詳解 ポーランド語文法 外国語アナリスト 川井正彦著 はしがき 本書は現代ポーランド語の標準的な文法書である。しかし、標準的と言っても簡潔で はない。かなり細かいところまで言及しており、構成としては中級編あるいは上級編の ものとなっている。従って、初心者にはかなり分かりにくいかも知れない。しかし、ポ ーランド語はスラヴ語の一種であり、それ故、同じスラヴ語であるロシア語に類似した 面が多々ある。日本においてポーランド語は馴染みが薄い言語であるが、ロシア語に関 してはかなり馴染みが厚い言語である。NHKのラジオ講座、テレビ講座もあるし、本 格的に書かれたロシア語文法書も多い。また、各大学にもロシア語講座はかなりある。 そこで、ロシア語との対比をある程度示すことによりポーランド語の分かりにくさをを 補完している。従って、スラヴ語について全く勉強したことがない人にとっては非常に 分かりにくいが、ロシア語をある程度マスターした人であるならば、ある程度分かるよ うに書いたつもりである。しかも、かなり細かい点にまで言及しており、このような意 味から我が国で初の本格的現代ポーランド語の文法書であると自負するものである。 ところで、何故、このような文法書を書こうと思ったかであるが、この点はインター ネットと大いに関係があり、インターネット上はポーランド語はロシア語と同程度に重 要性が考えられるという証左があったからである。すなわち、インターネット上の百科 辞典であるウイキペディアにおいて総記事数でポーランド語はロシア語と相拮抗して いるのである(平成25年4月19日午後1時現在)。 インターネットには様々な利点があるが、特に情報・知識の獲得という面でその有用 性は計り知れない。なかんずく書籍や辞典等と比較してその素晴らしさが分かる。紙の 発明・普及前、例えば、紀元前の中国では、紙に替えて木簡とか竹簡に墨で文字を書い ていた。有名な司馬遷の史記など、紙の発明・普及前に書かれた書籍はそれらに記載さ れたものである。これらに書かれたものは、紙の書籍に比べて遙かに重量があり、分量 も膨大である。その後、紙が発明・普及され、徐々に紙の質が良くなるにつれて紙が薄 くなり、同じ情報量を提供するのに以前の木簡・竹簡のものと比較して分量が少なくて 済むようになってきた。しかし、紙でできた書籍なり、辞書・百科事典でも情報量が多 くなるに連れて膨大なものとなり、例えば、現代の平凡社の世界大百科事典等は34巻 もあり、しかも一巻当たりの重量としては2キログラム以上もある。それに対して、イ ンターネット上の百科辞典であるウイキペディアはノートパソコンを用いれば1.5キ ログラム前後でそれよりも遙かに多くの情報が得られる。インターネットの発明・発展 により迅速に、しかも簡便に、効率的に情報を入手できるようになったのである。 そういうことから私は情報・知識の獲得には、基本的にはインターネットで、とりわ け百科事典であるウイキペディアでひもとくのを旨としている。書籍による百科事典よ りウイキペディアが優れているその他の点は、最新の情報・知識が獲得できることであ る。また、リンクが張ってあり、説明内容の中で不明な言葉が出てきた場合には、その 言葉の箇所をクリックすれば説明しているリンク先にジャンプできる点も百科事典に ない利点である。百科事典なら、新たに引かなければならず、しかも34巻もあれば別 の巻に説明してあるものはそれを引っ張り出してきて引かなければならず、極めて煩雑 である。そして、もっと特筆すべきことはウイキペディアは多言語で説明がなされてい る点である。英語を始めとして、ドイツ語、フランス語、イタリア語、日本語等、記事 数と項目数等に差異はあるものの、世界の主要な言語で情報・知識を獲得できるのも利 点である。 さて、ウイキペディアの多言語性について、4-5年前、どのような言語で書かれた のが多いかなと当たってみたら、1位は当然英語で、2位はドイツ語、3位はフランス 語であった。そして、4位にあまり馴染みのない言語があり、日本語は5位であった(当 時で、現在は4位がオランダ語、5位がイタリア語で、ロシア語が6位で、ポーランド 語は8位である。)。その4位は polski すなわちポーランド語であった。日本人にと ってポーランド語はかなり馴染みが薄い言語である。例えば、NHKのラジオ講座では 英語、ドイツ語、フランス語、中国語、スペイン語、ハングル語、イタリア語、ロシア 語の講座があり、さらに不定期にポルトガル語、アラビア語があるが、ポーランド語は 全くない。また、放送大学の外国語講座においてもアラビア語にも及ぶが、ポーランド 語は全くない状態である。ポーランド語が話されているのはポーランドと一部アメリカ、 ドイツ等であり世界の話者人口は約5千万人に過ぎない(英語は約5億1千万人でポー ランド語の話者人口は世界27位である)。しかし、英語の総記事数が当時は約346 万であるのに対して、ポーランド語の当時の総記事数は約74万であり、話者人口に比 して圧倒的に記事が多いのである(話者人口が英語の10分の1でありながら、総記事 数は5分の1もある。)。ポーランドはキュリー夫妻やショパン等を輩出した国であり、 英知に富んだ国民であると言えるであろう。 このようにポーランド語はインターネット上、重要な言語でありながら、日本ではか なり軽視されている。上述したNHKのラジオ講座はもちろんのこと、文法書、辞典等 でもポーランド語に関するものは極めて少なく、本格的な文法書もない状態である。そ こで、日本において軽視されているポーランド語の本格的な文法書を作成しようとして 作成したのが本書である。 前述したように、ポーランド語はロシア語と同じくスラヴ語の一種であり、文法はロ シア語に類似している点が多々ある。そこで、日本では比較的多いロシア語の学習者を 意識して、多少ロシア語との類似点を記した。また、ポーランド語はロシア語とは異な り、ラテン文字を使うこともあり、ロマンス語とも類似した面がある。その中でも特に イタリア語と類似していると私は考えている(特に広義の再帰動詞について)。そこで、 一部にイタリア語との類似性も意識しながら記述したところもある。 この書籍がポーランド語の理解に一助となることがあれば幸いである。 本書の特徴 日本語で書かれた文法書としては比較的最近のものでは「よくわかる現代ポーランド 語文法」(塚本桂子・南雲堂フェニックス 2008)がある。この文法書は簡潔に書かれ ており、かなり有益である。ただ、簡潔に書かれている分、スペースの関係上省略せざ るを得ない部分も多い。それに対して、本書は簡潔ではないが、かなり細かい点まで言 及しており、入門書と言うよりは中級編あるいは上級編の構成となっている。従って、 かなり分かりにくい点が多いかも知れない。それを補う意味で要所にロシア語との類似 点を掲げてある。また、この文法書は会話は全く意識しておらず、文章を意識している。 そのため、ポーランド語の文章を読むために必要な文法を挙げてあり、インターネット やポーランド語の書籍の読者を対象としたことは言うまでもない。 ポーランド語は不思議な言語である。発音はロシア語に極めて近いが、文字はキリル 文字ではなくラテン文字を使用しているからである。そして、ラテン文字では表しきれ ない発音を表すために、ラテン文字を工夫してクレシュカ( ś, ć, ń, ź, ż )を付けたりし たり、 子音を2つ以上続けて1つの発音としたりしているのである ( sz, cz, dz, dzi, 等) 。 また、文法はロシア語に近いが、ラテン文字を使用していることもあり、一部ロマンス 語と類似している点も見受けられる。特にイタリア語と類似している点も見られる。 本書を執筆するに際しては様々な文献に当たった。前述したように日本語で書かれた ポーランド語の文法書は極めて少ないため、他言語で書かれた文法書を参照した。特に、 英語が主体であったことは言うまでもないが、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、また、 ポーランド語で書かれた文法書も参照した。これらの執筆者には感謝申し上げたい。 前述のようにポーランド語はラテン文字を使用しているが、文法の難しさはロシア語 以上である。しかし、詳細に検討してみるとかなり論理的に構成されており、きちんと マスターすれば日本人にとってロシア語以上に取り組みやすい言語と言えよう。 この文法書がインターネットなどを通じ、日本人がポーランド語と馴染みを持ち、ポ ーランド語圏の人達の考え方などを理解する上に役立つことを望むものである。 2013年5月1日 外国語アナリスト 川 井 正 彦 目 次 はしがき 第Ⅰ部 音声論、音韻論、語の構成 第1章 発音 2 第1節 総説 2 第2節 子音 4 Ⅰ 総説 4 Ⅱ 硬子音と軟子音 4 Ⅲ 共鳴音と阻害音 5 第3節 母音 14 Ⅰ 口母音 14 Ⅱ 鼻母音 16 Ⅲ 母音の連続 17 第4節 綴り字の規則 17 Ⅰ ロシア語の正書法の規則との関係 17 Ⅱ ポーランド語特有の綴り字の規則 18 第5節 子音の同化 21 Ⅰ 総説 21 Ⅱ 語末の有声子音の無声化 22 Ⅲ 同化現象 22 Ⅳ 語と語の間の同化 23 第6節 子音の特別の連なりの発音 24 第7節 軟子音化 25 第8節 音節 25 Ⅰ 原則 25 Ⅱ 例外 25 Ⅲ 子音の連続 26 Ⅳ 開音節と閉音節 26 第9節 アクセント 27 Ⅰ 原則 27 Ⅱ 後ろから3番目にアクセントがある場合 27 Ⅲ 後ろから4番目にアクセントがある場合 29 Ⅳ 最後の音節にアクセントがある場合 29 Ⅴ 音節が一つの単語の場合 30 Ⅵ 接語の問題 31 Ⅶ 略語のアクセントの問題 33 第2章 音交替 34 第1節 子音交替 34 Ⅰ 序論 34 Ⅱ 子音交替の種類 35 Ⅲ 形態学的・音響学的環境面から見た子音交替 37 Ⅳ 文法学的環境面から見た子音交替 41 第2節 母音交替 49 Ⅰ 母音の後に続く子音の性質によって規定される場合 49 Ⅱ 母音の後に続く音節の性質によって規定される場合 51 Ⅲ 出没母音 53 第3章 語の構成 59 Ⅰ 語の構成要素 59 Ⅱ 単語構成の多様性 59 Ⅲ 語根 60 Ⅳ 接頭辞 60 Ⅴ 接尾辞 61 Ⅵ 名詞の構成 62 Ⅶ 形容詞の構成 67 Ⅷ 動詞の構成 68 Ⅸ 複合語、合成語 69 Ⅹ 略語 69 第Ⅱ部 形態論(品詞論)語の性質、変化、用法 72 第1章 名詞 73 Ⅰ 総説 73 Ⅱ 名詞の性 75 Ⅲ 名詞の数 85 Ⅳ 名詞の格 89 Ⅴ 名詞の変化総論 91 Ⅵ 名詞の変化各論 104 Ⅶ 形容詞変化名詞 129 Ⅷ 姓名の変化 132 第2章 代名詞 136 Ⅰ 代名詞の概念 136 Ⅱ 広義の代名詞 136 Ⅲ 名詞的代名詞 138 第3章 形容詞 157 Ⅰ 序 157 Ⅱ 形容詞の変化 157 Ⅲ 形容詞の変化種類 159 Ⅳ 形容詞の単語尾と長語尾 160 Ⅴ 形容詞変化における音交替 161 Ⅵ 形容詞の位置 171 Ⅶ 形容詞の用法 172 Ⅷ 形容詞の形をもつ名詞 172 Ⅸ 変化しない形容詞 174 Ⅹ 名詞から導かれる形容詞 175 ⅩⅠ合成形容詞 176 ⅩⅡハイフンで繋いだ形容詞 177 ⅩⅢ否定の形容詞 177 ⅩⅣ感情形容詞 177 ⅩⅤ形容詞の補足語と格支配 178 ⅩⅥ形容詞の比較級と最上級 179 ⅩⅦ代名詞的形容詞 187 第4章 数詞 195 Ⅰ 個数詞 195 Ⅱ 数詞と名詞の結合規則 203 Ⅲ 数詞と動詞の結合規則 206 Ⅳ 順序数詞 207 Ⅴ 集合数詞 210 Ⅵ 具象化数詞 213 Ⅶ 不定数詞 216 Ⅷ 年、月、日の言い方 219 Ⅸ 時刻の表し方 221 Ⅹ 年齢の表現 224 ⅩⅠ貨幣を表す数詞 225 ⅩⅡ分数と小数の表現 226 ⅩⅢ寸法、量、大きさ、広さ、深さ、厚さ等、測定に関する場合 229 ⅩⅣ疑問数詞 230 ⅩⅤ反復あるいは概数数詞 230 ⅩⅥ種類数詞 231 ⅩⅦ計算法 231 第5章 動詞 233 第1節 概要 233 Ⅰ 概説 動詞の諸様相 233 Ⅱ 動詞の形態 234 第2節 動詞の種類 241 Ⅰ 初めに 241 Ⅱ 自他動詞の区別 241 第3節 動詞の活用 245 Ⅰ 総説 245 Ⅱ 動詞の活用詳細 246 1.語幹に接尾辞がないタイプ 247 2.語幹に接尾辞 が付くタイプ 257 第4節 動詞の法 285 Ⅰ 直説法 285 1. 現在形 285 2. 過去形 285 3. 未来形 292 Ⅱ 命令法 294 Ⅲ 仮定法 301 Ⅳ 直接話法、間接話法 307 第5節 動詞のアスペクト 309 Ⅰ 総説 309 Ⅱ 不完了体、完了体においてそれぞれ用いられる副詞 313 Ⅲ 動作相と不完了体、完了体 314 Ⅳ 命令法における体の用法 314 Ⅴ 無人称述語と体 315 Ⅵ 節と体 316 Ⅶ 形態面でのアプローチ 316 Ⅷ 不完了体しか有しない動詞 331 Ⅸ 完了体しか有しない動詞 332 Ⅹ 2種類の不完了体 332 第6節 移動に関する動詞 333 第7節 動詞の不定形 351 Ⅰ 不定詞 351 Ⅱ 副分詞 358 1.不完了体副分詞 358 2.完了体副分詞 359 Ⅲ 形容分詞 3611.能動形容分詞 361 2.受動形容分詞 363 3.形容詞的 ł 分 詞 368 4.動詞から派生した形容詞で、可能・不可能を表す形容詞 369 5. 無人称過去形 369 Ⅳ 動名詞 370 1.序 370 2.動名詞の形態 371 3.動名詞の用法 373 第8節 特殊な動詞の形態 374 Ⅰ 再帰動詞(広義)374 1.再帰動詞とは 374 2.再帰代名詞の位置 378 3. 再帰代名詞の用法 379 Ⅱ 助動詞 383 1.序 383 2.助動詞の種類 383 Ⅲ 無人称動詞(広義)389 1.無人称述語 389 2.副詞述語 392 3.名詞述 語 393 4.(狭義の)無人称動詞 393 5.動詞の不定詞を使う場合 395 第9節 動詞の態 396 1.態とは 396 2.受動形容分詞を使う受動態 396 3. 無人称構文により受動の意味を表す用法 400 4.人称構文で się を使って 受動の意味を表す用法 400 5.中間態で się を使って受動の意味を表す用 法 400 第6章 その他の品詞 402 第1節 前置詞 402 Ⅰ 序 402 Ⅱ 生格支配のみの前置詞 404 Ⅲ 生格、対格及び造格支配の前置詞 「z」 415 Ⅳ 生格、対格及び造格支配の前置詞 「za」 418 Ⅴ 与格支配のみの前置詞 420 Ⅵ 対格支配のみの前置詞 421 Ⅶ 前置格支配のみの前置詞 423 Ⅷ 造格・対格支配の前置詞 423 Ⅸ 前置格・対格支配の前置詞 428 Ⅹ 特殊な前置詞 437 ⅩⅠ二つ以上の語からなる前置詞 437 ⅩⅡ前置詞の繰り返しに関する問題 439 ⅩⅢ対になる前置詞 439 第2節 副詞 441 Ⅰ 序 441 Ⅱ 形容詞由来の副詞 441 Ⅲ 比較級 444 Ⅳ 最上級 445 Ⅴ 比較級の対象の表現 446 Ⅵ 比較級・最上級に関する諸問題 446 Ⅶ 本来の副詞 447 Ⅷ 代名詞的副詞 451 Ⅸ 副詞句の形成方法 455 Ⅹ 名詞から派生した副詞 457 ⅩⅠ無人称構文を構成する副詞 457 第3節 接続詞 458 Ⅰ 序 458 Ⅱ 並立接続詞 458 Ⅲ 従属接続詞 462 第4節 助詞 470 Ⅰ 序 470 Ⅱ 各助詞 470 第5節 間投詞 480 Ⅰ 序 480 Ⅱ 個々の間投詞 480 第Ⅲ部 統語論(構文論)語結合、文の種類、文の構成 482 第1章 序論 483 Ⅰ 統語論とは 483 Ⅱ 文の成り立ち 483 第2章 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 語結合 485 概説 485 語結合の型 485 主要語から見た従属結合の種類 487 第3章 文の種類、語順、イントネーション 489 第1節 文の種類 489 Ⅰ 発話の意図による分類 489 Ⅱ 文の構造による分類 491 Ⅲ 一肢文の種類 491 Ⅳ 二肢文の種類 492 Ⅴ 無人称文 494 第2節 語順 502 Ⅰ 序 502 Ⅱ テーマとレーマ 502 Ⅲ 主語と述語の語順 503 Ⅳ 合成述語の語順 504 Ⅴ 否定の助詞 nie を伴う語順 504 Ⅵ 疑問の助詞 czy を伴う語順 504 Ⅶ 疑問詞 kto, co を伴う語順 505 Ⅷ 疑問詞 gdzie, kiedy, dlaczego を伴う語順 505 Ⅸ 再帰代名詞 się の位置 505 Ⅹ 仮定の助詞 by の位置 505 ⅩⅠ人称代名詞の位置 505 ⅩⅡ補語の位置 506 ⅩⅢ定語の位置 506 ⅩⅣ付語の位置 506 第3節 イントネーション 507 第4章 単文の構成 508 第1節 文の成分 文外詞 508 Ⅰ 主語 508 Ⅱ 述語 510 Ⅲ 補語 517 Ⅳ 状況語 527 Ⅴ 定語 535 Ⅵ 付語 539 Ⅶ 文外詞 540 Ⅷ 同種成分 542 Ⅸ 孤立成分 542 第2節 格の用法 544 Ⅰ 格とは 544 Ⅱ 主格 544 Ⅲ 生格 546 Ⅳ 与格 553 Ⅴ 対格 559 Ⅵ 造格 560 Ⅶ 前置格 564 Ⅷ 呼格 565 第5章 複文の構成 566 Ⅰ 並立複文 566 Ⅱ 従属複文 569 主要参考書目 579 索引について 特に索引は挙げていないが、PDFの検索機能を使えば、検索が可能である。その 場合、ś → s、ź または ż → z、ą → a、ę → e、ó → o、ń → n、ć → c と入力 すれば良い。しかし、ł だけは認識できなく、ご容赦願いたい。 第Ⅰ部 音声論、音韻論、語の構成 2 発音 第1章 発音 第1節 総説 ポーランド語のアルファベットとロシア語のアルファベットは一見、異なっているよ うに見える。前者はラテン文字であるのに対して、後者はキリル文字であるからである。 しかし、両者はスラブ語に属するので、発音などが共通のものが多く散見される。ただ、 ポーランド語においては、ラテン文字だけでは表しきれないので、複数の字を組み合わ せたり、字の上や下に特別な符号を付けて、表記の上で工夫がなされている。そこで、 ロシア語からポーランド語を学ぶ上で両言語の共通点を把握することが、その理解につ ながる。では、アルファベットを比較してみよう。 Ⅰ ロシア語のアルファベットから見たポーランド語のアルファベットの 類似性 左側がロシア語で、右側がポーランド語である。 а б в г д е ё ж з и й к л м н о п с т у ф х ц ч ш a b w g d ie io ż と rz z i j k l m n o p s t uとó f h と ch c ć sz 発音 щ ъ ы ь э ю я 3 特になし 記号なのでなし y 記号なのでなし e iu ia Ⅱ ポーランド語のアルファベットから見たロシア語のアルファベットと の類似性 左側がポーランド語、右側がロシア語である。そして、その後に、国際音声記号を示 す。 a а(但し、アクセントがある場合に限る)a ą он と発音されるのが原則であるが、ом と発音されることもある。ɔw b б b c ц ʦ ć ч ʨ d д d e э ɛ ę эн と発音されるのが原則であるが、эм と発音されることもある。ɛw f ф f g г g h х x i и i j й j k к k l ль l ł この音はロシア語にはない。 w m м m n н n ń нь ɲ o о(但し、アクセントがある場合に限る)ɔ ó у u p п p r р r s с s ś t u w шь ɕ т t у u в v 4 発音 y z ź ż cz ch dz dź dż rz sz ы з жь ж тш х дз джь дж ж ш ɨ z ʑ ʒɣ ʈʃɣ x ʣ ʥ dʒɣ ʒɣ ʃɣ 上述のように、ポーランド語はラテン文字で表されるのであるが、そのうち q, v, x は 上に記載していない。それは、これらは外来語由来の単語でしか表れないからである。 また、ポーランド語に特有のこととして2つあるいは3つのアルファベットの組み合わ せで1つの音を示すものがある。 それは12あるが、 それらは ch, ci, cz, dz, dź, dż, ni, rz, si, sz, zi, dzi である。 第2節 子音 (※ 記述の順序として、まず、母音を記載するのが通常であるが、ポーランド語の場合 は後述のように母音の中に鼻母音というものがあり、鼻母音の場合、後に続く子音の種 類によって発音が異なってくるので、理解を容易にする意味で子音から記載する。) Ⅰ 総説 ポーランド語の子音は分類の仕方がいろいろある。 まず、硬子音か軟子音に分けるべきである。すなわち、硬子音はロシア語と同じく、 舌が口蓋に向かって特に盛り上がることなく発音される子音であり、軟子音は舌が口蓋 に向かって盛り上がって発音される子音を言う。 次に、 sonorant 共鳴音と obtruent 阻害音 (閉塞音ともいう) に分けることもできる。 前者は声帯が振動する音を声道内で共鳴することによって作られる音であり、後者は気 流の妨害によって作られる音である。 また、有声子音と無声子音に分けることもできる。前者は声帯が振動して声を伴う音 声の内で子音であるものであり、後者は声帯が振動しない音声である。有声子音と無声 子音はそれぞれがペアをなすもの、有声子音のみのもの、無声子音のみのものがある。 ただ、この区別は共鳴音、阻害音との区別と関係があり、従って、以下では特別の項で は取り上げず、共鳴音と阻害音の中で言及する。 Ⅱ 硬子音と軟子音 発音 5 ロシア語においては硬子音と軟子音に区別できた。しかし、この観点から見た場合、 現代ポーランド語においては歴史的に見て発音の経緯があり、それを考慮すると次の4 つに分けるのが、合理的と思われる。 1.通常の子音で、過去においても現代においても硬子音であるもの。これらには、p, b, t, d, k, g, f, w, s, z, ch/h, m, n, r, ł がある。 2.過去においては、軟子音であったが、現在では硬子音となったもの(いわゆる硬化 子音)。これらには、sz, ż/rz, c, dz, cz, dż, l がある。 3.過去においては、硬子音であったが、現在では軟子音であるもの。これらには、gi, ki, chi/hi がある。 4. 過去においても、 現在においても軟子音であるもの。 これらには、 ś/si, ź/zi, ć/ci, dź/dzi, ń/ni, j, pi, bi, fi, wi, mi がある。 Ⅲ 共鳴音と阻害音 子音は、硬子音と軟子音に分ける以外に、共鳴音と阻害音に分けることもできる。前 述したように共鳴音は声帯が振動する音を声道内で共鳴することによって作られる音 であり、阻害音は気流の妨害によって作られる音である。 1.共鳴音 ポーランド語における子音での共鳴音には鼻音、流音、半母音がある。 1)鼻音 鼻音とは口蓋帆を下げて、鼻腔に呼気を通しながら口腔で作られる閉鎖音である。す なわち、鼻の裏口が開き、気流が鼻腔を通って外へ出る際に調音される音である。これ には m, n がある。 ① m, mi ア、硬音の場合は、日本語の「マ、ム、メ、モ」の頭の子音である。上下の唇をあわせ、 両唇閉鎖音の構えのまま鼻の裏口を開いて鼻腔に気流を通して発音する音である。 イ、軟音の場合は、日本語の「ミャ、ミュ、ミョ、ミ」の頭の子音である。硬音との違 いは舌が硬口蓋に向かって盛り上がって発音される点である。 ウ、m は、i の前では軟音となり、y の前では必ず硬音となる。また、子音の前や語末 では硬音となる。例えば、mrozić 冷凍にする、dym 煙、である。さらに、i 以外の母 音の前でも硬音となる。例えば、mapa 地図、mucha ハエ、media メディア、moment 瞬間、móc ―できる、mąz 夫、mężczyzna 男、である。 エ、尚、摩擦音である f や w の前では半母音である ł の様に発音される。例えば、 kamfora 樟脳(化合物の一種)、tramwaj トローリーカー、である。前者は [kawfora]、 後者は [trawvaj] と発音される。 オ、 軟音である mi- の後に、 y , i が続くことはなく、 それ以外の母音が続くことはある。 例えば、 miara サイズ、miejsce 場所、miotać 投げる、miót 蜂蜜、miąższ 肉、między ~の間に、等である。その場合には、i は発音しない。しかし、mi の後に子音が続く場 6 発音 合には i を発音する。minuta 分、の場合、[mjinuta] と発音され、i が発音される(こ の場合、i がその前の子音を軟音化するとともに i を表す機能を有していることになる のであるが、本来は miinuta* と i が二つ連続している。そして、綴り字の規則により 最初の i が消去されていると言える。)。 ② n, ni あるいは ń ア、硬音の場合は、日本語の「ナ、ヌ、ネ、ノ」の頭の子音である。舌先を前歯の裏に 付けて閉鎖し、鼻の裏口を開いて発音する音である。 イ、軟音の場合は、日本語の「ニャ、ニュ、ニョ、ニ」の頭の子音である。硬音との違 いは舌が硬口蓋に向かって盛り上がって発音される点である。 ウ、硬音の n は i 以外の母音が続く場合や語末の場合である。例えば、nawet ~でさ え、numer 番号、negacja 否定、noc 夜、nóż ナイフ、nędza 貧乏、nylon ナイロン、 sen 夢・眠り、等である。尚、略字以外、n の後に 摩擦音以外の子音が続くことはほ とんどない。(例外:閉鎖音の k や g が続くことはある。破擦音が続くものとしては potencja 力、がある。) エ、n の後に摩擦音は続くことは見られるが、摩擦音の前の n は半母音の ł の様に発 音される。例えば、transfer 連絡輸送、の場合、[trawsfer] の様に発音する。また、 konfetti 紙吹雪、も同様である。他には、balans バランス、szansa チャンス (発音としては [ʃawsa] )がある。 オ、n の後に軟口蓋閉鎖音(k, g)が続くと、n は軟口蓋鼻音となる。後舌面 が軟口蓋に接して閉鎖を作り、鼻腔へ息を流して発音することになるからであ る。国際発音記号は ŋ である。例えば、pręga 縞模様、sęk 結び目、等である(後述 するように ę は鼻母音であり、通常は n が入り、それぞれ [prɛŋga] 、[sɛŋk] と発音さ れるのである。)。bank Angielka の場合も同様である。[baŋk aŋgjelka] と発音する。 ※ 注意すべきはロシア語では ŋ は全く存在せず、たとえ[k] [g] が後にあろうとも н[n] はその歯音性を維持する。 カ、n の前に i, y, u が付くと、n は鼻母音の一部になる。例えば、kunszt 文化、は [kũʃt] と発音され、-un- が ũ と発音される。同様に、instynkt 本能、の場合、[ĩstɨŋkt] と発 音され、 in- が ĩ と鼻母音の一部になるのである。 また、 rynsztok 縁石、 の場合は [r ɨ ̃ʃtɔk] と発音され、-yn- が ɨ と鼻母音の一部になるのである。 キ、ni と ń は軟音である。前舌面と硬口蓋において閉鎖が形成され、鼻腔に気流を流 すことにより、発音する。国際音声記号は ɲ である。y は決して ni, ń の後には来る ことがなく、n 音との関係では y の前は必ず n となり、ńy, niy という綴りは見られな い。 ク、ni の後に子音が続く場合には、i を発音するが、母音が続く場合には i を発音しな い。例えば、nic 無、の場合には [ɲiʦ] と i を発音するが、nie いいえ、の場合には [ɲɛ] と発音し、i を発音しない。 ケ、軟音の場合、ń とするか、ni とするかは一定のルールがある。ń は子音の前か、 語末しか綴らない。-ńa, ńu, ńe, ńo とは決してならないのである。もっとも、逆に -ni + 子音という形はある。i の前の n は必ず ni となる。i の前の n は決して硬音にはなら 発音 7 ないのである。また、-nii- とも綴らない。ii の場合、i が二つ続く場合、最初の i は 消去されるからである。y や i 以外の母音の前で、かつ軟音の場合、ni が使われ、ń が 使われることはない。例えば、konie 終わり、となる。尚、外来語の場合、半母音 j の 前では -ńj- となるが、綴る時は -ni- となり、発音する時は -ńj- となる。その場合、-n と -i に音節は分かれることに注意すべきである(通常は -ni- は分かれない。)。 コ、さらに摩擦音の前や破擦音の前の ń を発音する場合には鼻音化した j のよう発音さ れることに注意すべきである。例えば、cieńszy より薄い、の場合[ćej̃šy] の様に発音す るのである。pański あなたの、も同様で [paj̃sḱi] の様に発音される。さらに、閉鎖音の 前の ń は a の後に位置する場合には、-a j̃n- と発音する。bańka 缶、は [ba j̃nka] と発 音する。また、tańszy より安い、は [taj̃šy] と発音する。 サ、尚、ń が m と発音する場合もある。例えば、hańba 恥、の場合、[ha j̃mba] と発音する。 2)流音には、r, l がある。 ①r 常に硬音であり、いわゆる巻き舌の「ル」の頭の子音である。歯茎震え音であり、舌 先の力を抜いて柔軟にして、上に向かって立て気味にした舌を声を伴った呼気で前下に はじいて発音する音である。震え音は子音を調音する際、下の調音器官と上の調音器官 の軽く短い接着を何度も繰り返しながら作り出される音で、瞬間的な閉鎖が何度も形成 されるものである。ロシア語の р に相当する。通常、r の後は i が来ないのであるが、 外国語由来のものは i が来ることがある。例えば riposta 応答、の如くである。この場 合、後述するように l と同じくある程度軟音化する。従って、[rjipɔsta] の様に発音す る。また、外来語で ri- が母音の前である場合は ri- は rj- と見なされ、r と j は音節 が分かれる。例えば、aria アリア(音楽用語)、は arjja と発音する。 ② l 舌の先を立てるようにして上の前歯の付け根辺りに付け、舌の両側のすきまから「ウ」 と「ル」を同時に出すような音である。l は側音の一つであり、ポーランド語の l はロ シア語の л とやや異なり歯茎側音である。側音とは、子音を調音する際、舌の中央部 分(側面を除く一部分)を上顎に密着させて口腔内の声道の中央部分の空気の流れを塞 いだまま、舌の両脇を開放して起こす音である。そして、l は舌先を歯茎につけたまま で、息を舌の両側から出す。l は現在は硬音であるが、歴史的には軟音に属するので、 決して y が後に来ることはない。そして、li- となる場合はある程度軟音化する。また、 母音の前の li- は常に lj を意味する。例えば、liana ツル植物、の場合で、[ ljjana] と 発音する。すなわち、li の後に、a という母音が来ているので、li- は ljj- となるのであ る。 一方、li 以外、すなわち la-, le-, lo-, lu-, ly-, lą-, lę- と綴る場合の l は硬音である。 3)半母音には、ł, j がある。半母音は接近音の一つである。接近音は上下の調音器官が 接近するのであるが、それが緩いために、広めの隙間から気流が漏れるものである。半 母音は接近音の中でもわたり音として次の母音へ速やかに移っていく性格を有してい て、狭い母音と似た構えを備えている。 8 発音 ① ł ł は口唇音の一つである。ł は歴史的には l の硬音として扱われたものである。英語の w と同じで両唇軟口蓋接近音である。ロシア語にはこの音はない。これは両唇と軟口蓋 の2カ所で調音される子音であり、この2か所で上下器官の接近が見られる。日本語の 「ワ」の頭の子音であるが、少し異なり、唇が丸められ、前に突き出される。また、ł の後には i は来ない。尚、外来語では ł の代わりに u が使われることがある。例えば、 auto 自動車、autobus バス、Europa ヨーロッパ、である。 ② j j は日本語の「ヤ、ユ、ヨ」の頭の子音である。非円唇硬口蓋接近音である(非円唇 とは唇を丸めないで発せられるものを言う。)。上下の器官の接近の度合いを摩擦音に 比較して少し広げて発音する。軟音に属し、ロシア語では й に相当する。そして、ある 種の子音の後では書かないことになっているが、その場合には i で代用して発音する。 例えば、Arabia アラビア、は arabja と発音する。 j を書く場合は限られている。すなわち、語頭、母音の後、子音では c, j, s, z の後と、 接頭辞に属する d の後である。例えば、jabłko 卵(語頭)、skraj 縁(母音の後)、mijać 通り過ぎる(母音の後)、procuję 私は働く(procować の単数3人称=母音の後)、 miejsce 場所(母音の後)、skrojony 切れた(母音の後)、kolacja 夕食( c の後)、 sjesta 昼寝( s の後)、Azja アジア( z の後)、podjeżdżać 乗り着ける(接頭辞に 属する d の後)、等である。どのような場合に、i を書くかは、発音と綴り字の項を参 照されたい。 2.阻害音 阻害音は有声子音と無声子音を区別することができる。有声子音か無声子音かは発音 時に喉頭が関与するか否かによる。すなわち、喉頭と声道を通る肺からの気流の影響で 声帯が起こす自由振動が関与するのが有声音であり、それが関与しないのが無声音なの である。 これとは別に、阻害音は stop(閉鎖音) fricative (摩擦音) affricate(破擦音)に 分けられる。阻害音の「阻害」の意味は調音器官で閉鎖や狭めなどの障害を作って、気 流を妨げることである。 1)閉鎖音 (破裂音とも言う) は鼻腔と口腔の双方の通気を同時に完全閉鎖するように、 喉頭部または声門を閉鎖するか、あるいは口蓋帆を上げて鼻腔内を通る声道を閉鎖した 上、口腔内の上下の調音器官を密着させて口腔内の声道も閉鎖することによって、肺か ら閉鎖位置までの気圧を高め、その閉鎖を開放することによって発生する音である。閉 鎖音は閉鎖を作る時の音と閉鎖を破る時の音を区別せずに呼ぶ言い方である。破裂音も 同様の意味があるが、この呼称は特に閉鎖を破る側面に重きを置いた言い方である。こ れには p, pi, b, bi, t, d, k, ki, g, gi がある。 ① p, pi ア、硬音の場合は日本語の「パ、プ、ペ、ポ」の頭の子音である。無声音である。上下 の唇を接触させて発音されるものであるので、両唇閉鎖音と称することもできる。 発音 9 potem それから、palić 喫煙する、等 イ、pi- は軟音であり、日本語の「ピャ、ピュ、ピョ、ピ」の頭の子音である。 少し注意すべきは pi- の後に子音が続く場合である。例えば、 pisać の場合、発音記 号は [pjisatç] であり、i が発音される。しかし、pi- の後に母音が続く場合は i は発音されない。例えば、piasek 砂、は [pjasɛk] と発音する。これらは mi-, niの場合と同じである。 ② b,bi 硬音の場合は日本語の「バ、ブ、ベ、ボ」の頭の子音である。p の有声音である。上 下の唇を接触させて発音されるものであるので、両唇閉鎖音である。 brak 不足、obok そばに、等 bi は軟音であり、日本語の「ビャ、ビュ、ビョ、ビ」の頭の子音である。これも pi と 同じく、bi- の後に母音が続く場合には、i は発音されず、子音が続く場合には i は発 音される。 bieda 貧乏、bilet 切符、等 ③t t は日本語の「タ、テ、ト」の頭の子音に類似しているが、やや異なり、歯閉鎖音で ある(日本語の場合は、舌端歯茎音である。)。無声音である。歯音は、上前歯の裏に 舌先を接して発音するものである。国際音声記号は、t に下付のブリッジが付いたもの である。しかし、本書では簡単に音声記号も「 t 」とする。 brat 兄弟、talerz 皿、matka 母親 ポーランド語固有の単語は対応の軟音を持たないが、外来語に軟音が見られる。例え ば、festiwal フェスティバル、sympatia 好意、等である。 ④d d は日本語の「ダ、デ、ド」の頭の子音である。t に対する有声音である。歯閉鎖音 である。国際音声記号は、d に下付のブリッジが付いたものである。しかし、本書では 簡単に音声記号も「 d 」とする。 wada 欠陥、mądry 賢い、等 t と同じくポーランド語固有の単語は対応の軟音を持たないが、外来語に軟音が見ら れる。例えば、dialog 対話、melodia メロディー、等である。 ⑤ k, ki ア、硬音の場合は日本語の「カ、ク、ケ、コ」の頭の子音である。無声の軟口蓋閉鎖音 である。軟口蓋音は後舌を軟口蓋に密着または接近させて気流を妨げることによって作 られるものである。 tak はい、kara 罰、等 イ、軟音の場合は日本語の「キャ、キュ、キョ、キ」の頭の子音である。国際音声記号 は 「 c 」である。しかし、慣用的に、「 kj 」と表示しても良い。 kiedy いつ、okien 窓、等。 これも pi, bi と同じく、その後に母音が続く場合には i を発音しないが、その後に子 音が続く場合には、i を発音する。kilka いくつかの、は [kjilka] と発音するが、kiedy 10 発音 は [kj ɛdɨ] と発音し、i が入らない。 ⑥ g, gi ア、k に対する有声音である。日本語の「ガ、グ、ゲ、ゴ」の頭の子音である。有声の 軟口蓋閉鎖音である。 gniw 怒り、bagaż 荷物、等 イ、軟音の場合は日本語の「ギャ、ギュ、ギョ、ギ」の頭の子音である。国際音声記号 は ɟ である。しかし、慣用的に、「 gj 」と表示しても良い。 ginąć 消える、srogi 厳しい、等 これも ki と同じく、その後に子音が続く場合には i を発音するが、その後に母音 が続く場合には i を発音しない。 2)摩擦音は、子音を調音する際、声道内に狭い隙間をつくって空気の流れを遮り、小 さな隙間から無理やり出ようとして起こる空気の摩擦を利用して作り出される音であ る。呼気の経路を非常に狭めて呼気を送り込むため、「狭め音」( spirant)とも言う。 これには、f, fi, w, wi, s, z, sz, ż, rz, ś, ź, ch, h, chi がある。 ① f, fi ア、f は無声音で、唇歯摩擦音の一つである。下唇の裏に上の前歯を軽く触れ、その隙 間から「フ」と強い息を吹き出して発音する。 fala 波、fragment 部分 イ、fi は舌を盛り上げながら、上の前歯に下唇裏側を軽く触れて、その隙間から声を加 えない呼気を強く吹き出して発音する。これも p, b 等と同じく、その後に子音が続く場 合には i を発音するが、その後に母音が続く場合には i を発音しない。 firma 会社、ofiara 犠牲 ② w,wi ア、f に対する有声音が w である。下唇の裏に上の前歯を軽く触れ、その隙間から「ヴ」 と強い息を吹き出して発音する。 kawa コーヒー、wzrost 成長 イ、wi は fi の有声子音で、舌を盛り上げることにより w に「短いイ」の音色を加えて 発音する。 wiara 信用、witać 出迎える これも、その後に子音が続く場合には i を発音するが、その後に母音が続く場合には i を発音しない。 ③ s, si あるいは ś ア、s は無声音で歯茎音の一つである。歯茎音は、上の歯茎に舌先を接触または接近さ せて調音するものである。日本語の「サ、ス、セ、ソ」の頭の子音である。 sklep 店、los 運命 イ、si, ś は、舌を盛り上げることにより、s に「短いイ」の音色を加えて発音する。す なわち、舌を盛り上げつつ前舌が前部硬口蓋(歯茎硬口蓋)に接近させ、その狭めから 声を伴わない呼気を出して発音するのである。国際音声記号は ɕ である。そして、si の 発音 11 場合、f, w 等と同じく、その後に子音が続く場合には i を発音するが、その後に母音が 続く場合には i を発音しない。 siedem 7、siostra 妹(姉)、siny 青い ウ、注意すべきは、外来語の場合である。例えば、sinus くぼみ、の場合の si は外来 語であり後部硬口蓋歯茎音 である。siny 青い、の場合の si は 前部硬口蓋歯茎音であ る。その違いは、前者は sj と発音するのに対して、後者は ɕ と発音する点である。す なわち、前舌を盛り上げる点は同じであるが、前者は狭窄の場所が後部歯茎の方にずれ るのに対して、後者は狭窄の場所が前部歯茎にあるのである。前者(sinus)が外来語で あるから、このような違いが生じるのである。 ś の場合には、その後に子音が続いていても i を発音しないのは言うまでもない。ど ういう場合に、ś とするか、si とするかは後述する。 ④ z, zi あるいは ź ア、z は s に対する有声音である s に音を加えただけで発音される。日本語の「ザ、ズ、 ゼ、ゾ」の頭の子音は破擦音であり、これとは異なるので注意が必要である。従って、 日本人にとっては難しい音の一つである。 zdanie 意見、znać 知っている イ、zi, ź は si に声を加えた有声音である。舌を盛り上げながら、舌の先を上の前歯の 裏及び歯茎に近づけ、その狭めから声を伴う呼気を出して発音する。国際音声記号は ʑ である。これも si と同じく、その後に子音が続く場合には i を発音するし、その後に 母音が続く場合には i を発音しない。 ウ、注意すべきは si の場合と同じく、外来語の zi とポーランド語固有の zi を区別す べき点である。前者の例は、Azja アジア、であり、後者の例は、zioło 草、である。前 者の場合は、zj と発音するが、後者は ʑ と発音する。尚、zirytować いらいらさせる、 は外来語ではないが、z- は接頭辞であるので、ʑ とは発音せず、zj と発音することに 注意すべきである。 エ、ź の場合には、その後に子音が続いていても i を発音しないのは言うまでもない。 どういう場合に、ź とするか、zi とするかは後述する。 ⑤ sz これは無声音で、後部歯茎音の一つであり、歯茎の最も盛り上がった部分の後ろ側で 作られる摩擦音である。ロシア語の ш とほぼ同じであり、後舌面の軟口蓋への接近が 見られる。日本語にはこれに相当する音がないので、特に注意が必要である。国際音声 記号は ʃɣ である。sz の後には i は続かず、y が続くのであるが、外来語には sz の後 に i が続くものがある。例えば、suszi 寿司、である。この場合の発音は、[suʃji] とな る。 ⑥ ż あるいは rz sz に対する有声音が ż あるいは rz である。これも日本語に相当する音がない。国際 音声記号は ʒɣ である。sz と同じく、ż あるいは rz の後には i は続かないの であるが、外来語には i が続くものがあるのは、sz と同じである。例えば、 12 発音 żigolak ジゴロ(若いつばめ)である。この場合の発音は、[ʒjigɔlak] となる。 ※ ż と rz は発音は全く同じであるが、起源が異なり、それぞれ相当するロシア語が異 なる。そして、ż はロシア語の ж に、rz はロシア語の р' (軟音の р )に相当する。 żar 暑さ(ロシア語で жар)、żywy 生き生きした(ロシア語で живой)、żona 妻(ロ シア語で жена)、żargon 隠語(ロシア語で жаргон) rzeka 川( ロシア語で река)、rząd 列 ( ロシア語で ряд ) ⑦ ch/ h ch は無声音で軟口蓋音である。後舌を軟口蓋へ近づけて発音する。すなわち、舌全 体を後ろに引き、舌の奥を口蓋の後部に向かって盛り上げ、そこにできる狭めを通して 声を伴わない呼気を押し出して発音するのである。これに対する有声音はない。h も発 音は全く同じであるが、外来語や一部の間投詞に用いる。国際音声記号は x である。 ch/h に i が続く場合は、少し発音が異なる。この場合は、前舌を硬口蓋に接近させ て発音する。国際音声記号は Ç である。x よりやや前で発音される。例えば、 histeria ヒステリー、である。この場合の発音は、[Çistɛrjja] である。 ※ ch と h は発音は同じであるが、 起源が異なり、 それぞれ相当するロシア語が異なる。 すなわち、ch はロシア語では х であり、h はロシア語では г に相当する。 duch 精神(ロシア語で дух)、chleb パン(ロシア語で хлеб)、mucha ハエ(ロシ ア語で муха)、chata 小屋(ロシア語で хата) herb 紋章(ロシア語で герб)、hamak ハンモック(ロシア語で гамак)、hektar ヘ クタール(ロシア語で гектар) 3)破擦音は、同じ調音部位または隣接する2箇所の調音部位で破裂音と摩擦音を同時 にひとつの音として調音することによって生じる摩擦を伴った破裂音をいう。今までの ものがある定められた上下の調音器官が接近あるいは接触して調音されたものである のに対して、これは、閉鎖の開閉がゆっくりと行われ、同じような調和点で「閉鎖音+ 摩擦音」が連続して起こるものである。 これには、c, dz, cz, dż, ć, dź がある。 ①c 破擦音にはまず c がある。これは無声音で、歯茎音の一つである。日本語の「ツ」の 頭の子音である。歯茎閉鎖音(歯茎破裂音) t が発せられた直後に、同じ場所で摩擦音 s になめらかに移ることができると、この音が得られる。これは上の歯茎に舌端を接触 または接近させて調音するものである。国際音声記号は ts である。 ② dz c に対する有声音である。日本語の「ヅ」の頭の子音である。歯茎閉鎖音 d が発せら れた直後に、 同じ場所で摩擦音 d になめらかに移ることができると、 この音が得られる。 国際音声記号は dʐ である。 ③ cz これは無声音で、後部歯茎音の一つである。日本語にはこれに相当する音がない。舌 先あるいは舌端を歯茎に密着させて呼気を遮断し、閉鎖をゆっくり開放し、舌端が後部 歯茎に接近する状態を少々持続させることにより発音される。つまり、歯茎閉鎖音 t が 発音 13 後部歯茎摩擦音 sz により開放されることにより、上の歯茎後部に舌端を接近または接 触させて調音するものである。つまり、舌面の全体をできるだけ後ろに持ち上げ、口の 天井にべったりくっつけて息を強く出しながら離すことによって出す音である。ロシア 語では тш に相当する。国際音声記号は ʈʃɣ である。 ④ dż cz に対する有声音が dż である。日本語にはこれに相当する音がない。歯茎閉鎖音 d が後部歯茎摩擦音 ż により開放されるのである。ロシア語では дж に相当する。国際 音声記号は dʒɣ である。 ⑤ ć あるいは ci これは無声音であり、t を調音する時と同じように舌先や舌端を歯茎に密着させて呼 気を遮断し、cz の場合よりも前舌面をはるかに硬口蓋前部に接近させておいて、閉鎖を ゆっくりと開放し、硬口蓋前部と前舌面とのせばめを少し持続させることにより発音す ることができる。これは、前舌が硬口蓋に接近することで作られた隙間から生じる音な のである。日本語の「ち」の子音部と極めて近い音である。ロシア語の ч に相当する。 国際音声記号は tɕ である。 ci の場合、 si 等と同じく、 その後に子音が続く場合には i を 発音するが、その後に母音が続く場合には i を発音しない。 ⑥ dź あるいは dzi ć に対する有声音である。 日本語の「ぢ」の子音部と極めて近い。ロシア語ではこれ に相当する文字はないが、音に関しては ч が有声化した場合に相当すると言えよう。国 際音声記号は dʑ である。dzi の場合、ci と同じく、その後に子音が続く場合には i を 発音するが、その後に母音が続く場合には i を発音しない。 14 発音 第3節 母音 調音音声学あるいは解剖学的に見た場合、母音は3つの次元から分類される。すなわ ち、① 舌の前後の位置、② 舌の上下の位置、③ 唇の形状である。舌は,呼気を妨害し ない範囲で、前後あるいは上下に移動することができるし、唇の形状も呼気を妨害しな い範囲でいろいろに変えることができる。母音の調和点は母音を発している時に、舌と 口蓋とが最も接近する位置と考えることができる。 ポーランド語の母音は9つあるが、u と ó は発音が同じであり、実際は8つである。 母音には口母音と鼻母音がある。調音される場合の、口腔内での位置をおおよそで示す と、 前 中 後 高 i u/ ó y 中 e o 鼻音 ę ą 低 a ① 舌の前後の位置の観点から見た場合、前にある母音を前舌母音と言えるが、i, e, ę が それに該当する。逆に舌が最も奥にある母音を後舌母音と言えるが、u/ ó, o, ą がそれに 該当する。両者の中間の位置で調音される母音は中舌音と言えるが、y, a がそれに該当 する。 ② 舌の上下の位置の観点から見た場合、 舌と口蓋との距離が母音として最小の状態で発 せられた母音を狭母音、すなわち舌が高い位置にある母音、逆に舌と口蓋との距離が最 大であるような母音を開母音、すなわち舌が低い位置にある母音、と言える。そして、 i, u / ó が前者、a が後者に該当する。それ以外は、その中間の母音と言える。 ③ 唇の形状の観点から見ると、唇を丸めて発せられた母音か、そうでない母音かに分け ることができる。前者を円唇母音、後者を非円唇母音、と言うが、o が円唇母音であり、 それ以外は非円唇母音である。 Ⅰ 口母音 1.a e y i o u/ó と6つあるが、このうち y と o 以外は日本語とほぼ同様に発音して 良い(従って、e の発音記号は である。)。しかも、英語とは異なり、長く発音さ れるものはない。この点はロシア語と同じである。異なる点は、ロシア語では同じ母音 であってもアクセントがある場合とない場合とで発音が異なったりしたが、そのような 現象は見られないことである。つまり、アクセントがあろうがなかろうが、発音は同じ であるということである。 2.y については前述したようにロシア語の ы に相当し、「イ」に近い「ウ」の音であ 発音 15 る。舌面の上にスプーン状のくぼみを作り、舌の左右両脇を後ろに引くようにして発音 する。国際音声記号では ɨ である。 3.o については日本語のオに近いが、やや異なっている。日本語のオは国際音声記号 で表すところの ɔ と o の中間とされる。しかし、ポーランド語の o はそれよりも少し 口を広くして発音する。従って、国際音声記号としては ɔ と表す。 4.i は少し注意が必要である。 1) ci, si, zi, dzi, ni が母音の前にある時は、i は単に前の子音(すなわち c, s, z, dz, n ) を軟音化するだけであり、i としては発音しない。例えば、ciasto ケーキ、は[tɕastɔ] と 発音する。ci, si, zi, dzi, ni が子音の前にある時は、i を発音する。例えば、zima 冬、は [ʑima] と発音する。 2)c, s, z, dz, n 以外の子音 が(それには p, b, f, w, t, d, m, r, k, g, ch/h がある)i の前 にあり、しかも i が母音の前にある時は、その i は j の様に発音する。例えば、wiec ラ リー、 は[ vjɛts ] と発音する。i が子音の前にある時は、 前の子音を軟音化するとともに、 i を発音する。例えば、pisać 書く、は [pjisatç ] と発音する。 ※ 1)と2)の違いは硬口蓋化の程度による。硬口蓋化は2つの段階を区別で きる。その第一段階は非硬口蓋子音が副次的に舌前面と硬口蓋との接近を伴っ て発音される現象である。これが2)で述べた硬口蓋化である。これに対して、 第二段階は舌前面と硬口蓋がさらに接近あるいは接触し、元来の主要な調音点 と調音器官との接近や接触まで失われてしまうような現象が生じるものである。 1)で述べた硬口蓋化はこのようなものである。要するに、クレスカで表現さ れる子音の場合には完全硬口蓋化が起きるのである。すなわち、 ci(ć),si(ś),zi(ź),dzi(dź),ni(ń) である。 5.以上のように、口母音は口母音として発音されるのであるが、例外的に外来語の場 合には口母音が鼻母音として発音される場合もある。例えば、-ns, -nsz, -nż の前の口母 音は鼻母音として発音される。もっとも、そのまま口母音として発音しても良い。 例えば、awans 運送、の場合、[avãs] としても良いが、[avans] と発音しても良い。 前者の発音は鼻母音としての発音であり、後者の場合は口母音としての発音である。 oranżada オレンジエード、の場合、[orãżada] と発音しても良いし、[oranżada] と発 音しても良い。anons 広告、の場合は、[an s] と発音される。 ※ ó と u は発音としては全く同じであるが、起源が異なる。すなわち、ó と書かれる 単語はスラブ語起源のものであり、ロシア語では о に相当する。一方、u と書かれる単 語はロシア語では у に相当する。 góra 山 → гора 、pół 半分 → пол、róża バラ → роза、róg 角 → рог trud 困難 → труд、krupa 穀物 → крупа、mucha ハエ → муха、dublet 16 発音 写し → дублет Ⅱ 鼻母音 これには ą と ę があるが、ロシア語には見られないものであり、ポーランド語に特 徴的なものである。ą は日本語のオンのように発音し、ę は日本語のエンのように発音 するのが基本である。しかし、正確に言うとこの音は日本語にはないものである。そし て、ą はフランス語の (例えば pont の p )、 ę はフランス語の (例え ば pain の p ) が最も近いと言えよう。また、口母音と異なり、その位置に よって発音が異なる現象が見られる。 1.鼻母音性をそのまま有する場合(明瞭な鼻母音性) 摩擦音( s, sz, ś, z, ż/rz, ź, f, w, ch/h )の前では原則通り、ą は と ę は と発音さ れる。例:wąski 狭い mięso 肉 węzeł 結び目 また、語末の ą(現在複数3人称に多い)も と発音される。一方、語末の ę (現 在単数1人称に多い)は正規には と発音されるが、口語では口母音の ɛ と発音され る。 2.鼻母音性の欠如 1)閉鎖音( p, b, t, d, k, g)や破擦音( c, dz, cz, dż, ć, dź )の前では ę や ą は分解 され や に鼻音の子音( m か n )が付加された形になり、次のルールに従う。 ① 唇閉鎖音( 硬音の p, b であろうが、軟音の pi, bi であろうが)の前では ɛm, ɔm と なる。例:zęby 歯の複数(発音は zɛmbɨ )stąpać ゆっくり歩く(発音は stɔmpatɕ) następny 次の(発音は nastɛmpnɨ) ② 歯茎閉鎖音( t, d ) や硬化子音である破擦音(それが歯茎音であろうが=c, dz、後部 歯茎音=cz, dż であろうが)の前では ɛn , ɔn となる。例:okręt 船、tędy このように、 ręce 手の複数、 pieniądz お金、gorączka 熱 ③ 軟音である硬口蓋破擦音( ć, dź )の前では硬口蓋化音であることを反映して、ɛɲ , ɔɲ となる( ń の発音記号は ɲ であり、硬口蓋鼻音と呼ばれるものである。)。 例:pięć 5 zająć 受け取る ④ 軟口蓋閉鎖音( k g )の前では、軟口蓋音であることを反映して、ɛŋ, ɔŋ となる。 例:okręg 地域 mąka 小麦粉 ręka 手 これは、ki や gi の前でも同様である。例:węgieł 炭素、は [vɛŋ ɟɛw] と発音される。 2)l や ł の前では ɛ や ɔ のように発音される。すなわち、通常の口母音と同じになる のである。これは、特に動詞の過去形に現れる。例:zaczął 始めた zaczęli 始めた 3.曖昧な鼻音性 語末の ę は e と発音されるが、 原則通り と発音しても良い。これらは、第一活 用、第二活用動詞の現在単数1人称に見られる。piszę 私は書く、等。 発音 17 Ⅲ 母音の連続 1.ロシア語の場合、母音の連続は ия や ие 程度でそれ以外はほとんどない。ポーラ ンド語においては母音の連続は見られるのであるが、英語、ドイツ語、フランス語等の ように二重母音という概念はなく、 個々に発音されるだけである。 例えば、 nauka 科学、 は na-u-ka と3音節になるように、au と続いていても a と u は別の音節になるので ある。しかし、外来語の場合には二重母音という概念が認められる。例えば、autor 著 者の場合、 au-tor と au が二重母音となるのである。euro も eu-ro となる。 2.i が関係する場合には少し注意が必要である。 1)i の後に別の母音が来る場合は、通常は i の前の子音を軟音化する。発音としては j が入った形になる。例えば、pies は pjɛs と発音する( 固有の i としての発音はない。)。 j は前舌面を硬口蓋に向かって持ち上げることで発音するもので、不完全硬口蓋化が起 きるのである。そして、これは子音の記号の右肩に付すことによって表現される。pjɛs と j が p の後に右肩に付いているのはそれを示すものである。 このように、i の後に別の母音が来る場合には i を発音しないのであるが、外来語の 場合には i を発音する。例えば、via ~を通って、の場合、[vija] となる。 2)しかし、si, zi, ci, dzi, ni の場合は、単に前の子音を軟音化するだけであり、発音の 中に、j は入らない。このような子音の場合には、調音点自体が硬口蓋に向けて移動す る完全硬口蓋化が起こるからである。例えば、ciemno 暗闇、の場合は [ tɕɛmnɔ]と発 音する。 3)i の前に別の母音が来る場合は、個々に発音するだけである。そして、その両方の 母音は音節を形成する。例:ateista 無神論者 moi 「私の」の複数男性人間形 また、当然ながら母音が連続しているのが、接辞が入っているためである場合も、i は i のままで発音される。例えば、zaimek 代名詞、の場合、imek が基本的単語であり、 それに接頭辞の za がついているので、za と imek と発音されるだけである。 第4節 綴り字の規則 Ⅰ ロシア語の正書法の規則との関係 ロシア語においては正書法の規則があるが、ポーランド語においても同様のものがあ る。ロシア語において к, г, х, ж, ч, ш, щ のあとには ы, ю, я を書かず、代わりに и, у, а を書くが多少異なっている。 まず、k , g のあとには、ы に相当する y を書かず、常に i を書く。しかし、х に相 当する ch/h のあとには i の場合も y の場合もある。例:Chiny 中国 chyba おそらく 次に、ж, ш はそれぞれ ż/rz , sz に相当するが、これらのあとは i を書かず、y を書 く。dz のあとも、y を書かず、常に i を書く。 18 発音 上に述べたことには例外があり、外来語の場合には i を書く場合がある。例えば、 reżim 政権、や、Hiroszima 広島、である。 尚、ч に相当する ć の後には i も y も書かない。 Ⅱ ポーランド語特有の綴り字の規則 Ⅰ はロシア語に見られたものが、ポーランド語ではどうなるかを見たものであり、そ の他にはポーランド語特有のものがある。 1.まず、l や f のあとは y を書かず、常に i を書く。ロシア語の場合、l に相当する л や f に相当する ф の場合に ы でも и でも書けたが、 それと異なっているのである。 例えば、list 手紙、fizyka 物理学、等である。 s や z のあとは y を書かない。 2.次に、ł, d, t, r のあとは i を書かず、常に y を書く。例:mały 小さな stary 年老 いた bogaty 豊富な młody 若い 外来語の場合、d,t,r,s,z のあとは i の代わりに y を書く。これは i を書くと、子音が 軟音化するので、それを避けるためである。例:muzyka 音楽 しかしながら、現代の外来語の場合は i を書く場合もある。例:aria(アリア=音楽 用語) 3.cz の後は、i を書かず、常に y を書く。 4.後部歯茎硬口蓋音について 1)これらはその位置によって3種類の書き方があるが、それらは ć, dź, ń, ś, ź の5つ と関係する。すなわち、クレスカが付いた文字である。 ① ć, dź, ń, ś, ź は子音の前か単語の最後でこのように書かれる。 子音の前の例:ćwierć 4分の1、dźwięczeć 鳴る、państwo 国、śmierć 死、jeździć (車で)行く 単語の最後の例:pić 飲む、łódź ボート、wrzesień 9月、wieś 村、maź 潤滑油 ② i の前はクレスカ が付いた文字は書かれず、c, dz, n, s, z が書かれる。この場合は、 i は発音される。本来なら -ii- となるところ最初の i は消去されているからである。 cichy 静かな、dziki 野生の、nikt 誰もーでない、siła 力、zima 冬 ③ i 以外の母音の前では、ci, ni, si, zi は二重字(2つの文字で発音が一つのもの)、dzi は三重字(3つの文字で発音が一つのもの)となる。要するに i は発音されないので ある。 ciemny 暗い、dziecko 子供、niebo 空、sieć 網、zielony 緑の ④ śliski 平らな、silny 強い、とを比較してみると共に l の前に後部歯茎硬口蓋音があ るが、前者はクレスカの付いた ś であり、後者は si である。その違いは、i が l の前 発音 19 に入るか否かによる。すなわち、前者の発音は [ɕliski] であるのに対して、後者は [ɕilnɨ] と前者は i が入っていないのに対して、後者には i が入っているのである。要するに後 者は本来は siilny であるが、ポーランド語の場合、原則として同じ綴りが続く時は前の ものは消去されるという綴り字の規則があるために、1つが省略されているのである。 だから、クレスカの付いた子音の後に母音が続く時は、クレスカの付いた子音を使わず、 当該子音 + i で表すという上述の原則に合致するのである。 このことは語の最後についても当てはまる。例えば、-ć と -ci で nić 糸、の場合を見 てみると、単数主格は nić であるが、単数生格、単数与格、単数前置格、単数呼格、複 数主格、複数生格、複数対格では nici となる。nić の場合は - tɕ と発音されるのに対 して、nici の場合は - tɕi と i が発音されるのである。 2)ci, dzi, ni, si, zi はそれぞれ何を指すか。 ① 一つの音である。この場合は、i の後が i 以外の母音になっている。 ciemniy 暗い、dziecko 子供、niebo 空、sieć 網、zielony 緑の ② 二つの音であり、後部歯茎硬口蓋子音とそれに続く i が発音される場合 cichy 静かな、dziki ~のおかげで、nikt 誰も~でない、siła 力、zima 冬 ③ 二つの音であり、歯茎音とそれに続く i が発音される場合 歯茎音には c, s, z があ り、i がその前の歯茎音を硬音化しない場合である。この場合は外来語に多い。 cis いちい(植物)、sinus 洞(解剖学上の語彙)、silos サイロ 5.ch, cz, dz, dź, dż, rz, sz について これらははそれぞれ一つの音である。すなわち、二重字であるのが原則である。 chwalić 褒める、czuć 感じる、dzwon 鐘、dźwigać 挙げる、dżem ジャム、rzecz 物、 szczyt 頂上 しかし、これには例外がある。 1)rz が一つの発音ではなく、r + z として発音される場合がある。 mirza 君主の息子、の場合 mir + za と発音される。 marznąć 寒がる、の場合、mar + znąć と発音される。 2) i の前では rz は r + ź と発音される。例えば、mierzić 吐き気を催す 3)rzi は i 以外の母音の前では、r + ź と発音される。例えば、mirzie mirza の前置 格 4)時々、dz や dż は二つの音として発音される。主として -d で終わる接頭辞が付い た単語の場合である。例えば、podzelować 靴の底を張り替える、の場合、pod- は不 完了体である zelować を完了体にする接頭辞であるので、d と z は別々に発音され るのである。 また、nadżerać (ネズミなどが)かじる、も nad- が接頭辞であるの で、d と ż は別々に発音されるのである。 5)時々、dz が d + ź を表すことがあるが、それは z が d で終わる接頭辞の後で、i の 前に位置する時である。例:przedzimie 初冬 6)時々、dzi が d + ź を表すことがあるが、それは ź が d で終わる接頭辞の後で、 i 以外の母音の前の時である。例:podzienie 死者の国 20 発音 6.i の特殊性 母音の i はポーランド語においては特殊であり、主として次の4つの機能を有する。 ① まず、母音としての i である。② 次に、母音としての i と共に、先行する子音を 軟音化する記号として機能する場合である。③ i の前の先行する子音を軟音化する記 号として機能する場合である。④ j の音を表す場合もある。 ア、単語の始まりや単語の終わりでは、母音としての i となる(① の機能)。 イ、i の前の子音が p, b, f, w, m, k, g, ch/h であり、i の後も子音である場合には、先行 する子音を軟音化する、と共に母音 i が発音される( ② の機能)。例えば、piła ボ ール、bitwa 戦い、である。 ウ、同じく i の前の子音が p, b, f, w, m, k, ch/h であり、i の後に i 以外の母音が来る 場合には、i は先行する子音を軟音化する記号として機能する(③の機能)。例えば、 miasto は [mjasto] 、と発音される。 エ、ń, ć, dź, ś, ź が i の前にあり、その後に子音が続く場合は、kreska はなくなり、 i は前述の②として機能する。例えば、zima 冬、は [ʑima] と発音する。 オ、ń, ć, dź, ś, ź が i 以外の母音の前にあるときは、同じく kreska はなくなり、各 子音の後に i が書かれる。例えば、ciasto ケーキ、の場合、ćasto* とは書かない。 そして、発音は、[tɕastɔ]である(そして、この場合は、i は ③ の機能を有する。 また、この場合は 子音+ i は二重字あるいは三重字となることになる。)。 カ、b, ch, cz, d, dż, f, g, h, k, l, m, p, r, sz, t, w, ż の後は j を書かず、i を書く。従って、 この場合は j として発音されるものがある(④の機能)。例えば、dieta 食事療法、 は [djɛta] と発音される。 7.j について ポーランド語において j は特殊であり、j が使われる場合は限られている。 1)まず、語頭、母音の後、には j が来る。しかし、子音の後には原則としては j は来 ることがない。ただし、c, j, s, z の後と、接頭辞に続く場合には j が使われる。最後 の場合は語頭にあると理解して良い。 jabłko リンゴ jajko 卵 rajcować べらべらしゃべる pijany 酔った ujma 撤去 przejechać 横切る ojciec 父 Arabia Saudyjska サウジアラビア kolacja 夕食 misja 発送 Azja アジア podjadać 食事をする 例えば、objadać 囓り取る、の場合、ob は接頭辞であるので、そのあとに -j- が綴 られうるのである。wjechać (乗り物で)中へ入る、の場合も同様である。 2)外来語の場合も同様である。c, s, z のあとには j が綴られるのである。例えば、Rosja ロシア、Azja アジア、racja 理由、rewolucja 革命、okazja 機会、等である。しか し、外来語であってもそれ以外の場合には j は綴られず、i が代用する(前述した i の 機能の④)。例えば、partia パーティ、は本来は partja であるが、t のあとは j を 綴らないので、i が代用するのである。 3) 次に、b, ch, cz, d, dż, f, g, h, k, l, m, p, r, sz, t, w, ż の後には j が来ることはなく、 21 発音 その代わりに i が来る(但し、1)の d の場合、すなわち接頭辞に属する d の後の 場合、は除く)。 従って、この場合は i は j として発音される。 Arabia アラビア [ arabja ] と発音される。 hierarchia 階級組織( 発音は [ xjɛrarxja ] ) dieta 食事療法 ( 発音は [ djɛta ] )lodżia 屋根付きバルコニー( 発音は [ lodʐja ] ) 4)そこで、問題は子音のあとに i が綴られていた場合に、それが j の代わりをしてい るのか、それともそれ以外の i かである。原則として外来語の場合は前者であり、固 有語の場合は後者と考えるべきであろう。従って、例えば、skrobią は外来語として は糊の造格を示し、固有語としては「こする」という動詞 skrobać の3人称複数形の skrobią を示すことになり、発音上違いが見られるのである。前者は [ skrobj ]、後 者は [ skrobj ] と発音される。 5)母音の後で語幹の最後の j は i の前では脱落する。例えば、kolej 列車、の単数生 格は kolei であるが、本来は koleji* である。しかし、j は母音 e の後であり、i の 前にあるので、脱落し、kolei となるのである。この場合、i は j の機能も有するの である。 第5節 子音の同化 Ⅰ 総説 子音の同化(広義)についてはロシア語よりもやや複雑である。子音の同化とは狭義 では有声子音が無声子音に影響されて無声化することや、無声子音が有声子音に影響さ れて有声化することをいう。また、広義では語末の有声子音が無声化する現象も含めて 言う。なぜなら、語末の子音はその後に音が連続しない、すなわち無声であるという環 境にあるからである。したがって、この場合は後に述べる逆行同化の一つであると言え よう。 当該音が無声子音か有声子音かは前述したが、少し注意すべきは ch/h である。これ は無声子音であるが、有声子音の前では有声化する。その場合に、発音記号としては x であるが、それが有声化すると ɣ になる。 有声子音は声帯が振動して声を伴う音声の内で子音であるものであり、無声子音は声 帯が振動しない音声である。有声子音と無声子音はそれぞれがペアをなすもの、有声子 音のみのもの、無声子音のみのものがある。 有声子音のみのものは、 m, n, ń, ł, l, r, j であり、 無声子音のみのものは、 ch/h である。 それ以外は、阻害音(すなわち、閉鎖音と摩擦音と破擦音である。)であるが、それ らはペアをなしている。それらを対立的に示すと、 無声音:p f t s c sz cz 有声音:b w d z dz ż/rz dż ś ź ć dź k g 22 発音 Ⅱ 語末の有声子音の無声化 ロシア語においては、阻害音において語末の有声子音は対応の無声子音として発音す るが、同様のことはポーランド語でも見られる。これは総説でも述べたように広義の逆 行同化の一つであるが、それとは区別する必要があり、後述する同化現象とは別に取り 上げる。 これには、阻害音である b , w, d , z, dz ,ż/rz , dż , ź , dź , g が、それぞれ p , f , t , s, c , sz , cz , ś , ć, k と発音されることが挙げられる。 従って、例えば chleb パン、は[xlp] と発音し、rad アドバイス、は [rat] と発音し、 nóż ナイフ、は [nuʂ]と発音するのである。これは語末が二重子音になっても同 様である。例えば、mózg 脳、は [musk] と発音する。動詞の命令形において も同じで rób ~せよ、は [rup] と発音する。ただ、少し注意すべきは1人称複数 の命令形の場合である。この場合、命令形の基本形にその語尾である -my が付加され るが、基本形の子音が語末とみなされるので、-my が付加されてもその前の子音は同じ く無声子音として発音される。例えば、róbmy やろう、という場合、[rupmɨ] と発音さ れる。 Ⅲ 同化現象 同化現象で重要なのは逆行同化と順行同化である。そして、問題はどちらが起きるか であるが、基本としては逆行同化である。一方、後述するように順行同化の場合、起き る子音はある程度限られている。 1.逆行同化 単語の内部において、無声子音の前の有声子音が無声化したり、有声子音の前の無声 子音が有声化するのはロシア語で見られたが、このことはポーランド語にあっても見ら れる。例えば、łóżko ベッド、は [wuʂkɔ] と発音される(無声化の例)。また、liczba 番 号、は [lidʐba] と発音される(有声化の例)。また、後者は条件文の助詞の前でよく起 こる。例えば、choćby が、[xɔdʑbɨ] と発音される。 2.順行同化 1)また、以上とは逆に、無声子音の後の有声子音が無声化する現象も見られる。この 例には、przy 近い、は [pʂɨ] と発音し、twarz 顔、は [tfaʂ]と発音することが挙げられ る。また、よく使われる動詞では、otrzymać 受ける、がある。この順行同化が起きる 子音は限られていて、無声子音の後の w, rz である。(chwalić 誉める、を [chfalić] と 発音するのも、ch が無声子音なのでこのように発音するのである。)。 2)一方、有声子音の後の無声子音が有声化する現象は見られない。このような場合に は、逆行同化が起き、有声子音が無声化する。例えば、wcale まったく、は [ftsalɛ]と 発音するので、語頭の w は無声子音である c に影響されて、f と発音するの 発音 23 である。 3.共鳴音が関係する場合は少し異なっている。共鳴音は前述したごとく、一応、有声 子音として扱われ、対応の無声子音を有しない。しかし、共鳴音は語末で無声子音の後 である場合、無声子音の間の場合、語頭で無声子音の前の場合、には無声子音となる。 例えば、kosmka 絨毛(kosmek の単数生格)の場合、-smk- の m は無声子音となる し、wiatr 風、の場合語末の r は無声子音となる(発音記号は [vjatr]̭ )また、kadr 骨 組、の場合、語末の r は無声化するとともに、その前の d も無声化するのである。し かし、常に無声化するわけではなく、そのまま有声音として発音する場合もある。 尚、trwać 続く、は [trfatɕ] と発音する。r が無声音 t の後であり、無声音として扱 われるので、順行同化で w は f と発音されるのである。 4.ポーランド語特有のことであるが、t や d は、sz や rz や cz の前では cz や dż に 同化することがある。 例えば、trzy 3、は rz の前の t は cz に同化し、発音上は[ʧʂɨ] となることもある。 その他には、świętszy 聖人、wiotczeć 旗、等がある。 また、drzewo 木、の場合、発音上は[dʒʒɛvɔ]となることもある。また、krótszy より 短い、は[kru ʧʂɨ] と発音される。młodczy は [mwɔʧʧɨ] と発音される。 語末の trz は cz と発音される。例えば、mistrz マスター、の場合、[misʧ]と発音 される。 cz, sz, rz/ż, dż の前の s や z はそれぞれ sz や ż と発音されることがある。例えば、 z czego 何から、[ʂʧɛgɔ]は と発音されることがあるし、z dżungli ジャングルから、 [ʐdʒungli] と発音されることもある。 ć、ś、ź、dź の前の z は無声化し、さらに硬口蓋音化して ś や ź に同化すること もある。例えば、rozcieńczać 薄める、は [rɔɕtɕɛɲʧatɕ] と発音されることもある。 Ⅳ 語と語の間の同化 語と語の間の同化とは、二つ以上の単語間で語の同化が起きるものである。前述した 子音の同化が一つの単語の間で有声化、無声化が起こったのに対して、これは、二つ以 上の単語間で語の同化が起こるものである。ロシア語においては前置詞と名詞が一続き に発音されるに際して、無声化が起こったが、ポーランド語においては前置詞と名詞の みならず、名詞と名詞、名詞と形容詞のように二つの実詞の間にも起こるのが特徴であ る。 1.実詞と実詞の間の同化 1)先行する語の末尾が有声子音である場合に、後行する語の語頭が無声子音であれば 24 発音 先行する語の末尾は無声化する。これは後続の音に一致するので、無声化は逆行同化の 一例とも言えよう。 例えば、sąd karny 犯罪法廷、の場合、[sɔnt karnɨ] と発音するし、wróg publiczny 公 衆の敵、の場合は、[vruk publiʧnɨ] と発音する。 2)先行する語の末尾が無声子音である場合に、後行する語の語頭が有声子音であれば、 先行する語の末尾は有声化される。これも逆行同化の一例といえる。ただ、発話のスピ ードや個人の癖と関係するので、必ず有声化するわけではない。 有声化される例は、jak dziś 今日のように、が [jag dʑiɕ] の様に発音される場合であ る。 3)先行する語の末尾が無声子音である場合に、後行する語が共鳴音(resonant consonant)で始まる場合に(鳴音の場合は一応有声子音として扱われるが、対応する 無声子音を持たないものである。)、先行する語の末尾は有声化する。しかし、これは 必ずしも常に見られるわけではなく、標準的なポーランド語では見られない。 ※ 先行する語の末尾が有声子音である場合に、 後行する語が共鳴音あるいは母音で始ま る場合には、先行する語の末尾の有声子音が無声化するのは、Ⅱの語末の有声子音の無 声化の一つである。 2.前置詞と実詞の間の同化 1)前置詞と無声子音で始まる語が接合する場合、前置詞の末尾の有声子音は無声化し て発音される。これも逆行同化の一つであると言えよう。 od kogo 誰から od は[ɔt] と発音される。z Krakowa クラクフから z は [s] と発 音される。 2)前置詞と有声子音あるいは母音で始まる語が接合する場合、前置詞の末尾の無声子 音は有声化して発音される。これも逆行同化の一つであると言えよう。 obok domu 家のそばに obok は [ɔbɔg] と発音される。 w Ameryce アメリカで [vamɛrɨtsɛ] ※ 注意すべきは前置詞の末尾が有声子音であり、 後行の実詞が共鳴音や母音で始まる場 合、前置詞の末尾の有声子音はそのまま有声子音として発音される。例えば、bez radości 喜びなしに、の場合、[bɛz radɔɕtɕi] と発音される。従って、1の※で述べた実詞と実詞 とは異なることになる。 第6節 子音の特別の連なりの発音 ロシア語においては、子音の連なりの仕方によって本来の子音の発音が異なったり、 発音されなくなることがあった。例えば、конечно において ч を ш と発音する場合と か、иэвестный の場合に-стн- の т を発音しない場合とかである。このようなことはポ ーランド語においても見られるが、あまり見られるものではない。ただ、時に見られる ものである。 発音 25 Ⅰ 二つの子音に囲まれた ł と n は発音されない。 jabłko リンゴ、は [japko] と発音される。b と k の間の ł は発音されないし、さら に逆行同化で b が 無声子音の k に影響されて、p と発音される。ziarnko 小さい粒 子、は [ʑarko] と発音され、r と k の間の n は発音されない。 Ⅱ 単語の最後の ł は発音されない。しかし、これはすべてに当てはまるわけではない。 znalazł 彼が見つけた、は [ znalas ] と発音され、最後の ł は発音されず、加えて z が 語末なので 無声音である [ s ] と発音される。他には、pomysł 考え、は [ pɔmɨs ] と発 音されることが挙げられる。 Ⅲ 数詞の場合に中間の子音が発音されないことがある。 pięćdziesiąt 50、の場合 ć は発音されない。szęśćdziesiąt 60、の場合も ć は発 音されない。sześćset 600、の場合も ć は発音されない。 第7節 軟子音化 ロシア語においては歯軟子音の前の歯子音は軟子音として発音された。これとよく似 た現象はポーランド語においても見られる。例えば、ć, dź, ń の前の n が ń と発音さ れる場合である。従って、studenci 学生たち、は、studeńci のように発音されるし、inni その他の(男性人間複数形)、は、ińni のように発音される。 第8節 音節 音節とは1個の母音を音節主音とし、その母音単独で、あるいはその母音の前後に1 個または複数個の子音を伴って構成する音声群で、音声の聞こえの一種のまとまりを言 う。音節は1個の母音だけのもの、子音+母音となるもの、母音+子音となるもの、子 音+母音+子音となるもの、がある。従って、母音が含まれるのが原則である。 母音が連続する場合は、次のように考えるべきである(第3節 Ⅲも参照)。 Ⅰ 原則 分けて発音される場合には、分けるべきである。 museum 博物館は mu-se-um とすべきである。nauka 科学、は na-u-ka とすべき である。 Ⅱ 例外 しかし、外来語で au や eu と続く場合には、これらは一緒に発音されるので、分け るべきではない。例えば、Europa ヨーロッパは、Eu-ro-pa とすべきであり、pauza 中 26 発音 断、は pau-za とすべきである。 また、母音が二つ続いた場合で i が最初に来る場合には、次の母音と分けるべきでは ない。なぜなら、その子音が ń, ś, ź, ć, dź の場合、綴りは ni, si, zi, ci, dzi となるが、そ の後に i 以外の母音が来る場合にはその i は先行する子音を軟音化する機能を有する だけであり、母音としては発音されないからである。また、fi, mi, wi, pi, bi, ki, gi, chi/xi の後に i 以外の母音が来る場合にも、i は先行する子音を軟音化する機能を有するだけ であり、発音されないからである。 従って、niebo 空、は nie-bo とすべきであり、 miasto は mia-sto とすべきである。 Ⅲ 子音の連続 子音が連続する場合は、次のように考えるべきである。 1.まず、ch, sz, rz, cz, dz, dź, dż はそれぞれ1文字と考えるべきであるので、それ自 体音節を形成することはない。 2.次に、同じ子音が続く場合は分けるべきである。例えば、lekko 軽く、の場合、lek-ko とすべきである。willa 別荘、の場合、wil-la とすべきである。 3.別の子音が続く場合は分けるのが原則であるが、鳴音や摩擦音が関係する場合には 分けない場合がある。 例えば、dobrze 良く、の場合、b は閉鎖音、rz は摩擦音であるが、dob-rze と分け る。mieszkanie の場合、sz は摩擦音、k は閉鎖音であるが、mie-szka-nie と sz と k は分けない。しかし、これはすべてに当てはまるのではなく、ケースバイケースである。 例えば、jeszcze まだ、の場合、sz は摩擦音、cz は破擦音であるが、jesz-cze と分ける。 drożdże 酵母、も ż は摩擦音、dż は破擦音であるが、droż-dże と分ける。 Ⅳ 開音節と閉音節 音節は音節が母音で終わるものを開音節、子音で終わるものを閉音節というが、ポー ランド語においてこの区別は重要である。なぜなら、後述するように母音交替と関係す るからである。閉音節には母音+子音、となるもの、子音+母音+子音、となるものが あるが、具体的に見ると少し考察を必要とする。そして、ポーランド語において閉音節 となるのは以下の場合である。 1.子音あるいは子音群が単語の最後である場合である。例えば、pilot パイロット、 の場合の -lot である。 2.語の中間に位置する子音群が鳴音(l, ł, m, n, ń, r, j)で始まる場合である。例えば、 lampa ランプ、の場合、子音群 -mp- は m で始まっているので、lam- pa と音節が分 発音 27 かれ、その場合の lam- である。 3.鼻母音が子音群の前にある場合には、その子音群(すなわち鼻母音の後ろにある子 音群)は音節が分かれる。例えば、błędny の場合、błęd-ny と音節が分かれるので、błędは閉音節である。 4.Ⅲで述べたように、同じ子音が続く場合は必ず分かれ、閉音節となる。例えば、willa 別荘、の場合、wil-la と音節が分かれるので、wil- は閉音節となる。 5.異なった連続している2つの子音が、閉鎖音か破擦音の場合には、音節が分かれる。 例えば、dobrze 良く、の場合、dob-rze と音節が分かれる( b は閉鎖音、rz は摩擦音)。 しかし、摩擦音や鳴音が関係する場合には分かれないことがある。例えば、porcja 部分、 の場合、-rc- は分かれず( r は鳴音、c は破擦音)、po-rcja と分かれる。 6.語の最初の接頭辞が子音で終わるものの場合は、接頭辞は閉音節となる。例えば、 nadzór 監督、の場合、nad-zór と音節が分かれるが、nad- は接頭辞で閉音節となる。 以上の他は、母音で終わるので、開音節となるのである。 第9節 アクセント ロシア語においてはアクセントは単語によって一様ではなく、また、動詞の活用や名 詞の変化形でアクセントの位置が異なることが良く見られた。これに反し、ポーランド 語のアクセントは簡便であり、最後から2番目の音節にあるのが通常である。 そして、ロシア語の場合、長い単語には、第2アクセントもあることがあった。例え ば、外国語由来の接頭辞が付いた単語とか、専門用語等である。この点はポーランド語 でも同じである。例えば、antyterroristyczny テロリストに反対する、という形容詞の 場合、後ろから2番目の -sty- にアクセントがあるが、さらに anty - という外来語由来 の接頭辞の後ろから2番目である an- に第二アクセントがある。第一アクセントより弱 く発音されるのは言うまでもない。 Ⅰ 原則 基本的には単語の最後から2番目の音節にアクセントがある。例えば、rower 自転車 の場合、ro- の所にあるのである。この原則は単語が変化しても変わらない。従って、 自転車で、という場合に、na rowerze となるが、最後から2番目の音節である -we- に アクセントが移るのは当然である。 Ⅱ 後ろから3番目にアクセントがある場合 しかし、特別な場合として最後から3番目の音節にアクセントがある場合がある。 28 発音 1.動詞の過去形に関して最後から3番目の音節にアクセントがある場合がある。 1)それには、まず、動詞の過去形における複数1人称、2人称の場合である。 例えば、czytać の場合、単数1人称は czytałem, czytałam であり、後ろから2番目 の -ta- にアクセントがある。しかし、複数1人称や2人称となると czytałyśmy 私たち は読んだ、czytałyście あなた方は読んだ、となるが、アクセントの位置は-ta- の所のま まである。音節に区切ると czy-ta-ły-śmy、czy-ta-ły-ście となるので後ろから3番目と なるのである。 2)また、動詞の仮定法で単数1人称女性形、2人称女性形、3人称女性形、複数男性 人間形3人称の場合も後ろから3番目にある。 czy-ta-ła-bym 私は読んだろう、 czy-ta-ła-byś あなたは読んだろう、 czy-ta-ła-by 彼 女は読んだろう、 czy-ta-li-by 彼らは読んだろう、の場合は、いずれも -ta- の位置に アクセントがあり、これも後ろから3番目である。 3)尚、単数1人称男性形、単数2人称男性形、単数3人称男性形の場合は原則通りで あることは言うまでもない。例えば、czy-tał-bym, czy-tał-byś, czy-tał-by は後ろから2 番目の tał にある。また、複数1人称、2人称(男性人間形であろうが、非男性人間形 であろうが)の場合には最後から4番目にアクセントがある。czy-ta-li-byś-my の場合、 -ta-にあるが、それは最後から4番目である。czy-ta-ły-byś-cie も -ta- にあり、これも 最後から4番目である。 これらの場合、最後から2番目の音節にあるというアクセントの原則に従わないのは、 -bym, -byś, -by, -byśmy, -byście を除いて考えるからである。これに対して、命令形の 場合は、原則通り後ろから2番目にアクセントがある。 4)動詞の過去形の語尾である -m, -ś, -śmy, -ście が他の語(例えば副詞)につくこと があるが、その場合もアクセントの移動はない。例えば、kiedyśmy tam byli 我々がそ こに行った時、の場合、kie-dyś-my は kie- にアクセントがあるが、それは後から3 番目であり、本来の kiedy のアクセントの位置と同じである。これも -m, -ś, -śmy, -ście を除いてアクセントの位置を考えるからである。 2.400、500、700、800、900の基本個数詞 czterysta, pięciuset, siedemset, osiemset, dziewięćset それに kilkaset 数百、等、い ずれも最後から3番目の音節にアクセントがある。 3.powinien の複数1人称、2人称 powinniśmy, powinniście はそれぞれ po-win-niś-my, po--win-niś-cie と音節が分か れ、アクセントは -win- にあるが、それは最後から3番目である。 4.後接辞(例えば -no, -to, -że 等)が付いている単語では、最後から3番目の音節に アクセントがある。例えば、czemuże 一体なぜ、の場合、最後から3番目である cze- に アクセントがある。これは後接辞を除いてアクセントの位置が決められるからである。 発音 29 5.―回を表す -kroć の場合 czterykroć 4回、の場合、最後から3番目である czte- にアクセントがある。これも -kroć は後接辞であり、後接辞を除いてアクセントの位置が決められるからである。 6.外来語の場合 1)語末が –ika/-yka,-yko 等の場合は最後から3番目にある。 logika 論理、fabryka 工場、ryzyko 危険、fizyka 物理、matematyka 数学 しかし、これらの複数造格形の場合は、最後から2番目に移ることに注意すべきであ る。 fabryka の複数造格形である fabrykami の場合、fa- にあったアクセントが、-kaに移るのである。 2)また、-ik/-yk の場合は、少し異なる。例えば、fizyk 物理学者、の場合、2音節で あり、原則通り fi- にアクセントがあるが、斜格では3音節以上になる場合があり、そ の場合には最後から3番目にアクセントがある。fizyk の単数生格形は fizyka と3音節 となり、その場合は最後から3番目である fi- にアクセントがある。単数造格形も fizykiem の fi- にアクセントがある。しかし、単数与格形 fizykowi や複数造格形 fizykami の場合には原則通り最後から2番目にアクセント( -ko- と -ka-)があること に注意すべきである。 7.上記には該当しないが、例外的に最後から3番目にアクセントがある語がある。 例えば、okolica 近辺、の場合、-ko- にある。ogółem 全部で、の場合、語頭の o- に ある。 Ⅲ 後ろから4番目にアクセントがある場合 前述のように動詞の仮定法の複数一人称、二人称形の場合は後ろから4番目の音節に アクセントがある。例えば、pojechalibyśmy, pojechalibyście は -cha- にアクセントが ある。これらの場合、-by や -śmy や -ście は移動しうる要素であり、これ自体後述す る前接語のような性格を有するので、このような要素にアクセントが来ることはない。 従って、このようなものが付加された場合には、これをカウントせずにアクセントの位 置を決めるのである。そして、後ろから2番目であるという原則を適用するに際しては これらを無視する結果、後ろから4番目にアクセントがあることになるのである。例え ば、jeżelibyśmy, powiedzilibyście 等もそれぞれ -że- や -dzi- にある。この場合も移動 しうる要素が、 -byśmy( by と śmy )と -byście( by と ście ) とそれぞれ2つあ るのである。 Ⅳ 最後の音節にアクセントがある場合 1.ある種の定着した外来語、特にフランス語由来の単語は最後の音節にアクセントが ある。例えば、menu メニュー、piure ピューレ、である。 30 発音 2.ある種の接頭辞が付着した名詞で元の名詞が単音節の場合である。例えば、arcy-, eks-, wice- 等に単音節の単語が付着した場合である。 eksmąż 前夫 wicekról 副王 3.間投詞で2音節、3音節のもののいくつか ahoj, halo Ⅴ 音節が一つの単語の場合 この場合は、その単語にアクセントがあるのが原則である。しかし、単語に中にはア クセントを有しないものがある。 もっとも、 これはⅥ で述べる接語の問題と関係があり、 そちらも参照する必要がある。 1.人称代名詞のうちで斜格の短形の場合はアクセントを有しない。従って、Widzę go. 私は彼を見る、という場合、wi- にアクセントがあり、go にはアクセントはない。 2.再帰代名詞の się はアクセントを有しない。 3.否定詞の nie は直接動詞の前に置かれる。そして、その動詞の定形が1音節の場合 には nie にアクセントがある。 nie śpię 私は眠っていない、の場合、nie にアクセントがある。 nie wiem 私は知らない、の場合、nie にアクセントがある。 しかし、その動詞の定形が2音節以上になる場合には、nie にはアクセントはない。 nie wiemy 我々は知らない、の場合、nie にはアクセントはなく、wie- にアクセント がある。 4.前置詞について 1)1音節の前置詞は基本的にはアクセントを有しない。 2)しかし、その前置詞の後に1音節の人称代名詞が続く場合にはその前置詞にアクセ ントがある。 例えば、do mię 私へ、の場合、do にアクセントがある。o kim 誰について、の場合、 o にアクセントがある。 3)尚、本来は1音節の前置詞であるが、後に続く人称代名詞によって2音節になる場 合も前置詞にあるのは言うまでもない。例えば、mnie に bez が付くと、beze mnie と なるが、この場合はアクセントは -ze にある。 4)2音節の前置詞の場合は、その前置詞の後の方にアクセントがある。例えば、poza nim 彼の後ろに、の場合、-za にアクセントがある。 5)しかし、後に続くのが代名詞以外の場合には、基本に戻り、前置詞自体にはアクセ ントはないのが原則である。すなわち、この場合は、前置詞に続くのが1音節の単語で あっても、その単語にアクセントがあるのである。例えば、bez pas ベルトなしで、の 発音 31 場合、pas にアクセントがあり、前置詞 bez にはアクセントはない。na wieś 田舎で、 の場合も wieś にアクセントがあり、na にはない。 しかし、成句の場合には、前置詞にアクセントがあることがある。例えば、do dna 底 まで、の場合、do にアクセントがあり、dna にはない。また、wyjść za mąż (女性が) 結婚する、の場合、za にアクセントがあり、mąż にはない。 6)アクセントの位置によって意味が異なる場合がある。 z dnia na dzień は「日ごとに」という意味と、「24時間以内に」という意味がある が、後者の場合は、原則通り dzień にあるが、前者の場合は、成句として扱われるので 前置詞たる na にアクセントがある。 Ⅵ 接語の問題 接語とは、構文上は独立の語であるが、発音上は隣接する語に付いて一体となり、ア クセントを持たない語である。発音上、前の語と結びつく接語を前接語、後ろの語と結 びつく語を後接語という。従って、前接語はアクセントを持つ語の後に来るし、逆に、 後接語はアクセントを持つ語の前に来る。ドイツ語では前接語を Enklitika 後接語を Prollitika と呼ぶが、日本語の場合には通常の使い方と異なることに注意すべきである。 すなわち、本来、en- は後ろを意味し、pro- は前を意味するからである。 1.前接語 1)これにはまず1音節の人称代名詞の斜格がある。 kocham cię 私はあなたを愛する、の場合、cię にはアクセントはなく、通常通り ko- に アクセントがある。 2)次に再帰代名詞の się がある。これにもアクセントがない。się は文によって本動 詞の前に位置したり、後ろに位置したりすることがあるが、後ろに位置する場合が前接 語となる。 Myję się. 私は自分の身体を洗う。 3)強調の助詞 no がある。例えば、przynieś no list! さあ手紙を持って来て、の場合、 no にはアクセントはなく、przy- にある。 4)1音節の動詞(主として命令形)を否定する場合がある。 例えば、nie mów しゃべるな、の場合、mów は1音節の動詞命令形であり、そこには アクセントはなく、否定命令にすると nie にアクセントがあるのである。 nie śmiej 笑 うな、nie sądź 座るな、も同様である。命令形ではなく、nie wiem 私は知らない、の 場合、nie にアクセントがあり、これも同様である(これはⅤの問題でもある。)。 2.後接語 1)① まず、否定の助辞 nie のうち、後続語が2音節以上の場合である。前述したよ うに後続の語が1音節の場合には nie にアクセントがある(これは前述した前接語の問 題でもある。1の4)参照)。従って、この場合は後接語とはならない。 32 発音 ② しかし、後続の語が2音節以上の場合には、nie にはアクセントはない。例えば、nie wiem 私は知らない、の場合は、nie にアクセントがあるが、nie wiemy 私たちは知ら ない、の場合は、nie にはなく、wie- にアクセントがある。従って、この場合には後接 語となる。 2)① 次に、前置詞がある。前置詞の後に来る単語が2音節以上の場合には、前置詞自 体が1音節のものであろうが、2音節のものであろうが、原則としてはアクセントはな い。従って、原則として前置詞は後接語と言って良い。 ② しかし、前置詞の後に来る単語が1音節の場合で、前置詞が2音節以上の時はⅤ4で 示したように、その前置詞にアクセントがある。例えば、poza mnie 私の後ろに、は -za にあるのである。従って、この場合には後接語とはならない。 ③ 問題は、前置詞が1音節で、その後に続く語も1音節の場合である。この場合も、原 則的にはアクセントは前置詞にはない。しかし、1音節の名詞の前に前置詞がつき、そ の語句がある特定の場合には名詞にはアクセントはなく、前置詞にアクセントがある。 例えば、do dna 底へ、の場合、do にアクセントがある。しかし、do gry 遊びで、の場 合には gry にアクセントがあり、前置詞 do にはアクセントはない。 ④ しかし、 アクセントの位置によって意味が異なることもある。 例えば、 z dnia na dzień の場合、na dzień の部分はどちらも1音節の単語であり、前置詞 na にアクセントがあ る場合と、dzień にある場合とでは意味が異なる。前者は「日ごとに」とか「その暮ら しで」とか言う意味であるが、後者の場合には「すぐに」とか「24時間以内に」とか いう意味になる。だから、前者の意味の時は後接語ではないが、後者の意味の時は後説 語となるのである。 ⑤ さらに、1音節の人称代名詞の前の1音節の前置詞にはアクセントがあるので、この 場合には後説語ではない。例えば、bez waz あなた方なしで、の場合は前置詞の bez に アクセントが、przy mnie 私のそばを、の場合は前置詞の przy にアクセントがある。 ⑥ 1音節の前置詞に付くのが2音節以上の人称代名詞の場合は、 人称代名詞にアクセン トがある。例えば、do cibie あなたの所への場合には ci- にアクセントがある。従って、 この場合には後説語となる。しかし、後続の人称代名詞と発音の関係上、前置詞に -e や -o が付く場合には、そこにアクセントがある。例えば、beze mnie 私なしで、の場合は、 -ze にアクセントがある。従って、この場合には後説語とはならない。 3)再帰代名詞 się で、本動詞の前に来る場合が、後接語となり、アクセントがない。 Adam się myje. アダムは自分の身体を洗う。 3.通常は前接語となる語と後接語となる語が続く場合は、どちらにもアクセントがな いことになるのは不自然なのでアクセントが認められる。そして、後接語となる語にア クセントがあるのが原則である。これは後ろから2番目という原則通りになるのである。 例えば、u nas 我々の所に、の場合、u にアクセントがある。 このことは、前置詞が2音節以上であっても同様である。例えば、przeze mnie 私に よって、は -ze にアクセントがある。 発音 33 Ⅶ 略語のアクセントの問題 略語の場合は、最後のアルファベットにアクセントがあるのが原則である。 例:USA- u es A PKS – pe-ka-es PKP – pe-ka-pe UMK – u-em-ka UJ – u-jot しかし、略語であっても一つの単語のように発音される場合には原則通り後ろから2 番目の音節にアクセントがある。例えば、NATO 北大西洋条約機構、の場合、nato と 発音されるので、na- にアクセントがある。 34 音交替 第2章 音交替 ロシア語では、動詞の活用や名詞変化において子音が交替することや、出没母音が存 在すること等が認められる。ポーランド語においてもそれらは認められるが、ロシア語 以上に認められる。それが一層ポーランド語を複雑なものにしている。従って、ポーラ ンド語をきちんとマスターするためには、音交替についてしっかり把握することが必要 である。 音交替は主として名詞の格変化、形容詞の格変化、そして動詞の活用に伴って起きる。 音交替は形態学的・音声学的な面のみならず、文法的な面との関連で生じる。換言すれ ば、形態学的・音声学的に制限された形で特別な文法的な形態との組み合わせで生じる と言える。 第1節 子音交替 Ⅰ 序論 子音交替は子音の性質や後に来る母音との関係で4種類を区別することができる。第 一子音交替、第二子音交替、第三子音交替、第四子音交替である。そして、子音交替と 関連する母音は e, i, y であり、さらに半母音の j も子音交替に関連する。また、ゼロ因 子やその他の軟音化する作用因子によっても子音交替は起きる。子音交替と最も関連す るものは母音の e であり、最も多様であり、子音交替のかなりの部分を起こす。i は e に比較すれば単純で2つの子音交替を起こすに過ぎない。 それとの関係で y も子音交替 を起こすと言えるが、これもある程度限られている。一方、j はもっと単純で子音交替 を起こす場合はかなり限られているし、その他の軟音化する作用因子も限られている。 本書では、子音交替と関連する母音の e は子音交替のかなりの部分と関連しており、 第一子音交替と関連するものは e1 、第二子音交替と関連するものは e2 、e3、第三子 音交替と関連する e は存在せず 、第四子音交替と関連するものは e4 と表し、子音交 替と関連性を有しない e を e5 と必要に応じて表記することにする。また、i は第一子 音交替と第二子音交替しか関連性を有しないが、第一子音交替と関連するものを i1 、 第二子音交替と関連するものを i2、子音交替と関連しない i を i3 と必要に応じて表 記することにする。また、y は第四子音交替に関連するものがあり、子音交替は1種類 だけであるので、このままの表記とする。j についても関連する子音交替は1種類だけ であり、しかもある程度限られているので、このままの表記とする。 ※ e2 及び e3 とも動詞の活用の過程で子音交替を生じさせるが、両者の違いは、基本 的には e3 が母音交替の e → a に関与するものに対して、e2 はそれに関与しない点 にある。 子音交替は原則的には基本となる子音が後に来る上述した母音に影響されて、交替す 音交替 35 るものである。そして、その基本となる子音は p, b, t, d, k, g, f, w, s, z, ch/h, m, n, r, ł, の 15個を挙げることができる。一方、派生的な子音はすべて硬化子音か(狭義の)軟子 音である。それには p', b', c, ć, dź, k', cz, g', f', w', ś, sz, ż. ź, ch', m' , ń, rz, l, dz, dż がある。 このうち dż は一つの基本的子音からは派生的な子音とはならず、2つ以上の連続した 基本的な子音の派生的な子音として現れるだけである(基本的な子音が zd や zg の場 合)。 基本となる子音は15個を挙げることができるが、それは次のように3つのグループ に分けることができる。 1)p, b, f, w, m, n, r, ł p, b は両唇閉鎖音であり、f, w は唇歯摩擦音であり、m は両唇を閉鎖して発する鼻 音である。n は舌を前歯の裏に付けて閉鎖し、口蓋帆を下げて発音する鼻音である。r は 舌先と歯茎によって作られる震え音であり、ł は口唇音である。 この7つの基本的子音の特徴は、第一子音交替、第二子音交替、第三子音交替を起こ すが、いずれも交替した子音が同じものになるということである。すなわち、例えば、 p が第一子音交替を起こしても p' となり、第二子音交替を起こしても p' となり、第三 子音交替を起こしても p' となることである。そして、第四子音交替は起こさないので ある。 2)t, d, s, z t, d は歯閉鎖音であり、上前歯の裏に舌先を接して発音する。s, z は歯茎摩擦音で、 上の歯茎に舌先を接触させて発音する。 この4つの基本的子音の特徴は、第一子音交替と第二子音交替が同じものになるが、 第三子音交替は異なるということである。すなわち、例えば t が第一子音交替を起こせ ば ć となり、第二子音交替を起こしても ć となるが、第三子音交替を起こすと c とな るのである。そして、第四子音交替は起こさないのである。 3)k, g, ch/h k, g は軟口蓋閉鎖音であり、ch/ h は軟口蓋接近摩擦音である。 この3つの基本的子音の特徴は、第二子音交替と第三子音交替が同じものになり、第 一子音交替は異なるものになり、さらに第四子音交替まで起き、それは第一から第三子 音交替のいずれとも異なると言うことである。 ※1 一方、連続子音(cluster) も上述した個々の子音の子音交替と類似した子音交替を起 こす。特徴的なのは単に個々の子音を組み合わせで生じるのではなく、個々の子音の組 み合わせとは別の特別な派生的子音の組み合わせとなることである。そして、そのよう な子音の組み合わせには以下のようなものがある。 st, zd, sn, zn, sm, sł, zł, sk, zg ※2 c, dz は後述のように本来的に基本的子音ではないが、場合によっては基本的子音 になることがある。詳細は後述する。 Ⅱ 子音交替の種類 子音交替の種類には形式的に見ると、前述したように第一子音交替から第四子音交替 まで4つある。そして、さらにそれらに含まれない特殊な子音交替もある。そこで、以 36 音交替 下ではそれらの概略を述べる。 1.第一子音交替 これに関係する基本的子音は前述したことから分かるように15の基本的子音のす べてである。そして、それぞれは下記のごとく交替する。 基本的子音 p b f w m n ł r t d s z k g ch h 子音交替後 p' b' f' w' m' ń l rz ć dź ś ź c dz sz/ś ż/ ź ※ ch と h は発音としては同じであるが、子音交替においては別の帰趨を示すので、分 けて考えるべきである。また、ch h とも2種類の子音交替を起こすので、/ で2つずつ 示してある。 連続子音も第一子音交替が起き、下記のごとく交替する。 基本的子音 st zd sn zn sm sł zł sk zg 子音交替後 ść źdź śń źń śm' śl źl sc zdz 第一子音交替が起きるのは上の基本的子音が母音の e1 と i1 の前に位置する場合で ある。 2.第二子音交替 これに関係する基本的子音は第一子音交替と同じように15の基本的子音のすべて である。そして、それぞれ下記のごとく交替する。 基本的子音 p b f w m n ł r t d s z k g ch h 子音交替後 p' b' f' w' m' ń l rz ć dź ś ź cz ż sz ż k g ch/h だけが、第一子音交替と異なり、それ以外は第一子音交替と同じである。 連続子音の場合は、 基本的子音 st zd sn zn sm sł zł sk zg 子音交替後 ść źdź śń źń śm' śl źl szcz żdż sk zg だけが、第一子音交替と異なり、それ以外は第一子音交替と同じである。 この交替が起きるのは、まず、これらの子音が母音の e2, i2 の前に位置する場合や軟 音化する作用因子の前に位置する場合である。次に、動詞の活用では e3 の前に位置す る場合である。 ※1 c と dz は本来は派生的子音であるが、一定の場合には基本的子音として働き、子 音交替を起こす。すなわち、e2 や i2 やその他の軟音化する作用因子の前に位置する場 合に、c → cz、dz → ż に子音交替を起こすのである。 ※2 e2 と e3 の違いは e → a 交替に関与するかどうかにある。すなわち、e2 は e → a 交替に関与しないのに対して、e3 は e → a 交替に関与するのである。 3.第三子音交替 これに関係する基本的子音は第一子音交替、第二子音交替と同じく15の基本的子音 のすべてである。そして、それぞれ以下のごとく交替する。 基本的子音 p b f w m n ł r t d s z k g ch h 音交替 37 子音交替後 p' b' f' w' m' ń l rz c dz sz ż cz ż sz ż t d s z だけが、第二子音交替と異なり、それ以外は第二子音交替と同じである。 連続子音の場合は、 基本的子音 st zd sn zn sm sł zł sk zg 子音交替後 szcz żdż śń źń śm' śl źl szcz żdż st zd だけが、第二子音交替と異なり、それ以外は第二子音交替と同じである。 この交替が起きるのは、j の前の子音の場合である。ただ、 j は綴り字の規則により 脱落することがある。すなわち、綴り字が -ij や子音+ j となる場合は j は書かないの である。この第三子音交替があるのは、動詞の現在形の活用の場合である。すなわち、 第二活用動詞の単数1人称、複数3人称の場合と、第一活用で動詞で接尾辞が -a で終 わる場合の a タイプの動詞の場合である。詳しくは第2部第5章第3節 動詞の活用の 項を参照されたい。 4.第四子音交替 これに関係する基本的子音は、k g ch/h に限られる。そして、それらは以下のごと く交替する。 基本的子音 k g ch h 子音交替後 k' g' ch' h' 連続子音ではこの交替は見られない。 この交替が起きるもので代表的なのは当該子音が e4 の前にある場合である。 この e4 が現れるものの代表的なのものは、名詞の単数造格の場合である。 Polak ポーランド人 → Polakiem、putak 鳥 → putakiem、pociąg 列車 → pociągiem また、ゼロ作用因子が作用して出没母音が関係するときにこの交替が見られる。さら に、ę → ą の母音交替に伴いこの第四子音交替が促進されることがある。 Ⅲ 形態学的・音声学的環境面から見た子音交替 前述のように子音交替との関係で、基本的子音は15個あるが、それぞれの子音の子 音交替における性質を一つの子音交替しか起こさないか、二つ以上の子音交替を起こす かによって2種類を区別することができる。 1.一つの子音交替しか起こさないもの 共鳴音と口唇音がこれに該当する。すなわち、r ł n (共鳴音)と m p b f w(口唇音) である。 1)共鳴音 r は震歯茎音であり、、ł は両唇軟口蓋音であり、n は歯茎鼻音である。 ① r は rz に子音交替がある。その例は、góra 山(主格)→ górze (与格、前置格)、 stary 年取った(男性主格)→ starzy (複数男性人間形主格=本来なら starzi となる ところであるが、rz の後は i ではなく y しか書けないので、starzy となる。r → rz と 38 音交替 なるのは i1 の前だからである)、ser チーズ(主格)→ serze (前置格、呼格)、prę 押す(現在単数1人称)→ prze(現在単数3人称=不定詞は przeć である) ② ł は l に子音交替がある。その例は、szkoła 学校(主格)→ szkole(与格、前置格)、 latał 飛ぶ(過去単数3人称男性)→ latali(過去複数男性人間形)、artykuł 記事(主 格)→ artykule(前置格、呼格) ③ n は ń (ni) に子音交替がある。その例は、żona 妻(主格)→ żonie(与格、前置格)、 biedny 貧乏な(男性主格)→ biedni(複数男性人間形主格)、pan ~氏(主格)→ panie (呼格)、biegnąć 走る(不定詞)→ biegnie(現在単数3人称) 2)口唇音 p/b は両唇閉鎖音であり、f/w は唇歯摩擦音であり、m は共鳴音の両唇鼻音である。 ① p, b はそれぞれ pi, bi と子音交替がある。例えば、lampa ランプ(主格)→ lampie (与格、前置格)、osoba 人間(主格)→ osobie(与格、前置格)、chłop 小作農(単 数主格)→ chłopie(前置格、呼格)、gluby 太い(単数男性主格)→ glubi(複数男性 人間形主格)、kopać 蹴る(不定詞)→ kopię(現在単数1人称)、kopiesz(現在単数 2人称)・・・、rąbać たたき切る(不定詞)→ rąbię(現在単数1人称)、rąbiesz(現 在単数2人称)・・・である。 ② f, w はそれぞれ f’i, wi と子音交替がある。例えば、szafa 物置(主格)→ szafie(与 格、前置格)、głowa 頭(主格)→ głowie(与格、前置格)、łatwy 簡単な(単数男 性主格)→ łatwi(複数男性人間形主格)、rwę 破る(現在単数1人称)→ rwie(現在 単数3人称) ③ m は mi と子音交替がある。例えば、zima 冬(主格)→ zimie(与格、前置格)、 niemy 黙った(単数男性主格)→ niemi(複数男性人間形主格)、sejm 国会 → sejmie (前置格、呼格)dmę 吹きかける(現在単数1人称)→ dmiesz(現在単数2人称)、 drzemać 投薬する(不定詞)→ drzemię(現在単数1人称)、drzemiesz(現在単数2 人称) 2.二つ以上の子音交替を起こすもの これには、t d s z(歯茎音)と k g ch/h(軟口蓋音)がある。 1)歯茎音 このグループは鳴音や口唇音に比較すると複雑である。なぜなら、子音交替として2 つ以上考えられるからである。これらに共通する点は第一、第二子音交替が同じ形で、 第三子音交替が別の形になるということである。 歯茎音には t, d, s, z があるが、それ以外に特別な子音交替を起こすものはその組み合 わせである st, zd である。 ① t(歯茎閉鎖音) は同じ歯茎音であるが破擦音である c に交替したり (第三子音交替) 、 破擦音で硬口蓋接近音である ć に交替する(第一、第二子音交替)。第一、第二子音交 替の例は、kobieta 女性(主格)→ kobiecie(与格、前置格)、facet 仲間(単数主格) → faceci(複数主格)、facet(単数主格)→ facecie(単数呼格)、plotę 編む(現在単 数1人称)→ plecie(現在単数3人称)(ここで注意すべきは o → e と母音交替も起 音交替 39 こっている点である。これについては後述する。)である。第三子音交替の例は、deptać 踏みつける(不定詞)→ depcę(現在単数1人称)、depcesz(現在単数2人称)・・・ (但し、この場合は depczę, depczesz,・・・という活用もある。) pleść( plotę の不定詞 )や depatać とも第一活用動詞であったが、第二活用動詞の 場合はもっと複雑である。詳細は動詞の活用の箇所で詳述するが、3つの段階が見られ る。第一は語根に発現する基本的子音であり、第二は接尾辞 i や e の前に現れる硬口蓋 接近音を表す子音であり、第三は鼻母音の前に現れる破擦音や後部歯茎音を表す子音で ある。基本的子音が t の場合の例は、rzut 投げること(名詞)→ rzuci 投げる(単数 3人称現在)→ rzucę(単数1人称現在)である。すなわち、語根に発現する基本的子 音が rzut の t であり、rzuci の ci が接尾辞 i の前に現れる硬口蓋接近音を示すもの であり(この場合は、第二子音交替を起こす)、rzucę の c が鼻母音の前に現れる破擦 音を表す子音である(この場合は第三子音交替を起こすのである。)。 ② d (歯茎音であり閉鎖音であり、t の有声音)は同じ歯茎音であるが破擦音である dz に交替したり(第三子音交替)、破擦音で硬口蓋接近音である dź に交替する(第一、 第二子音交替)。例えば、broda あごひげ(主格)→ brodzie(与格、前置格)、młody 若い(単数男性主格)→ młodzi(複数男性人間形主格)、listopad 11月(主格)→ listopadzie(呼格)、kładę 置く(現在単数1人称)→ kładzie(現在単数3人称) 第二活用動詞の場合の例は、chodzić を挙げることができる。その基本的子音の d は 名詞である chód 歩行、に見られる。そして、chód → chodzi(現在単数3人称=第二 子音交替)→ chodzę(現在単数1人称=第三子音交替)となる。 ③ s は歯茎音であり摩擦音である。これは、後部歯茎音である sz に交替したり(第三 子音交替)、硬口蓋接近音である ś に交替する(第一、第二子音交替)。