請負業者のための のための法律 請負業者 のための法律の 法律の手引き 手引き F 2010 年冬号 未払いとの 未払いとの板挟 いとの板挟み 板挟み I. 最初に 最初に 現在の景気で土木建築業界の請負業者が直面している最大の問題が、支払い の不履行なのは明白である。現金が不足している市場が数多く存在するため、 水面下におけるこの問題は、個々の市場に限定できなくなってきている。 このような状況が増えてくると、請負組織の意思決定者は、以下に述べる深刻な 問題点と向き合わなければならなくなる::• 支払い納期の催促に措置を講じないでも、納得できる金額を支払っても らえるチャンスは好転するだろうか。 • 我が社への支払い保証はどの程度確実で実現可能なのか。 • 作業の減速や業務全般の停止を行って不足部分の穴埋め措置を講じ た場合、デベロッパーとの業務関係の広範にわたって影響を及ぼすだろうか。これをやること でどのようなリスクを負うことになるのだろうか? • もし取引先デベロッパーが業務担保を現金化し、契約を打ち切った場合、我が社の評判、市 場の位置づけ、信用格付けなどに、どのようなダメージを受けることになるのだろうか。 • デベロッパーは法的見地からすると支払い不能状態なのだろうか。その場合の答えはどのよ うに通常の債権取立て手段に影響するのだろうか。 このような懸念は法的な権利と義務に対する綿密な調査でも追いつけないのが明白であるが、強固な 意思決定のプロセスには、法的なメリットがその行動を取るよりどころとなる。支払い滞納の疑惑に直 面しているにも関わらず、もし一連の行動が最終的に法律上正当でないとみなされる場合、第三者(た とえば他のデベロッパー)は請負業者の行動に不審を感じるかもしれない。そのようなときに確実な法 律上のアドバイスが有効な手段を講じる中核となってくるのである。 II. 法的な 法的な改善を 改善を得られるのはラッキー られるのはラッキーな ラッキーな少数派 請負業者の支払い保証の広範において、商業法の分野における改革を目的に、いくつかのコモンロー (英米法)の司法権が制定されている。既存の判例法原則という点からは、この制定化の効力は(ある としても)あまり注目されていなかった。これには二つの理由がある。第一に、法的権利及び救済手段 は往々にして広い範囲の建設業界にあてはめられるからである。第二に、法的措置に訴える業者の典 型として、並行してコモンローに頼ることなく行うからである。適切な制定法上の権利が与えられている とはいえ、かなり限られたコモンローの保護を行使する必要があるだろうか。物質的な法律上の介入を 1 of 5 見るこれらの裁判権にとって――数字上ではコモンロー裁判権となるのが大半でも――判例法原則に とどまることが極めて重要となってくるである。 III. 業務停止 業務停止へ 停止への衝動 上記で示したように、支払い不履行の状況では、請負業者の選択肢の一つは、作業実行および工場 資材の配給の一時停止(または減速)となる。この手段はリスク・フリーとは言えない。デベロッパーは、 たとえば業務担保の現金化など、不可避な進捗の遅れに対抗するため、先制攻撃的な救済方法に出 るかもしれず、さらにプロジェクトが遅れれば、契約の不履行から被るダメージを請求するかもしれない。 デベロッパーは、契約拒絶のために、規則的かつ勤勉に業務を推進する義務を怠ったとして契約の打 ち切りを正当化しさえするかもしれない。契約打ち切りとなると、通常は用地が差し押さえられ、用地上 の工場や機械の管理も専有され、他の請負業者によって業務を完了するための経費を請求されてしま う。往々にして、これがまた訴訟の開始時期となる。 規則的かつ勤勉に業務を推進する義務に違反する行為として一時停止が不法だとしても、それ自体と そこに起因する違反は必ずしも否定すべき行動とは言えない。否定すべき違反があるのか無いのか は、個々の事例の持つ契約条件や違反の性質および事例の事実と状況による。 支払い停止に対する「自力救済」措置という観点からすれば、注目点が即座に請負業者が業務停止や 業務減速にいたった法的根拠に言及する議論となることは、驚くことではない。コモンロー裁判権にお いては典型的に以下のような三つの議論がある: • 一時停止を行うコモンローの権利 • 「防止の原則」 • 依存義務の原則 では、これらについて順番に見てみよう。 A. 一時停止の 一時停止の権利 時として、業務の一時停止または業務減速はコモンローの一時停止の権利にかんがみて正当化され うるという議論が見られる。この判断の論拠は疑問のあるところである。目を引く判例としては、英国控 訴院(1992 年)にて、最終的に支払われるまで自腹で建て替えて業務を完成させることに同意していな い場合、長期にわたる経費のかかる仕事を受託契約した人が仕事の進捗に合わせて妥当な金額の支 払いを受けられない場合に、業務の一時停止の権利があるとされた。