演題番号: 1 演題名:回収済み揮発性麻酔薬の再利用システムによる犬

演題番号: 1
演題名:回収済み揮発性麻酔薬の再利用システムによる犬猫の新たな処分方法
発表者氏名:○村田朝子1),田浦保穗2),永延清和3)
発表者所属:1)山口県下関市保健所、2)山口大学、3)宮崎大学
(はじめに) 行政機関等での動物の処分は,二酸化炭素による方法が現在一般的である。しかし当市では,処々の問
題点を克服すべく様々な試みを行ってきたが,その中で,医療機関で稼動中の余剰麻酔ガス処理装置による回収済み揮
発性麻酔薬(セボフルランを主体とする)の再利用システムを用いた安楽死の方法を試み,犬における有効性について
は既に報告した。
(村田ら、日本獣医公衆衛生学会年次大会、2006)。この方法で動物が苦悶苦痛を呈することはなかっ
た。この余剰麻酔ガス処理装置においては,使用された揮発性麻酔薬は吸着剤からの脱離・回収を繰り返すことで,再
生利用が可能であり(関山、日本麻酔科学会第51回学術大会、2004),実際に,4ヵ月間の処理測定結果ではほぼ完
全な回収が実証済みである。今回、気化装置やチャンバー等を改良し犬及び猫に応用したので報告する。
(材料および方法)前述の余剰麻酔ガス処理装置(アネスクリーン○昭和電工)で回収された揮発性吸入麻酔薬(セボ
フルラン:イソフルラン=9:1)を空気をキャリアガスとして,犬または猫1頭を入れ密閉したチャンバー(塩化ビニル製・
容量310L:㈱福岡酸素作製)内に送入し,チャンバー内麻酔薬濃度を15%に維持した。そして,麻酔薬の投与開始か
ら,動物の体動消失及び心停止(心電図で確認)までの時間を測定した。
(成
績)犬13例(成犬:幼犬=7:6),猫17例(成猫:幼猫=11:6)の全例において、麻酔の導入はスム−ズで
疼痛・苦悶がなく体動が消失し,心停止に至った。体動消失までの時間は、成犬:2.7±0.5 分 、幼犬:2.2±0.2 分 、
成猫:2.9±0.5 分 幼猫:2.4±0.4 分 、心停止までの時間は、成犬:19.3±4.5 分、幼犬:17.5±1.7 分 、成猫:
25.3±6.9 分、 幼猫:30.3±3.2 分であった。体動消失までの時間で成犬と幼犬の間に,心停止までの時間で幼犬と
幼猫の間に有意差がみられた(T-test:p<0.05)。
(考
察)過去の我々の犬における報告では,苦悶苦痛は認められず,体動消失及び心停止までの時間はそれぞれ成
犬 4.7±1.9 分,24.8±4.9 分,幼犬で 3.5±1.1 分,26.0±5.3 分であった。今回用いた方法により,犬ではこれらの
時間が短縮できたと思われたが,これは今回用いた気化装置により,チャンバー内の麻酔薬濃度をより急速に上昇させるこ
とができたためと考えられる。また今回猫についても我々の方法が応用できる可能性が示唆された。現段階では我々は
一旦回収された麻酔薬の再利用を行っているが,これを回収する装置は未だ整備されてはいない。しかし,今後前述の
回収システムを我々の方法に組み込むことができれば,麻酔薬の大部分を回収・再利用することが可能になり,麻酔薬
にかかる費用を節減でき,また環境への麻酔薬(フッ素化合物)の放出を大幅に減少できるようになると考えられる。
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