その例は、szansa チャンス(主格)→ szansie(与格、前置格)、bosy 裸足の(単数男性主格)→ bosi (複 数男性人間形主格)、czas 時間(主格)→ czasie(呼格)、pasę 飼う(現在単数1人 称)→ pasie(現在単数3人称=第二子音交替)、pisać 書く(不定形)→ piszę (現 在単数1人称=第三子音交替)、piszesz(現在単数2人称=第三子音交替)・・・、kosa 草刈り鎌(名詞)→ kosić 刈る(不定形)kosi(現在単数3人称=第二子音交替)→ koszę (現在単数1人称=第三子音交替)、koszą(現在複数3人称=第三子音交替)である。 ④ z は歯茎音であり、摩擦音であり、s の有声音である。これは後部歯茎音である ż に 交替したり(第三子音交替)、硬口蓋接近音である ź に交替したりする(第一、第二子 音交替)。その例は koza 山羊(主格)→ kozie(与格、前置格)、Francuz フランス 人(単数主格)→ Francuzi(複数男性人間形主格)、Francuz(主格)→ Francuzie (前置格、呼格)、gryzę 咬む(現在単数1人称=不定形は gryźć)→ gryzie(現在単 数3人称=第二子音交替)、lizać 舐める(不定形)→ liżę(現在単数1人称=第三子 音交替)、liżesz(現在単数2人称=第三子音交替)・・・、groza 恐怖(名詞)→ grozić (不定形)、grozi(現在単数3人称=第二子音交替)→ grożę(現在単数1人称=第三 子音交替)、grożą(現在複数3人称=第三子音交替) ⑤ st は二重子音でいずれも歯茎音であるが、摩擦音と閉鎖音の組み合わせである。子 音交替の場合はそれぞれが起きるのではなく、特別な形になる。すなわち、後部歯茎音 40 音交替 の組み合わせである szcz や(第三子音交替)や硬口蓋接近音の組み合わせである ść(第 一、第二子音交替) となるのである。例えば、most 橋(主格)→ moście(前置格、 呼格)、prosty まっすぐな(単数男性主格)→ prości(複数男性人間形主格)、chłostać 激しく批判する(不定詞)→ chłoszczę(現在単数1人称=第三子音交替)、chłoszczesz (現在単数2人称=第三子音交替)・・・、czysty きれいな(形容詞)→ czyścić(不 定詞)、czyści(現在単数3人称=第二子音交替)・・・→ czyszczę(現在単数1人称 =第三子音交替)、czyszczą(現在複数3人称=第三子音交替)である。 ⑥ zd は二重子音でいずれも歯茎音であるが、摩擦音と閉鎖音の組み合わせであり、st の有声音である。子音交替の場合は特別な形になる。すなわち、後部歯茎音の組み合わ せである żdż や(第三子音交替)硬口蓋接近音の組み合わせである źdź となるのであ る(第一、第二子音交替)。例えば、zjazd 議会(主格)→ zjeździe(前置格、呼格)、 gwizdać 口笛を吹く(不定形)→ gwiżdżę(現在単数1人称)、gwiżdże(現在単数3 人称)、jazda 乗ること(名詞)→ jeździć(不定形)、jeździ(現在単数3人称)→ jeżdżę (現在単数1人称)、jeżdżą(現在複数3人称) 2)軟口蓋音 この場合の子音交替で特徴的なことは、第二子音交替と第三子音交替が同じ形で、第 一子音交替が別の形になるということであり、さらに第四子音交替もあると言う点であ る。 ① k は軟口蓋音で閉鎖音であるが、破擦音に子音交替が起きる。破擦音の内で歯茎音 の c(第一子音交替)や後部歯茎音の cz(第二、第三子音交替)に子音交替がある。ま た、第四子音交替では、ki に子音が交替する。例えば、apteka 薬局(主格)→ aptece (与格、前置格=第一子音交替)、aptekiem(単数造格=第四子音交替)、czytelnik 読 者(単数主格)→ czytelnicy(複数主格=第一子音交替)、krótki 短い(単数男性主格 =形容詞)→ krótcy(複数男性人間形主格=第一子音交替)、piekę 焼く(1人称単数 現在=不定形は piec)→ piecze(3人称単数現在=第二子音交替)、płakać 叫ぶ(不 定形)→ płaczę(現在単数1人称=第三子音交替)、płaczesz(現在単数2人称=第三 子音交替)・・・ ② g は軟口蓋音で閉鎖音であるが、破擦音に子音交替が起きる。k の有声音である。そ の内の歯茎音の dz や(第一子音交替)後部歯茎音の ż に子音交替がある(第二、第三 子音交替)。第四子音交替では、硬口蓋音の gi に子音が交替する。例えば、noga 足(主 格)→ nodze(与格、前置格)、nogiem(単数造格=第四子音交替)、drogi 高い(単 数男性主格)→ drodzy(複数男性人間形主格)、Bóg 神(主格)→ Bóże(前置格、呼 格=第二子音交替)、mogę できる(現在単数1人称=不定形は móc)→ możesz(現 在単数2人称=第二子音交替)、może(現在単数3人称=第二子音交替)、łgać うそ を付く(不定形)→ łżę(現在単数1人称=第三子音交替)、łżesz(現在単数2人称= 第三子音交替)・・・である。 ③ ch/h は軟口蓋音でありかつ摩擦音である。ch は同じ摩擦音の硬口蓋接近音の ś(第 一子音交替) や後部歯茎音たる sz(第二、第三子音交替、第一子音交替のこともある) に子音交替が起きる。h は同じ摩擦音の硬口蓋接近音である ź(第一子音交替)や後部 音交替 41 歯茎音たる ż(第二、第三子音交替、第一子音交替のこともある)に子音交替が起きる。 例えば、cecha 特色(主格)→ cesze(与格、前置格=第一子音交替)、Czech チェコ 人(単数主格)→ Czesi(複数男性人間形主格=第一子音交替)、głuchy 耳が聞こえな い(単数男性主格)→ głusi(複数主格=第一子音交替) 3)c は破擦音であり歯茎音であるが、特殊である。なぜなら、基本的子音ともなるし、 派生的子音ともなるからである。基本的子音としての c は次の例で現れる。chłopiec 仲 間(主格)→ chłopcze(呼格)この場合、c → cz に子音交替があり、これは、第二子 音交替である。また、koc 毛皮の毛布、の縮小辞である koczyk も子音交替が起こって いると言える。縮小辞を形成する接尾辞である -ik, -yk の -i- -y- は第二子音交替を起こ すものであり、その前の子音に第二子音交替が起きるからである。すなわち、koc → koc-ik となり、i の前の c → cz と交替するので koczyk となるのである( -ik ではな く、-yk となるのは cz の後は -i を書かないという綴り字の規則による。)。 4)dz も基本的子音となることがある。そして、dz → ż に子音交替がある。その例は、 ksiądz 王子(主格)→ książe(呼格)であり、これも、第二子音交替である。 Ⅳ 文法学的環境面から見た子音交替 1.名詞の前置格と与格での子音交替 これは第一子音交替が起きる。 名詞の中で前置格と与格の語末が -e となる場合に子音交替が起きる。それは、その e は e1 であるからである。 前置格の語末が -e となるのは男性名詞、中性名詞、女性 名詞ともであるが、与格の語末が -e となるのは主として女性名詞である。共鳴音、 口唇音のみならず、歯茎音と軟口蓋音も子音交替が起きる。 1)r の例:siostra 姉または妹 → siostrze (与格、前置格)、mur 壁 → murze (前 置格) 2)ł の例:szkoła 学校 → szkole (与格、前置格) 3)n の例:godzina 時間 → godzinie (与格、前置格)、ocean 海洋 → oceanie (前 置格) 4)p の例:lampa ランプ → lampie (与格、前置格) 5)b の例:osoba 人間 → osobie (与格、前置格)、chleb パン → chlebie (前置 格) 6)f の例:szef シェフ → szefie (前置格) 7)w の例:głowa 頭 → głowie (与格、前置格)、krzew 低木 → krzewie (前置 格) 8)m の例:film 映画 → filmie(前置格) 9)t の例:gazeta 新聞 → gazecie (与格、前置格)、sufit 天井 → suficie (前置 格) 10)d の例:broda あごひげ → brodzie (与格、前置格)、listopad 11月 → listopadzie(前置格) 11)s の例:kiełbasa ソーセージ → kiełbasie (与格、前置格)、czas 時間 → czasie 42 音交替 (前置格) 12)z の例:koza 山羊 → kozie (与格、前置格)、obraz 絵 → obrazie (前置格) 13)k の例:apteka 薬局 → aptece (与格、前置格) 14)g の例:noga 足 → nodze (与格、前置格) 15)ch の例:mucha ハエ → musze (与格、前置格) 2.複数男性人間形での子音交替 この場合も第一子音交替が起きる。 ロシア語とは異なり、ポーランド語で特徴的なことは、形容詞変化や動詞の過去形の 活用で、複数男性人間形というものが存在することである。そのこととの関係で、複数 男性人間形で子音交替が現れる。また、名詞変化の場合でも、男性名詞で複数主格の場 合に子音交替が生じることがある。この場合に関係する母音は i であるが、そのうちの i1 である。 1)r の例:chory 病気の → chorzy (複数男性人間形主格) この場合は少し説明を要する。chory の複数男性人間形主格は語尾が i となり、この 場合の i は i1 であり、その前の子音に第一子音交替が起きる。そうすると r → rz と なり、chrz-i となるはずであるが、綴り字の規則により rz の後には i を書かないので、 i → y となり、結局、chorzy となるのである。 2)ł の例:prosił 彼が頼んだ → prosili 彼らが頼んだ(過去複数男性人間形3人称) biały 白い→ biali (複数男性人間形主格) 3)n の例:biedny 貧乏な → biedni (複数男性人間形主格) 4)p の例:chłop 農民 → chłopi (複数主格)、skąpy けちな → skąpi (複数男性 人間形主格) 5)b の例:słaby 弱い → słabi (複数男性人間形主格) 6)f の例:geograf 地理学者 → geografi (複数主格) 7)w の例:chciwy 貪欲な → chciwi (複数男性人間形主格) 8)m の例:stromy 険しい → stromi (複数男性人間形主格) 9)t の例:bogaty 豊かな → bogaci (複数男性人間形主格)、Szkot スコットラン ド人 Szkoci (複数主格) 10)d の例:chudy 薄い・やせこけた → chudzi (複数男性人間形主格)、 sąsiad 隣人 → sąsiadzi (複数主格) 11)s の例:bosy 裸足の → bosi (複数男性人間形主格) 12)z の例:Francuz フランス人 → Francuzi (複数男性人間形主格) 13)k の例:brzydki 醜い → brzydcy (複数男性人間形主格) この場合は、少し説明を要する。brzydki の複数男性人間形主格は brzydk-i とであ るが、この i は単数男性主格の i と異なり、i1 であり、その前の子音に第一子音交替 を起こす。そうなると k → c と子音交替があるが、歯茎音の c の後には i を書けない ので、brzydcy となるのである。 czytelnik 読者 → cytelnicy (複数主格) 14)g の例:długi 長い → dłudzy (複数男性人間形主格)、biolog 生物学者 biolodzy 音交替 43 (複数主格) 15)ch の例:cichy 静かな → cisi (複数男性人間形主格)、Włoch イタリア人 → Włosi (複数主格) ※ 男性人間形複数に関する子音交替はやや特殊である。 それは、 基本的子音のみならず、 一部の派生的子音から別の派生的子音に子音交替がある点である。それが見られるのは、 摩擦音の sz と ż である。そして、sz の場合は ś に交替し、ż の場合は ź に交替する。 1)sz の例:nasz 我々の(単数男性形主格)→ nasi (複数男性人間形主格) pieszy 歩行者(単数男性形主格=但し、形容詞変化)→ piesi(複数男性人間形主格) 2)ż の例:duży 大きな duzi (複数男性人間形主格)(しかし、hoży 上品な、の場 合の複数男性人間形主格は hoży で子音交替はない。) 3.男性名詞の呼格で -e の前に子音交替があるもの 第二子音交替が起きる。 男性名詞の呼格は通常、語尾が -e であり、その e は e2 であるので、その前の子音 には第二子音交替が見られる。この場合、1.2.と異なるところは、閉鎖音の軟口蓋 音の場合には異なったものが見られるという点である。すなわち、k は cz に、g は ż に 子音交替が見られるのである。また、通常は派生的子音である c が基本的子音として働 き、k と同じく cz に交替するという点も特殊である。さらに dz も基本的子音として 働き g と同じく ż に交替すると言うことも見られる。 1)r の例:mur 壁 → murze (呼格) 2)ł の例:artykuł 記事 → artykule (呼格) 3)n の例:ocean 海洋 → oceanie (呼格) 4)p の例:chłop 農民 → chłopie (呼格) 5)b の例:chleb パン → chlebie (呼格) 6)f の例:szef シェフ → szefie (呼格) 7)w の例:krzew 低木 → krzewie (呼格) 8)m の例:problem 問題 → problemie(呼格) 9)t の例:sufit 天井 → suficie (呼格) 10)d の例:listopad 11月 → listopadzie(呼格) 11)s の例:czas 時間 → czasie (呼格) 12)z の例:obraz 絵 → obrazie (呼格) 13)k の例:człek やつ → człecze (呼格) 14)g の例:Bóg 神 → Boże (呼格)但し、母音交替もあることに注意 15)c の例:chłopiec 仲間 → chłopcze(呼格) 16)dz の例:ksiądz 王子 → książe(呼格) ※ 尚、ch の場合には呼格が -e となるものは見当たらない。 4.第一活用動詞の現在形あるいは未来形で単数2人称から複数2人称までの活用にお いて活用語尾の -e の前の子音には子音交替が見られる。この e は活用語尾であり、e2 44 音交替 である。これも第二子音交替が起きる。そして、第一活用動詞の多くのもので見られる。 特に、語幹に接尾辞がないタイプの動詞の場合である。そして、語幹に接尾辞があるタ イプの動詞では、接尾辞が n で始まる動詞の場合にこの子音交替が見られる。このタ イプの子音交替は現在形のみならず、命令形で語尾を除いたもの、受動形容分詞で語尾 が -on のものにも起きる。注意すべきはすべての語幹子音で子音交替が起きるのではな く、起きるのは共鳴音では r, n 、口唇音では w, m、歯音(歯茎音)はすべてで t, d, s, z、そして軟口蓋音では k, g である。従って、これらの子音語幹を有する第一活用動詞 で単数2人称から複数2人称までの活用で、子音交替があり、一方、単数1人称、複数 3人称では語幹子音交替は起きず、基本的子音のままである。 尚、k, g の場合、第二子音交替があるので、3.の場合と同じく k → cz, g → ż と 子音交替がある。 1)t の例:gnieść 壊す pleść 編む これらの現在語幹は -Vt- (V は母音を表す)であ る。gnieść の活用は 単数 複数 1人称 gniotę gnieciemy 2人称 gnieciesz gnieciecie 3人称 gniecie gniotą 2)d の例:wieść 導く kłaść 置く等、重要な動詞がある。これらの現在語幹は -Vd-であ る。wieść の活用は 単数 複数 1人称 wiodę wiedziemy 2人称 wiedziesz wiedziecie 3人称 wiedzie wiodą 3)s の例:nieść 運ぶ paść 餌を与える( paść 落ちる、とは不定詞が同音異義語)nieść の活用は、 単数 複数 1人称 niosę niesiemy 2人称 niesiesz niesiecie 3人称 niesie niosą 4)z の例:gryźć 咬む wieźć 運ぶ 等である。 gryźć の活用は、 単数 複数 1人称 gryzę gryziemy 2人称 gryziesz gryziecie 3人称 gryzie gryzą 5)k の例: piec 焼く tłuc 壊す これも接頭辞が付かないタイプの活用をするのであり、 45 音交替 現在語幹は -k となる。tłuc の活用は、 単数 1人称 tłukę 2人称 tłuczesz 3人称 tłucze 複数 tłuczemy tłuczecie tłuką 6)g の例:móc できる、が代表的なものである。現在語幹は -g である。その活用は、 単数 複数 1人称 mogę możemy 2人称 możesz możecie 3人称 może mogą 7)n の例:ciąć 切る、giąć 曲げる、kląć 悪態をつく これらは現在語幹が ‘n であり、C’n- である(C は子音) ciąć 切る、の活用は以下のごとくである。この現在語幹は tn- であり、不定形語幹は ciąである 単数 複数 1人称 tnę tniemy 2人称 tniesz tniecie 3人称 tnie tną 8)m の例:dąć プカプカ吹かす、これは現在語幹が dm-であり、Cm- といえる。その 活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 dmę dmiemy 2人称 dmiesz dmiecie 3人称 dmie dmą 9)r の例:umrzeć 死ぬ、drzeć 引き裂く、trzeć こする これらは、現在語幹が、-r- であり、Cr- である。umrzeć の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 umrę umrzemy 2人称 umrzesz umrzecie 3人称 umrze umrą 10)w の例:rwać 裂く これは接尾辞タイプの動詞で接尾辞が母音の -a で終わり、 CCa- となる。その活用は以下のごとくである。現在語幹は rw- である。 単数 複数 1人称 rwę rwiemy 2人称 rwiesz rwiecie 3人称 rwie rwą 46 音交替 11)接尾辞タイプの動詞で接尾辞が -n で始まるタイプの動詞もこの子音交替が起きる。 krzyknąć 叫ぶ、の活用は、 単数 複数 1人称 krzyknę krzykniemy 2人称 krzykniesz krzykniecie 3人称 krzyknie krzykną 5.接尾辞が a であるタイプの動詞の活用で子音交替が起きる。この場合は、第三子音交 替であり、4.と大きな違いは現在形あるいは未来形のすべての活用形で起きる点であ る。第三子音交替になるのは、すべての活用で -j が関係するからである(詳細は動詞の 活用詳細を参照されたい。)。 このタイプの動詞では活用形は接尾辞の a が消去される。この子音交替に関与する子 音は共鳴音、唇音、歯音、軟口蓋音である。唇音の場合、命令形においては子音交替は ない。だから、例えば kłamać うそを付く、の命令形は kłam! となり、*kłami! とは ならない。しかし、唇音以外は、命令形においても子音交替が起きる。例えば、共鳴音 では、karać 罰する、の命令形は karz! となる。歯音では、例えば、szeptać ささやく、 の命令形は szepc! と t → c への子音交替がある。軟口蓋音では、例えば płakać 泣く、 の命令形は płacz と k → cz への子音交替がある。命令形で唇音では子音交替がなく、 それ以外の共鳴音、歯音、軟口蓋音では子音交替があるので、後者の場合にはゼロ語尾 がその他の軟音化作用因子として第三子音交替を起こすからであろう。 1)r の例:karać 罰する bazgrać 走り書きする karać の活用は以下のごとくである。 r → rz の子音交替がある。 単数 複数 1人称 karzę karzemy 2人称 karzesz karzecie 3人称 karze karzą 2)ł の例:słać 送る ł → l の子音交替がある。 3)p の例:kopać 蹴る kąpać 入浴する chrapać いびきをかく p → pi の子音交替が あり、kopać の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 kopię kopiemy 2人称 kopiesz kopiecie 3人称 kopie kopią 4)b の例:dłubać つまむ rąbać 叩き切る skrobać こする b → bi の子音交替がある。 5)m の例:kłamać うそをつく drzemać うたた寝する m → mi の子音交替がある。 6)t の例:szeptać ささやく deptać 踏みつける 語幹の最後が t の場合は、やや特殊 であり、2種類の子音交替がある。一つは t → c であり、他の一つは t → cz である。 前者は第三子音交替であるが、後者は特別のものである。 音交替 47 7)d の例:第三子音交替は d → dz であるが、これを起こす動詞は特にない。 8)s の例:pisać 書く czesać 櫛でとかす s → sz の子音交替がある。 9)z の例:kazać 注文する lizać なめる mazać 塗りつける z → ż の子音交替がある。 10)st の例:chlastać (水などを)はねかける st → szcz の子音交替がある。 11)zd の例:gwizdać 笛を吹く zd → żdż の子音交替がある。 12)k の例:płakać 泣く k → cz の子音交替がある。 13)g の例:łgać うそをつく g → ż の子音交替がある。 6.第二活用動詞で歯茎音で見られる子音交替 基本的な歯音子音は動詞の語根に現れる。しかし、活用形自体に現れることはない。 それ故、子音交替は次の3つの段階で見られる。まず、語根内や名詞形で現れる基本的 子音である。次に不定詞の -i または -e の前と単数2人称、3人称、複数1人称、2人 称の母音の前である(この場合は第二子音交替である。動詞の活用内で起きるので、i は i2、e は e3 である。)。さらに鼻母音の ę, ą の前に現れる破擦音や歯茎摩擦音(この 場合は j が関係するので、第三子音交替である。)。 基本的な歯茎音子音は t, d, s, z と4つであり、t → ć(第二子音交替) あるいは c(第 三子音交替)、d → dź(第二子音交替)あるいは dz(第三子音交替)、 s → ś(第二 子音交替)あるいは sz(第三子音交替)、z → ź(第二子音交替)あるいは ż(第三子 音交替)と子音交替が見られる。 1)t の例:基本的な名詞 płat 支払い 不定詞 płacić 支払う、現在単数3人称 płaci、現 在単数1人称 płacę 2)d の例:基本的な名詞 dochód 収入 不定詞 dochodzić 得る、現在単数3人称 dochodzi、現在単数1人称 dochodzę 3)s の例:基本的な名詞 kosa 草刈り鎌 不定詞 kosić 刈る 現在単数3人称 kosi 現在 単数1人称 koszę 4) z の例:基本的な名詞 woz カート (手押し車) 不定詞 wozić 運ぶ 現在単数3人称 wozi 現在単数1人称 wożę 5)st の例:基本的な名詞 most 橋 不定詞 mościć ―を舗装する 現在単数3人称 mości 現在単数1人称 moszczę 6)zd の例:基本的名詞 jazda 乗ること 不定詞 jeździć (車で)行く 現在単数3人称 jeździ 現在単数1人称 jeżdżę 7.縮小辞 縮小辞として -ek や -ik/-yk が付加される場合には縮小語が形成されるが、それらの 場合にもその語幹の子音が交替するものがある。例えば、krok 歩み、の場合、-ek を付 加することにより縮小語が形成され、krok-ek となるが、e の前の子音 k は第二子音交 替があり、cz となり、kroczek となる。また、łotr 悪党、の場合、łotr-ik となるが、i の前の子音 r は第二子音交替があり、rz となり、rz の後には -i を書けず、-y を書く ので、結局、łotrzyk となるのである。 48 音交替 8.最後が -ny になる形容詞に起きる子音交替 名詞から派生する形容詞の中には、名詞に -ny を付加することにより形容詞を形成し たものがあるが、その中には語幹の子音が交替するものがある。例えば、głos 声、から -ny を付加すると głos-ny となるが、n の前の -s- に子音交替があり、-ś- となり、 głośny (声の)大きな、となる。また、noga 足、から -ny を付加すると nog-ny とな るが、n の前の -g- に子音交替があり、nożny となる。これらは語幹子音がいずれもそ の他の軟音化する作用因子によって、第二子音交替が起こっているのである。 音交替 49 第2節 母音交替 大きく分けて2種類あるが、一つは母音交替の要素が母音の後に続く子音の性質によ るものである。もう一つは、母音の後に続く音節が開音節か閉音節かによるものである。 ただ、注意すべきはこれらの交替が常に規則性をもって起きるのではなく、多少不規則 的であったり、沿革的であったりすることである。例えば、a → e 交替は形容詞変化で は起きないものであり、o → e 交替は名詞の変化ではほとんど衰退してしまっている。 Ⅰ 母音の後に続く子音の性質によって規定される場合 この母音交替を考える際に、まず抑えておくべきことは e は口腔内の前の方で発音す る前舌母音であり、a, o, ó は後ろの方で発音する後舌母音であるということである。そ して、子音交替に関して歯茎音が交替し、硬口蓋化音(つまり軟音)となる時、子音に 先行する母音の a や o や ó が e に交替するのである。 この交替に関係する子音は7つあって、t, d, s, z, r, ł, n である 尚、ó → e 交替は a → e 交替や o → e 交替に比較すると限られている。 1.a → e 交替あるいは e → a 交替 これに関係する e は e1 か e3 である。 主として名詞変化や動詞活用で起きるものであり、形容詞変化では起きないのが原則 である。 1)この交替が起きるもので多いのは名詞変化において前置格になる場合である。例え ば、kwiat 花、という名詞の場合、この前置格は kwiecie であるが、前置格は語尾とし て -e を付加すると(この場合の e は e1 である。)その前の子音は子音交替が起き、t → ć となる。そして、子音交替があった子音の前の a は e に母音交替があるので、結 局、前置格は kwiecie となるのである。 las 森、の場合も同様である。その前置格は lesie と -a- が -e- となるのである。 また、複数主格の語尾が -y ではなく、-i となる名詞の場合(この場合の i は i1 で ある。)、前置格と共に複数主格でもこの母音交替が起きる。例えば、sąsiad 隣人、の 場合は、前置格は sąsiedzie となり、複数主格は sąsiedzi となる。 2)動詞の過去形の場合もこの母音交替が起きる。この場合に関係する e は e3 である。 しかし、この場合は a → e 交替として捉えるよりも、 e → a 交替として捉えた方が 理解しやすい。 例えば、powiedzieć 話す、の場合、過去単数3人称男性形は powiedział となる。これは e → a の母音交替の結果である。過去複数3人称人間形は、まず、不 定詞に -i が付加されるので、-li となり、powiedzieli となる。過去単数3人称男性形な り女性形の場合には語尾が ł や ła となる。そこで、powiedzieł* となりそうであるが、 ł の前は e → a と母音交替があるので、powiedział となる。 3)また、形容詞からの派生語についてもこの母音交替が見られる。例えば、biały 白 い、から bieleć 白くなる、が派生するが、前者は ł という硬音の前なので -a- となる 50 音交替 が、後者の場合は、l という軟音の前なので -e- となるのである。 ※ 注意すべきは a → e 交替は a の後の子音が軟音化した場合に常に起きるのではな く、起きるのは原則として a の前の子音が軟音である場合である。従って、例えば listopad 11月、の場合、前置格は listopadzie となり、語幹子音の d が dzi と軟音 化するが、d の前の a は a のままで listopedzie* とはならないのである。 これは a の前の子音が p という硬音であるからである。女性名詞でも同様であり、例えば kawa コーヒー、の場合、前置格は kawie となり、語幹子音の w が wi と軟音音化するが、 a の前の子音は k という硬音であるから、kawie となり、決して kewie* とはならな い。これに対して、前述した kwiat 花、や las 森、や sąsiad 隣人、や powiedzieć 話 す(powiedział)、の場合は a の前はそれぞれ -wi-, -l- , -si-, -dzi- といずれも軟音であ る。 以上のことから、a → e 交替が起きるのは原則として e が(広義の)軟音で挟まれ たようになる場合と言えよう。 2.o → e 交替(名詞変化ではほとんど起こらないが、例外があって、その例外は anioł であり、o aniele となる。)この場合の e は e2 である。 1)この交替が起きるもので代表的なものは、動詞の現在形の場合である。例えば、wieść 先導する、の場合、現在単数1人称と現在複数3人称はそれぞれ wiodę, wiodą となる。 そして、現在単数2人称から現在複数2人称においては語尾が -e で始まるので、その 前の d → dzi に子音交替があり、それに伴って wiedziesz(現在単数2人称)となるの である。しかし、動詞の活用でこの母音交替が必ず起こるわけではなく、起こる場合は 限られている。それは o の前の子音(この場合は wi )が軟音である場合であると言え よう。すなわち、原則として a → e 交替と同様に e が(広義の)軟音で挟まれた様に なる場合なのである。 wlec 足を引きずってのろのろ歩く、の活用は、wlokę, wleczesz,・・・であるが、単 数2人称から複数2人称までは第二子音交替が起き、-e の前は k → cz と子音交替が 起きる。そして、子音交替が起きている cz の前は o → e と母音交替が見られるので ある。そして、o の前の子音は軟音になっているのである(この場合は l )。 2)また、受動形容分詞の変化でも起きる。例えば、nieść 運ぶ、の受動形容分詞 niesiony の場合、複数男性人間形主格は、n → ni と子音交替があり、それに伴って o → e と 母音交替が起きるので、niesieni となるのである。また、zachęcać 元気づける、の場 合、その受動形容分詞は zachęcony 元気づけられた(単数男性形主格)、であるが、 それが複数男性人間形主格では zachęceni となるのである。 上述したことと類似したことは、通常の形容詞の変化でも起きる。wesoły 陽気な、 の場合、複数男性人間形主格は weseli となるが、ł → l に交替するのに伴って o → e 交替が見られるのである。もっとも、この場合は o の前の子音は s であり、硬音であ るが起きることに注意すべきである。 3)また、この母音交替は名詞とその派生語の間にも起きる。例えば、名詞とその縮小 語との間に起きる。korzeń 根、と korzonek 小根、では korzeń は -ń は軟子音であ 音交替 51 り、その前が -e- となるが、korzonek の場合には -n- は硬子音であり、その前が -o- と なるのである。 wieś 村、と wioska 小村落、では wieś は -ś は軟子音であり、その 前が -e- となるが、wioska の場合には -s- は硬子音であり、その前が -o- となるので ある(これらの場合はいずれも e が(広義の)軟音で挟まれている。)。 4)さらに、基本的名詞から派生した語にも起こることがある。例えば、zioło 草、か ら派生した zielny 草の、とか、zielnik 植物標本集、のように ł が l に交替し、同時 にその前の母音が o → e に交替しているのである。 3.ó → e 交替 この交替が起きる場合は少ないが、 ó の後に軟音の子音が続く場合に起きる。 例えば、 kościół 教会、の場合、前置格は語尾に -e がつき、その結果、ł → l に子音交替があり、 l は軟子音であるので、その前の ó が e に交替する。従って、w kościele となる。尚、 生格は -a が付くので、開音節となるので、kościoła となり、ó → o と後述するⅡ1. の交替が起きるのである。また、pióro 羽、の場合、前置格は w pierze となる。 Ⅱ 母音の後に続く音節の性質によって規定される場合 これには o → ó、ę → ą 交替がある。 この母音交替はゼロ作用因子が関係するときに起きる。この因子は語の最後か、語の 間で二つの子音の間にあるときに出現する。そして、この因子が現れたときに、その前 の母音が o か ę の場合に、 o → ó あるいは ę → ą に交替する。この交替は当該母音 が有声子音が無声化する場合にその前にある場合に起きることが多い。また、無声子音 であってもその前にある当該母音に起きることもある。従って、無声子音・有声子音と 関係がある阻害音に起きることが多いが、共鳴音でも r, ł, l, j の前でも起こることがあ る。そして、このような母音交替は、名詞や形容詞の変化や動詞の活用のパラダイムの 中で起きるし、また、関係する一連の単語の間でも起きるのである。 1.o → ó 交替 1)有声子音で終わる男性名詞単数主格の場合 sposobu 方法(単数生格)→ sposób(単数主格)、ogrodu 庭(単数生格)→ ogród (単数主格)、powodzi 洪水(単数生格)→ powódź(単数主格)、gwoździe 爪(複 数主格)→ gwóźdź(単数主格) ※1 一方、阻害音であっても無声子音の前のものはこの交替は起こらない。例:boku 側(単数生格)→ bok(単数主格)、chłopa 農民(単数生格)→ chłop(単数主格)、 nosa 鼻(単数生格) → nos(単数主格) ※2 共鳴音の場合もこの交替は起こらない。例えば、chóru コーラス(単数生格)→ chór (単数主格)、bólu 痛み(単数生格)→ ból(単数主格)である。 2) 女性名詞や中性名詞の複数生格の場合 52 音交替 子音 + a で終わる女性名詞や、子音 + o で終わる中性名詞の場合、その子音が有声子 音であろうが、無声子音であろうが、複数生格でこの交替が起きる。 有声子音の例:noga 足(単数主格)→ nóg(複数生格)、sowa フクロウ(単数主 格)→ sów(複数生格)、koło 車輪(単数主格)→ kół(複数生格) 無声子音の例:cnota 徳(単数主格)→ cnót(複数生格)である。stopa 脚(単数主 格)→ stóp(複数生格) ※ しかし、このことは絶対ではなく、起きない場合もある。例えば、mimoza ミモザ、 の場合、複数生格は mimoz となり、母音交替はない。 ※ 共鳴音の場合は原則としてこの交替は起こらない。 例えば、 góra 山 (単数主格) → gór (複数生格)、等である。 3)短形を持つ形容詞や代名詞の場合もこの交替が起きる。例:gotowy 準備のできた (長形)→ gotów(短形)、wesoły 楽しい(長形)→ wesół(短形)、moja 私の(女 性単数主格)→ mój(男性単数主格)、swoja 自分自身の(女性単数主格)→ swój(男 性単数主格) ※ この場合は、共鳴音でも阻害音でも起きることに注意すべきである。 4)動詞の過去形においてもこの母音交替が起きる。nieść 運ぶ、の過去単数1人称男 性形は niosłem であるが、過去単数3人称男性形は niósł と o → ó の母音交替が起き るのは、前者には母音語尾があるのに対して、後者はゼロ語尾であるからである。その 他には、rosnąć 成長する、がある。この場合、過去単数3人称男性形は rósł であるが、 過去単数1人称男性形は rosłem となる。 5)動詞の命令形でもこの母音交替は起きる。 例えば、wodzić 導く、の場合、現在単数3人称形は wodzi であるが、命令形は wódź となる。また、robić ~する、の場合、現在単数3人称形は rób となる。 ※ しかし、起きない場合もある。chodzić 行く、の場合、現在単数3人称は chodzi で あり、命令形も chodź と母音交替はない。 6)縮小語を形成する縮小辞が関係する場合にもこの母音交替は起きることがある。こ の場合は、ゼロ作用因子が関係する。無声化する子音がゼロ作用因子 k の前にある場 合や j, ł がゼロ作用因子と k の前にある場合にその前の母音が o, ę の時に母音交替が 起きる。 例えば、女性名詞の głowa 頭、の場合、その縮小語は główka となるが、głow- に ゼロ作用因子(0 と表示する)と k が付加されると、głow-0k- となり、w は k の前 にあるので逆行同化により無声化する。従って、その前の母音 o は 0 に影響されて ó となる。そして、縮小語も元の語と同様女性名詞なのでその単数主格は główka となる のである。中性名詞の słowo 言葉、も同様であり、縮小語となると słówko となるの である。 2.ę → ą 交替 1)有声子音で終わる男性名詞単数主格の場合が挙げられる。względu 配慮・関心(単 数生格)→ wzgląd (単数主格)というように ę が ą となるのである。dęby 樫(複数 音交替 53 主格)→ dąb(単数主格)、dębu 樫(単数生格)→ dąb(単数主格)、księdza 司祭 (単数生格)→ ksiądz(単数主格) ※ 一方、無声子音で終わる場合は通常はこの母音交替は見られない。例:kępa 木立、 の複数生格は kęp であるし、zięć 義理の息子、単数主格が zięć となる。 2)一方、a で終わる女性名詞や -o で終わる中性名詞の場合には、無声子音が関係す る場合でもこの母音交替が起きる場合がある。例えば、ręka 手(女性名詞単数主格) → rąk(複数生格)、święto 休日(中性名詞単数主格)→ świąt(複数生格) 3)中性名詞の -ęt- タイプでもこれが見られる。例えば、zwierzę 動物、の場合、その 複数主格は zwierzęta であるが、その複数生格は zwierząt となるのである。 cielęta 子牛(cielę の複数主格)→ cieląt(複数生格) 4)ę → ą 交替が起きるもので、重要なものは動詞の過去形の変化である。例えば、 przyjąć 受け取る、の場合、過去形の活用において単数男性形以外は -ę- となるが、単 数男性形では -ą- となる。また、不定詞も pryzjąć と -ą が使われる。単数男性形の活 用は、1人称、2人称、3人称の順に przyjąłem przyjąłeś przyjął である。 注意すべきは前述の o → ó 交替とは帰趨が異なることである。すなわち、nieść 運 ぶ、の過去単数男性形は、niosłem, niosłeś, niósł となり、3人称だけが ó となるが、 この場合は、1人称、2人称とも ą となる点である。この点は、-ąłem, -ąłeś, -ął の場 合には鼻母音( ę, ą )に関する限りは ł の後にはゼロ作用因子が働くのに対して、口 母音( o, ó )に関しては -łem, -łeś に対してはゼロ作用因子が働かないと考えるべきで あろう。 5)縮小語の場合もこの交替が起きることがある。理論上のことは1.の6)を参照さ れたい。 gęś ガチョウ → gąska(縮小語)ガチョウ、この場合 -sk- の間に -s0k- とゼロ作用 因子が加わるので、ę → ą の母音交替が起きるのである。 Ⅲ 出没母音 1.ロシア語においては出没母音というものがあった。それには о と е が関係してい た。これと類似しているものが、ポーランド語においても見られるのであるが、ポーラ ンド語においては e が関係しているのがほとんどであり、わずかに o が関係している のが見られる程度である(その例には、osioł ロバ、があり、単数生格は osła となる。)。 この出没母音はゼロ作用因子の前の子音の前に現れるのが通常である。例えば、pies 犬、の場合、p's0 であるので、ゼロ作用因子に影響されて s の前に e が現れるのであ る。そして、その e はこの場合は e2 であるので、p は軟音化し、pies となるのであ る。このようにして出没母音は通常は e であるが、後述するように e のすべてではな く、e のうちの e2 と e4 である。 2.出没母音 e 1)前述したように出没母音は主として e に関係するのであるが、すべての e で関係 54 音交替 するわけではない。関係する e はある程度限られている。その中でも単数主格の最後が -ec, -ek, -eł, -el, -em, -er, -en の場合に起きることが多い。出没母音は単数主格のみに現 れ( e がある)、それ以外の格では現れない( e が消える。)。但し、単数主格と単 数対格が同じ形をしているものは単数対格にも現れることは言うまでもない( 尚、単数 造格では -em となり、-e が認められるが、それは語尾としての e であり、ここにいう 出没母音ではないのは当然である)。また、女性名詞、中性名詞では複数生格に出没母 音が現れることがある。例えば、女性名詞の wiosna 春、の場合、その複数生格は wiosen となり、出没母音たる e が現れる。また、中性名詞である światło 明かり、の場合、 その複数生格は świateł であり、出没母音たる e が現れる。 2)この出没母音(ポーランド語の場合は e )ゼロ作用因子に影響されて出現するので ある。従って、語末が子音で終わる場合は語末にゼロ作用因子が存在するので、その前 の子音の前に出没母音が現れる。語末が母音で終わる場合(母音語尾の場合)にはゼロ 作用因子が存在しないのでその音節には母音の e は現れないのである。母音の e が現 れた場合に、その前にある子音が軟音化するかどうかは一概に言えないが、その e が e2 であるときはその前の子音は軟音化し(例えば、pies 犬、の場合)、その e が e4 で あるときは軟口蓋音以外の場合にはその前の子音は軟音化しないのである。 だから、 eが e4 の時は den 底(複数生格)の場合は軟音化しないのに対して okien 窓(複数生格) の場合は軟音化するのである。 3)出没母音が現れるのはゼロ作用因子が現れる場合である。そして、出没母音の前の 子音が軟音化するかどうかは e の性質による。 例えば、dzień 日、の場合、単数主格では母音の e が現れているが、この e は e2 で あるのでその前の子音は dzi と d が軟音化したものが現れるのである。一方、単数生 格は dnia であり、語末に a という母音があるので d と ni の間には e が現れないの である。しかし、dno 底、の場合、複数生格は den と語末が子音で終わるので、d と n の間に母音 e が現れる。しかし、その e は e4 であるので軟口蓋音しか軟音化させな い。従って、軟口蓋音ではない d は dzi とはならず、d のままなのである。他方、okno 窓、の場合は、その複数生格は okien となる。なぜなら、中性名詞の複数生格は子音で 終わるので、k と n の間に e が現れるし、その e は e4 であるので e の前の軟口蓋 音である k を軟音化するからである。 4)その他、e2 の例:女性名詞の一つである「村」を表す、wieś の場合、ś の後にゼ ロ作用因子が存在し、e が e2 であるので、wieś となる。 5)その他、e4 の例:「夢」を表す sen の場合、その単数生格は snu であり、母音 の e が現れたとしてもその前の s は軟音化しないので sen が単数主格なのである。そ の他の e4 の例には、łza 涙(女性単数主格)→ łez(複数生格)がある。 3.出没母音 e 各論 1)男性名詞の場合 ① -ec の例 chłopiec 少年、dworzec 駅、Niemiec ドイツ人、ojciec 父、goniec ベルボーイ、 音交替 55 cudzoziemiec 外国人、strzelec 射撃手、krawiec 仕立屋、wdowiec 男やもめ、 kupiec 商人、widelec フォーク、mędrzec 賢人、naukowiec 科学者 しかし、piec 暖炉、wiec ラリー、の場合は出没母音ではない。 ② -ek の例 domek 家(縮小語)、dziadek 祖父、zegarek 腕時計、daszek 屋根(縮小語)、ładunek 積荷、rabunek 窃盗、budynek 建物、wujek 叔父 しかし、czek 点検、człowiek 人間、Grek ギリシア、lek 薬剤、stek ステーキ、 wiek 世紀、の場合は出没母音ではない。 ③ -el の例 kaszel 咳、kumpel 仲間、pędzel ブラシ、sznycel(子牛肉の)カツレツ、węgiel 石 炭 しかし、nauczyciel 教師、apel アピール、cel 目的、fortel 計略、hotel ホテル、 skalpel 外科用メス、は出没母音ではない。 ④ -eł の例 この場合は例外なく出没母音となる。 diabeł 悪魔、kubeł バケツ、orzeł 鷲、poseł 国会議員、węzel 結び目 ⑤ -em の例 osiem 8、siedem 7 しかし、krem クリーム、system システム、は出没母音ではない。 ⑥ -en の例 bęben 太鼓、błazen 道化師、len 麻、rożen 唾液、sen 夢 しかし、basen プール、ren レニウム(元素の一つ)tlen 酸素、は出没母音では ない。 ⑦ -eń の例 dzień 日、grudzień 12月、kwiecień 4月、mięsień 筋肉、ogień 火、stopień 度、 styczeń 1月、uczeń 学者 しかし、cień 影、kamień 石、korzeń 根、leń 怠け者、płomień 炎、rdzeń 核、 szerszeń スズメバチ、は出没母音ではない。 ⑧ -er の例 cukier 砂糖、lukier アイシング、Holender オランダ人、Luter ルター(人名)、 magister 修士、minister 大臣、puder 粉、skafander スーツ、szwagier 義理の兄 弟、Węgier ハンガリー しかし、fryzier 美容師、kelner ウエイター、oficer 役人、partner パートナー、 premier 首相、ser チーズ、folder パンフレット、kasjer レジ係、komputer コン ピューター、mikser ミキサー、rower 自転車、toster トースター、は出没母音で はない。 ⑨ -es の例 pies 犬、owies エン麦 しかし、それ以外の -es 、例えば、bies 悪魔、adres 住所、magnes 磁石、okres 期間、sukces は出没母音ではない。 56 音交替 ⑩ -et の例 ocet 酢、oset アザミ しかし、bilet 切符、bufet 社員食堂、は出没母音ではない。 ⑪ -ew の例 lew ライオン、szew 縫い目 しかし、chlew 豚小屋、gniew 怒り、modrzew カラマツ、の e は出没母音では ない。 ⑫ -eb の例 łeb 頭 しかし、chleb パン、pogrzeb 葬儀、の e は出没母音ではない。 尚、 -ed, -ef, -eg, -eszcz, -eść, -erz, -ez, -edź, -eż, -eć, -ecz, -ej の e は出没母音ではない。 また、dz, sz, ź の前には e は来ない。 2)女性名詞の場合 女性名詞の場合でしかも単数主格、対格で出没母音が関係するのは、単数主格が子音 で終わる場合だけである。そのうち、-ew で終わる場合は e は常に出没母音となり、そ れ以外の場合は、下記の①で示した4つだけが出没母音と関係する。 ① cześć 名誉 płeć 性 wesz シラミ wieś 村 ちなみに cześć 名誉、の変化は、cześć(単数主格)czci(単数生格)czci(単数与格) cześć(単数対格)czcią(単数造格)czci(単数前置格)czci(単数呼格)であり、単数 主格及び単数対格に出没母音たる o が現れる(尚、この名詞は複数形を有しない。)。 ② -ew の例 brew 眉、krew 血液 これらは単数主格からみると一見硬子音で終わる男性名詞のように考えられるが、実 質上は軟子音で終わる女性名詞なのである。単数生格は krwi であるが、krewi* とす ると2音節になってしまうので e が没するのである。 3)中性名詞の場合 dno 底 → den (複数生格) 4.出没母音 o 次の3つの単語に見られるだけである。それは、kocioł 鍋、kozioł 山羊、osioł ロバ、 である。 ちなみに、osioł ロバ、の変化は、osioł(単数主格)osła(単数生格)osłu(単数与格) osła(単数対格)osłem(単数造格)ośle(単数前置格)ośle(単数呼格)osły(複数主 格)osłów(複数生格)osłom(複数与格)osły(複数対格)osłami(複数造格)osłach (複数前置格)osły(複数呼格)であり、単数生格に出没母音たる o が現れる。 5.動詞の活用に関する出没母音 1)動詞の活用において最も重要な出没母音は接頭辞に関してである。これは完了体と 音交替 57 不完了体のペアで起きるものである。これもゼロ作用因子が関係する。例えば、「引き 裂く」という意味の rozerwać(完了体)は語根が rw- であり、両者とも子音であるの で、その間にゼロ作用因子が働く。そのため、ゼロ作用因子の前の子音の前に e が現れ るのである。従って、接頭辞 roz- に e が現れ、roze- となる。一方、不完了体の方は rozrywać であり、語根は ryw- で y という母音が入っているのでゼロ作用因子は働か ない。そのため、接頭辞には e が入らず roz- となるのである。また、「選択する」と いう意味の odebrać の場合、語根は br- であり、両者とも子音であるので、その間に ゼロ作用因子が働く。そのため、ゼロ作用因子の前の子音の前に e が現れるので、接頭 辞 od に e が入るのである。一方、不完了体の odbierać の場合、語根は bier- という もので母音があるので、その前の接頭辞は od- となり、e は現れない。この場合、bi- と 軟音化しているのは語根内の e 自体が e2 であるからである。 その他、このような出没母音の e が関係する接頭辞には、pod(e), w(e), z(e) 等がある。 podeprzeć 支援する(完了体) podpierać(不完了体) wezwać 召集する(完了体) wzywać(不完了体) 2)動詞の活用で出没母音が関係する他の例は、過去語尾の前に関してである。単数男 性形においては ł で終わるのでゼロ作用因子が働くので、その前には e が現れること があり、それに対して女性形単数、中性形単数、非男性人間形複数、 男性人間形複数 では語尾がそれぞれ -ła, -ło, -ły, -li となり、ゼロ作用因子が働かないので、その前には e が現れないのである。例えば、iść 行く、の男性形3人称単数は szedł と e が入るが、 女性形3人称単数、中性形3人称単数、非男性人間形3人称複数、男性人間形3人称複 数はそれぞれ、szła, szło, szły, szli となり、e は現れない(ただ、注意すべきは d まで 消去されていることであるが、それはもし d まで残すと szdł- となり、子音が3つ連 続するので、それを避けるためである。)。 ※ 単数1人称男性形、単数2人称男性形にも e が現れているのは、語尾である -łem, -łeś にも -ł0em, -ł0eś のようにゼロ作用因子が入るからである。 6.緩衝母音 e これは一音節の前置詞(すなわち、w, z, bez, od, pod, przed, nad, spod 等)から形 成される前置詞句の場合に、それに関する名詞の最初が子音の連続であったりする時に 前置詞句の発音を緩和するために挿入される e のことである。このような現象が起きる のは1文字の前置詞(すなわち w と z )に多いので、それが中心である。もっとも、 子音が連続しなくても e が挿入されるものがある。例えば、ze sobą お互いに、の場合 は後に続く子音は s だけであるが、 ze となるのである。 1)we となるもの 子音の連続が w または f で始まる場合である。すなわち、子音の連続の最初の音が 前置詞と同じ場合である。 wt-, wł-, wr-, wsz-, wrz, fr- 等である。 we wtorek 火曜日に、we Włoszech(Włoszech は Włochy の複数前置格)イタリア で、we władzy 力で、we Wrocławiu ヴロツワフで、we wszystkim 何事においても、 58 音交替 we fragment 部分的に、we Wrzeszczu ヴジェシチで 2)ze となるもの( ze は生格支配でも、造格支配でもいずれでも良い。) ① 子音の連続が z, s, ź, ś, sz で始まる場合。すなわち、子音の連続の最初の音が前置詞 と同じ場合である。 ze złości 怒りから、ze złością 怒って、ze zmęczenie 疲労から、ze Szkocji スコッ トランドから、ze źródła 情報源から、ze strzelby ライフル銃から ② 子音の連続が wz-, ws-, łz- となる場合 ze wszystkich sił 全力を出して、ze wsi 田舎から(しかし、z wsiadaniem 搭乗して)、 ze względu ~の理由で(しかし、z względnym 比較的)、ze wstydu 恥ずかしく(し かし、z wstępem 導入に伴って)、ze wzruszeniem 感動して(しかし、z wzrostem 成長に従って) 3)beze となるもの beze mnie 私なしで 4)ode となるもの ode mnie 私から 5)pode となるもの pode mną 私の下に 、pode drzwiami ドアのそばに(しかし、pod drzwiami は、 「ドアの下に」という意味になる。) 6)przede となるもの przede mną 私の前に、przede wszystkimi まず第一に(しかし、przed wszystkimi は意味が異なり、「あらゆる人の前に」の意味になる。) 7)nade となるもの nade mną 私の上に nade wszystko とりわけ 8)spode となるもの spode mnie 私の下から 9)przeze となるもの przeze mnie 私によって しかし、przez monogie 多くを通じて 語の構成 59 第3章 語の構成 単語はそれぞれの構成要素に分解される。意味をなす最小の単位を形態素というが、 形態素には語根、接辞がある。接辞には接頭辞、接尾辞、語尾、後接辞、接合辞がある。 後接辞は時々現れる語の構成要素であるが、語尾より後ろに位置する。例えば、 ktokolwiek 誰かの、の -kolwiek である。また、動詞の命令形の場合に wy に対して -cie を付加するが、それである。 接合辞は合成語の各語幹の間に現れるもので、各語幹を接合する要素である。主に -oがこれに該当する。例えば、językoznawca 言語学者の -o- である。これは język 言語、 znawca 専門家、の合成語である。 Ⅰ 語の構成要素 単独で文の成分となりうる品詞のうち、副詞を除く5種類(名詞、形容詞、代名詞、 数詞、動詞)は、語幹(変化しない部分)と、変化語尾(格や人称による区別に際して 変化する部分)の2要素から構成される。語幹はさらに、その語の根元的意味を表す語 根、意味を加えたり、限定したりする接頭辞、品詞その他の区別を明らかにし、意味を 限定する接尾辞に分かれる。尚、変化語尾は一文字とは限らないし、語尾を持たない名 詞、代名詞もある。 副詞は独立の単語だが、変化しないので、通常は上述したように分解しない。もっと も、前置詞と名詞が結合してできた副詞の様に、元の接頭辞や語尾の名残を指摘できる ものもある。例えば、naprzód 前に、である。 Ⅱ 単語構成の多様性 単語の構成は様々であり、中には人称代名詞のように、語全体が変化してしまい、語 幹・変化語尾に分けられないものや、前置詞、接続詞、助詞の様に本体しかなく、変化 しないものもある。名詞でも、例えば、kąt 角度、のように語根しかないものや、二つ 以上の語根からなる合成語や、接頭辞や接尾辞が二つ以上あるもの等、多様である。 変化語尾を考慮しないで、単独で文の成分となりうる品詞で、副詞を除いてそれぞれ の例を挙げると以下のごとくになる。 1.語根のみのもの czas 時間 głowa 頭 myśl 考え spać 眠る 2.接頭辞+語根で構成されるもの bezładny 混沌とした nadejść 来る 3.語根+接尾辞で構成されるもの budować 建てる drogowy 道の szkołny 学校の 4.接頭辞+語根+接尾辞で構成されるもの bezpieczeństwo 安全 podwładny 従属の 5.複数接頭辞+語根で構成されるもの 60 語の構成 bezwyjściowy 逃げ道のない 6.語根+複数接尾辞で構成されるもの nauczycielski 教師の 7.合成語の例 światopogląd 世界観 Ⅲ 語根 語根は語の主要部分であり、この中にその後の本源的意義が含まれている。以下では 代表的な語根を取り上げ、少し説明を加える。 1.gra 遊び、grać 遊ぶ、gracz 遊技者 「gra」 が語根であり、いずれも「遊ぶ・スポーツをする」に関係する単語であること が分かる。 2.chory 病気の、choroba 病気、chorować 病気になる、chorobowy 病的な、 chorobliwy 異常な 「chor」が語根であり、いずれも病気に関係する単語であることが分かる。 3.pisać 書く、pisarz 作家、pismo 執筆、pisownia 綴り 「pis」が語根であり、いずれも書くことに関する単語である。 4.czytać 読む、czytanie 読書、czytelny 読みやすい、czytelnik 読者、 czytelnie 読みやすく czytnik 読み取り機、czytywać (何度も)読む 「czyt」が語根であり、いずれも読むことに関する単語である。 5.czysty きれいな、czyścić きれいにする、czystość 清潔 czysto きれいに czyściec 煉 獄、浄罪界(罪を犯した人の霊魂が火で清められる場所) 「czyst」が語根であり、いずれも清潔なことに関する単語である。 6.malarz 画家 malarstwo 絵画 malować 描く malowidło 絵画 malowniczy 絵の ような 「mal」が語根であり、いずれも描くことに関する単語である。 7.biedny 貧困な bieda 貧乏 biedak 貧乏人 biednieć 貧乏になる biedactwo かわい そうなこと 「bied」が語根であり、いじれも貧乏なことに関する単語である。 Ⅳ 接頭辞 接頭辞は語根の前に置かれて、主として新しい語を形成する。意味を付加したり、限 定したり、ニュアンスを変えたりするのである。ポーランド語の主な接頭辞には以下の ようなものがある。 1.do- 追加、目的、達成、適応、完成等への動きを表す。起源はラテン語の ad- であ る。 2.na- 方向への動き、中への動き、物の表面で行われる動作、形成される状態、十分 に行われる動作、満足感等を表す。結果が継続する整然とした行為を表すこともある。 語の構成 61 3.nad- 「上方に」、「表面的に」、「部分的に」、を表したり、「余分な」あるい は過剰な力を行使する意味を表す。 4.ob- 周囲への動き、完全な動き、下方への動き、分離等を表したり、真実からそら す意味を表す。 5.od- 退去、分離、逸脱、返却、再生、償い、回復等を表す ロシア語の от に類似 しているが、それとは異なる意味もある。 6.po- 主として不完了体を完了体にする機能を有するが、動詞によってはそれのみなら ず「少し」という意味を付加する機能も有する。 また、「~になる」という意味を付加 する場合もある。 7.pod- 下から、軽微、接近、内密の、支持、等の意味を表す。 8.prze- ~を通って、最後まで、新たに、すっかり、過度に、変化、等の意味を表す。 9.przy- ~のそばに、到達、接近、連結、等の意味を表す。 10.roz- 様々な方向へ、破壊、膨張、散乱、等の意味を表す。 11.u- 部分的に、傍らに、強力に、少し、等の意味を表す。 12.w- 「中へ」や、包含するというニュアンスを与える。 13.ws- wz- 上への動き、増大、等を表す。そして、意味を変容させるのではなく、 強める働きを有する 14.wspól- ~と一緒に、の意味を表す。 15.wy- ~から離れて、完全に、外へ 等の意味を表し、ラテン語の ex- に相当する。 16.z- s- 下へ、変化点、破壊する、小さくする、等を表す。 17.za- 始めること、充足すること、閉めること、死や破壊に向かうこと、等を表す。 Ⅴ 接尾辞 接尾辞は語根の後に置かれて、新しい語あるいは語形を作る。すなわち、品詞を表し たり、単語の意味を限定したり、文法上の形を作ったりするのである。接尾辞は数が多 く、接頭辞がある程度網羅的に挙げることができたのに対して、接尾辞の場合には網羅 的に挙げることは不可能である。そこで、下記にその若干例を挙げる。 1.名詞から接尾辞 -ow- がついて形容詞が形成される例 droga 道 → drogowy 道の koniec 終わり → końcowy 終わりの serce 胸 → sercowy 心のこもった 2.動詞から接尾辞 -enie がついて名詞が形成される例 życzyć 望む → życzenie 望み milczczeć 沈黙する → milczenie 沈黙 założyć 創立 する → założenie 創立 3.動詞で接尾辞を有するものには次のようなものがある。 1)第一活用の動詞は次の3つに分けることができる(尚、C は子音を表す)。 ① 接尾辞が母音の -a で終わるもの( -a, -owa, (ej)-a, (CC)-a 等 ) ② 接尾辞が -j で終わるもの( -ej, (aw) –aj 等 ) ③ 接尾辞が -n で始まるもの(-ną, -(ną),-(n) 等 ) 2)第二活用の動詞は主として次の2つがある。 62 語の構成 ① 接尾辞が -i / -y で終わるもの ② 接尾辞が -e で終わるもの 3)第三活用の動詞は主として接尾辞が -aj となる。 以上、動詞の接尾辞についての詳細は第Ⅱ部第5章第3節動詞の活用の項を参照され たい。 Ⅵ 名詞の構成 種々の接尾辞によって新しい名詞が形成される。これを 1.人を表す名詞、2.抽象的事物を表す名詞、3.道具を表す名詞、4.場所を表す 名詞、5.集合体を表す名詞、6.縮小辞が用いられる縮小語、7.拡大辞が用いられ る拡大語、に分けて概観する( 一部 ( ) で示したものは、語尾である。)。 1.人を表す名詞 これには、① 動作の主体を表しているもの、② 人の性質、特徴を示すもの、③ 人の 所属(居住地、国籍、所属団体等)を示すもの、に分けられるが、これらはあくまでも 相対的である。以下に接尾辞別に例を挙げる。 ① -ak,-ek ryba 魚 → rybak 漁師、ziemia 地球 → ziomek 同国人、Polska → ポーランド Polak ポーランド人、biedny 貧乏な → biedak 貧乏人、głupi 愚かな → głupek 愚 人、skrzypce バイオリン → skrzypek バイオリン奏者 ② -acz gra 遊び → gracz プレイヤー、bogaty 豊富な → bogacz 金持ち siła 力 → siłacz 力持ち、bieg ランニング → biegacz ランナー、 ③ -c kupić 買う→ kupiec 商人、 stary 年老いた → starzec 老人、 ④ -ist(a) maszyna 機械 → maszynista 機械工、ideał 理想的な → idealista 理想主義者 ⑤ -czyk Japonia 日本 → Japończyk 日本人、Londyn ロンドン → londyńczyk ロンドン市 民 ⑥ -anin Rosja ロシア → Rosjanin ロシア人、Warszawa ワルシャワ → warszawianin ワ ルシャワ市民 ⑦ -ik czytać 読む → czytnik 読者、góra 山 → górnik 鉱山労働者、kierować 管理する → kierownik マネージャー ⑧ -arz pisać 書く→ pisarz 著者、łgać 嘘を付く → łgarz 嘘つき、piec 焼く → piekarz パ ン職人、kolej 鉄道 → kolejarz 鉄道員 語の構成 63 ⑨ -c(a) kierować 運転する → kierowca 運転手、sprzedawać 売る → sprzedawca セール スマン、znać 知る → znawca 専門家 ⑩ -iciel, -yciel nauczyć 教える → nauczyciel 教師、oskarżyć 告発する → oskarżyciel 検察官 ⑪ -owicz wczasy 休日 → wczsowicz 休日の行楽客 2.抽象的事物を表す名詞 1)名詞・形容詞から派生する抽象名詞 ① -ość wiadomy 知られた → wiadomość ニュース、szybki 速い → szybkość 速度、 świeży 新鮮な → świeżość 新鮮、piękny 美しい → piękność 美しさ、wysoki 高 い → wysokość 高さ、czysty きれいな → czystość 清潔、głęboki 深い → głębokość 深さ、 szeroki 広い → szerokość 広さ、zły 悪い → złość 悪、wróg 敵 → wrogość 敵意 ② -i(e) zdrowy 健康的な → zdrowie 健康、 oprzeć もたれさせる → oparcie 支持、 zacofany 後方の → zacofanie 後進性、zmęczyć 疲れさせる → zmęczenie 疲労 ③ -nic(a) rok 年 → rocznica ―周年 ④ -stw(o) dziecko 子供 → dzieciństwo 子供時代、wydanie 版 → wydawnictwo 出版、bogaty 裕福な → bogactwo 富、pijany 酔った → pijaństwo 酩酊 ⑤ -k(a) pusty 空の pustka 空虚 ⑥ -d(a) prawy 権利の prawda 権利 ⑦ -ni(a) święty 神聖な → świątynia 聖物 2)動詞から派生する抽象名詞 ① -ni(e) życzyć 望む → życzenie 希望、ubezpieczać 保険をかける → ubezpieczenie 保険、 milczeć 沈黙する → milczenie 沈黙、cierpieć 苦しむ → cierpienie 苦しみ ② -(a) wystawić 展示する → wystawa 展示・展覧、chwalić 褒める → chwała 栄光 podstawić 置く → podstawa 基礎、płacić 支払う → płaca 支払い、władać 支配 する → wladza 権力、modlić się 祈る → modlitwa 祈り ③ -b(a) 64 語の構成 chorować 病気になる → choroba 病気、prosić 依頼する → prośba 依頼、służyć 奉 仕する → służba 奉仕 ④ -(e) żyć 生きる → życie 命 ⑤ -ść zazdrościć うらやむ → zazdrość 嫉妬 ⑥ -tw(o) kierować 指導する → kierownictwo 指導、śledzić 跡を付ける → śledztwo 捜査 ⑦ -ek przystawać 止まる → przystanek 停留所 ⑧ -k(a) walczyć 戦う → walka 戦い ⑨ -ż grabić 略奪する → grabież 略奪 3)接尾辞のないもの głodny 喉が渇いた → głód 渇き、wygodny 心地よい → wygoda 快適さ、spokojny 静かな → spokój 静けさ、uśmiechnąć się 笑う → uśmiech 笑い、słuchać 聴く → słuch 聴覚、begać 走る → bieg ランニング、sądzić 判断する → sąd 裁判所 3.道具を表す名詞 1)動詞から派生した名詞 myć 洗う → mydło 石鹸、wieszać 掛ける → wieszak ハンガー、 cedzić 濾過する → cedzak 濾過器、kołysać 揺らす → kołyska ゆりかご、 odkurzyć 電気掃除機をかける → odkurzacz 電気掃除機、powielać 複製する → powielacz 複写機、kopać 掘る → koparka 掘削具 2)名詞から派生した道具を表す名詞 słowo 言葉 → słownik 辞書 4.場所を表す名詞 gaz ガス → gazownia ガス工場、księga 大型本 → księgarnia 書店 prać 洗う → pralnia クリーニング屋、lotny 空気の → lotnisko 飛行場 lód 氷 → lodowisko スケートリンク、bezludny 人気のない → bezludzie 無人の場 所 5.集合体を表す名詞 ptak 鳥 → ptactwo 鳥類、piłka ボール → piłkarstwo フットボールチーム、sąsiad 隣人 → sąsiedztwo 隣人達 語の構成 65 6.縮小辞が用いられる縮小語 縮小辞とは、主に名詞や形容詞に付き、「小さい」「少し」といった意味を表す接 辞である。ポーランド語の場合は、ロシア語と同じく接尾辞が使われる。愛情、愛着、 親近感を表したり、または逆に軽蔑などを示す場合もある。縮小語尾、指小辞ともい う。ロシア語の場合は、例えば вода に対して、вадка である。ポーランド語の場合 はもう少し多く、次のような場合が認められる。 1)語幹が硬子音で終わる名詞の場合(-k を除く) -ek(男性名詞の場合), -ka(女性名詞の場合), -ko(中性名詞の場合)を付加する。 ① -ek を付加する場合 kot 猫 → kotek、pies 犬 → piesek、ser チーズ → serek、gołąb 鳩 → gołąbek、 ogród 庭 → ogródek sznur ひも → sznurek、kogut 雄鶏 → kogutek、wuj 叔父 → wujek Marcin → Marcinek ② -ka を付加する場合 godzina 時間 → godzinka、herbata 紅茶 → herbatka、noga 足 → nóżka、 gwiazda 星 → gwiazdka krowa 雌牛 → krówka ③ -ko を付加する場合 drzewo 木 → drzewko、okno 窓 → okienko、słowo 言葉 → słówko、 ciasto ケーキ → ciastko 2)語幹が -k あるいは -c で終わる名詞の場合 -czek(男性名詞の場合)-czka(女性名詞の場合)-czko(中性名詞の場合)を付加す る。この場合は、縮小語に対するさらなる縮小辞の場合もかなりある。 ① -czek を付加する場合 bok 側 → boczek、burak アオゲイトウ(草の名)→ braczek、czajnik やかん → czainiczek、kapuśniak キャベツスープ → kapuśniaczek、piesek 小さな愛玩犬 → pieseczek、sznurek 細い糸 → sznureczek、zając ウサギ → zajączek ② -eczka を付加する場合 córka 娘 → córeczka、bułka ロールパン → bułeczeka、bluzka ブラウス → bluzeczka、książka 書籍 → książeczka、łyżka スプーン → łyżeczka ③ -eczko を付加する場合 ciastko 小ケーキ → ciasteczko、jajko 卵 → jajeczko、łóżko ベッド → łóżeczko、 miasto 都市 → miasteczko、mleko ミルク → mleczko、okienko 小窓 → okieneczko しかし、oko 眼 → oczko( e が欠如している) 3)-szek, -szka, -szko を取る縮小辞もある。 ① -szek となる場合 brat 弟 → brciszek、brzuch おなか → brzuszek、kielich(取っ手のない)グラス → kieliszek ワイングラス、palec 指 → paluszek 66 語の構成 ② -szka となる場合 baba 女性 → babuszka ③ -szko となる場合 jabłko リンゴ → jabłuszko、ucho 耳 → uszko 4)-yk, -ik ① 男性名詞で -c, -cz, -rz, -sz で終わる名詞の場合は、-yk を付加することにより縮小 語を形成する。 koc 毛皮の毛布 → koczyk、deszcz 雨 → deszczyk、talerz 皿 → talerzyk(尚、 この場合にはこれから派生した縮小辞である talerzyczek もある)、klucz 鍵 → kluczyk、kosz 籠 → koszyk(尚、この場合にはさらにこれから派生した縮小辞であ る koszyczek もある)、płaszcz コート → płaszczyk しかし、kamień 石 → kamyk、promień 光線 → promyk となる。そして、両 者ともさらなる縮小語である kamyczek, promyczek となる。 ② 男性名詞で -t, -d, -ł, -j で終わる名詞や、軟子音で終わる名詞の場合には、-ik を付 加することにより縮小語を形成する。 pistolet ピストル → pistolecik、samochód 自動車 → samochodzik、stół テーブ ル → stolik、pokój 部屋 → pokoik(尚、この場合はこれから派生した ploiczek も ある。)、gwóźdź 釘 → gwoździk、but 靴 → bucik、 koń 馬 → konik、słój 大きな瓶 → słoik(尚、この場合にはこれから派生した słoiczek もある。) しかし、grosz グロス(貨幣の単位)→ grosik、kapelusz 帽子 → kapelusik 5)意味を違える縮小辞 通常、縮小辞は前述のように「小さい」とか「少ない」等の意味を表すのであるが、 中には縮小辞を付加すると元の名詞から転じて別の意味を表すことがある(もっとも、 あくまでも元の単語の意味に関係することがほとんどである。)。その例は、以下の ごとくである。 biuro 事務所 → biurka 事務机、brat 兄(弟)→ bratek 三色スミレ cukier 砂糖 → cukierek キャンディ、guz ランプ → guzik ボタン kanapa 長いす → kanapka サンドイッチ、kolej 鉄道 → kolejka 列 król 王 → królik ウサギ、ołów 鉛 → ołówek 鉛筆、ręka 手 → rączka ハンドル、 skóra 皮膚 → skórka 外皮、zabawa ゲーム → zabawka おもちゃ waga 重さ → ważka トンボ、woda 水 → wódka ウオッカ 7.拡大辞が用いられる拡大語 縮小辞の反対の概念であるが、現在では限られたものしか用いられない。「大きい」 ことを表すのが元来の意味であるが、「不細工」「おおざっぱ」等のニュアンスを有す ることが多い。それには以下のようなものがある。 1)-isko ( -ysko ) 中性名詞のみならず男性名詞にもなる場合がある。 chłopiec 少年 → chłopisko やつ、 kot 猫 → kocisko 大きな猫、 pies 犬 → psisko 大 語の構成 67 きな犬、dziewczyna 少女 → dziewczynisko おてんば、mucha ハエ → muszysko 大 きなハエ、ząb 歯 → zębisko 大きな歯 2)-uchjabłko リンゴ → jabłucho żaba カエル → żabucha 大きなカエル 3)-idło ( -ydło) powieść 小説 → powieścidło くだらない小説 4)-iś strój(豪華な)衣装 → strojniś(皮肉を込めて)ダンディーな男 Ⅶ 形容詞の構成 1.名詞から派生する形容詞 これは枚挙にいとまがないが、主なものを挙げる。 duch 精神 → duchowy 精神の、dzień 一日 → dzienny 一日の、drzewo 樹木 → drzewny 樹木の、słoma 藁 → słomiany 藁の、 muzyka 音楽 → muzykalny 音楽の、 typ 型 → typowy 典型的な、dekoracja 装飾 → dekoracyjny 装飾の、sąsiad 隣人→ sąsiedzki 隣の、świat 世界 → światowy 世界の、naród 国民 → narodowy 国民の、 kolor 色の → kolorowy 色の、pole 畑 → polowy 畑の、zabytek 記念碑 → zabytkowy 歴史上の、barwa 色彩 → barwny 色彩豊かな、krew 血 → krewny 血の、 bieda 貧困 → biedny 貧困の、kuchnia 台所 → kuchenny 台所の、szkoła 学校 → szkołny 学校の、wiosna 春 → wiosenny 春の、alergia アレルギー → alergiczny ア レルギー体質の、ekonomia 経済 → ekonomiczny 経済上の、ręka 手 → ręczny 手の ulica 通り→ uliczny 通りの、święto 祝祭日 → świąteczny 祝祭日の、słońce 太陽 → słoneczny 太陽の、ciotka 叔母 → cioteczny 叔母の、biblia バイブル → biblijny バイ ブルの、 konferencja カンファレンス → konferencyjny カンファレンスの、cud 不思 議 cudowny 不思議な、ryzyko 危険 → ryzykowny 危険な、spad 降下 → spadzisty 落下した、puch 羽毛 → puszysty 羽毛の、kolec とげ → kolczasty とげの、liść 葉 → liściasty 葉の、robak 虫 → robaczywy 虫の、leń 怠惰 → leniwy 怠惰な 2.動詞から派生する形容詞 doświadczyć 経験する → doświadczony 経験した、jadać 食べる → jadalny 食用の sypiać 眠る → sypialny 眠るための、dziwić się 驚く → dziwny おかしな、wyrazić 表現する → wyraźny、czynić する → czynny 行動的な、ubezpieczyć 保険をかける bezpieczny 安全な 3.形容詞の縮小辞 名詞と同じように形容詞も縮小辞が認められる。それには2種類あり、-utki/a/ie か、 あるいは -usieńki/a/ie である。 このような形容詞が使われる場合は主に皮肉を込めた意 味や感傷的な意味あるいは卑しむべき意味を含めることになる。 68 語の構成 blady 青白い → bledziutki 非常に青白い ciepły 暖かい → cieplutki うららかな → cieplusieńki mały 小さい → malutki 非常に小さい → malusieńki miły かわいい → milutki (可愛らしくて)抱きしめたくなるような → milusieńtki krótki 短い → króciutki ちっぽけな nowy 新しい → nowiutki 真新しい → nowiusieńtki Ⅷ 動詞の構成 後述するように動詞には体の対応があるばかりでなく、様々な様相に従って多様な変 化をするので、その派生関係、転換過程、子音交替、出没母音の出没、他の構成要素の 出現等の関与が複雑となり、語構成の正確な把握は容易ではない。しかし、ある程度パ ターン化することもできるので、ここでは代表的なものを示すことにする。 1.不定詞に関係する語尾 動詞不定詞の圧倒的多数は、-ć の形を有している。その他に、-ść で終わるものや -źć で終わるもの、-c で終わるものがある。詳細は不定詞の項を参照されたい。 2.動詞の接尾辞 ロシア語では単純動詞と言われるもののほとんどは不完了体で、これに接頭辞が付く と、その意味が加わった新しい動詞の完了体となった。そして、それに続き元の動詞と は異なる、新しい意味を有した動詞の完了体が必要となる。その場合に、いくつかの決 まった接尾辞がそれを作り出した。このことはポーランド語でも該当し、接尾辞によっ て新しい不完了体が形成される。ロシア語では -а- -я- -ва- -ыва- -ива- 等が挙げられる が、ポーランド語でも同様で、-a- -ia- -wa- -ywa- -iwa- 等が接尾辞として挿入され、不 完了体を形成する。しかし、ポーランド語の場合はもっと複雑であり、詳細については 動詞の体の項を参照されたい。 3.動詞の接頭辞 1)接頭辞の機能 単純動詞に接頭辞が付くと、限定された意味をもつ新しい意味の動詞が作られる。例 えば、pisać 書く、の場合は下記のごとくになる。 napisać 書く opisać 描写する zapisać 書き留める wpisać 書き込む wypisać 書き 抜く nadpisać 表書する podpisać 署名する przepisać 書き写す spisać 書き写す popisać 提示する dopisać 書き終える・書き足す 多くの動詞は当初具体的な単純な動作を意味していたが、徐々に意味が精密になり、 さらに抽象的、内面的な意味が加わっていく。接頭辞は本来動作の方向や態様を表すの で、具体的な意味を表す動詞の場合は、意味の推測が可能である。例えば、接頭辞とし て wy- を有する動詞からは、wybiegać 走り出る、wybierać 選び出す、wybijać 叩い 語の構成 69 て出す、wychodzić 外へ出る、wyciągać 引き出す・抜き出す、wydawać 支出する、 wyglądać(中から外を)見る、wyrywać 引き抜く・抜き取る、等が導かれる。これら ははいずれも単純動詞本来の意味に、接頭辞の wy- に関する「出る(出す)」の意味 が加わっているのである。 このように同一の接頭辞がついているために意味の類推が可能となる例は多いので、 接頭辞の意味を知ることは、重要である。しかし、時代と共に動詞に抽象的、内面的な 意味が派生し、それに方向性や様態を示す接頭辞が加わった場合、新しい動詞が何を意 味するかを推測することは容易ではない。例えば、wyrażać 表現する、は「出る(出す)」 だけからでは類推できない。 その他にも、類似の意味の接頭辞が付いて、微妙に使い分ける場合や、歴史的な経緯 から特別の意味が加わるなど、さまざまな要因が作用するので、接頭辞による動詞の意 味の変化はかなり微妙である。 2)個々の接頭辞の意味 これについては本章のⅣや動詞の接頭辞の項を参照されたい。 Ⅸ 複合語、合成語 1.接合辞の o があるもの gazomierz ガスメーター、gazociąg ガス管、jasnoniebieski ライトブルーの、 ciemnowłosy 黒髪の、ciemnoczerwony 暗赤色の、czerwnobrązowy 赤褐色の、 czerwnoskóry 赤色の皮膚をした、czarno-biały 黒白の、czteroetapowy 4つの段階 の、czeteroosobowy 4人用の 2.接合辞の o がないもの młodzieżwiec 青少年大会(スポーツ) Ⅹ 略語 skrót 1.略語とはある語の意味を、元の語形を簡略にした形で表す習慣ができた時の新しい 語形を言う。略語はロシア語では当然認められるし、どの言語でも見られるものであり、 当然ポーランド語でも見られるのである。略語は、話したり書いたり、また印刷や機械 による通信を行ったりする際に、語形の長さからくるわずらわしさを避けるために使わ れることが多いが、ポーランド語でもその点は同様である。 2.略語の種類 1)単語の前半部分のみにして後は省略し、ピリオドを付ける場合 inż. = inżynier エンジニア godz. = godzina 時間 tel. = telefon 電話 ul. = ulica 通り św. = święty あるいは święta 聖人あるいは聖~ pl. = plac 広場 ob. = ① obecny 現在の ② obywatel 市民 woj. = województwo 州(特にポーランド の)m. = mieszkanie アパート str. = strona ページ im. = imienia ~にち なんで名付けられた 70 語の構成 ks. ksiadz ① ―師、-牧師 ② 王子 ok. = okło 約・およそ tow. = towarzystwo 社会 pr. = porównaj 比較せよ r. = rok 年 w. = wiek 世紀 zw. = ① zwinkle 普通は・通常 ② zwany ~と呼ばれる p. または P. = ① pan 様 ② pani 様 wsch. = wschód 東 ur. = urodzony, urodzona 生まれは zm. = zmały 死去した p. = patrz 見なさい z. = zobacz 見なさい zach. = zachód 西 2)句の場合にそれぞれの単語の最初の文字を表し、最後にピリオドを付ける 場合 cdn. = ciag dalszy nastąpi 続く jw. = jak wyżej 上のように itd. = i tak dalej ~等 itp. = i tym podobne ~等 np. = na przykład 例えば nt. = na temat ~に関して・ついて ds. = do spraw ~に関する・~のため の tj. = to jest すなわち br. = bieżączego roku 今年の pt. = pod tytułem 資格がある bm. = bieżączego miesiąca 今月の ws. = w sprawie 問題となっている・話題となっている Serbowie planują referendum ws. rządów w Kosowie. セルビア人はコソボ政府で 問題となっている国民投票を計画している。 tzn. = to znaczy すなわち tzw. = tak zwany いわゆる 3)単語の一部を取り上げ、ピリオドは付けない場合 bp =biskup 司祭 dr = doktor 医師 mgr = magister 修士 nr = numer 番号 wg = według ~によれば płk = pułkownik 大佐 mjr = major 少佐 4)それぞれの単語の頭文字を取り、その後にそれぞれピリオドを付ける場合 p.n.e. = przed nasza era 紀元前 n.e. = naszej ery 西暦 p.o. = pełniący obowiązki 現役の m.in. = między innymi とりわけ m.st. = miasto stołeczne 首都 n.p.m. = nad poziomem morza 海抜 c.d. = ciag dalszy 続き j.n. = jak niżej 下記のように D.R. Konga = Demokratyczna Republika Konga コンゴ 民主共和国 5)単に各単語の頭文字を取ったに過ぎないもの これは頭字語というものであるが、これにはイニシャリズムとアクロニウムがある。 前者は頭文字を一字ずつアルファベット名で読むものであり、後者は連なった頭文字を 通常の単語と同じように発音して読むものである。 ① イニシャリズムの例 MSZ = Ministerstwo Spraw Zagranicznych 外務省 MSW = Ministerstwo spraw wewnętrznych 内務省 RP = Rzeczpospolita Polska ポーランド共和国 SA = spółka akcyjna 株式会社 ② アクロニウムの例 NATO= North Atlantic Treaty Organization 北大西洋条約機構 AIDS= acquired immunodeficiency syndrome 後天性免疫不全症候群 6)その他 語の構成 cm. = centymetr センチメートル płd. = południe 南 płn. = połunoc 北 pp. = panowie, panie, państwo z-ca = zastępca 代理人 71 72 第Ⅱ部 形態論(品詞論)語の性質、 変化、用法 名詞 73 第1章 名詞 Ⅰ 総説 1.名詞の定義とその種類 人及び動物・事物の存在やある観念を表す語を名詞という。 名詞はその名詞自体の持つ意味とその名詞の語形とにより、いろいろな種類 に分けられる。 1)意味による分類: ① 具象名詞 と抽象名詞 具象名詞とは, 人・動物・物体のように現実に存在し、われわれが知覚でき ると考えられるものを表わす名詞である。この中には、ある動作や動作の結果 のような形態的には存在しないが感知できるもの、空想的なもので現実に存在 しなくてもわれわれの頭脳の中で具体的な存在物として描き出すことができる ものも含まれる。 firma 会社 gazeta 新聞 książka 書籍 抽象名詞とは,われわれの知覚では感知できないもので、単に観念上におい てのみ存在するものを表わす名詞である。つまり、属性・現象・思想・状態な どを表わす名詞であるといえよう。 piękno 美しさ、inteligencja 知性、niepókoj 不安 ② 普通名詞と固有名詞 普通名詞とは,ある生物や事物を表わすとともに、それと同じ種類のすべて のものをも共通して表わす名詞である。つまり、ある生物・事物・観念などが 属している種類の共通概念を表わす名詞といえよう。 固有名詞とは,ある特定の人名・地名のように, ほかの人間・ほかの土地と 区別してその固有性を表わす名詞である。固有名詞は普通は大文字で書き始め ることにより、普通名詞と区別される。 Warszawa ワルシャワ、Australia オーストラリア、Angela Merkel アンゲ ラ・メルケル ③ 個別名詞と集合名詞 個別名詞とは個々の人間・動物・事物を表わす普通名詞である。それに対し て、語形は単数形であっても同じ種類に属するものの全体や個々の生物・事物 の集合を表わすのが集合名詞である。 集合名詞はそれ自体の持つ意味からさらに2つに区別することができる。す なわち、その名詞だけで集合体を形成する個々の構成員(物)を示すことのでき る集合名詞と、単に漠然と多数・多量の集合体を表わすだけでその構成員(物) を示すためには名詞をつけて補足説明をしなければならない集合名詞に区別さ 74 名詞 れるのである。 ア、それ自体で構成員(物)を示すことができる集合名詞. wojsko 軍隊 stado 羊の群れ fauna 特定地域の生息動物 szafa 個人の全衣装 イ、それ自体では構成員(物)を示すことができない集合名詞. mnóstwo 多数 tuzin ダース tłum 群集 setka 百にもおよぶ数 tysiąc 千にもおよぶ数 ④ 可算名詞と不可算名詞 可算名詞とは個数を数えることができるものを表す名詞を言い、不可算名詞 とは固体をなしておらず従ってその個数を数えることできないものを表す名詞 を言う。一般に具象名詞のうちの物質名詞と抽象名詞が不可算名詞である。 可算名詞の例:książka 本 dom 家 stół テーブル 不可算名詞の例:woda 水 mięso 肉 pokój 平和 2)形態による分類: ① 単一名詞と合成名詞 単一の概念を1語で表わす名詞を単一名詞と呼ぶのに対して,意味を異にす る2つ以上の単語が結合して1つの新しい意味を作り出すような名詞を合成名 詞と呼ぶ。合成名詞には成り立ちにより以下のようなものがある。 ア、名詞+名詞で作られているもの językoznawca 言語学者 イ、名詞+形容詞または形容詞+名詞で作られているもの szybkościomierz ス ピードメーター ウ、前置詞+名詞で作られているもの podomka 女性用部屋着 bezład 混沌 ② 原形名詞と派生名詞 派生名詞とは、あるもとになる名詞つまり原形名詞から派生した名詞をいう。 派生名詞はそのもとになる名詞の語根に接尾辞や接頭辞をつけて作られる。 praca 仕事 → wspólpraca 共同制作、tettorysta テロリスト → antyterrorysta 反テロリスト、sekretarz 長官 → podsekretarz 事務次官 ③ 変意名詞 名詞の語尾にある特定の接尾辞をつけることによって,その名詞に特別の意 味を与えることがある。このような接尾辞をつけられた名詞を変意名詞という。 変意名詞を作る接尾辞には、拡大接尾辞( -cho, isko 等)、縮小接尾辞( -ek 等)、愛称接尾辞( -czek, -szka 等 )、軽蔑接尾辞( -idło 等 )、等がある。 2.名詞の機能 名詞の機能は、文の主語を示したり、斜格で文の補語を示すことである。ま た、通常、補語として直接補語を対格で表し、間接補語を与格で表し、述語と して造格でもって主語の役割を定義付けする。また、二つ以上の名詞を並べて その関係を格によって示す。 名詞 75 ポーランド語の名詞は7つの格を有し、格に応じて変化形を有する。 3.名詞の構造 名詞は語幹と語尾で成り立つ。例えば、gazeta 新聞、の場合、語幹が gazetであり、語尾が -a である。lotnisko 飛行場、の場合、語幹が lotnisk- であ り、語尾が -o である。語幹がその名詞の基本となり、それに語尾が付加され て格を演出するのである。語幹となるものは無数にあるが、語尾となるものは 限られている。-a, -i, -y, -owi, -om, -e, -ie, -owie, -ów 等である。 Ⅱ 名詞の性 1.名詞には男性名詞、中性名詞、女性名詞の3つがあるのはロシア語と同じである。 名詞の性が必要なのは、それに関係する形容詞、形容分詞、代名詞、数詞、動詞の過 去形等が名詞の性によって形が異なってくるからである。この点もロシア語と同じであ る。 ロシア語において名詞の性を規定するものは2つのグループに分かれた。すなわち、 文法上の性と自然の性である。この点はポーランド語でも同様である。文法上の性は名 詞の語尾によって決定されるものであるし、自然の性は人間あるいは動物の性によって 決定されるものである。これらの点もロシア語と同じである。そして、文法上の性と自 然の性はかなり共通している場合が多いが、そうでない場合もある程度見られるのもロ シア語と同じである。 1)文法上の性 名詞の単数主格形の語尾で決められるのが原則である。例えば、主格が子音で終わる もの(すなわち語尾がないもの)は、ロシア語の場合、男性名詞であり、ポーランド語 の場合も男性名詞が通常である。ただ、主格が子音で終わっても女性名詞の場合がある (例:twarz「顔」、noc「夜」)。もっとも、女性名詞となる場合は語幹が硬化子音か (狭義の)軟子音で終わるのが原則である。ロシア語の女性名詞で -ь で終わるものが あり、これと類似しているのである。 ① 男性名詞 ロシア語の場合、語尾がなく語幹だけで終わるものが通常は男性名詞であったが、こ の点も同じである。 sklep 店 czas 時間 kot 猫 chleb パン syn 息子 nóż ナイフ wiersz 詩 deszcz 雨 kraj 国 pókoj 部屋 gość 客 przechodzień 通行人 ② 女性名詞 ロシア語の場合、語尾が母音となるものは、語幹が硬子音のもの、軟子音のものがあ り、さらに語幹だけで終わり語の最後に軟音記号が付いて子音で終わるものがあった。 この点でもポーランド語は同様である。 76 名詞 zima 冬 gazeta 新聞 broda あごひげ żona 妻 ziemia 地球 ciocia 叔母 koszula シャツ nić 糸 kość 骨 łódź ボート gęś ガチョウ wieś 村 więź ひも sól 塩 twarz 顔 ③ 中性名詞 ロシア語の場合、語尾が母音を取り、-о か -е になる。ポーランド語でも同様である。 piwo ビール mięso 肉 biuro オフィス lotnisko 飛行場 studio スタジオ pole 畑 miejsce 場所 morze 海 2)自然の性に基づく名詞 ロシア語において主格語尾が а か я であるにもかかわらず、男性名詞であるものが あったが、これらは人間の男性を表すものであった。この点についてもポーランド語に 当てはまる。 ① 主格が -a で終わる場合は、ロシア語では基本的には女性名詞であったが、この点は ポーランド語でも同じである。また、-я で終わる場合も女性名詞であった。ポーランド 語において я に相当するものは -ia である。これも通常は女性名詞である。 -a で終わる場合で注意すべきは、男性名詞とも女性名詞ともなる場合があることであ る。この点は、ロシア語と同様であり、人間を表す場合で、対象が男性であれば男性名 詞に、女性であれば女性名詞になるのである。例えば、ciapa 愚か者、の場合、それが 男性であれば男性名詞に、女性であれば女性名詞になるのである。 しかし、もっと複雑なのは主格が -a で終わる場合でも常に男性名詞になる場合があ るということである。例えば、meżczyna 男、kolega 仲間、sędzia 裁判官、artysta 芸 術家、等は -a で終わるが、男性名詞である。そして、注意すべきは変化において、 -a で終わる女性名詞と同じ変化をする場合と子音で終わる男性名詞と類似した変化をす る場合があるということである(詳細は後述)。 ② 主格が -o で終わる場合は、前述したように中性名詞が原則である。しかし、一部男 性名詞であるものがある。人名や家人を親しみを込めて言う表現の場合に用いられる。 もちろん自然の性として男性を表す。 dziadzio おじいさん、Stanisła Moniuszko スタニスワフ・モニューシュコ(ポーラ ンドの作曲家)、Stasio スターシオ(ポーランドの歌手の愛称) ③ 主格が -y で終わる場合や、-i で終わる場合もあるが、これらは形容詞変化の男性名 詞となる。自然の性として男性を表す。 bufetowy バーテンダー、bliźni 隣人(女性であっても、男性名詞となる。) ④ 主格が -i で終わる場合で、女性名詞となるものもある。これは自然の性としての女 性を表す。 pani (女性を指して)~様、bogini 女神 3)自然の性と文法上の性との関係 ① 人間の場合 ア、実際は男性なのに女性名詞である例:kosmetyczka 美容師(男性の美容師であって もこれを使うのが通常であるので、この例に含めて良い。) イ、男性も含まれるにもかかわらず女性名詞が代表形である例:osoba 名詞 77 ウ、実際は女性なのに男性や中性名詞である例:babsztyl 鬼婆、kopiuch ふしだらな女 エ、女性も含まれるにもかかわらず男性名詞が代表形である例: technik 技術者、rybak 猟師、polityk 政治家 オ、実際の性は度外視され中性名詞が代表形である例:dziecko 子供 ② 動物の場合 ア、動物名詞の中には、男性名詞だけとか、または女性名詞だけしか有しないものがあ る(すなわち、片方だけで両方の性を表すもの)。このような場合には、その動物の雌 雄を指すわけではない。 男性名詞だけを持つもの:sokół 鷹、pająk 蜘蛛、skorpion さそり 女性名詞だけを持つもの:wrona カラス、żmija まむし、mucha ハエ、małpa 猿、 jaskółka つばめ イ、一方、雌雄を意識する場合や、雌雄の意味が大きい動物の場合にはそれぞれの形が ある。byk 雄牛、krowa 雌牛 kogut 雄鶏、kura 雌鶏 ogier 雄馬、klacz 雌馬 2.各名詞の特徴 以下においては男性名詞、女性名詞、中性名詞のそれぞれの特徴と例を述べる。 1)男性名詞 ロシア語の男性名詞においては活動体と不活動体を分ける必要があった。それは、変 化が異なっていたからであり、特に対格において異なりが見られた。ポーランド語の男 性名詞も一応そのような区別があると言えるが、さらに複雑なのは複数形において、そ れらのみならず男性人間形を区別する必要があることである。すなわち、単数ではロシ ア語のように生のある名詞(ロシア語の活動体に相当)、無生名詞(ロシア語の不活動 体に相当)で区別すればよいが、複数においては男性人間形、男性人間形以外の有生名 詞、無生名詞を区別する必要があるのである。従って、男性名詞には男性人間形名詞、 有生名詞、無生名詞の3種類あることになる。 ① 男性人間形名詞 ア、硬子音で終わる場合 syn 息子 Arab アラブ人 kiep 愚か者 sąsiad 隣人 brat 兄弟 druch ボーイスカウト amioł 天使 arbiter アルバイター szejk(イスラム教の指導者)wróg 敵 イ、硬化子音で終わる場合 listonosz 郵便配達員 mąż 夫 lekarz 医師 młodzieniec 若者 zamachowiec 暗殺者 widz 観客 kowal かじ屋 koniec 終わり ksiądz 司祭 ウ、軟子音で終わる場合 gość 客 przechodzień 通行人 gołąb 鳩 karp 鯉 paw クジャク łokieć 肘 łabędź 白鳥 ryś オオヤマネコ gwóźdź 爪 hotel ホテル koń 馬 kraj 国 wuj 叔父 エ、語尾 -a で終わる場合 artysta 芸術家 następca 後継者 eminencija 重要人物 78 名詞 satelita 従者 parlamentarzysta 国会議員 pracodawca 雇用者 オ、語尾 -i で終わる場合(形容詞変化が多い)bliźni 隣人 カ、語尾 -y で終わる場合 biegły 専門家 キ、語尾 -o で終わる場合 mikado 天皇 chłopisko やつ・野郎(拡大辞の一部となる) ク、語尾 -ę で終わる場合 książę 王子 ② 有生名詞 ア、語幹が硬子音で終わる場合 lew ライオン gad 爬虫類 giez アブ科のハエ pies 犬 orzeł 鷲 wągier 頭の黒い鳥(スズガモ等)ptak 鳥 szczeniak 子犬 イ、語幹が硬化子音で終わる場合 węgorz ウナギ wąż 蛇 rydz ウマバエの幼虫 ウ、語幹が軟子音で終わる場合 kozodój ヨタカ gołąb 鳩 karp 鯉 paw クジャク ③ 無生名詞 ア、語幹が硬子音で終わる場合 bęben ドラム film 映画 problem 問題 chleb パン sklep 店 szczaw ギシギシ(植物の一種)rząd 政府 but 靴 obraz 絵 nos 鼻 artykuł 記事 ser チーズ bank 銀行 pociąg 列車 dach 屋根 イ、語幹が硬化子音で終わる場合 wiersz 詩 nóż ナイフ deszcz 雨 talerz 皿 koc 毛布 rydz キノコ pieniądz お金 wódz リーダー płaszcz コート hotel ホテル ウ、語幹が軟子音で終わる場合 kraj 国 maj 5月 dziegieć タール tytoń タバコ エ、単数主格語尾が -y で終わる場合 luty 2月(但し、形容詞変化名詞である) 2)中性名詞 中性名詞の単数主格の語尾は -o か -e が通常であるが、それ以外に -ę となる場合と -um となる場合がある。 ① 語尾が-o の場合 piwo ビール mięso 肉 biuro オフィス lotnisko 飛行場 studio スタジオ 等多数ある。 また、拡大辞は -isko や -ysko という接尾辞を取るが、これらのほとんどは中性名詞 である。 psisko 大型犬 dziewcznisko 大柄な女 また、縮小辞は -ątko という接尾辞を取るが、これらも中性名詞となる。 słoniątko 象の子供 dziewczątko 少女 ② 語尾が -e で終わる場合 pole 畑、miejsce 場所、morze 海、等多数ある。 ③ 語尾が -ę で終わる場合 imię 苗字 zwierzę 動物 plemię 部族 szczenię 子犬 kocię 子猫 ④ 語尾が -um で終わる場合 centrum 町の中心地 muzeum 博物館 technikum 技術学校 panoptikum 蝋人形館 3)女性名詞 ① 女性名の単数主格の語尾は -a であることが多い。 -a で終わる女性名詞の例: lampa ランプ osoba 人 głowa 頭 zima 冬 żona 妻 名詞 79 apteka 薬局 noga 足 ② 子音で終わる場合も見られる。その場合にほとんどは語幹が硬化子音か(狭義の)軟 子音に終わる場合である。そして、注意すべきは、単数主格では硬子音に終わるように 見えるが、語幹が軟子音の場合である。それは単数主格が -b, -p, -w, -m で終わる場合 である。その例は、głąb 深さ、brew 眉、chorągiew 旗、krew 血、rzeodkiew ダイコ ン、marchew ニンジン、warząchew クッキングスプーン、等である。これらは単数主 格が硬子音で終わるものと同じであるが、それ以外の格は軟子音と同じ変化を示すもの である。従って、単数主格の -b, -p, -w, -m は実際には -bj, -pj, -wj, -mj であると言える。 ※ 語幹が硬化子音、軟子音で終わる場合は男性名詞にも見られるので、当該名詞が男性 名詞であるのか、女性名詞であるのかの区別は難しい所がある。その区別は以下のよう に従うべきであろう。この点、ロシア語においても ь で終わる場合が難しかったのと同 様である。 ア、まず、-dz と -j で終わる場合は、すべて男性名詞である。 イ、それ以外は下記のものがそれぞれの代表的なものである。 女性名詞の例: nić 糸 kość 骨 łódź ボート gęś ガチョウ wieś 村 więź ひも sól 塩 myśl 考え jesień 秋 kolej 鉄道 noc 夜 rzecz 物 twarz 顔 mysz ネズ ミ wesz シラミ podróż 旅行 krawędź 縁 男性名詞の例:hotel ホテル klucz 鍵 bagaż 荷物 karp 鯉 gołąp 鳩 paw クジャク łokieć 肘 łabędź 白鳥 ryś オオヤマネコ gość 客 gwóźdź 爪 cel 目的 kufel カ モ marzyciel 空想家 dzień 日 koń 馬 kraj 国 plac 四角 koc 毛布 koniec 終わり rydz サフラン płaszcz コート deszcz 雨 lekarz 医師 talerz 皿 grosz 貨幣の単 位 listonosz 郵便配達員 nóż ナイフ wąż 蛇 teść 義理の父 上述したことから分かるように、女性名詞の方が少ないので、女性名詞を覚えるべきで ある。 ※ 尚、-ość で終わる名詞で形容詞から派生したものはいずれも女性名詞となる。ロシ ア語で -ость で終わる名詞が女性名詞であったのと類似している。これらはいずれも抽 象名詞である。 miłość 愛(miły 愛らしい、から)liczebność 数(liczebny 数の、から)nowość 新 鮮さ( nowy 新しい、から)młodość 若さ(młody 若い、から) jakość 質( jaki ~ のような、から) radość 喜び( rad うれしい、から) starość 老齢期(stary 年取っ た、から) szybkosć 速度(szybki 速い、から)złość 怒り( zły 有害な、から) gość 客、は形容詞派生のものではないので、男性名詞である。 kość 骨、は形容詞派生のものではないが、女性名詞である。 3.二つ以上の性を持つ名詞 名詞の中には二つ以上の性を有する名詞がある。その際、意味のみならず語尾が同じ 名詞と、意味は同じであるが、語尾が異なる名詞がある。 1)意味のみならず語尾も同じ名詞 これは語尾によって次の3種類に分けることができる。 80 名詞 ① -a の場合 単数は女性名詞のように変化する。しかし、複数では性に応じた変化をする。そして、 単数においては関係する形容詞、代名詞などは、男性を表す場合には男性形に、女性を 表す場合には女性形になる。複数においては関係する形容詞、代名詞などは、男性を表 す場合には男性人間形を、女性を表す場合には非男性人間形になる。しかし、男性であ っても軽蔑するような時は関係する形容詞、代名詞等は女性形や非男性人間形が使われ る。例えば、gapa まぬけ・馬鹿、pokraka 醜い姿、sierota 孤児、等である。 ten gapa そのまぬけ、の変化は以下のごとくである。 男性を表す場合 単数 ten gapa 主格 tego gapy 生格 temu gapie 与格 tego papę 対格 tym gapą 造格 tym gapie 前置格 gapo 呼格 複数 ci gapy tych gapów tym gapom tych gapów tymi gapami tych gapach gapy 女性を表す場合と軽蔑的な場合 単数 複数 ta gapa te gapy 主格 tej gapy tych gap 生格 tej gapie tym gapom 与格 tę gapę te gapy 対格 tą gapą tymi gapami 造格 tej gapie tych gapach 前置格 gapo gapy 呼格 ② -o の場合 これは中性名詞のように変化する。そうであれば、中性名詞扱いとすれば良いのであ るが、関係する形容詞、代名詞等は表すものが男性か女性かによって異なってくるので、 二つ以上の性を持つ名詞の範疇に入るのである。これらは軽蔑的な語が多く、語の終わ りが -sko あるいは -ło となる。 biedaczysko 無一文者 chamidło 不作法者 chamidło の変化は 単数 複数 主格 chamidło chamidła 生格 chamidła chamideł 与格 chamidłu chamidłom 対格 chamidło chamidła 造格 chamidłem chamidłami 前置格 chamidłe chamidłach 呼格 chamidło chamidła ③ 子音で終わる場合 変化は男性名詞と同じである。複数形の変化はたとえそれが女性を表す場合であって 名詞 81 も男性人間形の変化のそれに従う。従って、関係する形容詞、代名詞等は常に単数は男 性形によって、複数は男性人間形によって表されるのが原則である(例外は下記のエの 後者)。そして、複数の変化においては生格=対格となる(例外は下記のエの後者)。 これらの例は以下のごとくである。 ア、語幹の最後が -fil や -log となる場合 bibliofil 書籍愛好家 biolog 生物学者 イ、語幹の最後が -ewicz や -owicz となる場合 dorobkiewicz 成り上がり者 autostopowicz ヒッチハイカー ウ、語幹の最後が -ec や -owiec となる場合の多くのもの tubylec 土着民 fachowiec 専門家 ※ しかし、-ec や -owiec となっても、男性だけを表し、女性を表す場合には別の単 語があるものがある。例えば、mieszkaniec 住人、は男性の場合であり、女性の場合 は mieszkanka というもので表すのである。 エ、それ以外の子音で終わる場合には2つを区別することができる。すなわち、一つは 上の3つ(ア、イ、ウ)と同じく複数の場合に関係する形容詞、代名詞等が男性人間 形変化に従うものと、他の一つは複数の場合に関係する形容詞、代名詞等が非男性人 間形変化に従うものである。 前者の例には、gość 客、pielgrym 巡礼者、przechodzień 通行人、等がある。 後者の例には、cham 不作法者、pajac あやつり人形、milczek 口数の少ない人、等 がある。 尚、複数形が2つあるものもある。その場合には、関係する形容詞、代名詞等はそ れぞれに従う。例えば、chuligan フーリガン、には chuligani と chuligany の2つ がある。「これらのフーリガンが」、と言う場合、男性の場合は ci chuligani、女性 の場合は te chuligany となる。 2)性が異なり、また、綴り字が少し異なる名詞 ① 意味が同じ名詞 fałd(男性名詞)と fałda(女性名詞)衣服などの折り目・しわ rodzynek(男性名詞)と rodzynka(女性名詞)干しぶどう ② 意味が異なる名詞 これは別の単語であると考えるべきであろう。 portier 門番(男性名詞) portiera ドアのカーテン(女性名詞) sztab 棒(男性名詞) sztaba 竿(女性名詞) 3)尚、綴りが同じであるが、性が異なり、異なる意味を持つ名詞もあるが、これはそ れぞれ別の単語であり、たまたま綴りが同じと考えるべきであろう。例えば、głąb は男 性名詞の場合には、「木の切り株」、の意味であり、女性名詞の場合には、「深さ」、 の意味である。また、boa は男性名詞の場合には、「蛇のボア」、を意味し、中性名詞 の場合には、「羽毛」、を意味する。また、żołądź は男性名詞の場合には、「ドングリ」、 を意味し、女性名詞の場合には「陰茎亀頭」を意味する(時に女性器の陰核亀頭を意味 する場合もある。)。 4.男性名詞から派生した女性名詞 82 名詞 ロシア語において職業や、動物の雄雌等において原則としては職業名は男性名詞であ り、また、動物のおいて雄は男性名詞で、雌は女性名詞である。そして、職業で女性を 表す場合は、男性名詞に接尾辞を付加したり、多少変化させたりして女性名詞を創出し た。また、動物の雌を表す場合も同様に接尾辞を付加したり、多少変化させたりして雌 を表す名詞を創出した。同じことはポーランド語においても見られる。それらは通常は 接尾辞、語尾で区別する。例えば、労働者の場合、男性は pracownik で、女性の労働 者は pracownica である。ジャーナリストの場合は男性は dziennikarz 女性は dziennikarka である。 その他の主なものは以下のごとくである。 1)職業名が男性名詞であり、-k で終わる名詞の場合は、通常は終わりが -ca や -czka となる。 kierownik マネージャー → kierkowniczka 女性マネージャー、pracownik 労働者 → pracownica 女性労働者、urzędnik 公務員 → urzędniczka 女性の公務員、 naczelnik 部局長 → naczelniczka 女性の部局長、prawnik 法律家 → prawniczka 女性の法律家、robotnik 労働者 → robotnica 女性の労働者 ※ しかし、対応の女性名詞を持たない名詞もある。 polityk 政治家、は男性でも女性でも使われるが、男性名詞である。その他の例には、 rybak 漁民、technik 技術者、がある。 2)職業名や社会的地位を表すものが男性名詞であり、-k 以外で終わる名詞の場合は、 語の終わりが -ka や -arka となるのが通常である。 cudzoziemiec 外国人 → cudzoziemka 女性の外国人、student 男子学生 → studentka 女子学生 、piekarz パン製造業者 → piekarka(女性の)パン製造業者 、 lekarz 医師 → lekarka 女医、kucharz 料理人 → kucharka (女性の)料理人、 przyjaciel 友人 → przyjaciółka 女友達、 piosenkarz 歌手 → piosenkarka 女性歌手、 policjant 警官 → policjantka 女性警官、nauczyciel 教師 → nauczycielka 女性教 師、dziennikarz ジャーナリスト → dziennikarka 女性のジャーナリスト、 farmaceuta 薬剤師 → farmaceutka 女性薬剤師、parlamentarzysta 国会議員 → parlamentarzystka 女性国会議員 しかし、対応の女性名詞を持たない名詞もある。 kupiec 商人、は男性でも女性でも使われるが、男性名詞である。その他の例には、 chłop 農民、inżynier 技師、profesor 教授、architekt 建築家 3)動物の場合 ただ、この場合は別の単語になることが多い。一方では、男性名詞で 雄雌を代表する場合もかなりある。 