1 計画策定の背景と経緯 1 「障害者権利条約」に係る国際的な動向 21

第1章 計画の策定にあたって
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計画策定の背景と経緯
「障害者権利条約」に係る国際的な動向
21 世紀は「人権の世紀」といわれています。
人権とは、生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する当然の権利を言い、こ
の人権の尊重が、すべての国々とすべての人々の行動基準となるよう、その根底にあ
る一人ひとりの人間が尊厳を持つかけがえのない存在であるという考え方が尊重さ
れ、守られる社会を実現していくことを目指しています。
昭和 23 年(1948 年)12 月 10 日、第 3 回国連総会において、
「世界人権宣言※」が
採択され、1970 年代以降、「精神遅滞者の権利宣言」(昭和 46 年・1971 年)、「障害
者の権利宣言」(昭和 51 年・1975 年)が決議され、また、障がいのある人の「完全
参加と平等」の実現を目指して、昭和 56 年(1981 年)を「国際障害者年」とし、昭
和 57 年(1982 年)には「障害者に関する世界行動計画」を採択しました。
さらに、昭和 58 年(1983 年)には、平成 4 年(1992 年)までを「国連障害者の
十年」と宣言して、各国に同行動計画の実施を求めるなど、各種の障がいのある人の
「人間の尊厳」に係る国際年、各種宣言等によって人権尊重、差別撤廃に向けた取り
組みがなされてきました。
その後、21 世紀最初の人権条約として、平成 18 年(2006 年)12 月、第 61 回国
連総会本会議において「障害者権利条約※(障害者の権利及び尊厳を保護・促進する
ための包括的・総合的な国際条約)」が採択され、平成 20 年(2008 年)5 月に発効
しました。
わが国は、同年 9 月に「障害者権利条約」に署名しましたが、いまだ締結には至っては
おらず、現在、同条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする障がいのある人に係
る国内法の見直し及び制度の集中的な改革に取り組んでいます。
この条約の特徴は、“Nothing about us without us” (われわれ抜きにわれわれのこ
とを決めるな)のスローガンに象徴されるように、障がいのある人の実質的な権利享
有(きょうゆう:権利や能力などを生まれながらもっていること。)上の格差を埋め、保
護の客体でしかなかった障がいのある人が権利の主体へとその地位の転換を図り、す
べてをありのままに受けいれる共感的な関係において築かれる共生社会を創造する
ことにあります。
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第1章 計画の策定にあたって
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わが国における障がい者施策の経緯
わが国の障がい者施策は、昭和 45 年の「心身障害者対策基本法」において、その
総合的推進を図ることが示され、その後、昭和 58 年には、わが国における最初の障
がい者施策に関する長期計画が策定されました。その後、平成 5 年に、「心身障害者
対策基本法」が「障害者基本法」に改められ、平成 16 年 6 月には、「障害者基本法」
が改正され、目的規定において障がいのある人の自立や社会参加の支援等が示され、
基本的理念として、障がいを理由とする差別等の禁止、
「障害者週間(12 月 3 日から
9 日まで)」の設置、都道府県及び市町村における障がい者計画の策定義務化等が規
定されました。
生活支援の分野においては、平成 15 年(2003 年)に、従来の措置制度から契約制
度への転換を目的に支援費制度※が施行され、その後、障がいがあっても地域で安心
して暮らせる社会を構築するため、就労支援の強化や地域移行の推進を図ることを目
指して、平成 18 年に「障害者自立支援法」が新たに施行され、従来、身体障がい、
知的障がい、精神障がいごとに提供されていた福祉サービスについて、一元的に市町
村が提供する仕組みに改められました。
一方、従来、身体障がい、知的障がい、精神障がいという 3 つの枠組みでは的確な
支援が難しかった発達障がいのある人に対しては、その障がいの定義を明らかにする
とともに、
「発達障害者支援法」が平成 16 年 12 月に成立し、17 年 4 月から施行され
たほか、平成 18 年(2006 年)から高次脳機能障害支援事業が実施されています。
生活環境の分野においては、平成 18 年 6 月、
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化
の促進に関する法律」(バリアフリー新法)が成立し、公共交通機関、道路、建築物
のみならず、都市公園、路外駐車場を含め、障がいのある人等が、日常生活等におい
て利用する施設や経路を一体的にとらえた総合的なバリアフリー化の推進等が図ら
れることとなりました。
教育・育成の分野においては、障がいのある児童生徒等の一人ひとりの教育的ニー
ズに柔軟に対応し、適切な指導及び支援を行うため、従来の盲・聾・養護学校の制度
を特別支援学校の制度に転換すること等を内容とする「学校教育法等の一部を改正す
る法律」が平成 18 年6月に成立し、19 年4月から施行されました。
雇用・就業の分野においては、障がいのある人の社会参加に伴いその就業に対する
ニーズが高まっており、障がいのある人の就業機会の拡大による職業的自立を図るこ
とが必要なことから、中小企業における障がい者雇用の一層の促進、短時間労働に対
応した雇用率制度の見直し等を内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律の一
部を改正する法律」が平成 20 年 12 月に成立、
