43 羅漢 (らかん) 賓頭盧尊者 (びんずるそんじゃ) 迦陵頻迦 (かりょうびんが) 祖師 (そし) 釈迦の弟子で、十六羅漢や五百羅漢などのようにたくさんの呼び方があります。この羅 漢のうち主な10人を十大弟子(仏像・如来を参照)と言います。ほとんどが僧侶の格好 をしています。 十六羅漢の第一尊者である賓度羅跋ら惰闍(びんどらばらだじゃ、ら=口へんに羅)の こととされています。 中国では、寺院の食堂に賓頭盧を安置し、聖僧として祀られました。日本では仏堂の外 陣や外縁に安置し、病者が患っている箇所と同じ部分を撫でると治るという「撫仏(な でぼとけ)」としても信仰されましたが、不特定多数の人々が尊像を撫でては自分の患 部を撫でるため、かえって伝染病を媒介することになりました。とりわけ、眼病流行の 際には像の目を撫でて、自分の目を撫でるため眼病が大流行しました。このため、「撫 仏」の俗習は禁止され、多くの賓頭盧尊者像は手が届かないよう金網や柵で囲われるこ とになりました。 ヒマラヤ山中にいるといわれる伝説の美声の鳥で、「阿弥陀経」では、この鳥は極楽浄 土にいて美声を発し、教えを説くといわれ、浄土曼荼羅(まんだら)には人面鳥身に描 かれます。寺院の欄間(らんま)や華鬘(けまん)に迦楼羅(かるら)に似た姿で表さ れます。歌羅頻伽(からびんが)、羯毘伽羅(かびから)などとも書きます。 祖師とは、宗派を興した宗祖や宗派を隆盛した人たちのことで、弘法大師空海や日蓮、 親鸞などの像をまとめて祖師像として分類します。 弘法大師像 維摩居士 (ゆいまこじ) 出家せず在家のままで修行し、仏教の教理に詳しく、釈迦の高弟などとも堂々と法輪を 展開できる人のことを指します。奈良・法隆寺(ほうりゅうじ)五重塔には文殊菩薩 (もんじゅぼさつ)と法輪を展開する維摩居士像があります。 その他 44 天邪鬼 (あまのじゃく) 四天王などが、足下に踏んでいるのが天邪鬼です。これは仏教の教えとそれを信じる 人々に害を与える邪悪なものを象徴しています。人と反対のことを言ったり、行ったり して周囲に迷惑をかける人のことを天邪鬼と言いますが、人の心に住みついて邪悪なこ とを行わせるものを具体的に表したのが、毘沙門天が踏みつける天邪鬼です。 つまり天邪鬼は、人間の最大の敵である煩悩の象徴でもあり、毘沙門天などがこれを撃 退してくれるというわけです。もともと天邪鬼は水神の名前で、毘沙門天のベルトの中 央についている鬼の顔がその原形とされています。 ●薬師十二神将 薬師如来の眷属(けんぞく)で、薬師如来の12の大願を成就するといわれています。一体がそれぞれが7千の眷族を 従えているとされています。甲冑(かっちゅう)をつけた忿怒(ふんぬ)相で、頭に十二支の動物の首をつけたり、 十二支を踏みつけたり、顔そのものが十二支になっていたりします 薬師十二神将 十二支 (諸説あります) 持物 1. 宮毘羅(くびら)大将 子・亥 杵 2. 伐折羅(ばきら)大将 丑・戌 剣 3. 迷企羅(めきら)大将 寅・酉 棒 4. 安底羅(あきら)大将 卯・申 鎚 5. 額に羅(あにら)大将 辰・未 叉(ふたまた) 6. 珊底羅(さんちら)大将 巳・午 剣 7. 因達羅(いんだら)大将 午・巳 棍棒 8. 波夷羅(ばいら)大将 未・辰 鎚 9. 摩虎羅(まこら)大将 申・卯 斧 10. 真達羅(しんだら)大将 酉・寅 索(なわ) 11. 招杜羅(しょうとら)大将 戌・丑 鎚 12. 毘羯羅(びから)大将 亥・子 輪 備考 金毘羅(讃岐)のこと ※「に」は、にんべんに爾 ヒンズー教のインドラ神のこと その他 45 もとは古代インドの異教の神々が、護法神として仏教に取り込まれ、特に密教系で修行の場に魔性が侵入するのを防ぎ ます。ほとんどが仏画で描かれ、西大寺、東寺のものが知られています。 十二天 方角 特徴など 1. 帝釈天 (たいしゃくてん) 東 Page-34 参照 2. 水天(すいてん) 西 もとは天空の神、あるいは月の神として登場し、天上の法則を司り、 全知の神として重要視されました。ヒンズー教に入って庶民の間で信 仰されるようになると、水神として信仰を集めるようになりました。 