ア、雄雌で区別する場合 królik (雄)家ウサギ → królica(雌)家ウサギ、samiec 雄一般 → samica 雌一 般、byk 雄牛 → krowa 雌牛、ogier 雄馬 → klacz 雌馬、knur 雄豚 → maciora 雌 豚、kogut 雄鶏 → kura 雌鶏 イ、男性名詞で雄雌を代表する場合 słoń 象、tygrys 虎、lampart ヒョウ、wilk 狼、lis きつね、kot 猫、pies 犬 名詞 83 ウ、女性名詞で雌雄を代表する場合 małpa さる、żyrafa きりん、kozica シャモア、zebra しまうま 4)① 民族名の場合は、やはり男性名詞が主体で、それから女性名詞が派生することが 多いが、通常は語尾が -ka となる。男性を表す場合の語尾は様々である。最初の文字 が大文字であることに注意すべきである。 Polak ポーランド人 → Polka、Niemiec ドイツ人 → Niemka、Włoch イタリア人 → Włoszka、 Amerykanin アメリカ人 → Amerykanka、Holender オランダ人 → Holenderka、Grek ギリシア人 → Greczynka、Hiszpan スペイン人 → Hiszpanka、 Francuz フランス人 → Francuzka、Rosjanin → Rosjanka、Hindus インド人 → Hinduska、Chińczyk 中国人 → Chinka、Turek トルコ人 → Turczynka、 Japończyk 日本人 → Japonka、Kanadyjczyk カナダ人 → Kanadyjka ② 市民を表す場合でも女性の場合には語尾が -ka となるのであるが、この場合は最 初の文字が小文字である。 rzymianin ローマ市民 → ryzmianka 、nowojorczyk ニューヨーク市民 → nowojorczanka、paryżanin パリ市民 → paryżanka、berlińczyk ベルリン市民 → berlinianka、londyńczyk ロンドン市民 → londynka 5)家族関係を表す名詞では、女性形は語の最後が-owa/-ewna で終わるものが多いが、 -ka で終わるものもある。 brat 兄 → bratowa 義理の姉、król 王 → królowa 女王、syn 息子 → synowa 息 子の妻、teść 舅 → teściowa 姑、krewny 親族(男)→ krewna 親族(女)、wdowiec 男やもめ → wdowa やもめ、kuzyn 従兄弟 → kuzynka 従姉妹、wnuk 孫息子 → wnuczka 孫娘、szwagier 義理の兄弟 → szwagierka 義理の姉妹 6)男性名詞から派生した女性名詞で語尾が -yni で終わるものもある。もっとも、語 幹が k , g で終わる男性名詞の場合には、-ini で終わる。 gospodarz 家主 → gospodyni (女性の)家主、 dozorca 警備員 → dozorczyni(女 性の)警備員、następca 後継者 → następczyni(女性の)後継者、obrońca 弁護士 → obrończyni (女性の)弁護士、wychowawca 担任教師 → wychowawczyni (女 性の)担任教師、znawca 専門家 → znawczyni (女性の)専門家 członek メンバ ー → członkini(語幹が -k で終わる) 7)女性形を持たない名詞の場合には、pani を付加することにより女性を表す。 profesor 教授 女性の教授を表す場合は pani profesor となる。 8)女性の苗字も男性名詞から派生した女性名詞の一種といえる。ただ、これは今日で は徐々に廃れている。20世紀初頭までは女性の苗字は男性の苗字から派生していたが、 今日では必ずしもそうならず、そのまま夫の苗字や父の苗字と同じことが多い。しかし、 まだ、残存していることもあり、そのような場合は、父や夫の苗字の語尾等を変更する ことによって作られる。そのような場合には、以下のものがある。 ① 男性の苗字で -ski, -cki, -dzki で終わるもの(すなわち夫や父の苗字が形容詞の形態 を取っている場合)はその妻や娘などを表す場合にはそれぞれ -ska, -cka, -dzka となり、 こ れ ら は 形 容 詞 変 化 を す る 。 Napieralski → Napieralska 、 Komorowski → 84 名詞 Komorowsla、Jarocki → Jarocka、Zawadzki → Zawadzka ② 男性の苗字で子音で終わるものや -o で終わるものは、その妻は -owa となり、娘は -ówna となって終わる。 Nowak の妻の苗字は Nowakowa となり、娘の苗字は Nowakówna となる。 Mazur の妻の苗字は Mazurowa となり、娘の苗字は Mazurówna となる。 注意すべきは、 -owa となるものは、形容詞変化をするが、-ówna となるものは女性 名詞変化をするということである。 ③ まれであるが、男性の苗字で -a で終わるものがある。このような苗字の妻の苗字は -ina となり、娘の苗字は -anka となる。例えば、Skora の妻の苗字は Skorina、娘 の苗字は Skoranka となる。そして、いずれも変化は女性名詞変化である。 9)形容詞変化の男性名詞の場合には、女性名詞は形容詞の女性形となる。 oskarżony 被告、に対して女性の被告は oskarżona、osadzyony 囚人、に対して女性 の囚人は osadzyona である。 5.略語の性 略語の性は原則として、最後の略語によって決せられるのが原則である。例えば、 NATO は Organizacja Paktu Pólnocnego Atlantyku 北大西洋条約機構、の略である が、-O であることを反映して中性名詞扱いをされるのが普通である。それ故、NATO postanowiło wysłać okręty wojenne do wybrzeży Somalii. NATOはソマリア沿岸へ 軍艦を派遣することを決定した、となり、postanowiło と過去単数中性形が使われてい るのである。また、ONZ の場合は、Organizacja Narodów Zchedonocznych の略であ るが、-Z であることを反映して男性名詞扱いとなる。また、ACTA w Europie jest martwa. ACTAはヨーロッパでは死んでいる(適用されていない)、となり、ACTA は Anti-Counterfeiting Trade Agreement の略であるが、 -A であることを反映して女 性名詞扱いとなるのである。 もっとも、中心的な名詞を基準にして決せられる場合もある。NATO、ONZ とも中 心的な名詞である Organizacja が女性名詞であるので、 女性名詞扱いとなることもある。 また、略語には上述した文字のみではなく、音節を捉えて略語とする場合もある。例 えば、Polska Farmacja ポーランド製薬企業、の場合、Plofa と略する場合もある。こ のような場合には、これが一種の名詞として扱われ、-a で終わるので女性名詞のように 変化するのである。 6.外来語の性 外来語は不変化であるのが原則であり、その名詞の性はポーランド語で関係する名詞 に準じると一応言える。例えば、pepsi は cola コーラ(女性名詞)と関係するので女 性名詞となる。また、grizzly 熊、はポーランド語の niedźwiedź 熊(男性名詞)と関 係するので、男性名詞となるのである。 もっとも、外来語であっても主格の語尾が典型的なものである場合にはそれに準ずる ことが多いし、これらの名詞は変化するのが通常である。例えば、metro 地下鉄、は語 名詞 85 尾が -o であるので、中性名詞であり、中性名詞で語尾が -o と同じように変化する。ま た、kawiarnia カフェ、は語尾が -a であるので、女性名詞であり、-nia で終わる女性 名詞のように変化する。 7.みなし名詞 ロシア語において本来名詞でないものが文中で名詞のように取り扱われる場合には、 中性名詞扱いとなったが、このことはポーランド語でも当てはまる。 Jego <nie> mi nie się podobało. 彼の「ノー」は私には気に入らなかった。 On nie może wymawiać polskie <sz>. 彼はポーランド語の sz を発音することがで きない。 Ⅲ 名詞の数 1.ロシア語において通常の名詞には単数形と複数形があるのであるが、中には単数形 しかない名詞や、複数形しかない名詞がある。この点、ポーランド語においても同様で ある。 尚、スラブ語の起源である共通スラブ語時代には単数・複数以外に双数というものが あったが、双数はスロヴェニア語とソルブ語に残されているだけであり、ポーランド語 では複数に帰着している。例えば、uszy 耳、oczy 眼、である。 2.単数形しかない名詞 これには集合名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞がある。 1)集合名詞 数えられる物を示す名詞の中に、個々の物として捉えず、集合的あるい は物質的に捉える場合に単数形しかない名詞となる。しかし、個々の物として捉える場 合には複数形となる。(下記4.参照) młodzież 青年 publiczność 観衆 ubranie 衣服 obuwie 履き物 garderoba 持ち衣 装 2)物質名詞 物質名詞のうち、幾らかのものが、単数形しかなく、すべてではないこ とに注意すべきである。この点もロシア語と同様である。 stal 鉄 cukier 砂糖 ryż 米 mięso 肉 woda 水 3)抽象名詞 形容詞や動詞から派生するものの、幾らかのものが単数形しかない。 czytanie 読書 wolność 自由 komunizm 共産主義 uwaga 注意 młodość 若さ zadłużenie 債務 bezpieczeństwo 安全 4)固有名詞 苗字、名前、通称、川の名前、本のタイトル等 これらは例を挙げないが、当然であろう。 5)月の名称、東西南北等 maj 5月 lipiec 7月 zachód 西 południe 南 ※ 尚、ロシア語ではある種の野菜、穀物、苺類等もまた、単数形しかない名詞であった 86 名詞 が、ポーランド語においてはこれらは複数形も見られる。例えば、картофель ジャガ イモ、の場合、ロシア語では単数形しかないが、それを表すポーランド語の kartofel は 複数形も見られるのである。例:młode kartofele 新しいジャガイモ 3.複数形しかない名詞 1)通常は2つかそれ以上の部分からなる物を表す名詞は複数形しかない。 sanie そり okulary 眼鏡 usta 口唇 drzwi ドア(尚、drzwo 木、と区別せよ)nożyczki はさみ schody 階段 skrzypce バイオリン spodnie ズボン rajstopy タイツ organy 器官 kajdany 手錠 plecy 背中 grabie 熊手 manatki 所持品 2)しかし、意味的には明らかに単数であるが、複数形を取る名詞がある。それらには、 nosze ストレッチャー peryferie 郊外 wakacje 休暇 ferie 休暇 wczasy 休暇 nudności 嘔気 3)それ以外に地理的名称とか、グループ間の関係、時の概念についても複数形しかな い名詞がある。 rodzice 両親 urodziny 誕生日 bliźwnięta 双子 państwo 夫婦 wujostwo 叔父と叔母 (ただ、最後の2者については異論があり、集合名詞扱いとして単数とする考えもあ る。) ポーランドの都市の名前には複数形のものがある。例えば、Kielce キエルツェ、 Puławy プワヴィ、等である。 また、国名にも複数形のものがかなりある。例えば、Niemcy ドイツ、Włochy イタリ ア、Węgry ハンガリー、Chiny 中国、Czechy チェコ → Czech、等である。 4)複数形しかない名詞はその変化によって男性名詞類似の、女性名詞類似の、中性名 詞の類似の、の3つに分けられる。複数形においては形容詞、代名詞等において男性人 間形、非男性人間形で変化形が異なるので、これらを区別する必要がある。それによっ て関係する形容詞、代名詞等の変化形が異なるからである。このことは、ロシア語にお いては関係する形容詞や代名詞等で複数形と関連するものは1種類しかないのと異な る所である。複数形において変化の違いは主として複数生格形に表れる。例えば、finanse 財政、は男性名詞類似であり、その複数生格形は finansów となる。一方、spodnie ズボ ンは女性名詞類似であり、その複数生格形は spodni となる。さらに、usta 口、唇、は 中性名詞類似であり、その複数生格形は ust となる。それぞれの例は以下のごとくであ る。 ① 男性名詞類似の複数形しかない名詞(→ の後は複数生格形を示す。) bary 肩 → barów、ciuchy ぼろ服 → ciuchów、cugle 手綱 → cuglów、dzieje 歴史 → dziejów、kleszcze やっとこ(ペンチ) → kleszczy、kuluary 廊下 → kuluarów、organy パ イプオルガン → organów、okulary 眼鏡 → okularów、plecy 肩 → pleców、wczasy 休日 → wczasów、Balkany バルカン諸国 → Balkanów、schody 階段 → schodów ② 女性名詞類似の複数形しかない名詞 drzwi ドア → drzwi、ferie 休暇 → ferii、nożyczki はさみ → nożyczek、skrzypce バイオ リン → skrzypiec、urodziny 誕生日 → urodzin、wakacje 休暇 → wakacji 名詞 87 町の名前で -ce で終わる場合も、このタイプに属する。 Chojnice ポーランドの北にある都市 → Chojnic、Dębice ポーランドの南西にある村の名 前 → Dębic、Kielce ポーランドの南の方にある都市 → Kielc、Katowice → Katowic、 Siedlce → Siedlec 等 その他、都市の名前や山脈、国等でこのタイプのものがある。 Ateny アテネ → Aten、Alpy アルプス山脈 → Alp、Filipiny フィリピン → Filipin、 Niemcy ドイツ → Niemiec、Włochy イタリア → Włoch、Węgry ハンガリー → Węgier、 Chiny 中国 → Chin、Czechy チェコ → Czech、Indie インド → Indii ③ 中性名詞類似の複数形しかない名詞 wrota 門 → wrót、usta 口 → ust、gusła 魔法 → guseł ラテン語から由来する名詞で複数主格形の終わりが -ia となるものもこれに含まれる。 studia 研究 → studiów、genitalia 生殖器 → genitaliów ※ ラテン語由来のものは複数生格語尾が -ów となっているので男性名詞類似と考えら れるかも知れない.。しかし、これらは特殊な変化をする中性名詞であり、複数生格は通 常の男性名詞複数生格と同じ -ów であり、 中性名詞類似の複数形しかない名詞と考えて 良いであろう(Ⅴ名詞変化概要3.中性名詞2)特殊形を参照。) ④ 形容詞変化の複数形しかない名詞もある。例えば、dane データ、であり、その複数 生格は danych である。 ※ 国名の中には複数形のものがある。 多くの国名は単数の女性名詞で主格の語尾が -a で終わる。例えば、Rosja ロシア、 Ukraina ウクライナ、は単数の女性名詞である。また、 少数ではあるが、-e, -i, -o, -u で 終わる国名もある。それらは中性名詞である。例えば、Chile チリ、Kosowo コソボ、 Gwinea Bissau ギニアビサウ、Peru ペルー、Haiti ハイチ、等である(それ以外は 男性名詞である。例えば、Wietnam ベトナム、である。)。 複数の国名は以下のものがあるが、上述したものと同じく複数生格を → で示すと、 例えば、Niemcy ドイツ → Niemiec、Włochy イタリア → Włoch、Węgry ハンガリー → Węgier、Chiny 中国 → China、Czechy チェコ → Czech、等は女性名詞類似の複 数名詞である。また、Stany Zjednoczone アメリカ合衆国、は男性名詞類似の複数名詞 である。その生格形は Stanów Zjednoczonych、である。 従って、 Niemcy chcą kontroli na granicach. ドイツは国境線をコントロールしたい。 、 Rosja chce kontoroli na granicach. ロシアは国境線をコントロールしたい。 4.集合名詞、物質名詞、抽象名詞等の複数 1)集合名詞は、人または物のある総体をひとつのまとまったものとして示すのである から、通常は単数である。しかし、ある具体的集団を意味し、その集団が2つ以上あれ ば複数を用いる。 pokolenie 世代、は集合名詞であるが、od pokoleń 数代にわたって、と複数形になる 88 名詞 と集団が2つ以上となるのである。 tłum 群集、は集合名詞であるが、tłumy ludzi 人々の群(群衆)と複数形になる。 2)物質名詞としてであれば複数形はないが、具体的な物を表す意味に転じると、複数 形が用いられる場合がある。 woda 水、は物質名詞であり、複数形はないが、wody と複数になると、川や湖等に ある具体的な水を表す。そして、wody stojące 湖沼、となる。 papier 紙、は物質名詞であり、物質名詞としては複数形はないが、具体的な一枚一枚 の紙を示す場合には、数枚の紙ということで複数はあり得る。さらに、papiery と複数 で「証明書」を表すこともある。 błoto 泥、は物質名詞であり、複数形はないが、błota と複数になると、「湿地帯」を 意味する。 3)抽象名詞の場合、単数は抽象的な概念を表すが、複数は具体的な特定の意味で用い られるものがある。 zajęcie(単数)占拠、zajęcia(複数)授業 wybór(単数)選択、wybory(複数)選挙 dobro(単数)善・善行、dobra(複数)財産・不動産 siła(単数)力、siły(複数)権力・軍隊 władza(単数)権力 władzy(複数)官憲・当局 5.単数、複数の一般的用法 一般的には1個(ひとり)の物(者)には単数、2個(2人)以上の物(者)を表す 場合には複数を用いる。しかし、数えられれない物(こと)も存在するし、上述したよ うに、名詞すべてが両方の形をもつわけではないし、両方の形があるが、意味と用法が 異なる名詞等も見られる。そこで、一応以下のように言える。 1)一般的複数 特定の1個を指すのではなく、ものごと一般を言う時には、複数が用 いられることが多い。 Chłopiecy lubią grać w piłkę. 男の子はサッカーをするのが好きだ。 Nauczyciel nareperuje błądy w pracach domowych uczniów. 先生は生徒の宿題の 誤りを直す。 2)代表単数 概念を一般的、総括的に示したり、物の本質を言う場合には、通常単数 を用いる。 Pies ma wyczulony węch. 犬は鋭い嗅覚を持っている。 3)共通単数 複数の物(者)に共通する同じ物を示す時は、通常単数を用いる。 Wszystkie pracowniki ubierali się w uniformie. すべての職員は制服を着ていた。 4)通常は複数形が用いられるもの 単数形も認められるし、単数形と複数形で意味の違いはないが、通常は複数形が用 いられる名詞がある。例えば、włos 毛髪、は毛1本を表すときは単数であるが、通 常は włosy と複数が用いられる。 また、 łza 涙、 は涙1滴を表すときは単数であるが、 通常は łzy と複数が用いられる。 名詞 89 Ⅳ 名詞の格 1.名詞の格とは ロシア語において、名詞の格は、主格、生格、与格、対格、造格、前置格の6つがあ った。ポーランド語においてはそれらの6つは同じであるが、さらに呼格というのが加 わる。ただ、呼格は使用範囲が限られていて、ロシア語では主格で表されるものである。 概略的にいえば、呼びかけに用いるのであるが、愛情の念や尊敬の念をもった相手に対 して使用するのが通常である。しかし、口語では相手を侮辱する場合に使用することが ある。いずれにしろ呼格は文中の他の要素とは直接的な関連性を有しない。呼格につい ての詳細は後述するが、ここではポーランド語の格は7つあることを把握されたい。 それぞれの格については、疑問代名詞との関係で概略的に以下のように理解される。 呼格を除いてほぼロシア語に準じて理解すれば良いであろう。 1)主格 日本語の「誰が、何が」に対するものである。ポーランド語では kto? co? に 対するものである。 2)生格 日本語の「誰の、何の」に対するものである。ポーランド語では kogo? czego? に対するものである。 3)与格 日本語の「誰に、何に」に対するものである。ポーランド語では komu? czemu? に対するものである。 4)対格 日本語の「誰を、何を」に対するものである。ポーランド語では kogo? co? に 対するものである。 5)造格 日本語の「誰によって、何によって」に対するものである。ポーランド語で は kim? czym? に対するものである。 6)前置格 日本語にはそれに相当するものはない。ポーランド語では前置詞+kim? 前 置詞+czym? に対するものである。 7)呼格 疑問代名詞と関係するものはない。 2.変化しない名詞 ポーランド語の名詞はロシア語と同じく格によって変化するのであるが、中には変化 しない名詞もある。それは外来語に多いが、中性名詞になることが多い。 1)中性名詞の場合 ① 語尾が -o となるもの stereo ステレオ euro ユーロ wideo ビデオ kakao ココア ② 語尾が -i となるもの kombi ステーションワゴン harakiri 切腹 spaghetti スパゲッティ ③ 語尾が -u となるもの menu メニュー ④ 語尾が -e となるもの 90 名詞 Delaware デラウェア州(アメリカ合衆国の州の一つ) Zatoka Delaware デラウェア湾 ⑤ その他 dzisiaj 今日 dziś 今日 2)女性名詞の場合 ① 外来語の場合 pepsi ペプシコーラ ② 固有名詞の場合、女性に関するものは語尾が -a 以外で終わる場合には、不変化であ る。 例えば、Clinton の場合、 Rozmawiam z Clinton. 私はクリントンさんと話し合う(この場合のクリントンは女 性である)。 Rozmawiam z Clingonem. 私はクリントン氏と話し合う(この場合のクリントンは 男性である。)。 ※ 尚、肩書きや職業名で女性に関する場合、男性名詞と同じ名詞を使う場合には、 その名詞は女性を表す時には不変化となる。例えば、doktor 博士 dziekan 学部長 psycholog 心理学者 politylog 政治学者 Rozmawiam z doktor Nowak. 私はノヴァック博士(女性)と話し合う。 Rozmawiam z doktorem Nowakiem. 私はノヴァック博士(男性)と話し合う。 3)男性名詞の場合 特になし 4)頭字語の場合 頭字語とは略語の一種で複数の単語から構成される語の頭文字を取 って繋げた語を言う。これにはイニシャリズムとアクロニウムがある。前者は一文字ず つアルファベット名で読むものであり、後者は普通の単語のように読まれるものである (例えば、NATO)。 ① 母音で終わるものは不変化である。 NATO 北大西洋条約機構、PKO 国際連合平和維持軍 ② 子音で終わるものも不変化のものが多い。 ONZ (Organizacja Narodów Zjednoczonych)国際連合、 ziman wojna w ONZ 国際連合における冷戦 5)以前は不変化であったが現在は変化する名詞 kino 映画、metro 地下鉄 radio ラジオ Moroko モロッコ 従って、Histria Moroka モロッコの歴史、となる。 名詞 91 Ⅴ 名詞変化総論 1.総説 ポーランド語の名詞にはロシア語と同じく、男性名詞、中性名詞、女性名詞がある。 ロシア語においてはその変化形の特徴において男性名詞において活動体と非活動体を 区別したが、ポーランド語においてはもう少し細かく、男性名詞を男性人間形名詞、男 性有生名詞、男性無生名詞に分けて考えるべきである。それ故、名詞変化の特徴に言及 する場合、5つを区別して述べる。この5つを区別する理由は重要である。特に、当該 名詞を修飾する形容詞の変化形や動詞の過去形の主語になる場合の変化形において重 要である。 ロシア語においてはその変化の種類は岩波辞典によれば21種類を区別することが できるが、ポーランド語においてはもっと多い。ポーランド語においては130種類程 度を数えることができる。従って、それぞれを暗記することは不可能に近い。そこで、 ある程度概略的に分類することが必要となる。それには男性、中性、女性それぞれの名 詞の基本形と派生形に分けて概観するべきである。 尚、ポーランド語において名詞の格は、主格、生格、与格、対格、造格、前置格、呼 格の7つがある。ロシア語においては呼格がなく、それ以外の6つの格があった。 名詞の変化を考える場合、名詞の主たる形は辞書に掲載されている単数主格であるの で、それによって分けるのが合理的である。 1)男性名詞 基本形:単数主格が子音で終わる名詞 特殊形:単数主格が母音で終わる名詞 2)中性名詞 基本形:単数主格が母音で終わる名詞 特殊形:単数では全く変化しない名詞 3)女性名詞 基本形:単数主格が母音で終わる名詞 特殊形:単数主格が子音で終わる名詞 それぞれについて音声学的に語幹の終わりが硬子音か(広義の)軟子音かによって区 別することができる(硬子音、軟子音の区別については発音の項参照)。そして、(広 義の)軟子音に関してはさらに硬化子音と狭義の軟子音に分けることができる。そして、 軟口蓋音たる k, g, ch は多少異なる。ロシア語において к. г 語幹の名詞が、混合変化で あったことと多少関係があろう。k, g, ch 自体は硬子音である。しかし、他の硬子音と は異なった変化をする。すなわち、女性名詞では硬子音と同じように変化するのである が、男性名詞、中性名詞では軟子音の変化に近いのである。 以下、各名詞について概要を述べる。尚、各変化形のパラダイムにおいて、'-i や '-e や '-y はそれぞれの語尾の前の語幹子音が子音交替 (主として軟音化) を起こすことを示す。 92 名詞 また、○はゼロ語尾を表す。 2.男性名詞 1)基本形 男性名詞は、男性人間名詞、男性有生名詞、男性無生名詞に区別するが、それぞれの 違いは生格、対格に現れる。すなわち、男性人間名詞は単数、複数とも生格と対格は同 じである。しかし、男性有生名詞は単数は生格と対格が同じであるが、複数になると対 格は主格と同じである。そして、男性無生名詞では単数、複数とも対格は主格と同じな のである。これは単数においてはロシア語の活動体名詞に相当するのが、男性人間名詞 と男性有生名詞であるので、それと同じく生格と対格が同じであり、男性無生名詞の場 合は、ロシア語の不活動体に相当するので、対格と主格が同じになる。しかし、複数に おいてはポーランド語の特殊性たる男性人間名詞とそれ以外の非男性人間名詞を区別 することが、それに関係する形容詞、代名詞、動詞の過去形との関係で重要であるので、 男性人間名詞は生格と対格が同じとなるが、男性有生名詞と男性無生名詞は主格と対格 が同じになるのである。 ① 語幹が硬子音で終わる場合(但し、k, g 等の軟口蓋音は除く)。 ア、男性人間名詞 この場合は、単数、複数とも生格と対格が同じであり、複数主格は通常は語尾が -i で ある。しかし、特殊な場合として複数主格が -owie となる場合と、-a となる場合があ る。 語幹が硬子音(但し、k,g 等の軟口蓋音の場合は除く)で終わる場合の変化語尾を以 下に示す。 単数 複数 主格 -◯ ‘-i 生格 -a -ów 与格 -owi -om 対格 -a -ów 造格 -em -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 ‘-e ‘-i 上のうち、 単数前置格・呼格の '-e の ' はその前の子音が硬口蓋音化することを表し、 複数主格・呼格の '-i の ' はその前の子音が硬口蓋音化することを表す。 例:kerner ウエイター chłop 農民 student 学生 imigrant 移民 sąsiad 隣人 複数主格の語尾が -owie となるのは、syn 息子、であり、synowie となる。また、-a となるのは、brat 兄弟、であり、その複数主格は bracia となる。 名詞 93 イ、男性有生名詞 語幹が硬子音(但し、k,g 等の軟口蓋音の場合は除く)で終わる場 合の変化語尾を以下に示す。 この場合は、単数は生格と対格が同じであり、複数では主格と対格が同じである。 単数 複数 主格 -◯ -y/ -i 生格 -a -ów 与格 -owi -om 対格 -a -y/ -i 造格 -em -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 ‘-e -y/ -i 例:kozioł 山羊 lew ライオン pies 犬 kot 猫 ウ、男性無生名詞 男性名詞で最も基本的な変化はこの男性無生名詞であり、しかも、語幹が硬子音(但 し、k, g 等の軟口蓋音は除く)で終わる場合である。この場合は、単数、複数とも主 格と対格が同じである。 その変化語尾を以下に示す。 単数 複数 主格 -◯ -y/ -i 生格 -a/-u -ów 与格 -owi -om 対格 -◯ -y/ -i 造格 -em -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 ‘-e -y/ -i 例:film フィルム ocean 大洋 mur 壁 kocioł ポット sklep 店 sposób 方法 zeszyt ノ ート obiad 夕食 krzew 低木 nos 鼻 obraz 絵 この変化で違いが生じ、難しいのは単数生格である。単数生格については 語尾が -a になるか、-u になるかであるが、-u となるのが多い。上の例で言えば、filmu, oceanu, muru, sklepu, sposobu, zeszytu, obiadu, krzewu, obrazu となる。しかし、kotła(ポッ トの単数生格)、nosa と -a となる場合もある。 また、いずれでも良い場合もある。 例えば、balon バルーン、の場合は、balonu でも balona でも良い。-u となるか -a となるかはある程度規則性があり、詳細はⅥ 名詞変化各論1.単数生格の形の項を参照 されたい。 94 名詞 ② 語幹が k, g, ch 等、軟口蓋音で終わる場合 ア、男性人間名詞 単数 複数 主格 -◯ '-y/ -i 生格 -a -ów 与格 -owi -om 対格 -a -ów 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u/ '-e ‘-y/-i 例:czytelnik 読者 biolog 生物学者 Włoch イタリア人(男性)Norweg ノルウエー人 (男性) 複数主格、呼格の語尾は '-y であるので、第一子音交替が起きる。また、綴り字の規 則が関係する。その結果、語尾は、k, g 語幹では -y に ch 語幹では -i となる。例えば、 czytelnik は czytelnicy、biolog は biolodzy 、Włoch は Włosi になる。 具体的には、czytelnik の場合、czytelnik-i となり、語尾の i の前の子音 k は第一子 音交替により c に子音交替があり、同時に i は y/ i に癒合する。そして、c の後は y となるので、czytelnicy となるのである。biolog は biolog-i となり、語尾の i の前の 子音 g は dz に子音交替があり、同時に i は y/i に癒合する。dz の後は y が来るの で、biolodzy となるのである。Włoch の場合、Włoch-i となり、語尾 i の前の子音 ch は ś に子音交替があり、同時に i は y/i に癒合する。そして、ś の後は i が来るが、 śi とは書けないので、sii となるが、i が続く場合には最初の i は消去されるので、Włosi となるのである。 イ、男性有生名詞 単数 複数 主格 -◯ -y/-i 生格 -a -ów 与格 -owi -om 対格 -a -y/-i 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u -y/-i 例:ptak 鳥 karaluch ゴキブリ この場合、複数主格、対格、呼格の語尾が -i となる場合は k, g 語幹であり、-y とな る場合は -ch 語幹である。この男性有生名詞の場合、男性人間名詞と異なるのは、複数 主格、複数呼格の語尾が第一子音交替を起こす -y/-i ではないことである。従って、こ の場合は子音交替を起こすことはなく、単に語尾の -i, -y が付加されるに過ぎない。 ptak の複数主格は ptaki、karaluch の複数主格は karaluchy となる。 名詞 95 ウ、男性無生名詞 単数 複数 主格 -◯ -y/-i 生格 -u -ów 与格 -owi -om 対格 -◯ -y/-i 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u -y/-i 例:bank 銀行 rynek 市場 pociąg 列車 róg 角 dach 屋根 mech 苔 orzech クルミ 複数主格、対格、呼格の語尾が -y となる場合と、-i となる場合がある。語幹が k, g の 場合は、-i となり、語幹が ch の場合は -y となる。この場合も、男性有生名詞と同じ く子音交替はない。従って、複数主格は bank → banki 、pociąg → posiągi であり、 dach の複数主格は dachy である。 ③ 語幹が(広義の)軟子音で終わる場合 ア、男性人間名詞 単数 複数 主格 -◯ -e 生格 -a -y/-i,-ów 与格 -owi -om 対格 -a -y/-i,-ów 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u -e 例:listonosz 郵便配達員 lekarz 医師 ojciec 父 związkowiec 労働組合員 この場合は、複数主格語尾 -e となる点が特徴である。しかも、その -e は例えば、硬 子音で終わる男性人間名詞の前置格の '-e と異なり、その前の子音に子音交替を起こさ ない。 また、 複数生格において、 語尾が -y/ -i か -ów になるかは少し難しい問題があり、 名詞複数生格の項を参照されたい。 イ、男性有生名詞 単数 複数 主格 -◯ -e 生格 -a -y/-i, -ów 与格 -owi -om 対格 -a -e 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u -e 例:koń 馬 karp 鯉 gołąb 鳩 paw クジャク ryś オオヤマネコ wąż 蛇 96 名詞 この場合は、単数生格語尾は対格と同じく -a となるが、複数主格は複数対格と同じ であり、その語尾は -e となる。複数生格はアの男性人間名詞と同じく -y/ -i の場合と、 -ów の場合がある。 注意すべきは上の例で行けば、karp, gołąb, paw の場合である。単数主格をみるとい ずれも -p, -b, -w で終わっており、語幹が硬子音で終わる場合とも考えられるからであ る。しかし、これらの場合は、単数主格において子音で終わっているのでこのようにな ってしまっているのである。従って、正確には語幹の最後はそれぞれ -pj, -bj, -wj であり、 軟子音であると言うべきである。 ウ、男性無生名詞 単数 複数 主格 -◯ -e 生格 -a/-u -y/-i, -ów 与格 -owi -om 対格 -◯ -e 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -u -e 例:cel 目的 hotel ホテル kraj 国 korytarz 廊下 grosz グロス=ポーランドの通貨単位 nóż ナイフ koniec 終わり rydz キノコ deszcz 雨 gwóźdź 爪 łokieć 肘 このタイプは単数は主格と対格が同じであるが、複数はイの男性有生名詞と同じであ る。 単数生格は -a か -u となる。いずれになるかは一概に言えないが、原則としては -u である。しかし、木や果物や野菜の名前等は -a となり、道具なども -a となる。従っ て、上の例で言えば、 celu, hotelu, kuraju, deszczu となるが、korytarza, grosza, nóża, końca, rydza, gwoździa となる。 複数生格は、-y/-i となるか -ów となる。-ów となるのは今までのと同じであるが、 -y/-i はやや特殊である。いずれになるかは難しい問題がある。 まず、語幹が c や dz で終わるものは、その複数生格は -ów となる。上の例で言え ば、koniec → konieców、rydz → rydzów である。 語幹が j で終わるものも、-ów となる。だから、kraj → krajów となる。しかし、l で 終わるものは、-i となる。hotel → hoteli である。ただ、例外的に cel だけは、celów と なる。c, dz 以外の語幹が硬化子音で終わる場合には、様々であり、-ów となる場合と -y となる場合が見られる。例えば、deszcz → deszczów であるが、nóż → nóży、grosz → groszy となる。もっとも、korytarz は korytarzy でも korytarzów でも良い。語幹が (狭義の)軟子音で終わる場合( j を除く)は、通常は -i となる。例えば、gwóźdź → gwoździ である。 名詞 97 2)特殊形(単数主格語尾が母音となる男性名詞)この場合は、男性人間名詞しか見ら れず、男性有生名詞、男性無生名詞には見られない。 この場合は、単数主格語尾が -a となる場合が多いが、まれに -o となる場合がある。 単数 複数 主格 -a ‘-y/-i 生格 -y/-i -ów 与格 ‘-e -om 対格 -ę -ów 造格 -ą -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 -o ‘-y/-i この変化で特徴的なことは単数に関しては女性名詞と同じように変化すると言うこ とであり、複数に関しては男性人間名詞と同じように変化すると言うことである。そし て、語幹が硬子音で終わるか軟子音(広義)で終わるかによって2通りの変化のパター ンがある。まず、硬子音の場合は単数与格と前置格が -e となり、軟子音の場合には単 数生格、与格、前置格が -y か -i となる。複数形は男性人間名詞と同じであることから、 硬子音の場合は原則として複数主格は -y/ -i であるが、特別な形として -owie となるも のがある。一方、軟子音の場合は複数主格は -e となるのが原則である。この辺りの詳 細は、Ⅵ 名詞変化各論、を参照されたい。 例:kierowca 運転手 mężczyzna 男 artysta 芸術家 kolega 仲間 dowódca 司令官 一方、軟子音で終わる例は、woźnica 御者 cieśla 大工 3.中性名詞 1)基本形 ア、硬子音(k g ch を除く)+ -o で終わる場合 単数 複数 主格 -o -a 生格 -a -◯ 与格 -u -om 対格 -o -a 造格 -em -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 -o -a 例:czasopismo 定期刊行物 wino ワイン biuro オフィス koło 車輪 błoto 泥 stado 群 れ 98 名詞 イ、k, g, ch + -o で終わる場合 単数 複数 主格 -o -a 生格 -a -◯ 与格 -u -om 対格 -o -a 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -o -a 上のアとの違いは単数前置格である。すなわち、この場合は -u となるのに対して, アの場合には '-e となるのである。 例:lotnisko 空港 tango タンゴ echo 音響 k, g 語幹と ch 語幹で注意すべきは造格である。すなわち、前者の場合には lotniskiem, tangiem と k, g が軟音化するのに対して、後者の場合には echem と軟音 化しないのである。この場合、造格の語尾 -em の e は e4 であるので、その前の軟口 蓋音は軟音化するのであるが、例外的に ch だけは軟音化しないのである。 ウ、軟子音+ -e で終わる場合 単数 複数 主格 -e -a 生格 -a -◯ 与格 -u -om 対格 -e -a 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -e -a 例:mieszkanie アパート pole 畑 morze 海 miejsce 場所 przyjęcie レセプション zdrowie 健康 注:単数前置格はイ( k, g 語幹)と同じであるが、ア(硬子音語幹)と異なる所であ る。ただ、k, g 語幹とは単数造格で帰趨が異なるのは言うまでもない。 尚、例外的に接頭辞が付いた軟子音+ -e で終わる中性名詞の場合には複数生格の語 尾が -y/ -i になることに注意すべきである。例えば、pole 畑(接頭辞なし)、の複数生 格は pól であるが、przedpole 前景(接頭辞あり)、の複数生格は przedpoli となる。 同様に wybrzeże 海岸(接頭辞あり)、の複数生格は wybrzeży、podwórze 中庭(接 頭辞あり)、の複数生格は podwórzy である。しかし、przyjęcie レセプション(接頭 辞あり)、は przyjęć と -○(ゼロ語尾)となる。 エ、単数主格が -ę で終わる場合 このタイプは特殊であり、単数主格ではなかった音節が他の格で出現するものである。 そして、単数では語幹の終わりが軟音である音節が挿入され、複数では語幹の終わりが 硬音である音節が挿入される。そして、挿入される音節の違いによって2つに分けられ 名詞 99 る。それは -eń-(単数) / -on-(複数) と -ęć(単数)/ -ęt(複数)である。特に服す 変化が特徴的なので、前者は語幹の最後が on タイプの名詞、後者は語幹の最後が ęt タ イプの名詞とも言える。 単数 複数 主格 -ę -a 生格 -a -◯ 与格 -u -om 対格 -ę -a 造格 -em -ami 前置格 -u -ach 呼格 -ę -a on タイプの例:imię 名前 ęt タイプの例:zwierzę 動物 単数 複数 単数 複数 主格 imię imiona 主格 zwierzę zwierzęta 生格 imienia imion 生格 zwierzęcia zwierząt 与格 imieniu imionom 与格 zwierzęciu zwierzętom 対格 imię imiona 対格 zwierzę zwierzęta 造格 imieniem imionami 造格 zwierzęciem zwierzętami 前置格 imieniu imionach 前置格 zwierzęciu zwierzętach 呼格 imię imiona 呼格 zwierzę zwierzęta ・imię と同じ変化をする例:znamię 兆候・品質証明 ramię 肩 plemię 部族 brzemię 重荷 siemię 種 strzemię 鐙(馬具) ・zwierzę と同じ変化をする例:cielę 子牛 dziecię 子供(普通は dziecko だが、文語 的表現)jagnię 子羊 kocię 子猫 prosię 子供 źrebię 子馬 ※ 後者の場合は動物の子を表すことが多いが、これは男性名詞の接尾辞の一つである -ak (縮小辞の一つである) が付いた名詞に代わるものである。 例えば、 cielę は cielak、 dziecię は dzieciak、kocię は kociak、źrebię は źrebak 等である。 2)特殊形 この場合は、単数では全く変化せず、複数のみが変化する。そして、特徴 的なのは複数生格の語尾が -ów となるように男性名詞を借用していることである。こ のタイプには -um タイプと -io タイプがある。それぞれの変化語尾を以下に示す。 -um タイプ -io タイプ 単数 複数 単数 複数 主格 -um -a -io -a 生格 -um -ów -io -ów 与格 -um -om -io -om 対格 -um -a -io -a 造格 -um -ami -io -ami 前置格 -um -ach -io -ach 呼格 -um -a -io -a 100 名詞 例:-um タイプ liceum 高校 muzeum 博物館 centrum 中心 -io タイプ studio スタジオ radio ラジオ patio 中庭 folio 二つ折り本 3)複数形のみが不規則となるタイプの名詞 これには oko 眼、と ucho 耳、がある。 oko ucho 単数 複数 単数 複数 主格 oko oczy ucho uszy 生格 oka oczu ucha uszu 与格 oku oczom uchu uszom 対格 oko oczy ucho uszy 造格 okiem oczami uchem uszami 前置格 oku oczach uchu uszach 呼格 oko oczy ucho uszy 4.女性名詞 まず、把握すべきは単数与格と単数前置格が全く同じと言うことである。 これには例外がない。 1)単数主格語尾が -a となる女性名詞 ① 単数主格が 硬子音+ -a で終わるタイプ 単数 複数 主格 -a -y/-i 生格 -y/-i -◯ 与格 ‘-e -om 対格 -ę -y/-i 造格 -ą -ami 前置格 ‘-e -ach 呼格 -o -y/-i 例:zima 冬 żona 妻 góra 山 szkoła 学校 lampa ランプ osoba 人間 gazeta 新聞 broda あごひげ apteka 薬局 noga 足 szafa 戸棚 głowa 頭 kiełbasa ソーセージ koza 山羊 cecha 特色 語幹の終わりが k, g となる場合とそれ以外で違いが生じるのは、単数生格、複数主 格、複数対格、複数呼格である。-ka、-ga の場合には、語尾が -i となり、それ以外は -y となる。注意すべきは単数与格と単数前置格の場合、第一子音交替があると言うことで ある。 すなわち、 zima の単数与格と単数前置格は zimie となる。 その他、 góra → gorze 、 szkoła → szkole、lampa → lampie、osoba → osobie、gazeta → gazecie、broda → brodzie、apteka → aptece、noga → nodze、cecha → cesze となる。 名詞 101 ② 単数主格が(広義の)軟子音 + a で終わるタイプ ア、母音+(広義の)軟子音+ -a で終わるタイプ 単数 複数 主格 -a -e 生格 -y/-i -◯ 与格 -y/-i -om 対格 -ę -e 造格 -ą -ami 前置格 -y/-i -ach 呼格 -o -e 例:ziemia 地球 świnia 豚 koszula シャツ zorza 夜明け susza 干ばつ plaża 浜 ostoja 土塁 ciocia 叔母 gosposia メイド tęcza 虹 szyja 頸 このタイプの女性名詞と①の単数主格が硬子音 + a で終わるタイプの名詞との違い は単数与格及び単数前置格に表れる。すなわち、このタイプの場合は語尾が単数生格と 同じく -y/ -i に終わるのである。また、複数主格と複数対格も異なる。すなわち、硬子 音 + a の場合は -y/ -i となるが、この場合は -e となるのである。さらに、複数生格で 注意すべき点は口唇音の軟音で終わる場合である(-pi-, -bi-, -mi-)。この場合、変化語 尾がないところでは硬音化することである。従って、ziemia 地球、の複数生格は ziem となる。 ※ これに対し、świnia 豚、の複数生格は świń となる。 イ、子音+(広義の)軟子音+ -a で終わる場合 単数 複数 主格 -a -e 生格 -y/-i -y/-i 与格 -y/-i -om 対格 -ę -e 造格 -ą -ami 前置格 -y/-i -ach 呼格 -o -e 例:kuchnia 台所 kolacja 夕食 owca 羊 rzeźnia 屠殺場 stacja 駅 pomerańcza オレ ンジ legitymacja カード kopia コピー mumia ミイラ このタイプの女性名詞は外来語に多い。そして、アとイの違いは、複数生格に現れる。 すなわち、アでは変化語尾がなかったが、この場合は -i となるのである。尚、上の例 で注意すべきは kopia コピー、と mumia ミイラ、である。一見すると、母音+軟子 音(すなわちア)に様に見えるが、実際は kopia の i 及び mumia の i ともに j であ るのでこのタイプに属するのである。なぜなら、j の前の子音は s, z, c 以外は書かれな く、その場合には j → i となるからである(つまり本来は kopja* や mumja* である が、p や m の後には j は書かれず、i が代用されるのである。)。 上のア、イにはそれぞれ例外が存在する。すなわち、アの場合で複数生格が -y/-i で 102 名詞 終わる場合と、イの場合で複数生格に変化語尾がない場合があるのである。例えば、 obroża 犬の首輪、は前者であり、tarsza 防壁、は後者である。 ウ、単数主格が母音+a で終わるタイプの女性名詞 この場合は上のアのタイプの女性 名詞の内、 軟子音が j であるタイプの女性名と類似した変化をする (例えば、 szyja 頸) 。 例えば、idea の変化は以下のごとくである。もっとも、複数生格は異なっている。すな わち、この場合は、-i と語尾が付くが、アのタイプの場合は変化語尾がないのである ( szyja の複数生格は szyj )。 単数 複数 主格 idea idee 生格 idei idei 与格 idei ideom 対格 ideę idee 造格 ideą ideami 前置格 idei ideach 呼格 ideo idee エ、さらに語幹の最後が -ns + a に終わるタイプの女性名詞も特殊である。この場合は 硬子音 + a で終わる場合なので①に該当するかのようであるが、少し異なり複数変化は そうではなく②アのタイプと同じになることに注意すべきである。従って、例えば、 szansa チャンス、は以下のように変化する。 単数 複数 主格 szansa szanse 生格 szansy szans 与格 szansie szansom 対格 szansę szanse 造格 szansą szansami 前置格 szansie szansach 呼格 szanso szanse 2)単数主格語尾が -a 以外の母音となる女性名詞 この場合は、単数では与格、前置 格のみならず、主格及び生格及び呼格も同じになる。 単数主格が -i で終わるタイプの女性名詞 これは以下のように変化する。 単数 複数 主格 -i -ie 生格 -i ◯ 与格 -i -iom 対格 -ię -ie 造格 -ią -iami 前置格 -i -iach 呼格 -i -ie 103 名詞 例:sprzedawczyni 女店員 gospodyni 女主人 pani (女性に向かって)貴女、等があ るが、pani は特殊で、単数対格が panią と特殊な形になる。 3)単数主格が子音で終わる女性名詞 この場合は、単数では、与格、前置格のみなら ず、生格及び呼格も同じになる。 このタイプは大きく分けて2種類を区別できる。複数主格が -e で終わるか、-y/ -i で 終わるかである。 主格 生格 与格 対格 造格 前置格 呼格 単数 -◯ -y/-i -y/-i -◯ -ą -y/-i -y/-i 複数 -e -y/-i -om -e -ami -ach -e 他の複数形 -y/-i -y/-i -om -y/-i -ami -ach -y/-i 複数生格が -e で終わる例:podróż 旅行 pomoc 助け・援助 複数主格が -y/-i で終わる例:brew 眉 krew 血 marchew にんじん wiadomość ニュ ース mysz マウス 注意すべきは brew, krew である。これらの単数主格は -w という硬子音で終わるよ うに見えるが、単数主格以外の格では軟子音のように変化する。従って、単数主格は実 際はそれぞれ brewj, krewj である。 nić 糸、kość 骨、もこの例であるが、造格が通常と異なることに注意すべきである。 すなわち、それらの造格はそれぞれ nićmi 、kośćmi となる。また、尚、pamięć 追悼・ 記憶、や chęć 気持ち・やる気、は単数形しかない名詞であるので、上のタイプを区別 する意味はない。 104 名詞 Ⅵ 文法名詞変化各論 名詞の格変化は前述したように単数で7つの格変化、複数でも7つの格変化がある。 従って、文に表れる場合に合計14の形があることになる。そのうち、単数主格はもっ とも基本となる形であり、辞書にも掲載されている形である。従って、各格変化を述べ る場合にはこれを基準に述べるべきであるので、以下では単数主格以外の残りの13の 格についてそれぞれの特性を述べる。ただ、幸いなことに複数主格と複数呼格は常に同 一の形であるので複数呼格を特別に取り上げる必要はない。そこで、単数主格、複数呼 格以外の12の格の変化形の特性について述べることとする。 尚、形容詞変化名詞については、主にⅦ 形容詞変化名詞の項や第3章 形容詞の項で 扱うが、特徴的な変化については必要に応じ、本項でも述べることにする。 1.単数生格の形 単数生格の形については男性名詞、女性名詞、中性名詞で異なっている。 1)男性名詞 ① 基本形 まず、男性名詞についてはロシア語は子音で終わる場合は語尾が -а となったが、ポ ーランド語の場合、-a の場合と -u の場合がある。この場合は硬子音のみならず、硬化 子音、軟子音の場合もそうである。ロシア語の場合、語尾が й の場合、ь の場合は、 単数生格の語尾は я となったが、それとはやや異なるのである。それにポーランド語の 場合で特徴的なのは語幹の最後の子音の前が ó や ą の場合にそれぞれ o や ę のよう に子音交替が起きると言うことである(詳細は第1部第2章参照)。 -a となるか -u と なるかはある程度規則性がある。 ア.まず、男性人間名詞と有生名詞の場合は、原則として -a となる。 syn 息子 → syna、kot 猫 → kota、gość 客 → gościa、koń 馬 → konia、 lekarz 医師 → lekarza、dorsz 鱈 → dorsza イ.しかし、例外的に有生名詞であっても、単数生格が -u となる場合もある。 wół 雄牛 → wołu、 ウ. 難しいのは無生名詞の場合である。 -a となる場合もあるが、-u となる場合もあ る。原則的には -u となる場合が多いが、例外がかなり見られる。数の少ない -a の方 を把握する方が効率的なので -a を付加する場合を挙げる。 ・果物や野菜類- banan バナナ → banana、kalafior カリフラワー → kalafiora、 gryb キノコ → gryba ・乗り物 nissan 日産車 → nissana ・貨幣の単位 dolar ドル → dolara ・ スポーツ名 tenis テニス → tenisa、ping-pong 卓球 → ping-ponga、hokej ホ ッケー → hokeja しかし、baseball 野球 → baseballu 名詞 105 ・ ダンスの種類 walc ワルツ → walca、polonez ポロネーズ → poloneza 尚、ダンス自体は taniec ダンス → tańca となり、これも -a となるが、出没 母音の e が関わる。 ・ タバコの種類 papieros タバコ → papierosa ・ 道具、容器 bat 鞭 → bata、nóż ナイフ → noża、klucz 鍵 → klucza、widelec フォーク → widelca(出没母音の e が関わる)、garnek 鍋 → garnka(出没母 音の e が関わる)、talerz 皿 → talerza、ołówek 鉛筆 → ołówka、dzban 花瓶 → dzbana ・ 身体の部分 nos 鼻 → nosa、ząb 歯 → zęba(生格では最後が開音節になるの でその前は ą → ę と子音交替がある。)、brzuch 腹 → brzucha、łokieć 肘 → łokcia (出没母音の e が関わり、主格では e の前の k が軟音化する。)、palec 指 → palca(出没母音の e が関わる) しかし、bark 肩 → barku ・ ほとんどのポーランドの町 Gdańsk → Gdańska、Kraków → Krakowa、 Lublin → Lublina、Olsztyn → Olsztyna、Wrocław → Wrocławia、 Szczecin → Szczecina ・ 日にちの単位 wieczór 夕方 → wieczora、poranek 朝 → poranka(出没母音の e が関わる) ・-ak, -ek, -ik, -yk で終わる名詞 これらの多くは縮小形である。但し、このような 語尾で終わっても物質名の場合は -u となる。 krzak 低木 → krzaka、zegarek 腕時計 → zegarka、stolik 小さなテーブル → stolika、koszyk 小さなかご → koszyka ・ 機器、備品等も -a を付加する。telewisor テレビ → telewisora、karolyfer 暖房 機 → karolyfera ・ 男性名詞である月名 grudzień 12月 → grudnia、listpad 11月 → listpada、 czerwiec 6月 → czerwca ・ -ć, ń, dź, c, dz, rz, ż で終わる男性名詞で、物質を表すものや抽象名詞ではないもの は -a となる。grzebień 櫛 → grzebienia、hamulec ブレーキ → hamulca、 pieniądz コイン → pieniądza、rydz マッシュルーム → rydza、kalendarz カレ ンダー → kalendarza、krzyż 十字 → krzyża エ.上述したもの以外の無生名詞は -u を付加することにより、生格形を作る。 ・ 抽象名詞 akt 行為 → aktu、bieg 走ること → biegu、biznes ビジネス → bizinesu、cel 目的 → celu、ciąg 列 → ciągu、dar 贈り物 → daru、dialog 対 話 → dialogu、dług 責任 → długu、dostatek 裕福 → dostatku、opór 抵抗 → oporu、żal 嘆き → żalu、czas 時間 → czasu、zawód 職業 → zawodu、plan 計 画 → planu ・ 集合名詞 las 森 → lasu、tłum 群衆 → tlumu、naród 国民 → narodu、sejm ポ ーランド議会 → sejmu、urząd 政府機関 → urzędu(生格になると最後の音節 は開音節になるので ą が ę に母音交替する。) 106 名詞 ・ 固体名、液体名、気体名 diament ダイアモンド → diamentu、miód 蜂蜜 → miodu、cukier 砂糖 → cukru、olej 油 → oleju、azot 窒素 → azotu、tlen 酸 素 → tlenu、czad 一酸化炭素 → czadu、etanol エタノール → etanolu ※ しかし、węgiel 炭素は węgla となる。 ・ 多くの外来語 bas バス(男性の低音部) → basu、dres ドレス → dresu、ekran スクリーン → ekranu、element 要素 → elementu、etap 段階 → etapu、exodus 大量流出 → exodusu、teatr シアター → teatru、numer 番号 → numeru、 dramat ドラマ→ dramatu、hotel ホテル → hotelu、 ※ しかし、drink 飲み物 → drinka ・ 多くの外国名 Egipt エジプト → Egiptu、Iran イラン → Iranu、Irak イラク → Iraku、Czad チャド → Czadu ※ しかし、Izrael イスラエル → Izraela となる。 ・ 多くの外国の都市、川、山名等 Londyn ロンドン → Londynu、Rzym ローマ → Rzymu、Dunaj ドナウ川 → Dunaju、Kaukaz コーカサス山脈 → Kaukazu ※ しかし、Paryż パリ → Paryża、Berlin ベルリン → Berlina、のように -a を 付加する場合もある。 ・ 動詞から派生した名詞の多くも -u となる。druk 印刷(drukować 印刷する、よ り派生) → drucku、dźwięk 音・響き(dźwięczeć 鳴る、鳴り響く、より派生) → dźwięku、 wydatek 支出(wydać 支出する、より派生)→ wydatka、majątek 所有物・財産(mieć 持つ、より派生) → majątku、wynik 結果(wynikać より 派生)→ wyniku ・ 曜日を表す名詞の内、男性名詞は4つあるが、それらは -u を付加する。 poniedziałek 月曜日、wtorek 火曜日、czwartek 木曜日、piątek 金曜日、である。 尚、他の3つは女性名詞である。 ・ 建物、施設 bar 酒場 → baru、dom 家 →domu、hotel ホテル→ hotelu、pokój 部屋 → pokoju (2音節目のó が o になることに注意)、park 公園 → parku、 dach 屋根 → dachu、dół 穴 → dołu、dwór 中庭 → dworu、 ・ 物質 dżem ジャム → dżemu ・ -sz で終わる男性無生名詞 fałsz 偽り → fałszu ・ rok 年 → roku ② 特殊形 これは単数主格が母音で終わる名詞である。この場合は、①の基本形とはやや異なり、 語尾が y か i となるのが原則である。 ア、硬子音 + a 場合は -y となるのが原則である。例えば、mężczyzna 男、は mężczyzny となり、turysta 旅行者、は turysty となる。また、-k + a や -g + a は -i となる。例えば、kolega 仲間、が kolegi となる。 イ、硬化子音 + a の場合も -y となる。例えば、kierowca 運転手、は kierowcy とな る。 ウ、軟子音 + a の場合は -i となる。例えば、cieśla 大工、は cieśli となる。 名詞 107 2)中性名詞 ① この場合は、原則として -a となる。この場合は主格の語尾が -o であろうが、-e で あろうが、-a となるのである。ロシア語では通常、語尾が е の場合には я となるが、 ポーランド語では я に相当するものは -ia であるからである。(例:zbliżenia 接近))。 ② 中性名詞には語尾が -um や -io になるものがあるが、これらの場合は単数形は全く 変化しないので、単数生格は単数主格と全く同じである。 ③ それ以外の特殊なものとしては語幹が -en- タイプのものと、-ęt- タイプのものがあ る。これらも語尾は -a となる。単数主格以外の単数形では語幹の終わりに eń あるい は ęć という音節が挿入されるので、その点を考えれば理解できる。例えば、imię 名前、 の場合、単数主格の語幹である imi- に eń が挿入されるので、その語幹は imieni- と なるので単数生格は imienia であり、zwierzę 動物、の場合、単数主格の語幹である zwierz- に ęć が挿入されるので、その語幹は zwierzęci- となるので、その単数生格は zwierzęcia となる。 前者と同じ生格を取るものには、znamię 旗 → znamienia、ramię 肩 → ramienia、 plemię 部族 → plemienia 等がある。 後者と同じ生格を取るものには、cielę 子牛 → cielęcia、jagnię 子牛 → jagnięcia、 pisklę ひよこ → pisklęcia 等がある。 3)女性名詞 この場合は-y か -i である。-y になるか -i になるかは、まず、綴り字の規則に従う。 すなわち、k, g の後は -y とは決してならないので、-ky, -gy となることはない。また、 硬化子音の後は -i とは決してならない。すなわち、cz, sz, dz, rz, ż の後は i を綴らない のである。さらに、l の後は必ず -li となり、-ly となることはなく、また、ł の後は必 ず -ły となり、-łi となることはない。 次に、語尾などによって以下の如くになる。 ① 主格が硬子音+ a で終わる場合は a を y に替える。これはロシア語において а を ы をに替えるのと同じである。głowa 頭 → głowy ② 主格が(狭義の)軟子音+ a に終わる場合は a を i に替えるのが基本である。こ れはロシア語において я を и に替えるのと同じである。ziemia 地球 → ziemi(本来 ならziemii となるところであるが、ii と続く場合は最初の i は消去される。但し、 artyleria 砲兵隊、の場合は artylerii となり、ii と続く。これはこの単語が外来語=フ ランス語から=のためである。)、kuchnia 台所 → kuchni、kłotnia 争い → kłotni、 ciocia 叔母 → cioci、 gosposia お手伝い → gosposi、kula 球 → kuli、ostoja 保護者 → ostoi(母音+j + i と続く場合は、j は消去されるので、ostoji が ostoi となる。これ に対して、子音 + j +i と続く場合で、j が c, z, s の後の場合は j は消去されない。lekcja 講義 → lekcji となる。)furia 怒り → furii となる(これも外来語であるので、-ii と i が二つ続く。)。 ③ 主格が硬化子音(但し、l を除く)+a で終わる場合は、綴り字の規則により硬化子 108 名詞 音+ y となるのが通常である。 ④ 主格が硬化子音(但し、l を除く)で終わる場合は -y を付加する。twarz 顔 → twarzy、noc 夜 → nocy、rzecz 物 → rzeczy、mysz マウス → myszy、podróż 旅行 → podróży、sprzedaż 販売 → sprzedaży ⑤ 主格が(狭義の)軟子音で終わる場合と l で終わる場合は -i を付加する。これはロ シア語において語尾が ь となる場合には ь で表される軟子音に и を付加するのと同 じである(もちろん ь は省かれる。)。sól 塩 → soli ( 単数主格は ó が o になるこ とに注意)、nić 糸 → nici(本来は nicii となるところであるが、ii と続く場合は、最 初の i は消去される。)、łódź ボート → łodzi(本来は łodzii となるところであるが、 最初の i は消去される。また、ó → o と母音交替がある。)、gęś ガチョウ → gęsi、 więź 逮捕 → więzi、 jesień 秋 → jesieni、kolej 鉄道 → kolei、społeczność 社会 → społeczności ⑥ 尚、-ia で終わる名詞(すなわち、②の場合)の内、dia, chia, fia, gia, kia, lia, ria, tia で終わる名詞の生格は、-dii, -chii, -fii, -gii, -kii, -lii, -rii, -tii となり、-ii が連続する。外 来語の場合が多い。 -dia, -fia, -tia, -chia, -gia, -kia, -lia, -ria で終わる名詞の場合は本来は -dja, -fja, -tja, -chja, -gja, -kja, -lja, -rja であるが、これらの場合、j は書けないので、いずれも i と綴 るから、このようになるのである。そして、これらの場合の生格は -dii, -fii, -tii, -chii, -gii, -kii, -lii, -rii と、ii とi が連続するのである。 tragedia 悲劇 → tragedii、parafia 教区 → parafii、sympatia 同情 → sympatii、 rafineria 精製工場 → rafinerii、Szwajcaria スイス → Szwajcarii、religia 宗教 → religii 2、単数与格の形 1)男性名詞の場合 生格は有生名詞、無生名詞、男性人間名詞を区別する必要があったが、単数与格の形 を考える場合、それらを区別する必要はない。 ① ほとんどの男性名詞は語尾が -owi となる。この形はロシア語には全くないものであ る。 sen 夢 → senowi、student 学生 → studentowi、ptak 鳥 → ptakowi ② しかし、少数の古いもので、主に単音節の男性名詞で語尾が -u となる。 pies 犬 → psu、kot 猫 → kotu、kwiat 花 → kwiatu、chłopiec 少年 → chłopcu、 chłop 農民 → chłopu、ksiądz 聖職者 → ksiądzu、lew ライオン → lwu、orzeł ワ シ → orłu(これは難しいが、e が出没母音であり、与格では没するが、主格では発 現し、その前の r が rz に子音交替を起こすため、主格では orzeł となっているので ある。)、 pan 紳士 → panu、świat 世界 → światu ③ 単数主格が -ca で終わる名詞は –cy となる。 kierowca 運転手 → kierowcy、sprzedawca セールスマン → sprzedawcy 名詞 109 ④ 単数主格が -ca 以外の -a で終わる男性名詞では -e となる。 mężczyzna 男 → mężczynie、kolega 同僚 → koledze、artysta 芸術家 → artyście 尚、この場合の -e は e1 であるので、第一子音交替が起きている。 ⑤ 少数であるが、与格が2種類あるものもある。 bez ニワトコ (植物の一種) → bzu と bzowi、 kat 暴君・独裁者 → katu と katowi、 mech コケ → mchu と mchowi、osioł ロバ → osłu と osłowi(後半の o が出没 母音であり、与格では没するが、主格では発現し、その前の s が si に子音交替を起 こすため、主格では osioł となっているのである。) 2)中性名詞の場合 中性名詞の場合は、特別な場合(単数形がすべて同形の場合)を除いて、語尾の -o や -e を -u に替えることである。ロシア語の場合に、常に語尾が у となることと一致す る。ただ、次のことに注意すべきである。 ① 語幹が -en- タイプの名詞はほとんどが語尾が -ieniu となる。例えば、imię 名前、 は imieniu となる。ramię 肩、は ramieniu となる。単数主格以外の単数形では語幹 の終わりに eń 音節が挿入されるので、その点を考えれば理解できるであろう。 ② 語幹が -ęt タイプの名詞は -ęciu となる。例えば、zwierzę 動物、の場合、zwierzęciu となる。単数主格以外の単数形では語幹の終わりに ęć という音節が挿入されるので、 その点を考えれば理解できるであろう。 ③ -um や -o で終わる名詞は変化せず主格と同じである。 3)女性名詞の場合 この場合は前置格と全く同じである。これには例外がない。従っ て、詳細は前置格の項を参照されたい。ただ、注意すべき点を以下に述べる。尚、ロシ ア語の場合もほとんどは前置格と同じであるが、一部異なるものが見られる。 ① 単数主格が硬子音+a で終わる場合 この場合は -a が -e となるのが原則である。しかも、その e は e1 であるので、そ の前の子音に第一子音交替が起きる。例えば、góra の与格は górze となるのである(こ の場合、語末の e の前の r が rz に交替しているのである。)。ロシア語で硬子音+а の場合、а が е になるのと同じである。 尚、日本人の苗字の Shimomura 下村、の与格は Shimomurze となるが、これも上 の原則に当てはまっている。 ② 単数主格が(広義の)軟子音+a で終わる場合 この場合は -a が -y または -i となるのが通常である。この場合、ロシア語では子音 +я に相当し、 я が е に替わったが、ポーランド語は異なるのである。そして、硬化 子音の場合は -y となり、(狭義の)軟子音の場合は -i となるのが原則である。これら の名詞は全く単数生格と同じになる。従って、これらの名詞は単数では生格、与格、前 置格が全く同じ形になる。 tęcza 虹 → tęczy、tablica プレート → tablicy、zorza 夜明け → zorzy、kolacja 夕 食 → kolacji、świnia 豚 → świni、seria シリーズ → serii(外来語であるため、-ii と 110 名詞 i が重なる)interwencja 介入 → interwencji ③ 単数主格が(広義の)軟子音で終わる場合 これらもすべて単数生格と同じである。 従って、これも生格、与格、前置格が全く同じ形になる。 ア、硬化子音の場合は語尾が -y となることが多いが、l の場合には、-i となる。 noc 夜 → nocy、mysz マウス → myszy、podróż 旅行 → podróży、sól 塩 → soli イ、(狭義の)軟子音で終わる場合は語尾が -i となる。 łódź ボート → łodzi、jesień 秋 → jesieni、nić 糸 → nici、kolej 鉄道 → kolei(本 来なら koleji となるところであるが、母音+j + i と続く場合は j が省略されるのであ る。) 3.単数対格の形 1)ロシア語においては、男性名詞は活動体については生格と、不活動体については主 格と同じであった。また、中性名詞は主格と同じであり、女性名詞については特有では あるが、ある程度簡便であった。ポーランド語においては中性名詞と女性名詞はロシア 語に準じて良いが、男性名詞はやや異なった様相を呈している。それは、男性名詞には 無生名詞、有生名詞、男性人間名詞があるからである。 2)男性名詞 ① 男性人間名詞の場合 ア、原則として、生格と同じである。例えば、sąsiad 隣人、の場合、生格は sąsiada で あり、対格も sąsiada となる。ただ、単数主格が -a で終わる男性名詞の場合は、女性 名詞のように変化するので対格の語尾は生格と異なり、通常は -ę となる。例えば、 kolega 同僚、の場合、生格は kolegi であるが、対格は kolegę となる。 Znam dobrego polskiego kolegę. 私は良いポーランドの仲間を知っている。 イ、-o で終わる男性人間名詞の場合、例えば maestro 巨匠、の場合は、maestra と、 -a で終わることに注意すべきである。 ウ、また、形容詞変化をする男性名詞、例えば、sędzia 裁判官、の場合、sędziego と なり、hrabia 伯爵、の場合、hrabiego となる。myśliwy 狩人、の場合は、myśliwego となる。 ② 有生名詞の場合 生格と同じである。 lew ライオン → lewa、kot 猫 → kota、pies 犬 → psa ③ 無生名詞の場合 ア、原則として主格と同じである。 czas 時間 → czas、but 靴 → but、chleb パン → chleb イ、しかし、例外として単数対格において生格形を借用して使用するものがある。この 場合は、語尾は -a となり、生格語尾が -u ではなく、-a になるものがこれに該当する。 それには以下のものがある。 名詞 111 ・果物や野菜の場合 banan バナナ → banana、 grzyb キノコ → grzba、 pomidor トマト → pomidora、 kalafior カリフラワー → kalafiora、ziemniak ジャガイモ → ziemniaka jeść banana バナナを食べる kupić grzyba キノコを買う jeść pomidora トマトを 食べる ・自動車の場合 nissan 日産車 → nissana、mercedes メルセデス車 → mercedesa、 kupić nissana 日産車を買う ・貨幣の単位 dolar ドル → dolara、funt ポンド → funta mieć dolara ドルを持つ、wydać funta ポンドを使う 尚、euro ユーロ、は中性名詞でしかも不変化である。 ・スポーツの種類 tenis テニス → tenisa、hokej ホッケー → hokeja、golf → golfa grać w tenisa テニスをする grać w hokeja ホッケーをする grać w golfa ゴルフを する ・ダンスの種類 polonez ポロネーズ → poloneza、walc ワルツ → walca tańczyć poloneza ポロネーズを踊る tańczyć walca ワルツを踊る ・タバコの銘柄、飲み物の種類等 kapitan カピタン → kapitana、szampan シャンパン → szampana palić kapitana カピタンを吸う pić szampana シャンパンを飲む ※ ただ、注意すべきは単数生格の語尾が -a となる男性無生名詞のすべてが、単数対格 の語尾が -a となるのではないことである。例えば、orzech くるみ、は単数生格は orzecha となるが、単数対格は原則通り主格と同じ orzech となる。さらに問題は、単 数生格の語尾が -u となる男性無生名詞で単数対格が -a となるものがあるかという点 であるが、現在の所、そのようなものは見あたらない。 ウ、尚、部分生格の場合、対格形が生格形と同じになるとする考えもある。しかし、こ の場合は、生格形が使われると考えれば良く、対格形が生格形と同じになると考える必 要はない。例えば、kupić chleba パンを買う、という場合、そのパンは部分を表してい るので、生格形が用いられるのであり、対格が生格と同じになると考える必要はない。 現に、動詞として widzić 見る、が使われる場合、常に widzić chleb であり、決して widzić chleba とはならない。また、パンを部分としてではなく、全体として扱う場合 には kupić が使われても kupić chleb となり、主格と同じ形の対格が使用されている のである。 エ、単数主格が -a で終わる男性無生名詞の場合は、女性名詞と同じく -ę となる。これ らは単数形では女性名詞の変化に従い、複数形では男性名詞の変化に従うのが原則だか らである。 eminencja 卓越ぶり → eminencję、satelita 衛星 → satelitę 112 名詞 2)中性名詞の場合 すべて単数主格と同じである。これには例外はない。 3)女性名詞の場合 ① -a で終わる女性名詞は、原則として -ę となる。それが、硬子音+a、硬化子音+a、 軟子音+a であってもである。 koza 羊 → kozę、susza 干ばつ → suszę、ziemia 地球 → ziemię ② -i で終わる女性名詞は、-ę を付加する。例えば、gospodyni 奥さん、の場合は gospodynię となる。 その他には、wychowawczyni 女性教師、が wychowawczynię となる。 ただ、これには例外があり、pani 婦人、の場合、対格は panią となる。 ③ 子音で終わる女性名詞は単数主格と同じである。 pamięć 記憶 → pamięć、twarz 顔 → twarz、korzyść 利益 → korzyść ④ 尚、外来語であっても -ę で終わる。 tragedia 悲劇 → tragedię、lekcja 講義 → lekcję、misja 使節 → misję 4、単数造格の形 1)男性名詞の場合 通常、男性名詞の変化を考える場合、男性人間名詞、有生名詞、無生名詞を区別して 考える必要があったが、造格に関する限りはいずれも同じ変化をするので(違いは語幹 の最後の子音によるから)それらを区別する必要はない。 ① この場合は、語尾は -em となるので簡単である。従って、子音で終わる男性名詞は 単数主格に -em を付加すれば単数造格になる。ロシア語においては語尾は ом か ем になるが、それよりも単純である。その子音が、硬子音、硬化子音、軟子音であっても 同じである。例えば、kwiat 花 → kwiatem、sąsiad 隣人 → sąsiadem、przyjaciel 友 人 → przyjacielem、deszcz 雨 → deszczem 等である。しかし、出没母音が関係する 場合や、母音交替があるのでその点の注意は必要である。例えば、osioł ロバ、の場合、 その造格形は osłem となり、2番目の o が没する。また、majster マスター、の場合、 majstrem となり、-e- が没する(この点に関しては第1部第2章音交替参照)。 そして、注意すべきは、-em の e は e4 であるので、語幹が k, g 以外の子音で終わ る男性名詞には子音交替はないことである。 ② このようにして 語幹が -k や -g で終わる名詞の場合には、単に -em を付加すれば よいのではなく、-iem を付加する必要がある。e4 の前の k, g はそれぞれ ki, gi と軟 音化するからである。例えば、Polak ポーランド人、の場合は Polakiem になり、pociąg 列車、の場合は pociągiem になる。 ※ ch については原則は e4 が関係する場合、ch → chi に子音交替があるのであるが、 造格に関しては子音交替はない。従って、dach 屋根の造格は、dachem である。 ③ また、-a で終わる男性名詞は、後述のように女性名詞で -a で終わるものと同じく -ą 名詞 113 に替える。 kaleka 不具者 → kaleką、poeta 詩人 → poetą、kolega 同僚 → kolegą、 artysta 芸術家 → artystą 2)中性名詞の場合 ① 男性名詞と同じく語尾が -em となるが、語尾の -o あるいは -e に替えて、-em と するのである。 ロシア語においては ом か ем になるが、それよりも単純である。 przywództwo リーダーシップ → przywódstwem、pole 畑 → polem ② ただ、注意すべきは男性名詞と同じくk や g が関係する場合である。語尾が -ko や -go で終わる名詞の場合は、-kem や -gem とはならず、-kiem や –giem となるので ある。これは男性名詞の場合と同じく、-em の e は e4 であり、その前の子音には k → ki、g → gi と子音交替があるからである。 lotnisko 飛行場 → lotniskiem、tango タンゴ → tangiem ③ 難しいのは -ę で終わる名詞の場合である。このような中性名詞は単数では語幹の 終わりが軟音である音節が挿入される。そして、挿入される音節の違いによって2つに 分けられる。それは -eń- と -ęć である。そして、前者の場合、例えば、imię 名前、の 場合、imieniem となる。後者の場合は、例えば zwierzę 動物、の場合は、zwierzęciem となる。 ④ -um や -io で終わる名詞の場合は、単数は不変化であることから、-um や -io のま まであることは言うまでもない。 3)女性名詞の場合 ① 単数主格が -a で終わる場合は、 例外なく -ą になる。 ręka 手 → ręką、ulica 通り → ulicą、ciocia 叔母 → ciocią、droga 道 → drogą、 taśma テープ → taśmą ② 子音で終わる場合(主格語尾がゼロの場合=もっとも、その子音は硬化子音か軟子音 である)も語尾が -ą となる。 myśl 考え → myślą、noc 夜 → nocą、kolej 鉄道 → koleją、podróż 旅行 → podróżą、rzecz 物 → rzeczą、pieśń 歌 → pieśnią、wieś 村 → wsią przepaść 断 崖 → przepaścią、kość 骨 → kością、jesień 秋 → jesienią 尚、krew 血、や brew 眉、等の女性名詞は語幹の最後が -wj という軟音である。従 って、単数造格では軟音に女性名詞の造格語尾である -ą が付加され、krwią, brwią と なる。この場合、e が没しているが、その点については、第Ⅰ部第2章音交替を参照さ れたい。 ③ 主格の語尾が -i となる女性名詞も -ą を付加する。例えば、gospodyni 婦人、は gospodynią となる。いずれにしろ語尾は -ą となる。ロシア語においては語尾が ой あ るいは ей あるいは. ью となったが、それよりも単純である。 5.単数前置格の形 114 名詞 1)男性名詞の場合 男性名詞の場合、生格、対格を問題にする場合には無生名詞、有生名詞、男性人間名 詞の区別が意義を有したが、前置格を問題にする場合にはその違いはない。 男性名詞の前置格は語尾が -e か -u になる。生格については -a となるか、-u とな るか、複雑な問題があったが、前置格の場合は比較的簡単である。語幹の最後の子音の 種類でほぼ決定されるからである。 ① 語幹が硬子音に終わる場合は -e が原則である。ただ、そのうちでも軟口蓋音で終わ る場合(k, g, ch など)は -u である。 zamach 攻撃 → zamachu、wybuch 爆発 → wybuchu、Bóg 神 → Bogu、 bank 銀行 → banku ア、前置格として語尾が -e となる場合は、その前の子音に第一子音交替が起きること に注意すべきである。この場合の e は e1 であり、その関係でその前の子音に交替が生 じるのである。また、それに伴い、語幹の母音に母音交替が起きる場合もあることに注 意すべきである。 ・子音交替だけが起きる例:chleb パン → chlebie、sklep 店 → sklepie、fotograf 写 真 → fotografie、staw 池 → stawie、tłum 群衆 → tłumie、plan 計画 → planie、 generał 将軍 → generale、czas 時 → czasie、raz 回 → razie、student 学生 → studencie、papier 紙 → papierze ・子音交替と共に、母音交替も起きる例:cukier 砂糖 → cukrze(この場合、語幹の e が没するとともに、ki が k となる。) ogród 庭 → ogrodzie、wóz 車 → wozie、stół テーブル → stole、błąd 誤り → błędzie、świat 世界 → swiecie、las 森 → lesie、obiad 昼食 → obiedzie、 イ、しかし、語幹が硬子音で終わっても、例外的に語尾が -u となる名詞もある。例え ば、dom 家 → domu、syn 息子 → synu、pan あなた(男性)→ panu、等である。 ② 硬化子音、(狭義の)軟子音で終わる場合は -u である。ロシア語の場合 е となる のが原則であるが、第二前置格で у となる場合があり、それに相当するのであろう。ま た、この場合は子音交替はないが、母音交替が起きることがあることにも注意すべきで ある。また、出没母音も関係することがある。 chłopiec 少年 → chłopcu、klucz 鍵 → kluczu、talerz 皿 → talerzu、cmentarz 墓 地 → cmentarzu、nóż ナイフ → nożu、koń 馬 → koniu、liść 葉 → liściu、kraj 国 → kraju ③ 男性人間名詞で主格が -a で終わる場合は、後述の如く女性名詞で -a で終わる場合 に準じれば良い。-e となり、この e は e1 であるので、その前の子音に子音交替があ る。例えば、tata お父さん、は tacie となる。kolega 同僚 → koledze しかし、一部、 語尾が -y となる名詞があり、それに注意が必要である。それは -ca で終わる場合であ る。それには、kierowca 運転手 → kierowcy 、sprzedawca 店員 → sprzedawcy 等 が挙げられる。 名詞 115 2)中性名詞の場合 男性名詞とほぼ同じである。すなわち、最後が硬子音+o で終わる場合(但し、k , g, ch に関する場合は除く)には -e となり、硬化子音 + e 、(狭義の)軟子音 + e の場 合は、-u となるのである。後者で多いのは動名詞に関する場合である。例えば、 o wystąpieniu 離脱について、である。また、語幹の最後が k, g, ch である場合も -u と なる。例えば、osuwisko 地滑り、は w osuwisku 地滑りで(原因で)、となる。 尚、男性名詞と同じように子音交替と共に母音交替が起きる場合があることに注意す べきである。例えば、miasto 町、は mieście に、ciasto ケーキ、は cieście になる。 また、czoło 首領 → czele となる。 特殊な中性名詞として、主格語尾が -ę となる名詞の場合には imieniu や zwierzęciu となる。これらは単数では語幹の終わりが軟音である音節が挿入されるからである。そ して、前者は eń が、後者は ęć が挿入されるのである。 -um や -io で終わる名詞は単数は不変化であるので、そのままである。 3)女性名詞の場合 女性名詞の前置格で特徴的なことは、与格と全く同じことである。これは例外がない。 この点はロシア語と同じである。そして、多くは子音交替があるのでその点で注意が必 要である。さらに加えて、②の場合は、与格のみならず生格とも同じことである。 ① 主格が硬子音+a で終わる名詞 男性名詞と同じように -a が -e となる。ロシア語において主格語尾の а が前置格 では е となるがそれと類似している。その e は e1 であるために、通常は第一子音交 替がある。また、母音交替が起きる場合もある。 osoba 人間 → osobie、Europa ヨーロッパ → Europie、głowa 頭 → głowie、szafa 戸棚 → szafie、zima 冬 → zimie、gazeta 新聞 → gazecie、kapusta キャベツ → kapuście、woda 水 → wodzie、gwiazda 星 → gwieździe( zd は e の前ではźdź と 子音交替があり、さらに a の後ろが z から ź に軟音化するので、a から e に母音交 替があるのである。)、prasa マスコミ → prasie、koza 山羊 → kozie、żona 妻 → żonie、szkoła 学校 → szkole( ł が l に子音交替することに注意。)、góra 山 → górze、 apteka 薬局 → aptece、polityka → polityce、noga 足 → nodze、cecha 特徴 → cesze ② 軟子音あるいは硬化子音+a で終わる場合、硬化子音で終わる場合、軟子音で終わる 場合は、いずれも生格と同じである。従って、これらの場合は、生格、与格、前置格が 同じ形になる。例えば、stolica 首都、の場合、生格は stolicy であるので、前置格も stolicy となる。詳しくは、生格の項を参照されたい。 6.単数呼格の形 1)男性名詞 ① 男性名詞の場合はほとんどは単数前置格と同一である。従って、前置格と同様、子音 交替や母音交替が起こる。そして、語尾が -e となる場合は、子音交替が起きる。しか 116 名詞 し、-e は前置格と異なり、e2 であるので、第二子音交替が起きる点が前置格と異なっ ている(前置格の -e は e1 であり、第一子音交替が起きる。) 例えば、chłop 農民、の呼格は chłopie となる(この場合、前置格と形は同じである。 p の第一子音交替、第二子音交替、第三子音交替の結果はいずれも pi となるから同じ であるのである。 ② また、単数前置格で語尾が -u となる場合(語幹が硬化子音、軟子音に終わる場合及 び軟口蓋音で終わる場合)も呼格では -u となるのが原則である。 koń 馬 → koniu、ptak 鳥 → ptaku、gość 客 → gosciu、deszcz 雨 → deszczu ③ 尚、一部の名詞はやや異なった語尾を取る。それは、-ec で終わる名詞の一部と、-a で終わる男性人間名詞である。この場合は前置格と異なることになる。 ア、-ec で終わる名詞 この場合も第二子音交替が起きることに注意すべきである。 この名詞では語尾が -cze となるものがある。但し、この場合は男性人間名詞の場合 である。 chłopiec 少年 → chłopcze、Niemiec ドイツ人 → Niemcze、kupiec 商人 → kupcze ( しかし、男性人間名詞ではないものはたとえ -ec で終わっても、前置格と同じにな る。czerwiec 6月 → czerwcu、koniec 終わり → końcu ) イ、 -a で終わる名詞 この名詞では語尾が -o となる。 kierowca 運転手 → kierowco、kolega 仲間 → kolego、sługa 召使い → sługo ウ、また、Bóg 神、は Boże となるが、Bogu でも良い。 2)中性名詞の場合 これは、完全に主格と同じである。主格が -o で終わろうが、-e で終わろうが、例外 がない。要するに、中性名詞の場合は主格、対格、呼格が全く同じである。 3)女性名詞の場合 ① 硬子音+a で終わる場合 語尾は -o となる。 ręka 手 → ręko、siostra 妹 → siostro ② (狭義の)軟子音、硬化子音+a で終わる場合 これも語尾は -o となるのが原則である。 ziemia 土地 → ziemio、stolica 首都 → stolico ただ、縮小語で語尾が -ia であるものは、-iu となる。 babunia おばあちゃん → babuniu、ciocia おばちゃん → ciociu ③ 硬化子音に終わる場合 語尾が -y となる。 młodzież 若者 → młodzieży、noc 夜 → nocy、twarz 顔 → twarzy ④ 軟子音に終わる場合 語尾が -i となる。 名詞 117 postać 形 → postaci、pieśń 歌 → pieśni ⑤ 単数主格語尾が -i となる場合は単数主格と同じである。 gospodyni 婦人 → gospodyni、pani (女性を指して)あなた → pani 7.複数主格の形 ポーランド語はロシア語と同じように名詞には単数と複数の区別がある。複数主格は ロシア語と同じように複雑な問題があり、以下では男性名詞、中性名詞、女性名詞別に 言及する。 1)男性名詞の場合 男性名詞の複数形を考える場合、男性名詞の種類別に考えるのが合理的である。すな わち、男性名詞には男性人間名詞、男性有生名詞、男性無生名詞があるが、男性人間名 詞と後2者では原則として複数形が異なる。例えば、前者では生格と対格が同じである が、後者では主格と対格が同じである。従って、複数形を考える場合には、男性人間名 詞と後2者を分けて考えるべきである。そして、ロシア語の複数形と類似しているのは、 男性有生名詞、男性無生名詞なので今までのものと記載の順序をやや変えて、有生名 詞・無生名詞を先に記載する。 ① 男性有生名詞、男性無生名詞の複数形 ア、語幹が硬子音で終わる場合 基本は語幹に y を付加することである(但し、k, g で 終わる場合は、-k+ y で -ky、 -g+ y で gy となるべきところであるが、綴り字の規則 により -ky, -gy とは書けないので、-ki, -gi とする。②のごとく語幹に i を付加するの である。)。 sposób 方法 → sposóby、telegraf 電信 → telegrafy、telegram 電報 → telegramy 、 plan 計画 → plany、sklep 店 → sklepy、staw 池 → stawy、pies 犬 → psy、obraz 絵 → obrazy、obiad 昼食 → obiady、kot 猫 → koty、dach 屋根 → dachy これはロシア語で ы を付加することと同じである( ы は y に相当)。 イ、語幹が軟口蓋音で終わる場合(但し、ch は除く)基本は語幹に i を付加すること である。 ptak 鳥 → ptaki 、pociąg 列車 → pociągi ロシア語の場合は、и を付けるが、同じである。但し、軟口蓋音であっても -ch で終 わる場合は y を付加する。例えば、dach 屋根、は dachy となる。 ウ、語幹が硬化子音・軟子音で終わる場合 この場合は基本は語幹に e を付加すること である。 żołnierz 兵隊 → żołnierze 、plac 広場 → place、hotel ホテル →hotele、kraj 国 → kraje、pieniądz 貨幣 → pieniądze、klucz 鍵 → klucze、grosz グロス → grosze、 garaż ガレージ → garaże、koń 馬 → konie 、liść 葉 → liście、gwóźdź 釘 → gwoździe、łabędź 白鳥 → łabędzie、łosoś 鮭 → łososie、jedwab 絹 → jedwabie、 tułów 胴体 → tułowie、karp 鯉 → karpie 118 名詞 ロシア語の場合は ь に替えて、и を付けるが、多少異なっている。 エ、語尾が -a となる場合もある。この場合は、無生名詞の一部に認められる。このよ うな名詞の中で、複数形が -y となることも認められるものがある。ただ、この場合は、 -a となるか、-y となるかによって意味が異なるものもある。 ・-a となる場合 cud 不思議・驚き → cuda ・-a でも -y でも認められる場合で意味が異ならない場合 grunt 土地・基礎 複数形は grunta でも grunty でも良い。 gust 好み 複数形は gusta でも gusty でも良い。 ・-a でも -y でも認められる場合で意味が異なる場合 akt akta が複数形となる場合は公文書、証明書などを表すが、akty が複数形と なる場合は行為、行動、という意味を表す。 organ organa が複数形となる場合は公共の機関、施設等を表すが、organy が複 数形となる場合は、器官を表す。 ② 男性人間名詞の複数形 ア、語幹が硬子音で終わり、単数主格に語尾がない場合には、複数主格語尾は -i とな るのが原則である。そして、この場合は最後の子音において子音交替がある。なぜなら、 この i は i1 であり、第一子音交替を起こすからである。 snob 気取りや → snobi、chłop 農民 → chłopi 、sąsiad 隣人 → sąsiadzi、student 学生 → studenci、producent 生産者 → producenci、policjant 警察官 → policjanci、 Czech チェコ人 → Czesi 、Białorusin ベラルーシ人 → Białorusini、 diabeł 悪魔 → diabli、detektyw 探偵 → detektywi、pirat 海賊 → piraci イ、硬子音+ a で終わる場合も同じである。 mężczyzna 男 → mężczyźni、poeta 詩人 → poeci となる、patriota 愛国者 → patrioci、となる。 astronauta 宇宙飛行士 → astronauci( t 語幹の後者の3つは 少し説明を要する。a を i に変えると、-ti となるところであるが、この場合の i は 第一子音交替を起こす。それ故、t → ć となり、-ći となる。しかし、綴り字の規則 により -cii となるが、-cii と i が続く場合には最初の i は脱落するので、-ci となる のである。) ウ、語幹が硬子音で終わっても、称号、職業、家族関係の用語、ある種の国民を表す場 合 -owie となる。 ・家族関係の用語 mąż 夫 → mężowie、ojciec 父 → ojcowie、syn 息子 → synowie、pan ~氏 → panowie、dziadek 祖父 → dziadkowie、dziadzio おじいちゃん → dziadziowie、 szwagier 義理の兄(弟)→ szwagrowie これらはロシア語においてсын → сыновья となるのと類似している。 ・神や威厳のある支配者を表す名詞の場合もこの語尾を取る。 bóg 神 → bogowie、car 皇帝 → carowie ・苗字の場合に、この語尾を取るものもある。 Nowak ノバック氏 → Nowakowie ノバック夫妻、 Buszko ブシコ氏 → Buszkowie 名詞 119 ブシコ夫妻 ・ある種の国民や部族の場合 Afgan アフガニスタン人 → Afganowie、Pers ペルシア人 → Persowie ・職業名の場合もこの語尾を取ることがある。 minister 大臣 → ministrowie、admirał 司令長官 → admirałowie ・その他 członek メンバー → członkowie、anioł 天使 → aniołowie、pasażer 乗客 → pasażerowie エ、語幹が(広義の)軟子音で終わる場合には 原則として語尾 -e を取る。 gość 客 → goście、urwipołeć いたずら者 → urwipołcie、kniaź 王子 → kniazie、 przechodzień 通行人 → przechodnie、lekarz 医師 → lekarze、dziennikarz ジャ ーナリスト → dziennikarze、pisarz 作家 → pisarze、żołnierz 兵隊 → żołnierze、 towarzysz 仲間 → towarzysze、Łotysz ラトビア人 → Łotysze 、kustosz 守衛・ 園長 → kustosze、posługacz 付添人・案内係 → posługacze、bogacz 金持ち → bogacze、podpalacz 放火犯 → podpalacze、złodziej 窃盗 → złodzieje、gnój 嫌な やつ → gnoje、góral 高地人 → górale、model モデル → modele、stróż 保護者・ 監視人 → stróże、kibic サポーター → kibice 尚、語尾が -in となる国民を表す名詞では、単数主格の語尾の -in を取り、-ie を 付加する場合もある。例えば、Rosjanin ロシア人 → Rosjanie 、Amerykanin アメ リカ人 → Ameriykanie、Egipcjanin エジプト人 → Egipcjanie である。 ※ 例外的に語尾が -owie となるものもある。 wódz 指導者 → wodzowie、uczeń 生徒 → uczeniowie、 więzień 囚人 → więźniowie、 オ、語幹が k, g, r で終わる場合は複数主格語尾は -y となるのが通常である。この場合 には必ず子音交替を伴う。すなわち、k → c、g → dz、r → rz となる。注意すべきは、 語幹が k, g で終わっても、男性有生名詞、男性無生名詞とは異なることである。すな わち、前述したように男性有生名詞、男性無生名詞の場合には複数主格語尾は -ki, -gi と なるが、男性人間名詞の場合は子音交替があってしかも -y に終わるのである。なぜな ら、男性有生名詞、男性無生名詞の場合の語尾 i は i3 であるが(子音交替を起こさな い)、この場合の i は i1 であるので第一子音交替を起こす。そして、子音交代後の子 音である c , dz, rz の後は綴り字の規則により -i を書かないために、-y となるからであ る。 Japończyk 日本人 → Japończycy、Polak ポーランド人 → Polacy、Brytyjczyk イ ギリス人 → Brytyjczycy、górnik 鉱夫 → górnicy、kolega 仲間 → koledzy、doktor 博 士 → doktorzy、Pakistańczyk パキスタン人 → Pakistańczycy、prawnik 弁護士 → prawnicy、Izraelczyk イスラエル人 → Izraelczycy、napastnik 攻撃者 → napastnicy ・kolega 仲間 → koledzy、suługa 召使い → słudzy、等の場合は、単数主格に語尾 -a が付くだけで、このオに含めて良い。 ・その他に -y となる場合には、語尾が -ca となる場合や、-iec となる場合が挙げられ 120 名詞 る。 kierowca 運転手 → kierowcy 、łowca 狩人 → łowcy、Niemiec ドイツ人(但し、 男性)→ Niemcy 、sportowiec スポーツマン → sportowcy、chłopiec 少年 → chłopcy カ、語尾が -a となる場合もある。 brat 兄弟 → bracia、ksiądz 神父 → księża ③ 形容詞変化をする男性名詞の複数形 ア、この場合は、語尾が -i となるか -y となるものが多い。 ・-i となるもの。例えば、wojskowy 軍人、の場合、形容詞変化であり、この複数形は wojskowi となる。注意を要するのは語尾の最後が -owi と通常の男性名詞の与格と同 じになることである。uczony 学者 → uczeni、の場合は o → e と母音交替もあること に注意すべきである。その他の例としては、księgowy 簿記係、があり、この複数主格 は księgowi となる。dorosły 大人 → dorosli ・-y となるもの。例えば、chory 病人、の場合、形容詞変化であり、この複数形は chorzy となる。służący 召使い → służący(この場合は、結局は単複同形となる。) イ、しかし、特殊な場合として -owie となるものがある。 例えば、chorąży 下級准尉、の場合、複数主格は chorążowie となる。尚、その他の 変化形は形容詞変化と同じである。 2)中性名詞の場合 ① 語幹が硬子音で終わろうが、軟子音で終わろうが、硬化子音で終わろうが、語尾が a になる。 piwo ビール → piwa、mieszkanie 住民 → mieszkania 、pole 畑 → pola、 ロシア語で о で終わる中性名詞の複数形の語尾が а となることと同じである。また、、 ロシア語では単数主格の語尾の е の場合、複数主格の語尾は я になるが、それも同じ である。これはポーランド語では я に相当するのは ia であるからである。 ② ただ、次のことに注意が必要である。 ア、-um, -io で終わる場合 これらは特殊な変化をするが、複数主格形に関する限りは、 語尾が a となる。すなわち -um では -a となり、-io では -ia となるのである。 centrum センター → centra となり、studio スタジオ → studia となる。 イ、-ę で終わる場合、複数では語幹の終わりが硬音である音節が挿入され、それらは -on と -ęt である。前者の場合には、imię 名前 → imiona、ramię 肩 → ramiona、等が ある。後者の場合には、cielę 子牛 → cielęta、pisklę ひよこ → pisklęta、książę 王子 → książęta、等がある。 いずれにしろ、中性名詞の複数主格は語尾が -a となるのである。 ③ もっとも形容詞変化の中性名詞だけは例外で、その複数主格は -e となる。 drugie 主コース → drugie、zielone 緑の草木 → zielone この場合は単複同形となるのである。 名詞 121 3)女性名詞の場合 ① 名詞変化をする女性名詞 ア、語幹が硬子音で終わる場合 基本は語尾が y になることである。 zima 冬 → zimy、mucha はえ → muchy 等。ロシア語の場合 ы になるが、それと 同じことである。 イ、ただ、語幹が軟口蓋音の k や g で終わる場合は語尾が i になる。 apteka 薬局 → apteki、droga 道 → drogi ロシア語で -к や -г で終わる名詞が、-ки, -гиとなるのと同じである。 また、語幹が硬子音で終わる場合で、特殊なものとしては単数主格の終わりが -ansa となる場合がある。この場合は、複数主格の語尾は -e となる。 szansa チャンス → szanse ウ、語幹が硬化子音に終わる場合 語尾が e になる(この場合、単数主格が硬化子音 + a で終わっても、硬化子音で終わっても同じである。もっとも、前者の場合には a を e に替えるが、後者の場合には付加するだけである。)。 twarz 顔 → twarze、tęcza 虹 → tęcze、zorza 夜明け → zorze、 ロシア語の場合はь を и に替えるが、多少異なっている。しかし、次のものは例外 で -y となる。 wesz しらみ → weszy、mysz マウス → myszy、rzecz 物 → rzeczy エ、語幹が(狭義の)軟子音で終わる場合、基本は語尾が e になることである。 ziemia 地球 →ziemie、agencja 機関 → agencje ロシア語の場合は я を и に替えるが、多少異なっている。 ・単数主格語尾がゼロの場合にも、語尾が e になる。 wieś 村 → wsie 、dłoń 手掌 → dłonie ロシア語の場合は ь を и に替えるが、多少異なっている。 ・もっとも、 語尾が i となる場合もある.。それらには -ś, -ć , -ń , -dź がある。 gęś ガチョウ → gęsi、kość 骨 → kości 、nić 糸 → nici、pieśń 歌 → pieśni、 spowiedź 告白 → spowiedzi ② 形容詞変化をする女性名詞 この場合は、複数非男性人間形が使われる。 bezrobotona 女性の失業者 → bezrobotone、znajoma 知り合い → znajome 8.複数生格の形 ロシア語の名詞複数において与格、対格、造格、前置格はそれぞれ名詞の性にかかわ らずほぼ同じであり多様性はなかったが、複数生格は多様性があった。この点、ポーラ ンド語においても同様である。 1)男性名詞の場合 複数主格の場合は、無生名詞・有生名詞と男性人間名詞を区別する必要があったが、 複数生格を考える場合には、それらを区別する必要はない。語尾の違いは語幹の最後の 122 名詞 子音が影響するからであり、男性人間名詞かそうでないかは影響しないからである。 ① 語幹が硬子音に終わる場合 ア、原則として -ów を付加する。これは、ロシア語において ов を付加するのと類似し ている。 dom 家 → domów、ptak 鳥 → ptaków、list 手紙 → listów 主格の語尾がゼロであっても、a であってもこれは同じである(もっとも、後者は a を除去するのは当然である。)。 dyplomata 外交官 → dyplomatów、ser チーズ → serów、las 森 → lasów 語幹が k や g で終わる場合、複数主格語尾は -y ではなく、-i であったが、複数生 格語尾は -ów となる。 ptak 鳥 → ptaków、pociąg 列車 → pociągów イ、しかし、以下の点に注意すべきである。 ・ 単語の最後が -anin となる場合である。この場合、-anin の前の子音が影響する。 すなわち、それが硬子音の場合には -anów となるが、(広義の)軟子音の場合には -an となる。このような名詞は複数形のいずれも最後の -in が削除され、前者はそれに語尾 の -ów が付くのに対して、後者は語尾なしの形になるのである。 Amerykanin アメリカ人 → Amerykanów、 muzułmanin イスラム教徒 → muzułmanów paryżanin パリ市民 → paryżan、Rosjanin ロシア人 → Rosjan、chrześcijanin キ リスト教徒 → chrześcijan、wegetarianin 菜食主義者 → wegetarian ・ 国名で複数形の形を取るものがあり、それらは語尾が -y となるが、それらの複数生 格は語尾がゼロとなる。 Niemcy ドイツ → Niemc、Czechy チェコ → Czech、 Węgry ハンガリー → Węgier、Włochy イタリア → Włoch しかし、国民を表す場合は複数生格は語尾が -ów となる。 Czech チェコ人 → Czechów(尚、複数主格は Czesi ) ・ 口唇音の場合 単数主格が口唇音(b, p, f, w, m)で終わる名詞であるが、語幹の最後が軟音(bj, pj, fj, wj, mj)であるものは複数生格の語尾は -i となる。 karp 鯉 → karpi、paw クジャク → pawi (一方、chleb パン → chlebów ) ・ mężczyzna 男、の場合は語尾がゼロとなり、mężczyn となる。 ② 硬化子音に終わる場合 -ów を付加する場合と、-y を付加する場合がある。これらはきちとした法則がなく、 語幹の最後の子音別に検討する必要がある。 ア、-c や –dz で終わる場合は、原則として -ów を付加する。 koniec 終わり → końców(この場合、e は出没母音なので -ów が付加されると c の 前の e は没する。そして、ni は母音ではなく、子音の前になるので ń と綴るのであ る。)、materac マットレス → materaców、rydz キノコ → rydzów、wódz 指導 者 → wodzów 名詞 123 ・しかし、-c, -dz で終わっても、-y を付加する場合がある。 miesiąc 月 → miesięcy(この場合、単数主格は後に来るものが閉音節であるのでそ の前は ą であったが、複数生格では開音節であるので、ą → ę と母音交替があり、 -ęcy となる。その他には、tysiąc 千 → tysięcy、zając 野ウサギ → zajęcy がある。) pieniądz 硬貨 → pieniędzy(この場合も、同様にą → ę と母音交替がある。) イ、-sz, -rz, -ż, -cz, dż で終わる場合は -ów を付加しても、-y を付加しても良いことが 多いが、徐々に -ów は廃れつつあり、現代では -y を付加することが多い。 ・-sz で終わる名詞 kosz 籠 → koszy か koszów、czynsz 管理費 → czynszy か czynszów、dorsz 鱈 → dorszy か dorszów、ratusz 市庁舎 → ratuszy か ratuszów grosz グロシュ(ポーランドの貨幣の単位)→ groszy、wiersz 詩 → wierszy しかし、marsz 行進 → marszów ・ -ż で終わる名詞 bagaż 荷物 → bagaży か bagażów、garaż ガレージ → garaży か garażów、krzyż 十字架 → krzyży か krzyżów、wąż 蛇 → węży か wężów bandaż 包帯 → bandaży しかし、mąż 夫 → mężów ・ -rz で終わる名詞は語尾が -y を取る名詞が多い。 lekarz 医師 → lekarzy、talerz 皿 → talerzy、kucharz 料理人 → kucharzy、 korytarz 廊下 → korytarzy しかし、-y でも -ów でも良い名詞も少なからずある。 gospodarz 家主 → gospodarzy か gospodarzów、pisarz 作家 → pisarzy か pisarzów ・-cz で終わる名詞 badacz 研究者 → badaczy か badaczów、działacz 活動家 → działaczy か działaczów、słuchacz 聴取者 → słuchaczy か słuchaczów klucz 鍵 → kluczy、brodacz ひげを生やしている人 → brodaczy しかし、deszcz 雨 → deszczów、mecz 試合 → meczów 試合、tłuszcz 脂肪 → tłuszczów ・-l で終わる場合は、語尾が -i となる名詞と、 ów となる名詞がある。 nauczyciel 教師 → nauczycieli、szpital 病院 → szpitali、góral 高地人 → górali 後者の例は、ból 痛み → bólów、cel 目的 → celów 等がある。しかし、-i でも -ów でも良い名詞がある。