MDK 海外留学支援制度 報告書 2015 年 1 月 フィンランド

MDK 海外留学支援制度 報告書 2015 年 1 月
フィンランド ユヴァスキュラ大学 金沢大学 佐々木千穂
1月からは後期が始まりました。あと4か月と少ししか残されていないのかと思
うとここでできることを少しでもたくさんしたい、時間を大切にしようと思う日々です。
今回の報告書では、自分がこの留学でぶつかった壁について話したいと思います。
今月は私にとっては少しつら
い時期でもありました。こちらに来る
前には、もちろん留学といえば楽しい
けれどきっと苦労することがたくさん
あるだろうなあと予想はしていました
が、それは英語で専門を勉強すること
や、膨大な課題の量であるとか、日本
との文化の違いに戸惑うとかそういう
ことだろうと思っていたのです。
(凍った湖でクロスカントリーやスケートをする人々)
しかしここにきて一番大変だと感じるのは人間関係でした。私は日本にいたとき、自分の
長所は人見知りをしないこと、誰とでもすぐに仲良くなれるのが強みだと自信がありまし
た。地元から一人で別の市の高校に通っていた時も、県外の大学でも比較的人間関係には
悩まずにこれたように思います。前期は夏休みの英語の集中講義のクラスのおかげで国籍
を問わず比較的楽に友達ができましたし、そこからさらに人間関係が広がっていったよう
に思います。しかし後期になって、ほとんどの留学生たちが半年でそれぞれの国へ帰って
しまい、私はまたいちからここで人間関係を築かなくてはいけませんでした。しかし後期
に固定されたクラス、というものはなく、専門の講義ばかりでコミュニケーションをとる
機会も少なく、そこで友達はなかなかできるものではなく、あれ、日本にいたときどうや
って友達をつくってたんだろう、と首をかしげることも少なくありませんでした。実は同
時に、前期にはアジア人(台湾人と日本人)とルームシェアをしていたので、後期はもっ
といろんなひとと関わってみたいと考えて、後期の初めに一度寮を引っ越す決心をしまし
た。そこでは前期から住んでいるチェコ人とスペイン人と住むことになったのですが、彼
女たちの性格や遊び方、暮らし方、話の内容は私が今までしてきたものと大きく違い、衝
撃をうけたと同時になかなかなじむことができませんでした。こんな言い方はあまりした
くはないのですが、ここで今までで一番ヨーロッパとアジアの壁のようなものを感じまし
た。なるべく話しかけるように努力をして仲良くなろうと努めましたが、クラブが大好き
な二人の性格や、一日中大音量でなっている音楽や映画の音、次々部屋にやってくるヨー
ロッパの留学生の大きな話し声など、もちろん文化の違いもあるとは思いますが強くスト
レスを大きく感じると同時になかなか二人と近くなれず戸惑う日々が続きました。でもこ
れこそがヨーロッパのこの土地でできる貴重な経験であると思い、もっと二人とうまくや
っていきたいし、この状況から逃げたくはないと葛藤していました。しかしそのころ知り
合ったフランス人の友達と日本人の友達が私の状況をみかねて、一緒に住むことを提案し
てくれました。彼女とはなぜか性格がぴったりとあい、わたしがフランス語をやっていた
経験からフランスに興味があると同時に、彼女も日本の文化に大きく興味をもってくれま
したし、国際協力に関わったことがあるという共通の経験もあって話していて楽しかった
ので、もう一度引っ越すことにしました。まだ初めの引っ越しから2週間と少ししかたっ
ていなかったので、もう少し耐えていたら何か状況がひらけていたかもしれません。また、
もう一度日本人と暮らすことが自分にプラスになるのか悩みました。しかしその時感じて
いたストレスにはかなわず、彼女たちと住み始めて、今とても毎日が楽しいです。言語に
ついても日本語を話すことが増えるのではないかと懸念していましたが、基本的に部屋で
は英語ですし、なによりも前の部屋よりも話す時間が本当に長くなって、自分にとってす
ごくいい結果になったことに感謝しています。努力をすることと無理をすることは違うん
だという基本的ですが自分の突っ走ってしまう性格、意地を張ってしまう性格に気づいた
