CFRPの材料、成形加工の最新技術と自動車への適用 平成25年度次世代自動車地域産学官フォーラム・技術開発セミナー ~ものづくり技術で拓くモビリティ新産業~ 東邦テナックス株式会社 技術開発グループ 新市場開発チーム 梅元禎孝 発表内容 ・ 炭素繊維とは ・ 炭素繊維複合材料について ・ 自動車用炭素繊維複合材料の開発 ・ 自動車部材への適用 ・ 成形技術紹介 ・ 終わりに (纏め) 炭素繊維とは PAN系炭素繊維の定義 炭素繊維には、大きく分けてPAN系とピッチ系の二種類があり生産量の95%以上を PAN系が占める(東邦テナックスはPAN系炭素繊維を生産)。 PAN系炭素繊維は、特殊なアクリル(polyacrylonitrile)繊維※を原料とし、これを焼成 ※プリカーサーと呼称 して製造する炭素含有率が90%以上の繊維。 特長・・・軽くて、強い z 軽い・・・鉄の約1/4 炭素繊維の比重は1.8前後。 競合素材の比重は、鉄:7.8 、アルミ:2.7、ガラス繊維:2.5。 z 強い 比強度※1は、鉄の約10倍。比弾性※2は、鉄の約7倍。 ※1. 比強度・・・引張強度を比重で割った値 ※2. 比弾性・・・引張弾性率を比重で割った値 z その他 疲労特性に優れる、錆びない、線膨張係数が小さい(寸法安定性に優れる)、 化学的・熱的に安定している、電磁波シールド性・X線透過性に優れる PAN系炭素繊維 フィラメント数による分類 レギュラートウ (RT) フィラメント数 ラージトウ (LT) 24,000本(24K)以下 40,000本(40K)以上 特徴 機械的特性に優れる 高品位(毛羽、取り扱い性) RTに比べ、機械的特性、品位が劣る RTに比べ、低コスト 焼成 フィラメント焼成 均一に焼成 トウ焼成 焼成にムラがある 原料 炭素繊維用特殊アクリル繊維 (プリカーサー) 衣料用汎用アクリル繊維 用途 航空機、スポーツレジャー、工業用途 汎用工業用途 炭素繊維TENAXⓇ フィラメント性能 7000 引張強度 (MPa) 6000 IMS60 5000 UTS50 4000 HTS40 STS40 LT パラ型アラミド UMS40 UMS45 UMS55 3000 E-ガラス 2000 スチール 航空機 1000 一般産業 高級スポーツ 0 0 100 200 300 引張弾性率 (GPa) 400 テナックス LT スチール E-ガラス パラ型アラミド 500 600 炭素繊維複合材料について 炭素繊維TENAXⓇ コンポジット性能 3,000 比重 (g/cc) IMS60 STS40 2,500 UTS50 UMS40 UMS45 HTS40 引張強度 (MPa) 2,000 UMS55 1,500 テナックス 1.55 スチール 7.8 GFRP 高張力鋼 2.0 ステンレス 7.8 アルミ 高張力鋼 GFRP チタン合金 チタン合金 1,000 7.8 2.7 4.5 ステンレス CFRP/GFRP 500 繊維角度 0°(一方向) Vf 60% 樹脂 汎用エポキシ スチール アルミ 0 0 50 100 150 200 引張弾性率 (GPa) 250 300 350 自動車用炭素繊維複合材料の開発 重点市場である自動車用途への参入 Reduction of CO2 emissions (Key Words) 低価格/高生産性/高性能/( 大型 ) Energy conservation 10000 Thermoset Thermoplastic RTM FW RFI CPM 価格 (10千円/パーツ) 5000 Autoclave High-cycle RTM 1000 500 Conventional RTM SMC Thermoplastic 100 100 1000 10000 生産量 (パーツ/年) 100000 炭素繊維サプライチェーン プリカーサー 炭素繊維 中間基材 フィラメント コンポジット F/W プルトルージョン プリプレグ オートクレーブ 織物 RTM 等 チョップファイバー 射出成型 東邦のCFRP量産部品(例) Winglet(B737) Outboard & Inboard Flap(ERJ190) Helicopter Body IN B O A R D M A IN F L A P IN B O A R D A F T E R F L A P Front Hood Operation Head Rear Spoiler X-ray Cassette Bus Body Disc Arm Robot Arm Roller Shaft 東邦の自動車量産部品(例) (Honda NSX) (Toyota LFA) (Toyota LFA) (Honda NSX) (Toyota LFA) (Honda LEGEND) (Toyota LFA) 成形技術の紹介 プロセス比較 成形 プロセス 樹脂 (固形) Prepreg CF基材 (薄目付) 加熱 フィルム化 プリプレグ化 積層 バギング 樹脂 樹脂(固形) (固形) 加圧 フィルム化 フィルム化 プリプレグ化 プリプレグ化 積層 積層 バギング バギング オートクレーブ硬化 製品 加熱 加熱 CFRP