例えば、hotel ホテル → hoteli か hotelów、alkohol アルコ ール → alkoholi か alkoholów、 ③ (狭義の)軟子音に終わる場合 ア、-j で終わる場合は、語尾は -ów となる名詞が多い。 kraj 国家 → krajów、nastrój 気分 → nastrojów、zdrój 泉 → zdrojów しかし、i となる名詞もある。 pokój 部屋 → pokoi (本来ならpokoji となるところであるが、-ji の場合、原則とし て綴り字の規則により j は書かないので、語尾は -i となるのである。)złodziej 窃 盗 → złodziei 124 名詞 イ、それ以外の軟子音の場合は -i となることが多い。 gość 客 → gości(本来は gośći であるが、母音の前の ć は ci となる。そうすると gościi となるところであるが、i が続くと最初の i は消去されるので gości となるの である。)、liść 葉 → liści、śmieć くず → śmieci śledź ニシン → śledzi、gwóźdź 釘 → gwoździ、łabędź 白鳥 → łabędzi dzień 日 → dni、kamień 石 → kamieni、koń 馬 → koni、korzeń 根 → korzeni、 mięsień 筋肉 → mięśni、ogień 火 → ogni、pień 幹 → pni、słoń 象 → słoni しかし、語幹が -ń で終わる名詞には語尾が -ów となる名詞も少数ながらある。 uczeń 生徒 → uczniów、więzień 囚人 → więźniów -ów でも -i でも良い名詞には、cień 影、styczeń 1月、がある。 cień 影 → cieni か cieniów、styczeń 1月 → styczeni か styczniów -ś で終わる場合も -i を付加する場合と -ów を付加する場合がある。ただ、後者の方 が好まれる傾向にある。rabuś 強盗 → rabusi あるいは rabusióww -ź で終わる名詞は -ów を取る。kniaź 領主 → kniaziów、paź 小姓 → paziów ④ -a で終わる場合は -ów となる。この場合、通常は単数の変化は女性名詞の変化に 準じ、複数の変化は男性名詞の変化に準じるからである。 kolega 同僚 → kolegów、artysta 芸術家 → artystów、znawca 専門家 → znawców もっとも、女性名詞と同じ変化をする場合もある。その場合は、語尾はゼロとなる。 例えば、mężczyzna 男、の場合、mężczyzn となる。 kaleka 身体障害者 → kakek と なる。 ※ もっとも、どちらでも良い場合もある。cieśla 大工、の場合、cieśli でも cieślów で も良い。これは(狭義の)軟子音+ a であるからであろう。 2)中性名詞の場合 ① まず、語幹が硬子音に終わる場合は、単数主格の語尾は -o となり、複数生格の語尾 は、ゼロとなるのが原則である。ロシア語において語幹のみになるのと同じである。 piwo ビール → piw、miasto 町 → miast、okno 窓 → okien(この場合、出没母 音 e が現れ、その結果、e の前は軟音化するため、-k- が -ki- となるのである。)、 kino 映画館 → kin、pióro ペン → piór、drzewo 木 → drzew、mięso 肉 → mięs、 żelazo 鉄 → żelaz ② 語幹が硬化子音や軟音に終わる名詞は、単数主格の語尾は -e となるが、複数生格の 語尾はゼロとなるのが原則である。ロシア語においては е で終わる場合は、ей となる ので、その点異なっている。 miejsce 場所 → miejsc、pole 野原 → pól( o の後が閉音節となるため、o → ó と 母音交替がある。)、słońce 太陽 → słońc、morze 海 → mórz、zboże 穀物 → zbóż danie 料理 → dań、podanie 申請書 → podań、zadanie 課題 → zadań、żądanie 要求 → żądań、zajście 騒乱 → zajść、nasienie 種 → nasion(この場合は、e → o の母音交替を含んでいる。)、ziele ハーブ → ziół(これは特殊で、l → ł への子音 交替、e → o への母音交替、さらに o → ó への母音交替を含んでいる。) 名詞 125 odkrycie 発見 → odkryć、pojęcie 概念 → pojęć、uczucie 感覚 → uczuć、zajęcie 仕 事 → zajęć ③ 語幹が硬化子音や軟子音に終わる名詞であっても、語尾が y か i となる名詞もある。 このような名詞は通常は、接頭辞が付いた名詞である。例えば、wybrzeże 海岸、の 場合、複数生格は wybrzeży となる。podwórze 中庭 → podwórzy、narzędzie 道具 → narzędzi、pogotowie 準備態勢 → pogotowi ④ その他に、特殊なタイプがあり、単数主格が -um や -io で終わる名詞は、um や o を取り、男性名詞と同じく -ów となる。 centrum 町の中心 → centrów、museum 博物館 → museów、studio スタジオ → studiów、radio ラジオ → radiów 単数主格が軟子音+ e で終わる名詞の中にも -ów となるものがある。 przysłowie 諺 → przysłów となる。 語幹が -on- タイプのものや、-ęt- タイプのものも特殊である。-on- タイプの名詞 の代表的なものは imię 名前、であるが、これは imion となる。一方、-ęt- タイプの名 詞の代表的なものは zwierzę 動物、であるが、これは zwierząt となる(最後が閉音節 となるので、その前の ę は ą に母音交替がある。)。これらの場合は、語尾はゼロと なると言える。 ⑤ 不規則なもの 中性名詞の複数生格で不規則なものとしては、dziecko 子供、がある。この複数生格 は dzieci となり、上のいずれにも当てはまらない。 3)女性名詞の場合 ① 硬子音+a で終わる場合 この場合は、a を取り、語尾がなく、最後は硬子音だけになる。ロシア語において硬 子音だけになるのと同じである。語幹子音の前が o の場合には、o → ó と母音交替が あることに注意すべきである。 lampa ランプ → lamp、osoba 人間 → osób、droga 道 → dróg、szkoła 学校 → szkół、zupa スープ → zup、góra 山 → gór、kobieta 女性 → kobiet、kawa コー ヒー → kaw、wiza ビザ → wiz、rozmowa 会話 → rozmów ② 硬化子音+a で終わる場合 ア、この場合も、a を取り、語尾はゼロとなる。 plaża 浜 → plaż、tęcza 虹 → tęcz、susza 干ばつ → susz、róża バラ → róż、praca 仕事 → prac、jędza 魔女 → jędz、burza 嵐 → burz、szyja 頸部 → szyj、chwila 瞬間 → chwil、kula 球 → kul、niedziela 日曜日 → niedziel、koszula シャツ → koszul イ、しかし、-la で終わる場合はゼロ語尾以外のこともある。この場合には、語尾が -i と なるが、規則性はなく、個々に覚えるしかない。 kontrola 監督 → kontoroli、morela 杏 → moreli また、どちらでも良い場合もある。 126 名詞 centrala 中心 → centrali か central、willa 邸宅 → willi か will ③ 軟子音+ a で終わる場合 この場合は、単数主格は最後が -ia となるか、-ja とな る。 ア、この場合も、語尾がゼロとなるのが原則である。 ciocia 叔母 → cioć、babcia お婆ちゃん → babć、 ziemia 土地 → ziem(ziemi で はなく、ziem であることに注意)、mamusia ママ → mamuś、świnia 豚 → świń、 イ、しかし、単数主格の最後が -nia となる名詞の場合は、注意が必要である。すなわ ち、上の świnia のごとく -nia の前の音が母音である場合には、語尾はゼロである が、子音である場合には語尾が -i となることである。従って、czereśnia サクランボ、 は czereśni となり、pisownia 正書法、は pisowni となる。uczelnia 高等教育機関、 はuczelni となる。szatnia クローク、は szatni となる。 ウ、もっとも、どちらでも良い名詞がある。czytelnia 閲覧室 → czytelni か czytelń、 jadalnia 食堂 → jadalni か jadalń、kawiarnia 喫茶店 → kawiarni か kawiarń エ、さらに注意すべきは、単数主格が子音+ -nia で終わる名詞の中にはその複数生格 の語尾が -i となるか、あるいは -n (硬音)になる名詞があるということである。 kuchnia 台所 → kuchni か kuchen、suknia ワンピース → sukni か sukien オ、外来語の場合には、特殊なものとなる。すなわち、語尾は -i となり、しかも、最 後が -ii と i が2つ重なるのである。従って、この場合は生格は単複同形となる。 tragedia 悲劇 → tragedii、chemia 化学 → chemii、histria 歴史 → historii、 partia 党 → partii カ、尚、少数であるが、-nia 以外の -ia で終わる名詞には語尾が -i となるものもある。 通常、-ia で終わる女性名詞はア、で述べたように複数生格は語尾がゼロとなる。しか し、例外的に -ia で終わっても、-i となるのである。例えば、głębia 深み、は głębi と なる。 キ、尚、-ja で終わる名詞の内、外来語の場合、例えば -cja, -sja, -zja で終わる名詞の場 合は、 a を i に替える。 stacja 駅 → stacji、 lekcja 講義 → lekcji、 poezja 詩 → poezji、 impresja 印象 → impresji、misja 使節 → misji、okazja 機会 → okazji、nadzieja 希 望 → nadziei(本来なら nadzieji となるところであるが、綴り字の規則により母音の 後で i の前の j は消去されるのである。) ④ 硬化子音で終わる場合は、-y を付加する。従って、この場合は単複とも同形となる。 男性名詞の場合は、選択的に -ów となるものがあったが、女性名詞の場合には常に -y となるのである。 noc 夜 → nocy、twarz 顔 → twarzy、rzecz 物 → rzeczy、mysz マウス → myszy、 podróż 旅行 → podróży、sprzedaż 販売 → sprzedaży しかし、語幹が l で終わる名詞は、当然ながら綴り字の規則により語尾が -i となる。 sól 塩 → soli、szpital 病院 → szpitali ⑤ 軟子音で終わる場合は、 -i を付加する。従って、この場合も単複とも同形となる。 łódź ボート → łodzi(この場合は、łódzii となるが、i が2つ続く場合は最初の i は 消去され、また、ó はその後が開音節になるので、ó → o と母音交替がある。)、wieś 名詞 127 村 → wsi(そのままでは wiesii となるが、i が2つ続く場合は最初の i は脱落する。 そして、e の後が開音節になるので、出没母音である e が没し、 さらに主格の場合は e の前は軟音化していたのが、e が没したため、軟音化が解除される結果、 wi- → w- と なるのである。 )、część 部分 → części、jesień 秋 → jesieni、gałąź 小枝 → gałęzi、 kolej 鉄道 → kolei ⑥ 外来語で -ea, -ua で終わる女性名詞は -a が -i となる。例えば、idea アイデア → idei、statua 彫像 → statui ※ 硬子音で終わる女性名詞はない。一見、硬子音で終わるように見えても、実は軟子音 で終わっているのである。例えば、głąb 深み、の場合、単数主格は głębj であり、複数 生格は語尾の、-i を付加し、głębi となるのである。 9.複数与格の形 1)男性名詞、中性名詞、女性名詞で語尾が異なることはない。常に語尾は -om とな る。 例えば、男性名詞では、syn 息子、は synom となる。lekarz 医師、は lelarzom と なる。koń 馬、は koniom となる。中性名詞では miasto 町、は miastom となる。pole 野原、は polom となる。女性名詞では ziemia 大地、は ziemiom となる。 2)国の名前で複数のものがあるが、それも同様である。例えば、Węgry ハンガリー、 は複数形を取る名詞であり、与格は Węgrom となる。 Unia grozi Węgrom. EU諸国はハンガリーに圧力をかける。 3)少し注意すべきは中性名詞の特殊な場合である。単数主格の語尾が -ę となる名詞 の場合である。語幹が -on- タイプのものと、-ęt- タイプのものがある。-on- タイプの 名詞の代表的なものは imię 名前、であるが、これは imionom となる。一方、-ęt- タ イプの名詞の代表的なものは zwierzę 動物、であるが、これは zwierzętom となる。 しかし、いずれにしろ語尾が -om となる。 10.複数対格の形 1)男性名詞 男性名詞に関しては無生名詞、有生名詞については主格と同じであるが、男性人間名 詞については生格と同じである。基本的には無生名詞、男性人間名詞については単数と 同じであるが、有生名詞は異なった様相を呈している。これは複数においては修飾され る名詞が男性人間名詞と非男性人間名詞とで異なった扱いをするのでそれに合わせた ものである。すなわち、例えば、形容詞がこれらの名詞を修飾する場合に、その形容詞 の形は有生名詞を修飾する場合は、非男性人間形であり、非男性人間形は主格と同じだ からである。 2)中性名詞 128 名詞 主格と同じである。 3)女性名詞 主格と同じである。 11.複数造格の形 1)この場合は、語尾が -ami となるのが原則である。男性名詞であろうが、中性名詞 であろうが、女性名詞であろうが、語尾は同じになる。ロシア語において ами あるい は ями になるのと同じである。また、名詞によっては母音交替が起きることや出没母 音が関係することに注意すべきである。 świat 世界 → światami、 wybór 選択 → wyborami( ó → o と母音交替がある。 ) 、 pociąg 列車 → pociągami、miesiąc (暦の)月 → miesiącami、stół テーブル → stołami、 ząb 歯 → zębami( ą → ę と母音交替がある。 ) 、 gazeta 新聞 → gazetami、 mięso 肉 → mięsami、rzecz 物 → rzeczami、uczeń 生徒 → uczeniami、kamień 石 → kamieniami(母音の前に ń は書けないので、ń → ni と綴る。) 2)少し注意すべきはクレシュカの付く子音で終わる名詞で1音節の場合である。例え ば、gość 客 → gośćmi 、nić 糸 → nićmi 、koń 馬 → końmi となり、単に単数主 格に -mi を付加するだけで形成される。しかし、część 部分、の場合は częściami、 gwóźdź 爪、の場合は gwoździami となる様にこれは絶対的なものではない(もっと も、後者には gwoźdźmi という形も使われる。)。 3)また、中性名詞であるが、dziecko 子供、の場合は、dziećmi となる。 尚、mieszkaniec 住民、は mieszkańcami となる。単数主格に -ami を付加すると mieszkaniecami となるが、c の前の e は c の後に母音が付くと、脱落する。そう すると mieszkanicami となるが、子音の前や単語の終わりの ni は ń となるので、 結局、mieszkańcami となるのである 4)さらに特殊なのは przyjaciel 友人、である。この場合は、-mi となるが、単数主格 にそのまま付加されるのではなく、przyjciółmi となる。 12.複数前置格の形 1)名詞複数前置格は、男性名詞であろうが、中性名詞であろうが、女性名詞であろう が、語尾が -ach となるのがほとんどである。ロシア語で -ах か -ях となるのと類似 している。 hotel ホテル → hotelach、grupa グループ → grupach、gość 客 → gościach(複 数造格は gośćmi と少し変則になったが、前置格は原則通りである。) 名詞 129 2)ただ、わずかであるが、-ech となるのがある。それは、一部の複数形の国名である。 それには、Niemcy ドイツ → Niemczech、Węgry ハンガリー → Węgrzech、Włochy イタリア → Włoszech 等、がある。 13.複数呼格の形 複数呼格は複数主格と全く同じであるので、呼格の変化を考える場合、単数のみで良 く、複数呼格は考慮に値しない。 Ⅶ 形容詞変化名詞 1.ロシア語において名詞の中には形容詞変化をするものがあったが、その点はポーラ ンド語でも同じである。例えば、男性名詞としては、wojskowy 軍人、があるが、その 変化は、 単数 複数 主格 wojskowy wojskowi 生格 wojskowego wojskowych 与格 wojskowemu wojskowym 対格 woiskowego wojskowych 造格 woiskowym wojskowymi 前置格 woiskowym wojskowych 呼格 woiskowy wojskowi その他には、uczony 学者、がある。 女性名詞としては、królowa 女王、があるが、その変化は、 単数 複数 主格 królowa królowe 生格 królowej królowych 与格 królowej królowym 対格 królową królowe 造格 królową królowymi 前置格 królowej królowych 呼格 królowo królowe ※ この場合は単数呼格のみが形容詞変化と異なるだけで、 あとは形容詞変化そのもので ある。 130 名詞 中性名詞としては、komorne 家賃、がある。その変化は、 単数 複数 主格 komorne komorne 生格 komornego komornych 与格 komornemu komornym 対格 komorne komorne 造格 komornym komornymi 前置格 komornym komornych 呼格 komorne komorne 2.もっとも、形容詞変化と共に、名詞変化もする混合変化の名詞もある。例えば、 Zakopane ザコパネ(ポーランドの南にある都市の名で保養地で有名)の変化は、 単数 主格 Zakopane 生格 Zakopanego 与格 Zakopanemu 対格 Zakopane 造格 Zakopanem 前置格 Zakopanem 呼格 Zakopane ※ 複数はなく、主格・与格が形容詞変化であり、造格・前置格が名詞変化である。主格・ 対格・呼格はどちらとも取れる。 3.当該の形容詞変化の名詞が、男性変化をするのか、女性変化をするのか、中性変化 をするのかは、その名詞が男性名詞となるのか、女性名詞となるのか、中性名詞となる のかによって決まってくる。 1)まず、人間を表すものは、当該形容詞変化名詞が男性を表すのか女性を表すのかに よって決められる。例えば、知人は znajomy か znajoma となるが、それが男性を指 すのであれば、znajomy となるし、女性を指すのであれば znajoma となる。 2)一方、動物や物を表す場合には、主格語尾によって決定される。例えば、luty 2月、 は語尾が -y となるので男性名詞である。komorne 家賃、は語尾が -e となるので中性 名詞である。ただ、動物や物を表す場合で女性の形容詞変化名詞である場合はほとんど ない。 4.ポーランド語の場合はドイツ語と異なり、形容詞変化名詞とそれと関係する形容詞 では形が全く同じである(ドイツ語の場合は形容詞変化名詞でも大文字で書き始めるの で区別が付く。)。そこで、形容詞変化名詞が述語となる場合に、その格がどうなるか という問題がある。すなわち、述語が形容詞の場合にはその述語は主格となるが、述語 名詞 131 が名詞の場合にはその述語は造格で表現されるのである。形容詞変化名詞の場合は名詞 であるので、造格で表現される。主語の様相・状態を表す場合には主格で表現し、定義 として表す時は造格で表現する。 Adam jest chory. アダムは病気である。 Adam jest chorym. アダムは病人である。 5.形容詞変化名詞の例 ① bagażowy 荷物運搬係 bezdomny ホームレス bezrobotny 失業者 biegły 鑑定人 czesne 授業料 ranny 負傷者 myśliwy ハンター uczony 学者 wojskowy 兵士 złoty ズウォティ(ポーランドの貨幣)woźny 用務員 niemy 聴覚障害者 niewidomy 視覚障害者 ② 語尾が -owa となる形容詞変化名詞は女性名詞で元になる名詞の妻を表す場合や、 女性形を表す場合もある。 synowa 息子の妻( syn 息子、から)cesarzowa 皇后(cesarz 天皇、から) królowa 女王( król は王) bezdomny ホームレス(男性)bezdomna ホームレス(女性)の変化は 単数 複数 男性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格 bezdomny bezdomna bezdomni bezdomne 生格 bezdomnego bezdomnej bezdomnych bezdomnych 与格 bezdomnemu bezdomnej bezdomnym bezdomnym 対格 bezdomnego bezdomną bezdomnych bezdomne 造格 bezdomnym bezdomną bezdomnymi bezdomnymi 前置格 bezdomnym bezdomnej bezdomnych bezdomnych 呼格 bezdomny bezdomna bezdomni bezdomne 尚、chorąży 下級准尉、の場合は、やや特殊で複数の主格・呼格が通常の形容詞変化 形と異なっている。 単数 複数 男性形 男性人間形 主格 chorąży chorążowie 生格 chorążego chorążych 与格 chorążemu chorążym 対格 chorążego chorążych 造格 chorążym chorążymi 前置格 chorążym chorążych 呼格 chorąży chorążowie 132 名詞 Ⅷ 姓名の変化 姓名も固有名詞の一種であり、ポーランド語の名詞の一つであるので、変化するのはロ シア語と同じである。ただ、特殊な問題があるので、ここにまとめて記載する。 1.姓について 1)まず、-ski や -cki は多い苗字であり、特に前者がかなり多い。その例は、Kowalski, Wiśniewski 等であり、現大統領も Komorowski である。また、-cki には Sawicki, Chojnacki 等がある。 これらは形容詞変化名詞となるのが通常である。 2)子音で終わる苗字の場合には、概ね男性人間名詞の変化に従うのが通常である。もっ と も、その子音は -k となる場合が多い。Nowak, Wójcik, Kowalczyk 等であり、-k 以外の 子音だと Mazur, Król, Baran 等である。そして、重要なことは複数主格が通常の男性人 間名詞変化とは異なり、語尾が -owie となることと、単数前置格が -u となることと、単 数呼格が単数主格と同じことである。従って、ポーランド人に多い苗字の Nowak の変化 は、 単数 複数 主格 Nowak Nowakowie 生格 Nowaka Nowaków 与格 Nowakowi Nowakom 対格 Nowaka Nowaków 造格 Nowakiem Nowakami 前置格 Nowaku Nowakach 呼格 Nowak Nowakowie 3)男性で -a で終わる苗字の場合は、単数と複数で異なる。単数は主格と呼格が同じで ある点は通常の女性名詞と異なるが、それ以外の格では女性名詞と同じ変化をする。一 方、複数については -a を取り除けば子音で終わる場合と同じである(上の Nowak の 複数と同じになる。)。 例えば、Duda の変化は、 単数 複数 主格 Duda Dudowie 生格 Dudy Dudów 与格 Dudzie Dudom 対格 Dudę Dudów 造格 Dudą Dudami 前置格 Dudzie Dudach 呼格 Duda Dudowie 4)-o で終わる苗字の場合は、-a で終わる場合と同様の変化をする。 5)-e で終わる苗字の場合は、一般には形容詞変化をする。 6)-au で終わる苗字の場合は、子音で終わる場合(①)の場合と同じである。従って、 名詞 133 前置詞が特有で、-auu とはならないので最初の u は脱落して1つの u となる。それ故、 結局、単数主格、前置格、呼格が同じ形となる。例えば、Landau の場合の変化は、 主格 生格 与格 対格 造格 前置格 呼格 単数 Landau Landaua Landauowi Landaua Landauem Landau Landau 複数 Landouowie Landauów Landauom Landauów Landauami Landauach Landauowie 7)女性の苗字は子音で終わる場合と -a 以外の母音で終わる場合は無変化である。 8)女性の苗字で -a で終わる場合は、少し注意が必要である。-owa, -ska, -cka で終わる 場合には、形容詞変化名詞となる。それ以外の -a で終わる場合には主格と呼格が同じ点 を除けば、一般の女性名詞と同じ変化をする。Mazurowa の変化は、 単数 複数 主格 Mazrowa Mazrowe 生格 Mazrowej Mazrowych 与格 Mazrowej Mazrowym 対格 Mazrową Mazrowe 造格 Mazrową Mazrowymi 前置格 Mazrowej Mazrowych 呼格 Mazrowa Mazrowe Mazrówna の変化は、 単数 主格 Mazrówna 生格 Mazrówy 与格 Mazrównie 対格 Mazrównę 造格 Mazrówną 前置格 Mazrównie 呼格 Mazrówna 複数 Mazrówny Mazrównien Mazrównom Mazrówny Mazrównami Mazrównach Mazrówny 2.名前について 1) 男性の場合は子音で終わる場合は、苗字で子音で終わる場合(1)の②)と原則的に 134 名詞 は同じであるが、呼格=前置格である点が異なっている。 Jan と Daniel の変化は、 単数 複数 Jan Janowie 主格 主格 Jana Janów 生格 生格 Janowi Janom 与格 与格 Jana Janów 対格 対格 Janem Janami 造格 造格 Janie Janach 前置格 前置格 Janie Janowie 呼格 呼格 単数 Daniel Daniela Danielowi Daniela Danielem Danielu Danielu 複数 Danielowie Danielów Danielom Danielów Danielami Danielach Danielowie 2)男性の名前で -y や -i で終わる名前の場合は、形容詞変化をする。ただ、注意すべき は複数主格は-owie となることである。Alojzy と Antoni の変化は、 単数 複数 単数 複数 Alojzy Alojzowie Antoni Antoniowie 主格 主格 Alojzego Alojzych Antoniego Antonich 生格 生格 Alojzemu Alojzym Antoniemu Antonim 与格 与格 Alojzego Alojzych Antoniego Antonich 対格 対格 Alojzym Alojzymi Antonim Antonimi 造格 造格 Alojzym Alojzych Antonim Antonich 前置格 前置格 Alojzy Alojzowie Antoni Antoniowie 呼格 呼格 3)女性の名前の場合は、子音で終わる場合と -a 以外の母音で終わる名前の場合は不変 化である。 4)女性の名前で -a で終わるものは普通名詞と同じである。ポーランド人の女性で多い 名前である Anna, Maria の変化は、 単数 複数 単数 複数 Anna Anny Maria Marie 主格 主格 Anny Ann Marii Marii 生格 生格 Annie Annom Marii Mariom 与格 与格 Annę Anny Marię Marie 対格 対格 Anną Annami Marią Mariami 造格 造格 Annie Annach Marii Mariach 前置格 前置格 Anno Anny Mario Marie 呼格 呼格 名詞 135 しかし、Zosia は特殊であり、通常の普通名詞とはやや異なる。 単数 複数 Zosia Zosie 主格 Zosi Zoś 生格 Zosi Zosiom 与格 Zosię Zosie 対格 Zosią Zosiami 造格 Zosi Zosiach 前置格 Zosiu Zosie 呼格 単数呼格が特殊であるのと、単数生格、与格、前置格が -i が一つであるのと、複数 生格が -ś となっていることが異なっている。 136 代名詞 第2章 代名詞 Ⅰ 代名詞の概念 代名詞とは名詞あるいは名詞句に代わりうる品詞である。ポーランド語の代名詞は、 再帰代名詞や副詞的代名詞を除いて、代わりうる名詞の性、数、格に応じて変化するの は、ロシア語と同じである。 ところで、代名詞の概念についてはポーランド語も他の言語と同様、意見が分かれる ところである。すなわち、代名詞と称せられるものには、名詞の代わりという用法のみ 成らず、形容詞のごとく名詞の付加語としての用法が見られるものもある。例えば、mój brat 私の弟、の mój である。これを所有形容詞と呼び、形容詞の概念に含める考えと、 これも代名詞として扱う考えもある。また、代名詞にはこれ以外に副詞として働くもの もある。すなわち、統語論的に言えば定語となるものみならず状況語となる代名詞も存 在するのである(例えば、taki )。また、数詞に関係した代名詞の類似のものも存在す る。そこで、所有形容詞は形容詞として、副詞的用法を有する代名詞は副詞として扱う 考えもある。しかし、そうなると代名詞の範囲が不明確になり、どこまでが代名詞で、 どこまでが副詞で、どこまでが形容詞か等、曖昧さを免れない。そこで、本書では代名 詞の概念を広義と狭義に分けて考えることにした。そして、概略的に広義の代名詞につ いてひとまず本章で述べることにし、続いて、詳細的に狭義のそれについて本章で述べ ることとした、そして、狭義の代名詞を除いた広義の代名詞については、それぞれ関連 する章で述べることにした。例えば、数詞的代名詞は必要に応じ、数詞の章に述べるこ とにしたし、副詞的代名詞については必要に応じ副詞の章に、形容詞的代名詞について は必要に応じ形容詞の章に述べた。 広義の代名詞 狭義の代名詞(名詞的代名詞) 本章で 代名詞的形容詞 形容詞の章で 代名詞的数詞 数詞の章で 代名詞的副詞 副詞の節で Ⅱ 広義の代名詞 広義の代名詞には名詞的用法や付加語的用法等があることを反映して、機能的観点か ら、それぞれの代名詞を名詞的代名詞、代名詞的形容詞、代名詞的数詞、代名詞的副詞 に区別するのが合理的である。、名詞的代名詞は名詞に代わるものであり(名詞的用法 で用いられる代名詞)、代名詞的数詞は数詞として機能するものであり、代名詞的形容 詞は形容詞として機能するものであり(付加語的用法で用いられる)、代名詞的副詞は 副詞として機能するものである。そして、意味的観点から、下記のように分類すること ができる。 代名詞 137 1 名詞的代名詞 A.人称代名詞 ja, ty, my, wy, on, pan, pani, państwo B 再帰代名詞 się C.指示代名詞 ten, tamten, ów, on, ona, ten sam, taki, inny D 所有代名詞 mój, twój, nasz, wasz, jego, jej, ich, pana, pani, panów, pań, państwa E 関係代名詞 kto, co F 疑問代名詞 kto, co G 否定代名詞 nikt, nic H 不定代名詞 ktoś, coś, ktokolwiek, cokolwiek, kto bądź, co bądź, lada kto, lada co, byle kto, byle co I 普及的代名詞 każdy, wszystko, wszyscy 2 代名詞的形容詞 A 指示形容詞 ten, tamten, ów, taki, ten sam, taki sama B 所有形容詞 名詞的代名詞のそれとほぼ同じであるが、それ以外に swój がある。 C 関係形容詞 jaki, który, czyj, co D 疑問形容詞 jaki, który, czyj, co za E 否定形容詞 nijaki, niczyj, żaden F 不定形容詞 jakiś, któryś, czyjś, jakikolwiek, którykolwiek, czyjkolwiek, jaki bądź, który bądź,czyj bądź, lada jaki, lada, który, lada czyj, byle jaki, byle który, byle czyj, pewien, niejaki, niektóry, niejeden, jaki taki G 普及的形容詞 każdy, wszyscy/wszystkie 3 代名詞的数詞 A 指示数詞 tyle,tylekroć,tylokrotny,tyloraki,tylorako,tyle samo B 関係数詞 ile, ilekroć, ilokrotny, iloraki, ilorako(但し、ile 以外は辞書には代 名詞としては載っていない。) C 疑問数詞 関係数詞のそれと同じ D 否定数詞 żaden E 不定数詞 ileś, ilekolwiek, ile bądź, lada ile, niejeden, kilka, kilkanaście, kilkadziesiąt, kilkaset 4 代名詞的副詞 A 指示副詞 tak, tu, tutaj, tam, ówdzie, dalej, stąd, stamtąd, tędy, tamtędy, wtedy, wtenczas, odtąd, dotąd, dopóty, dlatego, tak samo, inaczej B 関係副詞 jak, gdzie, skąd, dokąd, którędy, kiedy, gdy, odkąd, jak długo, dopóki, dlaczego, czemu 138 代名詞 C 疑問副詞 jak, gdzie, skąd, dokąd, którędy, kiedy, odkąd, jak długo, dlaczego, czemu D 否定副詞 nijak,nijako,nigdzie,znikąd,donikąd,nigdy E 不定副詞 jakoś, gdzieś, skądś, dokądś, kiedyś, jakkolwiek, gdziekolwiek, skądkolwiek, dokądkolwiek, którędykolwiek, kiedykolwiek, jak bądź, gdzie bądź, skąd bądź, dokąd bądź, którędy bądź, kiedy bądź, lada jak, lada gdzie, lada kiedy, byle jak, byle gdzie, byle kiedy, jak tako, gdzieniegdzie, niekiedy 以上のように(広義の)代名詞は多岐に亘るのであるが、例えば、ten は指示代名詞 として名詞的代名詞としても代名詞的形容詞としても用いられる。その違いは、前者は 名詞の代わりに用いられるものであり、後者は形容詞の付加語的用法として用いられる ものである。従って、例えば、Ten krzyczy, tamten płacze. こちらは叫び、あちらは泣 いている、という場合は名詞的代名詞であり、ten temat このテーマ、という場合は、 代名詞的形容詞である。 Ⅲ 名詞的代名詞 1.人称代名詞 人称代名詞は会話やテキストの中で話されていたり、既に言及されて いたことなどから、話者及び聞き手に知られている人、物を表すものである。人称代名 詞は原則として主格と呼格は同じである。それ故、以下のパラダイムでは呼格は強いて 挙げない。 1)1人称 男性・女性で区別がない。その変化は以下のごとくである。 単数 複数 主格・呼格 ja my 生格 mnie, (mię) nas 与格 mnie, mi nam 対格 mnie, (mię) nas 造格 mną nami 前置格 mnie nas ロシア語では単数1人称は я、меня、мне、меня、мной、мне となるが、それより も簡単である。一方、複数1人称は мы、нас、нам、нас、нами、нас となるが、全 く同じである。生格、対格の括弧内の mię は現代では主に話し言葉で使われるが、書 き言葉ではほとんど使われない。書き言葉で使われたのは古典的な文芸作品だけである。 単数の与格においては、mnie と mi があるが、どちらになるかは以下にまとめて述 べる。 ロシア語において、前置詞のあとに人称代名詞が使われた場合、前置詞の形が変化し たが (例えば、 ко мне であり、 к мне ではなく、 со мной であり、с мной ではない)、 このことはポーランド語でも起きる。例えば、beze mnie 私なしで、であり、bez mnie ではなく、nade mną 私の上に、であり、nad mną ではないのである。要するに e が 代名詞 139 挿入されるのである。これらは緩衝母音と称されるものであり、詳細は音交替の項を参 照されたい。 2)2人称 この場合も男性・女性で区別がない。その変化は以下のごとくである。 単数 複数 主格・呼格 ty wy 生格 ciebie, cię was 与格 tobie, ci wam 対格 ciebie, cię was 造格 tobą wami 前置格 tobie was ロシア語では単数2人称は ты、тебя、тебе、тебя、тебой、тебе となるが、若干異 なっている。複数2人称は вы、вас、вам、вас、вами、вас となるが、全く同じであ る。 単数の生格、与格、対格では長形と短形の2つの形があるが、どちらになるかは以下 にまとめて述べる。 3)長形か短形か ここにおいて長形とは1人称で単数生格、単数与格、単数対格のうち字数の多い方を、 2人称では単数生格、単数与格、単数対格のうち字数の多い方を指す。短形とは少ない 方を指す。 どちらになるかは次のように言える。 ① 短形は前置詞がない場合で、文頭以外の場合に使われる。但し、強調しない場合に限 られる。 Szukam cię. 私はあなたを捜している。 ② それ以外は長形が使われるが、具体的には以下の場合である。 ア、文頭や節の最初で使われる場合である。 Mnie ten musisz tłumaczyć. 私にそのことを説明しなければならない。 イ、人称を強調する場合である。 Kogo szukasz? あなたは誰を捜しているのですか、Ciebie szukam. あなたを捜して います、という場合は、「あなた」を強調する必要があるので、長形が用いられるので ある。あるいは対比する場合にも長形が用いられる。Anna kocha Jana, a nie ciebie. ア ンナはヤンを愛していて、君ではない。Ojciec tylko tobie wierzy. 父はあなただけを信 じている。Ojciec ci wierzy. 父はあなたを信じている。 ウ、前置詞の後は、長形が用いられる。例えば、dla ciebie であり、dla cię とはならな いのである。 エ、 否定の後では長形が用いられる。 Nie chcesz mnie, i nie chcę ciebie. あなたは私を望まないし、私もあなたを望まない。 オ、się の後は、cię は避けられる傾向にあり、その場合には長形である ciebie が使わ れる。 140 代名詞 カ、書き言葉では生格、対格の mię は使われない。長形の mnie が使われる。 4)3人称は性によって区別する。単数には男性形、中性形、女性形があるが、複数で は男性人間形と非男性人間形を区別する。 変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 on ono ona oni one 生格 jego,go,niego 左同 jej,niej ich,nich ich,nich 与格 jemu,mu,niemu 左同 jej,niej im,nim im,nim 対格 jego,go,niego je,nie ją,nią ich, nich je, nie 造格 nim nim nią nimi nimi 前置格 nim nim niej nich nich ① ロシア語では単数3人称は男性形は он、его、ему、его、им、нём、中性形は оно、 его、ему、его、им、нём となり、男性形と中性形では主格のみが異なる。この点、ポ ーランド語の場合は主格と、対格が異なる。ロシア語の女性形は она、её、ей、её、ей、 ней となり、ポーランド語とは少し異なる。 ② ロシア語の複数3人称は、一種類しかないが、ポーランド語の場合は男性人間形と非 男性人間形を区別する。これはポーランド語に特徴的である。ロシア語は主格から順に、 они、их、им、их、ими、них となる。これは男性人間形とほぼ同じである。非男性 人間形の場合は主格が one となり、 対格が je となる以外は、 男性人間形と同じである。 ③ 3人称には長形、短形のみならず、さらに ni- が付加された形のものが見られる。 ni- が付加されたものは、j あるいは i で始まる代名詞が前置詞に支配される場合に使 用される。上の変化表の内、niego, niemu, nie, nią, niej, nim, nich である。例えば、bez jego ではなく、bez niego となる。ロシア語においても3人称では н- を付加したが、 それと類似している。 ④ 単数3人称男性形生格、与格、対格、中性形生格、与格には長形と短形があるが、ど ちらを使用するかは1人称、2人称と同じである。 ⑤ 単数3人称中性形の対格は je か nie であるが、これは複数3人称非男性人間形の対 格と全く同じである。従って、この両者を区別しなければならないが、まず、je となる か nie となるかは前置詞の後は nie が使われる。そして、それが単数であるか複数で あるかは指し示すものが単数なのか複数なのかを文脈によって判断するべきである。 4)敬称の人称代名詞 ロシア語においては、敬意を表する相手には вы を使い、それは人称的には単数2人 称であっても文法上は複数2人称として扱う。しかし、ポーランド語の場合は、もう少 しきめ細かいし、文法上は3人称として(単数の場合と複数の場合がある。)扱う。 すなわち、男性単数の相手に対しては、pan、その複数に対しては panowie、女性単 数の相手に対しては pani、その複数に対しては panie、相手が複数で男性と女性を含 代名詞 141 む場合は państwo(男性人間形扱い) となるのである。その変化は以下の如くである。 尚、人称代名詞は通常は主格と呼格が同じであるが、pan だけは呼格(下記のように panie となる)が異なっているので、呼格も記載する。 pan ~氏、~様、~さん pani ~さん、~様 państwo ~夫妻、皆さん 単数 複数 単数 複数 複数のみ 主格 pan panowie pani panie państwo 生格 pana panów pani pań państwa 与格 panu panom pani paniom państwu 対格 pana panów panią panie państwa 造格 panem panami panią paniami państwem 前置格 panu panach pani paniach państwu 呼格 panie panowie pani panie państwo pan, pani, państwo についてはいろいろ複雑なことがあるので、注意すべき点を以下 に言及する。 ① まず、苗字や名前と結びつくのであるが、特に名前の方と結びつくことが多い。苗字 と結びつく場合は、著しくフォーマルな場面である。例えば、病院で患者を呼ぶ場合で ある。 ② しかし、難しいのは当事者の社会的地位によって、呼ぶ方法が異る点があると言うこ とである。例えば、被用者が雇用者を呼ぶ場合には pan だけであり、pan に名前を付 加したりはしない。しかし、逆に雇用者が被用者を呼ぶ場合には pan + 名前の形で呼 ぶのである。 ③ państwo は紳士淑女の呼びかけだったり、もっと狭く苗字と一緒に呼ぶ場合がある。 前者の例:Dzień dobry państwu! 皆さん、こんにちは(下記の④のように単に呼びか けであるので、与格となる。)。 Witam państwa! 皆さん、よろしく。 後者の例:Tu mieszkają państwo Tuski. これはトゥスク氏の家です。 Państwo Nowakowie! ノヴァック夫妻! ④ 直接的な呼びかけでは、pan や pani は呼格で表す。 Dzień dobry, panie Janie! こんにちは、ジャン。 名前を付けずに、単に呼びかけだけの場合は、与格で表す。 Dzień dobry panu(pani, państwu)! こんにちは。 ※ ③ との違いは③ の場合は間接的な呼びかけであったのに対して、④ の場合は直接 的な呼びかけである点である。 ⑤ on, ona, oni, one はよく省かれるのであるが、pan, pani, państwo は滅多に省かれな い。ただ、従属節で2番目に出現した節で、両方の主語になっている場合には、省略さ れることがある。 ⑥ 生格形の pana, pani, panów, pań, państwa は所有形容詞となり、それは変化はしな 142 代名詞 い。pana kapleusz あなたの帽子、 pani mąż あなたの夫、dom państwa あなた方 の家 等である。この場合、注意すべきは państwa は名詞の後に置かれると言うこ とと、pana, pani, panów, pań, państwa 自体が男性、女性、複数を表し、関係する 名詞の性・数には関係ないということである。 ⑦ Pan, Pani, Panowie, Panie, Panstówo と最初の文字を大文字にする場合は、特に尊 敬の念を込める時である。 5)人称代名詞の用法 ① 1人称及び2人称においてはこれらが主語になるときは原則として明記しない。 なぜ なら、動詞の活用形で主語が判明するからである。例えば、Idę do szkoły. 私は学校へ 行く。 Idziesz do szkoły. あなたは学校へ行く。 Idziemy do szkoły. 我々は学校へ行く。 Idziecie do szkoły. あなた方は学校へ行く、等である。 しかし、強調する場合や否定語が関係する場合や対比する場合には明記する。 Ja tego nie zrobię. 私はそれをしない。 Tego my nie zrobimy. 我々はそれをしない、 Ty chcesz grać w tenisa, ale ja chcę grać w baseball. 君はテニスをしたがっている が、僕は野球をしたいのだ。 ② 3人称においては、現在形では単数であろうが複数であろうが原則として明記する。 しかし、文の続きであって文脈から誰かが分かる場合には省略する。 Tam jest pan Nowak. On jest lekarzem. Jest bardzo zmęczony. あそこにノヴァッ クさんがいる。彼は医師である。彼は非常に疲れている(3番目の文の場合、主語 は Nowak = On であることが分かるので、省略するのである。)。 一方、過去形では語尾によって男性形か中性形か女性形かを判断することができるの で、原則として明記しない。 Był lekarzem. 彼は医師だった。 ③ 3人称複数において男性人間形を使うか、 非男性人間形を使うか、 という問題がある。 男性人間形を使うのは、ア、男性だけのグループの場合、イ、男性と女性の混合のグル ープの場合、ウ、男性と動物のグループの場合、等であり、少なくとも1名男性がいれ ば男性人間形を使用して良いと言える。従って、非男性人間形を使う場合は、ア、女性 だけのグループの場合、イ、女性と子供のグループの場合、ウ、女性と人間以外の動物 や物の組み合わせのグループの場合、エ、人間以外のグループの場合、等が挙げられる。 ④ 3人称複数において oni で受けるか one で受けるかで良く遭遇するのは osoby, ludzie, dzieci である。そのうち、ludzie は oni で受けるが、osoby と dzieci は one で 受ける。なぜなら、ludzie の単数形は człowiek であり、これは男性人間名詞であるが、 osoby の単数形は osoba であり、これは女性名詞であり、dzieci の単数形は dziecko と いう中性名詞だからである。 2.再帰代名詞 ロシア語においては、3人称が文の主語と関係する場合には再帰代名詞を使用するこ 代名詞 143 とが義務づけられていたが、その点はポーランド語においても同様である。例えば、 Adam opowiada o sobie.アダムは自分のことについて話している、となり、Adam opowiada o nim.* とするのは間違いであり、 このようにするとアダムとは別人の彼につ いて話していることになる。 再帰代名詞に主格形がないのは、ロシア語と同じである。ロシア語ではそれ以外の格 においてсебя、 себе、 себя、 собой、 себе となる。 ポーランド語においては 生格siebie(się)、 与格 sobie、対格 siebie(się)、造格 sobą、前置格 sobie となる。これらは性に関わりな く、また、単数複数に関わりなく使用されるのはロシア語と同じである。尚、再帰代名 詞の変化は単数2人称の人称代名詞である ty と同じである。すなわち、t が s に替わ っているだけである。ただ、正確に言うとやや異なり、生格、対格では ty の場合は tiebie* となると考えられるが、t は母音 e の前では t → ć に子音交替があるので、 ciebie となるのである。 再帰代名詞は無人称構文や受動態構文で使われたり、主語のない文で現れることがあ るが、これらの用法については後の章で述べる。 1)主たる用法 再帰代名詞の基本的な用法は、再帰的な意味(自分自身を)と、相互的な意味である。 そして、当該動詞が補語として生格を要求する場合には当然再帰動詞も生格になるし、 与格であれば与格に、対格であれば対格に、造格であれば造格になる。また、前置詞に 関係する場合には当該前置詞の支配に影響されることも言うまでもない。 ① もし、一つの文で3人称の代名詞が2つ以上出現し、それが主語となる代名詞と同じ 場合にはその代名詞は再帰代名詞を使用しなければならない。 Ona jest zadowolony z siebie. 彼女は自分に満足している(zadowolny z + 生格とな る。)。 On myśli tylko o sobie. 彼は自分のことだけを考えている。 ② 相互的な意味とは、「お互いに」、と言う意味である。 Opowiadamy sobie plotki. 我々はお互いにゴシップを言い合っている。 Nie podajemy sobie rąk. 我々はお互いに握手をしない。 2)個々の用法 ① 生格での用法 Boję się siebie. 私は自分が怖い ( bać się は純粋代名動詞であり、się は再帰代名詞 としてではなく、助詞として機能している。そして、bać się は生格支配であるの で、再帰代名詞は siebie と生格が使われている。)。 Mówię do siebie. 私は自分に話しかけている。 Mieszkamy blisko siebie. 私たちはお互いに近い所に住んでいる。 ② 与格での用法 Przyglądał się sobie w lustrze. 彼は鏡で自分の顔を見ていた(przyglądać się は純粋 代 名動詞であり、与格支配の動詞であり、直接補語として与格が使われる。)。 Ona kupiła sobie kwiat. 彼女の自分自身のために花を買った。 144 代名詞 Zawsze pomogamy sobie. 常に我々はお互いに助け合っている。 ※ 与格の sobie はある種の動詞と結合して慣用句を作る。folgować sobie ~に耽る、 kpić sobie z kogoś/czegoś (人)あるいは(物)をばかにする、życzyć sobie 望む、rościć sobie 権利を持つ、等である。 ③ 対格の用法 Widział siebie w lustrze. 彼は鏡で自分の顔を見た(widziać は対格支配の動詞であ るので、直接補語として対格が使われる。)。 Myję się. 私は自分の身体を洗う。 On ubiera się. 彼は服を着ている。 Ciągle się kochamy. いつも我々は愛し合っている。 Ona znała siebie dobrze. 彼女は自分のことをよく知っている。 ④ 造格の用法 Gardził sobą. 彼は自分自身を軽蔑していた(gardzić は造格支配の動詞であり、直接 補語として造格が使われる。)。 On chce rządzić sobą. 彼は自分をコントロールしたいと思っている。 Zamknij drzwi za sobą. 君の後ろにあるドアを閉めなさい。 Oni grali z sobą w tenisa wczoraj. 彼らは昨日お互いにテニスをしていた。 ⑤ 前置格の用法 前置格支配の前置詞の後の再帰代名詞は前置格形の sobie が使われるのは当然であ る。 On mówił o sobie. 彼は自分自身について話していた。 ⑥ 無人称構文での się はしばしば受動の意味を表すことがある(詳細は無人称文の章 参照)。 Tu się buduje nowy dom. ここに新しい家が建設されるだろう。 3)siebie と się 再帰代名詞の siebie は生格と対格でそのまま siebie となるが、一方では短縮形とし て się と言うのがある。代名動詞では się を使うが、それ以外の動詞では、原則的には siebie を使うべきであろう。なぜなら、się は主として代名動詞の不変化詞として使用 され、それ自体は代名動詞の構成要素となるからであり、それと区別する必要があるか らである。しかし、代名動詞以外であっても人称代名詞として短形を用いる場合には、 się を使うべきである。例えば、On się myje. 彼は自分の身体を洗う、という場合、myć 自体は代名動詞ではない。そして、On cię myje. 彼はあなたの身体を洗う、という様に 代名詞は cię という短形を用いる。 これは文の初めではないし、 強調する場合でもなく、 また、前置詞の後でもないからである。これと同じように自分自身を表す場合は、się と いう短形になるのである。 4)特別な与格としての sobie 再帰代名詞の与格形である sobie は前述した与格での用法( 2)の② )の他に曖昧、 きまぐれ、なおざり、無目的、恣意的、偶然的なニュアンスの時、に用いられることが ある。特に、話し言葉で用いられる。 代名詞 145 Pójdę sobie. 私は自分自身の道を行くつもりだ。 Kupiliście sobie tani obiad? あなた方は安い昼食を買いましたか。 Znalazł sobie dziewczynę. 彼は自分で女友達を見つけた。 Róbcie sobie co chcecie. あなた方が好きなようにしなさい。 ※ これらの場合は、sobie がなくても文法的に誤りではないが、語調を整える意味が あって使っている。 3.指示代名詞 それは、これは、等 ロシア語と同じように指示代名詞がポーランド語にもある。ロシア語においては近く のものは этот 遠くのものは тот として、区別するのであるが、ポーランド語において はやや異なっている。すなわち、指示代名詞の代表的なものに ten があるが、これは自 分の近くにあるもののみならず、対話の相手の近くにあるものも指すのである。そして、 指示代名詞の合成型として tamten があるが、これは対話者から遠くのものを表す。ま た、taki というものもあり、これは「そのような」等の意味を表す。ロシア語で言えば、 такой に相当する。 1)ten, tamten の変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間 形 主格・呼格 ten to ta ci te 生格 tego tego tej tych tych 与格 temu temu tej tym tym 対格 ten/tego to tę tych te 造格 tym tym tą tymi tymi 前置格 tym tym tej tych tych 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 tamten tamto tamta tamci tamte 生格 tamtego tamtego tamtej tamtych tamtych 与格 tamtemu tamtemu tamtej tamtym tamtym 対格 tamten/tamtego tamto tamtą tamtych tamte 造格 tamtym tamtym tamtą tamtymi tamtymi 前置格 tamtym tamtym tamtej tamtych tamtych ※ tamten の場合は、 ten の変化に単に tam を付加するだけで良いといえるが、 ただ、 女性対格だけは tę と tamtą であり、異なっている。もっとも、最近は ten の対格で tą も使われるようになっている。 2)上述のように、自分の近くのものを表す時は ten 、話し相手の近くにあるものを表 す時も ten を使うと一応言える。そして、tamten は話者より遠くのものを表すのが基 146 代名詞 本である。しかし、これらにはその他にもいろいろな用法がある。そこで、まず、ten の 用法を述べる。 ① それ、その人、あるもの、ある人、を表す。 rozmawiać o tym i owym あれやこれやについて話す ② 関係代名詞によって導かれる従属節の先行詞として働く場合もある。 To jest książka, o której mówiłem. それが私が話していた本です。 ③ (接続詞、疑問代名詞によって導かれる従属節の内容全体を受けて)~ということ To dobrze, że przyjdziesz. あなたが来ることはよい。 ④ (既に述べられたこと、またはこれから述べることを指して)そのこと Nic się nie działo.To minie zaniepokoilo. 何も起こらなかった。そのことが私を不安 にさせた。 ⑤ 慣用句で Kto szuka, ten znajdzie. 求める者は見いだすであろう。 3)tamten 前述したように、話者より遠くのものを指す場合に用いられるが、それ以外によく使わ れるのは ten と同時に用いられ、対比をなす場合である。 Ten krzyczy, tamten płacze. ある者は叫び、ある者は泣いている。 to i tamto あれやこれやで ten albo tamten どちらか rosmawiać o tym i tamtym あれやこれやについて話す Daj pieniądze tym, nie tamtym. あちらではなくこちらの人々に金を与えよ。 Ci ludzie są za, a tamci przeciw. これらの人々は賛成し、それ以外(あちら)の人々 は反対する。 4) taki 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 taki takie taka tacy takie 生格 takiego takiego takiej takich takich 与格 takiemu takiemu takiej takim takim 対格 taki/takiego takie taką takich takie 造格 takim takim taką takimi takimi 前置格 takim takim takiej takich takich Taką chcesz lalkę? Takiej ci nie kupię. あなたはそのような人形が欲しいですか。 私はそのようなものはあなたに買って上げませんよ(最初の文の文頭の Taką は 代名詞的形容詞として使われているが、2番目の文章の文頭が名詞的代名詞とし 代名詞 147 て使われている。そして、生格となっているのは否定生格だからである。)。 duże miasta, takie jak Warsaw i Kraków ワルシャワやクラクフのような大都市 5) ów ów も指示代名詞であり、「あれは」、を表す雅語である。その変化は以下のごとく である。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 ów owo owa owi owe 生格 owego owego owej owych owych 与格 owemu owemu owej owym owym 対格 ów/owego owo ową owych owe 造格 owym owym ową owymi owymi 前置格 owym owym owej owych owych ów も ten と対句をなすことが多い。 Ten czytal, ów słuchał muzyki. こちらの者は本を読み、あちらの者は音楽を聴い ていた。 to i owo あれやこれやのもの・いろいろなもの ten i ów 何人かの人・いろいろな人 6)inny これも指示代名詞としての用法がある。まず、その変化は、 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 inny inne inna inni inne 生格 innego innego innej innych innych 与格 innemu innemu innej innym innym 対格 innego/inny inne inną innych inne 造格 innym innym inną innymi innymi 前置格 innym innym innej innych innych ① inny は ten sam 同じ、taki sam 同じ種類の、と対比されることが多い。 To nie jest ten sam film, jest inny. これは同じ映画ではなく、異なったものである。 ② 複数の inni/inne はしばしば niektórzy/niektóre, jedni/jedne, pewni/pewne と対比 される。 Niektórzy ludzie wyszli, inni zostali. ある者は去り、ある者は残った。 ③ 他の誰か、という意味もある。 On kocha inną. 彼は他の誰かを愛している。 148 代名詞 ④ 成句で między innymi とりわけ、innymi słowy 換言すれば 7) sam 指示代名詞の強調形として、sam, sama, samo というものがある。これは指示代名詞 を強調するものであり、ロシア語の сам、сама、само に相当する。その変化は、 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 sam samo sama sami same 生格 samego samego samej samych samych 与格 samemu samemu samej samym samym 対格 sam/samego samo samą samych same 造格 samym samym samą samymi samymi 前置格 samym samym samej samych samych ① この代名詞は、まず、名詞や代名詞を強調することである。 Sam to zrobiłem. 私はそれを自分自身でやった。 Dom sam się rozwalił. 家は自然に壊れた。 Sam prezydent przyszedł na spotkanie. 大統領自身がその会議にやって来た。 ② 次に、「単独で」、という意味を表す。 Ona przyszła sama. 彼女は一人でやって来た。 ③ ten, ta, to と一緒に使われて、「~と同じ」、という意味を表す。 w tym samym czasie 全く同じ時に w tym samym miejscu 全く同じ場所に ④ 時間、場所、適合性、特徴などを強調する場合にも使われる。要するに、「まさに その・・・」である。 Zmarł w samą północ. 彼は午前0時ピッタリに死亡した。 On mieszka przed samym kościołem. 彼は教会の真ん前に住んでいる。 ⑤ 「ただ~だけ」、という意味を表す場合もある。 Mówił samą prawdę. 彼はただ真実だけを言った。 Nie samym chlebem człowiek żyje. 人はただパンのみに生きるにあらず。 4.所有代名詞 所有代名詞としては mój 私のもの、twój あなたのもの、swój 自分自身のもの、nasz 我々のもの、wasz あなた方のもの、と jego 彼のもの・それのもの、jej 彼女のもの、 ich 彼らのもの・それらのもの、等がある。ロシア語にもあったことであるが、3人称 を表す所有代名詞は所有者の性と数に関係するだけで、関係する名詞の性、格、数には 関係がなく、一律であり、変化もしない。これに対して、1人称、2人称の場合は関係 代名詞 149 する名詞の性、格、数によって形が異なり、ただ、所有者の性には関係がない。そこで、 mój の変化形を示すと、 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 mój moje moja moi moje 生格 mojego mojego mojej moich moich 与格 mojemu mojemu mojej moim moim 対格 mój/mojego moje moją moich moje 造格 moim moim moją moimi moimi 前置格 moim moim mojej moich moich Nie bierz tej parasolki. Weź moją. この傘を持って行くな。私のものを持って行け。 Czyj to samochód? Mój. それは誰の車ですか。私のです。 Czyj to samochód? Swój. それは誰の車ですか。私自身のです。 Czyje to książki? Moje. それは誰の本ですか(複数)。私のです。 3人称の場合は人称代名詞の生格と同じである。jego 彼の・それの jej 彼女の ich 彼ら の・それらの・彼女らの、となる。 Rower jest jego. その自転車は彼のものである。 Czyj to samochód? Jego. それは誰の車ですか。彼のです。 5.疑問代名詞 1) 疑問代名詞としては kto, co があるが、これらはロシア語の кто と что と同じと考 えればよい。その変化は以下のごとくであるが、ここで注意すべきは kto, co はすべて の性や数に関係し、格により違いがあるに過ぎないということである。従って、後述し たように、1形式だけであり、通常の場合のように5つの形式があるのと異なっている。 主格・呼格 生格 与格 対格 造格 前置格 kto kogo komu kogo kim kim co czego czemu co czym czym 150 代名詞 Kto to jest? それは誰ですか。Kto ma rower? 誰が自転車を持っていますか。 Dla kogo żyjesz? あなたは誰のために生きているのですか。 Komu dałeś tę książkę? あなたはこの本を誰にあげたのですか。 Kogo on kochasz? 彼は誰を愛しているのですか。 Kim ona gardzi? 彼女は誰を軽蔑しているのですか。 O kim on myślał.? 彼は誰について考えていたのですか。 Co to jest? それは何ですか。 Dla czego żyjesz? あなたは何のために生きているのですか。 Czemu on dziwił się? 彼は何に驚いていたのか。 Co John kupił? ジョンは何を買ったのか。 Czym interesujesz się? 君は何に興味があるのか。 O czym on myślał? 彼は何について考えていたのですか。 2) 疑問代名詞としてはその他に jaki, który, czyj がある。これらは代名詞的形容詞と して使用されることが多いのであるが、名詞的代名詞として使用されることもある。そ れぞれ、「どのようなもの・人?」「どれ?」「誰のもの?」という意味となるであろ う。 その変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 jaki jakie jaka jacy jakie 生格 jakiego jakiego jakiej jakich jakich 与格 jakiemu jakiemu jakiej jakim jakim 対格 jak/jakiego jakie jaką jakich jakie 造格 jakim jakim jaką jakimi jakimi 前置格 jakim jakim jakiej jakich jakich 単数 男性形 主格・呼格 który 生格 którego 与格 któremu 対格 który/którego 造格 którym 前置格 którym 中性形 które którego któremu które którym którym 女性形 która której której którą którą której 複数 男性人間形 którzy których którym których którymi których 非男性人間形 które których którym których którymi których 代名詞 151 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 czyj czyje czyja czyi czyje 生格 czyjego czyjego czyjej czyich czyich 与格 czyjemu czyjemu czyjej czyim czyim 対格 zyj/czyjego czyje czyją czyich czyich 造格 czyim czyim czyją czyimi czyimi 前置格 czyim czyim czyjej czyich czyich 代名詞の変化は形容詞のそれに準じるのであるが、母音の後で、i の前の j は脱落 するので、複数男性人間形は czyi となっているのである。 Jaki on jest? 彼はどのような人か? Jakie grasz w szkole? あなたは学校ではどんなスポーツをしているのか。 Wiele pysznych jabłka! Które wolisz? 何とたくさんのおいしいリンゴがあることか。 あなたはどれが良いですか。 Był z psem. Z czyim? 彼は犬と一緒だった。誰の犬? 6.関係代名詞 疑問代名詞は同時に関係代名詞ともなる。ただ、関係代名詞は疑問代名詞と異なり、 主節には使われないし、単文でも使われない。関係代名詞は主節と従属節(関係節と呼 ばれる)を結ぶ代名詞である。関係代名詞は主節における名詞や代名詞に取って代わる ものであったり、主節全体に取って代わるものであったりする。関係代名詞によって取 って代わられる名詞、代名詞、節を先行詞あるいは先行詞節と呼ぶ。 ポーランド語においても関係節における働きに応じて関係代名詞が変化するのは言 うまでもない。 関係代名詞としては主に który が使われる。który の変化は上述したが、性、数、格 に応じて変化する。その他には kto, co, czyj, jaki も関係代名詞として使われるが、その 用法は限られている。そこで、まず、który に言及する。 1) który 性、数は先行詞に一致し、格は関係節の機能に応じるのはロシア語の который と同じである。そして、ロシア語と同じく、先行詞は人であろうが、動物 であろうが、物であろうが、構わない。 ① 主格 To jest pan Tusk, który pracuje na uniwersytecie. この人が大学で働いているトゥ スク氏です。 To jest pani Tusk, która pracuje na szkole. この人が小学校で働いているトゥスク さんです。 ② 生格 Tanaka, do którego idę czasem, jest moim przyjacielem. 私がしばしば行く田中君 は、私の友人です。 ③ 与格 152 代名詞 Piotr, któremu on daje zawsze zawawkę, jest jego synem. 彼が常におもちゃを与え ているピーターは彼の息子である。 ④ 対格 Nagroda, ktorą wygrałem, jest zła. 私が受けた賞は良くない。 ⑤ 造格 To jest pan Tanaka, z którym się uczyłem razem w szkole. この人は私が小学校で 一緒に学んだ田中氏です。 ⑥ 前置格 Widziałem film, o którym on mówił. 私は彼が話していた映画を見た。 2)kto この場合は、先行詞が代名詞の ten, każdy, nikt, ktoś 等に限られ、名詞が先行 詞となることはまれである。この点はロシア語の кто でも同じである。 Ten, kto nie oszczędza, nie ma pieniędzy. 貯金をしない人は金を持っていない。 Kto nie pracuje, ten nie je. 働かない者は食うべからず。 Każdy, kto studiuje język japoński, chce pojechać do Japonii. 日本語を勉強してい る人は皆、日本へ行くことを望んでいる。 Ktoś, kogo znasz, popełnił przestępstwo. あなたが知っている誰かが、その罪を犯し た。 Nie znam nikogo, kto mógłby to naprawić. 私はそれを直すことができる人を誰も知 らない。 3)co この場合は、先行詞が to, wszystko, coś, nic, ktoś 等の代名詞に限られ、名詞が 先行詞となることはまれである。この点もロシア語の что と同じである。 Zrób to, co mówiłeś. あなたが言ったことをやりなさい。 Wszystko, co mogę, od razu zrobię. 私はできることはすぐにやる(od razu は「すぐ に」という副詞句)。 Mam coś, co cię zainteresuje. 私はあなたに興味を抱かせるものを持っている。 Jest ktoś, co cię kocha. あなたを愛している人がいる。 4) jaki これはロシア語の какой と類似している。ロシア語では такой ..., какой ~ という形で使われ、「~と同じような..」. 、という意味になったが、ポーランド語では taki ..., jaki ~ という形で使われる。 Mieszkaliśmy w takim mieszkanie, w jakim mieszkaliście. 我々はあなた方が住ん でいたのと同じような家に住んでいた。 On słucha taką muzykę, jaką słuchają dużo ludzi. 彼は多くの人々が聴くような音 楽を聴く。 その他には、次のような使われ方もある。 Te są powieści, jakie pisał pod koniec życia. それらは彼が人生の最後に書いた小説 である。 W mieście była powódź, jakiej nie pamiętało starsze pokolenie. その町では古い世 代に洪水があったが、それは人々が忘れられないものであった。 代名詞 153 7.普及的代名詞 これには każdy それぞれ、wszytkie すべて、wszystko すべて、niektóry 幾つか、 żaden 何も~でない、がある。 1)każdy, wszytkie の変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 każdy każde każda wszyscy wszystkie 生格 każdego każdego każdej wszystkich wszystkich 与格 każdemu każdemu każdej wszystkich wszystkich 対格 każdego/każdy każde każdą wszystkich wszystkie 造格 każdym każdym każdą wszystkimi wszystkimi 前置格 każdym każdym każdej wszystkich wszystkich każdy は単数扱いであり、wszystkie は複数扱いである。wszystkie の基本形(辞書 に掲載されている形)は wszystek であるが、これが文の中で使われることはない。 wszystkie に類似したものとして、wszystko がある。しかし、これは単数扱いであ る点で wszystkie と異なるし、każdy の中性形である każde と同じである。wszystko の格変化は wszystko(主・呼), wszystkiego(生), wszystkiemu(与), wszystko(対), wszystkim(造), wszystkim(前) となる。 これらの場合の使い方は、każdy を例に取ると、każdy z nas 我々の内のすべての者 が、という場合である。尚、後述の代名詞的形容詞(第3章 形容詞で述べる)の使い方 は、każdego dnia 毎日、という場合である。 Przyszli wszyscy. すべての者が来た。 Każdy z nich przyszedł. 彼らの内の皆がやってきた。 Oni wszyscy przyszli. 彼ら全員がやってきた。 Każda z nich jest zmęczona. 彼女らの内の皆が疲れている。 One wszystkie są zmęczone. 彼女ら全員が疲れている。 Wszyscy są na wakacjach. 全員が休暇中である。 Wszystko jest gotowe. すべてが準備されている(wszystko は単数中性扱い)。 Wszystko wskazuje na to, że ... すべての者は・・・であることを、指し示している。 przede wszystkim とりわけ 2)niektóry の変化は który に nie- を付加するだけであり、パラダイムは省略する。 Niektórzy z gości spóźnili się. お客の内の何人かは遅刻した。 Tylko niektóre z dziewczynek zdały egzamin. 少女達の数人だけが試験に合格した。 Każdy komputer jest dobry, ale niektóre są za drogie. すべてのコンピューターは 良いが、その内の幾つかは高すぎる。 3)żaden の変化は以下のごとくである。 154 代名詞 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 żaden żadne żadna żadni żadne 生格 żadnego żadnego żdnej żadnych żadnych 与格 żadnemu żadnemu żadnej żadnym żadnym 対格 żadnego/żaden żadne żadną żadnych żadne 造格 żadnym żadnym żadną żadnymi żadnymi 前置格 żadnym żadnym żadnej żadnych żadnych Czekałem na nich, ale żaden nie przyszedł. 私は彼らを待っていた。しかし、誰もや ってこなかった。 żaden z uczniów nie studiował. 生徒の誰も勉強しなかった。 8.強調的疑問代名詞 これには któż, cóż がある。それぞれ kto, co を強調した形である。Któż to zrobił? 一 体全体、誰がそれをしたか?、Cóż to? 一体全体、それは何か?、となる。この強調的 疑問代名詞も通常の疑問代名詞と同じように変化する。変化形は -ż の部分を除いたも のと原則として同じである( -ż は後接辞と呼ばれるものである。)。従って、主格・ 呼格、生格、与格、対格、造格、前置格、の順に示すと、それぞれ ktoż kogoż komuż kogoż kimż kimż、cóż czegóż czemuż cóż czymż czymż となるの である。 Czegóż więcej ci potrzeba? 一体ほかに何を言う必要があるのか。 通常の疑問代名詞は関係代名詞としても機能したが、強調的疑問代名詞の場合には、 関係代名詞としては機能しない。 9.不定代名詞 1)不定代名詞に関しては、ロシア語では кто- то、кто-нибудь 等があるが、それと類 似するものがポーランド語にもある。しかも、ロシア語と同じく something specific but unkown(実は特定なものを指しているが、話し手がそれを明言しない場合で) の場合 と something non-specific and unkown(実際に不特定なものを指しており、話し手に それが分かっていない場合)の場合がある。前者については後接辞として -ś を付加し、 後者については後接辞として -kolwiek を付加する。それらを挙げると coś 何か、ktoś 誰か、cokolwiek 何か、ktokolwiek 誰か、である。これらのの変化 は、 主格・呼格 coś ktoś cokolwiek ktokolwiek 生格 czegoś kogoś czegokolwiek kogokolwiek 与格 czemuś komuś czemukolwiek komukolwiek 対格 coś kogoś cokolwiek kogokolwiek 造格 czymś kimś czymkolwiek kimkolwiek 前置格 czymś kimś czymkolwiek kimkolwiek 代名詞 155 -ś, -kolwiek 自体は全く変化せず、それぞれの変化形に付加されるのである。 Czy był ktokolwiek do mnie? 誰かが私を訪ねてきましたか。 Tak, ktoś był do ciebie. ええ、誰か、訪ねてきました(しかし、誰か名前は分かりま せん)。 尚、coś で注意を要するのは、主格あるいは対格の場合、それに続く形容詞は生格に なると言うことである。例えば、Coś ciekawego jest na dziennim pokoju. 興味深いこ とが居間にある、と なる。一方、主格、対格以外の格の場合には、不定代名詞の格と同 じ格になる。例えば、On mówi o czymś ciekawym. 彼は興味深いことを話していた、 である。 しかし、このことは ktoś には該当せず、主格、対格でも形容詞の格は不定代名詞の 格と同じ格になる。例えば、Ktoś inny korzysta z mojego konta. 他の誰かが、私のア カウントを使っている、となる。 尚、 -kolwiek の代わりに bądź を付けても良い。その場合、別の単語になる。すな わち、例えば、ktokolwiek は kto bądź と同じである。 また、cokolwiek は co bądź と 同じである。 10.否定代名詞 ロシア語においては否定代名詞として、никто、ничто があるが、それと同じように ポーランド語においても nikt, nic というのがある。それらの変化も kto, co と類似し ている。だから、kto, co と同じように変化は一形式しかなく、性、数に係わりがない。 すなわち、nikt nikogo nikomu nikogo nikim nikim と、nic niczego( または nic ) niczemu nic niczym niczym となる。また、物に関してでも人に関してでも否定する代 名詞に żaden があるが、これは性、数と関係があり、前述した配分的代名詞の範疇に 入るであろう。 ロシア語でも見られたことであるが、否定代名詞を使う場合にはさらに否定詞である nie も使われる。しかし、これは二重否定になるのではなく、単に否定を強める意味し かないことに注意すべきである。 1)nikt Nikt nie przyszedł. 誰も来なかった。 Nikomu o pracy nie mówił. 彼は仕事について誰にも話さなかった。 Nie rozmawiałem z nikim. 私は誰とも話さなかった。 Nic się nie zmieniło. 何も変わらなかった。 2)nic nic が直接補語になる場合には否定生格が使われるが、注意すべきは nic の生格形に は niczego のみならず、nic も用いられることがあることである。従って、nic の場合 には、形の上では主格、生格、対格の3つが考えられるのである。そして、生格の場合、 どちらが使われるかであるが、肯定文での動詞が生格支配の場合には niczego が使われ、 生格支配以外の場合には nic が使われるのが通常である。また、生格支配の前置詞の後 には niczego が使われるのが通常である。しかし、nie の前に 否定代名詞が付く場合 156 代名詞 には nic が使われ、nie の後に否定代名詞が付く場合には niczego となることもある。 Nic nie mam. 私は何も持っていない。 Nie mam niczego. 私は何も持っていない。 Nic nie dostał do zjedzenia. 彼は食べ物を何も得られなかった。 Nie dostał niczego do zjedzenia. 彼は食べ物を何も得られなかった。 Niczego mi nie brakuje. 私には何も不足していない(この場合は、上の原則に反する が、慣用的にこのように使われる。)。 Nic tu nie widać. ここでは何も見えない。 do niczego 何の役にも立たない bez niczego 何もなく 尚、nikogo は生格でも対格でも形は同じであるので、否定生格になったとしても 変わりはないので、特に考慮するに値しない。 付)co, coś, cokolwiek, nic の特殊な用法 これには形容詞の単数男性生格形と結びついて特殊な意味を表す用法がある。慣用句 も多い。 Co nowego? 何か変わったことは? coś nowego 何か新しいこと coś innego 何か他のこと To było coś dziwnego. それはちょっとした不思議なことであった。 Coś takiego! まさか! nic innego 他ならない nic takiego 何一つ重要なものがない 形容詞 157 第3章 形容詞 Ⅰ序 形容詞は物の素性、特質を表すものである。それ故、人や動物、物、性質、感情、行 為等を特徴づけるものである。 形容詞は意味の上から記述的形容詞、分類的形容詞に分けられる。 記述的形容詞は主として物の性質を表す。例えば、jasny 明るい、twardy 堅い、gorący 熱い、ciemny 暗い、samotny 寂しい、等である。これに対して、分類的形容詞は名詞 等から派生し、その名詞等に関わるものを分類する機能を有する。例えば、metalowy 金 属の(metal 金属、から)、południowy 南の( południe 南、から)、szkolny 学校 の( szkoła 学校、から)、domowy 家の( dom 家、から)、等である。もっとも、 これらの区別は相対的なものであり、同じ形容詞が、記述的意味になることもあれば、 分類的意味になることもある。例えば、 chiński profesor 中国の教授、と kuchina chińska 中国料理、の場合、前者は記述的意味に、後者は分類的意味に使われている。 比較級・最上級については、記述的形容詞のみがそれらを有し、分類的形容詞につい てはその性格上比較級・最上級を有しない、のが原則である。 Ⅱ 形容詞の変化 形容詞の変化に関しては、ロシア語の場合、修飾される名詞の性、数、格によって語 尾が異なっていた。その場合、単数の場合には男性名詞か、中性名詞か、女性名詞かに よって語尾は異なっていた。そして、複数の場合には性に関わりなく一律であった。ポ ーランド語においては単数についてはロシア語と同様、修飾されるものが男性名詞、中 性名詞、女性名詞によって異なる。しかし、複数名詞の場合に特色がある。それは、男 性人間形とそれ以外で語尾が異なるという点である。これは、動詞の過去形についても 言えることであり、ロシア語にないポーランド語の特徴といえよう。 また、ロシア語においては形容詞は変化の形式により硬変化形容詞、軟変化形容詞等 の区別があった。ポーランド語においてもそれは見られる。 形容詞も格によって変化するのであるが、単数、複数を通じて常に主格と呼格は同じ であり、その点で形容詞の格変化を考える場合に、名詞とは異なり呼格を特別に取り上 げる必要はない。 主たる形容詞の変化語尾は以下のごとくである。 158 形容詞 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 -y/i -e -a -i -e 生格 -ego -ego -ej -ych/-ich -ych/-ich 与格 -emu -emu -ej -ym/-im -ym/-im 対格 -y/-i または -ego -e -ą -ych/-ich -e 造格 -ym/-im -ym/-im -ą -ymi/-imi -ymi/-imi 前置格 -ym/-im -ym/-im -ej -ych/-ich -ych/-ich 形容詞変化における e は e4 であるので、その前の子音は k, g, ch/x(但し、ch/ x の 場合はまれである。)のみが子音交替があり、それ以外は子音交替は起こらない。また、 複数男性人間形主格の -i のみが i1 であり、それ以外の -i は子音交替に関係するもの ではない。従って、男性人間形主格の場合は第一子音交替が起きるが、それ以外の語尾 が i で始まるところの前の子音には子音交替は起きない。また、-y の前の子音には子 音交替は起こらない。 1.男性形 主格(呼格も)は語尾が -y か -i になる。ロシア語の場合は -ый あるいは -ий とな るが、それと似ている。 生格は -ego となる。ロシア語の場合は -ого あるいは -его となり後者と同じと考え ればよい。。 与格は -emu となる。ロシア語の場合は -ому あるいは -ему となり後者と全く同じ ではないが、類似していると考えればよい。 対格は、単数の場合は、修飾される名詞が男性人間名詞、有生名詞の場合は生格と同 じであり、無生名詞の場合は主格と同じである。これはロシア語の修飾される名詞が活 動体名詞と非活動体名詞の場合に異なった変化をするのとほぼ同じである。複数の場合 は、修飾される名詞が男性人間名詞の場合は生格と同じであり、非男性人間名詞(すな わち有生名詞と無生名詞)の場合は主格と同じである。 造格は -ym か -im となる。ロシア語の場合は -ым か -им となるが、それと類似し ている。 前置格は造格と同じである。ロシア語の場合は -ом か -ем となったが、それよりも 単純である。 2.中性形 対格が主格(呼格も)と同じというのはロシア語と同じであり、また、主格以外が男 性形と同じである点もロシア語と同じである。そして、主格の語尾は -e となり、ロシ ア語において語尾の最後が е となるのと同じである。 3.女性形 女性形はある程度ロシア語と異なっている。 形容詞 159 主格は語尾が -a となる。ロシア語においては語尾が -ая か -яя となったが、それと 類似している。 生格、与格、前置格は -ej となり、対格、造格は -ą となる。ロシア語においては生 格、与格、造格、前置格が -ой あるいは -ей となったが、ポーランド語は造格が異なる のである。ロシア語の対格形は -ую あるいは -юю であり、ポーランド語とは異なって いる。 4.複数男性人間形 主格(呼格も)は語尾が -y か -i になる。ロシア語においては語尾が -ые か -ие と なったが、それと似ている(語尾の最初の文字と同じと考えればよい)。 生格は -ych か -ich となる。ロシア語の場合は -ых あるいは -их となったが、それ と類似している。 与格は -ym か -im となる。ロシア語の場合は -ым あるいは -им となったが、それ と類似している。この与格は、単数造格と同じであり、この点もロシア語と同じである。 対格は生格と同じである。 造格は -ymi か -imi となる。ロシア語の場合は -ыми あるいは -ими となったが、 それと同じである。 前置格は生格と同じであり、-ych か -ich となる。 5.複数非男性人間形 男性人間形と異なるのは、主格と対格のみである。すなわち、主格は語尾が -e とな る。そして、対格は主格と同じである。従って、複数形といっても男性人間形とそれほ ど違わず、神経質になる必要はない。 Ⅲ 形容詞の変化種類 上述したように形容詞の変化は単数男性形主格と複数男性人間形主格が特徴的であり、 それ以外はどの形容詞も同じである。そこで、形容詞を変化種類別に区別する場合、大 きく4つのグループに分かれる。 1.-y - -i グループ これは単数男性形主格の語尾が -y で複数男性人間形主格の語尾が -i になるものであ る。これに属する語幹子音には p, b, w, m, s, n, t, dz, st, sn, zn, ł, sł, zł, ch, h, sz, ż があ る。 słaby 弱い(単数男性形主格)słabi(複数男性人間形主格) czysty きれいな(単数男性形主格)czyści(複数男性人間形主格) ※ sz 語幹については硬化子音であるが、例外的にこのグループに入る。また、ż 語幹 も硬化子音であるが、このグループに入るものと、次の2.に入るものがある。 160 形容詞 2.-y - -y グループ これは単数男性形主格の語尾と複数男性人間形主格の語尾が共に -y になるものであ る。これに属する語幹子音には r, c, dz, cz, rz, ż があり、硬化子音がほとんどであるが、 r のように硬子音も見られる。 chory 病気である(単数男性形主格)chorzy(複数男性人間形主格) czczy 空虚な(単数男性形主格)czczy(複数男性人間形主格) 3.-i - -y グループ これは単数男性形主格の語尾が -i で複数男性人間形主格の語尾が -y になるものであ る。これに属する語幹子音は k と g のみである。 wielki 大きな(単数男性形主格)wielcy(複数男性人間形主格) długi 長い(単数男性形主格)dłudzy(複数男性人間形主格) 4.-i - -i グループ これは単数男性形主格の語尾と複数男性人間形主格の語尾が共に -i になるものであ る。これに属する語幹子音には ci, dzi, si, zi, ni, pi, bi, fi, wi, mi, li がある。 głupi ばかげた(単数男性形主格)głupi(複数男性人間形主格) przedni 前の(単数男性形主格)przedni(複数男性人間形主格) Ⅳ 形容詞の短語尾と長語尾 ロシア語においては形容詞には長語尾と短語尾があり、それぞれ用法があったし、短 語尾の方もかなり使われている。しかし、ポーランド語においては、短語尾は今日では 廃れており、それに関する形容詞の数も限られるし、形も男性形が主である。その形は、 形容詞の語幹のみで語尾がないものである。短語尾は文中で述語として機能するか、あ るいは名詞の直後に置かれるかである。 例えば、ciekawy 興味がある・好奇心をそそる、の ciekaw 、godny ~の価値がある、 の godzien,、gotowy 準備ができた、の gotów、winny 責任がある、の winien、pełny ~で一杯の、の pełen 等である。 Jestem ciekaw, czy przyjdziesz jutro. 明日、あなたは来るだろうか(主語が男性の場 合)。 Jestem ciekawa, czy przyjdziesz jutro. 明日、 あなたは来るだろうか(主語が女性の 合)。 Kto jest winien? 誰に責任があるのか。 On jest zupełnie winien. 彼は完全に責任がある。 Izrael jest winien zareagować na takie działania. イスラエルはそのような行動に対 処する責任がある。 On jest godzien zaufania. 彼は信頼に値する。 To jest człowiek godzien uwagi. それは注目に値する人間である。 形容詞 161 Czy jesteś gotów? あなたは準備しましたか。 To był dzień pełen przygód. それは、冒険に満ちた一日だった。 Maria była gotów na wszystko. マリアはすべてをする準備をした。 Ona jest wesól jak szczgieł. 彼女はヒバリのようにとても楽しい気分だ。 もっとも、短語尾のみで、長語尾がないものもある。例えば、rad うれしい、wart 価 値がある、kontent 満足した、等である。これらの場合、男性形のみならず、中性形、 女性形、複数形も見られるが、長語尾形とは多少変化が異なる。例えば、wart 価値が ある、の場合、wart(男性)、warte(中性)、warta(女性)、warci(複数男性人間 形)、warte(複数非男性人間形)と変化する。 Jestem rad, że cię znów widzę. 私は再びあなたに会えてうれしい。 To wart robić. それはする価値がある To jest artykuł wart przeczytania. それは読む価値のある記事である。 Anna była bardzo kontent z jego przybycia. 彼女は彼の到着に非常に満足した。 Ⅴ 形容詞変化における音交替 上述のように、形容詞は変化するのであるが、その変化の過程において音交替が生じ るのは言うまでもない。形容詞変化において注意すべき音交替は以下のごとくである。 1.語幹の最後の子音である k や g は語尾が e となる場合には軟音化し、-ki や -gi と なる。形容詞変化における e は e4 であり、第四子音交替が起きるからである。この場 合 -ky とは決してならない。ロシア語と同じく k の後には y(ロシア語では ы に相 当)は綴らないからである。例えば、wielk-y とはならず、wielki 大きな、となる。単 数中性主格は wielkie であり、単数女性主格は wielka である(この場合、wielkia と ならないことに注意すべきである。なぜなら、語尾 -a の前に子音交替が起きることは ないからである。)。 2.語幹が硬子音で終わる形容詞は、複数男性人間形主格の場合、子音交替がある。す なわち、原則的には語尾は -i となるが、その i は i1 であり、それに応じて第一子音交 替が起きるのである。例えば、chory 病気の、の場合、複数男性人間主格は chor-i とな るはずであるが、-i の前の r は rz と子音交替が起きるので chorz-i と一応なる。しか し、綴り字の規則により rz の後には i を書けないので、chorzy となる。chudy 痩せ た、の場合も、複数男性人間形主格は chud-i となるはずであるが、-i の前の d は第一 子音交替が起こり dź となり、chudźi となる。しかし、i の前に ź は書けないので、 chudzii となり、最後の連続する -ii は前の i が脱落して、結局、chudzi となるのであ る。 3.語幹が硬化子音で終わる形容詞は、子音交替はなく、単数男性形と複数男性人間形 162 形容詞 が同じ形になるのが原則である。 しかし、これには例外がある。それは sz 語幹の形容詞の場合である。sz は複数男性 人間形においては ś に子音交替がある。sz 語幹で多いのは比較級の場合である。形容 詞の比較級の場合、単数男性形語尾は -szy であるが、複数男性人間形主格は語尾が -si となる。 また、ż 語幹のうち duży 大きい、だけは例外であり、その複数男性人間形主格は duzi となる(通常の ż 語幹の形容詞はその複数男性人間形主格は -ży となる。例えば、 świeży 新鮮な、である。)。 4.受動形容分詞の場合は e → o 交替が起きる。硬口蓋化音(つまり軟音)の前(通 常は複数男性人間形主格の場合である。)に -e- となり、そうでない音の前は -o- とな るのである。例えば、zachęcony 勇気づけられた、は zachęceni となる。また、普通 の形容詞の場合は通常は起こらないが、一部起きるものがある。例えば、zielony 緑の、 は複数男性人間形主格は zieleni となる。 尚、e → a 交替は起こらない。 ★ 語幹別の形容詞変化の例 以下には主な形容詞について語幹別に変化を記載する。 1)語幹が p の場合 skąpy けちな 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 skąpy skąpe skąpa skąpi skąpe 生格 skąpego skąpego skąpej skąpych skąpych 与格 skąpemu skąpemu skąpej skąpym skąpym 対格 主又は生格 skąpe skąpą skąpych skąpe 造格 skąpym skąpym skąpą skąpymi skąpymi 前置格 skąpym skąpym skąpej skąpych skąpych 同じ語幹の形容詞の例:tępy 鈍い krępy がっちりした 2)語幹が b の場合 słaby 弱い 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 słaby słabe słaba słabi słabe 生格 słabego słabego słabej słabych słabych 与格 słabemu słabemu słabej słabym słabym 対格 主又は生格 słabe słabą słabych słabe 造格 słabym słabym słabą słabymi słabymi 前置格 słabym słabym słabej słabych słabych 同じ語幹の形容詞の例:gruby 太った 形容詞 163 ※上の1)2)の活用で注意すべきは単数中性主格と複数の非男性人間形主格が同じで ある点である。これはロシア語には見られないものであり、注意を要する。尚、単数の 男性・中性形造格と複数の与格(男性人間形、非男性人間形とも)が同じであることに も留意すべきである。ただ、これは、ロシア語と全く同じであり、理解し易いであろう。 3)語幹が f の場合で重要なものはない。 4)語幹が w の場合 nowy 新しい 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 nowy nowe nowa nowi nowe 生格 nowego nowego nowej nowych nowych 与格 nowemu nowemu nowej nowym nowym 対格 主または生格 nowe nową nowych nowe 造格 nowym nowym nową nowymi nowymi 前置格 nowym nowym nowej nowych nowych 同じ語幹の形容詞の例:chciwy どん欲な łatwy 簡単な łaskawy 親切な surowy 生の zdrowy 健康な 5)語幹が m の場合 łakomy どん欲な 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 łakomy łakome łakoma łakomi łakome 生格 łakomego łakomego łakomej łakomych łakomych 与格 łakomemu łakomemu łakomej łakomym łakomym 対格 主または生格 łakome łakomą łakomych łakome 造格 łakomym łakomym łakomą łakomymi łakomymi 前置格 lakomym łakomym łakomej łakomych łakomych 同じ変化の形容詞の例:niemy 黙った ruchomy 可動性の uprzejmy 礼儀正しい 6)語幹が n の場合 głodny 飢えた 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 głodny głodne głodna głodni głodne 生格 głodnego głodnego głodnej głodnych głodnych 与格 głodnemu głodnemu głodnej głodnym głodnym 対格 głodny または głodnego głodne głodną głodnych głodne 造格 głodnym głodnym głodną głodnymi głodnymi 前置格 głodnym głodnym głodną głodnych głodnych 同じ語幹の形容詞の例:brudny 汚い chłodny 涼しい ciemny 暗い smutny 悲しい 164 形容詞 7)語幹が s の場合 bosy 裸足の 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 bosy bose bosa bosi bose 生格 bosego bosego bosej bosych bosych 与格 bosemu bosemu bosej bosym bosym 対格 主又は生格 bose bosą bosych bose 造格 bosym bosym bosą bosymi bosymi 前置格 bosym bosym bosej bosych bosych 同じ語幹の形容詞の例:łysy 禿げた 8)語幹が t の場合 bogaty 豊かな 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 bogaty bogate bogata bogaci bogate 生格 bogatego bogatego bogatej bogatych bogatych 与格 bogatemu bogatemu bogatej bogatym bogatym 対格 主又は生格 bogate bogatą bogatych bogate 造格 bogatym bogatym bogatą bogatymi bogatymi 前置格 bogatym bogatym bogatej bogatych bogatych 上の変化で注意すべきは、複数男性人間形の主格である。それ以外は、1)~7)と 同じである。そこで、なぜ複数男性人間形だけ異なるかという点が重要である。本来な ら bogati となるべきところであるが、t が c に変わっている。それは、歯音閉鎖音で ある t は i の前では ć と子音交替が起きるからである。そして、ć=ci であり、-cii と なるが、i が連続する場合は前の i が消去されるのである。 同じ語幹の形容詞の例: otowarty 開いた 9)語幹が d の場合 chudy 薄い 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 chudy chude chuda chudzi chude 生格 chudego chudego chudej chudych chudych 与格 chudemu chudemu chudej chudym chudym 対格 主又は生格 chude chudą chudych chudych 造格 chudym chudym chudą chudymi chudymi 前置格 chudym chudym chudej chudych chudych 上の変化で注意すべきは、複数男性人間形の主格形である。それ以外は、1)~7) と同じである。本来なら、chudi となるところであるが、d は i の前では dź と子音交 替が起きる。そして、dź=dzi であり、-dzii となるが、i が続く場合は癒合が見られるの である。 同じ語幹の形容詞の例:młody 若い twardy 硬い 形容詞 165 10)語幹が ł の場合 biały 白い 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 biały białe biała biali białe 生格 białego białego białej białych białych 与格 białemu białemu białej białym białym 対格 biały または białego białe białą białych białe 造格 białym białym białą białymi białymi 前置格 białym białym białej białych białych 複数男性人間形主格形は biali となる。i の前では ł は l に子音交替が起きるからで ある。 同じ語幹の形容詞の例:cały すべての miły 感じの良い mały 少ない doskonały 完全 な 11)語幹が r の場合 chory 病気の 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 chory chore chora chorzy chore 生格 chorego chorego chorej chorych chorych 与格 choremu choremu chorej chorym chorym 対格 chory または chorego chore chorą chorych chore 造格 chorym chorym chorą chorymi chorymi 前置格 chorym chorym chorej chorych chorych この場合は、複数男性人間形主格の語尾にも注意する必要がある。複数男性人間形主 格は chorzy となるが、語尾が通常の i と異なり y となる。r は i の前では rz となる が、正書法の規則により rz の後は i を書かず、y を書くからである。 同じ語幹の形容詞の例:stary 年を取った 12)語幹が ch の場合 cichy 静かな 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 cichy ciche ciche cisi ciche 生格 cichego cichego cichej cichych cichych 与格 cichemu cichemu cichej cichym cichym 対格 cichy または cichego ciche cichą cicych ciche 造格 cichym cichym cichą cicymi cichymi 前置格 cichym cichym cichej cichych cichych この場合も、複数男性人間主格に注意すれば十分である。cisi となるが、i の前の c は ś と子音交替があり、i の前の ś は si と綴るので sii となり i が癒合し、si となるから である。 同じ語幹の形容詞の例:suchy 乾いた 166 形容詞 13)語幹が k の場合 wielki 大きな 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 wielki wielkie wielka wielcy wielkie 生格 wielkiego wielkiego wielkiej wielkich wielkich 与格 wielkiemu wielkiemu wielkiej wielkim wielkim 対格 主または生格 wielkie wielką wielkich wielkie 造格 wielkim wielkim wielką wielkimi wielkimi 前置格 wielkim wielkim wielkiej wielkich wielkich まず、単数男性主格に注意する必要がある。通常は語尾は y となるが、綴り字の規 則により k の後は y を書かず、i を書くため wielki となる。従って、単数男性造格・ 前置格(中性形も当然であるが)も同様に語尾が -im となり、複数形の生格、与格等も 語尾がそれぞれ -ich , -im となるのである。また、単数中性主格の場合 wielke ではな く、wielkie となるが、これは e が e4 であり、その前の子音には第四子音交替がある ので、 k → ki と子音交替があるからである。従って、単数男性主格、与格(中性形も 同じであるが) も語尾がそれぞれ -iego , -iemu となるのである。 女性生格の語尾がiej と なるのも同様である。複数男性人間主格について語尾の i は i1 であり、その前の子音 には第一子音交替があるので、k は c に交替する。そして、綴り字の規則により c の後 は i を書かず、y を書くため wielcy となる。 同じ語幹の形容詞の例:rosyjski ロシアの daleki 遠い 14)語幹が g の場合 długi 長い 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 długi długie długa dłudzy długie 生格 długiego długiego długiej długich długich 与格 długiemu długiemu długiej długim długim 対格 主または生格 długie długą długich długie 造格 długim długim długą długimi długimi 前置格 długim długim długiej długich długich 13)と同じであるが、複数男性人間形主格は dłudzy となる。i の前の g は dz と子 音交替があり、さらに dz の後は i を書かず、y を書くので dłudzy となるのである。 同じ語幹の形容詞の例:drogi 高価な 形容詞 167 15)語幹が h の場合 błahy 陳腐な 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 błahy błahe błaha błazi błahe 生格 błahego błahego błahej błahych błahych 与格 błahemu błahemu błahej błahym błahym 対格 主または生格 błahe błahą błahych błahych 造格 błahym błahym błahą błahymi błahymi 前置格 błahym błahym błahej błahych błahych 複数男性人間主格が błazi となることに注意すべきである。本来なら błahi となると ころであるが、i の前の h は第一子音交替により ź に子音交替があり、błaźi となるが、 -źi とは書けず、-zii となり、i が続くと前の i は消去されるので、結局 błazi となるの である。 16)語幹が st の場合 czysty きれいな 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 czysty czyste czysta czyści czyste 生格 czystego czystego czystej czystych czystych 与格 czystemu czystemu czystej czystym czystym 対格 主または生格 czyste czystą czystych czystych 造格 czystym czystym czystą czystymi czystymi 前置格 czystym czystym czystej czystych czystych 複数男性人間形主格は czyści となる。