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目次
はじめに
図書委員会企画班
1
新井眞幸校長先生
志賀内泰弘
『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか』
2
前田静香教頭先生
長谷川町子
『サザエさん』
3
国語科
小仲透先生
いわしげ孝
『ぼっけもん』
4
国語科
川口恒久先生
植村直己
『北極に駆ける』他
5
国語科
和田雅裕先生
眉村卓
『天才はつくられる』
6
国語科
石川典子先生
大和和紀
『はいからさんが通る』
7
国語科
澤井優里先生
永井路子
『万葉恋歌』
8
国語科
鈴木尋子先生
輿水 泰弘
『相棒』
9
社会科
池上浩之先生
海音寺潮五郎
『海と風と虹と』他
10
社会科
松井順太郎先生
『日本書紀』
11
社会科
樋口拓先生
浅田次郎
『蒼穹の昴』
12
社会科
大迫孝士先生
司馬遼太郎
『坂の上の雲』
13
社会科
山下浩平先生
荒木飛呂彦
『ジョジョの奇妙な冒険』他
14
社会科・情報科
福井浩紀先生
北条司
『シティーハンター』
15
理科
栗栖弘昌先生
白石康次郎
『人生で大切なことは海の上で学んだ』
16
理科
川端善仁先生
宗田理
『ぼくらの七日間戦争』他
17
音楽科
丹後美紀子先生
北原怜子
『蟻の町の子供達』他
18
美術科
采野要子先生
浦野千賀子
『アタック NO.1』
19
保健体育科
西村仁志先生
菊池恭二
『宮大工の人育て』
20
保健体育科
片岡弥生先生
井上雄彦
『SLAM DUNK』
21
家庭科
髙平操先生
手塚治虫
『ふしぎなメルモ』
22
家庭科
宮本広子先生
宮崎駿
『風の谷のナウシカ』他
23
家庭科
渋谷みどり先生
堺屋太一
『豊臣秀長』
24
英語科
エドワード・スパダシーニ先生
Brian W. Powle
『My Humorous Japan』
25
英語科
古野直之先生
横山光輝
『バビル二世』
26
英語科
西出敬一先生
トム・クランシー
『レッド・オクトーバーを追え』
28
英語科
三輪正子先生
マーガレット・ミッチェル
『風と共に去りぬ』
29
英語科
田中伸子先生
ナオト・インティライミ
『世界よ踊れ』
30
英語科
伊藤泰代先生
A・A・ミルン
『プーの春・夏・秋・冬』他
31
宗教科
垣内純子先生
ヨハンナ・スピリ
『アルプスの少女ハイジ』
32
理科助手
竹下司先生
山下和美
『天才柳沢教授の生活』
33
事務室
前川千春先生
吉川英治
『三国志』他
34
入試対策室
高谷憲弘先生
ダン・アリエリー
『予想どおりに不合理』
35
図書室
宇野珠代先生
池澤夏樹
『クジラが見る夢』
36
図書室
末次雅子先生
マーガレット・ミッチェル
『風と共に去りぬ』
37
アンケート結果集計
あとがき
38
図書館長
松井順太郎先生
39
【表紙・裏表紙 イラスト 高ⅡK 岡田安以花】
はじめに
毎年、先生の心に残る一冊を見ると「ああ、もう一年が過ぎたのか」と思い
ます。今年度はついに私たちが企画する側になり、月日が経つのは早いなぁと
実感したものです。特に今年は校舎の改修工事の影響により学院祭で図書委員
会として活躍する場がありませんでした。なので、いっそう気合いが入りまし
た。
ところで、今年の新成人に「理想の大人は誰か?」というアンケートを取っ
たところ、一番は「親」、そして、「教師」や「祖父母」、「先輩」……と続いた
そうです。この事から現代の人は自分の身近にいる人を理想としていることが
分かります。こういう結果になったからこそあえて、私たちは、今回のテーマ
を「この人になりたい!」に決定しました。
後輩である私たちや、先生方の思いの沢山詰まったこの冊子が先輩方のさら
なる飛躍の糧になることを祈って作成させていただきました。また生徒の皆さ
んにもアンケートに協力していただき、より良いものとなりました。在学生や
先生、保護者の皆様に、そして何より卒業される先輩方に、楽しんでいただけ
れば幸いです。
この冊子を見ることで何かを思いだせる。そのようなものに出来たら私たち
の企画は成功したことになると思います。
最後になりましたが、多忙な中ご協力してくださいました先生方、そして生
徒の皆さん本当にありがとうございました。
2011 年 2 月 15 日
新たなる旅立ちの日に・・・・・・。
聖母学院中学高等学校 図書委員会
委員長
ⅡS 黒田舞子
企画班長
ⅡF 向井惇子
教科
先生のお名前
(新井 眞幸
)校長先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
志賀内
泰弘
『なぜ「そうじ」をすると
人生が変わるのか?』
(ダイヤモンド社)
タイトルに惹かれてこの本と出会いました。実話をベースにした「そうじ小説」とでもい
いましょうか、そうじのことを舞台にしていて面白く分かりやすく、且つ人生の学びがた
くさんある本でした。
そうじなんて好きじゃない、めんどう、おっくう、散らかっていても別に不都合を感じ
ない・・・という人は、ぜひ一回読んでみて欲しいなと思います。そうじは、たかが「そ
うじ」ではない、他の人のための「そうじ」でもない、だからといって自分のためになる
「そうじ」と打算的に考えるのもいけない…なかなか奥が深く、「そうじ」で人生観が変
わるというのも、うなづけることでした。
登場人物の中では、名だたるホテルチェーンの会長鹿取謙吾(鹿取老人)の人となりに
とても魅力を感じました。青年時代にホテルのレストランでウェイターをしていた彼が、
客とのあることを契機に働き方が変わり、認められ期待され、それゆえに与えられた色々
な試練を乗り越えて、仕事的にも人生的にも大きく成長することができたこと、そして今
度は若き青年山村圭介に対して彼なりの眼差しで成長を見守り導いていること、その温か
さ厳しさに深く心を打たれました。
表裏なく努力したり、信じることにひたすら打ち込んでいれば、きっと見る人は見てい
るんだと思うことができ、そのことが人の成長に大きくかかわっていくことの嬉しさもき
っと感じ取ることができるでしょう。
人生の学びがたくさんあった中で、好きなことばは
○ ゴミを1つ拾うものは大切な何かを1つ拾っている。ゴミを1つ捨てるものは大切
な何かを1つ捨てている。
○ すべてはたった1つから始まる。その意味で0と1の差は1ではなく、とてつもな
く大きい。百も千も万も違う。
○ 気づきをたくさんするようになるためには、そうじをすること。掃除とは気づきを
教えてくれる安上がりで簡単なトレーニング。
1
教科
先生のお名前
(
前田 静香
)教頭先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
長谷川町子 『サザエさん』(朝日新聞社)
日曜日の午後6時30分、
我が家のテレビ画面は“サザエさん”です。
庭と縁側のある木造平屋建(理想のマイホーム)、ダイヤル式の黒電話、御用聞き、親
せきや近所との付き合いなど、私が育った昭和の香りを残しているところに懐かしさを感
じているからでしょうか。
一家の魅力は歌にもある“みんなが笑ってる~”という笑い声と笑顔があふれる明るい
家族というところです。たくさんの個性豊かな人物が登場しますが、もしみなさんが一家
の一員になるとしたら?私は、和服(かっぽう着)の似合うお母さんの舟(フネ)さんで
す。
お酒を飲むとかわいいけど、ここ一番では“バカモノ~”とカツオに喝を入れる厳しい
お父さんを家長としてたて、それを支える、控え目だけど芯の強いしっかり者、母として
妻として主婦として、そしておばあちゃんとして、家族の中でなくてはならない存在です。
以前は、生まれ変わるなら男と思っていたのですが、子どもに恵まれなかったので、今
は出産・育児を経験し、母として、そして孫と一緒に賑やかに暮らせたら!が希望です。
サザエさん一家のように。
教科
先生のお名前
( 国語科
書架の向こうから
)
( 小仲 透
【第119話】
)先生
「挑戦心・豪胆・向こう見ず・大胆・無鉄砲・
無邪気」などの性向を有する人物を評して言う。
「ぼっけもん」の時代
その物語は、いま読み返してみると、呆れるほど
に素朴で、片意地張りで、泥臭く、不器用な青春
が、そこに展開されている。なんだか頭の中が痒
「携帯電話の無い青春」というものが、かつてこ
くなるほどに、彼と彼の周囲の人々は、
「一生懸
の国にあった。それもそう遠くない昔のことである。 命」である。それはあの時代を生きた僕らの中に
その頃の若者たちの、恋人たちの約束は、極端な言
も確かにあったものだった。スマートな洗練・合
い方をすれば「命がけ」であった。大切な人との約
理性・便利さをもって絶対善とする現代から見れ
束は、それほどの重みを持っていた。突然、都合が
ば、
「ダサい」と一刀両断、吐き棄てられるべき
悪くなった場合、ともかくも、その約束の場所と時
日々である。
刻に赴いて、その旨を告げて謝罪してから、その場
それがいいとか悪いとか、そういう問題ではな
を辞すという、笑い話のような光景が実際にあった。 い。
「ある」時代を生きる我々は、
「ない」時代へ
漠然と現地付近に着いてから、携帯電話で相手と連
は戻れない。1980年代が、
「自分にとって」どう
絡を取りあって人工衛星のように落ち合うという、 いう時代だったかは、いま少し時を経なければ、
今の若者たちからは想像もつかないことだろう。便
よくわからないが、あの時代に戻りたいとも思わ
利さと引き換えに、
「待ち合わせ」の値打ちは地に
ない。ただ、上手に歳をとることはひどく難しい
落ちた。約束は平気で破られ、路頭で配られるチラ
ことだと、口唇を噛み締める。
「晩節を汚す」と
