耐震壁の強度を比較するための実験装置の作製(梗概)

耐震壁の強度を比較するための実験装置の作製
山田研究室
1.目的と背景
平成7年に発生した兵庫県南部地震による大規
模地震災害である阪神淡路大震災。当時の地震によ
る直接的な死亡原因で最も多かったのが「家屋・家
具類等の倒壊・転倒による圧迫死」であった。旧建
築基準法に基づいて建てられた木造住宅には、腐朽
が多くみられるものや、そもそも壁量や壁のバラン
スが悪かったりするなどいくつか問題点が挙がっ
ていた。阪神淡路大震災をきっかけとし建築基準法
が改正されることとなり、それ以来木造住宅は耐震
性を重視されるようになった。そこで構造耐力を向
上させる方法が思案される運びとなる。
震災から3年ほど経った平成10年、木造耐力壁
をメインとし、水平力に対する強度に限らず、デザ
イン性やコストなどに優れた耐力壁を作製し競い
合う大会「木造耐力壁ジャパンカップ」が行われる
ようになった。
この研究では、出張授業や子供科学教室などで「木
造耐力壁ジャパンカップ」に準じた仕様で実験を行
えるよう実験装置を製作する事を目的とする。
2.木造耐力壁ジャパンカップとは
阪神淡路大震災の後、木造住宅の構造耐力向上、伝
統工法の継承を目的として、NPO法人木の建築フ
ォラムが主催しスタートした大会のことで、毎年、
大学や専門学校、住宅関連企業、設計事務所などが
参加している。競技方法は、実寸大(幅910mm 高さ
3000mm)の耐力壁を制限時間内に組み立て、フレー
ムで足元を固定した状態でどちらか一方の耐力壁
が破壊するまで桁をお互いに引き合わせるという
ものである。
写真1
07508
実験を行う。実験装置は一般的な軽自動車で運べる
大きさとする。実験装置には以下の器具を使用する。
・油圧式ジャッキ
一般家庭でも用いられるもの。2t(約19.6k
N)まで載荷可能。
・耐力壁の作製
ジャパンカップで作製される耐力壁は幅が910mm
高さ3000mmの大きさであるが、この研究では少しの
スペースがある部屋ならどこでも作製出来かつ木
造の伝統的工法も再現することが出来るよう、本来
の寸法より小さい物となる幅380mm 高さ700mmと、
組み立てた状態でも持ち運び可能な耐力壁を作製
することにした。(図1参照)
図1
耐力壁寸法
4.作製物
「ジャパンカップ」で用いられている反力フレー
ムは二つの耐力壁を引き合わせる競技形式で行わ
れるが、まず十分な強度がある事の確認と、工作精
度を上げるため、耐力壁一つを実験する事が出来る
装置を製作した。以下の写真が1台分の実験装置で
ある。(写真2)
木造耐力壁ジャパンカップ
3. 研究内容
・実験装置の作製
本来なら反力フレームを用いて実験するところだ
が、校外で実験する事を目的とするため持ち運んで
実験が出来るよう、オリジナルの実験装置を作製し
押本雄大
写真2
耐力壁1台分実験装置
次に「木造耐力壁ジャパンカップ」に準じた仕様で
実験を行う為2つの耐力壁を比較実験する装置を
製作する。
この実験装置は垂直方向下向き(写真矢印方向)に
力をかけ耐力壁間に渡したワイヤーによって耐力
壁同士を引き合わせて実験を行うといった形とな
る。
(写真3)
・耐力壁の作製
作製した耐力壁は以下の2つ(図2参照)である。
図2
写真3
耐力壁2台分の実験装置力の流れ
写真左側に耐力壁、右側にジャッキとなる
ジャッキによりを引かれたワイヤーの、力の方向を
この部分で変える。(写真4)
左・A案
右・B案
A案は、貫部材を多用したものである。シンプルな
デザインだが、貫を多用することでほぞから柱が抜
けやすくなるのを防ぎ水平力に対抗できるように
した。反対にB案はA案とは逆に斜め部材を多用す
ることでどのような変化が見られるのか比較とし
て作製したという理由が強いが、壁両端の柱に作用
する引抜き力を減らせるか、木材による筋かいの可
能性を追求してみた。A案、B案タイプの違う耐力
壁を製作した事で校外にて実験を行う際の対象者
の注意を、よりいっそう引けるのではないかとの狙
いがある。
5. 実験について
実験装置にはいまだ改良の余地があると思われ
る。もっと実験対象者に対して魅せることを意識し
た設計になりえるのではと、改善の余地があると考
えられる。
写真4
写真3青○部分
6.反省点・おわりに
当初の予定では実験装置も耐力壁も作製しては改
良し、という流れを繰り返しより良い物を製作する
予定であったが、二つの実験装置を製作する事がで
きなかった。もしこの研究を誰かが受け継いでくだ
さるのなら木造耐力壁ジャパンカップへの出場、そ
れを一つの目標として頂きたいと思う。
参考文献
1) 木造耐力壁ジャパンカップ公式ホームページ
http://be-do-see.com/tairyokuhekiJC/
2) 太郎丸の木造耐力壁ジャパンカップ応援blog
http://mokutai-jc.seesaa.net/
3) 平成23年度卒業生 上田麻理子卒業研究
「木造耐力壁ジャパンカップに基づく
木造耐力壁作製及び載荷実験」
http://www.yonago-k.ac.jp/Archi/grad/2011/13.
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