st は i1 の前では第一子音交替が起き、 ść と なり、czyśći となるが、-śći とは書けず ścii となる。そして、 i が続くと前の i は消去 されるので、ści となるのである。 同じ語幹のその他の例:częsty 頻繁な prosty 真っ直ぐな 17)語幹が sn の場合 jasny 明るい 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 jasny jasne jasna jaśni jasne 生格 jasnego jasnego jasnej jasnych jasnych 与格 jasnemu jasnemu jasnej jasnym jasnym 対格 主または生格 jasne jasną jasnych jasne 造格 jasnym jasnym jasną jasnymi jasnymi 前置格 jasnym jasnym jasnej jasnych jasnych これも複数男性人間形主格に注意すべきである。-sn は i の前では -śń となり、-śńi となるところであるが、-śńi とは書けず、-śnii となるが、i が続くと前の i は消去され るので -śni となるのである。 同じ語幹のその他の例:wczesny 早い 168 形容詞 18)語幹が zn の場合 przyjazny 親しい 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 przyjazny przyjazne przyjazna przyjaźni przyjazne 生格 przyjaznego przyjaznego przyjaznej przyjaznych przyjaznych 与格 przyjaznemu przyjaznemu przyjaznej przyjaznym przyjaznym 対格 主または生格 przyjazne przyjazną przyjaznych przyjaznych 造格 przyjaznym przyjaznym przyjazną przyjaznymi przyjaznymi 前置格 przyjaznym przyjaznym przyjaznej przyjaznych przyjaznych これも複数男性人間形主格に注意すべきであるが、上の17)とは ś と ź だけが異な っており、それ以外は同じである。 19)語幹が sł の場合 ścisły 正確な 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 ścisły ścisłe ścisła ściśli ścisłe 生格 ścisłego ścisłego ścisłej ścisłych ścisłych 与格 ścisłemu ścisłemu ścisłej ścisłym ścisłym 対格 主または生格 ścisłe ścisłą ścisłych ścisłe 造格 ścisłym ścisłym ścisłą ścisłymi ścisłymi 前置格 ścisłym ścisłym ścisłej ścisłych ścisłych これも複数男性人間形主格のみ子音交替が起きる。すなわち、子音交替がないとする と ścisłi となるが、sł は i1 の前では śl となるので ściśli となる。 同じ語幹のその他の例:dorosły 大人の、成長した 20)語幹が zł の場合 zły 悪い 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 zły złe zła źli złe 生格 złego złego złej złych złych 与格 złemu złemu złej złym złym 対格 主または生格 złe złą złych złe 造格 złym złym złą złymi złymi 前置格 złym złym złej złych złych これも複数男性人間形主格のみ子音交替が起きる。źli となるが、子音交替がないと すると złi となるが、zł は i の前では źl となるので、źli となる。 形容詞 169 21)語幹が c , dz , cz , rz/ż , dż の場合 czczy 空の 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 czczy czcze czcza czczy czcze 生格 czczego czczego czczej czczych czczych 与格 czczemu czczemu czczej czczym czczym 対格 主または生格 czcze czczą czczych czcze 造格 czczym czczym czczą czczymi czczymi 前置格 czczym czczym czczej czczych czczych この変化では i が出現せず、その代わりに y が出現する。c , dz , cz , rz/ż , sz の後は 綴り字の規則により i は書かず、常に y を書くからである。従って、単数男性形主格と 複数男性人間形主格等が同じ形になる。単数中性形主格と複数非男性人間形主格が同じ なのは当然である。 その他の例:hoży 魅力的な gorący 暑い obcy 外国の・おかしな cudzy 他人の・他の誰 かの、władczy 横柄な・傲慢な żubrzy 野牛の 例外:しかし、この変化には例外ある。duży 大きな、で、本来なら複数男性人間形主格は duży となるところであるが、そうはならず duzi となることに注意すべきである。 また、語幹が -sz の形容詞も例外である。例えば、wczorajszy 昨日の、の変化は 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 wczorajszy wczorajsze wczorajsza wczorajsi wczorajsze 生格 wczorajszego wczorajszego wczorajszej wczorajszych wczorajszych 与格 wczorajszemu wczorajszemu wczorajszej wczorajszym wczorajszym 対格 主または生格 wczorajsze wczorajszą wczorajszych wczorajsze 造格 wczorajszym wczorajszym wczorajszą wczorajszymi wczorajszymi 前置格 wczorajszym wczorajszym wczorajszej wczorajszych wczorajszych その他の例:lepszy より良い 22)語幹が軟音の p’, b’, w’, m’, dź, l, ń, ć, ś, ź 等の場合 olbrzymi 巨大な 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 olbrzymi olbrzymie olbrzymia olbrzymi olbrzymie 生格 olbrzymiego olbrzymiego olbrzymiej olbrzymich olbrzymich 与格 olbrzymiemu olbrzmiemu olbrzymiej olbrzymim olbrzymim 対格 主または生格 olbrzymie olbrzymią olbrzymich olbrzymie 造格 olbrzymim olbrzymim olbrzymią olbrzymimi olbrzymimi 前置格 olbrzymim olbrzymim olbrzymiej olbrzymich olbrzymich この格変化では y が出現せず、その代わりに i が出現する。従って、単数男性形主格 と複数男性人間形主格等が同じ形になる。単数中性形主格と非男性人間形主格が同じな 170 形容詞 のは当然である。 その他の例:przedni 前の tani 安い psi 犬の kozi 山羊の koci 猫の gadzi 爬虫類の głupi ばかげた babi インドの lwi ライオンの 23)語幹が oł の場合 wesoły 楽しい 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 wesoły wesołe wesoła weseli wesołe 生格 wesołego wesołego wesołej wesołych wesołych 与格 wesołemu wesołemu wesołej wesołym wesołych 対格 主または生格 wesołe wesołą wesołych wesołe 造格 wesołym wesołym wesołą wesołymi wesołymi 前置格 wesołym wesołym wesołej wesołych wesołych これも複数男性人間形主格のみ子音交替が起きるが、さらに重要なことは母音交替も 起きると言うことである。すなわち、子音交替・母音交替がないとすると wesołi となる が、子音の ł は i の前では l となる。そして、 o は e に母音交替が起こる結果、weseli となる。すなわち、-oli とは綴ることができず、-eli となるのである。 24)語幹が on の受動形容分詞の場合 kupiony 買われた 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 kupiony kupione kupiona kupieni kupione 生格 kupionego kupionego kupionej kupionych kupionych 与格 kupionemu kupionemu kupionej kupionym kupionym 対格 主または生格 kupione kupioną kupionych kupione 造格 kupionym kupionym kupioną kupionymi kupionymi 前置格 kupionym kupionym kupionej kupionych kupionych この場合、原則とは異なり複数男性人間形主格が kupioni ではなく、kupieni となる ことに注意すべきである。しかし、通常の形容詞の場合は同じく語幹が on であっても czerwoni 赤い、となる。 Ⅵ 形容詞の位置(付加語的用法) ポーランド語の形容詞の付加語的用法の場合、その形容詞は名詞の前に置かれたり、 後に置かれたりする。ロシア語においては、ほとんどの形容詞が名詞の前に置かれるの とは異なっている。 1.名詞の前に置かれるのは記述的形容詞の場合である。例えば、słodka herbata 甘い茶、 białe ściany 白い壁、である。これはロシア語と同じである。 もっとも、記述的形容詞であっても変化しない形容詞の場合には、名詞の後に置かれ ることが多い。włosy blond ブロンドの髪 形容詞 171 2.しかし、名詞の後に置かれる場合もある。分類的形容詞(ある事物の他の事物、動作、 状況に対する関係を表す形容詞)の場合である。例えば、gitara elektryczna エレキギ ター、fryzjer męski 男性のヘアドレッサー、gospodarka rolna 農業、wybory parlamentarne 国会議員選挙、等である。 ※従って、同じ gabinet 手術、の場合でも、nowy gabinet 新しい手術、と gabinet okulistyczny 眼科の手術、の場合、位置が異なるのである。 もっとも、すべてがそうなるわけではない。例えば、stan wyjątkowy 非常事態の、 の場合、wyjątkowy は記述的形容詞であるが、名詞の後に置かれるのである。 3.修飾する形容詞が2つ以上ある場合には、重要性のあるものは名詞の後に置かれる。 例えば、Polskie Towarzystwo Językoznawcze ポーランド言語社会、はポーランドより 言語の方が重要であるので、Językoznawcze 言語の、が名詞の後にある。ekstensywa gospodarka rolna 大規模な農業、druga wojna światowa 第二次世界大戦、の場合も それぞれ「農業」「世界」の方が重要であるので、後になっている。 4.記述的形容詞でも成句の場合には名詞の後になる。例えば、dzień dobry こんにちわ、 である。もっとも、この場合は韻律上の要因が大きい。すなわち、ポーランド語は原則 として後ろから2番目の音節にアクセントがあり、成句の場合には一体化して発音する。 そして、こんにちわ、という場合、dzień dobry と do の音節にアクセントを持っていく べきである。しかし、通常の語順のように dobry dzień とすると-bry にアクセントがあ ることになり、不自然だからである。一方、dobry wieczór こんばんわ、の場合は、原 則通り wie- にアクセントがあるが、これは不自然ではないので、dobry が名詞に先行 するのである。 5.形容詞の中には位置によって意味を違えるものもある。例えば、młody の場合、名 詞の前に位置する場合には、młoda kobieta 若い女性、のように「若い」という意味を 表すのであるが、pan młody (結婚した)花婿、panna młoda (結婚した)花嫁、の ように「結婚した」という意味を表すのである。 Ⅶ 形容詞の用法 形容詞の用法には付加語的用法と述語的用法がある。付加語的用法は nowa książka 新しい本、 の場合の nowa であり、 述語的用法は Książka jest nowa. その本は新しい、 の場合の nowa である。付加語的用法と述語的用法の統語論上の大きな違いは、後者が 文の必須成分であるのに対して、前者はそうではないという点である。すなわち、後者 においては形容詞を除去すると文としては成り立たないが、前者においては形容詞を除 去しても文として成り立つと言うことである。 172 形容詞 1.付加語的用法 付加語的用法においてはロシア語と同じく形容詞の格、数、性は修飾される名詞の格、 数、性に一致する。 Nowy student czyta książkę. 新しい学生は本を読んでいる。 Rozmawiamy o nowym filmie. 我々は新しい映画について語り合う。 ※上の文の場合、nowy を除いても、文として成り立つ。Student czyta książkę. 学生 は本を読んでいある。下の文も、Rozmawiamy o filmie. 我々は映画について語り合う、 となっても文として成り立つ。 2.述語的用法 述語的用法においてもロシア語と同じく関係する名詞と格、数、性は一致する。 Nowy student jest chory. 新しい男子学生は病気である。 Nowa studentka jest chora. 新しい女子学生は病気である。 ※これらの場合、chroy や choro を除くと文としては成り立たない。Nowy student jest. や Nowa studentka jest. では何ら文としては成立しないのである。 3.形容詞は通常は付加語的用法と述語的用法を有するのであるが、一方しか有しない 形容詞もある。 1)付加語的用法しか有しない形容詞 szkolna sprawa 学校の出来事 były prezydent 前大統領 能動形容分詞の場合も付加語的用法しかない。 czytający uczeń 本を読んでいる学生 2)述語的用法しか有しない形容詞 短語尾形の場合は述語的用法しか有しない。 Jestem rad, że cię znów widzę. 私は再びあなたに会えてうれしい。 Był bardzo kontent z swojego życia. 彼は自分の生活に満足していた。 Ⅷ 形容詞の形を持つ名詞 ロシア語の руссая ロシアの女性、のように、形容詞の形をした名詞があり、変化は 形容詞と同じであったが、ポーランド語にもそのようなものがある。例えば、czarny 黒 人、である。これは元来「黒い」という形容詞だが、「黒人」という名詞にもなるので ある。その他には zabity 死者、がある。これらの名詞は形容詞変化名詞と呼ばれるの であるが、人間を表す場合が多い。従って、生物学的性に基づき、その語尾が変わる。 例えば、前述した czarny 黒人、の場合、単数主格語尾が -y であるので、男性を表し、 女性の黒人の単数主格は czarna となる。しかし、人間以外の動物とか、物を表す名詞 の中にも形容詞変化のものがある。それらの場合の性は語尾によって判断する。例えば、 luty 2月は、単数主格が -y となるので男性の形容詞変化名詞である。czesne 授業料、 形容詞 173 は語尾が -e となり、しかも複数であるので、非男性人間名詞の形容詞変化名詞である。 形容詞変化名詞には以下のようなものがあり、その変化形とともに示す。 1.-ski,-cki,-dzki,-ska,-cka,-dzka で終わる苗字 これらの変化形は以下のごとくになる。 単数 複数 男性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 Malinowski Ostrowska Malinowscy Ostrowskie 生格 Malinowskiego Ostrowskiej Malinowskich Ostrowskich 与格 Malinowskiemu Ostrowskiej Malinowskim Ostrowskim 対格 Malinowskiego Ostrowską Malinowskich Ostrowskie 造格 Malinowskim Ostrowską Malinowskimi Ostrowskimi 前置格 Malinowskim Ostrowskiej Malinpwskich Ostrowskich 2.「~の妻」を表す -owa で終わる名詞 bratowa 義理の姉妹、synowa 義理の娘、 królowa 女王、等である。しかし、これらは純粋の形容詞変化名詞ではなく、女性名詞 変化と形容詞変化が混合した変化形を示している。それは、単数呼格が主格と異なる点 に現れている。 例えば、bratowa の変化は 単数 複数 bratowa bratowe 主格 bratowej bratowych 生格 bratowej bratowym 与格 bratową bratowe 対格 bratową bratowymi 造格 bratowej bratowych 前置格 bratowo bratowe 呼格 3.職業名の幾らか。例えば、budowniczy 建築者、leśniczy 森林労働者、wojskowy 軍 人、等。また、職業名には形容分詞から作られるものもある。例えば、uczony 学者、 służący (男性の)召使い、służąca (女性の)召使い)、przełożony(男性の)ボス、przełożna (女性の)ボス、deputowany 代議士、等である。 wojskowy の変化は、 単数 複数 wojskowy wojskowi 主格・呼格 wojskowego wojskowych 生格 wojskowemu wojskowym 与格 wojskowego wojskowych 対格 wojskowym wojskowymi 造格 174 前置格 形容詞 wojskowym wojskowych 4.krewny 同族者、bliskie 親愛なる者、等、人間関係を表す語にも認められる。 krewny 男性の同族者、の変化 krewna 女性の同族者、の変化 単数 複数 単数 複数 krewni krewna krewne 主格・呼格 krewny 主格 krewnego krewnych krewnej krewnych 生格 生格 krewnemu krewnym krewnej krewnym 与格 与格 krewnego krewnych krewną krewnych 対格 対格 krewnym krewnymi krewną krewnymi 造格 造格 krewnym krewnych krewnej krewnych 前置格 前置格 5.niewidomy 視覚障害者、niemy 聴覚障害者、niepełnosprawny 肢体障害者、chory 病 人、bezrobotny 失業者(男性)bezrobotona 失業者(女性)、等、個人の体質、社会的 状態等を表す語にも認められる。また、複数形しかない特殊なものとして wierni 信者、 がある。これは wierny 忠実な、の複数男性人間形主格であるが、集団としての信者を 表すのである。例えば、Papież pożegnał się z wiernymi. ローマ法王は信者にお別れし た、となり、この wiernymi は複数男性人間形の造格であり、名詞として扱われている。 6.特殊な場合としては、月名の内、luty2月、である。 だから、w lutym 2月に、do lutego 2月に向かって、となる。 Ⅸ 変化しない形容詞 形容詞の中には変化しない形容詞もある。すなわち、修飾される名詞の性、数、格にか かわらず、常に同じ形を示す形容詞があるのである。それには、maksi 長い、mini 短い、 fair 公正な、blond 金髪の、beż ベージュ色の、bordo ボルドーの、等がある。 suknia maksi マキシドレス(単数)、suknie maksi(複数)、 spódniczka mini ミニスカート(単数)、spódniczki mini(複数) Miała na sobie suknię maksi. 彼女はマキシドレスを着用していた。 このような形容詞は修飾される名詞の後に置かれるのが通常である。 włosy bond 金髪、sukienka mini ミニドレス Ⅹ 名詞から導かれる形容詞(分類的形容詞) ロシア語においては、名詞に何らかの接尾辞を付加して作られる形容詞が多々あった。 例えば、юг 南、から южный 南の、воздух 空気、から воздушный 空気の、等で ある。ポーランド語においても同じであり、多く見られる。そして、その特徴は原則と して比較級や最上級を持たないということである。この種の形容詞には以下のようなも 形容詞 175 のがある。 1.地名の形容詞 町、市名等から形容詞を作る場合、接尾辞として -ski を付け、s, z を除去するのが通 常である。また、多少アレンジされることがある。そして、単語の最初は大文字ではな く、小文字にする。例えば、Warszawa ワルシャワ、は warszawski となる。また、 Kalisz(カリシュ=ポーランドの中央にある都市)の場合、kalisz-ski となるが、-ski の 前の sz は落ちて、kaliski となる。また、Olsztyn(オルシュテン=ポーランドの北部 にある都市)の場合は、少し特殊で olsztyński となる( n が ń となる。)。 2.定型的形容詞 これは定型的表現をもたらす形容詞であり、関連する名詞から導かれる。例えば、życie rodzinne 家庭生活、の場合、rodzina 家庭、から rodzinny という形容詞が導かれる。 通常は名詞に -n- や -ow- を付加する。 1)-n- を付加する例 woda 水 → wodny、rodzina 家庭 → rodzinny、kamień 石 → kamienny 2)-ow- を付加する例 guma ゴム → gumowy、wioska 小村落 → wioskowy 3.材質形容詞 これは材質名から派生した形容詞である。通常は材質名詞に -an- や -ow- を付加する。 例えば、glina(粘土)から gliniany が生じたり、stal(鉄鋼)から stalowy が生じた りする。 4.性質形容詞 物の名前から派生した形容詞で、その特徴を捉えて呼ぶ。「~のような」という意で ある。-asty, -aty, -isty, -owaty 等を付加して作る。 例えば、liść 葉、から liściasty 葉のような、kula ボール、から kulisty ボールのような、 pieg そばかす、から piegowaty そばかすのある、błoto 泥、から błotnisty 泥だらけの、 が生じる。 5.動物に関する形容詞 ポーランド後はロシア語と同じく、動物の特色を叙述する際に、形容詞を用いてする ことが多い。それらは当該名詞から派生する。 例えば、lis 狐、の形容詞は lisi であり、 owca 羊、の形容詞は owczy である。 6.人物名に関する形容詞 有名な苗字は所有形容詞の形を取るが、苗字に -owsk-を付加して作る。 例えば、fresk Rafaelowski ラファエルのフレスコ壁画、Konkurs Chopinowski ショ 176 形容詞 パンコンクール、等である。 ⅩⅠ 合成形容詞 二つ以上の形容詞を繋げた形容詞を合成形容詞という。複合形容詞という言い方もあ るが、複合形容詞は二つ以上の形容詞が並んだ場合であり、単語としては二つ以上にな る場合である。これに対して、合成形容詞は二つ以上の形容詞を繋がって一つの単語に なった場合を言う。 1.合成形容詞は間に接合辞の -o- を付加して作るのが通常である。 例えば、szczerozłoty 純金の、は szczery 純粋の、と złoty 金の、が合成されたもので ある。 その他には以下のものが挙げられる。 pięciopokojowe 5つの部屋のある całonocny 夜通しの wodoodporny 防水の dwudziestoletni 20歳の grekokatolicki ギリシャ・カトリックの krótkofalowy 短波の czworokanciasty 四角の 2.しかし、以下のような接頭辞が付いた合成形容詞は -o- は付加されない(しかし、 これらは単に接頭辞の付いた形容詞であり、合成形容詞と言えないのではないかとも考 えられるが、便宜上、ここに含める。)。 1)arcy- 非常に、極端に arcyciekawy 非常に興味深い 2)anty- 反対の antydemokratyczny 反民主主義の 3)ekstra- 超 ekstramodny 超流行の 4)kontr- 反対の・逆の kontrintuicyjny 直感に反した 5)pół- 半分の półgodzinny 半時間の półkilometrowy 半キロメートルの 6)pseudo- 偽りの pseudonaukowy 偽科学の 7)trans- ~越えて・横切って transatlantycki 大西洋の向こうの・大西洋横断の 8)wszech- 全体の・全部の wszechpotężny 全能の ⅩⅡ ハイフンで繋いだ形容詞 一つの名詞に関係する形容詞が二つ以上の場合で、その形容詞の重要性において同程 度の場合には、それらの形容詞はハイフンで繋ぐのが原則である。例えば、granica polsko-niemiecka ポーランドとドイツの国境、である。この場合、先に記載するものは 語尾が o となる。従って、granica niemiecko-polska ドイツとポーランドの国境、 drzewo czerwono-czarne レッドブラックツリー(赤黒木)、słownik polsko-rosyjski ポ ーランド語―ロシア語辞典、słownik polsko-francusko-angielski ポーランド語―フラン ス語―英語辞典、等となる。また、quasi-nauka 準科学 quasi-sąd 見せかけの法廷、と いうのもある。 形容詞 177 ⅩⅢ 否定の形容詞 1.接頭辞として nie- を使う場合 nieciekaway 興味のない niedługi 長くない niefortunny 不運な niejasny ぼんやりし た nieodpowiedni 不適当な 2.接頭辞として bez- を使う場合 bezrobotny 無職の bezdomny ホームレスの bezpłatny 無料の bebożny 神を信じな い bezrozumny 不合理な ⅩⅣ 感情形容詞 感情形容詞とは日本語では一般に感情を表す形容詞を指すが、ポーランド語では接尾 辞として -utki, -eńki, -uśki, -usieńki, -uchny 等を取り、 本来の形容詞が表す意味をモデ ファイするものをいう。従って、上述した接尾辞は形容詞に付着する縮小辞と言えよう。 しかし、すべての形容詞から作られるわけではなく、ある程度限られている。また、縮 小辞が付くと共に子音が交替するものも見られる。このような形容詞には、mały 小さ い、miły 可愛い、cienki 薄い、plytki 浅い、łatwy 簡単な、pusty 空の、niski 低い、 wąski 狭い、słodki 甘い、młody 若い、等がある。 1.-utki malutki とても小さな、milutki 可愛い、cieniutki とても薄い、łatwiutki 非常に簡単 な、puściutki 全く空虚な、słodziutki かなり甘い、cichutki とても静かな、słabiutki 弱々しい króciutki 非常に短い、niziutki 非常に低い、wąziutki すごく狭い 、 szybciutki 非常に速い 2.-eńki maleńki とても小さな、puściuteńki 全く空虚な、płyciuteńki 非常に浅い、wąziuteńki すごく狭い、niziuteńki 非常に低い、słodziuteńki とても甘い、cieniuteńki とても薄 い、cichuteńki とても静かな、króciuteńki 非常に短い 3.-uśki niziuśki とても低い、miluśki 非常に可愛い、cieniuśki とても薄い、cichuśki とても 静かな、króciuśki 非常に短い 4.-usieńki niziusieńki とても低い、wąziusieńki 非常に狭い milusieńki とても可愛い、 cieniusieńki とても薄い、cichusieńki 非常に静かな、króciusieńki 非常に短い 178 形容詞 5.-uchny niziuchny 非常に低い、miluchny とても可愛らしい、cieniuchny とても薄い króciuchny 非常に短い ⅩⅤ 形容詞の補足語と格支配 形容詞の中には補語を取らずに単独で用いられるものと、その意味を完全にするため に補語(補足語)を取るものがある。形容詞の要求する補語は格に支配されるので、こ れを形容詞の格支配という。 1.生格支配の形容詞 wart 価値のある wart obejrzenia 見る価値のある pewny 確かである pewny zwycięstwa 勝利を確信している pełny ~で一杯の pełny smutku 悲しみが一杯で świadomy ~を意識して・気づいて świadomy swojej winy 自分の罪を意識して godny 価値がある godny szacunku 尊敬に値する ciekawy 好奇心のある ciekawy wszystkiego あらゆることに興味津々である bliski ~に近い bliski płaczu 今にも泣き出しそうである chciwy がつがつした chciwy sławy 名声を求めて głodny ~に飢えた głodny miłości 愛に飢えた niepewny 不確かな niepewny siebie 自分に自信がない spragniony 貪欲な spragniony wiedzy 知識に貪欲である żądny 貪欲な・がつがつした żądny sławy 名声を求めている 2.与格支配の形容詞 znany 知っている Ten zawodnik baseballu jest znany nam. 我々はその野球選手 を知っている。 obojętny 無関心な Jest mi to obojętny. 私はそれについて関心がない。 obcy 異質な Komputer jest mi prawie obcy. コンピューターは私にはほとんど分か らない。 równy ~に等しい być tobie równym 君と同じである bliski ~に近い bliski sercu いつも気に掛かっている przychylny ~する傾向がある przychylny naszym pomysłom 我々の考えに傾いて いる przeciwny ~に反対である Prezydent Rosji jest przeciwny interwencji w Syrii. ロ シア大統領はシリアへの介入に反対している。 3.造格支配の形容詞 形容詞 179 zainteresowany ~に興味がある zainteresowany nowym projektem 新しい計画に 興味がある znudzony うんざりした・飽き飽きした znudzony wiadomością 報道に飽き飽きした znużony ~で疲れた znużony egzaminem 試験で疲れた dotknięty 苦しめられた・悩まされた dotknięty chorobą 病気に苦しめられた zajęty ~で忙しい zajęty pracą 仕事で忙しい zachwyony ~に喜んだ zachwyony turystyką 観光に喜んでいる zmęczony ~に疲れた zmęczony życiem 生活に疲れた ⅩⅥ 形容詞の比較級と最上級 ポーランド語の形容詞には、ロシア語と同じく三級と呼ばれる比較の3つの変化の形 式がある。原級、比較級、そして最上級である。そして、比較級、最上級には単一式と 複合式があるが、この点もロシア語と同じである。 1.単一式 1)形容詞の三級の作り方 原級は基本形であり、何ら比較変化の特徴を示す語尾は付かない。比較級はロシア語の 場合は当該形容詞の語幹に ее あるいは е を付加するが、ポーランド語の場合には -ejsz あるいは -sz を付加する。また、最上級はロシア語の場合は語幹に接尾辞として ейший あるいは айший を付加したが、 ポーランド語の場合はやや異なり、 比較級に接頭辞の najを付加する。原級ではなく、比較級に接頭辞を付加するので特殊と言える。 ポーランド語の比較級において、-ejsz を付加する場合は、形容詞の語幹の最後が2つ以 上の子音が続く場合である。ただ、その前に子音交替が起きる。-ejsz の e は e2 であり、 第二子音交替を起こすからである。一方、-sz を付加する場合は大部分は語幹の最後が子 音1つで終わる場合であるが、ときに子音が2つの場合もある。例:bystry 速い → bystrzejszy より速い(この場合、語幹が -str-と三連続子音で終わる場合であるので、-ejsz を付加し、さらに最後の -r が e の前であるので -rz と子音交替が起きる。)、gęsty 太 った → gęściejszy より太った(この場合は-st という二連続子音で終わるので、-ejsz を 付加し、 さらに st は e の前では -ść となる。 ) 、 nowy 新しい → nowszy より新しい(こ の場合は語幹が -w と子音1つで終わるので、-sz を付加するのである。) 尚、二連続子音で終わる場合であってもそれが、-rd, -dr, -st となる名詞は -ejsz を付加 する場合のみならず -sz だけを付加する場合もある。twardy 激しい → twardziejszy ま たは twardszy より激しい(この場合は語幹の最後は -rd と二連続子音であるが、二連続 子音でも -rd の場合には -sz を付加することもあるのである。)。 以上が原則であるが、それ以外には以下のことに注意すべきである。 ① 形容詞の語幹の最後の子音として -k(-ek,-ok)を持つ形容詞は、比較級の場合には -sz の前では k(ek,ok) が脱落する。従って、cienki 薄い → cieńszy より薄い(k が脱落し、 n が ń と子音交替がある。)、daleki 遠い → dalszy より遠い(ek が脱落する。)、 180 形容詞 szeroki 広い → szerszy より広い(ok が脱落する。)。 -k を持つ形容詞の比較級には不規則なものがある。これはロシア語においても見られ たものである。例えば、близкий → ближе となる。これと類似しているのがポーラン ド語においても見られる。bliski 近い → bliższy より近い、nisiki 低い → niższy よ り低い、lekki 軽い → lżejszy より軽い、wąski 狭い → węższy より狭い、等である。 ② o → e や a → e の母音交替が -sz の前で起きることがある。しかし、これは以前述 べた母音交替とは異なり、どういう場合に起き、起きないかは一律には決められず、個々 に当たるしかない。しかし、語幹の子音が ł, n, g の場合に起きやすいと言えよう。 wesoły 楽しい → weselszy、 biały 白い → bielszy、śmiały 大胆な → śmielszy、 blady 青白い → bledszy、zielony 緑の → zieleńszy、czerwony 赤い → czerwieńszy ③ ę → ą の母音交替が起きる場合がある。 gorący 暑い → gorętszy (これは c → t への子音交替も伴っている。)、 wąski 狭い → węższy ④ 特殊な比較級 以下の形容詞は特殊な比較級を持つ。ロシア語でも多少見られたが、ポーランド語に おいても見られるのである。 dobry 良い → lepszy、zły 悪い → gorszy、duży 大きい → większy、mały 小さい → mniejszy、lekki 軽い → lżejszy ⑤ 上述のように比較級はすべて -sz 語幹となるので、その変化は -sz 語幹の形容詞と同 じと考えて良い。従って、前述したように複数男性人間形主格は -si となる。 尚、-sz の前の語幹子音に ł, n, g が入っている場合には、それらは第二子音交替が起 こり、それぞれ l, ń, ż となる。 miły 可愛い → milszy、siny 薄青の → sińszy (尚、前述した cienki 薄い → cieńszy もこの一環である)、drogi 高価な → droższy ※ 最上級の場合には、上述したものに接頭辞として naj- を付加すれば作られる。 łatwy 簡単な łatwiejszy より簡単な najłatwiejszy 最も簡単な najlepsi lekarze 最も良い医師達 najnowszy pociąg 最も新しい電車 2)比較変化形を有しない形容詞 すべての形容詞が比較変化形を有するわけではなく、比較変化形を有しない形容詞も ある。ロシア語においては、短語尾形が盛んに使われており、現実に使われる比較級形・ 最上級形は圧倒的に短語尾形が多かった。しかし、ポーランド語においては短語尾形は 例外的にしか使用されないので、その比較級形、最上級形はほとんどない。そして、形 容詞の内で分類的形容詞の範疇に入るものは原則として比較変化形を有しなく、比較変 化形を有するのは記述的形容詞が主である。この点はロシア語と同じである。 具体的に比較変化形を有しない形容詞には以下のようなものがある。 ① 絶対的な意味を表すもの martwy 死んだ niewidomy 盲目の jedyny 唯一の absolutny 絶対的な 形容詞 181 ② 付加語的用法のみ可能な形容詞 codzienny 毎日の jedwabisty 絹の złoty 金の kamienny 石の owczy 羊の ③ 記述的形容詞であっても比較変化形を有しないもの chory 病気である ④ 否定の接頭辞 nie- が付いた形容詞 niebieski 青い niedoslonały 不完全な nieważny 重要でない ⑤ 能動形容分詞や受動形容分詞から派生した形容詞 interesujący 興味のある rażący 騒々しい zmęczony 疲れた zadowolony 満足した ucieszony 納得した ⑥ 綴りの長い形容詞 małowartościowy ほとんど価値のない równoznaczny 同等の spostrzegawczy 観察眼のある これらの形容詞の中には比較変化形を有しないのみならず、比較表現のないものも多 い。しかし、形容詞によっては比較変化を形を有しないが、比較表現を有するものがあ る。その場合には後述するように複合式で表す。 On ma bardziej niebieskie oczy od niej. 彼は彼女より青い眼をしている。 2.複合式 ロシア語の場合、形容詞の原級の前に более を用いて比較の意味を表した。この点 はポーランド語でも同じで bardziej を用いて比較の意味を表す。そして、通常は単一 式でも複合式でも比較の意味を表すことができるが、次のような場合には複合式を用い て比較の意味を表すのが通常である。 1)形容詞の接尾辞が -ow-, -sk-, -at-, -'ast-, -ist- 等の場合である。 ① -ow- の例 typowy 典型的な → bardziej typowy、celowy 目的のある → bardizej celowy ② -sk- の例 płaski 平らな → bardziej płaski ③ -at- の例 garbaty 湾曲した → bardziej garbaty ④ -'ast- の例 gliniasty 粘土のような → bardziej gliniasty ⑤ -ist- の例 wodnisty 水っぽい → bardziej wodnisty 2)形容分詞や副分詞から派生した形容詞の場合である。 zajęty 忙しい → bardizej zajęty、interesujący 興味のある → bardziej intersujący、 zmęczony 疲れた → bardziej zmęczony 3)劣等比較の場合 劣等比較を表す場合には、形容詞の原級に mniej を付けて表す。従って、劣等比較 182 形容詞 の場合には単一式が使われることはなく、常に複合式が使われることになる。 Ta książka jest mniej ciekawa niż tamta. この本はあの本より面白くない。 Kobieta jest mniej mocna niż mężczyzna. 女性は男性より力が強くない。 4)最上級の場合及び劣等最上級の場合 複合式の最上級の場合には bardziej に接頭辞の naj- を付加した najbardziej を、劣 等最上級の場合には mniej に接頭辞の naj- を付加した najmniej を使って表すこと ができる。 On jest najbardziej pracowity uczeń w naszej klasie. 彼は我々のクラスの中で最も 勤勉な生徒である。 On jest najmniej pracowity uczeń w naszej klasie. 彼は我々のクラスの中で最も勤 勉でない生徒である。 3.程度を強めたり、弱めたりする副詞を用いて形容詞の意味を修飾する用法 ロシア語の場合、形容詞の原級の前に более を用いて程度を強めたり、弱めたりし て形容詞の意味を修飾した。ポーランド語の場合も同様に程度に関する副詞を用いて、 程度を強めたり、弱めたりして当該形容詞の意味を修飾する。それには1)原級を修飾 するもの、2)比較級を修飾するもの、3)最上級を修飾するもの、がある。 1)原級を修飾するもの これには、bardzo, dobrze, mało, źle 等の副詞を用いて原級の意味を修飾するが、さ らにこれらの比較級、最上級を用いて形容詞の意味を修飾する用法もある。すなわち、 bardzo の比較級 bardziej 、最上級 najbardziej を用いたり、dobrze の比較級 lepiej、 最上級 najlepiej を用いたり、mało の比較級 mniej、最上級 najmniej、źle の比較級 gorzej、最上級 najgorzej を使うのである。これらの場合は、主に比較変化形を有しな い形容詞において比較級や最上級のニュアンスを出す場合に用いられる。 Ta liść jest bardziej zielona niż tamta liść. この葉はあの葉より緑がかっている。 2)比較級を修飾するもの 比較級を強めたり、和らげたりすることはロシア語においてみられた。強める場合に は、 гораздо やзначительно、 много等を用いたし、 和らげる場合には немного やчуть 等が用いられた。このことはポーランド語でも同じであり、o wiele 非常に、dużo さら に、 znacznie 非常に、等が強める場合であり、niewiele あまりーでない、trochę 少し、 等が和らげる場合である。 znacznie młodzy/ starszy かなり若い/年取った o wiele młodszy/ starszy 遙かに若い/年取った dużo lepszy/ gorszy 遙かに良い/悪い niewiele lepszy/ gorszy あまり良くない/あまり悪くない trochę młodszy / starszy 少し若い/年取った 3)最上級を修飾するもの 最上級を強めたりすることもロシア語において見られた。例えば、наи + -ейший/ айший を用いたものである。あるいは самый + -ейший/ -айший を用いてである。 形容詞 183 ポーランド語においてもこのようなものが見られ、możliwie や jak を用いて最上級の 意味を修飾する。 możliwie najniższa tempratura 可能な限り低い温度 jak najniższa tempratura 可能な限り低い温度 4.形容詞の比較表現 1)原級による比較表現 ① tak +形容詞+ jak ... で表す。 Język hiszpański jest tak łatwy jak angielski. スペイン語は英語と同じくらい簡単 である。 W kraju jeszcze nigdy nie było tak dramatycznej suszy jak obecnie. この国では既 に今ほど著しく乾燥した時はなかった。 Adam jest tak pilny jak jego brat. アダムは兄と同様に勤勉だ。 Adam nie jest tak pilny jak jego brat. アダムは兄ほど勤勉ではない。 ② nie tyle + A, co B で表し、「Aと言うよりはむしろBだ」という意味を表す。 Był nie tyle śpiący, co zmęczony. 彼は眠いと言うよりはむしろ疲れていた。 2)比較級による比較表現 ① 一方のものが他方のものより質の程度が高いことを表すには、比較級+ niż あるい は od を使って表す。ロシア語では чем を用いる方法と、生格を用いる方法があった。 ポーランド語においても同様であり、前者に匹敵するのが niź を用いる方法であり、後 者に匹敵するのが od +生格を用いる方法である。 ア、niż を用いる方法 niż の後は、比較されるものと同じ格・数となる。 Ona jest starszy niż ja. 彼女は私より年上だ。 Wolę kawę niż herbatę. 私は紅茶より珈琲の方が好きだ。 Język angielski jest mniej trudny niż polski. 英語はポーランド語より難しくない。 イ、od +生格を用いる方法 Ona jest starszy ode mnie. 彼女は私より年上だ。( od は mnie の前は ode とな る。) Wolę kawę od herbaty. 私は紅茶より珈琲の方が好きだ。 ② 比較の差 ロシア語では比較の差を示すには、на+対格を用いる方法と、造格を用いる方法があ った。ポーランド語においては、o+対格を用いる方法がある。 Ona jest starszy niż ja o dwa lata. 彼女は私より2歳年上だ。 ③ 「~よりさらに~だ」を表す表現 ア、これには jeszcze を用いる方法がある。 Jej głos jest głośny, ale jego jest jeszcze głośniejszy.彼女の声は大きいが、彼の声はさ らに大きい。 イ、また、o wiele を用いる方法もある。 Tomek jest o wiele młodszy niż Anna. トムはアンナより遙かに若い。 184 形容詞 ④「ますます」を表す表現 (ロシア語で言えば、всё +比較級) これは、coras+形容詞の比較級で表す。 Dzień robi się coraz krótszy. 日はますます短くなる。 ⑤ ~すればするほど~だ これは、im. . . tym . . . で表す。 Im szybszy pociąg, tym droższy bilet. 電車が速ければ速いほど、料金は高くなる。 Im więcej się uczę, tym mniej rozumiem. 学べば学ぶほど、ますます分からなくなる。 ⑥ それだけ一層 これは tym bardziej で表す。 Kocham tym bardziej ją, że brakuje jej rozsądku. 常識を欠いているからこそ、それ だけ一層彼女が好きだ。 ⑦ 比較級の付加語的用法 On kupił droższy i szybszy samachód niż mój. 彼は私の車より高くてスピ ードの出る車を買った。 Ta firma pokazała mi lepszy warunek niż inna. その会社は私に別の会社 よりも良い条件を提示した。 3)最上級による比較表現 ① 付加語的用法 最上級は元来、多くの対象の中から一つだけ選び出された特定の対 象の性質が最も高い程度であることを表すものである。 Ona jest najpiękniejszyą kobietą w naszej klasie. 彼女は我々のクラスの中 で最も美しい女性である。 Chopin był jednym z największych pianist w Polsce. ショパンはポーラン ドで最も偉大なピアニストの一人であった。 To jset najmniej słodka kawa. これは最も甘くない(苦い)コーヒーである。 ② 述語的用法 Piotr jest najwyższy w naszej klasie. ピョートルは我々のクラスの中で最も背が高 い。 ③ 最上級を強調する表現 これは、ze wszystkich を使用する。 To jest najtańsza kamera ze wszystkich. これはすべての内で最も安いカメラである。 ④ 「できるだけ~な」、を表す場合 これは możliwie あるいは jak あるいは jak można + 最上級を用いて表す。 Znalazł jak najlepszą pracę. 彼はできるだけ良い仕事を見つけた。 ⑤ ~の一つ Uważa się, że Mali jest jednym z najbiedniejszych państw świata. マリは世界で最 も貧しい国の一つと思われている。 ⑥ 最上級を用いずに最上級の意味を表す表現 Z posiadanych oszczędności cieszymy się jak żaden inny naród w Europie. 我々は 貯蓄高についてヨーロッパの他の国民よりも幸せに感じている。 形容詞 付)主な形容詞とその反対語及びそれぞれの比較級 日本語 原級 比較級 美しい、醜い piękny, brzydki piękniejszy, brzydszy 大きい、小さい duży, mały większy, mniejszy 清潔な、汚れた czysty, brudny czystszy, brudniejszy 深い、浅い głęboki, płytki głębszy, płytszy 濃い、まばらな gęsty, rzadki gęstszy, rzadszy 勤勉な、怠惰な pracowity, leniwy bardziej pracowity, b. leniwy 乾いた、湿った suchy, mokry bardziej suchy, mokrzejszy 早い、遅い wczesny, późny wcześniejszy, późniejszy 容易な、困難な łatwy, trudny łatwiejszy, trudniejszy 高価な、安い drogi, tani droższy, tańszy 遠い、近い daleki, bliski dalszy, bliższy 速い、遅い szybki, wolny szybszy, wolniejszy 最初の、最後の pierwszy, ostatni なし 平らな、険しい płaski, stromy bardziej płaski, bardziej stromy ゆったりした、忙しいwolny, zajęty wolniejsz, bardziej zajęty 頻繁な、まれな częsty, rzadki częstszy, rzadszy 一杯の、空の pełny, pusty pełniejszy, bardziej pusty 滑稽な、悲しい śmieszny, smutny śmieszniejszy, smutniejszy 良い、悪い dobry, zły lepszy, gorszy 大きい、小さい wielki, mały większy, mniejszy 幸福な、悲しい szczęśliwy, smutny weselszy, smutniejszy 硬い、柔らかい twardy, miękki twardszy, miększy 重い、軽い ciężki, lekki cięższy, lżejszy 高い、低い wysoki, niski wyższy, niższy 暑い、冷たい gorący, zimny gorętszy, zimniejszy 興味深い、退屈なciekawy, nudny ciekawszy, nudniejszy 明るい、暗い jasny, ciemny jaśniejszy, ciemniejszy 長い、短い długi, krótki dłuższy, krótszy 新しい、古い nowy, stary nowszy, starszy 若い、年老いた młody, stary młodszy, starszy 開いた、閉じた otwarty, zamknięty なし 過去の、未来の przeszły, przyszły なし 公の、私的な publiczny, prywatny なし 裕福な、貧乏な bogaty, biedny bogatszy, biedniejszy 正しい、間違ったsłuszny, błędny słuszniejszy, błędniejszy 右の、左の prawy, lewy なし 鋭い、鈍い ostry, tępy ostrzejszy, bardziej tępy 185 186 形容詞 病気の、健康な chory, zdrowy 単純な、複雑な prosty, złożony 賢い、愚鈍な mądry, głupi 平滑な、粗雑な gładki, szorstki 真っ直ぐな、曲がっているprosty, kręty 強い、弱い silny, słaby 甘い、苦い słodki, gorzki 甘い、酸っぱい słodki, kwaśny 背が高い、背が低い wysoki, niski 厚い、薄い gruby, cienki 密集した、まばらなgęsty, rzadki 都会の、田舎の miejski, wiejski 暖かい、涼しい ciepły, chłodny 広い、狭い szeroki, wąski bardziej chory, zdrowszy prostszy, bardziej złożony mądrzejszy, głupszy gładszy, bardziej szorstki prostszy, bardziej kręty silniejszy, słabszy słodszy, bardziej gorzki słodszy, kwaśniejszy wyższy, niższy grubszy, cieższy gęstszy (gęściejszy), rzadszy なし cieplejszy, chłodniejszy szerszy, węższy. 多くの形容詞は、接頭辞の nie を付加することにより、反対の意味を表すこ とができる。 区別できる wybredny, niewybredny はっきりした wyraźny, niewyraźny 正確な ścisły, nieścisły 新鮮な świeży, nieświeży 親切な łaskawy, niełaskawy 誠実な uczciwy, nieuczciwy 意図的な umyślny, nieumyślny 興味深い ciekawy, nieciekawy 幸運な szczęśliwy, nieszczęśliwy おとなしい grzeczny, niegrzeczny 形容詞 187 ⅩⅦ 代名詞的形容詞 第2章 代名詞の項の最初に述べたように、これらは代名詞として扱う文法書もある が、本書はこのような立場を取らず、あくまでも形容詞の一種として捉えるので、ここ に記載するのである。これには、指示形容詞、所有形容詞、所有再帰形容詞、疑問形容 詞、関係的形容詞、強調的疑問形容詞、拡張形容詞、否定形容詞、不定形容詞を区別す ることができる。 1.指示形容詞 1)これには、ten, tamten, ów, taki, ten sam, taki sam, inny がある。変化は ten, tamten, ów については代名詞のそれと全く同じであり、そちらを参照されたい。 ten は「この、その」が基本であるが、「あの」を表す場合もある。一方、tamten は 「あの」を表すのが基本であるが、ten と対比して使用されることが多い。その場合に は、ten は近くのものを指し、tamten は遠くのものを指すのである。 Ten stół jest drogi. Tamten stół jest tani. このテーブルは高価だ。あのテーブルは安 い。 Ta książka jest trudny. Tamta książka jset łatwy. この本は難しい。あの本は易しい。 Ci studenci szli do domu, ale tamci studenci czekali nauczyciela. こちらの学生達は 帰宅したが、あちらの学生達は先生を待っていた。 taki は「そのような~」を表し、名詞を修飾する。 taka pogoda そのような天気 taki samochód そのような自動車 Takie domy nie są drogie. そのような家は高くない。 2)ten sam, taki sam の変化についてはそれぞれが変化するので代名詞の変化を参照され たい。 ten sam, taki sam の用法 ① ten sam は全く同一であることを表し、比較するものは co 以下で示す。 To jest ta sama pani, co była tu wczoraj. この人は昨日、ここにいた女性と同じ人です。 Mieszkam od dzieciństwa w tym samym domu. 私は子供時代から全く同じ家に住ん でいる。 Miałem tego samego nauczyciela co wy. 私の先生はあなた方と全く同じ先生でした。 ② taki sam は量や外観や寸法や性質が同じことを表し、比較するものは jak 以下で示す。 Kupię taki sam samochód jak ma Tusk. 私はトゥスクが持っている車と同じ車を買う 予定だ。 Anna jest taka sama jak siostra. アンナは妹と似ている。 ③ tyle samo 「全く同じ量の」を表し、無変化である。 Przyjmowaliśmy tyle samo robotników, co rok temu. 我々は昨年と同じ数だけの労働 者 を採用した。 ④ tak samo「同じ方法で、作法で、仕草で」等、を表し、これも無変化である。 188 形容詞 Syn zachowuje się tak samo jego ojciec. 息子はその父親と全く同じ仕草をする。 3)inny 別の、について ① inny は ten sam 同じ、taki sam 同じ種類の、と対比されることが多い。 To nie jest ten sam film, jest inny film. これは同じ映画ではなく、別の映画である。 ② 複数の inni/inne はしばしば niektórzy/niektóre, jedni/jedne, pewni/pewne と対比さ れる。 Niektórzy ludzie wyszli, inni ludzie zostali. ある者は去り、ある者は残った。 ③ 比較の対照は niż で表す。 On jest inny niż jego brat. 彼は彼の弟とは似ていない。 2.所有形容詞 mój 私の、twój あなたの、nasz 我々の、wasz あなた方の、jego 彼の、jej 彼女の、 ich 彼らの・彼女らの、pana あなたの(男性に対して)、pani あなたの(女性に対し て)、panów あなた方の(男性複数に対して)、pań あなた方の(女性複数に対して)、 państwa あなた方の(男性と女性の混合の集団に対して)、がある。 このうち、mój, twój, nasz, wasz については修飾される名詞が男性か女性か中性かに よって形が異なる。しかし、jego, jej, ich, pana, pani, panów, pań, państwa については 修飾される名詞の性に関わらず、形は同じである(ただ、pana と同じ意味で pański, pańska, pańskie というものがあるが、これらの場合は修飾される名詞の性によって、 異なる。)。 Czy to jest pański samochód ? これはあなたの自動車ですか(男性に対して)。 Czy to jest pańska torba ? これはあなたのカバンですか(男性に対して)。 Czy to jest pańskie cygaro ? これはあなたの葉巻ですか(男性に対して)。 Czy te są pańskie książki? これらはあなたの本ですか(男性に対して、複数の本を 指して)。 修飾される名詞の性によって一人称二人称で形が異なるのは、ロシア語と同じである。 それぞれの変化を下記に示す。 1)mój 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 mój moje moja moi moje 生格 mojego mojego mojej moich moich 与格 mojemu mojemu mojej moim moim 対格 mój/mojego moje moją moich moje 造格 moim moim moją moimi moimi 前置格 moim moim mojej moich moich 形容詞 189 2)twój 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 twój twoje twoja twoi twoje 生格 twojego twojego twojej twoich twoich 与格 twojemu twojemu twojej twoim twoim 対格 twojego/twój twoje twoją twoich twoje 造格 twoim twoim twoją twoimi twoimi 前置格 twoim twoim twojej twoich twoich 3)nasz 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 nasz nasze nasza nasi nasze 生格 naszego naszego naszej naszych naszych 与格 naszemu naszemu naszej naszym naszym 対格 naszego/nasz nasze naszą naszych nasze 造格 naszym naszym naszą naszymi naszymi 前置格 naszym naszym naszej naszych naszych 4)wasz 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 wasz wasze wasza wasi wasze 生格 waszego waszego waszej waszych waszych 与格 waszemu waszemu waszej waszym waszym 対格 waszego/wasz wasze waszą waszych wasze 造格 waszym waszym waszą waszymi waszymi 前置格 waszym waszym waszej waszych waszych 5)jego 彼の・それの jej 彼女の ich 彼らの・彼女ら、pana あなたの(男性に対して) pani(女性に対して)等は格変化もしないことに注意すべきである。 jego samochód 彼の自動車、jego torba 彼のカバン、 jego cygaro 彼の葉巻、 jego książki 彼の本(複数) 6)三人称の人称代名詞の生格の場合、前置詞と結びつく時、ń を付加したが、所有形 容詞としての用法の場合には、ń は付加されないことに注意すべきである。すなわち、 prezent dla niego 彼のためのプレゼント、となり、prezent dla jego żona 彼の妻のため のプレゼント、となり、後者は dla niego żona とはならないのである。 7)所有形容詞の省略 190 形容詞 所有形容詞は文の内容から分かれば、省略することができる。例えば、Zjadłem śniadanie. 私は朝食を食べた、という文の場合、その朝食は「私の朝食」であることが 明らかであるので、moje 私の、を省略することができる。 3.所有再帰形容詞としては swój があるが、その変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 swój swoje swoja swoi swoje 生格 swojego swojego swojej swoich swoich 与格 swojemu swojemu swojej swoim swoim 対格 swojego/swój swoje swoją swoich swoje 造格 swoim swoim swoją swoimi swoimi 前置格 swoim swoim swojej swoich swoich 所有形容詞と所有再帰形容詞の用法の使い分けは以下のごとくである。 1)主語の付加語的用法(限定用法)として所有形容詞は使われるが、所有再帰形容詞 が使われることはない。 Mój stól jest duży. 私のテーブルは大きい。(×Swój stól jest duży.) Nasza szkoła jest duża. 私たちの学校は大きい。 Ich dom jest duży. 彼らの家は大きい。 To jest mój ojciec. この人は私の父です。(× To jest swój ojciec. ) Nie podoba mi się mój twarz. 私は自分の顔が好きではない。 (× Nie podoba mi się swój twarz. ) ※ 注意すべきは形式上は主格以外であるが、 論理的な主語である場合にも所有再帰形容 詞は使われないことである。 W torbie nie było mojej książki. 鞄には自分の本がなかった(książki は生格である が、否定生格であり論理的には主語であるので、 swojej は使えない。)。 Brakuje mi mojego psa. 私は自分の犬がいなくなって寂しい(psa は生格であるが、 動詞 brakować の論理上の主語であり、swojego psa とは言えない。)。 2)主語が直接補語の所有者である場合には、一人称、二人称の場合には所有形容詞か 所有再帰形容詞かのいずれでも使われるが、三人称の場合には所有再帰形容詞だけが使 われる。 Czytam moją książkę. 私は自分の本を読む、でも良いし、Czytam swoją książkę. で も良い。 しかし、On czyta swoją książkę. 彼は自分の本を読む、の場合には swoją のみが使 われ、jego が使われることはない。なぜなら、jego を使用すると、別の三人称の誰か のものと誤解されるおそれがあるからである。 3)主語と直接補語に関係する主体が異なる場合には、所有形容詞が使われ、所有再帰 形容詞が使われることはないのは言うまでもない。 Adam czyta swoją książkę, a nie jego książkę. アダムは自分の本を読んでいる。彼 形容詞 191 の本ではない。 4)swój の強調形 swój を強調するものとして własny がある。これは swój を強調する時に、これに代 わって用いられる。 Wypisała się ze szpitała z własnej woli. 彼女は自分の意思で退院した。 4.疑問形容詞 jaki, który, czyj がある。jaki は「どのような」という意味があり、który は「どの」 という意味が基本である。また、czyj は「誰の」という意味がある。それぞれの変化は 以下のごとくである。 1)jaki の変化 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 jaki jakie jaka jacy jakie 生格 jakiego jakiego jakiej jakich jakich 与格 jakiemu jakiemu jakiej jakim jakim 対格 jakiego/jaki jakie jaką jakich jakie 造格 jakim jakim jaką jakimi jakimi 前置格 jakim jakim jakiej jakich jakich Jaka to książka? それはどのような本か。 W jaki sposób oni zrobili to. どんな方法で彼らはそれをしたのか。 ※ jaki は感嘆文でも用いられる。 Jaka ładna dziewczynka! 何と可愛い少女だこと。 2)który の変化 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 który które która którzy które 生格 którego którego której których których 与格 któremu któremu której którym którym 対格 którego/który które którą których które 造格 którym którym którą którymi któtymi 前置格 którym którym której których których Który zegarek jest twój? どちらの時計があなたのものですか? Który kolor lubisz? あなたはどちらの色が好きですか? 192 形容詞 3)czyj の変化 単数 男性形 中性形 女性形 主格・呼格 czyj czyje czyja 生格 czyjego czyjego czyjej 与格 czyjemu czyjemu czyjej 対格 czyjego/czyj czyje czyją 造格 czyim czyjm czyją 前置格 czyim czyim czyjej Cayj to samochód? これは誰の車ですか。 Czyja to książka? これは誰の本ですか。 複数 男性人間形 czyi czyich czyim czyich czyimi czyich 非男性人間形 czyje czyich czyim czyje czyimi czyich 5.関係的形容詞 疑問形容詞として使われるものは関係的形容詞としても用いられる。従って、jaki, który, czyj がそれに含まれる。 関係的形容詞は先行詞の素性、 特質を限定するものである。 Student, czyj imię zawsze zapominam, jest nie mądry. 私がいつもその名前を忘れ るその学生は賢くない。 Dom, który dach jest cudowny, jest na sprzedaż. その屋根が豪華である家が売りに 出されている。 Pudełko, jaki kolor wybierałem, jest różowe. 私が選び出した箱の色はピンクである。 6.普及的形容詞 każdy, wszyscy, wszystkie が挙げられる。każdy は単数の名詞を修飾し、wszyscy は 複数男性人間形名詞を修飾し、wszstkie は複数非男性人間形名詞を修飾する。その変化は 第2章 代名詞の項を参照されたい。 Każdy pies jest czarny. それぞれの犬が黒い。 Wszystkie psy są czarne. すべての犬が黒い。 Wszyscy przyjaciele są odważni. すべての友人達は勇敢である。 Każdy kot jest czarny. すべての猫が黒い。 Wszyscy moi znajomi są żonaci. すべての私の知り合いは結婚している。 Wszystkie koty są czarne. すべての猫が黒い。 但し、każdy が複数形に使われる場合もある。それは、例えば複数形しかない名詞の 場合である。例:każde drzwi すべてのドア 7.否定形容詞 これには nijaki, niczyj, żaden がある。 1)nijaki, niczyj の変化はそれぞれ jaki, czyj と同じである。 nijaki はロシア語の никакой に相当する。「いかなる種類の~もない」、という意味で ある。 形容詞 193 Nie otrzymał od nas nijakiej pomocy. 彼は我々からどんな助けも受け入れようとしな かった。 Nijakie argumenty mnie nie przekonują. どんな論拠も私を納得させることはできな い。 2)niczyj はロシア語の ничей に相当する。「誰のでも~でない」、という意味である。 Mnie nie trzeba niczyjch pomocy. 私には誰の助けも不要だ。 3)żaden は人に関しても物に関しても使われる。その変化は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 żaden żadne żadna żadni żadne 生格 żadnego żadnego żadnej żadnych żadnych 与格 żadnemu żadnemu żadnej żadnym żadnym 対格 żadnego/żaden żadne żadną żadnych żadne 造格 żadnym żadnym żadną żadnymi żadnymi 前置格 żadnym żadnym żadnej żadnych żadnych Żaden chłopiec nie jest zdolny. どの少年も有能ではない。 Żaden film nie jest dobry. どの映画も良くない。 Nie mam żadnych dobrych przyjaciół. 私には良い友達はいない。 Nie było żadnego klienta. 一人のお客もいなかった。 成句で、 w żaden sposób 決して~でない w żadnym wypadku 問題外だ 8.不定形容詞 któryś 誰かの・どれかの、jakiś ある・何とか言う、czyjś 誰かの、が代表的なもの である。また、którykolwiek 誰かの・どれかの、 jakikolwiek ある・何とか言う、 czyjkolwiek 誰かの、もあるが、-ś と -kolwiek の違いは不定代名詞のそれと同じであ る。 変化はいずれも -ś、-kolwiek を除いた部分が変化し、それぞれ który, jaki, czyj と同 じである。 1)któryś któregoś dnia ある日 Słuchałem jego głos w którymś programie radia. 私はどれかのラジオ番組で彼の声 を聞いた。 2)jakiś Dzwonił jakiś pan Brown. ブラウンさんとか言う人を呼んだ。 Czy masz jakieś pytania? 何らかの質問がありますか。 3)czyjś 誰かの To jest czyjś list. これは誰かの手紙です。 Z powodu czyjejś nieuwagi 誰かの不注意のため 194 形容詞 4)którykolwiek 何らかの・どれかの Chcę kupić którąkolwiek książkę. 私は何らかの書籍を買いたい。 5)jakikolwiek 何らかの・何(誰)かある On szuka jakiejkolowiek pracy. 彼は何らかの仕事を探している。 6)czyjkolwiek 誰かの Potrzeba mi czyjejkolwiek pomocy. 私には誰かの援助が必要である。 7)pewien ある pewien człowiek ある人 po pewnym czasie しばらくして 8)niejaki ~とか言う~ Pytał o ciebie niejaki pan Smith スミスとか言う人があなたに頼んでいた。 9)niektóry いくつかの Niektóre ksiązki są nudne. いくつかの本は退屈だ。 10)niejeden たくさんの Niejeden czytelnik brał udział w wiecu. たくさんの読者がその大会に参加した。 数詞 195 第4章 数詞 数詞とは人、物などの数を表すものであるが、いろいろなカテゴリーに属するもので ある。すなわち、名詞として機能する場合もあるし、形容詞として機能する場合もある し、代名詞として機能する場合もあるのである。 名詞として:Pięć jest liczbą nieparzystą. 5は奇数である。 形容詞として:Dwa miasta zostanie zrujnowane. 二つの町が破壊される。 代名詞として:Ile książek kupuje ona? 彼女はどれくらいの本を買いますか? Kupuje pięć. 5冊買います。 ロシア語においては数詞はかなり複雑であった。ポーランド語においても例外ではな く、さらに男性人間形と非男性人間形を区別しなければならないこともあり、もっと複 雑である。数詞にはロシア語と同様に、個数詞、順序数詞、集合数詞、具体化数詞があ る。さらに、時刻をいう場合や、時をいう場合、年齢をいう場合にも独特の表現がある。 数詞は格、性、数によって変化する。基本的には形容詞と同じように変化するが、名 詞のように変化する場合もあるし、これらが混在したりすることもある。 以上のように数詞は第3章までに言及した品詞のどれかに該当するとも思われるが、 上述したように特殊性を有しており、特に取り上げる必要があるので、ここに章立てを したのである。 Ⅰ.個数詞 1.基本個数詞 基本個数詞は数量と関係があり、0と1を除いて、複数の可算名詞と関連性があるの はロシア語と同じである。しかし、ロシア語と異なるのは、ポーランド語の場合は男性 人間形と非男性性人間形を区別しなければならないことである。尚、算用数字で表す場 合、ポーランド語では5桁以上の数字は3桁ごとに余白を空ける。従って、例えば15 36の場合は、1536 となるが(余白がない)、2万3549の場合は、23 549(3と 5の間に余白がある) と表すのである。(ロシア語は多少異なり、4桁でも3桁で余白 を空ける。)。 ポーランド語の基本個数詞(主格)は以下のごとくである。 0 zero 10 dziesięć 20 dwadzieścia 300 trzysta 1 jeden jedna jedno 11 jednaście 30 trzydzieści 400 czterysta 2 dwa dwie 12 dwanaście 40 czterdzieści 500 pięćset 3 trzy 13 trzynaście 50 pięćdziesiąt 600 sześćset 4 cztery 14 czternaście 60 sześćdziesiąt 700 siedemset 5 pięć 15 pięćnaście 70 siedemdziesiąt 800 osiemset 6 sześć 16 szesnaście 80 osiemdziesiąt 900 dziewięćset 7 siedem 17 siedmnaście 90 dziewięćdziesiąt 8 osiem 18 osiemnaście 100 sto 9 dziewięć 19dziewiętnaście 200 dwieście 196 数詞 1000 tysiąc 1 000 000 milion 1 000 000 000 miliard 2.基本個数詞で注意すべき点を以下に述べる。 1)11から19までは -naście となるが、前半部分は一桁の数字を付け加 えるのが原則である。11は jedennaście となるが、n が重なるので、n は 一つだけとなる(これは同じアルファベットが続いた場合には最初のものは脱 落するという綴り字の規則の表れとも言える。)。12、13はそのまま付加 するだけである。14は czetry の y を取り、czternaście となる。15は pięć の ć を t に替えて、piętnaście となる。16は sześć の ć を取り、さらに ś → s に替え、szesnaście となる。17、18はそのまま付加するだけでよい。 19は15と同じく ć を t に替えて、dziewiętnaście となる。 2)20以上90までは、いずれも10 dziesięć と関係がある。従って、後 半は -dziesi- となるが、基数詞によって多少異なる。20の場合は -dzieścia であり、30、40は -dzieści となり、50以降は -dziesiąt となる。そして、 前半部分は20、30はそのまま付加するだけである。40の場合は cztery の y を取り、czterdzieści となる。50、60、70、80、90はそのまま付 加するだけでよい。 3)100から900までは100とその倍数を考えるだけで良い。そこで、 まず、100 sto を把握し、200以上はそれと関係する。後半部分に関して、 200は -ście、300、400は -sta となり、500から900までは -set となる。そして、200は2の女性形を付加し、dwieście、となり、300か ら900まではそのまま1桁の基数詞を付加するだけでよい。例えば、600 は sześćset となる。 4)1000から9000までは1000とその倍数を考えるだけでよい。1 000は tysiąc で2000、3000、4000はそれぞれ2、3、4と tysiąc の複数主格である tysiące の複合個数詞となる。従って、例えば3000は trzy tysiące となる。5000から9000までは5から9までの基数詞と tysiąc の複数生格である tysięcy の複合個数詞となる。従って、例えば600 0は sześć tysięcy となる。 5)1万以上で1000の倍数も同様に複合個数詞となる。例えば、99万9 千は999×1000 であるので、 dziewięćset dziewięćdziesiąt dziewęć tysiący となる。 6)100万は milion、10億は miliard であり、100万以上もそれぞれの 複合合成数詞となるのは言うまでもない。例えば、127万4000は、10 0万+274×1000、として考えればよい。だから、miliard dwieście siedmdziesiąt cztery tysiące となる。 数詞 197 3.複合個数詞 複合個数詞とは個数詞の内で基本個数詞以外のものを言い、2つ以上の基本個数詞が 結合して作られるものである。20まではすべて基本個数詞であるので、複合個数詞は 21以上で見られる。 1)2桁の複合個数詞 これらは21、22、・・・ 31、32・・・、・・・・98、99等である。こ れらの場合は、2桁の基本個数詞と1桁の基本個数詞の複合したものとなる。例えば、 32の場合は30 trzydzieści と2 dwa の複合したものであるので、trzydzieści dwa となる。 2)3桁の複合個数詞 これらは101、102、・・・110、・・・990、991、・・・999等で ある。 1 0 1 sto jeden 、 3 5 2 trzsta pięćdziesiąt dwa 、 9 9 0 dziewięćset dziewięćdziesiąt ※352は3つの基本個数詞の複合個数詞である。 3)4桁の複合個数詞 これらには1 001、・・・・、9 990、・・・、9 999等がある。 9 999 dziewięć tysięcy dziewięćset dziewięćdziesiąt dziewięć これは5つの基 本個数詞の複合個数詞である。 4)5、6桁の複合個数詞 これらは10 001以上999 999以下の個数詞である。 72 356 siedmdziesiąt dwa tysięce trzysta pięćdziesiąt sześć 9 9 9 99 9 dziewięćset dziewięćsiąt dziewięć tysięcy dziewięćset dziewięćsiąt dziewięć 5)7桁以上の複合個数詞 これらは1 000 001以上の個数詞である。 6 953 873 927 これはほぼ世界人口数に匹敵する数である。 sześć milardów dziewięćset pięćdziesiąt trzy miliony osiemset siedemsiąt trzy tysięcy dziewięćset dwadzieścia siedem 4.次に個々の基本個数詞について格変化等を述べる。 1)0 zero ロシア語は ноль または нуль であるが、ポーランド語は zero と英語に近い。これ は中性名詞であり、中性名詞として変化する。 W stu są dwa zera. 100には0が二つある。 2)1 jeden ロシア語は один、одно、одна、одни と主格でも結合する名詞の性・数に応じて変 化し、さらに格変化もした。ポーランド語はその点でも同様であり、複数形においては 男性人間形と非男性人間形によって形が異なる。そして、変化は形容詞と「ほぼ」同じ である。「ほぼ」と言ったのは、単数主格が ~n で終わっており、形容詞としては特 198 数詞 殊な形になるからである。尚、1なのに複数形があるのかという疑問があるが、それは ロシア語と同じく「いくらかの」を意味する場合と、複数のみの名詞を修飾する場合に 使用される。 格変化は以下の如くになる。 単数 男性形 中性形 主格・呼格 jeden jedno 生格 jednego jednego 与格 jednemu jednemu 対格 jeden/jednego jedno 造格 jednym jednym 前置格 jednym jednym 女性形 jedna jednej jednej jedną jedną jednej 複数 男性人間形 非男性人間形 jedni jedne jednych jednych jednym jednym jednych jedne jednymi jednymi jednych jednych 3)①2 dwa ロシア語では主格で、男性・中性形の場合が два であり、女性形の場合が две であっ た。そして、格に応じて変化した。ポーランド語においても同じであるが、男性人間形 が加わり、主格だけでも3つの形がある。すなわち、非男性人間形及び中性形の場合は、 dwa、 女性形の場合は dwie 、男性人間形の場合は dwaj である。格変化は以下の如く になる。1と異なる点を少し補足すると、2の場合(それ以上の場合もであるが)は複 数形しかないので単数形はないのと、1においては男性人間形以外は非男性人間形とし て同じであったが、2の非男性人間形は男性形、中性形、女性形が分かれるということ である。 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 主格・呼格 dwa dwa dwie dwaj/dwóch 生格 dwóch/dwu dwóch/dwu dwóch/dwu dwóch/dwu 与格 dwom/dwu dwom/dwu dwom/dwu dwom/dwu 対格 dwa dwa dwie dwóch 造格 dwoma/dwu dwoma/dwu dwoma/dwiema/dwu dwoma/dwu 前置格 dwóch/dwu dwóch/dwu dwóch/dwu dwóch/dwu 男性人間形主格には dwóch がある。これは dwaj に代わるものである。そこで、例え ば、2人の少年が・・・、という場合、dwaj chłopcy でも良いし、dwóch chłopców と しても良い。そして、口語的なのは後者である。注目すべきは後者の場合は結合する名 詞は複数生格が要求されるし、また、動詞も単数3人称が用いられることである(前者 の場合は、 結合する名詞は複数主格が要求されるし、 動詞は複数3人称が用いられる。 ) 。 そして、過去形の場合は単数3人称中性形が用いられる。例えば、「2人の少年が待っ ている。」という場合、Dwaj chłopcy czekają. か、Dwóch chłopców czeka. となる。 ※ 数字の2と類似しているものとして、「双方の」という意味で使われる語が 数詞 199 ある。それは oba であるが、この変化は以下のごとくである。 男性形 中性形 女性形 男性人間形 主格・呼格 oba oba obie obaj 生格 obu obu obu obu 与格 obu obu obu obu 対格 oba oba obie obu 造格 oboma/obu oboma/obu obiema/obu/oboma oboma/obu 前置格 obu obu obu obu 口語では、これらはすべて obydw- に適切な語尾が付加されることにより代用される。 すなわち、主格は obydwa, obydwa, obydwie, obydwaj である。但し、obydwóch, obydwu という形は使われない。尚、oba の用法については特殊な面があり、また、そ の集合名詞形である oboje と境界を接する面があり、後述の集合名詞の oboje の項で述 べる。 ②3 trzy、4 cztery ロシア語は修飾される名詞の性に関係なく、3は три、4は четыре であった。 ポーランド語においては、2と異なり、非男性人間形としては一つしかないが、、 男性人間形があるので主格だけでも2つになる。その格変化は以下の如くであ る。 3 4 非男性人間形 男性人間形 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 trzy trzej/trzech cztery czterej/czterech 生格 trzech trzech czterech czterech 与格 trzem trzem czterem czterem 対格 trzy trzech cztery czterech 造格 trzema trzema czterema czterema 前置格 trzech trzech czterech czterech 男性人間形主格は2つの形があるが、 trzej と czterej の場合は2の場合と同じく、 結合する名詞は複数主格を要求し、動詞は複数3人称を要求する。一方、trzech, czterech の場合は、結合する名詞は複数生格を要求し、動詞は単数3人称(過去の場合は単数3 人称中性形)を要求する。 4)5以上90までのの基本個数詞の格変化 5 pięć の場合 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 pięć pięciu 生格 pięciu pięciu 与格 pięciu pięciu 対格 pięć pięciu 造格 pięcioma/pięciu pięcioma/pięciu 前置格 pięciu pięciu 200 数詞 男性人間形の場合は pięć に u を付加するだけである。 造格は -oma を付加するだけ である。 6、7、8、9、10は同じである。11、12はやや異なる。例えば、男性人間形 の場合、5は u を付加するだけであったが、11、12の場合は -ście が -stu と子音 交替も起きているのである(この子音交替は -st が基本形で e の前は第一子音交替が起 きると考えれば良い)。しかも、12の場合は dwa- が dwu- となる。 11の変化 12の変化 非男性人間形 男性人間形 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 jedenaście jedenastu dwanaście dwunastu 生格 jedenastu jedenastu dwunastu dwunastu 与格 jedenastu jedenastu dwunastu dwunastu 対格 jadenaście jedenastu dwanaście dwunastu 造格 jedenastoma/jedenastu(どちらでも) dwunastoma/dwunastu(どちらでも) 前置格 jednastu jednastu dwunastu dwunastu 13、14、15、16、17、18、19の場合は、11と同じと考えればよい。 20、30はまた、やや異なる。 20の変化 30の変化 非男性人間形 男性人間形 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 dwadzieścia dwudziestu trzydzieści trzydziestu 生格 dwudziestu dwudziestu trzydziestu trzydziestu 与格 dwudziestu dwudziestu trzydziestu trzydziestu 対格 dwadzieścia dwudziestu trzydzieści trzydziestu 造格 wudziestoma/dwudziestu(どちらでも) trzydziestoma/trzydziestu(どちらでも) 前置格 dwudziestu dwudziestu trzydziestu trzydziestu 40 czterdzieści は30と同じである。50、60、70、80、90はこれらとやや 異なる。50を例に取ると 50 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 pięćdziesiąt pięćdziesięciu 生格 pięćdziesięciu pięćdziesięciu 与格 pięćdziesięciu pięćdziesięciu 対格 pięćdziesiąt pięćdziesięciu 造格 pięćdziesięcioma/pięćdzięsięciu(どちらでも) 前置格 pięćdziesięciu pięćdziesięciu 特徴的なことは ą → ę 交替、t → ć 交替が起こっている点である。 5)100から900までの変化 100、200、300、400は比較的簡単である。 数詞 201 100 200 非男性人間形 男性人間形 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 sto stu dwieście dwustu 生格 stu stu dwustu dwustu 与格 stu stu dwustu dwustu 対格 sto stu dwieście dwustu 造格 stu/stom stu/stoma dwustu/dwustoma dwustu/dwustoma 前置格 stu stu dwustu dswustu 300は trzysta であるが、-sta が -stu と変化するだけである。400 czterysta も 同じである。 500、600、700,800、900は少し特殊である。例えば、500は pięćset であるが、変化するのは前半の pięć- であり、それは前述したのと同じである。 500の場合 非男性人間形 男性人間形 主格・呼格 pięćset pięciuset 生格 pięciuset pięciuset 与格 pięciuset pięciuset 対格 pięćset pięciuset 造格 pięciuset pięciuset 前置格 pięciuset pięciuset 6)1000以上 この場合はさらに異なった文法的考察を必要とする。 1000、100万、10億の場合は男性名詞のように変化する。従って、900まで あったように、非男性人間形と男性人間形の区別はない。 1000 100万 単数 複数 単数 複数 主格・呼格 tysiąc tysiące 主格・呼格 milion miliony 生格 tysiąca tysięcy 生格 miliona milionów 与格 tysiącowi tysiącom 与格 milionowi milionom 対格 tysiąc tysiące 対格 milion miliony 造格 tysiącem tysiącami 造格 milionem milionami 前置格 tysiącu tysiącach 前置格 milionie milionach 10億 単数 複数 主格・呼格 miliard miliardy 生格 miliarda milardów 与格 miliardowi miliardom 対格 miliard miliardy 造格 miliardem miliardami 前置格 miliardzie miliardach 202 数詞 ここで疑問に思われるのは、1000は既に複数であるので、単数形はないかのごと くであるが、1000の場合はそれを1単位として扱い、それが名詞として扱われるの で、単数扱いになるのである。100万、10億の場合も同様である。そして、100 0以上の場合は tysiąc, milion, miliard 自体はそれぞれ男性名詞(そのうちの無生名詞) として扱われるので、主語として機能する場合には1000の場合は単数主格で、20 00、3000、4000の場合は複数主格で、5000から99万9千までは複数生 格形となる。それ故、1000は tysiąc だが、2000は dwa tysiące 、5000は pięć tysięcy となる。注意すべきは、例えば21000の場合である。この場合は、21 ×1000と考えるのであり、1000すなわち tysiąc は男性無生名詞であり、21の 場合の主格形は dwadzieścia jeden である。そして、それに結合する名詞は複数生格で あるから、21000は dwadzieścia jeden tysięcy となる(後述する「Ⅲ 数詞と名詞 の結合規則」参照)。 同様に、100万は milion、200万は dwa miliony、500万は pięć milionów と なる。 尚、ロシア語の場合も1000を単位として、2000、3000、4000の場合 は1000тьсяча の複数主格 тьсячи が用いられ、5000以上の場合には複数生格 тьсяч が用いられる。ただ、異なるのはロシア語の1000は女性名詞であるが、ポー ランド語の1000は男性名詞である点である。従って、2000の場合には2の男性 形である dwa が使われ、dwa tysięce となり、dwie tysięce とはならない。これに対し て、ロシア語の場合は две тьсячи と2の女性形が使われるのである。 5.複合個数詞の変化 ポーランド語の場合、基本個数詞はロシア語と同じく、1、2、3、4、5、6、7、 8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、 40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、6 00、700、800、900、1000、1000000(100万)、10000 00000(10億)を指し、それ以外は複合個数詞となる(もっとも1兆以上の数字 は除く)。この区別が重要なのは名詞と結合する場合に、その名詞の変化形が、基本個 数詞と関係し、複合個数詞の場合には最後の基本個数詞が関係するからである。この点 もロシア語と同じである。従って、例えば34の場合 trzydzieści cztery であるが、結合 する名詞の形は cztery と関係する。 複合個数詞が変化する場合、最後の基本個数詞だけが変化するのか、それともすべて の基本個数詞が変化するのか、あるいは一部の基本個数詞が変化するのかという問題が あるが、次のように考えるべきである。 1) まず、原則的には すべての基本個数詞が変化すると考えるべきである。例えば、 1373匹の犬では、 主格・呼格は tysiąc trzysta siedemdziesiąt trzy psy 生格は tysiąca trzystu siedemdzięciu trzech psów 与格は tysiącowi trzystu siedemdzięciu trzem psom 数詞 203 対格は tysiąca trzystu siedemdzięciu trzech psów 造格は tysiącem trzystoma siedemdzięciu trzema psami 前置格は tysiącu trzystu siedemdzięciu trzech psach 2)3桁までは常に上の原則が当てはまるのであるが、4桁以上の場合には、1000 や100の位は変化せず、10の位や1の位のみが変化することも可能である。特に何 度も繰り返す時はそうである。その場合は、上の1373匹の犬の生格形は、tysiąc trzysta siedemdzięciu trzech psów となる。 3)1の位が1で終わる複合個数詞の場合は、常に jeden が使われ、決して変化するこ とはなく、結合する名詞の性にも関わらない。 従って、 例えば21本の木は、 dwadzieścia jeden drzew 31人の少年は、trzydziestu jeden chłopców となる。 4)男性人間形の名詞と結合する場合、男性人間形の変化形ではなく、常に非男性人間 形の変化形となる。 dwa tysiące dwudziestu robotników 2020人の労働者 5)男性人間形の名詞と結合する場合で、1000以上で100の位、10の位、1の 位がすべてがある場合、10の位と1の位のみが変化する。 Rosmawialiśmy o tysiąc pięćset dwudziestu pięciu uczniach. 我々は1525人の 生徒について語り合った。 Ⅱ 数詞と名詞の結合規則 1.基本個数詞の場合 1)ロシア語の場合、主語として機能する場合、結合する名詞は、数詞が1の 場合は単数主格が、2、3、4の場合には単数生格が、5以上の基本数詞の場 合には複数生格が用いられた。しかし、ポーランド語の場合はやや異なるし、 男性人間形というのがあるのでやや複雑である。1の場合は単数主格である点 は同じである。しかし、2、3、4の場合には男性人間形でも非男性人間形で も複数主格が用いられるのが原則である。そして、5以上の場合には、男性人 間形、非男性人間形とも複数生格が用いられる。しかし、一方では、男性人間 形の2、3、4の場合には、複数生格が用いられ場合もある。従って、男性人 間形の場合、2、3、4と結合する場合は複数主格形でも複数生格形でも良い ことになる。 2以上の場合で、生格の場合にはいずれにおいても生格が用いられる。対格 の場合には男性人間形の場合には生格と同じことになる。非男性人間形の場合 には主格と同じことになる。それ以外の格、すなわち与格、造格、前置格、呼 格の場合にはその格が用いられる。 各格の変化の例を以下に示す。 204 数詞 jeden student 一人の学生 jedno miasto 一つの町 jedna lampa 一つのラン プ 主格 jeden student jedno miasto jedna lampa 生格 jednego studenta jednego miasta jednej lampy 与格 jednemu studentowi jednemu miastu jednej lampie 対格 jednego studenta jednego miasto jedną lampę 造格 jednym stdentem jednym miastem jedną lampą 前置格 jednym stdencie jednym mieście jednej lampie 呼格 jeden studencie jedno miasto jedna lampo dwaj studenci 二人の学生 dwa miasta 二つの町 dwie lampy 二つのラン プ 主格 dwaj studenci 生格 dwóch studentów 与格 dwom studentom 対格 dwóch studentów 造格 dwoma stdentami 前置格 dwóch stdentach 呼格 dwaj studenci dwa miasta dwóch miast dwom miastom dwa miasta dwoma miastami dwóch miastach dwa miasta dwie lampy dwóch lamp dwom lampom dwie lampy dwoma lampami dwóch lampach dwie lampy pięciu studentów 五人の学生 pięć miast 五つの町 pięć lamp 五つのランプ 主格 pięciu studentów pięć miast pięć lamp 生格 pięciu studentów pięciu miast pięciu lamp 与格 pięciu studentom pięciu miastom pięciu lampom 対格 pięciu studentów pięć miast pięć lamp 造格 pięcioma studentami pięcioma miastami pięcioma lampami 前置格 pięciu studentach pięciu miastach pięciu lampach 呼格 pięciu studentów pięć miast pięc lamp 2)問題は tysiąc 1000、milion1 000 000、miliard 1 000 000 000、の場合である。前述したように tysiąc 等は単数として扱われ るのであるが、それと結合する名詞は5以上のものと結合すると考えられ、複 数生格が使われる。従って、1000ドルは、tysiąc dolarów となる。また、 斜格(主格以外の格)であっても、結合する名詞は複数生格となるという点に 注意すべきである。例えば、Ta książka wyszla w kilku tysiącach egzemplarzy. この本は、数千部発行された、の場合、egzemplarzy が複数生格となるのであ る。この場合の前置詞 w は前置格支配であり、それ故 kilku 及び tysiącach は 前置格である。そして、tysiącach は名詞扱いであり、それにさらに名詞が来 数詞 205 ており、このような場合にあとの名詞は生格になるからである。従って、造格 でも z tysiącem przyjaciół 1000人の友人とともに、のように przyjaciół と複数生 格になるのである。 2.複合個数詞の場合 複合個数詞の場合は、やや複雑である。最後の基本個数詞が名詞の変化形と 関係するので、最後の基本個数詞が幾つであるかによって下記のごとくになる。 1)1の場合(21、31、41・・・101等)結合する名詞は複数生格に なる。jeden 1、の場合は、主語として機能する場合は単数主格であったが、 この場合は複合個数詞であることを反映して複数生格になるのである(要する に5以上20までの数と同じ扱い)。そして、複合個数詞の場合の1の位の jeden は常に jeden であり、変化しないと言うことにも注意すべきである。 21人の少年 dwudziestu jeden chłopców 21個の机 dwadzieścia jeden stołów 21人の女性 dwadzieścia jeden kobiet 31個のランプ trzydzieści jeden lamp 31人の学生 trzydziestu jeden studentów 2)2、3、4の場合(22、23、24、32、33、34・・・102、 103、104等) 結合する名詞は原則的には複数主格となる。従って32匹の犬は trzydzieści dwa psy、32の町は trzydzieści dwa miasta、32個のランプは trzydzieści dwie lampy となる。注意すべきは人間を表す場合に、osoba が使われるが、 これは女性名詞であり、従って、その複数は非男性人間形となる。 Czterdzieści cztery osoby odniosły obrażenia w wypadku. 44人がその事故で負 傷した。 注意すべきは男性人間形である。男性人間形の複合個数詞では、基本個数詞 の2、3、4の男性人間形である dwaj, trzej, czterej が用いられないことであ る。従って、32人の学生は trzydziestu dwóch stdentów となる。また、基 本個数詞と異なり、複合個数詞の場合の男性人間形では最後が2、3、4の場 合には常に複数生格形が用いられ、基本個数詞の場合のように選択的に複数主 格形が用いられることはないことにも注意すべきである。 3)5以上の場合(25、26、35、36、105、106等) この場合は、男性人間形とも非男性人間形とも複数生格となる。例えば、3 5人の学生は trzydziestu pięciu studentów、35の町は trzydzieści pięć miast、 35のランプは trzydzieści pięć lamp となる。 Ⅲ 数詞と動詞の結合規則 206 数詞 この問題は、数詞が主語の一部分となる場合に、その述語である動詞がどの ような活用形になるかという問題である。 1.基本個数詞の場合 1)jeden, jedna, jedno 等、1の場合は、動詞は3人称単数形が用いられる。 Jeden student śmieje się. 一人の学生が笑っている。 Jeden student śimiał się. 一人の学生が笑っていた。 Jedono miasto zostanie zrujnowane. 一つの町が破壊される。 Jedono miasto zostało zrujnowane. 一つの町が破壊された。 Jedna lampa znika. 一つのランプが消える。 Jedna lampa znikała. 一つのランプが消えた。 2)2、3、4の場合は、動詞は3人称複数形が用いられる。 Dwaj studencie śmieją się. 二人の学生が笑っている。 Dwaj studencie śmiali się. 二人の学生が笑っていた。 Dwa miasta zostanie zrujnowane. 二つの町が破壊される。 Dwa miasta zostały zrujnowane. 二つの町が破壊された。 Dwie lampy znikają. 二つのランプが消える。 Dwie lampy znikały. 二つのランプが消えた。 そして、2、3、4の場合で男性人間形の場合、名詞は複数生格形でも良い が、複数生格形を使う場合には、動詞は単数3人称中性形となる。 Dwóch studentów śmieje się. 二人の学生が笑っている。 Dwóch studentów śmiało się. 二人の学生が笑っていた。 ※しかし、注意すべきは 24 górników jest wciąż uwięzionych w strefie eksplozji 2 4人の鉱山夫は以前として爆発区域に閉じこめられている、のように形容詞、形容分詞 は複数生格形となることである。これは複数生格形の górników に一致するためである。 3)5以上の場合には、主語となるものが、男性形であろうと、中性形であろ うと、女性形であろうと、中性単数形となる。従って、例えば、 Pięć lamp poszło. 五つのランプが消えた、となるし、Ośmiu górników zginęło w wybuchu w kopalni. 8人の炭鉱労働者が炭坑の爆発で死亡した、となる。 このことは100以上の場合にも該当する。 Sto pociągów jechało do Warszawy. 百両の列車がワルシャワへ向かっていた。 4)1000以上の場合はやや複雑である。通常は、単数3人称中性形である。 Tysiąc ludzi stało na polu. 千人の人々が野原に立っていた。 しかし、2000、3000、4000の場合には複数3人称非男性人間形が用いら れることもある。 Na wiecu trzej tyciące ludzi były. 集会には3000人の人々が参加していた。 5)不定数詞の場合には、単数3人称中性形となるのが原則である。ただ、複数3人称 形となる場合も時にある。 Wiele osób zginęło w katastrofie lotniczej. 多くの人々が飛行機事故で死亡した。 Wiele osób zostało aresztowanych. 多くの人々が逮捕された。(受動態であり、 数詞 207 areszwanych と複数生格形になっているのは、主語に合わせたものである。 Większość banków zamyka o trzeciej. ほとんどの銀行は午後3時に閉まる。 あるいは、 Większość banków zamykają o trzeciej. ほとんどの銀行は午後3時に閉まる。 2.複合個数詞の場合 結合する名詞が複数主格となる場合には、動詞は複数形となり、結合する名 詞が複数生格となる場合には、動詞は中性単数形となる。 Co najmniej dwadzieścia pięć osób zginęło, a sześćdziesiąt trzy osoby odniosły poważne obrażenia. 少なくとも25人が死亡し、一方、63人が重症を負った。(こ の場合、前半は5であるので、結合する名詞は複数生格となるので、動詞は中性単数 形となっている。一方、後半は3であるので結合する名詞は複数主格であるので、動 詞は複数非男性人間形となっている。非男性人間形であるのは主語が女性名詞の osoba の複数だからである。) Dwadzieścia sześć osób zginęło, a pięćdziesiąt cztery zostały ranne w samobójczym zamachu. 自爆テロで26人が死亡し、54人が負傷した。 Dwadzieścia dwie osoby zostały ranne. 32人が負傷した。32は複合個数詞であり、 osoby と複数主格となる。そして、注意すべきは動詞は男性人間形は使われず、非男性 人間形が使われることである。なぜなら、oboby の単数形は oboba で女性名詞である からである。 しかし、Miliony pracowników w Indiach rozpoczęły strajk generalny. インドの10 0万の労働者がゼネストを開始した、という場合、pracownik は男性人間名詞であるに もかかわらず、動詞が rozpoczęły と非男性人間形が使われている。これは tysiąc や milion が使われる場合は、動詞は通常は単数となるが、何千とか何百万の意味に使われ る場合(すなわち不定数詞として使われる場合)や、2~4が関係している場合には、 動詞は複数非男性人間形となりうるからである( 1)の④参照)。これはポーランド語 が数が多数になれば量として考えるからである。 Ⅳ 順序数詞 1.ロシア語においては順序数詞の変化は形容詞とほぼ同じであったが、ポー ランド語においてもほぼ同じである。順序数詞は原則として単数形が使われる が、複数形も認められる。ただ、複数男性人間形は単数中性形と同じである。 複数男性人間形に関しては、1から4までに限って変化形がある。その変化形 は1から順に、pierwsi, drudzy, trzeci, czwarci となる。このうち trzeci は単 数男性主格と全く同じである。尚、5以上の複数男性人間形の順序数詞が必要 な場合には、順序数詞の複数形は使われず、順序数詞の単数男性形でもって表 す。例えば、Mężczyźni skończyli na siódmym miejscu. 男達は7番目に終え た、である。 208 数詞 Oni skónczyłi pierwsi. 彼らは最初に終えた。 dwudzieste dziecko 20番目の子供(単数中性形) lata dwudzieste 20年代(複数非男性人間形) 尚、複数形しかない名詞に関係する場合には、複数形が使われる。 czwarte drzwi po prawej stronie 右から4番目のドア、である。 比較級や最上級がない点もロシア語と同じである。 2.以下に、主な基本順序数詞の単数男性主格を記載する。 