoW(第3世代)
P
BlockⅠ&Ⅱ
5,985-7,371
0.25-1.21
3.9-13.7
n/a
BlockⅢ
6,500-7,200
0.3-2.6
10.0-17.0
n/a
PT Ekasatya Yanatama
PT Suprabari Mapanindo Mineral
PT Antang Gunung Meratus
6,800
Sekako/Pendreh/M osak
Tanjung Formation
6,481/6,138/6,119
0.73-0.93 10.38-13.28 14.90-17.07
140
n/a
349
n/a
―
n/a
―
443
427
n/a
―
369
11
161
0
0 PD Bangun Banua
―
0
0 Banjar県政府
P
6,662-7,171
0.5-1.8
5.3-12.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
P
High
6,300
1
15
15
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Fajar Mineral Alami International
IUP
P
gad
6,100-6,500
0.64
7
10.3-12.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Global Multi Energi
IUP
E
5,370-7,769
1.07-3.39
2.0-27.4
4.61-20.48
―
―
―
―
―
―
PT Hasil Bumi Persada
IUP
P
5,900-6,500
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Kadya Caraka Mulya
CCoW(第3世代)
P
6,100-6,300
0.46-0.79
16.0-24.0
9.0-13.0
23
18
0
PT Kalimantan Energi Lestari
CCoW(第3世代)
P
6,300-6,900
1.0max.
10.0-14.0
3.0-8.0
299
0
0
Amanh Group
n/a
IUP
0
―
341 PT Baramulti Suksessarana Tbk.
CCoW(第3世代)
27
(豪)Cokal Limited (Cokal)
0 PT Indika Energy Tbk.
PT Exploitasi Energi Indonesia Tbk.
0
Indo Tambangraya Mega, Tbk(ITM)
n/a
―
0
PT Kurnia Group
73 PT Cipta Olah Alam Lewtari、伊藤忠
0
n/a
―
―
328 PT Pamapersada Nusantara(PAMA)
6,500-7,000
n/a
PT Medco Energi International Tbk.
0 PT Pamapersada Nusantara(PAMA)
PT Marunda Graha Mineral
PT Panca Gemilang Semesta
南カリマンタン
Seam B1,C1,C2
全硫黄
(adb)(%)
IUP
PT Padang Anugerah
South Kalimantan
BA 55-76
発熱量
kcal/kg (adb)
PT Lumpo
PT Duta Sejahtera
カリマンタン島
(ボルネオ島)
Blook/Area/Product
PT Karbindho Abesyapradhi
PT Batubara Bandung Pratama
Cetral Kalimantan
開発段階
PT Riau Baraharum
PT Yamabhumi Palaka
北カリマンタン
ライセンス
PT Bukit Asam Tbk
PT Nusantara Termal Coal
South Sumatra
North Kalimantan
石炭企業/炭鉱
日本語
PT Prima Kencana Mining
―
26
0
203 (スイス)Mercuria Energy trading S. A.
- 15 -
表 2.1.1 インドネシアの主な高品位炭の生産企業・炭鉱 2/2
州
地域
英語
IUP
P
発熱量
kcal/kg (adb)
6,500
PT Senamas Energindo Mulia
CCoW(第3世代)
P
6,343
PT Sumber Kurnia Buana
石炭企業/炭鉱
日本語
PT Paramitha Cipta Sarana
カリマンタン島
(ボルネオ島)
South Kalimantan
南カリマンタン
6.4
0
0
91
0
43
0
8.0-15.0
6.0-10.0
1.6-5.9
5.0-17.2
―
―
―
―
―
―
PT Suryaraya Permata Khatulistiwa
IUP
C
6,910-7,423
32.6-48.6
1.0-2.7
9.0-14.3
―
―
―
―
―
―
6,225-6,345
0.95-1.37
5.67-5.78
14.88-15.49
6,655/6,705
1.65/0.39
12.8/12.7
5.2/5.0
5,900-6,500
0.4-0.8
9.0-18.0
8.0-12.0
CCoW(第3世代)
P
IUP
C
CCoW(第3世代)
P
PT Adimitra Baratama Nusantara
IUP
P
6,250
0.8
6.0
19.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Alam Tanang Raya Pratama
IUP
E
6,385
0.23
4.36
19.0
―
―
―
―
―
―
PT Ardi Utama
IUP
P
6,000-6,300
0.2-1.5
5.0-7.0
18-19
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Atan Bara Sejahtera
IUP
C
5,900-6,400
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
PT Berkah Bhumi Abadi
IUP
E
6,395
1
23
11
―
―
―
―
―
CCoW(第3世代)
P
6,600/6700
0.8/1.6
5.5
13.5
IUP
P
5,459-7,546
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
IUP
E
IUP(石炭公社)
P
ABN58
M CV.LS/M CV.HS
BA 55-76
―
423
―
378
0
0
0
―
307
418
208
0
―
0
(豪)Altura Mining Limited.の高品位炭PJ
46 PT Tambang Timah、PT Timah Investasi Mineral
―
386
PAM Group
0 Yayan Suryana、Lunardi Satyaputra
PT Transcoal Minergy
―
39
0
PT Tanjung Alam Jaya
Seam S5/S6
67
2
備考
出資企業/大株主/その他情報
0 Antonio Yatmiko
0.3-2.0
81
36
0
0.49-1.88
(豪)Pan Asia Corpration
273 PT Bayan Resources Tbk.
n/a
―
0
195 PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
7,500-8,000
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
5,500-7,600
0.7-1.2
4.0-8.0
5.0-30.0
―
―
―
―
―
―
インドネシア政府
PT Cipaganti Global Corporation
―
PT Cipaganti Energi Resources
IUP
E
7,500-8,000
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
PT Citra Inti Jaya
IUP
C
7,500-8,000
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
CCoW(第3世代)
P
Upper Seam
6,759-8,202
0.27-4.91
1.10-7.50
3.41-12.82
PT Diva Kencana Borneo
IUP
P
North M ea/Sangsang
6,785/7940
0.27/0.86
4.7/2.7
11.9/10.1
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Atlas Resources Tbk.
PT Dua Putri Kutor
IUP
E
Sample1-3(gad)
6248-7138
0.5-0.67
7.44-19.7
7.10-8.08
―
―
―
―
―
―
(カナダ)Challenger Deep resources Corp.
PT Fajar Bumi Sakti
IUP
P
Loa Ulung
6,500-6,700
1.0
6.0-9.0
13.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Bumi Resources Tbk.
CCoW(第3世代)
P
gar
5,700-6,300
0.8-1.5
6.0-10.0
10.0-14.0
IUP
P
Anugerah Caol
6,100-6,300
0.3-0.75
4.0-7.0
16-18
CCoW(第2世代)
P
BlokⅠⅡ(gar)
6,100-7,300
0.6-2.5
6.0-11.0
6.0-12.0
IUP
P
Guaranteed(gar)
6,800
0.7
8.0
10.0
PT Indexim Coalindo
CCoW(第2世代)
P
4,300-6,300
0.5-1.5
2.3-4.0
20-35
PT Indomico Mandiri
CCoW(第1世代)
P
IM _6350/IM _6250
6,350/6,250
0.8/0.85
5.5/6.0
15.5/16.0
IUP
P
Typical(gad)
6,250
0.9
4.5
19.0
PT Insani Bara Perkasa
CCoW(第3世代)
P
4,890-6,500
0.1-2.4
0.9-5.0
10.4-30.9
PT Inti Jaya Prima Coal
IUP
E
6,400
n/a
n/a
n/a
PT Kaltim Prima Coal
CCoW(第1世代)
P
PT Kartika Selabumi Mining
CCoW(第2世代)
P
PT Kitadin
IUP
P
PT lazuardi Cemerlang
IUP
PT Maesa Persada Jaya
Mahakam Sarana Abadi, CV
PT Gerbang Daya Mandiri
PT Gunung Bayan Pratama Coal
PT Harsco Mineral
PT Indomining
Prima/Pinang
0
127
n/a
0
286
n/a
346
n/a
n/a
1,476
n/a
12
1,471
422
426
127
79
1,519
426
238
0
1,331
379
199 PT Bayan Resources Tbk.
103 PT Bayan Resources Tbk.
n/a
0
1,276
n/a
―
―
0 Gunawan Hariyanto
n/a
100
n/a
n/a
―
0
n/a
130
n/a
n/a
―
0
n/a
345
n/a
n/a
―
200
n/a
344
0
0
インドネシア企業
3 PT Indexim Investama
1,641 2013年生産量第6位
n/a
337
―
404 PT Resource Alam Indonesia Tbk./2012年生産量第10位
―
7000/6,548
0.7/0.3
5.0/5.5
11.0/15.0
4,045
4,124
5,342
3,498
3,552
7,461-8,407
0.89-2.12
4.32-11.82
5.23-6.28
29
4
0
23
5
6,650
1.7
5.0
13.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
E
5,900-7,000
0.5-1.5
7.0-10.0
6.0-17.0
―
―
―
―
―
―
IUP
E
6,000-6,400
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
IUP
E
6,938-7,338
n/a
2.4-9.0
10.2
―
―
―
―
―
―
CCoW(第3世代)
P
5,800-6,400
<1.0
<9
<17
1,001
1,034 PT Harum Energy Tbk./2013年生産量第8位
PT Mamahak Coal Mining
IUP
P
E Block/SW Block
7570/7,520
1.41/1.62
8.2/9.2
3.7/3.1
PT Multi Harapan Utama
CCoW(第1世代)
P
Gitan
6,750
1.0
4.5
1.0
PT Parisma Jaya Abadi
IUP
P
7,437
n/a
9.60
5.34
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Pelita Dian Petangi
IUP
E
7,123
n/a
1.50
8.30
―
―
―
―
―
―
(豪)Orpheus Energy Ltd
PT Pelita Kharisma Kenanga
IUP
E
7,270
n/a
1.90
6.50
―
―
―
―
―
―
(豪)Orpheus Energy Ltd
PT Pipit Mutiara Jaya
IUP
P
6,900
0.9
4.50
11.00
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Pola Andhika Realtor
IUP
P
7,094
2.05
16.40
3.93
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Rinjani Kartanegara
IUP
P
6,640-6,478
n/a
3.50
15.50
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
PT Singlurus Pratama
CCoW(第3世代)
P
6,080-6,614
0.69-1.11
6.00
26.6-33.74
175
230
272
171
150
PT Tambang Damai
CCoW(第3世代)
P
6,400-6,600
1.8-2.1
6.0-8.0
11.0-13.0
0
18
104
0
199
PT Trubaindo Coal Mining
CCoW(第2世代)
P
6,700/6,700/6,250
0.8-1.8
6.0
13.0-16.0
702
830
866
416
543
PT Unindo Prima Sarana
IUP
C
PT Welarco Subur Jaya
IUP
P
PT Karya Manunggal
IUP
PT Papua Inti Energi
IUP
PT Horna Inti Mandiri
IUP
PT Mahakam Sumber Jaya
西パプア
12.7
輸出量(万トン)
2011年
2012年
2013年
n/a
n/a
n/a
6,193-7402
PT Firman Ketaun Perkasa
West Papua
0.99
生産量(万トン)
2011年
2012年
2013年
n/a
n/a
n/a
6,100-7,100
PT Dharma Puspita Mining
パプア
全水分
(ar)(%)
n/a
P
PT Bukit Asam Tbk
Papua
灰分
(adb)(%)
n/a
C
PT Borneo Resources Persada
ニューギニア島
全硫黄
(adb)(%)
n/a
IUP
PT Borneo Emas Hitam
東カリマンタン
Blook/Area/Product
CCoW(第3世代)
PT Bharinto Ekatama
East Kalimantan
開発段階
PT Suryaraya Cahaya Cemerlang
PT Wahana Baratama Mining
カリマンタン島
(ボルネオ島)
ライセンス
Tandung M ayang
Sebakis
Sungai M erdeka
HCV.LS/HCV.HS/LCV.LS
798
n/a
927
n/a
131
970
n/a
118
754
n/a
27
n/a
112
4,394 PT Bumi Resources Tbk./2013年生産量第1位
0 PT Marino Mining International
―
―
n/a
45 インドネシア資本のJV
94
―
JV:インドネシア企業と(豪)South East Asia Resources Ltd.
290 (タイ)Lanna Resources Public Co., Ltd.
85 PT Damai Mining
875 PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)/2013年生産量第10位
5,473-7,692
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
6,100-6,300
0.3-0.75
4.0-7.0
16.0-18.0
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
n/a
E
7,400-8,000
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
E
7,400-8,000
n/a
n/a
n/a
―
―
―
―
―
―
FS終了
7,500
0.25
1.9
2.6
―
―
―
―
―
―
Anugerah Coal
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
―
PT Atlas Resources Tbk.
Bakrie & Brothers Tbk.
(注)インドネシアの高品位炭の定義に基づき、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」の地域別・企業別データから、発熱量(adb)>6,100kcal/kg の石炭生産企業・炭鉱を抽出し、次に対象企業・炭鉱の生産量と輸出量(企業全体のデータであり、高品位炭以外も
含まれている)を加えた。開発段階の記号は P(生産)
、C(建設)
、E(探査)
、FS(FS 調査中、FS 終了)の各開発段階を示している。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、各社公式サイト及び年次報告書をもとに作成
- 17 -
2.1.2 主な高品位炭生産企業・炭鉱と開発状況
以下、高品位炭の生産企業・炭鉱が集中するスマトラ島、カリマンタン島、ニューギニア島西
部での主な高品位炭開発状況ついてまとめた。
(1) スマトラ島
国営石炭公社の PT Bukit Asam Tbk.(PTBA、ブキット・アッサム・グループ)の存在感が大き
い。PTBA は Riau(リアウ)州の Peranap 炭鉱、西スマトラ州の Ombilin 炭鉱、南スマトラ州の
Tanjung Enim 炭鉱で、発熱量(adb)5,500~7,600kcal/kg(発熱量(ar)4,550~7,400kcal/kg)の 8
ブランドの石炭を生産している。PTBA は東カリマンタンにも炭鉱を有しており、2013 年の企業
全体の生産量はインドネシア国内第 7 位であった。
この他、PT Permata Prima Sakti Tbk(TKGA、プルマタ・プリマ・サクティ・グループ)が、系
列炭鉱(Nusantara Termal Coal と Riau Baraharum)で、発熱量(gar)5,200~5,500kcal/kg の石炭を
生産しており、他社からも石炭を調達した上で、中国、インド、東南アジア、日本、韓国等のア
ジア市場へ輸出している。Nusantara Thermal Coal の石炭は硫黄分が少なく、Riau Baraharum の石
炭は灰融点が 1,500℃以上ある(インドネシア炭の一般的な灰融点は 1,200℃)とされる。なお、
TKGA は、ここ数年の国際炭価格下落の影響を受けて、経営戦略や生産計画の見直しを進めてい
る模様である。主な課題として、①炭鉱開発計画、炭鉱関連技術、ロジスティックス等のコスト
見直し。②採算性の高いタイ、マレーシア、インドネシア国内市場の維持。③経営資本強化のた
めの資金繰りを挙げている11。
探査段階である PT Prima Perkasa Abadi には、オーストラリアの石炭企業 Adavale Resources
Limited が出資し、スラウェシ島の Tapan(タパン)村で、中・高品位炭を開発する Tapan プロジ
ェクトを実施している12。
(2) カリマンタン島
① 中央カリマンタン州
原料炭分野では、PT Pamapersada Nusantara(PAMA)13が、系列 3 炭鉱(PT Asmin Bara Bronang、
PT Asmin Koalindo Tuhup)で高品位原料炭を生産している。PT Asmin Koalindo Tuhup (AKT)(1998
年に PT Swabara Guna から名称変更)は Muara Raya で Tuhup Mine プロジェクト(高品位原料炭、
ブレンド用炭)を推進しており、世界の鉄鋼産業(日本、台湾、中国、韓国、インド、ベトナム、
トルコ等)に輸出している。
外資関連では、Indo Tambangraya Mega, Tbk(ITM)
(インド・タムバンガラヤ・メガウ)の全額
出資子会社である PT Bharinto Ekatama(CCoW 第 3 世代)が、発熱量(adb)6,756~6,986kcal/kg
(発熱量(ar)では 6,414~6,665kcal/kg)の一般炭を生産している。ちなみに、ITM の大株主はタ
11
PT Permata Prima Sakti Tbk 公式サイト(http://permatacoal.com/home.php?page=coal_production)
Adavale Resources Limited 公式サイト(http://www.adavaleresources.com.au/tapan.php)
13
傘下に PT Kalimantan Prima Persada、 PT Prima Multi Mineral、 PT Pama Indo Mining、 PT Asmin Bara Bronang、
PT Asmin Bara Jaan dan、 PT Multi Prima Universal.がある。
12
- 19 -
イの Banpu Group(バンプ・グループ)である。
また、2003 年にインドネシアの華僑系資本(PT Cipta Olah Alam Lewtari、2013 年の出資比率は
61.2%)と伊藤忠商事株式会社のオーストラリア現地法人(Itochu Coal Resources Australia Pty. Ltd.、
2013 年の出資比率は 23.5%)が出資・設立した PT Marunda Graha Mineral(MGM)
(CCoW 第 2 世
代)は、Murung Raya で、発熱量(adb)7,000kcal/kg の一般炭と原料炭の年産 200 万トンプロジェ
クトを実施している。
生産量の 50%以上が伊藤忠商事株式会社を通じて日本に輸出されている14。
インドネシアの PT Indika Energy Tbk(インディカ・エナジー・グループ)が 2012 年に株式の
85%を取得した PT Multi Tambangjaya Utama(MUTU)
(1989 年設立)は、Ampah 市の北東 30km、
Banjarmasin の北方 250km の地点で高品位炭(一般炭、原料炭)を生産している。生産能力は 300
万トン/年。
なお、投資先 3 社が探査段階にあるオーストラリアの Cokal Limited (Cokal)(コカール)の存在
感が大きい。このうち、The Bumi Barito Mineral Project (BBM)15は、Cokal Limited (Cokal)が 60%を
出資し、その他インドネシア資本が 40%を出資する PMA 企業(プロジェクト)16で、現在は Cokal
と Meratus Advance Maritime (MDM)との 50:50 のジョイントベンチャー(JV)のようである。プロ
ジェクトサイトは BHP Billiton(ビーエイチピー・ビリトン)が出資する Juloi 炭鉱に近い、バリ
ト川沿いにある。BBM が 2013 年に発表(更新)した資源量は 2 億 6,400 万トンで、原炭発熱量
(adb)8,100kcal/kg の PCI 炭、原炭発熱量(adb)6,500~8,100kcal/kg の原料炭を生産する計画で
ある。
表 2.1.2 BBM Project の石炭性状
(出所)Cokal Limited (Cokal)公式サイト
14
伊藤忠商事株式会社の資料(https://www.recruit-ms.co.jp/research/journal/pdf/j201111/m25_case_itochu.pdf)、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」
15
Cokal Limited (Cokal)公式サイト(http://www.cokal.com.au/?page_id=238)
16
インドネシアの外国投資法では、外国資本により設立された会社を PMA 企業(Penanaman Modal Asing)と呼び、
他の国内企業(Penanaman Modal Dalam Negeri = PMDN)と区別している。インドネシア投資調整庁 BKPM 日本事務
所(http://www.bkpm-jpn.com/Investment.html)
- 20 -
② 東カリマンタン州
インドネシアを代表する高品位炭企業の生産炭鉱が集中している。まず、PT Harum Energy Tbk.
(HRUM)(ハルム・エナジー)17が、主力炭鉱である PT Mahakam Sumber Jaya (MSJ)等、HRUM 傘
下の石炭生産企業 4 社(この他、PT Santan Batubara(SB)、 PT Tambang Batubara Harum(TBH)、PT
Karya Usaha Pertiwi (KUP))を配置している。第 2 節で後述するが、MSJ は 2013 年の石炭生産量
第 8 位の企業で、2000 年に CCoW(第 3 世代)を締結している。なお、HRUM は 2014 年 6 月、
4 億 5,000 万ドルを投資し、東カリマンタン州の自社保有鉱山周辺にある複数の炭鉱の更なる獲得
に動く方針を発表している。
(出所)HRUM 公式サイト
図 2.1.1 東カリマンタン州にある PT Harum Energy Tbk.の石炭生産企業
次に、インドネシアの大手コングロマリットで、HRUM のライバルである PT Bayan Resources
Tbk.(BYAN)
(バヤン・リソーシズ・グループ)18は、東カリマンタン州に石炭生産企業 7 社を
有しており、うち 4 社(東カリマンタン州 3 社、南カリマンタン州 1 社)が、発熱量(gar)5,500kcal/kg
以上の高品炭を生産している。
Bayan Resources の傘下炭鉱で生産される瀝青炭は、発熱量が高いクリーンコールとして世界の
鉄鋼産業で、瀝青炭より発熱量が低い亜瀝青炭は、世界の石炭火力発電所で使用されている。主
な供給先は、長期契約を結ぶ産業ユーザー(イタリアの電力大手 Enel、タイ・パワー、マレーシ
ア国営電力会社 TNB 等)
、貿易会社(インドの Coal and Oil Company、Adani 等)、商社(日本の
三井、双日、三菱等が日本の発電所や産業部門に供給)である。2013 年の最大の供給先はインド
(18%)で、次いで日本(17%)
、台湾(14%)
、中国(13%)、マレーシア(11%)
、フィリピン(8%)、
イタリア(8%)インドネシア国内(3%)、韓国(3%)、パキスタンとタイ(2%)、シンガポール
17
18
http://www.harumenergy.com
http://www.bayan.com.sg
- 21 -
(1%)だった。
表 2.1.3 Bayan Resources 傘下の石炭生産企業と関連データ
傘下企業(炭鉱)
地域
ライセンス
開発段階
原炭の発熱量
(gar)(kcal/kg)
2013年生産量
(トン)
1
PT Gunungbayan Pratama Coal
東カリマンタン CCOW(第2世代)
Block I & Block II
生産
6,800-7,300 6,100-7,200
2
PT Wahana Baratama Mining
南カリマンタン CCOW(第3世代)
生産
5,900-6,500
―
3,070,574
3
PT Perkasa Inakakerta
東カリマンタン CCOW(第3世代)
生産
4,200-4,500
―
2,043,540
4
PT Teguh Sinarabadi
東カリマンタン CCOW(第3世代)
生産
5,600-6,100
―
701,459
5
PT Firman Ketaun Perkasa
東カリマンタン CCOW(第3世代)
生産
5,700-6,300
―
2,002,507
6
PT Fajar Sakti Prima
東カリマンタン
IUP(KP)
生産
4,217
―
2,200,000
7
PT Bara Tabang
東カリマンタン
IUP(KP)
生産
4,217
―
2,200,000
8
PT Brian Anjat Sentosa
東カリマンタン
IUP(KP)
生産
4,217
―
2,200,000
3,189,637
(出所)PT Bayan Resources Tbk.公式サイト、
「Indonesian Coal Book2014/2015」のデータををもとに作成
外資がバックにある高品位炭生産企業にはタイ資本の 2 社がある。まず、PT Singlurus Pratama
(SGP)19は、タイの Lanna Resources Public Co., Ltd.がシンガポール法人 Lanna (Singapore)Pte.Ltd.
を通じて 65%を出資する CCoW(第 3 世代)の企業である。Kutai 県で 2009 年 7 月から生産・販
売を開始しており、生産能力は 300 万トン/年。2015 年までに 600 万トン/年に生産能力を拡張す
る計画。主な輸出先は、中国、香港、インド、韓国、台湾、タイである。
次に、タイの Banpu グループが石炭大手 PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)を通じて出資
する企業(PT Bharinto Ekatama、PT Kitadin、PT Trubaindo Coal Mining、PT Indominco Mandiri)が
ある。PT Trubaindo Coal Mining は 1994 年に CCoW(第 2 世代)を締結し、Kutai Barat の 3 鉱区
で、発熱量(adb)6,694 kcal/kg、7,397 kcal/kg、7,058kcal/kg の石炭を採掘し、3 ブランドの一般炭
(発熱量(adb)は 6,700 kcal/kg、6,700kcal/kg、6,250kcal/kg、硫黄分 0.7~1.8%)を販売している。
2013 年の生産量は 780 万トンで、2012 年の 770 万トンから微増したが、2014 年は生産計画を 730
万トンに下方修正している。
さらに、探査段階にあるが、Paser 県では、PT Pelita Dian Petangi と PT Pelita Kharisma Kenanga
の石炭生産企業 2 社が、オーストラリアの Orpheus Energy Ltd.(オルフェウス・エナジー)の B34
一般炭プロジェクトを進めている。2007 年のサンプル分析によると、PT Pelita Dian Petangi では、
灰分と全水量が少なく(灰分 1.5%、全水量 8.3%)
、発熱量(adb)が 7,123kcl/kg の高品位炭の産
出が見込まれている。ただ、Orpheus Energy の 2014 年 6 月の四半期報告書20によると、同社は保
有するインドネシアの 6 社(前述の 2 社を含む)の株式を PT Mega Coal International(メガ・コー
ル・インターナショナル)に譲渡することで合意したとしている。Orpheus Energy はこれまで、
インドネシアの子会社である PT Orpheus Energy(Orpheus Energy と PT Mega Coal International の
JV)を通じて間接的に 2 社の経営権を握ってきた。
19
20
http://www.singlurus.com
http://www.infomine.com/index/pr/PB/46/99/PB469972.PDF
- 22 -
(出所)Orpheus Energy Ltd.公式サイト(http://www.orpheusenergy.com.au/B26_B34_Kalimantan_details.htm)
図 2.1.2 B34 プロジェクトの位置
Orpheus Energy の公式サイトによると、B34 のプロジェクトサイトは Long lkis の北西 90km に
位置し、2 鉱区(Block3 と Block4)ある。7,200~8,100kcal/kg の石炭を 500~1,000 万トン探査す
る目標を掲げている。
もう 1 社、PT Dua Putri Kutor には、カナダの Challenger Deep resources Corp.が子会社のインドネ
シア企業を通じて出資している。
その他、次のような高品位炭生産企業がある。
2013 年生産量トップの PT Kaltim Prima Coal(KPC)
(カルティム・プリマ・コール)
(資源大手
の Bumi Resources Tbk.(ブミ・リソーシズ・グループ)が出資)が、発熱量(adb)7,000kcal/kg
の Prima ブランドの石炭を生産している。
PT Kartika Selabumi Mining(KSM)21は 1990 年設立の原料炭生産企業で、Kutai 県で発熱量(adb)
7,500kcal/kg の原料炭を生産している。主な供給先は台湾、日本、香港、フィリピン等のアジア地
域とインドネシア国内。
PT Multi Harapan Utama(MHU Coal)22は 1986 年に法人化された JV(民間資源会社 PT Agrarizki
Media の関係者と一般炭生産企業の PT Asmin Pembangunan Pratama)で、同年、CCoW(第 1 世代)
を締結した。プロジェクトサイトは Samarinda と Kutai Kertanegara にある。公式サイトによると、
発熱量(adb)6,750kcal/kg の石炭を生産している。Busang 炭鉱(州都サマリンダの北方 60km)
は 1988 年に生産開始し、2012 年の生産量は 111 万 6,368 トン、販売量は 116 万 8,550 万トン(う
ち約 96%の 112 万 2,887 トンを輸出)であった。主な供給先は台湾、日本、香港、フィリピン等
のアジア地域とインドネシア国内である。
21
22
http://ksmcoal.com
http://mhucoal.com
- 23 -
PT Tambang Damai は 1998 年に CCoW(第 3 世代)
を締結し、2012 年から Kutai 県で発熱量
(adb)
6,400~6,600kcal/kg の石炭を生産している。2013 年の生産量は 2012 年(18 万 757 トン)比 4.5 倍
の 85 万 7,005 トンに大きく伸びた。生産量のほとんどを輸出している。
③ 南カリマンタン州
PT Bayan Resources Tbk.(BYAN)
(バヤン・リソーシズ・グループ)の傘下炭鉱である PT Wahana
Baratama Mining が発熱量(gar)5,900-6,500kcal/kg の石炭を生産している。
外資関連では、スイスの Mercuria Energy Trading(マーキュリア・エナジー・トレーディング社)
の全額出資子会社である PT Kalimantan Energi Lestari(CCoW(第 3 世代)が、発熱量(adb)6,300
~6,900kcal/kg の石炭を生産している。2012 年の生産能力は 25~30 万トン/月で、同年末に中国向
けに 7 万 5,000 トンを輸出した実績がある。
また、オーストラリア企業 2 社による建設中のプロジェクトがある。オーストラリアの Altura
Mining Limited. (ASX:AJM)(アルチュラ・マイニング)は、出資先 3 社(PT Suryaraya Cahaya
Cemerlang、PT Suryaraya Permata Khatulistiwa、PT Suryaraya Pusaka)で高品位炭開発プロジェクト
を進めている。また、急成長中の総合資源企業である Pan Asia Corporation (ASX:PZC)(パンアジ
ア・コーポレーション)は PT Transcoal Minergy に出資している。
さらに、PT Sumber Kurnia Muana は 1999 年に CCoW(第 3 世代)を締結した。発熱量(adb)
6,100~7,100kcal/kg の石炭を生産し、インドネシア国内向けに供給している。2012 年の生産量は
39 万 1,211 トン、2013 年の生産量は 31 万 9,324 トン。PT Antang Gunung Meratus は、インドネシ
アの石炭企業 PT Baramulti Suksessarana Tbk.の完全子会社で 1990 年に法人化された。1994 年に
CCoW(第 2 世代)を締結。発熱量(adb)6,200~6,300kcal/kg と 5,000~5,800kcal/kg の石炭を生
産している。2013 年の生産量は 398 万 70 トン。PT Bangun Banua Persada Kalimantan(BBPK)は
1999 年に CCoW(第 3 世代)を締結。発熱量(adb)5,800~7,300kcal/kg の石炭を生産している。
2013 年の生産量は 57 万 5,148 トン。
PD Baramarta は 1998 年に設立された地方自治体公社で、1999 年に CCoW(第 3 世代)を締結
した。発熱量(adb)5,985~7,371kcal/kg と 6,500~7,200kcal/kg の石炭を生産している。2013 年の
生産量は 423 万 6,012 トン。
④ 西カリマンタン州
西カリマンタン州最大の石炭生産企業である PT Yamabhumi Palaka (YBP)(CCoW 第 2 世代)が
Sintang で発熱量 7,100kcal/kg の原料炭の生産計画を進めている。
(3) ニューギニア島
① パプア特別州
PT Karya Manunggal と PT Papua Inti Energi(いずれも IUP 炭鉱)が、PT Atlas Resources Tbk.の探
査プロジェクトを進めている。いずれの鉱区でも発熱量(adb)7,400 kcal/kg~8,000 kcal/kg の高品
- 24 -
位炭の産出が見込まれている。
② 西パプア特別州
西パプア州の高品位炭開発プロジェクト、Horna Project では、2011 年 6 月、JX 日鉱日石エネル
ギーが PT Horna Inti Mandiri(ホルナ・インティ・マンディリ社)の株式の 5%を取得し、同社産
石炭の日本向け販売権を獲得した。ホルナ社の炭鉱はパプア地域で初めて実施される石炭開発で、
発熱量が高く(7,500kcal/kg)、灰分が極めて低い(3~4%)、高品位炭の産出が見込まれている。
炭鉱面積は約 6,300ha、資源量は 1 億トン程度と予測され、インドネシアの他の既存炭鉱と比べる
と、日本への海上輸送距離が短く、輸送面でも優位性が高いとして期待されている。当初の開発
計画では、2012 年に生産開始し、初年度は 100 万トン程度、その後 200 万トン/年程度に生産量を
伸ばす予定であった23。
しかし、その後、開発は中断している模様である。CNC(Clean and Clean)問題等が原因で、開
発が中断に追い込まれたとされる24。
また、
2011 年 9 月に、
インドネシアのコングロマリット Bakrie
& Brothers Tbk.(バクリー・アンド・ブラザーズグループ)が開発権を得たと発表したが、その後、
開発状況に関する情報は無い25。
以上のインドネシアの高品位炭生産企業・炭鉱の開発状況に関する調査結果により、以下の通
り、幾つかの特徴や動向が明らかになった。
探査段階や建設段階の開発プロジェクトには、直接または間接的に外資が投資しているケース
が目立ち、インドネシア産高品位炭の輸出を目的としているものと思われる。特にオーストラリ
ア企業が多い。タイの企業もインドネシア石炭大手に出資することで、間接的にその傘下にある
高品位炭生産企業・炭鉱の開発プロジェクトを推進している。
また、石炭輸出事業をメインとするインドネシアの高品位炭生産企業の中には、ここ数年の国
際炭価格の下落、インドネシアやオーストラリア等の産炭国の生産過剰状況、インドや中国での
低品位炭需要の急増、低品位炭の改質技術の向上等の影響を受けて、経営戦略を転換する(高品
位炭の生産計画を下方修正、低品位炭に事業をシフト等)企業も出ていることが分かった。
例えば、2014 年 6 月には、PT Harum Energy Tbk.が 2014 年の石炭生産量を最大 30%削減する方
針を示しており、同社の 2014 年の生産量は 2010 年(740 万トン)以来の低レベルに落ち込む可
能性があると指摘されている26。生産量削減の背景には、インドネシアやオーストラリアなどの石
炭生産国の過剰供給が、国際炭価格を押し下げており、結局、生産コストがかさむ高品位炭生産
23
JX 日鉱日石エネルギー株式会社(http://www.hd.jx-group.co.jp/newsrelease/2011/20120314_01_1050061.html)
平成 24 年度海外炭開発支援事業海外炭開発高度化等調査「インドネシアの石炭輸出規制及び石炭開発状況調査」
80 ページ
25
Bakrie & Brothers Tbk.は PT Bumi Resources Tbk (BUMI)(ブミ・リソーシズ)の株式の 35%を保有している。ホ
ルナ炭鉱との関係に関する Bakrie & Brothers Tbk.の公式サイトの記述(インドネシア語)
(http://www.bakrie-brothers.com/mediarelation/detail/1140/eksplorasi_batubara_bintuni_diambil_alih_bakrie_grup)
26
日経電子版 2014 年 6 月 13 日(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDX1300B_T10C14A6FFE000/)
24
- 25 -
企業(炭鉱)の利益を圧迫する状況になっているためと考えられている。Harum Energy の 2013
年の純利益は 2012 年比 68%減の 4,100 万ドル(約 42 億円)に落ち込んだ。
(出所)HRUM2013 年年次報告書のデータをもとに作成
図 2.1.3
Harum Energy の石炭の生産量と販売量
さらに、インドネシア国内最大級の高品位炭生産量を誇る PT Bayan Resources Tbk.は、2014 年 6
月の株主総会後の記者会見で、高品位炭から低品位炭へ事業をシフトする方針を示した。報道に
よると、Bayan Resources は 1 億 5,000 万ドル(約 153 億円)を投じて、低品位炭を産出する東カ
リマンタン州の Tambang(タバン)炭鉱の生産能力を拡大するとされており、Tambang 炭鉱とカ
リマンタン島沿海部を結ぶ道路建設も 2013 年からスタートしている。近年、インドや中国向けの
低品位炭需要が拡大していることも同社の経営に大きく影響したと見られている。同社は 3 年連
続で減収となる見込みという27。今後も、国際炭価格の下落傾向や石炭需要国の生産過剰状態が改
善されない場合、インドネシアの高品位炭生産企業に更に打撃を与える可能性がある。
なお、インドネシア国内での石炭消費は主に、電力業界、セメント産業、テキスタイル産業で
あり、低・中品位炭の需要が多い。このため、高品位炭はほとんどが輸出用(一部ブレンド用)
に生産されている。また、近年、セメント産業はコスト削減のために低品位炭の利用を拡大して
おり、高品位原料炭の消費量は全体の消費量の 1%程度にとどまっている28。結局、インドネシア
の石炭埋蔵量や国のエネルギー政策の現状を考えると、インドネシア政府は今後、高品位炭より
も低品位炭の開発に益々力を入れ、低品位炭の改質・利用プロジェクト等を推進するものと思わ
れる。
27
28
日経電子版 2014 年 6 月 16 日(http://www.nikkei.com/article/DGXNZO72838550W4A610C1FFE000/)
インドネシアエネルギー経済研究所(Indonesia Institute for Energy Economics)の調査による。
- 26 -
(出所)本章 2.1.の内容をもとに作成
図 2.1.4 インドネシアの高品位炭生産企業・炭鉱の例(生産、探査、FS、建設段階)
- 27 -
2.2 主要石炭会社(生産トップ 10)の概要
2.2.1 インドネシアの石炭生産状況
(1) 新鉱業法施行前の生産形態
インドネシアの石炭生産企業は、新鉱業法(2009 年 1 月公布)施行前は、以下 4 つのグループ
に分類されていた。
① 国営石炭公社(BTBA)※P.T. Bukit Asam の 1 社のみ
② 石炭事業契約社(Coal Contract of Work, CCoW)29※第 1~3 世代に分類される。
③ 採掘権保有社(インドネシア語で Kuasa Pertamnangan)※KP 炭鉱と呼ばれる。
④ 協同組合(インドネシア語で Koperasi Unit Desa)※KUD 炭鉱と呼ばれる。
CCoW はインドネシア政府の外資導入政策30により形成されたグループで、新鉱業法施行後も
存続し、現在もインドネシアの石炭生産の中心を担っている。中央政府がライセンスを発行する。
ちなみに、
CCoW と PKP2B は同じ意味で、
PKP2B はインドネシア語の Perjanjian Karya Pengusahaan
Pertambangan Batubara の頭文字をとった略語である。
KP 炭鉱は主にインドネシア資本で運営され、KUD 炭鉱は小規模炭鉱が多かった。
(2) 新鉱業法施行後の生産形態
新鉱業法施行後、CCoW はそのまま契約が継続されたが、他の 3 つのグループは廃止された。
新鉱業法では、鉱業区域(WP)が設定され、鉱業事業区域(WUP)、市民鉱業区域(WPR)、特
別鉱業事業区域(WUPK)に区分された。また、国有企業、地方公営企業、民間企業、協同組合、
個人に対して鉱業事業許可が認められ、鉱業区域によって、鉱業事業許可(IUP)
、市民鉱業許可
(IPR)
、特別鉱業事業許可(IUPK)に分けられている。ちなみに、IUP は Mining Business Licences
を意味するインドネシア語 Izin Usaha Pertambangan の略語で、探査 IUP と生産 IUP があり、地方
政府がライセンスを発行する。IUP 炭鉱はほとんどが中小規模の炭鉱で、新鉱業法施行前の KP
炭鉱は IUP 炭鉱に移行した。
(詳細は第 7 章の 7.3.1 石炭開発に関する条項および図 7.2.1 を参照)
2.2.2 インドネシアの主要石炭会社(2013 年生産量トップ 10 社)
本調査では、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」の 2013 年石炭生産量トップ 10 社ランキングを
もとに、各社の資本構成、生産量、輸出量、傘下炭鉱、輸出インフラ等について取りまとめた。
なお、インドネシア企業名につく「PT」は株式会社、「Tbk」はグループを意味している。
現在、インドネシアの石炭生産の中核を担っているのは CCoW 第 1 世代である。2013 年の石炭
生産量トップ 10 社のうち、上位 6 社が CCoW 第 1 世代で、この 6 社の合計生産量(2 億 1,050 万
トン)はインドネシアの石炭生産量(4 億 2,150 万トン)の 49.9%を占める。ただし、近年は第 8
位の PT Mahakam Sumber Jaya(CCoW 第 3 世代、マハカム・サンバー・ジャヤ社)、第 10 位の PT
Trubaindo Coal Mining(CCoW 第 2 世代、トゥルバインド炭鉱)のように CCoW の第 2、3 世代の
29
30
PKP2B とも呼ばれ、中央政府がライセンスを発行する。
“Mine Indonesia 2013”May 2013, ASOSIASI PERTAMBANGAN BAN BATUBARA INDONESIA 59 ページ参照
- 28 -
炭鉱開発が進み、生産量を伸ばしている。
表 2.2.1
順番
2013 年のインドネシアの石炭生産量上位 10 社と近年の生産量
企業
ライセンス
年平均
伸び率%
生産量 (百万トン)
場所
2010
2011
2012
2013
13/10
1
PT Kaltim Prima Coal
CCoW第1世代 東カリマンタン
39.3
41.0
41.3
53.5
10.8
2
PT Adaro Indonesia
CCoW第1世代 南カリマンタン
42.2
47.7
47.2
52.3
7.4
3
PT Kideco Jaya Agung
CCoW第1世代 東カリマンタン
29.1
31.5
34.2
37.3
8.6
4
PT Arutmin Indonesia
CCoW第1世代 南カリマンタン
20.8
24.7
27.1
28.8
11.5
5
PT Berau Coal
CCoW第1世代 東カリマンタン
17.4
19.4
21.0
23.5
10.5
6
PT Indominco Mandiri
CCoW第1世代 東カリマンタン
14.3
14.8
14.8
15.1
1.8
7
PT Bukit Asam
国営石炭公社 南スマトラ
11.9
12.4
13.0
14.0
5.6
8
PT Mahakam Sumber Jaya
CCoW第3世代 東カリマンタン
4.6
8.0
9.3
9.7
28.2
9
PT Jembayan Muarabara
東カリマンタン
9.3
8.5
8.1
8.0
-4.9
10
PT Trubaindo Coal Mining
CCoW第2世代 東カリマンタン
5.6
7.1
7.7
7.8
11.7
トップ10社の合計生産量
194.5
215.1
223.7
250.0
8.7
インドネシア全体の生産量
275.2
353.3
407.5
421.5
15.3
インドネシアの石炭生産量に占めるトップ10社のシェア(%) 70.7
60.9
54.9
59.3
-
IUP
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、その他資料をもとに作成
また、生産量トップ 10 社では、PT Bukit Asam PT (PTBA)(国営石炭公社のブキット・アッサム)
を除き、いずれも販売量のほぼ 6 割以上を輸出が占めている。
表 2.2.2
①PT Kaltim
Prima Coal
(KPC)
②PT Adaro
Indonesia
(AI)
2013 年生産量トップ 10 社の販売量に占める輸出割合
③PT Kideco
Jaya Agung
④PT Arutmin ⑤PT Berau
Indonesia
Coal
⑥PT
Indominco
Mandiri
⑦PT Bukit
Asam PT
(PTBA)
⑧PT
Mahakam
Sumber Jaya
⑨PT
Jembayan
Muarabara
⑩PT
Trubaindo Coal
Mining
2013年
86%
79%
72%
59%
84%
91%
29%
100%
n/a
84%
2012年
84%
77%
75%
85%
81%
87%
44%
99%
n/a
74%
2011年
86%
77%
77%
82%
88%
90%
35%
95%
n/a
61%
2010年
90%
76%
77%
84%
74%
94%
36%
88%
n/a
54%
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」より作成
さらに、販売量と輸出量のいずれも PT Kaltim Prima Coal (KPC) (カルティム・プリマ・コール
社)と PT Adaro Indonesia(AI)
(アダロ・インドネシア社)の上位 2 社が抜きん出ている。
- 29 -
(注)PT Jembayan Muarabara(ジェンバヤン・ムアラバラ)のデータは、親会社の Sakari Resources Limited(SAR)
(サカリ・リソーシーズ)のデータを使用。輸出量は販売量の 80%と仮定して算出。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、親会社の公式サイト等をもとに作成
図 2.2.1
2013 年生産量トップ 10 社の生産量の推移
(注)PT Jembayan Muarabara(ジェンバヤン・ムアラバラ)のデータは、親会社の Sakari Resources Limited(SAR)
(サカリ・リソーシーズ)のデータを使用。輸出量は販売量の 80%と仮定して算出。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、親会社の公式サイト等をもとに作成
図 2.2.2
2013 年生産量トップ 10 社の輸出量の推移
- 30 -
なお、2013 年の生産量トップ 10 社の主要炭鉱の位置を図 2.2.3 に、主要データを表 2.2.3 にま
とめた。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、各社公式サイト及び年次報告書、その他資料をもとに作成
図 2.2.3 インドネシアの 2013 年石炭生産量トップ 10 社の主要炭鉱
- 31 -
- 32 -
表 2.2.3 2013 年インドネシア石炭生産量トップ 10 社の主要データ
石炭ブランドと発熱量
社名
ライセンス
(有効期間)
生産地域
傘下の炭鉱/鉱区
鉱区面積
(ha)
ブランド名
Prima
Pinang
Melawan
Envirocoal(例)
E5000
E4000
発熱量
主要株主
(adb)
(kcal/kg)
7,100
6,290
PT Bumi Resources, Tbk.
5,600
販売量(万トン)
生産量
(万トン)
輸送インフラ
インドネシア国内(万トン)
海外輸出(万トン)
2013年輸 2012年輸 2011年輸 2010年輸
出割合
出割合
出割合
出割合
専用
共用
取扱能力
(トン/日)
専用
70,000-80,000
3,995
4,045
4,124
5,342
395
548
699
741
3,606
3,498
3,552
4,394
86%
84%
86%
90%
Pulau Laut Coal
Terminal
共用
最大1200万トン/
年
4,220
4,767
4,456
5,380
1,036
1,066
1,050
964
3,208
3,656
3,474
3,569
79%
77%
77%
76%
Tanah Merah
Coal Terminal
(TMCT)
専用
70,000-80,000
2,905
3,139
3,463
3,730
660
743
881
1,049
2,242
2,436
2,587
2,688
72%
75%
77%
77%
35,000-40,000
2,043
2,283
2,641
2,714
330
413
437
1,092
1,714
1,864
2,496
1,547
59%
85%
82%
84%
Coal Terminal/
Barge Port
Tanjung Bara
Coal Terminal
(TBCT)
備考
2010年 2011年 2012年 2013年 2010年 2011年 2012年 2013年 2010年 2011年 2012年 2013年
Sangatta
Bengalon
90,938
CCoW(第1世代)
南カリマンタン
(1982.11.16-2022.10)
Paringin
Tutupan
Wara
34,940
PT Kideco Jaya Agung
(キデコ・ジャヤ・アグン)
CCoW(第1世代)
(1981.11.2-2023.3)
東カリマンタン
Pasir
(5鉱区)
50,921
Kideko Coal
(Roto、SM)
4
PT Arutmin Indonesia
(アルトミン・インドネシア)
CCoW(第1世代)
(1981.11.22019.9.30)
南カリマンタン
Senakin
Satui
Mulia
Kintap
Asam-Asam
Batulicin
70,153
Arutminシリーズ5種
Senakin
4,050-6,300 ・PT Bumi Resources Tbk
Satui 10
Ecocoal
North Pulau Laut
Coal Terminal
専用
(NPLCT)
5
PT Berau Coal
(ベラウ・コール)
CCoW(第1世代)
(1983.4.262025.4.26)
東カリマンタン
Lati
Binungan
Sambarata
118,400
Eboni
Mahoni
MahoniB
Agathis
Sungkai
Lati Port,
Sambarata Port,
Suaran Port
専用
―
1,738
1,944
2,090
2,395
442
247
359
391
1,265
1,735
1,576
1,979
84%
81%
88%
74%
6
PT Indominco M andiri
(インドミンコ・マンデリ)
CCoW(第1世代)
(1990.10.52028.3.31)
東カリマンタン
West Block
East Block
25,121
IM_6350,IM_EAST,
(agd)
・PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
IM_WP,IM_6250
5,850-6,350 (ITMの大株主はタイのBanpu Group)
Bontang Coal
Terminal
専用
50,000
1,425
1,476
1,471
1,519
87
155
185
168
1,363
1,331
1,276
1,641
91%
87%
90%
94%
7
PT Bukit Asam PT (PTBA)
(ブキット・アッサム石炭公社)
国営石炭公社
IUP
南スマトラ
Tanjuung Enim
Ombillin
Peranap
Palaran
90,832
BA55,59,61,63,67,70
5,500-7,600 ・インドネシア政府
LS,70HS,BA76
Kertapati Jetty/
Tarahan Coal
Terminal
専用
専用
50,000-60,000
25,000-30,000
1,192
1,239
1,373
1,508
831
880
693
814
466
471
535
326
29%
44%
35%
36%
8
PT M ahakam Sumber Jaya
(マハカム・サンバー・ジャヤ)
CCoW(第3世代)
(2000.12.292034.9.10)
東カリマンタン
BlockA-E
20,380
(MSJ Coal)
Muara Berau/
Muara Jawa
共用
8,000-10,000
530
798
927
970
61
42
7
0
458
754
1,001
1,034
100%
99%
95%
88%
9
PT Jembayan M uarabara
(ジェンバヤン・ムアラバラ)
IUP
東カリマンタン
Jembayan
Sebuku
12,885
(Jembayan Coal)
Muara Berau/
Muara Jawa
共用
8,000-10,000
804
802
n/a
n/a
n/a
n/a
10
PT Trubaindo Coal M ining
(トゥルバインド炭鉱)
CCoW(第2世代)
(1994.8.152035.2.27)
東カリマンタン
Trubaindo
22,687
HCV.LS,HCV.HS,LC
(agd)
・PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
V.LS
6,250-6,700 (ITMの大株主はタイのBanpu Group)
Bontang Coal
Terminal(BoCT)/
Balikpapan Coal
Terminal(BCT)
共用
40,000
30,000-40,000
830
866
84%
74%
61%
54%
1
PT Kaltim Prima Coal (KPC)
(カルティム・プリマ・コール)
CCoW(第1世代)
(1982.4.8-2021.8)
2
PT Adaro Indonesia(AI)
(アダロ・インドネシア)
3
東カリマンタン
4,668
3,620
・PT Alam Tri Abadi
(PT Adaro Energy Tbkの全額出資子会社)
・Samtan Co., Ltd(韓国)
4,670-5,692 ・PT Indika Inti Corpindo
(PT Indika Energy Tbkの子会社)
5,000-6,000
・Asia Resource Minerals plc
(傘下のPT Berau Coal Energy Tbk.が管理)
5,800-6,400 ・PT Harum Energy Tbk.
5,500
・Sakari Resources Ltd..(シンガポール)
(タイ石油公社(PPT)グループが出資)
スマトラ
鉄道
n/a
555
889
702
販売量(万トン):2011年890/2012年823/2013年820
255
266
195
168
298
416
543
875
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、各社公式サイト及び年次報告書等をもとに作成
- 33 -
以下、2013 年生産量トップ 10 社の企業別データをまとめた。
(1) PT Kaltim Prima Coal (KPC) (カルティム・プリマ・コール社)31
KPC は、インドネシア石炭大手の PT Bumi Resources Tbk.(ブミ・リソーシズグループ)とその
傘下企業等が出資する大手石炭生産企業である。資本の 30%を出資するモーリシャス籍の投資フ
ァンド Bhira Investments Limited は、
インドの電力会社タタ電力
(The Tata Power Company Limited.)
の傘下企業である。KPC は 1982 年に Rio Tinto(リオ・ティント)と BP(British Petrolem)のジ
ョイントベンチャー(JV)として CCoW(第 1 世代)を締結した後、2003 年に Bumi Resources と
東カリマンタン州 Kutai 県政府に株式が売却され、2007 年に Tata Mauritius Ltd が株式の 30%を取
得した。その後、2014 年 7 月、Bumi Resources Tbk.は同社の KPC 持ち株の中から 19%を China
Investment Corporation(CIC)に譲渡したと発表した。これは 2013 年 10 月に発表された同社の CIC
に対する負債処理の一部として実施されたものである32。CCoW のライセンスは 2021 年 8 月まで。
表 2.2.4
KPC の資本構成
株主
出資比率
32.4%
企業の登録国籍
投資ファンド(インドのタタ電力傘下)
30.0%
モーリシャス
ブミ・リソーシズ
6.0%
インドネシア
19.0%
中国
7.6%
モーリシャス
5.0%
インドネシア
PT Sitrade Coal
ブミ・リソーシズが99.98%出資
Bhira Investments Limited
PT Bumi Resources, Tbk.
China Investment Corporation(CIC) 中国投資有限責任公司
Kalimantan Coal Limited (KCL)
ブミ・リソーシズが99.99%出資
PT Kutai Timur Sejahtera
東カリマンタン州クタイ県の企業
インドネシア
(出所)
「Indonesian Coal Book 2014/2015」
、Bumi Resources Tbk.の 2013 年年次報告書、報道等をもとに作成
東カリマンタン州 Kutai 県の Sangatta(サンガッタ)と Bengalon(ベンガロン)に炭鉱がある。
(出所)KPC の資料(https://www.austrade.gov.au/.../ozmine2013-session-2-Andrew-Lau.pdf)
図 2.2.4
KPC の傘下炭鉱の位置と石炭ブランド
31
KPC 公式サイト(http://www.kpc.co.id)
、PT Bumi Resources Tbk.公式サイト(http://www.bumiresources.com)
Moody's Global Credit Research - 03 Jul 2014
(https://www.moodys.com/research/Moodys-Bumi-Resources-distressed-exchange-with-CIC-is-first-step--PR_303369)
32
- 35 -
KPC には 3 つの石炭ブランドがあり、Prima は発熱量 7,100kcal/kg で、灰分と水分が少なく、硫
黄分が中程度の瀝青炭である。Pinang は Prima より水分が多く、発熱量が低い瀝青炭、Melawan
は灰分と硫黄分が少なく、水分が多い亜瀝青炭である。
表 2.2.5 KPC の石炭ブランドと石炭性状
炭鉱
KPC
石炭ブランド
Prima
Sangatta Pinang
Melawan
Bengalon
発熱量(Kcal/kg) 硫黄分(%)
7,100
0.70
6,290
0.50
5,690
0.30
6,230
0.90
水分(%)
10.50
17.00
23.00
14.00
灰分(%)
4.00
3.50
2.50
4.50
(出所)Bumi Resources Tbk.の公式サイト
KPC の石炭生産量は 1990 年代初めには 200 万トン程度であったが、年々生産量を拡大し、特
に 2000 年代後半に生産量を大きく伸ばした。2013 年の生産量は 5,321 万トンで、インドネシア全
体の 12.6%を占めた。
2013 年の輸出量は 4,528 万トンで、同社の生産量全体の 84.8%を占めている。
KPC の 2013 年 4 月作成資料によると、最大の輸出相手国はインド(販売量の 25%)で、続いて
日本(同 21%)
、台湾(8%)
、中国(7%)であった。インドネシア国内向けは 14%だった。
表 2.2.6 KPC の石炭の生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2008
販売量(万トン)
3,628
国内
333
輸出
3,251
合計
3,584
2009
3,815
342
3,527
3,869
2010
3,995
395
3,606
4,001
2011
4,098
548
3,498
4,046
2012
4,427
638
3,456
4,094
2013
5,342
787
4,528
5,315
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
KPC は、Sangatta の Tanjung Bara 港に石炭取扱能力 8 万トン/日の自社専用積出港 Tanjung Bara
Coal Terminal(TBCT)を有している。鉱区で採掘された石炭は Tanjung Bara Coal Terminal の貯炭
場までの 13.2km をベルトコンベアで運ばれた後、大型石炭運搬船に積み替えられる。または
Bengalon の Lubuk Tutung 港でバージに積み込まれる。
(2) PT Adaro Indonesia(AI)
(アダロ・インドネシア社)33
AI の筆頭株主である PT Alam Tri Abadi(アラム・トリ・アバディ社)は、石炭の一貫採掘販売
を手がけるエネルギーグループの PT Adaro Energy Tbk(アダロ・エナジーグループ)の全額出資
子会社である。AI は、1982 年 11 月にスペイン政府系の鉱物探査会社とインドネシア政府の JV と
して CCoW(第 1 世代)を締結し、南カリマンタンで石炭開発を開始した。CCoW のライセンス
33
http://www.adaro.com
- 36 -
は 2022 年 10 月まで。なお、AI の石炭のほとんどはエンドユーザーに直接販売されているが、一
部はシンガポールに拠点を置く石炭貿易会社を通じて販売されている。
表 2.2.7 AI の資本構成
株主
PT Alam Tri Abadi
PT Viscaya Investments
PT Dianlia Setyamukti
Coaltrade Services International Pte. Ltd
アダロ・エナジーの全額出資子会社
投資ファンド
炭鉱サービス会社
石炭貿易会社
出資比率(%) 企業の登録国籍
61.160% インドネシア
33.000% インドネシア
5.838% インドネシア
0.002% シンガポール
(出所)
「Indonesian Coal Book 2014/2015」及び PT Adaro Indonesia の 2013 年年次報告書をもとに作成
AI は南カリマンタンに Paringin(1991 年操業開始)
、Tutupan(1997 年操業開始)、Wara(2010
年操業開始)の 3 つの炭鉱を有している。
(出所)アダロ・エナジーの 2013 年年次報告書をもとに作成
図 2.2.5 AI の 3 炭鉱の位置と Coal Terminal までの輸送ルート
Tutupan はインドネシア最大の炭鉱で、AI の生産量 7 割以上を占めている。Tutupan 炭鉱 の 2013
年の生産量は 3,865 万トンで、同社の石炭生産量(5,226 万トン)の 73.96%にあたる。
鉱区で採掘された石炭は、バリト川沿いの Kelanis Terminal(河港)まで約 80km をトラック輸
- 37 -
送され、Banjarmasin(バンジャルマシン)の沖合にある Taboneo(タボネオ)積み替えポイント
(図 2.2.3 の沖合停泊地⑦)で、石炭輸送船に積み替えられてインドネシア国内ユーザーに輸送さ
れる。輸出用石炭は、子会社の PT Indonesia Bulk Teiminal(IBT)が運営する Paul Laut Coal Terminal
(共用ターミナル⑧)に運ばれ、海外輸出される。
AI の石炭は硫黄分や灰分が極めて少なく、窒素酸化物の排出量も少ない亜瀝青炭で、Envirocoal
(環境配慮型石炭)と呼ばれている。発熱量は高くないが、世界で最も環境負荷が少ない亜瀝青
炭として、国内外の発電や石炭関連産業に供給されており、生産量の約 75%が輸出に回されてい
る。同社は元々、E5000(Tutupan 炭鉱と Paringin 炭鉱で生産)と E4000(Wara 炭鉱で生産)を販
売してきたが、市場ニーズに合わせて、2012 年に中間発熱量の E4500 を、2013 年に E4700 の販
売を開始し、2014 年からは Tutupan 炭鉱北方で E4900 の新ブランドを生産している。
表 2.2.8 AI の Envirocoal(E5000、E4700、E4000)の石炭性状
Total Moisture (ar)
Air dried moisture (ad)
Gross CV (ar)
Net CV (ar)
Ash (ar)
Total sulphur (ar)
HGI
Carbon (daf)
Hydrogen (daf)
Nitrogen (daf)
Oxygen (daf)
Sulphur (daf)
Ash fusion temperature:
Initial deformation
Hemisphere
Flow
Sizing
Envirocoal 5000 Envirocoal 4700
26%
30%
14.50%
18%
5,100 kcal/kg
4,700 kcal/kg
4,800 kcal/kg
4,363 kcal/kg
2%
2.50%
0.10%
0.20%
50
47
73.80%
74%
4.90%
5%
0.90%
1%
20.30%
19.80%
0.10%
0.20%
1,200 C
1,260 C
1,340 C
0-50 mm
1,200 C
1,240 C
1,270 C
0-50 mm
Envirocoal 4000
38%
20%
4,050 kcal/kg
3,700 kcal/kg
3.50%
0.25%
65
72%
5%
1%
22%
0.32%
1,150 C
1,250 C
1,310 C
0-50 mm
(出所)PT Adaro Energy Tbk.の公式サイト
アダロ・エナジーの公式サイトによると、AI の 2013 年の石炭販売量は約 5,350 万トンで、17
カ国 49 ユーザー(10 年以上取引関係がある大手発電企業が 8 割以上)に販売された。売上ベー
スで見た 2012 年の販売先上位は、インドネシア国内(20.8%)
、インド(16.7%)、日本(13.6%)、
中国(9.5%)
、スペイン(7.7%)
、香港、マレーシア(ともに 6.6%)、韓国(6.5%)などである。
インドネシア国内向けでは、発熱量 4,000~5,000kcal/kg の E5000 や中・低品位炭を主に供給して
おり、供給量は国内需要の 12%以上を占めるという。
- 38 -
(出所)PT Adaro Energy Tbk.の 2013 年年次報告書
図 2.2.6
Adaro Energy の石炭生産量の推移
2013 年の輸出相手国・地域別ではインドが最大で、同社販売量の 19.0%にあたる約 1,010 万ト
ンを輸出し、2012 年比で 35%増(260 万トン増)となった。また、対中輸出については、2013 年
の対前年比伸び率が 75%を超え、中国の主要国営企業との関係構築に成功したことが大きいとし
ている。特に、新ブランドの E4900 は灰分(2.5%)と硫黄分(0.15%)が極めて低く、E5000 に石
炭性状が類似しているため、中国沿海部の発電所のニーズ(4,600kcal/kg)に合うという。また、
2011 年には 3 社であった中国のユーザーが、2013 年には 15 社に急増した。AI の 2013 年の北ア
ジア向け輸出は堅調で、2012 年比 2%増の 150 万トン(総販売量の約 29%)であった。日本と香
港の輸出量増加が同地域への輸出を下支えしており、日本に関しては、原発の稼働停止に伴う石
炭火力発電の依存度が高まっていることから、E4900 等の超低灰分石炭が電力会社のコスト削減
に寄与する可能性が高く、ポテンシャルが大きいと見ている。
2013 年の AI 全体の石炭生産量は 5,380 万トン(2012 年比 11%増)であった。
表 2.2.9 AI の石炭の生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2010
2011
2012
2013
4,220
4,767
4,456
5,380
国内
1,036
1,066
1,050
964
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
- 39 -
販売量(万トン)
輸出
3,208
3,656
3,474
3,569
合計
4,244
4,722
4,524
4,533
(3) PT Kideco Jaya Agung(キデコ・ジャヤ・アグン社)34
1982 年 9 月に韓国との JV により Korea-Indonesia Resources Developmenrt Co., Ltd.を設立し、同
年、インドネシア政府と CCoW(第 1 世代)を締結し、東カリマンタンの Pasir 炭鉱で石炭生産に
着手した。
CCoW 契約は 2023 年 3 月まで。
2013 年時点の出資比率は、筆頭株主の韓国の Samtan Co.,
Ltd.(サムタン社)35が 49.0%、インドネシアで石炭・石油事業、発電事業を手がける PT Indika Energy
Tbk(インディカ・エナジー)の子会社である PT Indika Inti Corpindo(インディカ・インティ・コ
ーポインド)が 46.0%、一般炭生産や海上輸送を手がける PT Muji Inti Utama(ムジ・インティ・
ウタマ)が 5%である。
表 2.2.10
Samtan Co.Ltd
PT Indika Inti Corpindo
PT Muji Inti Utama
Kideko の資本構成
株主
韓国・サムタン社
PT Indika Energy Tbkの子会社
一般炭生産や海上輸送を手がける
出資比率
49.0%
46.0%
5.0%
企業の登録国籍
韓国
インドネシア
インドネシア
(出所)
「Indonesian Coal Book 2014/2015」
、PT Kideco Jaya Agung の公式サイト、2013 年年次報告書をもとに作成
