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(MJHEP)大学説明会に参加しました

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2013.6.26
MJHEP 大学説明会の報告(公開版)
愛媛大学 大学院理工学研究科 電子情報工学専攻
市川 裕之
1
はじめに
Yayasan Pelajaran MARA (YPM: マラ教育財団) が運営する Malaysia-Japan Higher
Education Program (MJHEP) によるツイニングプログラムのための大学説明会に参加し
たので、その様子を報告する。参加者は八木秀次教授(生産環境工学専攻、機械工学科)
と市川の2名である。
2
6月15日(土)現地到着
クアラルンプール国際空港の到着ロビーで関係者の出迎えを受けて、同じ便(関西空港
発マレーシア航空の直行便)で日本から到着した全12名がタクシー(9人乗り車両)に
分乗して会場・宿舎となる Palace of Golden Horses Hotel へ向かった。空港からはクア
ラルンプール市内に向かってほぼ北の方角に直線距離で 35 km 程度に位置し、道路上で
約1時間の行程である。旧植民地のためか英国同様に車は右ハンドル・左側走行で、日本
人には違和感が無い。
場所は MINES WELLNESS CITY と呼ばれるリゾート村の一部にあり、遠くからも分
かるような宮殿風の建築(図A:正面玄関、図B:裏)である。かなりの高級ホテルと見
えて、国内外の国家元首の来訪や閣僚級の国際会議もあるほか、サッカーのブラジル代表
やイングランドのベッカムらも訪問したようで、それらの折の多くの写真が壁に飾られて
いた。また、我々の滞在中も、ビジネスや観光などで、アジア・中東・欧米など多くの海
外客が宿泊していた。イスラム教国であるため、ホテル内では日本・中華料理レストラン
以外では酒類は販売されていない。
1
図A
図B
到着後は、フロントを経由することなく、YPM が窓口を設けて、ホテルの鍵や資料を
配布するような準備がなされていた。その中には、各出席者別の入国・帰国航空便名一覧
表まで入っていた。また、各大学に1台づつ、
(マレーシア国内のみで使用可能な)ノキ
アの携帯電話が貸与された。
なお、マレーシアの日本との時差は−1時間だが、クアラルンプールは日本の子午線よ
り約 33 度西に位置し、物理的な時差は2時間強であるため、1年中(夏しかないにも関
わらず)サマータイムを実施している状態である。また、イスラム色の強いマレー半島東
岸を除き、週休は土曜・日曜である。
3
MJHEP のシステムの概要
マレーシアでは11年間の初等・中等学校を17歳で終えると、大学入学資格試験を受
け、さらに2年間の予科教育の後に大学に入学するのが通常だが、成績優秀者は1年間の
Matriculation Course を経るだけで大学に入学出来るそうで、今回の MJHEP の学生達
はこれに該当する。この際、MJHEP への入学最低基準として、以下の8科目すべてでA
の成績
1
が必要との独自の基準を設けていると言う。
Modern Mathematics, Additional Mathematics, Physics, Chemistry,
English, Bahasa Melayu 2 , Islamic Studies (または Moral Studies), History
ここで、Modern Mathematics は文理共通の科目で、日本の高校では数学 I,A,II,B の
内容に近いものであり、Additional Mathematics は理系の数学で、数学 III, C の内容も
1
100 を最高として A+: ≥90, A: ≥80, A-: ≥75, B+: ≥70, B: ≥65, C+: ≥60, C: ≥50, D: ≥45, E: ≥40,
G: <39 の10段階で、C 以上が良、D, E が可、G が不合格のようである。
2
市川注:マレー語であろう。
2
含んでいる。ちなみに、2013 年度の入試では、1400 人以上の応募者からまず書類選考で
500人に絞り、その後の面接を経て 150 人に入学許可を出したとのことである。
普通の Matriculation Course は1月始まりだが、MJHEP は4月開始である。その1