21 年 4 月から順次施行されています。
このように、平成 16 年における「障害者基本法」の改正以降、わが国の障がい者
施策は、障がいの有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を支え合う「共生社会」
の実現に向けた取り組みがなされてきました。
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第1章 計画の策定にあたって
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障がい者制度の抜本的改革に向けた動き
平成 21 年 12 月、「障がい者制度改革推進本部」が閣議決定により発足し、同本部
の下に「障がい者制度改革推進会議」(以下、「推進会議」という。)が設置され、平
成 22 年 1 月から障がい者制度改革に向けての本格的な審議を開始し、
「障害者基本法」
の抜本改正による「障がい者の権利と支援に関する基本法」(仮称)の制定、障がい
のある人に係る総合的な福祉法制となる「障害者総合福祉法」(仮称)の制定、およ
び「障害者差別禁止法」
(仮称)の制定に向けた検討を開始し、平成 22 年 6 月 7 日に
は、推進会議におけるこれまでの議論を踏まえ、「障害者制度改革の推進のための基
本的な方向(第一次意見)」がとりまとめられ、平成 22 年 6 月 29 日に閣議決定され
ました。
1)障害者基本法の抜本改正
障害者基本法は、もともと心身障害者対策基本法を出発点としており、改正後も障がい者施策の基
本を定めるという枠組みを出るものではありません。障害者権利条約で示された障がいのある人の人
権とその確保のためには、締約国の義務履行を担保する受け皿として、障害者基本法を抜本改正して、
国際人権規約における「社会権」や「自由権」※を実現するための基本法として位置付け、障がいのあ
る人の人権を確保するための諸施策を規定すべきであることが示されました。具体的には、制度の谷
間を生まない包括的な障がいの定義、合理的配慮※を提供しないことが差別であることを含む差別の定
義、手話及びその他の非音声言語が言語であること、障がいゆえに侵されやすい基本的人権などを総
則で確認すべきであることが示されました。また、人権の確保、障がいのある女性が複合的差別を受
けやすい状況、及び障がいのある子どもが自らその権利を確保することに困難を抱えている状況に配
慮するといった観点から、既存の諸施策に関する規定を見直すべきであることが示されました。
さらに、政治参加や国際協力等の現行法の規定にない施策分野について新たな規定を追加すること
を検討すべきであることが示されました。また、改革期間終了後、障害者権利条約の実施状況の監視
を始めとした次の機能を担う審議会組織をいわゆるモニタリング機関として法的に位置付けることを
検討すべきであることが示されました。
2)
「障害を理由とする差別の禁止法」
(仮称)等の制定
あらゆる分野における差別類型を明らかにしてこれを包括的に禁止し、また、これらの人権被害を
受けた場合の救済等を目的とした「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)(以下「障害者差別禁止
法」という。
)の制定に向けた検討を進めることが示され、検討に当たっては、現在検討中の人権救済
制度の検討状況にも留意するものとし、差別禁止の検討に併せて、障がい者制度改革の推進に必要な
他の関係法律を一括して整備するための法案の検討も行うものとすることが示されました。
また、政府は、障がいを理由とする差別を防止するため、当該差別に該当するおそれのあるものに
ついて事例収集を行い、その結果を公表すべきであることが示されました。
3)
「障害者総合福祉法」
(仮称)の制定
現行の障害者自立支援法を廃止して、新たな「障害者総合福祉法」
(仮称)を制定することとし、こ
の制定に当たっては、制度の谷間を生まない障がいの定義のもとに、すべての障がいのある人が地域
において自立した生活を営むことができる制度構築を目指すべきであることが示されました。具体的
には、医学モデルに偏った障がい程度区分を見直すとともに応益負担を廃止し、社会モデル※(相互作
用モデル)に則した一人一人のニーズに基づいた地域生活支援体系を整備し、最重度であっても、ど
の地域であっても安心して暮らせる、24 時間介助制度を始めとするサービスを提供するものとし、そ
のためにも、入所・入院者の地域移行を可能とする仕組みを整備するものとすることが示されました。
以上のことから、第 2 次羽島郡障がい者計画の策定においては、国の障がい者制度
改革に向けた新たな動きや障がいや障がいのある人のとらえ方、障がいの範囲、合理
的配慮の解釈範囲、差別の定義等に係る事柄を的確にとらえ、社会情勢の変化と地域
の課題に対応した、新たな時代の潮流を見通した計画の策定が必要となっています。
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第1章 計画の策定にあたって
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羽島郡(岐南町・笠松町)における計画策定の経緯と新たな課題への対応
羽島郡(岐南町、笠松町)においては、「互いに助け合い、安心して暮らせるまち
づくり」をめざし、平成 13 年 3 月に、
「羽島郡障害者計画」を策定し、障がいの有無
にかかわらず、だれもが相互に人格と個性を尊重し、共に支えあう「共生社会」を実
現するため、
「リハビリテーション※」と「ノーマライゼーション※」の理念に基づく、
福祉、保健、教育、雇用、住宅、まちづくりなど、幅広い分野にわたる障がい者福祉
施策を積極的に推進してきました。しかし、この間、施設等から住み慣れた地域への
移行が進められていますが、これら地域生活に移行する人たちを支える仕組みや受け
