知っておきたいメンテ技術 第 4 回 知っておきたいメンテ技術 2−3.コンクリート中鋼材の錆 −保護皮膜の形成と破壊− 「コンクリート中の鋼材は、不動態化しており非常に腐食しにくい状態にある。」 「コ ンクリート表面から塩分が浸透し鋼材表面に到達すると鋼材腐食が始まる。」と教科書 で勉強しました。ここで不動態化の意味は何でしょう?どうして塩分があると錆びや すい(鋼材が腐食しやすい)のでしょうか?簡単に説明しましょう。 不動態の定義は、 「金属の電位を強制的に変化させた時、腐食環境にあるにも係わら ず腐食しにくい状態にあること」 「金属を化学的に腐食環境状態にさせたにも係わらず、 腐食しにくい状態にあること」と言われています。では金属が錆びる環境にあるにも かかわらず、何故、錆びにくい状態になるのでしょうか? これは金属表面に保護被膜(不動態被膜)が形成されるからです。その性質も2つ の考え方があります。 ①酸化物被膜説 環境中で金属表面に不可視の金属酸化物その他の反応生成物で覆われ、バリア(障 壁)となり金属を錆の環境から隔離して錆の反応の速度を遅くしている。 ②化学吸着説 環境中で金属表面に不可視の化学吸着した層(酸素など)が金属表面の水を遠ざけ 錆の反応の速度を遅くしている。 ところが、塩分(Cl - )が金属表面に到達すると、酸化物被膜説によれば「被膜に存 在する欠陥や孔を通って被膜内に浸透する」または「被膜をコロイド状に分散させて 浸透性を良くする」ことにより錆びさせると言われています。一方、化学吸着説によ れば塩分は酸素などと競争的に金属の表面に化学吸着し「金属の金属イオン化(錆) を助ける」と言われています。 この塩分は、ある一定の濃度以上が金属表面に存在した場合に、保護皮膜が破壊さ れ錆が開始するのです。一般的には CL - /OH -〈0.6であれば保護皮膜は破壊されな いと言われています。一方、コンクリート標準示方書では、鋼材の腐食が開始するの はコンクリートに含まれる全塩化物イオン量として1.2kg/m 2 以上と記述されてい ます。さらに、コンクリート中へ塩分が均一に浸透しないことや保護皮膜が均一でな いことなどから、塩分による保護皮膜の破壊は均一に生じるのではなく、局部的に生 じます。それにより、錆の形態が孔食と呼ばれる虫食い状態の錆となるのです。 塩分の役割は、金属表面で生じている保護皮膜を破壊させるだけで、破壊後の錆の 反応には寄与していません。面白いですね。 鉄に生じた錆を観察すると、赤い錆、黒い錆があることに気づきます。鉄の錆には たくさんの種類があるのです。代表的な錆の化合物名、慣用名を以下に表します。 FeOOH(水和酸化鉄) :黄さび Fe 2 O 3 ・nH2O(ヘマタイト) :赤さび Fe 3 O 4 ・nH2O(マグネタイト) :黒さび 難易度 ★★★☆☆
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