こと、また、先ほど書いたように、アジア人は親しみやすいとか、ヨーロッパ人とはやは
り難しいのではないかとかそういったことではなくて、国籍は関係なく、日本人間と同じ
ように、自分と相手の性格があうかあわないかなのだと身を持って実感できたことは今回
の収穫でした。その後、日本人で日
本食パーティーを開いてそれぞれ
友達を招待したり、(寿司屋アルバ
イトで身に着けたことをこちらで
いかせてうれしかった、、
、
、)逆に招
待されたりするなかで人間関係が
どんどん広がっていって、やはり自
分から何か行動していくことが大
切だということも日本にいたとき
以上に感じます。最初の引っ越しが
なければこんなに深く悩んだり考
えなかったでしょうし、今のルームメイトに出会えていたかもわかりません。まるで新し
い環境にとびこむ練習を2回、留学でさせてもらっているようです、、、笑
そしてふりか
えってみれば、ルームシェアという体験を通して、日本人、台湾人、チェコ人、スペイン
人、フランス人といった様々な文化背景をもつ人々と本当に貴重な経験をさせてもらった
と思えます。日本人とのルームシェアでさえ、日本では一般的ではなく経験できなかった
ことですし、彼女はわたしが今までに会ったことのないタイプであり、さらに九州出身と
いうこともあって考え方の違いを感じたりしておもしろい経験であると思っています。
そしてもう一つの私の挑戦は、会計学の授業です。日本で経営学は副専攻という
こともあり、数学を使うような授業は避けて、セオリーを扱うものばかり、要は好きな部
分ばかり選んで勉強していたのでした。しかしとても重要な知識ですし、自分をかえたい
という気持ちもあって、今期は会計学をやってみよう、ということにしたのです。他の授
業と違い、講義の授業と演習の時間とに分かれており、ほぼ毎日授業がありますがこれが
最後の機会かもしれないということで、単語から調べつつ、がんばっています。しかしこ
れも一人ではなく、同じように悩む仲間がいて、彼女と一緒にはげましあって取り組める
おかげであるなあと感謝しています。
最後に1月に取り組んだプロ
ジェクトについてお話します。これは
楽しく貴重な体験でありました。ユバ
スキュラ大学には日本コミュニティと
いう、日本人や日本語を勉強している
ひと、日本に興味あるフィンランド人
や留学生が週に1度集まるものがあり
ます。実は大学の近くにある美術館で、
日本のお茶文化に関する展示がおこな
われるということで、同時にそれとは
対照的な日本の若者のポップカルチャーに関して展示をつくらないかとこのコミュニティ
にむけて提案がありました。そこでいくつかグループを作って有志をつのるという形で私
たちは日本のホラーに関する展示を行いました。私自身ホラーが好きというわけでも、そ
れを日本文化の一つとして認識したことさえなかったのですが、J-horror Boom とよばれ
1990 年代から『呪怨』や『リング』を代表作として世界でも話題にのぼっていたとのこと
で、海外でかかれた日本の映画に関する論文をよんだり、実際に映画を見て欧米のホラー
との違いを分析したりして準備をすすめました。また日本の怪談や幽霊の描写などの歴史、
ハリウッドやアジア各国でリメイクされるなど海外での影響、そしてホラーゲームという
分野への発達などいくつかテーマにそって写真だけでなく、英語、フィンランド語での説
明を作ったり、ビデオ編集、ipad でのゲーム体験などをつくるにいたりました。日本人だ
けでなくフィンランド人、台湾人、イギリス人のみんなで協力して出来上がった展示は真
っ暗のなか懐中電灯をもって自分で照らして展示をみるという形で、想像していた以上に、
400 人もの来場客があってとても達成感がありました。展示をつくるだけでなくそれを広報
して大学生だけでなく一般人にも来てもらえるように努め、自分の専門に被るものがあっ
て参加してよかったと思いました。さらに来てくれた方が感想や質問をしてくださり、み
なさんと話せたことも素敵な思い出となりました。悩むことの多い 1 月でしたが今しかで
きないことにどんどんまたぶつかっていきたいと思います。