年目は日本語を中心に基本的な数学・理科の授業を受ける。2年目が U1 Course で大学
1年に相当する。学生は U1 への進学に際して、機械か電気のコース選択を行う。3年目
が U2 Course で大学2年に相当する。この U2 生が来年4月の編入をめざす学生たちで
あり、U2 修了時点で、クアラルンプール大学から Diploma の学位が授与される。なお、
MJHEP 入学への競争率は10倍程度だそうである。
ちなみに、マレーシアの初等教育は7歳になる年の1月開始と言うので、初等・中等教
育では日本より3ヶ月学年が先に進んでいることになる。
4
6月16日(日)説明会
当日のスケジュールを Table 1 に、今回の説明会への参加大学とその職員数を Table 2
に示す。国立・私立とも教員だけではなく職員も参加している大学が少なからずあるよう
だ。芝浦工業大学は、拓殖大学と共に、長らくこのシステムの中心的な役割を果たしてき
たと聞いているので、参加者も多いのではと理解している。
Table 1: スケジュール
9:00
14:00
16:30
20:00
-12:00
-16:00
-18:00
-22:50
U2 生 54 名対象大学説明会
U1 生 91 名対象大学説明会
運営およびシラバス委員会
夕食会
Table 2: 参加大学 (計 20) と教職員数 (計 55)
芝浦工業大学
拓殖大学
東海大学
東京工科大学
東京電機大学
東京理科大学
明治大学
立命館大学
近畿大学
岡山理科大学
7
3
2
2
2
3
2
2
3
2
室蘭工業大学
埼玉大学
長岡技術科学大学
福井大学
豊橋技術科学大学
山口大学
愛媛大学
九州工業大学
熊本大学
兵庫県立大学
3
2
2
2
3
5
2
2
3
3
3
説明会は、まず、Arba’ain 氏の学生への挨拶から始まった。氏は(おそらく)副校長
のような立場ではないかと思われる。カリキュラム等、教育面でのキーパーソンと言う印
象を受けた。
基本的には、やってきた学生に対してまず愛媛・松山・愛媛大学に関する基本情報を A1
サイズのポスター(図C)を用いて市川が説明しその後、機械・電気の希望ごとに、それ
ぞれ八木教授と市川が分かれて説明・質疑応答を行った(図D)。これに加えて、今回は
2007 年愛媛大学電気電子工学科卒業で現在、クアラルンプール近郊にある大手日本企業
の現地会社に勤務するユサイミ君に説明会の応援を依頼した。今回、愛媛大学は会場の
一番端を割り当てられたため、隅に余った壁を用いて、図Cのように、3枚準備したポス
ターをうまく配置することが出来て幸運だった。他の場所であれば、ポスター1枚を掲示
することすら難しかった可能性がある。次回以降、このような点も考慮して、説明会の準
備をする必要があろう。愛媛大学ブースへの訪問者数は Table 3 の通りである。
Table 3: 訪問者数
在籍数
機械 電気
U1
U2
46
27
45
27
図C
図D
4
訪問数
機械
電気
男 女 男 女
9 5 6 8
8 4 4 3
U2生は、わずか数ヵ月後の進路選択を控えて、ある程度の調査も行っているようであ
る。環境・教育・研究の各面で、かなり具体的な質問をしており、中には、後日、メール
でより詳細な質問をしたいと言う学生もいた。一番多かった質問は、編入時の具体的な認
定単位数である。後述するように、これは実は非常に重要かつ厄介な点で、カリキュラム
マップを見せながら どこの大学でも同じだと思いますが、あなたの成績とシラバスを良
く調べて決めるんですよ と、微笑みながら答えるしかなかった。日本語に関しては、人
により差があり、少々、拙い者も少なからずいる。たとえば、(例をあげて)大阪弁など
方言で授業をする先生の場合、聞き取りに自信が無いと言う学生もいた。また、愛媛大学
のブースを訪れた具体的な理由を尋ねると、 田舎だから。自分は地方出身のため、都会
の大学は避けたい (男子)、 新しく参加する大学だから。先輩が誰もおらず、自分が先
輩になりたい (女子)などがあった。
一方、U1生は、1歳違いにもかかわらず、U2生と比べると一見して幼い印象だった。
この4月に、機械・電気の進路分けをしたばかりでもあり、未だ、進学先の具体的なイ
メージを掴むのは難しそうで、そもそも愛媛や松山がどこにあるかを知っている者は一人
もいなかった。話しかけても、みな恥ずかしそうにしており、彼らへの対応に関してはユ
サイミ君の存在が非常に有効だった。
