ハンドケア剤が手指殺菌洗浄剤や 手指消毒剤の殺菌効果に及ぼす影響 花王株式会社 化学品研究所 C&S商品 開 発 センター 主任研究員 磯部 和雄 緒言 方法 院 内 感 染 予 防 対 策 には 手 洗 い や 消 毒 といった 手 指 の 試 験 に用いた 剤 は 表1に 記 載 のものを 選 択した 。試 験 衛 生 管 理 が 最 も 重 要 で 基 本 的 な 項 目である。しかし、頻 方 法 を 表2に 示した。方 法1において 殺 菌 効 果 、方 法2 回な手 洗 い や 消 毒 は 、皮 膚 から皮 脂 及び アミノ酸などの で 靜 菌( 持 続 )効 果 へ の 影 響 を5名 の 被 験 者 で 調 べ た 。 天 然 保 湿 成 分 が 除 去 さ れ 手 荒 れ の 原 因となる1)。手 荒 手指 殺 菌洗浄剤は3mLとり、30秒 手 洗 い 後20秒 流 水 す れ を 起こすと、さらに 手 を 荒らしたくな いあるい は 手 が すぎを行った。手 指 消 毒 剤 は3mLとり、乾 燥 するまで 擦り しみるなどの理 由 から手 洗 い や 消 毒 の 遵 守 率 が 低 下 す 合わせた。手嘗の生菌サンプリングは パームスタンプ法(ハ る。また、皮 膚 の 菌 叢 も 変 化し、 黄 色ブドウ 球 菌 などの ンドぺ た んチェックS C DL P 培 地、栄 研 器 材) を用い、洗 浄 起 炎 菌 が 常 在 化し や すくなると 言 わ れ て い る 2)。 手 指 (消 毒 )前、直後及び30分 後に 行った。35℃で24時 間培 をローションやクリームなどのハンドケア 剤 で ケアすること 養後のコロニー数を手嘗 生 菌 数とした。 は 院 内 感 染 予 防 の見 地 からも重 要 であり、2002年 に 公 開され た C D C のガイドラインにもこのことが 強 調されて いる。しかし、ハンドケア 剤 が 手 指 殺 菌 洗 浄 剤 や 消 毒 剤 の 殺 菌 効 果 を 減 弱 さ せ てしまう のであれば 本 末 転 倒 で ある。そこで、合 成 セラミドを 配 合した ケア 効 果 の 高 い 花 王ソフティハンドローション、花 王ソフティ薬 用クリームの 手 指 殺 菌 洗 浄 剤 や 手 指 消 毒 剤 の 殺 菌 効 果と靜 菌( 持 続 ) 効 果 に 及 ぼ す 影 響 に ついて 調 べ た 。 表1 試 験に用いたハンドケア剤、手指 殺菌洗 浄剤及び手 指消毒剤 ハンドケア剤 ● 花 王ソフティハンドローション ● 花 王ソフティ薬 用クリーム 手指殺菌洗浄剤(スクラブ 剤) ● 7.5%ポビドンヨード 配 合スクラブ 剤 ● 4%グルコン 酸クロル ヘ キシジン 配 合 スクラブ 剤 ● 花 王ソフティハンドウォッシュ10 手指消毒剤(速乾性アルコール製剤) ● 0.2% 塩 化 ベ ン ザルコニウム含 有 アルコールラビ ング 剤 ● 0.2%グルコン酸クロルヘキシジン配合アルコールラビング 剤 ● 花 王ソフティハンドクリーン 表2 試験 方 法 方 法 ハンドケア剤 0.5gを 片手全体 に 塗布 (30分間通常作業) 両手嘗より生菌をサンプリング 方 法 両手嘗より生菌をサンプリング 洗 浄 剤(消 毒 剤 ) で 洗 浄( 消 毒 ) 両手嘗より生菌をサンプリング 洗 浄 剤(消 毒 剤 ) で 洗 浄( 消 毒 ) 両手嘗より生菌をサンプリング ハンドケア剤 0.5gを 片手全体 に 塗布 (30分間通常作業) (30分間通常作業) 両手嘗より生菌をサンプリング 主に殺菌性への影響を評価 洗 浄( 消 毒 )後 の 手 嘗 の 生 菌 数とコント ロール (ハ ンド ケア 剤 未 塗 布 の 手 嘗 )を 比 較 両手嘗より生菌をサンプリング 主に靜菌性への影響を評価 洗 浄(消 毒 )30 分 後 の 手 嘗 の 生 菌 数と コントロール(ハンドケア剤 未 塗 布の 手嘗 ) を比較 ※ 試 験 薬本来の靜菌作用を見るには、滅菌手袋 等 を 装着し下界から遮断 するべきであるが、実際の場面を 想定し洗浄(消 毒)後に おいても通常の作業を 行わせた。 20 結果 1800 結 果 を図4, 5に 示した。