○平成 17 年度奨励研究 「帝王切開を受ける妊婦への支援対策」 医科学センター 助教授 武島玲子 1. 研究目的 本研究者は、これまで妊産婦が快適な帝王切開(帝切)周術期を過ごすための改善策を麻酔科医 の立場で検討し、帝切を受けた産褥婦にとって快適な出産・育児を達成するためには、帝切に関 する正しい情報を早くから提供されること、分娩後早期に児と関ることが重要であるという結論 を得た。帝切には産褥婦ばかりでなく、家族への支援対策が必要であると考えられた。出産から 育児への段階は家族の協力が不可欠であり、児の健やかな成長には家族が重要である。そこで、 実際に帝切を受けた人の家族は帝切の現状に問題があるのかを調査、検討し、さらに快適な帝切 にするための改善点を探求し、家族への支援対策を啓蒙することを本研究の目的とする。帝切を 受ける側から問題を探究し、その問題の改善策を検討することは、帝切周術期医療の質を高める 上で重要であると考えられる。 2. 研究方法 茨城県内で帝切を実施している病院に協力を依頼し、家族(主に父親)へのアンケート調査 を実施した。研究内容は倫理委員会で許可を得た。 3. 研究結果 ① 3病院(総合病院)でアンケートの回答は計 29 名であった。 ② 回答者 夫 86%、実母 14% 年齢:20 歳代 17%、30 歳代 59%、40 歳代 10%、50 歳代 7%、60 歳代・70 歳代各 3% ③ 出産回数 初回 55%、2 回め 28%、3 回め 14%、4 回め以上 3% 帝切回数 初回 62%、2 回め 21%、3 回め 17% ④ 帝切決定週数 妊娠 8 か月以前 38%、8 か月 7%、9 か月 21%、10 か月 34% ⑤ 予定手術 69%、緊急 31% ⑥ 緊急手術の場合 連絡日時:9-17 時 67%、6-9 時 22%、22-6 時 11% 連絡を受けた場所:自宅外 78%(病院 86%、仕事中 14%)、自宅 22% 連絡を受けて:病院へ直行 100%、何となくわかっていたので驚かなかった 56%、 妊婦が心配 44%、生まれてくる児が心配 33%、突然のことで驚いた 22% 帝切について:知っていた 89%、言葉は知っていた 11% 妊娠経過中に帝切の説明:受けた 56%、受けなかった 44%、自分で調べなかった 100%、 早期に知っていればよかった 44%、知らなくてよい 12%、どちらでも 44% 手術直前の説明:受けた 100%、理解:できた 78%、だいたい 22%、適切 100% 手術中の付き添い:夫 100%、実母 56%、実父 34% 心配あった 77%(無事に生まれるか 67%、妊婦の無事 67%、手術 56%、次回の出産 22%) 無かった 23% 経過情報:児の誕生のみ 56%、なし 33%、よく 11% 児との対面:その日 100% 術後に力になれた 67%、なれなかった 33% 病院の対応:よい 88%、不満あり 12% 感想:児を見てほっと 75%、予想通り 13%、できれば経験したくない 12% ⑦ 予定帝切の場合 手術の日:仕事休み病院 90%、仕事終了後病院 10% 不安:あった 60%(母親 65%、児 55%、手術 25%、手術後 20%、退院後 10%)、なし 40% 帝切について:知っていた 75%、言葉は知っていた 25%、自分で調べた 35% 手術の説明:受けた 95%、理解:できた 60%、だいたい 40%、 手術について妊婦と話をした 90%、しない 10%、誰かに相談した 25%、しない 75% 力になれた 70%、なれなかった 30% 心配あった 90%(妊婦の無事 70%、無事に生まれるか 65%、手術 60%、次回の出産 5%) 無かった 23% 手術中の付き添い:夫 95%、実母 60%、義母 30% 経過情報:児の誕生のみ 55%、なし 25%、よく 20% 児との対面:その日 100% 病院の対応:よい 85%、不満あり 15% 感想:児を見てほっと 85%、予想通り 25%、できれば経験したくない 10%、 二度といや 10%、特にない 5% 4. 考察(結論) 家族は帝王切開の説明を妊娠中に半数は受けており、その理解はできているようである。手 術に際して、夫の付き添いはほとんどあり、手術後も産褥婦の力になっている現状である。家 族の不安は、予定手術でも緊急手術でも同様にあり、早期に知ることに利点はなかった。現在 の病院の対応で大きな問題はないが、家族は、手術の経過情報を知りたいことと、生まれた児 を見て安心することが、明らかになった。また、医療従事者が種々のことに気配りしなければ いけないことも考慮すべき問題である。 5. 成果の発表(学会・論文等 予定を含む) 学会発表・論文予定 6. 参考文献 ①妊娠と出産における安全性と快適性の確保.朝倉啓文.産科と婦人科 71:1030-1037,2004 ②帝王切開の術後管理と産褥生活.中川潤子,杉本充弘.周産期医学 33:1002-1011,2003
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