合計5時間で2学科合わせて47名の参加者数は、一見、少ないように見えるかもしれ
ないが、資料だけを受け取って帰る学生は皆無で、参加者全員が椅子に腰を下ろし、じっ
くり話をして行ったため、人が来なくて手持ち無沙汰になった時間帯はほとんどなかった。
(ただ、U1生向けでは、人数に比して時間が短かったこともあり、終了間際に せっかく
だから、資料だけでも貰って来なさい と日本人教員がはっぱをかける光景も見られた。)
実際、説明会場外のロビーには、休憩時のコーヒーやお菓子が用意されてあったのだが、
そばに近寄る機会も無く、終了後にはじめて気付いたほどである。U2,U1生共に、進
路は機械・電気で明確に決まっており、場所の選択だけと言う点で、8月に実施されてい
るオープンキャンパスとは、決定的な違いがあると言える。
5
6月16日(日)運営およびシラバス委員会
説明会の終了後、30分後に隣の部屋で、プログラムの運営およびシラバスに関する委
員会が開催された。
5
6
6月16日(日)夕食会
参加者全員が出席する夕食会が、説明会・委員会の会場を模様替えして、開催された。
夕食会でサプライズがあると、委員会の席上で案内されていたが、その内容は、学生によ
る歌や踊りが延々と続くものであった。なお、イスラムの慣習にしたがい、酒類は一切、
供されず、飲み物は(冷えていない)水だけである。
7
6月17日(月)学校見学
9:50−13:00の間、学校の見学を行った。今年度の学生数は、Matric 生 113
名、U1生 91 名、U2生 54 名で、入学後に成績不振で退学になった数は、U1生が2
名、U2生が1名である。教員は、日本語教育担当が26名、理系科目担当が28名で、
この中には、本学電気電子の博士前期課程を修了したアズワン君(数学担当)が含まれ
ている。校舎は、図E−Fにあるように、複雑に入り組んだ4階建ての建物である。エレ
ベーターはなく、徒歩での昇降となる。
図E
図F
見学者全体を各10人弱の6グループに分けての行動となり、見学授業はグループに
よって異なったものになる。1クラスの人数は、日本語で16名以内、理系科目で35名
以内に制限しているそうである。我々の割り当てグループは、機械のU2生対象の材料力
学の授業を見学した。まず驚いたのは、入室前に靴を脱ぐことであった。室内は絨毯敷き
であり、学生からの要望とのことである。これは特段、イスラム教とは関係なく、この学
校だけの習慣だろうと言われた。
学生数相応のかなり小さな教室で、当該年度の機械U2生全員と思われる28名(男子
20、女子8)に対して、マレー人教師が日本語で講義を行っていた。使用教科書は、多
6
くの大学で採用されている最新機械工学シリーズ(森北出版)であった。八木教授によれ
ば、この教科書であれば、質・量ともに全く問題は無いそうである。
続いて、入学したての Matric 生への日本語の授業を見学した。ここはさらに少人数の
12名(男子8、女子4)である。漢字の書き順から、最後のハネ、トメの区別まで、丁
寧に指導していた(図G)。なお、この授業は土足であった。靴を脱ぐのは(理由は不明
だが)理系の授業だけだそうである。
図G
幼い頃からの習慣なのか、どの教室でも女子学生が前方席に固まって着席するようであ
る。日本人教員によると、概して、女子学生の方がしっかりしていると言う。また、この
程度の小さな部屋に30人以下の少人数であれば、日本では頻繁に見られる、居眠り・内
職・情報通信・妨害と言った行動はほとんど不可能であることが良く分かる。
PC教室は40人用のものが2つ用意されている。台湾の COMWEB 社が開発したシ
ステムを採用し、教員の操作一つで、教員PC、学生PC、および特定の学生のPCの画
面を全員のディスプレーに表示できる。U1生で Windows, U2生で Linux を学び、プロ
グラミング教育はC言語で行うほか、LATEX も教えているので、日本の大学に編入して
すぐに、LATEX での論文の執筆が出来るように準備していると言う。なお、この場で、
ある大学の教員から、 セキュリティーモラリティーがシラバス中で記載されていなけれ
ば単位認定に支障が出る、との意見を既に出しているが、どうなっているのか との発言
があった。
図書館の施設はあるが、蔵書の量は不十分と話していた。それでも、機械や電気の日本
語の基本的な教科書が準備されている。このほか、日本語学習のためか、大量の漫画が書