第1の pierwszy、 第2の drugi、 第3の trzeci、 第4の czwarty、 第 5の piąty 、第6の szósty、 第7の siódmy、 第8の ósmy、 第9の dziewiąty 、第10の dziesiąty、 第11の jedenasty、 第12の dwunasty、 第13の trzynasty、 第14の czternasty、 第15の pięnasty、 第16の szesnasty 、第1 7 の siedemnasty 、 第18 の osiemnasty 、 第1 9の dziewięnasty、 第20の dwudziesty、 第30の trzydziesty、第40の czterdziesty、第50の pięćdziesiąty、第60の sześćdziesiąty、第70の siedemdziesiąty、第80の osiemdziesiąty、第90の dziewięćdziesiąty、第 100の setny、第200の dwusetny、第300の trzechsetny、第400 の czetrechsetny、第500の pięćsetny、第600の sześćsetny、第700 の siedmsetny、第800の osiemsetny、第900の dziewięćsetny、第10 00の tysięczny である。 それ以上の順序数詞で注意すべきは、個数詞においては2000以上は複合 個数詞であったが、順序数詞の場合には、第2000の dwutysięczny、第3 000の trzytysięczny、 第4000の czterechtysięczny、第5000の pięćtysięczny、第6000の szesćtysięczny、第7000の siedemtysięczny、 第8000の osiemtysięczny、第9000の dziewięćtysięczny、と基本順序 数詞があると言うことである。 さらに第1万の dziesięciotysięczny、第1万1千の jedenastotysięczny、 第2万の dwudziestotysięczny、第10万の stutysięczny、第100万の milionowy、 となる。 3.上述の順序数詞で基本個数詞との異同の観点から注意すべき点を述べる。 まず、「第1の」、「第2の」の場合は、基本数詞とは異なる。「第3の」 から「第10の」までは基本数詞と似ているが、多少異なっているので、個々 に把握すべきである。「第11の」から「第19の」までは基本数詞の -naście を -nasty にすれば良いのであるが、ただ、「第12の」場合だけは、dwa- が dwu- となる(dwunasty)。 「第20の」「第30の」「第40の」は -dziesty となり、前半部分は基 本数詞と同じである。ただ、「第20の」だけは dwa- が dwu- となる。 「第50の」から「第90の」までは -dziesiąty となり、前半部分は基本数 数詞 209 詞と同じである。 「第100の」は、setny であり、「第200の」から「第900の」まで は -setny となり、前半部分は「第500の」から「第900の」までは、基 本数詞と同じである。しかし、「第200の」「第300の」「第400の」 はやや異なり、それぞれ dwusetny, trzechsetny, czterchsetny となる。 「第1000の」は tysięczny であり、「第2000の」から「第9000の」 までは -tysięczny となる。そして、前半部分は1桁の基数詞と類似している が、やや異なる。「第2000の」は dwutysięczny、「第3000の」は trzytysięczny、「第4000の」は、czterotysięczny、「第5000の」から 「 第 9 0 0 0 の 」 ま で は 、 そ れ ぞ れ pięcio/sześcio/siedmio/ośmio/dziewięciotysięczny となる。さらに「第100 00の」から「第20000の」までは一つの単語である。ここで注目すべき は基本個数詞の場合は2000以上は複合個数詞となったが、順序数詞の場合 は一つの単語となるということである。 4 . さ ら に 注意すべきは、複合順序 数詞の場合である。2桁の場合は、 dwudziesty pierwszy 第21の、のようにいずれも(10の位も1の位も)順 序数詞となることである。3桁以上の複合順序数詞の場合は、最後の2桁が順 序数詞で、3桁以上の部分は基本個数詞となる。例えば、第317の、の場合 は trzysta siedmnasty 、 第 2 3 5 2 の 、 の 場 合 は 、 dwa tysiące trzysta pięćdziesiąty drugi となる。 5.順序数詞は形容詞と同じように変化する。trzeci 第3の、の変化は以下の ごとくである。これは、語幹が軟音の ci で終わる形容詞である。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 trzeci trzecie trzecia trzeci trzecie 生格 trzeciego trzeciego trzeciej trzecich trzecich 与格 trzeciemu trzeciemu trzeciej trzecim trzecim 対格 trzeciego 又は trzeci trzecie trzecią trzecich trzecie 造格 trzecim trzecim trzecią trzecimi trzecimi 前置格 trzecim trzecim trzeciej trzecich trzecich 6.順序数詞は物事の順序を表す数詞である。あたかも形容詞のように使われ る。とりわけ付加語的用法で使用される。 順序数詞は次の様な場合に使われる。すなわち、który, które, która, którzy, które で質問される文の答えとなるものである。例えば、時刻、本のページ数、 子供の番数、順位、建物の階、何世紀、何周年等を表す場合である。また、日 付(世紀、日)、分数の分母、1世、2世、3世といった同名の人物の世代数 210 数詞 を表す時も順序数詞を用いる。 Na której stronie jest twój artykuł? あなたの論文は何ページにありますか。 Na trzydziestej piątej stronie. 35ページにあります。 Drugi syn ma na imię Tomek. 2番目の息子の名前はトムです。 Teresa miała czwartą nagrodę. テレサは4等賞を取った。 Kaczyński teraz jest w bufecie na piątym piętrze. カチンスキーは今5階のビュッ フにいる。 W którym wieku zdarzyła się bitwa pod Sekigaharą. 関ヶ原の戦いは何世 紀に起こったか。 W siedemnasty wieku. 17世紀である。 Dzisiaj jest dwudziesta rocznica ślubu. 今日は結婚20周年の日だ。 Królowa Eliżbieta druga クイーンエリザベス2世 druga wojna światowa 第二次世界大戦 その他の例は、後述のⅧ 年、月、日の言い方 及び Ⅸ 時刻の表し方、を参 照されたい。 7.順序数詞の特殊な使用としては、co と共に用いられ、「~毎に」、を表す 場合が挙げられる。 Opuszczał co drugą stronę 彼は2ページ毎に飛ばして読んだ。 Ⅴ 集合数詞 1.集合数詞はロシア語においては① 複数のみの名詞、② 身体でペアになっ ている部分を表す場合、③ 男女混合の人間を表す場合、④ 性別を特定しない 場合、⑤ 幼い動物の場合、⑥ 慣用句、等に使われた。この点は、ポーランド 語においてもほぼ同じである。ただ、ロシア語では集合数詞は10までである が、ポーランド語においてはそれ以上でも認められる。その作り方は、基本個 数詞から次の接尾辞を付加するのが原則である。すなわち、主格形は2、3の 場合は -oje であり、4以上の場合は -oro である。 従って、2から10までの主格は、それぞれ、 dwoje, troje, czworo, pięcioro, sześcioro, siedmioro, ośmioro, dziewięcioro, dziesięcioro となる。 11から19、及び20、30、40では基本個数詞の ś の後を取り除き、 それに -cioro を付加する。従って、11の集合数詞は11が jedenaście なの で ś の後の -cie を除き、-cioro を付加するので、jedenaścioro となり、30 の集合数詞は30の基数詞が trzydzieści であるので、ś の後の -ci を除き、 -cioro を付加するので、trzydzieścioro となる。また、50、60、・・・9 0の場合は、語尾の -ąt を除き、-ęcioro を付加する。従って、60の集合数 詞は sześćdziesięcioro となる。また、不定数詞に関する集合数詞もある。kilka 数詞 211 → kilkoro である。 複合集合数詞の場合は、最後の1の位の個数詞だけが集合数詞となり、10 の位以上の個数詞は基本個数詞のままである。例えば、32の集合数詞は trzhdzieści dwoje である。 尚、この集合数詞も変化する。例えば、troje, czworo は 主格・呼格 生格 与格 対格 造格 前置格 troje trojga trojgu troje trojgiem trojgu czworo czworga czworgu czworo czworgiem czworgu 2.結合する名詞は複数生格が基本である。これは男性人間形名詞の場合は結 合する名詞は主格の場合は複数生格となったが、それに準じているのである。 Dwoje dziennikarzy zginęło w Warszawie. 2人のジャ~ナリストがワルシャワで死 んだ。 そして、注意すべきは主格、呼格、対格のみならず造格も複数生格形が使わ れる点である。そして、与格及び前置格は基本個数詞の場合と同じく、名詞固 有の変化を残存させている。従って、5羽のひよこ、という場合、主格、呼格、 対格は pięcioro kurcząt となり、生格は pięciorga kurcząt となり、造格は pięciorgiem kurcząt と名詞は複数生格となるが、与格は pięciorgu kurczętom となり、前置格は pięciorgu kurczętach となる。 集合数詞を含んだ句が主語として機能する場合、その動詞は単数3人称とな るのが原則である。例えば、現在形の場合は、Pięcioro studentów śpi. 5人 の学生が眠る、となる。過去形の場合は単数3人称中性形となる。例えば、Troje dzieci bawiło się.3人の子供たちが遊んでいた、である。しかし、代名詞的形 容詞によって修飾される場合には、動詞は複数形となる。例えば、Wszscy czworo byli zajęci. 4人とも全員忙しかった、である。 ※ 集合数詞は徐々に廃れつつある。特に5以上の場合は、基本個数詞が取っ て代わりつつある。また、19以上の集合数詞は稀である。 3.用法 1)複数だけの名詞の場合 dwoje dzwi 二つのドア、czworo spodni 4つのズボン 2)身体でペアになっている部分を表す場合 dwoje oczu 二つの眼、dwoje rąk 二本の手 212 数詞 3)男女混合の人間を表す場合 czworo studentów 4人の学生、dwoje rodzeństwa 二人の兄妹 4)性別を特に特定しない場合 czworo dzieci 4人の子供、kilkoro ludzi 数人の人々 5)幼い動物を表す場合 troje kurcząt 3匹の雛鳥 troje źrebiąt 3頭の子馬 6)慣用句で dziesięcioro przykazań モーゼの十戒 4.oboje について 基本数詞では dwa に相当するものとして oba があり、これは「双方」とか 「両方」を表すものであった。この oba に相当する集合名詞として、oboje が ある。oba が数詞として特殊であったように、この oboje も集合名詞としては やや特殊である。これの用法は oba と境界を接する面があり、ここでまとめ て記載する。 1)人間について述べる場合 ① 両者とも男性の場合は、男性人間形主格の obaj か obydwaj が使われ、集 合名詞の obeje が使われることはない。そして、動詞は複数形となる。 Obaj synowie grają w piłkę nożną. 2人の息子達はサッカ~をしている。 Obaj synowie grali w piłkę nożną. 2人の息子達はサッカ~をしていた。 ② 両者とも女性の場合は、非男性人間形の女性形の主格である obie か obydwie が使われる。 Obie córki grają karty. 2人の娘達はトランプをしている。 Obie córki grały karty. 2人の娘達はトランプをしていた。 ③ 夫婦を表す場合には、oboje が使われ、原則通り(男性人間形と女性人間形 が混在する場合には、男性人間形扱いとする。)、動詞は複数形となる(過去 は複数男性人間形)。 Oboje rodzice podróżowali samolotem. 両親は飛行機で旅行した。 Oboje rodzice podróżuje samolotem. 両親は飛行機で旅行する。 Oboje państwo Nowakowie podróżuje samolotem. ノヴァック夫妻は飛行 機で旅行する。 ④ しかし、男女混合の場合には、oboje が使われ、結合する名詞は複数生格で あり、動詞は単数形となる。 Oboje dzieci spało. 2人の子供が眠っていた。 Oboje studentów spało. 2人の学生が眠っていた。 Oboje rodzeństwa spało. 兄妹が眠っていた。 2)人間以外の有生のものや無生のものについて述べる場合 ① 有生男性のものや無生の男性のものや中性のものを示す場合には、非男性形 主格の oba か obydwa が使われる。そして、動詞は複数形となる。 数詞 213 Oba psy nie spały w nocy. 二匹のその犬は夜は眠れなかった。 Oba domy są na sprzedaż. 二つの家が売りに出されている。 ② 有生の女性のものや無生の女性のものを示す場合には、非男性形主格の obie か obydwie が使われる。 Obie książki są nasz. 二つの本は私たちのものだ。 Obie kury krzyczą. 二羽の鶏が、鳴いている。 ③ 幼い動物(中性形)やペアになったもの、例えば、眼とか耳、等は oboje が 使われる。そして、結合する名詞は複数生格が使われ、動詞は単数3人称(過 去は中性形)が使われる。 Oboje kociąt jest słodkie. 二匹の子猫は可愛い。 Oboje uczu jest brudne. 両耳は汚れている。 Ⅵ 具象化数詞 1.ロシア語においては個数詞、順序数詞、集合数詞以外に番号数詞というの があった。それは、единица、двойка、тройка、четвёрка、пятёрка、шестёрка、 семёрка、восьмёрка、девятка、десятка である。これは、例えばホテルの番 号やバスの番号や成績表やトランプカ~ドの数、等に使われるものである。こ のようなものはポーランド語にも見られ、jedynka1、dwójka 2、trójka 3、 czwórka 4、piątka 5、szóstka 6、siódemka 7、ósemka 8、dziewiątka 9、dziesiątka 10、jedenastka 11、dwunastka 12、dwudziestka 2 0、trzydziestka 30、 czterdziestka 40、pięćdziesiątka 50、setka 1 00、 等である。4までは個々に覚える必要があるが、5以上は原則として順 序数詞の最後の -y を除き、-ka を付加して作る。 尚、ロシア語においては数量を表す場合、さらに別の数詞があったが、ポー ランド語においてはそれは見られない。すなわち、卵5個という場合、ロシア 語では пяток яиц というように пятёрка とも異なる пяток という語が使わ れたが、ポーランド語においてはこの場合も piątka が使われるのである。ま た、例えばスポーツチームの人数を表す場合もこの番号数詞が使われる。従っ て、ポーランド語においては番号数詞という名称は正しくなく、具象化数詞と する。 2.この具象化数詞も変化する。この変化は女性名詞で -ka で終わる名詞と同 じである。 主格 生格 jedynka jedynki 214 与格 対格 造格 前置格 呼格 数詞 jedynce jedynkę jedynką jedynce jedynko 3.具象化名詞は0から20まで使われるのが普通であるが、10から90ま での10の倍数は年齢を表すことが多い。 Dzisiaj mamy lekcję w jedynce. 今日、我々は第一講義室で講義がある。 Przyjechał czternastką. 彼は14番バスで到着した。 Nie mogę znzleźć klucza od trójki. 私は3番のカギを見つけることができ ない。 Dostała piątkę z polskiego i czternastkę z historii. 彼女はポーランド語は 5であったが、歴史は4であった。 Jedenastka jest za mała. サイズの11は小さすぎる。 一方、 Dobiegam czterdziestki. 私は約40歳だ。 Mąż jest po pięćdziesiątce. 私の夫は50を越えている。 4.その他の用法としては、スポーツやゲームのプレーヤーの人数を表す場合 に使われる。 Gramy we czwórkę. 我々は4人で遊ぶ。 Japońska jedenastka w piłkę nożną. 日本のイレブン(サッカーチーム)が プレーをしている。 5.年齢の~代を表す場合もある。 On jest już po osiemdziesiatce. 彼は既に80代前半だ。 On jest przed czterdzientką. 彼は30代後半だ。 On ma czterdziestkę na karku. 彼は40年の人生を生きてきた。 6.数十のとか、数百の、を表す場合に具象化名詞が使われることがある。す なわち、dziesiątka と setka であるが、これらの複数形が表すのである。 Tornada zabiły dziesiątki osób. 竜巻が数十人の人々を死に追いやった。 Dziesiątki(setki) ludzi zostało zabitych. 何十人の(何百人の)人々が殺さ れた。 dziesiątki tysięcy uczestników demonstracji 数万人のデモの参加者 7.特殊な用法 数詞 215 1)造格を使うと、「~単位で」という意味になる。 Ludzie padali dziesiątkami z głodu. 人々は飢餓によって10人単位でばた ばたと倒れた。 2)造格で時速を表すこともある。 Samochód jechał osiemdziesiątką. その自動車は時速80kmで走行して い た。 8.尚、具象化数詞には複合数詞は使用されない。これは論理的というよりも、 慣用的なものである。複合数詞が必要な時は、具象化数詞は使われず、基本個 数詞が使われることになる。 付)以上のようにポーランド語には複数において男性人間形と非男性人間形を 区別するので、男女の組み合わせの場合にどのような数詞を使用するのか難し い問題が横たわっている。例えば、4人の日本人が歌っている、という場合に その4人の日本人の男女の組み合わせ如何によって数詞が異なるのである。そ の場合に、① 4人すべてが男性の場合、② 4人すべてが女性の場合、③ 一部 が男性で一部が女性の場合、④ 男性は1人以上おり、すべてが男性かも知れな い場合、⑤ 男女の組み合わせが分からない場合、が考えられる。注意すべきは 女性が1名以上おり、すべてが女性かも知れない、という場合は④と同じと考 えて良い。 ① 4人すべてが男性の場合 Czterej Japończycy śpiewają. 4人の日本人男性が歌っている。 あるいは Czterech Japończyków śpiewa. 4人の日本人男性が歌っている。 ② 4人すべてが女性の場合 Cztery Japończonki śpiewają. 4人の日本人女性が歌っている。 ③ 一部が男性で一部が女性の場合 Czworo Japończyków śpiewa. 4人の日本人(男性と女性)が歌っている。 この場合は集合名詞を使い、動詞は単数3人称形となる。 ④ 男性は1人以上おり、すべてが男性かも知れない場合 Czterech Japończków śpiewa. ⑤ 男女の組み合わせが分からない場合 Czwórka Japończków śpiewa. 4人の日本人(男性か女性かは不明)が歌っ ている。 この場合は具象化名詞を使い、動詞は単数3人称形となる。 Ⅶ 不定数詞 216 数詞 不定数詞は、不定の数を表す数詞であるが、変化をするものである。不定数 詞は数量と見なされる。そして、その変化は pięć のそれと類似している。そ れ故、非男性人間形と男性人間形を区別することができる。また、結合する名 詞等も pięć に準じて考えればよい。基本的な不定数詞には ile いくつの、wiele たくさんの、kilka いくつかの、tyle それほどたくさんの、parę 少しの、 kilkanaście 十数の、kilkadziesiąt 数十の、kilkaset 数百の、である。pięć と 同じ変化をするのであるから、例えば、ile の場合には(wiele, tyle も語尾は 同じ)、 男性人間形以外 主格・呼格 ile 生格 ilu 与格 ilu 対格 ile 造格 iloma/ilu 前置格 ilu 男性人間形 ilu ilu ilu ilu iloma/ilu ilu kilka の場合には parę の場合には 男性人間形以外 男性人間形 男性人間形以外 男性人間形 主格・呼格 kilka kilku parę paru 生格 kilku kilku paru paru 与格 kilku kilku paru paru 対格 kilka kilku parę paru 造格 kilkoma/kilku kilkoma/kilku parioma/paru parioma/paru 前置格 kilku kilku paru paru kilkunaście の場合には 男性人間形以外 男性人間形 主格・呼格 kilkunaście kilkanastu 生格 kilkunastu kilkunastu 与格 kilkunastu kilkunastu 対格 kilkunaście kilkanastu 造格 kilkunastoma/kilkunastu kilkunastoma/kilkunastu 前置格 kilkunastu kilkunastu kilkudziesiąt の場合には 数詞 217 男性人間形以外 男性人間形 主格・呼格 kilkudziesiąt kilkadziesięciu 生格 kilkudziesięciu kilkudziesięciu 与格 kilkudziesięciu kilkudziesięciu 対格 kilkudziesiąt kilkadziesięciu 造格 kilkudziesięcioma/kilkudziesięciu kilkudziesięcioma/kilkudziesięciu 前置格 kilkudziesięciu kilkudziesięciu kilkaset の場合には 男性人間形以外 主格・呼格 kilkaset 生格 kilkuset 与格 kilkuset 対格 kilkaset 造格 kilkuset 前置格 kilkuset 男性人間形 kilkuset kilkuset kilkuset kilkuset kilkuset kilkaset 注:上のパラダイムで男性人間形以外、として非男性人間形としなかったのは、不可算 名詞の場合は単数扱いであるので、それを考慮したためである。 その他、不変化の不定数詞もあるが、それには dużo たくさんの、niedużo/ mało ほ とんど~ない、nieco 少しの、等がある。 1.不定数詞は主格、生格、対格の場合、関係する名詞の生格と結合する。そして、そ の名詞は可算名詞なら複数生格となり、不可算名詞なら単数生格となる。 Ile kilometrów do stacji.? 駅まで何キロありますか。 Kilku ludzi mieszka razem. 数人の人々が一緒に住んでいる。 Ile dżemu kupuje ona? 彼女はどれくらいのジャムを買いますか? Ona ma kilkanaście lat. 彼女は10代である。 Gotuję dla kilkanastu chłopców. 私は10数人の少年のために料理をする。 2.それ以外の格の場合は、関係する名詞の当該の格と結合する。その名詞が可算名詞 の場合は複数形に、不可算名詞の場合には単数形となる。 O ilu psach mówisz? あなたは何匹の犬について話しているのですか。 Dzięki kilku nauczycielom Tomek zdał egzamin. 数人の教師のお陰でトムは試験に 合格した。 218 数詞 Wrócił do Polski po wielu latach. 何年も後に、彼はポーランドに帰った、 On mówi kilkoma językami. 彼は数カ国語を話す。 3.kilka-, parę- は、概数を表す場合に用いられる。 kilkanaście (11から19を表す)、kikladziesiąt(20、30、40、50、6 0、70、80、90を表す。)kilkaset(200、300、400、500、600、 700、800、900を表す。) Jego syn ma kilkanaście lat. 彼の息子は10代である。 paręnaście 2ダースかそこら parędziesiąt 数ダース paręset 数百 4.tyle... ile... ~と同数のもの、~と同じ程度の、~と同じ量の Kup tyle ubrań, ile chcesz. 君は欲しいだけの服を買いなさい。 5.parę 少しの、自体は para ペア(対)、から派生した不定数詞である。一方、parę は para ペア、の対格の場合もある。そして、一対の靴買う、という場合、Kupuję jedną parę butów. 二対の靴を買う、という場合は、Kupuję dwie pary butów. 5対の靴を買 う、という場合は、Kupuję pięć par butów. となる。 6.不定数詞と同様の機能を有するが、全く、変化しないものもある。それには、dużo 多くの、trochę 少しの、 sporo きわめて多くの、 niedożo/ mało わずかの、 dość 十 分な、 dosyć 十分な、等がある。これらは主格、生格、対格でしか使われない。それ以 外の格が関係する場合には wiele や kilka が使われる。 W parku było dużo ludzi. 公園にはたくさんの人がいた。 Rozmawialiśmy z wieloma ludźmi. 我々は多くの人々と話をした。 7.不定数詞と動詞 1)不定数詞を含んだ名詞が主語となる場合に、動詞は単数3人称中性形が用 いられるのが原則である。すなわち、5以上の場合と同様に考えて良い。この ことは可算名詞であっても不可算名詞であっても妥当する。 ① 可算名詞の場合 Tam pracuje wiele lekarzy i wiele lekarek. そこでは多くの男性医師と女 性医師が働いている。 ② 不可算名詞の場合 Zostało mało czasu. ほとんど時間が残っていなかった。 2)しかし、具象化数詞の dziesiątka, setka の複数である dzisiątki, setki は事実上不 定数詞として使われ動詞は複数形を取る。また、個数詞である千を表す tysiąc の複数 形の tysiące も事実上不定数詞として扱われ、事実上の不定数詞として扱われる場合に は複数形を取ることがある。しかも、その複数形は非男性人間形である。 数詞 219 Setki samochodów pędziły do mety. 数百の車が、ゴールを目指して突っ込んでいっ た。 Setki Tybetańczyków zostały w ostatnim czasie zatrzymane. 数百人のチベット人が、この時間までに逮捕された。 Tysiące osób demonstrowały przeciw ustawie. 何千人の人々がその法律に反対して デモをした。 Tysiące ludzi demonstrowały przeciw ustawie. 何千人もの人々がその法律に反対し てデモをした。 Ⅷ 年、月、日の言い方 1.年のみの場合 1)「~年」、という言い方 ① ロシア語においては、最後の数詞だけが順序数詞となり、それ以外は個数詞 が使われた。ポーランド語はやや異なり、最後の2つの数詞が順序数詞となり、 それ以外は個数詞が使われる。 例えば1986年を例に取ると、千の位と百の位については個数詞を使い、 しかも個数詞は変化しない。十の位と、一の位については順序数詞を使い、し かもその順序数詞は格に応じて変化するのが原則である。だから、主格や対格 になる時は千の位と百の位は個数詞の主格で表し、十の位と一の位は順序数詞 の 主 格 あ る い は 対 格 で 表 す ( も ち ろ ん 男 性 形 で あ る ) 。 だ か ら 、 tysiąc dziewięćset osiemdziesiąty szósty rok となる。 生格になる時は千の位と百の位は個数詞の主格で表し、十の位と一の位は順 序数詞の生格で表す。だから、tysiąc dziewięćset osiemdziesiątego szóstego roku となる。 前置格となる時は千の位と百の位は個数詞の主格で表し、十の位と一の位は 順序数詞の前置格で表す。従って、w tysiąc dziewięćset osiemdziesiątym szóstym roku となる。 ② では、十の位と一の位がない年代の場合はどうするかであるが、この場合は、 最後の要素だけが、変化する。だから、2000年に、という場合は、主格、 対格では dwutysięczny rok と2000の順序数詞を使うのである。生格になるとき は dwutysięcznego roku となり、 前置格になるときは w dwutysięcznym roku となる。 2009年という場合は、主格、対格は dwutysięczny dziewiąty rok と千の位も順 序数詞となる。生格となる時は dwutysiącznego dziewiątego roku となり、前置格の場 合も w dwutysiącznym dziewiątym roku となる。 もっとも、 dwa tysiące dziewiąty rok 2009年、と千の位は個数詞で表すこと もある。 2010年の主格、対格は、dwa tysiące dziesiąty rok となる。 2)「~年に」という場合は、生格を用いる方法と、w + 前置格を用いる方法がある。 220 数詞 一般的に言って、歴史上の出来事を言う場合は生格を、人の誕生年を言う場合は w + 前置格が用いられる。 Urodzilem się w tysiąc dziewięćset sidemdziesiątym czwartym roku. 私は197 4年生まれだ。 Tysiąc dziewięćset dziewięćdziestego pierwszego roku Estonia ogłosiła niepodległość. 1991年、エストニアは独立を宣言した。 尚、紀元前~年、を表す場合は、p.n.e. (przed naszą erą)を付ける。 Dwieście dwudziestego jedenego roku p.n.e. Qin Shi Huang ogłosił pierwszym cesarzem. 紀元前221年に始皇帝は最初の皇帝であること を宣言した。 3)「~年代」、は lata + 十の位の順序数詞複数非男性人間形主格 + 順序数 詞(世紀に関する)の単数男性形生格 + wieku(wiek の生格)、で表す。「~ 年代に」は、w + 前置格を用いるのであるが、w latach(lat の前置格)+十 の位の順序数詞の複数非男性人間形前置格+順序数詞の単数男性形前置格+ wieku(wiek の前置格)で表す。 1950年代 lata pięćdziesiąte dwudziestego wieku(20世紀の50年代、 という意味) 1950年代に w latach pięćdziesiątych dwudziestym wieku 4)「世紀」や「千年紀」の表し方 ① stulecie 世紀、は通常はローマ数字で表し、w.(wiek あるいは wieku の略 語)を付ける。そして、紀元前の場合は、p.n.e を、紀元後は n.e. を付け、「~ 世紀に」と言う場合は、前置詞 w を付ける。例えば、w ⅩⅤ w.n.e. 紀元1 5世紀に、w Ⅳ w.p.n.e. 紀元前4世紀に ② tysiąclecie 千年紀、はローマ数字かアラビア数字を用いて表すが、略語は ない。 Piramidy egipskie wybudowano w Ⅲ tysiącleciu p.n.e. エジプトのピラミ ッドは紀元前3000年に建てられた。 2.「~月~日」、という言い方 1)「今日は~月~日」と言う時は、日の方は順序数詞単数男性主格を用い、 月の方は月名の生格を用いる。ロシア語の場合は順序数詞単数中性主格と月名 の生格で表したが、ポーランド語の場合は男性形を用いるのである。これはロ シア語の「日」は число という中性名詞であるのに対して、ポーランド語の 「日」は dzień という男性名詞であるからである。 今日は何月何日ですか。Którego jest dziś? 今日は4月25日です。 Dziś(Dzisaj) jest dwudziesty piąty kwietnia. 2)一方、「~月~日に」と言う時は、順序数詞の単数男性生格に月名の生格 を用いる。「4月25日に」と言う時は、dwudziestego piątego kwietnia と なる。そして、4月25日に私は病気だった、という場合は、Dwudziestego 数詞 221 piątego kuwietnia byłem chory. となる。 尚、公式的な文書では順序数詞の生格+月の生格の前に dzień 日の生格形が 使われることがある。例えば、Zebranie odbędzie się dnia ósmego lipca. 集会 は7月8日に行われる(dzień は不規則な名詞でその単数生格は dnia である)。 3)尚、ロシア語の月名はローマ暦から取っていたので比較的分かりやすかっ た。しかし、ポーランド語においてはローマ暦起源のものは marzec 3月、 maj 5月、だけであり、それ以外はポーランド語固有のものである。 1月 styczeń styk 結合、から来ている。1月は前年と次の年を結合すること からである。 2月 luty この起源は良く分からないが、特徴的なのは形容詞変化名詞である と言うことである。 3月 marzec ローマ暦起源 4月 kwiecień kwiat 花、から来ている。4月は花が咲くからであろう。 5月 maj ローマ暦起源 6月 czerwiec czerwony 赤い、から来ている。6月は赤い昆虫が出現するか らであろう。 7月 lipiec lipa ライム、から来ている。7月はライムの実が成るからであろ う。 8月 sierpień sierp 鎌、から来ている。草が生えてそれを鎌で刈るからであ ろう。 9月 wrzesień wrzos ヒース(植物の一種)から来ている。 10月 październik paździerz 木の芯、から来ている。 11月 listopad liść 葉+padać 落ちる すなわち、落ち葉から来ている。 12月 grudzień gruda 凍土、から来ている。12月は冬で土が凍るからで あろう。 3.「~年~月~日に」、という言い方 1)歴史上の事件で良く言い表されることがあるが、「~年~月~日に」、と 言う場合、 順序数詞の生格+月名の生格で月日を表し、「 , 」で区切り、そ の後に年は1.のごとく表す。すなわち、上2桁を個数詞の主格で表し、下2 桁を順序数詞の生格で表すのである。例えば、1867年12月9日に王政復 古のクーデターが行われたが、1867年12月9日に、は、 dziewiątego grudnia, tysiąc osiemset sześćdziesiątego siódmego roku となる。 2)同じようなことを表すのに、「 , 」を付けずに、「年」の下2桁の部分は w + 前置格、とすることもある。上の例では、dziewiątego grudnia w tysiąc osiemset sześćdzisiątym siódmym roku となる。 尚、年であることが、容易に分かれば、rok は省略することができる。 3)次の様に記す方法もある。2011年5月12日を例に取る。 ① 12 maj 2011r. 222 ② ③ ④ ⑤ 数詞 12 Ⅴ 2011r. 12.05.2011 2011-5-12 2011.05.12 4.曜日を表す場合 今日は何曜日ですか、は Jaki jest dzisiaj dzień tygodnia? Co za dzień dzisiaj mamy? Co jest dzisiaj? と、3つの言い方があり、それに対して答える場合は、Dzisiaj jest wtorek. 今 日は火曜日です、となる。 また、「何曜日に」と言う場合は、w + 曜日の対格で表す。 Umówiliśmy się we wtorek. 我々は火曜日に会う約束をした。日曜日から土 曜 日 ま で 表 す と 、 w niedzielę, w poniedziałek, we wtorek, w środę, w czwartek, w piątek, w sobotę となる。 5.月名を表す場合 1)現在の月名を表す場合には、主格を使う。 3月です、は Jest marzcu. 12月です、は Jest listopad. となる。 2)「何月に」という場合は、w + 月名の前置格で表す。1月から12月まで 順に表すと、w syczniu, w lutym, w marcu, w kwietniu, w maju, w czerwcu, w lipcu, w sierpniu, we wrześniu, w październiku, w listopadzie, w grudniu となる。 3)尚、「~年~月に」、という様に月までで日にちを明らかにしない場合は、 w + 月の前置格 + 年の生格、で表すのが通常である。 w kwietniu tysiąc dziewięćset czterdziestego trzeciego roku 1943年4 月に Ⅸ 時刻の表し方 1.時刻を表す場合で「(今)~です」という場合 1)公式的には24時間制で表すのが通常である。24時間制で表す場合は、 順序数詞の単数女性形主格を用いて表す。順序数詞が女性形になるのは時間を 表す godzina が女性名詞のためである。 今、何時ですか? Która jest teraz godzina ? 今は2時です。Jest teraz druga. 非公式の場面では12時間制で表すが、午前、午後を区別する場合には午後 の場合は po południu を後に付け、午前の場合は przed południem を後に付 ける。その他、rano 朝方、wieczorem 夕方、w nocy 夜に、を付ける場合も ある。 数詞 223 午後6時です。Jest szósta po południu. 2)分、秒も言う場合にはロシア語よりも、やや複雑である。まず、分、秒に ついては個数詞が使われる。時間は順序数詞になるのは当然である。 ① 公的な時間の表し方は、時刻は順序数詞の単数女性主格形で表し、分、秒は 個 数 詞 の 主 格 形 で 表 す の が 通 常 で あ る 。 例 え ば 、 5 時 2 7 分 は 、 piąta dwadzieścia siedem。 18時31分は、osiemnasta trzydzieści jeden。「3 時5分です。」と言う場合は、jest trzecia pięc となる。 「3時5分13秒で す。」と言う場合は、jest trzecia pięć trzynaście となる。 ② 各時刻の前半の30分までは、po を使って表す方法がある。「3時5分で す」、という場合は、pięć po trzeciej となる。po の後は前置格であり、順序 数詞の前置格が使われるのである。「3時1分です」、という場合は jedna po trzciej となり、「3時2分です」という場合は dwie po trzciej となる(要す るに分を表す minuta が女性名詞なので、個数詞は女性形が用いられ、基本個 数詞1の女性形が jedna、 2の女性形が dwie なのである。3以上の場合は女 性、男性、中性とも区別がないのは既に記述した。)。 尚、「3時5分13秒です。」という場合は、pięć trzynaście po trzciej と なる。 ③ 各時刻の後半の30分以降は、za を使って表す方法がある。例えば、「3 時2分前です。」という場合は、jest za dwie trzciej となる。少し理解しがた いが、za の後は対格であり、2分経過すると3時に、というように理解すれば よいだろう。 2.「~時に」と言う場合 「何時に会いましょうか?」のような場合は、o+順序数詞の前置格で表す。 例えば、O której (godzinie)się spotkamy? 3時に O trzeciej. また、30分単 位の場合も同じである。例えば、o pół do trzeciej 2時30分に、である。し かし、「3時5分に」というように分まで表し、po を使う場合は o を省略し、 pięć po trzeciej となる(pięć は主格である)。「3時5分前に」と言うよう に za を使う場合も o を省略する。 Spotlamy się o trzeciej pięć. 我々は3時5分に会う。 Spotkamy się pięć po trzeciej. 我々は3時5分に会う。 Spotkamy się za pięć trzeciej. 我々は3時5分前に会う。 しかし、「~時の予定で」という場合は、前置詞 na + 順序数詞の対格で 表す。 Na którą(godzinę) on zamówi taksowkę? 何時に彼はタクシーを予約しま すか。 On zamówił taksowkę na siódmą rano. 彼は朝7時にタクシーを予約した。 3.その他の特殊な時間の表し方 224 数詞 1)半時間を表す場合は、wpól(または pół)do +順序数詞の生格で表す。 8時30分 wpól do dziewiątej (要するに9時までに30分) 2)4分の1時間=15分を表す場合は kwadrans を使う。3時15分は kwadrans po trzeciej 、 3 時 4 5 分 は za kwadrans czwarta あ る い は kwadrans do czwartej である。 przed kwadransem 15分前に 3)その他 「~頃」と言う場合は、około を使う。 około trzeciej 3時頃に około は生格支配の前置詞である。 4)その他の表現 Wrócił dwie godziny temu. 彼は2時間前に戻った。 Wrócił przed dwiema godzinami. 彼は2時間前に戻った。 On wróci za dwie godziny. 彼は2時間後に戻るだろう。 4.期間を表す場合 1)w を使う。 Odległość 1318 km będzie można pokonać w pięć godzin. 1318kmの距 離を5時間で行けることになるだろう。 2)od 及び do を使う。 例えば、~からは od 、~までは do で表すのである。od drugiej do czwartej 2時から4時まで 3)między .... a .... を使う。 例えば、4時と6時の間に、は między czwartą a szóstą となる。 Ⅹ 年齢の表現 年齢は mieć + 個数詞+rok または lata( rok の複数対格)または lat ( rok の複数生格 )で表す。月齢は mieć + 個数詞 + miesiąc または miesiące または miesięcy で表す。 1.君は何歳?は、Ile masz lat?、 あなたは何歳ですか?は、Ile pan/pani ma lat? となる。 2.年齢の場合、1歳は rok(単数対格) 、2、3、4歳は lata(複数対格)、 5歳以上は21歳までは lat (複数生格)で表し、22歳以上は複合個数詞で 1桁部分が2、3、4の場合は lata、それ以外は lat で表す。月齢の場合、1 ヶ月は miesiąc(単数主格)、2、3、4ヶ月は miesiące(複数対格)、5ヶ 月以上は miesięcy(複数生格) で表す。 僕は25歳です。Mam dwadzieścia pięc lat. 僕の子供は4歳です。Moje dziecko ma cztery lata. 彼の子供は2ヶ月です。Jego dziecko ma dwa miesiące. 数詞 225 彼の子供は7ヶ月です。Jego dzicko ma siedem miesięcy. ※この使い方は人間のみならず物質や商品にも当てはまる。 To krawat ma dwa lata. このネクタイは買って2年経つ。 ※注意すべきは、ロシア語の場合は21歳や31歳の場合は год(単数主格) が使われたが、ポーランド語の場合は、lat と複数生格が使われることであ る。これは前述したように、複合個数詞で下1桁が1の場合、ポーランド語 では結合する名詞は複数生格が使われるからである(Ⅲ 数と名詞の結合規 則参照。) 従って、「僕は31歳です」、は、Mam tzydzieści jeden lat. となる。 3.概数の表現 数詞は通常、名詞の前に置かれる。この点はロシア語もポーランド語も同じ である。しかし、ロシア語の場合、その位置が逆転すると、概数を表した。し かし、ポーランド語ではこのような表現は見あたらず、次のようにして表す。 ① około を使う言い方 この場合は、数詞及び rok とも生格である。 Jego dziecko ma około dwóch lat. 彼の子供は約2歳である。 ② ponad を使う言い方 この場合は、数詞及び rok とも対格である。但し、 「~以上」という意味になる。 Jego dziecko ma ponad dwa lata. 彼の子供は2歳以上である。 ③ mniej więcej を使う言い方 この場合も、数詞及び rok とも対格である。 Jego dziecko ma mniej więcej dwa lata. 彼の子供は約2歳である。 ⅩⅠ 貨幣を表す表現 1.Ile to kosztuje? これは幾らですか(特に、品物や商品の値段を尋ねたい時 に使う。)。 Jaka cena? おいくらですか(レストランや喫茶店、または買い物をした 時の支払いに際して使う。)。 2.数詞は個数詞が使われる。ポーランドの基本通貨は złoty であり、それよ り小さい単位の通貨は grosz である。złoty は形容詞変化であり、形容詞の男 性形変化と同様の変化をする。一方、grosz は男性名詞である。両者の変化は 以下のごとくである。 226 数詞 złoty grosz 単数 複数 単数 複数 主格 złoty złote 主格 grosz grosze 生格 złotego złotych 生格 grosza groszy 与格 złotemu złotym 与格 groszowi groszom 対格 złotego złote 対格 grosz grosze 造格 złotym złotymi 造格 groszem groszami 前置格 złotym złotych 前置格 groszu groszach 呼格 złoty złote 呼格 groszu grosze 1ズウォティ jeden złoty、2ズウォティ dwa złote、 42ズウォティ czterdzieści dwa złote 31ズウォティ trzydzieści jeden złotych(複数生格になることに注意=Ⅲ 数と名詞の結合規則参照)100ズウォティ sto złotych 2グロシュ dwa grosze、5グロシュ pięć groszy、尚、1ズウォティ=10 0グロシュであるので、4,75ズウォティは cztery złote i siedemdziesiąt pięć groszy となる。あるいは、単に cztery złote siedmdziesiąt pięć としても 良い。 ⅩⅡ 分数と小数の表現 1.分数の場合 1)分子は個数詞を用い、分母は順序数詞の女性形を用いる。順序数詞が女性 形なのは分母を表す część が女性名詞であるためである。そして、分子の方は 1、2の場合は女性形を用いる。3以上の場合は男性、中性、女性形とも同じ であるので、特に意味はない。従って、3分の1は、jedna trzecia 、となる。 分子が1の場合は分母の順序数詞は単数主格となり、分子が2、3、4の場 合は分母の順序数詞は複数主格となり、分子が5以上の場合は分母の順序数詞 は複数生格となる。これは数詞と名詞の結合規則の基本的な場合と同じである (Ⅱ参照)。 ※ 12/3 の場合は基本は jeden i dwie trzecie となる。jeden となるか jedna となるか、等は結合する名詞による。 2)格により変化する場合は、通常の数詞+名詞の変化の場合と同じである。 例えば、6分の5の場合は、 主格 pięć szóstych 生格 pięciu szóstych 与格 pięciu szóstym 対格 pięć szóstych 造格 pięcioma szóstymi 前置格 pięciu szóstych 3)そして、結合する名詞を付ける場合は、その結合する名詞は単数生格ある いは複数生格となる。単数生格か複数生格になるかは文脈による(主として可 算名詞か不可算名詞かによる)。pięć szóstych litra 6分の5リットル、コッ 数詞 227 プ3分の2は、dwie trzecie szklanka コップ3分の2、は単数生格となり、pięć ósmych ludności 人口の8分の5、や dwie trzecie uczestników 参加者の3 分の2、等は複数生格となる。 4)分数を含んだ名詞が主語となる場合に、その動詞は単数3人称中性形とな る。 Pięc ósmych ludności żyje w biedzie. 人口の8分の5が貧困の状態にある。 5)尚、特殊な表現としては、co + 順序数詞、を使う方法がある。例えば、co pięty młody Niemiec 5分の1のドイツの若者、co czwarty paryżanin 4分の 1のパリ市民、となる。この co は、「~毎に」という意味である。 2.小数の場合 まず、把握すべきは小数点は0.1のようなピリオドではな く、0,1のようにカンマである点である。そして、表現の仕方としては2種 類ある。 1)基本的には分数と同じで個数詞のあとに来る順序数詞が10の、100の、 1000の・・・と限られるだけである。 例:0,1 jedna dziesąta 0,7 siedem dziesiątych 0,01jedna setna 0,02 dwie setne 0,001jedna tysiączna 0,005 pięć tysiącznych 16,08の場合には szesnaście i osiem setnych となる。 2)小数点以下の数字をそのまま読む方法もある。 例えば、0,005は、zero przecinek zero zero pięć、16,08は szesnaście przecinek zero osiem となる(przecinek はカンマの意味である。)。 3)分数と同様に考えられば良いので、関係する名詞は生格であり、少数を含 んだ名詞が主語となる場合には動詞は単数3人称中性形となる。 Zabrakło mi dwóch dziesiątych sekundu, niż rekord świata. 私は世界記録 に0.2秒足りなかった。 3.半分を表す場合は特殊である。 1)寸法、量、大きさ、広さ、深さ、厚さ等を表す場合は、pół+生格で表す。 pół godzniy 半時間、pół ceny 半額、pół procentu 0.5% 通常の分数表現は1.で示したように、格により変化するが、pół の場合は 変化しない。 一方、połowa + 生格で表す方法もある。この połowa は変化するが、女性 名詞であり、語幹+ a で終わる女性名詞と同様に変化する。 On zjadł pół seru. 彼はチーズを半分食べた。 On zjadł połowę seru. 同上 2)また、寸法、量、大きさ、広さ、深さ、厚さ等を表す場合、主たる数字が 何であっても(主たる数字は4つ半、8つ半等の場合の4、8のことである。)、 pół の後は単数生格で表す。例えば、8.5リットルという場合は、osiem i pół 228 数詞 litra である。これらは不可算名詞と考えられるからである。 3)期間を表す場合は少し異なって考える必要がある。 ① sekunda, minuta, godzina の場合は寸法、量、大きさ等と同様に考えれば よい。 Tokio jest przez pół godziny bez prądu. 東京は半時間停電していた。 ② しかし、dzień, noc, tydzień, miesiąc, rok の場合は主たる数字が5以上の 場合は複数生格となる(2、3、4の場合は単数生格である。)。従って、4. 5年の場合は cztery i pół roku 、であるが、5.5年の場合は pięć i pół lat と なる。また、7ヶ月半の場合は siedem i pół miesięcy となる。このようにな るのは、sekunda, minuta, godzina の場合は不可算名詞と考えられるのに対し て、dzień 等の場合は可算名詞と考えられるからであろう。 4.4分の1の場合に特別な数詞がロシア語にあったが、ポーランド語も同様 である。それは ćwierć である。これは重さに関して使われることが多いが、 それ以外にも使われる。pół と同じく個数詞と複合した形も使われる。数詞と しての ćwierć は pół と同じく、無変化である。また、通常の物、商品の場合 には ćwiartka が使われる。これは女性名詞であり、語の終わりが -ka で終わ る女性名詞と同じ変化をする。 ćwierć kilo 4分の1キログラム ćwierć millarda dolarów 2.5億ドル ćwierć chleba 4分の1切れのパン ćwiartka wódki 4分の1リットルの水 ćwiartka gruszki 梨4分の1 5.1,5 の場合 1,5 という数字に特別な数詞があるのはロシア語と同じである。ポーランド 語では półtora (結合する名詞が男性及び中性の場合)あるいは półtorej(結 合する名詞が女性の場合)で表す。półtora, półtorej とも不変化である。結合 する名詞が主語となる場合にはその名詞は単数生格を用いる。 półtora roku 1.5年 półtorej godziny 1.5時間 これらを含んだ名詞が主語となる場合、結合する動詞はいずれの場合も単数 3人称(過去の場合は中性形)である。 6.パーセント procent 百分率を表す単位としての procent は少し特殊である。これは実質的には分 数あるいは少数と考えられるが、少し異なっている。2%以上の時は、主格、 生格、対格の時は常に procent であり(これは複数生格形と考えられる。尚、 単数生格形は procenta )、変化はしない。だから、2%は dwa procent、4% は cztery procent、21%は dwadzieścia jeden procent、65%は sześćdziesiąt pięć 数詞 229 procent、となる。そして、それ以外の格の場合は、それぞれの格になる。例えば、与格 では、 dwóm procentom 2%に、造格では、ze stoma procentami 100%でもって、 前置格では、o piętnastu procentach 15%について、等となる。 さらに1%については特殊である。男性無生名詞として扱われ、その単数形を取る。 従って、brakuje jednego procenta 1%不足している、 jednemu procentowi 1%に、 widzę jeden procent 1%を見る、 z jednym procentem 1%でもって、 w jednym procencie 1%で、等となる。 ⅩⅢ 寸法、量、大きさ、広さ、深さ、厚さ等、測定に関する場合 これらを表す単位は男性名詞が多いが、トン(=1000kg)を表す場合 は tona と女性名詞となる。いずれにしろ男性無生名詞あるいは女性名詞であ るので、主語として機能する場合は、1を表すものは単数主格で、2~4を表 すものは複数主格で、5以上を表すものは複数生格で表す。 1.長さを表す場合、kilometr キロメートル、metr メートル、centymetr セ ンチメートル、milimetr ミリメートル等があるが、男性無生名詞で語幹が硬子 音 r で終わる名詞と同じように変化する。 1km jeden kilometr 2km dwa kilometry 5m pięć metrów Ile masz wzrostu? あなたの身長はいくつですか。(wzrostu と生格なのは 数量生格だからである=格の用法 生格の項参照) Mam sto siedemdziesiąt jeden centymetrów wzrostu. 私の身長は171c mです。 Mam sto siedemdziesiąt trzy centymetry wzrostu. 私の身長は173cm です。 Mam sto siedemdziesiąt osiem centymetrów wzrostu. 私の身長は178 cmです。 Basen ma dwadzieścia pięć metrów długości. そのプールの長さは25m である。 Basen ma cztery metry szerokości. そのプールの幅は4メートルである。 Basen ma dwa metry głębokości. そのプールの深さは2メートルである。 2.重さを表す場合は、 gram グラム、dekagram デカグラム、kilogram キ ログラム、となり、男性無生名詞で語幹が硬子音 m で終わる名詞と同じよう に変化する。 1kg jeden kirogram 2g dwa gramy 7g siedem gramów ただ、kilogram は kilo と短縮形があり、その場合は中性名詞扱いであり、 しかも変化はしない。 On waży sześćdziesiąt czetry kilogramy. 彼の体重は64kgである。 On wzży sześćdziesiąt osiem kirogramów. 彼の体重は68kgである。 230 数詞 tona トン、の場合は1トン jedna tona 2トン dwie tony 6トン sześć ton 尚、あなたの体重は?は、Ile pani waży? となる。 3.量を表す場合は、litr リットル、であるが、これも男性無生名詞で変化は 語幹が硬子音 r 終わる場合と同じである。 1リットル jeden litr 2リットル dwie litry 8リットル osiem litrów Ta butelka może pomieścić dwie litry wody. その瓶には2リットルの水が入る。 4.温度を表す場合は、stopień 度、が使われる。これは語幹が軟子音 ń で終 わる男性無生名詞である。従って、主格として機能する場合には、以上のもの と同じく、1を表す場合は単数主格で、2~4を表す場合は複数主格で、5以 上を表す場合は複数生格を使う。 1度 jeden stopień 3度 trzy stopnie 6度 sześć stopni 摂氏はポーランド語で Celsjusza であるが、水の融点以上を表す時は、 powyżej zera(zero の単数生格)を、水の融点以下を表す時は、poniżej zera を 後に付ける。尚、powyżej, poniżej は副詞である。 Jest pięć stopni powyżej zera. 摂氏5度である。 Jest cztery stopnie poniżej zera. マイナス4度である。 5.面積を表す場合 平方メートルは metr kwadratowy で表す。 Powierzchnia ziemi to sto metrów kwadratowych. その土地の面積は100平方メ ートルである。 ⅩⅣ 疑問数詞 ロシア語においては数を尋ねる場合に сколько+複数生格形を用いて表した が、それと同じようなことがポーランド語でも見られる。それは ile ilu iloma であり、格変化は pięć 5、と同じである。 Ile masz lat? 何歳ですか。Ile jest stąd do Londynu? ここからロンドンま でどれくらいですか。Ile to kosztuje? これは幾らですか。 ⅩⅤ 反復あるいは倍数数詞 反復あるいは倍数数詞は形容詞に応じるか、あるいは副詞に応じた形等を取 るものであり、前者は形容詞のように変化する。 1.形容詞的用法では、-krotny で表し、 ~回の、~倍の、を表す。ただ、 1から4までは数詞に接頭辞 po- と接尾辞 -n- で表すこともあるが(但し、 1倍の場合は少し変則的)、この場合は倍数を表すことになる。すなわち、 数詞 231 pojedynczy シングルの、podwójny 二重の、potrójny 三重の、poczwórny 四 重の、である。 gra pojedyncza シングルス(卓球、テニス、バドミントン等) gra podwójna ダブルス(卓球、テニス、バドミントン等) これに対して、 jednokrotny 1回の・等倍の、dwukrotony 2回の・2倍の、trzykrotny 3 回の・3倍の、czterokrotny 4回の・4倍の、pięcokrotny 5回の・5倍の.... である。 また、wielokrotny 数回の・数倍の、kiklalrotny 数回の・数倍の、というも のもある。 Odnotowano dwukrotny wzrost cen akcji. 株価は2倍に上昇した。 2.副詞的用法では、-krotnie で表す。 Cen akcji wzrastały dwukrotnie. 株価は2倍に上昇した。 3.前置詞的用法では、w -nasób で表す。 zyskać w dwójnasób 利益が2倍になる 4.名詞的用法では raz で表す。 zrobić coś raz 何かを1回やる zrobić coś dwa razy 何かを2回やる kilka razy 数回(この場合の razy は複数生格である。) Dwa razy w roku chodzę do dentysty. 1年に2回、私は歯科に行く。 ⅩⅥ 種類数詞 -aki で表し、種類の数を表す場合に用いられる数詞である。これらは集合名 詞から作られる。例えば、dwoje から dwojaki 2種類の、に siedmioro から siedmioraki 7種類の、というように作られるのである。尚、wieloraki 多種 類の、とか、jednoraki 1種類の、とか、iloraki 数種類の、różnoraki 様々な 種類の、とかいう語もある。 Kwitły tam różnorakie kwiaty. そこには様々な種類の花が咲いていた。 ⅩⅦ 計算法 1.足し算 plus を使う。Trzy plus dwa jest pięc. あるいは Trzy plus dwa równa się pięc. 2.引き算 minus を使う。Siedem minus cztery jest trzy. 3.かけ算 razy を使う。Osiem razy trzy jest dwadzieścia cztery. 4.割り算 podzielone を使う。Czterdzieści osiem podzielone przez osiem jest sześć. 232 数詞 plus, mainus, razy, podzeilone を使っても、全体が単数扱いになることに注 意すべきである。述語はいずれも jest である。 動詞 233 第5章 動詞 第1節 概要 動詞は行為や物事の変化や状態を叙述するものである。ポーランド語はスラヴ語の一 つであり、動詞の形態にはロマンス語などとは異なった特徴を有している。スラヴ語の 一つであるため、同じスラヴ語であるロシア語との共通点も多い。例えば、現在形では 数、人称によって活用形態が異なるが、過去形では数、人称のみならず性によって活用 形態が異なることや、体というものがあることである。そこで、以下ではロシア語との 比較の上にポーランド語の動詞の特徴を述べることになる。 Ⅰ 概説 動詞の諸様相 文の根幹をなすのは主語、述語であり、さらには補語である。主語と補語は主として 名辞類で構成され、述語を構成するものは動詞である。従って、動詞は言語表現の中心 をなすもので、様々な様相(姿、形)を有する。そこで、動詞が有する時制(過去、現 在、未来)、体(完了体、不完了体)、法(直説法、仮定法、命令法)、相(能動態、 受動態)等の属性について、まず、述べることとする。 1.初めに 動詞は不定詞が規準となるが、不定詞は動詞の法、相、時制によって形を変える。形 の違いをごく単純な例で示すと次のようになる。 On pisze list. 直説法能動現在(不完了体) 彼は手紙を書いている。 On będzie pisał list. 直説法能動未来(不完了体)彼は手紙を書くだろう。 On pisał list. 直説法能動過去(不完了体)彼は手紙を書いていた。 On napisze list. 直説法能動未来(完了体)彼は手紙を書いてしまっているだろう。 On napisał list. 直説法能動過去(完了体)彼は手紙を書いた。 List jest pisany przez niego. 直説法受動現在(不完了体)手紙は彼によって書かれて いる。 List będzie pisany przez niego. 直説法受動未来(不完了体)手紙は彼によって書かれ るだろう。 List był pisany przez niego. 直説法受動過去(不完了体)手紙は彼によって書かれて いた。 List zostanie napisany przez niego. 直説法受動未来(完了体) 手紙は彼によって書 かれてしまっているだろう。 List został napisany przez niego. 直説法受動過去(完了体)手紙は彼によって書かれ た。 On pisałby list. 仮定法能動(不完了体)彼が手紙を書いていたらなあ。(正確な意味 234 動詞 と時制は文脈がなければ不明である。) On napisałby list. 仮定法能動(完了体)彼が手紙を書いてしまっていたらなあ。(正 確な意味と時制は文脈がなければ不明である。) List byłby pisany przez niego. 仮定法受動(不完了体)手紙は彼によって書かれてい たらなあ。(正確な意味と時制は文脈がなければ不明である。) List zostałby napisany przez niego. 仮定法受動(完了体)手紙は彼によって書かれた らなあ。(正確な意味と時制は文脈がなければ不明である。) Pisz list. 命令法(不完了体)手紙を書け。 Napisz list. 命令法(完了体)手紙を書いてしまえ。 2.時制 ポーランド語の時制にはロシア語と同じく、不完了体に関しては、過去、現在、未来 の3つが、完了体に関しては、過去、未来、が区別される。それぞれ動詞の形が異なる のは言うまでもない。詳細は後述する。 3.動詞の体 ポーランド語の動詞は体という概念により、完了体と不完了体に二分される。このこ とはロシア語と同じである。大部分の動詞は、ほぼ同じ意味を有する完了体・不完了体 の対の状態で存在している。詳細は後述する。 4.法 ロシア語の法には直説法、仮定法、命令法の3つの法がある。直説法は事実を事実と して表すもので普通の文である。命令法は命令、指示などを表すものである。仮定法は、 ① 仮想(現実ではないが、何らかの条件が満たされれば実現が予想できる事実)、② 願 望、③ 目的、④ その他の主観、を表すと説明される。この点、ポーランド語において も同様である、と説明するのが通常である。 5.態 主語が動作主体なのか、動作の作用を受ける客体なのかは、動詞の形によって示され るが、これを動詞の態という。ポーランド語にはロシア語と同じく、能動態と受動態が あるのは言うまでもない。詳細は後述する。 Ⅱ 動詞の形態 歴史的な観点から、形態的に見てポーランド語はロシア語と同じく共通スラヴ語から 由来しているものであるので不定詞語幹と現在語幹の2つから作られる動詞の諸形態 がある。そして、原則的には、不定詞語幹からは不定詞、過去形、合成未来形、仮定法、 完了体副分詞、被動形容分詞、が作られるし、現在語幹からは、現在形、単一未来形、 動詞 235 命令形、不完了体副分詞、能動形容分詞、が作られる。 尚、ロシア語においては不定詞語幹からは能動過去分詞、現在語幹からは被動形容動 詞現在も作られたが、ポーランド語においては他のスラブ語と同じくこれらの形態は廃 れている。 1.不定詞 ロシア語の動詞の不定詞は -ть で終わるものが多く、その他に -ти で終わるものや、 -чь で終わるものがあった。ポーランド語においては不定詞は -ć で終わるものがほと んどであるが、数は少ないが -c で終わるものがある。例えば piec 焼く、である。 2.動詞はロシア語と同じように活用する。動詞の活用を考える場合には、語幹を考慮 しなければならない。各動詞にはロシア語と同様に、原則として不定詞語幹と現在語幹 がある。 ロシア語においては不定詞語幹からは、① 不定詞、② 過去形、③ 合成未来形、④ 仮 定法、⑥ 完了体副動詞、⑦ 被動形動詞過去(~された)、⑧ 能動形動詞過去(~した) が作られた。また、現在語幹からは① 現在形、② 単一未来形、③ 命令形、④ 不完了 体副動詞、⑤ 被動形動詞現在(~いる)、⑥ 被動形動詞現在(~されている)が作ら れた。ポーランド語においても概ね同様であるが、能動形動詞過去(~した)と被動形 動詞現在(~されている)はロシア語だけの特徴であり、ポーランド語においては見ら れない。 3.直説法 1)現在形 活用の種類として、基本的にはロシア語は第一活用と第二活用しかない が、ポーランド語の場合には、第一活用から第三活用まで3種類ある。ただ、3種類と もその活用形は語尾の最後にある程度共通性がある。 単数 複数 1人称 -ę または -m -my 2人称 -sz -cie 3人称 -(なし) -ą または -ją 語尾は第一活用と第二活用は単数1人称は -ę 、複数3人称は -ą であり、第三 活用の1人称単数は -m 、3人称複数は -ją となる。 ① 第一活用の語尾を見てみると、単数1人称形、単数2人称形、単数3人称形、複数1 人称形、複数2人称形、複数3人称形の順にそれぞれ -ę -esz -e -emy -ecie -ą となる。 単数1人称形、複数3人称形以外は語幹は e の前になるので、語幹の最後が子音であ る場合には子音交替が生じることが多い。一方、単数1人称形、複数3人称形ではそう ではないので、子音交替が生じないことが多い。 ②第二活用の語尾は、単数1人称、単数2人称、単数3人称、複数1人称、複数2人称、 複数3人称の順にそれぞれ、-ę -isz -i -imy -icie -ą あるいは -ę -ysz -y -ymy -ycie -ą であ る。そして、第一活用とはやや異なった様相を呈するので注意が必要である。 236 1人称 2人称 3人称 動詞 基本的な語尾 単数 複数 -j-ę -imy -isz -icie -i -j-ą 綴り字では 単数 複数 -ę -imy(-ymy) -isz(-ysz) -icie(-ycie) -i (-y) -ą まず、注意すべきは単数1人称形と複数3人称形である。その基本的な活用語尾はそ れぞれ -ję , -ją であるが語幹が子音で終わる場合には -j の前であるので、その子音は子 音交替を起こす。そして、c, s, z 以外の子音の後の j は書けないので、綴り字では語尾 は -ę, -ą となる。一方、i の前の子音はその i が i2 であるので、第二子音交替が起き る。また、i/y で始める語尾の所は i/y の綴り字の規則に従う。 第二活用動詞は不定詞の接尾辞の母音が i であるか、e であるかによってその活用が 異なるが、それは過去形、不定詞等に現れる。 ③ 第三活用の語尾は、-am -asz -a -amy -acie -ają である。 この場合は、mieć を除いて、不定詞は -ać に終わる。この第三活用は簡単である。 ほとんどの活用は以下のごとくになる。 単数 複数 1人称 -am -amy 2人称 -asz -acie 3人称 -a -ają 第三活用の動詞の特殊形態として、語尾が、-em -esz -e -emy -ecie -eją となるものが ある。この動詞は少ないが、重要なものがある。rozumieć 理解する umieć できる、等 である(もっともこのような活用形式を第四活用として特別に取り上げる文法書もある が、本書はこのような立場を取らず、第三活用の特殊形態として捉える。)。 ④ 不規則活用には być がある。 これは、jestem jesteś jest jesteśmy jesteście są とな る。 未来形は będę będziesz będzie będziemy będziecie będą ロシア語の場合 は複合未来形は быть の現在形に不定詞を付加して作られるが、ポーランド語の場合は それに相当する być の特殊形が複合未来形に用いられるのである。その点で、ポーラン ド語の方がやや複雑である。 3)動詞の過去形 動詞の過去形はロシア語の場合は非常に単純で、人称には関係なく、主語が男性単数 か、女性単数か、中性単数か、複数かによって語尾が異なるに過ぎなかった。しかし、 ポーランド語の場合はそれよりもやや複雑である。すなわち、主語の性、数のみならず、 人称によって語尾が異なってくるのである。ただ、現在形に比較すると単純である。ロ シア語の場合、過去形は不定形の -ть を取り、-л –ло –ла –ли を付して作るに過ぎなか った。しかるにポーランド語の場合は3人称の場合には、不定形から-ć を取り、それに -ł(男性形)、-ło(中性形)、ła(女性形)、-li(男性人間形複数)、-ły(男性人間形 237 動詞 以外の複数)を付す。そして、1人称、2人称の場合には以下のものを付す。 単数1人称形の場合には -(e)m、 単数2人称形の場合には -(e)ś、複数1人称形の場 合には-śmy、複数2人称形の場合には-ście を付すのである。 以上のことから、一般的に動詞の過去形の語尾は以下のごとくになる。 単数 男性 形 1人称 2人称 3人称 -łem -łeś -ł 女性 -łam -łaś -ła 複数 男性人間形 中性 なし なし -ło -liśmy -liście -li 非男性人間 -łyśmy -łyście -ły 4)未来形 ロシア語においては完了体には現在形はなく、そのままの形が未来形となった。この 点はポーランド語の場合も同様である。一方、不完了体の場合は、ロシア語の場合は быть の活用形+不定詞で表したが、ポーランド語においては być の活用形+過去単数 3人称形で表す。ここで注意しなければならないのは、不定詞ではなく、過去単数3人 称形であるということである。もっとも不定詞を用いても間違いではないが、現代ポー ランド語ではほとんど過去3人称形が使われているのである。 単数 1人称 2人称 3人称 複数 1人称 2人称 3人称 男性 będę czytał będziesz czytał będzie czytał 男性人間形 będziemy czytali będziecie czytali będą czytali 女性 będę czytała będziesz czytała będzie czytała 中性 będzie czytał 非男性人間形 będziemy czytały będziemy czytały będą czytały 4.命令法 ロシア語の命令法は ты に対するものと вы に対するものがあった。ты に対するも のは現在語幹が母音で終わっていた場合には、それに й を付加するだけで良かった。ま た、 現在語幹が子音で終わり、 現在単数1人称でアクセントが語尾のものは и を付加し、 語幹にあるものは ь を付加するだけで良かった。そして、вы に対するものは、それぞ れに те を付加するだけで良かった。 これに対して、ポーランド語の場合は活用形によってやや異なる。すなわち、ty に対 するものは第一活用、第二活用動詞の場合は単数3人称形から -e あるいは i/y を除去 して作る。そして、wy に対するものはそれに cie を付加して作る。注意しなければな 238 動詞 らないのは、現在語幹が ś とか ń の場合である。この場合、単数3人称形は -sie , -nie となったが、e や i/y を除去すると -ś , -ń となる点である。 5.仮定法 ロシア語の仮定法は簡単であり、動詞の過去形に бы という助詞を挿入するだけで形 成される。これに対して、ポーランド語の場合も by という助詞を過去基本形に挿入し、 過去人称語尾に付加することにより作られる。ただ、異なるのはロシア語の場合は助詞 は別単語になるが、ポーランド語の場合はロシア語の бы に相当する by が個々の単語 に組み込まれてしまうことである。従って、ポーランド語の場合には慣れないと分かり にくいと言える。 例えば pisać 書く、の場合は、pisał, pisała, pisało, pisali, pisały という過去基本形に by を挿入し、それに単数1人称は -m、単数2人称は -ś 、複数1人称は -śmy、複数 2人称は -ście を付加するのである。 単数 1人称 2人称 3人称 男性形 pisałbym pisałbyś pisałby 女性形 pisałabym pisałabyś pisałaby 複数 1人称 2人称 3人称 男性人間形 pisalibyśmy pisalibyście pisaliby 非男性人間形 pisałybyśmy pisałybyście pisałyby 中性形 pisałoby 多くは過去形に by を挿入するだけの形になっているが単数男性1人称、男性2人称 形の場合は e がないと言うことに注意すべきである。もし、by を挿入するだけであれ ば、pisałebym pisałebyś となるはずであるが、by の前の e がないのである。 6.完了体と不完了体 ロシア語においては体として完了体、不完了体があったが、この点はポーランド語も 同じである。完了体と不完了体はペアをなしており、ロシア語においては不完了体に接 頭辞を付加したものが、完了体となった。それはポーランド語においても同じであり、 例えば budować 建設する、の完了体は zbudować であり、czytać 読む、の完了体は przeczytać である。不完了体を完了体にする接頭辞としては、 z-, ze-, u-, prze-, po-, przy-, s-, od-, za-, wy-, na- 等がある。 7.移動に関する動詞 ロシア語の特徴として移動に関する動詞があった。そのことはポーランド語も同じで あり、しかもそれらはすべて不完了体であることも同じである。代表的なものは以下の 239 動詞 ごとくである。 (歩いて)行く (車で)行く (歩いて)運ぶ (車で)運ぶ 走る 飛ぶ 泳ぐ 定動詞 iść jechać nieść wieźć biec lecieć plynąć 不定動詞 chodzić jeździć nosić wozić biegać latać plywać 8.助動詞 ロシア語にも助動詞があるように、ポーランド語にもある。助動詞は、義務、可能、 要望、意図等を表すために本動詞の前に置かれ、本動詞は不定詞が用いられるのもロシ ア語と同じである。主な助動詞は、chcieć, woleć, musieć, mieć, móć, strać się 等である。 9.副分詞(ロシア語では副動詞と称されるが、ポーランド語では副分詞と称される。) 副分詞にはロシア語と同様に、2種類がある。一つは、不完了体副動詞と同じもので あり、もう一つは完了体副動詞と同じものである。従って、前者は主節と同時進行の動 作を表し、後者は主節より先に終了した動作を表すことが基本である。 1)不完了体副分詞 不完了体動詞の現在複数3人称形に -c を付加するのが、基本である。従って、pisać 書く、の場合は複数3人称形が piszą であるので、pisząc 書きながら、となる。複数3 人称形はどの活用形であっても語尾が -ą となるので -ąc を見たら、まず、不完了体副 分詞を思い浮かべるのが良いであろう。 2)完了体副分詞 完了体副分詞は過去単数3人称語幹から作られる。それが母音+ł の場合には、ł を取 り、-wszy を付加して作る。従って、napisać 書く、の場合は、過去単数男性3人称が napisał であるので、napisawszy となる。過去単数3人称が、子音+ł の場合には、ł の後に-szy を付加して作る。従って、oparć 習う、の場合には、過去単数男性3人称形 が oparł であるので、その完了体副動詞は oparłszy となる。 もっとも、現代の標準ポーランド語では完了体副動詞は希にしか用いられない。 10.形容分詞(ロシア語においては形動詞と称するのであるが、ポーランド語におい ては形容分詞と称する。) ロシア語においては形動詞は、能動形動詞現在、能動形動詞過去、被動形動詞現在、 被動形動詞過去の4種類を区別できたが、ポーランド語においては能動形容分詞のうち 過去に関するものはほとんどないので、それは考慮するに値しない。また、被動形容分 詞のうち現在に関するものもほとんどないので、それも考慮するに値しない。形容分詞 240 動詞 は形容詞の一種であり、ロシア語と同様に修飾される名詞の性、数、格によって語尾変 化するのはいうまでもない。 1)能動形容分詞(主文の動作や状態と同時的な副次的動作や状態を表す。) ロシア語においては不完了体の現在複数3人称形の最後の т を取り、щ+形容詞語尾 を付加した。ポーランド語においても類似しており、不完了体動詞の現在3人称複数形 に -c- を付加し(ここまでは不完了体副分詞と同じ)、形容詞の活用語尾を付加するの が通常である。従って、picać の場合は、現在複数3人称形が piszą であるので、主格 形は男性形、中性形、女性形、複数男性人間形、複数男性非人間形はそれぞれ piszący piszące pisząca piszący piszące となる。複数形の場合は、やや形容詞と異なり、男性 人間形は -i ではなく、-y である点が異なっているのである。非男性人間形の場合は、 形容詞と同じく -e である。 2)受動形容分詞 この作り方は複雑である。 ① 不定詞が-ać -eć で終わる場合は、-any -ane -ana -ani -ane となる。この場合はどの 変化形であっても構わない。 ② 不定詞が -ić -yć で終わる場合(この場合は第二活用動詞である。)は、-ony -one -ona -eni -one となる。 ③ 不定詞が -ść, -źć, -c で終わる場合も -ony -one -ona -eni -one となる。従って、 wynieść の場合は、wyniesiony, wyniesione, wyniesiona, wyniesieni, wyniesione とな る。ただ、この場合は、2人称単数現在形が基本となる。 ④ 不定詞が母音+ć で終わる場合(但し、-ać -eć は除く)と、-ić と -yć で終わる場 合で、一音節の語である場合には、語尾の ć を取り、-ty -te -ta -ci -te を付加して作る。 11.動名詞 これはロシア語にはなく、ポーランド語に固有のものであるが、英語等には認められ るものである。前置詞 przy ~の間に、przed ~の前に、po ~の後に、等と共に用い られることが多い。 詳細は動名詞の項を参照されたい。 12.受動態 ロシア語の受動態は被動形動詞過去の短語尾に быть によって構成された。ただ、こ れはアスペクトの観点から言えば完了体である。それで、不完了体の受動態については 動詞に接尾辞 ся を付加して表した。ポーランド語においてはやや異なり、完了体の場 合には受動形容分詞に zostać を使って、不完了体の場合には受動形容分詞に być を使 って表す。また、ロシア語においては быть +被動形過去による述語には動作的意味と 状態的意味の場合があったが、ポーランド語においても być + 受動形容分詞による受動 態には動作的意味と状態的意味の場合があるのが原則である(この場合も完了体を用い る)。また、się を使って表す場合もある。 動詞 241 第2節 動詞の種類 Ⅰ 初めに 動詞を文法的な機能、すなわち統語機能に着目して分類すると、他動詞と自動詞に一 応分けられると言える。そこで、動詞の種類としては、他動詞、自動詞の区別が必要で ある。。 Ⅱ 自他動詞の区別 これは統語機能に着目した分類であるが、このような観点から見たポーランド語の動 詞にはもう少しきめ細かく分ける必要がある。それは、動詞の示す行為・状態が主語以 外のものに及ぶかそうでないか。及ぶとして直接的に及ぶのか間接的に及ぶのか、に応 じて区別されるからである。 1)自動詞 2)他動詞 ① 直接他動詞 ② 間接他動詞 3)中間動詞 1)の自動詞は動詞が示す動作・状態が主語の範囲に留まって主語以外の対象に及ばな いものである。2)の他動詞は、動詞の示す動作・行為が主語以外の対象に及ぶもので ある。そして、他動詞には① 直接他動詞と② 間接他動詞を区別することができる。直 接他動詞は対象を直接補語とするものであり、間接他動詞は対象を間接補語とするもの である。そして、重要なことは直接他動詞の場合は、直接補語が受動文の主語になるこ とができるという点である。3)の中間動詞は直接他動詞と同じく直接補語を対象とす るのであるが、その直接補語が受動文の主語にはなり得ない。この点で、中間動詞と直 接他動詞を区別することができるのである。 1.自動詞 動詞が示す動作・状態が主語の範囲に留まって主語以外の対象に及ばないならば、つ まり補語を取らないならば、その動詞は自動詞であるという。自動詞は主語になるもの が外項(動作主あるいは意味上の主語)であるか、内項(意味上の目的語)であるかに よって非能格動詞と非対格動詞に分けられるが、さらにそれ以外にも種類があり、結局、 自動詞には次の様なものが挙げられる。 1)運動や行為を示す自動詞=非能格動詞に該当 この場合は動作主は意思的に動作を 行うことができる。 On idzie szybko. 彼は歩くのが速い。 On mówi po polsku płynnie. 彼はポーランド語を流暢に話す。 2)様態や状態を示す自動詞=非対格動詞に該当 この場合は動作主は意思的に動作を 行うことができない。 Słońce piecze. 太陽が照っている。 242 動詞 Matka istonie w kuchnie. 母は台所にいる。 On zawył z bólu. 彼は痛みで泣きわめいた。 3)主語と述語内容詞を結んで一つの思想表現を完成させる働きを持つ自動詞。これは 繋辞自動詞と呼ばれ、代表的なものは być であるが、それ以外にも okazywać się ~と 分かる、zrobić się ~になる、stawać się ~になる、等がある。 Pies jest zwierzęciem. 犬は動物である。 Ona jest piękny. 彼女は美しい。 Porwanie okazał się pomyłką. 誘拐は間違いだと分かった。 4)そして、自動詞には絶対動詞と相対動詞を区別することができる。 絶対動詞は主語以外に補足成分を必要としない動詞である。一方、相対動詞は主語以 外に少なくとも1つ以上の補足成分を必要とする動詞である。従って、絶対動詞には 例 えば、kwitnąć 咲いている、がある。この場合、Kwiaty kwitoną. 花が咲いている、で 文が成り立ちうるからである。 一方、 相対動詞には例えば、 mieszkać 住む、 がある。 この場合、 On mieszaka w małym mieście. 彼は小さな町に住んでいる、となり、On mieszka. では文としては成立しない。 だからこれは絶対動詞ではなく、このようなものを相対動詞と言うのである。 2.他動詞 1)直接他動詞 動詞の示す動作・行為が主語以外の対象に及ぶとき、その動詞を他動詞であるという。 そして、他動詞には直接他動詞と間接他動詞を区別することができる。直接他動詞は対 象を直接補語とするものであり、間接他動詞は対象を間接補語とするものである。そし て、ポーランド語における直接他動詞は、直接補語が受動文で主語になることができる 動詞を言う。その際、直接補語となるものは、通常は対格であるが、直接補語が生格と か造格でも良い。例えば、On przeczytał książkę. 彼は本を読み終えた、という文を受 動態にすると Książka została przeczytana przez niego. と受動文にすることができる ので przeczytać は他動詞なのである。その際の直接補語である książkę は対格である。 また、Cesarz rządzi krajem. 皇帝はその国を支配している、の場合、直接補語である krajem は造格であるが、Kraj jest rządzony przez cesarza. と受動文にすることができ るので、rządzić は直接他動詞である。 2)間接他動詞 一方、間接他動詞は間接に(例えば、前置詞を介して)主語以外の対象に及ぶもので ある。間接他動詞の対象になるものを間接補語と称する。間接補語になるものには前置 詞を介するものと前置詞を介しないものがある。 ① 前置詞を介するものの例は、以下のごとくである。 Czekam na twoją decyzję. 私はあなたの決心を待っている。 Szebab dołącza do al Kaidy. シャバブはアルカイダに加わるだろう。 Rosja korzystała z prawa weta. ロシアは拒否権を行使した。 Niemiecki rząd wstrzymał się z podpisaniem porozumienia ACTA. ドイツ政府は 動詞 243 ACTAの批准を延期した。 On mówi o swoim zainteresowaniu. 彼は自分の趣味について語る。 Wytrwałem w jego postanowieniu. 私は彼の決定に我慢した。 Nowak upierał się przy swoim pomyśle. ノヴァックは自分の考えに固執していた。 uciekać od więzienia 刑務所から逃げる ② 前置詞を介しないものは以下のごとくである。 それには、 間接補語が生格を取るもの、 与格を取るもの、造格を取るものが考えられる。 ア、生格を取るもの Nowak słucha rodziców. ノヴァックは両親の言うことを聞く。 Każdy pragnie spokoju. 誰でも平和を希求する。 イ、与格をとるもの Kowalski dał książkę bratu. コワルスキーは弟に本を与えた( bratu が間接補語で あり、与格である。książkę は対格で直接補語である。)。 Warunki klimаtусznе sprzуjаją plоnоm. 気象条件は収穫にとって重要である。 ウ、造格をとるもの Marek wrócił autobusem. マレックはバスで帰った。 3.中間動詞 中間動詞とは、直接補語を取る動詞であるが、その直接補語が受動文では主語にはな り得ない動詞をいう。従って、中間動詞には受動態というものが考えられない。そこに は受動化に必要な「行為者-受動者の関係」が認められないからである。例えば、Ten raport zawiera wiele nieprawdziwych wyjaśnienia. そのレポートは多くの偽りの説明 を含んでいる、という文の場合、wyjaśnienia は直接補語である。しかし、これを主語 にして Wyjaśnienia są zawarte przez ten raport*. という文は成り立たない。また、 Ten worek zawiera dwie książki. その袋は2冊の本を含んでいる、という文の場合、 dwie książki は直接補語であるが、Dwie książki są zawarte przez ten worek*. という 文は誤りであり、主語とはなり得ない。従って、zawierać は直接他動詞ではない。し かし、直接補語を取ることができるので、間接他動詞でも自動詞でもなく、これを中間 動詞というのである(その他には mieć, przypominać, kosztować がある)。 Ta książka kosztuje pięć dolarów. その本は5ドルする。 中間動詞にはその他に dostać 受け取る、zatrzymywać 保管しておく、等がある。 Ona dosta odpowiedź. 彼女は答えを得るだろう。 On zatrzymuje sławę. 彼は名誉を保つ。 上の例において odpowiedź や sława は受動態の主語になり得ない。しかし、常にで はないが、się を使えば、主語になることができるものがある(再帰動詞の項を参照)。 4.動詞の2面性 一つの動詞が一方では直接他動詞になり、他方では自動詞になることは当然ある。英 語にはこのようなものが多いが、ポーランド語でも見られる。例えば、On pisze list. 彼 244 動詞 は手紙を書いている、という場合、直接補語は list になるが、To pióro dobrze pisze. こ のペンは良く書ける、直接補語はない。後者の場合は自動詞としての用法である。 その他の例を挙げると、 piec 焼く 他動詞:Ona piecze chleb. 彼女はパンを焼く。 自動詞:Słońce piecze. 太陽が照っている。 ciąć 切る 他動詞:On tnie papier. 彼は紙を切っている。 自動詞:Deszcz ciął . 雨が激しく降っていた。 動詞 245 第3節 動詞の活用 Ⅰ 総説 ポーランド語の動詞の活用は非常に複雑である。ポーランド語動詞の活用は、現在形、 過去形、命令形、仮定法、受動形容分詞、能動形容分詞、不定詞等を区別できる。そこ で、ある動詞がどのような活用形態を取るのかを導き出すことが必要である。その場合 にできるだけ効率的に活用形態を予測できることが肝要である。ポーランド語の動詞の 活用はロシア語のそれよりもかなり複雑である。そこで、この複雑なポーランドの動詞 の活用形態を把握するべく様々な方法が考えられている。 ただ、活用形態のうち最も複雑なのは現在形であるので、まず、現在形を把握するこ とが必要である。その場合に、語幹のタイプによって考えることが最も合理的である。 ロシア語においては語幹に接尾辞があるかないかによって動詞の活用形を区別したが、 ポーランド語においてもこれらを考えることが有用である。そこで、以下ではこれに沿 って活用形を考える。 1.現在形においては(もっとも完了体の場合は未来形)、活用形態としては第一活 用、第二活用、第三活用の3つのタイプに分かれるのであるが、活用語尾の最後には共 通性があり、それは以下のごとくである。 単数 複数 1人称 -ę または -m -my 2人称 -sz -cie 3人称 -(なし) -ą または -ją 語尾の最後は第一活用と第二活用は単数1人称は -ę 、複数3人称は -ą であり、第 三活用の単数1人称は -m 、複数3人称は -ją となる。そして、語尾の全体はそれぞれ の活用形によって異なるが、次のごとくである。 1)第一活用 単数 複数 1人称 -ę -emy 2人称 -esz -ecie 3人称 -e -ą 2)第二活用 単数 複数 1人称 -ę -imy/-ymy 2人称 -isz/-ysz -icie/-ycie 3人称 -i/ -y -ą 246 動詞 3)第三活用 単数 複数 1人称 -am/-em -amy/-emy 2人称 -asz/-esz -acie/-ecie 3人称 -a/ -e -ają/-eją ※ 上の活用語尾の内、 -em, -esz -e, -emy, -ecie, -eją となるものは第四活用とする文法書 もあるが、本書はこの立場を取らず、この活用型は第三活用の特殊形として第三活用に 含める。 2.一方、過去形においては現在形のような活用タイプの区別はなく、ロシア語のよう に主語の性及び単数か複数かによって活用語尾が異なる。ただ、ロシア語と異なり、各 人称毎に活用語尾が異なるし、複数には男性人間形と非男性人間形の2種類があり、ロ シア語より複雑である。過去形の活用語尾は以下のごとくである。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 -łem -łam -liśmy -łyśmy 2人称 -łeś -łaś -liście -łyście 3人称 -ł -ła -ło -li -ły 3.命令形の場合は、単数2人称に対するものが基本であり、それは原則として現在語 幹だけで形成される。その場合に現在語幹を見つけるのは難しいのであるが、原則とし て第一活用動詞、第二活用動詞の場合は、単数3人称から活用語尾を除去したものが、 第三活用動詞の場合は、複数3人称から活用語尾を除去したものが命令形となる。 命令形は単数2人称に対するもの以外に複数1人称に対するものと、複数2人称に対 するものがあるが、前者は現在語幹に -my を付加し、後者は現在語幹に -cie を付加す るのが原則である。 4.受動形容分詞は3つのタイプを区別できる。-an-, -on-, -t- の3つのタイプである。 -an- となるタイプの動詞は接尾辞に高母音(すなわち -i, -y, -u )を含んでいないもの であり(したがって、a か e を含んでいるもの)、-on- となるタイプの動詞は語幹に 阻害音を含んでいるか、高母音(-i や -y )を含んでいるものであり、-t となるタイプ の動詞は語幹の最後に鳴音や鼻母音を含んでいるものである。 Ⅱ 動詞の活用詳細 動詞の個々の活用形は接頭辞+語根+接尾辞+語尾で構成される。この点はロシア語 と同じである。このうち語根は当該動詞に必ず必要なものであり、接頭辞や接尾辞は必 ずしも必要ではない。そこで、接頭辞は別にして、語幹に接尾辞がないタイプの動詞と、 接尾辞があるタイプの動詞に分けた場合、現在形においては前者は第一活用の動詞にし 動詞 247 か見られないものであり、後者は第一活用のみならず、第二、第三活用のいずれにも見 られるものである。そこで、動詞の活用を考えるに際しては語幹に接辞辞がないタイプ とあるタイプに分けて詳述する。 1.語幹に接尾辞がないタイプ(語根=語幹となるタイプ) このタイプの動詞は語根の後に動詞の接尾辞を有しないものであり、そのため、語根 は直接に第一活用動詞の語尾に付着することになる。語根はおおむね子音で終わり、現 在形の語尾は母音で始まるので、その語幹+語尾は通常は、子音+母音ということにな る。この活用の動詞は多くは e で始まる語尾(すなわち、単数2人称、3人称、複数1 人称、2人称)によって硬口蓋音化が起きる。これはスラヴ語の特徴である音節内音韻 調和によって前舌母音の前の子音に硬口蓋音化が起きるためである。そして、o から e への母音交替も起きる。しかし、ę と ą からなる語尾のところ(すなわち単数1人称と 複数3人称)では語幹の最後の子音に影響を与えない。 ロシア語の場合、過去形の場合は、語尾が子音で始まるので、その語幹+語尾は、子 音+子音ということになるので、最初の子音(すなわち語幹の子音)が削除されたが、 ポーランド語においては必ずしもこのルールが当てはまらない。 このタイプの動詞は語根(すなわち語幹)の最後の子音によって大きく2つに分ける ことができる。それは、阻害音(閉塞音ともいう)と共鳴音である。しかし、すべての 阻害音と共鳴音がそれに含まれるわけではない。含まれるのは阻害音の場合は歯茎音 (そのうち破裂音と摩擦音)と軟口蓋音(破裂音のみ)のみであり、共鳴音の場合は j, m, n と r である。 1)阻害音の場合(この場合は阻害音のすべてではなく、歯茎破裂音と歯茎摩擦音と軟 口蓋破裂音が該当する。) ① 歯茎音(t, d, s, z)の場合 不定詞は -ść か -źć となる。 現在形は、語根内の歯茎音は語尾の e の前では第二子音交替があり、硬口蓋化音(す なわち軟音)となる。この語尾の最初の e は e2 であるからである。t → ć, d → dzi, s → ś , z → ź と交替があるのである。また、語根内の e も e2 であるが、歯茎音の 前では o に交替する。それ以外の e はそのままである。すなわち、軟音と軟音に挟 まれている場合には語根内の母音は e であるが、そうでない場合は o となるのであ る。 過去形は、語根の最後の歯茎音は過去形の語尾である ł / l と結びつくが、消去され ることはない(原則は子音+子音と続いた場合、前の子音は消去されるが、この場合 は例外でそれが起こらないということである。)。最も大きな変化は男性人間形語尾 である l の前の摩擦音の s, z が硬口蓋接近音に交替することである(軟音化する)。 すなわち、s → ś、z → ź と子音交替があるのである。しかし、t, d ではこの交替は 起こらない。また、s, z 語幹では語根内に o → e に母音交替が起きるものがある。 その他に、過去形の語尾が閉音節か開音節かによって、語根内の母音において o → ó , ę → ą 交替が起きる。すなわち、開音節の場合は o, ę であり、閉音節の場合は ó, ą となるのである。 248 動詞 不定詞においては語根内の母音や子音、それに不定詞それ自体の語尾に交替が起き る。 t, d, s 語幹の場合は、不定形の語尾は -ść となる。z 語幹の場合は、-źć となる が、発音上は -ść と同じである。 命令形においては、単数3人称から -e を除去するだけで得られる。 以下では、語幹の子音別に各活用の例を述べる。 ア、t 語幹 gnieść 破壊する、の場合の活用形は 1人称 2人称 3人称 単数 gniotę gnieciesz gniecie 複数 gnieciemy gnieciecie gniotą 過去形の活用形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 gniotłem gniotłam gniotliśmy gniotłyśmy 1人称 gniotłeś gniotłaś gniotliście gniotłyście 2人称 gniótł gniotła gniotło gniotli gniotły 3人称 命令形:gnieć( 単数3人称 gniecie から -e を除去すれば gnieci であるが、語末の -ci は -ć となる。 以下、 d 語幹、 s 語幹、 z 語幹の場合も同様)受動形容分詞:gnieciony このような例は他に pleść 編む、がある。 イ、d 語幹 wieść 導く、の現在形の活用は、 単数 複数 wiodę wiedziemy 1人称 wiedziesz wiedziecie 2人称 wiedzie wiodą 3人称 過去形の活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 1人称 wiedłem wiedłam wiedliśmy wiedłyśmy wiedłeś wiedłaś wiedliście wiedłyście 2人称 wiedł wiedła wiedło wiedli wiedły 3人称 命令形:wiedź 受動形容分詞:wiedziony Droga wiedzie przes las. 道は森の中を通り抜けている。 その他の例は、kłaść 置く、siąść 座る、等がある。 動詞 249 Lekarz kładzie pacjenta na noszach. 医師は患者をストレッチャーに乗せる。 Siądę na konia po kolacji. 夕食後、僕は馬に跨るつもりだ。 d 語幹の kłaść 置く、の場合の過去形の活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 kładłem kładłam kładliśmy kładłyśmy 2人称 kładłeś kładłaś kładliście kładłyście 3人称 kładł kładła kładło kładli kładły ウ、s 語幹 nieść 運ぶ、の場合の現在形の活用は 単数 複数 1人称 niosę niesiemy 2人称 niesiesz niesiecie 3人称 niesie niosą nieść の過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 niosłem niosłam nieśliśmy niosłyśmy 2人称 niosłeś niosłaś nieśliście niosłyście 3人称 niósł niosła niosło nieśli niosły 命令形:nieś 受動形容分詞:niesiony その他の例は、paść 放牧する、草を食う、である(尚、不定詞が paść となる動詞に は活用形が異なる別の動詞がある。それは後述の接尾辞を有するものの内、その接尾 辞が n- で始まるものである。この動詞の意味は、「落ちる」、である。)。s 語幹 で注意すべきは ę → ą 交替がある動詞である。例えば、trząść 揺らす、の場合は、 以下のごとくになる。 単数 複数 1人称 trzęsę trzęsiemy 2人称 trzęsiesz trzęsiecie 3人称 trzęsie trzęsą ※ 現在形で -ę- となるのは、その後に開音節が続くからである。 過去形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 trząsłem trzęsłam trzęśliśmy trzęsłyśmy 1人称 trząsłeś trzęsłaś trzęśliście trzęsłyście 2人称 trząsł trzęsła trzęsło trzęśli trzęsły 3人称 250 動詞 エ、z 語幹 gryźć 咬む、の場合の現在形の活用は 単数 複数 1人称 gryzę gryziemy 2人称 gryziesz gryziecie 3人称 gryzie gryzą その他の例は leźć 這う、wieźć 車で運ぶ、等がある。 gryźć の過去形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 gryzłem gryzłam gryźliśmy gryzłyśmy 2人称 gryzłeś gryzłaś gryźliście gryzłyście 3人称 gryzł gryzła gryzło gryźli gryzły 命令形:gryź 受動形容分詞:gryziony wieźć 車で運ぶ、は移動の動詞として重要なものであり、その活用は以下のごとく である。 単数 複数 1人称 wiozę wieziemy 2人称 wieziesz wieziecie 3人称 wiezie wiozą 過去形は 単数 男性形 1人称 wiozłem 2人称 wiozłeś 3人称 wiózł 命令形: wieź 女性形 中性形 wiozłam wiozłaś wiozła wiozło 受動形容分詞:wieziony 複数 男性人間形 wieźliśmy wieźliście wieźli 非男性人間形 wiozłyśmy wiozłyście wiozły ② 軟口蓋音(k, g)の場合 この場合、不定形は -c で終わる。この場合も、過去形において子音+子音となるが、 子音が消去されることはない。 ア、k 語幹 現在形は、軟口蓋音は語尾の e の前で子音交替があり、k → cz となる。この e は e2 であり、第二子音交替があるからである。例えば、piec 焼く、の場合の活用は 単数 複数 1人称 piekę pieczemy 2人称 pieczesz pieczecie 3人称 piecze pieką 251 動詞 過去形の場合は、子音交替は起きず、次の如くになる。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 piekłem piekłam piekliśmy piekłyśmy 2人称 piekłeś piekłaś piekliście piekłyście 3人称 piekł piekła piekło piekli piekły 命令形:piecz(単数3人称から -e を除去するだけである。) 受動形容分詞:pieczony その他には、siec 刺す、tłuc 破壊する、等がある。 イ、g 語幹 この場合も現在形は語尾の e の前で子音交替があり、g → ż となる。k 語幹と同 様に、この e は e2 であり、第二子音交替があるからである。 móc できる、の現在及び過去活用は、 単数 複数 1人称 mogę możemy 2人称 możesz moźecie 3人称 może mogą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 mogłem mogłam mogliśmy mogłyśmy 2人称 mogłeś mogłaś mogliście mogłyście 3人称 mógł mogła mogło mogli mogły 尚、pomóc 助ける、の場合は、móc に po を付加するだけであり、それ以外は全く同 じである。それ以外に重要な動詞としては strzec 保護する・守る、ostrzec 警告する、 がある。これらは母音交替がない点が、móc と異なるだけであり、その分 móc より簡 単である。ちなみに、ostrzec の活用は、 単数 複数 1人称 ostrzegę ostrzeżemy 2人称 ostrzeżesz ostrzeżecie 3人称 ostrzeże ostrzegą 単数 男性形 1人称 ostrzegłem 2人称 ostrzegłeś 3人称 ostrzegł 命令形:ostrzeż 2)共鳴音 女性形 中性形 ostrzegłam ostrzegłaś ostrzegła ostrzegło 受動形容分詞:ostrzeżony 複数 男性人間形 ostrzegliśmy ostrzegliście ostrzegli 非男性人間形 ostrzegłyśmy ostrzegłyście ostrzegły 252 動詞 ① 語幹の最後が j の場合 この場合はほとんど子音交替もないし、活用も複雑ではない。現在形は活用語尾が母 音で始まるので、j + 母音( i 以外の)となるので、j が消去されることはない。不定詞 と過去形の場合は、j は現れない。なぜなら、この場合は子音+子音となるので、原則 通り最初の子音たる j が消去されるからである。 命令形においては -j はそのまま残るの は当然である。ついでに言えば、受動形容分詞は -t が使われるので、t は子音であるの で、j が消去されるのである。 ア、不定詞が -uć となる場合 例えば、psuć 損なう、の場合、現在形は 単数 複数 1人称 psuję psujemy 2人称 psujesz psujecie 3人称 psuje psują 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 psułem psułam psuliśmy psułyśmy 2人称 psułeś psułaś psuliście psułyście 3人称 psuł psuła psuło psuli psuły 命令形:psuj(単数3人称が psuje であり、原則通り -e を除去するだけで得られる。以 下も同様である。) 受動形容分詞:psuty その他の例:czuć 感じる kłuć 刺す truć 毒殺する イ、不定詞が -yć となる場合 例えば、myć 洗う、の場合の現在形の活用は 単数 複数 1人称 myję myjemy 2人称 myjesz myjecie 3人称 myje myją 過去形の活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 myłem myłam myłiśmy myłyśmy 2人称 myłeś myłaś myliście myłyście 3人称 mył myła myło myli myły 命令形:myj 受動形容分詞:myty その他の例:szyć 縫う żyć 生きる kryć 隠す ウ、不定詞が -ić となる場合 例えば、bić 打つ、の場合の現在形の活用は、 253 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 biję bijesz bije 複数 bijemy bijecie biją 過去形の活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 biłem biłam biliśmy biłyśmy 2人称 biłeś biłaś biliście biłyście 3人称 bił biła biło bili biły 命令形:bij 受動形容分詞:bity その他の例:pić 飲む gnić 腐る ② 語幹の最後が -m、-n、-r の場合 この動詞はかなり複雑な活用をする。ポーランド語の動詞の中で最も複雑であると言 っても良い。 この動詞で特徴的なことは、まず、語根が子音1+子音2と続くことである。 次に、子音2が消去されないとき(この動詞に複雑さを増幅しているのは、子音1+ 子音2と続くが、子音2が活用形態によっては消去されるためであると言える。そして、 その子音2が消去されるのは語尾が子音で始まる場合である。)は、子音1と子音2の 間に母音~ゼロ交替が起きることである。すなわち、母音が現れないのである。(だか ら、子音2が消去されるときは母音~ゼロ交替は起こらない。すなわち、母音が現れる のである。)。そして、子音2が消去されるのは、不定詞や過去形や受動形容分詞にお いてである。子音2+子音(これは活用語尾としての子音である。)となるからである。 そして、この場合には語根内に母音が表れる。一方、現在形においては子音2+母音(語 尾としての)、となるので子音2は消去されないから、語根内に母音が現れないのであ る。命令形の場合も同様である。 語根の子音が鼻音で終わる場合(すなわち n や m の時)は、過去形において母音が 挿入されるが、その挿入される母音は鼻母音である。この場合、子音1+子音2+ł と なるので、子音2が消去される。それ故、子音2たる n や m は消去されるので、過去 形には表れない。そうなると子音1+ ł となるが、子音1と ł の間に鼻母音が入るので ある。その場合、子音語尾が開音節の場合には -ę が挿入され、閉音節の場合は -ą が挿 入される。この場合、注意すべきことは過去単数男性1人称、2人称の語尾 -em/ -eś は 開音節か閉音節かには関係がないと言うことである。従って、過去単数男性1人称、2 人称は常に閉音節扱いになるので、ę が使われることはなく、常に ą が使われる。ちな みにこのようなことは閉音節に関する動詞の o → ó 交替とは異なる。この場合は、-em/ -eś を考慮して開音節となるので、niosłem,niosłeś となるのである( niósłem, niósłeś 254 動詞 とはならないということである。)。 不定詞は語尾が -ąć となり、語幹に ‘n( n の前の子音が軟音あるいは硬化子音にな る)または m を有する ( m の場合は n と異なり、 m の前の子音は軟音化しない。 ) 。 この場合、n 語幹のときは語根の最初の子音(すなわち子音1)は軟音化するが、m 語 幹の時は語根の最初の子音(すなわち子音1)は軟音化しない。従って、下記において n 語幹の時は、語根の最初の子音が軟子音あるいは硬化子音になっているが、m 語幹では 硬子音のままである。 鼻音ではない r は鼻母音が挿入されることはなく、 その代わりに口母音 e あるいは a が挿入される。不定詞では子音1+ r の後に e が挿入されるので、C(子音)reć とな り、過去形では、子音1+r + ł あるいは l となると子音が3つ連続することになるが、 r が消去されることはなく、子音1と r の間に a が挿入される。 ア、n 語幹の場合 例えば、ciąć 切る、の現在活用は、基本形は t'n-(=ci/n) である。 単数 複数 1人称 tnę tniemy 2人称 tniesz tniecie 3人称 tnie tną 過去の活用形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 ciąłem cięłam cięliśmy cięłyśmy 2人称 ciąłeś cięłaś cięliście cięłyście 3人称 ciął cięła cięło cięli cięły 命令形:tnij 受動形容分詞:cięty この ciąć はかなり理解が難しいが、過去形においては子音2に相当する n が消去さ れ、子音1に相当する t は軟音化して ci となるのである。