このような判断は英国法におい て理論的には論拠となるものですが、現代の土木建築業の契約にも当てはまるかどうかは不明である。 英国法、あるいは米国を除く他のコモンロー裁判権の中にこのような権利が存在するかどうかは議論 の余地があるところである。 B. 防止の 防止の原則 業務の一時停止や減速をすることになった請負業者の中には、デベロッパーが期日までに支払わなか ったことで必要な運転資金が奪われたと主張するものもあるかもしれない。この可能性については二 つの判例で確認できる。ひとつはカナダ(18879 年)のもの、もうひとつは最近のもので英国技術建築法 廷(2003 年)のものである。これは一般コモンローの、防止の原則に関する議論である。このよく確立さ れた原則は様々な形で表現され、その中には「自分自身が引き起こす業務の停滞を物事の完了を妨 げる理由としてはならない」という定理を含む。そのような由来があるにも関わらず、実際には、業務の 不可能さとデベロッパーの契約違反との偶然のつながりを証明するという仕事の難しさも加わって、事 実上(運転資金という代替可能な性質上)業務の推進が不可能であったことの弁論と証明の難しさにし 2 of 5 ばしば直面する。しかし、だからと言って、決して、事実が法廷の順守する必要条件を満たすレベルま で証明されないというのではなく、個々のプロジェクトの予算が要件を満たすよう改善できる方法に取り 決めることができないというのでもないのである。 C. 条件付き 条件付き履行 あまり知られてはいないが「条件付き履行」とは「依存特約」の古い原則を呼び起こすものである。依存 特約とは、履行において一人の履行が他の履行に依存している場合、その当事者は自らの特約に対 して責任があり、それを事前に行うことを条件とするものである。ここで議論となるのは次のようなこと である。請負業者が作業を継続的かつ勤勉に実行する義務(あるいは当事者間が決めた基本的義務) は、デベロッパーが当座の資金として期日に沿った支払いを行うことを条件としている;ということは中 間納付を怠った場合、請負業者の履行における条件的義務は発生しない、となる。特定の判例におけ るこの議論の有効性は、原則として次のような質問に左右される(i)作業の実行は「いかなる意味にお いても」中間納付の有無にかかっているのか、あるいは(ii)請負業者の作業実行のためには、中間納 付は「あらゆる場面を考慮して」(すなわち主となる商業的利益を代表して)必要かどうか。 このような 場合、デベロッパーが中間納付を行う義務と請負業者が作業の実行を推進させる義務における当事 者間の契約条件を反映した関係に、常に焦点が当たる。この関係性の性質は、契約の解釈に対する 技法に帰属することになる。 D. 契約解除 請負業者は中間納付の証明がない場合の支払い滞納についても契約を解除するほうが健全だと考え ることも往々にしてある。これが正当化されるかどうかは以下のようないくつかの点にかかってくる: • 契約条件の詳細 • 対象金額 • デベロッパーが支払いを怠る継続性 • その他、デベロッパーによる不法な行為、たとえば既定の支払いから遅延弁済金を差し引く不 当な減額や、不適切な業務担保の現金化など 請負業者が中間納付の遅延に対応して契約の解除を主張した場合、この手の行動についてはそれに 続く法律上の小競り合いは避けられず、請負業者の契約解除の根拠が綿密な調査の対象とされる。こ のような場合、コモンローにおいて単なる支払い義務の違反が契約解除を正当化することはない。考 慮しなければならないのは、支払いの停止の状況において、デベロッパーが契約の拘束力に反する意 思を示したかどうかである。中心となる疑問は:この事象の発生(実際の結果を考慮して)は、当事者が 請負業務をさらに遂行したとき、この請負事業の遂行によって得られるはずの利益全体を剥奪するこ とになるだろうか?ということである。 IV. 契約条項の 契約条項の重要性 ― 手堅く 手堅く即効性のある 即効性のあるルール のあるルールはない ルールはない コモンロー体系についてよく認識された原則であるが、契約の当事者たちはどのような事態や状況に おいて、その契約の遂行を停止もしくは解除させる権利が発生するか、自分たちで自由に定義できる。 この自由は、現代の標準的建築契約において明確であり、請負業者に対して、一時停止または最終 的な契約解除の権利という方法で、プロジェクトが進行する間の財政的困難から身を守る大事な権利 を与えている。現代的建築契約の条件は、自己救済措置に関する領域と手続きに有用な役割を果た し、印刷した文書に定義されることで、契約当事者の共通の利益となっている。