被 験 者 により手 嘗 生菌 数に 大きな差 があるため、各試験においての手嘗生菌数(コ ロニー数) に差 異がみられるが、方 法1と2の両 方 法に 1400 手 1200 嘗 1000 生 菌 800 数 600 400 おいてハンドケア剤塗 布と未塗布により洗浄(消毒)前 200 0 後及び30分後の手嘗生菌 数に大きな違いは 認められ 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 前 なかった。すなわち、花 王ソフティハンドローション及び 花王ソフティ薬用クリームは、実用範囲において手指殺 7.5%ポビドンヨード 配合スクラブ 剤 4%グルコン酸クロルヘキシジン配合スクラブ剤 花王ソフティハンドウォッシュ10 0.2%塩化ベンザルコニウム含有アルコールラビング剤 0.2%グルコン酸クロルヘキシジン配合アルコールラビング剤 花王ソフティハンドクリーン 1600 花王ソフティハンドローションの 試 験 結 果 を 図1, 2及 び3に 示した。また、花 王ソフティ薬 用クリームの 試 験 消毒前にケア剤塗布 塗布群 元の状態になると推定される。消毒剤の靜菌 (持続)効 果を過 信 せ ずに 必 要に 応じ手 指 の洗 浄( 消 毒) を行う 未塗布群 洗浄(消毒) 30分後 消毒直後にケア剤塗布 1600 させないことが 示 唆された。また、洗 浄( 消 毒 )直後の と同じレベルになっているものもあり、約1時 間で ほぼ 塗布群 図2 花王ソフティハンドローション塗布及び未塗布時における手嘗生菌数変化( 方 法1) 菌洗浄剤、手指消毒剤の殺菌、靜菌 (持続)効果を減 弱 菌数は大きく減少しているが、30分後に洗浄(消毒)前 未塗布群 洗浄(消毒) 直後 7.5%ポビドンヨード 配合スクラブ 剤 4%グルコン酸クロルヘキシジン配合スクラブ剤 花王ソフティハンドウォッシュ10 0.2%塩化ベンザルコニウム含有アルコールラビング剤 0.2%グルコン酸クロルヘキシジン配合アルコールラビング剤 花王ソフティハンドクリーン 1400 1200 手 嘗 1000 生 800 菌 数 600 400 ことが 重 要 であることも同 時 に 示 唆された。 200 0 参考文献 1)白石 正 他:INFECTION CONTROL, 9, 6, 2000 2)Larson E. et al : Am.J.Infection Control, 26, 513-21, 1998 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 前 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 直後 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 30分後 図3 花王ソフティハンドローション塗布及び未塗布時における手嘗生菌数変化( 方 法2) 未塗布(左手) 塗布(右手) 700 消毒前にケア剤塗布 花王ソフティハンドウォッシュ10 600 手 嘗 生 菌 数 消毒前 花王ソフティハンドクリーン 500 400 300 200 100 0 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 前 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 直後 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 30分後 図4 花王ソフティ薬用クリーム塗 布及び 未塗 布 時における手嘗 生菌 数 変化( 方 法1) 消毒直後にケア剤塗布 2500 花王ソフティハンドウォッシュ10 花王ソフティハンドクリーンでの消毒直後 花王ソフティハンドクリーン 2000 花王ソフティハンドクリーンでの消毒30分後 ロ花 ー王 シソ ョフ ンテ をィ 右ハ 手ン にド 塗 布 図 1 花 王ソフティハンドローション 塗 布 及び 未 塗 布 時 に おける手嘗 生菌培 養 後 の培 地 手 1500 嘗 生 菌 1000 数 500 0 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 前 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 直後 塗布群 未塗布群 洗浄(消毒) 30分後 図5 花王ソフティ薬用クリーム塗 布及び 未塗 布 時における手嘗 生菌 数 変化( 方 法2) 21
© Copyright 2024 Paperzz