Pasir 炭鉱は 5 鉱区(Roto North、Roto South、 Roto Middle、Susubang、Samarangau)が稼働中。
(出所)PT Indika Energy Tbk の 2013 年年次報告書
図 2.2.7
Kideco の Pasir 炭鉱の位置
Kideko の石炭は亜瀝青炭で、水分が多く、灰分と硫黄分が少ないクリーンコールである。
34
http://www.kideco.com/main/main.asp
丸紅が 2007 年にインドネシアのチレボン石炭火力発電事業権を獲得した際にコンソーシアムを組んだ 4 社のう
ちの 1 社(http://www.marubeni.co.jp/dbps_data/news/2007/070820c.html)
35
- 40 -
表 2.2.11 Kideco の石炭性状(オーストラリア炭との比較、鉱区別の石炭性状)
水分
揮発分
灰分
硫黄分
発熱量
Pasir coal Australian coal
25%
8.00%
41.00%
30.00%
2.00%
15.00%
0.10%
0.70%
4800 Kcal/Kg 6300 Kcal/Kg
鉱区
R/North
R/South
R/Middle
SM
Susubang
水分(%)
19.6
24.9
24.8
30.7
20.2
灰分(%)
2.8
3.1
4.2
4.2
2.5
硫黄分(%)
0.11
0.11
0.1
0.12
0.12
発熱量(kcal/kg)
5,470
4,870
4,730
4,430
5,240
(出所)PT Indika Energy Tbk の公式サイト
PT Indika Energy Tbk の公式サイトによると、Kideco の石炭生産量は、1993 年に生産量 300 万ト
ンからスタートし、2013 年には約 3,400 万トン(2012 年比 7.5%増)に増加した。主な供給先は、
インドネシア国内では、Paiton(パイトン)
、Suralaya(スララヤ)、チラチャプ(Cilacap)の発電
所、米国の鉱山会社 Newmont Nusa Tenggara 等がある。主な輸出先は中国、インド、韓国、日本、
台湾、マレーシア等で、世界 16 カ国の 60 以上のユーザーに販売されている。主なユーザーには、
韓国電力公社(KEPCO)
、台湾電力公司(Taiwan Power Company)、日本の J-POWER や東北電力、
インドのタタ電力(Tata power)等がある。
表 2.2.12
Kideko の石炭の生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2,190
2,469
2,905
3,126
3,163
3,402
国内
558
561
660
736
769
933
販売量(万トン)
輸出
1,614
1,904
2,242
2,423
2,143
2,303
合計
2,172
2,465
2,902
3,159
2,912
3,236
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
Kideko の炭鉱では露天掘りが行われている。各鉱区で採掘された原炭は 3~11km 離れた粉砕処
理場まで 30 トンのダンプトラックで運ばれる。その後、40km 離れた自社専用の Tanah Merah Coal
Terminal(TMCT)
(Port)までトラックで運ばれて貯炭された後、バージ(8,000~1 万 2,000DWT
(載貨重量トン)
)で東カリマンタン沖合約 59km 地点にある Adang 湾まで運ばれ、石炭運搬船に
積み替えられる。
(4) PT Arutmin Indonesia(アルトミン・インドネシア社)36
Arutmin は 1981 年にインドネシア政府と CCoW 契約(第 1 世代)し、南カリマンタンで石炭生
産を行っている。CCoW のライセンスは 2019 年 9 月末まで有効。PT Bumi Resources Tbk.(ブミ・
リソーシズグループ)が 70%を出資する。Bumi Resources は 2001 年に BHP Billiton(ビーエイチ
ピー・ビリトン)から Arutmin を取得した。残り 30%の資本を出資するのはインドのタタ電力傘
下の投資ファンドである。
36
http://www.arutmin.com
- 41 -
表 2.2.13 Arutmin Indonesia の資本構成
株主
PT Bumi Resources Tbk.
ブミ・リソーシズ
Bhira Investment Ltd.
投資ファンド(インドのタタ電力傘下)
出資比率 企業の登録国籍
70.0%
インドネシア
30.0%
モーリシャス
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
Arutmin は南カリマンタンに 6 炭鉱(Senakin、Satui、Mulia、Kintap、Asam-Asam、Batulicin)
を有している。Senakin、Satui、Batulicin は世界有数の瀝青炭賦存炭鉱で、Mulia 、Asam-Asam は
亜瀝青炭の賦存量が多い。いずれも海岸から 20km 以内に位置する露天掘り炭鉱で、Pulau Laut 島
北部にある石炭積出港 North Pulau Laut Coal Terminal (NPLCT)に近い。
(出所)Arutmin Indonesia 公式サイトの資料を加工して作成
図 2.2.8 Arutmin の炭鉱及び NPLCT の位置
Arutmin5000~6250、Senakin、Satui、Ecocoal というブランド名の低品位炭があり、ユーザーの
ニーズに合わせてブレンドを行っている。
表 2.2.14 Arutmin の石炭性状
Total Moisture(ARB) 水分 (%)
Arutmin Arutmin Arutmin Arutmin Arutmin
Senakin Satui 10 Ecocoal
5000
5700
5900
6100
6250
14.30
5.5
6.5
5.0
4.5
4.5
6.0
20.5
Volatile Matter 揮発分 (%)
39.50
41.0
41.0
41.0
43.0
41.5
42.0
38.0
Ash 灰分 (%)
8.90
14.0
13.0
12.5
12.5
12.0
10.0
5.5
Total Sulfer 硫黄分 (%)
0.07
1.12
1.12
1.21
1.44
1.20
1.19
0.5
Nitrogen 窒素 (%)
1.15
1.30
1.30
1.30
1.43
1.30
1.30
1.01
Calorific value (GAR) 発熱量 (kcal/kg)
5,000
5700
5,900
6,100
6,250
6,250
6,300
4,050
(出所)Arutmin 公式サイトより作成
- 42 -
6 炭鉱で採掘された石炭は洗炭プラントへ運ばれた後、それぞれバージ港へ運ばれて粉砕処理
され、貯炭場に保管される。
 東 Senakin 炭鉱の石炭は 27km 先の Sembilang バージ港へ、西 Senakin 炭鉱の石炭は 15.5km 先
の Air Tawar 2 バージ港へ運ばれる。
 Satui 炭鉱の石炭は 45km 先の Muara Satui バージ港へ運ばれる。
 Batulicin 炭鉱の石炭は 70km 先の Batulicin バージ港へ運ばれる。
バージ港で 8 隻のカスタムメイドの self-discharging バージ(積載能力 7,000 dwt または 3,500 dwt)、
またはフラットトップ・バージに積み込まれ、North Pulau Laut Coal Terminal (NPLCT)や積み替え
ポイントへ運ばれる。NPLCT は 1994 年に開港した深水港で、年間輸出量は 140 万トン。4 バー
ジの同時受け入れが可能で、Arutmin の専用輸出ターミナルもある。
主な輸出先は中国、欧州、香港、インド、日本、マレーシア、フィリピン、台湾、タイで、特
に日本への輸出量が多い。
表 2.2.15 Arutmin の石炭の生産量と販売量(国内、輸出)
販売量(万トン)
年
生産量(万トン)
2008
1,574
国内
120
輸出
1,402
合計
1,522
2009
1,930
227
1,706
1,933
2010
2,043
330
1,714
2,045
2011
2,283
413
1,864
2,277
2012
2,416
397
2,010
2,407
2013
2,204
877
1,354
2,231
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
(5) PT Berau Coal (ベラウ・コール社)37
Berau Coal は、PT Berau Coal Energy Tbk.(PT Risco より社名を変更)が、全額出資子会社の PT
Armadian Tritunggai を通じてマネジメントしている。ちなみに、PT Berau Coal Energy Tbk.の親会
社は Asia Resource Minerals plc(ARMS)で、ARMS の資料(2014 年 8 月作成)38では、Berau Coal
の株式の 87.4%を保有と記載されている。
Berau Coal は 1983 年の設立と同時に CCoW(第 1 世代)を締結し、東カリマンタン州北部の
Tanjung Redeb(州都サマリンダから 300km)で石炭を生産している。鉱区は Tarakan(タラカン)
盆地にあり、露天掘りを行っている。CCoW のライセンスは 2025 年 4 月まで。
37
http://www.beraucoalenergy.co.id(PT Berau Coal)
、http://www.asiarmplc.com(Asia Resource Minerals plc)
http://www.asiarmplc.com/content/dam/asia-rm/corporate/documents/Presentations/2014/Aug%202014%20Interim%20Res
ults%202014.pdf
38
- 43 -
表 2.2.16 Berau Coal の資本構成
PT Armadian Tritunggai
Aries Investment Limited
Sojitz Corporation
株主
PT Berau Coal Energy Tbk.の全額出資子会社
投資ファンド
双日株式会社
出資比率
51.0%
39.0%
10.0%
企業の登録国籍
インドネシア
オーストラリア
日本
(注)Asia Resource Minerals plc の資料では、同社が Berau Coal の株式の 87.4%を保有と説明している。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
Berau Coal は、東カリマンタンに 3 炭鉱(Lati、Binungan、Sambarata)を有し、インドネシアの
マイニング・コントラクター5 社が石炭の採掘・輸送を担っている。香港の Noble Group Limited
がマーケティングを担当し、双日株式会社が販売権を得ている。
(出所)Asia Resource Minerals plc の公式サイトの資料を加工して作成
図 2.2.9 Berau Coal の 3 炭鉱とバージ港及び積み替えポイント
Lati 炭鉱と Sambarata 炭鉱の石炭は、Lati 港(河港)と Sambarata 港(河港)から Sulawesi 海沖
合の Muara Pantai 積み替えポイントまでバージで輸送され、大型運搬船に沖積みされる。Binungan
炭鉱の石炭は Suaran 港(河港)までトラック輸送され、Muara Pantai 積み替えポイントまでバー
ジで輸送される。
Berau Coal の石炭は灰分や硫黄分が少ない亜瀝青炭で、炭鉱別の石炭発熱量は Lati 炭鉱が 5,055
~5,115kcal/kg、Sambarata 炭鉱が 5,505~6,050kcal/kg、 Binungan 炭鉱が 4,000~5,860 kcal/kg であ
る。5 種類の石炭ブランド(Eboni、Mahoni、MahoniB、Agathis、Sungkai)がある。
- 44 -
表 2.2.17 Berau Coal の生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2008
2009
2010
2011
2012
2013
1,305
1,434
1,738
1,944
1,902
1,971
国内
491
412
442
247
329
303
販売量(万トン)
輸出
819
1,002
1,265
1,735
1,562
1,655
合計
1,310
1,414
1,707
1,982
1,892
1,958
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
生産量の 8 割を輸出しており、特にアジア向けが多い。ここ数年は中国への輸出量が急増し、
同社最大の輸出先になっている。2013 年の石炭販売量に占める国・地域別シェアは、中国(36.2%)、
インドネシア(15.0%)
、台湾(12.1%)、インド(9.8%)、韓国(9.8%)、香港(2.9%)、その他ア
ジア諸国(4.7%)であった。ただ、2014 年には中国リスクを懸念して、対インド輸出拡大方針を
打ち出した。インドネシア国内向けでは、PT Indonesia Power(インドネシアパワー社)の UBP
Suralaya、PT Jawa Power(ジャワ・パワー社)等に石炭を供給している。
(出所)Asia Resource Minerals plc の 2013 年年次報告書より作成
図 2.2.10 2013 年の Berau Coal の石炭販売先とシェア(売上ベース)
(6) PT Indominco Mandiri(インドミンコ・マンデリ社)39
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
(インド・タムバンガラヤ・メガウ・グループ)40の全
額出資子会社である。0.01%を出資する PT Kitadin も同じく ITM の子会社である。ちなみに ITM
の大株主はタイの Banpu Group(バンプ・グループ)で、PT Centralink Wisesa International(CWI)
を通じて ITM に出資している。Indominco Mandiri は 1988 年に設立され、1990 年 10 月に CCoW
(第 1 世代)を締結し、東カリマンタンの Kutai 県での石炭採掘権を得た。West Block と East Block
の 2 鉱区を有する。
39
40
http://www.itmg.co.id
http://www.itmg.co.id
- 45 -
表 2.2.18 Indominco Mandiri の資本構成
出資比率(%) 企業の登録国籍
株主
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
(インド・タムバンガラヤ・メガウ)
99.99%
インドネシア
PT Kitadin
インド・タムバンガラヤ・メガウの子会社
0.01%
インドネシア
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
(注)
2013 年石炭生産第 10 位の PT Trubaindo Coal Mining も PT Indo Tambangraya Megah Tbk が全額出資している。
(出所)PT Indo Tambangraya Megah Tbk.公式サイトの資料を加工して作成
図 2.2.11
Indomico と Trubaindo の炭鉱の位置
2014 年 10 月、ITM と Banpu グループは、インドネシア国内の傘下企業(PT Indominco Mandiri、
PT Trubaindo Coal Mining、PT Bharinto Ekatama、PT Kitadin、PT Jorong Barutama Greston)に関して、
従来のマーケティング面での協力に加え、販売面でも連携する契約を結んだ41。
表 2.2.19
Indominco Mandiri の生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2008
2009
2010
2011
2012
2013
1,080
1,240
1,425
1,476
1,471
1,519
国内
62
45
87
155
185
168
販売量(万トン)
輸出
1,140
1,313
1,363
1,331
1,276
1,641
合計
1,202
1,358
1,450
1,486
1,461
1,809
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
41
http://www.idnfinancials.com/jp/n/8885/Indo-Tambangraya-adds-sales-services-agreement-with-Banpu
- 46 -
(7) PT Bukit Asam (Persero) Tbk. (PTBA)(国営石炭公社のブキット・アッサムグループ)42
インドネシアの石炭企業で唯一の国営企業で、1981 年 3 月に株式会社化され、2002 年 12 月に
インドネシア株式市場に上場した。スマトラ島とカリマンタン島(東カリマンタン州)に 4 炭鉱
(生産 IUP)を有し、石炭生産とブリケット生産を手がけている。国内・海外向けの専用石炭積
出港を有している。6 ヵ所の石炭火力発電所を他社と共同運営している。
表 2.2.20 PTBA の資本構成
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
スマトラ島に Tanjung Enim(タンジュンエニム)
、Ombilin(オンビリン)
、Peranap の 3 炭鉱、
東カリマンタン州に Palaran(IPC)炭鉱を有しており、8 種類の石炭ブランド(発熱量(adb)5,500
~7,600kcal/kg)を販売している。
(出所)PTBA 公式サイトの資料を加工して作成
図 2.2.12 PTBA の傘下炭鉱の位置
42
http://ptba.co.id
- 47 -
表 2.2.21 PTBA の石炭ブランドと石炭性状
(出所)PTBA 公式サイト
積出港としては、Bandar Lampung の Tarahan(タラハン)港、Kertapati(クルタパティ)バージ
港(南スマトラ)
、Teluk Bayur 港(Padang、西スマトラ)がある。現在、タラハン港、クルタパテ
ィ港からの石炭はスマトラ鉄道で輸送されており、2013 年の輸出入送量は 1,280 万トン(2012 年
の 1,190 万トンから 7.5%増)に達した。2013 年の Tanjung Enim 炭鉱からタラハン港までの鉄道輸
送量は 1,093 万トン(2012 年の 1,021 万トンから 7.34%増)
、Tanjung Enim 炭鉱からクルタパティ
港までの鉄道輸送量は 188 万トン(2012 年の 171 万トンから 9.9%増)であった。PTBA は鉄道輸
送力を強化する方針で、Tanjung Enim 炭鉱から Srengsem 港(Lampung 県)までの新規鉄道の建設
も計画されている。
表 2.2.22 PTBA の生産量と販売量
年
2009
2010
2011
2012
2013
生産量
(万トン)
1,160
1,244
1,295
1,397
1,509
国内
807
823
875
843
817
販売量(万トン)
輸出
442
472
472
691
959
合計
1,248
1,295
1,347
1,533
1,776
(注)
「Indonesian Coal Book 2014/2015」の PTBA 概要ページのデータを使用。表 2.2.3 の各社統計
と出所が異なるため、数値が若干異なっている。
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
(8) PT Mahakam Sumber Jaya (MSJ)(マハカム・サンバー・ジャヤ)43
本章第 1 節でも述べた通り、MSJ は PT Harum Energy Tbk.(HRUM、ハルム・エナジー・グル
ープ)が株式の 8 割を握る石炭生産企業で、1994 年に設立された。2000 年に CCoW(第 3 世代)
を締結し、2004 年から東カリマンタンで石炭開発を行っている。ライセンスは 2034 年 9 月まで。
43
http://www.harumenergy.com
- 48 -
表 2.2.23 MSJ の資本構成
株主
PT Harum Energy Tbk.
PD Bara Kaltim Sejahtera
ハルム・エナジー(HRUM)
地方自治体公社
出資比率(%)
80%
20%
企業の登録国籍
インドネシア
インドネシア
(注)PD は地方自治体公社(Perusahaan Daerah)の略
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
HRUM は高品位炭の生産企業として知られており、傘下の MSJ は発熱量 5.800~6,400kcal/kg の
「Tanito Coal」ブランドの一般炭(瀝青炭)を生産している。生産量のほとんどが、韓国、中国、
台湾、日本、インド等へ輸出されており、火力発電所等で使用されている。また、HRUM のマイ
ニング・コントラクターは、MSJ の他に、PT Santan Batubara(SB)と PT Tambang Batubara Harum
(TBH)
の 2 社がある。
MSJ がライセンスを有する鉱区は、
東カリマンタン州のサマリンダ市(Utara
地区)~Kutai 県の Tenggaron Seberang と Marangkuyu 地区である。
MSJ の石炭生量と石炭販売量は年々拡大している。販売量のほとんどが輸出向けで、
「Indonesian
Coal Book 2014/2015」のデータによると、2013 年は販売量の 100%が輸出であった。
表 2.2.24 MSJ の石炭生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2010
2011
2012
2013
555
702
830
866
国内
61
42
7
-
販売量(万トン)
輸出
298
416
543
875
合計
517
797
882
993
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
洗炭プラントで処理された石炭は、
Separi 港から約 143km 離れた Muara Jawa 積み替えポイント、
または約 265km 離れた Muara Berau まで、マハカム川沿いにバージで運ばれる。
(9) PT Jembayan Muarabara (JMB)(ジェンバヤン・ムアラバラ)44
シンガポールの石炭生産企業 Sakari Resources Limited(SAR)(サカリ・リソーシーズ)とその
系列 2 社(PT Kemilau Rindang Abadi(KRA)、PT Arzara Baraindo Energitama(ABE))が全額出資する
子会社。SAR はタイ石油公社(PTT)グループが出資する石炭生産企業で、カリマンタン島に
Jembayan(ジェンバヤン)と Sebuku(セブク)の 2 つの炭鉱を有し、アジアや欧州の電力会社に
石炭を販売している。SAR はまた、南カリマンタン州の PT Bahari Cakrawala Sebuku(CCoW 第 2
世代)にも出資している。
44
http://www.sakariresources.com
- 49 -
表 2.2.25 JMB の資本構成
株主
Sakari Resources Limited
サカリ・リソーシズ(エネルギー企業)
出資比率(%)
企業登録国籍
100%
シンガポール
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
東カリマンタン州の Jembayan 炭鉱(バリクパパンの北西 150km 地点)は、2004 年に KP 炭鉱
となり、2009 年の新鉱業法施行に伴い IUP 炭鉱に移行した。Jembayan 炭鉱で採掘された石炭は、
専用バージ港からマハカム川を下り、Muara Berau 港または Muara Jawa 港へ運ばれる。
(出所)Sakari Resources の公式サイト
図 2.2.13 SAR が権益を有するインドネシアの炭鉱と関連事務所の位置
Jembayan 炭鉱の石炭は発熱量 5,500kcal/kg の一般炭(亜瀝青炭)で硫黄分と水分が少ない。
表 2.2.26 Jembayan 炭鉱と Sebuku 炭鉱の石炭性状
Sebuku
(セブク)
6,000
Quality Comparison
発熱量 (Gross Calorific Value) kcal/kg GAR (NEWS 6,300)
Jembayan
(ジェンバヤン)
5,500
15
全水分 (Total Moisture) (%GAR (NEWSC Max 15)
20
9.3
灰分 (Ash) %AD (NEWC Max 14)
7
0.68
硫黄分 (Sulphur) %AD (NEWC Max 0.75)
0.7
(出所)Sakari Resources の公式サイト
なお、石炭販売は SAR の全額出資子会社であるシンガポールの Tiger Energy Trading(タイガー・
エネルギー・トレーディング社)が担当しており、アジアの発電所に供給されている。日本の三
- 50 -
井松島産業株式会社が Tiger Energy Trading の対日一部需要家向け販売権を獲得している45。ちな
みに、JMB は PT Pamapersada Nusantara(PAMA)とマイニング・コントラクター(採掘請負業者)
の契約を結んでおり、PAMA は 1993 年の設立以来、コマツの鉱山機械を購入している46。
SAR の 2012 年及び 2013 年の年次報告書によると、Jembayan 炭鉱は同社の石炭生産量と販売量
の 7 割強~8 割強を占めている。また、2011 年の生産・販売実績と比較すると、Jembayan 炭鉱の
石炭生産量と石炭販売量は 2012 年から 2 年連続で減少している。
表 2.2.27 Jembayan 炭鉱と Sebuku 炭鉱の石炭の生産量と販売量
(出所)Sakari Resources の 2013 年及び 2012 年年次報告書より作成
また、SAR の 2013 年年次報告書によると、2013 年は輸出ターゲットを中国とインドに絞った
が、他社との市場競争が激しく、国際炭価格の下落の影響もあって思うような業績が上げられな
かったとしている。また、中国で国産炭重視の動きが出たことも売り上げに影響したとしている。
同社の 2013 年の平均石炭販売価格は US$85.26/トンで、2012 年の US$96.96/トンより低下した。
(ち
なみに、2013 年の Newcastle Index は年初 US$93/トンでスタートしたが、7 月に US$77/トンに低
下し、同年末は US$86/トンであった)
(10) PT Trubaindo Coal Mining(TCM)
(トゥルバインド炭鉱)47
インドネシアの石炭企業グループ、PT Indo Tambangraya Megah Tbk., ITM(インド・タムバンガ
ラヤ・メガウグループ)とその子会社 PT Kitadin による全額出資子会社。なお、ITM の大株主は、
既述の通り、タイの Banpu Group(バンプ・グループ)である。
(Trubaindo 炭鉱の位置は Indominco
Mandiri の記述箇所を参照)
表 2.2.28 Trubaindo Coal Mining の資本構成
株主
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
PT Kitadin
インド・タムバンガラヤ・メガウ(ITM)
ITMの子会社
出資比率(%)
99.99%
0.01%
企業の登録国籍
インドネシア
インドネシア
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
TCM は 1990 年 3 月に設立され、1994 年に CCoW(第 2 世代)を締結し、東カリマンタン州で
石炭生産を行っている。ライセンスの有効期間は 2035 年 2 月 27 日まで。Trubaindo 炭鉱は東カリ
マンタン州の西 Kutai 県の Muara Lawa、Bentian Besar、Muara Pahu、Damai 地区に広がっている。
45
46
47
三井松島産業株式会社 2014 年 3 月期決算説明資料
(http://www.mitsui-matsushima.co.jp/pdf/new_53633fa688227.pdf)
http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/001503.html
http://www.itmg.co.id
- 51 -
TCM は発熱量(adb)6,300~7,000kcal/kg の高品位炭(硫黄分 0.7-1.8%)を生産している。洗炭・
粉砕処理された石炭は、マハカム川沿いにある Mura Bunyut 村のバージ港までトレーラーで運ば
れた後、バージでマハカム川を下り、Bontang Coal Terminal(BoCT)か Balikpapan Coal Terminal(BCT)
に運ばれる。
表 2.2.29 PT Trubaindo Coal Mining(TCM)の石炭性状
(注)左側の枠内が TCM の各石炭ブランドと石炭性状
(出所)Indo Tambangraya Megah Tbk.の公式サイト(http://www.itmg.co.id/en/page/marketing)
2013 年の生産量は 866 万トンで、2013 年は全販売量の 84%を輸出した。
表 2.2.30 Trubaindo Coal Mining の石炭生産量と販売量(国内、輸出)
年
生産量(万トン)
2010
2011
2012
2013
555
702
830
866
国内
255
266
195
168
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
- 52 -
販売量(万トン)
輸出
298
416
543
875
合計
553
682
738
1,043
2.3 外国資本による炭鉱権益獲得状況
外国資本によるインドネシアの炭鉱権益獲得状況を正確に把握することはなかなか難しい。こ
れは、一つには、インドネシアの炭鉱開発ライセンスには、国が認可・付与するライセンス(CCoW)
と地方政府が認可・付与するライセンス(IUP)の 2 種類があり、地方の小規模炭鉱まで全てを網
羅した同一時期のデータの入手が困難であることがある。もう一つには、公表されている石炭生
産企業(炭鉱)の資本構成データは、出資企業名とその企業の登録国籍をベースにまとめられて
おり、事実上の出資者が分かりにくいことが挙げられる。例えば、①出資者として記載されてい
る企業には、モーリシャスやケイマン諸島のタックスヘブンで登録された企業もある、②各国企
業がインドネシアや他地域の現地法人(子会社)を通じて出資しているケースでは、親会社では
なく、現地法人の企業登録国籍が記載される、③インドネシアの石炭大手に出資することでその
傘下炭鉱の権益を間接的に獲得しているケースもあり、この場合はインドネシアの石炭大手が出
資者として記載されている。さらに言えば、石炭生産企業や炭鉱の資本構成(株式取得状況)は
日々刻々と変化している。
こうした現状を念頭に置き、本節では、まず、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」のデータをも
とに、
インドネシアの主な石炭生産企業 230 社と炭鉱 62 ヵ所の外資出資状況を把握した48。次に、
このデータから漏れている情報を補足し、外国資本による炭鉱権益獲得状況の把握に努めた。
2.3.1 主な石炭生産企業・炭鉱の外資出資状況
上記の調査結果から、現時点で、直接または間接的に外資の出資が確認できたインドネシアの
石炭生産企業は 61 社(表 2.3.1)で、さらに、この他に外資の採掘鉱区が 30 鉱区近くある。表 2.3.1
を見ると、出資企業の国別ではオーストラリアが圧倒的に多く、31 社に出資している。
オーストラリア資本の出資が確認できる炭鉱の中では、資源メジャーの BHP Billiton(ビーエイ
チピー・ビリトン)の存在感が大きく、IndoMet Coal Project(ICP)として、Adaro Energy と JV
を組み(BHP Billiton の出資比率 75%)
、中央カリマンタンや東カリマンタンで PT Juloi Coal 等の
7 つの CCoW(第 3 世代)を締結している(図 2.3.1 参照)
。なお、BHP Billiton は厳密には豪英資
本であるが、ここではオーストラリア資本としてカウントする。
Cokal Limitedm も 4 社(出資比率 60~80%)に出資している。オーストラリアの投資ファンド
Aries Investment Limited は、2013 年石炭生産量第 5 位の PT Berau Coal に出資(39%)している。
さらに、Orpheus Energy Ltd.(オルフェウス・エナジー)、Altura Mining 等が 11 炭鉱に出資または
JV で開発プロジェクトを推進している。
48
炭鉱 62 ヵ所については、外資出資企業の登録国籍データはあるが出資比率は不明。
- 53 -
表 2.3.1 インドネシアの主要石炭生産企業と外資の出資状況
出資企業
石炭生産企業
炭鉱所在地
出資企業の大株主/親会社/投資企業
外資比率
登録国籍
企業名
登録国籍
確認埋蔵量
(百万トン)
企業名
1
PT Adaro Indonesia
南カリマンタン
0.002% シンガポール
Coaltrade Services International Pte. Ltd
2
PT Anugerah Alam Katingan
中央カリマンタン
75.00% オーストラリア
Cokal Ltd.
3
PT Anugerah Alam Manuhing
中央カリマンタン
75.00% オーストラリア
Cokal Ltd.
4
PT Arutmin Indonesia
南カリマンタン
30.00% モーリシャス
Bhira Investment Ltd.
インド
The Tata Power Company Ltd.
277.00
5
PT Bahari Cakrawala Sebuku
南カリマンタン
80.00% シンガポール
Sakari Resources Ltd.
タイ
タイ石油公社(PTT)グループ
22.10
6
PT Bara Alum Utama
南スマトラ
30.00% シンガポール
Bravo Synergy Pte. Ltd.
日本
Sojitz Corporation
7
PT Baradinamika Muda Sukses
東カリマンタン
8
PT Baramulti Suksessarana Tbk.
東カリマンタン
インド
The Tata Power Company Ltd.
9
PT Baramultiara Prima
南スマトラ
3.00% 日本
南スマトラ
Khopoli Investments Ltd.
25.00% シンガポール
Sumatera Holding Pte. Ltd.
9.43% セイシェル
Bergamot Worldwide Ltd.
8.20% シンガポール
Horizon Capital Investments Pte. Ltd.
11 PT Berau Coal
東カリマンタン
12
13
14
15
16
東カリマンタン
東カリマンタン
中央カリマンタン
東カリマンタン
中央カリマンタン
PT Bina Insan Sukses Mandiri
PT Binamitra Sumberarta
PT Borneo Bara Prima
PT Borneo Emas Hitam
PT Bumi Barito Mineral
17 PT Bumi Enggang Khatulistiwa
東カリマンタン
18 PT Coal Soil Brik
19 PT Dua Putri Kutor
20 PT Garda Tujuh buana Tbk.
中央カリマンタン
東カリマンタン
北カリマンタン
21 PT Graha Panca Karsa
北カリマンタン
22
23
24
25
26
東カリマンタン
中央カリマンタン
中央カリマンタン
東カリマンタン
南カリマンタン
PT Indominco Mandiri
PT Interex Sacra Raya
CV Jangkar Prima
PT Jembayan Muarabara
PT Jorong Barutama Greston
27 PT Juloi Coal
東カリマンタン
28 PT Kalimantan Energi Lestari
29 PT Kalteng Coal
南カリマンタン
中央カリマンタン
30 PT Kaltim Prima Coal (KPC)
東カリマンタン
31 PT Karya bumi Baratama
32 PT Katingan Ria
南スマトラ
中央カリマンタン
33 PT Kendilo Coal Indonesia
東カリマンタン
34 PT Kideco Jaya Agung
35 PT Kitain
東カリマンタン
東カリマンタン
36 PT Lahai Coal
中央カリマンタン
5.00%
0.03%
39.00%
10.00%
10.00%
33.33%
60.00%
80.00%
80.00%
99.98%
0.02%
80.00%
100.00%
26.61%
76.82%
8.00%
99.99%
5.00%
99.88%
100.00%
99.99%
33.54%
41.46%
100.00%
75.00%
30.00%
19.00%
90.92%
51.00%
99.99%
0.01%
49.00%
99.99%
モーリシャス
インド
オーストラリア
日本
インド
インドネシア
オーストラリア
インドネシア
オーストラリア
インドネシア
インドネシア
オーストラリア
インドネシア
シンガポール
オーストラリア
米国
インドネシア
英領バージン諸島
シンガポール
シンガポール
インドネシア
オーストラリア
オーストラリア
スイス
オーストラリア
モーリシャス
中国
韓国
ケイマン諸島
米国
日本
韓国
インドネシア
-
Idemitsu Kosan Co.,Ltd.
26.00% モーリシャス
94.97% インドネシア
10 PT Barasentosa Lestari
1455.70
-
インド
GMR Infrastructure Ltd.
GMR Energy Ltd.
PT Unsoco
Aries Investment Ltd.
Sojitz Corporation
Subhash Kabini Power Corporation Ltd
PT Delta Ultima Coal
Cokal Ltd.
インド
GMR Infrastructure Ltd.
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
39.35% オーストラリア
BHP Minerals Asia Pacific Pty. Ltd.
55.00% タイ
Lanna Resources Public Co. Ltd.
10.00% シンガポール
Pan-United Investment Pte. Ltd
99.08
476.00
オーストラリア Altura Mining Ltd.
オーストラリア Killara Resources Ltd.
35.65% オーストラリア
20.40
93.00
PT Duta Sarana Internusa
Cokal Ltd.
PT Sumber Bara Jaya
Richard Kennedy Melati
Jatenergy Ltd.
PT Bestindo Energy
Green River Pte. Ltd
Kangaroo Resources Ltd.
KAL Energy Inc.
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
Pacific Chimes International Ltd.
Bajaj Hindusthan (Singapore) Private Ltd.
Sakari Resources Limited
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
BHP Minerals Asia Pacific Pty. Ltd.
Mercuria energy Trading S.A.
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
Bhira Investment Ltd.
China Investment Corporation(CIC)
CircleOne Consulting Inc.
Kalres Ltd.
Kendilo Coal LLC
Nippon Coke & Engineering Company Ltd.
Samtan Co.Ltd
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
-
10.40
-
シンガポール
GEO Energy Resources Ltd.
カナダ
Challenger Deep resources Corp.
100.00
95.16
タイ
米国
インド
タイ
タイ
Banpu Group
Chimes Inc.
Bajaj Hindusthan Ltd.
タイ石油公社(PTT)グループ
Banpu Group
144.40
5.20
90.90
144.40
3.80
-
(IndoMet Coal Project)
インド
(IndoMet Coal Project)
The Tata Power Company Ltd.
オーストラリア Realm Resources Ltd.
25.20
805.00
29.10
27.04
タイ
Banpu Group
(IndoMet Coal Project)
192.00
16.20
-
37 PT Lanna Harita Indonesia
東カリマンタン
38 PT Mahakam Bara Energi
東カリマンタン
99.00% インドネシア
PT Karsa Optima Jaya
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
-
39 PT Mahakam Energi Lestari
東カリマンタン
99.00% インドネシア
PT Karsa Optima Jaya
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
-
40 PT Mamahak Coal Mining
東カリマンタン
99.00% インドネシア
PT Karsa Optima Jaya
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
-
41 PT Mandira Mitra Coalindo
東カリマンタン
100.00% シンガポール
Transasia Pacific GGNR Pte Ltd.
インド
Transasia Pacific GGNR Pte Ltd
-
42 PT Marunda Graha Mineral
中央カリマンタン
23.50% オーストラリア
Itochu Coal Resources Australia Pty. Ltd
日本
ITOCHU Corporation
-
43 PT Maruwai Coal
中央カリマンタン
75.00% オーストラリア
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
44 PT Minemex Indonesia
ジャンビ
45 PT Multi Harapan Utama
東カリマンタン
40.00% オーストラリア
Private Resources Pty. Ltd
46 PT Nusantara Termal Coal
中央カリマンタン
90.00% シンガポール
Stone Oak Pte. Ltd.
インドネシア
47 PT Orkida Makmur
東カリマンタン
99.00% インドネシア
Kangaroo Resources Ltd.
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
-
48 PT Pancaran Surya Abadi
東カリマンタン
PT Techventure Indocoal
オーストラリア Australian Coal FE Resources Ltd.
-
49 PT Pari Coal
中央カリマンタン
(IndoMet Coal PJ)
-
50 PT Pola Andhika Realtor
東カリマンタン
51 PT Prima Perkasa Abadi
西スマトラ
52 PT Ratah Coal
中央カリマンタン
100.00% インドネシア
?
インドネシア
21.36
PT Thriveni
58.89% オーストラリア
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
16.11% オーストラリア
BHP Minerals Asia Pacific Pty. Ltd.
? オーストラリア
100.00% オーストラリア
(IndoMet Coal PJ)
インド
Thriveni Earthmovers Private Ltd.
PT Permata Prima Sakti
15.00% オーストラリア
BHP Minerals Asia Pacific Pty. Ltd.
(IndoMet Coal PJ)
53 PT Sarwa Sembada Karya Bumi
ジャンビ
95.00% UAE
Monnet Global Ltd.
インド
54 PT Silau Kencana
東カリマンタン
99.00% インドネシア
Kangaroo Resources Ltd.
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
55 PT Singlurus Pratama
東カリマンタン
65.00% シンガポール
Lanna (Singapore) Ptr. Ltd.
タイ
56 PT Sumber Api
東カリマンタン
99.00% インドネシア
Kangaroo Resources Ltd.
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
57 PT Sumber Barito Coal
中央・東カリマンタン
75.00% オーストラリア
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
58 PT Suprabari Mapanindo Mineral
中央カリマンタン
23.50% オーストラリア
Itochu Coal Resources Australia Pty. Ltd
日本
59 PT Tanur Jaya
東カリマンタン
99.00% インドネシア
Kangaroo Resources Ltd.
オーストラリア Kangaroo Resources Ltd.
60 PT Transcoal Minergy
南カリマンタン
75.00% オーストラリア
Pan Asia Corporation
61 PT Trubaindo Coal Mining
東カリマンタン
99.99% インドネシア
PT Indo Tambangraya Megah Tbk.
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、各種情報をもとに作成
- 54 -
22.91
-
Adavale Resources Limited
BHP Minerals Holdings Pty. Ltd
62.50
(JV)South East Asia Resources Ltd.
60.00% オーストラリア
-
Monnet Ispat & Energy Ltd.
Lanna Resources Public Co., Ltd.
(IndoMet Coal PJ)
ITOCHU Corporation
17.06
40.80
-
タイ
Banpu Group
-
表 2.3.2 その他の外資の採掘鉱区の例
外資の採掘鉱区
企業の国籍
外資企業名
外資の採掘鉱区
企業の国籍
外資企業名
1
PT Astri Prima
オーストラリア Advale Resources Limited
15 Bunyu炭鉱
インド
Adaniグループ
2
CV Atan Bara Sejahtera
オーストラリア Jatenergy Limited
16 Brayan Binta Tiga Energi
インド
Reliance Power (Relianceグループ)
3
PT Citra Bara Prima
オーストラリア Orpheus Energy Limited
17 Sriwijaya Bintan Tiga Energi
インド
Reliance Power (Relianceグループ)
4
PT Karya Putra Bersama
オーストラリア Jatenergy Limited
18 PT Bara Kumale Sakti
インド
Archean Group
5
PT Pelita Dian Petangi
オーストラリア Orpheus Energy Limited
19 PT Kaltim Global
インド
Archean Group
6
PT Pelita Kharisma Kenanga
オーストラリア Orpheus Energy Limited
20 PT Lamindo Inter Multikon
インド
Adani Enterprises Limited
7
PT Suryaraya Cahaya Cemerlang
オーストラリア Altura Mining Limited
21 PT Mitra Niga Mulia
インド
Adani Enterprises Limited
8
PT Suryaraya Permata Khatulistiwa
オーストラリア Altura Mining Limited
22 PT Rekasindo Guriang Tadang
インド
Archean Group
9
PT Suryaraya Pusaka
オーストラリア Altura Mining Limited
23 PT Sarolangun Bara Prima
インド
Archean Group
10 PT Unindo Prima Sarana
オーストラリア Padang Resources Limited
24 Putra Muba Coal
インド
―
11 CV Wijaya Mulia
オーストラリア Jatenergy Limited
25 Madhucon Indonesia
インド
―
12 PT Citra Segara Pratama
米国
PHI Group
26 Pacific Global Resources
インド
13 PT Hasil Bumi Persada
米国
PHI Group
27 PT Arni Bersaudara
カナダ
Challenger Deep Resources Corp.
14 PT Hasil Bumi Persada
米国
PHI Group
28 PT Tri Tunggal Pitriati
タイ
Energy Earth public Company Limited
―
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
、各種情報をもとに作成
(出所)BHP Billiton の資料(IndoMet Coal and Indonesia A mutually beneficial relationship)2012 年 4 月 17 日
図 2.3.1 BHP Billiton の IndoMet Coal Project(ICP)
インドは、インドネシアの石炭生産企業社 9 社に出資している。The Tata Power Company Ltd.
(タタ電力)が、2013 年石炭生産量第 1 位の PT Kaltim Prima Coal(30%)
、同年石炭生産量第 4
位の PT Arutmin Indonesia(30%)に出資している。なお、Tata Power は保有する KPC 株 30%のう
ち 5%を、同じく保有する Arutmin 株 30%をインドネシアの大手財閥バグリー・グループに売却す
る計画であると報道されている49。この他、インドの新興財閥の Adani(アダニ・グループ)や
Reliance(リライアンス・グループ)がインドネシアに採掘鉱区を持っている(表 2.3.2 参照)。
Adani は東カリマンタン州の Bunyu 島に鉱区を、Reliance は南スマトラ州に 3 鉱区(Brayan Bintan
Tiga Energi が 2、Sriwijaya Bintan Tiga Energi が 1)を有し、インドの自社石炭火力発電所に南スマ
トラ産の低品位炭を供給する Krishnapatnam Ultra Mega Power Project を実施している50。2013 年時
49
時事通信社「時事速報」2014 年 7 月 8 日(https://www.digima-japan.com/IDS14070801.pdf)、Barron’s Asia2014
年 10 月 23 日(http://online.barrons.com/articles/legal-stoush-could-recharge-indias-tata-power-1414026419)等
50
Adani Mining の公式サイト(http://www.adanimining.com/indonesia-location-of-bunyu)、Reliance Power の公式サイ
- 55 -
点で南スマトラ州のインド資本鉱区は 6 つである51。
(出所)Adani Mining の公式サイト
図 2.3.2 Adani の採掘鉱区(東カリマンタン州 Bunyu 島)の位置
(出所)Reliance Power の公式サイト
図 2.3.3 Reliance のインドネシア産低品位炭の供給ルート
シンガポールは、インドネシアの石炭生産企業 8 社に出資している。シンガポールの石炭大手
Sakari Resources Limited(サカリ・リソーシーズ)は、2013 年石炭生産量第 9 位の東カリマンタン
の PT Jembayan Muarabara(ジェンバヤン炭鉱を保有)の全資本を出資しており、南カリマンタン
の PT Bahari Cakrawala Sebuku(セブク炭鉱を保有)の資本の 80%を握っている。なお、Sakari
ト(http://www.reliancepower.co.in/business_areas/fuel_business/coal_mines_in_indonesia/factsheet.htm)
51
http://coal.jogmec.go.jp/result/docs/083.pdf
- 56 -
Resources の大株主はタイ石油公社(PTT)グループである。
タイは、インドネシアの石炭生産企業 6 社に出資している。Banpu Group は、2013 年石炭生産
量第 6 位の PT Indominco Mandiri、同第 10 位の PT Trubaindo Coal Mining 等を傘下に有するインド
ネシアの石炭大手 PT Indo Tambangraya Megah Tbk.に出資するとこで、間接的にそれらの炭鉱権益
を獲得している。
日本は、インドネシアの石炭生産企業 5 社に出資している。出光興産株式会社は、2012 年に石
炭生産会社バラムルチグループ傘下の PT Baramulti Suksessarana Tbk.(バラムルチ・サクセサラー
ナ・グループ)の株式の 3%を取得した。同グループは南カリマンタンの Antang Gunung Meratus
Mine(AGM 鉱山)等を保有している。2014 年 7 月には同グループ傘下の PT Mitrabara Adiperdana
(ミトラバラ・アディペルダナ社)の株式の 12%を取得し、同年 11 月に出資比率を 30%に引き上
げた。傘下のマリナウ鉱山(東カリマンタン)から 2014 年に 72 万トンの石炭を購入し、2015 年
には 120 万トンまで拡大する計画とされる52。
また、双日株式会社が 2013 年石炭生産量第 5 位の PT Berau Coal1(出資比率 10%)と南スマト
ラの PT Bara Alum Utama(出資比率 30%)に、日本コークス工業株式会社が PT Kendilo Coal
Indonesia(同 0.01%)
、伊藤忠商事株式会社がオーストラリア現地法人を通じて PT Marunda Graha
Mineral(同 23.5%)と PT Suprabari Mapanindo Mineral(同 23.5%)に出資している。
この他、石炭販売会社に出資する形で、三井松島産業株式会社が 2012 年に石炭販売会社 PT
Gerbang Daya Mandiri の株式 30%を取得している。同社はまた、インドネシアの ABK 炭鉱(PT.
Agugerah Bara Kalimantan Timur)の対日独占販売権、Jembayan 炭鉱と Sebuku 炭鉱を有するシンガ
ポールの Sakari Resources Limited の子会社である Tiger Energy Trading(タイガー・エネルギー・
トレーディング社)の対日一部需要家向け販売権を獲得している。
2.3.2 その他
「Indonesian Coal Book 2014/2015」のデータには、インドネシア炭の主要輸出先ある中国の権益
獲得情報は見当たらない。中国の石炭生産企業の海外投資先ではオーストラリアが多く、兗州煤
業(Yanzhou Coal)
、神華集団(Shenhua Group)等の出資実績がある。インドネシアでは、2009
年に中国の政府系投資ファンド、中国投資有限責任公司(China Investment Corporation, CIC)が PT
Bumi Resources Tbk.に 19 億ドルを投資し、2014 年 7 月に Bumi Resources Tbk.は保有する KPC 株
の中から全体の 19%を China Investment Corporation(CIC)に譲渡した(本章 2.2.2(1)KPC の資本
構成に関する記述を参照)
。また、2014 年 11 月、神華集団(Shenhua Group)の上場子会社である
神華能源(China Shenhua Energy, CSEC)が、PT Adaro Power(アダロ・パワー)と合弁で石炭火
力発電所事業を実施すると発表した。出資比率は神華 51%、アダロ 49%になる見込みで、神華が
52
出光興産株式会社公式サイト(http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2014/141111.html)、出光興産株式会社プレ
スリリース(http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1164127)
、日経電子版 2014 年 11 月 11 日
(http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11HJK_R11C14A1TJ2000/)
- 57 -
アダロの石炭子会社に出資することでも合意したと報道された53。
なお、インドネシアで実施されている外資系企業の石炭探査プロジェクトの多くがオーストラ
リア資本によるものである。BHP Billiton(豪英)の IndoMet Coal プロジェクト、Orpheus Energy Ltd.
の高品位炭開発 B34 プロジェクト54、Pan Asia Corporation、Altura Mining Limited、Cokal Ltd.、
Kangaroo Resources Ltd.、Realm Resources Ltd.(以上、いずれもオーストラリア資本)等がある。
表 2.3.3 インドネシアにおける外資系企業による石炭探査プロジェクトの例
(出所)JOGMEC「インドネシアにおける外資系企業による石炭探査プロジェクトの紹介」2014 年 11 月 12 日
(http://www.jogmec.go.jp/content/300197964.pdf)
53
日経電子版 2014 年 11 月 25 日(http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX25H0X_V21C14A1FFE000/)
、
IDNFinancials(http://www.idnfinancials.com/jp/n/9085/Adaro-Energy-and-Shenhua-to-develop-power-plant)
54
Orpheus Energy の 2014 年 6 月の四半期報告書によると、同社は保有するインドネシアの 6 社の株式を PT Mega
Coal International(メガ・コール・インターナショナル)に譲渡することで合意したとしている。
- 58 -
第 3 章 石炭需給動向
本章ではまず、2013 年のインドネシアの経済動向を概略的に分析し、今後の動向、特に 2014
年後半からの原油価格暴落がインドネシア経済やエネルギー産業に与えるインパクトについて解
析する。次に、インドネシアのエネルギー需給事情について纏め、一次エネルギー需要に占める
石炭の位置付けを重点的に解析する。さらに、石炭の分野別の消費状況と政策について解析し、
石炭価格、石炭の国内供給問題などを取り上げる。最後に、石炭需給に関する課題を整理する。
また、本章の調査により、インドネシアの経済、エネルギー、特に石炭需給状況を把握し、第
Ⅲ部(第 10、11 章)の石炭需給予測の根拠とすることを目的としている。
3.1 2013 年の経済動向
インドネシア中央統計庁(Badan Pusat Statistik、BPS)の「Statistical Yearbook of Indonesia 2014」
によると、2013 年末時点のインドネシアの人口は 2 億 4,000 万人に達し、中国、インド、アメリ
カに次いで、世界で第 4 位である。また、2013 年の国内総生産(GDP)は 9,084 兆ルピアで、2013
年のインドネシアの公定為替レート(1 ドル=10,461 ルピア)で換算すると、8,683 億ドルとなり、
一人当たり GDP は 3,593 ドルとなった。
インドネシアの経済規模は、ASEAN 諸国の中で第 2 位のタイ(3,873 億ドル)、第 3 位のシン
ガポール(2,979 億ドル)の倍以上である。アジアでは、中国、日本、韓国に次ぐ、第 4 位の経済
大国である。2007 年以降のインドネシアの経済成長率は、アジア主要国の中で相対的に高いレベ
ルを維持している。
インドネシア
%
中国
日本
マレーシア
タイ
シンガポール
20.0
15.0
10.0
5.0
4.2
3.6
2000
2001
4.5
4.8
5.0
2002
2003
2004
5.7
5.5
6.3
6.0
6.2
6.5
6.3
5.8
2010
2011
2012
2013
4.6
0.0
2005
2006
2007
2008
2009
-5.0
-10.0
(出所)各国の経済統計
図 3.1.1 アジア主要国の経済成長率の推移
- 59 -
2008 年のリーマン・ショックで成長率が一時的に下がったが、2011 年の欧州債務危機でも 6%
を維持し、2010~2013 年の GDP 年平均成長率は 6.2%を記録した。
2013 年のインドネシアの経済構造を見ると、工業生産が全体の 36%を占め、商業は 33%、農業
は 14%、建設業は 10%、輸送業は 7%であった。また、近年、商業部門は、経済全体の GDP 成長
率より 2 ポイント以上高い成長率を記録している。インドネシアの経済構造は、農業の割合がや
や高く、工業の割合がやや低い。
(出所)BPS「インドネシア統計年鑑
2014」
図 3.1.2 2013 年のインドネシアの産業構成比
2013 年 GDP は対 2012 年比で 5.8%増加し、2000~2013 年の年平均成長率 5.4%より 0.4 ポイン
ト高く、2014 年 10 月に就任したジョコ・ウィドド大統領は、2016 年に経済成長率を 7.0%に押し
上げる方針を示した。しかし、中国経済の減速、エネルギー価格の暴落などにより、石炭などの
輸出が減少し、貿易・経常収支が赤字に転落した。2014 年 11 月のインドネシア中央統計庁の発
表によると、2014 年第 3 四半期の GDP 実質成長率は、2013 年同期比 5.01%増で、リーマン・シ
ョック後の 2009 年第 3 四半期(4.27%)以来 5 年ぶりの低水準となった。さらに、2015 年 2 月 2
日に中央統計庁が発表した資料では、2014 年 12 月の輸出額が、2013 年同月比で 13.8%減少した。
輸出額の減少は 3 か月連続で、主な輸出品の価格が大幅下落したことが影響した55。
ジョコ大統領は 2015 年 1 月 9 日、2015 年の補正予算案を国会に提出した。ユドヨノ前政権の
当初予算は国会で成立しているが、新政権はこれを大幅に修正した。歳出では、原油安が進む中
で燃料補助金を当初予算より 7 割削減し、その分をインフラ投資に充てている。財政赤字の名目
GDP 比は、当初予算の 2.2%から 1.9%に縮小するとしている56。
55
56
Economic News「 http://economic.jp/?p=44299」
Jetro「http://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/biznews/54c6e3d7376b8」
- 60 -
近年のインドネシアの輸出構造を見ると、石炭、ガス、原油、パームオイルなどの資源類への
依存度が高く、資源類の輸出額はインドネシアの輸出総額の 56%以上を占めており、特に、石炭
輸出額は輸出総額の 12.5%を占める。このため、2014 年に世界の原油および鉱産物の価格が暴落
したことは、インドネシア経済に打撃となった。
表 3.1.1 インドネシアの主な対外輸出品(単位:百万ドル)
2011
2012
石炭
金額
%
25,523 12.5
金額
%
24,293 12.8
金額
22,773
%
12.5
ガス
22,872 11.2
20,520 10.8
18,129
9.9
原油
13,829
6.8
12,293
6.5
10,205
5.6
6,698
3.3
6,278
3.3
6,306
3.5
17,261
8.5
17,602
9.3
15,839
8.7
ココナッツオイル
3,052
1.5
2,458
1.3
1,830
1.0
その他動物・植物油
1,342
0.7
1,239
0.7
1,557
0.9
ゴム
14,352
7.1
10,475
5.5
9,394
5.1
鉱石
7,343
3.6
5,083
2.7
6,544
3.6
紙パルプ
4,169
2.0
3,937
2.1
3,757
2.1
木材
3,375
1.7
3,449
1.8
3,635
2.0
魚類
2,440
1.2
2,753
1.4
2,856
1.6
110,381 58.1
102,824
56.3
79,727
43.7
品目
その他石油製品
パームオイル
小計
その他
合計
122,255 60.1
2013
81,242 39.9
79,650 41.9
203,497 100.0
190,032 100.0
182,552 100.0
(出所)BPS 「インドネシア統計」
今後のインドネシア経済に関する IMF(International Monetary Fund)の短期予測では、2014 年
の経済成長率は 5.2%、2015 年は 5.5%である。中期的には、2013~2019 年の年平均経済成長率は
5.7%と予測されている57。また、2013 年の失業率は 6.3%であったが、2019 年には 5.5%に減少す
ると見込まれている。
57
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2014/02/weodata/weoselgr.aspx
- 61 -
3.2 エネルギー需給動向
3.2.1 一次エネルギー消費・生産量と輸出入量
(1) エネルギー消費量
インドネシアの経済成長に伴い、エネルギー消費量も年々増加している。インドネシアエネル
ギー鉱物資源省の最新版の「Energy Handbook」(Handbook of Energy & Economic Statistics of
Indonesia 2014)によると、金融危機以降、インドネシアの一次エネルギー消費量は増え続け、2011
年には 2 億 toe(石油換算トン、以下同)を越え、2013 年の一次エネルギー消費量は 2 億 1,534 万
toe に達した58。
(図 3.2.1 参照)
万toe
石油
石炭
天然ガス
水力
25,000
バイオマス
21,534
20,125 20,448
19,061
16,843
20,000
15,000
地熱等
14,062
10,000
5,000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.1 インドネシアの一次エネルギー消費の推移
経済成長と一次エネルギー消費量の関係を見ると、
2000~2013 年の GDP の年平均成長率が 5.4%
であるのに対し、一次エネルギー消費量の年平均増加率は 3.3%であり、エネルギー消費量の対
GDP 弾性値は 0.61 である。また、2013 年の単位 GDP 当たりのエネルギー消費量は 24.7toe/万ド
ルであった。
2000 年以降の一次エネルギー源別の推移を見ると、バイオマスを除く商業エネルギー消費量の
増加は平均年率 3.7%で、比較的穏やかな増加にとどまっているといえよう。化石燃料の中で、石
炭の消費量の年平均増加率が 12.0%と最も高く、石炭火力発電電量の増加や建築材料(主にセメ
ント)生産の拡大などが反映されている。原油と石油製品の消費量の年平均増加率が 2.6%、自動
車の普及が反映されている。他方、天然ガス消費量の年平均増加率はマイナス 0.8%で、これは国
内の天然ガス供給不足が主な要因であると見られる。このような動向を纏めると、インドネシア
の一次エネルギー消費は石炭、石油、天然ガスが中心であるが、同国政府のエネルギー需給政策
から判断すると、今後の一次エネルギー消費は主に石炭と石油で拡大すると予想される。
58
インドネシア統計は BOE(バレル石油換算)単位であり、本文は 1BOE=0.135TOE を換算した。
- 62 -
表 3.2.1
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2013-
2000
2000 年以降の一次エネルギー消費と年平均増加率
一次エネルギー消費(万toe)
原油・製品 天然ガス
水力
地熱など バイオマス 合計
5,060
3,640
339
124
3,632
14,062
5,028
3,725
397
159
3,628
14,478
5,181
3,877
403
165
3,642
14,917
5,195
4,043
414
316
3,663
15,140
5,610
3,827
437
336
3,658
16,210
6,726
3,846
480
321
3,647
17,634
5,897
3,919
327
151
3,730
16,850
5,852
2,479
384
154
3,705
16,059
6,151
2,610
392
181
3,752
17,447
6,309
2,983
387
202
3,770
16,843
7,090
3,859
602
198
3,895
19,443
7,654
3,533
422
223
3,782
20,125
7,817
3,503
435
224
3,812
20,448
8,086
3,275
575
206
3,849
21,534
年平均増加率(%)
3.7
-0.8
4.2
4.0
0.4
3.3
石炭
1,267
1,542
1,649
1,509
2,342
2,614
2,826
3,485
4,360
3,192
3,799
4,511
4,658
5,543
12.0
(注)原油・製品は原油、バイオ燃料、液体燃料、LPG、その他石油製品の合計値
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
2013 年のエネルギー源別の消費構成を 2000 年と比べると、バイオマスの比率が 2000 年の 25.8
から 2013 年には 17.9%に減少した。
また、
天然ガスの比率は 2000 年の 25.9%から 2013 年には 15.2%
に大幅に減少した。石油の比率は 2000 年の 36.0%から 2013 年には 37.5 に微増した(バイオ燃料
を含む)
。他方、石炭の比率は 2000 年の 9.0%から 2013 年には 25.7%に大幅増加した。2013 年の
水力と地熱の割合はそれぞれ 2.7%と 1.0%である。
17.9%
9.0%
1.0%
25.7%
石炭
25.8%
石油
2.7%
2.4%
天然ガス
内円:2000年
外円:2013年
水力
36.0%
0.9%
15.2%
地熱
バイオマス
25.9%
37.5%
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.2 一次エネルギー消費に占めるエネルギー源別シェアの比較(2000 年と 2013 年)
- 63 -
(2) エネルギー生産量
2013 年の一次エネルギーの国内生産量は 4 億 1,355 万 toe である。エネルギー源別の生産量を
見ると、石炭 2 億 5,463 万 toe(一次エネルギー生産量に占める割合は 61.6%、以下同)
、原油 4,061
万 toe(9.8%)
、天然ガス 6,241 万 toe(15.1%)
、水力・地熱の合計 781 万 toe(約 2.0%)、バイオマ
ス 4,809 万 toe(11.6%)であった。石炭生産の割合が圧倒的に高い。
(表 3.2.2 参照)
また、2013 年の一次エネルギー生産量は、2000 年より 1 億 8,871 万 toe 増加し、年平均伸び率
は 4.8%となった。そのうち、2013 年の石炭生産量は 2000 年比で 2 億 1,095 万 toe 増、年平均増加
率は 14.5%に達した。また、2013 年の水力、地熱、バイオマスは 2000 年より増えたが、年平均増
加率は一次エネルギー生産合計の 4.8%より低く、それぞれ 4.2%、4.0%と 2.2%である。他方、2013
年の原油生産量は 2000 年の 6,986 万 toe より 2,925 万 toe 減り、年平均減少率は 4.1%であった。
天然ガスの生産量は 2000 年の 7,035 万 toe より 794 万 toe 減、年平均減少率は 0.9%であった。イ
ンドネシアの一次エネルギーの増産量のほとんどは石炭増産によるものであることが分かる。
表 3.2.2 インドネシアの一次エネルギー生産量とエネルギー源別構成比
一次エネルギー生産(万toe)
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
石炭
4,368
5,247
5,859
6,480
7,504
8,630
10,986
12,327
12,984
14,525
15,602
20,030
21,880
25,463
原油
天然ガス
6,986
7,035
6,606
6,806
6,156
7,375
5,660
7,650
5,407
7,347
5,218
7,238
4,955
7,163
4,703
5,876
4,826
5,997
4,677
6,202
4,656
7,390
4,445
7,009
4,248
6,673
4,061
6,241
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
石炭
19.4
23.0
24.8
26.8
30.4
33.8
40.2
45.4
46.2
48.8
48.2
54.8
57.5
61.6
原油
天然ガス
31.1
31.3
28.9
29.8
26.1
31.3
23.4
31.6
21.9
29.8
20.4
28.3
18.1
26.2
17.3
21.6
17.2
21.3
15.7
20.8
14.4
22.8
12.2
19.2
11.2
17.5
9.8
15.1
水力
地熱
339
397
403
414
437
480
327
384
392
387
602
422
435
575
124
159
165
316
336
321
151
154
181
202
198
223
224
206
バイオマス
3,632
3,628
3,642
3,663
3,658
3,647
3,730
3,705
3,752
3,770
3,895
4,412
4,625
4,809
合計
22,484
22,843
23,600
24,183
24,690
25,534
27,313
27,149
28,134
29,765
32,342
36,542
38,086
41,355
0.6
0.7
0.7
1.3
1.4
1.3
0.6
0.6
0.6
0.7
0.6
0.6
0.6
0.5
バイオマス
16.2
15.9
15.4
15.1
14.8
14.3
13.7
13.6
13.3
12.7
12.0
12.1
12.1
11.6
合計
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
構成比率(%)
年
水力
地熱
1.5
1.7
1.7
1.7
1.8
1.9
1.2
1.4