入れ態勢が整わないために、特に、精神に障がいのある人の社会的入院※の解消や障
がいのある人の自立を支える施設の整備が十分図られておらず、地域での支援体制も
十分整っていないのが現状です。また、地域に密着した生活支援の関連施策や相談支
援機能、成年後見制度※や権利擁護※施策の充実等についても、制度の理念にかなう役
割や機能を果たしておらず、十分な運用には至っていないのが実情です。
さらに、制度の谷間にあって、いわゆる“福祉のすきま”に置かれている発達障が
いのある人や障がい者手帳を持たない人等が個別の福祉サービスを受けられないと
いう、社会福祉の理念にそぐわない矛盾があり、今後、国の抜本的な障がい者制度改
革と相まって、多様な支援のあり方等を検討していくことが喫緊の課題となっていま
す。
また、地域社会の関係性の希薄化が進む中、支援者(家族や身近な介助者)に対す
る肉体的、精神的、経済的な負担の軽減策も十分ではなく、また、障がいのある人や
支援を要する人に対し、地震などの自然災害、犯罪や事故をどのように防ぐかなど、
地域社会における安全、安心の確立もまた、大きな課題となっています。さらに、障
がいのある人に対する人権侵害や施設コンフリクト※など、いわれなき差別や偏見が
今もなお存在し、地域住民との相互理解や福祉のまちづくりをはじめとするこころの
バリアフリー※社会の浸透など、さらなる対応が迫られています。
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障がい者福祉施策推進のための指針
障がいのある人が、地域において、人間(ひと)としてあたりまえの暮らしをおく
ることができるように、個々の状況に応じた必要なサービスを自ら選択し、利用する
ことができるよう、福祉サービス等の提供体制の整備ならびに障がい者福祉施策向上
への取り組みを一層強めていかなければなりません。また、町民・事業者・行政の協
働による障がい者福祉施策の展開を、今後も着実に進めていくことが求められます。
このような観点に立って、障がいのある人の地域生活への移行の一層の促進、きめ
細やかな相談支援体制の充実、身近な地域での自立に向けた日常生活支援及び就労支
援の強化等を進めていくための指針として、社会情勢の変化に対応した障がい者福祉
施策の推進と、障がいのある人の福祉サービス等の展開の課題や方向性を明らかにす
るとともに、目標の実現に向けた具体的な事項を定めます。
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第1章 計画の策定にあたって
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障がいのある人の定義
本計画において、「障がい者」「障がいのある人」とは、「身体障がい、知的障がい
又は精神障がいがあるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける
人」をいいます。また、「てんかん※及び自閉症※その他の発達障がいを有する者並び
に難病に起因する身体又は精神上の障がいを有する人」で「継続的に生活上の支障が
ある人」も対象とすることとします。
発達障がいとは、自閉症、アスペルガー症候群※その他の広汎性発達障害※、学習障害※、注意欠陥
多動性障害※、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現す
るものとして政令で定めるもの(発達障害者支援法 第 2 条第 1 項)を言います。
「継続的に生活上の支障がある人」として、高次脳機能障がいがあります。
高次脳機能障がいとは、一般に、外傷性脳損傷、脳血管障がい等により脳に損傷を受け、その後遺
症等として生じた記憶障がい、注意障がい、社会的行動障がいなどの認知障がい等を指し、具体的
には、「会話がうまくかみ合わない」「段取りをつけて物事を行うことができない」等の症状があり、一見
して、その症状を障がいに由来するものと認識されないこともあります。
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第1章 計画の策定にあたって
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計画の位置づけ
1.本計画は、現行の「障害者基本法※」に定める「障害者計画」であるとともに、
障がい者福祉施策の基本的な指針とその実施すべき方策を示した総合的かつ
中長期的な計画です。
2.地域で育む地域福祉の推進の観点から、障がいのある人に対する支援活動や障
がい者福祉施策の推進に関する指針とします。
3.本計画に基づく事業の実施にあたっては、「岐南町総合計画」または「笠松町
総合計画」を上位計画とする関連計画との整合性を図るとともに、両町独自の
障がい者福祉施策に焦点をあて、再構築していきます。
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計画期間
計画期間は、平成 23 年度から平成 32 年度までの 10 か年を計画期間とします。
また、障がい者福祉施策の実施状況及び社会状況等の変化に対応し、障がいのある
人の意向等も踏まえ、必要に応じて見直しを行うものとします。
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計画策定のプロセス
障がいのある人、町民のみなさんを対象としたアンケート調査の実施
策定委員会委員のみなさんからの意見・課題・要望等の集約
現状の課題の把握
【策定委員会】
○これまでの取り組みやアンケート結果の検証と問題点や課題の整理
○今後の羽島郡障がい者福祉施策の方向性についての検討
○基本視点に沿った重点課題の検討
○各団体の取り組み課題と役割の明確化
計画理念に基づく新たな施策の展開
~第 2 次羽島郡障がい者計画スタート~
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