五龍冠という冠をいただいて右手に剣、左手に羂索(けんじゃく)を もって海中に座ります。東京にある水天宮はこの神を祀り、信仰を集 めています。 3. 閻魔天 (えんまてん) 南 Page-38 参照 4. 毘沙門天 (びしゃもんてん) 北 Page-35 参照 5. 火天(かてん) 南東 火を神格化したものです。全身を火炎につつまれ、痩せて髭をぼうぼ うに伸ばした四臂の老人で、四本の手のうち左手一本は施無畏印(せ むいいん)に組み、もう一本は念珠(ねんじゅ)を持ちます。右手の 一本は仙杖(せんじょう)をもち、もう一本は水瓶(すいびょう)を 持ちます。青牛、または青羊に乗ります。 6. 羅刹天 (らせつてん) 西南 Page-38 参照 7. 伊舎那天 (いしゃなてん) =大自在天 東北 Page-38 参照 8. 風天(ふうてん) 西北 風を神格化したもので、子孫繁栄、福徳、長命を授ける神として古く から信仰されていました。右手に風幡(ふうばん)という幡をもち、 左手を腰に当てた老人の姿に作られ、「くじか」という鹿に似た動物 に乗っています。体色は赤で冠をかぶり、甲冑(かっちゅう)を身に つけています。 9. 梵天(ぼんてん) 天 Page-33 参照 10. 地天 (じてん、ちてん) 地 大地を神格化したもので、釈迦が悟りをひらいたときにこの神が地中 から出現して、釈迦が悟りをひらいたことを証明したといわれていま す。像形は一定しませんが、花を盛った器を手にしたものなどがあり ます。 11. 日天 (にちてん、にってん) 日(昼) 創造力を神格化した抽象的な神でしたが、のちにインドの太陽神であ るスーリヤと同一視され、信仰を集めました。これが仏教に取り入れ られて日天とり、仏教では観音菩薩(かんのんぼさつ)の化身とされ、 太陽はこの神の宮殿であるともいわれます。右手に蓮華(れんげ)を もち、その上に三本足の烏がとまる日輪を描きます。また、曼荼羅 (まんだら)中では五頭の赤馬の車に乗り、両手とも蓮華をもった天 人形に描かれます。 12. 月天(がってん) 月(夜) 月を神格化したもので、勢至菩薩(せいしぼさつ)の化身といわれて いる。月輪、または半月杖(はんげつしょう)という杖の先に半月の ついたものを持ち、鵞鳥(がちょう)の上に乗っています。 その他 46 ●八部衆 仏教に帰依した異教の神々の総称です。古代インドで生まれ、後に仏教に 取り込まれて仏法を守護する護法善神の性格 を与えられ、8つの部族に 再編成されました。 八部衆 特徴など 1. 天 天部の総称。 2. 竜(龍) 蛇を神格化した信仰(大海に住み、雲をよび雨を降らす魔力を持つと信じられていた 人面蛇尾の半神)から、ナーガ族が仏教徒になったときに仏教に取り入れられて、護 法善神(ごほうぜんじん)になりました。 3. 夜叉(やしゃ) もとは空中を飛行して人に害を与える凶暴な鬼でしたが、釈迦の説法を聞いて仏教に 帰依(きえ)し、守護神になりました。奈良・興福寺(こうふくじ)の例では、甲冑 (かっちゅう)を身につけて凶暴な顔をした槃荼鳩(ぐばんだ)が夜叉を代表してい ます。また、毘沙門天(びしゃもんてん)または増長天(ぞうじょうてん)の眷属 (けんぞく)といわれ、北方または南方を守護します。「大般若経(だいはんにゃ ぎょう)」を守護する十六善神(じゅうろくぜんじん)の一人にもなっています。単 独では、京都・東寺(とうじ)または、京都・六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)の夜叉 神立像(やしゃしんりゅうぞう/平安時代)としてのこっています。 4. 阿修羅(あしゅら) 「天部にあらざるもの」の意味で、悪鬼の総称でしたが、その悪鬼的性格が仏教に取 り込まれてから、「毒をもって毒を制する」の意味をもって、護法善神(ごほうぜん じん)に昇格しました。奈良・興福寺(こうふくじ)像はその切ない表情であまりに も有名です。 5. 乾闥婆(けんだつば) 神々の飲料水である蘇摩酒(ソーマ、そましゅ)の守護していましたが、仏教に取り 込まれてからは帝釈天(たいしゃくてん)の眷属(けんぞく)として、音楽をもって 仕えるとされています。