架に見られた。これらは、ユニセフ経由のようである。
現在はすべての学生は敷地内の学生寮に住んでいる。今回、男子寮を公開するよう準
備を進めていたが、 あまりに汚すぎて見せられない と学生から拒否されたそうで、代
7
わって女子学生から女子寮(図H)公開の同意が得られたと言う。公開されたのはU2生
が使用する2人部屋・4人部屋各1室である。4人部屋ではベッド2台づつを横に接触し
て並べた配置ではあったが、学習用の机は小さいながらも1人づつ離れた場所に置き、大
きな座卓もあるため、他人と同居であることを除けば、勉強するにさほど悪い環境ではな
いと思えた。異性寮への入室を制限しているわけではないが、幼い頃から身に付いたイス
ラムの習慣があるため、問題は起こっていないと言う。女子寮横の地上ではそのまま沢山
の洗濯物が干してあった。
図H
この日の昼食は、校舎や図書館とは独立した、学生寮に程近い施設でとった。ここには
屋根はあるが、壁は無いため、半ば屋外のようなものである。当然、エアコンは無い。学
生は3食をこの場所でとるそうである。
なお、敷地内にモスクがあり、金曜日は校外の近隣の住民も礼拝に訪れるそうである。
また、学校の時間割は、この礼拝のため、金曜日だけは特別な組み方になっている。
8
6月17日(月)Putrajaya ツアー
学校見学後は、プトラジャヤと呼ばれる、マレーシアの行政新首都をバスで案内され
た。この際、案内役の日本人教員から、学校その他の補足説明も受けた。
9
まとめ
はじめてプログラムに参加するため、すべてが手探り状態である。現地に行けば、先
行している他大学から何か、情報を入手したり、意見交換も出来るかと期待はしていた
が、そのような機会はほとんどなかった。20大学55人と大人数で、特に、説明会の際
は、自分の大学の訪問者への対応だけで手一杯であった。Table 3 に示すように、愛媛大
8
学ブースへの訪問者数はかなり多い方だと自負してはいるが、前述のように、実際に出願
してくれるかどうかは、蓋を開けてみなければ分からない、と言うのが率直な印象であ
る。日本人教員によれば、大学院進学がほぼ前提であり、費用の点で国立大学への編入が
より望ましいと YPM は考えているようである。
学生の質が現段階では不明なこと、および僅か2年で大学からいなくなってしまうかも
しれない1〜2名の編入者のために、旅費だけで1学科あたり50万円かかることを考え
ると、きわめて費用のかかるプログラムである。しかし、実際に現地の様子を見ると、こ
れらを一旦、脇に置いて、率直に、是非、この編入生たちを大事にしたいと感じた。ただ
し、繰り返しになるが、出願者がいることが前提である。
歴史的な流れを考えると、日本(に限らず現在の先進国)の国際社会における位置も地
位も、下がり続けると予想される。実際、“LOOK EAST” と言って日本を(必要以上と
思えるほどに)持ち上げていたマハティール前マレーシア首相でさえ、近年は、 日本は
失敗した。韓国の方が学ぶ点が多い と言った発言もしている 3 。このような時代のさな
かに、高校を出たばかりの若者が、それまでの自分の世界とは全く異質で、未来において
も限定された場面でしか役に立たない、世界中で僅か1億人しか使わない、日本語の勉
強を必死になってやっている。もちろん、最初の動機は金(品の良い表現をすると大学・
大学院への進学)だったと思うが、それだけで継続することが可能だろうか。日本人の学
生が日本語で勉強するのとは全く異なるのである。功利的にはなりたくないが、このよう
なプログラムで大学・大学院まで行けば、きっとその後も長きにわたって日本の理解者で
いてもらえるのではないか。事実、愛媛大学を卒業した少なからぬマレーシア留学生が日
本企業で働いてる。 留学生増のため、大学院の講義を英語ですべし と言う指示に対し
て、 日本語での教育であればこそ、卒業後にも日本のために働いてくれる人材になるの
だろう。英語での教育であれば、卒業後には、どこか別の国のために働く人間になるだけ
だ。 と考える大学教員も少なくないはずだ。その意味で、自分の未来を日本に賭けてい
る、MJHEP の編入生は愛媛大学のみならず日本の宝となるかもしれない。
以上
3
朝日新聞, 2013 年 1 月 15 日朝刊, 11 ページ (インタビュー)ルックイーストはいま
ビン・モハマドさん
9
マハティール・
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