(事後評価) 新映像技術ダイブイントゥザムービーの研究 (実施期間:平成 18~20 年度) 代表機関:早稲田大学(代表者:森島 繁生) 参画機関:大阪大学、株式会社国際電気通信基礎技術研究所 課題の概要 観客の全身を3次元CG化して映画に取り込み、役者の視点に合う音場・映像合成を行うこと で、観客全員が役者に成り代わって映画に参加でき、没入感を体感共有できる新映像技術「ダイ ブイントゥザムービー」と、そのプロトタイプシステムの研究開発を目的とした。これは、「愛・ 地球博」で実証実験を行った、参加者自身の顔を瞬時に3次元CG化し、映画のキャストとして 演技させる「フューチャーキャストシステム」を発展させたものであり、映画のストーリー性、 ゲームのインタラクティブ性、演劇のパフォーマンス性すべてを有する、革新的なエンターテイ ンメントの創成を目指したものである。配役モデリング・映像処理技術、映像合成技術、音声音 響処理技術の研究開発を行い、開発した技術により、ゲーム・映像制作の効率化にも寄与し、基 盤技術をアウトリーチ活動を通じて公開することにより、我が国のデジタルコンテンツ業界全体 の技術力活性化を図ることを目標とした。 (1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている) 日本発のエンターテインメント技術として、ダイブイントゥザムービーに関する所期の技術的 な目標は達成していると評価される。映像、音響、表面質感等、個々の研究サブテーマにおいて 成果を上げており、発展性は高い。また、日本科学未来館でのデモンストレーション(展示)な どにおいても一応の成果が得られていると判断される。 ただし、個々の研究テーマが独立に扱われており、統一性(融合)については今後の課題であ る。また、新規成果など本研究実施での発展分が、エンターテインメントとしての新技術のブレ ークスルーとまでは言えないと判断される。今後、エンターテインメント技術として、よりレベ ルの高い技術への発展・応用を目指すことが望まれる。 <総合評価:B> (2)個別評価 ①目標達成度 参加者の表情、動作、歩容、音声などを特徴計測し、参加者の個性を反映した登場人物モデル の自動構築を実現しており、こうした成果は所期の目標に達していると評価される。しかし、従 来法を改良した部分も多く、必ずしも新規な技術が全てについて開発されたとまでは言い難い。 ベーシックな方法論についてはかなりの部分が既に作られていたものと思われ、一つ一つの要素 技術は既存技術の発展であると判断され、全体に改良型の研究内容であり、その完成度の高い融 合デモンストレーションが主目的の一つであると判断される。 ②情報発信 日本科学未来館でのデモンストレーションや、上海万博のコンペにおいてノミネートされるな ど、一定のアウトリーチ活動への取組が見られ、成果の発表についても、論文数は適切であると 判断される。しかしながら、エンターテインメントにおける研究であるにもかかわらず、デモン ストレーションは日本科学未来館でのイベントだけであり、ゲームなどへの幅広い展開の可能性 を考慮すると、必ずしも十分とは言えない。また、評価の高い学会での論文発表や特許化につい ても更なる取組が必要である。さらに、海外でのデモンストレーションや論文・学会発表など、 国際的な情報発信が弱いと判断される。コンテンツのレベルが高いとされる日本における研究開 発であり、より国際的な作品の創成も期待する。 ③研究計画・実施体制 映像、音響、表面質感等それぞれの分野において研究成果を挙げているが、それらが必ずしも 1つのエンターテインメントにまとめられたわけではない。研究体制が研究機関別になっている が、音と映像を含めたエンターテイメントとしての統合が、各研究機関のコラボレーションによ って十分に発揮されるよう、緊密な協力関係が更に望まれる。三次元音響技術は他との連携が不 十分であるが、他の技術は概ね融合が実現できてアピール力のあるデモンストレーションとなっ ていると判断される。 ④実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性 研究の実施体制と結果から、継続性においてはなお改善の余地があると思われるものの、個々 の研究テーマに関してはそれぞれ発展性が期待できる。各要素技術の成果については、社会的に 利用価値のある技術も含まれ、様々な応用が期待できる。しかし、歩行データベース化システム などの公開の準備は不十分である。また、博覧会など、広い会場でのエンターテインメントが中 心となっており、ゲームへの応用などは未知数であるが、臨場感を高める総合技術としての今後 の発展を期待する。 (3)評価結果 実施期間終了後 総合評価 目標達成度 情報発信 研究計画・ における取り組 実施体制 みの継続性・発展 性 B b c b b
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