シのように風に舞っている。
いう慣用表現を我々が持つのは、世にそれほど
あるいは。地方から上洛してきた学生たちは、郷
里の家族に音信を伝えるのに、夜の8時を期して、
「汚れた晩節」の多いことの証左なのであろうか。
(2011/01/24)
ポケットを小銭で膨らませて、公衆電話の前に立っ
た。夜8時を過ぎると、長距離電話が割引になるの
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
だった。たしか2割引だったと思う。そうやって、
いわしげ孝 『ぼっけもん』 (小学館)
夏休みの帰省の予定を告げたり、足りなくなった生
活費の仕送りを頼み込んだりした。
いわしげ孝『ぼっけもん』
(小学館)は、1979年
の春に鹿児島の高校を卒業して、東京へ出てきた主
人公の悪戦苦闘を描く。彼は昼は書店でアルバイト
をしながら、夕方から夜に大学で学ぶ、二部(夜学)
の学生として、その東京暮らしをスタートさせる。
「ぼっけもん」とは薩摩人の気質を表わす言葉で、
教科
先生のお名前
国
(
語
科
)
(
川
口
恒
久
)先生
紹介したい本
『北極に駆ける』
植村直己 著
文芸春秋
『植村直己―
エベレストから極点までをかけぬけた冒険家』本庄 敬,
滝田 よしひろ 著
小学館版 学習まんが人物館
「冒険」
なんてわくわくする言葉なんだろう。我々の遺伝子の中にねむってい
る、開拓者精神を呼び覚ます危険な言葉だ。人は冒険に惹かれながらも一方で恐れ、
怠惰な毎日に安らごうとする。しかし、本質的に冒険好きである我々に、安らぎは来
ないだろう。
筆者植村直己は、地図に名が刻まれている日本人として、その軌跡とともにあまり
にも有名である。消えたマッキンリーの吹雪のなかで、今も雪男として彼はさまよい
続けているはずだ。われわれの世代はそれを知っている。
植村直己にあこがれたのは、小学校の高学年の頃。出会いは学習雑誌の冬休み号付
録本だった。広大な白い地球の中に、ちっぽけな犬ぞりが一点、貫いていくそのすが
すがしさは、少年を高揚させるのに十分過ぎた。
付録本を閉じ、私はわけもなく外へ飛び出したくなる。ただ飛び出すことが目的で
あるかのように。あの寂れた商店街さえ、異国のたたずまいになった。犬ぞりはなか
ったが、使い古した自転車のペダルを力まかせに漕いだ。瞬時、私は植村直己になる。
全てを追い越してどこまでも飛ばして行けそうな気がする。
だが
息があがり、疲れで足がもつれるにつれ、萎んだ風船のようにしだいに興
奮は消えてしまった。同時に、自分への落胆がおそってくる。ハンドルは元の方角へ
と傾いていた。
冒険者とは、己が真に目覚め続けている意味で、危険な言葉と戦う勇気を持ったご
くわずかな存在なのだろうか?
傍観者は怠惰な安らぎのなかで、安らぐことなく生
き続けるしかないのだろうか?
我々とは無限の距離があるかのように、今もまだ、
植村直己はマッキンリーから帰っては来てくれない。
教科(
国 語
科 )(
和
田
雅
裕
先生)
本の紹介(著者名・書名・出版社名)
『天才はつくられる』
眉村 卓
(秋元文庫・角川文庫)
大人になるにしたがって、少年の頃とは小説の読み方が変わってくる。作品世界の中に入る事をせず
に、俯瞰しながら眺めてしまうのである。それは国語教師であるから、拍車をかけるのかもしれない。
少々悲しい気もするがそれが成長の証でもあるのだろう。小生もとうとう 28 歳になってしまった……
そもそも小説の中の主人公と自分を重ねることができるのは、発達途上で未来のある少年少女たちの
特権ではなかろうか?夢をみる年頃の純粋な心が書物の中の人物とリンクしたとき、そこには現実世界
では体験することのできないことを経験したような、新しい自分が現れるのである……
それはまだ私が輝かしいほどに美しいローティーンの頃のことである。奈良市の北部にある小高い山
の上の中学校に通っていた。山を囲むように体育館と校舎が並び、校庭が広がる。グランドから階段を
下りるとプールがあり、更に階段を下りるとテニスコートとバレーコートがあるという、まさに斜面を
器用に利用して建てられた学校であった。水も滴る美男子であった私は水泳部に所属し、GWの頃から
神様が出雲にお集まりになるころまで、水界の覇者となるべく練習にいそしんでいた。水しぶきは私の
周りで宙を舞い、コースロープをきしませるほどの波紋が広がる……。このように書くと、私はクラブ
ばかりに精を出していたように思われるが、母校の中学校は文武両道をつらぬく強者が多く、私も例外
ではなかった。中学1、2年の頃、図書委員なるものを任じていたのである。聖母学院の図書委員ほど
勤勉ではなかったが、物静かな書物の世界に浸れる空間を愛する美少年がそこにはいたのである。
そんな空間で読んだ一冊に、眉村卓氏の『天才はつくられる』があった。
図書委員の松山史郎は間違って学校に配送された「学習教程」という本を借りる。まるで教科書のよ
うな本を興味本位に読みすすめていくのだが、それは超能力者になるための教本・入門書だったのだ。
超能力を持った史郎は、その本を作った組織からねらわれることになり、同じ図書委員でテニス部員の
橋本敬子・図書館の坂村先生とともに、超能力を持った天才集団と対抗するようになっていくが……。
超能力もナイフや拳銃と同じである。心の持ち方で善にも悪にも変化する。平和な心で使用するなら
ば、これほど便利なものはないだろう。しかし、悪心を持って扱えば、不正を不正とも思わない恐怖の
力となることを記していた。日常の時間に紛れ込む「ない」とはいえない仮想現実……SF作品の醍醐
味を、中学生に焦点をあわせて描かれた秀作である。生徒諸君にも是非読んでもらいたいと思うのだが、
残念ながら絶版である。
中高生のときに読んだ本は、心のどこかでその人の成長を後押しする。みんなにとってそのような本
と数多く出逢えることを祈っています。
おまけ…数年前の「この一冊」で紹介した眉村卓氏の『妻に捧げた 1778 話』が映画化されますよ。
教科
先生のお名前
国語科
(
)
(
石川 典子
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
大和和紀『はいからさんが通る』
(講談社コミックデザート)
前回、
「大好きな漫画」というテーマで書いたせいか、今回の「本の中のこの人になりた
い!」というテーマを見ても、一番に浮かんできたのは漫画でした。中学 2 年の頃だった
と思います。週刊の漫画雑誌に連載されていて同級生たちも夢中になって読んでいた漫画
です。
主人公の「紅緒」は明治時代の女学生、この頃の女性としてはいわゆる「おてんば」で
何をやらせてもドジ、花嫁修業と称するものは特に全くダメな女の子です。家庭科の編み
物の点数がとても悪く、男勝りな私は「おお、私といっしょやん!」と共感を覚えました。
それでも矢絣の着物に海老茶の袴をはき、長い髪に大きなリボンをつけて自転車にさっそ
うと乗る、この主人公の姿は、私のひそかな憧れの的でした。
そして何よりも「ええなあ!」と思うことは、生涯の恋人との出会い。陸軍少尉の伊集
院忍は彼女のいいなずけではありますが、その出会いは偶然でかつおちゃめでロマンティ
ック。どうしてこの時代の陸軍少尉が長髪の栗色ヘアなのかは未だによく分かりませんが、
乙女心をくすぐるすばらしい設定でした。
ただ、紅緒さんにはなりたいけど、
「これはいやだなあ」と思うことがひとつありました。
最終的に「少尉」と結ばれるのはいいのですが、そこへ行くまでが波乱万丈すぎることで
す。少尉が日露戦争のときにシベリアで行方不明になり、紅緒の前にはこれも超男前の「編
集長」が現れ、なんだかんだでなんとその編集長と紅緒は結婚することに。ところがこの
結婚式当日が実は関東大震災の日だったのです。なんとか生き延びてどろどろの純白のウ
エディングドレスのまま少尉と再会、お互いの愛を確認しあうという、なんでこうなんね
ん!という展開。
追体験してみたいとはいいがたい展開ではありますが、やっぱり連載少女漫画はこうで
なきゃ、ですよね。でも大地震を体験するのはつらいなあ。
全編を通して繰り広げられる「ギャグ」の数々も楽しみのひとつでした。ギャグが飛び
交うときの主人公のくだけた顔と、恋人を見つめるときの美人顔のギャップ。両方の顔を
持ち合わせる「紅緒」には親近感を感じていたのでしょう。果てしない憧れと、ギャハハ
なおもしろさと。
「はいからさん」紅緒の物語は私の青春の物語です。
-7-
教科
(
先生のお名前
国語科
)
澤井 優里
(
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
永井路子『日本人にとって「愛する」とは 万葉恋歌』
(光文社文庫)
せ こ
わが背子を
大和へやると
さ夜ふけて
あかときつゆ
暁 露に
吾が立ちぬれし
おおくのひめみこ
(万葉集
巻二・一〇五
大 伯 皇 女)
【現代語訳】
愛しい弟を大和に旅立たせるとて、私はひっそりと見送ったのだった…。
おおつの み
こ
大伯皇女は天武天皇の皇女です。歌の中の「背子」は彼女の弟、大津皇子をさします。
大津皇子は二十四歳の時に反逆罪で捕らえられ、帰らぬ人となったと言われている人物
です。大津は捕らえられる前に、ひそかに伊勢にいる大伯を訪ねていました。上に挙げた
歌は、訪ねてきた大津を帰す時の大伯の歌です。大津を待ちうける暗い運命を予感するよ
うな響きがあります。
この歌をよむと、弟を思う姉の気持ちに心を打たれます。私にも弟がいるので、特にそ
う感じるのかもしれません。家族のことを大事にできているかな?と、見つめ直すことの
できる歌だと思います。大伯皇女のように、いつも思いをかけ続けられる女性に憧れま
す!