一方、現在形において単数 2人称から複数2人称において tni- と n が ni に軟音化しているのは、e の前の子音 は第二子音交替を起こすからである。 n 語幹のその他の例:zacząć 始まる giąć 曲げる zacząć の現在形は、 単数 複数 zacznę zaczniemy 1人称 zaczniesz zaczniecie 2人称 zacznie zaczną 3人称 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間 zacząłem zaczęłam zaczęliśmy zaczęłyśmy 1人称 zacząłeś zaczęłaś zaczęliście zaczęłście 2人称 zaczął zaczęła zaczęło zaczęli zaczęły 3人称 255 動詞 命令形:zacznij 受動形容分詞:zaczęty giąć の現在活用は 単数 gnę 1人称 gniesz 2人称 gnie 3人称 複数 gniemy gniecie gną 過去活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間 giąłem gięłam gięliśmy gięłyśmy 1人称 giąłeś gięłaś gięliście gięłyście 2人称 giął gięła gięło gięli gięły 3人称 命令形:gnij 受動形容分詞:gnięty その他の n 語幹の例は、piąć się よじ登る、miąć しわくちゃにする、がある。 イ、m 語幹の場合 例えば、dąć 吹く、の場合の現在形の活用は 単数 複数 1人称 dmę dmiemy 2人称 dmiesz dmiecie 3人称 dmie dmą 過去活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 dąłem dęłam dęliśmy dęłyśmy 2人称 dąłeś dęłaś dęliście dęłyście 3人称 dął dęła dęło dęli dęły 命令形 dmij 受動形容分詞 dęty m 語幹の例:zająć 占拠する、zdjąć 脱がす、写真を撮る przyjąć 受け取る przyjąć の現在活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 przyjmę przyjmiesz przyjmie 複数 przyjmiemy przyjmiecie przyjmą 256 動詞 過去活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 przyjąłem przyjęłam przyjęliśmy przyjęłyśmy 1人称 przyjąłeś przyjęłaś przyjęliście przyjęłyście 2人称 przyjął przyjęła przyjęło przyjęli przyjęły 3人称 命令形:przyjmij 受動形容分詞:przyjęty zająć 占拠する、は上と同じ活用であるが、zdjąć 脱がす、はやや異なる。現在形の活用 で、zd と j の間に -e- が入っている。これはもし -e- が挿入されないと、zdjm と子音 が4つ連続するためである。zdjąć の現在活用は、 1人称 2人称 3人称 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 zdjąłem zdjąłeś zdjął 単数 zdejmę zdejmiesz zdejmie 女性形 zdjęłam zdjęłaś zdjęła 複数 zdejmiemy zdejmiecie zdejmą 中性形 zdjęło 複数 男性人間 zdjęliśmy zdjęliście zdjęli 非男性人間 zdjęłyśmy zdjęłyście zdjęły このタイプの動詞の特殊なものであるが、頻出する動詞に wziąć 取る、がある。これ は m 語幹タイプの一種であるが、語幹は w/e/zm- と e が挿入される点にある。だか ら、現在形において we- となっている。また、通常の m 語幹の場合は子音1は軟音化 しないが、単数2人称から複数2人称は z → ź と軟音化している点にも注意すべきで ある。 単数 複数 wezmę weźmiemy 1人称 weźmiesz weźmiecie 2人称 weźmie wezmą 3人称 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 wziąłem wzięłam wzięliśmy wzięłyśmy 1人称 wziąłeś wzięłaś wzięliście wzięłyście 2人称 wziął wzięła wzięło wzięli wzięły 3人称 命令形:weź(命令形は特殊で単数3人称に -e を除去するのみならずその前の -mi- も 動詞 257 除去する。 受動形容分詞:wzięty ウ、r 語幹の場合は、n, m 語幹とは異なり、語幹の最後の子音(すなわち r )が消去さ れることはない。そして、鼻母音が現れない。そして、不定詞では e が挿入され、過去 形では a が挿入される。例えば、drzeć 引き裂く、の活用は 1人称 2人称 3人称 単数 単数 drę drzesz drze 複数 drzemy drzecie drą 複数 中性形 男性人間形 darliśmy darliście darło darli 男性形 女性形 非男性人間形 1人称 darłem darłam darłyśmy 2人称 darłeś darłaś darłyście 3人称 darł darła darły 命令形:drzyj 受動形容分詞:darty r 語幹のその他 の例:umrzeć 死ぬ・色あせる、wytrzeć 拭く・きれいにする、przeć 促 す・押す、trzeć こする、も同じ r 語幹の場合は不定詞は r の後に e が入り、r → rz と子音交替があり、過去形では r の前に a が入る。現在形では e の前の r は子音交替があり、rz になることは言うま でもない。 2.語幹に接尾辞が付くタイプ このタイプの動詞は、すべての活用で見られる。このタイプはさらに分けることがで きるが、それは語幹の接尾辞の性質によるものであり、特に語幹の接尾辞の最後の音に よってである。最後の接尾辞音は語幹の最後の音でもある。そして、それは活用語尾と 直接結びつくものであるので最も重要である。 1)第一活用の動詞は次の3つに分けることができる(尚、C は子音を表す)。 ① 接尾辞が母音の -a で終わるもの( -a, -owa, (ej)-a, (CC)-a 等 ) ② 接尾辞が -j で終わるもの( -ej, (aw) –aj 等 ) ③ 接尾辞が -n で始まるもの(-ną, -(ną),-(n) 等 ) 2)第二活用の動詞は主として次の2つがある。 ① 接尾辞が -i / -y で終わるもの ② 接尾辞が -e で終わるもの 3)第三活用の動詞は主として接尾辞が -aj となる。 258 動詞 1)第一活用の動詞 ① 接尾辞が -a で終わるもの ア、 -a タイプ このタイプで特徴的なことは、-a の消去が起きると共に語根の最後の子音に交替が起 きることである。-a の消去が起きるのは、現在形の活用語尾は母音で始まるので、母音 +母音となり、母音が続く場合は最初の母音が消去されるのが原則だからである。子音 交替が起きるのは、-a の消去が起きると同時に -j が挿入されるのでその前の子音が第 三子音交替を起こすからである。すなわち、例えば pisać 書く、の場合、基本的語幹は pisa- であり、現在形、命令形で -a の消去が起き、 j が挿入される。その結果、pis-j- と なるのであるが、j の前の子音は第三子音交替があり、s → sz と交替する。そこで、pisz-j となる。そして、子音(厳密に言えば、c, s, z 以外の子音)の後の j は書かないので、 pisz- となるのである。以上より、pisać の活用は、 単数 piszę piszesz pisze 不完了体副分詞 pisząc 複数 1人称 piszemy 2人称 piszecie 3人称 piszą 命令形 pisz 能動形容分詞 piszący 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 pisałem pisałam pisaliśmy pisałyśmy 2人称 pisałeś pisałaś pisaliście pisałyście 3人称 pisał pisała pisało pisali pisały 動名詞 pisanie 完了体副分詞 napisawszy 受動形容分詞 pisany その他にも重要な動詞があり、語根の最後の子音が交替する。例えば、płakać 泣く、は płaczę, płaczesz というように活用し、wiązać 結ぶ、は wiażę, wiążesz というように活 用し、dygotać 震える、は dygoczę, dygoczesz というように活用する。 また、kłamać うそを付く、の場合も同様であり、子音交替があり語根の最後の子音で ある m が mi に交替する。従って、kłamię, kłamiesz となる。ただ、注意すべきは命令 形の場合は kłam! となり、軟音化しないことに注意すべきである。 その他には、karać 罰する、kazać 命令する、skakać 飛躍する、等がある。 過去形は、接尾辞 a に過去語尾を付加するだけでよい。 さらに、子音交替を生じない場合をここに含めると、さらに分けることができる。子音 交替を生じないのは語根の最後の子音が(狭義の)軟子音か硬化子音の場合である。その 例は、krajać 切る、tajać (雪等が)解ける、mamlać つぶやく、kaszleć 咳をする、等 である。 259 動詞 kaszleć の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 kaszlę kaszlesz kaszle 複数 kaszlemy kaszlecie kaszlą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称kaszlałem kaszlałam kaszleliśmy kaszlałyśmy 2人称 kaszlałeś kaszlałaś kaszleliście kaszlałyście 3人称 kaszlał kaszlała kaszlało kaszleli kaszlały 尚、この過去形の活用で注意すべきことは、a → e 交替があることである。それは複 数男性人間形では、過去語尾が l で始まっており、l は硬口蓋音であるので、その前は 前舌母音である e と発音する方が発音しやすいからであり、かつ、語幹の接尾辞の前の 子音が軟子音あるいは硬化子音である時には、e と発音する方が発音しやすいからであ る。すなわち、この e は e3 であり、a → e の母音交替に関与するのであるが、それ は、e が軟音に挟まれた状態になるときに起こるのである。従って、pisać の場合は複 数男性人間形では子音は硬子音( s )であるので、pisaliśmy, pisaliście, pisali と a → e 交替がなかったのである。 命令形:kaszl 受動形容分詞:自動詞なので認められない。 イ、-owa 、-ywa タイプ このタイプは数が多いことと、生産的であることから重要である。ロシア語で овать タイプの動詞が多く、生産的であることと同じである。-owa タイプの動詞は、名詞から 作られることが多く、特に外国語から借用した名詞の場合に多い。一方、-ywa タイプ の動詞においては -ywa が不完了体化する接尾辞として重要である。関連する完了体の 語幹の最後が -a あるいは -aj であった場合に、それらを除き、-ywa を挿入することに より不完了体が得られるのである。例えば、pokazać 示す、の場合、-ć の前の a を除 去し、-ywa を挿入すると、pokazywać と不完了体が作られるのである。また、これら のタイプの動詞は語幹の最後の -a を除去することにより、語幹自体にさらなる変化が 起きる。すなわち、-ać の -a を除去した後に -ow あるいは -yw が常に -uj と交替す るのである。例えば、interesować 興味を起こさせる、の現在形は、interesuję, ineresujesz となるのである。だから、現在形や命令形の語幹の最後は -uj となる。一 方、過去形や、不定形、受動形容分詞においては、これらの動詞の基本形は変わらない。 従って、、interesować 興味を起こさせる、の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 interesuję interesujemy 2人称 interesujesz interesujecie 3人称 interesuje interesują 260 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 interesowałem interesowałam interesowaliśmy interesowałyśmy 2人称 interesowałeś interesowałaś interesowaliście interesowałyście 3人称 interesował interesowała interesowało interesowali interesowały 命令形:interesuj 受動形容分詞:interesowany 同様の重要な動詞は、brakować 不足する、budować 建てる、gotować 料理する、 ilustrować 描写する、kupować 買う、malować 塗る、marnować 浪費する、pilnować 面倒を見る、planować 計画する、pracować 働く、ratować 助ける、stosować 雇う、 szanować 尊敬する、等である。 pokazywać 示す、の活用は、 単数 複数 1人称 pokazuje pokazujemy 2人称 pokazujesz pokazujecie 3人称 pokazuje pokazują 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 pokazywałem pokazywałam pokazywaliśmy pokazywałyśmy 2人称 pokazywałeś pokazywałaś pokazywaliście pokazywałyście 3人称 pokazywał pokazywała pokazywało pokazywali pokazzywały 命令形:pokazuj 受動形容分詞:pokazywany この他にも重要な動詞があり、odnajdywać 発見する、wywoływać 発展する zachowywać 維持する、等である。 ウ、(ej)-a タイプ このタイプの動詞は現在語幹が -ej で終わるが、過去形及び不定詞では -ej が消去さ れ、語幹の最後は -a となる。つまり、このタイプの動詞は -ej が現れれば、-a が消え、 -a が現れれば、-ej が消えるのである。なぜなら、過去形及び不定詞では語尾が子音で 始まるので、ej + 子音となる場合には、子音 j + 子音となるので、最初の子音 j が消 去されるし、現在形の場合には語尾は母音であるので、接尾辞 a があると a + 母音と 母音が連続するので、最初の母音の a が消去されるからである。従って、例えば、lać 注 ぐ、の活用は、以下のごとくになる。 単数 複数 1人称 leję lejemy 2人称 lejesz lejecie 3人称 leje leją 261 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 lałem lałam laliśmy lałyśmy 2人称 lałeś lałaś laliście lałyście 3人称 lał lała lało lali lały 命令形:lej 受動形容分詞:lany その他の例:chlać chleję chlejesz がぶ飲みする śmiać się 笑う dziać się 起こ る grzać 暖める siać 種をまく piać 金切り声で泣く wiać 風が吹く ziać 呆然とする このタイプと後述の接尾辞が -ej となるタイプ(②のア )は類似している。その違い は不定詞で区別する。従って、後述の -ej タイプとの大きな違いは、不定詞と過去複数 男性人間形である。すなわち、このタイプの動詞は複数男性人間形過去が -ali- となる のに対して、後述の -ej タイプの動詞の場合は -eli- となるのである(すなわち、後述の ej タイプの動詞の場合の e は e3 であるのに対して、この場合はそうではないのであ る。)。後述の -ej タイプの動詞が過去単数や過去非男性人間形で -ał- となるのは、e は ł の前では e → a と母音交替があるためである。これは基本形において不定詞(過去形) の語幹が -a で終わるのに対して、後述の -ej タイプの場合は基本形において不定詞(過 去形)の語幹が -ej で終わるからとも言える。 もっとも、動詞によっては複数男性人間形過去において -eli も見られることがある。 すなわち、-ali でも -eli でも良いのである。例えば、siać 種をまく、の場合である。 エ、(CC)-a タイプ このタイプは語幹の最後が -a となり、現在形及び命令形においては -a が消去される。 この点は、ア、 の -a タイプと同じである。しかし、次の点でア、の -a タイプと異な る。すなわち、 -a タイプの場合は j が関係するので、第三子音交替が起こり、現在形 においてすべての活用で子音交替があるが、この場合は j は関係せず、語尾の e2 が関 係するので、単数2人称から複数2人称の活用において第二子音交替が起きるのである。 そして、命令形で注意すべきは -j が挿入されることであり、そして、その前の子音に第 三子音交替が起きることである。 このタイプは厳密にいうとさらに2つに分かれる。(CC)-a タイプと(C/C)-a タ イプである。その違いは C(子音)と C (子音)の間に何も起こらないか、母音~ゼロ交 替が起こるかである。前者の例は、rwać 引き裂く、であり、後者の例は、brać 取る、 である。それぞれの活用を以下に示す。 rwać の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 rwę rwiesz rwie 複数 rwiemy rwiecie rwą 262 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 1人称 rwałem rwałam rwaliśmy 2人称 rwałeś rwałaś rwaliście 3人称 rwał rwała rwało rwali 命令形:rwij 受動形容分詞:rwany その他の例:nazwać 名付ける ssać 吸う 非男性人間形 rwałyśmy rwałyście rwały brać の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 biorę bierzesz bierze 複数 bierzemy bierzecie biorą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 brałem brałam braliśmy brałyśmy 2人称 brałeś brałaś braliście brałyście 3人称 brał brała brało brali brały brać(C/C –a タイプ)の場合、現在形では -a が消去され、子音と子音の間(この場 合は b と r )に e が挿入される(この点が rwać タイプの動詞と異なるところであ る。)。この e は e2 であるので、e の前の子音は軟音化し、 b → bi となる。そして、 語尾の e の前は子音交替があり、軟音化するので(この場合は r → rz と子音交替があ る。)、軟音で挟まれた e はそのままである。しかし、単数1人称と複数3人称では e の後が高温になるので、 e → o と母音交替がある。 命令形:bierz 受動形容分詞:brany その他の例:prać 洗濯する ② 接尾辞が -j で終わるもの ア、接尾辞が -ej となるタイプ このタイプの動詞はしばしば形容詞を動詞化したものとなり、ぞれ自体は自動詞であ る。このタイプの動詞は接尾辞がないタイプ(その内の語幹の最後が j の場合)と類似 しているが、次の2点で異なっている。まず、受動形容分詞の語尾が -t ではなく、-n で ある点である。次に、母音の e は次に続く子音が硬音である場合には a に交替する。 例:siwieć 青ざめる 263 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 siwieję siwiejesz siwieje 複数 siwiejemy siwiejecie siwieją 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 siwiałem siwiałam siwieliśmy siwiałyśmy 2人称 siwiałeś siwiałaś siwieliście siwiałyście 3人称 siwiał siwiała siwiało siwieli siwiały 命令形:siwiej 無人称過去:siwiano このタイプの動詞は(ej)a タイプの動詞とも似ている (その代表的なものは lać 注ぐ) 。 しかし、過去形において(ej)a タイプの動詞が、語幹の最後が a になるのに対して、こ の場合は e となるのである。そして、この e は e3 であるので、ł の前の e は、 e → a と母音交替が起きる。 その他の例:mdleć 気絶する、grubieć 厚くなる、太くなる、jaśnieć 明るくなる istnieć 存在する イ、接尾辞が -(aw) -aj となるタイプ このタイプの動詞は -awa- となるもののうち、d-, zn-, st- が付いたものと、さらにそ れらに接頭辞が付いたものに限られる。 したがって、dawać 与える、 stawać 止まる・立っている、przyznawać 自白する、 dostawać 受ける、 はこれに含まれるが、nawać, kawać, pawać 等はこれに含まれない。 このタイプで特徴的なことは、現在形と命令形が別の態様を示すことである(通常は 現在形と命令形は同じ態様を示すことが原則である。)。すなわち、現在形においては -aj が現れるが、命令形は両方とも現れるのである。従って、dawać の命令形は dawaj と なる( -aw と -aj が現れている。)。また、過去形と不定詞においても -aw も -aj も 現れるのであるが、子音の直前の j は消去されることにも注意すべきである。これは子 音1+子音2と続く場合には、子音1は消去されるという原則の表れである。従って、 過去形においては -awajł- あるいは -awajl- となり、不定形では -awajć となり、受動 形容分詞も -awajny- となるが、これらにおいて j はすべて子音( ł, l, ć, n )の直前で あるので、消去される。したがって、-awał- あるいは -awal- ,-awać, -awan- となるの である。それ故、dawać の活用は以下のごとくになる。 単数 複数 1人称 daję dajemy 2人称 dajesz dajecie 3人称 daje dają 264 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 dawałem dawałam dawaliśmy dawałyśmy 2人称 dawałeś dawałaś dawaliście dawałyście 3人称 dawał dawała dawało dawali dawały 不定形 dawać 命令形 dawaj 受動形容分詞 dawany その他には重要な動詞があり、d-, st-, zn- 順に述べると以下のごとくになる。 ・d- の例 dawać 与える、以外には、 dodawać 付け加える oddawać 返す podawać 渡す wydawać 費やす zadawać (課 題を)課す sprzedawać 売る ※これらはいずれも接頭辞を除けば、dawać と活用は同じである。また、すべて不完了 体である。そして、対応の完了体は -aw- を除いたものである。dawać の完了体は dać となる。 ・st- の例 stawać 立っている、以外には、 wstawać 起きる、zostawać 留まる dostawać 受ける obstawać 主張する ※これらの活用は接頭辞を除き、さらに st- を d- に当てはめれば上の dawać と同じ 活用になる。また、すべて不完了体であり、対応の完了体は -aw- を除いたものである。 ・zn- の例 przyznawać 自白する、以外には、 uznawać 認める、poznawać 知り合う zeznawać 証言する ※これらの動詞の活用は接頭辞を除き、さらに zn- を d- に当てはめれば上の dawać と同じ活用になる。また、すべて不完了体であり、対応の完了体は -aw- を除いたもの である。 ③ 接尾辞が -n で始まるもの -ną , -(ną), -(n) 等 これには3つのタイプがある。 ア、-ną タイプ この動詞は、現在形、過去形、不定詞、命令形、形容分詞のいずれにおいても -n が 現れるものである。 イ、-(ną)タイプ この動詞は、現在形、不定詞、命令形等には -n が現れるが、過去形及びそれに関連す る形(例えば、完了体副分詞)では -n が現れないものである。 ウ、-(n)タイプ この動詞は、現在形と命令形のみに -n が現れ、その他には -n が現れないものである。 ア、-ną の例:krzyknąć 叫ぶ 単数 1人称 krzyknę 2人称 krzykniesz 3人称 krzyknie 複数 krzykniemy krzykniecie krzykną 動詞 265 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 krzyknąłem krzyknęłam krzyknęliśmy krzyknęłyśmy 2人称 krzyknąłeś krzyknęłaś krzyknęliście krzyknęłyście 3人称 krzyknął krzyknęła krzyknęło krzyknęli krzyknęły 不定形:krzyknąć 命令形:krzyknij 無人称分詞:krzyknięto ※ 現在形において語幹の最後の ą は母音の前では消去される。これは母音+母音と続 く場合には、最初の母音は消去されるという原則の現れである。また、n は e の前では 軟音化する。そして、過去形及び不定形において -ną は維持されるのであるが、開音節 の前では ą は ę に交替する。単数男性形の1人称、2人称は語尾が -em, -eś となって も閉音節扱いである。それ故、単数男性形は3人称のみならず、1人称、2人称も -ą- と なる。そして、それ以外の活用形は -ę- となる。 その他の例:zamknąć 閉める pachnąć 香りがする pragnąc 欲する płynąć 泳ぐ szepnąć ささやく ginąć 死ぬ イ、-(ną) の例:chudnąć 取り除く・やせる 単数 複数 1人称 chudnę chudniemy 2人称 chudniesz chudniecie 3人称 chudnie chudną 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 chudłem chudłam chudliśmy chudłyśmy 2人称 chudłeś chudłaś chudliście chudłyście 3人称 chudł chudła chudło chudli chudły 不定形:chudnąć 命令形:chudnij 無人称過去:chudnięto(受動形容分詞ではな く、無人称過去を挙げたのは自動詞だからである。) ※ この場合も、現在形において語幹の最後の ą は母音の前では消去されるので、現在 形では現れない。また、n は e の前では軟音化するのは①と同じである。そして、過去 形において -ną は消去されるのである。 その他の例:zbladnąć 青ざめる pęknąć 破裂する gasnąć (光などが)消える rosnąć 成 長する zdechnąć 死ぬ ウ、-(n) の例:paść 落ちる 単数 複数 1人称 padnę padniemy 2人称 padniesz padniecie 3人称 padnie padną 266 単数 男性形 1人称 padłem 2人称 padłeś 3人称 padł 不定形:paść 動詞 女性形 padłam padłaś padła 命令形:padnij 複数 中性形 男性人間形 padliśmy padliście padło padli 無人称過去:padnięto 非男性人間形 padłyśmy padłyście padły その他の例:kraść 盗む(但し、無人称過去は kradziono となり、paść の場合とやや異 なる。) ※ ②と③の違いは、不定詞が違うだけである。 特殊なものとして zostać ~される・とどまる、dostać 手に入れる、stać się ~にな る、がある。 zostać の現在形の活用は、 単数 複数 1人称 zostanę zostaniemy 2人称 zostaniesz zostaniecie 3人称 zostanie zostaną 過去形の活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間 形 1人称 zostałem zostałam zostaliśmy zostałyśmy 2人称 zostałeś zostałaś zostaliście zostałyście 3人称 został została zostało zostali zostały 不定形:zostać 命令形:zostań 不人称過去:zostano 注:現在形と命令形に -n が入る点は paść, kraść と同じであるが、 -d- が入らない点 や、命令形が -j とならない点は異なる。 語幹に k が含まれる場合で、特殊なのは現在形の活用で -kn- となる場合である。例 えば、uciec 脱出する、がある。その現在形の活用は、 単数 複数 1人称 ucieknę uciekniemy 2人称 uciekniesz uciekniecie 3人称 ucieknie uciekną (過去形は piec と同じで、n は入らない。) 命令形:ucieknij(通常の場合は単数3人称に -e を除去するだけで得られるが、この場合 は特殊で末尾に -j が入る。)無人称過去 ucieknięto 267 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 uciekłem uciekłam uciekliśmy uciekłyśmy 2人称 uciekłeś uciekłaś uciekliście uciekłyście 3人称 uciekł uciekła uciekło uciekli uciekły これと同じ活用をする動詞には ciec 流れる、rzec 言う、がある。 語幹に g が含まれる場合で、特殊なのは現在形の活用で -gn- となる場合である。例 えば、biec 走る、の活用は 単数 複数 1人称 biegnę biegniemy 2人称 biegniesz biegniecie 3人称 biegnie biegną 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 1人称 biegłem biegłam biegliśmy 2人称 biegłeś biegłaś biegliście 3人称 biegł biegła biegło biegli 命令形:biegnij 無人称過去:biegnięto 非男性人間形 biegłyśmy biegłyście biegły 2)第二活用の動詞 第二活用は語尾が -ę, -isz, -i , -imy, -icie, -ą か、あるいは -ę ,-ysz, -y , -ymy, -ycie, -ą となるのが通常である。そして、語幹の接尾辞が -i/-y となるタイプと、-e となるタイ プがある。 第二活用動詞の接尾辞が -i であるタイプの動詞の接尾辞+活用語尾を示せば、 -ię, -iisz, -ii, -iimy, -iicie, -ią ということになる。ただ、-ię や -ią とは綴れないので、それぞ れ -ję と -ją となる。また、 ii とは綴れないので、最初の i は消去される。そうする と、-je, -isz, -i, -imy, -icie, -ją となる。そして、-j の前の子音は第三子音交替を起こす。 そして、単数2人称、3人称、複数1人称、2人称は子音の後が -i であるので、その前 の子音は第二子音交替を起こす(この場合の i は i2 だからである)。そして、単数1 人称、複数3人称において、子音の後には j を綴れないので、j は消去される。従って、 第二活用動詞の終わりは、-ę, -isz, -i, -imy, -icie, -ą となるのである。尚、このタイプの 動詞の特徴は語幹は動詞の活用内には現れず、それと関連するそれ以外の品詞(特に名 詞)に現れることである。 以上のことから、語幹の最後の子音は子音交替を起こす結果、歯茎音( t, d, s, z, st, zd )の場合は第三子音交替と第二子音交替は異なる結果、語尾の前の子音は、単数1人 称・複数3人称と、単数2人称から複数2人称までとは異なる子音となる。しかし、口唇 音(p, b, f, w, m)、ł, r , 軟口蓋音の場合は第二子音交替、第三子音交替とも同じである 268 動詞 ので同じ子音となる。 少し注意すべきは、語幹が j であるタイプの動詞の場合である。母音の後で i の前で は j は消去されるので単数2人称、3人称、複数1人称、2人称は j がないが、単数1 人称、複数3人称では j が残存する。詳しくは下記の「付)語幹別による第二活用動詞 の活用形」の項を参照されたい。 ① 接尾辞が -i/-y となるタイプ この場合は語幹はすべて母音で終わる (接尾辞の最後が i あるいは y だからである。 ただ、命令形の場合には例外的に語幹は子音に終わる。)。しかし、その語幹母音は 現在形では常に消去される。単数1人称と複数3人称は -ię -ią となるが、-ję -ją と綴 り、j の前の子音に子音交替を起こすが、子音の後の j は書けないので消去される。 また、単数2人称から複数2人称までは接尾辞が i あるいは y であり、語尾の最初も i あるいは y であるように同じ母音が続くので最初の母音は消去されるからである。 そして、単数2人称から複数2人称までは第二子音交替が起きる。また、受動形容分 詞は現在複数3人称から作られるので、その語尾は -on- となり、その前の子音に第 三子音交替が起きる。また、過去形と不定詞は語幹に各語尾を付加すれば良い。例え ば prosić 頼む、の活用は以下のごとくである。 1人称 2人称 3人称 単数 proszę prosisz prosi 複数 prosimy prosicie proszą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 prosiłem prosiłam prosiliśmy prosiłyśmy 2人称 prosiłeś prosiłaś prosiliście prosiłyście 3人称 prosił prosiła prosiło prosili prosiły 不定形:prosić 命令形:proś 受動形容分詞:proszony これと同様の活用をする動詞には、ogłosić 表明する、nosić 運ぶ、gasić 消す、ducić 窒息させる、等がある。 ② 接尾辞が e となるタイプ ア、このタイプの動詞は現在形は i/y となるタイプと同じであるが、過去形、不定詞、受 動過去分詞では接尾辞が -e であることが反映される。従って、不定詞は e という接尾 辞が挿入される点が i/ y タイプと異なっている。また、過去形も基本は e であるが、こ の e は e3 であるので、過去語尾の ł の前は e → a と母音交替がある。さらに、無人 称分詞における n の前は -a となる。これも -i/ -y タイプと違う所である。例えば、 siedzieć 腰掛ける、の活用は以下のごとくである。 269 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 siedzę siedzisz siedzi 複数 siedzimy siedzicie siedzą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 siedziałem siedziałam siedzieliśmy siedziałyśmy 2人称 siedziałeś siedziałaś siedzieliście siedziałyście 3人称 siedział siedziała siedziało siedzieli siedziały 不定詞:siedzieć 命令形:siedź 無人称過去:siedziano このタイプの動詞は他に、widzieć 見る、musieć ~しなければならない、がある。 イ、zapomnieć 忘れる、もこのタイプである。これは n 語幹の動詞である。しかし、 これは変則的であり、第三子音交替は起こらず、第二子音交替しか起こらない。従って、 単数1人称、複数3人称の場合には、それぞれ zapomnę, zapomną となり、n の後に i が入らないことに注意すべきである。 単数 複数 1人称 zapomnę zapomnimy 2人称 zapomnisz zapomnicie 3人称 zapomni zapomną 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 zapomniałem zapomniałam zapomnieliśmy zapomniałyśmy 2人称 zapomniałeś zapomniałaś zapomniełiście zapomniałyście 3人称 zapomniał zapomniała zapomniało zapomniełi zapomniały ちなみに、bronić 守る、の活用は(これは接尾辞が i の第二活用動詞であるが、 zapominieć と対比する意味でここで述べる)、 単数 複数 1人称 bronię bronimy 2人称 bronisz bronicie 3人称 broni bronią 過去形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 broniłem broniłam broniliśmy broniłyśmy 2人称 broniłeś broniłaś broniliście broniłyście 3人称 bronił broniła broniło bronili broniły 270 動詞 ③ 接尾辞が -( oj ) a となるもの これは不規則な第二活用の動詞として、後述する。 3)第三活用の動詞 この場合の接尾辞は主として -aj である。この活用の動詞で特徴的なことは子音交替 がないと言うことである。そして、現在形において、複数3人称以外は -j が消去される ことに注意すべきである。というのは 、それぞれ語尾は -m, -sz, なし、 -my, -cie, -ą と なり、複数3人称以外は -j + 子音(あるいはゼロ子音)、となり、子音が連続するの で、最初の子音たる j が消去されるからである。そして、複数3人称は -ją であり、子 音+母音であるので、子音の j は消去されない。しかし、命令形の子音なしは、例外的 に母音として振る舞うので、-j が消去されることはない。過去形においては原則通り -j が消去される。過去形は ł あるいは l で始まるので、子音+子音となるので、最初の子 音たる j は消去されるからである。代表的な動詞、czytać 読む、の活用は以下のごとく である。 単数 複数 1人称 czytam czytamy 2人称 czytasz czytacie 3人称 czyta czytają 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 czytałem czytałam czytaliśmy czytałyśmy 2人称 czytałeś czytałaś czytaliście czytałyście 3人称 czytał czytała czytało czytali czytały 不定詞:czytać 命令形:czytaj, czytajmy(my に対するもの), czytajcie(wy に 対するもの) 受動形容分詞:czytany これに関する動詞は多く、czekać 待つ、kochać 愛する、latać 飛ぶ、ufać 信用する、 żądać 要求する、szukać 探す、trwać 続く、trzymać 捉える、biegać 走る、等がある。 特に不完了体動詞は終わりが -ać となることが多い。 ※ 第三活用動詞でやや不規則なのは、dać 与える、である。これは複数3人称形が、dają ではなく、dadzą となる点が、通常のと異なる。従って、その活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 dam dasz da 複数 damy dacie dadzą 動詞 271 過去形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 dałem dałam daliśmy dałyśmy 2人称 dałeś dałaś daliście dałyście 3人称 dał dała dało dali dały 命令形:daj 受動形容分詞:dany jeść 食べる、wiedzieć 知る、の場合も複数3人称が -dzą となるが、不規則であり、後 述の4)の不規則な活用の動詞の項で改めて述べる。 4)不規則な活用の動詞 ① 第一活用の動詞 既に、接尾辞が -n で始まるもの(-ną, -(ną), -(n)等)、の特殊なも のとして述べた。これには zostać ~に留まる、dostać 得る、stać się ~になる、があ る。 ② 第二活用の動詞 これは接尾辞が -(oj)a となるタイプである。これは第一活用の -(ej)a タイプと類似し ている。すなわち、-a が消去される時は -oj は消去されず、-oj が消去される時は -a が 消去されないのである。ただ、これは第二活用の動詞であり、その点で、-(ej)a タイプ とは異なっている。 stać 立っている、の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 stoję stoimy 2人称 stoisz stoicie 3人称 stoi stoją 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 stałem stałam staliśmy stałyśmy 2人称 stałeś stałaś staliście stałyście 3人称 stał stała stało stali stały 不定詞:stać 命令形:stój 無人称過去:stano これと同じ活用をするのが、bać się 恐れる、である。 ※ これは①の stać się と不定詞は全く同じであるが、別の動詞である。 ③ 不規則な第三活用の動詞 これには mieć 持つ、があるが、これは不定詞が -eć となる点で、不規則である。 mieć の活用は、 272 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 miałem 2人称 miałeś 3人称 miał 単数 mam masz ma 女性形 miałam miałaś miała 複数 mamy macie mają 複数 中性形 男性人間形 mieliśmy mieliście miało mieli 非男性人間形 miałyśmy miałyście miały ④ 変則的な第三活用の動詞 これは第四活用として捉える文法書もあるが、第三活用の変則型として捉えるのが良 いと思われる。接尾辞は -ej となる点が、第三活用の規則型(接尾辞が -aj となるタイ プ)と異なり、過去形において e → a 交替が見られる。そして、第二活用の接尾辞が e となるタイプと同じく過去語尾 ł の前と受動形容分詞や無人称分詞の語尾 n の前では -a となる。代表的な動詞である umieć できる、の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 umiem umiemy 2人称 umiesz umiecie 3人称 umie umieją 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 umiałem umiałam umieliśmy umiałyśmy 2人称 umiałeś umiałaś umieliście umiałyście 3人称 umiał umiała umiało umieli umiały 不定詞:umieć 命令形:umiej 無人称過去:umiano その他の例:rozumieć 理解する、śmieć あえて~する 尚、この活用の動詞で語根に dz を有する動詞は3人称複数で特殊な形になる。例えば、 wiedzieć 知る、の場合の活用は以下のごとくである。 1人称 2人称 3人称 単数 wiem wiesz wie 複数 wiemy wiecie wiedzą 動詞 単数 男性形 1人称 wiedziałem 2人称 wiedziałeś 3人称 wiedział 女性形 wiedziałam wiedziałaś wiedziała 複数 中性形 男性人間形 wiedzieliśmy wiedzieliście wiedziało wiedzieli 273 非男性人間形 wiedziałyśmy wiedziałyście wiedziały このwiedzieć 知る、 に接頭語が付いた動詞には重要なものが多い。 例えば、 powiedzieć 言う、odpowiedzieć 答える、であるが、活用は接頭辞以外は全く同じである。 ※ 現在3人称複数が、wiedzą となる以外は、umieć と同じである。wiedzieć の場合、 語尾が子音で始まる活用形(すなわち複数3人称以外)においては dz は脱落するので ある。 これと類似しているのは jeść 食べる、である。 jeść の活用は、 単数 複数 1人称 jem jemy 2人称 jesz jecie 3人称 je jedzą 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 jadłem jadłam jedliśmy jadłyśmy 2人称 jadłeś jadłaś jedliście jadłyście 3人称 jadł jadła jadło jedli jadły ※ 現在複数3人称が、jedzą となり、複数3人称において語根の dz が入っている。 ⑤ 構造上変則な活用をする動詞 今まで述べた動詞は語幹において現在語幹、過去語幹と2種類あったとしてもそれぞ れは類似性があり、根底にある語幹が一つであるとしてパラダイムを説明できた。しか し、現在語幹と過去語幹に全く類似性がなく、根底にある語幹を想定できない不規則な 活用をする動詞がある。 その場合には第一語幹と第二語幹を取り上げる必要がある。第 一語幹からは現在形(あるいは未来形)と命令形と能動形容分詞が導かれ、第二語幹か らは過去形と受動形容分詞が導かれるのが通常である。ただ、不定詞の場合は、どちら からとも、言える。 ア、このような動詞の一つに iść 行く、がある。この場合、第一語幹は id- で、第二語 幹は szed- である。不定詞は第一語幹からであると言える。 その活用を示すと、 274 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 idę idziesz idzie 複数 idziemy idziecie idą 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 szedłem szłam szliśmy szłyśmy 2人称 szedłeś szłaś szliście szłyście 3人称 szedł szła szło szli szły 不定形:iść 命令形:idź 受動形容分詞はなし ※ 過去形の語幹の d は出没母音の e が関係し、単数男性形の場合に出現している。出 没母音の e が出現するのは、単数男性形の場合は、語尾が ł であるので、ゼロ作用因 子が働くのでその前に e が現れる。しかし、単数女性形、中性形、複数形の場合は ł の 後に母音が来るので、ゼロ作用因子が働かないから、e は出現しない。そして、それら の場合には d は消去される。なぜなら、もし消去されないとすると szdł と子音が3つ 続くので、それを避ける必要があるからである。 イ、また、znaleźć 見つける、もこのような動詞である。第一語幹は znajd- であり、第 二語幹は znalaz- である。その活用は、 単数 複数 1人称 znajdę znajdziemy 2人称 znajdziesz znajdziecie 3人称 znajdzie znajdą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 znalazłem znalazłam znaleźliśmy znalazłyśmy 2人称 znalazłeś znalazłaś znaleźliście znalazłyście 3人称 znalazł znalazła znalazło znaleźli znalazły 不定詞:znaleźć 命令形:znajdź 受動形容分詞:znaleziony ウ、jechać 車で行く、の第一語幹は jad- であり、第二語幹は jecha- であり、その活 用は、 単数 複数 1人称 jadę jedziemy 2人称 jedziesz jedziecie 3人称 jedzie jadą 275 動詞 過去形は 単数 男性形 1人称 jechałem 2人称 jechałeś 3人称 jechał 女性形 jechałam jechałaś jechała 複数 男性人間形 jechaliśmy jechaliście jechało jechali 中性形 非男性人間形 jechłyśmy jechłyście jechały エ、siąść 座る、の第一語幹は siąd- で、第二語幹は sied- であり、その活用は 単数 複数 1人称 siądę siądziemy 2人称 siądziesz siądziecie 3人称 siądzie siądą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 siadłem siadłam siedliśmy siadłyśmy 2人称 siadłeś siadłaś siedliście siadłyście 3人称 siadł siadła siadło siedli siadły 不定詞:siąść 命令形:siądź 形容分詞はなし オ、chcieć 欲する、の第一語幹は chc- であり、第二語幹は chcie- である。不定詞 は第二語幹から導かれる。 単数 複数 1人称 chcę chcemy 2人称 chcesz chcecie 3人称 chce chcą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 chciałem chciałam chcieliśmy chciałyśmy 2人称 chciałeś chciałaś chcieliście chciałyście 3人称 chciał chciała chciało chcieli chciały 不定詞:chcieć 命令形:chciej 無人称過去:chciano カ、spać 眠る、の場合、第一語幹は śpi- であり、第二語幹は spa- であり、不定詞 は第二語幹から導かれる。その活用は 単数 複数 1人称 śpię śpimy 2人称 śpisz śpicie 3人称 śpi śpią 276 動詞 過去形は 単数 男性形 1人称 spałem 2人称 spałeś 3人称 spał 不定詞:spać 複数 女性形 中性形 男性人間形 spałam spaliśmy spałaś spaliście spała spało spali 命令形:śpij 無人称過去:spano 非男性人間形 spałyśmy spałyście spały 付)語幹別による第二活用動詞の活用形 -i / -y タイプの場合は、現在形は単数1人称、複数3人称では第三子音交替を起こし、 それ以外の活用では第二子音交替を起こす。不定詞の接尾辞の -i あるいは -e の前では 第二子音交替を起こす。そして、第二活用動詞の場合、語根の子音が通常は動詞の活用 内に出現しないので語根が何かはわかりにくい。そこで、語根の最後の子音別に活用の パラダイムを記載する。前述したように、第二活用動詞は常に接尾辞が付く動詞であり、 その接尾辞には i の場合と e の場合がある。そして、e は e3 であるので、e → a 交 替が起きることにも注意すべきである。 ① 歯音(t, d, s, z, st, zd)の場合 これらにはそれぞれ次のように子音交替がある。 語根 第二子音交替 第三子音交替 t ć c d dź dz s ś sz z ź ż st ść szcz zd źdź żdż ア、t 語根の例:rzucić 投げる、があり、この基本語根は rzut 投げること、である。t 語根の動詞で不定詞に -e が挿入されたものでは lecieć 飛ぶ、がある。 ・接尾辞が -i である例 rzucić の活用 単数 複数 rzucę rzucimy 1人称 rzucisz rzucicie 2人称 rzuci rzucą 3人称 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 rzuciłam rzuciliśmy rzuciłyśmy 1人称 rzuciłem rzuciłaś rzuciliście rzuciłycie 2人称 rzuciłeś rzuciła rzuciło rzucili rzuciły 3人称 rzucił 277 動詞 命令形:rzuć 受動形容分詞:rzucony ・接尾辞が -e である例 lecieć 飛ぶ、の活用 単数 lecę 1人称 lecisz 2人称 leci 3人称 過去形 単数 男性形 1人称 leciałem 2人称 leciałeś 3人称 leciał 女性形 leciałam leciałaś leciała 中性形 leciało 複数 lecimy lecicie lecą 複数 男性人間 lecieliśmy lecieliście lecieli 非男性人間 leciałyśmy leciałyście leciały イ、d 語幹の例:chodzić 歩く、が代表的なものであり、その基本語幹は chód 歩く こと、である。 他には、wodzić 導く sprawdzić 調べる・検査する・確認する・チェ ックする 単数 複数 chodzę chodzimy 1人称 chodzisz chodzicie 2人称 chodzi chodzą 3人称 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 chodziłam chodziliśmy chodziłyśmy 1人称 chodziłem chodziłaś chodziliście chodziłyście 2人称 chodziłeś chodziła chodziło chodzili chodziły 3人称 chodził 接尾辞が -e となる動詞の活用については既に言及した。 ウ、s 語幹の例:nosić 運ぶ、が代表的なものであるが、基本語根は wynos テイク アウト、の中に見られる。その他の動詞としては prosić 頼む、がある。 ・接尾辞が -i である例 nosić 運ぶ、の現在形の活用は、 単数 複数 noszę nosimy 1人称 nosisz nosicie 2人称 nosi noszą 3人称 278 動詞 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 nosiłam nosiliśmy nosiłyśmy 1人称 nosiłem nosiłaś nosiliście nosiłyście 2人称 nosiłeś nosiła nosiło nosili nosiły 3人称 nosił ・接尾辞が -e となる動詞には、musieć ~しなければならない、wisieć 掛かってい る、等がある。 musieć の現在形の活用は 単数 複数 muszę musimy 1人称 musisz musicie 2人称 musi muszą 3人称 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 musiałam musieliśmy musiałyśmy 1人称 musiałem musiałaś musieliście musiałyście 2人称 musiałeś musiała musiało musieli musiały 3人称 musiał エ、z 語幹の例:wozić 車で運ぶ、が代表的なもので、基本語根は wóz カート、で ある。 その他には、grozić 脅かす、がある。 wozić 車で運ぶ、の現在活用は、 単数 複数 wożę wozimy 1人称 wozisz wozicie 2人称 wozi wożą 3人称 過去形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 woziłam woziliśmy woziłyśmy 1人称 woziłem woziłaś woziliście woziłyście 2人称 woziłeś woziła woziło wozili woziły 3人称 woził オ、st 語幹の例:czyścić きれいにする 基本語幹は形容詞であるが、czysty きれい な、である。 カ、zd 語幹の例:jeździć 車で行く 基本語幹は jazda 運転 ② 口唇音(p, b, f, w, m)の場合は第二子音交替、第三子音交替とも同じ形態である 279 動詞 ので、原則として、現在形ではすべての活用において、語尾以外は同じ形になる。 p 語幹の例:kupić 買う topić się 溺れる cierpieć 苦しむ b 語幹の例:lubić 好む robić ―をする f 語幹の例:trafić 当てる w 語幹の例:łowić 捕まえる łow 捕まえること bawić もてなす m 語幹の例:karmić 食事を与える 例えば、kupić 買う、の現在形の活用は、 1人称 2人称 3人称 過去形は、 単数 男性形 1人称 kupiłem 2人称 kupiłeś 3人称 kupił 単数 kupię kupisz kupi 女性形 kupiłam kupiłaś kupiła 複数 kupimy kupicie kupią 中性形 kupiło 複数 男性人間 kupiliśmy kupiliście kupili 非男性人間 kupiłyśmy kupiłyście kupiły また、p 語幹で、接尾辞が -e となる動詞である cierpieć 苦しむ、の現在形の活用は、 1人称 2人称 3人称 過去形は、 単数 男性形 1人称 cierpiałem 2人称 cierpiałeś 3人称 cierpiał 単数 cierpię cierpisz cierpi 女性形 cierpiałam cierpiałaś cierpiała 複数 cierpimy cierpicie cierpią 複数 中性形 男性人間 cierpieliśmy cierpieliście cierpiało cierpieli 非男性人間 cierpiałyśmy cierpiałyście cierpiały ③ ł の場合 この場合も第二子音交替と第三子音交替が起きるが、どちらも同じである ので、l となる。例:palić タバコを吸う chwalić 褒める dzielić 分ける golić się ひげ を剃る mylić się 間違える ocalić 救う podkreślić 強調する pozwolić 許可する solić 塩を加える szkolić 教育する chwalić 褒める、の現在活用は 280 動詞 1人称 2人称 3人称 過去形、 単数 男性形 1人称 chwaliłem 2人称 chwaliłeś 3人称 chwalił 単数 複数 chwalę chwalisz chwali chwalimy chwalicie chwalą 女性形 chwaliłam chwaliłaś chwaliła 複数 中性形 男性人間 chwaliliśmy chwaliliście chwalilo chwalili 非男性人間 chwaliłyśmy chwaliłyście chwaliły 接尾辞が -e になるタイプの動詞には、 myśleć 考える boleć 痛む woleć ~をよ り好む、等がある。 woleć の活用は 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 wolałem 2人称 wolałeś 3人称 wolał 単数 wolę wolisz woli 女性形 wolałam wolałaś wolała 複数 wolimy wolicie wolą 中性形 wolało 複数 男性人間 woleliśmy woleliście woleli 非男性人間 wolałyśmy wolałyście wolały ④ 軟口蓋音(k, g, ch )の場合 この場合も第二子音交替と第三子音交替が同じであ り、それぞれ cz, ż, sz と子音交替がある。しかも注意すべきは cz, ż, sz の後には i を 書けないので、語尾は -y- となることである。 ア、k 語幹の例:uczyć 教える kończyć 終える znaczyć ~を意味する uczyć を例に取ると、基本の語根は samouk 独学者、に表れる。その現在活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 uczę uczysz uczy 複数 uczymy uczycie uczą 281 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 uczyłam uczyliśmy uczyłyśmy 1人称 uczyłem uczyłaś uczyliście uczyłyście 2人称 uczyłeś uczyła uczyło uczyli uczyły 3人称 uczył 接尾辞が -e である動詞には、krzyczeć 叫ぶ、milczeć 黙っている、等がある。 milczeć の活用は、 単数 複数 milczę milczymy 1人称 milczysz milczycie 2人称 milczy milczą 3人称 過去形は 単数 男性形 1人称 milczałem 2人称 milczałeś 3人称 milczał 女性形 milczałam milczałaś milczała 複数 中性形 男性人間 milczeliśmy milczeliście milczało milczeli 非男性人間 milczałyśmy milczałyście milczały イ、g 語幹の例:ulżyć 安心させる その基本語幹は、ulga 安堵、に表れる。zdążyć 間 に合う・何とか~する、の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 zdążyłem 2人称 zdążyłeś 3人称 zdążył 単数 zdążę zdążysz zdąży 女性形 zdążyłam zdążyłaś zdążyła 中性形 zdążyło 複数 zdążymy zdążycie zdążą 複数 男性人間 zdążyliśmy zdążyliście zdążyli 非男性人間 zdążyłyśmy zdążyłyście zdążyły zdążyć na pociąg 列車に間に合う その他には、mnożyć 増やす(その基本語幹は mnogi たくさんの、という形容詞である。)、がある。 接尾辞が -e である動詞の例には、leżeć 嘘を付く drżeć 震える、等があるが、drżeć の活用は、 282 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 drżałem 2人称 drżałeś 3人称 drżał 単数 複数 drżę drżysz drży drżymy drżycie drżą 女性形 drżałam drżałaś drżała 中性形 drżyało 複数 男性人間 drżeliśmy drżeliście drżeli 非男性人間 drżałyśmy drżałyście drżały ウ、ch 語幹の例:płoszyć びっくりさせる、の基本語幹は popłoch パニック、であ る。その他には、suszyć 乾かす、がある。 ・接尾辞が -y である動詞 płoszyć の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 płoszyłem 2人称 płoszyłeś 3人称 płoszył 単数 płoszę płoszysz płoszy 女性形 płoszyłam płoszyłaś płoszyła 複数 płoszymy płoszycie płoszą 中性形 płoszyło 複数 男性人間 płoszliśmy płoszliście płoszli 非男性人間 płoszłyśmy płoszłyście płoszły ・接尾辞が -e である動詞の例には、słyszeć 聞こえる、があり、その現在活用は、 単数 複数 słyszę słyszymy 1人称 słyszysz słyszycie 2人称 słyszy słyszą 3人称 過去形は 単数 男性形 1人称 słyszałem 2人称 słyszałeś 3人称 słyszał 女性形 słyszałam słyszałeś słyszała 中性形 słyszało 複数 男性人間 słyszeliśmy słyszeliście słyszeli 非男性人間 słyszałyśmy słyszałyście słyszały 283 動詞 ⑤ n 語幹の場合 この場合も ni と子音交替がある。例:bronić 守る、の基本語幹は obrona 防衛、である。その他には、 cenić 評価する czynić 行う dzwonić 電話をか ける gonić 追いかける różnić się 異なる zamienić 交換する zatrudnić 雇う、等が ある。 単数 複数 bronię bronimy 1人称 bronisz bronicie 2人称 broni bronią 3人称 過去形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 broniłam broniliśmy broniłyśmy 1人称 broniłem broniłaś broniliście broniłyście 2人称 broniłeś broniła broniła bronili broniły 3人称 bronił ⑥ r 語幹の場合 この場合も rz と子音交替がある。例:ostrzyć 鋭くする powtórzyć 繰り返す tworzyć 作る、等がある。tworzyć の基本語幹は twórczy 創造の、に表れ る。その他には、wierzyć 信じる、がある。 ・接尾辞が -y である tworzyć の活用は、 1人称 2人称 3人称 過去形は 単数 男性形 1人称 tworzyłem 2人称 tworzyłeś 3人称 tworzył 単数 tworzę tworzysz tworzy 女性形 tworzyłam tworzyłaś tworzyła 複数 tworzymy tworzycie tworzą 複数 中性形 男性人間 tworzyliśmy tworzyliście tworzyło tworzyli ・ 接尾辞が -e である patrzeć 見る、の活用は、 1人称 2人称 3人称 単数 patrzę patrzysz patrzy 複数 patrzymy patrzycie patrzą 非男性人間 tworzyłyśmy tworzyłyście tworzyły 284 動詞 過去形は 単数 男性形 1人称 patrzałem 2人称 patrzałeś 3人称 patrzał 女性形 patrzałam patrzałaś patrzała 中性形 patrzało 複数 男性人間 patrzeliśmy patrzeliście patrzeli 非男性人間 patrzałyśmy patrzałyście patrzały ⑦ j 語幹の場合 この場合は、少し注意が必要である。単数1人称や複数3人称ではそれぞれ -jię, -jią となるが、まず、ę, ą の前の i は j と綴る。そうなるとそれぞれ -jję, -jją となるが、 jj は最初の j が消去されるので、それぞれ -ję, -ją となる。他方、単数2人称から複 数2人称まではそれぞれ -jisz, -ji, -jimy, -jicie となるが、j が i の前であり、j の前が 母音であるとき、 j は消去されるので、それぞれ -isz, -i, -imy, -icie となるのである。 また、過去形においては -j + ł あるいは l と子音+子音となるので、最初の子音たる j は消去される。例えば、kroić 切る、の活用は以下のごとくである。 単数 複数 kroję kroimy 1人称 kroisz kroicie 2人称 kroi kroją 3人称 過去形は 単数 男性形 1人称 kroiłem 2人称 kroiłeś 3人称 kroił 女性形 kroiłam kroiłaś kroiła 中性形 kroiło 複数 男性人間 kroiliśmy kroiliście kroili 非男性人間 kroiłyśmy kroiłyście kroiły 285 動詞 第4節 動詞の法 ロシア語の法には直説法、仮定法、命令法の3つの法がある。直説法は事実を事実と して表すもので普通の文である。命令法は命令、指示などを表すものである。仮定法は、 ① 仮想(現実ではないが、何らかの条件が満たされれば実現が予想できる事実)、② 願 望、③ 目的、④ その他の主観、を表すと説明される。この点、ポーランド語において も同様である。 Ⅰ 直説法 1.現在形 現在形はロシア語と同じく、もっぱら不完了体のみで表す。現在形は、現在行われて いる行為を表す場合とか、反復行為を表す場合に用いられるのは、ロシア語と同様であ る。現在形の活用はロシア語よりさらに複雑であるが、詳細は第3節 動詞の活用を参照 されたい。 2.過去形 1)概説 動詞の過去形はロシア語の場合は非常に単純で、人称には関係なく、主語が男性単数 か、女性単数か、中性単数か、複数かによって語尾が異なるに過ぎなかった。しかし、 ポーランド語の場合はそれよりもやや複雑である。すなわち、主語の性、数のみならず、 人称によって語尾が異なってくるのである。ただ、現在形に比較すると単純である。ロ シア語の場合、過去形は不定詞の -ть を取り、-л –ло –ла –ли を付して作るに過ぎなか った。しかるにポーランド語の場合は通常は3人称の場合には、不定詞の末尾の -ć を取 り、それに-ł(男性形)、-ło(中性形)、ła(女性形)、-li(複数男性人間形)、-ły(複 数非男性人間形)を付す。そして、1人称、2人称の場合には以下のものを付す。 単数1人称の場合、男性は -em、女性は -am、単数2人称の場合、男性は -eś、女性 は -aś、複数1人称の場合は、-śmy、複数2人称の場合は、-ście を付すのである。そし て、過去形は原則として不定詞を基準に作られるので、活用自体は現在形より単純であ る。動詞の活用の全体については別の箇所(第三節 動詞の活用)で述べたので、ここ では必要な範囲で言及するに止める。 一般的に動詞の過去形の語尾は以下のごとくである。 1人称 2人称 3人称 単数 男性 -łem -łeś -ł 女性 -łam -łaś -ła 中性 なし なし -ło 複数 男性人間形 -liśmy -liście -li 非男性人間形 -łyśmy -łyście -ły 286 動詞 ※ 単数1人称と2人称の中性形は「なし」としたが、理論的には -łom や -łoś とな りうる。しかし、実際にはほとんど使われないので、一応「なし」とした。子供は中性 名詞であるが、子供自身は自分のことを言う場合には、その性に応じてどちらかになり、 また、子供を相手にする場合にもその性に応じてどちらかになりうる。ただ、例外的に 擬人化された場合にはありうる。例えば、słonce 太陽、が擬人化された場合には単数1 人称中性形、単数2人称中性形が使われる。 Dzieć dobry słonce! Gdzie byłos w nocy? こんにちわ、太陽さん!あなたは夜はどこ にいるのですか? 2)動詞の過去形の活用 過去形は原則として不定詞を基準に作られるので、以下には不定詞から見た過去形の 活用を記載する。 ① 動詞の終わりが -ać, -ić, -uć, -yć の場合は単純で、不定詞の語幹に上述した語尾を付 加すれば、活用形は得られる。 例えば、brać 取る、の過去活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 brałem brałam braliśmy brałyśmy 2人称 brałeś brałaś braliście brałyście 3人称 brał brała brało brali brały ② -eć で終わる動詞の場合は、少し複雑である。例として、第一活用の動詞 chcieć 欲 する、を挙げると、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 chciałem chciałam chcieliśmy chciałyśmy 2人称 chciałeś chciałaś chcieliście chciałyście 3人称 chciał chciała chciało chcieli chciały この場合、語幹は chcie- であるが、ł の前の e は a に母音交替が見られるので、複数 男性人間形以外は chcie- が chcia- となるのである。 第三活用の動詞の mieć 持つ、の場合も同様で、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 miałem miałam mieliśmy miałyśmy 2人称 miałeś miałaś mieliście miałyście 3人称 miał miała miało mieli miały この場合、過去語幹は mie- であるが、この e は e3 であり、ł の前の e は a に母音交 替が見られるので、複数の男性人間形以外は mie- が mia- となるのである。 動詞 287 -eć で終わる場合で r, ł 語幹の場合はやや特殊である。これらの場合は、過去形の語 幹の終わりはそれぞれ -ar-, -eł- となる。例えば、r 語幹の場合の drzeć 破る、は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 darłem darłam darliśmy darłyśmy 2人称 darłeś darłaś darliście darłyście 3人称 darł darła darło darli darły その他には、oprzeć ~に基礎を置く、trzeć こする、umrzeć 死ぬ、がある。この場合、 不定詞は -rz- となっているのは -e の前では子音交替( r → rz )があるからである。 ł 語幹の場合の pleć (雑草を)取る、の場合は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 pełłem pełłam pełliśmy pełłyśmy 2人称 pełłeś pełłaś pełliście pełłyście 3人称 pełł pełła pełło pełli pełły それ以外の同じ活用をする動詞には、mleć 粉にする、がある。尚、不定詞が -l- とな っているのは、-e の前では ł → l に子音交替があるからである。 ③ -ąć で終わる動詞の場合(もっとも④の -nąć で終わる場合は除く)は、単数男性形 以外の部分は ą → ę と母音交替があるが、それ以外は母音交替はない。それは、閉音 節の前は ą となり、開音節の前は ę となるからである。例は ginąć 死ぬ、zacząć 始 める、wziąć 取る、等であり、zacząć の活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 zacząłem zaczęłam zaczęliśmy zaczęłyśmy 2人称 zacząłeś zaczęłaś zaczęliście zaczęłyście 3人称 zaczął zaczęła zaczęło zaczęli zaczęły ここで注意すべきは、単数男性形の1人称、2人称の場合、ł の後は e と母音が来て いるので開音節になるのではないかという点である。しかし、この場合は em, eś は ł と 離して考えるべきであるので、閉音節と考えるべきである。 ④ -nąć で終わる動詞の場合は、少し複雑である。すなわち、-ną- を有する場合もある し、-ną- を除去する場合もあるのである。多いのは後者である。しかし、どちらになる かは規則性に乏しく、個々の動詞について辞書に当たるしかない。ただ、ある程度以下 のように言える。 ア、過去形において、-ną- を有する場合 ・ -ną- の前に母音が付く場合が挙げられる。その例は、minąć 過ぎ去る・追い越す、 płynąć 泳ぐ・流れる、stanąć 止まる、がある。 ・ -ną- の前に子音が2つ続く場合が挙げられる。その例は、brnąć 歩いていく、mknąć 急ぐ、tknąć 触れる、等がある。 288 動詞 ・ 主として少しの時間を示す動詞の場合、すなわち「ちょっと~する」の意味を表す動 詞等である。 例えば、 gwizdać 口笛を吹く、 に対する gwizdnąć ちょっと口笛を吹く、 pukać ノックする、に対する puknąć ちょっとノックする、等である。 płynąć の活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 płynąłem płynęłam płynęliśmy płynęłyśmy 2人称 płynąłeś płynęłaś płynęliście płynęłyście 3人称 płynął płynęła płynęło płynęli płynęły イ、-ną- を除去する場合 ・まず、この場合は主たる動詞に対する二次的な動詞である場合が挙げられる。この場 合は、主たる動詞は不定詞語尾が -c, -ść/-źć である場合が通常である。そして、両動詞 の意味及び活用は同じとなる。例えば、biec 走る、に対する biegnąć 、lec 横になる、 に対する legnąć 、róść 成長する、に対する rosnąć である。従って、過去形は不定詞 語幹から -ną- を除去して過去語尾を付加して作る。尚、「二次的な動詞」とは意味の みならず体も同じ動詞であり、不定詞の最後が -nąć となる動詞を言う。 rosnąć 成長する、の過去活用形は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 rosłem rosłam rośliśmy rosłyśmy 2人称 rosłeś rosłaś rośliście rosłyście 3人称 rósł rosła rosło rośli rosły ここで注意すべきは単数男性形の3人称で rósł となっているのは、閉音節の前の o は ó に母音交替を起こすためであるが、母音交替が1人称、2人称には起こっていないこ とである。すなわち、この場合は鼻母音の場合と異なり、単数男性形の1人称、2人称 は ł と e を離して考えるべきではないという点である。また、rosłe- となるのに対して、 男性人間形の場合は rośli と、s と ś と違いがある点にも注意が必要である。これは、 l の前の子音は軟音化するためである。 ・次に、一方の動詞(通常は不定詞は -ać で終わる)が不完了体であり、それに対して、 完了体が -nąć で終わる動詞の場合である。この場合は、-nąć で終わる動詞の方は一回 性であることを強調する(ロシア語で言えば -нуть 動詞である。)ことが多い。例えば、 brakować 不足する、に対する braknąć、pękać 破裂する、に対する pęknąć 、zdychać 動物が死ぬ、に対する zdechnąć である。pęknąć の過去活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 pękłem pękłam pękliśmy pękłyśmy 2人称 pękłeś pękłaś pękliście pękłyście 3人称 pękł pekła pękło pękli pękły 動詞 289 ・しかし、上述の範囲に含まれない動詞の場合でも -ną- が除去される場合がある。 例えば、zbladnąć 青くなる、の場合は 単数 男性形 女性形 1人称 zbladłem zbladłam 2人称 zbladłeś zbladłaś 3人称 zbladł zbladła 複数 中性形 男性人間形 非男性人間形 zbladliśmy zbladłyśmy zbladliście zbladłyście zbladło zbladli zbladły ウ、-ną- を有する場合と -ną- を有しない場合とで2つの過去形がある場合 この場合は、単数男性形と複数男性人間形の場合には2つの形があるが、それ以外は -ną- を除去した形が使われる。例えば、ślepnąć 盲目になる、chudnąć やせる、moknąć 濡れる、等である。chudnąć の過去活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 chudłem/chudnąłem chudłam chudliśmy/chudnąliśmy chudłyśmy 2人称 chudłeś/chudnąłeś chudłaś chudliście/chudnąliście chudłyście 3人称 chudł/chudnął chudła chudło chudli/chudnąli chudły ※1 この場合の特徴は男性形は単数にしろ、 複数にしろ -ną- を保っているものがあるが、 それ以外の活用では -ną- を失っている点である。 ※2 注意すべきは -nąć で終わる動詞の中には③( -ąć で終わる動詞)に含まれるもの もある。そのような動詞は③と同様に考えればよい。例えば、zamknąć 閉める、の場 合の過去活用形は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 zamknąłem zamknęłam zamknęliśmy zamknęłyśmy 2人称 zamknąłeś zamknęłaś zamknęliście zamknęłyście 3人称 zamknął zamknęła zamknęło zamknęli zamknęły ⑤ 不定詞が -c, -ść, -źć で終わる動詞の場合は、過去形は現在単数1人称から作られる。例 えば、kłaść 置く、の場合、現在単数1人称は kładę であるので、以下のごとくになる。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 kładłem kładłam kładliśmy kładłyśmy 2人称 kładłeś kładłaś kładliście kładłyście 3人称 kładł kładła kładło kładli kładły また、例えば、upaść 落ちる、の場合、現在単数1人称は upadę であるので、その活 用は以下のごとくになる。 290 単数 男性形 1人称 upadłem 2人称 upadłeś 3人称 upadł 動詞 女性形 upadłam upadłaś upadła 複数 中性形 男性人間形 upadliśmy upadliście upadło upadli 非男性人間形 upadłyśmy upadłyście upadły 尚、語根内に e を有する場合は、複数男性人間形ではその e を保持するが、それ以 外の活用形では o に交替する。また、単数3人称男性形では o → ó 交替が見られる。 また、このグループの動詞で、 s 語幹、z 語幹の場合、複数男性人間形で -l の前の s あ るいは z が軟音化する。例えば、nieść 運ぶ、の活用は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 niosłem niosłam nieśliśmy niosłyśmy 2人称 niosłeś niosłaś nieśliście niosłyście 3人称 niósł niosła niosło nieśli niosly しかし、znaleźć 見つける、は構造上変則な活用をする動詞であり、現在形と過去形 で語幹が異なる動詞である。過去形の語幹は znalaz- である。その活用は、 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 znalazłem znalazłam znaleźliśmy znalazłyśmy 2人称 znalazłeś znalazłaś znaleźliście znalazłyśmy 3人称 znalazł znalazła znalazło znaleźli znalazły 注:-źć を除去した後に、z を挿入する。 ⑥ 不規則な活用の動詞 過去形が上述した活用では説明できない、全く不規則な動詞もある。それには、iść 行 く、jeść 食べる、等がある。iść, jeść の活用を示す。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 szedłem szłam szliśmy szłyśmy 2人称 szedłeś szłaś szliście szłyście 3人称 szedł szła szdło szli szły ※ 単数男性形のみが -ed- が挿入されていることに注意すべきである。 291 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 jadłem jadłam jedliśmy jadłyśmy 2人称 jadłeś jadłaś jedliście jadłyście 3人称 jadł jadła jadło jedli jadły ※ 複数男性人間形のみが -a- ではなく、-e- となっていることに注意すべきである。 3)主語との動詞の関係 ① 動詞が単数形になるか、 複数形になるかは、 主語が単数か、 複数かによるのであるが、 注意すべきは数詞が関係した場合である。その場合は、原則として動詞は単数3人称中 性形となる。例えば、Około 50 rosyjskich wojskowych zginęło w ataku rebeliantów w Inguszetii. イングーシ共和国で約50人のロシア兵がゲリラの攻撃により死亡した、と なる。 ② 単数の場合で、主語が1人称で、男性の場合には1人称男性形が、女性の場合は1人 称女性形が使われる。主語が2人称でその相手が男性の場合には2人称男性形が、その 相手が女性の場合には2人称女性形が使われる。主語が3人称単数で男性の場合には (人間の場合も動物の場合も含むし、無生名詞の場合も含む)3人称男性形が、女性の 場合には3人称女性形が使われるし、主語が中性名詞の場合には3人称中性形が使われ る。また、複数の場合には男性人間形を使うか、非男性人間形を使うか、という問題が あるが、これについては統語論の項を参照されたい。 4)過去形の用法 過去形はロシア語と同じく、過去における経過、行為、出来事等を表す。不完了体過 去の場合は、経過を表すのが原則であり、完了体過去の場合は結果に重点を置いて、行 為、出来事を表すのが原則である。 5)過去完了について 過去完了形は一般動詞の過去形に動詞 być の過去3人称形(był, była, było, byli, były)を付加して作られる。過去完了時制は、はるか過去の事象、またはある過去の動 作の先行動作を表す時に用いられる。完了体でも不完了体でも認められる。しかし、現 代ポーランド語ではあまり使用されず、過去時制がその代わりをするのが通常である。 しかし、文学作品とか副文において時制の違いを明確にさせる場合に使われる。 czytać の過去完了の活用は以下のごとくである。 単数 1人称 2人称 3人称 男性形 czytałem był czytałeś był czytał był 女性形 czytałam była czytałaś była czytała była 中性形 czytało było 292 動詞 複数 1人称 2人称 3人称 男性人間形 czytaliśmy byli czytaliście byli czytali byli 非男性人間形 czytałyśmy były czytałyście były czytały były Pisałem był ten list dawno. かつて私はその手紙を書いたものだった。 Wczoraj czytałem książkę, którą kupiłem był niedawno. 私は先日購入した本を昨 日読んでいた。 3.未来形 1)ロシア語においては完了体には現在形はなく、そのままの形が未来形となった。こ の点はポーランド語の場合も同様である。一方、不完了体の場合は、ロシア語の場合は быть の活用形+不定詞で表したが、ポーランド語においては być の活用形+過去単数 3人称形で表す。ここで注意しなければならないのは、不定詞ではなく、過去単数3人 称形であるということである。もっとも、不定詞を用いても間違いではないが、現代ポ ーランド語では大概の場合、過去3人称形が使われているのである。 czytać を例に取ると、その未来形は以下のごとくになる。 単数 男性 女性 中性 1人称 będę czytał będę czytała 2人称 będziesz czytał będziesz czytała 3人称 będzie czytał będzie czytała będzie czytało 複数 男性人間形 非男性人間形 1人称 będziemy czytali będziemy czytały 2人称 będziecie czytali będziecie czytały 3人称 będą czytali będą czytały 2)本動詞の位置 ① 過去3人称形が使われる場合は、常に być の活用形の後に、本動詞が来る。しかし、 不定詞が使われる場合は比較的自由である。例えば、 Będę pisać. 私は書くだろう。 Dziś pisać nie będę. 今日、私は書かないつもりだ。 後者の場合、będę より前に pisać が来ているのである。しかし、pisał を使う場合は、 Dziś nie będę pisał.となり、będę は pisał の前に来るのである。 ② 否定の nie を使用して否定する場合には、nie を być の活用形の前に置くのが原則 である。 On nie będzie czytał książkę. 彼は本を読まないだろう。 3)完了体を使用する時は、それだけで未来の意味を表す。ただ、その意味は多彩であ り、単に未来の意味を表すに留まるものではない。その意味の詳細は動詞の体の項を参 動詞 293 照されたい。 4)będę は完了体と結びつくことはない。 5)移動に関する動詞との関係 移動に関する動詞は不完了体であるが、 未来を表す場合でも原則として być と結びつ くことはない。移動に関する動詞の場合は、現在形で未来を表すのである。 Jutro my z Nowakem idziemy do uniwersytetu. 明日、 私はノバックと一緒に学校へ 行くつもりだ、となり、bedę を使わなくても未来の意味を表す。 しかし、例えば iść が「歩く」の意味を表す時には、będę と結びつく。だから、 On będzie iść prędko. 彼は速く歩こうとしている、となる。 6)再帰動詞の複合未来形の場合、się は być と本動詞の間に来る。それは、本動詞が 過去形であっても、不定詞であっても同じである。 Będzie się budował nowy hotel. 新しいホテルが建てられるだろう。 7)過去未来 過去未来はスペイン語などで良く使用され、特別な活用形がある。ポーランド語にお いてはロシア語と同様特別な活用形はないが、未来形を利用して過去未来の意味を表す ことがある。過去未来は、過去から見た未来の行為・状態を表すものである。 Wiedziałam, że on będzie przyszedł. 私は、彼が来ることは知っていました。 294 動詞 Ⅱ 命令法 1.序 命令法は話し手の意思ないし願望を表す叙述法である。命令法の形には親称形と敬称 形を区別することができる。このうち、親称形のみが真正な命令形であり、敬称形は実 際上の必要から直説法の動詞の活用の中から借りてきたものである。敬称形の場合は、 niech + 呼称である pan/pani/państwo + 動詞の単数3人称あるいは複数3人称を用い る。 2.ポーランド語の命令法の親称形は形の上では3つの形がある。すなわち、単数2人 称形、複数1人称形、複数2人称形である。しかし、複数1人称形は単数2人称形の最 後に -my を付加するだけであり、複数2人称形は単数2人称形の最後に -cie を付加す るだけである。従って、命令法の基本形としては2人称単数形を挙げれば十分である。 ロシア語において、命令法は動詞の現在語幹を用いて作られた。すなわち、ты に対 する命令は、現在語幹が母音で終わっていたら、-и を付して作り、子音で終わっていた ら、現在単数1人称でアクセントが語尾のものは -и を付し、語幹にあるものは -ь を付 して作ったのである。 ポーランド語の場合も動詞の現在形の基本形を用いて作るのが原則である。しかし、 ロシア語より動詞の変化の種類が多いことを反映して、もう少し複雑である。前述した ように、命令法は ty に対するものと wy に対するものと my に対するものがあるが、 命令形の基本となるのは ty に対するものである。ty に対するものは現在語幹のままで それ以上語尾は付さないものが通常であるが、例外は多くある。前述したように wy に 対するものは命令形の基本形に -cie を付加し、my に対するものは -my を付加する。 以下の記述では命令形の基本形である ty に対するものに絞って言及する。 前述したように、命令法は現在形の基本形から作られるのが原則である(しかし、例 外的に不定詞を基準にして作られるものがあるが、それは後で言及する)。そこで、各 動詞について現在形の基本形が何かを見極めることが重要である。動詞の現在活用形は 6種類(単数1人称、2人称、3人称、複数1人称、2人称、3人称)あるが、単数1 人称、複数3人称は語尾が異なるだけで、通常はそれ以外の表現形は同じである。また、 単数2人称から複数2人称までの活用形も語尾が異なるだけで、それ以外の表現形は同 じである。そこで、いずれの表現形から作られるかであるが、第一、第二活用動詞は単 数2人称から複数2人称までに表現されている形が基本形となり、第三活用動詞は単数 1人称、複数3人称に表現されている形が基本形となるのが原則である。そこで、第一、 第二活用動詞は単数3人称から語尾を除去したものが、第三活用動詞は複数3人称から 語尾を除去したものが、命令形となるのが原則であると言えよう。 3.命令形の形成法 1)第一活用動詞 動詞 295 ① 不定詞が -c や -ść/ -źć で終わる場合=すなわち語幹に接尾辞がないタイプで阻害音 の場合である。 ア、まず、語幹が歯茎音(t, d, s, z)で終わる場合は第一活用動詞であるので、単数3人 称から語尾の e を除去したものが、命令形となる。 gnieść 押しつぶす、の単数3人称は gniecie であるので、gnieć となる。 kłaść 置く、の単数3人称は kładzie であるので、kładź となる。 nieść 運ぶ、の単数3人称は niesie であるので、nieś となる。 gryźć 咬む、の単数3人称は gryzie であるので、gryź となる。 イ、次に、語幹が軟口蓋音(k,g)で終わる場合も第一活用動詞であるので、単数3人称 から語尾の e を除去したものが、命令形となる。 piec 焼く、の単数3人称は piecze であるので、piecz となる。 móg できる、の単数3人称は może であるので、moź となる。 ② 語幹が j で終わる場合=語幹に接尾辞がないタイプ このタイプの動詞も単数3人称に語尾を除去したものが、命令形となる。 czuć 感じる、の単数3人称は czuje であるので、czuj となる。 pić 飲む、の単数3人称は pije であるので、pij となる。 myć 洗う、の単数3人称は myje であるので、myj となる。 ③ 語幹が n, m, r で終わる場合=語幹に接尾辞がないタイプ ア、最後の子音が鼻音(n,m)の場合、単数3人称に語尾を除去した後、-ij または -yj を 付加して作る。なぜなら、子音が連続した後には -ij または -yj を付け加える必要があ るからである。ただ、-ij を付け加える場合に、-iij となった時は最初の i は消去される ことに注意すべきである。 ciąć 切る、の単数3人称は tnie となるので、tnij となる(本来なら tniij となると ころだが、i が続く時は最初の i は消去されて tnij となる。) dąć 吹く、の単数3人称は dmie となるので、dmij となる。 イ、最後の子音が -r の場合も単数3人称に語尾を除去した後、-ij または -yj を付加し て作る。 drzeć 裂く、の単数3人称は drze となるので、drzyj となる。 ④ 語幹に接尾辞が付くタイプの動詞の内、-a で終わる場合は、単数3人称から -e を除 去したものが、命令形となる。 pisać 書く、の単数3人称は pisze となるので、pisz となる。 語幹の子音が口唇音(p,b,f,w,m)の場合には、軟音化が解除されることに注意すべき である。kąpać 入浴する、の単数3人称は kąpie となるので、kąpi となるかのごとく であるが、軟音化が解除されるので kąp となる。尚、軟音化が解除される例は他に、 kłamać 嘘を付く、rąbać 叩き切る、skrobać こする trzepać 打つ、等がある。 ⑤ 語幹に接尾辞が付くタイプの動詞の内、-owa や -ywa となる動詞も、単数3人称か ら -e を除去したものが、命令形となる。 interesować 興味を起こさせる、の単数3人称は interesuje となるので、interesuj と なる。 296 動詞 dokonywać 達成する、の単数3人称は dokonuje となるので、dokonuj となる。 ⑥ 語幹の接尾辞が (ej)-a となるタイプの動詞も、単数3人称から -e を除去したものが、 命令形となる。 lać 注ぐ、の単数3人称は leje となるので、lej となる。 ⑦ 語幹の接尾辞が (CC)-a となるタイプの動詞は、単数3人称から -e を除去し、-ij あ るいは –yj を付加して作る。語根が子音1+子音2と子音が連続する場合には、母音が 続く必要があるからである。 rwać 裂く、の単数3人称は rwie であり、-e を除去し、-ij を付加すると、rwij とな る(本来は rwiij となるが、最初の i は消去される。)。 ⑧ 語幹の接尾辞が -ej となるタイプの動詞は、単数3人称から -e を除去したものが、 命令形となる。 mdleć 失神する、の単数3人称は mdleje であるので、mdlej となる。 ⑨ 語幹の接尾辞が -(aw)-aj となるタイプの動詞の場合は例外的に不定詞から命令形が 作られる。 dawać 与える、は dawaj となる。 他には、stawać 静止する、がある。 ⑩ 語幹の接尾辞が -n で始まる動詞には3種類あるが、そのうち -n がすべての活用形 で見られるタイプの動詞の場合は、単数3人称から -e を除去し、-ij または -yj を付加 して作る。 ciągnąc 引く、の単数3人称は ciągnie であるので ciągni-ij となり、ciągnij となる。 ⑪ 語幹の接尾辞が -n で始まる動詞で、現在形、不定詞、命令形等には -n が現れるが、 過去形及びそれに関係する形では -n が現れない動詞の場合も同様である。 gasnąć 消える、の単数3人称は gaśnie であるので、gaśnij となる。但し、płynąć 泳 ぐ、の場合は、płyń となり、j が現れない。同様に、ginąć 死ぬ、の場合は giń とな り、j が現れない。 ⑫ 現在形と命令形のみに -n が現れ、その他には n が現れない動詞も、同様である。 paść 落ちる、の単数3人称は padnie であるので、padnij となる。 2)第二活用動詞 ① 語幹の接尾辞が -i/-y となるタイプの動詞は、単数3人称の語尾の -i を消去したも のが、命令形となる。但し、 ア、例えば、prosić 頼む、の場合、単数3人称は prosi であり、-i を消去すると proś と なる。この場合、単数3人称は本来は prosii であるが 前の -i は消去されるので、prosi となっている。そして、語尾の -i(後ろの i )を除去することにより prosi となるが、 綴り字の規則により proś となるのである。 イ、語幹の子音が口唇音( p, b, f, w, m )の場合は、軟音化が解除されることに注意す べきである。例えば、kupić 買う、の場合、単数3人称は kupi だが、本来は kupii で あり、-i を除去すると kupi となるはずである。しかし、そうはならず軟音化が解除さ れて kup となる。 ウ、また、第一活用動詞と同じく、語幹の子音が2つ以上連続する場合には -i を除去 動詞 297 した後に、-ij または -yj を付加する。例えば、kpić 嘲笑する、の場合、単数3人称は kpi であり、-i を除去した後は kp であり、それに -ij を付加すると kpij となるのである。 また、例えば、spać 眠る、の場合、単数3人称は śpi であり、命令形は śpij となる。 エ、現在語幹が母音で終わる場合には、-i を除去した後に、-j を付加する。例えば、stać 立っている、の場合、現在3人称単数形は stoi であるので、stój となる。この場合、o → ó 交替が起きることにも注意すべきである。なぜなら、閉音節の前の o は ó に母音交 替があるのが、原則だからである。 ② 語幹の接尾辞が -e となるタイプの動詞 ア、この動詞は、単数3人称の語尾の -i を除去したものが、命令形となるのが原則で ある。例えば、widzieć 見る、の場合、3人称単数は widzi であり、命令形は widź と なる。3人称単数は本来 widzii であるが、前の i は消失し、i となっているが、i を除 去すると widzi となり、末尾の -dzi は -dź となるからである。その他には siedzieć 腰 掛ける、がある( siedź となる)。 イ、語幹が硬化子音で終わる場合、現在単数3人称語尾が –y となり、それを除去した 形が命令形の基本形となる。例えば、milczeć 沈黙する、の場合の現在単数3人称は milczy となるので、命令形の基本形は milcz である。尚、例えば obejrzeć 見つめる、 の場合、現在3人称単数形は obejrzy であるので、obejrz となる。しかし、語幹の最後 が子音 j+子音 rz であり、母音を欠いているので下記のウ、のように obejrzyj としても 良い。 ウ、現在語幹が(子音+子音)で終わる場合は、-i/-y を除去した後に –ij/-yj を付加す る。例えば、zapomnieć 忘れる、の場合、現在3人称単数形は zapomni であり、その 命令形の基本形は zapomnij となる。 3)第三活用動詞 この場合は、複数3人称から ą を除去して作るので、比較的簡単である。例えば、 pytać 尋ねる、の場合、複数3人称は pytają であるので、命令形は pytaj となる。śmieć 思い切って~する、の場合、複数3人称は śmieją であるので、その命令形の基本形は śmiej となる。変則型第三活用動詞の umieć できる、も複数3人称の umieją から形成 され、umiej となる。 ただ、これには例外があり、それは mieć 持つ、である。mieć の複数3人称は mają であるが、その命令形は miej となる( maj とはならない)。また、zrozumieć 理解 する、の場合、その複数3人称は zrozumieją であるが、命令形は zrozum となる (zrozumiej とはならない)。wy に対する場合は、zrozumcie である。しかし、my に 対しては zrozumiejmy と原則通りになる。 ※ しかし、不完了体の rozumieć 理解する、は原則通り、rozumiej となる。 4.命令法の用法 命令法にはロシア語と同様に種々のものがあり、一つ目は ty に対するものや wy に 対するものであり、これは直接的な要求を1名あるいは2名以上の相手に対して行うも 298 動詞 のである。前者は命令法の基本形が使われ、後者は基本形に -cie を付加したものが使わ れるのは前述したとおりである。2つ目はある要求を行う際に自分を含める場合であり、 基本形に -my を付加したものが使われる。3つ目は遠回しに要求を行うものであり、 これには単数3人称を使うものと、複数3人称を使うものがある。いずれも助詞である niech を使い、現在形(完了体では未来形)の定形が使われる。この場合は相手に対し て行う場合と、それ以外のその場にいない第三者に向けられる場合がある。ロシア語に おいては niech に相当するのは пусть であるが、ポーランド語の niech はロシア語の пусть より使用される範囲が広いのである。niech を使った場合、相手に向けられる場 合は、目下の者が目上の者に対して依頼する場合に用いられる。これに対して、その場 にいない第三者に向けられる場合はそれには限られない。 1)命令法は未来に関することと関連性があり、体に関しては別の重要性が見られる。 ① 単純な行為を命令する場合には通常は完了体が用いられる。 また、 否定命令の場合は、 通常は不完了体が用いられる。 Powiedz mi coś. 私に何か言え(完了体)。 Nie mów tego. そんなことを言うな(不完了体)。 Nie myśl tylko o sobie, pomyśl także o innych! 自分のことばかり考えるな。他人の ことも考えろ(前者が不完了体になり、後者が完了体となる。)。 ② しかし、警告の意味を含んでいる場合には、否定命令でも完了体が用いられる。 Nie wypij moją herwatę! 私の紅茶を飲むな。 Nie zgub kluczy! 鍵をなくすな。 ③ 一方、行為に関する動詞の場合、行為の開始とか、あるいは既に行為が開始されて、 それを続けさせる場合には、不完了体が用いられる。 Proszę, pisz! どうぞ、書き始めて下さい。(行為の開始) Siedź, siedź! 座ってて、座ってて!(行為の継続) また、その要求が1回限りのものとか完成に至る行為に関することである場合には、 完了体が用いられ、その要求が一般的であったり、反復習慣的行為であったりする場合 には、不完了体が用いられる。 Napisz dzisiaj! 今日、書け。(1回限りのもの) Pisz często! しばしば書け。(反復習慣的な場合) ④ 否定命令文に関して不完了体が用いられるのは、否定の場合は、当該行為を一回限り ではなく、命令を発する時点以後、しばらく間禁止しようとする意図があるからである。 命令形の前に Nie を付けるのが通常であり、直接補語は否定生格となる。 Przeczytaj to. これを読め。Nie czytaj tego. これを読むな。 2)ty や wy に対するもの ① ロシア語では主語に相当する ты や вы を省略したが、これはポーランド語でも同 じで省略する。従って、肯定命令文では動詞の命令形は文の先頭に来る。 Przetłumasz ten list na język polski! この手紙をポーランド語に訳しなさい。 動詞 299 ② ただ、時に ty や wy を表す場合があるが、これらは強調するためである。 Ty czekaj na zewnątrz! 君、外で待て。 ③ 否定命令文では否定を表す Nie の後に、動詞の命令形を置く。 Nie kładź książki na biurku! その本を机の上に置かないように。 ④ 2人称に対する命令形は一般的に直接的であり、ぶっきらぼうであり、不作法な要求 となる。 ※ 移動に関する動詞は不完了体であるのが原則であり、 その場合の命令形は特殊である。 例えば、歩いて行く、という動詞は iść と chodzić があるが、定動詞である iść の命令 形の idź ! は、行け、という意味になり、不定動詞の chodzić の命令形の chodź! は、 来い、という意味になる。一方、chodźmy は一緒に来い、ではなく、一緒に行こう、 という意味になる。 また、移動の動詞に接頭辞が付いた場合は、定動詞の場合は完了体、不定動詞の場合 は不完了体になるが、完了体か不完了体かどうかは命令形においては意味の違いはほと んどない。意味の違いがあるのは、接頭辞に関してである。 Wejdź. 入れ。 Wyjdź jutro wcześnie z domu. 明日は早く家を出ろ。 Odeidź od drzwi. ドアから出て行け。 3)命令形はある事柄への態度を表す場合がある(譲歩、条件の意) Rób dla niej wszystko, a ona nawet nie zauważy. 彼女のためにあらゆることをして も、彼女は気づきもしない。 Pożycz mu pieniądze, a nie zobaczysz go więcej. 彼に金を貸したら、それ以後、彼を 見かけることはない(どこかへ行ってしまう。)。 4)助詞 niech を使用した命令文もある。この場合は、現在単数1人称、現在単数3人 称、現在複数3人称、等を用いる。この命令文は公式的な言い回しであり、pan, pani, państowo と共に用いられることが多い。すなわち、主語が必要となるのである。 ① 現在単数1人称の例 Niech ja to zrobię za cibie. あなたに代わってどうして私がしなければならないのか。 ② 現在単数3人称の例 丁寧な言い回しとなる Niech pan zdejmie kożuch どうかジャケットを脱いで下さい。. Niech Pan wejdzie! どうぞ入って下さい。 ③ 現在複数3人称の例 Niech państwo się nie śmieją. 他人を笑わせるな。 ④ のろいの意味を表す場合もある。 Niech go czort trafi. 悪魔が彼を連れて行くように。 ⑤ niech を使用した文では、pan 等の代わりに on や ona 等を主語として用いた場合 には3人称に対する命令表現となる。 Niech ona nic nie mówi. 彼女に何もしゃべらせないように。 300 動詞 Niech on pójdzie po pieniądzie do banku. 彼に銀行に行かせてお金を引き出させな さい。 Niech on czyta! 彼に読ませなさい。 ⑥ 願望を表すこともある。「~であれ、~であって欲しい」 Niech u ciebie wszystko w życiu jest dobrze! あなたの人生のすべてが順調にいきま すように! Niech jutro jest dobra pogoda! 明日天気になあれ! Niech cię Bóg broni! 神様があなたを守ってくれますように! 5)niech に pan 等を用いた文よりもさらに丁寧な命令文としては、niech の前に Proszę 等を付ける方法がある。 Proszę,niech pani tu nie pali. お願いですから、ここでたばこを吸わないで下さい。 もっと、丁寧な命令文としては Bardzo proszę, niech pan wejdzie. どうぞ、お入り下さい。 6)丁寧な命令に対しては Proszę を付けるが、この場合、動詞は不定詞で示す場合も ある。 Proszę położyć gazetę na stół. どうぞ、新聞を机の上に置いて下さい。 Proszę nie kłaść gazety na stół. どうぞ、新聞を机の上に置かないで下さい。 しかし、この用法は正式なものではない。ましてやぞんざいなものですらある。従っ て、今日の日常会話では敬遠される傾向にある。 7)敬称を用いたものであるが、命令法を使う場合もある。 Spróbujcie panie tego ciasta! そのケーキを試食してみて下さい(複数の女性に対し て)。 8)複数1人称を使った命令形 これは誘いを表し、「~しよう」という意味になる命令形である。動作の対象が相手 や第三者だけに向けられるだけではなく、話者自身も対象となるものである。 Chodźmy do parku. 公園へ行こう。 301 動詞 Ⅲ 仮定法 仮定法は動詞の法の1つで、願望、事実に反する事柄、目的、依頼、招待、提案等を 表す場合に使われるものである。 1.仮定法の形 1)ロシア語の仮定法は簡単であり、動詞の過去形に бы という助詞を挿入するだけで 形成される。これに対して、ポーランド語の場合も by という助詞を過去基本形に挿入 し、過去人称語尾に付加することにより作られる。ただ、異なるのはロシア語の場合は 助詞は別単語になるが、ポーランド語の場合はロシア語の бы に相当する by が個々の 単語に組み込まれてしまうことである。従って、ポーランド語の場合には慣れないと分 かりにくいと言える。 例えば pisać 書く、の場合は、pisał, pisała, pisało, pisali, pisały という過去基本形 に by を挿入し、それに1人称単数は -m,2人称単数は -ś 1人称複数は -śmy 2人称 複数は -ście を付加するのである。 単数 1人称 2人称 3人称 男性形 pisałbym pisałbyś pisałby 女性形 pisałabym pisałabyś pisałaby 複数 1人称 2人称 3人称 男性人間形 pisalibyśmy pisalibyście pisaliby 非男性人間形 pisałybyśmy pisałybyście pisałyby 中性形 pisałoby 多くは過去形に by を挿入するだけの形になっているが、単数1人称男性形及び2人 称男性形の場合は e がないと言うことに注意すべきである。もし、by を挿入するだけ であれば、pisałebym* pisałebyś* となるはずであるが、by の前の e がないのである。 2)少し複雑なのは代名詞や固有名詞を強調する場合には by + 過去人称語尾が分離す ることである。例えば、1人称単数では ja bym pisał となり、通常は一つの単語である pisałbym が分かれてしまうのである。従って、być の語幹である by の活用を把握し ておく必要がある。その活用は、 単数 複数 1人称 bym byśmy 2人称 byś byście 3人称 by by 3)しかし、もっと複雑なのは by + 過去人称語尾において、接続詞が最初に来るとそ れに付加されてしまうことである。例えば、gdy もし~、が最初に来ると、gdybym pisał 302 動詞 のようになるということである。 4)また、口語では別の単語が by を導くことがある。例えば、Bardzo bym chciał -. 私は~したいものだ、等である。 