CFRP オーブン硬化 オーブン硬化 性能 生産性 × ○ × △ ○ △ ○ △ ○ CFRP RFI CF基材 CF基材(厚目付) (厚目付) コスト 製品 製品 樹脂 樹脂(液状) 樹脂(液状) (固形) 加熱 CFRP RTM CF基材 (厚目付) プリフォーム 型内セット 樹脂注入 型内硬化 製品 RFIおよびRTMは、ともに構造材に適用可能な成形プロセスである ・プリプレグ法は信頼性があるが、コストが高く生産性が低い ・RFIは設備費が安価であり、大型成形物の製造に適している ・RTMは3プロセスの中で最も生産性が高い 成形技術-1. RFI (Resin Film Infusion) RFI(セミプレグ)の特徴 ※セミプレグ:部分含浸したプリプ レグでRFI成形に用いる材料 RFI プロセス RTM RFI FW CPM CFRP 樹脂 (固形) CF 織物 (厚目付 NCF) 加熱 樹脂フィルム セミプレグ FRI(セミプレグ)の主要技術 減圧/熱処理(vacuum)のみで内部欠陥なく、 低コストの製品を得るための主要技術 レイアップ 樹脂フィルム 樹脂粘度・含浸性制御 (新規樹脂開発) 厚目付NCFの開発 真空+加熱 CFRP セミプレグ NCF 樹脂フィルム セミプレグの設計 バギング 未含浸ゾーン NCF (Non Crimp Fabric) セミプレグによるコンポジット ・内部欠点の少ないコンポジットが得られる 超音波探傷画像 〔青;欠陥あり(未含浸)、赤;欠陥なし〕 真空+加熱 脱気 脱気 ツール 「セミプレグ画像」 「コンポジット画像」 ・金型面の転写性の良いコンポジットが得られる 外観(意匠性)に優れる 成形物表面 NCFセミプレグを用いたRFI技術 (纏め) 項目 効果 太番手の炭素繊維 (24K)によるNCF基材の 採用 基材コスト低減 積層工数 削減 セミプレグを用いた 脱オートクレーブ成形 設備投資 低減 大型成型 容易 材料 (基材) 成形方法 セミプレグ (NCF) プリプレグ (NCF) 真空バッグ AC* 引張強度 MPa 1,000 980 弾性率 GPa 70 70 曲げ強度 MPa 1,300 1,270 弾性率 GPa 80 80 ILSS MPa 60 60 IPSS MPa 80 80 * AC: Autoclave オートクレーブ成形と同等のコンポジット物性も達成 ・RFI技術 は、欧州で既に航空機構造材に適用/採用が進められている ・自動車用途ではスポーツモデルなどの限定車骨格構造に検討されているが、 今後、大型バス・トレーラー、船舶等の大型構造体への適用が期待される 成形技術-2. RTM (Resin Transfer Molding) RTM 開発 織物、NCF 3D-プリフォーム 品質確認 FW CPM 過熱(加圧) 樹脂 (機械加工) RFI CFRP 真空 プリフォーム RTM 脱型 硬化 <RTMの利点> プリフォームセット 樹脂拡散 硬化 脱型 ( 1 ) ( 3 ) ( 5 ) ( 1 ) ¾ 高生産性 ¾ 設備投資費用の抑制 ¾ 良好な意匠性 成形サイクル例 (分) RTM技術 – プリフォーム 層内 【プリフォーム材に求められる要件】 バインダ 層間 ・形態安定性が高い(移動可能) ・樹脂含浸性に優れる 交織 ステッチ 繊維状 粉体 ・簡単に賦型/作製が可能 半固形 (低コスト、高生産性) 格子ネット 不織布 熱可塑性樹脂 熱硬化性樹脂 熱硬化性樹脂 プリプレグ用樹脂 自動車パーツ試作品 ・ 高目付NCFをベースに、ステッチ条件を最適化し、賦形性の良い プリフォーム材料を開発 ・ 種々のバインダータイプを開発 ※LFA:指定材料 使用 ・ NCFパウダープリフォーム材料の量産供給体制を構築 ・ 2m幅で連続供給可能 NCF生産設備 RTM技術 –マトリックス樹脂14 94℃ 0.6 97℃ 0.4 100℃ 0.2 0 0 1 2 3 4 5 120 12 100 10 80 8 6 60 4 40 2 20 0 0 経過時間[min] 1 2 3 4 5 6 7 経過時間[min] 8 9 10 0 自動車パーツ試作品 ・ 炭素繊維と接着性良好な速硬化性樹脂を開発 樹脂 ・ 100℃の成形条件下において、可使時間 3分を達成 (粘度3poise 以下を 3分以上) ・ 100℃の成形条件下において、5分で硬化する速硬化樹脂を開発 ・ 弊社汎用プリプレグ同等のCFRP物性を達成 CF CF/樹脂界面 SEM写真 温度[℃] 0.8 Log Ion viscosity 粘度[dPa・s] 1 RTM技術 – コンポジット Low-Cost 項目 Μ(mm) σ 単品評価 (1sample X 15data) 0.99 0.03 複数評価 (50sampleX15data) 0.99 0.04 ※800×1800mmで任意の15点で測定 ● 速硬化性樹脂を実用化 ● RTM生産技術を構築 ≫ 高外観; 最適成形条件/金型構造の確立 ≫ 高性能; 製品厚み1.0mm(Vf55%)の薄型パネル成形可能 製品厚みのバラツキ抑制 樹脂 RTM技術のまとめ 項目 技術 プリフォーム NCF基材による賦形性の良いプリフォーム材料を開発 