三重県多気郡明和町にある史跡・斎宮跡に
ある大伯皇女の歌碑。この歌碑は、大伯皇
女の弟・大津皇子が眠る二上山のほうを向
1
いて建てられている。
教科
(
先生のお名前
国語科
)
(
鈴木 尋子
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
輿水 泰弘 脚本 / 碇 卯人 ノベライズ
『相棒 警視庁ふたりだけの特命係』
(朝日文庫)
クールでもどこか温かみのある杉下右京
輿水泰弘 『相棒
―警視庁ふたりだけの特命係―』(朝日文庫)に登場する杉
下右京である。「杉下右京は人材の墓場、下に就いた者はことごとく警視庁を去
る」という噂があるほどの厄介者であるという。その部下となった亀山薫も大変だ
が、杉下には部下をさりげなく思いやる優しい心もある。でも、優しさを素直に表
現できない人のようだ。「優しい心を持っていない」のではなく、「優しさを素直に表
現できない人」は今の世の中にもきっといると思う。こういう人も素敵だと私は思
う。いつもはクールでも、いざとなった時に他人に手を差し伸べられる人こそが、
私の目標とする人間である。
-9-
教科
(
先生のお名前
社
会
科
)
(
池上
浩之
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
海音寺潮五郎『海と風と虹と』(角川文庫)
『平将門』
(彌生書房)
わら
し
つ
ど
ま
藁を敷き詰めた土間しかない、薄暗い農村の一角で、疲れきった顔の初老の男女が黙々と手作業
す
をしている。と、その中の一人が、突然耳を澄ませて「しっ!」と言う。みんなが手を止め、耳を
ひづめ
澄ますと、馬の 蹄 の音が遠くから聞こえてくる。すると、彼らは口々に、
しぼ
「将門様の馬の蹄だ。
」
「将門様は死んでおられない。」
「また、きっと来られる。
」と絞り出すよ
か なた
か
うに言い、農民たちが遠くを見つめる。その彼方を討ち死にした平将門が馬に乗って駆けてゆく。
これは30年以上前に放映されたNHK大河ドラマの『風と雲と虹と』の最初の場面だ。今でも
あが
ふ さわ
関東では神田明神として崇められ、怖れられる英雄平将門に相応しい、ドラマの始まりだった。
ここで平将門を簡単に紹介しよう。彼は平安中期の人物で一族内の紛争を勝ち抜き、939 年から
は「反乱」とされた。そして、同じ時期に瀬戸内海で海賊を率いて暴れていた藤原純友と共に、歴
史上、
「承平・天慶の乱」と呼ばれている。
この小説の中で、将門は純朴で不器用な人間として描かれ、朝廷から一定の官位を得て経歴を飾
まんえん
るため都にのぼります。しかし、その頃の都には不正とやる気のなさが蔓延していて、その中で上
おとしい
くさ
手く立ち回った人間が他人を 陥 れて自らの出世を手に入れているという、どうしようもなく腐り
きり、行き詰まった所だった。まっすぐな性格の将門がこのような都で成功するはずもなく、恋人
も友人に奪われてしまう。失意の将門の前に藤原純友が現れ、純友という理解者を得て将門の人生
みにく
が動き始める。どうしようもない 醜 い世の中、純友との友情だけが「救い」であり、将門はこの交
たた
流の中から叩き壊さなければならないものの正体を意識するようになる。
その将門が郷里に帰ると、彼の領地は親戚たちによって横取りされていて失望と怒りの中、傷つ
ばんどう
きながら戦いを続け、彼の勇名が板東で鳴り響くようになる。すると、多くの人たちが次々と将門
らくいん
を頼ってくるようになり、それに応えているうちに朝廷から反逆者の烙印を押される。将門は自分
たちの郷里をただ単に守りたいと望み、額に汗する農民を大事にしようとしただけだが…。
同じ頃、朝廷を滅ぼすために立ち上がった純友も瀬戸内海の海賊を集めて力をもち、京都を目指
していました。将門と純友が「新しい時代の扉」に手をかけます。
ひ よ り み
人は誰でも、「戦い(あるいは選択)」をせまられる時があるものです。日和見をすることもでき
ます。しかし、将門のように胸を張って戦えるか、純友のように友人を支えることができるかが、
その人の価値を決めるものであり、勝ち負けだけが全てではないと彼らはおしえてくれます。
- 10 -
この登場人物に……「日本書紀 巻第二」
岩波文庫版では 日本書紀 (一)
猿 田 彦 神
社会科 松井順太郎先生
神になりたいということではなく,
「紀」
に記された猿田彦神の役割には興味を覚
えます.猿田彦神は,天つ神が高千穂の峯
に降り立とうとするとき,手前の分かれ道
のところで待っていました.
「道案内を心
得た…」 このあとの猿田彦神の活躍は・・
教科
( 社会科・世界史
)
先生のお名前
(
樋 口
拓
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
そう
きゅう
すばる
浅田次郎 『 蒼 穹 の 昴 』
(講談社文庫)
浅田次郎氏による歴史長編小説『蒼穹の昴』は TV ドラマ化され、現在 NHK で毎週
日曜日に放送されていますので、それを観ている人もいるかもしれません。しかし、
よくあることですが、ドラマ化されたものは、原作には及ばず、ストーリーにも大分
手が加えられています。興味のある人は、やはり原作を手にとってもらいたいと思い
ます。
せいたいごう
さて、この歴史小説のあらすじですが、西 太 后 が実権を握る清朝末期の中国を舞台
りょうぶんしゅう
り しゅんうん チュンル
に義兄弟の 梁 文 秀 と李 春 雲(春児)がそれぞれの道を歩んでいく中、やがて敵味方に
分かれていきます。科挙を首席(状元)で合格した梁文秀は、改革派の若手官僚として皇
帝の親政を目指し、一方宦官となった李春雲は西太后の寵を得てその側近となるので
す。
この二人の生き様はいずれも魅力的なのですが、私は自らの理想に向かって突き進
む梁文秀のひたむきさに魅かれました。
- 12 -
教科
先生のお名前
(社
会
科
)
大
(
迫
孝
士
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
司馬遼太郎 『坂の上の雲(一)~(八)
』
(文藝春秋・文春文庫)
中2・高Ⅲのみなさんには、授業で幾度も話題にした作品ですのでお許しください。また、昨年か
ら3部に分けてテレビドラマ化もされましたので、ご存知の方も多いでしょう。いや、でもやはりこ
の作品は、日本人なら知っておくべき近代日本の「成長期」を、見事に群像劇として描ききった、い
わば「国民文学」なのではないでしょうか。
日清戦争から日露戦争へ、明治の日本が急速に「世界デビュー」を果たしていくころ、伊予松山か
ら歴史を動かす人物が3人現れた。秋山好古(よしふる)
・真之(さねゆき)兄弟、そして正岡子規で
ある。好古は日本陸軍の騎兵のさきがけとなる指揮官で、日露戦争においては当時世界最強といわれ
たロシアのコサック騎兵団を破る。真之は海軍に入って、日露戦争で日本海海戦の作戦の立案者とな
り、・・・こう書いていくとほとんどあのNHKのドラマのオープニングと一緒になってしまうので、
これ以上のあらすじは省略します。
ここで私が取り扱うべきなのは、一つは明治時代の男子がいかに天下国家を自分の問題として考え
ながら、立身出世を果たしていったか、そのことへのリスペクト。戦争に良いも悪いもないのかもし
れませんが、当時の日本の指導者たちは、明らかに世界にけなされず恥をかかないための戦争をして
いた。一人ひとりがこれからの日本をいかにするか、いかにしょって立つかの考えを必死に探してい
たからこそ、プライドある戦争ができていたのだと思います。もう一つは、昔から歴史もの・中国舞
台ものを読みふけってきた私が、ここでなってみたい人物について迷いがあることです。正岡子規は
私にとって畑違いな感じはするのですが(文学ファンの人、短歌俳句に心得のある人ごめんなさい。
)、
秋山兄弟は個性が際立つ。好古は司馬氏自ら評するとおりの、
「大陸的」な豪傑タイプ。指揮官の立場
でありながらいつも戦場の最前線に立とうとします。中国ものを愛読した私としては、三国志の武将・
関羽を思い出す(どちらもお酒に強いしね)
。一方、真之は現場で兵士を率いるというより、参謀とし
て知恵をひねり出し授けるタイプ。それでいながら天才肌にありがちな冷血などでは決してなく、い
つも兵士や仲間の命がいかに奪われないか考え込み、犠牲に対して思い悩むのです。これって、三国
志でいうならば、まさに諸葛孔明?日本の戦国時代でいえば豊臣秀吉の名参謀・竹中半兵衛かも。男
子たるもの、一度はこういった世界に身をおいたらどうなる?どっちの活躍をしたい?と考えてしま
うわけです。
兄弟どちらにしても、仲間や部下との熱い交わりがあり、慕われる存在でした。国をいかに大切に
守っていこうとしたかをリーダーがストレートに表現し、人々が信頼してついていけた明治から、大