1.4
1.3
1.9
1.2
1.1
1.4
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
- 64 -
さらに、エネルギーの生産・消費の両面を見ると、インドネシアのエネルギー全体の自給率(生
産/消費)は 192.0%、化石燃料の自給率(化石燃料の生産/消費)は 211.6%である。2013 年時点の
インドネシアは依然としてエネルギー輸出国である。
しかし、2013 年の石油の自給率は 50.2%であり、2000 年の同一指標は 138.1%である。また、近
年の天然ガスの自給率も徐々に低下している一方、2013 年の石炭の自給率は 459%であり、2000
年の 345%より高めている。インドネシアの石油の対外依存度が急速に進んでいると言える。
石炭
%
石油
500
455
429
450
400
天然ガス
345
340
355
459
411
389
350
470
444
354
320
330
188
183
78
84
298
300
250
200
150
237
193
183
190
189
192
138.1 131
119
109
96
100
80
230
208
78
74
191
198
191
191
66
58
54
50.2
50
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.3 インドネシアのエネルギー自給率
(3) エネルギー輸出入量
2013 年のエネルギー輸出量は 2 億 3,638 万 toe、2000 年の 1 億 782 万 toe より 1 億 2,856 万 toe
増、年平均増加率は 6.2%である。エネルギー源別の内訳は、石炭 1 億 8,640 万 toe(輸出全体に占
める割合は 78.9%、以下同)
、石油(原油と石油製品合計)2,033 万 toe(8.6%)、天然ガス 2,966
万 toe(12.5%)である。
2013 年の石炭輸出量は、2000 年の 3,315 万 toe より 1 億 5,325 万 toe 増え、
年平均増加率は 14.2%
となった。この増加率は、国内生産量の年平均増加率 14.5%とほぼ同じで、輸出が石炭増産をけ
ん引していることを示している。また、2009 年以降、石炭輸出量が急拡大したが、これは主に中
国の石炭輸入量増加によるものである59。石油の輸出量は 2000 年の 4,073 万 toe より 2,040 万 toe
減少し、年平均減少率は 5.2%である。天然ガスの 2013 年の輸出量は、2000 年の 3,394 万 toe より
428 万 toe 減少し、年平均減少率は 1.0%である。
2013 年の輸入量を見ると、石炭 6.3 万 toe(エネルギー輸入全体に占める比率は 0.1%、以下同)
、
石油 4,666 万 toe(99.3%)
、電力 25.1 万 toe(0.5%)で、合計 4,697 万 toe であり、石油がほとんど
59
石炭の輸出入の詳細は第 4 章を参照。
- 65 -
を占めている。2000~2013 年のエネルギー輸入量の年平均増加率は 6.2%である。
表 3.2.3 インドネシアのエネルギー輸出量と輸入量
輸出(万toe)
石炭
石油
天然ガス 電力
2000
3,315
4,073
3,394
2001
3,701
4,177
3,081
2002
4,206
3,844
3,498
2003
4,858
3,544
3,607
2004
5,316
3,412
3,520
2005
6,022
2,861
3,392
2006
8,144
2,361
3,244
2007
9,099
2,463
3,397
2008
9,072
1,821
3,387
2009
11,247
2,309
3,220
2010
11,794
2,337
3,530
2011
15,460
2,246
3,476
2012
17,240
1,964
3,171
2013
18,640
2,033
2,966
輸入(万toe)
年
石炭
石油
天然ガス 電力
2000
8
2,147
0
2001
2
2,599
0
2002
1
2,869
0
2003
2
3,080
0
2004
6
3,615
0
2005
6
4,369
0
2006
6
3,395
0
2007
4
3,604
0
2008
6
3,270
0
2009
4
3,567
0
2010
3
3,714
0
2011
2
3,794
0
2012
4
4,230
0
2013
6
4,666
0
年
合計
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
10,782
10,959
11,549
12,010
12,248
12,275
13,749
14,959
14,280
16,777
17,661
21,183
22,375
23,638
合計
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
21
25
25
2,155
2,601
2,870
3,082
3,620
4,374
3,401
3,608
3,276
3,571
3,717
3,817
4,259
4,697
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
2013 年のエネルギー輸出入量を検討すると、エネルギーの年間純輸出量は 1 億 8,941 万 toe、そ
のうち石炭の年間純輸出量は 1 億 8,634 万 toe、天然ガスの年間純輸出量は 2,966 万 toe である。
他方、石油の年間純輸入量は 2,633 万 toe である。
- 66 -
万toe
石炭
石油
天然ガス
電力
25,000
18,941
20,000
13,944
15,000
10,000
8,627
7,900
5,000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
-5,000
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.4 インドネシアの一次エネルギーの純輸出量
インドネシアはこれまで、東南アジア諸国の中でも有力なエネルギー輸出国であったが、2005
年には石油のネット輸入国に転じ、OPEC を脱退した。インドネシアでは 2007 年に調理用燃料を
灯油から LPG に大々的に切り替える運動がスタートし、大きな成果をあげているが、経済成長に
伴う輸送用燃料需要の増加トレンドは堅調で、今後、国内で大規模油田が発見されない限り、石
油輸入の増加が続くと見込まれている。石油消費量の抑制は、重要なエネルギー政策の一つであ
る。天然ガスはこれまで、LNG やパイプラインで輸出してきたが、国内需要の高まりから、今後
は輸出余力が低下すると見られる。一方、2000 年代半ばに、カリマンタン島を中心に石炭の開発
が進み、世界最大の一般炭輸出国となった。しかし、発電を中心とする国内需要の高まりから、
輸出規制が議論され始めている。
3.2.2 最終エネルギー消費量
(1) エネルギー源別消費量
2013 年の最終エネルギー消費量は合計 1 億 5,162 万 toe で、うち石炭消費量は 2,416 万 toe(エ
ネルギー最終消費量全体の 15.9%を占める。以下同)、石油消費量は 6,035 万 toe(39.8%)、天然ガ
ス消費量は 1,312 万 toe(8.7%)
、電力消費量は 1,552 万 toe(10.2%)
、バイオマス消費量は 3,847
万 toe(25.4%)である(表 3.2.4 参照)
。また、2013 年の最終石炭消費量はインドネシアの石炭消
費量全体 5,543 万 toe の 43.6%、最終石油消費量は石油消費量全体 8,086 万 toe の 74.6%、天然ガス
最終消費量は天然ガス消費量全体 3,275 万 toe の 40.0%である。
(表 3.2.5 参照)
2000~2013 年の最終エネルギー消費量の年平均増加率は 3.6%であるのに対し、石炭消費量の年
平均増加率は最も高く、13.1%に達している。天然ガスと電力消費の年平均増加率はそれぞれ 7.5%
と 6.7%で、最終エネルギー消費量全体の 3.6%を凌ぐ。他方、石油消費量の年平均増加率は 2.7%、
バイオマス消費量の増加率は 0.4%である。
- 67 -
石油消費量の年平均増加率が低い理由としては、インドネシア政府が石油への依存度を軽減す
るため策定した、発電分野と産業分野での石油使用量削減政策の効果であると見られる。また、
バイオマス消費量については、経済成長に伴う個人所得の増加などにより、農村地域でバイオマ
スから商業エネルギーへの転換が進んだことが原因であると推測される。
2000 年以降の最終エネルギー消費量の推移を見ると、2008 年のリーマン・ショックの影響で、
2009 年は経済成長率が低下し、最終エネルギー消費量も減少したが、その後に徐々に回復した。
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.5 エネルギー源別の最終消費量
表 3.2.4 インドネシアのエネルギー原別の最終消費と構成比
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
石炭
490
508
525
543
748
981
1,204
1,646
2,285
1,118
1,847
1,953
1,663
2,416
最終消費(万toe)
石油
ガス
電力
バイオ
4,262
515
669
3,632
4,439
652
700
3,628
4,571
625
721
3,642
4,590
602
749
3,663
4,864
710
828
3,658
4,781
703
886
3,647
4,367
1,272
954
3,730
4,390
746
1,005
3,704
4,427
913
1,068
3,751
4,849
1,215
1,115
3,768
4,961
1,173
1,220
3,894
5,412
1,253
1,323
3,781
5,958
1,308
1,440
3,810
6,035
1,312
1,552
3,847
シェア(%)
合計
石炭
石油 ガス 電力 バイオ
9,569
5.1
44.5
5.4
7.0
38.0
9,926
5.1
44.7
6.6
7.1
36.5
10,083
5.2
45.3
6.2
7.2
36.1
10,147
5.4
45.2
5.9
7.4
36.1
10,808
6.9
45.0
6.6
7.7
33.8
10,998
8.9
43.5
6.4
8.1
33.2
11,526
10.4
37.9
11.0
8.3
32.4
11,491
14.3
38.2
6.5
8.7
32.2
12,444
18.4
35.6
7.3
8.6
30.1
12,066
9.3
40.2
10.1
9.2
31.2
13,095
14.1
37.9
9.0
9.3
29.7
13,721
14.2
39.4
9.1
9.6
27.6
14,179
11.7
42.0
9.2
10.2
26.9
15,162
15.9
39.8
8.7
10.2
25.4
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
- 68 -
表 3.2.5 一次エネルギーに占める最終エネルギー消費の比率
年
2000
2005
2010
2011
2012
2013
一次エネ消費(万toe)
最終消費(万toe)
シェア(%)
石炭
石油
ガス
石炭
石油
ガス
石炭
石油
ガス
1,267
5,060
3,640
490
4,262
515
38.7
84.2
14.2
2,614
6,726
3,846
981
4,781
703
37.5
71.1
18.3
3,799
7,090
3,859
1,847
4,961
1,173
48.6
70.0
30.4
4,511
7,654
3,533
1,953
5,412
1,253
43.3
70.7
35.5
4,658
7,817
3,503
1,663
5,958
1,308
35.7
76.2
37.3
5,543
8,086
3,275
2,416
6,035
1,312
43.6
74.6
40.0
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
(2) 部門別消費量
最終エネルギー消費量を部門別に見ると、
2013 年の工業部門のエネルギー消費量の合計は 5,396
万 toe(最終エネルギー消費全体の 35.6%、以下同)
、家庭部門のエネルギー消費量は 4,576 万 toe
(30.2%)
、輸送部門のエネルギー消費量は 4,369 万 toe(28.8%)、商業部門のエネルギー消費量は
504 万 toe(3.3%)
、その他部門のエネルギー消費量は 318 万 toe(2.1%)である。しかし、2013
年の GDP に占める商業部門の割合は 33%で、商業部門のエネルギー消費量が少ない。商業部門の
エネルギー消費量の一部は家庭部門に含まれている可能性が高いと推測される。
表 3.2.6 分野別の最終エネルギー消費と構成比率
年
工業
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
3,273
3,404
3,362
3,217
3,611
3,693
4,281
4,058
4,869
3,991
4,803
4,856
4,686
5,396
最終消費(万toe)
シェア(%)
輸送業
家庭
商業
その他 合計
工業
輸送業 家庭 商業 その他
1,855
3,836
251
353
9,569
34.2
19.4
40.1
2.6
3.7
1,957
3,943
259
363
9,926
34.3
19.7
39.7
2.6
3.7
2,037
4,045
268
371
10,083
33.3
20.2
40.1
2.7
3.7
2,134
4,135
286
375
10,147
31.7
21.0
40.8
2.8
3.7
2,299
4,202
316
380
10,808
33.4
21.3
38.9
2.9
3.5
2,370
4,237
317
381
10,998
33.6
21.5
38.5
2.9
3.5
2,316
4,224
297
409
11,526
37.1
20.1
36.6
2.6
3.6
2,418
4,301
377
336
11,491
35.3
21.0
37.4
3.3
2.9
2,582
4,280
378
335
12,444
39.1
20.7
34.4
3.0
2.7
3,059
4,249
411
355
12,066
33.1
25.4
35.2
3.4
2.9
3,069
4,394
441
388
13,095
36.7
23.4
33.6
3.4
3.0
3,745
4,325
460
335
13,721
35.4
27.3
31.5
3.4
2.4
4,193
4,469
478
352
14,179
33.1
29.6
31.5
3.4
2.5
4,369
4,576
504
318
15,162
35.6
28.8
30.2
3.3
2.1
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
また、2013 年と 2000 年の分野別の最終エネルギー消費構造を比べると、輸送業のエネルギー
消費量の比率が増加し、家庭のエネルギー消費量の比率が減少している。工業部門のエネルギー
消費比率は 2%増加し、商業部門は 2000 年とほぼ同じである。
- 69 -
3% 2%
3%
4%
36%
34%
30%
40%
内円:2000年
外円:2013年
工業
輸送業
家庭
商業
その他
19%
29%
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
図 3.2.6 分野別のエネルギー最終消費量
(3) 部門別、エネルギー源別の消費量
2013 年の部門別、エネルギー源別の最終エネルギー消費量を見ると、工業部門の石炭消費量は
2,416 万 toe で、工業部門のエネルギー消費量の 44.8%を占め、2000~2013 年の年平均増加率は
13.1%である。また、天然ガスの消費量は 1,288 万 toe で、工業部門のエネルギー消費量の 23.9%
を占め、2000~2013 年の年平均増加率は 7.4%である。電力消費量は 533 万 toe で、工業部門のエ
ネルギー消費量の 9.9%を占める。他方、石油消費量は 560 万 toe で、工業部門のエネルギー消費
量の 10.4%を占めたが、2000 年の 36.1%より低下し、2000~2013 年の年平均減少率は 5.6%となっ
た。バイオマスの消費量は石油消費量と同じく減少し、2013 年の消費は 599 万 toe である。
表 3.2.7 工業部門のエネルギー源別の消費量
エネルギー
石炭
石油
天然ガス
電力
バイオマス
合計
2000
489
1,183
510
295
796
3,273
消費(万toe)
2005
2010
979
1,847
1,085
792
698
1,157
351
422
580
585
3,693
4,803
2013
2,416
560
1,288
533
599
5,396
シェア%
2000
2013
14.9
44.8
36.1
10.4
15.6
23.9
9.0
9.9
24.3
11.1
100.0
100.0
増減率%
13/00
13.1
-5.6
7.4
4.6
-2.2
3.9
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
また、2013 年の最終エネルギー消費量における石炭消費量は、すべて工業部門である。工業部
門の石油消費量は最終石油消費量の 9.3%、工業部門の天然ガス消費量は最終天然ガス消費量の
98.2%、工業部門の電力は最終電力消費量の 34.3%、工業部門のバイオマス消費量は最終バイオマ
ス消費量の 15.6%を占める。
- 70 -
2013 年の輸送部門の石油消費量は 4,365 万 toe で、輸送部門のエネルギー消費量全体の 99.9%を
占め、2000~2013 年の年平均増加率は 6.8%である。また輸送部門の石油消費量は最終石油消費量
の 72.3%を占める。天然ガスと電力消費はわずかであり、それぞれ 2 万 toe と 1 万 toe である。物
流および自家用車の増加により、今後、石油消費量の伸びは高くなると推測される。
表 3.2.8 輸送部門のエネルギー源別の消費量
エネルギー
消費(万toe)
2000
2005
シェア%
2010
2013
2000
2013
増減率%
13/00
石炭
0
0
0
0
0.0
0.0
-
石油
1,853
2,369
3,067
4,365
99.9
99.9
6.8
天然ガス
2
0
1
2
0.1
0.1
2.3
電力
0
0
1
1
0.0
0.0
8.6
バイオマス
合計
0
0
0
0
1,855
2,370
3,069
4,369
0.0
0.0
-
100.0
100.0
6.8
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版により作成
2013 年の家庭部門の石油消費量は 705 万 toe で、家庭部門のエネルギー消費量全体の 15.4%を
占め、2000~2013 年の年平均減少率は 0.6%である。これは照明用灯油を電力に切り替えたことが
原因と見られる。
また、2013 年の電力消費量は 639 万 toe で、家庭部門のエネルギー消費量の 14.0%を占め、2000
~2013 年の年平均増加率は 7.4%に達した。
他方、天然ガスの消費量はわずか 2 万 toe で、天然ガスパイプラインの未整備、ガス供給不足
が最大の要因と見られる。また、家庭部門のバイオマスの消費量は依然として最も多く、年間消
費量は 3,230 万 toe、家庭部門のエネルギー消費量の 70.6%を占める。
2000~2013 年の年平均増加率は 1.1%である。家庭部門のバイオマス消費量は最終バイオマス消
費量の 84.0%を占め、電力消費量は最終電力消費の 41.2%、石油消費量は最終石油消費量の 11.7%
を占める。
表 3.2.9 家庭部門のエネルギー源別の消費量
エネルギー
石炭
石油
天然ガス
電力
バイオマス
合計
2000
1
765
1
253
2,816
3,836
消費(万toe)
2005
2010
1
0
845
607
2
2
341
495
3,048
3,291
4,237
4,394
2013
0
705
2
639
3,230
4,576
シェア%
2000
2013
0.0
0.0
19.9
15.4
0.0
0.0
6.6
14.0
73.4
70.6
100.0
100.0
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
- 71 -
増減率%
13/00
-100.0
-0.6
3.1
7.4
1.1
1.4
2013 年の商業部門の石油消費量は 87 万 toe で、商業部門のエネルギー消費量全体の 17.3%を占
める。天然ガス消費量は 19 万 toe で、商業部門のエネルギー消費量全体の 3.8%を占める。電力消
費量は 379 万 toe で、商業部門のエネルギー消費量全体の 75.2%、バイオマス消費量は 18 万 toe
で、商業部門のエネルギー消費量全体の 3.6%を占める。
2000~2013 年の天然ガス消費量の年平均増加率は最も高く 16.2%に達し、電力消費量の年平均
増加率は 9.2%である。一方、2013 年の石油とバイオマスの消費量は 2000 年より減少した。また、
商業部門の電力消費量は最終電力消費量の 24.4%を占め、天然ガス消費量は最終天然ガス消費量
の 1.5%を占める。石油とバイオマスはそれぞれ 1.4%と 0.5%である。
表 3.2.10 商業部門のエネルギー源別の消費量
エネルギー
石炭
石油
天然ガス
電力
バイオマス
合計
2000
0
108
3
121
20
251
消費(万toe)
2005
2010
0
0
102
108
3
13
194
302
19
19
317
441
2013
0
87
19
379
18
504
シェア%
2000
2013
0.0
0.0
43.1
17.3
1.1
3.8
48.0
75.2
7.8
3.6
100.0
100.0
増減率%
13/00
-1.7
16.2
9.2
-0.5
5.5
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
その他の部門は主に石油消費量であり、2013 年の石油消費量は 318 万 toe で、最終石油消費量
の 5.3%を占める。
表 3.2.11 その他部門のエネルギー源別の消費量
エネルギー
石炭
石油
天然ガス
電力
バイオマス
合計
2000
0
353
0
0
0
353
消費(万toe)
2005
2010
0
0
381
388
0
0
0
0
0
0
381
388
2013
0
318
0
0
0
318
シェア%
2000
2013
0.0
0.0
100.0
100.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
100.0
増減率%
13/00
-0.8
-0.8
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
また、2013 年の非エネルギーの石油消費は 807 万 toe、天然ガス消費は 383 万 toe、合計で 1,190
万 toe である。
以上の内容を纏めると、工業部門では主に石炭と天然ガスを消費し、輸送業と家庭部門では石
油の消費を牽引する。このように、工業、家庭、商業が電力消費を主導し、バイオマスは基本的
に家庭部門で消費される。これがインドネシアの最終エネルギー消費構造である。
- 72 -
2013 年のインドネシアのエネルギー消費のフローに関しては、表 3.2.12 にエネルギー需給の簡
易バランス表を示す。表 3.2.13 に詳細のエネルギーバランス表を示す。
表 3.2.12 2013 年のエネルギー需給簡易バランス表
(単位:万 toe)
石炭
5,543
石油
8,061
天然ガス
3,275
水力
575
生産
25,463
5,021
6,241
575
206
輸入
6
4,666
0
0
0
輸出
-18,640
-2,033
-2,966
0
在庫
-1,287
407
0
一次エネルギー供給
転換部門
地熱など バイオマス
206
3,849
電力
25
合計
21,534
3,849
0
41,355
0
25
4,697
0
0
0
-23,638
0
0
0
-880
-3,127
-1,128
-1,308
-575
1,194
-2
1,400
-3,546
石油精製
0
-632
-47
0
0
0
0
-679
ガス処理
0
167
-132
0
0
0
0
34
石炭化工
0
0
0
0
0
0
0
0
-3,127
-663
-1,129
-575
1,194
-2
1,400
-2,901
発電
-国有(PLN)
-2,245
-662
-994
-442
-85
0
1,357
-3,072
-IPP
-881
0
-135
-133
-120
-2
432
-840
自家消費とロス
0
-91
-877
0
0
0
-236
-1,204
転換
0
-81
-47
0
0
0
-64
-192
自家消費
0
-10
-830
0
0
0
0
-840
送配電
0
0
0
0
0
0
-171
-171
0
0
-605
0
1,400
0
-362
433
2,416
6,035
1,312
0
0
3,847
1,552
15,162
2,416
560
1,288
0
0
599
533
5,396
輸送業
0
4,365
2
0
0
0
1
4,369
家庭
0
705
2
0
0
3,230
639
4,576
商業
0
87
19
0
0
18
379
504
その他
0
318
0
0
0
0
0
318
0
807
383
0
0
0
0
1,190
誤差
最終消費
工業
非エネルギー
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook 2014」より作成
- 73 -
表 3.2.13 2013 年のエネルギーバランス表
(単位:万 toe)
一次エネルギー供給
石炭
ブリケット
5,543
0
原油
4,133
液体燃料 バイオ燃料
2,829
959
LPG
414
その他石油製品
-275
天然ガス
5,429
-2,153
水力
575
LNG
地熱
バイオマス
206
3,849
電力
25
合計
21,534
41,355
生産
25,463
0
4,061
0
959
0
0
6,241
0
575
206
3,849
0
輸入
6
0
1,598
2,601
0
380
88
0
0
0
0
0
25
4,697
輸出
-18,640
0
-1,585
-86
0
0
-362
-813
-2,153
0
0
0
0
-23,638
在庫
-1,287
0
59
314
0
34
0
0
0
0
0
0
0
-880
-3,129
2
-4,052
1,611
0
231
1,081
-3,765
2,457
-575
-206
-2
1,789
-4,557
石油精製
0
0
-4,052
2,274
0
65
1,081
-47
0
0
0
0
0
-679
ガス処理
0
0
0
0
0
167
0
-2,589
2,457
0
0
0
0
34
石炭化工
-2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
-3,127
0
0
-663
0
0
0
-1,129
0
-575
-206
-2
1,789
-3,912
-2,245
0
0
-662
0
0
0
-994
0
-442
-85
0
1,357
-3,072
-881
0
0
0
0
0
0
-135
0
-133
-120
-2
432
-840
0
0
-81
-8
-2
0
0
-574
-303
0
0
0
-236
-1,204
転換
0
0
-81
0
0
0
0
-47
0
0
0
0
-64
-192
自家消費
0
0
0
-8
-2
0
0
-527
-303
0
0
0
0
-840
送配電
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
-171
-171
0
0
0
0
0
0
0
-605
0
0
0
0
27
-578
2,414
2
0
4,432
958
645
0
1,312
0
0
0
3,847
1,552
15,162
転換部門
発電
-国有(PLN)
-IPP
自家消費とロス
誤差
最終消費
工業
2,414
2
0
551
0
9
0
1,288
0
0
0
599
533
5,396
輸送業
0
0
0
3,408
958
0
0
2
0
0
0
0
1
4,369
家庭
0
0
0
86
0
619
0
2
0
0
0
3,230
639
4,576
商業
0
0
0
70
0
17
0
19
0
0
0
18
379
504
その他
0
0
0
318
0
0
0
0
0
0
0
0
0
318
0
0
0
0
0
0
807
383
0
0
0
0
0
1,190
非エネルギー
(注)その他はその他石油製品である。
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook 2014」より作成
- 74 -
3.3 電力需要と電源構成
インドネシア国営電力公社である Perusahaan Listrik Negara(PLN)の統計資料によると、
2013 年のインドネシアの電力需要(販売量)は 187.5TWh であった。このうち、家庭部門
は 77.2TWh で、電力需要全体の 41.2%、工業部門は 64.4TWh で、電力需要全体の 34.3%、
商業部門の電力需要は 34.5TWh で、電力需要全体の 18.4%を占める。その他(政府機関、
公用照明など)の需要は 11.5TWh で、電力需要全体の 6.1%を占める。商業部門の電力需要
のシェアはエネルギーバランス表(表 3.2.12)と比べると低いが、その他の需要を入れると、
ほぼ同じである。2001~2013 年の電力需要の年平均成長率は 6.9%、電力消費の対 GDP 弾
性値は 1.2 である。また、2013 年の電化率は 2012 年の 73.4%より向上したものの、依然と
して低い 78.1%である。
TWh
200.0
180.0
160.0
140.0
120.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
その他
4.2
商業
11.4 11.8 13.2 15.3 17.0 18.4 20.6 22.9 24.8 27.2 28.3 31.0 34.5
家庭
33.3 34.0 35.8 38.6 41.2 43.8 47.3 50.2 54.9 59.8 65.1 72.1 77.2
工業
35.6 36.8 36.5 40.3 42.4 43.6 45.8 48.0 46.2 51.0 54.7 60.2 64.4
4.4
5.0
5.9
6.4
6.8
7.5
7.9
8.6
9.3
9.8
10.7 11.5
(出所)PLN 「PLN Statistics」 各年版より作成
図 3.3.1 インドネシアの電力需要の推移
2000 年以降、インドネシアの電力需要が急増したことで、電力供給不足問題がインドネ
シアの経済成長や社会の安定に対する不安定要素となった。政府は電力不足解消や脱石油
化を図るために、2006 年以降、2 段階のファスト・トラック・プログラム(Fast Track Program)
、
通称「クラッシュ・プログラム(Crash Program)」を策定した。第一次(Stage I)プログラ
ムでは、低品位炭を利用した石炭火力発電(合計設備容量約 1,000 万 kW)を建設する計画
が打ち出された。その後、2010 年に定められた第二次(Stage II)プログラム(合計設備容
- 75 -
量約 1,000 万 kW)では、電源を多様化し、地熱 48%、水力 12%、ガス火力 14%、石炭火力
26%にする計画が打ち出された60。
2013 年の発電電力量は 216.2TWh で、そのうち石炭火力発電電力量は 110.5TWh(全体の
51.1%を占める、以下同)
、天然ガス火力発電電力量は 58.9TWh(27.3%)、ディーゼルなど
石油系の火力発電電力量は 20.2TWh(9.3%)、水力発電電力量は 16.9TWh(7.8%)
、地熱発
電電力量は 9.4TWh(4.4%)
、その他再生可能エネルギー発電電力量は 0.3TWh 弱(0.1%)
などである。
2013 年の電源構成は 2008 年と比べると、石炭火力発電比率が約 10 ポイント高く、石油
火力発電の比率が 4.6 ポイント、天然ガス火力発電の比率が 4.3 ポイント下がった。
8%
5%
8%
27%
5%
水力
32%
地熱等
外円:2012年
内円:2008年
石炭
石油
41%
9%
ガス
14%
51%
インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook 2014」より作成
図 3.3.2 2013 年の電源構成比
また、2013 年の発電電力量は 2008 年の 149.4TWh より 66.7TWh 増加し、特に石炭火力発
電電力量が約 49TWh 増えた。
60
http://blueskieschina.com/mambo/content/view/265/89/
- 76 -
(出所)PLN「PLN Statistics」
、BPS「Indonesia Statistics」 各年版より作成
図 3.3.3 エネルギー源別の発電電力量
表 3.3.1 エネルギー源別発電電力量(GWh)
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
石炭
34,002
37,713
42,929
46,459
48,211
51,825
58,667
63,902
61,493
65,914
68,477
81,090
98,007
110,452
石油
12,504
13,165
16,314
17,368
18,560
17,297
17,748
18,261
20,826
19,856
19,007
22,839
21,565
20,193
ガス
31,929
33,087
32,792
33,740
37,030
41,088
40,382
42,056
47,225
50,282
55,390
57,478
54,095
58,922
水力
10,016
11,655
9,933
9,099
9,674
10,725
9,623
11,286
11,528
11,384
17,456
12,419
12,799
16,930
地熱など
2,655
2,990
3,198
2,974
3,167
6,626
6,690
7,057
8,364
9,362
9,456
9,593
9,715
9,688
合計
91,106
98,610
105,166
109,640
116,642
127,561
133,110
142,562
149,436
156,798
169,786
183,419
196,181
216,185
(出所)PLN「PLN Statistics」
、BPS「Indonesia Statistics」 各年版より作成
第 1 次クラッシュ・プログラムでは、土地の買収、資金の調達、発注先である設計・資
材調達・建設の請負事業者の能力不足等をはじめとする様々な問題が生じ、完了時期が 2014
年に延期された61。2013 年末時点の発電設備の合計は 51.0GW で、2008 年の 31.5TW より
19.5GW 増加し、そのうち、石炭火力発電の設備容量は 11.5GW 増加した。
61
nexi.go.jp/webmagazine/mt_file/201104_1.pdf
- 77 -
表 3.3.2 インドネシアの発電設備容量と構成比率
年
設備容量(MW)
2000
石炭
10,672
石油
11,223
ガス
10,668
水力
4,199
地熱
525
2001
7,799
3,016
8,965
3,113
2002
6,900
2,589
8,088
2003
9,750
2,731
8,686
2004
9,750
2,994
2005
9,750
2006
2007
再エネ
0
合計
37,287
785
0
23,677
3,155
785
0
21,517
3,168
805
0
25,139
9,661
3,200
820
0
26,424
3,208
10,022
3,411
850
0
27,241
11,170
3,165
10,784
3,719
850
0
29,688
12,014
3,212
10,953
3,695
980
0
30,854
2008
12,294
3,273
11,146
3,698
1,052
0
31,463
2009
12,594
3,256
11,217
3,702
1,189
1
31,959
2010
12,982
4,570
11,505
3,734
1,193
1
33,983
2011
16,359
5,472
12,887
3,944
1,209
28
39,899
2012
19,755
5,974
14,004
4,143
1,344
31
45,250
2013
23,819
5,935
14,689
5,166
1,345
36
50,990
構成比 %
年
2000
28.6
30.1
28.6
11.3
1.4
0.0
100.0
2008
39.1
10.4
35.4
11.8
3.3
0.0
100.0
2013
46.7
11.6
28.8
10.1
2.6
0.1
100.0
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook 2014」より作成
2013 年の発電用燃料消費量については、石炭が 3,127 万 toe で、発電の燃料消費全体の
63.5%、石油が 663 万 toe で、発電用燃料消費の 13.5%、天然ガスが 1,129 万 toe で、発電用
燃料消費の 22.9%、バイオマスが 2 万 toe で、発電用燃料消費の 0.04%を占める。(表 3.3.3
参照)
表 3.3.3 発電用燃料の消費量
消費(万toe)
シェア%
2000
2005
2010
2013
2000
2013
増減率%
13/00
石炭
778
1,455
1,951
3,127
42.8
63.5
11.3
石油
469
945
859
663
25.8
13.5
2.7
天然ガス
568
403
849
1,129
31.3
22.9
5.4
0.0
0.0
20.8
100.0
100.0
8.0
エネルギー
バイオマス
合計
0
1
1
2
1,815
2,804
3,659
4,920
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
2013 年の石炭消費量と石炭火力発電電量をもとに計算すると、石炭火力発電の石炭消費
原単位は 283g-oe/kWh(石油換算グラム/kWh)、石油火力発電の石油消費の原単位は
328g-oe/kWh、天然ガス火力発電の天然ガス消費原単位は 192g-oe/kWh である。一方、石油
- 78 -
火力発電を除く、2013 年の石炭、天然ガス火力発電のエネルギー消費原単位は 2000 年より
悪化した。これは統計上の問題なのか、他の要因なのか判断が難しい。また、2012 年の日
本の石炭火力発電の石炭消費原単位 206.5g-oe/kWh と比べた場合、インドネシアの石炭火力
発電の石炭消費原単位は 76.5g-oe/kWh 高く、省エネルギーのポテンシャルが高いと言える。
(表 3.3.4 参照)
表 3.3.4 発電用エネルギー消費原単位
エネルギー消費原単位(g-oe/kWh)
2000
2005
2010
2013
増減率%
13/00
石炭
229
281
285
283
1.7
石油
375
546
452
328
-1.0
天然ガス
178
98
153
192
0.6
エネルギー
(出所)本調査
2013 年の発電用燃料の消費量を 2000 年と比べると、石炭消費比率は 2000 年の 42.8%か
ら 2013 年には 63.5%に急増しており、年平均増加率は 11.3%となった。天然ガス消費量は
2000 年の 568 万 toe より増えたが、消費比率が 2000 年の 31.3%より低下し、年平均増加率
は燃料消費全体の年平均増加率の 8%より低い、5.4%となった。また、2013 年の石油消費量
は 2000 年より増えたが、2005 年以降は毎年低下している。石油消費比率も減少が続いてい
る。バイオマス消費量は、インドネシアの発電燃料消費の中で、比率が低く、消費量も少
ない。
また、表 3.4.2 に示すが 2013 年の発電用石炭の消費量 5,514 万トンは、インドネシアの石
炭消費量全体 9,775 万トンの 56.4%であり、インドネシアの石炭消費をけん引している。2015
年 1 月、インドネシア国家開発計画庁は総額 5,500 兆ルピア(約 51 兆 5 千億円)にのぼる
インフラ開発 5 ヵ年(2015~2019)計画をとりまとめ、2015 年 1 月 16 日に大統領令として
制定した。その中には、出力計 3,500 万 kW の発電所に関する電源開発計画が含まれている
62
。現在実施中のクラッシュ・プログラムおよび新インフラ開発 5 ヵ年計画が全て完了すれ
ば、発電用石炭消費量は大幅に増えると予想される。
62
日経電子版 2015 年 1 月 15 日(http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM12H6V_U5A110C1FF1000/)
- 79 -
3.4 石炭の需給動向
本節では、石炭の需給動向を重点的に分析し、インドネシアの石炭統計の課題などにつ
いて検討する。本節から、石炭の単位は全て固有単位を利用し、可能な範囲で石炭品位別
の消費実態を明らかにする。なお、本節の調査結果を第 10 章の石炭需要予測に活用する。
3.4.1 石炭の生産量
インドネシアエネルギー鉱物資源省の「Energy Handbook」によると、2013 年の石炭生産
量は約 4 億 5,000 万トンで、2000 年の 7,704 万トン、2010 年の 2 億 8,000 万トンよりそれぞ
れ 3 億 7,000 万トンと 1 億 7,000 万トン増加した。2000~2013 年の年平均増加率は 14.5%で
ある。
表 3.4.1 インドネシアの石炭生産量の推移(万トン)
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
一般炭
7,701
9,250
10,329
11,427
13,235
15,272
19,376
21,695
24,025
25,618
27,516
35,327
38,590
44,908
無煙炭
3
4
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
合計
7,704
9,254
10,333
11,428
13,235
15,272
19,376
21,695
24,025
25,618
27,516
35,327
38,590
44,908
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」各年版より作成
なお、Petrominto とインドネシア石炭鉱業協会(Indonesian Coal Mining Association
(APBI-ICMA))による「Indonesian Coal Book2014/2015」によると、インドネシアの 2013 年
の石炭生産量は 4 億 3,000 万トンであり、
インドネシア鉱物資源省の統計との誤差が約 2,000
万トンある。
3.4.2 石炭の消費量
インドネシアの「Energy Handbook」によると、2013 年の工業部門の最終石炭消費量(ブ
リケットを含む)は 4,261 万トンで、2012 年の 3,716 万トンより 545 万トン増加した。2013
年の工業部門の石油換算の石炭消費量 2,416 万 toe(表 3.2.7 参照)をもとに計算すると、工
業部門の石炭の平均発熱量は 5,670kcal/kg となる。
- 80 -
2013 年の工業部門の石炭消費量のうち、建築材料(ほとんどがセメント生産)719 万ト
ン、製紙 40 万トン、鉄鋼 30 万トン、その他分野 3,469 万トンである63。
2013 年の発電用石炭消費は 5,514 万トンで、2012 年の 5,282 万トンより 232 万トン、2010
年の 3,441 万トンより 2,073 万トン増加した。工業部門の最終石炭消費量と火力発電の石炭
消費量の合計は 9,775 万トンである。2013 年の電力用石炭の平均発熱量は、表 3.3.3 の石油
換算消費量 3,127 万 toe 及び表 3.4.2 の石炭消費量 5,514 万トンから計算すると、5,670kcal/kg
となる。
表 3.4.2 分野別の石炭消費量(万トン)
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
発電
1,372
1,952
2,002
2,300
2,288
2,567
2,776
3,242
3,104
3,657
3,441
4,512
5,282
5,514
工業
862
885
924
1,628
1,320
1,568
2,124
2,905
2,243
1,973
3,259
3,444
3,716
4,261
建材
製紙
223
514
468
477
555
515
530
644
684
690
631
587 664
719
鉄鋼
78
82
50
170
116
119
122
153
125
117
174
40
40
3
22
24
20
12
22
30
28
25
26
34
17
29
30
ブリケット その他
4
555
3
263
2
379
2
957
2
635
3
909
4
1,438
3
2,077
4
1,405
6
1,134
3
2,417
3
2,837
4
2,979
4
3,469
合計
2,234
2,836
2,926
3,927
3,608
4,135
4,900
6,147
5,347
5,630
6,700
7,956
8,997
9,775
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省「Energy Handbook」より作成
なお、
「Indonesian Coal Book2014/2015」によると、2013 年の石炭消費量は合計 7,207 万ト
ンで、2012 年の 6,074 万トンと比べて 1,133 万トン増加した。2013 年の石炭消費量のうち、
石炭火力発電の消費量は 6,186 万トン(消費全体の 85.8%を占める64。以下同)
、セメント産
業は 719 万トン(約 10%)
、繊維産業は 146 万トン(2.0%)
、その他産業(肥料、製紙など)
は 156 万トン(2.2%)である。しかし、2013 年の石炭消費の実績は DMO による計画の 7,432
万トンより少なく、3 年連続で計画が未達成となった。
ここで、Indonesian Coal Book の 2013 年の発電用石炭消費の 6,186 万トンを用いて、発電
用石炭の平均発熱量を計算すると、5,055kcal/kg となり、上掲の 5,670kcal/kg より 615kcal/kg
63
その他分野については「Manufacturing Industrial Statistics Indonesia」によると繊維産業、非鉄金属産業、
石炭化学産業、食品加工産業などを中心であると言われているが、公式統計がないと見られる。
64
「Energy Handbook」で計算すると、発電用石炭消費は石炭消費全体の 56.4%を占める。
- 81 -
低くなる。他方、インドネシア石炭鉱業協会の資料65によると、インドネシア国有電力公社
PLN の発電所で消費された石炭の平均発熱量は 4,000~5,200kcla/kg、IPP の発電所で消費さ
れた石炭の平均発熱量はほとんどが 5,000kcal/kg である。この石炭の平均発熱量で推測する
と、発電用石炭の消費は上掲の 5,514~6,186 万トンより多くなる。
今後の石炭の品位については、インドネシア政府の低品位炭の利用拡大政策で、今後の
発電用石炭の平均発熱量がこれより低下していく可能性があると見られる。
表 3.4.3 国内供給義務(DMO)による産業別の石炭消費(単位:百万トン)
産業
発電
セメント
繊維
肥料
製紙
金属関連
合計
2011
計画
実績
47.46
45.12
8.86
5.87
1.97
0.19
0.92
0.00
0.60
0.00
0.24
0.17
60.05
51.35
2012
計画
実績
54.63
52.82
8.40
6.06
1.93
0.30
1.30
0.87
0.60
0.40
0.32
0.29
67.18
60.74
2013
計画
実績
60.49
61.86
9.80
7.19
1.93
1.46
0.76
0.86
0.60
0.40
0.74
0.30
74.32
72.07
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
また、インドネシア石炭鉱業協会によると、2013 年まで石炭火力発電所の工事が遅れた
ため、石炭消費が計画より少なくなっていたが、2014 年からは大幅に増える予定である66。
また、建設中のセメント工場と製鉄所の稼働が遅れたため、セメント産業と金属関連産業
の石炭消費は計画より少なくなっているが、2014~2015 年以降、セメント工場と製鉄所が
稼働すれば、これら分野の石炭消費は大幅に増加すると見込まれている。
上掲のインドネシアエネルギー鉱物資源省の「Energy Handbook」は、石炭鉱業協会の統
計と比べると、2013 年の石炭の消費は 2,568 万トンの誤差がある。石炭鉱業協会の発電用
石炭消費はエネルギー鉱物資源省より 672 万トン多く、エネルギー鉱物資源省のその他分
野の石炭消費は石炭工業協会の繊維、肥料産業の石炭消費合計の 302 万トンより 3,701 万ト
ン多い。
65
インドネシア石炭鉱業協会「The Impacts of Mineral Processing and Smelter’s Development on Domestic
Demand for Coal」
66
聞き取り(140905)
- 82 -
表 3.4.4 統計の誤差(万トン)
産業
発電
セメント
繊維
肥料
製紙
金属関連
その他
合計
2011
0.1
-0.3
19.0
0.0
0.0
0.4
-2,836.6
-2,817.4
2012
181.4
0.0
30.0
87.0
0.0
0.1
-2,253.8
-1,955.3
2013
534.8
0.3
146.0
86.0
0.0
0.2
-3,469.0
-2,701.8
(出所)
「Energy Handbook」、
「Indonesian Coal Book2014/2015」
また、
「Energy Handbook」の 2013 年の石炭輸出量は 3 億 2874 万トンであるが、インドネ
シア税関統計は褐炭を含めた石炭輸出は 4 億 2,446 万トンとしており、両者の誤差は 9,572
万トンある。さらに、2013 年の石炭輸入量 11 万トンを除き、Energy Handbook による石炭
消費量の 9,775 万トンと税関統計による純輸出量の 4 億 2,435 万トンを合計すると 5 億 2,210
万トンとなり、2013 年 Energy Handbook の石炭生産の 4 億 4,908 万トンより 7,302 万トン多
くなる67。これはインドネシアの統計の実情である。
表 3.4.5 インドネシアの石炭生産、消費、純輸出と誤差(万トン)
年
生産
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
7,704
9,254
10,333
11,428
13,235
15,272
19,376
21,695
24,025
25,618
27,516
35,327
38,590
44,908
消費と純輸出合計
消費
8,018
2,234
9,412
2,739
10,279
2,926
12,936
3,927
14,185
3,608
17,030
4,135
23,290
4,900
25,747
6,147
25,453
5,347
29,115
5,630
36,590
6,700
43,307
7,956
47,428
8,997
52,210
9,775
純輸出
5,784
6,673
7,354
9,009
10,577
12,895
18,391
19,600
20,105
23,486
29,890
35,351
38,430
42,435
在庫、誤差
-314
-158
53
-1,508
-950
-1,757
-3,914
-4,052
-1,428
-3,497
-9,073
-7,980
-8,838
-7,302
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省、BPS、税関統計
このように統計によって数値が大きく異なっている点について、2015 年 1 月に現地で聞
き取り調査を行ったところ、インドネシア政府も問題を認識しており、共通のデータベー
スを構築し、データソースを一元化する計画があるとした。
67
輸出入の詳細は第 4 章参照。
- 83 -
PLN の統計によると、2013 年の PLN の発電部門の石炭消費は 3,960 万トンで、2005 年の
1,690 万トンより 2,270 万トン増加した。また、2013 年の PLN の発電部門の石炭消費は、2008
年より 1,860 万トン増えており、特に 2010 年以降の消費増加分が多い。これは新規石炭火
力発電設備の稼働が大きく影響していると見られる(表 3.4.6 参照)
他方、2013 年の PLN 以外の IPP(Independent Power Producer)などの石炭火力発電所の発
電電力量は 2012 年より増えたが、石炭消費量が減少しており、これは統計の問題と見られ
る。
PLN の情報によると、2031 年の電力需要は 1,075TWh に達し、今後の石炭火力発電能力
の拡大、石炭火力発電の発電電力量の増加に伴い、石炭消費が益々増えていくと予測され
る。
表 3.4.6 発電部門の石炭消費
年
石炭消費(万トン)
比率(%)
2001
1,403
549
合計
1,952
2002
1,405
596
2003
1,526
2004
1,541
2005
PLN
IPP
PLN
IPP
石炭火力発電(GWh)
PLN
IPP
71.9
28.1
29,330
8,383
2,002
70.2
29.8
29,313
13,616
774
2,300
66.4
33.6
31,737
14,722
747
2,288
67.4
32.6
30,806
17,405
1,690
877
2,567
65.8
34.2
33,253
18,572
2006
1,908
867
2,776
68.8
31.2
38,362
20,305
2007
2,147
1,095
3,242
66.2
33.8
41,880
22,022
2008
2,100
1,004
3,104
67.7
32.3
41,311
20,182
2009
2,160
1,497
3,657
59.1
40.9
43,138
22,776
2010
2,396
1,045
3,441
69.6
30.4
46,685
21,792
2011
2,743
1,768
4,512
60.8
39.2
54,950
26,140
2012
3,551
1,730
5,282
67.2
32.8
66,633
31,374
2013
3,960
1,554
5,514
71.8
28.2
74,398
36,054
(出所)PLN 統計、
「Energy Handbook」をもとに推定
建築材料の石炭消費の大部分がセメント生産であり、インドネシアのセメント協会の統
計資料によると、2013 年末までにインドネシアのセメント生産能力は約 6,100 万トンにな
り、セメント生産は 5,774 万トン、国内販売量は 5,802 万トン、純輸入は 193 万トンであり、
セメント消費は 6,054 万トンに達した。
- 84 -
2000 年以降、インドネシアのセメント需要は高めで、国内生産不足が原因で、海外から
のセメント輸入が増え、特に 2013 年のセメント輸入は初めて 200 万トンを超え、約 252 万
トンに達した68。2015 年現在、300 万トン/年のセメント生産設備を建設中である。
また、セメント工業協会によると、2013 年のセメントの輸出は 2012 年と比べ増えたが、
将来におけるセメントの輸出は減少するのではないかと見られている。
(出所)Indonesia Cement Association 「Indonnesia Cement Statistic」各年版
図 3.4.1 セメント生産と石炭消費
表 3.4.7 インドネシアのセメント生産能力、生産と消費動向
(単位:万トン)
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
生産能力
4,697
4,714
4,749
4,749
4,749
4,609
4,489
4,489
4,489
4,326
5,301
5,432
5,770
6,100
生産
国内販売
2,779
2,231
3,110
2,570
3,072
2,717
3,065
2,753
3,323
3,019
3,392
3,043
3,303
3,070
3,503
3,276
3,853
3,654
3,691
3,767
3,784
3,918
4,524
4,699
5,325
5,432
5,774
5,802
輸入
2.4
4.4
6.0
1.1
1.7
105.5
128.0
141.0
153.2
138.3
159.7
100.9
65.4
251.7
輸出
国内消費
846
2,233
946
2,574
798
2,723
734
2,754
762
3,021
670
3,149
727
3,198
774
3,417
494
3,807
402
3,905
290
4,078
119
4,800
19
5,497
58
6,054
石炭消費
223
514
468
477
555
515
530
644
684
690
631
587
606
719
(出所)Indonesia Cement Association 「Indonnesia Cement Statistic」各年版などにより作成
68
BPS の 2014 年統計年鑑で、2013 年のセメント輸入は 372.5 万トンである。
- 85 -
しかし、2013 年の時点でインドネシアの一人当たりセメントの消費はわずか 243kg で、
中国の 1.5 トン/人より少なく、今後の経済の発展、人口増加などの要因を考えると、セメ
ントの生産と消費は引き続き増えていくと想像できる。また、インドネシア最大のセメン
ト・メーカー(Semen Gresik)の 2012 年時点の予測値はやや低く、2016 年の国内セメント
消費は 6,312 万トンとしている69。
「Energy Handbook」によると、2013 年のインドネシアのセメント産業への石炭販売は
718.7 万トン、仮に全て消費すると、2013 年のセメント生産の石炭消費原単位は 124.5g/kg
である。
また、インドネシア石炭鉱業協会に対する聞き取り調査によると、セメント産業で消費
されている石炭の平均発熱量は 4,000~6,300kcal/kg で、5,000kcal/kg 以下がほとんどである。
鉄鋼産業については、2015 年 1 月の現地調査によると、2015 年現在、稼働中の製鉄所の
規模が小さく、高炉が存在していない状態である。2013 年 11 月にインドネシアの国営クラ
カタウ・スチールと韓国のポスコとの合弁会社クラカタウ・ポスコが約 60 億ドルを投じて
ジャワ島北西岸に建設していた年産 300 万トンの高炉一貫製鉄所では、複数回にわたる爆
発事故が原因で 2015 年 1 月時点では稼働の見込みがたっていない70。
クラカタウ・スチールによると、この高炉は最終的には 2015 年に年産 600 万トン規模に
拡大することが計画されている。他方、この製鉄所の原料炭はすべてオーストラリアから
輸入し、国産炭を採用しない設計である。このような状況からみると、インドネシアの製
鉄所の石炭需要は今後、大きな変化がないと想像される。
インドネシア石炭鉱業協会の資料71によると、インドネシアの鉄鋼生産量の 67%は酸素転
炉(BOF)を利用し、その石炭消費原単位は 630kg/トンである。また、残り 33%は電気炉
(EAF)を利用している。石炭の平均発熱量は 5,900kcal/kg 前後である。
鉄鋼生産以外に、ニッケル精錬でも石炭を消費しているが、消費規模が小さく、統計も
存在しない模様である。
3.4.3 地域別の石炭販売量と生産量
「Indonesian Coal Book 2014/2015」によると、2013 年の石炭生産地別の販売量については、
東カリマンタンの石炭販売量は 3,750 万トンで石炭販売量全体の 38.4%を占め、南カリマン
69
Semen Gresik [The Prospect of Indonesian cement industry]. January 2012
2014 年 1、2 月および 2015 年 1 月に爆発事故が発生したと報道されている。
71
Supriatna Suhala、
「The Impacts of Mineral Processing and Smelter’s Development on Domestic Demand for Coal」
70
- 86 -
タンの石炭販売量は 3,646 万トンで石炭販売量全体の 37.3%を占める。中央カリマンタンを
含めると、カリマンタンの石炭販売合計はインドネシアの全体の 8 割を超える。南スマト
ラの石炭販売量は 1,233 万トンで、石炭販売量全体の 12.6%を占める(表 3.4.8 参照)
。
また、2013 年の南カリマンタン州の石炭国内販売量は 2008 年とほぼ同じであるが、2010
年に一度減少し、2012 年以降に回復した。2008 年以降、南スマトラ州の石炭販売量が徐々
に拡大し、生産状況は安定している模様である。
表 3.4.8 石炭生産地別の石炭国内販売量
販売量(百万トン)
2008
2009
2010
2011
2012
シェア%
2013
2013
南カリマンタン
37.5
38.5
24.6
31.6
35.8
37.5
38.4
東カリマンタン
地域
29.1
24.4
30.5
34.1
33.6
36.5
37.3
中央カリマンタン
0.4
0.0
0.4
0.1
3.5
4.7
4.8
南スマトラ
8.1
8.6
9.5
10.9
13.3
12.3
12.6
西スマトラ
0.6
0.0
0.2
0.7
0.0
0.0
0.0
ジャンビ
3.5
0.7
0.5
0.8
2.1
2.9
3.0
リアウ
1.0
0.3
0.2
0.2
0.8
1.7
1.7
ブンクル
0.0
0.5
0.1
1.2
0.9
2.2
2.3
南スラウェシ
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
バンテン
合計
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
80.2
72.9
66.0
79.5
90.0
97.7
100.0
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
「Indonesian Coal Book 2014/2015」によると、2013 年の約 53%の石炭生産は東カリマンタ
ンで年間 2 億 3,600 万トン、南カリマンタンは 1 億 7,600 万トンで、両地域の合計はインド
ネシア全体の 91.8%を占める。中央カリマンタンを含めると、カリマンタンの石炭生産合計
はインドネシアの石炭生産全体の 93.5%を占める。
南スマトラの石炭生産は 1,658 万トンで、
石炭生産全体の 3.7%を占める。
また、2013 年の石炭生産は 2008 年と比べ、東カリマンタンは 1 億 1,237 万トン増、南カ
リマンタンは 8,384 万トン増であり、両地域の石炭生産の年平均増加率は 13%を超えた。両
地域の石炭資源量は多く、石炭生産コストが安いので、長期的にはインドネシアの主要供
給地としての地位は変わらないであろう。しかし、インドネシアの石炭増産の主な要因は、
国内需要増ではなく輸出増である。2000~2013 年の石炭生産量の年平均増加率が 14.5%で
あるのに対し、国内需要の年平均増加率は 12.0%で、国内石炭消費は生産量のわずか 21.7%
である。2014 年は、中国などの輸入減や国際炭価格の下落により、インドネシアの石炭産
- 87 -
業は低迷した72。短期間では両地域を含めて、インドネシアの石炭生産が減少する可能性が
高いと推測される73。
表 3.4.9 地域別の石炭生産量
地域
東カリマンタン
南カリマンタン
南スマトラ
中央カリマンタン
ブンクル
ジャンビ
リアウ
バンテン
西スマトラ
南スラウェシ
合計
2008
123.5
92.6
10.8
2.0
0.8
3.5
1.5
0.0
0.6
0.0
235.2
2009
141.8
94.2
11.9
3.2
1.2
2.8
2.6
0.0
0.0
0.0
257.7
生産量(百万トン)
2010
2011
159.7
195.8
90.3
117.4
13.9
21.5
4.5
7.1
0.5
6.0
2.5
1.1
3.0
1.6
0.0
0.0
0.8
2.8
0.0
0.0
275.2
353.3
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
72
73
聞き取り調査による。
石炭の輸出入については第 4 章を参照。
- 88 -
2012
223.2
139.1
25.2
10.0
3.2
5.2
1.7
0.0
0.0
0.0
407.5
2013
235.9
176.4
16.6
7.9
7.8
2.7
2.0
0.0
0.0
0.0
449.3
シェア%
2013
52.5
39.3
3.7
1.8
1.7
0.6
0.4
0.0
0.0
0.0
100.0
第 4 章 石炭輸出動向
本章ではまず、インドネシアの税関統計に基づき、インドネシアの炭種別、輸出仕向地
別の石炭輸出動向を解析する。次に、インドネシア炭の主な仕向地の税関統計に基づき、
インドネシア炭の輸入量と輸入価格を分析し、輸入国の輸入データとインドネシアの輸出
統計を照合した上で、両者の誤差を推計する。また、石炭の輸出入価格を分析し、インド
ネシア炭の競争力を総合的に評価する。本章での調査・分析を通じて、国際石炭市場にお
けるインドネシア炭の位置づけを明らかにする。
なお、周知の通り、日本とってインドネシアは重要な石炭輸入相手国である。
日本の石炭輸入量動向を見ると、2014 年の輸入量は 1 億 8,845 万トン(速報値74)で、2013
年の 1 億 9,164 万トン75より若干減少した。近年では、リーマンショック後の 2009 年に輸入
量が 1 億 6,182 万トンに減少したが、2011 年の東日本大震災による原子力発電所の稼働停止
を受けて、火力発電用石炭の需要が伸びている。
(出所)日本の税関統計
図 4.1.1 日本の石炭輸入量の推移
2014 年の日本の最大の石炭輸入相手国はオーストラリアであり、年間石炭輸入量は 1 億
1,914 万トンで、日本の石炭輸入全体の 63.2%を占めた。次いで多いのが、本調査の対象国
であるインドネシアの 3,583 万トンで、日本の石炭輸入全体の 19.0%を占める。第 3 位はロ
シアの 1,504 万トンで、インドネシアからの石炭輸入の半分にも満たない。
74
75
World Trade Atlas 2014 年 2 月 20 日
練炭、豆炭、その他これに類する石炭から製造した固形燃料を含み、褐炭は含まない。
- 89 -
(出所)日本の税関統計
図 4.1.2
2014 年の日本の主な石炭輸入相手国とシェア
4.1 インドネシアの輸出入動向と石炭の位置付け
2014 年版のインドネシア統計年鑑によると、
2013 年のインドネシアの輸出入総額は 3,692
億ドルで、うち輸出額は 1,826 億ドル、輸入額は 1,866 億ドルである。2013 年の貿易赤字は
40 億ドルで、2 年連続で貿易赤字を計上した。
インドネシアの輸出額のうち、石炭類の輸出額は 227 億 7,000 万ドルで、輸出額全体の
12.5%を占める。また、LNG などのガス類の輸出額は 181 億 3,000 万ドル、原油・石油類の
輸出額 164 億 8,000 万ドルである。インドネシアの輸入額のうち、石炭類の輸入額は 8,331
万ドルで、輸入総額全体の 0.04%を占める。また、LPG などのガス類の輸入額は 31.1 億ド
ル、原油・石油類の輸入額は 422 億 2,000 万ドルである。
- 90 -
億ドル
300
245.2
輸出
181.3
200
102.0
100
45.3
0
石炭類
-1.6
-100
原油
石油製品類
ガス類
-31.1
0.3
その他
-1.1
-135.9
-200
輸入
-300
-285.8
(出所)インドネシア中央統計庁(BPS)
「2014 年インドネシア統計年鑑」
図 4.1.3
2013 年のインドネシアのエネルギー輸出入額と石炭
輸出入額から計算すると、石炭類の純輸出額は 226.9 億ドル、石油類の純輸出額はマイナ
ス 257.4 億ドル、LNG などのガス類の純輸出額は 150.2 億ドルで、インドネシアの歳入に対
する石炭輸出の貢献度が高く、石油類の輸入を財政上支えていると言える。また、第 3 章
で述べたように、今後の天然ガス輸出能力の低下と輸入拡大により、インドネシアの歳入
にとって石炭の輸出は不可欠である。
- 91 -
4.2 インドネシアの石炭輸出動向
4.2.1 炭種別の輸出動向
インドネシアの石炭輸出仕向地はアジアを中心に 20 数ヵ国ある。インドネシアの税関統
計によると、2013 年の石炭輸出量は合計 4.2 億トンで、2010 年の 3 億トンより 1 億 2,000
万トン増加した。また、2000~2010 年の石炭輸出量の年平均増加率が 17.8%であるのに対
し、2010~2013 年の年平均増加率は 12.4%に低下した。特に、瀝青炭の輸出量は、2010 年
には 1 億 8,000 万トン弱あったが、2011 年に 1 億 7,000 万トン、2012 年に 1 億 6,000 万トン
と 2 年連続で減少し、2013 年に若干回復したものの、2010 年の輸出量より少なくなってい
る。
輸出炭の炭種別内訳は、瀝青炭 1.7 億トン、亜瀝青炭 2.1 億トン、褐炭 4,294 万トン、そ
の他(無煙炭など)35 万トンである76。また、2014 年の統計は 2015 年 2 月末時点では発表
されていないが、
2015 年 1 月のインドネシア石炭鉱業協会に対する聞き取り調査によると、
中国などの需要減により、
2014 年の石炭輸出量は 2013 年より少なくなると見込まれている。
瀝青炭
万トン
亜瀝青炭
無煙炭等
褐炭
42,446
45,000
40,000
35,000
29,895
30,000
20,710
25,000
20,000
12,904
15,000
10,000 5,798
17,407
5,000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.1 炭種別のインドネシアの石炭輸出量
76
瀝青炭の輸出入品目 HS コード「270112」
、亜瀝青炭「270119」
、褐炭「270210」
、無煙炭「270111」
- 92 -
表 4.2.1 年別、炭種別の石炭輸出
年
瀝青炭
亜瀝青炭
無煙炭
褐炭
合計
2000
5,448
232
119
0
5,798
2001
6,328
307
41
0
6,676
2002
7,033
265
58
0
7,356
2003
8,483
385
144
0
9,013
2004
8,965
1,547
74
0
10,586
2005
10,696
2,165
44
0
12,904
2006
13,842
4,476
74
9
18,402
2007
14,564
4,924
118
0
19,606
2008
13,511
6,484
116
6
20,116
2009
15,651
7,692
82
67
23,493
2010
17,918
11,142
57
778
29,895
2011
17,175
15,146
38
2,996
35,356
2012
16,198
18,512
48
3,680
38,438
2013
17,407
20,710
35
4,294
42,446
(出所)インドネシア税関統計
2000 年以降の炭種別の輸出量を見ると、瀝青炭の輸出比率が徐々に低下している。2013
年の瀝青炭の輸出量は石炭輸出量全体の 41.0%で、2010 年の 59.9%より大幅に減少した。一
方、2013 年の亜瀝青炭の輸出量は石炭輸出全体の 48.8%で、2010 年の 37.3%より 11.5 ポイ
ント高くなった。2013 年の無煙炭などの輸出比率は、2010 年の 0.2%よりさらに低下し、0.1%
となった。褐炭の輸出比率は 2010 年の 2.6%から 10.1%に上昇した。
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.2 輸出炭の炭種別構成比の比較
- 93 -
4.2.2 仕向地別の輸出動向
図 4.2.3 に示すように、インドネシアの統計によると、インドネシア炭の主な輸出先は中
国、インド、日本である。2013 年の中国への石炭輸出量は 1.3 億トンで、インドネシアの
石炭輸出量全体の 30.7%を占める。次いで多いのがインドの 1.2 億トンで、石炭輸出量全体
の 27.9%を占める。第 3 位は日本の 3,785 万トンで、インドネシアの石炭輸出量全体の 8.9%
を占める。2013 年の日本の石炭輸入量全体に占めるインドネシア炭の割合は 19.1%で、オ
ーストラリアに次ぐ 2 番目の輸入相手国であり、インドネシアは日本のエネルギー安定供
給上、極めて重要な石炭供給国である。
万トン
14,000
2000
13,039
2005
2010
2013
11,829
12,000
10,000
8,000
7,484
6,000
5,125
4,000
3,527
3,785
4,328
3,627
2,000
2,832
2,500
1,713
1,560
0
中国
インド
日本
韓国
台湾
マレーシア
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.3 インドネシア炭の主な輸出先
なお、特筆すべきなのがインドと中国への輸出動向である。2013 年の中国への石炭輸出
量は 1 億 3,039 万トンで、2005 年の 250 万トン、2010 年の 7,484 万トンと比べると、それ
ぞれ 1 億 2,789 万トンと 5,555 万トン増加し、2005~2010 年の年平均増加率は 97.3%、2010
~2013 年の年平均増加率は 11.7%である。2010 年以降、中国の輸入量の伸びが鈍り、増加
量も徐々に低下している。
2013 年のインドへの石炭輸出量は 1 億 1,829 万トンで、2005 年の 1,626 万トン、2010 年
の 5,125 万トンと比べると、それぞれ 1 億 203 万トンと 6,704 万トン増加し、2005~2010 年
の年平均増加率は 25.8%、2010~2013 年の年平均増加率は 18.2%である。
石炭輸出相手国・地域を見ると、2005 年以前の主な輸出先は日本、台湾、韓国、東南ア
ジア諸国、欧州諸国であったが、2010 年以降はインド、中国への輸出が急拡大し、日本、
韓国、台湾の輸出シェアが低下した。ただし、日本への輸出量は、インドや中国とは異な
- 94 -
り、3,500 万トン前後で安定している。また、各年の石炭輸出量上位 20 ヵ国の合計値は、
インドネシアの輸出量全体の 95%以上を占めており、特に 2010 年以降は 100%近い。また、
2010 年以降の石炭輸出量トップ 10 ヵ国は、イタリアとスペインの順位が変動しているもの
の、顔ぶれは同じである。近年のインドネシアの石炭輸出量は、基本的に中国とインドの
需要増加にけん引されていることが分かる。
表 4.2.2 インドネシアの石炭輸出量上位 20 ヵ国・地域の推移(2000~2013 年)
2000年
2005年
2010年
2013年
輸出 シェア
輸出 シェア
輸出 シェア
輸出 シェア
国名
国名
国名
国名
ランク
万トン
%
万トン
%
万トン
%
万トン
%
5,798
100 世界
12,904
100 世界
29,895
100 世界
42,446
100
世界
1 台湾
1,338
23.1 日本
2,731
21.2 中国
7,484
25.0 中国
13,039
30.7
2 日本
1,324
22.8 台湾
1,790
13.9 インド
5,125
17.1 インド
11,829
27.9
3 韓国
518
8.9 インド
1,626
12.6 韓国
4,328
14.5 日本
3,785
8.9
4 タイ
302
5.2 韓国
1,438
11.1 日本
3,527
11.8 韓国
3,627
8.5
5 香港
295
5.1 香港
941
7.3 台湾
2,500
8.4 台湾
2,832
6.7
6 インド
293
5.1 マレーシア
740
5.7 マレーシア
1,560
5.2 マレーシア
1,713
4.0
7 スペイン
287
4.9 タイ
640
5.0 タイ
1,308
4.4 フィリピン
1,451
3.4
8 フィリピン
243
4.2 イタリア
629
4.9 フィリピン
1,111
3.7 タイ
1,436
3.4
9 オランダ
168
2.9 フィリピン
391
3.0 香港
971
3.2 香港
1,296
3.1
10 イタリア
150
2.6 スペイン
332
2.6 イタリア
