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MLOの対称性
- 基準値について つがる市立成人病センター
○川嶋 柳子
(Kawashima Ryuko)
【目的】
MLOのポジショニング評価では対称性が重視されるが、乳房には左右差が存在する。MMGの左右差の
原因が、乳房の左右差なのか、ポジショニング不良なのかを、MMGだけから判断するのは難しい。そのよう
な場合、左右差を考慮した基準があれば有用である。そこで、前回CCの対称性で使用した120組のMMG
を用いて、左右差を考慮した、対称性の基準値について検討したので報告する。
【方法・結果】
乳房は左右対称であると仮定して、大きさと位置の2項目に着目し、それぞれに、対称は○、非対称は×
として、目視で分類し、Fig.1に示す。次に、Fig.2のように長さを測定し、目視の結果と合わせて基準値を導
く。
1 位置の基準値
位置について検討するために、2つの条件に着目する。始めに、乳頭の位置に着目する。Fig.2のc、
c’を乳頭までの長さとし、差L1を|c-c’|とし、平均L2をc+c’/2とし、それぞれ値を求める。次に、
乳頭までの長さの、差と平均の割合L1/L2×100 を求め、5%ごとに区切り、目視で対称の件数と、非
対称の件数を集計し、Fig.3に示す。対称は10%以内に集中している。次に、乳房の長さに着目する。
Fig.2のb、b’を乳房の長さとし、差L3を|b-b’|をとし、平均L4をb+b’/2とし、それぞれ値を求め
る。次に、乳房の長さの、差と平均の割合L3/L4×100を求め、同様に集計し、Fig.4に示す。対称は
5%以内に集中している。さらに、CC同様に、2つの条件を合わせて、MLOの位置の対称の基準とす
る。
c'
c
a'
a
b'
b
Fig.1 目視の分類
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Fig.2 測定する長さ
件
非対称
対称
0
5
10
15
Fig.3 乳頭差の割合
20
%
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
00
件
非対称
対称
5
10
%
Fig.4 乳頭長の割合
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0 100
非対称
対称
95
90
85
80
Fig.5 面積の割合
75
%
2 大きさの基準値
乳房を三角形と仮定し、Fig.2で右乳房の面積S1をa×b/2、左乳房の面積S2をa’×b’/2として面
積を求める。次に、左右の面積の割合を求め、S1とS2で大きい方を100としたときの、小さい方の割合を
5%ごとに区切り、目視で対称の件数と、非対称の件数を集計し、Fig.5に示す。非対称の件数が少なく、
基準値を導く決め手に欠けるが、80%以上85%未満で、非対称の割合がやや多いため、左右の面積
の割合が85%以上を、MLOの大きさの対称の基準値とする。
さらに、MLOとCCの大きさを視覚的に比較する方法として、面積の割合の差に着目した。MLO、CC
共に大きさが対称なMMGが、120組中約100組あり、それ
らの面積の割合の差を検討した。たとえば、MLO95%、
CC90%ではその差は5%である。そのように、面積の割
合の差を求め、絶対値をとり、目視と基準値による場合
について、5%ごとに件数を集計し、Fig.6に示す。目視と
基準値で大きな違いはなく、差は15%まである。このこと
から、対称なMLOとCCでも、面積の割合の差が、15%ま
であると言える。
そこで、乳房に左右差がある場合の、大きさの基準値
について検討する。Fig.7、Fig.8、Fig.9のMMGは、今回
の趣旨がわかりやすいよう調整したので、フィルム濃度
Fig.7 左右差のあるMMG
やコントラスト、左右の位置がオリジナルと異る。Fig.7の
MMGは、目視でも、基準値でも対称とは言えないが、右
乳房に腫瘍があり、乳房の左右差が明らかで、MMGは
その差を良く反映している。面積の割合は、MLO77%、
CC81%で、共に右が小さく、その差は4%である。Fig.6
から、対称でも15%までの差があることから、乳房に左右
差があり、MLOとCCで同側が大きい場合は、15%までの
差は対称として良いと思う。
【考察】
目視と基準値の判定が一致している例をFig.8に示す。
MLOは目視でも基準値でも対称であるが、CCは右が小さく、
目視でも基準値でも対称ではない。乳房に大きな左右差は
無いが、右のD領域にのう胞があり、CCで外側を引き込めな
かった。次に、目視と基準値の判定が異なる例をFig.9に示
す。目視ではMLO、CCともに対称だが、MLOが基準値を満
たさない。この乳房も大きな左右差は無いが、MLOで右の
腹部組織が欠けるポジショニング不良で、MLOは対称とは
言えず、基準値による判定を支持する。
Fig.8,Fig.9のような原因が無くても、伸びの良い乳房では、
圧迫や伸展の加減で、MLOとCCとで逆サイドが大きくなるこ
とがあり、そのような場合は、基準値を満たしていれば対称と
して良いと思う。
【結語】
位置の対称の基準は、乳頭や乳房下縁の高さが左右で
異なる場合、ポジショニング不良との鑑別が難しいが、目安
として有効と考える。また、ポジショニグ不良による差を作り
出さないよう努めたい。
Fig.8 目視と基準値が一致
Fig.9 目視と基準値が異なる