きく変質してしまった感のある昭和・平成。だからこそこの二人が輝きを放つのです。
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教科
(
先生のお名前
社会科
)
山下
(
浩平
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
荒木飛呂彦
『ジョジョの奇妙な冒険 part4
藤子・F・不二雄
ダイヤモンドは砕けない』
(集英社文庫)
『ドラえもん』(小学館)
「本の中のこの人になりたい!」という事で、二人の人物(?)を紹介したいと思います。
① 『ジョジョの奇妙な冒険 part4 ダイヤモンドは砕けない』の主人公、「東方仗助」
ジョジョの第 4 部主人公の東方仗助は、仗(じょう)助(じょ)でジョジョと(マジで一瞬だけ)
呼ばれています。彼の特殊能力(スタンド)は、「クレイジーダイヤモンド」という名前で、本人
以外のケガや病気、物の破損まで「治す」能力です。正義の心を持つ仗助は、この能力を、街で暗
躍する殺人鬼、吉良吉影を倒すために使いました。
自分の住む街を仲間と共に守り、機転の利いたアイディアで敵に立ち向かっていく姿は男らし
く、まさに僕の憧れでした(ちなみに丈助は16歳、リーゼントに学ランでいかにも不良って感じ
ですが)。そんな仗助の姿もいいのですが、仗助になって「クレイジーダイヤモンド」を使う事が
重要です。
「クレイジーダイヤモンド」は、
「治す」能力です。これ自体にお金はいりません。つま
り、負傷している人や壊れているものを、有料で「治せ」ば、ボロもうけ出来るわけです!
というわけで、
「どんな病気もたちどころに治す、天才医師(ただし、無免許)」というどこかで
聞いたことのある商売をして、稼ぐだけ稼ぎたいと思います!
② 『ドラえもん』の主人公、「ドラえもん」
まぁ、正直なところ、ドラえもんになれたら最強なんですけどね。
やっぱり、
「どこでもドア」がいいですね。安全が保障されているし、
時間はかからないし・・・こりゃ要人輸送をするしかないですね。
アメリカの大統領だったら、この安全・時間ゼロの輸送手段に、いくら
出してくれるでしょうね・・・考えただけでもワクワクします。
・・・なんか、金儲けのことばっかりで、いやしい本性があらわになってしまったかも・・・
・・・んー、まぁいいや。いや、こんなんやから、ホ qgqw リョ 8y ヒ w ヤゲヴォ
あとは、ディズニーランドのダンサーになって、ミッキーと踊りたいなぁ。楽しそう☆←
以上
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教科
( 情報・社会
)
先生のお名前
(
福井 浩紀
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
漫画
北条司『シティーハンター』
(集英社)
今回の企画として、漫画『シティーハンター』の主人公、冴羽りょうを紹介したいと思います。
『シ
ティーハンター』は、週刊少年ジャンプに連載された北条司先生によるもので、主人公は「シティー
ハンター」と呼ばれる裏の世界 NO.1 スイーパー冴羽りょうと、そのパートナーの槇村香(最初は兄
がパートナー)が依頼を解決していくハードボイルドコメディである。
冴羽りょうは、コルト・パイソン(357 マグナム)銃を愛用し、愛車はミニクーパーである。狙い
の正確さは、撃ち放たれた弾丸に狙いを定め撃ち返すという精度の高さである。この漫画の特徴とも
言える話である。
仕事中は、その強靭な肉体と運動神経であざやかに敵を倒す。一方、普段はボーっとしていてズッ
コケである。
しかし、この漫画に出てくる主人公とその周りのキャラクターはすごく温かい性格で描かれ、どん
な状況でも、相手のことを思いやるキャラクターが沢山登場する。そこがこの漫画の魅力でもある。
仕事の内容は、ボディーガード、探偵、殺しなど色々あるが、主人公の冴羽りょうは基本的に女性
からの依頼しか受けないため、
『シティーハンター』には依頼人に美女が登場する話が多い。
ストーリーの形は大体決まっていて、依頼人の美女は、最初冴羽りょうのいい加減さと女好きに嫌
気がさす。しかし、彼の優しさと、いざとなったらなんとかしてくれるというカッコよさに惚れる。
そのような主人公がモテないわけはない。しかし、彼は恋人をつくらない。それは、スィーパーと
いう仕事上、同業者の敵が多からである。彼は、恋人を守る自信がない(過去に愛する人を失った経
験から)からという。裏の世界の NO.1 なのに。そこが、めっちゃカッコいい。
(でも後にパートナー
の槇村香とは結婚する。詳しくは『エンジェルハート』で描かれている)
悪に立ち向かう主人公冴羽りょうの痛快ハードボイルドコメディ。心の温かい人が登場するストー
リーがたくさんありますから、是非読んでみてください。
(初期はハードボイルドが強いので、中期か
ら後半をお勧めします。アニメーションもありますので・・・・是非)
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教科
(
先生のお名前
理
科
)
(
栗栖
弘昌
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
白石康次郎
『人生で大切なことは海の上で学んだ 』
(大和書房)
ヨットを通して自身が色々と苦労や困難を切り抜けて得た教訓や人生観を主に子供からこれ
から社会に出ようとしている青年への啓発本という形で書かれている。白石康次郎が行なって
きた具体的な冒険を書いた本ではない。
ヨット競技は自分の限界に挑戦して自己実現することを目指す競技です。
僕も、人生の壁にぶつかり苦しんでいた時、ヨット競技を通して自己を見つめ直して生きるこ
との意味を真剣に考える様になりました。
人脈が無い・お金が無い・時間が無いとあきらめることが問題ではありません。
夢や目標に到達するまでいかなる困難も絶対乗り越えるという固い意思を持って 取り組むこ
とが出来れば、時間が掛かるかもしれないが必ず結果は残る。
大きな夢を持った人は、まるで強力な磁石のように様々な人を惹きつけ輝いている。
この本を読んで「少年よ大志を抱け」という言葉の本当の意味がようやく分かったような気が
する。
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教科
(
ん
先生のお名前
理
科
)
(
川
端
善
仁
)先生
自分が思い描いていることに対して、
「自分にないものを、持っている」ことに関し
て、
“憧れる”という想いを持ちます。私が今回の企画テーマを聞いて、思い浮かべた
人物は 2 人です。
宗田理著『ぼくらシリーズ』(ポプラ社)に
登場してくる「相原徹」
。
このシリーズは、知っている人も多いと思います。中学 1 年
の夏休みにクラスメート全員で廃工場に立てこもり、説得に来
たおとな達を手玉にとってやっつけていく、「ぼくらの七日間戦
争」を最初とするシリーズものです。そこに登場してくる相原
徹は、全体を見渡し、的確な判断ができる性格を持っています。
「ぼくら」仲間のなかでは参謀的役割を担っています。
高橋陽一著『キャプテン翼』(集英社)に
登場してくる「若林源三」
。
若林源三は、昨年の冊子にも投稿していますが、私自身が
サッカーをしていた頃、ポジションが同じゴールキーパー(GK)
ということで憧れを持ちました。他に出てくる GK と比べると、
“静”タイプの GK ではあるのですが、絶対的守護神として存在
感がある人物です。
私は、どちらかというと、がむしゃらにつっぱしる主人公的
ふかん
タイプのような人物よりは、全体を俯瞰的に見渡す視点を持っており、
それでも存在感を示すようなタイプの人物に憧れを持っています。
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教科
(
先生のお名前
音楽科
kk お
)
(
丹後美紀子
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
「北原怜子」関連の本
(下記参照)
㊟北原怜子さんは、戦後の混乱期に生じたバタヤ(廃品回収に携わる人々)
の町=蟻の街をコルベ神父の弟子であるゼノ修道士と共に支え続けた女
性。アリの町のマリアと呼ばれた女性。
なりたい人。わたしは、いろいろな小説、映画、アニメに至るまで、読んでい
るとき、見ているとき、いつもとても感動します。そしていつも、その登場人
物に自分を置き換え、なんでこんなになるの、その時こうなったとしたらこう
なるのにと、悩んだり、悔やんだり、喜んだりと想像していろいろ筋をかえて
納得してしまいます。ですから登場人物を素晴らしいとか、素敵だとは思って、
