高情審答申第68号 平成26年 3月14日 高槻市選挙管理委員会 委員長 新家 末吉 様 高槻市情報公開審査会 会長 青 木 苗 子 異議申立てに対する決定について(答申) 平成25年7月30日付け高選委第464号により諮問のあった事案について、次 のとおり答申する。 第1 当審査会の結論 高槻市選挙管理委員会(以下「実施機関」という。 )の決定は、妥当である。 第2 事実 1 異議申立てに至る経過 (1) 公開請求 異議申立人(以下「申立人」という。 )は、平成25年5月31日付けで、高 槻市情報公開条例(以下「条例」という。 )第10条第1項の規定に基づき、実 施機関に対し、 「平成24年12月16日衆議院小選挙区選出議員選挙 選挙録」 の写しの交付の請求(以下「本件請求」という。 )をした。 (2) 実施機関の決定 実施機関は、本件請求に対し「平成24年12月16日執行 衆議院小選挙 区選出議員選挙大阪府第10区選挙区に係る選挙録(以下「選挙録」という。 )」 を対象文書として特定し、次の部分を非公開とする公文書部分公開決定(以下 「本件決定」という。)を行い、平成25年6月11日付け高選委第241号に より申立人に通知した。 <非公開部分及び非公開理由> 「選挙立会人の所属党派に係る部分」については、「個人に関する情報で あって、特定の個人を識別できるもの又は特定の個人を識別することはでき ないが、公開することにより、なお個人の権利利益を害する恐れがあるもの であり、かつ、条例第6条第1項第1号ただし書のいずれにも該当しないた め、同号に該当する」とした。 (3) 異議申立て及び諮問 1 ア 異議申立て 申立人は、平成25年7月5日付けで、実施機関に対し、本件決定を不服 として、行政不服審査法第6条の規定に基づき、異議申立てを行った。 イ 諮問 実施機関は、平成25年7月30日付けで、条例第15条第1項の規定に 基づき、当審査会に対し、異議申立てに対する決定について諮問した。 2 申立人の主張 異議申立書、反論書及び意見陳述の内容を総合すると、申立人の主張は、おおむ ね次のとおりである。 (1) 異議申立ての趣旨 平成24年12月17日に調製された、選挙立会人が真正であることを確認 して署名した選挙録を公開するとの決定を求める。 (2) 異議申立ての理由 ア 実施機関が作成した選挙録は、大阪府選挙管理委員会(以下「府選管」と いう。)に提出されることとなっている。そのため、実施機関から提出された 選挙録について府選管に対し情報公開請求をしたところ、対象文書として、 候補者の性別が訂正された後の選挙録が公開された。選挙立会人の一人であ る申立人が署名したのは候補者の性別が訂正される前の選挙録であったので、 訂正に至る手続のあり方について疑問を抱いた。 イ 本来、選挙録のような重要な文書の訂正を行うのであれば、選挙立会人を 招集し、どのような箇所についての訂正を行うのかについて適切な説明をす べきである。しかし、実施機関は、誤りの内容について具体的な説明をしな かった。そのような状況で訂正された選挙録を有効なものであるとして府選 管に提出したのはいかがなものか。 ウ また、選挙立会人が選挙会において選挙録に署名をした後、その選挙録の 写しを何人かの選挙立会人に渡していたため、候補者の性別を訂正する前の 選挙録の写しを実施機関は保管しているはずである。そして、その選挙録こ そが、選挙立会人が真正であることを確認して署名した選挙録である。 エ 本件決定により公開された選挙録は、選挙立会人が署名した文書と異なる ものであるため、実施機関は、候補者の性別を訂正する前の選挙録を公開す べきである。 (3) 実施機関の弁明に対する反論 ア 実施機関の弁明する「本事件の経過」には事実と異なる点が多く見受けら れる。 2 (ア) 平成24年12月17日の選挙会後、実施機関から電話があり、選挙録 に間違いがあったことを知った。しかし、実施機関は間違いの内容につい て具体的な説明をせず、 「もうわかっているでしょう」と説明しただけだっ た。電話を切った後、選挙録を見直し、2箇所の間違いに気が付いたが、 実施機関からは内容については聞いていない。 (イ) その時、間違いがあったのだから、もう一度選挙会で集まった人を集め て、説明をしてもらって訂正をしてほしい旨を伝えたが、検討させてほし いとの返事であった。しかし、その後、一度も連絡がなかった。 (ウ) 「希望する者に対して訂正後の選挙録の写しを実施機関より持参する旨 申し出た。 ・・・後日こちらから取りに伺う」旨の回答をした。 」とあるが、 どう処理するかについても検討してほしい段階ではつじつまが合わない。 (エ) また、実施機関は、 「当選効力に支障を来たさない程度の軽微な訂正・・・ 押印してもらった。」と弁明しているが、電話ではそのことを全く説明しな かった。 イ この選挙録は、平成25年1月末までに府選管に提出しなければならなか ったが、実施機関は2か月以上も提出を遅らせている。 「その後の連絡がない まま、 ・・・」とあるが、府選管への提出が遅れていることについて府選管に 問合せをした際、府選管を通して、申立人の考えを実施機関に伝えてもらっ ていたが、実施機関からは何の連絡もなかった。 ウ 実施機関が、申立人に対し、捨印を押印すること及び署名をすることがど ういった意味を持つのかについて、適切な説明をしていれば、異議申立てを しなかったであろうし、する必要もない。しかし、実際は、そのような説明 もなく、訂正が行われていたのである。 エ 以上の点から、選挙立会人が真正であることを確認して署名した選挙録を 公開するよう求める。 3 実施機関の弁明 弁明書及び当審査会による意見聴取の結果を総合すると、実施機関の主張は、お おむね次のとおりである。 (1) 弁明の趣旨 本件決定は妥当であるとの答申を求める。 (2) 異議申立てに対する弁明 ア 本事件の経過 申立人は平成24年12月16日執行衆議院小選挙区選出議員選挙におけ る大阪府第10区選挙区の選挙立会人に選任された。平成24年12月17日 に開催された選挙会にて当該選挙会に係る選挙録2通に署名をもらう際に、当 3 選効力に支障を来たさない程度の軽微な訂正事項があった場合に訂正を行え るよう、選挙録に選挙立会人の捨印を押印してもらった。後刻、候補者の性別 を誤って記載していることに気付き、訂正処理を行うとともに、各選挙立会人 に訂正箇所が1箇所判明した旨を伝え、希望する者に対して訂正後の選挙録の 写しを実施機関より持参する旨申し出た。申立人は実施機関からの訂正後の選 挙録の写しの提供の申出に対し、「すぐ必要ではないので、後日こちらから取 りに伺う」旨の回答をした。 その後の連絡がないまま、平成25年5月31日に申立人から実施機関に対 し、「平成24年12月16日衆議院小選挙区選出議員選挙選挙録」の公文書 公開請求があったため、公文書部分公開決定処分を行うこととし、同年6月 11日、申立人にその旨を通知するとともに選挙録の写しを提供した。この選 挙録の写しは、候補者の性別訂正後のものであった。なお、選挙録に記載され た事項のうち、選挙立会人の所属党派に係る部分については個人の思想信条に 関わるとの理由から、条例第6条第1項第1号に基づき非公開とした。 イ 申立人の主張 申立人は自らが署名した際に選挙録と、公文書公開請求を行って入手した選 挙録の写しの内容の相違について主張しているが、選挙会では選挙立会人に選 挙録の捨印を押印させる際に、訂正の可能性についても言及しており、選挙会 において確定した当選の効力に影響を与えない性別の訂正について、異議を述 べる余地はないと言える。また、申立人はその趣旨の中で、自らが署名した文 書の公開を求めているが、当該文書は本件請求に基づき提供した部分公開文書 以外には存在せず、同じく本件決定に対して、異議を申し立てる余地はないも のと考えられる。 ウ 結論 以上から、本件決定には、違法、不当な点は何ら存在しない。 第3 1 当審査会の判断理由 争点 申立人の主張、実施機関の弁明及び申立人の反論を総合すると、前提事実及び争 点は下記のとおりである。 申立人は、平成24年12月16日に実施された衆議院小選挙区選出議員選挙に おける選挙立会人の一人として、翌17日に開催された選挙会において2通の選挙 録(後に府選管に提出される予定のもの)に署名、捺印するとともに捨印を押し、 その写しの交付を受けた(以下この時点の選挙録を「本件修正前選挙録」という。 ) 。 その後、本件修正前選挙録には誤記があることが判明し、実施機関は申立人に連絡 をしたが、そのやりとりの中で、誤記の内容やその修正手続に関し、実施機関と申 そ ご 立人との間で認識に齟齬が生じた。申立人は、修正に当たっては再度選挙会を開催 すべきと考えていたが、実施機関から一向に連絡がないため、府選管に選挙録の公 4 開を請求したところ、既に実施機関が捨印に基づいて修正を施した後のもの(以下 「本件修正後選挙録」という。)が公開対象文書とされた。申立人は、再度選挙会 を開催することなく修正されたことに疑念を抱き、実施機関は不適切な文書取扱い をしているかもしれないとの思いから、本件修正前選挙録が公文書として存在する はずだと考え、平成25年5月31日に本件請求を行った。しかし実施機関は、公 文書としては本件修正後選挙録以外には存在しないと考え、本件修正後選挙録の写 しを公開対象文書としたため、本件申立てに至った 。 以上からは、本件の争点は、本件修正前選挙録の存否にあると考えられるのでそ の点について判断する。 2 争点に対する当審査会の判断 実施機関は、本件修正前選挙録については、捨印に基づき、既に誤記に対する修 正が施されている以上、もはや存在しないと主張する(前記第2の3(2)) 。 一般に、捨印とは、文書に誤記が存在する場合に、それが文書全体の効力に及ぼ す影響が皆無ないし軽微なものであれば、何らの通知なく修正を施してよいという ことを押捺者自身が了解したことを意味するものであるところ、本件修正前選挙録 を見るに、そこに存在した誤記は一候補者の性別に係るものであり、選挙の効力に 影響を及ぼすものではないと考えられ、また申立人は自ら捨印を押したことを認め ている。そうであるとすれば、実施機関が本件修正前選挙録に修正を施したという 事実は十分これを推認することができる(申立人が捨印の意義を理解していたかど うかはこの推認を左右するものではない。 )。 また、捨印に基づく修正を行う際、原本に直接書き込むのが一般的手法であると ころ、本件において実施機関が特段に他の手法を採用したとは考えにくい以上、本 件修正前選挙録はもはや存在しないものというべきであり、実施機関の主張に不合 理な点は認められない。 以上より、実施機関にとっては公開対象文書を本件修正後選挙録と解するほかな く、本件決定は妥当なものであると判断する。 第4 結論 以上により、当審査会は、「第1 当審査会の結論」で述べたように答申する。 第5 当審査会の処理経過は、次のとおりである。 当審査会の処理経過 平成25年 7月30日 ・諮問書の受理 平成25年 8月13日 ・実施機関の弁明書の受理 平成25年 8月23日 ・申立人の反論書の受理 平成25年 9月30日 ・実施機関からの意見聴取 5 平成25年11月 1日 ・申立人からの意見聴取 平成25年12月 2日 ・審査 平成26年 1月20日 ・審査 平成26年 3月14日 ・答申 6
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