しかしながら、契約解 除条項が明確に文書化されていない場合は、これらの有利性が感じられない。 3 of 5 The FIDIC Conditions of Contract for Plant Design-Build の下位条項 16.1 は、支払い滞納に対する 一時停止および契約解除の権利を述べている。その内容は、(a)請負業者の(有効な)経費諸表を受け 取ってから 28 日以内に雇い主に対してエンジニアが中間納付証明の発行をできなかった場合、または (b)雇い主が(有効な)中間納付証明を 56 日以内に受け取れなかった場合、請負業者は業務を減速また は一時停止しうる、というものである。この権利を行使する場合、請負業者は雇い主に対して最低 21 日前に(所定の様式と方法にて)通知をしなければならず、たとえば、請負業者がその後に支払われた 場合、その時点で期間延長の資格ができ、業務一時停止期間のあらゆる妥当なコストとあらゆる妥当 な利益についても権利が与えられる。しかし、当然実用的な状況となり次第作業を再開しなければなら ない。しかしながら、もし、請負業者が中間納付証明発効から 98 日以内下位条項 14.7 に基づく 56 日 の支払い期日、および下位条項 16.2(c)の猶予期間 42 日からなる]にエンジニアが発行する中間納付 証明に基づいた未払い金を受け取らない場合、業者はの下位条項 16.2(c)の効力に基づき契約解除を 行いうるのである。これを行うためには、業者は雇い主に対して 14 日以前に契約解除の通知を発行し なければならない。雇い主の未払いが下位条項 16.2(c)に基づく契約解除の利点に関して十分深刻で あると思われる場合、契約解除の通知が当該の法的要件に厳格に一致しなければ効力が無いという 最低限の理由だけでなく、極端な場合には、法的に雇い主に対して逆解除の権利を与えてしまう否定 的行動とみなされる可能性すらあるため、賢明な請負業者ならこれらいくつかの理由を考慮して、契約 解除の通知を行う前に法的助言を仰ぐであろう。 V. 支払い 支払い滞納による 滞納による一時停止 による一時停止および 一時停止および契約解除 および契約解除の 契約解除の契約上の 契約上の権利の 権利の存在は 存在はコモンローの コモンローの自己救 済措置に するか? 済措置 に反するか ? この点はすでに上述したように、当事者の契約条件が、論拠となる特約の原則に基づいた請負業者に よる作業一時停止の法的正当性と、その結果生じる状況の弁護、これらの関係の性質に対する正当 な評価のための相対要因となる。同様に、当事者同士は様々な起草技術を駆使して防止の原則にの っとったあらゆる議論の範囲を限定し同意を見ることができる。コモンローの契約解除の権利に関して 言えば、時として、契約上の解除および金銭による補助的救済措置について完全な「法令化」を設定 することは、コモンローの契約解除の権利と一致しているにすぎないものを両当事者に意図的に使用 させ「消耗させる」だけであるという議論に行き当たる。このような議論は近年では英国控訴院における 海運業の判例にあるが、要因を突き止めることはできなかった。この判例は「完璧な法令化」の難しさ を示すとともに、基本契約の文書化において、コモンローの契約解除の権利を除外しようと望む両当事 者は、細心の注意を払ってそのことを契約文書の中で明確にするべきことを強調している。同時に、戦 略的立場からは、不当な扱いを受けて契約解除を望む当事者は、契約上の権利が救済措置として十 分でない場合、コモンローの契約解除の権利の可能性について法的アドバイスを受けようと望むかも しれない。原則として、法廷では表明しない限りコモンローの契約解除の権利を除外することはない。 VI. 結論と 結論と提言 コモンロー裁判権では、クライアントが支払い義務を怠った土木建築業界の請負業者に対して、法的 改革がなされているものの救済措置は提供しないというのは広く知られた明らかに誤った見解である。 この解決は、契約条件も含めた個々の要因や状況が常に左右するが、コモンローではいくらかの救済 を与える原則を設立している。プロジェクト開始時点では予防策としてこれらの原則の範疇に自らをお こうとする措置を取る一方、どれほど慎重な将来計画を早めに作っても、同類の問題の発生頻度が高 まる昨今、あらゆる選択肢についてできる限りの調査と評価を行うのは常に価値あることである。 4 of 5 この会報は、法的アドバイスではない。取り上げた問題に対して行動をとる前に具体的な法的アドバイ スを求めるべきてある。 © Pinsent Masons 2010 5 of 5
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