あこがれはしますが、すぐになった気分になってしまうので改めてなりたいと
思ったことは一度もありません。例えばマザーテレサのあの信念と行動は尊敬
してやみませんが、なりたいとは思うだけで、おこがましいのではないかと思
ってしまいます。蟻の街の北原怜子にも心が非常に動きましたが、涙がとまり
ませんでしたが、まだまだ自分を犠牲にはできない甘さがぬぐえず、あこがれ
にのみ留まってしまいます。本当は努力がイヤなだけなのかもしれません。
でも生徒のみなさん、どうぞみなさんのなりたい人にあこがれつつ、努力し
続けてくださいね。心から応援したいと思います。
①
北原怜子 『蟻の町の子供達』 三笠書房、1953 年。
②
北原怜子 『蟻の町の子供たち』 聖母の騎士社〈聖母文庫〉、1989 年、再版。
戸川志津子 『北原怜子』 大空社〈シリーズ福祉に生きる〉、1991 年。
松居桃楼 『蟻の街のマリア』 知性社、1958 年。
松居桃樓 『アリの町のマリア北原怜子』 春秋社、1998 年、新版。
やなぎけいこ 『アリの町のマリア:愛の使者北原怜子』 ドン・ボスコ社、2002
年。
③
④
⑤
⑥
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教科(
本の紹介
美術・技術
「アタック No.1」
釆野 要子
)
(
集英社(現在はホーム社漫画文庫)
先生 )
浦野千賀子作の漫画
今から 40 年ほど前、スポーツ根性(スポ根)漫画として有名で、当時
は『サインは V!』と並ぶ 2 大バレーボール漫画として知られていた。
当時は(集英社)から全 12 巻が刊行、少女漫画の単行本として初めて
10 巻を超えた作品となった。
その後『アタック No.1』全 7 巻 (ホーム社漫画文庫)として発売。続編
に『新アタック No.1』がある。また、小沢花音リメイク版の『新・ア
タック No.1』が『マーガレット』に連載されている。
「Wikipedia
フリー百科事典」参
あらすじと主人公
富士見学園中等部に転校してきた主人公・鮎原こずえが、
不良グループを率いてバレーボール部に挑戦。力が認めら
れてキャプテンとして迎えられる。鮎原こずえと仲間達は
様々な試練を乗り越え世界を目指す。
鮎原こずえ
目が大きく、黄色りぼんのポニーテル。
性格はかなり気が強く、負けず嫌い。も
ともとの資質がリーダーっぽい。最初は
病弱であったが、すぐに回復。中学では
日本ジュニアのメンバーに選ばれ、高校
本との出会い
小学校のころこの漫画を読んで、バレーボール
にはまった。そして主人公がさまざまな困難に
も負けず前に向かって進んでいく姿は、かっこ
よくて自分もそうなりたいと思った!憧れで
あり理想の女性像!当時日本女子バレーボー
ルもすばらしく、友だちとチームをくんでバレ
ーボールに励んだ毎日。漫画なのに絶対自分も
同じように魔球を操れるようになれると深く
深く信じ、お手本にしていた。漫画もぼろぼろ
になるまで読み、アニメも涙して見ていた。主
題歌のレコードも大事にし、時折懐かしい自分
に会いたい時には聞いてみたり…。私にとっ
て、年齢はかわっても主人公「鮎原こずえ」は
凛凛しく前向きに生きていく理想の女性の
一人である。
では、唯一全日本のメンバーに選ばれる。
友達以上恋人未満の同級生、死を乗り越
え、大学では恋愛進行中。
木の葉落とし、空中回転レシーブ、ダブルアタック、
ダブル回転アタック、風船アタック、竜巻落としなど
で、ついには世界のMVP、アタック No.1となる。
- 20 -
教科
(
先生のお名前
保健体育科
)
(
片
岡 弥
生
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
井上雄彦『
SLAM
DUNK』
(集英社ジャンプ・コミック)
この本は学生時代にバスケットをしていたころからの愛読書です。
桜木花道は素直な考えをもっていて単純とも言えるが、あきらめな
いこと、目標に向かって努力し続けるという点では、生まれ変わっ
て桜木花道の人生を歩んでもいいかなと思える。
恋愛に関しては不器用な点は…。
- 21 -
教科
(
家
庭
科
)
先生のお名前
(
髙
平
操
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
手塚治虫 ( 講談社手塚治虫漫画全集
作・画:
)
「ふしぎなメルモ」
ふしぎなメルモ
手塚治虫
魔法のキャンデーを持ったメルモが大活躍!
メルモのママは、幼いメルモと弟のトトオを残して交通事故で死んでしまった。メ
ルモのことが心配でたまらない天国のママは、神さまにたのんでミラクル・キャンデ
ーを作ってもらい、メルモに手渡した。その青いキャンデーは、食べると 10 歳年を
とり、赤いキャンデーは、食べると 10 歳若返ることができた!魔法のキャンデーを
持ったメルモの大活躍がはじまる!
♪メルモちゃん メルモちゃん メルモちゃんがもってる
赤いキャンディー 青いキャンディー しってるかい?? ♪
小学生の低学年ぐらいの時のことだったと思います。
日曜日の夕方だったでしょうか?、この音楽が流れてアニメが始まり、
メルモちゃんが不思議なキャンディーを食べて、
美人な女性になったり、赤ちゃんになったり、
食べすぎてお婆ちゃんになったりするのを、ドキドキして見ていた・・、
そんな記憶があります。話の内容はあまり覚えていないのですが、
メルモちゃんになってキャンディーを食べてみたいな・・ということは、はっきり覚えています。
最近、違う漫画家の手でリニューアルされたらしいとの情報がありますが、
30 年以上前に、こんなことを考える手塚治虫さんはすごい!!
他になってみたい(みたかった?)ものには
「リボンの騎士」のサファイア
「ベルサイユのバラ」のオスカルもあります!
- 22 -
家庭科
★ナウシカ
宮本 広子 先生
宮崎駿『風の谷のナウシカ』(徳間書店)
宮崎駿さんの作品『風の谷のナウシカ』の主人公です。以前、ナウシカの話をしたとき、生徒の中には‘知ら
ない’と言う人もいて、ショックを受けたことがあります。皆さんは知っていますか?
ナウシカは小国「風の谷」のお姫様です。風の谷の人々は「腐海」と呼ばれる死の森やそこに棲む巨大な蟲た
ちに脅えながらも、穏やかに暮らしていました。しかし突然、大国トルメキアの戦乱に巻き込まれてしまいます。
ナウシカは戦乱を鎮め、人間と腐海や蟲とが共存できる世界をつくるため、自ら戦いの中に身を投じます…。自
分の命をかえりみず世界を救うために突き進む姿がとても素敵で、その美しい強さを持ったナウシカの生き方に
とても感動しました。私は小学生の頃にこの作品と出会い、
「ナウシカになりたい!ナウシカのような人になりた
い!」と本気で強く思いました。その頃の感情は今でも懐かしく思い出されます。
作品中に、ナウシカが誰にも懐かない「テト」という名のキツネリスに出会ったときのエピソードがあります。
テトはナウシカが差し出した手に噛みついてしまいますが、ナウシカは噛まれていてもじっと耐えて「怖くない
…」とテトに言い聞かせ、ついにはテトを懐かせてしまいます。自分の痛みよりも相手を深い愛で包み込んでし
まう心の力に惹きこまれました。私は当時これにならって、飼っていたインコ達の中で唯一気が荒くて懐かなか
ったインコに同じことを試してみることにしました。インコは私の指を噛みました。私は痛みに耐えて優しくイ
ンコの目を見つめ「怖くない…」と一生懸命に伝えました。が、くちばしは強く食い込んでいく一方で…結局上
手くいきませんでした。まだまだナウシカへの道はほど遠いなぁと痛感したものです。私にとってナウシカは光
り輝く憧れの存在でした!
★紫の上
大和和紀『あさきゆめみし』(講談社)
私のお気に入りの漫画「源氏物語
あさきゆめみし」。以前にも紹介したので知っている人もいてくれるかな。こ
れを読むと、平安時代の人々もこの物語に夢中になって読んでいたんだろうなぁと思わずにはいられません。これ
を読むことで、歴史で勉強する人物にも急に血が通っていったように感じました。
紫の上は、光源氏に誰よりも大切に愛された最愛の妻です。美しい容姿を持つだけでなく美しい心を持った女性
で、まさに才色兼備。しかし源氏との間に子どもが授からなかったり…様々な苦悩に心を痛めながら生きている姿
はとても切なく胸が締め付けられる思いがします。
なので、この人になりたい!という気持ちではありませんが、美しさもはかなさも全てひっくる
めた紫の上の姿が、私にはとても魅力的?にうつったのかな、心がぐいぐいと引き寄せられてしま
いました。
余談ですが、インターネットに「源氏物語占い」というサイトがあり、生年月日と性別を入れて
占うと、源氏物語の登場人物が表示されます。なかなか面白いですよ。ちなみに私は源氏物語の宇
治十帖に登場する「大君」と出ました!あなたはいったい誰に近いと占われるかな?
