診療トピックス ―変形性股関節症について―

診療トピックス
まな手術方法がありますが、
―変形性股関節症について
変形性股関節症について―
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多くは股関節の受け(臼蓋)の
足りない部分を補うように骨
当院では股関節に対しての人工関節手術や骨切り手術など
盤の骨を切って移動させる手
を数多く行っています。これらの手術は多くは変形性股関節
術が行われます。
(写真2)
症に対して行われていますが、今回はその変形性股関節症に
人工股関節手術は比較的
ついてお話しいたします。われわれの関節の表面には軟骨が
高齢であり、変形が強い場合
有り、この軟骨のお陰で痛みが無くスムーズに関節が動くわ
に行います。人工関節のデ
けですが、何かの理由で軟骨がすり減ってしまう病気を変形
ザインや素材は日進月歩であ
関節症といいます。特に股関節の軟骨がすり減ってしまい、立
り、当院では日本人専用にデ
ち上がりや歩行時に痛みを出すものを変形性股関節症といい
ザインされた新しい人工関節
ます。
(写真1)
を使用する場合が多く、手術
日本では約1%から3%程度
計画に際してコンピューター
(写真 2)
の人に発生すると言われてい
のシミュレーションを行い、その計画に基づいて手術が行われ
ますが、特に女性に多いよう
ています。
(写真3,4)技術と素材の進歩によってリハビリの期
で、実は比較的身近な病気な
間と社会復帰までの期間は大幅に短縮してきています。
のです。日本人の場合は多く
は生まれつき股関節の受けの
部分(臼蓋)の出来が不十分な
事が原因の場合が多いと言わ
れています。また最近高齢の
方で急速に軟骨や骨の破壊が
進展し強い痛みをもたらす股
関節症のタイプも注目されて
(写真 1)
います。
<症状> 立ち上がりや歩行の際の足の付け根やお尻の辺りの
痛みが現れます。次第に安静時にも痛みが出現してくる場合
もあります。これらの症状は腰の疾患に由来する坐骨神経痛
と間違われる場合が多く、Dr.の立場としても細心の注意が必
(写真 3)
要です。また徐々に股関節の動きが悪くなってきたり、足の長
さが短くなってくる場合があります。
(写真 4)
これらの手術に際に必要な輸血の血液は、全て手術の前に
あらかじめ貯めておいた血液(自己血)を利用します。またい
<診断> レントゲン撮影で関節のすき間が狭くなってきたり、
大腿骨の頭の部分が楕円に変形してきたり穴が空いてきたり
ずれの手術も感染に対して細心の注意が払われるべきであり、
します。またCTでは骨の変形が立体的にとらえる事ができ、
当院ではクリーンルームで行われています。
MRIでは炎症の程度や軟骨の障害がよく分かります。
また股関節に対する関節鏡手術はあまり一般病院では行わ
<治療> 変形の程度と痛みの程度、そして年齢などを考慮し
れていませんが、当院では8年前より導入されています。関節
て治療方針が決まってきます。変形があまり強くなく、痛みも
内の障害された軟骨の掃除や炎症組織の切除、軟骨の欠片の
軽度な場合はまず日常生活指導やリハビリが中心となってき
摘出、診断の目的で行われます。1cm程度の傷が2 ヶ所程度で
ます。股関節への負担を少なくするように減量することや股
きるだけですが、変形性股関節症の疼痛を軽減する効果が期
関節周囲の筋肉を鍛えたり、また当院の特色でもあるプール
待されます。
での歩行訓練をおこなっています。また杖をついて荷重負荷
当院ではこれらの手術を行う際は、手術前からリハビリを
を減らす事も有効です。
行っております。プールを利用した歩行訓練や筋力訓練、また
ビデオ撮影を利用した詳細な歩容指導などが特徴で抜群の手
一方これらのリハビリなどを行っても痛みが強くなってき
術成績を継続する上で大きな役割を担っています。
たり、また変形の程度が強い場合は手術を選択する事となり
ます。手術は大きくわけて自分の骨を利用して股関節を形成
このように変形性股関節症に対しての治療は、多くの治療
する骨切り手術と傷んだ関節の骨を人工物に置き換える人工
方法の選択肢の中から最適な方法を適切な時期に正しく行う
関節手術に分けられます。また当院での特色として股関節に
事が大切です。われわれは最適な治療に結びつく診断能力と
対して関節鏡手術を行う事もあります。
治療技術の磨き、患者さんの高い満足度を獲得できるように
日夜努力しております。
骨切り手術は当院では40歳未満で変形があまり強くない場
(リハビリテーション科医長 阿部 功)
合に行われます。大腿骨や骨盤の骨の位置を調節するさまざ
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