織物等を含め、用途・形状に応じたプリフォームを採用 マトリックス樹脂 CFとの濡れ性に優れ、短時間硬化可能な樹脂を開発 汎用PPとほぼ同等の物性、高Tg コンポジット ハイサイクル生産技術の確立、設備投資の軽減 コンポジット物性比較 汎用プリプレグ (オートクレーブ) RTM成形 成形条件 低粘度の可使時間 94℃×5min 100℃×5min 3min 3min 130℃×120min CFRP物性(室温下) 曲げ強度 MPa 910 970 980 曲げ弾性率 GPa 55 55 58 ILSS MPa 60 61 64 MPa 740 725 720 MPa 44 46 44 ℃ 137 144 121 CFRP物性(80℃雰囲気) 曲げ強度 ILSS Tg (E') 成形技術-3. CPM (Compression Press Molding) 内圧成形品 Steering Wheel RTM RFI FW CPM CFRP ≫ 接合の高信頼性 ・Al合金やMg合金との一体成形 ・重要保安部品での実績 ≫ 様々なデザインに対応 ・他部品取付用段差やグリップ部形状 ≫ 中空構造による軽量化 ・製品厚み1.0mmの中空断面 Rear Spoiler ≫ 高い生産性 ・賦形型併用の内圧プレス成形 ・60min/個の生産能力 レイアップ 加圧 出典:トヨタ自動車㈱<http://www.lexus-lfa.com> 型にプリプレグ を積層 プリプレグ内に チューブを挿入 チューブに圧空を充填 しながら硬化する 成形技術-4. FW (Filament Winding) FW成形 RTM RFI 1.特徴 FW CPM CFRP (1) 中空構造(パイプ)の大量生産に適したプロセス (2) 設備投資が大きいが、自動化に適している 2.成形プロセス ②樹脂含浸 ③ワインディング 圧力タンク(CNG,H2) ①クリール <テーピング> <硬化> マンドレルに樹脂を含浸した炭素繊維を所定の角度にワインディングした後、硬化炉で成形し、 円筒・角柱等のパイプ状コンポジットを生産する技術 FW成形品 採用例 HONDA LEGEND -Propeller Shaft≫ 正面衝突時の安全性向上 ・CFRP部の破壊によりエネルギーを吸収 ≫ 高回転領域で使用可能 ・CFRPにより、固有振動数を高くできる ≫ 高い生産性 ・フィラメントワインディング成形 ・8000本/月の生産能力(1000mmサイズ) CFRPプロペラシャフトの衝突安全性 CLASH Impact Force Engine YOKE Impact force Propeller Shaft Impact absorption by CFRP fracture その他. LFT/LFT-D (Long Fiber Thermoplastic) その他、短繊維系材料 炭素繊維 チョップ ペレット 射出成形 長繊維ペレット(LFT) 長繊維射出成形 CF/樹脂 直接混練 (Extruder) プレス成形(D-LFT) 短繊維材料による製品例 自動車部品(燃料系) 自動車部品 (フロントエンドモジュール) PC筐体 HDD筐体 ギヤ デジタルカメラ筐体 終わりに 製造プロセス比較 部位(例) 高 (1min) 30 万個/年 TPランダム プレス TP 射出成形 小パーツ 生産性 エンドモジュール 10 万個/年 熱硬化 パネル SMC (フェンダー) 中 (10min) (60min) 低 (600min) 3 万個/年 フライ ホイール 熱硬化 パネル RTM (フード、ルーフ) FW プロペラ シャフト ホワイトボディ 熱硬化 VaRTM 熱硬化 semi-preg (Out of AC) 熱硬化 Prepreg (AC) 1㎡ 3㎡ 製品サイズ 5㎡ 5000 個/年 500 個/年 10㎡ 自動車部品の生産方法(例) Body Frame Main Parts :Direct Process (RTM,RFI) 現在 Body Frame Main Parts :Direct Process :TP composite 将来 各々のパーツに適した成材料システム、成形プロセスを選択 ・軽量化 ・ハイサイクル ・低コスト化 纏め 炭素繊維複合材料は、耐環境性(CO2削減、省エネ)による自動車軽量化ニーズ の高まりから、従来の技術枠にとらわれない、高生産性、低コスト化を実現する開 発が世界中で始まっており、現在 大きな転換点に差し掛かっている。 熱硬化複合材料は、短期間で実用化できる技術が求められており、開発が加 速している。 従来のサプライチェーンの枠を超えたグローバルな共同体が形成されている。 熱可塑性複合材料は、国家プロジェクトベースで開発が急加速している。 実用化に向けては、先ず熱硬化性並に技術・信頼性を構築する必要があり、 中・長期的開発として取り組む体制が必要である。 炭素繊維は、将来大型需要に応えるだけの生産技術の確立が必須である。 ご清聴ありがとうございました。 Teijin PUPA EV
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