★タケコさん
望月令子「タケコさんの恋人」
(講談社)
タケコさんこと北条猛子。秘書課に勤務し仕事はすべて完璧なバリバリのスーパーキャリアウーマン。遊ぶこと
にかけても完璧で、夜の街を颯爽と歩き、クラブでは美しいお姉さまとして注目の的。昼夜全く違う顔
を持ちながら全てを完璧にこなすタケコさんだが、唯一放浪癖のある恋人には少々振り回され気味なの
かな?でもまたそこが可愛かったりもするんです。
私もタケコさんのように仕事もプライベートも完璧にこなせる女性になりたい!とずいぶん昔に思った
ものだなぁ…。だが現実が厳しい…。頑張れ私!
教科
(
先生のお名前
家庭科
)
(
渋谷
みどり
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
堺屋太一『豊臣秀長』 (PHP出版)
●豊臣秀長(天文9・1540~天正19・1591)
天下人、豊臣秀吉の弟で、同父説、異父説があるが、血のつながりがある。元亀元年(1570)4月、対朝倉戦で浅
井長政寝返りの報で、信長軍撤退の折、金ヶ崎城の殿軍(しんがり)を務めた。最も危険とされるしんがりの役を兄が
申し出て、秀長がバックアップして戦功を支えた。百姓の出で出世するには、命がけで目立った功績を・・と願う兄の
強力な助っ人が秀長であった。
秀長は幾度も危険な戦を経験している。連戦で疲弊していても兵力を立て直し、兵糧・武器の調達を行い軍力の維持も
務めた。本能寺の変後の中国大返し、天王山の合戦、賤ヶ岳合戦など重要な局面で秀長は兄を支えて活躍している。秀
長は兄、秀吉と共に戦を100戦以上したにも関わらず戦死していない。強運の持ち主である。
秀長は、秀吉の補佐役として、領民や武士間の紛争を誠意を持って双方が納得いくように配慮したという。領民の間
で一揆が起きなかったのは秀長の功績によるところが大きい。
天正5年(1577)8月、上杉謙信軍が加賀に攻め寄った時、出陣していた秀吉が柴田勝家に逆らって、撤退し長
浜に戻ってきた事件があった。秀吉は軍規に違反した罪で信長から謹慎を命ぜられた。このとき数か月で秀吉の謹慎が
解かれたのは秀長の尽力によるという。ともすると短絡的な行動に出る秀吉をカバーするのも秀長の仕事であった。
秀長は教養があり、人心をまとめるのに才長けていた。性格が温厚、沈着冷静、人望も厚かったという。いつも出し
ゃばらず、兄を第一に立てる奥ゆかしさがある。お金の使い方が質素・堅実で羽柴家時代も豊臣家時代も財産管理もそ
つなく行った。豊臣政権下、秀長は、紀伊・四国・九州を平定し秀吉の天下を支えた。51才で大和郡山城主として亡
くなる。秀長が生きていた頃は、穏やかな豊臣政権も彼の死後、残虐性を増していく。
■感想■・・豊臣秀長のドラマ化、熱望・・・
(沈着、冷静、温厚だった秀吉の弟)
【墨俣の一夜城をはじめ、有名な合戦シーンが次々に登場し、一気に読み進めることができる。戦国時代の名武将・名
場面のオンパレードで実に楽しい。
】
【秀長の秀吉への絶大なる忠誠心と兄弟の結束の背景】
①共通の認識・・百姓の出自であったことで兄弟が互いにその貧しさを知っている。頑張って功績をあげないとすぐ干
されるという現実を互いに認識している。
②兄の出世志向と、その努力・実績を弟が目の当たりに見ている。
③この時代にしては、男兄弟が、兄と弟だけで少ない。4人兄弟、5人兄弟なら軍功を奪い合い、騒動になった可能性
もある。幸か不幸か、秀吉に跡取りができない、男兄弟が少ない、有能な親族、頼れる親族がいない・・ということも
この兄弟の結束を強固なものにしたと思う。秀長あっての秀吉、秀長あっての豊臣だったと思う。
教科
(
先生のお名前
英語科
)
(スパダシーニ・エドワード
)先生
「My Humorous Japan」
Brian W. Powle 著
(NHK 出版)
“My Humorous Japan” is a collection of short stories that were put
together by the British author, Brain W. Powle, from the collected
stories from the NHK Radio Eigo Kaiwa magazine. It should be noted
that since the author is a long-time foreign resident of Japan, many of
the stories he tells us about are similar to some of his own experiences.
So when he tells us these stories, it is as if he is telling us about his own
personal experiences. You can see Japan through his eyes, and when
you do, you may find his observations as a foreigner very interesting.
The book has many drawings that help explain the stories he is telling
us about. He quotes one Japanese reader who says it all:
“‘I was surprised that I could read these stories without a
dictionary. The short simple sentences in modern English make
them easy to understand. The cartoons are funny and make the
stories even easier to understand.’ ”
Each chapter is a short story in itself so you can pick up this book and
start reading it from any chapter. I admire Mr. Powle’s ability to take
the simplest story and make it interesting and easy to understand as he
does. I would like to be more like him in this way. I heartily recommend
this book to anyone who enjoys reading English.
教科
(
先生のお名前
英語科
横山光輝『バビル二世』
)
(
古野
直之
)先生
(秋田文庫)
当時小6だった僕は、中学受験を控え、お気に入りのラジカセを
押し入れにしまい込み、テレビも封印して学習机に向かうという、
今にして思えば相当堅苦しい日常を過ごしていた。
そして週に何日かは、学校から帰るとすぐに支度をして自転車
で学習塾へ向かうのだが、実はその通り道に一軒の気になる店が
あった。いつもは通り際にちらっと視線を送るだけなのだが、そ
の日はたまたま家を早く出たためか、時間があった。僕はためら
いながらもその店の前で自転車を止めると、古びた木枠のガラス
戸を体一つ分だけ開けて、恐々中に入っていった。
「いらっしゃい。」
カウンターで単行本を読んでいた中年の店主は、視線をこちら
に向けることもなく低い声でそう言った。薄暗く狭苦しいその店
の中程に直立したまま、僕はどうしていいのか分からず、ただ下
を向いてモジモジしているしかなかった。店主は相変わらず読書
に没頭している。ほとんど途方に暮れそうだったが、僕は勇気を
出して顔を上げ、左右をキョロキョロと見渡してみた。予想以上だった。壁一面に置かれた書棚
には、数え切れないほどの漫画本がぎっしりと並べられていたのだ。
足が自然に書棚の方に動いた。そして一つのタイトルが目に飛び込んだ。
『バビル2世』!
かつてテレビアニメの再放送を夢中で見ていたあの『バビル2世』の単行本に、こんなところ
でお目にかかるとは!迷わず一冊手に取った。
主人公のバビル2世は、3つのしもべ(ロデム・ロプロス・ポセイドン)とともに、世界支配
をもくろむ悪の帝王「ヨミ」と戦う超能力少年である。彼は多彩な超能力を自在に操ることがで
きるのだが、その中でも、遠くにいる相手に自分の意志を伝え、さらには相手の心を読み取る「テ
レパシー」や、念力で物を動かす「サイコキネシス」などが、当時小学生だった僕には何とも新
鮮で魅力的だった。バビル2世のように超能力を持てたら、どんなにすごいだろう!バビル2世
は、ヒーローに対する憧れの気持ちを大いにかき立ててくれた正義の味方なのである。
砂の嵐に かくされた
バビルの塔に 住んでいる
超能力少年 バビル 2 世
地球の平和を 守るため
三つのしもべに 命令だ「ヤァ!」
怪鳥ロプロス 空を飛べ!
ポセイドンは 海を行け!
ロデム変身 地をかけろ!