631
2.1 スペイン
408
1.0
11 マレーシア
144
2.5 中国
250
1.9 オランダ
272
0.9 イタリア
302
0.7
12 チリ
115
2.0 オランダ
214
1.7 パキスタン
214
0.7 ベトナム
182
0.4
13 アメリカ
107
1.8 アメリカ
205
1.6 アメリカ
194
0.6 アメリカ
118
0.3
14 スロベニア
55
0.9 スイス
185
1.4 スペイン
156
0.5 パキスタン
100
0.2
15 ブラジル
54
0.9 チリ
137
1.1 チリ
84
0.3 スリランカ
93
0.2
16 シンガポール
54
0.9 イギリス
130
1.0 ベトナム
75
0.3 スロベニア
50
0.1
17 ギリシャ
22
0.4 パキスタン
117
0.9 クロアチア
63
0.2 ニュージーランド
54
0.1
18 ドイツ
16
0.3 ニュージーランド
97
0.8 ポーランド
63
0.2 シンガポール
41
0.1
19 ニジェール
14
0.2 スロベニア
63
0.5 スロベニア
49
0.2 カンボジア
32
0.1
20 イギリス
5
0.1 アイルランド
60
0.5 シンガポール
27
0.1 オランダ
17
0.0
小計
5,504
94.9
小計
12,714
98.5
小計
29,743
99.5
小計
42,405
99.9
(出所)インドネシア税関統計
4.2.3 仕向地別、炭種別の輸出動向
(1) 瀝青炭
2013 年のインドネシアの瀝青炭輸出量は 1 億 7,407 万トンで、輸出相手国・地域別の内
訳は、中国 4,126 万トン(全体の 23.7%を占める。以下同)
、インド 2,974 万トン(17.1%)
、
日本 2,550 万トン(14.7%)
、韓国 2,322 万トン(13.3%)、台湾 1,741 万トン(10.0%)
、マレ
ーシア 1,264 万トン(7.3%)
、その他 2,430 万トン(14.0%)である。なお、その他にはフィ
リピン、タイ、香港などが含まれ、輸出量は全て 1,000 万トン以下である。
- 95 -
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.4
2013 年のインドネシアの瀝青炭の輸出相手国と輸出比率
瀝青炭の輸出相手国・地域別の動向を見ると、2013 年の最大の輸出先である中国への瀝
青炭輸出量は、インドネシアの対中国石炭輸出量全体の 31.6%を占める。また、中国税関統
計によると、2014 年のインドネシアからの石炭輸入量は 1 億 636 万トンで、中国の石炭輸
入量全体の 36.5%を占めたが、2013 年の輸入量と比べると 15.4%減少した。なお、2000 年
のインドネシアの中国への瀝青炭輸出量はわずか 14 万トンであったが、2010 年以降の年間
輸出量はほぼ 4,000 万トンであり、2000~2013 年の年平均増加率は 54.7%である。
インドへの瀝青炭の輸出量は、インドネシアの石炭輸出量全体の 25.1%を占め、2000~
2013 年の年平均増加率は 18.2%である。第 3 位の日本は、2005 年以降の年間輸出量はほぼ
2,500 万トン前後で、2000~2013 年の年平均増加率はわずか 5.3%である。日本への瀝青炭
の輸出量は、日本への石炭輸出量全体の 67.4%を占める。第 5 位の台湾への輸出量も安定し
ており、2005~2013 年は 1,500~2,000 万トンで、2000~2013 年の年平均増加率は日本より
低い 3.0%である。台湾への瀝青炭輸出量は、台湾への石炭輸出量全体の 61.4%を占める。
第 4 位の韓国の 2013 年の輸出量は 2000 年より増えたが、2008 年、特に 2010 年以降は 2,400
万トン台である。また、韓国への瀝青炭の輸出量は韓国への石炭輸出量全体の 64.0%を占め
る。
このように、インドネシアの瀝青炭輸出量が伸びた最大の要因は、中国とインドへの輸
出量が増加したことである。また、日本、韓国、台湾が輸入するインドネシア炭は大部分
が瀝青炭である。さらに、近年はマレーシアへの瀝青炭の輸出量が徐々に拡大しており、
2010 年以降、年間輸出量は 1,000 万トンを突破し、今後さらに輸出量が拡大する可能性が
あると見られる。
- 96 -
万トン
中国
インド
日本
韓国
台湾
マレーシア
16,000
1,264
14,000
1,741
12,000
2,322
10,000
8,000
2,550
6,000
2,974
4,000
4,126
2,000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.5 インドネシアの瀝青炭の主な輸出相手国と輸出量の推移
インドネシアの中国、インドへの瀝青炭の輸出量は、日本への輸出量より多いが、2013
年の輸出平均単価(FOB 価格、以下同)を見ると、日本は 89.9 ドル/トンであるのに対し、
中国は 66.8 ドル/トン、インドは 63.0 ドル/トンである。また、同年のフィリピンへの瀝青
炭の輸出平均単価は 83.6 ドル/トン、台湾は 74.8 ドル/トン、韓国は 58.9 ドル/トンで、イン
ドネシアの瀝青炭輸出全体の平均価格は 70.7 ドル/トンである。
また、2005 年以降のインドネシアの瀝青炭の輸出価格の推移を見ると、日本への輸出単
価が最も高く、これは日本へ輸出されている瀝青炭の石炭品位が高いためと考えられる。
表 4.2.3 仕向地別の瀝青炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB)
順位 国名
1
日本
2
フィリピン
2005
2010
2011
2012
2013
39.6
81.4
108.8
104.6
89.9
39.8
79.0
96.7
95.2
83.6
3
ベトナム
33.3
69.5
98.4
85.3
75.5
4
台湾
37.3
71.5
95.5
87.5
74.8
5
タイ
30.2
58.5
78.4
86.0
74.8
6
香港
33.1
71.6
88.6
78.1
69.6
7
中国
21.3
60.4
84.1
75.6
66.8
29.3
29.4
32.2
34.7
72.7
53.3
60.1
66.8
93.6
79.9
71.2
88.6
82.6
69.7
68.7
81.8
68.2
63.0
58.9
70.7
8
マレーシア
9
インド
10 韓国
平均輸出価格
(出所)インドネシア税関統計
- 97 -
2009 年以降、インドネシアの統計では瀝青炭を原料炭と一般炭に分けて集計している。
2013 年に輸出された瀝青炭のうち、原料炭の輸出量は 9,437 万トンで、瀝青炭の輸出量全
体の 54.2%を占める。一般炭の輸出量は 7971 万トンで、瀝青炭の輸出量全体の 45.8%を占
める。原料炭の平均価格は 75.4 ドル/トン、一般炭の平均価格は 65.1 ドル/トンである。
中国への原料炭輸出量は 1,998 万トン、一般炭の輸出量は 2,128 万トンで、中国への瀝青
炭輸出両全体に占める割合はそれぞれ 48.4%と 51.6%である。インドへの原料炭輸出量は
2,311 万トン、一般炭輸出量は 663 万トンで、それぞれ瀝青炭輸出全体の 77.7%と 22.3%を
占める。また、日本への原料炭輸出量は 1,738 万トン、一般炭輸出量は 813 万トンで、瀝青
炭の輸出量全体の 68.1%と 31.9%を占める。日本への平均輸出単価は、原料炭 94.3 ドル/ト
ン、一般炭 80.5 ドル/トンで、インドネシアの原料炭の平均輸出単価よりそれぞれ 14.5 ドル
/トン、15.4 ドル/トン高い。
表 4.2.4 2013 年のインドネシアの原料炭と一般炭の輸出量と FOB 価格
国名
中国
インド
日本
韓国
台湾
輸出全体
炭種
輸出
瀝青炭
万トン
4,126
原料炭
1,998
一般炭
瀝青炭
シェア
金額
単価
%
百万ドル ドル/トン
100.0
2,755
66.8
48.4
1,417
70.9
2,128
51.6
1,338
62.9
2,974
100.0
1,875
63.0
原料炭
2,311
77.7
1,498
64.8
一般炭
663
22.3
377
56.8
瀝青炭
2,550
100.0
2,293
89.9
原料炭
1,738
68.1
1,639
94.3
一般炭
813
31.9
654
80.5
瀝青炭
2,322
100.0
1,367
58.9
原料炭
580
25.0
334
57.6
一般炭
1,742
75.0
1,033
59.3
瀝青炭
1,741
100.0
1,301
74.8
原料炭
565
32.5
451
79.8
一般炭
1,175
67.5
850
72.3
瀝青炭
17,407
100.0
12,306
70.7
原料炭
一般炭
9,437
7,971
54.2
45.8
7,117
5,190
75.4
65.1
(出所)インドネシア税関統計
(2) 亜瀝青炭
2013 年のインドネシアの亜瀝青炭輸出量 2.1 億トンのうち、インドへの輸出量が最大の
8,708 万トンで、2005 年の 501 万トンより 8,000 万トン以上増加した。また、インドネシア
の対インド石炭輸出量に占める亜瀝青炭比率は 73.6%である。
- 98 -
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.6
2013 年のインドネシア産亜瀝青炭の仕向地別輸出割合
中国とインドを除く、2000 年以降の亜瀝青炭の輸出動向を見ると、2010~2012 年の韓国
への輸出量は 1,500 万トン弱だったが、2013 年に 1,277 万トンに減少した。日本へ輸出量は
2005 年以降徐々に拡大し、2013 年には 1,221 万トン(2006 年の 559 万トンから 662 万トン
増)に達した。また、台湾、タイ、フィリピンへの輸出量も増加し続けている。
インドへの亜瀝青炭輸出量はインドネシアの亜瀝青炭輸出量全体の 42.0%を占める。次い
で多いのは中国の 4,846 万トンで、インドネシアの対中国石炭輸出量全体の 37.1%を占め、
インドネシアの亜瀝青炭輸出量全体の 23.4%を占める。インドネシアの亜瀝青炭輸出量全体
の 6 割以上がインドと中国向けである。
万トン
25,000
インド
中国
韓国
日本
台湾
タイ
その他
20,710
20,000
15,000
11,142
10,000
5,000
2,165
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
(出所)インドネシア税関統計
図 4.2.7 インドネシアの亜瀝青炭輸出量の仕向け地別推移
- 99 -
2013 年のインドネシアの亜瀝青炭輸出価格(FOB)は、年平均 50.4 ドル/トンである。日
本への輸出価格が最も高い 76.4 ドル/トンで、マレーシアは 37.1 ドル/トンである。また、
タイ、インドへの輸出価格は、インドネシアの平均輸出価格より安い。
表 4.2.5 仕向地別の亜瀝青炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB)
順位 国名
1
日本
2
台湾
2005
2010
2011
2012
2013
38.0
74.0
100.1
94.1
76.4
31.5
66.5
76.3
77.4
66.0
81.2
93.7
96.8
61.4
3
ベトナム
29.7
4
フィリピン
30.1
59.5
74.9
72.4
57.8
5
香港
93.7
75.1
87.3
63.6
55.1
6
韓国
31.2
54.4
66.8
64.9
53.7
7
中国
27.6
60.2
73.3
62.0
51.9
8
タイ
27.2
46.3
53.8
56.5
48.5
9
インド
25.2
43.2
52.8
46.1
41.1
10
マレーシア
13.9
38.4
43.7
49.7
37.1
28.6
55.2
67.8
59.5
50.4
平均輸出価格
(出所)インドネシア税関統計
(3) 褐炭
インドネシアの褐炭の本格的な輸出は 2009 年から始まり、年間輸出は 67 万トンである。
また、2013 年時点の輸出仕向地は 9 ヵ国・地域と少ない。インドネシアの褐炭の最大の輸
出先は中国で、2013 年の輸出量は 4,092 万トンで、インドネシアの褐炭輸出量 4,294 万トン
の 94.6%を占める。インドへの輸出量は 146 万トン(3.4%)、台湾へは 38 万トン(0.9%)、
ニュージーランドへは 13 万トン(0.3%)である。日本への褐炭輸出量はゼロである。
表 4.2.6 仕向地別のインドネシア褐炭の輸出量
順位
国名
1
中国
2
3
2009
2010
2011
2012
(万トン)
2013
比率(%)
4,062
94.6
67
741
2,726
3,417
インド
0
31
112
139
146
3.4
台湾
0
0
50
41
38
0.9
4
ニュージーランド
0
0
3
6
13
0.3
5
韓国
0
7
77
0
12
0.3
6
タイ
0
0
0
0
11
0.2
7
香港
0
0
9
20
9
0.2
8
バングラデシュ
0
0
0
0
3
0.1
9
マレーシア
0
0
7
10
1
0.0
10
オマーン
世界
0
0
0
0
0
0.0
67
778
2,996
3,680
4,294
100.0
(出所)インドネシア税関統計
- 100 -
2013 年のインドネシアの褐炭の年間平均輸出価格は 40.6 ドル/トンである。仕向地別価格
は、中国 39.8 ドル/トン、インド 52.0 ドル/トン、台湾 56.5 ドル/トンなどである。インド向
けの褐炭輸出価格は、瀝青炭や亜瀝青炭より高い。また、台湾、ニュージーランド向けの
価格も相対的に高く、輸出量が少なく、特別な用途があるなどの原因が考えられる。
表 4.2.7 仕向地別の褐炭の年平均輸出価格(ドル/トン、FOB)
順位 国名
1 中国
2 インド
3 台湾
4 ニュージーランド
5 韓国
6 タイ
7 香港
8 バングラデシュ
9 マレーシア
10 オマーン
平均輸出価格
2009
38.2
2010
43.6
38.5
64.0
2011
57.2
49.8
76.3
65.8
53.2
2012
49.6
61.6
61.7
77.5
67.2
65.5
48.3
39.6
57.1
51.0
2013
39.8
52.0
56.5
77.5
50.7
36.4
40.0
67.0
38.8
-
38.3
43.6
40.6
(出所)インドネシア税関統計
(4) 無煙炭
インドネシアの無煙炭(他の製品は含まず)の 2013 年の輸出量は 22 万トンと少ない。
輸出先は、韓国 16 万トンと中国 6 万トンである。2008 年に無煙炭の輸出量は過去最高を記
録し、インドと韓国に年間 102 万トンを輸出した。2013 年の無煙炭の平均輸出価格は 56.8
ドル/トンで、韓国向けの価格は 53.7 ドル/トン、中国向けの価格は 65.4 ドル/トンである。
表 4.2.8 無煙炭の輸出先と年平均価格(FOB)
2000
万トン
ドル/トン
1
17.74
23.59
マレーシア
2
タイ
7.58
17.68
3
スペイン
5.90
20.40
4
インド
3.63
11.95
5
韓国
0.63
27.50
合計
35.49
20.68
2010
順位
国名
万トン
ドル/トン
1
15.59
45.59
韓国
2
日本
8.48
101.42
3
インド
8.38
51.04
4
8.12
69.55
中国
5
台湾
3.53
75.28
6
マレーシア
0.92
55.00
7
タイ
0.62
58.00
合計
45.64
63.88
順位
国名
(出所)インドネシア税関統計
- 101 -
2005
万トン
ドル/トン
19.41
42.89
韓国
台湾
15.30
41.58
香港
7.11
68.38
マレーシア
1.73
31.04
国名
合計
国名
韓国
中国
合計
43.55
46.12
2013
万トン
ドル/トン
15.84
53.69
5.67
65.36
21.50
56.76
(5) 輸出価格と国内価格に対する考察
炭種別の輸出価格(FOB)について纏めると、2013 年の瀝青炭の年平均輸出価格は 70.7
ドル/トン、亜瀝青炭の年平均輸出価格は 50.4 ドル/トン、褐炭の年平均輸出価格は 40.6 ド
ル/トン、無煙炭の年平均輸出価格は 56.8 ドル/トンである。また、インドネシアの石炭輸出
量と輸出金額をもとに計算すると、2013 年のインドネシアの石炭の平均輸出価格は 57.8 ド
ル/トンとなる。また、2013 年のインドネシアの公式為替レート(1 ドル=10,461.2 ルピア)
で計算すると、トン当たりの石炭単価は 60 万 4,194 ルピアである。
インドネシア国営電力公社(PLN)の統計によると、2013 年の PLN の平均石炭購入価格
は 93 万 8,560 ルピアである。この価格は上掲のインドネシアの石炭の平均輸出価格より 33
万 4,366 ルピア高い。また、2000 年以降、特に 2006 年以降の各年の PLN の石炭購入価格は、
全て輸出価格より高くなっている。これが事実であるとすれば、石炭生産企業に対する国
内供給義務の設定意義に疑問を抱かざるを得なくなる。
(出所)各種資料より作成
図 4.2.8 PLN の石炭購入平均価格と輸出平均価格の比較
また、PLN に対する聞き取り調査によると、PLN が利用する石炭はほとんどが低品位炭
で、購入価格も安価であるとしており、この問題にはインドネシアの統計上の問題がある
可能性があると推測される。
4.2.4 地域別の石炭輸出動向
近年の地域別の石炭輸出状況については、インドネシア石炭鉱業協会の「Indonesian Coal
Book2014/2015」によると、東カリマンタン州が最も多い。2013 年は 1.9 億トンで、インド
ネシアの石炭輸出量全体の 6 割以上を占めている。また、同年の南カリマンタン州の輸出
量は 1.1 億トンで、輸出量全体の 34.7%を占めた。
- 102 -
表 4.2.9 インドネシアの州別の石炭輸出量
地域
東カリマンタン
南カリマンタン
南スマトラ
中央カリマンタン
ブンクル
ジャンビ
リアウ
バンテン
西スマトラ
南スラウェシ
パプア
合計
2008
96.1
57.4
4.9
1.3
0.1
0.0
0.7
0.0
0.0
0.0
0.0
160.5
2009
119.2
61.6
5.3
2.1
0.7
0.0
2.5
0.0
0.0
0.0
0.0
191.4
輸出量(百万トン)
2010
2011
122.8
157.3
66.0
93.1
4.8
10.7
3.5
3.5
0.1
2.4
0.1
4.2
2.5
1.5
0.0
0.0
0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
199.9
272.7
2012
166.3
106.1
9.7
12.0
3.6
6.0
0.4
0.0
0.0
0.0
0.0
304.1
2013
191.8
110.2
6.6
4.0
4.2
0.0
0.6
0.0
0.0
0.0
0.0
317.5
シェア%
2013
60.4
34.7
2.1
1.3
1.3
0.0
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
(出所)インドネシア石炭鉱業協会「Indonesian Coal Book2014/2015」
4.2.5 統計誤差の問題
(1) 各輸入国の統計とインドネシア税関統計の誤差
本調査では、インドネシアの石炭輸出実績を把握するために、インドネシア炭の主な仕
向地の 2013 年のインドネシアおよび主要輸出入相手国の税関統計を調査した。その結果、
各国での輸入時の申告と実際の輸入内容が異なることがわかった。また、インドネシアの
石炭輸出量と仕向地の輸入量にも差がある。最も誤差が多い国はインドで、インドネシア
の輸出統計では 1 億 1,829 万トンであるが、インドの輸入統計では 1 億 56 万トンであり、
両者の誤差は 1,773 万トンにのぼる。日本の場合でも、日本の輸入量とインドネシアからの
輸出量の誤差は 117 万トンある。
さらに、輸出検査証明書に記載された石炭品質に関する内容と輸入国の検査結果にも差
がある。例えば、中国税関の資料によると、2014 年 4 月にインドネシアから 6.3 万トンの
石炭が入港したケースでは、発熱量の検査結果は 3,831kcal/kg だったのに対し、インドネシ
アの検査報告書では 5,247kcal/kg と記載されていた。この結果を受けて、中国はインドネシ
アの PT Totalindo Mining Resources との取引を行わないよう呼びかけた。また、この件につ
いて、中国はインドネシアの商務部と協議している旨が報道されている77。
77
福建省エネルギー監督管理弁公室(http://fjb.nea.gov.cn/news_view.aspx?id=23914)
- 103 -
表 4.2.10 各仕向地の輸入統計とインドネシアの輸出統計の差(2013 年)
輸出入量(万トン)
各国の輸入統計
国名
中国
インド
瀝青炭 亜瀝青炭 無煙炭 その他
4,167
2,646
9
0
174
9,882
0
0
0
日本
2,912
756
0
0
0
韓国
3,581
70
18
0
0
台湾
2,497
326
0
0
0
1
1,490
0
0
0
432
889
0
0
0
マレーシア
タイ
各国の輸入統計
国名
中国
インド
瀝青炭 亜瀝青炭 無煙炭 その他
3,406
1,877
8
0
褐炭
2,970
133
6,623
0
0
0
3,133
667
0
0
0
韓国
2,571
54
14
0
0
台湾
2,071
254
0
0
0
1
1,500
0
0
0
398
591
0
0
0
タイ
合計
12,578 中国
10,056 インド
瀝青炭 亜瀝青炭 無煙炭 その他
4,126
4,846
6
0
褐炭
4,062
合計
誤差
13,039 -461
11,829 -1,773
2,974
8,708
0
0
146
3,668 日本
3,669 韓国
2,550
1,221
0
14
0
3,785
-117
2,322
1,277
16
0
12
3,627
41
2,823 台湾
1,491 マレーシア
1,741
1,054
0
0
38
2,832
-9
1,264
448
0
0
1
1,713
-222
545
881
0
0
11
1,436
-115
1,322 タイ
金額(百万ドル)
インドネシアの輸出統計統計
国名
日本
マレーシア
インドネシアの輸出統計統計
国名
褐炭
5,756
合計
8,261 中国
6,756 インド
瀝青炭 亜瀝青炭 無煙炭 その他
2,755
2,517
4
0
褐炭
1,618
合計
誤差
6,894 1,367
5,527 1,229
1,875
3,576
0
0
76
3,799 日本
2,639 韓国
2,293
932
0
0
0
3,225
574
1,367
686
9
0
6
2,068
571
2,325 台湾
1,502 マレーシア
1,301
696
0
0
21
2,019
307
862
275
0
0
0
1,137
364
408
427
0
0
4
839
150
989 タイ
(出所)本調査
(2) インドネシア税関統計と MEMR 統計の誤差
インドネシアエネルギー鉱物資源省(MEMR)の統計によると、2013 年の石炭輸出量は
3 億 3,000 万トン78で、インドネシア税関統計の 4 億 2,000 万トンとは 9,000 万トンの誤差が
ある。これはインドネシアの石炭統計を利用する際に留意しなければならない点である。
78
同省の統計によると、2014 年の石炭輸出量は 3 億 8,000 万トン。
- 104 -
4.3 FOB コストの構成(生産、選炭、輸送、港湾料等)
石炭輸出価格(FOB)は、炭鉱の資源賦存量、炭鉱の地質条件、石炭品質(石炭性状)
、
港までの距離、炭鉱のロケーションなど、多くの要素に影響される。このため、地域別ま
たは島嶼別に FOB 価格を集約することは難しい。本節では、幾つかの石炭生産企業(炭鉱
企業)の事例を取り上げ、インドネシア炭の FOB 価格について考察し、その構成について
分析する。
図 4.3.1 はインドネシアの露天掘り炭鉱の石炭採掘から船積みまでのフローチャートであ
る。炭鉱開発は、一般的に坑内掘と露天堀の 2 種類がある。インドネシアの場合は、現在
生産中の炭鉱はほとんどが露天堀で、2013 年末時点では坑内掘は数炭鉱ある79。なお、石炭
生産コストは資本コストと操業コストに大別される。
(出所)IIEE (2015), ”The Current and Future Situation of Coal in Indonesia”, Jan 2015
図 4.3.1 露天掘り炭鉱の石炭採掘~船積みまでのフローチャート
資本コストは、炭鉱採掘に向けた初期投資で、土地(権益)取得、必要なインフラ設備
の建設、環境調査、設備購入などがある。一方、操業コストは、炭鉱採掘活動に必要なコ
ストと定義される。Jelen(1970)によると、操業コストはさらに直接操業コスト、間接操
業コスト、一般管理コストの 3 つに分けられる。直接操業コストには、表土障害物除去、
剝土、採掘、搬出などにかかるコストがある。間接操業コストには、石炭加工(粉砕・選
炭)
、輸送、積み替え、環境対策などにかかるコストが含まれる。一般管理コストには、管
79
2013 年時点でまた稼働している坑内炭鉱は、ベンクル州の PT. Bukit Sunur と PT. Kusuma Raya Utama、
西スマトラ州の Sawahlunto Small Scale Mining と PT. Allied Indocoal、南カリマンタン州の Satui Underground
(Arulmin)(一時停止)
、ジャワのバンテン州の Panggarangan-Bayah Small Scale Mining、などである。その他、
東カリマンタン州と南カリマンタン州に数か所の坑内炭鉱開発または試験的な採掘が進められている。
- 105 -
理費、福祉、事務所費、一般雑費などが含まれる。石炭の FOB 価格は、一般的には、操業
コスト(生産コスト)に減価償却費、ロイヤルティ、地方税、仲介人手数料、企業マージ
ンを加算して算出される。
表 4.3.1 炭鉱開発・生産関連コストの分類
コスト分類
コスト項目
土地・権益取得
インフラ建設
資本コスト
環境調査
設備購入
地表障害物除去
直接コスト
剝土
採掘
搬出
粉砕・選炭
操業コスト
間接コスト
輸送
積替え・積出
環境対策費
管理費
一般管理コスト
福祉
事務所
一般雑費
(出所)本調査
トン当たりの石炭生産コストは、生産パラメーターや石炭品質(価格)に左右される。
採掘コストに影響を及ぼす要因としては、地層構造、埋蔵量、炭質、生産量、税・ロイヤ
リティ、剝土比、生産水準、選炭の必要性、積出港までの距離、輸送方法などがある。
表 4.3.2 は一般的な操業コストを算出するための関連コストの指標を示したもので、
Ramadhani(2012)の研究論文より転載した。この論文では、東カリマンタン州の A 社を研
究対象とし、同社の生産コストを分析している。
- 106 -
表 4.3.2 2012 年の東カリマンタン州における露天掘り炭鉱開発の単位数値と関連コスト
パラメーター
単位
単位数値とコスト
石炭生産性
トン/時
280.00
剥土比
BCM/トン
8.00
表土比(OB)
ドル/BCM
2.80
標準表土距離
km
1.90
予想表土距離
km
2.20
表土距離調整レート
ドル/BCM/km
0.60
石炭採掘レート
ドル/時
69.40
石炭採掘燃料コスト
ドル/時
71.46
石炭搬出レート
ドル/トン
2.17
標準石炭搬送距離
km
8.00
石炭搬送距離調整レート
ドル/トン/km
0.10
予想石炭搬送距離
km
10.00
エスカレーションコストレート
%/年
2.50%
(注)2012 年の東カリマンタン州における露天掘りの操業コストの関連パラメーター(係数)
(出所)Thesis Research Report, Ramadhani, 2012
Ramadhani(2012)の論文には、A 社の炭鉱操業コストの内訳が示されている。表 4.3.3
は、A 社の 2012 年頃の操業コストの内訳である。操業コストは、上流の採掘から粉砕、輸
送、一般管理費まで、大きく 3 つ(炭鉱採掘コスト、輸送コスト、一般コスト)に分けら
れている。このうち、炭鉱採掘コストは、操業コスト全体の 65.4%を占めており、輸送コス
トと一般コストは、それぞれ 17.1%と 17.4%を占めている。剝土コストが最も高く、コスト
全体の 58.4%を占めている。剝土コストは石炭資源の分布状況によって異なり、露天掘り炭
鉱開発の経済性を左右する最も重要な要素であることが分かる。次いで多いのは、搬出コ
ストとバージ輸送コストで、それぞれ 5.8%と 8.8%である。この 2 つコストは、燃料価格に
大きく左右される。
- 107 -
表 4.3.3 東カリマンタン州 A 社の操業コストの内訳(2012 年)
操業コスト構成
剝土
採掘
搬出
炭鉱採掘コスト
石炭粉砕
石炭貯蔵と積替え
石炭輸送(バージ)
石炭輸送船への積替えの設備借用
重量測定
滞船料
積み降ろし/積替え
輸送コス ト
リハビリと環境対策
本社事務所と技術サービス
マーケティング・コミッション
地方政府税
一般管理費
一般コスト
合計コス ト (2012)
単価
( ド ル /ト ン )
23.84
0.5
2.37
26.71
0.3
0.4
3.6
0.6
0.1
0.3
1.7
7.0
0.1
0.6
3.8
0.01
2.6
7.11
40.82
構成比
( %)
58.4
1.2
5.8
65.4
0.7
1.0
8.8
1.5
0.2
0.7
4.2
17.1
0.2
1.5
9.3
0.0
6.4
17.4
100.0
(出所)Thesis Research Report, Ramadhani, 2012
ただし、Ramadhani(2012)の論文では、ロイヤルティ、企業利益(マージン)に関する
言及はない。インドネシアでは、炭鉱企業が有するライセンス(炭鉱開発許可証)の種別
により課税の体系が異なる。
以下、Riswan & Mustofa(2011)がまとめた事例により、ライセンス(炭鉱開発許可証)
と課税体系の関係について考察する。分析対象の B 社は、鉱区面積 91Ha の IUP ライセンス
(開発許可証)を有し、露天掘り炭鉱の開発を進めている。B 社の石炭生産量は年産 657,383
トンで、高品炭(発熱量 6,998 kcal/kg、硫黄分 1%以下、灰分 15%)を生産している。
表 4.3.4 は B 社の操業コストの内訳である。剝土コストが全体に占める割合が、A 社と同
様に最も高く、40.8%である。採掘コストの割合は A 社と同レベルの 1.1%、輸送コストは
やや高い。この事例では、ロイヤルティは 2.78 ドル/トンである。しかし、一般管理コス
トに関する詳細な記述がないため、生産コストは 30.56 ドル/トンであるが、A 社のように
一般管理コストを計上すると、トン当たりのコストは約 40 ドルになる。
- 108 -
表 4.3.4 東カリマンタン州 B 社の操業コストの内訳(2011 年)
項目
コスト
( ド ル /ト ン )
炭鉱採掘
構成比
(%)
0.33
1.1
剝土
12.47
40.8
輸送
8.50
27.8
製品調整
1.32
4.3
港積出
4.50
14.7
環境対策
0.26
0.9
地表障害物除去
0.40
1.3
ロイヤルティ
2.78
9.1
30.56
100.0
合計
(出所)Riswan & Mustofa, 2011
3 つ目の事例は、東カリマンタン州の Bontang(ボンタン)にある石炭生産企業 C 社のケ
ースである。C 社の 2014 年の財務報告書から必要データを抽出し、表 4.3.5 を作成した。
表 4.3.5
2014 年における C 社の石炭生産コストの構成
コスト
(ドル/トン)
36.39
27.94
1.55
0.04
2.07
3.50
0.24
0.55
0.50
1.12
0.23
0.71
0.02
0.00
0.12
0.04
1.01
1.57
0.67
0.02
0.07
0.07
0.75
0.01
1.91
42.01
コスト項目
炭鉱採掘コスト
剥土
ブラスティング
泥とスライド除去
重量測定
石炭搬出
搬出道路の整備
再植林と環境対策
その他雑費
その他コスト
燃料と設備
メンテナンスとパーツ
検査・修理
タイヤ
道具・用具
その他雑費
人件費
一般管理費
事務所費
福祉と贈与
コミュニティー
コンサルタント費
諸税
積み替え 作業
減価償却費
合計生産費
構成比
(%)
86.6
66.5
3.7
0.1
4.9
8.3
0.6
1.3
1.2
2.7
0.5
1.7
0.0
0.0
0.3
0.1
2.4
3.7
1.6
0.0
0.2
0.2
1.8
0.0
4.5
100.0
(出所)2014 年 C 社の年度財務報告書より作成。
C 社のケースでは、A 社と B 社の事例と同様、生産コストに占める剝土コストが最も高
く、生産コストの 66.5%を占めている。C 社の場合は、炭鉱生産活動にかかる直接経費(燃
- 109 -
料、修繕など)をその他のコストとしてまとめている。その他のコストが生産コスト全体
に占める割合は 2.7%である。この直接経費を炭鉱採掘コストに合算すると、炭鉱採掘コス
トは 37.51 ドル/トンとなり、生産コスト全体に占める割合は 89.3%に達する。
さらに、表 4.3.6 は、Meister (2010)の報告書にまとめられた 2010 年時点の石炭 FOB 価格
の平均的なコスト内訳を示したものである。やや古いデータではあるが、FOB 価格の内訳
(採掘、加工・選炭、諸税、ロイヤルティ、輸送、港湾、積み替え作業など)が示されて
いる。この表によると、炭鉱採掘活動にかかるコストが最も高い。Meister (2010)は、インド
ネシアの平均採掘コストは 22.5 ドル/トンであり、全体コストの 60.3%を占めるとしてい
る。次いで高いのが諸税とロイヤルティで、全体に占める割合は 24.4%である。ただ、この
事例には一般管理費が含まれておらず、また、各項目に関する詳細な説明もない。
表 4.3.6 インドネシアの石炭輸出価格(FOB)の内訳(2010 年)
コスト
(ドル/トン)
22.5
項目
採掘
構成比
(%)
60.3
加工
2.3
6.2
諸税とロイヤルティ
9.1
24.4
陸輸送
1.5
4.0
港と積み替え
1.9
5.1
37.3
合計
(出所)Cost Trends in Mining, Meister, 2010
100.0
最後に、上記 4 つの事例を整理し、表 4.3.7 を作成した。
表 4.3.7 2010 年の石炭 FOB 価格における平均コストと石炭生産企業 3 社の生産コスト
コスト構成
Meister (2010)
A社
B社
C社
2010年
2012年
2011年
2014年
採掘
24.80
26.71
14.52
36.39
輸送
3.40
7.00
8.50
1.13
n.a
7.11
4.76
2.58
9.10
n.a
2.78
n.a
一般管理
税・ロイヤルティ
減価償却
合計生産コスト
n.a
n.a
n.a
1.91
37.30
40.82
30.56
42.01
比率(%)
採掘
66.5
65.4
47.5
86.6
輸送
9.1
17.1
27.8
2.7
一般管理
n.a
17.4
15.6
6.1
24.4
n.a
9.1
n.a
n.a
n.a
n.a
4.5
100.0
100.0
100.0
100.0
税・ロイヤルティ
減価償却
(注)B 社会の一般管理費は表 4.3.4 の項目の港積出および環境対策を足したもの。
(出所)本調査
- 110 -
表 4.3.7 及び前提とした 4 つの事例から言えることは、生産コスト全体に占める採掘コス
トの割合が 50%前後と大きく、特に剝土コストの影響を大きく受けることである。また、4
つ事例の生産コストは 30.56~42.01 ドル/トンであったが、最終的な FOB 価格を算出するた
めには、さらに、減価償却費、ロイヤルティ、地方税、企業利潤(マージン)などを加算
しなければならない。
以下、剝土比(Stripping Ratio)
、ロイヤルティ、仲介人、HBA 価格指標について補足す
る。
剝土比(Stripping Ratio)
インドネシアの石炭生産コストでは、前述の事例分析結果の通り、剝土コストの割合が
最も多く、炭鉱企業の生産活動の経済性を左右する。石炭を地表に露出させるための剥土
量と石炭量の比が剥土比(Strip Ratio)として定義される。剥土比は、採掘の経済性評価に
おける有効指標である。剥土比=(剥土量 m3:BCM:Bank Cubic Meter)÷石炭量(トン)
で示されるが、石炭量を原炭で示す剥土比と精炭で示す有効剥土比がある。剥土比は一般
的に精炭当たり 5~15(m3/トン)と範囲が広いが、炭価(炭種)や立地条件(輸送距離)
により経済性は変動する。
表 4.3.8 はインドネシアにおける剝土比と生産コストの関係を示したものである。剝土比
によって生産コストが異なり、FOB 価格に影響を及ぼす。なお、この表はあくまでも 1 つ
の目安にすぎず、最終的な FOB 価格は炭鉱のロケーションにも大きく左右される(輸送費
が異なる)
。
表 4.3.8 剝土比と生産コスト、減価償却費、ロイヤルティ、地方税の関係
コスト項目
剝土
採掘
搬出(1)
粉砕
地代(2)
埋め戻し
一般費
小計
償却
ロイヤルティ
小計
地方税
合計
単位
ドル/BCM
ドル/トン
ドル/トン
ドル/トン
ドル/トン
ドル/トン
ドル/トン
ド ル /ト ン
ドル/トン
ドル/トン
ド ル /ト ン
ドル/トン
ド ル /ト ン
1
2.7
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
7.9
0.3
2.0
10.2
0.5
10.7
2
5.4
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
10.6
0.3
2.0
12.9
0.5
13.4
3
8.1
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
13.3
0.3
2.0
15.6
0.5
16.1
剝土比(Striping Ratio)(BCM/トン)
4
5
6
7
8
9
10.8
13.5
16.2
18.9
21.6
24.3
1.7
1.7
1.7
1.7
1.7
1.7
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
1.4
1.4
1.4
1.4
1.4
1.4
0.7
0.7
0.7
0.7
0.7
0.7
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
16.0
18.7
21.4
24.1
26.8
29.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
18.3
21.0
23.7
26.4
29.1
31.8
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
18.8
21.5
24.2
26.9
29.6
32.3
(注)(1) 採掘場から炭鉱貯炭場まで運ぶ。(2) 特に南カリマンタン州
(出所)本調査の現地調査での入手資料より作成
- 111 -
10
27.0
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
32.2
0.3
2.0
34.5
0.5
35.0
11
29.7
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
34.9
0.3
2.0
37.2
0.5
37.7
12
32.4
1.7
0.2
1.4
0.7
0.2
1.0
37.6
0.3
2.0
39.9
0.5
40.4
ロイヤルティ
インドネシアでの石炭生産に対する課税には、石炭ロイヤルティという徴税項目がある。
ロイヤルティは、2012 年の第 9 番(No.9/2012)の法律として施行され、石炭品位によって
異なる。表 4.3.9 の通り、IUP 鉱業許可のロイヤルティの徴税率は、石炭の品位(発熱量)
によって異なり、5,100 kcal/kg 以下の炭種は販売価格の 3%、5,100~6,100 kcal/kg は同 5%、
6,100 kcal/kg は同 7%である。これは露天掘りのケースで、坑内掘りの場合は、5,100 kcal/kg
以下の炭種は販売価格の 2%のロイヤルティが徴税される。一方、インドネシア政府は、ロ
イヤルティを 7~13.5%に引き上げることを検討している。具体的には、5,100 kcal/kg 以下
の炭種は従来の 3%から 7%へ、5,100~6,100 kcal/kg の炭種は 5%から 9%へ、6,100 kcal/kg
以上の炭種は一律 7%から 13.5%へ、引き上げることとなる。一方、鉱業事業契約(CCoW)
の場合は、ロイヤルティは一律 13.5%である。
表 4.3.9 インドネシアの石炭ロイヤルティ(IUP 鉱業許可)
品位別
(kcal/kg、気乾ベース)
徴税率
(トン当たり)
露天掘り
a) ≤ 5,100
販売価格に対して3%
b) > 5,100 ~ 6,100
販売価格に対して5%
c) > 6,100
販売価格に対して7%
坑内掘り
a) ≤ 5,100
販売価格に対して2%
b) > 5,100 ~ 6,100
販売価格に対して4%
c) > 6,100
販売価格に対して6%
(注)現在見直しが行われている。
(出所)政府法令 No.9/2012 より作成。
仲介人
一般的に IUP ライセンスを有しているのは、地方企業である場合が多く、特に中小企業
の場合は、石炭の採掘技術や資本力が弱い。大抵の場合、IUP ライセンスの所有者は、大手
炭鉱と協力関係を結び、採掘権を委ねるケースが多い。そのため、各企業間に仲介人が存
在する。また、IUP ライセンス所有企業と石炭輸入企業との間でも仲介人が存在する場合が
ある。
販売ネットワークを持たない地方の中小炭鉱企業にとって、販売ネットワークを有する
仲介人は極めて重要な存在である。仲介人には、ジャカルタを中心に活動する仲介人と地
方で活動する仲介人の 2 タイプがあり、ほとんどの場合、取引の成功報酬として売手から
手数料を受け取っている。手数料は石炭価格に左右され、石炭価格が低迷した 2014 年 12
月のトン当たり相場は、0.5~1 ドル程度であったが、石炭価格の高騰期にはトン当たり相
場が 3 ドルに達したケースもあった。また、1 件の取引に複数の仲介人が関与する場合が多
- 112 -
く、手数料を分け合うことになる。
この他、商社が仲介人になるケースもあるが、この場合は、輸送・販売用の特別許認可
(IUPK)の取得が義務付けられている。インドネシア国外に輸出する場合、商社は登録済
み輸出証明書(Eksportir Terdaftar ; ET)を取得しなければならない。
石炭指標価格(HBA)80
インドネシアエネルギー鉱物資源省(MEMR)は 2009 年より、石炭指標価格(HBA)と
石炭基準価格(HPB)を毎月発表している。
石炭指標価格(HBA)は、発熱量 6,322 kcal/kg の石炭について、国際的に代表的な価格
指標であるインドネシア石炭価格指標(ICI-1)、プラッツ価格指標(Platts-1)、ニューキャ
ッスル輸出指標(NEX)
、ニューキャッスルグローバルコール指標(GC)の 4 つの石炭価格
をもとに算出される。一般的に、スポット市場の石炭販売価格はこの HBA 指標価格を参考
としている。一定期間内に石炭販売を行う場合、最後の月の HPB の 50%、前月の HPB の
30%、2 ヶ月前の HPB の 20%、この 3 つ HPB を加重平均して平均価格を算出し、契約する。
石炭基準価格(HPB)は、石炭指標価格(HBA)に基づき、取引量の多い 8 つの種類の
石炭(発熱量は 4,200kcal~7,000kcal/kg)につき算出される。そして、これら 8 種類の価格
を「ベンチマーク」として、それぞれ同じような品質を持つ他の 61 種類の石炭の価格が算
出される。
80
本報告書第 7 章 7.3.2 石炭輸出に関する条項(2)石炭基準価格でも HBA と HPB について政策面より解説
している。
- 113 -
表 4.3.10 2014 年 11 月 1~30 日の HBA と HPB
- 114 -
(出所)インドネシアエネルギー鉱物資源省(MEMR)
- 115 -
なお、図 4.3.2 は、2009 年以降の HBA と代表 HPB の価格推移である。
(USD/トン)
160
HBA
140
Gunung Bayan I
(7,000)
120
Prima Coal
(6,700)
100
Pinang Coal
(6,150)
80
Indominco IM East
(5,700)
60
Melawan Coal
(5,400)
40
Envirocoal
(5,000)
0
Jorong J-1
(4,400)
1月
3月
5月
7月
9月
11月
1月
3月
5月
7月
9月
11月
1月
3月
5月
7月
9月
11月
1月
3月
5月
7月
9月
11月
1月
3月
5月
7月
9月
11月
1月
3月
5月
7月
9月
11月
20
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
Ecocoal
(4,200)
2014年
(出所)Directorate General of Mineral and Coal, Ministry of Energy and Mineral Resources
図 4.3.2
HBA と代表的な HPB(8 種類)の推移(2009 年 1 月~2014 年 11 月)
なお、以下の計算式は、2014 年 11 月 1~30 日までの一般炭の HBA と HPB の算出方法を
まとめたものである。
① 石炭指標価格(HBA)
(6,322 kcal/kg GAR の場合)
HBA = 25% ICI-1 + 25% Platts-59 + 25% NEX + 25% GC
(注)
HBA =石炭指標価格(USD/トン)
ICI=Indonesia Coal Index(インドネシア石炭指数)81(USD/トン)
NEX =Newcastle Export Index(USD/トン)
GC=Newcastle Global Coal Index(USD/トン)
石炭発熱量の ADB から GAR への換算:
K GAR = K ADB * (100 – TM) / (100 – IM)
81
Argus/Coalindo Indonesian Coal Price Index について
インドネシア炭の週次価格指標を提供するデータサービス。現在提供する価格データは、
「ICI-1(熱量
6,500kcal/kg GAR)」、
「ICI-2(同 5,800kcal/kg GAR )」、
「ICI-3(同 5,000 kcal/kg GAR)」、
「ICI-4(同 4,200kcal/kg
GAR)」および「ICI-5(同 3,400kcal/kg GAR)」の 5 種類。現物石炭の取引契約において決済指標および参
考指標として利用されるほか、インドネシア炭のロイヤルティや輸出税の算出に利用される。
- 116 -
(注)
K GAR = 到着ベースの発熱量(Gross As Receive)
K ADB = 気乾ベースの発熱量(As Dried Basis)
TM= 全水分
IM= 水分
到着ベース(as received, ar)の硫黄分
到着ベース(ar)の灰分
② 1~7 番の代表銘柄の HPB の算出方法
代表 HPB (i) = (HBA * K (i) * A (i)) – (B (i) + U (i))
(USD/トン)
(注)
代表 HPB (i) = 代表 7 銘柄の HPB 価格
(USD/トン)
K (i) = 石炭(i)の発熱量/6,322
(留分)
A (i) = ( 100 – 石炭(i)の水分 ) / (100 – 8 )
(留分)
B (i) = ( 石炭(i)の硫黄分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (i) = ( 石炭(i)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
(i)
= 代表 7 銘柄
③ 8 番の代表銘柄の HPB の算出
代表 HPB (i) = (HBA * K (i) * A (i)) – (B (i) + U (i))
(USD/トン)
(注)
代表 HPB (i) = 8 番の代表銘柄の HPB 価格
(USD/トン)
K (i) = 石炭(i)の発熱量/6,322
(留分)
A (i) = ( 100 – 石炭(i)の水分 ) / (100 – 8 / FKA(i))
(留分)
FKA(i) = ((((( 100 – 8 ) / (100 – 石炭(i)の水分 )) *
石炭(i)の水分 )) + ( 100 – 8 )) / 100
(%)
B (i) = ( 石炭(i)の硫分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (i) = ( 石炭(i)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
(i)
= 8 番代表銘柄
④ 9~66 番の代表銘柄の HPB の算出
HPB (j) = {( 代表銘柄の HPB (i) + ( B (i) + U (i) )) * ( K (j) / K (i) ) *
[( 100 – 水分
(j)
) / ( 100 – 水分
(i)
)] *
[( 100 – 8 ) / (100 – 8 )]} – ( B (j) + U (j) )
- 117 -
(USD/トン)
(注)
HPB (j) = その他代表銘柄の HPB 価格
(USD/トン)
B (i) = ( 石炭(i)の硫分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (i) = ( 石炭(i)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
B (j) = ( 石炭(j)の硫分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (j) = ( 石炭(j)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
K (j) / K (i) = 石炭(j)の発熱量 / 石炭(i)の発熱量
(i)
= 1~7 番の代表銘柄
(j)
= 9~64 番の代表銘柄
(留分)
⑤ 67~72 番の代表銘柄の HPB の算出(低品位炭)
全水分<40%の場合
HPB (j) = {( 代表銘柄の HPB (i) + ( B (i) + U (i) )) * ( K (j) / K (i) ) *
[( 100 – 水分
(j)
) / ( 100 – 水分
(i)
)] *
[( 100 – 8 / FKA (i) ) / (100 – 8 / FKA (j) )]} – ( B (j) + U (j) )
(USD/トン)
(注)
HPB (j) = その他代表銘柄の HPB 価格
(USD/トン)
代表 HPB (i) = 代表銘柄の HPB (i)
(USD/トン)
B (i) = ( 石炭(i)の硫黄分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (i) = ( 石炭(i)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
B (j) = ( 石炭(j)の硫黄分 – 0.8 ) * 4
(USD/トン)
U (j) = ( 石炭(j)の灰分 – 15 ) * 0.4
(USD/トン)
FKA(j) = ((( 100 – 石炭水分 ) / (100 – 石炭(j)の水分 )) *
石炭(j)の水分 ) + ( 100 – 石炭水分 ) / 100
K (j) / K (i)
= 石炭(j)の発熱量 / 石炭(i)の発熱量
(i)
= 8 番の代表銘柄
(j)
= 67~68 番の代表銘柄
(%)
(留分)
全部水分≧40%の場合
HPB (j) = {( 代表銘柄の HPB (i) + ( B (i) + U (i) )) * ( K (j) / K (i) ) *
[( 100 – 水分
(j)
) / ( 100 – 水分
(i)
)] *
[( 100 – 8 / FKA (i) ) / (100 – 8 / FKA (j) )]}
(USD/トン)
(注)
HPB (j) = その他代表銘柄の HPB 価格
(USD/トン)
代表 HPB (i) = 代表銘柄の HPB (i)
(USD/トン)
- 118 -
FKA(j) = (( 100 – 石炭水分 ) / (100 – 石炭(j)の水分 )) *
石炭(j)の水分 ) + ( 100 – 石炭水分 ) / 100
K (j) / K (i) = 石炭(j)の発熱量 / 石炭(i)の発熱量
(i)
= 8 番の代表銘柄
(j)
= 69~72 番の代表銘柄
- 119 -
(%)
(留分)
第 5 章 石炭輸送インフラ整備状況
5.1 国内炭の輸送インフラ整備と輸送の状況
インドネシアは東西 5,110 km に及び、1 万 3,000 以上の大小の島々から成る世界最多の島
嶼国家である。このため、石炭輸送では水上輸送が最も有効な手段となっており、既存炭
鉱の大部分は、河川や海岸線にアクセスしやすい位置にある。各炭鉱では、炭鉱からバー
ジ積出港あるいは港湾の石炭積出港まで伸びる道路を建設している。石炭輸送手段として
は、まず、炭鉱からバージ積出港までトラック輸送し、バージ埠頭からインドネシア国内
の石炭消費地への直接輸送する、または、海港までバージ輸送した後、大型船に積み替え
て輸出している。
インドネシアの石炭資源開発は、輸送インフラがネックとなり、多くは沿海地域あるい
は内陸の河川にアクセスしやすい地域に集中している。そのため、インドネシアの石炭輸
送はほとんどが水上輸送で行われている。また、水上輸送は他の輸送手段よりコストが安
く、輸出する場合には価格競争力が高まることも水上輸送に頼らざるを得ない原因となっ
ている。インドネシアでは、トラックとバージを組み合わせた輸送方式が多く、輸送量に
応じて臨機応変に対応できるという利点がある。図 5.1.1 はインドネシアの石炭輸送フロー
図である。
- 120 -
トラック
炭鉱
バージ積出港
バージ
沖合積み
石炭ターミナル
石炭運搬船
石炭運搬船
バージ
石炭運搬船
トラック・ ベルトコンベア
炭鉱
石炭ターミナル
バージ
炭鉱
トラック
バージ積出港
バージ
バージ積出港
中間貯炭場
バージ
バージ
沖合積み
鉄道(南スマトラのみ)
炭鉱
石炭
運搬船
石炭運搬船
石炭ターミナル
バージ
トラック・ベルトコンベア
バージ
石炭運搬船
鉄道
(出所)インドネシア石炭鉱業協会「Indonesian Coal Book2014/2015」P15 の資料をもとに作成。
図 5.1.1 インドネシアの石炭輸送フロー図
インドネシアの石炭輸送体系は 4 つのパターンに分けられる。以下、図 5.1.1 の上から順
に、パターン 1、2、3、4 と呼ぶ。パターン 1 とパターン 3 が最も一般的な輸送フローであ
る。ベルトコンベアを利用するパターン 2 の代表的なケースには、PT. Indominco Mandiri(イ
ンドミンコ・マンディリ)などがあるが少数派である。鉄道とバージを併用するパターン 4
の輸送フローを採用しているのは、国営石炭公社の PT. Bukit Asam(ブキット・アッサム社)
のみである。
インドネシアの石炭輸送は、河川を利用したバージ輸送が主流である。東カリマンタン
州で使用されているバージは上流域では積載量 1,000~3,000 トンクラス、中下流域では
8,000 トンクラスの大型バージが使用されている。中央カリマンタン州で使用されているバ
ージは上流域では 2,000~3,000 トンクラスが、中下流域では 8,000 トン以上の大型バージが
使用されている。スマトラ島では 8,000 トンバージが主流である。また、上流域では乾季
にバージ輸送が行えなくなる場合があり、下流域に中継貯炭場を設けて積み替え作業を行
う炭鉱もある。
トラック輸送は、カリマンタン島とスマトラ島の広い範囲で行われているが、石炭輸送
- 121 -
トラックが国道を利用することにより、渋滞や大気汚染などの問題が発生したため、石炭
企業に対する一般道の利用禁止あるいは走行時間の制限などの政策を打ち出した地方政府
もある。また、こうした政策により、石炭の輸送コストが上昇した。
インドネシアの主要炭鉱はカリマンタン島とスマトラ島に集中している。以下、両島の
石炭輸送インフラ整備状況や今後のインフラ建設計画についてまとめる。
5.1.1 カリマンタン島
(1) 水上輸送の現状および将来計画
①
水上輸送の現状
カリマンタン島では、東カリマンタン州のMahakam(マハカム)川と中央・南カリマン
タン州のBarito(バリト)川の河川輸送インフラが基幹輸送ルートである。カリマンタン島
の石炭輸送フローは、次の2パターンに分けられる。①海岸近くに炭鉱があり、港から直接
運搬船に積み込む。②河川沿いのバージ積出港までトラック輸送した後、バージで出荷す
る。2011年時点の統計によると、東カリマンタン州と南カリマンタン州で稼働しているバ
ージは、それぞれ240隻であった。バージの積載能力は3,000トン~12,000トンまで幅広いが、
石炭輸送に用いられるバージの積載能力は8,000トンクラスである。つまり、各鉱区で採掘
された石炭は、トラックまたはベルトコンベアで河川沿いの積出港に運ばれ、そこからバ
ージで沖合の積替えポイントまたは沿海の石炭ターミナルに運ばれた後、石炭輸送船に積
み替えられる。
現在、陸上積替地点の石炭ターミナルとして利用されている積出港は、全部で23ヵ所あ
り、年間の積出能力は1.2~1.5億万トンである。その他、15ヵ所の沖合の積み替え施設が稼
働しており、これらの設備の年間取扱い能力は合計1.7億トンに達している。沖合の積み替
え施設の年間取扱い能力は、300~500万トンクラスの小規模施設から、1,500万トンクラス
の大規模施設まで様々である。
PT Kaltim Prima(KPC)(カルティム・プリマ・コール社)とPT Indominco Mandiri(IM)
(インドミンコ・マンディリ社)の場合、自社専用の石炭積出港を有しており、石炭を直
接運搬船に積み込むことができる。また、KPCは炭鉱の山元から、石炭を専用ベルトコンベ
アで港湾まで運搬している。マハカム川沿いには年産100万トン以下の炭鉱が多数ある。こ
れらの炭鉱では採掘した石炭のほとんどを河川積出港または桟橋までトラック輸送してい
る。マハカム川には60以上の桟橋がある。下記はマハカム川沿いで稼働中の主な河川積出
港である。
1)
マハカム川沿いの主要積出港(河川積出港)
・グナンバヤン積出港: 3,000 dwt(積載重量トン、以下同じ)
- 122 -
・マルチハラバン積出港: 最大8,000 dwt
2)
バリト川沿いの主要積出港(河川積出港)
・アダロ積出港: 最大12,000 dwt
一方、カリマンタン島の東部と南部では23ヵ所の陸上積替地点と15ヵ所の沖積地点が操
業している。そのうち、代表的な石炭陸上積替地点の5ヵ所の概要をまとめた。
1)
Tanjung Bara(タンジュン・バラ)港
1991年操業開始。KPCの専用港として石炭を出荷している。KPC社は自社炭鉱から全長
13.4 kmのベルトコンベアで同港の貯炭場まで石炭を運んでいる。貯炭場の石炭取扱い能
力は80~120万トン、同港の石炭取扱能力は8,000トン/日。
2)
North Pulau Laut(北プラウ・ラウト)港
PT Arutmin Indonesia(アルトミン)の石炭専用積出港である。1994年に操業開始した。
水深18 m、バース全長276 m。石炭取扱能力は4万トン/日。
3)
Balikpapan(バリクパパン)港
石炭以外の貨物も取り扱う。石炭積出港として利用しているのは、Gunung Bayan(グヌ
ン・バヤン)社とBampu(バンプ)社である。両社の石炭は主にバージとトラックで同
港までに運ばれ、石炭輸送船に積み替える。1995年に操業開始し、現在の石炭取扱能力
は4万トン/日。
4)
インドネシア・バルク港
別名、南プラウ・ラウト港。1997年に操業開始し、主にアダロ社が利用している。現在
の石炭取扱能力は4万トン/日。
5)
Bontang(ボンタン)港
PT Indominco Mandiri(IM)(インドミンコ・マンディリ社)の専用港。1997年に操業開
始。35 km離れたIM社の炭鉱から専用道でトラック輸送され、同港の専用貯炭場(取扱
い能力35万トン)で選炭やブレンド処理される。一部の石炭は、マハカム川上流からバ
ージで7日かけて同港まで輸送される。石炭取扱能力は約4万トン/日。
表5.1.1は、上記5つの石炭積出港を含む石炭積出港の石炭取扱能力をまとめたものである。
その他、北カリマンタン州では、全部で6ヵ所の積出地点があり、主にTarakan(タラカン)
港とMuara Pantai(ムアラ・パンタイ)港の2港沖積替地点が稼働している。2港の石炭取扱
能力は合計2~3万トン/日。東カリマンタン州では、全部で17ヵ所の積替地点があり、主に9
ヵ所が稼働しており、石炭取扱能力は20~23万トン/日である。年間取扱能力に換算すると、
東カリマンタン州は7,400~8,500万トン/年である。南カリマンタン州は合計13ヵ所の積替地
点があり、主要な石炭取扱港は7ヵ所である。この7港の石炭処理能力は11~15万トン/日で、
年間処理能力は約4,000~5,500万トン/年である。中央カリマンタン州では、2か所の陸上積
出港が稼働している。
- 123 -
表 5.1.1 カリマンタン島沿海部の主な石炭ターミナルと取扱能力
処理能力
(トン/日)
20,000 ~ 30,000
石炭ターミナル名
北カリマンタン州
1 ムアラ・パンタイ
2 タラカン
東カリマンタン州
3 バリクパパン
12,000-20,000
沖積替地点
8,000-10,000
沖積替地点
204,000 ~ 232,000
4 ボンタン
5 タナ・メラ
6 タンジュン・バラ
7 テロク・アダン
8 テロク・アパ
9 ムアラ・ベラウ/ムアラ・ジャワ
南カリマンタン州
10 北プラウ・ラウト
積替設備
30,000-40,000
陸上積替地点
40,000
陸上積替地点
40,000
陸上積替地点
7,000-8,000
陸上積替地点
8,000-12,000
沖積替地点
8,000-10,000
沖積替地点
8,000-10,000
沖積替地点
110,000 ~ 148,000
35,000-40,000
陸上積替地点
11 南プラウ・ラウト
12 ジョロン・アンチョラゲ
35,000-40,000
陸上積替地点
8,000-12,000
沖積替地点
13 セブク・アンチョラゲ
14 ムアラ・サトゥイ・アンチョラゲ
8,000-12,000
沖積替地点
8,000-12,000
沖積替地点
15 タボネオ・アンチョラゲ
16 タンジュン・ペタン・アンチョラゲ
8,000-20,000
沖積替地点
8,000-12,000
沖積替地点
カリマンタン島合計
334,000 ~ 410,000
(出所)IIEE (2015), “The Current and Future Situation of Coal in Indonesia”, Jan, 2015, Indonesia Institute for
Energy Economics
② 将来計画
インドネシア政府は、石炭輸出専門港の建設・拡張計画を進めている。その主な目的は、
石炭輸出によるロイヤリティの徴収を増やすことと、選炭設備の充実により輸出炭の付加
価値を高めることである。インドネシア政府は、カリマンタン島とスマトラ島で合計14ヵ
所の候補地・港を石炭専用港とする計画を打ち出している。図5.1.2は、カリマンタン島の7
ヵ所の候補地・港の分布である。現在、実際に建設計画が進められているのは、マロイ湾
に近いBengalon(ベンガロン)港で、年間取扱能力1億トンの港となる予定である。
この他、ボンタン港南方のMalang Kayu(マラン・カユ)に石炭専用積出港(陸上積替)
を建設する計画が浮上している。同港の建設はマレーシア資本の炭鉱会社グヌン・バヤン
社が主導している。グヌン・バヤン社は、これまでバージを利用して輸送してきたが、桟
橋からSamarinda(サマリンダ)の河口まで輸送時間がかかるため、Malang Kayuに石炭積出
港を建設し、トラック輸送(炭鉱から港までの陸送距離は短い)に切り替える予定である。
- 124 -
ブルネイ
北カリマンタン州
マレーシア
ベラウ湾
東カリマンタン州 マロイ湾
西カリマンタン州
中央
カリマンタン州
バリクパパン湾
アダン湾
南カリマンタン州
プラウ・ラウト
スンガイ・ダナウ
バトゥ・リチン
(出所)本調査
図 5.1.2 カリマンタン島における石炭積出港建設の候補地・港
(2) トラック輸送(陸送)の現状および将来計画
①
トラック輸送(陸送)の現状
カリマンタン島では、長距離陸上輸送ルートが整備されておらず、州政府も明確な整備
計画を示していない。現状では、主に、炭鉱から河川沿いの積出港までトラックで陸送す
るパターンが多く、陸送距離は比較的短い。しかし、トラックによる石炭の長距離輸送は、
一般道の整備状況が悪いため、輸送時間が長くかかり、トラックの燃料費も高くつく。
また、石炭輸送が急増したため、道路の破損状況が激しくなり、深刻な渋滞が生じてい
る。カリマンタン島の道路は、大きな町の市街地では二車線道路であるが、郊外は単車線
で追い越ししにくい。そのため、カリマンタン島の各州政府は、石炭輸送トラックとパー
ム油輸送トラックの一般道利用を制限し、炭鉱企業とパーム油企業は自社専用道を建設す
るよう義務付けている。
東カリマンタン州の場合は、石炭・パーム油輸送のための公道・私道の利用に関する州
法令(Perda)No.10/201282を公布し、石炭企業とパーム油企業に対して、自社専用の輸送道
82
East Kalimantan Provincial Regulation (Perda) No.10/2012, “The Implementation of Public and Private Roads for
Coal and Oil Palm Transport”, 2012
- 125 -
を建設するよう義務付けている。南カリマンタン州と中央カリマンタン州でも、それぞれ
2012年と2011年に同様な法令が公布され、各炭鉱企業に自社専用道を建設するよう義務付
けた。この法令により、多くの中小炭鉱が自社専用道を確保ができず、閉山に追い込まれ
たが、一方で、カリマンタン島の交通トラブルが著しく減少した。
表 5.1.2 カリマンタン島各州政府の道路使用制限に関する法令
州別
法令
東カリマンタン州
南カリマンタン州
中央カリマンタン州
法令名
石炭・パーム油輸送のための公道・私
道の利用について
州令No.10/2012
州大臣令No.13/2012
公道・私道の利用について
(Perda. No.3/2008の改正)
鉱業・プランテーション輸送のための
州令No.7/2011
公道・私道の利用について
(出所)本調査
②
将来計画
東カリマンタン州の公道建設は、2008年以降、ほとんど進展がない。現在の公道の総延
長距離は、国道と州道を合わせて3,880 kmである。このうち、アスファルト舗装道が全体の
75%を占めており、残りは砂利舗装道21%、未舗装道4%である。新規建設される公道は、
主に中央政府の投資により建設される国道で、2008年以降、州政府による新規公道建設は
行われていない。
表 5.1.3 東カリマンタン州の公道建設状況
国道
年
アスファルト
砂利
未舗装
その他
合計
15
1,540
2008
1,318
168
39
2009
1,289
152
8
91
1,540
2010
1,760
247
0
111
2,118
2011
1,775
343
0
0
2,118
2012
1,762
293
60
4
2,118
未舗装
その他
州道
年
アスファルト
砂利
合計
2008
1,044
461
257
0
1,762
2009
1,098
541
111
12
1,762
2010
1,118
540
93
11
1,762
2011
1,148
512
93
9
1,762
2012
1,148
505
93
16
1,762
(出所)Direktori Investasi, Kalimantan Timur
(3) 鉄道輸送の現状および将来計画
①
鉄道輸送の現状
カリマンタン島の石炭輸送手段は、これまでトラック輸送と水上輸送(河川および港湾
- 126 -
の組み合わせ)により行われてきた。しかし、河川の水位は季節による変化が大きく、一
部地域では時期によっては石炭輸送が制限される。このため、多くの鉄道建設計画が浮上
している。
②
将来計画
表5.1.4は、中央政府が発表した「経済開発加速化・拡充マスタープラン」(MP3EI)83に
盛り込まれた、石炭産業を中心とするカリマンタン経済回廊における鉄道建設計画である。
ただ、現状では、鉄道建設は多くあるものの、実際に建設開始に至った事業はない。
なお、東カリマンタン州政府は、Russia Railway(ロシア鉄道社)とMOUを締結し、東カ
リマンタン州初の鉄道を建設することで合意している。同計画は2016年に着工し、2018年
に完成予定である。この鉄道は、西Kudai(クタイ)を起点に、Samarinda(サマリンダ)を
経由して、Balikpapan(バリクパパン)まで達する計画である。全長185 kmで、投資総額は
約30兆ルピア(18億ドル)である。現時点では、州政府が用地買収を支援し、ロシア鉄道
社が投資することで合意しており、州政府の許可も下りている。
表 5.1.4 カリマンタン島の石炭輸送鉄道建設計画
路線
ルートI
区間
西クタイ→バリクパパン
全長
(km)
事業投資者
投資総額
・東カリマンタン州政府
185
18億ドル
・ロシア鉄道
ルートII ボンタン港→サマリンダ
115
ルートIII マ・ワハウ→ルブック・ドゥトン
135
・東カリマンタン州政府
・Ras Al-Khaimah M inerals
・M etals Investments (RM II)
・Uni Emirat Arab
ルートIV タバン→ルブック・ドゥトン
185
・グヌン・バヤン社(民間)
15億ドル
10億ドル
(出所)本調査
5.1.2 スマトラ島
スマトラ島の輸送インフラは、インドネシア国内でも比較的発達している。同地域の石
炭輸送では、鉄道、港湾、道路(トラック)などが利用されている。スマトラ島の石炭資
源は、主に南部に集中しており、南スマトラ州で約40ヵ所(約300の鉱業権が付与されてい
る)の炭鉱が稼働している。主に褐炭が生産されており、同地域の火力発電所に供給され
ている他、最近ではインドや中国に輸出されている。
(1) 水上輸送の現状および将来計画
①
83
水上輸送の現状
The Master Plan for the Acceleration and Expansion of Economic Development of Indonesia
- 127 -
スマトラ島の主な石炭積出港は南スマトラ州にある。表5.1.5は現在稼働中の主な石炭タ
ーミナルである。このうち、Tarahan(タラハン)港とTeluk Bayur(テロック・バユール)
港は、国営石炭公社PT. Bukit Asam(ブキット・アッサム)が所有しており、石炭取扱能力
はそれぞれ3万トン/日と8,000トン/日である。PT. Bukit Asamはこの他、Kertapati Jetty(ケタ
パティ桟橋)にも積出港を所有しており、同港の石炭処理能力は6,000トン/日である。
表 5.1.5 スマトラ島の主な沿岸石炭ターミナルの設備状況
ブキット・アサム社
ブキット・アサム社
取扱能力
(トン/日)
25,000 ~ 30,000
8,000
接岸可能な船
(TDW)
80,000
40,000
プラウ・バイ港
Harbour Authority
6,000 ~ 7,000
na.
4
ケタパティ桟橋
ブキット・アサム社
5,000 ~ 6,000
8,000
5
ムアラ・サバック
6,000 ~ 7,000
5,000
No.
石炭ターミナル名
所有者
1
2
タラハン港
テロック・バユール港
3
(出所)本調査
② 将来計画
PT. Bukit Asamが所有するケタパティ桟橋とタラハン港の石炭取扱能力を引き上げるため、
現在、拡張工事が進められている。タラハン港は、パナマックスサイズからケープサイズ
に港湾を拡張する計画である。同社は、Tanjung Enim(タンジュン・エニム)炭鉱の積込設
備能力の拡張工事を含め、約2.86億ドルを投資すると試算されている。
表 5.1.6 PT. Bukit Asam の港拡張計画
炭鉱名・港名
投資額
(億ドル)
拡張計画内容
1 タンジュン・エニム炭鉱
積込設備の能力向上
1.10
2 ケタパティ桟橋
改修工事
0.18
3 タラハン港
能力向上拡張工事
1.58
合計
2.86
(出所)PT. Bukit Asamの資料をもとに作成
その他、石炭積出港の建設計画が進んでいるのは、既存港湾のTanjung Api Api(タンジュ
ン・アピ・アピ)である。この港湾は、これまで主に農作物の積出港として稼働してきた
が、2011年にインドのAdani(アダニ)社の協力を得て、石炭専用の陸上ターミタルを建設
する計画が浮上したものの、現在まで進展がなかった。もう1つは、タンジュン・エニム炭
鉱からLampung(ランブン)まで新規建設される鉄道計画に合わせて、タラハン港にランブ
ン新港を建設する計画である。しかし、この計画の詳細は現時点では不明である。
上記のタラハン港とタンジュン・アピ・アピ港の建設計画と重なるが、インドネシア政
- 128 -
府は、スマトラ島に合計7ヵ所の石炭専用港を建設する計画を進めている。石炭資源の分布
が少ない北スマトラ州以外で、各州に石炭積出港を整備する計画である。しかし、前述の2
つの建設計画以外の詳細は不明である。
アチェ
マレーシア
南アチェ
シンガポール
北スマトラ
リアウ諸島
リアウ
テロク・リアウ
西スマトラ
テロク・ジャンビ
パダン
ジャンビ
バンガ・ベリトン
タンジュン・アピ・アピ
ブンクル
南スマトラ
ブンクル港
ランブン
タラハン港
(出所)本調査
図 5.1.3 スマトラ島における石炭積出港建設の候補地・港
(2) 道路輸送の現状および将来計画
①
道路輸送の現状
スマトラ島での石炭トラック輸送(陸送)では、主にLahat(ラハット)県の民間石炭企
業が所有する26鉱区で生産された石炭が、Kertapati Jetty(ケタパティ)桟橋の近くにある
Muara Lematang(ムアラ・レマタン)桟橋までトラックで輸送されている。従来、これらの
鉱区で採掘された石炭は、ムアラ・レマタン桟橋まで6時間かけてトラック輸送されていた
が、近年の規制により一部の炭鉱会社が120 kmに及ぶ石炭専用輸送道を建設し、ラハット
鉱区からMusi(ムシ)川沿いのムアラ・レマタン桟橋まで石炭を運んだ後、バージに積み
替え、石炭専用運搬船に沖積み替されるようになった。
カリマンタン島と同様、スマトラ島の南スマトラ州とジャンビ州では、石炭輸送トラッ
クに対する一般道利用規制が実施されている。南スマトラ州の場合、2011年に州令Perda
- 129 -
No.05/2011を公布しており、同法の第52条と第53条で、自社専用道を利用した石炭輸送を義
務付けた。各炭鉱会社には、同法の公布から2年間の猶予期間が与えられ、自社専用道が完
成するまで一般道を利用することが許されたが、事前申請が必要で、許可証は毎年更新す
る必要がある。
2011年、南スマトラ州政府は、石炭専用道の建設を急ぐため、建設会社のPT. Servo Lintas
Raya(セヴォ・リンタス・ラヤ)社を指定し、ラハットからTanjung Lago(タンジュン・ラ
ゴ)までの270 kmの専用道を進める計画となった。2013年末時点で、この石炭専用道はラ
ハットからムアラ・エニム、Banyuasin(バンユアシン)までの全長116 kmを完成し、48村
を通過している。しかし、当時状況では雨季になると道路のほとんどが冠水してしまい、
全長のわずか25%しか利用できないため、多くの石炭輸送トラックは一般道で石炭を輸送し
てつづけている。このため、ラハットからパレンバンまでの公道は常に渋滞しており、石
炭輸送トラックの多くは過積載で走行しており、公道に深刻なダメージを与えている。こ
うした状況がさらに続けば、農業生産物等その他の輸送にも影響し、地域経済に打撃とな
る可能性がある。また、交通量が過剰になったことで、多くの交通事故を誘発し、社会問
題になっている。この区間の専用道の建設を担うPT. Servo Lintas Raya社によると、2014年3
月に完成させると発表しているが、その後の動向は確認ができない。一方、南スマトラ州
政府は、さらに建設会社4社と協力し、石炭輸送専用道の建設を急いでいる。建設が進めら
れている区間は、ラハットのBelimbing(ベリムビン)交差点から、Muara Lematang(ムア
ラ・レマタン)までの90 kmである。
ジャンビ州は、2012年に州令Perda No.13/2012を公布した。南スマトラ州と同様、ジャン
ビ州の州令は、ジャンビ州を通過する全ての石炭輸送トラックについて、専用道で輸送す
るよう義務付けている。同法令では、2014年1月までに、既存の各炭鉱企業は、自社専用道
を建設するよう義務付けたが、炭鉱会社の多くが実現できなかった。その最大の原因は、
ジャンビ州では十分な道路建設設備を調達することが難しく、外部からの調達も困難であ
ったことである。ラハット石炭輸送協会によると、この政策により、現地の炭鉱で稼働し
ていたトラック3,500台が廃業する羽目になったという。一部の炭鉱では、法令を無視して
一般道で石炭を輸送している。地元メディアの報道によると、こうした状況は2014年末ま
で続いているという。ジャンビ州政府は、結局、各炭鉱企業の石炭輸送専用道の完成を待
つしか他に手立てがない。
②
将来計画
現時点で、石炭輸送専用道を利用している主な炭鉱は、アダロ社の傘下炭鉱とPendopo(ペ
ンドポ)炭鉱である。ペンドポ炭鉱は総延長距離45 kmの新規石炭輸送専用道の建設計画を
進めている。
これらの石炭輸送専用道には以下の特徴がある。
- 130 -

