第14回 授業資料 - G-SEC

シティグループ証券寄附講座「グローバル金融制度論」
経営戦略論の
理論と応用
2015年7月16日
シティグループ証券株式会社 取締役副会長
藤田 勉, Ph.D
シティグループ証券株式会社
東京都千代田区丸の内1丁目5番1号
新丸の内ビルディング
本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。
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CSV(creating shared value)
『競争の戦略』の著者ハーバード大学教授マイケル・ポーターは、CSV(共通
価値の創造)を提唱。経済的価値を創造しながら、社会的価値も創造。
1. 製品と市場を見直す。
社会的ニーズに対応した製品やサービスを開発し、イノベーションを生むことが可能。
例:GEのエコマジネーション(環境と経済を両立させ、持続可能な社会を実現するプログラム)、イン
テル、IBMによるデジタル技術を活用した電力消費節減方法の提案。
2. バリューチェーンの生産性を再定義。
社会問題を解決しつつ、バリューチェーンを見直せば、企業の経済的コスト削減や生産性改善が
可能。コスト削減しながら、環境に貢献。
例:ウォルマートの包装削減とトラック配送ルートの見直し、コカ・コーラ、ダウ・ケミカルの水消費量
削減、アッル(iTunes)、アマゾン(キンドル)による流通モデル。
3. ビジネスを営む地域に産業クラスターを開発。
自社の生産性を高めるために、産業クラスター(特定産業が核となって関連企業が地理的に集積
する地域)を形成する一方、地域社会の雇用、所得向上で経済発展が見込める。
例:ネスレのネスプレッソのクラスター。ネスプレッソは、エスプレッソ・マシーンとコーヒー豆の粉末
が入ったアルミニウム製のカプセルを組み合わせたもの。ネスレは、品質の高いコーヒーをつくるた
め、コーヒー栽培地に、農業、技術、金融、ロジスティクスのプロジェクトを立ち上げた。
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中野目純一、広野 彩子「CSRの呪縛から脱却し、「社会と共有できる価値」の創出をマイケル・ポーター米ハーバード大学教授が提示する新たな枠組み」(日経ビジネス
オンラインコラム「復興の経営学 ここから始まる企業再創造」、2011年5月19日)
ポーターによるCSVとCSRの定義
1. 要は、「企業は金儲けと社会貢献を両立すべき」。
2. 企業が金儲けだけに注力することについて、否定的。
3. ポーターは、「従来のCSR活動は寄付やフィランソロピーを中心とする」と
狭い分野で定義。
4. 「CSRは社会に何の影響ももたらさない」とまで言い切る。
5. しかし、それはポーターの定義であって、一般には、CSRは、コンプライア
ンスの重視、社会との協調、納税や雇用なども含む。
CSRとCSVの比較
CSR
価値は「善行」
シチズンシップ、フィランソロピー、持続可能
任意、あるいは外圧によって
利益の最大化とは別物
テーマは、外部の報告書と個人の嗜好によって決まる
企業の業績やCSR予算の制限を受ける
たとえば、フェア・トレードで購入する
CSV
価値はコストと比較した経済的便益と社会的便益
企業と地域社会が共同で価値を創出
競争に不可欠
利益の最大化に不可欠
テーマは、企業ごとに異なり、内発的である
企業の予算全体を再編成する
たとえば、調達方法を変えることで、品質と収穫量を向上
させる
出所:Michael E. Porter and Mark R. Kramer, “Creating Shared Value”, Harvard Business Review, January 2011,マイケル E. ポーター、マーク R. クラマー「経
済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略」(DIAMONDハーバー・・ビジネスレビュー、2011年6月号)
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企業の社会的責任(CSR)
CSRとは、「企業が、社会のルールを遵守しつつ、収益を挙げること」。
CSRには、以下の段階がある。
1. コンプライアンスの遵守、社会との協調
コンプライアンスの遵守は、企業が存続するためには、最低限必要。
法律に違反する会社が、永続的に存続することはありえない。
同時に、社会の規律、常識、慣習、マナーなどを尊重することも重要。
たとえば、税制の穴を探し出せば、法人税を大きく減らすことは可能。し
かし、合法であっても、極端な節税はCSR上の問題が発生。
スターバックスの事例
スターバックスは合法的な節税によって、英国でほとんど納税しなかった。
英国社会の厳しい批判を浴びて、自主的な納税に追い込まれた。納税も
立派なCSR。
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企業の社会的責任(CSR)
2. 通常の企業活動による社会貢献
企業がルールの範囲内で利益を生めば、それだけで十分社会に対して
貢献できる。
企業は、優れた商品・サービスの提供によって、社会に貢献できる。
企業が収益をあげれば、通常、税金を多く払い、雇用を創出し、設備投資を
行う。また、その従業員は所得税や消費税を払う。結果として十分に社会
に貢献できる。
アップルの事例:画期的な商品を次々に開発して、我々の生活の利便性
を向上させている。同時に、納税額も世界トップクラス。
逆に、売れない商品・サービスは、社会に対して価値を生んでいないこと
を意味する。
商品・サービスが売れないと、利益が生まれず、企業は存続できない。言
い換えれば、世の中に貢献できない企業は存続できない。
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企業の社会的責任(CSR)
3. 慈善活動、寄付、フィランソロピー
納税などを超えて、慈善活動などによって、社会に貢献することも可能。
社員が積極的にボランティア活動に関わることは、社員が社会貢献に対
して広く関心を持つことになる。会社のイメージアップにもつながる。
結論:
1.
最低限のCSRは、法の順守。そして、CSRの根幹をなすのは、通常の
企業活動による社会貢献。1と2を満たした上で、企業やその社員が、
慈善活動や寄付などに積極的に取り組むことは、CSRとして重要。
2.
長期的に大きな利益をあげている会社の中で、社会に貢献していな
い会社はない。社会に貢献するためには、利益をあげて税金をしっ
かり払うことが効果的。寄付をしなくても、税金を払えば、それは社会
保障や教育などに使われる。
3.
結論として、CSVは、従来のCSRの範囲の議論。
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