(アニメソングより)
忘れていた記憶が蘇る。借りて帰ろうと思った。
第何巻を借りたのかは記憶にない。ジーンズの前ポケットから代金の30円を取り出し、カウ
ンターの上に置いた。そして店を出ると、いつもより少しだけ重くなったかばんを自転車の前か
ごに入れ、自転車をこぎ始めた。
塾から帰宅した。普段は一目散に食卓へと向かうのだが、その日はすぐに2階の勉強部屋に駆
け込み、学習机の右下あたりの引き出しに借りたばかりの本をしまい込んだ。そして夕食後、部
屋に戻って再び引き出しを開けた。一瞬右手後方に視線を送ったが、もちろん部屋には自分以外
の誰もいない。『バビル2世』を両手で持ち上げた僕は、体を右90度にひねったまま顔を下に
向け、いつでも引き出しにしまい込める体勢でページをめくり始めた。
「お、おもしろい!」
一気に読み終えた。ほんの15分くらいだったか。最終ページで、ポセイドンがバビル2世の元
へと向かうシーンが描かれていたのを今でもはっきり覚えている。当然のことながら、次が読み
たくなった。僕は『バビル2世』を引き出しに収めると、体勢を戻し、いつもの学習参考書を開
いた。
二日後、再び店を訪れた。
「あの、これ...」
僕は『バビル2世』をカウンターの上に置くと、すぐに壁際の書棚に目をやった。
「次の巻、次の巻...」
何度も探したが、次の巻はなかった。貸し出し中だった。
「ふぅ、貸し出し中か...」
僕は無言で店を出た。そして自転車にまたがり、塾へと向かった。
その後、その貸本屋に足を踏み入れることは二度となかった。そして僕は、いつしか中学生に
なっていた。
気が付けばあれから30数年が経った。何年か前、その貸本屋のあった通りを車で通ることが
あったのだが、その店が跡形もなく消えて無くなっていたことは言うまでもない。
完
教科
(
い
先生のお名前
英
語 科
)
(
西
出 敬
一
)先
生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
トム・クランシー・著
井坂 清・訳
『レッド・オクトーバーを追え』(文春文庫)
Tom Clancy『THE HUNT FOR RED OCTOBER』
(Jack Ryan)
ヒーローといえば、スーパーマンやバットマンやスパイダーマンのような超人的な能力を
発揮し敵を倒すパターンが定番で、このタイプの映画を私は好んで見てきたが、本を読んで
とても気に入り憧れるようになったヒーローといえば、ジャック・ライアンである。彼は、
作品の中で次のように紹介されている…。
「彼は肉体的には目立たなかった。身長は6フィート1インチ、体格は普通だが、イギリス
の惨めな天候のせいで運動不足になり、腰のあたりに少々肉がついている。青い目の表情は
虚ろに見えかねない。しばしば考えに没入し、心がデータを探ったり、執筆中の本の資料を
捜しているときは無表情になる。ライアンがよい印象を与えたい相手は、彼を知る人びとだ
けだった。ほかの人からどう思われようと、ほとんど気にならない。彼は有名になろうとい
う野心はなかった。…」
主人公ジャック・ライアンは、アメリカ中央情報局(CIA)のアナリスト(分析官)で、
沈着冷静に情報を分析し、次々に起こる危機的状況を乗り越えていく。この作品は、ベルリ
ンの壁が崩壊する前の米ソ冷戦時代に、核兵器を搭載したソ連の最新式原子力潜水艦が、ア
メリカに亡命を企てるというストーリーで、亡命の情報を得たアメリカと、亡命を阻止しよ
うとするソ連との息づまる駆け引きの中で、ジャック・ライアンが見事な分析力と行動力を
発揮し大活躍をする。ものすごく緻密に描かれていて、専門用語がたくさん使われているた
め難しく感じるかもしれないが、話にリアリティーがありメリハリが効いていて引き込まれ
るストーリー展開である。
この作品を読んでから、ジャック・ライアンを気に入り、彼を主人公
にした作品は出版される度に読んできました。翻訳版で読むだけでなく、
英語に自信のある人はペーパーバックで楽しむこともできます。ほとん
どの作品が映画化されているのでDVDでも楽しめます。なお、映画で
は、ハリソン・フォードがジャック・ライアンに扮しています。
1
- 30 -
教科
(
先生のお名前
英語科・専修科
)
(
伊藤
泰代
)先生
紹介したい本の書誌(作者名、書名、出版社)
中川千尋、A.A.ミルン
『プーの春・夏・秋・冬(Bilingual comic book – Winnie the Pooh)』
(講談社)
Benjamin Hoff 『The Te of Piglet』
(Penguin (Non-classics) )
今回のテーマは「本の中のこの人になりたい!」ですが、
「人」ではなく「2匹の動物」をご紹介します。
普段、授業でよく「プーさんが好きだ。」と言っていますが、
今回取り上げるのは天衣無縫なプーさんの方ではなく、プーさんと
良いコンビを組むピグレットです。2匹は、関西のお笑いで例えると、どちらもが「ボケ」
を担当する「ボケ・ボケ」コンビです。ですが、性格はずいぶん違います。
プーさんはおおらかでマイペース、たとえ問題が起こっても失敗しても自分の都合のよ
いように解釈して、自分も気付かないうちに周りの人に助けられて問題を解決してしまい
ます。
一方、小心者のピグレットはプーさんに振り回されてばかり。みんなと比べて自分(の
体)は小さく自分には大きなことや重要なことはできないと思っています。自分の心の中
の臆病さと、いつも葛藤しながら勇気を振り絞って問題に立ち向かおうとします。
2匹のかみ合わない会話やプーさんの天性の愛くるしさやピグレットの挑戦など、何度
読み返しても飽きることなく新たな発見があります。ぜひ、ご一読ください。
1
- 32 -
教科
(
先生のお名前
理科助手
)
竹下
(
司
)先生
山下和美『天才柳沢教授の生活』
( 講談社漫画文庫 )
この漫画の主人公である柳沢良則は、経済学部の教授である。道路は右側を歩き、角
は直角に曲がって横断歩道以外では道を渡らないというほど交通ルールを厳守し、規則や
マナーなどに誠実に行動する。それらの違反者に対して、他人に迷惑をかけたり危険で
ある場合は注意するが、そうでもない場合、違反者に注意することはない。体内時計も正
確で9時ぴったりに眠りに落ち5時に目覚める。とても温厚で感情的になることはほとんど
ない彼であるが、この睡眠時間を邪魔されることにだけは激怒する。
このように、公共のルールや義務など全て誠実に守って、いつでも論理的に判断した
行動をし、カッチカチの生活する彼と彼に関わる人たちとのやりとりが、こんなにも笑えて
しまうことに驚きます。とても正しく生きている人なのに何故かとんでもなくユニークな人と
なってしまっています。これがこの本の面白いところですが、ここは、私がこの教授になり
たいと思う理由ではありません。
教授は常に思考していて、興味や疑問を持ったことには、どんなことであっても論理的
に分析し考察して彼なりの答えを出します。例えば、道路の左側を歩いているおばちゃん
にぶつかられて怒鳴られた時でさえも、右側通行をしている自分の正当性を説いて、さら
に反撃を受けた時も「この中年のご婦人は何故こんなに横暴なのか、なぜ右側を歩く自
分が怒鳴られなければならないのか」とただ不思議に思い考察するのです。私ならイラッ
としていることでしょう。
私は、この教授の論理的な分析や考察をする頭になりたいのです。「なりたい人」という
お題におかしな話ですが、こんな考え方ができる頭を経験してみた
いのです。私の頭の中は、要るものも要らないものもグチャグチャ
に置きっ放しの散らかった部屋のように、決断を先送りにしている
ことや旅行の計画、部屋の模様替えなど思いついてから進めて
いない、片付けられていないことがたくさんあります。彼のように
塵ひとつなくピシッと片付いた頭なら、思いついたらすぐに思考
し決断し行動することでしょう。そしていつもスッキリとした頭で
楽しく思考しているのだと思います。その状況にとても憧れます。
1
今までいろいろな本を読んできましたが、その中の誰になりたいかと
さんごくし
かんう
いうテーマを考えているとき浮かんだのは『三国志』
。この本には関羽や
しょかつこうめい
諸葛孔明など猛将、智将がたくさん登場しますが、みんな凄すぎてとて
ちょうはんは
も彼らになりたいとは思えません。私がなりたいのは、長坂坡の激戦の
中、名のある武将を次々と倒しながら、敵の大群の中を単騎で駆け抜け
ちょううん
りゅうび
る名将 趙 雲 の懐で護られ、無心に眠ったままで父劉備のもとに届けられ
あ
吉川英治
講談社
と
たときの<阿斗>(三歳)。彼がその後どういう大人になったかは別とし
て、
(残念なことにあまりいい評判は聞きません…)こんな風に守られる
っていいなあという乙女の憧れです。
佐野洋子
講談社
昨年惜しくも亡くなった佐野洋子さんの代表作。主人公の
猫は何度生まれ変わってもどんなに飼い主を悲しませても自
分は決して愛し返すことのないクールな奴。そんな彼が初め
て見つけた生きる理由、彼に愛された<白いねこ>になりた
い。家族とともに幸せに歳をとり、愛する猫にみとられる最
後。嘆き悲しむ猫の姿が愛おしくて。大好きな絵本です。
最近村上春樹さんが新しい訳本を出されたので、書店でよく見かけま
す。前に篠崎書林から出ていた本の裏表紙には作者の顔写真が載ってい
て、それが優しい絵本とはイメージがあわない強面おじさんなので、け
っこうびっくりします。
(ぜひ図書館で見てください。)
「The Giving Tree」の原題通り、お話の中のリンゴの木は、仲良しの
ぼうやが望むものを与え続け、最後は切り株になってもぼうやの助けに
シルヴァスタイン
なれることに喜びを感じます。こんなにあげてばかりの人生、幸せかし
あすなろ書房
ら?と思った頃もありましたが、今では与えることで与えられる幸せが
あることを知り、このリンゴの木のように愛していきたいと思うのです。
教科
先生のお名前
(
あいああ
入試対策室
)
高谷
(
憲弘
)先生
ダン・アリエリー
『予想どおりに不合理』
~行動経済学があかす「あなたがそれを選ぶわけ」~(早川書房)
今回は、ユニークな視点と実験による研究がとても面白く、久しぶりに知的刺激を大変受けた本
を紹介します。本の中の登場人物ではなく、著者の頭脳に憧れたと理由から。
この本は簡単に言うと“行動という新しい研究をわかりやすく紹介している本です。
章ごとに研究テーマがありユニークな実験と考察が紹介されており、全部で 13 章、300p 超あり
ますが、第 1 章に紹介されていた実験が大変面白くて一気に読めました。まずはこの実験から。
■エコノミスト(イギリスのビジネス雑誌)の HP に定期購読の案内ページに、
3 種類の購読タイプの案内があります。
(1)エコノミスト WEB 版の購読・・・・・・・・・・・・・・・・59US ドル
(2)エコノミスト印刷版の購読・・・・・・・・・・・・・・・・125US ドル
(3)エコノミスト WEB 版と印刷版セットの購読・・・125US ドル
さて、あなたならどのタイプを選択しますか?