民間企業が運営している(将来、州政府に返還予定)

道路幅12 mの未舗装道路(砂利)で、8トン車両の走行が可能

道路沿いに柵がなく外部から簡単に侵入できる
石炭輸送インフラを改善するために、州政府は直接道路を建設し、港、鉄道を含めた複
数の建設計画を進めている。しかし、資金調達や建設計画の遂行能力が低いなどがネック
となって、建設計画の多くは思うように進展していない。
(3) 鉄道輸送の現状および将来計画
①
鉄道輸送の現状
現在、鉄道による石炭輸送を実施しているのは、国営石炭公社のPT. Bukit Asam(PTBA)
の南スマトラ州からランブン州までと、民間企業であるPT. Baramulti Sugih Sentosa(バラム
ティ・スギル・セントサ)社とPT. Bara Alam Utamaである84。その他、2012年より石炭の消
費企業であるPT Semen Baturaja(セメン・バトゥラジャ社)が、南スマトラの鉄道を利用し
て自社消費用の石炭を輸送している。鉄道による主な石炭輸送ルートは、タンジュン・エ
ニムからタラハン港までの全長410 kmである。石炭輸送専用鉄道ではなく、既存の鉄道を
利用しているため、一般貨物や乗客も利用している。南スマトラ州からランプン州を通る
既存鉄道の路線図を図5.1.4に示す。
84
PT. Kereta Api Indonesia 社の公式サイトの記事(http://www.bumn.go.id/keretaapi/halaman/49)
- 131 -
(出所)IIEE (2015), “The Current and Future Situation of Coal in Indonesia”, Jan, 2015, Indonesia Institute for
Energy Economics
図 5.1.4 スマトラの既設鉄道の走行ルート
- 132 -
スマトラ島の鉄道による石炭輸送ルートは、西スマトラのOmbilin(オムビリン)炭鉱と
南スマトラのタンジュン・エニム炭鉱に敷設されている。タンジュン・エニム炭鉱は、自
社炭鉱の山元からタラハン石炭積出港まで石炭を鉄道輸送(約410 km)している。同炭鉱
からはもう1つ、ケタパティ港までの総延長161 kmの鉄道輸送ルートがあり、年間石炭輸送
能力は、全体で1,500万トンである。
表 5.1.7 スマトラ島の鉄道による石炭輸送ルートの概要
鉄道区間
株主
(投資額)
距離
(km)
1
タンジュン・エニム炭鉱
→タラハン港
ブキット・アサム: 100%
410
2
タンジュン・エニム炭鉱
→ケタパティ港
ブキット・アサム: 100%
161
輸送能力
(万トン/年)
2270
(出所)PT. Bukit Asam(PTBA)の資料をもとに作成
② 将来計画
国営石炭公社PT. Bukit Asam(PTBA)は、タンジュン・エニム炭鉱の増産を計画してお
り、鉄道による石炭輸送能力を引き上げる必要がある。現在、2つの鉄道ルートの新規敷設
計画が浮上している。1つは、炭鉱の山元からタラハン港まで280 kmの建設計画で、インド
のAdani Global社が主な投資企業である。同計画では、年間2,500万トンの輸送能力を建設す
る。もう1つは、総投資額20億ドルをかけ、同炭鉱の山元からTanjung Api Api(タンジュン・
アピ・アピ)港までの270 kmの鉄道敷設計画で、China Railway(中国鉄道社)が参画して
いる。この鉄道の年間輸送能力は3,500万トンである。
表 5.1.8 スマトラ島の鉄道による石炭輸送計画
鉄道区間
タンジュン・バル炭鉱→
1
タラハン新港
2
タンジュン・バル炭鉱→
タンジュン・アピ・アピ新港
3 スカチンタ→ケタパティ
株主
(投資額)
距離
輸送能力
(km) (万トン/年)
ブキット・アサム:10%
Rajawali Asia Resources: 80%
China Railway Engineering: 10%
(US$ 20億)
280
2500
Adani Global: 98%
南スマトラ州政府: 2%
270
3500
稼働予定
(年)
2013年着工
2017年完成
PT. Bara Alam Utama
4 タンジュン・バル炭鉱→ティガガジャ Pt. Semen Baturaja
(出所)PT. Bukit Asam(PTBA)と鉄道会社(PT KAI, 2014)の資料をもとに作成
その他、PT. Bara Alam Utama(バラ・アラム・ウタマ)社とPT. Semen Baturaja(セメン・
バトゥラジャ)社が鉄道建設計画を打ち出している。Bara Alam Utamaは、Sukachinta(スカ
- 133 -
チンタ)からKertapati(ケタパティ)まで、Semen BaturajaはTanjung Baru(タンジュン・バ
ル)からケタパティまでである。両ルートの詳細は把握できないが、PT. Bukit Asam(PTBA)
が推進中の鉄道建設計画を図5.1.5と図5.1.6に示した。
複 線鉄 道
単線 鉄道(踏 切 あり)
Tanjung Enim炭鉱
の年 間 生産 能力 が
2,500万 であ る。
Kertapati P alembang
Barging港
Muara Enim
Lah at
Prabumulih
鉄 道(改造)
輸送能力:2,270 万トン/年
Enim 炭鉱→Kertapati: 160.9k m
Enim 炭鉱→Tarahan:409.5km
完成予定:2015年
Baturaja
鉄 道建 設計 画(新 設)-BATR
輸 送能力:2 , 50 0万トン/年
距 離:2 80 k m
完 成予定:2 0 19 年
Tarahan Lampung
Ship Loading Port
Tarahan港 拡張 計画
輸送能 力:1 ,3 0 0→2, 50 0万トン/年
完成予 定:2 01 4年
Tarahan港 は 、21万DWTの
輸送 船が 停泊 でき 、ス マト ラ
で最 大の 石炭 ター ミナ ルで あ る。
この 港は ブキ ット ・ア サム 社 が運 営し てい る。
(出所)Bukit Asam, “Corporate Presentation, March 2015”, update full year 2014.
図 5.1.5 タンジュン・エニム炭鉱の鉄道輸送状況および建設計画
Kertapati
Jetty港
Tanjung
Api Api新港
①
③
Tanjung Enim
(TE) 炭鉱
②
既存鉄道
①+②最大能力:2,270万t/年
①TE→Kertapati:160.9km
②TE→Tarahan:409.5km
建設計画鉄道
③TE→Tanjung Api Api:270km (3,500万t/年)
④TE→Lampung:409.5km (2,500万t/年)
④
Tarahan港
Lampung新港
(出所)本調査
図 5.1.6 タンジュン・エニム炭鉱の鉄道輸送状況および建設計画の詳細図
- 134 -
5.2 石炭輸送インフラに係わる課題
インドネシア政府は 2011 年、経済開発加速化・拡充マスタープラン(The Master Plan for the
Acceleration and Expansion of Economic Development of Indonesia, MP3EI)を発表した。このプ
ランは、大統領法令 2011 年 32 号により定められており、2011~2025 年におけるインドネ
シア経済開発加速化及び拡大マスタープランを作成するものである。このプランでは、石
炭を中心とした地方活性化も盛り込まれており、大規模な社会インフラ建設計画が示され
ている。
このプランの特徴はインドネシアに 6 つの経済回廊を建設し、回廊ごとに経済 発展のマ
スタープランを立てていることである。6 つの経済回廊は、スマトラ経済回廊、ジャワ経済
回廊、スマトラ経済回廊、カリマンタン経済回廊、スラウェシ経済回廊、バリ-ヌサトゥ
ンガラ経済回廊、パプア・マルク経済回廊で、石炭と関連が深いのは、スマトラ経済回廊
とカリマンタン経済回廊である。
MP3EI は、インドネシアの石炭を含めた資源をそのまま使うのではなく、付加価値をつ
けた資源の有効利用を目指しており、資源の下流開発を重視したマスタープランである。
また、東カリマンタン政府は、マハカム川の混雑を解消するためには、鉄道や道路等のイ
ンフラ整備が必要であると考えている。さらに、前述の通り、ロシア鉄道と東インドネシ
ア政府が、カリマンタン島で鉄道建設を行うとの情報があり、建設費用は 24 億ドルを見込
んでいる。
しかし、インドネシアの政策・計画が予定通り実施される可能性は薄い。インドネシア
政府は、2006 年の大臣令に基づき、2005 年~2025 年の全国鉄道建設基本計画を策定してお
り、カリマンタン島での鉄道建設計画としては、6 つの幹線鉄道(うち 1 つは西カリマンタ
ン州とマレーシアのサワラク州間)および 6 つの石炭専用鉄道が計画されている。しかし、
資金調達がネックとなり、計画のほとんどは順調に進展していない模様である。
以下、カリマンタン島とスマトラ島のインフラ建設の課題についてまとめた。
(1) カリマンタン島の石炭輸送の課題
①
生産量の急増により、バージの輸送能力不足が指摘されている。
現在稼働中のバージ輸送は、ほとんどがTug & Barge System (TBS)方式である。今
後は、積載能力がより高く、運搬スピードが速く、操作性が優れたPusher Burg
System (PBS)方式に移行することが検討されている。しかし、輸送方式の転換によ
り、輸送コストが増すため、民間バージ会社はあまり積極的ではない。
②
河川輸送が主流であるため、一部の河川流域では季節によって水位が変化し、バ
- 135 -
ージの輸送能力が制限される。この問題を解消するためには、道路と鉄道の輸送
能力を引き上げる必要があると指摘されている。また、乾季には川幅が狭くなり、
バージ会社は譲り合う必要がある。早急に具体的な対策を講じて、現場でのトラ
ブルを最小限に抑える必要がある。
③
現在の石炭積替え方式(Ship to Ship, STS)は自然条件に左右され、効率が悪い。
STSの処理能力は一般的に毎時400~500トンだが、フローティング・クレーン方式
に変更すれば、毎時1,300トン程度に引き上げられる。または、陸上の貯炭場の整
備や港湾設備に係留できるよう整備すれば、毎時3,000トンに引き上げられる。
④
鉄道建設計画の多くは資金調達、用地買収が難航しており、建設は進んでいない。
⑤
バージは石炭運搬中に左右へぶれることがあり、河川にかかる橋を通過する時に
注意する必要がある。過去、バージが橋にぶつかり、橋が崩れる事故が発生した。
⑥
河川でのバージによる石炭輸送は、基本的には日没後は認められていない。しか
し、一部の炭鉱企業はルールを無視して輸送し続けている。
⑦
河川の水位は季節によって変化するため、桟橋を移動させる必要がある。
(2) スマトラ島の石炭輸送の課題
①
トラック輸送による渋滞、事故、道路へのダメージ等が深刻な社会問題になって
いる。
②
カリマンタン島に比べて水路が発達しておらず、道路と鉄道による輸送が多い。
道路と鉄道へのインフラへ投資が少なく、建設計画の多くは資金調達が困難で計
画が進まない。
③
地方分権により、地方政府の権限が強化され、中央政府と地方政府の間の調整或
いは州政府間のコンセンサスが得にくくなり、インフラ建設計画の推進に支障を
きたしている。
- 136 -
表 5.2.1 インドネシアの石炭輸送の長所、短所
輸送
手段
道路
鉄道
バージ
長所
短所
 最も柔軟、迅速、確実な輸送手段。

 道路インフラは、低コストで導入が比 
較的容易。
 発展途上国における人件費、燃料費な
どのコストは比較安い。
 目的地に時間通りに到着可。
 大量輸送が可能。

 トラック輸送より環境に優しく、水上
輸送より汚染が少ない。
 大量輸送による輸送コスト削減が可
能。
 輸送コストが最も安く、経済性が高い。 



ベルト・  輸送量が制限される。
コンベア



交通事故による死傷者が増加。
道路輸送による環境破壊。
初期投資が高い。
輸送時間がかかる。
輸送範囲が制限される。
水深が必要で、浅瀬では浚渫コストが必
要。
季節により輸送量が制限される。特に乾季
は一部水域で輸送が不可能になる。
初期投資が高く、一度設置された設備の改
修は難しい。
平坦な地形以外の設置は難しい。
メンテナンス設備が必要。
(出所)IIEE (2015), “The Current and Future Situation of Coal in Indonesia”, Jan, 2015, Indonesia Institute for
Energy Economics
- 137 -
5.3 インドネシア国内の石炭輸送コスト
インドネシアの石炭輸送は、国内向け輸送と輸出用輸送に大別される。国内の需要家へ
の輸送は、炭鉱から需要家の貯炭場までで、輸出用輸送は、炭鉱から輸出港までの輸送を
指す。インドネシアでは、主にバージ、トラック、鉄道の 3 つの輸送手段がある。それぞ
れの輸送コストは異なるが、図 5.3.1 に示すように、バージと鉄道は比較的安く、トラック
輸送は最もコストが高い。特に、2011 年以降、各州政府が石炭専用道の建設を義務付けた
ため、トラック輸送コストがさらに高くなった。
(出所)IIEE (2015), “The Current and Future Situation of Coal in Indonesia”, Jan, 2015, Indonesia Institute for
Energy Economics
図 5.3.1 インドネシアにおける輸送手段別コストの比較
(出所)Cost Trends in Mining, Meister, 2010
図 5.3.2 国別の一般炭輸出コストの比較
- 138 -
図 5.3.2 は少し古い資料であるが、William G. Meister 氏の研究によると、世界の主要石炭
生産国の平均輸送コストを比較した場合、インドネシアの輸送コストは最も安いが、諸外
国に比べてコストの変動幅が最も大きい。図 5.3.3 は、世界各国の石炭生産コストを比較し
たものである。発展途上国では、インドネシアの石炭生産コストが比較的高い。生産コス
トを押し上げた原因は税とロイヤルティである。一方、インドネシアの輸送コストは比較
的安く、これは輸送距離が比較的短いことを意味する。
(出所)Cost Trends in Mining, Meister, 2010
図 5.3.3 国別の石炭生産コストの比較
インドネシアの石炭輸送コストは、地理的な環境に大きく影響され、地域によって輸送
コストが異なり、その幅はかなり大きい。インドネシア政府は、地域別輸送コストの参考
指標を示すために、石炭輸送コストの指標価格を公表するよう法制化し、エネルギー鉱物
資源省の鉱物石炭総局が、2013 年に鉱物石炭総局長規定 644.K/30/DJB/201385の「コスト調
整の決定について」86を公布した。実際のコストの算出方法は、同法の添付資料 1 に示され
ている。その算出方法には幾つかのパラメーターが含まれている。
(1) 積み替えコスト:バージから石炭輸送船、石炭輸送船から買手に引き渡すポイントに
かかるコスト。輸送管理費、港湾人件費、荷積み・荷降ろし、サービス料、税などが
含まれる。
(2) バージ輸送コスト:IUP と IUPK 所有者が生産した石炭を石炭輸送船まで運ぶコスト。
税が含まれている。
85
Regulation of the Director General of Mineral and Coal Number: 644.K/30/DJB/2013.
規定 644.K/30/DJB/2013 は、Regulation of the Director General of Mineral and Coal 999.K/30/DJB/2011 Number
of Procedures For Determination of Amount of Cost Adjustment の改正規定として公布された。
86
- 139 -
(3) 測量コスト:石炭の品質と数量を測定するためにかかったコスト。税が含まれる。
(4) 保険コスト:バージから FOB 輸送船までの保険コスト。
同省令の添付資料 1 では、石炭輸出を対象に下記の計算方法を示している。
積み替えコスト:4 ドル/トン
バージ輸送コスト
バージのサイズ(単位:フィート)
計算式
<270
BC = 0.0221 (TD) + 3.7406
270 – 330
BC = 0.0184 (TD) + 3.1172
>330
BC = 0.0154 (TD) + 2.6022
(注)BC = バージ輸送コスト(ドル/トン)
、TD = 輸送距離(海里)
測量コスト:0.25 ドル/トン
保険コスト:0.8%/船積み
(注)すべてのコストには付加価値税が含まれる。1 海里=1.852 km。対ドル為替レートは、
需給に基づいて決める。
添付資料 2 では、インドネシア国内の石炭需要家向け輸送を対象に下記の計算方法を示し
ている。
積み替えコスト:4 ドル/トン
バージ輸送コスト
バージサイズ(フィート)
計算式
<270
BC = 0.0221 (TD) + 3.7406
270 – 330
BC = 0.0184 (TD) + 3.1172
>330
BC = 0.0154 (TD) + 2.6022
(注)BC = バージ輸送コスト(ドル/トン)
、TD = 輸送距離(海里)
測量コスト
No
測量タイプ(重量と品質)
測量コスト(ドル/トン)
1
河川上/洋上での測量
0.25
2
陸上での測量
0.15
- 140 -
保険コスト:0.8%/船積み
トラック輸送コスト
下記の計算式で算出する。
TC = (1000 x TD) + 20,000
(注)TC = トラック輸送コスト(ルピア/トン)
、TD = 輸送距離(km)
鉄道輸送コスト
鉄道会社(PT Kereta Api Indonesia、PT KAI)の規定に従う。
(注)全てのコストには付加価値税が含まれる。1 海里=1.852 km。対ドル為替レートは、
買手と炭鉱会社との間で決める。
しかし、上記の計算式はあくまでも参考指標として発表されており、実際のコストはこ
の指標とは必ずしも一致しておらず、必ず従わなければならないものではない。実際の輸
送コストについては、本調査の現地ヒアリング結果に基づき、下記の通りまとめた。
(1) トラックの輸送コスト
トラック輸送の場合、自社所有のトラックを利用するケースと、レンタルトラックを利
用するケースがある。インドミンコ社の場合は、トラック輸送会社(PAMA 社)と 1996 年
に石炭輸送の請負契約を結んでおり、年間約 900 万トン規模の石炭をボンタン港に運んで
いる。輸送距離は約 38 km である。一般的には、ツイン・トレーラーを利用しており、前
方車両は 45 トン、後方車両は 40 トンの計 85 トンで輸送し、炭鉱から港湾までの平均輸送
コストは約 5~8 ドル/トンである。
南スマトラでは、ブキット・アッサム社の場合は、炭鉱で採掘した石炭をまず鉄道の集
積所に運ぶ。輸送距離は短く、2014 年末時点の平均輸送費は 0.13~0.18 ドル/トン/km であ
る。
(2) バージの輸送コスト
バージの輸送コストは主に次の 4 つの部分で構成されている。①キャピタル・コスト
(Capital Cost)
、②運営コスト(Operational Cost)
、③航行コスト(Voyage Cost)
、④荷役コ
スト(Cargo Handling Cost)
。しかし、炭鉱会社のほとんどが自社専用のバージを保有してお
らず、バージ輸送会社と契約してバージをレンタルしている。レンタル契約には「スポッ
トチャージ(SC)
」と「タイムチャージ(TC)
」の 2 種類がある。
TC の場合、一般的に年間契約でタグボートとバージをセットで貸し出し、運営コスト、
航行コスト、荷役コスト、燃料や積み替え設備などは借り手側が手配する。輸送コストは、
- 141 -
炭鉱のロケーションによって異なる。実際のコストは多くの要因に影響されるため、政府
が提示したバージ輸送コストのベンチマーク価格は、参考の 1 つにすぎない。インドミン
コ社は TC を利用しており、マハカム川上流の炭鉱からボンタン港まで、約 7 日間をかけて
バージ輸送しており、輸送コストは約 3~5 ドル/トンである。港湾コストは、主に貯炭場か
ら輸送船までの石炭を運搬するためのコストで、ベルトコンベア(全長 16km×往復=32km)
、
積み替え設備、港湾の運営費などが含まれ、トン当たりの平均コストは約 1.7 ドル/トンで
ある。
港湾のサービス費用として計上されるのは、組合ファンド、ドッキング・サービス、貯
炭サービス等である。表 5.3.1 は港湾サービス費用の一覧である。
表 5.3.1 港湾のサービス費用
番号
項目
1 共同組合基金
2 ドッキング・サービス
単位
ルピア/トン/m3
a.特別な器具・機械を利用しない
ルピア/トン/m3
1,700
b.特別な器具・機械を利用する
ルピア/トン/m3
1,700
c.一般カーゴ
ルピア/トン/m3
1,700
d.濡れた積み貨物
ルピア/トン/m3
1,700
ルピア/トン
1,700
ルピア/頭
ルピア/トン/m3
2,400
貯蔵サービス
a.地上
ルピア/トン/m3/日
500
b.倉庫
ルピア/トン/m3/日
950
c.家畜
ルピア/頭/日
1,900
e.乾燥した積み貨物
f.家畜
g.ユニック・ペレット
3
単価
300
1,700
(出所)PT. KAI
SC の場合、借り手側の炭鉱ロケーション(輸送距離)
、燃料費、人件費などを算出し、ト
ン当たりのコストを契約する。契約内容に決まったパターンはなく、交渉により条件を決
めるケースが多い。総体的に見ると、SC を利用しているケースはあまり多くない。
(3) 鉄道の輸送コスト
ブキット・アサム社の場合は、鉄道による石炭輸送ルートが 2 つある(炭鉱~ケタパテ
ィ桟橋、炭鉱~ランブン州のタラハン港)
。同社の鉄道輸送コストは、2014 年末時点で平均
およそ 0.07 ドル/トン/km である。同社は、インドネシア鉄道会社(PT. KAI)と石炭輸送サ
ービスに関する長期契約を結んでいる。2014 年の契約内容は以下の通りである。

