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〈回 答〉
山形大学医学部産科婦人科学講座 高橋 俊文
山形大学医学部産科婦人科学講座 五十嵐秀樹
大阪府立母子保健総合医療センター病院長 倉智 博久
子宮内膜症の不妊治療には何が有効でしょうか?
子宮内膜症は女性不妊症の原因の約 20% を占める重要な疾患である。欧州
生殖医学会
(ESHRE)は,子宮内膜症の診断と治療に関するガイドラインを
2005年に発表したが1),2014年にその内容はアップデートされた2)。ガイドラ
インでは,エビデンスレベルに応じて治療に関する推奨レベル
(A〜D,good
practice point
(GPP)
)
を示しており,現在の子宮内膜症治療の指針として重要である。ESHRE
ガイドライン2014では,子宮内膜症性不妊の治療の項目のなかで7つの clinical question(CQ)
を取り上げ,
各治療法の有効性について推奨レベルを示している。以下にその内容を概説する。
CQ1:子宮内膜症性不妊の治療に対してホルモン療法は有効か。
子宮内膜症性不妊に対して,排卵を抑制するホルモン治療は妊孕性の向上には寄与しないの
で行うべきではない
(推奨レベル A)
。
CQ2:子宮内膜症性不妊の治療に対して手術療法は有効か。
StageⅠ/Ⅱ
(American Society for Reproductive Medicine;ASRM 分類)の軽症子宮内膜症
に対して,腹腔鏡下手術による病巣除去は術後の妊娠率を上昇させる(推奨レベル A)。卵巣
チョコレート囊胞を有する不妊症患者に対して,囊胞核出術は囊胞穿刺吸引または囊胞壁蒸散
と比べ,術後妊娠率を上昇させる
(推奨レベル A)
。医師は囊胞核出にあたり,術後の卵巣機
能の低下や卵巣機能の消失の可能性について患者に説明しなければいけない。このことは,特
に卵巣の手術既往のある場合は十分に考慮しなければならない
(推奨レベル GPP)
。この記載
は2005年のガイドラインではなかったものであり,囊胞核出による卵巣機能低下または消失に
言及しており特筆すべき点である。ASRM 分類 stageⅢ/Ⅳの重症子宮内膜症に対しては,手
術療法と手術を行わない待機療法に関する randomized controlled study は存在しない。3つ
の前向きコホート研究の結果では,腹腔鏡下手術群では術後の自然妊娠率は,57〜69%
(stage
Ⅲ)
,52〜68%
(stage Ⅳ)
,手術を行わない待機療法群では33%(stage Ⅲ),0%(stage Ⅳ)であっ
た。重症子宮内膜症に対して,腹腔鏡下手術は術後の自然妊娠率を向上させるという点で考慮
することができる
(推奨レベル B)
。
CQ3:子宮内膜症性不妊に対し術前または術後のホルモン療法は有効か。
術前ホルモン療法は,不妊治療において有効であるというエビデンスはなく推奨されない
(推
奨レベル GPP)
。しかしながら,疼痛の治療目的に行っていたホルモン治療を手術や生殖補助医
64(64) HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY VOL.22 NO.1 2015. 3
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