本の中にある調査では、(1)16 人、(2)0 人、(3)84 人
という結果に。
なるほど!僕も(3)を選びます。WEB 版と印刷版セットで買うほうが得な感じがしますし、こ
の結果に納得。しかしこの本が面白い!と感じたのはここからで、次にこのような調査をします。
■エコノミスト(イギリスのビジネス雑誌)の HP に定期購読の案内ページに、
2 種類の購読タイプの案内があります。
(1)エコノミスト WEB 版の購読・・・・・・・・・・・・・・・・59US ドル
(2)エコノミスト WEB 版と印刷版セットの購読・・・125US ドル
さて、あなたならどのタイプを選択しますか?
先ほどの結果から推測すると、結果はどうなるのでしょう?
なんと、調査の結果は(1)68人、(2)32人 に。・・・おかしくない? さっき印刷版を選択した人
がいなかったのだから、2回目でも(1)16 人、(2)84人になるはずなのに、現実はそうならない。
この結果から人は合理的に選択しているとは言いがたい。現実社会で人はこのように(不合理に)選択
しがちである。こういう視点で研究するのが“行動経済学”という学問であるらしい。つまりエコノミ
ストの印刷版125USドルは、セット版を選択させるための「おとり」であり、私たちは選んでいたのではな
く、選んでしまっていたのだと知り、正直ショックでした。そしてもっと脳みそにショックを与えたい
と感じ、次の章へ次の章へと、一気にどんどん読み進んでいったのです。
この本を読み終えると、自分や世の中の見方が新鮮になって面白いと思います。特に社会科学系
に進学したいと考えている方にはとてもお勧めです!
(※太字同書から引用)
教科( 図書館 )
( 宇野 珠代 )先生
紹介したい本の書誌
池澤夏樹 『クジラが見る夢』
(新潮社)
この本は作家の池澤夏樹氏が、映画『グラン・ブ
ルー』のモデルで素潜りの世界記録を持つ、ジャック・マイヨール氏と、カリ
ブ海の島々で 共に過ごした日々の記録です。
ジャック・マイヨールは当時 67 歳。素潜りで水深 105 メートルという記録を
持つ彼の、海と共に生きる日々、思想はどんなものかを探るべく池澤さんがジ
ャックを静かに観察し、語ります。
ジャックのように海の中でこんなに自由に泳ぐ事を楽しめたら・・・。
池澤さんみたいにジャックとこんな時間を一緒に過ごす事ができたら・・・。
野生のイルカやクジラと一緒に泳ぐなんてどんな感じだろう・・・。
想像を掻き立てられるような美しい写真の数々、海のブルー色は、ただページ
をゆっくりと眺めているだけで満たされた気持ちになります。
野生のイルカやクジラと一緒に泳ぐという目的を達成する為に、どのように
旅を進め、イルカやクジラと出会うのか。10 日間も海に錨泊してクジラを待っ
たり、無人島でキャンプをしたり、自然のタイミングに任せながらゆったりと
進む旅。こんな贅沢な旅に憧れずにいられません。読むうちに日常の時間の流
れを忘れ、南の海の空気や風を感じ、心がゆったり解放される素敵な本です。
ジャック・マイヨールが、機械に頼らず精神と肉体を鍛える方法で見せてく
れる海との関わり方について池澤さんがこう語っている。
「人間は次第に身体に頼らずに生きるようになってきた。
(中略)機械の時代
だからこそ、肉体に意義がある。肉体を鍛錬する事に意義がある。ジャックが
見出した人間の身体の能力とはそういうものである。」
たくさんの可能性を持つ人間の身体の力を忘れてはならないというメッセー
ジを大切に受け取りたいと感じます。
冒頭で著者が「幸福な日々の記録である」と語るように、何度読んでも幸せな
時間を味わえる1冊です。
教科
( 図書館
先生のお名前
)
(
末次
雅子
)
マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ 全 5 巻』(新潮文庫)
[DVD]風と共に去りぬ 【出演:ビビアン・リー、クラーク・ゲーブル】
中学 3 年生のとき、出逢った強烈な女性…
それは、『風と共に去りぬ』の主人公スカーレット・オハラ。
『風と共に去りぬ』は、舞台は奴隷制が残る 1860 年代の南北戦争の頃のア
メリカ南部・ジョージア州。大農園タラに生まれ育った魅力的で勝ち気な主
人公スカーレット・オハラの波乱万丈の人生を描いた作品。スカーレットは、
今でいうと「肉食系女子」。 自分の欲しいものは自ら自分の手でつかみ
取っていく。戦争、三度の結婚、愛する子どもの死、そして…。多くの苦難が
彼女を襲う。しかし、彼女はいろんな苦難に対して、時代のせいにせず、果
敢に挑んでいく。自らの人生を手にいれるために…。
そして、圧巻は、愛する人を失い、荒涼とした気持ちの中で、彼女のラストのこの名ゼリフ
「I’ll think of tomorrow , at Tara. Because tomorrow is another day.」
「みんな、明日、タラで考えることにしよう。明日はまた明日の陽が照るのだ。」 【大久保康雄訳】
このラストはいろんな邦訳があるが、やっぱり、一番ピンと来るのは 映画のラストシーンでの「明日は、明
日の風が吹く!」である!私が初めてこのセリフに出会ったのは、受験生であった中3の頃。この彼女のポ
ジティブさは、見習わなければならない!と切に思った。それからの人生の中で、大失恋をしようが、あれこ
れうまくいかないことがあろうが、陽は沈むし、また昇る。そして、ちゃんとお腹も空くんだということを実感した。
夜に大泣きをしていようが、朝になれば、ちゃんと身支度をして学校や仕事にもいかねばならない。もう嫌だ
と投げ出したくなるようなことも、結局は自分で後始末をしなければならない…。人生いろいろある中で、こ
のスカーレットのセリフが吐露できる強さをもち続けていけるか否か、結局、こう思えるか、こう切り返してまた
明日に向かっていけるか否かで、人生の過ごし方は違うんだと、この歳になってつくづく思う。とにかく前向き
に、とにかく前向きに…。そう、聖書にもあるではないか。「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日
自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」(マタイによる福音書 / 6 章 34 節)と…。
一度きりの人生、自分が主人公の自分の人生を、私もあなたもしっかり前向きに歩いて行けれ
ば…きっと、幸せの背中を見ることが出来るそんな気がする。お互いがんばりましょう!
㊟本は文庫で全 5 冊あるので、読むのが大変だと思う人は、映画がDVD化されて
いるので、232 分の大作ですがぜひご覧ください。(図書館でも見れます!)
「本の中のこの人になりたい」アンケート 集計結果
(中学1年生~高校Ⅱ年生)
第1位
第2位
第3位
第4位
J・K・ローリング
藤子・F・不二雄
J・K・ローリング
咲坂伊緒
『ハリー・ポッター』シリーズ
『ドラえもん』
『ハリー・ポッター』シリーズ
『ストロボ・エッジ』
ハーマイオニー
ドラエもん
ハリー・ポッター
木下仁菜子
(37票)
(25票)
(22票)
(21票)
第5位
第6位
第7位
第7位
尾田栄一郎
東野圭吾
ステファニー・メイヤー
『ONE PIECE』
『探偵ガリレオ』シリーズ
『トワイライト』
『名探偵コナン』
ルフィ
湯川学
ベラ
江戸川コナン
(11票)
(9票)
(7票)
(7票)
青山剛昌
いろいろ「たくさんのなりたい」が集まりました。中高合わせてベスト7を紹介させていただきました。
アンケートにご協力いただきありがとうございました。
聖母学院中学校・高等学校図書委員会 企画班
あ と が き
今回の企画は、図書委員会によって進められ、教職員や生徒のみなさんの協力
のもと、実施することができました。ここに厚くお礼申し上げます。
中学生で、夏川草介『神様のカルテ』の「ハル」を挙げている人が複数見られる
ことも驚きですし、半分生き物とも言うべき『となりのトトロ』の「ねこバス」を挙げた人
が見られるのも大変興味を抱きました。生徒のみなさんが挙げた人物(存在)と教
職員が挙げたそれとを比べますと、次のような印象を受けました。生徒のみなさん
は、アニメのキャラクターを含めて、夢を見失わずに「あこがれ」の気持ちを大切に
して選んでくれた人が多かったのではないか。いっぽう、教職員の方々は、「ぜひ
目指したい」人(存在)という心理が働いて選ばれた場合が多いように感じました。
あこがれも、目指すべき存在も、私たちを時に大きく向上させてくれることがあるこ
とでしょう。
今後も、幅広い読書を通じて、ぜひとも自分自身の幅を大いに広げ、また向上
させていただきたいと願っています。
聖母学院中学校・高等学校
図書館長
松井 順太郎