輸送量:年間 2,270 万トン

サービス料金は年率 4%で増加
- 142 -
表 5.3.2 に鉄道会社(PT. KAI)とブキット・アサム社の契約内容を示す。
PT. KAI 社は、ブキット・アサム社以外の炭鉱会社とも石炭輸送サービスに関する契約を
結んでいる。
PT. KAI 社の 2013 年年次報告書によると、2012 年 5 月 29 日に PT Semen Baturaja
(セメン・バトゥラジャ社)と契約している。契約期間は 2012 年 2 月 1 日~2017 年 1 月
31 日である。注意すべきなのは、契約に盛り込まれた輸送コストで、輸送距離 181 km の場
合、トン当たり輸送費用は 86,880 ルピアである。輸送費用には 10%の付加価値税(VAT)
は含まれていない。
- 143 -
表 5.3.2 鉄道会社(PT. KAI)とブキット・アサム社の鉄道輸送契約
輸送ルート
タンジュン・エニム→
タラハン港
タンジュン・エニム→
ケタパティ桟橋
契約期間
1997 年 8 月
21 日~2016
年 7 月 31 日
1998 年 8 月
21 日~2016
年 7 月 31 日
石炭輸送費
ルピア/トン/km
備考
287
 毎年 10 月、
翌年の輸送計画を立てる。
 毎月、その月の輸送量と輸送日程を
協議して決める。
 石炭輸送費には付加価値税(VAT)を
含まない。列車の清掃コストと保険
料を追加コストとして加算する。
 No.010/ADD/Eks-0500/HK.03/2009 の
付録 IX と No.70/HK/OP/2009 に従い、
2009 年 12 月 31 日に発効する。
394
 1999 年 3 月 24 日付の
No.011/K/PTBA-Perumka/1999 と
No. 114/HK/OP/1999 の契約に基づき
 毎年 10 月、
翌年の輸送計画を立てる。
 毎月、その月の輸送量と輸送日程を
協議して決める。
 石炭輸送費には、付加価値税(VAT)
を含まない。列車の清掃コストと保
険料を追加コストとして加算する。
 No.009/ADD/Eks-0500/HK.03/2009 の
付録 VIII と No.70/HK/OP/2009 に従
い、2009 年 1 月~12 月 31 日までに
施行する。
 No. 362/P/HK/D6/2011 と
タンジュン・バル→
タラハン港
No. 083/PJJ/EKS-0100/HK.03/2012 の
2012 年 1 月 1
383
 2 つのルートの輸送費は 2012 年から
日~2016 年
タンジュン・バル→
12 月 31 日
契約に基づき、
適用される。
493
ケタパティ桟橋
 石炭輸送費には、付加価値税(VAT)
を含まないが、25 ルピア/トン/km の
投資開発コストが含まれている。
タンジュン・エニム→
タラハン港
日~2029 年
タンジュン・エニム→
 年度末の 3 ヶ月前に翌年の輸送計画
2010 年 1 月 1
を立てる。
n/a
12 月 31 日
 2 つのルートで輸送する石炭の総量
は 2,000 万トン/年とする。
ケタパティ桟橋
(出所)PT Kereta Api Indonesia’s 2013 Annual Report, pg 546-548
- 144 -
第Ⅱ部 エネルギー・石炭に関連する各種の政策
第 6 章 エネルギー政策および石炭政策
本章では、ジョコ・ウィドド大統領(以下、ジョコ大統領と略す)が就任した 2014 年
10 月 20 日までに打出された政策を採り上げる。新大統領の政策については第 9 章で扱う。
6.1 エネルギー政策
インドネシアのエネルギー政策は最近まで「エネルギーに関する法律」および「国家エ
ネルギー政策に関する大統領令」に基づいて実施されてきたが、新大統領の就任直前、上
記「大統領令」に代わるものとして、「国家エネルギー政策に関する政令」が施行された。
6.1.1 エネルギー法87
2007 年までは、エネルギー全体を包括する法律がなく、「石油・ガス法」、「電力法」、
「地熱法」などにより、エネルギー源ごとに個別に管理する法体系となっていた。そこで、
政府は、エネルギー部門全体を総括的に管理する必要性から、2007年8月10日に「エネル
ギーに関する法律」(「エネルギー法」)を作成した。
エネルギー法の主要な規定事項は以下の通りである。
(1) 政府によるエネルギー資源の管理(統制・規制)
(2) エネルギーの安定供給(輸出より国内供給を優先)
(3) 貧困層に対する政府補助金の供与
(4) 資源開発の促進(国内調達率の拡大)
(5) 国家エネルギー政策の策定
(6) 国家エネルギー審議会の設立
(7) エネルギー総合計画の作成(全国および地域別エネルギー総合計画の作成)
(8) 再生可能エネルギーの供給・利用および省エネルギー実施に対する政府援助
本法律により「国家エネルギー審議会(DEN: National Energy Council)」が設立される
こととなった。
従来は「国家エネルギー調整委員会(BAKOREN: National Energy Coordinating
Board)」が国家エネルギー政策を策定していたが、DENが機能を引き継いでいる。DEN
の委員長は大統領が務め、構成員は15名で、うち7名は閣僚、8名は産業界代表および学識
87
海外電力調査会「第1章 インドネシア」
(
『海外諸国の電気事業 第1編 2』
)
(http://www.jepic.or.jp/pub/pdf/enterprise11_2.pdf)による。以下、jepic と略す。
- 145 -
経験者である88。なお、個別のエネルギー・鉱物資源政策の策定と実行の責任官庁はMEMR
である。
6.1.2 国家エネルギー政策89
「国家エネルギー政策に関する大統領令」(2006 年第5 号)は「エネルギー法」に先
立って、2006 年1月に制定され、2025 年までの目標を示した。それによると、省エネル
ギーを推進し、2025 年にはエネルギー対GDP 弾性値(エネルギー消費の伸び/ 経済成長
率)を1 未満とする他、石炭、天然ガスおよび再生可能エネルギーの開発を推進し、一次
エネルギー供給量に占める石油の比率を2004 年の52%から大幅に低下させ、2025 年には
20%以下にする予定である。
この大統領令は、それより前に策定された「国家エネルギー政策(KEN)2003-2020」が
エネルギー鉱物資源省大臣令であったため、大統領令として公布することで法的根拠を高
めている。
6.1.3 国家エネルギー政策に関する政令
「 国 家 エ ネ ル ギ ー 政 策 に 関 す る 政 令 2014 年 第 79 号 」( REGULATION OF THE
GOVERNMENT OF THE R.I. NUMBER 79 YEAR 2014 CONCERNING THE NATIONAL
ENERGY POLICY)は、2007 年のエネルギー法および国会の承認に基づいて作成された。
すなわち、新しい国家エネルギー政策案は 2014 年 1 月に国会で承認され90、大統領令とし
て、2014 年 10 月 17 日から施行された。国家エネルギー政策は必要に応じて最短 5 年毎に
点検されることになっている。
表 6.1.1 インドネシアの「最適な 1 次エネルギー構成比」の見通し
(単位:%、百万toe)
2010
石炭
石油
ガス
新・再生可能エネルギー
計
同上(数量)
2025
2030
2050
24
49
22
5
30
25
22
23
30
22
23
25
25
20
24
31
100
159
100
380
100
480
100
980
(出所)国家エネルギー政策に関する政令2014年第79号、その他
国家エネルギー政策の対象期間は 2014 年から 2050 年までであり、
2025 年には 3.8 億 toe、
88
89
90
MEMR のホームページ(http://www.esdm.go.id/siaran-pers/55-siaran-pers/3112-dewan-energi-nasional.html)
jepic
Jakarta Post, ”RI turns to renewable resources for future energy use,” January 29, 2014
- 146 -
2050 年には 9.8 億 toe の 1 次エネルギーの供給を確保することが目標とされている
(上表)。
そこでは、エネルギー資源は単に輸出用商品としてではなく、国内開発のための資産とし
て位置付けられている。この政策によると、
「最適な 1 次エネルギー構成比」は、上表に
示した通りである。
ここで、2025年までを見ると、石炭は2010年の24%からやや上昇し、2025年には30%、
ガスは同じく22%から横ばいで22%であるのに対して、石油は49%から25%へと大きく低下
し、新・再生エネルギーは5%から23%へと大きく上昇する、と見込まれている。
上述の2006年のエネルギー戦略では、2025年の構成比は石炭33%、ガス30%、石油20%、
新・再生エネルギー17%であったから、新しい戦略では、石炭は3%、ガスは8%だけ、と
もに低下しているのに対して、石油は5%、新・再生エネルギーは6%だけ、ともに上昇し
ている。
なお、この政策では、新エネルギーおよび再生可能エネルギーは次のように定義されて
いる。
(1) 新エネルギー:原子力、水素、炭層メタン、石炭液化、および石炭ガス化
(2) 再生可能エネルギー:地熱、風力、バイオマス、太陽光、水力、潮力および海水温
度差
また、エネルギー選択の優先順位は次のように規定されている。
(1) 再生可能エネルギーは、経済的水準を考慮しつつ、その利用を最大化する。
(2) 石油の利用を最小化する。
(3) 天然ガスと新エネルギーの利用を最適化する。
(4) 石炭は、頼りになる国産エネルギーとして利用する。石炭は主に発電用および産業
用に使用する。
なお、原子力に関しては、上記の規定は適用せず、大規模なエネルギー供給の確保、気
候変動への効果などを考慮し、安全性に注意しながら、利用することになっている。
ところで、上述の新しい国家エネルギー政策では、発電設備は次のように拡大していく、
と見られている91。
91
Yarianto S. Budi SUSILO(Head of National Nuclear Energy System Assessment, National Nuclear Energy
Agency-BATAN), “Nuclear Power Plants to Support A Long Term Energy Security,” November 19, 2014.以下、
BATAN(141119)と略す。
- 147 -
表 6.1.2 発電設備の見通し
(単位:百万KW)
2010
2015
2020
2025
2030
2040
2050
高シナリオ
35
58
92
145
203
340
550
低シナリオ
35
49
79
115
159
270
430
(出所)国家エネルギー政策に関する政令2014年第79号、その他
また、それに対応して、原子力発電所も建設されていくと見込まれている92。原子力
発電については、PLN を含むいくつかの見通しがあるが、表 6.1.3 は 2014 年 6 月にイン
ドネシア原子力庁(BATAN)がまとめた「インドネシア原子力展望(Indonesian Nuclear
Energy Outlook: INOE)」に基づく。
表 6.1.3 BATAN による原子力発電の規模の見通し
(単位:千KW)
Jamali(注)
2027
2030
2031
2035
2040
2041
2045
2050
2,000
2,000
2,000
2,000
4,000
6,000
6,000
12,000
2,000
2,000
4,000
4,000
6,000
8,000
100
200
200
400
400
800
35
35
140
10,435
12,435
20,940
スマトラ島
カリマンタン島
その他
計
2,000
2,000
4,100
4,200
8,200
(注)ジャワ島、マドゥラ島およびバリ島を結ぶグリッド。
(出所)BATAN, “The Indonesian Nuclear Energy Outlook (INEO),” June 2014
INEO では、2027 年には、ジャワ島、マドゥラ島、バリ島で 200 万 KW 規模(100 万
KW 級×2 基)、さらに、2031 年には、スマトラ島で 200 万 KW 規模(小型高温ガス炉
による発電容量を含む)の原子力発電所が運転を始めることになっており、さらに、カ
リマンタン島、スラウェシ島、その他の離島においても、発電および熱源としての産業
利用を目的として、10 万 KW 規模の小型高温ガス炉を導入する計画が示されている93。
92
BATAN(141119)
「インドネシア原子力庁と高温ガス炉の研究開発に関する協力を開始(お知らせ)」、独立行政法人 日
本原子力研究開発機構、2014 年 8 月 4 日(http://www.jaea.go.jp/02/press2014/p14080401/02.html)
93
- 148 -
6.2 石炭政策
新鉱業法は「第 2 章 原則及び目的」で、石炭(および鉱物)鉱業の運営の原則および
目的を次のように規定している。
まず、原則については、以下の通りである(第 2 条)。
(1) 有益性、公平性、均衡が取れていること。
(2) 国家利益の立場に立つこと。
(3) 参加型、透明性、信頼性。
(4) 継続的で環境的視野を有すること。
次に、目的については、「継続性のある国家建設を支援するにあたって」という前提の
下で、以下の規定がなされている(第 3 条)
。
(1) 効率的、有益で競争力のある鉱業活動の実行と運営の有効性を保証する。
(2) 継続的で環境的視野を有する鉱物・石炭鉱業の有益性を保証する。
(3) 国内需要のための原料として、又はエネルギー源としての鉱物と石炭の供給を保
証する。
(4) 全国レベル、地域レベル、国際レベルにおける競争能力が高まるよう、国家能力の
支援と開発促進を行う。
(5) 現地、地方、国家の住民収入を増大させるとともに、最大限の国民福祉のために雇
用を創出する。
(6) 鉱物・石炭鉱業活動の実行における法的確実性を保証する。
インドネシアの石炭政策の具体的な内容については、第 7 章で詳細に述べるが、その基
本方針は次のように規定されている。
(1) 国内需要に対して最優先的に供給する。
(2) 石炭企業による投資を促進し、国家財政収入の拡大に繋げる。
(3) 鉱物資源への付加価値を増やすため、選炭、石炭改質などを進める。
(4) 地方の石炭消費増加などの手段を通じて、地方財政収入、地方の雇用を拡大す
る。
(5) 新鉱業法、関連法規に基づく監督・管理を強化し、違法行為を取締り、鉱山開発を
進める。
- 149 -
第 7 章 新鉱業法およびその他の関連法規
7.1 新鉱業法の特徴と基本的な性格
現在、インドネシアにおける石炭事業を管轄・規制している法律は、2009 年に公布され
た鉱物・石炭鉱業に関する法律(2009 年法律第 4 号、以下、
「新鉱業法」と略す)である。
それ以前には、インドネシアでは、1967 年に制定された鉱業法(以下、
「旧鉱業法」と略
す)に基づいて鉱業が実施されてきた。旧鉱業法の改正の背景には、次のような事情があ
った。
(1) 石炭の生産量や炭鉱数が急増したことに加え、2000 年に施行された地方分権化に
より、旧鉱業法の不透明さが浮き彫りとなってきた。例えば、後に詳しく述べる通
り、鉱業権(KP:Kuasa Pertambangan)は地方自治体が独自に認可することが可能
となり、他鉱区の鉱業権者と重複した鉱業権を認可するなど、鉱業に関する国家管
理体制が崩れてきた。
(2) 石炭の税金逃れやその軽減を図るために、シンガポールなどの海外子会社に安い値
段で販売・輸出し、最終ユーザーには正当な価格で販売するなど、不法な輸出によ
る国家資産の流出が明るみになってきた。
(3) しかし、旧鉱業法では国家的損失を抑えることが出来なくなり、近年の経済発展に
不具合を生じるようになってきた。さらに、国内エネルギー政策に占める石炭の位
置付けは高く、国内石炭の安定供給は今後の重要な課題となってきた。
そこで、新鉱業法案が 2005 年、国会に提出され、3 年 7 ヵ月の長い審議を経て、2008
年 12 月に国会で承認され、同法は 2009 年 1 月に公布されるに至った。
新鉱業法は次のように述べている――
「鉱業の基本規定に関する法律 1967 年第 11 号は、
国内及び国際的発展にもはや合致しなくなってきており、継続的な国家建設を保証するた
めに、信頼性、透明性、競争力を持ち、自立的で効果的に、また環境的な視点によって鉱
物・石炭資源のポテンシャルを管理し事業化することを可能とする、鉱物・石炭鉱業分野
の法規の改正が必要とされる。
」
ところで、上述の通り、インドネシアでは、20 世紀末以来、地方分権化が進められたが、
それは次のような事情からであった94。
94
財団法人 自治体国際化協会「インドネシアの地方自治」
、2009 年 3 月
- 150 -
1997 年のアジア通貨危機を契機とする政治経済の混乱の中、1998 年5 月にスハルト政
権が退陣し、後を継いだハビビ政権はあらゆる分野で改革に着手し、地方行政に関する
1974年法を大幅に改正する1999 年地方行政法(1999 年法律第22 号)を制定した。
この法律では州、県・市の2 層の地方政府が定められ、中央政府の代理機関としての機
能は州に残ったが、法律上、州と県・市の間に上下関係はなくなった。州は県・市間の横
断的な事務や県・市が実施できない事務を行うこととなった。また、中央政府の地方出先
機関はほとんど全て、主に県・市に移管された。この法律の制定によって、地方政府の権
限はスハルト政権下に比べて格段に拡大した。
このような方針を受けて、新鉱業法では、鉱業事業許可の発行を大臣の他に、州知事、
もしくは県知事・市長が行えるようになった。県・市の中にある鉱区は基本的には県知事・
市長の権限となる。ただし、鉱業による環境への影響が全国レベルと予想される場合は大
臣が、鉱業による環境への影響が地方限定と予想される場合は県知事・市長が発行する。
また、2 つ以上の県にまたがる場合は州知事が、2 つ以上の州にまたがる場合は大臣が発
行することになる。
- 151 -
7.2 新鉱業法の主な条項および新鉱業法の体系
7.2.1 新鉱業法の主な条項
新鉱業法(正式には「鉱物・石炭鉱業に関するインドネシア共和国法」)は全 26 章、175
条から成る。その主要な条項を、本調査の目的に照らして、インドネシア炭の開発者およ
び輸入者の視点から分類すると、次の 3 つに分けることができる。
すなわち、
(1) インドネシアにおける石炭開発に関する条項
(2) インドネシアからの石炭の輸出に直接的に関連すると考えられる条項、ならびに、
(3) 同じく鉱物の輸出に直接的に関連すると考えられるが、未だ石炭には適用されてい
ない条項である。
新鉱業法の条項に照らしてみると、上記の(1)、(2)および(3)には、それぞれ次の条項が
含まれる。
①
インドネシアにおける石炭開発に関する条項
まず、鉱業事業および事業許可に関連する条項としては、以下のものがある――鉱
業事業の分類(鉱物鉱業および石炭鉱業)
;鉱業事業許可(IUP)
、市民鉱業許可(IRP)
および特別鉱業事業許可(IUPK);鉱業地域;許可の有効期限および許可面積;許可
権限;入札制度;外国人の株式保有と移譲。
次に、その他の条項には以下のものがある――重複(二重)鉱区の整理;環境対策
の義務;鉱業監督官の権限;鉱業法違反者への行政処分と罰則。
②
石炭の輸出に直接的に関連すると考えられる条項――国内供給義務および生産統
制;石炭基準価格
③ 鉱産物の輸入に直接関連すると考えられるが、未だ石炭には適用されていない条項
――鉱物への高付加価値;輸出税
以下では、新鉱業法の体系について述べた後、上記の①および②に掲げた条項のうち、
特に重要であると考えられるものについて、最後に、輸出税および石炭輸出規制について
述べる。
7.2.2 新鉱業法の体系――各種の規制・規則
そもそも、インドネシアにおける法律とそれに基づく各種の規制・規則は次のような体
系を成している。
- 152 -
まず、1945 年憲法に則って「法律」が制定され、それに基づいて、(1)「政令」、(2)「大
統領令」/「大統領決定」
、(3)「大臣令」/「大臣決定」、(4)「総局長規程」など各層におけ
る規制、決定などが公布される。
これらの規制、決定などを石炭鉱業に即して具体的に見ると、以下の通りである。
第 1 に、以下の 4 つの「政令」が公布された。
① 「鉱業鉱区に関する政令」
(政令 2010 年第 22 号:2010 年 2 月 1 日公布)
② 「鉱業事業の活動に関する政令」
(政令 2010 年第 23 号:2010 年 2 月 1 日公布)
③ 「鉱業の管理、指導監督に関する政令」
(政令 2010 年第 55 号:2010 年 7 月 5 日
公布)
④ 「鉱業終了後の処理及び修復に関する政令」
(政令 2010 年第 78 号:2010 年 12 月
20 日公布)
第 2 に、上の 4 つの「政令」の中で、特に石炭輸出への影響が懸念されるのは、②「鉱
業事業の活動に関する政令」である。この「政令」に基づいて公布されたのが、例えば次
の 2 つの「エネルギー・鉱物資源省大臣令(以下、
「大臣令」と略す)
」である。

「国内供給義務(DMO:Domestic Market Obligation)に関する大臣令」
(2009 年第
34 号)

「鉱物・石炭基準価格(HPB)の決定方法に関する大臣令」
(2010 年第 17 号)
第3に、上記の「DMOに関する大臣令」を受けて、2010 年および2011 年の「石炭需給
予測と指定国内石炭供給会社」がそれぞれ「エネルギー・鉱物資源省大臣決定(以下、「大
臣決定」と略す)」として公布された。さらに、「鉱物・石炭基準価格(HPB)の決定方
法に関する大臣令」を受けて、次の大臣決定が公布されている。

「電力公社(PLN)の火力発電所用の石炭価格に関する大臣決定」(2011年第617
号)

「山元石炭価格に関する大臣決定」(2011年第1348号)
第 4 に、DMO および HPB に関して、次の「鉱物・資源石炭総局長規程(以下、「総局
長規程」と略す)」が発せられている。

「石炭 DMO 達成の技術的実施に関する総局長規程」(2010 年第 5055/30 号)

「石炭 HPB の計算式の決定に関する総局長規程」(2011 年第 515K/32 号)
以下、参考までに、石炭事業に関連する主要な法律、規則などを時系列的に整理した95。
95
各種情報による。
- 153 -
2008 年以前:
<エネルギー全体に関するもの>

No.0983K/16/MEM/2004(エネルギー・鉱物資源大臣決定<Minister of Energy and
Mineral Resources Decree: 以下、
「MD」と略す>2004 年第 983 号)
:国家エネルギ
ー政策(Kebijakan Energi Nasional: KEN)2003-2020

Presidential Regulation No. 5/2006(大統領令 2006 年第 5 号):国家エネルギー政策

Law No.30/2007(2007 年法律第 30 号):エネルギーに関する法律
<中央と地方の行政権限に関するもの>

Law No.22/1999(1999 年法律第 22 号):地方行政

Government Regulation(以下、「GR」と略す)No.75/ 2001(政令 2001 年第 75 号):
鉱業における権限の地方政府への移管

Law No.32/2004(2004 年法律第 32 号):地方行政
<石炭に関するもの>

Law No.11/1967(1967 年法律第 11 号)
:鉱業法
<森林に関するもの>

Law No.41/1999(1999 年法律第 41 号):森林法

Law No.19/2004(2004 年法律第 19 号):改正森林法
<環境に関するもの>

Law No.23/1997(1997 年法律第 23 号):環境管理法

Minister of Environment Decree No.11/2006(環境大臣決定 2006 年第 11 号):環境影
響評価(AMDAL)の実施に必要とされる投資計画の種類と内容
2009 年:
<法律>

Law No.4/2009(2009 年法律第 4 号)
:鉱物・石炭鉱業(1967 年法の改訂)

Law No.32/2009(2009 年法律第 32 号):環境保護・管理法(1997 年の環境管理法
の改訂)
<大臣令>

Minister of Energy and Mineral Resources Regulation(以下、
「MR」と略す)No.28/2009
(大臣令 2009 年第 28 号)
:鉱物・石炭鉱業の事業活動の実施

MR No.34/2009(大臣令 2009 年第 34 号)
:鉱物・石炭の国内供給義務(DMO)
- 154 -
2010 年:
<政令>

GR No.22/2010(政令 2010 年第 22 号):鉱業地区の計画、規定、データ・情報な
ど

GR No.23/2010(政令 2010 年第 23 号)
:鉱業許可、鉱区の設定、鉱業事業の中止、
鉱物・石炭の高付加価値化、外国人の持ち株移譲、環境への配慮など

GR No. 24/2010(政令 2010 年第 24 号):森林地域の利用

GR No.55/2010(政令 2010 年第 55 号):鉱物・石炭鉱業事業の実施の指導・監督

GR No.78/2010(政令 2010 年第 78 号):鉱物・石炭鉱業活動終了後の処理および
修復
<大臣令>

MR No.17/2010(大臣令 2010 年第 17 号)
:鉱物・石炭の基準価格(HPB)の決定
方法

MR No.23/2010(大臣令 2010 年第 23 号)
:外国人持ち株のインドネシア側への移
譲

Minister of Environment Regulation No.13/2010(環境大臣令 2010 年第 13 号)
<大臣決定>

MD No.1604.K/30/MEM/2010(大臣決定第 1604.K/30/MEM/2010)
:2010 年の国内炭
優遇のための販売に関する決定要求と最低比率

MD No.2360.K/30/MEM/2010(大臣決定 2010 年第 2360 号):2011 年の国内炭優遇
のための販売に関する決定要求と最低比率
<総局長規程>

No.5055/30/DJB/2010(総局長規程 2010 年第 5055/30 号):DMO の最低比率達成の
ための石炭販売の技術的実施
2011 年:
<大臣令>

MR No.12/2011(大臣令 2011 年第 12 号)
:鉱業地域、鉱業地域情報システムなどを
決定するための手続き
<大臣決定>

MD No.0617.K/32/MEM/2011(大臣決定 2011 年第 617 号):電力公社(PLN)火力
発電所用の石炭の価格決定

MD No.1348.K/32/MEM/2011(大臣決定 2011 年第 1348 号):山元石炭価格の決定
- 155 -

MD No.1991.K/30/MEM/2011(大臣決定 2011 年第 1991 号)
:2012 年の国内石炭需
要および国内販売の最低比率の決定)
<総局長規程>

No.515.K/32/DJB/2011(総局長規程 2011 年第 515 号):石炭 HPB の計算式の決定

No.999.K/30/DJB/2011(総局長規程 2011 年第 999 号):石炭 HPB のコスト調整額
の決定
2012 年:
<政令>

GR No. 9/2012(政令 2012 年第 9 号)
:租税、ロイヤルティなどの設定

GR No. 24/2012(政令 2012 年第 24 号):鉱物・石炭企業の活動(GR No. 23/2010
の改訂)

GR No.27/2012(政令 2012 年第 27 号):環境ライセンスの供与

GR No.61/2012(政令 2012 年第 61 号)
:森林地域の利用(政令 2010 年第 24 号の改
訂)
<大臣令>

MR No.7/2012(大臣令 2012 年第 7 号):鉱物の処理および精製による付加価値

MR No.12/2011(大臣令 2012 年第 12 号)
:鉱業地域の決定手続き

MR No.24/2012(大臣令 2012 年 24 号):株式移譲(大臣令 2009 年第 28 号の改訂)
2013 年:
<大臣令>

MR No.2/2013(大臣令 2013 年第 2 号):地方政府の監督

MR No.4/2013(大臣令 2013 年第 4 号):2013 年における地方への権限移管の実施
範囲

MR No.27/2013(大臣令 2013 年第 27 号):外国人の株式保有率(大臣令 2010 年第
23 号の改訂)
<総局長規程>

No.644.K/30/DJB/2013(総局長規程 2013 年第 644 号):石炭 HPB のコスト調整額
の決定(総局長規程 2011 年第 999 号の改訂)
2014 年:
<政令>

GR No.1/2014(政令 2014 年第 1 号):鉱物・石炭の高付加価値化(政令 2010 年第
- 156 -
23 号の 2 回目の改訂)

GR No. 77/2014(政令 2014 年第 77 号)
:外国企業の持ち株譲渡(政令 2000 年第 23
号の 3 回目の改訂)

GR No.79/2014(政令 2014 年/第 79 号):国家エネルギー政策
<大臣令>

MR No.1/2014(大臣令 2014 年第 1 号):高付加価値化

MR No.7/2014(大臣令 2014 年第 7 号):開発後の土地修復

MR No.10/2014(大臣令 2014 年第 10 号)
:山元発電所向け石炭の供給と価格決定の
メカニズム

MR No.11/2014(大臣規制 2014 年第 11 号)
:鉱物・石炭の処理、精製など

MR No.77/2014(大臣規制 2014 年第 77 号)
:外国企業の持ち株譲渡(大臣令 2012
年第 24 号の 3 回目の改訂)
<総局長規程>

No.479K/30/DJB/2014(総局長規程 2014 年第 479 号):2014 年の参照用石炭生産費

No.480K/30/DJB/2014(総局長規程 2014 年第 480 号):特定の品種および用途向け
石炭の HPB 決定手続き
- 157 -
7.3 新鉱業法の主な条項
7.3.1 石炭開発に関連する条項
(1) 鉱業事業許可(IUP)
、市民鉱業許可(IRP)および特別鉱業事業許可(IUPK)
新鉱業法は旧鉱業法と比較すると、鉱物・石炭鉱業を営む事業について、契約=コント
ラクト(Contract)方式ではなく、許可=ライセンス(License)方式を採用している、と
いう特徴を持っている。
鉱業地域(Wilayah Pertambangan: WP)は、鉱業事業区域(Wilayah Usaha Pertambangan:
WUP)、市民鉱業区域(Wilayah Pertambangan Rakyat: WPR)、国家保護区域(Wilayah
Pertambangan Negara: WPN)に分けられ、WPN の中に特別鉱業事業区域(Wilayah Usaha
Pertambangan Khusus: WUPK)が設定されている。
新鉱業法では、以下の 3 種類の事業許可が規定されている。
① 鉱業事業許可(IUP: Izin Usaha Pertambangan、以下では、IUP と略す)
② 市民鉱業許可(IPR: Izin Pertambangan Rakyat、以下では IPR と略す)
③ 特別鉱業事業許可(IUPK: Izin Usaha Pertambangan Khusus、以下では IUPK と略す)
鉱業事業許可(IUP)は、外国企業を含む民間企業に与えられ許可である。市民鉱業許
可(IRP)は、鉱区の周辺に居住する住民に与えられるのもので、簡素な装備を用いて鉱
業事業を営むことが認められることになった。さらに、特別鉱業事業許可(IUPK)は、国
家が定める戦略的な鉱区の事業に与えられる許可であり、インドネシアの国営企業、公営
企業などが許可の対象である。
- 158 -
(出所)新鉱業法および関連資料をもとに作成
図 7.3.1 インドネシアの鉱業地域と事業許可
より詳しく見ると、新鉱業法は第 1 条で次のように規定している。
1)
IUP とは、鉱業事業を実行するための許可のことである。
2)
探鉱 IUP とは、一般調査、探鉱、フィージビリティスタディの活動段階を実行す
るために付与される事業許可のことである。
3)
生産 IUP とは、探鉱 IUP による活動完了後に、生産段階の活動を実行するために
付与される事業許可のことである。
4)
IPR とは、市民鉱業区域内で鉱業事業を行うための許可のことで、面積と投資の
制限がある。
5)
IUPK とは、特別鉱業事業許可区域で鉱業事業を行うための許可のことである。
6)
探鉱 IUPK とは、特別鉱業事業許可区域で、一般調査、探鉱、フィージビリティ
スタディの段階の活動を行うために付与される事業許可のことである。
7)
生産 IUPK とは、探鉱 IUPK による活動完了後に、特別鉱業事業許可区域で生産
段階の活動を行うために付与される事業許可のことである。
ところで、旧鉱業法の下では、鉱物・石炭鉱業には、以下の 3 つの方式が適用されてい
た。
a.
鉱業権保有者(Kuasa Pertambangan:KP)
b.
鉱業事業契約(Contract of Work:CoW)
c.
石炭鉱業事業契約(Coal Contract of Work:CCoW)
- 159 -
これらのうち、KP はインドネシア企業、CoW は石炭と石油以外の鉱物鉱業について外
国企業、また、CCoWは石炭鉱業について外国企業に、それぞれ適用されていた。なお、
ここで「外国企業」とは、インドネシア籍企業であるが、外国人が一部または全部を出資
する企業を指し、インドネシア人のみの出資による「インドネシア企業」と区別されてい
る96。
(2) 許可権限の地方政府への分散
旧鉱業法と比較しての新鉱業法のもう1つの特徴は、許可権限の地方政府への分散であ
る。
ただし、これは新鉱業法の施行以前から実施されていた方向である。すでに、1999年の
地方行政法(1999年法律第22号)は、インドネシアの鉱業の管理および鉱業部門のライセ
ンス供与に関連する権限の所在に根本的な変化をもたらしていた。具体的には、「鉱業に
おける権限の地方政府への移管」に関する「政令2001年第75号」の公布によって、その方
向が実施に移された97。
新鉱業法は「鉱物・石炭鉱業の運営における」権限に関して、次のように規定している。
まず、中央政府については、次の通りである(第 6 条)。

鉱業現場が州間にまたがる区域、又は海岸線から12マイル以上の海域における鉱業
のIUPの付与、指導、住民間の紛争の解決及び監督
次に、州政府については、次の通りである(第 7 条)。

鉱業活動が県・市間にまたがる区域、又は海岸線から 4 マイル~12 マイルまでの
海域における鉱業の IUP の付与、指導、住民間の紛争の解決及び監督
さらに、県・市政府については、次の通りである(第8条)
。

鉱業活動が県・市内の区域、又は海岸線から4マイルまでの海域における鉱業のIUP
及びIPRの付与、指導、住民間の紛争の解決及び監督
(3) CCoW
① CCoW の新鉱業法への移行
鉱業事業許可には 3 種類があること、また、それらのうち外国企業に対するものが鉱業
事業許可(IUP)であることは、本章 7.2 で述べた通りである。
96
PWC, Mining in Indonesia: Investment and Taxation Guide, 1998
Tri Hayati,” AUTHORITY FOR MINERAL AND COAL MANAGEMENT IN THE ERA OF REGIONAL
AUTONOMY AND ITS IMPLICATIONS IN VIEW OF ARTICLE 33 PARAGRAPH (3) OF THE 1945
CONSTITUTION,” Indonesia Law Review (2014) 2: p.257-278
97
- 160 -
一方、新鉱業法はその「第 25 章 移行規定」で、その発効以前から存在していた「鉱
業事業契約及び石炭鉱業事業協定は、契約・協定の有効期間の終了までは依然として有効
とする。
」と規定している(第 169 条の a 項)。この規定の中の「鉱業事業契約」と「石炭
鉱業事業協定」とは、上述した CoW と CCoW を指している。
CCoW(および CoW)を新鉱業法の下で運用するための交渉は 2010 年 8 月、74 社(37
社)との間で開始されたが、その主要項目は鉱業地域、契約期間の延長、ロイヤルティ、
高付加価値化、持ち株の移譲などである98。インドネシア政府当局者によると、2013 年 4
月現在、74 社のうち 49 社が生産段階、12 社が開発段階、9 社が実施可能性調査(FS)段
階、さらに、5 社が探査段階にある99。
② CCoW により石炭生産中の外資系企業の資本状況
インドネシアの石炭生産における上位 10 社(2013 年)の中で、外国企業による出資を
受け、しかも、CCoW により石炭を生産している企業は以下の 7 社である。これら 7 社の
資本構成、生産状況などについて詳しくは、第 2 章の 2.2.2 を参照されたい。
Kaltim Prima Coal(KPC)
KPC は、インドネシア石炭最大手の Bumi Resources Tbk.とその傘下企業が 6 割以上を出
資する大手石炭生産企業である。KPC の CCoW ライセンスは 2021 年 8 月まで有効である。
PT Adaro Indonesia(AI)
AI の筆頭株主である PT Alam Tri Abadi は PT Adaro Energy Tbk の全額出資子会社であり、
第 2 および 3 位の出資者もインドネシア企業であるが、AI の石炭の一部を販売しているシ
ンガポールの石炭貿易会社が AI に僅かながら出資している。CCoW ライセンスは 2022 年
10 月までである。
PT Kideco Jaya Agung
Kideco に対する持ち株比率は韓国の Samtan Co(49%)、インドネシアの Indika(46%)
、
同じくその他(5%)である。CCoW ライセンスは 2023 年まで有効である。
PT Arutmin Indonesia
Arutmin には、PT Bumi Resources Tbk.が 70%を出資している。Bumi Resources は 2001 年
98
“Mining and Development in Indonesia: An Overview of the Regulatory Framework and Policies,” Action
Research report commissioned by the International Mining for Development Centre, March 2013. 以下の脚注
では、Action Research report(1303)と略す。なお、この資料によると、上記の交渉は大統領令(3/2012)
の一部として実施されているが、大統領令公布の時期と交渉開始の時期との違いの理由は不明である。
99
Directorate general of Mineral and Coal(The Ministry of Energy and Mineral Resources of The Republic of
Indonesia), ”The Indonesian perspective: Recent development in mining policy and regulation,”
Indonesia-Australia mining workshop, Jakarta, April 15-17, 2013
- 161 -
に BHP Billiton から Arutmin を取得した。残り 30%を出資するのはインドのタタ電力傘下
の投資ファンドである。CCoW ライセンスは 2019 年 9 月末までである。
PT Berau Coal
Berau Coal は、PT Berau Coal Energy Tbk.が、全額出資子会社の PT Armadian Tritunggai を
通じて経営している。PT Berau Coal Energy Tbk.の親会社は Asia Resource Minerals plc(ARMS)
で、ARMS の資料100では、ARMS は Berau Coal の株式の 87.4%を保有している。CCoW ラ
イセンスは 2025 年 4 月までである。
PT Indominco Mandiri
PT Indominco Mandiri は PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)
の全額出資子会社であり、
0.01%を出資する PT Kitadin も ITM の子会社である。ITM の大株主はタイの Banpu Group で
あり、PT Centralink Wisesa International(CWI)を通じて ITM に出資している。
PT Trubaindo Coal Mining(TCM)
TCM は、インドネシアの石炭企業グループ、PT Indo Tambangraya Megah Tbk.(ITM)と
その子会社 PT Kitadin による全額出資子会社である。ITM の大株主は、上述の通り、タイの
Banpu Group である。
(4) ロイヤルティ
IUP 保有者に対するロイヤルティは、現在、表 4.3.9(第 4 章 4.3「FOB コストの構成」
におけるロイヤルティに関する記述を参照)のように定められており、露天掘り炭鉱では
石炭販売価格の 3~7%である。
それに対して、インドネシア財務省はこれらすべての料率を 13.5%に引き上げる、とい
う勧告を出し、MEMR 大臣はこれを承認したこと、また MEMR 副大臣が、多くの石炭採
掘企業が石炭価格の急落による経営難に直面しているため、新しい料率は 2014 年から実
施される、と述べたことが伝えられている(2013 年 6 月の地元紙の報道による)101。因
みに、13.5%は CCoW 保有者に適用されている料率と同じである。
2015 年 2 月上旬現在、この引き上げは実施に至ってはおらず、その理由の 1 つとして上
記の石炭価格低下が挙げられている102。しかし、2015 年に入って、政府当局者から相次い
100
http://www.asiarmplc.com/content/dam/asia-rm/corporate/documents/Presentations/2014/Aug%202014%20Interi
m%20Results%202014.pdf
101
JOGMEC(130621)
102
“INTERVIEW-Indonesia coal companies "in panic", closures seen -industry group,” June 18 2014
(http://uk.reuters.com/article/2014/06/18/indonesia-coal-idUKL4N0OZ26H20140618); “Indonesia postpones coal
royalty rise as miners resist due to low prices,” Platts, March 20, 2014
(http://www.platts.com/latest-news/coal/manila/indonesia-postpones-coal-royalty-rise-as-miners-26755426)
- 162 -
で、引き上げの話が出てきた。
まず、1月上旬、MEMR鉱物石炭総局のR. Sukhyar総局長は、石炭業界の抵抗はあるもの
の、2015年には石炭ロイヤルティの引き上げを推し進めることを明らかにした。同総局長
は、2015年の国家予算の税外収入の目標達成のため、ロイヤルティの引き上げが不可欠で
あると語っている。政府は、IUPを保有する採炭企業に対するロイヤリティ(露天掘りの
場合)を現行の3、5、7%から、それぞれ7、9、13.5%に引き上げることを計画している、
と言われる103。
次いで、1月下旬にはMEMR石炭開発商業局のBambang Tjahjono Setiabudi局長も、鉱物・
石炭分野の2015年の税外収入目標達成のため、IUP保有者に対するロイヤルティを2015年
中期前までに引き上げる予定であると述べた。CCoWに課せられているロイヤルティは、
全ての石炭に対し13.5%に引き上げられている。一方、IUP保有者に対するロイヤルティの
引き上げは、石炭価格の下落により延期されてきた。同局長によると、IUP保有者に対す
るロイヤルティは採掘方法(露天掘りか坑内掘りか)、生産性、市場などを考慮しつつ改
定される見込みであり、MEMRはロイヤルティの前払いに関する規定も完成しつつある104。
なお、インドネシア石炭鉱業協会(ICMA)は、石炭価格の下落を考慮して、この計画
には反対している。ICMA は、ロイヤルティの引き上げは、石炭指標価格が 100 ドル/トン
へ回復する時期であるべきであると提案している105。
(5) 外国人の持株比率の上限および持株の内国人への移譲
新鉱業法の第 112 条の(1)は「生産開始から 5 年経過後に、IUP 及び IUPK 保有者で
外国人が株式を保有する場合には、中央政府、地方政府、国有事業体、地方自治体所有事
業体、または、国内民間事業体に対し株式を移譲しなければならない。」と規定している。
この条項に則して、これまでに株式移譲に関連する 3 つの「条令」が公布されている。
まず、
「政令 2010 年第 23 号」では、外国企業に対して、商業生産開始 5 年目中に外国
人持ち株の 20% 以上を上記の中央政府以下のインドネシア側機関に移譲することを求め
た。一方、この政令は外国人による持株比率の上限を設けていなかった106。
103
「インドネシア: 政府は石炭ロイヤルティの引き上げ計画を推進」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_150115_03.pdf)
。以下の脚注では、JOGMEC(150115)と略す。
104
「インドネシア:石炭ロイヤルティ料 本年中期前に値上げへ」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_150205_03.pdf)。以下の脚注では、JOGMEC(150205)と略す。
105
JOGMEC(150115)および JOGMEC(150205)
106
American Chamber of Commerce in Indonesia, ”Articles:Government Relaxes Mining Company Divestment
Obligations” (http://www.amcham.or.id/index.php?option=com_content&view=article&id=4807&catid=2)以下の
脚注では、AmCham Indonesia と略す。
- 163 -
次いで、「政令 2012 年第 24 号」は株式移譲に関して、以下のようにインドネシア側へ
の移譲の幅を拡大した107。
商業生産開始後 6年目中に20%以上を移譲する。
7年目中に30%以上を移譲する。
8年目中に37%以上を移譲する。
9年目中に44%以上を移譲する。
10年目中に51%以上を移譲する。
ちなみに、旧鉱業法下でのCCoWでは、炭鉱を開発した海外企業は10 年後、炭鉱会社の
株式の51%をインドネシア国内企業へ譲渡しなければならなかった。
さらに、「大臣令2013年第27号」では、次のような規制が新たに課せられることになった。
(1) IUP保有者がインドネシア人で、その持株が変更される際、ならびに、
(2) IUP保有者が外国人で、その持株が変更される際のいずれにおいても、
探査IUPの場合には、外国人保有率は75%まで、また、
生産活動IUPの場合には、外国人保有率は49%までに制限される108。
最後に、2014 年には「政令 2010 年第 23 号」に対する 3 回目の改訂が行われた。この「政
令 2014 年第 77 号」は 2014 年 10 月 14 日に公布されている109。
まず、持株比率の上限に関しては、ケースを従来の 2 つから 3 つ増やして 5 つとし、そ
れらについては上限の比率を 49%から引き上げた。これは規制を緩和したことを意味して
いる。

探査IUPおよび探査IUPK----外国人保有率は75%で従来と変わらず。

次の生産活動 IUP および生産活動 IUPK ---- 外国人保有率は 49%までとする。
―― 製錬および/あるいは精錬事業を行っていないもの。

次の生産活動 IUP および生産活動 IUPK ---- 外国人保有率は 60%までとする。
―― 製錬および/あるいは精錬事業を行っているもの。

次の生産活動 IUP ---- 外国人保有率は 70%までとする。
―― 坑内掘を行っているもの。
107
AmCham Indonesia; Ashurst LLP, ”Indonesian Mining Law Update,” December 2014. 以下の脚注では、
Ashurst LLP と略す。
108
“Client Alert:MEMR Issues New Regulation on Procedures for Divestment, Share Pricing and Changes to
Investment in Mineral and Coal Mining Businesses,” White & Case LLP, October 2013
109
AmCham Indonesia ; Ashurst LLP
- 164 -
また、持株の移譲についても、規制に柔軟性が与えられた。従来の規制では、全ての規
制対象者に同一の規制が適用されたのに対して、新しい規制では、規制対象者が 4 つに分
類され、持株比率の上限と同じように、インドネシア国内で加工、その他の事業を行って
いる対象者が優遇されている。
中でも、生産活動 IUP および生産活動 IUPK で、製錬および精錬事業を行っているもの
については、持株の移譲に関する強制的な規制が課せられないことになった。その他の新
規制は次の通りである。

生産活動 IUP および生産活動 IUPK で、製錬および精錬事業を行っていないもの
商業生産開始 6年目中に20%以上を移譲する。
7年目中に30%以上を移譲する。
8年目中に37%以上を移譲する。
9年目中に44%以上を移譲する。
10年目中に51%以上を移譲する。

生産活動 IUP および生産活動 IUPK で、製錬および精錬事業を行っているもの
商業生産開始 6年目中に20%以上を移譲する。
10年目中に30%以上を移譲する。
15年目中に40%以上を移譲する。

生産活動 IUP および生産活動 IUPK で、坑内掘を行っているもの。
商業生産開始 6年目中に20%以上を移譲する。
10年目中に25%以上を移譲する。
15年目中に30%以上を移譲する。

生産活動 IUP および生産活動 IUPK で、坑内堀および露天掘を行っているもの。
商業生産開始 6年目中に20%以上を移譲する。
8年目中に25%以上を移譲する。
10年目中に30%以上を移譲する。
なお、CCoW 保有者に関しては、
「大臣令 2012 年第 24 号」は次のように規定している。

同規制の公布日前に 5 年未満の生産を行なっている企業は同規制を遵守することが
求められる。

同規制の公布日前に少なくとも 5 年間、生産を行なっている企業は、次の規制を遵
守することが求められる。
a) 2015 年 10 月 14 日までに 20%の株式移譲を行なうこと。
- 165 -
b) 同規制の公布後 5 年未満の期間内に、同規制の全てに従うこと。
(6) IUP の適法認定(CnC:Clean and Clear)
インドネシアでは、新鉱業法により、中央政府、州政府および県・市政府が、それぞれ
に特定された地域につき、鉱業許可を与える権限を持っているが、そのことが多くの重複
する鉱区を生むことにつながった110。そこで、政府は各鉱業許可保有者に対して、鉱区の
重複がないという認定を受けることを求めてきた(「政令 2010 年第 23 号」による)
111
。
そもそも、適法認定(CnC)とは、鉱業許可が他の許可と重複あるいは競合していない
ことのみならず、ライセンスが新鉱業法に則っていること、石炭採掘企業がロイヤルテ
ィ・税の納付義務を果たしていることなどを証明するものである。
MEMR によると、2014 年 12 月現在、インドネシアでは 1 万 818 件の IUP が供与されて
いるが、適法認定(CnC)を受けているのは 5,966 件にすぎない112。
(7) 環境対策の義務
新鉱業法では、鉱業実施者に対して鉱業実施に関連した環境対策が義務付けられるよう
なった。石炭採掘後の残渣物を環境規制に基づいて管理すること、開発地域における水資
源の機能と支持力の保全を図ること、開発地域の再生計画および採掘後の修復・復旧計画
を行なうことなどが求められている113。
なお、環境法、森林法など他の法律に定められている関連規制については、後に述べる。
7.3.2 石炭輸出に関連する条項
(1) 国内供給義務および生産規制
①
国内供給義務
前述の「国内供給義務(DMO:Domestic Market Obligation)に関するエネルギー鉱物資
源大臣令」
(2009 年第 34 号)では、DMO の目的を、国内需要に対して供給を保障し、国
民所得を最適化することである、と定めている114。
石炭生産企業は供給義務の達成状況について、1 月に始まる四半期毎に点検を受け、年
110
“Mining license,” February 18, 2014(https://salvareport.com/review-value-added-regulation-completed/)以下
の脚注では、Mining license(140218)と略す。
111
平成 25 年度 JOGMEC 石炭開発部調査事業成果報告会 海外炭開発高度化等調査 「インドネシア石炭鉱
業事情」
、2014 年 6 月 6 日. 以下の脚注では、JOGMEC(140606)と略す。
112
Ashurst LLP
113
JOGMEC(140606)
114
DIRECTORATE GENERAL OF MINERAL AND COAL(MEMR),”THE INDONESIAN PERSPECTIVE:
RECENT DEVELOPMENT IN MINING POLICY AND REGULATION,” INDONESIA-AUSTRALIA MINING
WORKSHOP, Jakarta, April 15-17, 2013
- 166 -
末までにその年の供給義務を達成することができない場合には、罰則を受けることになっ
ている115。
各年に公布される DMO に関する「大臣令」が、国内需要量を予測し、それを国内供給
義務量として全ての石炭生産企業に割り当てる。その数量は 2010 年の 6,496 万トンから
2014 年の 9,555 万トンに増大しており(表 7.3.1 参照)、2014 年にはそれが 85 社に割り当
てられている。この表によると、予測生産量に占める国内供給義務量の割合は、2013 年の
約 20%を除くと、各年ほぼ 25%である116。
表 7.3.1 予測生産量と国内供給義務量
2010
予測生産量
(百万トン)
262
国内供給義務
(百万トン)
64.96
国内供給義務
(%)
24.8
2011
2012
2013
2014
327
322
366
369
78.97
82.07
74.32
95.55
24.2
24.7
20.3
25.9
年
(出所)国内供給義務(DMO)に関するエネルギー鉱物資源大臣令(各年)
また、2014 年の予測生産量の中で国内市場に割り当てられる 9,555 万トンのうち 5,740
万トンは国営企業の PLN 向け、1,990 万トンは IPP(独立系発電事業者)向けであり、そ
の他を含め電力向けは計 7,870 万トン、さらに、セメント向けは 980 万トン、その他産業
向けは 705 万トンである(表 7.3.2 参照)
。
表 7.3.2 国内供給義務量の部門別割当量
(単位:百万トン)
電力
年
2012
2013
2014
PLN
IPP
その他
計
57.20
49.29
57.40
10.76
9.82
19.91
1.56
1.38
1.39
69.52
60.49
78.70
セメント
その他
計
8.40
9.80
9.80
4.15
4.03
7.05
82.07
74.32
95.55
(出所)表7.3.1と同じ。
さらに、2015年について、ある政府関係者は2014年9月、石炭の予測生産量4 億 2,500 万
トンのうち約 1 億 300 万トンが国内供給義務の制度によって国内消費に割り当てられ
る、と述べていたが、国内供給義務量の部門別内訳は示さなかった117。後述の通り、2014
115
116
117
JOGMEC(130607)
JOGMEC(140606)
JOGMEC(140924)
- 167 -
年の生産量は4億6,000万トン近くに達する、と予想されており、MEMRは2015年の生産量
を2014年と同じ程度には抑えようとしている、と見られている118。
ところで、DMOの制度は2010年から実施され、生産者が輸出市場へ依存する度合いを下
げることを期待している政府の意図を反映して、その数量は毎年、増えてきている(表
7.3.1)
。2013年には7,432万トン、2014年には9,555万トンが国内消費者に振り向けられ、さ
らに、2015年にはその量は1億1,000万トンに増えることが見込まれている。
しかし、購入側の整備の遅れという障害がこの政策を非現実的なものにしている。特に
国内最大の石炭消費者であるPLNの発電所建設計画の遅れが大きく響いている。PLNは
2014年における石炭消費量を5,500万トンと計画していたが、このことは2014年のDMOの
量(9,555万トン)が国内で全て吸収されるかどうか、不確定であることを意味していた。
後にも述べるように、PLNによる発電所計画の遅れは主に建設用地取得の問題から生じて
いるが、それが石炭生産の増大に対する国内での吸収の不足を呼んでいる119。
ちなみに、2010、2011、2012、および2013の各年における国内市場向け供給量は、MEMR
によって実績値が示されており、それぞれ 6,490万トン、6,630万トン、6,730万トン、およ
び7,200万トンであり、2010年を除くと各年とも国内供給義務量をかなり下回っている(表
7.3.1参照)120。
②
生産規制
インドネシア政府当局者は 2014 年 8 月下旬、2015 年に石炭生産量を規制する措置を採
ることを明らかにし、その理由は環境保護のみならず、世界的な石炭価格低下の抑制にあ
り、2015 年の生産量は約 4 億トンを超えないと述べた。すでに、上述のように予測を大き
く上回る生産量に直面した政府は、2014 年の石炭生産量を最大でも 2013 年と同水準の 4
億 2,100 万トンに制限することを意図していたことが伝えられていた121。
しかし、その後、政府の発言は変化する。上述のように、すでに2014年9月には、政府
関係者は2015年の石炭生産量(予測)を4 億 2,500 万トンと述べ、さらに同12月には、
MEMR鉱物石炭総局のR. Sukhyar局長は、政府が2015年の石炭分野からの税外収入目標値
118
“Coal sector management poor amid policy changes,” The Jakarta Post, December 29 2014,
(http://www.thejakartapost.com/news/2015/02/05/ades-expands-cosmetics-health-products.html)。以下の脚注で
は、Jakarta Post(141229)と略す。
119
“Coal sector management poor amid policy changes,” The Jakarta Post, December 29 2014,
(http://www.thejakartapost.com/news/2015/02/05/ades-expands-cosmetics-health-products.html)
120
The Indonesian Institute for Energy Economics(IIEE),”The Current and Future Situation of Coal in Indonesia,”
2015; Gultom Gushka(MEMR), ”THE LOW RANK COAL POLICIES IN INDONESIA,” September 5, 2013
(http://www.jcoal.or.jp/coaldb/shiryo/material/day2_session2_5.pdf)
121
「インドネシア:石炭生産量 上半期は 7.6%上昇」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_140717_04.pdf)
- 168 -
を10兆ルピア引き上げたため、石炭を増産する以外に方法はないと語っている122。
このような政府当局者の発言の変化は、次のような動きを反映しているようである。す
なわち、2014 年初には、MEMR 当局は 2014 年の石炭生産を 4 億 2,100 万トンまでに抑え
られるであろうと見ており、10 月までの生産量はこの線に沿っていたと理解されていたが、
11 月になり、事態は一変した。1~11 月の生産量は 4 億 2,700 万トンに上り、うち 3 億 6,600
万トンが輸出されていたことが判明した。そこで、
上記当局は 2014 年の生産量を 4 億 5,800
万トンに修正せざるをえなくなった。上記の R. Sukhyar 局長は、このような増大は「文書
管理の改善(better documentation)
」による、と述べている。
一方、ICMAのBob Kamandanu会長は2014年12月、石炭価格の安定に向けて、政府が率先
して生産削減に踏み切るべきであると述べている。同会長は、現在の世界的な石炭市場に
おける供給過剰状態を解決するために、2015年は同国の石炭生産量を7,500万トン程度削減
すべきであり、また、インドネシアに限らず世界中の石炭生産企業が苦境に直面しており、
もし一国が石炭の減産を決めれば、他の国も追従するだろうとも語った123。
(2) 石炭基準価格
石炭基準価格は、
「鉱物・石炭基準価格(HPB)の決定方法に関する大臣令」
(2010 年第
17 号)に則って設定される。その目的は、輸出価格と国内価格を統一し、石炭生産者に
とって輸出と国内供給の魅力を同じにすることである。
設定の手順としては、まず、石炭指標価格(HBA;英語では Indonesian Coal Price Reference
=ICPR)が設定され、それに基づいて、石炭基準価格が設定される。それぞれの価格算出
方法については、第 4 章「4.3
FOB コストの構成」の「石炭指標価格(HBA)」を参照さ
れたい。
MEMRは2010 年より月例でHBA を発表している。その後、石炭基準価格の設定方法の
改訂については、2013年10月、MEMRが改訂を検討していること、また、ICMAはMEMR
による改訂を支持し、さらに同指標価格からNewcastle Global Coal Index を削除するよう提
案したことが伝えられた。この時、MEMRが計画中の改訂では、個々の価格指標の割合を
見直すことが中心になること、個々の指標の利用者数に応じて割合が調整されること、石
炭の発熱量に基づき、HBA1、HBA2、HBA3 のように、HBA の別タイプをいくつか導入
する予定であることなども伝えられた124。
122
「インドネシア: 政府は石炭生産制限計画を見直し」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_141218_06.pdf)
123
以上の本文は次による――「インドネシア: 石炭鉱業協会、石炭生産の大幅カットを提起」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_141211_03.pdf)
124
「インドネシア:石炭指標価格からニューキャッスルグローバルコール」
- 169 -
しかし、その後、改訂の実施については、何ら明らかにされていない。
(3) 高付加価値化
新鉱業法は、鉱業事業許可(IUP および IUPK)保有者に対して、鉱物・石炭の付加価値
を高めることを求めており(第 102 条)、それに関する「政令 2010 年第 23 号」は、発熱
量の低い石炭について、破砕、選炭、配合、改質、ブリケット化、液化、地下ガス化、ス
ラリー製造などの加工を求めている。
しかし、「政令 2014 年第 1 号」は、現時点では、上記の加工の技術が確立していない
ことから、それらを実行することは不可能であるという理由で、石炭を高付加価値化の義
務から免除している125。
ただし、インドネシア政府は、政府は鉱業契約の改定に際して、採炭業者に対し、石炭
の高付加価値化の義務を追加することになった、と伝えられる。2015年1月13日付地元紙
によると、MEMRの鉱物石炭総局のR. Sukhyar総局長は、政府は現在、石炭加工義務を実
施すべく規定の文書化を進めていると述べた。同規定の下では、現行の石炭洗浄および粉
砕業務は付加価値過程とはみなされない。そのため、採炭業者は石炭のアップグレードあ
るいは石炭液化、または石炭ガス化のいずれかの方式を選択しなければならない。政府は、
CCoWを保有する採炭業者9社との間で本契約改定について合意している126。
(4) 輸出税および石炭輸出管理
① 輸出税
インドネシアでは、新鉱業法に基づき、2012年5月から、金属鉱物21品目、非金属鉱物
10品目、岩石鉱物34品目に対して、輸出価格の20%に当たる輸出税が課されている。しか
し、石炭は今のところ輸出税の対象になっていない。
その理由としては、上述のCCoWの契約では、契約後の新規の税制には影響されない、
という事項が含まれており、しかも、同契約では、事業者に13.5%と他の鉱物資源より高
いロイヤルティが課せられていること、さらに、石炭の国際競争力が損なわれる恐れがあ
ることなどが指摘されている。
②
石炭輸出の管理強化
最近、インドネシアでは、石炭輸出の管理が強化されている。その背景には、違法な石
炭輸出が大量に行われている、あるいは、港から積み出される石炭量が明確に記録されず、
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_131010.pdf)
125
JOGMEC(140606)
126
「インドネシア: 採炭業者へ石炭加工義務を追加」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_150123_05.pdf)
- 170 -
税金徴収の減額に繋がっている、という事実がある(注)。
(注)このような事情を反映して、統計上の石炭輸出量は実際に輸出された量よりも小
さいと見られており、また、関連して石炭生産量にも疑問が出されている。例えば
インドネシア政府の公式統計によると、2013 年の石炭生産量は 4 億 2,100 万トンで
あるのに対して、MEMR の ”Energy Outlook 2014” によると、それは 4 億 3,100 万
トンである127。なお、第 3 章の表 3.4.1 によると、2013 年の生産量は 4 億 4,908 万
トンであるが、この数字の出所は MEMR の ”Energy Handbook” である。
2014 年 7 月、石炭輸出の管理強化を目的とする措置が 2 つ相次いで発表された。
MEMR は同月初め、石炭輸出の実績を持つ 14 の港湾を再整備し、石炭の主要輸出港と
して認可することを発表した。14 港とはスマトラの 7 港とカリマンタンの 7 港である。現
在、国内では数百の港が石炭輸出に利用されているが、2015 年からは、石炭の輸出はこれ
らの港を通じて行なわれることになる128(石炭輸送インフラについては、「第 5 章 石炭輸
送インフラ整備状況」の「5.1 国内炭の輸送インフラ整備と輸送の状況」を参照されたい)
。
また、インドネシア貿易省は同月半ば、石炭の輸出管理を強化する方針を発表した。そ
の主な内容は、石炭生産会社に対する輸出業者としての登録(認証取得)と輸出量の定期
報告の義務付けであり、2014 年 9 月 1 日から実施されることになった。
この方針の目的は、
石炭の過剰生産を抑制し、国内需要への安定的供給を確保すること、さらに、ロイヤルテ
ィ収入を確保することにあると説明されている129。なお、その後、この規制の実施は一月
遅れの 10 月 1 日に変更された。その主な理由は認証取得に予想以上に時間がかかること
であると説明されている130。
なお、輸出ライセンスの取得には、上述の適法認定(CnC)証明書が必要である。この
証明書は、上述の通り、石炭採掘企業が一定の条件を満たしている場合に与えられるもの
である。関連して、MEMR は汚職撲滅委員会(Corruption Eradication Commission: KPK)と
協力して不正な鉱業活動を撲滅しようとしている131。
127
“Coal sector management poor amid policy changes,” The Jakarta Post, December 29 2014,
(http://www.thejakartapost.com/news/2015/02/05/ades-expands-cosmetics-health-products.html)
128
以上の本文は次による――「インドネシア政府は違法輸出を防止するため、カリマンタン、スマトラ
の 14 の輸出港を整備する」
、2014 年 7 月 8 日(http://www.jcoal.or.jp/coaldb/news/2014/07/14.html);「イン
ドネシア:政府は 14 の石炭専用港を建設」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_140612_05.pdf)
129
“New Rules in Indonesia Require Coal Exporters to Have Licenses,” July 24, 2014
(http://www.bloomberg.com/news/2014-07-24/new-rules-in-indonesia-require-coal-exporters-to-have-licenses.html)
;
「石炭輸出を規制、9 月から登録義務化」
、2014 年 7 月 25 日(http://nna.jp/free/news/20140725idr003A.html)
130
“Introduction New Export Rules for Indonesian Coal Miners Delayed,” August 23, 2014
(http://www.indonesia-investments.com/news/todays-headlines/introduction-new-export-rules-for-indonesian-coal
-miners-delayed/item2344)
131
“Coal sector management poor amid policy changes,” The Jakarta Post, December 29 2014,
- 171 -
2015年1月上旬の報道によると、低迷する石炭価格の影響で、生産中の採炭企業1,052社
のうち、輸出登録者(ET)として輸出ライセンスを取得したのはわずか253社である。ET
としてライセンスを取得した企業は、CCoW保有企業39社、残りはIUP保有社および貿易業
者であり、CCoW保有社のうち16社はまだ輸出許可を受けていない。MEMRの鉱物石炭総
局のR. Sukhyar総局長によると、石炭価格の低迷が石炭の生産動向に大きな影響を与えて
おり、多くの低品位炭生産者が一時的生産停止に追い込まれ、現在、生産されている石炭
の大部分は中カロリー炭と高カロリー炭である132。
さらに、インドネシア政府は、2015年1月5日付けの商業大臣令(04/M-DAG/PER/1/2015)
で、2015年4月1日から、鉱物、石炭、石油・天然ガス、パーム油の4品目の輸出時に信用
状(L/C)を義務付けると発表した。輸出額把握や価格安定を主な目的としている133。
(http://www.thejakartapost.com/news/2015/02/05/ades-expands-cosmetics-health-products.html)
132
「インドネシア:石炭生産 16 社輸出ライセンスを未提出」
(http://coal.jogmec.go.jp/info/docs/report_150123_06.pdf)
133
http://www.kemendag.go.id/files/regulasi/2015/01/05/04m-dagper12015-id-1421375089.pdf
- 172 -
7.4 新鉱業法に係る問題点
新鉱業法に関しては、次のような問題点がすでに指摘されている。
まず、鉱業事業は巨額な投資を必要とし、利益回収までに長い時間がかかる上に、リス
クが大きく収益率が低いから、投資しやすい環境を作ることが重要である。それにも拘ら
ず、この法律はナショナリズムの色彩が強く、外国投資家の意欲を削いでいる。特に鉱物
資源への高付加価値化の義務化は、今のところ石炭には適用されてはいないが、鉱石の輸
出規制につながり、日本など原鉱石を輸入し精錬している国への影響が大きい。
また、IUPはいつでも政府が取り消すことが出来るので、事業契約者の立場が弱くなる。
事業契約社と政府との交渉が難しくなり、一方的な政府の条件を満たすことになる。CoW
およびCCoWは国家と企業の契約であり、政府と鉱山会社に争議が生じた場合、国際調停
裁判所での仲裁手続きが可能であるが、事業許可はインドネシア国法に基づいての処理と
なる。
さらに、地方重視に力点が置かれているので、地方毎に異なる鉱業規制の制定や運用、
人材不足、異なる手数料、鉱区の過剰許可、鉱区重複問題などの問題が生じている134。 そ
こで、以下では、これら多くの問題を引き起こしている地方への権限移譲に焦点を当てて、
それらの背景を探ることとする。
すでに述べた通り、インドネシアでは、20 世紀末から地方分権が進められてきた。しか
し、地方政府の組織の整備や人材の育成、各種制度が整わない中での急激な地方分権は地
方政治を混乱させる結果となった。
1999年の地方行政法(1999年法律第22号)において中央政府の権限とされた外交、国防、
治安、司法、金融、国家財政、宗教、さらに、政令で定めるとされたその他の分野の外の
権限は全て、地方政府の事務とされたが、法律の解釈を巡って地方政府間で所管争いが発
生し、様々な行政事務が停滞する事態も生じた。また、対等な立場となった州と県・市間
の関係にも変化がおき、県・市の発言力の強化とともに、州による指導・監督機能が低下
する結果となった。さらに、地方議会による利権を巡る地方首長の罷免、執行部への人事
介入が深刻になるなど、問題も多数指摘されたため、2001年に同法が施行されると間もな
く、政府は同法の見直しを開始している135。
新鉱業法について見ると、同法は上述のように「第 4 章 鉱物・石炭鉱業の運営権限」
134
135
JOGMEC(130607)
財団法人 自治体国際化協会「インドネシアの地方自治」
、2009 年 3 月
- 173 -
で、中央政府(第 6 条)
、州政府(第 7 条)および県・市政府(第 8 条)の権限を規定し
ている。しかし、例えば、すでに述べた通り、鉱業許可に関しては、鉱区の重複という問
題が生じている。
多くの論者は、地方政府への権限の移譲はインドネシア国家全体に対して利点よりも害
をもたらしている、と考えている。例えば Marwan Batubara(Indonesian Resources Studies
の director)は、地方自治は一定の企業に対して許可を行っている地方政府の上層官僚を利
しているに過ぎない、と語っている136。
2001年に鉱業ライセンス付与の権限を中央政府から地方政府に移譲する政策が実施さ
れたことにより、次のような問題が生じた137。
(1) 小規模鉱区に関する許可が多く行われた結果、環境影響や社会的対立が生じたこと。
(2) 鉱区が重複したこと。
(3) 鉱業権を与える当局が汚職を行ったこと。
(4) 行政当局の透明性が欠けていた結果、市民の監視が妨げられたこと。
(5) 不正な鉱業活動の出現を防ぐには、行政当局の強制力が不十分であったこと。
これらの問題を引き起こす原因は次のような事情である、と見られている。
中央、州、県・市の各層における政府の権限の帰属が重複あるいは競合していること:
その結果、例えば、どの政府が鉱業活動の中のある特定のものを監視する責任を持って
いるのか、を明確にすることが難しくなる。2011‐12年の鉱業活動に関するある国際的な
調査によると、インドネシアは「規制面において重複と不整合がある」点で世界ワースト
3位であった。また、前述の通り、CnCを保有するライセンスは全体の半分にも満たない
(2013年)。
政府の各層における情報の調整と管理が不十分であること:
正確なデータや情報が欠けていると、十分な監視できず、その結果、否定的な社会的・
環境的な影響を生み出すとともに、政府の収入の減少になる。また、同じく、不正確なデ
ータ・情報に基づくライセンス供与の結果、鉱区の重複が生じ、それが争いと汚職を生む
ことになる。
136
“Indonesia should learn from Churchill case: Analysts,” The Jakarta Post, February 28 2014
(http://www.thejakartapost.com/news/2014/02/28/indonesia-should-learn-churchill-case-analysts.html)
137
以下の本文は、次による――Varsha Venugopal, ”Assessing Mineral Licensing in a Decentralized Context:
The Case of Indonesia,” Natural Resource Governance Institute, October 2014
- 174 -
下位(下層)の政府では、規則を実施し、強制する能力が限られていること:
一般的に地方政府の下では、中央政府の下よりも、支配層が公的資源を搾取する行為
(”state capture”=「国家の領有」)、さらに、政治家が公にされた共通の規則を通さず、投
票、その他の政治的行為と引換えに、個々の有権者集団に便宜を供与する行為(”clientelism”
=「恩顧主義」
)がより容易に行われる、と考えられる。インドネシアでは、権限の分散
化によって、鉱業においても、このようなことが生じている。
その結果、地方住民にとっての利益や彼らの費用負担を考慮に入れないライセンスが供
与されている。ある地方の支配的な政治家集団に近い住民たちのグループが、その地方の
政府によって国の規制に反して供与されたライセンスに基づく錫開発事業に対して資金
を含む協力を行っていた、という例がある。このような不正操業はその地域への収入の減
少をもたらすばかりでなく、環境破壊、鉱区の重複などの原因にもなっている。
政府には監視と市民への説明責任を実施する条件がないので、それらが十分に行われな
いこと:
インドネシアにおける基本的な問題は、鉱業部門の統制が社会的・政治的な要因によっ
て分散化された速度が、地方政府がそれらの義務と責任を担う能力の発展の速度を上回っ
ていることである。特に鉱業部門におけるライセンス付与の仕事は複雑で、高度の技術を
必要とする。ある調査によれば、地方政府の予算および人員はきわめて不十分である。
分散化は比較的最近の動きであるため、地方政府の職員は未だに必要な知識・経験を積
むことができず、しかも、責任は大きくなっても、それに対応するだけの資金や物資は増
加しないことから、規則を実施・強要するための能力も向上しない。
- 175 -
第 8 章 新鉱業法以外の各種規制と石炭開発・利用に伴う環境問題
資源開発時の環境保護に係わる新鉱業法以外の各種規制としては、環境保護・管理法、
森林法、さらに、関連する諸規制がある。これら各種の規制に加えて、本章では、環境保
護に関して、石炭の開発・利用に伴う問題とそれらの規制の状況についても、取りまとめ
を行う。
8.1 環境保護・管理法
インドネシアの環境に関する規制の基本法は環境保護・管理法である。1997 年に環境管
理法(1997 年法律第 23 号)が制定され、2009 年にそれが改正されて環境保護・管理法(2009
年法律第 32 号)が制定された。同法は中央政府および地方政府に対して戦略的環境計画
を策定することを求めている138。
これらの法律および関連する政令(例えば「環境ライセンスに関する政令 2012 年第 27
号」
)
、大臣令、大臣決定などにより、インドネシアでは石炭資源開発に係わる環境保護は
次のように行われている139。
まず、インドネシアにおける全ての事業活動(石炭開発を含む)は、その開始に当たっ
て「環境ライセンス」を取得する必要がある。ある事業が環境に対して重大な影響を及ぼ
すと予想される場合、環境影響評価(AMDAL:Analisis Mengenai Dampak Lingkungan Hidup)
――環境影響評価(ANDAL:Analisis Dampak Lingkungan Hidup)、環境管理計画(RKL:
Rencana Pengelolaan Lingkungan Hidup)ならびに環境モニタリング計画(RPL: Rencana
Pemantan Lingkungan Hidup)から成る書類――を政府に提示し、承認を受けることが求め
られ、承認された場合には「環境ライセンス」を取得することができる140。石炭開発事業
の多くはこのような事業に属する、と考えられる。一方、ある事業が環境に対して重大な
影響を及ぼすとは予想されない場合には、環境管理プログラム(UKL: Upaya Pengelolaan
Lingkungan Hidup ) お よ び 環 境 モ ニ タ リ ン グ ・ プ ロ グ ラ ム ( UPL: Upaya Pemantauan
Lingkungan Hidup)を政府に提示し、承認を受けることが求められ、承認された場合には
「環境ライセンス」を取得することができる141。
また、2009 年改正法では環境省の権限が強化され、環境規制に違反する者には、3~15
138
「インドネシアの環境規制」
(http://www.jcoal.or.jp/coaldb/country/21/post_67.html). 以下の脚注では、
「イ
ンドネシアの環境規制」と略す; PwC, “Mining in Indonesia: Investment and Taxation Guide,” April 2012. 以下
の脚注では、PwC(1204)と略す。
139
Action Research report;JOGMEC(140606)
;その他
140
Action Research report;PwC(1204)
141
Peraturan Menteri Negara Lingkungan Hidup Nomor 13 Tahun 2010 Tentang(Minister of Environment Regulation
No.13/2010=環境大臣令 2010 年第 13 号); Action Research report;PwC(1204)
- 176 -
年の投獄、あるいは 1.0~7.5 億ルピーの罰金が課せられることになった。さらに、同法に
は、環境規制の違反容疑者を警察と協力して逮捕する権限が付与された142。
142
「インドネシアの環境規制」; PwC(1204)
- 177 -
8.2 森林法
森林法は 1999 年 9 月、ハビビ大統領の下で施行され(1999 年法律第 41 号)、その後、
2004 年に改正された(2004 年法律第 19 号)。
さらに、2010 年には「森林の利用に関する政令 2010 年第 24 号」、また 2012 年には、
それを改訂して、鉱業活動が認められる地域を拡大する「政令 2012 年第 61 号」が公布さ
れている143。
これらの法律および政令は鉱物・石炭の開発に関して以下のことを規定している144。