獅子の冠をかぶっています。 6. 緊那羅(きんなら) 歌神(かしん)、楽神(がくしん)と漢訳され、元来、美しい歌声をもつ鳥を神格化 させたものと考えられており、古代インドではヒマラヤに住み、妙音(みょうおん/ すぐれた音)を奏で、諸仏菩薩あるいは全ての衆生を感動させた神とされていました。 仏教に取り込まれてからは、毘沙門天(びしゃもんてん)の眷属(けんぞく)として、 その性格はそのまま継承されています。頭に一本の角があり、三眼をもっています。 7. 迦楼羅(かるら) 金翅鳥(こんじちょう)、食吐悲苦声(じきとひくしょう)ともいい、翼を広げると 336里あるとされ、口から火を吹き龍(毒蛇)を常食としています。仏教では毒蛇は 煩悩(ぼんのう)に例えられることから、煩悩を食いつくすありがたい鳥とされてい ます。密教では梵天(ぼんてん)が衆生を救うために、迦楼羅の姿で現れるとされ、 また文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の化身ともいわれています。奈良・興福寺の八部衆 では鳥頭人身、鎧をつけた二臂(にひ)像になっており、他に半鳥半人の二臂像で翼 をもち、両手で蛇を踏みつけるものもあります。 8. 摩睺羅伽(まごらか) 腹這いで進んでゆく大蛇を神格化したものと考えられ、仏教に取り込まれてからは、 音楽神の性格が与えられています。曼荼羅(まんだら)には描かれますが、彫刻の作 例はほとんど見られません。 その他 47 ≪二十八部衆≫ 千手観音の眷属~京都・蓮華王院三十三間堂 尊名 持物(じぶつ) 1. 那羅延堅固(ならえんけんご) 2. 大弁功徳天(だいべんくどくてん) 3. 緊那羅王(きんならおう) 羯鼓(かっこ) 4. 金色孔雀王(こんじきくじゃくおう) 剣(けん) 5. 大梵天王(だいぼんてんのう) 薬壺(やっこ) 6. 乾闥婆王(けんだつばおう) 転法輪(てんぼうりん) 7. 満善車王(まんぜんしゃおう) 槌・蛇(つち・へび) 8. 沙羯羅竜王(しゃがらりゅうおう) 剣・蛇(けん・へび) 9. 金大王(こんだいおう) 独鈷(とっこ) 10. 金毘羅王(こんぴらおう) 弓・矢(ゆみ・や) 11. 五部浄(ごぶじょう) 剣・短剣(けん・たんけん) 12. 神母天王(じんもてんのう) 銅拍子(どうびょうし) 13. 東方天(とうほうてん) 14. 毘楼勒叉天(びるろくしゃてん) 独鈷(とっこ) 15. 毘楼博叉(びるばくしゃ) 三叉戟・独鈷(さんさげき・とっこ) 16. 毘沙門天(びしゃもんてん) 三叉戟・宝塔(さんさげき・ほうとう) 17. 迦楼羅王(かるらおう) 横笛(よこぶえ) 18. 摩和羅女(まわらにょ) 19. 難陀龍王(なんだりゅうおう) 竜(りゅう) 20. 婆藪仙人(ばすせんにん) 経巻・杖(きょうかん・つえ) 21. 摩醯首羅王(まけいしゅらおう) 鳥杖(とりづえ) 22. 毘婆迦羅王(びばからおう) 23. 阿修羅王(あしゅらおう) 24. 帝釈天王(たいしゃくてんのう) 豊鏡(ほうきょう) 25. 散脂大将(さんじたいしょう) 剣(けん) 26. 満仙人王(まんせんにんおう) 三叉戟・独鈷(さんさげき・とっこ) 27. 摩睺羅王(まごらおう) 琵琶(びわ) 28. 密遮金剛(みっしゃこんごう) ワンポイント 基本的には、那羅延堅固(ならえんけんご)、と密遮金剛(みっしゃくこんごう)の二天に、 大梵天(だいぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)、四天王(東方天=持国天、毘楼勒叉 天(びるろくしゃてん)=増長天(ぞうちょうてん)、毘楼博叉天(びるばくしゃ)=広目 天(こうもくてん)、毘沙門天(びしゃもんてん)=多聞天(たもんてん))、大弁功徳天 (だいべんくどくてん)=吉祥天(きっしょうてん)、婆藪仙人(ばすせんにん)を合わせ て十天、これにその他十八天を合わせて二十八天となります。
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