ヨーロッパにおける労使協議、労使共同決定の状況

ヨーロッパにおける労使協議、労使共同決定の状況
国 名
会社の形態
取締会(重役
取締役会と監査
会)のみの一
役会の二層構造
層制
経 営 参 加
取締役会又は監査役会への労働者代表
参加
ドイツ
○
○
オーストリア
○
○
オランダ
○
△
リヒテンシュタイン
鉱業、鉄鋼業:監査役会の1/2。
労働者取締り役の規定あり。
2000人以上規模:監査役の1/2。
但し議長は株主代表。500∼2000
規模は、1/3
労使協議・労働者代表制の形態
備 考
単一チャンネル(労 二層代表システ 労働者代表の最小
働組合)方式
ム
単位
1951年「石炭業ならびに鉄鋼業におけ
る共同決定法」(モンタン部門)。
1952年経営組織法(一般1/3)
1972年新経営組織法(2000以上1/2)
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
監査役の1/3
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
監査役会の選任に関し、労使協
議会に勧告権と拒否権
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
○
フランス
○
イタリア
○
△
労使協議会のメンバー(2∼4人)
がオブで取締役会に参加。要望
事項を提出し、理由を付した会等
を受け取る権利あり。
事業所レベル
○労使混合。使
※事業委員会、企
用者側が議長を
業委員会、中央企
務める
業委員会
△労組を補完する
代表機関を有する
イギリス
○
スペイン
○
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
ポルトガル
○
○労働者のみの
代表機関
企業レベル
ギリシャ
○
○労働者のみの
代表機関
事業所レベル
ベルギー
○
○使用者側が議
長を務める
事業所レベル
ルクセンブルク
○
○
○合同会議形式
企業レベル
デンマーク
○
○
○
○
フィンランド
○
○
ノルウエー
○
○
アイスランド
アイルランド
EU
△労組を補完する
代表機関を有する
従業員代表の取締役会参加に関する
法律(1973年)。従業員25人以上規模
(官庁含む)で2名の従業員代表の参
加。
事業所レベル
ボランタリーベース※EU 労使協定に基づく任意的な労使協議制度。わずかに、労働衛生安全
大量解雇指令、既得権指 法(1974年)、雇用保護法(1975年)、企業譲渡(雇用保護)規則(1981
令に基づく国内法
年)による労使協議の強制が見られる。労使協議の事項は、団交事
項・労働条件とは異なりる経営管理側の専権的事項であるが、近年区
別は曖昧化の傾向にある。
※ショップ・スチュワード運動は、初期の労働組合より早い。これには、
法的根拠はなく、組合規約で規定されているぐらい。その任務として
は、①組合活動、②労働者代表活動。
事業所レベル
1977共同決定法。
○
事業所レベル
○
事業所レベル
△労組を補完する
代表機関を有する
企業レベル
○
○
事業所レベル
ボランタリーベース※EU
大量解雇指令、既得権指
令に基づく国内法
○
○
事業所レベル
ボランタリーベース※EU
大量解雇指令、既得権指
令に基づく国内法
合同会議の1/3
名称:企業委員会。企業規模50人以上。労使混合、任期2年。選挙で
選ばれる従業員代表のほか、代表的組合の代表も諮問的資格で参
加。最低毎月1回開催。
※これとは別に従業員代表委員(企業規模11人以上。選挙で選ばれ
任期1年)の制度があり、小別的、集団的な苦情処理に当たる。-是正
されなければ、労働審判所への提訴も。企業委員会がない場合には、
その代行もする。
事業所レベル
1976年のブロック委員会報告で労働者
重役制を勧める。しかし、79年のサッ
チャー政権誕生で終息。
取締役会の2人∼1/3
備 考
1972年事業所(経営)組織 名称:事業所委員会。5名以上の事業規模(うち3名は事業所委員の選
法(130条からなる)
出資格を有すること)。ただし、設置義務はなく労働者のイニシアティブ
による(6割の労働者をカバー)。任期3年。複数事業所の企業では中
央事業所委員会が設置できる。その任務は、参加権(関与権、共同決
定権)を行使し、労働条件その他について使用者との協議や共同決定
を行うこと。
1945年オルドナンス法
46年修正
△労組を補完する
代表機関を有する
スウェーデン
法的根拠
1964年の「労使協議についての協約」(50人以上の現業労働者の企業
での労使同数の企業委員会の設置)は、共同決定法以降失効。むし
ろ、その法制化。民間企業だけでなく国、自治体も対象。協約を結んだ
組合を対象。通常の意思決定機関の利用も多く、取締役会への従業
員代表の参加の延長、拡大とも解釈される。他のルートとしては、労使
合同委員会、個別交渉がある。
①1994年、「欧州労使協議会指令」成立 ②2002年3月11日、「一般労使協議指令」成立。正式名称:「欧州共同体における情報提供及び協議を受ける労働者の権利を改善するための一般的な枠組みを定める欧州議会及び理事会の指令」。国内の中小企業にも労使協
議を義務づける。これによると、EU内の50人以上企業又は20人以上事業所は、企業の経営状況、雇用措置、特に雇用に影響を与える決定については、労働者代表に対して情報を提供し、協議しなければならない。協議に当たっては、労働者代表と使用者が会合して、労働
者代表のいかなる意見に対しても理由を付した回答がなされなければならない。そして、使用者の権限内である限り、合意に達する目的をもって協議しなければならない。
※「労使協議制の研究」1994年、日本労働研究機構。「EU労働法の形成」、日本労働研究機構から田口の責任でまとめた。