森林区域を鉱業目的に利用するためには「貸借・使用ライセンス」が必要である。

「保護林」地域では、露天掘りは禁止され、坑内掘りについては、上記「ライセン
ス」を取得することはできるが、多くの条件付きである。「生産林」地域では、坑
内掘り、露天掘りとも「ライセンス」取得の可能性がある。
「保存林」地域につい
て、
「ライセンス」の供与は行なわれない。

2004 年以前の「ライセンス」は現在も有効である(2012 年 4 月現在、森林区域で
13 の露天掘り炭鉱が操業していた)
。

利用後の埋め立てと森林再生が義務付けられる。
143
“PLANTATION AND MINING ACTIVITIES IN FOREST AREAS CAN BE ALLOWED LEGALLY,” October
11, 2012(http://kusnandarlaw.blogspot.jp/2012/10/plantation-and-mining-activities-in.html); その他
144
PwC(1204)
;平成 19 年度海外炭開発高度化等調査「インドネシアの石炭開発計画と輸送インフラ整備・
開発計画」報告書、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、2008 年 3 月;その他
- 178 -
8.3 石炭開発・利用に伴う環境問題
石炭の開発・利用に伴い発生している主な環境問題は以下のようなものである。
(1) 石炭の道路輸送に伴う大気汚染、道路渋滞などの問題
(2) 河川上流の資源開発に伴う河口の土砂堆積、バージ運行への影響などの問題
(3) 炭鉱における酸性廃水の問題
(1) 石炭の道路輸送に伴う大気汚染、道路渋滞などの問題
石炭輸送にトラックが用いられており、このトラックが公道を通ることにより排気ガス
や交通渋滞の問題が発生している。また、重量の大きいトラックにより道路の舗装が破壊
される例もあり、最近、石炭輸送トラックの公道使用を禁止する州が相次いでいる。
(2) 河川上流の資源開発に伴う河口の土砂堆積、バージ運行への影響などの問題
河川上流側における資源開発が原因で、河口近くで土砂が堆積し、浚渫しなければ十分
な水深が確保できなくなっている。水深は降雨不足によっても引き起こされている。潮の
満ち引きなども関連するが、一日のうちバージが運行できる時間が限られるようになって
おり、将来的にはバージによる石炭運搬能力にも問題が生じる可能性がある。
(3) 炭鉱における酸性廃水の問題
インドネシアの炭鉱では酸性廃水が問題となっている。採掘跡の修復も重要な問題であ
るが、その際に酸性廃水が発生しないような埋め戻し方法の確立が求められている。
なお、石炭開発が進むことは森林伐採も進むことであるから、その影響にも注意しなけ
ればならない。インドネシア政府によると、同国の温室効果ガスの約 75%は森林伐採、森
林火災およびピートが賦存している沼地の干拓に由来するものである145。
企業は環境対策を講ずるべきであると感じてはいるが、現在は環境保全事業に対する政
府の優遇策がないので、環境対策を進めていくためには、何らかのインセンティブが必要
になると思われる。
145
“Indonesia’s tough choice: capping coal as Asian demand grows” October 17, 2014
(http://news.mongabay.com/2014/1017-gfrn-fogarty-coal-mining-in-indonesia-2.html#tOm6f6Y5RgcIf5Pz.99)
- 179 -
第 9 章 新大統領の下でのエネルギー・石炭政策の展望
新政権は2015年2月中旬現在、まとまった形でのエネルギー政策および石炭政策を明らか
にしていない。そこで、この章では、まず、選挙対策チームが発表した「政権公約」の中
の関連個所を確認し、次いで、大統領就任後に発表された関連政策を整理した上で、今後、
打ち出されると予想される政策を、既存の諸情報の中から整理するとともに、「政権公約」
を含め、新政権が打ち出すと予想される諸政策の実行可能性を占うための注意点につき検
討を行う。
9.1 「政権公約」を通じて見る新政権の基本方針とエネルギー政策146
9.1.1 基本方針
2014 年 5 月、正副大統領候補の選挙対策チームは「政権公約」を発表した。その表題と
構成は次の通りである。
表題----「主権を有し、自立し、個性を発揮するインドネシアへの変化の道:ヴィジョン、
ミッション、そして、アクション・プログラム」
構成----はじめに/憲法の信託のうえに歩む/3 つの国民的主要問題/思想的道程を振り
返る/ヴィジョン/ミッション/9 つの優先的アジェンダ/政治分野における主
権/経済分野における自立/文化分野における個性
まず、「政権公約」が掲げるヴィジョンは「主権を有し、自立し、個性を発揮するイン
ドネシアを相互扶助(ゴトン・ロヨン)にもとづいて実現する」ことである。この文章は、
初代大統領スカルノ(ジョコ大統領の出身政党である闘争民主党の党首メガワティ・スカ
ルノプトリの実父)による「三原則(トリサクティ)」演説を踏襲している。その演説の
趣旨は「インドネシアは、政治において主権を有し、経済において自分自身の足で立ち(ブ
ルディカリ)
、文化において個性を発揮する」というものである。
次に、ミッションは、次の 7 項目から成る。
(1) 領域の主権を守り、海洋資源を保全しながら経済的自立を支え、群島国家としての
インドネシアの個性を反映することのできる、国家的安全を実現する。
(2) 先進的で、バランスがあり、法治にもとづいた民主的な社会を築く。
(3) 海洋国家としてのアイデンティティを強化するような自由積極外交を展開する。
(4) インドネシア人の生活の質を高め、先進的で豊かなものにする。
146
以下(9.1 の末尾まで)は次の資料による――佐藤百合「インドネシア・ジョコウィ政権の基本政策(1)」
、
2014 年 12 月(http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/201412_sato_1.html); 佐藤百合「イ
ンドネシア・ジョコウィ政権の基本政策(2)」
、2014 年 12 月
(http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/201412_sato_2.html)
- 180 -
(5) 競争力のある国民を形づくる。
(6) 自立し先進的で強固であり、かつ国益にもとづいた海洋国家を実現する。
(7) 個性をもち、文化的な社会を実現する。
「政権公約」は上記の通り、ヴィジョンとミッションに続けて、優先的アジェンダを 9
項目、政治、経済、社会文化の 3 分野におけるアクション・プログラムをそれぞれ 12 項目、
16 項目、3 項目挙げている。
これらの文書全体を通じて見られる特徴は次の 3 つである。
第 1 は「海洋」が政権の戦略に選ばれていることである。ジョコ大統領は大統領就任演
説の中でも「我々はあまりにも長い間、海に背を向けてきた」と述べている。さらに、2014
年 11 月 13 日の ASEAN 首脳会議における演説でも、ジョコ大統領は「5 つの海洋ドクト
リン」を発表した。
第 2 は分配の重視である。
「インドネシア人の生活の質を向上させる」こと、
「生産性と
競争力を向上させる」こと、さらに、
「経済の自立性を実現する」ことを目的として、関連
する各種の政策が提案されており、それらを通じて所得分配制度の設計を改変し、生産的
事業あるいは人的資本への投資へと財政資金を配分することが重視されている。
第 3 はインドネシア中心志向性である。具体的な政策としては、エネルギー、鉱物、海
洋資源などの国益に沿った活用、未加工で輸出してきた資源の国内での加工、資源産業、
その他の産業における外国依存の低減、銀行部門における外国による買収の制限や互恵主
義、規格外・不正輸入品の制御、国産品の競争力強化などが掲げられている。
9.1.2 エネルギー政策および環境政策
エネルギーに関連する政策は、経済分野のアクション・プログラムの「国益に沿ったエ
ネルギー安全保障」という項目で、以下のように述べられている。
(1) 原油の増産
①
石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery)、その他の技術による既存油井の生
産回復、その投資のための特別規定の制定と特別財政システムの整備
②
官民融資を可能にする高リスクと投資回収の計算にもとづく探鉱活動の設計
③
旧油井、新地域、深海など各油井の条件に対応可能な財務システム構築による
投資振興
④
石油・ガス資源開発への投資手続き円滑化のための中央による行政支援
⑤
効果的・効率的な石油ガス管理機構の構築(短期的には法律代行政令の発令、
中期的には石油・ガス法の改正)
- 181 -
(2) 燃料補助金の削減と安価なエネルギーの供給確保
①
運輸部門における高価輸入石油燃料から安価国産ガスへの 30%転換、補助金
60 兆ルピア削減と価格 20%低減、ガス供給インフラへのインセンティブ付与
②
一部補助金の輸入石油燃料から国産バイオ燃料へのつけ替え
(3) 強力な石油・ガス産業の振興
①
短期的・長期的に見て強力な石油ガス産業の構築
②
振興による国家予算の最適化への寄与
③
埋蔵量拡大戦略の策定、憲法第 33 条に沿った石油・ガス法の見直し
(4) 新・再生可能エネルギー戦略の策定
長期戦略としての新・再生可能エネルギーの購入価格システムの変更、短期戦略と
しての地熱、水力、バイオ燃料、バイオマスの活用促進、バイオ燃料の産業強化と
効率的流通を司る特別事業体の設置など
(5) 電力不足解決策の策定、生産費削減、補助金削減、電化率 100%達成など
(6) 石油・ガス産業インフラ、とくに国内需要を満たすための製油所の建設、民間参入
へのインセンティブ付与
(7) 石油・ガス輸送インフラ(ガス・スタンド、タンク、輸送パイプライン、タンカー
など)の整備による外国依存の低減と国内エネルギーの国益のための活用
(8) 省エネルギー技術の導入、最低基準を満たさない技術へのディスインセンティブ付
与など
(9) 気候変動問題への取り組み
なお、石炭産業を含むと考えられる鉱業部門に関する政策は、同じく経済分野のアクシ
ョン・プログラムの「天然資源の管理」という項目で、以下のように述べられている。た
だし、石炭に直接的に言及している項目はない。
(1) 国内鉱業企業の数の増強、インセンティブの付与など
(2) 地元社会の鉱業運営からの直接的受益
(3) 調整大臣による鉱業運営の調整強化
(4) 鉱業からの国家の取り分の段階的増加
(5) 鉱産物加工の推進、国内企業へのインセンティブ付与など
(6) 地元社会と鉱業企業との対立の抑制
(7) 地元小鉱業企業の振興
(8) 政府と国内外鉱業企業との均等利益配分に向けた再交渉
さらに、環境問題については、同じく「持続可能な空間計画と環境」という項目で、以
下のように述べられている。
(1) 沿岸、小島、国境地域などにおける新経済成長拠点の開発
(2) 統合的な地域空間計画の作成
- 182 -
(3) 持続的な国内生産システムの構築と実行
(4) 環境に優しい生活様式を理解し実践するための消費者教育
(5) 慎重で環境を破壊しない再生不能天然資源の利用、空間的により均一で均衡のとれ
た全国経済開発、環境指数(Environmental Quality Index) 平均 70-80%の達成など
(6) 有機農業、用地・用水節約農業などによる bio-eco-region ベースの持続可能な農業の
振興、2019 年までに 1,000 村、2024 年までにさらに 1,000 村で有機食料生産パイロ
ット・プロジェクトを行う Indonesia Go Organic 計画の実施、持続可能な食料農地
保護法(法律 2009 年第 41 号)とその施行令による持続可能な農業慣行のエンフォ
ースメントなど
(7) グリーンな生活様式に対するインセンティブ、ディスインセンティブを通じて、全
世帯の 80%が環境に配慮した行動を認識し、日常生活に適用できるよう振興する
こと
- 183 -
9.2 新政権が打ち出したエネルギー関連の政策
9.2.1 政権移行チームによるエネルギー関連政策案の発表
2014 年 9 月 23 日、政権移行チームの副主任である Hasto Kristiyanto がジョコ大統領政権
のエネルギー関連政策案――主にエネルギー部門の改革および電力供給の拡大に関する
政策案――を発表した147。
第 1 に、この案では、特に石油・ガス部門に焦点を当て、エネルギー部門における不正
行為と闘い、国家収入を最適化するために、エネルギー部門の改革を図ることが謳われ、
具体的には、次のような提案がなされた。
まず、石油・ガス部門に関しては、Pertamina 傘下の貿易部門、Petral の業務を監査し、燃
料に関する密輸および汚職を止めさせること、ならびに、Pertamina の大改革を行うことが
提案されている。
Petral については、その事業を一時的に中止させ、監査を行うこと、また、今後は原油と
石油製品の購入は Pertamina がインドネシアで行うことになることが謳われている。Petral
は 2009 年に Pertamina 傘下の商社として設立され、インドネシア産および外国産の原油お
よび石油製品をアジア太平洋地域の他、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカなどにお
ける主な市場で取引している。政府当局者によると、インドネシアの燃料の 5%が近隣諸国
(主にシンガポールとマレーシア)に密輸されている。例えば、9 月初めには Pertamina の
社員を含む 4 人の関係者が 5 年間に亘り数百万ドルに及ぶ燃料を密輸した、という件で逮
捕された。
Pertamina については、同社が経営能力および人的資源を改善するために、また、政治的
干渉を受けないようにするために、従来の国営株式会社から非上場株式会社に改組される
ことが謳われている。加えて、Pertamina は諸企業との間の石油・ガス関連契約の延長およ
び終了に係わる管理、輸送と生産の管理などを担当することになる、と言われている。因
みに、ジョコ大統領の任期中(2014~19 年)に期限が来る契約は、Exxon Mobil、Total、
PetroChina、Chevron などとの契約である。
147
以下の本文(9.1.2 の末尾まで)は次による――“UPDATE 2-Indonesia's Widodo unveils energy action plan, to
halt Petral oil trading,” September 23, 2014
(http://uk.reuters.com/article/2014/09/23/indonesia-oil-idUKL3N0RN4OO20140923); “Joko ‘Jokowi’ Widodo to
Reform Indonesian Energy Sector,” September 23, 2014
(http://www.indonesia-investments.com/news/todays-headlines/item26); ”Jokowi-JK to Overcome Electricity
Crisis by Utilizing Coal,” SEPTEMBER 24, 2014
(http://www.thepresidentpost.com/2014/09/24/jokowi-jk-to-overcome-electricity-crisis-by-utilizing-coal/)
- 184 -
次に、PLN については、各支部が自主的な力を発揮することができるように、その組織
構造を再構成することが謳われているが、それは、各地域の電力問題は PLN 本部によって
解決される必要はなく、地方政府も参加して、電力危機に対処することが望ましい、とい
う考え方によるものである。
第 2 に、電力供給の拡大に関しては、まず、インドネシアは現在、電力危機に直面して
おり、今後 5 年間、電力の供給予備率は 14~26%しかないが、最低でも 30%は必要である、
という現状認識が示される。
次に、電力危機に対処するために、次のような提案がなされた。

石炭、特に低品位炭の利用の拡大を図る。それが地域経済の公平な開発の活性化に
寄与する。

エネルギー集約産業はその工場を South Sumatra、Bengkulu、Kalimantan など、発電
所が集中している工業団地に再配置すべきである。
なお、この案では、発電所向け石炭供給を確保するために、石炭の輸出を削減すること
も謳われているが、これらについては、石炭輸出の削減量を含め、詳細な説明はなされて
いない。
9.2.2 エネルギー関連人事および政策の発表
新政権は、2014 年 10 月 20 日の大統領就任式以降、次のように、エネルギー関連の人事
および政策をかなり矢継ぎ早に打ち出した。ただし、そこには、エネルギーおよび石炭に
関するまとまった政策は含まれていない。
2014 年 10 月 20 日:MEMR 大臣にスディルマン・サイド(Sudirman Said)が就任する。
2014 年 11 月 4 日:MEMR 大臣は石油ガス総局長エディ・ヘルマントロ氏更迭した。更
迭の理由は国内の石油ガス事業を遅滞させたことである148。
2014 年 11 月 16 日:MEMR 大臣は Committee for Oil and Gas Management Reform 委員長
に Faisal Basri を指名する149。
2014 年 11 月 17 日:大統領が自ら深夜、翌 18 日からの燃料補助金の削減を発表する150。
2014 年 11 月 18 日:SKK Migas(MEMR の下部組織であり、石油・ガス産業の上流部門
の規制・監督を任務とする機関である)の長に Amien Sunaryadi が
148
「インドネシア新政権の石油ガス部門動向」
、
平成 26 年度第 8 回海外石油天然ガス動向ブリーフィング、
2014 年 11 月 21 日(http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/5/5411/1411_b01_takahashi_id.pdf)
149
“Faisal Basri Appointed as Oil, Gas Mafia Eradication Team Chief,” NOVEMBER 17, 2014
(http://en.tempo.co/read/news/2014/11/17/055622389/Faisal-Basri-Appointed-as-Oil-Gas-Mafia-Eradication-TeamChief)
150
“Jokowi Takes On the Oil Mafia,” November 19, 2014
(http://www.asiasentinel.com/politics/jokowi-takes-oil-mafia/)
- 185 -
任命される。この任命は石油・ガス関係マフィアの排除に繋がって
いる151。
2014 年 11 月 28 日:Pertamina 総裁に PT Semen Indonesia の社長、Dwi Soetjipto が任命さ
れる152。
2015 年 1 月 1 日:燃料補助金の撤廃が発表される。
2015 年 1 月 25 日:Petral の CEO が解任される153。
9.2.3 MEMR 新大臣の就任と石油・ガス関係マフィア調査の開始
MEMR 大臣に就任したスディルマン・サイドは、次の経歴に見られる通り、
「清廉」で
あることで知られるとともに、経営手腕を有し、さらに、石油・ガス関係フィアの排除の
経験を持つ人物である。
‐汚職撲滅を目指す市民団体(Indonesian Transparency Society:MTI)の設立に参加し
たが、
MTI は政府機関である汚職撲滅委員会(Corruption Eradication Commission:KPK)
のモデルになった組織である。また、アチェ・ニアス復興再建庁の副長官を務めた時
には、汚職疑惑のあった競争入札事業を中止させた実績を有している。
‐国有武器製造企業の社長を務め、経営手腕を持っている。
‐2006~2008 年の Pertamina 勤務時には、燃料輸入の利権を排除することを目的とした
「統合サプライチェーン」担当の総裁補佐を務めたので、石油・ガス分野における知
見を有するのみならず、石油・ガス関係マフィア排除の経験も持っている154。
ところで、石油マフィアと呼ばれるのは、次のような人達を指す、と言われている 155。
‐インドネシアで最も力のある政治家達に近い影の集団である。
‐インドネシアで最も力のある一族や政治家集団も含まれている。
‐ゴルカル党および民主主義者党の党員とともに、ジョコ大統領の属している闘争民主
党(PDIP)の党員(総裁のメガワティの親戚も)も含まれている。
また、石油・ガス関係マフィアは補助金を受けた燃料を国際価格で販売することによっ
て大きな利益を生んでいること、特に、上述(9.2.2)の通り、MEMR の下部組織である
151
“Jokowi appoints former KPK official to lead SKK Migas,” The Jakarta Post, November 19 2014
(http://www.thejakartapost.com/news/2014/11/19/jokowi-appoints-former-kpk-official-lead-skkmigas.html-0);
http://australiaindonesiacentre.org/jokowis-indonesia-a-new-sheriff-in-town/;
http://en.voi.co.id/voi-news/7861-oil-and-gas-team-prepares-to-wipe-out-mafia-practices
152
“UPDATE 1-Indonesia overhauls oil giant Pertamina, moves to clean up sector,” November 28, 2014
(http://www.reuters.com/article/2014/11/28/indonesia-energy-pertamina-idUSL3N0TI2WP20141128)
153
「インドネシア国営プルタミナ、石油商社ペトラルの CEO 解任」
(http://www.morningstar.co.jp/msnews/news;jsessionid=F824C103DEA53505106F213B5BA16E49?rncNo=14976
02&newsType=emerging)
154
「インドネシア新政権の石油ガス部門動向」
、
平成 26 年度第 8 回海外石油天然ガス動向ブリーフィング、
2014 年 11 月 21 日(http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/5/5411/1411_b01_takahashi_id.pdf)による。
155
“Jokowi Takes On the Oil Mafia,” NOVEMBER 19, 2014
(http://www.asiasentinel.com/politics/jokowi-takes-oil-mafia/)
- 186 -
SKK Migas は、石油・ガス産業の上流部門の規制・監督を任務としており、マフィアの巣
であることなどが指摘されている156。
一方、MEMR 大臣が Committee for Oil and Gas Management Reform の責任者に指名した
Faisal Basri は現在、大学の教員であり、以前、ジャカルタ知事の候補者になったことがあ
る。彼がこの仕事を引き受けた時、友人たちに用心するよう警告されたが、それに対して、
ジョコ大統領が大統領として勇敢であるならば、私も恐れるものはない、と語っている157。
ジョコ大統領選挙対策グループのメンバーだった Erwin Usman(Indonesian Mining and
Energy Studies 専務理事)によると、ジョコ大統領は、彼の大統領職における目標の 1 つは
インドネシアにおける各種の事業関係マフィア、特に石油・ガス関係マフィアと闘うこと
である、と語っていた158。
この Committee の役割は、第 1 にインドネシアの石油・ガス産業からマフィアを排除す
ること、そのために、第 2 に同産業に関する全ての許認可制度を改正すること、第 3 に同
産業に関する規制・監督機関、特に SKK Migas を改造すること、そのためにも、第 4 に石
油・ガス法の改正を行うことにある、と言われている159。
しかし、この Committee が大統領ではなく MEMR 大臣に対して報告することになって
いること、その勧告を実施する権限を持っていないこと、その活動期間が 6 ヵ月に過ぎな
いことなどの理由から、すでにその成果に疑問が出されていること160は注目される。
なお、上記の KPK も 2015 年にエネルギー産業(石油・ガス関係のマフィアを含む)に
関して掘り下げた調査を実施することになっている。その中で KPK は Pertamina、Petral、
その他の関係機関の調査を行うに当たって、これまでで初めてのことであるが、税務当局、
警察、その他の当局と協力することを計画している。KPK は 2014 年に鉱業部門に対する同
種の監査を行って、鉱業企業数社による 28.4 兆ルピア(23 億 3,000 万ドル)の納税上の不
156
“Govt Establishes a Dedicated Team to Eradicate Oil and Gas Mafia,” November 20, 2014
(http://en.hukumonline.com/pages/lt546dbc67ef4c8/govt-establishes-a-dedicated-team-to-eradicate-oil-and-gas-maf
ia)
157
”Indonesia Targets Pertamina Oil Trading in Industry Clean-Up,” December 5, 2014
(http://www.bloomberg.com/news/articles/2014-12-05/indonesia-targets-pertamina-trading-in-energy-industry-clea
n-up)
158
“The Oil and Gas Mafia is Stealing $4.2 Billion From Indonesia Every Year,” September 22, 2014
(http://jakarta.coconuts.co/2014/09/22/oil-and-gas-mafia-stealing-42-billion-indonesia-every-year)
159
“Govt Establishes a Dedicated Team to Eradicate Oil and Gas Mafia,” November 20, 2014
(http://en.hukumonline.com/pages/lt546dbc67ef4c8/govt-establishes-a-dedicated-team-to-eradicate-oil-and-gas-maf
ia)
160
”Energy Minister’s ‘Anti-Mafia’ Group Has No Teeth,” November 18, 2014
(http://thejakartaglobe.beritasatu.com/business/energy-ministers-anti-mafia-group-teeth/),“[Mafia Migas] Jokowi
Has Key for Eradication of Indonesian Oil and Gas Mafia?,” November 28, 2014
(http://www.globalindonesianvoices.com/17658/mafia-migas-jokowi-has-key-for-eradication-of-indonesian-oil-and
-gas-mafia/)
- 187 -
正行為を暴き出しており、4,000 件以上の鉱業許可の取り消しを含む大規模な改革の引き金
を引いた161。
次に、SKK Migas は、石油・ガス産業の上流部門の規制・監督を任務とする機関であり、
2012 年に解散した BP Migas の跡を継いだ。2012 年 11 月、インドネシアの憲法裁判所は
BP Migas の解散を命じたが、その理由は、BP Migas の設立、法的地位などがインドネシア
憲法(国家が国民を最大限に繁栄させるために、天然資源を管理し、利用することを定め
ている)に違反していることにあった。2013 年 2 月、その BP Migas の職務を引き継ぐた
めに、新石油法が公布されるまでの暫定的な機関として設立されたのが「石油・ガス上流
事業活動のための特別タスクフォース」
(Special Task Force for Upstream Oil and Gas Business
Activities:SKK Migas)である162。
9.2.2 で述べた通り、
2014 年 11 月に SKK Migas の長に任命された Sunaryadi Amien は Ernst
and Young Indonesia のパートナーであり、また、2002 年に KPK が設立された際には、設立
後に委員長になった Taufikurahman Ruki、同委員の Erry Riyana Hardjapamekas などとともに
その設立に尽力し、副委員長に就任した、という経歴を持つ。SKK Migas は特にここ数年、
そのイメージを落としていた。例えば、Amien の前任者になる Rudi Rubiandini は 2013 年 8
月、収賄の容疑で逮捕され、2014 年 4 月に 7 年の刑を宣告されている163。
9.2.4 燃料補助金の撤廃
2014 年 11 月 18 日、レギュラー・ガソリンとディーゼル燃料油がリッター当り 2,000 ル
ピア(16 セント)値上げされた。レギュラー・ガソリンは 6,500 ルピアから 8,500 ルピア
へ、ディーゼル燃料油は 5,500 ルピアから 7,500 ルピアへ、それぞれ 31%、36%の値上
げであり、これにより、政府の税収入は 2015 年に 120 兆ルピア増大する見込みである164。
161
“UPDATE 2-Indonesia's graft watchdog to target energy sector in 2015,” November 27, 2014
(http://www.reuters.com/article/2014/11/27/indonesia-energy-corruption-idUSL3N0TH29Z20141127)
162
”Oil Regulator in Indonesia Arrested in Bribery Investigation,” August 14, 2013
(http://www.nytimes.com/2013/08/15/business/energy-environment/oil-regulator-in-indonesia-arrested-in-bribery-in
vestigation.html?_r=0); “Indonesia: After BP Migas has been Disbanded, the Government Establishes SKK Migas,”
February 27, 2013
(http://www.mondaq.com/x/222310/Oil+Gas+Electricity/After+BP+Migas+has+been+Disbanded+the+Government+
Establishes+SKK+Migas)
163
”Amien Sunaryadi: Contractors had to pay fees right from the start,” January 13, 2015
(http://en.tempo.co/read/news/2015/01/13/241634634/Amien-Sunaryadi-Contractors-had-to-pay-fees-right-from-th
e-start); “Jokowi appoints former KPK official to lead SKK Migas,” November 19 2014
(http://www.thejakartapost.com/news/2014/11/19/jokowi-appoints-former-kpk-official-lead-skkmigas.html-0);
“President Widodo Seeks to Energize Indonesia's Moribund Oil, Gas Industry,” December 22, 2014
(http://www.rigzone.com/news/article_pf.asp?a_id=136343)
164
“Indonesian president abolishes fuel subsidy,” January 15, 2015
(http://www.wsws.org/en/articles/2015/01/15/indo-j15.html); 「2 ヵ国で実施された燃料補助金削減の意味」
、
大和総研、2014 年 12 月 1 日; “Emerging markets 2015: reason for optimism in Indonesia,” January 2, 2015
(http://www.pv-magazine.com/news/details/beitrag/emerging-markets-2015--reason-for-optimism-in-indonesia_100
017644/#axzz3R1fk8IRW)
- 188 -
さらに、2015 年 1 月 1 日、レギュラー・ガソリンの補助金が撤廃された。ただし、公共
輸送機関および漁業者によって使われるディーゼル燃料油には、リッター当り 1,000 ルピ
アの補助金が残されることになった165。
しかし、最近、原油価格が下がっていることを反映して、レギュラー・ガソリンの価格
は 12 月の 8,500 ルピアから 1 月には 7,600 ルピアへ、また、ディーゼル燃料油は 12 月の
7,500 ルピアから 1 月には 7,250 ルピアへ、それぞれ低下した。今後、政府はこれらの価格
を月毎に発表する予定であり、価格は国際価格に沿って変動することになる166。
このようにして、燃料補助金の減額および撤廃の恩恵は直接的には、当面、車を持つ中
産階層に届くということになった167。補助金撤廃に対する真の試練は原油価格が上がり始
めた時にやって来る。その時には、補助金の再導入の要求が出てくる恐れもある。例えば、
1998 年のスハルト退陣は燃料値上げに対する反対によると言われている168。
さらに、これら 2 回に亘る決定の結果、補助金の節約額は 200 兆ルピアに上るであろう
と見込まれている。大統領は保健、教育、インフラなどへの支出を増やすこと、また、財
政赤字を GDP の 3%以下から 2%以下に減らすことを望んでいる、と見られている169。因み
に、2014 年における燃料補助金は 250 兆ルピア(196 億ドル)で、国家予算の 15%を占め
ており170、また、2014 年 9 月に国会に提出された 2015 年予算案では、燃料補助金は 220 億
ドル、政府支出の 19.8%を占めていた171。
なお、2009~2013年にインドネシアは燃料補助金として714兆ルピア以上を支出したが、
これはインフラおよび社会福祉計画を合わせた支出より大きかった。2015年にはこの補助
金が全政府支出の10%を上回る恐れがあった172。
165
”Government of Indonesia Cuts Prices of Low-Octane Gasoline and Diesel,” January 14, 2015
(http://www.indonesia-investments.com/news/todays-headlines/government-of-indonesia-cuts-prices-of-low-octane-g
asoline-and-diesel/item5227); “Indonesia’s economy: A good scrap,” The Economist, January 10, 2015
166
“Indonesian president abolishes fuel subsidy,” January 15, 2015
(http://www.wsws.org/en/articles/2015/01/15/indo-j15.html); “Widodo Makes Biggest Change to Indonesia Fuel
Subsidies: Economy,” December 31, 2014
(http://www.bloomberg.com/news/articles/2014-12-31/widodo-makes-biggest-change-to-indonesias-fuel-subsidy-sy
stem)
167
“Indonesia’s economy: A good scrap,” The Economist, January 10, 2015
168
“Scrapping of fuel subsidies a landmark and boost for Indonesia,” January 6, 2015
(http://www.reuters.com/article/2015/01/06/indonesia-economy-subsidies-idUSL3N0UH0MD20150106)
169
“Indonesia’s economy: A good scrap,” The Economist, January 10, 2015;
170
“Indonesian president abolishes fuel subsidy,” January 15, 2015
(http://www.wsws.org/en/articles/2015/01/15/indo-j15.html)
171
“Scrapping of fuel subsidies a landmark and boost for Indonesia,” January 6, 2015
(http://www.reuters.com/article/2015/01/06/indonesia-economy-subsidies-idUSL3N0UH0MD20150106)
172
“Energy prices in Indonesia: Fuel’s errand,” The Economist, November 22, 2014
- 189 -
このように、インドネシアでは、燃料補助金は極めて大きく、2011 年の数字であるが、
それが GDP に占める割合は、社会的移転(社会保険、社会扶助、児童手当など)が GDP
に占める割合を大きく超えている(下図参照)。ただし、前者がインドネシアより大きい
国は、サウジ・アラビア、エジプト、エクアドル、イエメン、キルギスタンなどかなり多
い173。
(出所)“Indonesia’s antipoverty plans: Full of promise,” The Economist, January 10, 2015
図 9.2.1 燃料補助金と「社会的移転」の対 GDP 比(インドネシアと 9 ヵ国)
173
“Indonesia’s antipoverty plans: Full of promise,” The Economist, January 10, 2015
- 190 -
9.3 新政権が打ち出すと見られる政策
9.3.1 国家中期開発計画(RPJMN)とエネルギー政策
(1) 国家中期開発計画(RPJMN)
インドネシアでは、中央および地方の中長期開発計画および年次開発計画の法的根拠は、
国家開発計画システム法(2004 年法律第 25 号)である。中央政府の計画としては、20 年
間の国家長期開発計画(RPJPN)
、5 年間の国家中期開発計画(RPJMN)、および年次開発
計画がある。大統領の任期と計画サイクルは同じであり、5 年毎に新政府は国家中期開発
計画を作成して、長期の国家長期開発計画の枠組み内で新たなプライオリティを設定する
ことになる174。
国家開発庁は国家中期開発計画(RPJMN;2015~2019 年)を取りまとめつつある。伝え
られるところによると、その内容は以下の通りである。
まず、総事業費は 5,500 兆ルピア程度であり、出力合計 3,500 万 KW の発電所の建設の
他、24 の港湾、15 の空港ならびに 1,000km 高速道路の建設、さらに鉄道の 8,700km の延
伸を行う。これらの財源確保のために、上に述べた燃料補助金や電気への補助金を削減す
る。
なお、この金額のうち、40%は政府、20%は国有企業、10%は地方政府、さらに 30%は
民間部門が負担する、と見込まれている175。
次に、民間企業の投資を容易にするために、複数の省庁に分散している投資認可の権限
を投資調整庁に集約するとともに、開発計画、投資認可などの中央集権化を行い、例えば
インフラ開発を担当する国家開発庁を、従来の経済担当調整相の傘下から大統領直属にす
る。
2014 年末頃まで、この計画は 2015 年 1 月中には取りまとめが終わる、と伝えられてい
たが、投資認可の権限の集約化(
「ワンストップ・サービス」と称する)は 1 月中に開始
されたものの、特に上記のような建設計画の正式な取りまとめの結果は明らかになってい
ない(2015 年 2 月中旬現在)
。
174
政策研究大学院大学(GRIPS)開発フォーラム「インドネシア調査報告」
、2014 年 7 月 28 日
(http://www.grips.ac.jp/forum/af-growth/support_ethiopia/document/2014.06_IDN/WEB_Indonesia_J.pdf)以下の
脚注では、政策研究大学院大学と略す。
175
“Infrastructure: Threats and opportunities,” January 15 2015
(http://m.thejakartapost.com/news/2015/01/15/infrastructure-threats-and-opportunities.html)以下の脚注では
JakartaPost(150115)と略す。
- 191 -
国家中期開発計画(RPJMN)は、新大統領が就任する 10 月から 3 ヵ月以内に、大統領
規則によって発効させることになっている176。このような規定、さらに他の情報177から、
RPJMN の取りまとめはすでに終わっている、と推察される。
なお、2019 年までに 3,500 万 KW の発電設備を新たに建設する、という上述の新政権の
計画については、後に詳しく述べる通り、用地の取得が難しいこと、その他の事情から、
完全に遂行することは不可能ではないか、という疑問が出されている。ただし、検討中の
新しい土地取得法が施行されると、これまで建設が大きく遅れていた発電所――例えば
Adaro Energy と日本の J パワーおよび伊藤忠による 40 億ドルの発電所建設計画――には道
が開ける、という見方もある178。
(2) エネルギー政策
①
石油・ガス
スディルマン新大臣の政策方針の中には、上述の他に次のものも含まれている。
MEMR の信頼回復
上述の通り、2013 年に MEMR 傘下の SKK Migas 長官が収賄容疑で逮捕され、服役中
であること、2014 年 9 月にジェロ・ワチック MEMR 大臣が職権乱用の疑いで容疑者に
認定されていることなどから、同省の信頼を回復することが必要である。
許認可制度の改革
許認可窓口の一元化し、内務省管轄の地方自治体との協議を行い、投資促進を目指す
こと、また、上流部門における現在 289 の許認可項目を 69 まで簡素化すること。
石油・ガス法の改正
改正案を作成中であり、早急に国会に上程することになっている。
石油の増産
ただし、当局者に中には、ユドヨノ前政権が定めた 2015 年の生産量目標 90 万 B/D
は非現実的であり、84.5 万 B/D が現実的である、との指摘もある。
②
石炭
上述の通り、ジョコ大統領の政権移行チームは 2014 年 9 月、エネルギーに関する政策
176
政策研究大学院大学
JakartaPost(150115)
178
“Adaro Energy to Contribute 40 Percent of Government’s Power Plant Quota,” November 24, 2014
(http://www.adaro.com/adaro-energy-contribute-40-percent-governments-power-plant-quota/),“Indonesia Looks to
Lure Investors,” Dow Jones Business News, December 10, 2014
(http://www.nasdaq.com/article/indonesia-looks-to-lure-investors--update-20141210-00034)
177
- 192 -
案を発表し、その中で、石炭の輸出を削減し、発電所向け石炭供給を確保することを謳っ
ている。ただし、この政策については、その後も含めて、何ら詳しいことは発表されてお
らず、しかも、その他の政策についても、何らの発表はない。
石炭輸出の削減と発電所向け石炭供給の確保という政策には、国内向けの生産量を含む
全生産量、輸出量、発電所の需要量などの動向が係わり、しかも、将来のどの程度の期間
について政策を検討するか、という問題も係わってくる。
ここでは、短期的な問題のみを考えるとしても、上述の通り、2015 年の石炭生産量に関
しては、2014 年 8 月から同年 12 月にかけて「規制措置を採る」から「増産する」へと政
府の見解は変化しているように見える。一方、石炭業界は石炭価格の安定に向けて、政府
が生産削減に踏み切ることを要望している。しかも、石炭の不正な生産や輸出が行われて
いるため、生産量、輸出量などの統計を正確に把握することが難しい、という事情もある。
さらに、中期的な問題としては、国家開発計画に盛り込まれる見込みの発電所建設の目標
を達成することは、用地取得の難しさから難しいであろう、とも見られている。
これら多くの変数を前提にしつつ、石炭輸出の削減と発電所向け石炭供給の確保という
政策が、どのような内容で打ち出されるか、極めて注目されるところである。
その他の政策に関しては、僅かに鉱業・石炭部門の企業に対する政府の姿勢に関しての
みではあるが、以下のように、従来に比して「宥和的」になるであろう、という予想が新
政権発足前に行われているので、参考までに紹介しておく。
ジョコ大統領の政策アドバイザーであるWijayanto Samirin は次のように述べていた179。

鉱産物への輸出税のような措置は厳しすぎる。鉱業企業が現在のエネルギーの高コ
ストと商品価格の世界的な低迷の下で、事業を維持していくことは容易ではない。

われわれの前に横たわっている問題は、政府収入の引き上げと外国直接投資の誘引
との間の利害対立であり、これまでのところ、この対立では前者が優勢であるよう
に見える。

政府は、全ての関係者にとって「ウイン‐ウイン」の解決が見られるように、事業
関係者を政策形成過程に参加させるべきである。
上の見方よりやや慎重ではあるものの、政策についてより具体的に述べたものもある
(Wood Mackenzie)180。
179
“Jokowi gives foreign miners a glimmer of hope,” FinanceAsia, July 28, 2014
(http://www.financeasia.com/News/388977,jokowi-gives-foreign-miners-a-glimmer-of-hope.aspx)
180
“INDONESIA: Election of Widodo as President could trigger US$30 billion in new foreign investment in
- 193 -

ジョコ大統領の勝利は短期的には、インドネシアのエネルギー・鉱業部門への投資
を考えている外国企業にとってプラスの感情を惹き起こすであろう。しかし、長期
的には、新政権は、議会上院で改革を実行するために必要な多数勢力を持っていな
いことから、企業や投資にとって友好的な経済状況を作り出せるかどうか、疑問が
残る。

鉱業に対して友好的な規制変更は行なわれる可能性があるが、それは急激なもので
はなく、漸進的なものであり、しかも、鉱産物輸出の禁止、外国資本の持株移譲、
石炭契約の再交渉などの現行政策には、変化はないように思われる。
③ 電力
すでに述べた通り、新政権は国家開発中期計画の中で、2019 年までに 3,500 万 KW の発
電設備を新設することを盛り込む、と見込まれている。そして、3,500 MW のうち 2,000 万
KW は IPP によって建設される必要があると見られており、例えば Adaro Power はその約
20%、約 700 万 KW の建設を計画している181。
しかし、この計画の達成可能性については、疑問の声がかなり多く、その理由としては、
用地の取得、資金調達、ならびに許・認可手続きが挙げられている。同時に、実力のある
コントラクターを見つけることの難しさも指摘されている182。
これらのうち、専門家によると、最大の障害は用地の取得である。PLN 総裁の Nur Pamudji
によると、今後 5 年間に PLN は 140 の新しいサイトが必要であり、各発電所には 50~200
ヘクタールの土地が必要であるが、用地の取得は住民の反対から非常に難しい。例えば、
Adaro Energy と日本の J パワーおよび伊藤忠が Batang に発電所を建設する計画では、土地
取得の遅れから、当初の計画では、2012 年に建設が始まり、2016 年末に運転開始の予定で
あったが、2014 年 11 月末現在、運転開始は早くとも 2019 年であろうと予想されている。
次に、資金に関しては、PLN の資金調達能力が問題とされている。MEMR 電力総局の
Jarman 総局長によると、3,500 万 KW の建設には 532 億ドルが必要であり、送・配電網も
含めると、総建設費は 776 億ドルに達するが、PLN の財務能力から判断して、IPP が大き
な役割を果たすことを期待している。一方、PLN 総裁は、PLN が担当する 1,500 万 KW の
建設には 225 億ドルが必要であり、そのためには借り入れが必要になるが、それには PLN
upstream oil and gas sector, says consultant,” July 25, 2014
(http://energyasia.com/blog/indonesia-election-widodo-president-trigger-us30-billion-new-foreign-investment-upstr
eam-oil-gas-sector-says-consultant/)
181
“Adaro Energy to Contribute 40 Percent of Government’s Power Plant Quota,” November 14, 2014
(http://www.adaro.com/adaro-energy-contribute-40-percent-governments-power-plant-quota/)
182
以下の本文(9.3.2 の前まで)は、次による―“Power up: Ambitious power projects face tough obstacles,” Oil,
Gas & Electricity, December 17~January 17; “Electricity In Indonesia Needs Not Just Funding But Land and
Licences,” November 27, 2014(http://www.establishmentpost.com/many-challenges-providing-electricity-indonesia/)
- 194 -
の信用度を引き上げる必要がある、と述べている。
さらに、許認可手続きに関しては、全ての許認可を受けるには 2 年以上かかることもあ
る、という意見の他、発電所建設には全部で 57 件の許認可が必要であり、土地の取得も
絡んで、全ての許認可を受けるためには、楽観的に見ても、3~4 年はかかるかもしれない、
という指摘さえある。そして、この点でも、上の 9.3.1(1)で述べた「ワンストップ・サービ
ス」の実施が期待されている。
政府は、これらの問題に関係のある諸機関の業務の調整を行うとともに、それらを乗り
越えるための方策を検討するために、タスクフォースを発足させている。
9.3.2 新政権による政策実行の可能性を占うための注意点
(1) 政策の実行可能性と「分割政府」の現実
新政権が、エネルギー・石炭政策に限らず、政権公約に掲げた政策案に沿って、新たな
政策を実際に打ち出すためには、次の 3 つの障害がある。第 1 は、新大統領が議会で多数
を持っていないことである。第 2 は、ジョコ大統領自らが所属する闘争民主党(PDIP)を
説得することの可能性である。第 3 は、新政権が船出した時期は、インドネシア経済の成
長が減速しつつあり、その見通しが明るくないことである183。以下では、主に第 1 について、
また補足的に第 2 について、述べる。
ジョコ大統領政権は「分割政府」の現実に直面せざるをえない、と見られている184。
「分
割政府」とは、大統領の出身政党と議会の多数派が異なる状態のことをいう。闘争民主党
の議席占有率は僅かに 20%、連立を組んだ 5 政党を合わせても 44%にすぎない(下図参
照)
。なお、ジョコ大統領を支持する勢力は議席の 37%しかない、という見方もある185。
183
“Joko, we’re not in Solo any more: Indonesia’s new president may find it lonely at the top,” The Economist,
October 18, 2014
184
以下の本文(このページの終わりまで)は主に次による――川村晃一「インドネシア:ジョコ・ウィド
ド新政権の発足——議会との対立を乗り越えられるか」
、2014 年 12 月
(http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/201412_kawamura.html)
185
“Indonesian politics: The empire strikes back,” The Economist, October 4, 2014
- 195 -
(出所)川村晃一「インドネシア:ジョコ・ウィドド新政権の発足——議会との対立を乗り越えられるか」
図 9.3.1 国民議会(DPR)の議席配分
このような状況では、ジョコ大統領が自らの政策を進めるために新たに法律を作ろうと
しても、議会の反対にあって立ち往生してしまうことが予想される。
インドネシアの政治制度では、1998 年にスハルト大統領が退陣するまで 40 年余り続いた
強権的な権威主義体制への反省から、大統領の権限が弱められ、議会の権限が強化された。
大統領は単独で法律を制定することはできず、政府提出の予算案の中には、議会による修
正を許さない項目はない。さらに、大統領には議会を解散する権限もない。つまり、政策
を遂行するための立法化が必要な際には、大統領は議会の同意を得るしか道がない。
しかも、政党政治家としての経験を持たないジョコ大統領は、出身政党の党首であるメ
ガワティ・スカルノプトゥリ元大統領(スカルノ初代大統領の長女)の意向をもうかがわ
なければならない。
そのような視点から、ジョコ大統領が大統領就任後、メガワティの側近で、その大統領
時代に警護官も務めた警察幹部の Budi Gunawan を次期警察庁長官の候補に指名したことが
注目を集めていた。
ところが、2014 年 1 月、Budi が汚職事件の容疑者であることを KPK が指摘したのに対し
て、その直後、KPK 幹部の数人が法を犯していることを警察当局が明らかにしたことから、
上記の指名は KPK と警察当局との間の争いに発展した186。事実、Budi は以前から汚職の噂
が絶えない人物であると見られていたようであるが、ジョコ大統領は警察庁長官人事を一
時凍結し、その間、この問題は法廷にも持ち込まれていた187。
186
“Indonesia's President Jokowi drops Budi Gunawan as police chief nominee,” February 18, 2015
(http://www.straitstimes.com/news/asia/south-east-asia/story/indonesias-president-jokowi-drops-budi-gunawan-po
lice-chief-nominee187
「インドネシア二重権力構造、どう打破…大統領就任 3 カ月」
、毎日新聞、2015 年 1 月 20 日
- 196 -
2014 年 2 月 18 日、ジョコ大統領は Budi の指名を撤回し、暫定的に警察庁長官を努めて
いた Badrodin Haiti を長官候補に指名する188と同時に、KPK の Abraham Samad 委員長と
Bambang Widjojanto 副委員長を解職する189、という決定を行うに至った。一方、闘争民主党
からは、Budi の指名撤回に対して、早速、批判的な声があがった190。
この事件は、いまだに全面的な決着を見たとは言い切れないかもしれず、そうであると
すると、単にジョコ大統領と闘争民主党との関係の問題にとどまらず、今後における石油・
ガス関係のマフィアに関する調査の進展、より広くは、下の(2)に述べる政治状況における
ジョコ大統領の政治的実行力などを占うためにも、注視していくことが必要である。
いずれにせよ、
「分割政府」
、弱い大統領、全会一致を原則とする議会審議、大統領と与
党党首の不一致などのインドネシアの制度的特徴を前提すると、ジョコ大統領が実行力を
もって政策を遂行することができるかどうかは、現象的には、議会との良好な関係を構築
できるかどうかにかかっている。
(2) インドネシアの政治状況
ジョコ大統領は2014年10月20日、インドネシアの第7代大統領に就任した。彼は、すでに
よく知られている通り、1998年におけるいわゆる民主化の後に登場した4人の前任者とは異
なる出自を有する191。
1998年、スハルトが31年に及ぶ大統領職を離れた時、跡を継いだ バハルディン・ユスフ・
ハビビ(Bacharuddin Jusuf Habibie)は、副大統領職を含め、政府における役職を約20年に亘
って務めていた。次に、1999年にハビビの跡を継いだアブドゥルラフマン・ワヒド
(Abdurrahman Wahid)は、スハルト治世下で、祖父が設立したインドネシア最大のムスリ
ム組織を率いていた。
さらに、2001年に大統領に就任したメガワティ・スティアワティ・スカルノプトゥリ
(http://mainichi.jp/select/news/20150121k0000m030093000c.html); “Widodo reform agenda caught in turf war
crossfire between police and graft agency,” February 2, 2015
(http://www.themalaymailonline.com/money/article/widodo-reform-agenda-caught-in-turf-war-crossfire-betweenpolice-and-graft); その他
188
“Jokowi Drops Budi Gunawan’s Nomination as National Police Chief,” February 18, 2015
(http://thejakartaglobe.beritasatu.com/news/breaking-joko-drops-budi-gunawans-nomination-national-police-chief/)
189
“Indonesia's President Jokowi drops Budi Gunawan as police chief nominee,” February 18, 2015
(http://www.straitstimes.com/news/asia/south-east-asia/story/indonesias-president-jokowi-drops-budi-gunawan-poli
ce-chief-nominee-)
190
“Jokowi Drops Budi Gunawan’s Nomination as National Police Chief,” February 18, 2015
(http://thejakartaglobe.beritasatu.com/news/breaking-joko-drops-budi-gunawans-nomination-national-police-chief/)
191
このパラグラフを含め、以下の 5 つのパラグラフは次による――“Asia: Indonesia’s fresh start,” The
Economist, November 20, 2014; 見市建『新興大国インドネシアの宗教市場と政治』
、2014 年 12 月、164~174
ページ(以下の脚注では、見市建(2014)と略す); その他
- 197 -
(Megawati Sukarnoputri)は、スハルトがその跡を継いだ初代大統領 スカルノの娘であり、
国会議員、副大統領、そして闘争民主党の党首であった。その後、2004年から2014年まで
大統領職にあったスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)は、スハルト
が率いた軍の将軍であり、国会議員であった。
ジョコ大統領はこれら前任者とは対照的に、軍に属したことも、国会に籍を置いたこと
もない。1961年に大工の長男として生まれた彼は、竹で作った質素な家を転々としたが、
叔父の援助を得てインドネシア有数の国立大学であるガジャマダ大学の森林学部で学び、
その後、家具商として成功した。
インドネシア家具協会のソロ支部長になっていたこと、また、福祉正義党からの勧誘が
あったことから、ソロ市長選に立候補して当選し、注目を集める政策を打ち出して、大衆
の支持を獲得した。2012年のジャカルタ州知事選における候補者探し調査で、その名前が
浮上したジョコ大統領は、ユスフ・カラ前副大統領、その他の超党派の有力者の支持を得
て立候補し、決選投票の結果、ジャカルタ州知事に当選した。
ところで、インドネシアの政治に関しては、1998 年における民主化の後に登場した新し
い政治家がインドネシアの政治を変えられるか、という問題を巡って、従来、次のような
2 つの見方があった192。
その 1 つは「寡頭制支配(オリガーキー)論」であり、民主化後も少数の政・財界のエ
リートによる支配が続いている、という見方である。それによると、1998 年の民主主義へ
の移行は、同時に、スハルト大統領を頂点とする「スルタン的オリガーキー」から「支配
オリガーキー」への移行であった。つまり、この見方では、民主化の後も、政治的舞台を
独占することができるのは、巨万の富を持つオリガークと国家から資源を搾り取ることが
できるエリートだけである、と考えられている。
もう 1 つは「カルテル論」である。これによると、ユドヨノの民主主義者党や都市部の
イスラム主義運動を背景とする福祉正義党のように、国民の高い支持を受けた新しい政治
プレーヤーが、改革の期待を帯びて登場したものの、選挙制度の制約から、母体となる政
党は常に少数与党であり、その結果、大連立を組むことによって、政党間のカルテルが形
成され、その強固なカルテルに取り込まれてしまい、国民の選択は、結局、政治に反映さ
れない。
192
このパラグラフを含め、以下の 4 つのパラグラフは次による――見市建(2014)
、10、28~29、180~192
ページ
- 198 -
しかし、ジョコ大統領の登場を可能にしたのは、より自由な競争が可能になった政治状
況であり、それを可能にしたのは民主化と情報化の進展であったこと、そして、そこでは
中間層の拡大が続いてきたことが指摘されている。
このように見てくると、新政権が「政権公約」で示した諸政策、ならびに、これから打
ち出すと予想される諸政策(いずれもエネルギー・石炭政策を含む)を遂行することがで
きるかどうかを占うためには、構造的には、上に述べた「寡頭制支配(オリガーキー)論」
や「カルテル論」に代表されるインドネシアの政治状況が変化することを確認しつつ、現
象的には、新政権がどのようにして議会との関係を構築していくか、を注視していくこと
が肝要である、と考えられる。
- 199 -
第Ⅲ部
石炭の需給および輸出の見通し
第 10 章 インドネシア政府の最新のエネルギー需給見通し
10.1 将来予測の前提条件
2014 年 12 月、インドネシア国家エネルギー委員会は「Indonesian Energy Outlook 2014」
を公表した。この Outlook では、2013 年を基準年193として、2050 年までのインドネシアの
エネルギー需要を予測している。また、インドネシアの化石燃料の需給バランスの改善、
化石燃料の消費削減、再生可能エネルギーの利用促進なども目的としている。将来予測で
は、BAU シナリオ(Business as usual case)と国家エネルギー政策シナリオ(KEN)の 2 つ
のシナリオが設定されている。なお、国家エネルギー政策シナリオについては、本報告書
の第 6 章でも簡単に触れたため、本章では BAU シナリオを中心に説明し、石炭の生産、国
内消費、輸出ポテンシャルについて重点的に纏める。
また、この予測では、人口、国内総生産(GDP)
、都市化率、電化率などの前提条件をそ
れぞれ表 10.1.1 の通り仮定している。
表 10.1.1 インドネシア政府による将来予測の前提条件
指標
単位
2015
2020
2025
2030
2040
2050
人口
百万
255
271
284
296
314
335
伸び率
GDP (2000 price)
%
billion USD
1.4
1.2
0.9
0.8
0.6
0.6
386
567
832
1,206
2,452
4,349
年平均成長率
一人当たりGDP
%
7.7
8.0
8.0
7.7
7.4
5.9
1,514
2,089
2,928
4,080
7,796
13,000
都市化率
%
電化率
%
USD
64
70
100
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
193
この予測における 2013 年実績値はインドネシアエネルギー鉱物資源省の「Energy Handbook」の統計値
と異なる。
- 200 -
10.2 最終エネルギー消費に関する予測
10.2.1 エネルギー源別の最終消費
予測結果を見ると、最終エネルギー消費は、2030 年に約 3.8 億 toe、2050 年に 8.9 億 toe
になり、2013 年の 1.7 億 toe よりそれぞれ 2.1 億 toe と 7.2 億 toe 増加する。最終エネルギー
消費の年平均伸び率は、2013~2030 年は 4.9%、2030~2050 年は 4.4%となっている。
(表 10.2.1
参照)
エネルギー源別の最終消費では、石炭消費量は 2030 年に 6,430 万 toe となり、最終エネル
ギー消費量全体の 17%を占める。また、2030 年の石炭消費量は 2013 年の 1,830 万 toe より
4,600 万 toe 増加する。さらに、2030 年の最終エネルギー消費量は、石油消費量が圧倒的に
多く、1.6 億 toe(最終エネルギー消費量全体の 41.6%、以下同じ)で、2013 年の 7,010 万 toe
の 2.3 倍になる。その他燃料の 2030 年の最終エネルギー消費量は、天然ガスが 6,470 万 toe
(同 17.1%)で、2013 年の 2,480 万 toe の 2.6 倍になる。バイオマスは 1,680 万 toe(同 4.4%)
で、2013 年の 3,210 万 toe より 1,530 万 toe 減る。なお、2030 年の電力消費は 5,640 万 toe(同
14.9%)で、2013 年より 4,020 万 toe 増加すると予測されている。
百万toe
石炭
天然ガス
石油
電力
バイオ燃料
バイオマス
1,000
その他
893.5
900
740.9
800
700
602.2
600
482.5
500
378.8
400
298.5
234.7
300
200
168.6
100
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 10.2.1 エネルギー源別の最終消費に関する予測
また、2050 年の最終エネルギー消費を見ると、石炭消費量は約 1.8 億 toe に達し、2013
年の 1,830 万 toe の 9.6 倍増で、最終エネルギー消費に占める割合は 19.6%、2013~2050 年
の年平均伸び率は 6.3%になると予測されている。2050 年の石炭と関連する最終電力消費量
は 1.6 億 toe 強で、2013 年の 1,620 万 toe の約 10 倍、2030 年の 5,640 万 toe の約 3 倍に増え、
2013~2050 年の年平均伸び率は最も高い 6.5%になる。(以上、表 10.2.1 参照)
- 201 -
表 10.2.1 エネルギー源別の最終消費とその構成比率に関する予測
エネルギー源別
合計
石炭
天然ガス
石油
電力
バイオ燃料
バイオマス
その他
シェア(%)
石炭
ガス
石油
電力
バイオ燃料
バイオマス
その他
実績
2013
168.6
18.3
24.8
70.1
16.2
0.7
32.1
6.4
2020
234.7
30.8
37.8
100.5
28.9
1.2
25.7
9.8
2025
298.5
44.8
49.7
126.9
40.7
1.4
21.8
13.2
10.9
14.7
41.6
9.6
0.4
19.0
3.8
13.1
16.1
42.8
12.3
0.5
11.0
4.2
15.0
16.6
42.5
13.6
0.5
7.3
4.4
予測(百万toe)
2030
2035
378.8
482.5
64.3
91.5
64.7
83.7
157.5
193.8
56.4
77.8
1.7
2.0
16.8
11.5
17.3
22.3
17.0
17.1
41.6
14.9
0.5
4.4
4.6
19.0
17.3
40.2
16.1
0.4
2.4
4.6
2040
602.2
117.0
103.7
243.0
101.6
2.4
5.9
28.6
2045
740.9
145.6
126.0
299.7
131.0
2.8
0.0
35.8
19.4
17.2
40.4
16.9
0.4
1.0
4.7
19.7
17.0
40.5
17.7
0.4
0.0
4.8
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
893.5
4.9
4.4
4.6
175.3
7.7
5.1
6.3
147.4
5.8
4.2
4.9
359.9
4.9
4.2
4.5
164.3
7.6
5.5
6.5
3.3
5.4
3.3
4.3
0.0 ▲ 3.7 ▲ 100.0 ▲ 100.0
43.2
6.0
4.7
5.3
19.6
16.5
40.3
18.4
0.4
0.0
4.8
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
10.2.2 部門別の最終消費
工業部門の最終エネルギー消費は、2013 年は 5,120 万 toe で、消費全体に占める割合は
30.4%であるが、2030 年には 1.5 億 toe となり、シェアは 40%に拡大する。同様に 2013 年と
2030 年の最終エネルギー消費を産業ごとに見た場合、輸送業の年間消費は 4,620 億 toe
(27.4%)
から 1.1 億 toe
(28.6%)
に、
家庭部門は 4,610 万 toe
(27.4%)から 5,260 万 toe
(13.9%)
に、商業部門は 530 万 toe(3.2%)から 2,320 万 toe(6.1%)に、その他部門は 380 万 toe か
ら 840 万 toe(2.2%)に、非エネルギー部門は 1,590 万 toe から 3,470 万 toe(9.2%)に伸び
ると予測されている。
2050 年に関しては、工業部門の年間消費は 3.9 億 toe(最終エネルギー消費全体の 43.9%、
以下同じ)
、輸送業は 2.5 億 toe(同 27.5%)、家庭部門は 5,620 万 toe(同 6.3%)、商業部門
は 1.0 億 toe(同 11.4%)
、その他部門は 1,850 万 toe(同 2.1%)
、非エネルギー消費は 7,990
万 toe(同 8.9%)と予測される。
また、2013~2050 年の工業部門と商業部門の消費の年平均伸び率はそれぞれ 5.7%と 8.3%
で、最終エネルギー消費の年平均伸び率 4.6%を上回り、工業部門が最大のエネルギー消費
部門である。
- 202 -
百万toe
工業
輸送業
家庭
商業
その他
非エネルギー
1,000
893.5
900
740.9
800
700
602.2
600
482.5
500
378.8
400
298.5
234.6
300
200
168.6
100
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 10.2.2 部門別の最終エネルギー消費に関する予測
表 10.2.2 部門別の最終エネルギー消費とその構成比に関する予測
産業別
合計
工業
輸送業
家庭
商業
その他
非エネルギー
シェア(%)
工業
輸送業
家庭
商業
その他
非エネルギー
実績
2013
168.6
51.2
46.2
46.1
5.3
3.8
15.9
2020
234.6
80.4
68.6
48.8
9.8
5.2
21.9
2025
298.5
111.1
87.1
50.8
15.5
6.7
27.4
30.4
27.4
27.4
3.2
2.3
9.4
34.3
29.2
20.8
4.2
2.2
9.3
37.2
29.2
17.0
5.2
2.2
9.2
予測(百万toe)
2030
2035
378.8
482.5
151.5
204.5
108.4
134.4
52.6
54.2
23.2
35.1
8.4
10.5
34.7
43.9
40.0
28.6
13.9
6.1
2.2
9.2
42.4
27.8
11.2
7.3
2.2
9.1
2040
602.2
261.5
167.0
53.5
52.4
13.0
54.8
2045
740.9
325.5
204.9
52.7
74.8
15.7
67.2
43.4
27.7
8.9
8.7
2.2
9.1
43.9
27.7
7.1
10.1
2.1
9.1
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
893.5
4.9
4.4
4.6
391.9
6.6
4.9
5.7
245.5
5.1
4.2
4.6
56.2
0.8
0.3
0.5
101.5
9.0
7.7
8.3
18.5
4.8
4.0
4.4
79.9
4.7
4.3
4.5
43.9
27.5
6.3
11.4
2.1
8.9
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
10.2.3 部門別、エネルギー源別の消費
2030 年の工業部門の最終エネルギー消費のうち、石炭消費は 6,430 万 toe で、工業部門の
エネルギー消費全体の 42.4%を占める。天然ガス消費は 4,320 万 toe(工業部門のエネルギ
ー消費全体の 28.5%、以下同)
、石油消費は 1,000 万 toe(同 6.6%)
、電力消費は 1,740 万 toe
(同 11.5%)
、その他エネルギー消費は 1,660 万 toe(同 11.0%)である。
2050 年の工業部門の最終エネルギー消費のうち、石炭消費は 1.8 億 toe で、工業部門のエ
ネルギー消費全体の 44.7%を占める。天然ガス消費は 1.1 億 toe(工業部門のエネルギー消
費全体の 28.8%、以下同じ)
、石油消費は 1,680 万 toe(同 4.3%)
、電力消費は 4,600 万 toe(同
- 203 -
11.7%)
、その他消費は 4,090 万 toe(同 10.4%)である。
表 10.2.3 工業部門のエネルギー源別の需要とその構成比率に関する予測
工業部門、源別
合計
石炭
ガス
石油
電力
その他
シェア(%)
石炭
ガス
石油
電力
その他
実績
2013
51.2
18.3
14.2
7.1
5.5
6.2
2020
80.4
30.8
22.5
8.8
8.8
9.4
2025
111.1
44.8
31.4
9.8
12.4
12.7
35.7
27.7
13.8
10.7
12.0
38.3
28.0
10.9
11.0
11.7
40.3
28.3
8.8
11.2
11.4
予測(百万toe)
2030
2035
151.5
204.5
64.3
91.5
43.2
58.9
10.0
8.8
17.4
24.0
16.6
21.3
42.4
28.5
6.6
11.5
11.0
44.7
28.8
4.3
11.7
10.4
2040
261.5
117.0
75.3
11.2
30.7
27.3
2045
325.5
145.6
93.8
13.9
38.2
34.0
44.7
28.8
4.3
11.7
10.4
44.7
28.8
4.3
11.7
10.4
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
391.9
6.6
4.9
5.7
175.3
7.7
5.1
6.3
112.9
6.8
4.9
5.8
16.8
2.1
2.6
2.4
46.0
7.0
5.0
5.9
40.9
6.0
4.6
5.3
44.7
28.8
4.3
11.7
10.4
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
2013~2050 年の石炭消費の年平均伸び率は 6.3%で、工業部門のエネルギー消費全体の
5.7%より高い。また、電力消費の伸び率は 5.9%である。
工業部門以外の部門別、エネルギー源別の最終エネルギー消費については、輸送業のエ
ネルギー消費は石油が中心であり、2030 年の石油消費は 1 億 660 万 toe で、輸送業のエネル
ギー消費全体の 98.3%以上を占める。また、2050 年の石油消費は 2 億 4,200 万 toe で、輸送
業のエネルギー消費全体の 98.6%を占める。
家庭部門のエネルギー消費は電力が中心であり、2030 年の電力消費は 2,100 万 toe で全体
の 39.9 を占める。2050 年の電力消費は 3,350 万 toe で全体の 59.6%を占める。
商業部門のエネルギー消費は電力中心であり、2030 年の電力消費は 1,810 万 toe で、商業
部門のエネルギー消費全体の 78.0%であり、2050 年の電力消費は 8,480 万 toe で、商業部門
のエネルギー消費全体の 83.5%を占める。
その他部門のエネルギー消費は、石油製品のみであり、2030 年の石油消費は 840 万 toe
で、2040 年の石油製品消費は約 1,850 万 toe になる。
- 204 -
表 10.2.4 工業部門以外の部門別、エネルギー源別の需要とその構成比に関する予測
エネルギー源
輸送部門
ガス
石油
電力
バイオ燃料
シェア(%)
ガス
石油
電力
バイオ燃料
家庭部門
電力
ガス
石油
LPG
バイオマス
シェア(%)
電力
ガス
石油
LPG
バイオマス
商業部門
ガス
石油
電力
その他
シェア(%)
ガス
石油
電力
その他
その他
石油
非エネルギー
石油
ガス
実績
2013
46.2
0.1
45.5
0.0
0.7
2020
68.6
0.1
67.4
0.0
1.2
2025
87.1
0.1
85.6
0.0
1.4
予測(百万toe)
2030
2035
2040
108.4
134.4
167.0
0.1
0.1
0.2
106.6
132.3
164.4
0.0
0.0
0.0
1.7
2.0
2.4
2045
204.9
0.2
201.8
0.0
2.8
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
245.5
5.1
4.2
4.6
0.2
4.2
3.5
3.8
242.0
5.1
4.2
4.6
0.0
3.3
5.8
3.4
4.5
0.1
98.5
0.0
1.4
46.1
6.9
0.0
0.9
6.1
32.2
0.1
98.2
0.0
1.7
48.8
12.8
0.1
0.2
9.9
25.8
0.1
98.3
0.0
1.6
50.8
16.6
0.2
0.0
12.2
21.8
0.1
98.3
0.0
1.6
52.6
21.0
0.2
0.0
14.4
17.0
0.1
98.4
0.0
1.5
54.2
25.8
0.3
0.0
16.6
11.5
0.1
98.4
0.0
1.4
53.5
28.3
0.4
0.0
18.9
5.9
0.1
98.5
0.0
1.4
52.7
30.9
0.5
0.0
21.2
0.1
0.1
98.6
0.0
1.3
56.2
0.8
0.3
0.5
33.5
6.8
2.4
4.4
0.6
14.5
5.6
9.6
0.0 ▲ 100.0 ▲ 100.0
22.1
5.1
2.2
3.5
0.0 ▲ 3.7 ▲ 100.0 ▲ 100.0
15.0
0.0
2.0
13.3
69.7
5.3
0.4
0.9
3.8
0.2
26.3
0.2
0.4
20.3
52.8
9.8
0.7
1.5
7.3
0.3
32.7
0.4
0.0
24.0
42.9
15.5
1.0
2.1
11.9
0.5
39.9
0.4
0.0
27.4
32.3
23.2
1.4
3.0
18.1
0.7
47.6
0.6
0.0
30.7
21.1
35.1
1.9
4.2
28.0
1.0
52.9
0.7
0.0
35.3
11.0
52.4
2.6
5.8
42.6
1.4
58.6
0.9
0.0
40.2
0.2
74.8
3.5
7.7
61.8
1.8
59.6
1.1
0.0
39.3
0.0
101.5
4.5
9.9
84.8
2.3
9.1
7.6
7.3
9.6
7.6
7.7
6.0
6.2
8.0
6.1
8.3
6.8
6.7
8.8
6.8
7.5
17.0
71.7
3.8
3.8
3.8
11.95
10.13
7.1
15.3
74.5
3.1
5.2
5.2
17.4
14.41
6.5
13.5
76.8
3.2
6.7
6.7
22.7
17.00
6.0
12.9
78.0
3.0
8.4
8.4
29.5
19.80
5.4
12.0
79.8
2.8
10.5
10.5
38
22.50
5.0
11.1
81.3
2.7
13
13.0
48.6
25.20
4.7
10.3
82.6
2.4
15.7
15.7
60.6
28.00
4.4
9.8
83.5
2.3
18.5
18.5
72.7
29.20
4.8
4.8
5.5
4.0
4.0
4.0
4.6
2.0
4.4
4.4
5.0
2.9
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
- 205 -
10.3 発電用燃料の消費
10.3.1 発電電力量
インドネシア政府の発電電力量に関する予測は、2030 年に合計 744TWh となり、2013 年
の 208TWh より 536TWh 増加する。
また、
2013~2030 年の発電電力量の年平均伸び率は 7.8%
である。発電電力量のうち、石炭火力発電は 455TWh で、発電電力量全体の 61.2%を占める。
また、2013~2030 年の石炭火力発電の年平均伸び率は 8.2%である。
2050 年の発電電力量は 2,162TWh に達し、2013 年の 208TWh の 10 倍以上となり、2013
~2050 年の発電電力量の年平均伸び率は 6.5%である。発電電力量のうち、石炭火力発電は
1,463 万 TWh で、発電電力量全体の 67.6%を占める。また、2013~2050 年の石炭火力発電
量の年平均伸び率は 7.0%である。
表 10.3.1 発電電力量の予測
エネルギー源
合計
石炭
ガス
石油
水力
地熱
バイオマス
太陽光
風力
石炭ガス化発電
炭層ガス発電
シェア(%)
石炭
ガス
石油
水力
地熱
バイオマス
太陽光
風力
石炭ガス化発電
炭層ガス発電
実績
2013
208.1
118.6
44.7
19.3
14.3
10.4
0.1
0.1
0.1
0.4
0.3
2020
380.4
231.5
81.8
10.4
24.2
26.8
0.2
0.4
0.6
2.3
2.2
2025
536.2
322.0
122.4
7.1
32.1
40.5
2.7
0.6
0.9
4.0
3.9
57.0
21.5
9.3
6.9
5.0
0.0
0.0
0.0
0.2
0.1
60.9
21.5
2.7
6.4
7.0
0.1
0.1
0.1
0.6
0.6
60.1
22.8
1.3
6.0
7.6
0.5
0.1
0.2
0.7
0.7
予測(TWh)
2030
2035
2040
743.8 1,024.2 1,337.0
454.9
655.5
854.7
168.0
214.9
306.7
10.7
14.6
15.6
40.2
47.7
55.9
47.9
56.7
64.1
7.8
14.5
15.6
0.9
1.1
1.3
1.2
1.5
1.8
6.2
8.9
10.7
6.1
8.8
10.6
61.2
22.6
1.4
5.4
6.4
1.1
0.1
0.2
0.8
0.8
64.0
21.0
1.4
4.7
5.5
1.4
0.1
0.1
0.9
0.9
63.9
22.9
1.2
4.2
4.8
1.2
0.1
0.1
0.8
0.8
2045
1,723.6
1,133.7
395.5
16.0
64.7
70.5
16.0
1.5
2.0
11.9
11.9
65.8
22.9
0.9
3.8
4.1
0.9
0.1
0.1
0.7
0.7
年平均増減率(%)
2050 30/13 50/30 50/13
2,162.1
7.8
5.5
6.5
1,462.5
8.2
6.0
7.0
474.7
8.1
5.3
6.6
16.9 ▲ 3.4
2.3 ▲ 0.3
79.1
6.3
3.4
4.7
80.9
9.4
2.7
5.7
16.9
33.2
3.9
16.5
1.7
16.1
3.3
9.0
2.3
16.3
3.3
9.1
13.5
18.4
4.0
10.4
13.5
20.7
4.0
11.4
67.6
22.0
0.8
3.7
3.7
0.8
0.1
0.1
0.6
0.6
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
10.3.2 発電設備容量
インドネシア政府の予測では、2030 年の発電設備容量は合計 206GW となり、うち、石炭
火力発電設備は 113GW で、設備容量全体の 54.7%を占める。他の化石燃料の発電設備容量
は、天然ガス 56GW(設備容量全体の 27.4%、以下同じ)、石油 3GW(同 1.5%)と予測し
ている。
- 206 -
GW
石炭
ガス
石油
水力
地熱
その他新エネ
600
555.2
500
442.0
400
349.5
273.0
300
206.0
200
149.7
101.6
100
52.0
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 10.3.1 発電設備容量に関する予測
表 10.3.2 発電設備容量のエネルギー源別予測
エネルギー源
合計
石炭
ガス
石油
水力
地熱
バイオマス
太陽光
風力
石炭ガス化発電
炭層ガス発電
シェア(%)
石炭
ガス
石油
水力
地熱
バイオマス
太陽光
風力
石炭ガス化発電
炭層ガス発電
実績
2013
52.0
24.0
13.1
8.3
4.5
1.6
0.0
0.1
0.1
0.2
0.1
2020
101.6
55.2
25.9
3.7
9.1
4.9
0.1
0.6
0.4
0.9
0.8
2025
149.7
80.4
41.2
2.3
12.9
7.6
1.0
1.0
0.7
1.4
1.4
46.2
25.2
16.0
8.6
3.2
0.1
0.2
0.1
0.3
0.2
54.3
25.5
3.6
9.0
4.8
0.1
0.6
0.4
0.9
0.8
53.7
27.5
1.5
8.6
5.1
0.7
0.7
0.5
0.9
0.9
予測(GW)
2030
2035
2040
206.0
273.0
349.5
112.7
155.8
203.2
56.5
71.8
92.9
3.1
4.0
4.3
16.2
19.3
23.3
8.8
10.2
11.9
2.5
4.0
4.3
1.4
1.8
2.2
1.0
1.2
1.5
1.9
2.4
3.0
1.9
2.4
3.0
54.7
27.4
1.5
7.9
4.3
1.2
0.7
0.5
0.9
0.9
57.1
26.3
1.5
7.1
3.7
1.5
0.7
0.4
0.9
0.9
58.1
26.6
1.2
6.7
3.4
1.2
0.6
0.4
0.8
0.8
2045
442.0
265.1
114.1
4.7
28.4
13.8
4.7
2.6
1.7
3.5
3.5
60.0
25.8
1.1
6.4
3.1
1.1
0.6
0.4
0.8
0.8
年平均増減率(%)
2050 30/13 50/30 50/13
555.2
8.4
5.1
6.6
345.8
9.5
5.8
7.5
135.3
9.0
4.5
6.5
5.0 ▲ 5.6
2.4 ▲ 1.4
35.1
7.8
3.9
5.7
15.9
10.4
3.0
6.3
5.0
29.7
3.5
14.8
3.0
18.4
3.8
10.3
2.0
18.9
3.8
10.5
4.0
16.2
3.7
9.3
4.0
18.2
3.8
10.2
62.3
24.4
0.9
6.3
2.9
0.9
0.5
0.4
0.7
0.7
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
また、2050 年の発電設備容量は 555GW で、2013 年の 52GW より 10 倍以上増える。うち、
石炭火力発電設備容量は 135GW で、設備容量全体の 62.3%を占める。その他の設備構成比
は、天然ガス 24.4%、石油 0.9%、水力 6.3%、地熱 2.9%などである。
- 207 -
10.3.3 発電用燃料の消費
インドネシアの石炭消費の最大分野は電力である。インドネシア政府の予測によると、
2030 年の電力分野のエネルギー消費は 2.3 億 toe で、うち、石炭 1.4 億 toe(電力分野のエネ
ルギー消費全体の 61.9%、以下同じ)、天然ガス 3,710 万 toe(同 16.2%)
、水力 1,530 万 toe
(同 6.7%)
、地熱 2750 万 toe(同 12.0%)である194。また、2050 年の電力分野のエネルギー
消費は 5.3 億 toe で、うち、石炭が 3.5 億 toe(66.3%)を占め、天然ガス 9,250 万 toe(17.4%)
、
水力 2,720 万 toe(5.1%)
、地熱 4,640 万 toe(8.7%)、その他新エネは 1,360 万 toe(2.6%)な
どである。
石炭
百万toe
ガス
石油
水力
地熱
600
66.3
65.3
石炭の比率(%)
63.9
67
66
65.1
500
400
%
その他新エネ
65
63.7
64
63.0
63
61.9
300
61.4
62
200
61
60
100
59
0
58
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 10.3.2 発電分野のエネルギー源別の消費に関する予測
表 10.3.3 発電分野のエネルギー消費に関する予測
エネルギー源
合計
石炭
ガス
石油
水力
地熱
その他新エネ
シェア(%)
石炭
ガス
石油
水力
地熱
その他新エネ
実績
2013
60.3
38.0
9.1
5.2
5.1
2.7
0.3
2020
116.8
76.3
17.5
1.6
9.1
10.2
2.2
2025
176.1
108.0
27.7
0.0
12.6
23.2
4.6
63.0
15.1
8.6
8.4
4.4
0.5
65.3
15.0
1.4
7.8
8.7
1.9
61.4
15.7
0.0
7.1
13.2
2.6
予測(百万toe)
2030
2035
2040
229.3
298.4
365.4
141.9
190.7
232.7
37.1
46.3
63.4
0.0
0.0
0.0
15.3
17.7
20.2
27.5
32.5
36.8
7.7
11.2
12.3
61.9
16.2
0.0
6.7
12.0
3.3
63.9
15.5
0.0
5.9
10.9
3.8
63.7
17.4
0.0
5.5
10.1
3.4
2045
445.0
289.9
79.2
0.0
22.8
40.4
12.7
65.1
17.8
0.0
5.1
9.1
2.9
年平均増減率(%)
2050 30/13 50/30 50/13
532.3 8.2
4.3
6.1
352.6 8.1
4.7
6.2
92.5 8.6
4.7
6.5
0.0
27.2 6.7
2.9
4.6
46.4 14.7
2.7
8.0
13.6 21.2
2.9
11.0
66.3
17.4
0.0
5.1
8.7
2.6
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
194
「Indonesian Energy Outlook 2014」の発電量と発電設備に関する予測には石油火力発電所の発電量と設
備容量があるが、燃料消費に関する予測では石油消費がゼロになっている。この他にも同様のミスが散見
される。
- 208 -
10.4 一次エネルギー消費と石炭輸出量に関する予測
10.4.1 一次エネルギー消費
2030 年の一次エネルギー消費は 2013 年の 2.2toe より 3.5 億 toe 増加して 5.7 億 toe に達し、
年平均伸び率は 5.7%である。石炭消費は 2013 年の 5,600 万 toe から 1.5 億 toe 増加して 2.1
億 toe となり、一次エネルギー消費に占める石炭比率は 36.1%になる。他の化石燃料では、
天然ガス 1.2 億 toe(一次エネルギー消費に占める比率は 20.2%、以下同じ)
、石油 1.6 億 toe
(同 28.5%)となる。
表 10.4.1 一次エネルギー消費に関する予測
エネルギー源
合計
石炭
ガス
石油
その他
バイオマス
シェア(%)
石炭
ガス
石油
その他
バイオマス
実績
2013
221
56
39
78
15
32
2020
334
107
63
105
32
26
2025
448
153
88
131
55
22
予測(百万toe)
2030
2035
2040
570
726
893
206
282
350
115
148
189
163
199
248
69
86
100
17
11
6
25.5
17.8
35.3
6.8
14.5
32.2
18.9
31.5
9.7
7.7
34.1
19.6
29.2
12.2
4.9
36.1
20.2
28.5
12.2
3.0
38.9
20.4
27.4
11.8
1.6
39.1
21.2
27.8
11.2
0.7
2045
1,087
436
232
305
115
0
40.1
21.4
28.0
10.5
0.0
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
1,299 5.7
4.2
4.9
528 7.9
4.8
6.2
272 6.5
4.4
5.4
365 4.4
4.1
4.3
134 9.4
3.3
6.1
0 ▲ 3.7
40.6
21.0
28.1
10.3
0.0
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
2050 年の一次エネルギー消費は約 13 億 toe で、2030~2050 年の年平均伸び率は 4.2%で
ある。うち、石炭消費は 5.3 億 toe で、年平均伸び率は一次エネルギー消費全体を 0.6%上回
る 4.8%で、一次エネルギー消費に占める石炭比率は 40.6%に達する。天然ガス消費は 2.7
億 toe で、一次エネルギー消費に占める比率は 21.0%である。石油は依然として重要なエネ
ルギー源であり、年間消費は 3.7 億 toe で、一次エネルギー消費に占める石油比率は 2030
年比より低い 28.1%になる。
また、2013~2050 年の全エネルギー源を合計した一次エネルギー消費の年平均伸び率は
4.9%である。これに対し、石炭と天然ガスの年平均伸び率は 6.2%と 5.4%である。
- 209 -
百万toe
石炭
ガス
石油
その他
バイオマス
38.9
39.1
1,400
1,200
32.1
1,000
34.1
40.1
40.6
40.0
36.1
35.0
石炭の割合%
25.5
45.0
30.0
800
25.0
600
20.0
15.0
400
10.0
200
5.0
0
0.0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
図 10.4.1 一次エネルギー消費に関する予測
10.4.2 エネルギー生産と石炭の輸出量に関する予測195
2030 年の一次エネルギーの国内生産は合計で約 5.1 億 toe となり、2013 年の 3.9 億 toe よ
り 1.2 億 toe 増加する。また、一次エネルギーの消費と生産をもとに試算すると、2030 年の
エネルギー自給率は 88.8%になる。2030 年までにインドネシアはエネルギー純輸入国に転
じる。
2050 年の一次エネルギー生産は約 8 億 toe で、2030 年より 2.9 億 toe 増加し、2030~2050
年の年平均増産率は 2.3%となる。2013~2030 年の年平均増産率 1.6%よりは高いが、エネル
ギー消費の伸び率よりは低く、エネルギー自給率は 61.3%にダウンし、エネルギーの対外依
存度がさらに高まる。
2030 年の石炭生産は 3.5 億 toe で、
一次エネルギー生産に占める比率は 69.9%になる。
2030
年の石炭輸出は 1.5 億 toe で、2013 年の 1.8 億 toe より 3,000 万 toe 減、エネルギー輸出に占
める比率は 94.1%と予測されている。また、2050 年の石炭輸出は 6,800 万 toe に大幅に減少
し、エネルギー輸出に占める比率は 93.6%になると予測されている。インドネシア政府は、
石炭輸出は 2013 年時点にすでにピークに達し、今後は輸出量が徐々に減少すると見ている。
また、2030 年頃までにインドネシアは天然ガスの純輸入国に転じ、2050 年の純輸入は 2.4
億 toe になる。石油の純輸入はさらに増加し、2050 年の年間純輸入は約 3.3 億トン前後にな
ると予測されている。
195
一次エネルギー供給予測(表 10.4.2)は、インドネシア政府の予測結果をもとに需給関係を調整(石油
供給、ガス輸入)した。
- 210 -
表 10.4.2 一次エネルギー供給に関する予測(BAU シナリオ)
エネルギー源
エネルギー総供給
生産
輸入
輸出
石炭供給
生産
輸入
輸出
石油供給
生産
輸入
輸出
天然ガス供給
生産
輸入
輸出
その他エネ
生産
バイオマス供給
生産
実績
2013
221
387
51
216
56
234
0
177
78
42
51
14
40
64
0
25
15
15
32
32
2020
334
443
81
190
107
283
0
176
105
36
81
12
63
66
0
3
32
32
26
26
2025
448
483
142
177
153
318
0
165
131
36
105
10
88
52
37
1
55
55
22
22
予測(百万toe)
2030
2035
2040
570
726
893
507
571
625
221
288
378
157
133
109
206
282
350
354
408
452
0
0
0
148
126
102
163
199
248
36
36
36
135
170
218
9
7
6
115
148
189
30
30
30
86
118
159
1
0
0
69
86
100
69
86
100
17
11
6
17
11
6
2045
1,087
700
476
89
436
519
0
84
305
36
274
5
232
30
202
0
115
115
0
0
年平均増減率(%)
2050 30/13
50/30
50/13
1,299 5.7
4.2
4.9
796 1.6
2.3
2.0
576 9.0
4.9
6.8
73 -1.9
-3.8
-2.9
528 7.9
4.8
6.2
596 2.5
2.6
2.6
0 0.0
0.0
0.0
68 -1.1
-3.8
-2.6
365 4.4
4.1
4.3
36 -0.9
0.0
-0.4
334 5.9
4.6
5.2
5 -3.0
-3.0
-3.0
272 6.5
4.4
5.4
30 -4.3
0.0
-2.0
242
5.3
0 -18.7
-13.5
-15.9
134 9.4
3.3
6.1
134 9.4
3.3
6.1
0 -3.7 0 -3.7 -
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
ここで、BAU と KEN の 2 つのシナリオを簡単に比較する。KEN シナリオでは、2030 年
の一次エネルギー国内生産は約 5.0 億 toe で、BAU シナリオの 5.1 億 toe とほぼ同じだが、
石炭生産 2.8 億 toe は、BAU シナリオの 3.5 億 toe より 7,000 万 toe 少ない。また、天然ガス
生産 6,239 万 toe は、BAU シナリオの 3,039 万 toe より 3,000 万 toe 多い。さらに、その他の
エネルギー(原子力、再生可能エネルギーと推定)は 1. 1 億 toe で、BAU シナリオの 6,934
万 toe より 4,000 万 toe 多い。
2050 年の一次エネルギー国内生産は約 6.8 億 toe で、BAU シナリオの 8.0 億 toe より 1.2
億 toe 少ない。特に 2050 年の石炭生産は 3.1 億 toe で、BAU シナリオの 6.0 億 toe より 2.9
億 toe 少ない。これはインドネシア政府の石炭生産抑制政策を反映した予測結果であると思
われる。
BAU シナリオで、エネルギーの純輸出と石炭が果たす役割を見ると、2030 年までに天然
ガスの純輸入国家に転じるが、石炭の純輸出(1.5 億 toe)により、インドネシアのエネルギ
ー対外依存度が抑制されている。2050 年には、石炭の純輸出は 6,813 万 toe に減少すると予
測されているが、他のエネルギーの純輸入拡大により、エネルギー全体では純輸入となり、
年間のエネルギー輸入は 2.6 億 toe に達する。BAU シナリオでは、インドネシアは 2030 年
までにエネルギー純輸入国に転じると予測している。
- 211 -
表 10.4.3 一次エネルギー供給に関する予測(KEN シナリオ)
エネルギー源
エネルギー総供給
生産
輸入
輸出
石炭供給
生産
輸入
輸出
石油供給
生産
輸入
輸出
天然ガス供給
生産
輸入
輸出
その他エネ
生産
バイオマス供給
生産
実績
2013
234
401
47
214
64
242
0
177
75
42
47
14
44
67
0
23
19
19
32
32
2020
311
441
62
191
86
262
0
176
86
36
62
12
64
68
0
4
52
52
23
23
2025
390
485
82
177
111
277
0
165
97
36
70
10
81
71
11
1
84
84
17
17
予測(百万toe)
2030
2035
2040
458
548
660
496
530
567
119
152
202
157
133
109
132
160
183
280
285
286
0
0
0
148
126
102
107
119
140
36
36
36
80
91
111
9
7
6
101
124
154
62
62
62
40
62
92
1
0
0
107
141
183
107
141
183
11
5
0
11
5
0
2045
784
616
257
89
213
296
0
84
163
36
133
5
187
62
125
0
222
222
0
0
年平均増減率(%)
2050 30/13 50/30 50/13
910 4.0
3.5
3.7
677 1.3
1.6
1.4
306 5.6
4.8
5.2
73 -1.8
-3.8
-2.9
240 4.3
3.0
3.6
308 0.9
0.5
0.7
0 0.0
0.0
0.0
68 -1.1
-3.8
-2.6
186 2.1
2.8
2.5
36 -0.9
0.0
-0.4
154 3.1
3.4
3.2
5 -3.0
-3.0
-3.0
214 5.1
3.8
4.4
62 -0.4
0.0
-0.2
152
6.9
0 -18.3
-13.5
-15.8
270 10.5
4.8
7.4
270 10.5
4.8
7.4
0 -6.0 0 -6.0 -
(出所)インドネシア国家エネルギー委員会「Indonesian Energy Outlook 2014」
また、BAU シナリオの石炭生産と輸出入関係を見ると、2030 年の石炭生産は 3.5 億 toe
であるのに対し、輸入は 5 万 toe、輸出は 1.5 億 toe、石炭生産に占める純輸出の割合は 42.8%
で、2013 年の 75.9%より 33.1 ポイント低下する。また、2050 年の石炭生産は、2030 年比
2.5 億 toe 増の約 6.0 億 toe であるのに対し、輸入は 5 万 toe、輸出は 6,813 万 toe で、石炭生
産に占める純輸出の割合は 11.4%に低下し、石炭は国内需要向けに優先的に供給される予測
になっている。しかしながら、2013 年時点のインドネシアの経済構造、政府歳入、対外貿
易の石炭輸出依存状況をもとに総合的に判断すると、石炭輸出を短期間で大幅に減らすこ
とは難しいであろう。石炭の安定生産はインドネシアの重要課題であり、エネルギー需給
や輸出入バランスをとるためには、石炭の輸出が不可欠である。
- 212 -
百万toe
生産
輸入
輸出
600
500
400
300
200
100
0
2013
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
-100
-200
図 10.4.2 石炭の国内生産、純輸出入に関する予測
最後に、
「Indonesian Energy Outlook 2014」には多くの問題点がある。本章では「Indonesian
Energy Outlook 2014」の予測値をそのまま紹介する形をとったが、数値間の整合性がとれて
いない部分があり、数値の調整や修正を行う必要性があると言わざるを得ない。
- 213 -
第 11 章 高品位炭の輸出動向に関する予測
市場経済においては、需給関係の調整役は価格である。需要が高まれば、価格が高騰し、
供給増につながる。一方、価格が高騰すれば、需要が抑制される。この原理・原則に基づ
くと、インドネシアには高品位炭資源が賦存しており、開発条件も良好なため、国内外の
需要が高まれば、生産能力を拡大することができる。本章では、高品位炭の輸出能力を推
測するにあたり、インドネシア国内および日本を始めとした海外に高品位炭需要があるこ
とと、生産者あるいは投資者の利益につながることを前提条件として将来見通しをたてた。
高品位炭の輸出ポテンシャルの推定手法は、まず、高品位炭の賦存状態、生産状況、開
発計画などを把握し(本報告書第 1、2 章参照)、次に、石炭需給見通し(本報告書第 10 章)
を参考にして、今後の高品位炭の生産能力を定性的に推測する。また、インドネシア政府
の低品位炭利用政策、国内優先供給政策などに基づき、輸出ポテンシャルを定性的に推測
する。
11.1 高品位炭の生産能力に関する予測
(1) 資源面から見た高品位炭の生産能力
表 11.1.1 に示す通り、「Indonesian Coal Book 2014/2015」によると、2013 年 1 月 1 日時点
で、インドネシアの高品位炭(6,100kcal/kg 以上)の確認埋蔵量(proved reserves)は 11.6
億トン強(うち、7,100kcal/kg 以上の超高品位炭の確認埋蔵量は 1.6 億トン)ある。以下、
本章では、6,100kcal/kg 以上を高品位炭と定義する。また、高品位炭の推定埋蔵量(probable
reserves)は 5.9 億トンである。さらに高品位炭の資源量(確認、推定、予測、仮定)の合
計は 115 億トンである。
高品位炭の確認埋蔵量を見ると、カリマンタン島の高品位炭の確認埋蔵量は 9.3 億トンで、
同島の石炭の埋蔵量(推定と確定の合計、以下同)全体の 8.0%を占め、インドネシアの高
品位炭の埋蔵量全体の 80.3%を占める。スマトラ島の高品位炭の確認埋蔵量は 2.3 億トンで、
スマトラ島の石炭埋蔵量全体(133 億トン)に占める割合は 2.3%で、インドネシア全体の
高品位炭埋蔵量の 19.7%を占める。インドネシア全体では、高品位炭の確認埋蔵量は、石炭
埋蔵量全体の 5.6%を占める。確認埋蔵量の地域別分布状況から判断すると、短中期的には、
カリマンタン島とスマトラ島が高品位炭の生産及び輸出の中心地となる。
また、インドネシアの石炭資源量に占める高品位炭の割合は 9.5%である。特に、カリマ
ンタン島の高品位炭の資源量は 100 億トンで、カリマンタン島の石炭資源量全体の 15.7%を
占める。長期的に見ると、カリマンタン島からの高品位炭の供給ポテンシャルが高いと思
われる。また、パプア(ニューギニア島)、スラウェシ島などにも高品位炭資源が賦存して
- 214 -
おり196、探査が遅れているものの、将来の高品位炭供給ポテンシャルは高いと考えられる。
表 11.1.1 石炭資源量、確認埋蔵量に占める高品位炭の比率
資源量(百万トン)
地域
埋蔵量(百万トン)
高品位炭
シャア
仮定
スマトラ
ジャワ
カリマンタン
その他
全国
予測
推定
確定
埋蔵量/資源量
高品位炭
(%)
シャア
推定
確定
(%)
高品位炭
(%)
55,900
922
13
148
344
417
1.7
13,295
306
78
228
2.3
23.8
33.2
511
494
2
481
7
5
96.7
0
0
0
0
0.0
0.0
0.0
63,746 10,034
14.3
845
3,406
1,927
3,856
15.7
18,062
1,438
511
927
8.0
28.3
53
8
45
1
0
11.6
0
0
0
0
0.0
0.0
0.0
120,616 11,504
868
4,080
2,279
4,277
9.5
31,358
1,744
589
1,155
5.6
26.0
15.2
459
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
本調査では、
「Indonesian Coal Book 2014/2015」および各企業の公式サイトなどの資料に基
づいて、高品位炭(6,100kcal/kg 以上)を生産しているとみられる石炭生産企業の一部の生
産状況を集計した197。その結果、2013 年の高品位炭の生産量は 1 億トン前後になると推定
される。
196
平成 24 年度海外炭開発支援事業海外炭開発高度化等調査「インドネシアの石炭輸出規制及び石炭開発
状況調査」
197
第 2 章の表 2.1.1 インドネシアの主な高品位炭の生産企業・炭鉱を参照。以下、(2) 生産企業から見た
生産能力の分析も表 2.1.1 をもとにしている。
- 215 -
表 11.1.2 高品位炭生産企業と生産量
州
企業名
ジャンビ
PT Nusantara Termal Coal
発熱量
生産量
kcal.kg
万トン
7,150
72
6,700-7,000
33
中央カリマンタン PT Asmin Koalindo Tuhup
8,300
191
PT Marunda Graha Mineral
7,000
129
PT Antang Gunung Meratus
6,200-6,700
427
PD Baramarta
5,985-7,371
161
PT Kadya Caraka Mulya
6,100-6,300
18
PT Kalimantan Energi Lestari
6,300-6,900
299
PT Sumber Kurnia Buana
6,100-7,100
36
PT Tanjung Alam Jaya
6,225-6,345
39
PT Bharinto Ekatama
6,600/6700
208
PT Gunung Bayan Pratama Coal
6,100-7,300
345
PT Indomico Mandiri
6,350/6,250
1,519
東カリマンタン PT Kaltim Prima Coal
7000/6,548
5,342
PT Singlurus Pratama
6,080-6,614
272
PT Tambang Damai
6,400-6,600
104
6,700/6,700/6,250
866
PT Asmin Bara Bronang
南カリマンタン
PT Trubaindo Coal Mining
合計
10,061
(出所)
「Indonesian Coal Book2014/2015」
また、2013 年のインドネシアの石炭生産量は約 4.5 億トン、輸出量は約 4.2 億トン強であ
る。輸出のうち、中国及びインドへの輸出量は 2.4 億トンで、輸出価格から推測すると、中
国とインドに輸出された石炭の大部分は低品位炭と考えられる。また、2013 年の石炭輸出
のうち、原料炭の輸出は 9,437 万トンであり、輸出面から推測すると、2013 年の高品位炭
の生産は上掲の表と同じく、1 億トン前後である。
上掲の高品位炭の生産量推定および 2013 年の確認埋蔵量を基に計算すると、2013 年時点
でのインドネシアの高品位炭の生産年数は 11 年(R/P 比)以上である。また、高品位炭の
資源量を見ると、今後の探査が進展する可能性が高く、インフラ整備が順調に進めば、高
品位炭の確認埋蔵量の増加と生産量の増加が期待できる。
- 216 -
(2) 生産企業から見た生産能力
2013 年時点で、高品位炭の生産企業・炭鉱198は本調査の統計で合計 78 社、うち、カリマ
ンタン島は 63 社、残り 15 社はスマトラ島に分布している。また、カリマンタン島の 63 社
のうち、東カリマンタンに 30 社、南カリマンタンは 17 社、中央カリマンタンは 12 社、北
カリマンタンは 4 社である。スマトラ島の 15 社のうち、ブンクル 6 社、西スマトラ 3 社、
残り 7 社はリアウ、ジャンビ、南スマトラなどに分布している。
(図 11.1.1 参照)
また、2013 年時点では、インドネシアの石炭大手企業は東カリマンタン州、南カリマン
タン州、南スマトラ州に分布しており、輸出向けを主流に安定生産を続けている199。
上記の調査結果から、短中期的には、カリマンタン島、特に東カリマンタン州の高品位
炭生産能力が高く、中心的な生産拠点、国内外への供給地となると思われる。
さらに、2013 年時点で建設中の高品位炭生産炭鉱は 10 ヵ所あり、ほとんどがカリマンタ
ン島に分布している。探査中の高品位炭生産炭鉱は 23 ヵ所あり、うち 20 ヵ所がカリマン
タン島に、残り 3 ヵ所はスマトラ島に分布している200。従って、長期的あるいは超長期的
に見ると、カリマンタン島とスマトラ島の高品位炭生産能力が高いと判断される。
西スマトラ
4%
ブンクル
8%
スマトラ他
8%
東カリマンタン
38%
北カリマンタン
5%
中央カリマンタン
15%
南カリマンタン
22%
(出所)
「Indonesian Coal Book 2014/2015」
図 11.1.1 2013 年時点の主な高品位炭生産企業・炭鉱の分布
198
調査した企業の一部は低品位炭と高品位炭の両方を生産している。表 2.1.1 の開発段階 P(生産)の企
業を参照。
199
例えば、東カリマンタン(KPC、ITM の傘下炭鉱、Bayan Resources グループの傘下炭鉱、Harum Energy
グループの傘下炭鉱)
、南カリマンタン(Bayan Resources グループの傘下炭鉱、スイス企業出資の PT
Kalimantan Energi Lestari)
、南スマトラ(PTBA、PT Permata Prima Sakti)など。なお、これらの企業の一部
は高品位炭だけでなく、低品位炭も生産している。
200
第 2 章の表 2.1.1 の開発段階が C(建設)
、E(探査)の企業・炭鉱を参照。
- 217 -
(3) 高品位炭生産能力の推測
インドネシアの高品位炭の生産量に影響を与える要素は 2 つある。1 つは DMO による国
内優先供給義務、もう 1 つは生産企業の利益である。2014 年時点では、国際エネルギー価
格の下落、国内外の需要低迷により、インドネシアの石炭供給能力は過剰状態に陥ってお
り、高品位炭を含むインドネシアの石炭生産企業の経営状態は悪化し、中小炭鉱は倒産に
追い込まれている。
インドネシアエネルギー鉱物資源省の鉱物石炭総局(Director General of Mineral and Coal)
の 2014 年石炭生産コストに関する省令(479/K/30/DJB/2014)201を参考にすると、インドネ
シアの露天掘炭鉱の平均生産コストは推定で 13 ドル/トン前後である。また、ロイヤルティ
(16.9%)
、企業の利益(25%)などを含めると 18 ドル/トン未満となる。他方、インドネシ
ア石炭協会は石炭市場の低迷が続いており、操業停止に追い込まれる事業者が多いと指摘
し、政府に対し、ロイヤルティの引き上げに反対する意向を示した。また、石炭事業のロ
イヤルティは 2014 年に引き上げられる見込みであったが、インドネシア政府は 2014 年 3
月、鉱業事業許可(IUP)炭鉱が支払うロイヤルティを 13.5%に引き上げる計画を断念した
と発表した。スキヤル鉱物石炭総局長はその理由として、石炭価格が低迷していることを
挙げ、ロイヤルティ引き上げにより、IUP 企業に及ぼす影響が大きいと判断したと述べた。
また、インドネシア石炭工業協会はロイヤルティ引き上げの前提条件は、石炭価格が 100
米ドル/トンとなることであると述べた202。
炭鉱から石炭消費地までの平均輸送コストを 10 ドル/トンとし、中間業者の利益なども考
慮した上で、販売価格が 30 ドル/トンであれば、採算が合うと推測される。また、インドネ
シアの情報によると、2014 年 1 月 1 日~9 月 30 日のインドネシアの平均 FOB 価格は 55.4
ドル/トンで、平均生産・販売コストは 37.0 ドル/トンである203。
他方、第 4 章の企業調査に基づき、石炭企業の生産コストと輸送コストを合計すると 30.6
~40.0 ドル/トンとなり、ロイヤルティ(2013 年の 5.8%の実績と企業利益の 25%)を加算す
ると、販売価格は 40.5~52.9 ドル/トン以上となる。これは、2013 年の平均輸出価格 57.8 ド
ル/トンと比較した場合、採算が合うと判断される。生産コストと販売価格の関係が現在同
様に維持されれば、将来の供給も可能であろう。
しかし、既存炭鉱の拡張地域や新規炭鉱の開発地域は今後、内陸部に移行していかざる
を得ず、輸送費、土地のレンタル費、人権費が増加するリスクがある。また、森林地域の
開発規制(森林省大臣の土地使用許可:IPPKH, Izin Pinjam Pakai Kawasan Hutan)、インフラ
201
Indonesian government broadens scope of mine mouth coal pricing regime 「Coal Asia July 25- August 17,
2014」
、P55
202
Indonesia Finance Today Much 29, 2014
203
Industry News 「Coal Asia Decemner 17 – January 17, 2015」
、P20
- 218 -
整備などの問題が、今後の石炭生産拡大に影響を及ぼすことが懸念される。
結論としては、国内外の需要に応じて、既存炭鉱と新規炭鉱の生産能力を拡大し、高品
位炭と低品位炭の生産規模を拡大することが可能であるが、インドネシア国内の石炭火力
発電所に供給される石炭はほとんどが低品位炭であるため、国内に賦存量の多い低品位炭
の開発がさらに進むと思われる。2030 年の石炭生産量全体に占める高品位炭比率は、2013
年時点より低下すると予測される。また、高品位炭の年間生産量は、2013 年時点より増加
すると予測される。
- 219 -
11.2 高品位炭輸出能力の推測
上掲の調査結果および現地調査によると、今後、インドネシア国内では主に石炭火力発
電とセメントなどの一般産業の石炭需要が増加し、
DMO による国内優先供給量が増えても、
消費される石炭は発熱量 5,500kcal 以下の低品位炭であるため、高品位炭が輸出へ回される
現状は変わらないと推測される。また、2013 年時点で、高品位炭生産炭鉱は DMO 義務に
従い、高品位炭を低品位炭にブレンドしてインドネシア国内ユーザに提供しているが、国
内向けの低品位炭開発が進めば、この部分の高品位炭が輸出へ回される可能性も高いと期
待されている。
さらに、高品位炭が多く賦存すると見られる中央カリマンタン州やパプア州の石炭開発
は、現状ではインフラ整備の遅れからあまり進んでいない。今後、インフラ整備が順調に
進めば、探査の進展が望め、高品位炭の埋蔵量の増加も期待できる。よって、高品位炭に
ついてはこれまで同様の輸出が続くと考えられる。
他方、2014 年 7 月、違法な石炭輸出を防ぐために、インドネシア政府は石炭の輸出実績
がある 14 港湾の再整備を行うと発表した。また、輸出業者に対する管理を強化している。
2014 年 10 月末時点で、石炭の輸出ライセンスを有するインドネシア企業は合計 220 社204あ
る。
また、インドネシア政府は石炭の輸出関税(20%)の導入を検討している模様で、この輸
出関税が導入された場合、日本や中国など石炭輸入国に与える影響は大きいと思われる。
204
http://geoglobal.mlr.gov.cn/zx/kczygl/zcdt/201411/t20141125_4554428.htm
- 220 -
平成 26 年度海外炭開発支援事業 海外炭開発高度化等調査
「インドネシアの新鉱業法施行後の石炭資源に係る各種規制の最新動向と今後
の見通し及び石炭資源開発状況調査」
平成 27 年 2 月 発行
発行:
〒105-0001 東京都港区虎ノ門 2 丁目 10 番 1 号 虎ノ門ツインビルディング
http://www.jogmec.go.jp/
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機
構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするように最大限の努力
を行っておりますが、本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油
天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責を負いかねます。なお、本報
告書の内容を引用等する際は、あらかじめ独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
の許可を受けてください。