5)さらに、公式的な形ではないが、人称代名詞あるいは個人名と節で最初に始まる接 続詞があるときは、代名詞あるいは個人名が接続詞と by を分離してしまう。例えば、 gdy ja bym pisał となるのである。ただ、この場合、gdybym ja pisał としても良いし、 gdy ja pisałbym としても良い。 6)過去における願望や要求を表す場合は、仮定法の過去完了形が用いられる。仮定法 の過去完了形は być の過去形に助詞 by を挿入し、動詞の過去形を付け加えて作る。 czytać の場合は 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 byłbym czytał byłabym czytała bylibyśmy czytali byłybyśmy czytały 2人称 byłbyś czytał byłabyś czytała bylibyście czytali byłybyście czytały 3人称 byłby czytał byłaby czytała byłoby czytało byliby czytali byłyby czytały 7)また、あまり使われない形であるが、次のように by を本動詞に付けて、być の過 去形をその後に持ってくる形もある。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 czytałbym był czytałabym była czytalibyśmy byli czytałybyśmy były 2人称 czytałbyś był czytałabyś była czytalibyście byli czytałybyście były 3人称 czytałby był czytałaby była czytałoby było czytaliby byli czytałyby były 8)さらに、無人称構文を使った仮定法もある。それは、-no/ -to 構文や話法の助動詞を 使い、それに助詞の by を使って表すものである。その場合、助詞の by は分離するの が通常であるが、話法の助動詞の中には非分離のものもある。 Jeśli mamy czas, mówiono by takich rzeczy. 時間があれば、そのようなことが話さ れただろうに。 Trudniejszy, niż można by przypuszać. 人が予想しているよりも、難しい。 Trzeba by było wyjechać rano. 朝早く出発する必要があったのに。 Należałoby wyjechsć rano. 朝早く出発するべきだったのに。 2.仮定法の用法 ロシア語の仮定法は目的、願望、事実に反する事柄に言及する場合等に用いられたが、 この点はポーランド語も同様である。仮定法は、① 目的、② 願望、③ 仮想(現実では ないが何らかの条件が満たされれば実現が予想できる事実)、④ 譲歩、⑤ 比較、⑥ 結 果、⑦ その他の主観、等を表す。仮定法は、丁重な依頼、願望、穏やかな命令、提案、 憤慨、疑念、非難、断言、熟慮等、さらに様々な条件関係に用いられる、と一応言える であろう。 1) 単文で使われる場合 動詞 303 この場合は感嘆文、平叙文、疑問文でそれぞれ使われるが、by 構文のみの場合と、 話法の助動詞や述語内容詞、助詞の助けを借りて by 構文が形成される場合がある。 ① 感嘆文 Poszedłbyś do lekarza! 医者の所へ行きなさいよ。 Przestałbyś o tym mówić! そのことについて話すのをやめるべきだ。 Napisałbyś do matki! 母親に手紙を書くべきだ。 Bodajbyś kark skręcił! 君を破滅させることができるならなあ! ② 平叙文 Napiłbym się kawy. コーヒーを飲みたいのだが。 Nie chciałbym ci przeszkadzać. 僕は君を邪魔したくないのだが。 ③ 疑問文 Czybyś chciała póiść do teatru? あなたは劇場へ行きたいのですか。 Może byśmy tam poszli? 我々はそこへ行くべきだろうか? Kogo byś zaprosiła na kolację? 夕食に誰を招待するつもりですか。 ④ 無人称構文で使われる場合 Pracę skończono by wcześniej. より早くその仕事は終わっただろうに。 Można by spróbować. 試みることができただろうに.。 Kupić by to należało. それを買うべきだったのに。 ⑤ 単文の場合、その中に条件が含まれる場合がある。 W tej sytuacji nie poszedłbym do niej. このような場合には、私は彼女の所には行か ないだろう。 ⑥ 遠回しに言う命令文の場合も仮定法が使われる。 Mógłbyś mi trochę pomóc. あなたは私を少し助けてくれても良いのに。 Mógłabyś już skończyć makijaż. あなたはもう化粧を終えても良いのに。 ⑦ 願望を表す場合 żeby to się nie powtórzyło. 再びそのことが起きなければ良いのに。 Gdybyśmy tylko mieli więcej czasu! 我々にもっと時間があれば良いのに。 2)複文で使われる場合 この場合には通常は接続詞が使われる。そして、by 自体は接続詞に癒合する。接続 詞は従属文の先頭に置かれる。by 構文は条件節、譲歩節、結果節、目的節、様態節等、 様々な従属文を形成する。このような従属文で使われる接続詞には、 gdyby, jeśliby, jeżeliby, jakby, chybaby, byleby, aby, ażeby, by, żeby, choćby, chociażby 等がある。 ① 目的を表す場合 仮定法が使われる場合には目的を表す場合が多い。 副詞節で目的を表す場合に接続詞を使うが、前述したように助詞の by はその接続詞 に付加される。例えば、従属節を導く że に by が付加されると、従属節の主語に応じ て żebym żebyś żeby żebyśmy żebyście żeby となる。 304 動詞 Przygotuj wszystko do podróży, żebyśmy mogli wcześnie wyjechać. 我々が早く出発 できるように、旅行のためのすべての準備をしなさい。 Bardzo proszę mówić trochę głośniej, żeby wszyscy mogli słyszeć. 皆に聞こえるよ うに、もっと大きな声で話して下さい。 主語が主節と従属節で同じ場合には、従属文では不定詞が用いられる。従って、この 場合には仮定法が使われることはないが、便宜上、ここに例を挙げる。 Zarabiam, żeby kupić nowe pantofle. 私は新しい靴を買うために金を稼ぐ。 ② 願望を表す場合 Adam chce, żebym się nauczył polskiego. アダムは私がポーランド語を習うことを 望んでいる。 Adam chce, żebyś się nauczył polskiego. アダムはあなたがポーランド語を習うこと を望んでいる。 Adam chce, żeby John się nauczył polskiego. アダムはジョンがポーランド語を習う ことを望んでいる。 Adam chce, żebyśmy się nauczyli polskiego. アダムは我々がポーランド語を習うこ とを望んでいる。 Adam chce, żebyście się nauczyli polskiego. アダムはあなた方がポーランドを習う ことを望んでいる。 Adam chec, żeby się nauczyli polskiego. アダムは彼らがポーランド語を習うことを 望んでいる。 ③ 条件節 条件節は条件について言及するものである。これに使われる接続詞はロシア語は есль であったが、ポーランド語は jeśli, jeśliby, jeżliby, gdyby, jakby と様々である。ロシア 語においては主節においても従属節においても бы が使われたが、ポーランド語におい ては少し複雑で条件付けられる事象の実現性の度合いに応じて異なってくる。そして、 一般的には条件となるものが存在する可能性が高い場合には、接続詞は jeśli, jeśliby, jeżliby を使用し、存在する可能性が低い場合には、接続詞は gdyby, jakby を使う。 ア、まず、条件となるものが現実に存在する可能性が高く、それがあればその効果が生 み出されるであろう場合には、従属節、主節共に by 構文は用いられない。 Jeśli nie będę zajęty, pójdę do kina. もし忙しくなければ、映画に行く。 イ、次に、条件となるものが存在する可能性が低いが、存在すればその効果が生み出さ れるであろう場合には、従属節には by 構文を用い、主節には by 構文を用いない。 Gdybyś miał tę książkę, to mi ją poźycz. あなたがその本を持っているならば、私に 貸して下さい。 ウ、次に、条件となるものが現実に存在する可能性が高いが、それが存在したとしても その効果が生み出される可能性が低い場合には、従属文には by 構文を用いないが、主 文には by 構文を用いる。 動詞 305 Jeśli dziś nie pójdziemy, to byśmy jutro poszli. もし、我々が今日行かないなら、明 日行くかも知れない。 エ、難しいのは、両方とも by 構文を使う場合である。実現性が低い場合であり、従属 節、主節共に by 構文が用いられるのである。 この場合は2通りの解釈の仕方がある。例えば、 Gdybym nie był zajęty, poszedłbym do kina. の場合、ⅰ)もし私が忙しくなかった なら、映画に行くことができたのに、とⅱ)もし私が忙しくないなら、映画に行くだろ うに、とである。つまり、過去の意味と、現在の意味である。 この曖昧さを避けるためには次のような用法がある。 まず、過去の意味では、Gdybym nie był zajęty, byłbym poszedł do kina. としたり、 Gdyby nie to, że byłem zajęty, poszedłbym do kina.. とするのである。 現在の意味では、Gdyby nie to, że jestem zajęty, poszedłbym do kina. とする。 Gdybym miał czas, pojechałbym na urlop. 「私は暇があれば、休暇を過ごすのだが。」 あるいは、「私は暇があったら、休暇を過ごしたのだが。」という意味のどちらにも取 れる。そこで、その曖昧さを回避する方法としては、その他に副詞を使用したり、接続 詞の ale を挿入する方法がある。 現在の意味では、Gdybym dzisiaj miał czas, pojechałbym na urlop. 過去の意味では、Gdybym wtedy miał czas, pojechałbym na urlop. あるいは、現在の意味では、Pojechałbym na urlop, ale nie mam czas. 過去の意味では、Pojechłbym na urlop, ale nie miałem czas. オ、また、確実に過去の意味を表す場合には主節に być の過去形を使う方法もある。 例えば、 Gdybyśmy mieli pieniądze, kupilibyśmy samochód. 我々はお金を持っていれば、 車を買うのだが。 Gdybyśmy mieli pieniądze, bylibyśmy kupili samochód. 我々はお金を持っていた ら、車を買ったのだが。 ④ 譲歩節 これは期待される因果関係が生じないこと、すなわち譲歩節に述べられる要因が因果 関係の原理から当然期待される結果を引き起こさないことを表すものである。この場合 の使われる接続詞としては、choćby, chociażby が使われる。 Choćbyśmy mieli czas, nie obejrzelibyśmy tego film. 我々は時間があったとしても、 映画を見に行けないだろう。 Chociażbyś uuczył się od rana do nocy, nie zdałbyś egzamin. あなたは朝から晩まで 勉強したとしても、その試験に合格しないだろう。 ⑤ 比較節 これは非現実的同一性の関係を表すものである。接続詞は jakby や jak gdyby を使 う。 Zaczęłyśmy rozmawiać, jakby byłyśmy znajomi długo. 我々はまるで長年の友で あるかのように語り合い始めた。 306 動詞 Było tyle chmur, jakby chciało padać. まるであたかも雨が降るかの如く、雲がた くさんあった。 On wyglądał, jak gdyby był chory. 彼はまるで病気のようだった。 ⑥ 結果節 これは主文に述べられた事象から直接的に生じる結果を表すものである。この場合に 接続詞としては aby, by, żeby, ażeby が使われる。そして、主文には相関詞である za が 用いられる。 Woda jest za zimna, aby można się kąpać. 水が冷たいので、水浴びすることができ ない。 Woda była za zimna, aby można się było kąpać. 水が冷たかったので、水浴びするこ とができなかった。 ⑦ その他の主観を表す場合 イ、依頼を表す場合 On prosił, żeby kupiła ksiązkę. 彼は彼女に本を買ってくるように頼んだ。 ウ、提案を表す場合 Proponuję, żeby wziąli kilka dni urlopu. 私は彼らが数日間の休暇を取ることを提案 している。 エ、助言を表す場合 Adam radził nam, żebyśmy nie wychodzili z domu przy takiej pogodzie. アダムは 我々に、このような天気では外出しないようにアドバイスした。 オ、勧奨を表す場合 Maria zachęca, żeby Adam uczył się więcej. マリアはアダムにもっと勉強するよう に勧めている。 カ、許可を表す場合 Ojoiec pozwala synowi, palił w swoim pokoju. 父は息子に自分の部屋でタバコを吸 うことを許可している。 ク、必要、義務を表す場合 Wypada, aby nasza partia głosowała przeciwko ustawie. 我々の政党はその法案に 反対票を投ずるべきだ。 ケ、感想、思考等を否定した文や、懸念、憶測、不安等を表す文の場合 Nie myślę, aby przyjeździłeś. 私はあなたが来るだろうとは思わない。 Nie sądzę, żeby wygrała pierwszą nagrodę. 彼女が一位になるとは思えませんね。 Nie uważam, żeby padał deszcz. 雨が降るとは思えない。 Nie pamiętam, żeby ktoś mnie kochał dotychczas. 僕はこれまで誰かに愛されたと いう記憶がない。 Boję się, żeby syn zachorował. 息子が病気になりはしないかと心配である。 ※ 尚、 フランス語やイタリア語やスペイン語などにあるような接続法というものを特別 動詞 307 に取り上げる文法書もある。これは、希望・想像・疑惑などのような話者が単に頭の中 で考えたことを表す叙述法である。直説法が現実のもの、客観的な事実として表すのに 対するものである。しかし、ロマンス語においては特別の活用形式が認められるが、ロ シア語においてはこのような叙述法は特別には見あたらないし、ポ-ランド語において も動詞の活用形式として特別なものはない。従って、あえて取り上げる必要はなく、仮 定法として表せば十分であると考える。従って、本書では接続法というものを取り上げ ないことにする。 Ⅳ 直接話法・間接話法 1.直接話法とは、人の言葉や思想を、語られたり考えたりした形でそのまま伝える話 法である。ポーランド語において直接話法は、Nowak:".・・・・" のように話者の後 に : を入れて表す。一方、間接話法とは、人の言葉や思想を、語られたり考えたりした 形でそのまま伝えるのではなく、その内容を従属節に置き換えて伝える話法である。 直接話法 Nowak mówi : "Mój ojciec jest chory." ノヴァックは、「私の父は病気であ る。」と言う。 Nowak powiedzieł : " Mój ojciec jest chory. " ノヴァックは、「私の父は病気 である。」と言った。 間接話法 Nowak mówi, że mój ojciec jest chory. ノヴァックは、私の父は病気である、 と言う。 Nowak powiedzieł, że mój ojciec jest chory. ノヴァックは、私の父は病気で あったと言った。 英語と異なり、ロシア語と同じように間接話法の場合に、時制の一致は必要がない。 しかし、英語と同じように人称代名詞を変えることは必要である。 直接話法 Nowak powiedział: " Piszę list. " ノヴァックは「私は手紙を書いている」、 と言った。 間接話法 Nowak powiedział, że on pisze list. ノヴァックは手紙を書いていたと言った。 2.平叙文 平叙文では、上述したように直接話法を間接話法にする場合には、接続詞の że をコ ンマの後に入れる。 3.疑問文 しかし、疑問文では、接続詞の że は使わず、間接話法で使った czy や gdzie を そのまま使う。 直接話法 Nowak spytał : "Gdzie jest matka?" ノヴァックは「母はどこにいます か?」と尋ねた。 308 動詞 間接話法 Nowak spytał, gdzie jest matka. ノヴァックは母はどこにいるかを尋ねた。 直接話法 Nowak spytał : " Czy matka śpi? " ノヴァックは「母は眠っていますか?」 と尋ねた。 間接話法 Nowak spytał, czy matka śpi. ノヴァックは母は眠っているか尋ねた。 4.命令文 直接話法で要求などを表す場合、間接話法にするには、仮定法を使う必要が出て くる。従って、間接話法にする場合には żeby や、それから人称に応じて変化する変化 形を使って表す。 直接話法 Nowak powiedział : "Beignij szybko! " ノヴァックは速く走れ、と言った。 上の分を直接話法に直す場合、状況に応じて一応下記の3つの場合が考えられる。 間接話法 Nowak powiedział, żebym biegł szybko. ノヴァックは私に速く走るよ うに言った。 間接話法 Nowak powiedział, żebyś biegł szybko. ノヴァックは君に速く走るよう に言った。 間接話法 Nowak powiedział, żebyśmy biegł szybko. ノヴァックは私たちに速く 走るように言った。 動詞 309 第5節 動詞のアスペクト(体) Ⅰ 総説 ロシア語においては体として完了体、不完了体があったが、この点はポーランド語も 同じである。完了体と不完了体はペアをなしており、基本的にロシア語においては不完 了体に接頭辞を付加したものが、完了体となった。それはポーランド語においても同じ であり、例えば budować 建設する、の完了体は zbudować であり、czytać 読む、の完 了体は przeczytać である。 不完了体を完了体にする接頭辞としては z-, ze-, u-, prze-, po-, przy-, s-, od-, za-, wy-, na- 等がある。 また、ロシア語では不完了体と完了体のペアで、不完了体と完了体で語幹において接 尾辞を異にするものや語根自体を異にするものがあったが、この点もロシア語と同じで ある。 不完了体にはロシア語と同じく、現在、過去、未来の3つの時制があり、完了体には 過去、未来の2つの時制がある。それぞれニュアンスを異にし、状況場面に応じて使用 する動詞を使い分けなければならないが、どちらの動詞を使用するかはロシア語と同じ く難しい問題である。その場合、重要なのは過去形と未来形である。なぜなら、現在形 については不完了体の動詞しか使われないからである。ただ、どのような場合に現在形 を使うかを把握しておく必要がある。 そこでまず、それぞれの時制の基本的用法を述べ、その後に注意すべき用法について 言及する。 1.不完了体現在 1)基本的用法 ロシア語において、不完了体現在の基本的用法は、ア、発話時と同時進行する動作や 継続中の動作、イ、反復される動作、ウ、能力、エ、一般的真理・恒常的性質を表した。 この点についてもポーランド語はほぼ同じである。それぞれの例を示す。 ① 発話時と同時進行する動作や継続中の動作 Uczę się prawo. 私は法律を学んでいる。 Ojciec śpi. 父は眠っている。 Matka słuch radia. 母はラジオを聴いている。 Czytam książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読んでいる。 ② 反復される動作 Uczę się prawo codziennie. 私は毎日法律を学ぶ。 Czytam książkę języka polskiego codziennie. 私は毎日ポーランド語の本を読む。 ③ 能力 On mówi po polsku. 彼はポーランド語が話せる。 Mogę czytać książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読むことができる。 ④ 一般的真理・恒常的性質 310 動詞 Ziemia obraca się wоkоł Słоńса. 地球は大陽の回りを回る。 2)注意すべき用法 ① 事柄の最終段階 Kończę zaraz artykuł o was. あなたに関する記事を今最後の箇所を書いている所だ。 ② 決定的未来 Po pięciu miesiącach jadę do California. 5ヶ月後に私はカリフォルニアに行く。 ③ 一般的な依頼、命令 Proszę mówić po francusku. どうぞ、フランス語で話して下さい。 (Proszę powiedzieć to po francusku. どうぞ、それをフランス語で話して下さい、のよ うに具体的なものを示す場合には完了体になる。) 2.不完了体過去 1)基本的用法 ロシア語において、不完了体過去は、① 過去において進行中であったり、継続中であ ったりした事柄、② 過去において反復されたり、習慣となっていた事柄、③ 能力、④ 現 在と途切れている過去の事柄の有無の確認を表す。このうち、①②③は不完了体現在の 基本的用法の時制が変わっただけであり、④ が不完了体過去の特徴的な用法である。 ① Czytałem książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読んでいた(その時)。 ② Czytałem książkę języka polskiego każdego dnia. 私は毎日ポーランド語の本を読 んでいた。 ③ Mógłem czytać książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読むことができ た。(当時は、しかし、今はできない) ④ 現在と途切れている過去の事柄の有無の確認 Już zapełniałem ankietę. アンケートはもう記入しました。=この文はアンケートを 記入したという行為があったというだけで、現在の状態については何も表すことが ないのである。 Ta książka podobała mi się.(その当時)私はこの本が気に入っていた。 Gdzieś spotokaliśmy się. どこかであったことがありますね。 Czy czytałeś powieść Tołstoja? トルストイの小説を読んだことがありますか? Tak, czytałem. はい、読んだことがあります。 2)注意すべき用法 ① 遂行途上であった過去の出来事 Lipiec kończył się. 7月も終わりに近づいていた。 ② 結果が無に帰した過去の出来事 Otwierałem okno. 僕が窓を開けたけれど(今は閉まっている。)。 来るー帰る、開けるー閉めるのように逆方向の動作が起こりうる意味を持つ動詞の不 完了体過去は結果が存続せず、反対の状況に成っていることを示すのである。 ③ 過去未来を表す用法 言語によっては過去未来を表す特別な形を持っているものがあるが(例えば、スペイ 動詞 311 ン語)、ポーランド語はロシア語と同じく過去未来形を持たないため、不完了体過去を 使って過去未来を表すことがある。 Poszliśmy do przyjaciela, który szedł do szpitala następngo dnia. 我々は翌日入院す ることになっていた友人の所へ行った。 ④ 平行して行われる動作及び変化しない状況を表す場合 Jedłem chleb i czytałem gazetę. 私はパンを食べながら新聞を読んでいた。 Było gorąco. Matka słuchała radia, a ojciec czytał książkę. 暑い日だった。母はラジ オを聴き、父は本を読んでいた。 3.不完了体未来 1)基本的用法 ロシア語において、不完了体未来は、① 現在の動作と直接関係を持たない未来の個別 的動作そのものの存在や、② 未来における継続的・反復的動作の存在を表したり、③ 予 定やこれから着手する動作を表す。 ① 現在の動作と直接関係を持たない未来の個別的動作そのものの存在 Jutro będę czytał w domu. 明日、私は家で読書をするつもりだ。=未来における動作 の存在を表しているが、現在の動作とは全く関係がないものである。 Będę czytał książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読むつもりだ。(過 程に重点) ② 未来における継続的・反復的動作の存在 On będzie poprawiał twoje błądy. 彼があなたの間違いを直していくことになる。 Będę czytał książkę języka polskiego codziennie.私はこれから毎日ポーランド語の 本を読むつもりだ。 ③ 予定やこれから着手する動作 On będzie rozstrzygał zadanie. 彼はこれから問題に取りかかる。 2)注意すべき用法 条件提示の未来形 Jeśli będziesz otwiera okno, musisz przesuwać kwiat. もし窓を開けるなら、花を移 動させなければならない。 4.完了体未来 1)基本的用法 ロシア語において、完了体未来(形としては現在形)は、① 個別的動作が未来におい て起こることを示す場合、② 個別的動作が完成され、結果に至ることに視点をあてた表 現をいう場合、に用いられた。ポーランド語においてもほぼ同様である。 ① 個別的動作が未来において起こることを示す場合 経過には注意を向けない場合で ある。未来において1回行われる動作である。 Po kolacji obejrzę w telewizji twój film.夕食後、君の映画をテレビで見るつもりだ(現 在の動作とは関係を有している。)。 312 動詞 Zaraz zrobię śniadanie. 私はすぐに朝食を取るつもりだ。 Przeczytam jutro książkę języka polskiego o Chopine. 私は明日ショパンに関する ポーランド語の本を読む(完了体未来)。 ② 個別的動作が完成され、 結果に至ることに視点をあてた表現の場合 経過には注意を 向けない場合である。 Jutro przeczytam powieść, "Wojna i pokój”. 明日は「戦争と平和」を読んでしまう。 Adam napisze list. アダムは手紙を書いてしまう。 Przeczytam książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読んでしまっている だろう。 2)注意すべき用法 ① 可能、 不可能を表す場合 この場合、 動作を一つの可能性として表現するものであり、 未来形、不定詞以外では現れないことに注意すべきである。 On nie zda egzamin. 彼は試験に受からない。 On zawsze pomoże nam. 彼は常に我々を助けてくれる。 (この場合、zawsze が使 われているので、完了体はおかしいと思うかも知れないが、動作を一つの可能性と して示すものであるので、このような副詞が使われても不思議ではない。) ② 現在における反復・習慣 反復される動作を完了体の未来形で表すことができる。これは反復される動作を取り 出し、印象的に描写する用法である。 Zwykle rano wstam około pięciu, zjem śniadanie, a przeczytam książkę. 通常、朝は 早く5時頃起きて、朝食を取り、読書をする。 ③ 過去における反復・習慣 過去における反復的・習慣的事項は通常不完了体過去によって表される。完了体未来 がこの意味でも用いられるのは、過去の事柄であることがはっきりしている文脈におい てである。その中で、反復される動きの一つを取り出し、例示し、描写に精彩を与えよ うとする時に用いられると言えよう。 5.完了体過去 1)基本的用法 ロシア語において、完了体過去は、ア、完成され、結果に至った動作、イ、結果の現 在への残存、ウ、過去の特定の出来事の叙述、に使用される。 ア、完成され、結果に至った動作 Wszoraj przeczytał intersującą powieść. 彼は昨日興味ある小説を読み終えた。 Przeczytałem książkę języka polskiego. 私はポーランド語の本を読んでしまった。 (読み終わった。) イ、結果の現在への残存 Ona zdała egzamin. 彼女は試験に合格した。 Zgbiłem swoją książki. 私は自分の本をなくし、その結果、それは今手元にない、と いう意味 動詞 313 ウ、過去の特定の出来事の叙述 Przedwszoraj wstałem o wpół do szóstej, wykąpałem się i poszłem do kina. 一昨日、 僕は午前5時30分に起床し、風呂に入り、それから映画に出かけた。 Wczoraj wstałem o siódma przed południem, przeczytałem książkę języka polskiego. 昨日私は午前7時に起き、ポーランド語の本を読んだ。 エ、否定文では試みたが、できなかった、という意味になる場合がある。 Nic nie zrobiał. 彼はやろうとしたが、できなかった。(これに対して、不完了体を用 いると Nic nie robiał. 彼はやろうとすることすらしなかった、」というニュアンス になる。) 2)注意すべき用法 ア、継続する動作 Napisałem list za trzy godiny. 私は3時間かかってその手紙を書き上げた。 完了体過去も継続する動作を表すことがあるが、その場合には完成したことを強調す ることに主眼が置かれると言えよう。 Przestałem całe przedstawienie. 私はショーの間ずーと立っていた。 イ、想定・予定 Jeśli on nie powrócił, my ginęliśmy. 彼が帰ってこなかったら、我々は破滅だ。 悪いことを想定する場合に、完了体過去形を使う場合がある。 ウ、連続する行為を表す時は完了形過去形を使う。 Wróciłem do domu, umyłem się, a zjadłem kolację. 私は家に帰り、手を洗い、夕食 を取った。 エ、累積した行為 Ona wypiła całą butelkę wina i zjadła całe mięso. 彼女はボトルのワインを全部飲み 干し、全部の肉を食べた。 Ⅱ 不完了体、完了体においてそれぞれ用いられる副詞 完了体、不完了体は上述のように意味が異なるのであるから、それに相応して用いら れる副詞も自ずと決まってくる。そこで、一般的に不完了体、完了体で用いられる副詞 を以下に述べる。 1.不完了体で主に用いられる副詞・副詞句 często しばしば ciągle 絶えず dzisiaj 今日 zawsze 常に czasem 時々 rzadko め ったに zwykle 通常は od czasu do czasu 時々 codziennie 毎日 co rok 毎年 całymi tygodniami 毎週 nigdy nie 決してーしない nieraz 何度も każdego dnia 毎日 teraz 今 zwyczajnie 普通は wciąż 絶え間なく 2.完了体で主に用いられる副詞・副詞句 dopiero co たった今 nagle 突然 nareszcie とうとう natychmiast すぐに niechąc 意図的でなく wreszcie とうとう nieoczekiwanie 予期せずに wkrótce まもなく 314 動詞 zaraz すぐに znowu 再び ※ しかし、1.2.のそれぞれの副詞は絶対的なものではなく、文脈によっては逆の場 合に用いられることがある。例えば、od czasu do czasu の場合、通常は不完了体で用 いられるのであるが、反復・習慣に関することで1回ごとに完結する場合には、完了体 になる。 Od czasu do czasu on kupi książkę. しばしば、彼は本を購入する。 3.両者で用いられる副詞 どちらになるかは文脈による 1)już 既に Kiedy poszedł do parku, dzieci już grały w pilkę nożną. 彼が公園に行った時、子供 達は既にサッカーをしていた(始めていた)。 Kiedy poszedł do parku, dzieci już skończyły grać w pilkę nożną. 彼が公園に行った 時、子供達は既にサッカーを終えていた。 2)właśnie 丁度 Właśnie przyjechała, kiedy zadzwonił telefon. 電話が鳴った時、彼女は丁度到着した。 Właśnie uczyłam się do egzaminu, kiedy zadzwonił telefon. 電話が鳴った時、私は 丁度試験のための勉強をしていた。 Ⅲ 動作相と不完了体、完了体 ロシア語と同じように開始や終了を表す動詞のあとの不定詞には、原則として不完了 体を用いる。開始や終了を表す動詞が、不完了体でも完了体であってもである。そのよ うな動詞には zacząć, zaczynać 始める、kończyć, skończyć 終える、przestać, przestawać やめる、kontynuować 続ける(この動詞は不完了体のみであり、対応の完 了体動詞を持たないことに注意)、等がある。このような場合に不完了体が使われるの は、何らかの行為を開始したり、終了したりする場合には既に進行中の動作の領域に入 っているからである。つまり、行為が完了していれば、開始するとか終了するとかは考 えられないので完了体は用いられないのである。 Zwykle zaczynam się uczyć shiszpańskiego rano. 通常、私は朝からスペイン語の勉 強を始める。 Zaczęłem się uczyć hiszpańskiego wczoraj rano. 私は昨日の朝、スペイン語の勉強を 始めた。 Własnie kończę czytać tę książkę. 丁度その本を読み終わるところである。 Nareszcie skończyłem czytać tę książkę. とうとう私はその本を読み終わった。 On przestał palić nagle. 彼は突然タバコをやめた。 Ⅳ 命令法における体の用法 これもほぼロシア語と同じである。 動詞 315 1.否定詞を伴わない場合 1)一般的には、動作を完結することを命令する場合には完了体命令形、動作の過程に 重点を置いて命令する場合には不完了体命令形が使われる。また、1回の動作を命令す る場合には完了体命令形、複数回の動作を命令する場合には不完了体命令形が使われる。 さらに、一般的な動作を命令する場合には不完了体命令形が使われる。これらは、命令 形特有のものではなく、上述した動詞の完了体・不完了体の用法で説明が付くであろう。 Proszę mówić po rosyjsku. ロシア語で言って下さい。 具体的なことに関して命令する場合には、完了体を使う。 Proszę powiedzieć to po rosyjsku. それをロシア語で言って下さい。 命令形で注意すべき用法は、まず、動作への着手を命令する場合は不完了体命令形が使 われることである。例えば、Proszę, czytaj! どうぞ、読んで下さい、Siedź, siedź! 座っ て、座って、である。 2)不完了体命令形を使うと一般にぞんざいな感じになるのもロシア語と同じである。 Idź stąd! ここから出よ。 2.否定詞を伴う場合 1) 一般的には不完了体が使われる。1回の動作が念頭に置かれようが、複数回の動作 が念頭に置かれていようが、過程としての動作が念頭に置かれていようが、不完了体が 使われる。 Nie mów tego.そんなことを言うな。 2)しかし、望ましくない動作が偶然に行われてしまう可能性に対して、警告を発した り、注意を喚起したりする場合には、完了体命令形が使われる。 Nie zjedz tego! それを食べてはいけない!(何か悪いことが起きる可能性があること を含めている。) Nie zgub kluczy! 鍵をなくすな。 Ⅴ 無人称述語と体 czas や pora 等の無人称述語の後は、動詞の不定詞が続くが、その動詞は不完了体が 使われる。 Już czas wracać. もう帰る時間です。 Kwiaty warto kupować na rynku. 花は市場で購入する価値がある。 また、chcieć, woleć 等の助動詞の後に続く動詞の不定詞も原則として不完了体である。 On musi się uczyć polskiego. 彼はポーランド語を勉強をしなければならない。 しかし、短時間で完成する行為を強調する場合には完了体が使われる。 On musi się nauczyć tego wiersza na pamięć. 彼はその詩を暗記しなければならな い。 316 動詞 Ⅵ 節と体 kiedy ~した時、podczas gdy ~の間に、zanim ~の前に、aż ~するまで、dopóki ~する限り、等の接続詞を使って複文を構成する場合に、各動詞の体がどちらになる かという問題がある。基本的には以下の様に考えるべきである。 1.同時に行なわれている動作や起こっている事象を記述するには原則として両動詞と も不完了体を用いるべきである。 Podczas gdy chodził po lesie, myślał o dzieciach. 彼は森の周りを歩きながら、子供達 のことを考えていた。 Kiedy ona żyje w stresie, on jem dobrze. 彼女はストレスが貯まっている時は、良く 食べる。 2.一方、一つの事象が原因となり、次の事象を引き起こす時は両方とも動詞は完了体 となる。 Cieszyłem się, kiedy spotkał się z przyjacielem. 私は友人に会えてうれしかった。 Wykąpię się pod przynicem, jak wrócę. 私は帰ると、シャワーを浴びるつもりだ。 3.zanim ~の前に zanim ~の前に、は時を表す接続詞であり、後時性を有する接続詞である。二つの行 為や出来事を結びつけ、zanim を含む従属文の陳述内容が主文の陳述内容に続くもので ある。そして、zanim で導かれた動詞は完了体となるが、主文の陳述内容たる動詞は不 完了体のことも完了体のこともある。 Zastanów się dobrze, zanim odpowiesz. 答える前に良く考えなさい。 Zanim dotarł do domu, zrobiło się ciemno. 彼が家に着く前に、辺りは暗くなった。 4.aż や dopóki nie ~するまで 同様にこれらに導かれた動詞は完了体となるが、主文の陳述内容たる動詞は不完了体 のことも完了体のこともある。 Poczekaj, aż zadzwonię. 私が呼ぶまで、待ちなさい。 Dopóki nie wyszła za mąż, mieszkała z rodzicami. 彼女は結婚するまで、 両親と住ん でいた。 Ⅶ 形態面でのアプローチ 1.接頭辞により不完了体から完了体を形成するもの 一般的にいって基本となる動詞は不完了体が通常である。これはロシア語と同じであ り、例えば、czytać, grać, pisać, robić 等は不完了体である。もっとも、基本的な動詞が 完了体である場合もある。例えば、dać 与える、kupić 買う、等であるが、それらの動 動詞 317 詞の不定形は -ić/ -yć で終わるものが多い。そして、それと対をなす不完了体は活用形 式が異なるものが多いのも、ロシア語と同じである。 基本となる動詞は不完了体が多いのであるが、それと対をなす完了体は不完了体に接 頭辞を付加することにより作られるのもロシア語と類似している。ロシア語の場合はそ の接頭辞は по や на 、при 等であった。ポーランド語のそれらを挙げると、 prze-, z-, za-, po-, u-, wy-, o-, na-, 等である。これらの場合、当然ながら活用形式も不完 了体、完了体とも同じである。それぞれ代表的な動詞を以下に示す。 不完了体を完了体にする接頭辞の主なもの 1)przeczytać 読む → przeczytać、analizować 分析する → przeanalizować、 ćwieczyć 実行する → przećwiczyć、farbować 染める → przefarbować 2)z- あるいは s- 有声子音の前では z- となり、無声子音の前では s- となるのが原 則である。 budować 建てる → zbudować、kończyć 終える → skończyć、robić する → zrobić、 rozumieć 理解する → zrozumieć、tracić 失う → stracić 3)zaczekać 期待する・待つ → zaczekać、pytać 尋ねる → zapytać、 prowadzić もたらす → zaprowadzić、śpiewać 歌う → zaśpiewać straszyć 驚かす → zastraszyć 4)pocałować キスをする → pocałować、jechać 車で行く → pojechać 5)uczynić する → uczynić、gotować 料理する → ugotować、myć 洗う → umyć、 słyszeć 聞く → usłyszeć 6)wyemigrować 移住する → wyemigrować、pić 飲む → wypić、 kąpać 入浴する → wykąpać 7)ogolić się ひげを剃る → ogolić się 8)napisać 書く → napisać、uczyć 教える → nauczyć 2.接尾辞の交替や縮約により不完了体から完了体を形成するもの 次にロシア語でよく見られた完了体・不完了体のペアでは元の完了体に対して接尾辞 を交替させたり、追加するものがあった。例えば、иэучить 学ぶ(完了体) → иэучать (不完了体)、 дать 与える(完了体)→ давать(不完了体)等である。ポーランド 語にも同様のものがあるが、もう少し複雑であるので場合を分けて記載する。 1)不完了体の語幹が縮約したり、変更したりして完了体が形成される場合(活用形式 318 動詞 が異なるのが通常である。) ① 不完了体の -a- が除去される動詞の例 この場合、不完了体は第三活用であるが、 完了体は第二活用になる。 oceniać 評価する → ocenić、oprawiać 組み立てる → oprawić、wstawiać 置く → wstawić、odbijać 反映する → odbić、popełniać 犯す → popełnić、 potępiać 非難する → potępić ② 不完了体の語幹の最後の -yna- が -ą- に縮約する動詞の例 この場合、不完了体は 第三活用であるが、完了体は第一活用になる。 zaczynać 始める → zacząć、 ③ 不完了体の語幹の最後の -cze- が -kną- に変更する動詞の例 この場合、不完了体 は第二活用であるが、完了体は第一活用になる。 krzyczeć 叫ぶ → krzyknąć ④ 不完了体の語幹の最後の -owa- が -i- に縮約される例 この場合、不完了体は第一 活用であるが、完了体は第二活用になる。 kupować 買う → kupić ⑤ 不完了体の語幹の最後の -ywa- が -y- に縮約される例 この場合、不完了体は第三 活用であるが、完了体は第一活用になる。 zdobywać 達成する → zdobyć ⑥ 不完了体の語幹の最後の -ywa- が -ą- に縮約される例 この場合、不完了体は第三 活用であるが、完了体は第一活用になる。 odpoczywać 休む → odpocząć 2)不完了体と完了体の語幹の最後が同じであり、完了体の方が音節が少ない場合(活 用形式は同じで場合と、異なる場合がある。) ① 不完了体から -aw- が除去される例 dawać 与える(第一活用)→ dać(第三活用)、dostawać 得る(第一活用)→ dostać (第一活用)、wstawać 起きる(第一活用)→ wstać(第一活用)、poznawać 知 り合いになる(第一活用)→ poznać(第三活用) ② 不完了体から -yw- が除去される例 この場合は、すべて不完了体は第一活用である が、完了体は第三活用である。 otrzymywać 受け取る → otrzymać、obiecywać 約束する → obiecać、darowywać 与える → darować、dogadywać 同意する → dogadać、dokonywać 実行する → dokonać 、nagrywać 記録する → nagrać 、wskazywać 示す → wskazać、 rozwiązywać 解散する → rozwiązać ③ 特殊な例 spotykać się 会う → spotkać się(-y- が除去される。両者とも第三活用である。)、 ubierać się 服を着る(第三活用)→ ubrać się(-ie- が除去される。完了体は第一活 用である。)、zasypiać 寝過ごす(第三活用)→ zaspać(-y- と -i- が除去される。 完了体は第一活用である。) 3)不完了体は -ać で終わる動詞が多いが、それに対する完了体は -ić/ -yć, -eć, -ąć で 動詞 319 終わる動詞になることがかなりある。それらの例を示すと、 ① -ać が --ić/ -yć となる動詞 この場合は、不完了体は第三活用であるが、完了体は第 二活用である。この場合は、語根の母音が交替することもある程度ある。 dokuczać 悩ます → dokuczyć、 otwierać 開く → otworzyć、 powtarzać 繰り返す → powtórzyć、przeprowadzać 動かす → przeprowadzić、wracać 帰る → wrócić、 zapraszać 招待する → zaprosić、zwiedzać 小旅行をする → zwiedzić、odwiedzać 旅行する → odwiedzić、podpalić 放火する → podpalać、porzucać 捨てる → porzucić、dołączać 加わる → dołączyć ② -ać が -eć となる動詞 zapominać 忘れる(第三活用)→ zapomnieć(第二活用)、opowiadać 言う(第三 活用)→ opowiedzieć(変則的な第三活用) ③ -ać が -ąć となる動詞 この場合、不完了体は第三活用であるが、完了体は第一活用 である。 zamykać 閉める → zamknąć、 domykać 閉める → domknąć、 łupać 分裂させる → łupnąć、napinać 伸ばす → napiąć 3.接頭辞の付加により不完了体から完了体を形成するもの ロシア語においてみられたことであるが、接頭辞を付加した場合に、対応の不完了体 を完了体にすると同時に、その完了体に別の意味を付加することがあった。例えば、 писать 書く、の場合、до- を付加し、дописать となると「手紙を書き上げる」、とい う意味になった。このようなことはポーランド語においても見られる。 その例は、mówić 言う、が、namówić 説得する、odmówić 拒否する、omówić 話 し合う、przemówić スピーチをする、umówić アレンジする wymówić 発音する zamówić 注文する、となることである。mówić 以外はすべて完了体である。 尚、その場合の接頭辞はほとんどが前置詞由来である。従って、接頭辞が付加された 動詞はその前置詞の意味と関係が深いのが通常であるが、それから変容した意味になる こともある。以下は、接頭辞別に接頭辞が付加されて完了体になる例を示す。括弧内は 由来する不完了体である。 ※ もっとも、別の意味を付加すると言っても、1.のような単に不完了体を完了体にす る場合と区別が難しいことも生じる。また、常に対応のものが不完了体であるばかりで はなく、完了体であり、それに接頭辞が付加されて別の意味の完了体が形成されること もある。従って、以下ではこれらも含めて、記載する。 1)do 追加、目的、達成、適応、完成等を表す。起源はラテン語の ad- である。 ① 目的とするものへの達成や完成 doczekać 楽しみに待つ ( czekać 期待する) dogonić 追いつく ( gonić 追う) dogotować きちんと料理する ( gotować 準備する) dograć 多重録音する ( grać 遊ぶ) dokończyć ~し終える ( kończyć 終える) 320 動詞 doprowadzić ~へと導く ( prowadzić もたらす) dojeść 食べ終える ( jeść 食べる) dobrać 選択する・より多くの物を得る( brać 得る) dołączyć くっつく ( łączyć 加わる・結ぶ) dobudować 完成する( budować 建設する) dojść 到着する ( iść 行く) dokopać 掘り終える( kopać 掘る) dokroić 切り終える ( kroić 切る) dogadać 同意に達する・合意する ( gadać おしゃべりをする) doliczyć 数え上げる ( liczyć 数える、から) doświadczyć 経験する ( świadczyć 与える・示す) ② あるものを追加すること dopłacić 余分に払う ( płacić 払う ) dorobić 余分に作る ( robić 作る ) dołożyć 加える( łożyć 提供する) dosolić さらに塩を加える(solić 塩を加える) dopisać 書き込む( pisać 書く) dosypać (多少)加える( sypać 入れる・注ぐ) dopieprzyć こしょうを加える( pieprzyć こしょうをかける) ③ 適応を示すこと dofinasować 支援する( finansować 資金を提供する) dowartościować 元気づける( wartościować 判定を下す) dorównać 対等になる( równać 平らにする) dostosować 合わせる( stosować 適用する) dopasować うまく合わせる( pasować 合わせる) 2)na 結果の完成、ある方向への動き、中への動き、物の表面で行われる動作、形成 される状態、十分に行われる動作、満足感等を表す。結果が継続する整然とした行為を 表すこともある。 ① 結果が完成することを表す nauczyć się 勉強する( uczyć się 学習する) namalować 描き切る・描写する( malować 描く) napracować się 一生懸命働く( pracować się 働く) nabić 詰め込む( bić 打つ・殴る) nabrać 取り上げる・~をすくい上げて入れる( brać 取る) nagrzać 暖める( grzać 熱を与える) najechać 走って入る・侵入する( jechać 車で行く) ② 物の表面で行われる動作、形成される状態 この場合、単に不完了体を完了体にする ニュアンスしかない場合もあり、その区別は難しいことが多い。 nakleić 表面に貼り付ける( kleić は貼り付ける) 動詞 321 napłynąć 流れ込む・流入する( płynąć 泳ぐ) namówić 誘導する( mówić 言う) nagromadzić 積み上げる( gromdzić 蓄える) nałożyć(表面に)置く( łożyć 置く) nacisnąć (表面を)押す( cisnąć 押す) ③ 十分に行われる動作、満足感を表す この場合は、się を伴う najeść się たらふく食べる naczytać się 思う存分読む napić się 十分飲む nasłuchać się 十分に聞く 3)nad 「上方に」、「表面的に」、「部分的に」、を表したり、「余分な」あるいは 「過剰な力を行使する」意味を表す。 ① 接近、上方に、表面的に、部分的に、等を表す nadgryźć かじり取る・咬み切る( gryźć 咬む) nadpić ちびりちびり飲む( pić 飲む) nadejść 近づく( iść 行く) nadrobić 埋め合わせる( robić から) ② 余分な、あるいは過剰な力を行使する nadużyć 濫用する( użyć 使う) nadrobić 補う・埋め合わせる( robić ~をする) nadpłacić 払いすぎる( płacić 払う) 4)o あるいは ob ① 周囲への動き、完全な動き、下方への動き、分離等を表す obciąć 短くする( ciąć 切る) obdarzyć 付与する( darzyć 与える) obejść 回りを歩く・歩き回る( iść 歩く) obejrzeć 回りを見渡す oberwać 引きちぎる( rwać 裂く) obmyć 洗い流す( myć 洗う) obrzucić 投げつける ( rzucić 投げる=但し、 この場合は rzucić 自体が完了体である) omotać 縛る・包む( motać 巻く) opisać 描写する・回りに境界線を引く( pisać 書く) opłynąć ~を周航する( płynąć 泳ぐ) opracować 念入りに作る( pracować 働く) ograć 勝つ( grać 遊ぶ) ograbić こっそり盗む( grabić かき集める) osadzić ~の周囲に植え付ける( sadzić 植える) ② 真実からそらす意味を含ませる oszukać 騙す( szukać 探す) okłamać うそを付く( kłamać うそを付く) 5)od 退去、分離、逸脱、返却、再生、償い、回復等を表す ロシア語の от に類似し 322 動詞 ているが、それとは異なる意味もある。 ① 不十分な行為の遂行 odbębnić しくじる( dębnić(太鼓などを)たたく) ② 再生、回復、等を表す odbudować 再建する( budować 建てる) odbyć ~を果たす( być いる) odciąć 切り取る( ciąć 切る) odejść 出発する( iść 行く) odkurzyć ほこりを取る( kurzyć ほこりを立てる) ③ 反作用を示す odmówić 拒否する( mówić 話す) odrzucić 拒絶する(rzucić 投げる=ただ、この場合は rzucić 自体が完了体である) odmrozić 解凍する( mrozić 凍らせる) odsyłać 返送する odwołać 呼び戻す・解雇する( wołać 呼ぶ) odwrócić 向きを変える( wrócić 帰る) ④ 除去を表す odsypać ~に注ぎ出す( sypać 注ぐ) odwlec ~を引き抜く( wlec ~を引く) odjechć 立ち去る( jechać 行く) odłamać 折り取る( łamać 折る) odciąć 切り取る( ciąć 切る) 6)po 主として不完了体を完了体にする機能を有するが、動詞によってはそれのみなら ず「少し」という意味を付加する機能も有する。 また、「~になる」という意味を付加す る場合もある。 ① 不完了体を完了体にする。 ② 「少し~する」の意味を付加する。 poczekać 少し待つ pograć 少し遊ぶ poleżeć 少し横たわる ③ 「~になる」という意味を付加する。 polubić ~が好きになる( lubić 好きである) porozumieć się(話し合って)合意に達する( rozumieć się 合意する) poznać ~を知るようになる( znać 知る) poweseleć 元気になる( weseleć 元気である) 7)pod 下から、軽微、接近、内密の、支持、等の意味を表す ① 下に関係する podłożyć 下に置く( łożyć 自体は「費用を負担する、~に備える」、等の意味であ る。) podpisać サインをする( pisać 書く) ② 質を下げる行為とか、いかがわしい行為に関係したり、不法行為に関係する。 動詞 323 podpatrzeć スパイをする( patrzeć 見る) podburzyć 煽り立てる( burzyć 破壊する) podjudzać(悪い方向へ)唆す=しかし、これ自体は不完了体である。 podjeść こっそりと食べる ( jeść 食べる) ③ 上への運動(下から、という意味から上への動きに転用される。) podskoczyć 立ち上がる( skoczyć 急に動く=しかし、これ自体は完了体である) podnieść 下から上へ上げる( nieść 運ぶ) ④ 下から支える podeprzeć 支持する( przeć 押す) ⑤ 近づく podjechać 近づく( jechać 行く) 8)prze- ~を通って、最後まで、新たに、すっかり、過度に、変化、等の意味を表す ① 変化を表す przebrać 着替えをさせる( brać 取る) przekształcić 作り直す( kształcić 養成する) przetłumaczyć 翻訳する( tłumaczyć 通訳する) ② 過度に przechwalić 過度に褒める( chwalić 褒める) przeciąć 切り通す( ciąć 切る) przejrzeć 見通す przemoknąć びっしょりとなる( moknąć 濡れる) ③ 最後まで、継続する。 przeczytać 読み通す( czytać 読む) przespać 眠り続ける( przejść 通過する( iść 行く) przeżyć 生き残る( żyć 生きる) ④ ~を越えて przekroczyć 越える( kroczyć 大股で歩く) przelecieć ~を越えて飛行する( lecieć 飛ぶ) ⑤ 新たに~する przepisać 複写する( pisać 書く) ⑥ 予期しない結果をもたらす przegrać 負ける przerwać 中断する・さえぎる 9)przed ~の前に、正面に przedłożyć 提出する( łożyć 備える) przedstawić 導入する・示す( stawić 置く) wyprzedzić ~を凌駕する この場合の przed は動詞の一部として、別の接頭辞の後 324 動詞 に付くものである。 10)przy- ~のそばに、到達、接近、連結 ① 結びつきを表す przybić 釘で留める bić は「打つ」であるが、przy- という接頭辞が付くと特殊な意 味になる。 przybrać 受け取る przyjąć 受け取る przypiąć 画鋲で留める ② 接近・到着を表す przybliżyć 近づく przygotować 準備する( gotować の場合は、食事の準備に限るが、przygotować の 場合は、不完了体を完了体にするとともに意味が拡張される) przyjść 来る przybić 到着する przyjechać 車などで到着する przystąpić 近づく przypiec パンを焼く(piec 焼く)przypisać ~に割り当てる przywitać 歓迎する( witać も「歓迎する」という意味であり、これは不完了体で あるので、この場合は接頭辞の przy- は単に完了体にするにすぎない) 11)roz- 様々な方向へ、破壊、膨張、散乱 ① 様々な方向へ rozbić 粉砕する・やっつける( bić 打つ) rozejść się 分散する( iść 行く) rozdzielić 分割する(この場合は単に不完了体の dzielić を完了体にするにすぎな い。) rozłamać バラバラになる rozłączyć バラバラにする( łączyć は「結ぶ、結合する」という意味であるが、それ と反対の意味になろう) rozmyślić się 考えを変える rozpakować 荷をほどく rozwiązać ほどく・問題を解く( wiązać 結びつける) rozwieść 離婚する ② 拡大する rozbudować 拡張する( budować 建てる) rozszerzyć 拡張する( szerzyć 進める) rozebrać 脱ぐ(この場合、roze- と e が入っているのは、もし入れないと -zbr-と子 音が3つ続くため、それを避けるためである) ③ 突然の開始 rozkwitnąć わっと咲く( kwitnąć 花が咲く) roześmiać się どっと笑う( śmiać się 笑う) rozpłakać się わっと泣き出す( płakać się 泣く) ④ 同じ源泉から分配する 動詞 325 rozdać 渡す rozcieńczćyć 薄める rozbudzić かき回す rozpętać 発散する rozgłosić (秘密等を)漏らす rozlać こぼす roztopić 溶かす( topić 溺れる・沈む) 12)u- 部分的に、傍らに、強力に、少し ① 瞬間的な動作 ukłuć 刺す( kłuć 刺す) ukryć 隠す kryć は不完了体で「隠す」であり、この場合は単に完了体にするにすぎ ない upuścić 落とす( puścić 放す=しかし、これは完了体である) uderzyć 打つ・叩く ② しばらく続くがその後すぐに完成する行為 uciszyć 静かにさせる uleczyć 直す( leczyć 治療する) ③ 良い方向に向かわせる ulepszyć 改善する uszczęśliwić 幸福にする umożliwić 可能にする ④ 対象物を減らす uszczuplić 激減させる ⑤ u- się で完成する行為 ubawić się 存分に楽しむ umęczyć się 疲れ果てる udać się 成功する uniknąć 避ける。ulotnić się 蒸発する udusić się 窒息死する ubawić się 存分に楽しむ 13)w- 中へ、包含 ① 内側への運動・動作 wbić 打ち込む( bić 打つ) wejść 入る włożyć ~に取り付ける włączyć スイッチを入れる wpisać 書き入れる・登録する wprowadzić 導入する wsiąść 入る wstąpić ~に足を踏み入れる( stąpać 歩む) wnosić 運び入れる ② 包含する、統一する wstawić はめ込む 14)wy- ~から離れて、完全に、外へ ラテン語の ex- に相当する 326 動詞 ① 内から外への運動 wybrać 選ぶ wyjść 外出する wyciągnąć 引っ張り出す wyjechać 去る、wykupić 買い占める ② 物を外し取る、抜き取る動作、を表す。 wyłączyć スイッチを切る wyładować 荷を下ろす、取り外す wytrzeć 拭い去る( trzeć 拭う) ③ 行為の完遂を表す wypracować 入念に作るこする、から派生したものである。wyprzedać 売り払う wystroić się ―で身を飾る wygrać 勝利する wyjaśnić 説明する 15)wz-, ws- 上への動き、増大 強調等の意味を表す。 wzbogacić 豊かにする wzbogacić uran ウランを濃縮する wzejść 昇る(太陽が) wskazać 示す wspinać się 登る wzlecieć 飛び上がる wzrosnąć 成長する 16) z-, s-, ś- 上から下への運動、接近・接合・結合や、表面からの分離、「~し尽く す」等の意味がある。 ① 上から下への運動 zejść 降りる zbiec 走って下る znieść 運んで降ろす schować 隠れる ściągnąć 引き下ろす spłynąć 流れ落ちる ② ~し尽くす、の意味 zepsuć 破壊する( psuć 駄目にする) spłacić 完済する( płacić 払う) zajść 沈む( iść 行く) znieść 廃止する( nieść 運ぶ)注:運んで降ろす、という意味もあるが、抽象的な 意味では廃止する、という意味になる。 ③ 小さくする zmniejszyć 小さくする zredukować 減らす skrócić 短くする ④ 表面からの分離 spłukać 洗い流す ⑤ 接近・接合・結合の意味を表す złożyć 組み立てる( łożyć ~に備える) złączyć 合併する( łączyć 加わる) skleić くっつく( kleić 接着する) 動詞 327 17) za 極度の動作、目的達成、開始、動作の徹底・達成、等を表す。 ① 極度(過度)の動作を示す zalać あふれ出る zadymić 煙で一杯になる ② 目的を達する zajechać 到着する( jechać 行く) ③ 開始を表す zakrzyczeć 叫び始める ④ 動作の徹底・達成を示す zabić 殺す( bić 打つ) zachorować 病気になる、 zatruć 毒殺する( truć 毒を与える) zakończyć (完全に)終える( kończyć 終える) zamrozić 凍結する( mrozić 凍えさせる) zakopać 埋葬する( kopać 掘る) zakazać 禁止する( kazać 命令する) zapalić 光を発する( palić 燃やす) zalepić 貼り付ける( lepić 型を付ける) ⑤ 上から下への運動 zajść 沈む( iść 行く) 18)współ- ~と一緒に しかし、この場合は不完了体となる。 współczuć 同情する(但し、不完了体) współdziałać 協調する(但し、不完了体) współgrać ~に調子を合わせる współposiadać 一緒に持つ współpracować 一緒に働く współżyć 一緒に住む 4.接尾辞の付加・交替により完了体から不完了体を形成するもの 一方、ロシア語において接頭辞を付加して完了体となった動詞に、接尾辞である-ываや -ива- を伴った場合に、対応の完了体から不完了体が作られた。ただ、このように言 っても、そのような不完了体が作られるのは、当該完了体が別の意味が付加された場合 (すなわち3)の場合)に限られた。例えば、писать 書くから переписать 再び 書く、という完了体が作られるが、それから派生する переписывать 再び書く、は不 完了体を形成した。このようなことはポーランドでも見られる。しかもポーランド語に おいてはロシア語より複雑である。その場合、活用形は別の種類になるのが通常である。 1)-a が付加されて不完了体が作られる場合 328 動詞 ① 第一活用から第三活用へ まず、第一活用の動詞で不完了体から作られた完了体の動詞に -a が付加されて不完 了体が作られる。例えば、gryźć かじる、の場合、完了体は接頭辞の prze- を付加し、 przegryźć となり、その意味は「穴などをかじって作る」となる。その動詞は第一活用 動詞であるが、それから派生する不完了動詞は przegryzać であり、それは第三活用動 詞である。lec 横になる、は不完了体であり、それに接頭辞 u- が付加されると、ulec 降 伏する、という完了体になり、新しい意味が付与される。そして、それから派生する ulegać は不完了体である。ulec が第一活用の動詞であるのに対して、ulegać は第三活 用の動詞となるのである。 語尾が -nąć の場合も、それに対応する不完了体は -ać となる。 例:posunąć – posuwać 動かす zaciągnąć – zaciągać 引く ② 第二活用から第三活用へ 次に、ほとんどの第二活用の動詞で見られることであるが、不完了体から作られた完 了体に -ać が付加されて不完了体が作られる場合も同じであり、派生した不完了体も第 三活用の動詞となる。例えば、palić 燃やす、は基本となる不完了体であり、それに zaを付けると zapalić 明るくする、という完了体が派生する。そして、それから 不完了体 の zapalać が派生する.。zapalić は第二活用であり、zapalać は第三活用である。その 他の例は、 例:oprawić – oprawiać 組み立てる pozwolić – pozwalać 許す( o → a の母音交替 があることに注意) rozdzielić – rozdzielać 分ける 2)不完了体から作られた完了体の動詞の不定詞の語尾が -eć, -‘ać, -uć, -yć の場合、-waが付加されて不完了体が作られる。 -yć の例:例えば、żyć 生きる、は不完了体であるが、それに接頭辞 prze が付加さ れると、przeżyć 生き残る、という完了体が作られる。それに -wać が付加されて、 przeżywać という不完了体になるのである。この場合に特徴的なことは、完了体の動詞 自体は接頭辞を除くと、音節が一つの動詞であるということである(他に、dożyć 体験 する、がある)。 -eć の例:zachcieć – zachciewać ~したい感じがする 尚、不定詞が -eć で終わる ものは、第一、第二、第三動詞いずれでも認められるが、この場合は、第二活用は含ま れない。 -‘ać の例:lać 注ぐ、から派生した完了体動詞 wylać こぼす、から wylewać となる (この場合は不完了体では e が挿入される。)。 -uć の例:truć 毒を与える、から派生した完了体動詞 zatruć 毒を与える、から zatruwać となる(もっともこの場合は truć から zatruć への派生では意味の変化はほ とんどない。)。 3)その他の接尾辞の挿入 ① .完了体の動詞の不定詞の最後が -ić の場合、-ja- が付加されて、不完了体となる。 この場合の動詞は一音節(接頭辞を除く)であるのが通常である。例えば、zabić 殺す、 動詞 329 の場合、zabijać と不完了体が派生するのである。この場合は、第一活用が第三活用に なる。 その他には、wypić 飲み干す → wypijać ② 不完了体の最後が -ować となるものがある。この場合は、完了体は第一活用で、不 完了体も第一活用である。例えば、完了体 znaleźć 見つける、で不完了体が znajdować である場合がある。 その他には、完了体が zdjąć 外す、で完了体は zdejmować となる。 ③ 不完了体の不定詞の最後が -awać となるものがある。この場合は、第三活用が第一 活用になる例である。この場合の動詞は1音節の動詞で(接頭辞は除く)、da-, sta-, znaが挙げられる。例えば、dać 与える(完了体)が、dawać(不完了体)となる。przyznać (完了体)が、przyznawać(不完了体)となる。 4)上記以外は、-ywać となって不完了体が作られるが、この場合は生産的である。こ れはロシア語の -увать に相当する。 これには、活用の形式によってさらに分けることができる。 ① 完了体が -ać で終わる動詞で、完了体、不完了体とも第一活用の場合 pokazać 示す、と pokazywać、przepisać コピーする、と przepisywać (尚、prze- は ロシア語の пере- に相当する。)rozdrapać 引っ掻く、と rozdrapywać ② 完了体が -ować 動詞の場合 この場合も完了体、不完了体とも第一活用になる。 dostosować 適合させる、と dostosowywać、wypracować 入念に作り上げる、と wypracowywać がある。obdarować 授ける、と obdarowywać、もある。 ③ 完了体が第三活用である場合、不完了体は第一活用になるのが通常であるが、そのま ま第三活用である場合も見られる。 obiecać 約束する、と obiecywać odczytać 暗唱する、と odczytywać przekonać 説得する、と przekonywać、wygrać 勝つ、と wygrywać (grać は、遊 ぶ、という意味で、 wygrywać は第三活用である。) zatrzymać 止める、と zatrzymywać (trzymać は保つ、という意味=不完了体) ④ 完了体の不定詞の最後が -eć となる第二活用動詞の場合も不完了体は -ywać とな るが、完了体の語根の中に e が入っていると、不完了体では e が a に交替する。さら に、子音交替が見られる場合もある。 odsiedzieć 時を過ごす、と odsiadywać 、odlecieć 飛び去る、と odlatywać przewidzieć 予見する、と przewidywać ⑤ 軟口蓋音が語幹に含まれる場合も同様になる。 obsłużyć 奉仕する、と obsługiwać 、wyskoczyć ジャンプする、と wyskakiwać 5.全く形の異なる完了体・不完了体のペアの動詞 1)ロシア語には、完了体・不完了体のペアで全く形の異なる動詞があった。例えば、 говорить 言う(不完了体)、と сказать(完了体)である。 ポーランド語にもそのよ うなものが見られ、しかも頻出する動詞に多い。それらを挙げると、 日本語の主な意味 不完了体 完了体 330 動詞 取る brać wziąć 言う mówić powiedzieć 見る widzieć zobaczyć 観察する ogłądać obejrzeć 置く kłaść położyć できる(但し、助動詞) móc potrafić 見つける znajdować znaleźć 占める zajmować zająć ※ przyjmować 受け取る、と przyjąć も zajmować と zająć と同じである(接頭辞 が異なるだけである。)。 2)これらの動詞に接頭辞が付いた場合に、新たな完了体・不完了体のペアが形成され るのであるが、brać, mówić, widzieć とそれ以外の動詞は少し異なった帰趨を示す。 すなわち、前3者の場合には不完了体に接頭辞を付加することにより新たな意味を有す る完了体が形成され、そして、それに対する不完了体は語幹を一部変更することにより 形成される。しかし、ogłądać, kłaść の場合は、それとは異なり、不完了体に接頭辞を 付加したものが新たな意味を有する不完了体であり、完了体に接頭辞を付加したものが 新たな意味を有する完了体となるのである。また、móc - potrafić, znajdować znaleźć の場合は特に接頭辞を付加したものは見られない。 3)brać の場合 不完了体は、-bierać となる。 brać に例えば接頭辞 na を付加した場合、nabrać 取り込む、と新しい意味になるが、 それに対する不完了体は nabierać となる。 日本語の主な意味 完了体 不完了体 元に戻す odebrać odebierać 請求する pobrać pobierać 引き受ける przybrać przybierać 変える przebrać przebierać 選ぶ wybrać wybierać 取り出す nadebrać nadbierać 脱ぐ rozebrać rozbierać 服を着せる ubrać ubierać 取り除く zabrać zabierać 4)mówić の場合 不完了体は -mówiać となる。 促す namówić namówiać 拒否する odmówić odmówiać 説得する・納得させる wmówić wmówiać 発音する wymówić wymówiać 議論する omówić omówiać 注文する zamówić zamówiać 動詞 331 愚弄する przymówić przymówiać 演説をする przemówić przemówiać 共謀する zmówić się zmówiać się 同意する umówić umówiać 5)widzieć の場合 不完了体は -widywać となる。 予想する przewidzieć przewidywać 現れる przywidzieć się przywidywać 6)ogłądać, obejrzeć の場合は、完了体は o- を除去した後に新たな接頭辞を付加し、 -głądać を付けて形成されるし、不完了体は obe- を除去した後に新たな接頭辞を付加 し、-jrzeć を付けて形成される。 ~を監督する dogłądać dojrzeć 見渡す rozgłądać rozejrzeć のぞく podgłądać podejrzeć 外を見る wygłądać wyjrzeć 見通す przegłądać przejrzeć のぞき込む zagłądać zajrzeć 7)kłaść(不完了体)położyć(完了体)に関係したものは次のようになる。kłaść に 接頭辞がついた動詞は不完了体であるが、不定詞は接頭辞 + -kładać となる。położyć に接頭辞が付いた動詞は完了体であるが、不定詞は接頭辞 + łożyć となる。 nakładać 課す nałożyć odkładać 延期する odłożyć przedkładać 提供する przedłożyć przekładać 移動する przełożyć układać 整える ułożyć wkładać 中へ置く włożyć wykładać 割り付ける wyłożyć zakładać 設置する założyć podkładać 置く podłożyć składać 折り畳む złożyć( s-, z- は原則として接頭辞としては同じものであり、 kの 前では s- が、ł の前では z- が付加される。) 6.完了体と不完了体で同一の動詞を使う場合 awansować 促進する aresztować 逮捕する、mianować 指名する、cudzołożyć 不倫す る、等がある。 Ⅷ 不完了体しか有しない動詞 意味的に継続する動作や状態を表す動詞には完了体はなく、不完了体のみしかない。そ のような動詞には以下のようなものがある。 mieć, być, woleć, leżeć, żyć, należeć, umieć, pracować, domagć się, potrzebować, 332 動詞 podrożować 旅行する、towarzyszyć ―に随行する asystować 補助する móc, studiować , mieszkać 等がある。これらの中には po- という接頭辞を付けて完了体にな るものがあるが、それは対応の完了体になるのではなく、「ちょっとーする」というニ ュアンスを付加して完了体になるのである。例えば、 popracować ちょっと働く、等で ある。 Ⅸ 完了体しか有しない動詞 一方、継続や進行の意味を有しない動詞は完了体しかない。そのような動詞には、 owdowieć 未亡人になる runąć 崩壊する oniemieć 沈黙する Ⅹ 2種類の不完了体 後述するように移動の動詞にはロシア語と同じく定動詞と不定動詞を区別することがで きるが、これらはいずれも不完了体である。それ以外にも不完了体が移動の動詞に類似 して2種類ある動詞がある。例えば、「読む」ことに関する動詞には不完了体として czytać と czytywać の2種類があり、前者は「読んでいる」という進行中の状態を表す が、後者は「何度も読む」という反復的行為を表す。もっとも、今日ではこのような czytywać のような反復的動詞は廃れてきている。 このような動詞には以下のようなものが挙げられる。 być いる・ある bywać czytać 読む czytywać grać 遊ぶ graywać jeść 食べる jadać mieć 持つ miewać pisać 書く pisywać pić 飲む pijać spać 眠る sypiać widzieć 見る widywać mówić 話す mawiać Gram na skrzypcach. 私はバイオリンを弾く。 Grauję na skrzypcach codziennie. 私は毎日バイオリンを弾く。 動詞 333 第6節 移動に関する動詞 1.ロシア語の特徴として移動に関する動詞があった。そのことはポーランド語も同じ であり、しかもそれらはすべて不完了体であることも同じである。また、自動詞である 場合と他動詞である場合があることもロシア語と同じである。以下には定動詞、不定動 詞に分け、対比するロシア語を併記する。 定動詞 不定動詞 iść идти chodzić ходить 歩いて行く jechać ехать jeździć ездить 車で行く biec бежать biegać бегать 走る lecieć лететь latać летать 飛ぶ płynąć плыть pływać плавать 泳ぐ leźć лезть łazić лазить よじ登る、潜り込む pełznąć ползти pełzać ползать 這う、這って行く nieść нести nosić носить 歩いて運ぶ wieść вести wodzić водить 連れて(案内して)行く wieźć везти wozić возить 車で運ぶ 定動詞は一定方向に向かって行く移動動作を表し、不定動詞は往復・反復を含めて、 それ以外の動作を表す。これらのことはロシア語と同じであり、特にポーランド語に特 有のものではないので、ロシア語と同様に考えれば十分である。上記を見ても発音なり 綴りはロシア語に類似しているので容易に想像が付くであろう。尚、上の10のペアの 動詞のうち、上の7つのペア動詞は自動詞であり、下の3つのペア動詞は他動詞である。 上述した動詞の内、leźć, pełznąć については注意が必要である。leźć は身体をかがめ ながら手と足を使って上の方へ進む場合に使われる。一方、pełznąć は四肢を有しない か、短い四肢しか有しない動物が進んでいく場合に用いられる。また、歩くことができ ない幼児が進んでいく場合にも使われる。さらに、人間が腹部を地面に着けて進んでい く場合にも使われる。もっとも、これらの点は対比するロシア語とほぼ同じである。 2.定動詞・不定動詞が使われる場合には、上述した意味の違いから、それぞれ使われ る副詞・副詞句が異なるものである。関連するそれらの主な副詞・副詞句を挙げると以 下のごとくである。 1)定動詞 dzisiaj 今日 już すでに teraz 今 zaraz すぐに na razie 直ちに akurat すぐに znowu 再び właśnie すぐに w środę 水曜日に raz na miesiąc 月に一度 jutro 明 日 2)不定動詞 często しばしば nigdy nie 決して codziennie 毎日 ciągle ずっと zwykle 普通は zawsze 常に rzadko まれに ostatnio 最近 nadal 依然として od tygodnia 先週か 334 動詞 ら od dawna ずっと前から co tydzień 毎週 w środy 毎水曜日に Co tydzień chodzę do kościoła. 私は毎週教会へ行く。(不定動詞) Teraz idę do kościoła. 私は今、教会に行くところだ。(定動詞) Raz na miesiąc jeżdżę na nartach. 私は月に一回スキーに行く。(不定動詞) W środę jadę na nartach. 私は水曜日にスキーに行くつもりだ。(定動詞) 3.上記に記載した動詞はいずれも重要性があり、頻繁に出てくるものである。それ故、 これらの動詞の活用形式及び活用のパラダイムを示す(第3節 動詞の活用、も参照)。 1)iść 接尾辞が付かない第一活用動詞で d 語幹の動詞であるが、第一語幹と第二語 幹を有する不規則動詞である。 1人称 2人称 3人称 単数 idę idziesz idzie 単数 男性形 1人称 szedłem 2人称 szedłeś 3人称 szedł 女性形 szłam szłaś szła 複数 idziemy idziecie idą 中性形 szło 複数 男性人間形 szliśmy szliście szli 非男性人間形 szłyśmy szłyście szły 2)chodzić 第二活用動詞で語幹の接尾辞が -i となるタイプである(d 語幹である。し かも、動詞の活用内には d 語幹は現れず、名詞形である chód に現れる。)。 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称chodziłem 2人称 chodziłeś 3人称 chodził 単数 chodzę chodzisz chodzi 女性形 chodziłam chodziłaś chodziła 複数 chodzimy chodzicie chodzą 複数 男性人間形 chodziliśmy chodziliście chodziło chodzili 中性形 非男性人間形 chodziłyśmy chodziłyście chodziły 3)jechać 第一活用動詞であるが、現在形が不規則な活用をする動詞である。過去形は 規則通りである。 335 動詞 1人称 2人称 3人称 単数 jadę jedziesz jedzie 単数 男性形 1人称 jechałem 2人称 jechałeś 3人称 jechał 女性形 jechałam jechałaś jechała 複数 jedziemy jedziecie jadą 複数 中性形 男性人間形 非男性人間形 jechaliśmy jechłyśmy jechaliście jechłyście jechało jechali jechały 4)jeździć 第二活用動詞で語幹の接尾辞が i となるタイプで語幹の子音が zd の動詞 である。 単数 複数 1人称 jeżdżę jeździmy 2人称 jeździsz jeździcie 3人称 jeździ jeżdżą ※ 第二活用動詞であり、単数2人称から複数2人称までは zd に第二子音交替が起き ているが(母音 i の前であるから)、単数1人称と複数3人称は第三子音交替が起こっ ている(これらの活用では潜在的に j が入っているから)点に注意すべきである。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称jeździłem jeździłam jeździliśmy jeździłyśmy 2人称 jeździłeś jeździłaś jeździliście jeździłyście 3人称 jeździł jeździła jeździło jeździli jeździły 5)nieść 第一活用動詞で接尾辞がないタイプで語幹子音が s の動詞である。 単数 複数 1人称 niosę niesiemy 2人称 niesiesz niesiecie 3人称 niesie niosą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 niosłem niosłam nieśliśmy niosłyśmy 2人称 niosłeś niosłaś nieśliście niosłyśmy 3人称 niósł niosła niosło nieśli niosły ※ 過去形はやや複雑である。複数男性人間形は -li の前が ś となるので、母音も o → e に交替する。また、単数男性形3人称の場合は o は o → ó となる。 6)nosić 第二活用動詞で語幹の接尾辞が i となり、語幹の子音が s である。この s は 336 動詞 動詞の活用には現れないが、名詞形が wynos となり、そこに現れている。 単数 複数 1人称 noszę nosimy 2人称 nosisz nosicie 3人称 nosi noszą 単数 男性形 1人称 nosiłem 2人称 nosiłeś 3人称 nosił 女性形 nosiłam nosiłaś nosiła 複数 中性形 男性人間形 nosiliśmy nosiliście nosiło nosili 非男性人間形 nosiłyśmy nosiłyście nosiły 7)wieźć 第一活用動詞で接尾辞がないタイプで z 語幹を有する動詞である。 1人称 2人称 3人称 単数 wiozę wieziesz wiezie 複数 wieziemy wieziecie wiozą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 wiozłem wiozłam wieźliśmy wiozłyśmy 2人称wiozłeś wiozłaś wieźliście wiozłyście 3人称 wiózł wiozła wiozło wieźli wiozły 8)wozić 第二活用動詞で語幹の接尾辞が i であり、語幹の子音が z であり、動詞に はそれが現れず、名詞形の wóz 荷馬車、に現れる。 単数 複数 1人称 wożę wozimy 2人称 wozisz wozicie 3人称 wozi wożą 単数 男性形 1人称 woziłem 2人称 woziłeś 3人称 woził 女性形 woziłam woziłaś woziła 複数 中性形 男性人間形 woziliśmy woziliście woziło wozili 非男性人間形 woziłyśmy woziłyście woziły 9)biec 第一活用動詞で語幹の接尾辞が n であり、語幹の子音が gn である動詞であ 337 動詞 る。 1人称 2人称 3人称 単数 biegnę biegniesz biegnie 単数 男性形 女性形 1人称 biegłem biegłam 2人称 biegłeś biegłaś 3人称 biegł biegła 10)biegać 第三活用動詞である。 単数 1人称 biegam 2人称 biegasz 3人称 biega 複数 biegniemy biegniecie biegną 複数 中性形 男性人間形 biegliśmy biegliście biegło biegli 非男性人間形 biegłyśmy biegłyście biegły 複数 biegamy biegacie biegają 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 biegałem biegałam biegaliśmy biegałyśmy 2人称 biegałeś biegałaś biegaliście biegałyście 3人称 biegał biegała biegało biegali biegały 11)lecieć 第二活用動詞で接尾辞が e となるタイプの動詞であり、語幹の子音は t で ある。その語幹は、動詞活用には現れない。 単数 複数 1人称 lecę lecimy 2人称 lecisz lecicie 3人称 leci lecą 単数 男性形 1人称 leciałem 2人称 leciałeś 3人称 leciał 女性形 leciałam leciałaś leciała 中性形 leciało 複数 男性人間形 lecieliśmy lecieliście lecieli 非男性人間形 leciałyśmy leciałyście leciały 338 動詞 12)latać 第三活用である。 単数 1人称 latam 2人称 latasz 3人称 lata 複数 latamy latacie latają 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 latałem latałam lataliśmy latałyśmy 2人称 latałeś latałaś lataliście latałyście 3人称 latał latała latało latali latały 13)płynąć 第一活用動詞で接尾辞が -ną であるタイプの動詞である。 単数 複数 1人称 płynę płyniemy 2人称 płyniesz płyniecie 3人称 płynie płyną 単数 男性形 女性形 1人称 płynąłem płynęłam 2人称 płynąłeś płynęłaś 3人称 płynął płynęła 14)pływać 第三活用動詞である。 単数 1人称 pływam 2人称 pływasz 3人称 pływa 中性形 płynęło 複数 男性人間形 płynęliśmy płynęliście płynęli 非男性人間形 płynęłyśmy płynęłyście płynęły 複数 pływamy pływacie pływją 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 pływałem pływałam pływaliśmy pływałyśmy 2人称 pływałeś pływałaś pływaliście pływałyście 3人称 pływał pływała pływało pływali pływały 15)leźć 第一活用動詞で接尾辞がないタイプの動詞である。語幹の子音は z である。 単数 複数 1人称 lezę leziemy 2人称 leziesz leziecie 3人称 lezie lezą 339 動詞 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 1人称 lozłem lozłam leźliśmy 2人称 lozłeś lozłaś leźliście 3人称 lózł lozła lozło leźli 16)łazić 第二活用動詞で語幹の接尾辞が i であり、語幹の子音が z 単数 複数 1人称 łażę łazimy 2人称 łazisz łazicie 3人称 łazi łażą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 1人称 łaziłem łaziłam łaziliśmy 2人称 łaziłeś łaziłaś łaziliście 3人称 łazil łaziła łaziło łazili 17)wieść 第一活用動詞で接尾辞がないタイプで、語幹の子音は d 単数 複数 1人称 wiodę wiedziemy 2人称 wiedziesz wiedziecie 3人称 wiedzie wiodą 非男性人間形 loźłyśmy loźłyście loźły である。 非男性人間形 łaziłyśmy łaziłyście łaziły である。 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 wiodłem wiodłam wiedliśmy wiodłyśmy 2人称 wiodłeś wiodłaś wiedliście wiodłyście 3人称 wiódł wiodła wiodło wiedli wiodły 18)wodzić 第二活用動詞で語幹の接尾辞が i であり、語幹の子音が d である動詞で ある。 単数 複数 1人称 wodzę wodzimy 2人称 wodzisz wodzicie 3人称 wodzi wodzą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 wodziłem wodziłam wodziliśmy wodziłyśmy 2人称 wodziłeś wodziłaś wodziliście wodziłyście 3人称 wodził wodziła wodziło wodzile wodziły 19)pełznąć 第一活用動詞で接尾辞が -ną タイプの動詞である。 340 1人称 2人称 3人称 動詞 単数 pełznę pełzniesz pełznie 単数 男性形 女性形 pełznąłem pełznęłam 1人称 pełznąłeś pełznęłaś 2人称 pełznął pełznęła 3人称 20)pełzać 第三活用の動詞である。 単数 pełzam 1人称 pełzasz 2人称 pełza 3人称 単数 男性形 女性形 pełzałem pełzałam 1人称 pełzałeś pełzałaś 2人称 pełzał pełzała 3人称 中性形 pełznęło 中性形 pełzało 複数 pełzniemy pełzniecie pełzną 複数 男性人間 pełznęliśmy pełznęliście pełznęli 非男性人間 pełznęłyśmy pełznęłyście pełznęły 複数 pełzamy pełzacie pełzają 複数 男性人間 pełzaliśmy pełzaliście pełzali 非男性人間 pełzałyśmy pełzałyście pełzały 4.移動の動詞の用法 ロシア語と同じく、ポーランド語の移動の動詞も用法はほぼ同じである。従って、ロ シア語に準じて考えれば良い。従って、定動詞は、① 一方向への運動を表したり、② 運 動の一部を切り取って表現したりする。一方、不定動詞は、① 多方向への運動や、② 往 復運動や、③ 習慣的動作や、④ 運動能力を表す。 1)定動詞 これはある時点での進行中の一方向への移動でしかも習慣的になっていな い動作を表すのが基本である。現在のみならず、近い未来のことも表すし、計画してい ることも表すことができる。これらはいずれも現在形で表し、後2者は未来に関するこ とであるが、未来形を使用しなくても表すことができる。 ① 現在形 Idę do kina. 私は映画に行くところだ。 Jutro jadę do domu. 明日、私は家に帰るつもりだ(運送手段で)。 ※ 上の文は、一方向への過程を表しており、現在行っていることを示している。それに 対して、下の文は未来に関することである。本来、不完了体動詞は未来に関することは być の未来形 + 動詞の過去あるいは不定詞、を用いなければならないが、移動の動詞 は例外的に być の未来形を使わなくても、未来の意味を表すことができる。しかし、こ れはロシア語にも見られたことであり、特にポーランド語に特有のことではない。 On jedzie w uniwersytet. 彼は大学へ行くところだ。 動詞 341 Dzisiaj lecę do Nagoyi. 今日、私は名古屋へ行く(飛行機で)つもりだ。 Od akademika do uniwersyteta on jedzie 30 minut. 研究所から大学まで彼は30 分で行く。 Dziadek wiezie samochodem wnuka. 祖父は車で孫を連れている。 Przewodnik wiedzie turystów do kościoła. ガイドは観光客達を教会に案内する。 On teraz niesie kamienie w ręku. 彼は今、手で石を運んでいる。 Statek płynie po rzece. 船は川に沿って進んでいく.。 Kelnerka niesie kawę na tacę. ウエイトレスはお盆の上にコーヒーを載せて運ぶ。 ② 過去形 過去における進行中の一方向の一つの移動を表す。 あるいはその一つの段階 を表す。 Spotykałem go, gdy on jechał w uniwersytet na rowerze. 私は、彼がバイクに乗 って大学に行っていた時に、彼と会った。 Z Tokio do Nagoyi jechałem moim samochodem. 東京から名古屋まで私は自分の 車で行った。 Z Hirosimy do Takamatsu płynęliśmy promem. 広島から高松まで我々はフェリ ーで行った。 2)不定動詞 ① 現在及び過去の用法 ア、多方向への移動 On biega po wszystkich sklepach. 彼は、すべての店の周囲を走り回っている。 Chodił po pokój. 彼は部屋の周りをうろうろしていた。 Lubię biegać. 私は走るのが好きだ。 Latem pływam w jeziorze, a zimą w basenie. 私は、夏は湖で泳ぐが、冬はプール で泳ぐ。 Często biegam na krótkie dystanse. 私はしばしば短距離走をやる。 Wśród dorosłych dzieci biegają. 大人に混じって、子供達が走っている。 Przedtem codziennie biegał. 以前、彼は毎日走っていた。 イ、一方向への習慣的な移動 Często chodzę do kina. 私はしばしば映画に行く。 Po zajęciach chodzę do kościoła. 授業後、私は教会へ行く。 W każdny czwartek chodzę do kino. 私は毎週木曜日に映画に行く。 W ubiegłym roku często chodził do kina. 去年、彼はしばしば映画に行った。 ウ、動くことができる状態あるいは運動能力 Dziecko już chodzi. 子供はもう歩ける。 Nie umiem jeździć samochodem. 私は車の運転ができない。 Po trzech miesiącach ćwiczenia on pływał. 3ヶ月の練習の後、彼は泳ぐことがで きるようになった。 エ、往復の移動 Wczoraj chodziałem do szkoły. 私は昨日学校へ行った(行って帰ってきた。)。 342 動詞 On jeżdził w uniwersytet na rowerze. 彼は大学へバイクで往復した(行って帰っ てきた)。 ② 未来の用法 ア、繰り返される移動 Od jutra będę biegać co tydzień. 私は明日から毎週走るつもりだ。 イ、運動能力に関すること Od trzech miesięcy syn będzie chodzić. 3ヶ月後息子は歩くことができるだろう。 3)注意すべき用法 Czy ty idziesz jutro do opery? あなたは明日、オペラを見に行きますか、に対して、 否定文で答えるときは、Nie, nigdy tam nie chodzę. となり、chodzić という不定動詞を 使う。なぜなら、肯定するときは、行くという動作に主眼がおかれるが、否定するとき は行って帰ってくる行為全体を否定することになるからである。 比喩的な表現の場合、ロシア語では常に定動詞を用いて表したが、このことはポーラ ンド語にも該当する。 Czas leci. 時間が経つのは速い biec na złamanie karku 死に物狂いで走る 5.基本的な移動の動詞に接頭辞が付いた動詞 ロシア語において定動詞に接頭辞が付くと、完了体になった。それに対して、不定動 詞に接頭辞が付いた場合には完了体となる場合と不完了体になる場合があった。ポーラ ンド語においてもこれらのことが当てはまる。その場合の接頭辞には po や za や od がある。 定動詞に接頭辞を付加すると完了体になる。その場合、単に完了体を作る場合もある し、接頭辞によっては別の意味を付加することがある。不定動詞に接頭辞を付加すると 原則として不完了体になるが、例外的に完了体を形成する場合もある。例えば、不定動 詞に po が付くと、「しばらく~する」という完了体を形成する(例:pochodzić しば らく歩き回る)。これはロシア語でも見られたものである(尚、注意すべきは、pochodzić には別の動詞があり、「~出身である」という動詞はこれとは別動詞であることであ る。)。 以下は、個々の動詞別に移動に関する動詞に接頭辞が付加したものを述べる。その場 合、iść, chodzić については頻用されるので、それぞれについて述べるが、jechać 以下 については、定動詞・不定動詞をまとめて述べることにする。 1)iść この場合、接頭辞が付くと、i が j に交替する。 ① pójść (歩いて)行く この場合は、単に完了体になるだけである。ただ、wyjść と は意味が似ている。wyjść は基本は「出かける」であるが、「行く」という意味を表す ことがある。しかし、ニュアンスが異なることに注意すべきである。例えば、pójść na ryby 魚釣りに出かける、は焦点が出かけることにあり、従って、魚釣りに行ったが、 すぐには戻ってこない、という意味になる。しかし、例えば、wyjść na bank 銀行に出 かける、は焦点が今の場所を去ることになり、従って、銀行に行ったが、すぐに戻る、 動詞 343 という意味になる。pójść の現在形の活用は以下のごとくである。 単数 複数 1人称 pójdę pójdziemy 2人称 pójdziesz pójdziecie 3人称 pójdzie pójdą Po zajęciach pójdę do biblioteki. 授業後、私は図書館に行くつもりだ。 On poszedł do domu. 彼は家に行った。 Ona poszła do teatru. 彼女は劇場に行った。 pójść は慣用句でも用いられる。 pójść za mąż 結婚する pójść w ministry 大臣になる Jak ci poszło? どうだった? pójść w górę 上がる pójść w dół 下がる ② wejść 入る これは接頭辞の w が付加した形であり、 wjść とは綴らないので、 wejść となるのである。 その活用は以下の通りである。iść 自体の過去形の活用が特殊であったが、この場合 の過去形はさらに特殊になっているので、注意が必要である。 単数 複数 1人称 wejdę wejdziemy 2人称 wejdziesz wejdziecie 3人称 wejdzie wejdą 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 wszedłem weszłam weszliśmy weszłyśmy 2人称wszedłeś weszłaś weszliście weszłyście 3人称 wszedł weszła weszło weszli weszły Proszę wejść! どうぞ入って下さい。 Piłka weszła do bramki. ボールがゴールに入った。 比喩的な表現にも用いられる wejść w konflikt 衝突する アクセスする、という意味にもなる。 wejść na stronę WWW ウエッブページにアクセスする。 ③ wyjść 出る これは接頭辞の wy が付加した形である。活用は iść に wy- が付加し た形になるだけであるが、現在形では i が j になることは言うまでもない。これは用法 が多く、wyjść na spacer 散歩に出かける、wyjść ze szpitala 退院する wyjść z więzienia 出所する、等がある。 ④ dojść ~に到着する dojść do dworca 駅に到着する 344 動詞 比喩的な表現で、数が達する、等の意味もある。 Liczba ofiar w wypadku doszła do pięciu osób. その事故の犠牲者の数は5人に達 した。 dojść do władzy 政権を握る ⑤ przyjść 来る przyjść do domu 帰宅する Przyszła zima. 冬が来た。 Huragan przyszedł z półdnia. ハリケーンは南から来た。 ⑥ przejść これは頻繁に使われる動詞で、多義的である。しかも、間接他動詞としての 使い方もあるし、自動詞としての使い方もある。前者には、「~を経験する」、とか、 「~を受ける」、等の意味がある。 Nowak przeszedł operację. ノヴァックは手術を受けた。 Cesarz Akihito przejdzie badania kardiologiczne. 天皇陛下は心臓検査を受ける 予定だ。 後者(自動詞としての使い方)には、通り過ぎる、等の意味がある。 Burza przeszła. 嵐が通り過ぎた。 Ustawa nie przeszła. 法案は通過しなかった。 Nie przeszedł do drugiej tury wyborów. 彼は決選投票に進出できなかった。 ⑦ podejść 近づく これは接頭辞の pod が付加したものであるが、 pod と jść の間に e が挿入されていることに注意すべきである。そのために、活用は同じく e が挿入され た wejść に準じたものになる。後述する nadejść も近づく、であるが、この podejść が 場所的に近づくことを表すのに対して、nadejść の場合は時間的に近づくことを表す。 W tym momencie pies podszedł do kota. その時、犬が猫に近づいた。 ⑧ odejść 離れる これは接頭辞の od を付加したものであり、前述の podejść と同様、 e が挿入されていることに注意すべきである。 odejść ze stanowiska その地位を離れる ⑨ zejść 降りる これは接頭辞の z を付加したものであり、e が挿入されているのは、 podejść 等と同じである。 zejść z roweru 自転車から降りる ⑩ nadejść 近づく nadejść 近づく ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ Nadchodzą świętą. クリスマスが近づいている。 Od zachodu nadszedł front zimny. 寒波が来た。 najść 侵攻する Niemcy naszły Polskę. ドイツはポーランドに侵攻した。 rozejść się (多数が方々に)去る、散る Tłum ludzi rozeszli 群衆が四散した。 ujść 逃げる ujść śmierci 死から逃れる ujść policji 警察から逃れる(与格を取る) wzejść (大陽が)昇る 動詞 345 ⑮ zajść(大陽が)沈む ⑯ obejść(回りを)歩く obejść dom dookoła 家の回りを歩く 2)chodzić iść に対応する不定動詞であり、これに新たな意味を付加する接頭辞を付 けると対応の不完了体になる。 完了体 不完了体 wejść wchodzić 入る wyjść wychodzić 出る dojść dochodzić ~に到着する przyjść przychodzić 来る przejść przechodzić 通る podejść podchodzić 近づく odejść odchodzić 離れる zejść schodzić 降りる(この場合は、綴り字がやや特殊で、 z → s と成っていることに注意。これは無声子音 の前では有声子音の z が対応する無声子音の s に交替するためである。) nadejść nadchodzić 近づく najść nachodzić 襲いかかる rozejść się rozchodzić (多数が方々に)去る、散る ujść uchodzić 逃げる wzejść wschodzić(大陽が)昇る(綴り字が z → s とな っていることに注意) zajść zachodzić(大陽が)沈む obejść obchodzić(回りを)歩く 3)jechać これは定動詞であり、接頭辞が付くと、原則通り完了体になる。 jeździć jechać に対する不定動詞であり、接頭辞が付くと不完了体であるのは、 chodzić と同じである。しかし、注意すべきは綴りが異なることである。例えば、 jeździć に wy- を付加すると wyjeżdżać(車で)出かける、となり、wyjeździć* と はならない。また、重要なことは jeździć は第二活用の動詞であったが、wyjeżdżać は 第三活用の動詞であると言うことである。 ① pojechać (乗り物で)行く(po- は単に不完了体を完了体にするに過ぎない) ② wjechać (乗り物で)入る wjeżdżać ③ wyjechać (乗り物で)出る wyjeżdżać wyjeżdżać の活用は、 346 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 1人称 wyjeżdżałem 2人称 wyjeżdżałeś 3人称 wyjeżdżał ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ 動詞 単数 wyjeżdżam wyjeżdżasz wyjeżdża 複数 wyjeżdżamy wyjeżdżacie wyjeżdżają 複数 女性形 中性形 男性人間 wyjeżdżałam wyjeżdżaliśmy wyjeżdżałaś wyjeżdżaliście wyjeżdżała wyjeżdżało wyjeżdżali 非男性人間 wyjeżdżałyśmy wyjeżdżałyście wyjeżdżały dojechać(乗り物で)到着する dojeżdżać przyjechać(乗り物で)来る przyjeżdżać przejechać(乗り物で)旅行する przejeżdżać podjechać(乗って)近づく・乗り付ける podjeżdżać odjechać(乗り物で)走り去る odjeżdżać zjechać(乗り物で)降りて来る zjeżdżać nadjechać(乗り物で)近づく nadjeżdżać najechać 侵入する najeżdżać rozjechać(乗り物で)轢く rozjeżdżać ujechać(乗り物で)走り回る なし zajechać(乗り物で)到着する zajeżdżać objechać 回りを回る objeżdżać 4)biec と biegać ① pobiec 走る(これは単に不完了体を完了体にするに過ぎない) ② wbiec 走って入る wbiegać ③ wybiec 走って出る wybiegać ④ dobiec 走って到着する dobiegać ⑤ przybiec 走り寄る Przybiegła do go, jak tylko go zobaczyła. 彼女は彼を見るやいな や走り寄ってきた。 przybiegać ⑥ przebiec 走って横切る przebiegać ⑦ podbiec 駆け寄る podbiegać ⑧ odbiec 走り去る odbiegać ⑨ zbiec 走って降りる zbiegać ⑩ nadbiec 駆け付ける nadbiegać ⑪ nabiec 沸き上がる・紅潮する nabiegać 動詞 347 ⑫ rozbiec się(走って)散り散りになる rozbiegać się ⑬ ubiec 走って通り抜ける・走り過ぎる・追い越す ubiegać ⑭ obiec 走り回る obiegać 5)lecieć と latać ① przylecieć (飛んで)到着する・飛来する przylatywać ② wylecieć 飛び出す・離陸する wylatywać ③ wlecieć 飛び込む wlatywać ④ dolecieć(ある所まで)飛んで行く dolatywać ⑤ ulecieć 飛び去る ulatywać これに対する不定動詞は latać であるが、接頭辞が付いた場合には -latać とはなら ず、-latywać となる。しかも、latać は第三活用の動詞であったが、-latywać は第二活 用の動詞となることに注意すべきである。 6)płynąć と pływać ① przypłynąć 泳ぎ着く・船で着く przypływać ② wypłynąć 浮上する・(航行して)出る wypływać ③ wpłynąć(航行して)入る wpływać ④ dopłynąć(ある所まで)泳いで着く dopływać ⑤ upłynąć 泳ぎ去る upływać ⑥ odpłynąć 出帆する odpływać 7)nieść と niesć ① ponieść 運ぶ これは単に完了体になるだけである。 ② wnieść 運び入れる wnosić wnieść meble do pokoju 家具を部屋に運び入れる ③ wynieść 運び出す wynosić wynieść z domu biurko 家から机を運び出す ④ donieść (目的の所へ)運ぶ donosić donieść pacjenta do szpitala 患者を病院へ運ぶ ⑤ przynieść 持たらす przynosić ⑥ przenieść 運ぶ・移す przenosić ⑦ podnieść 上げる podnosić ⑧ odnieść (運んで元の位置に)戻す odnosić ⑨ znieść (~から)移す znosić 8)wieść 連れて行く、と wodzić wywieść 連れ出す wywodzić uwieść 誘惑する uwodzić zawieść 連れて行く zawodzić 9)wieźć (車で)運ぶ、と wozić wywieźć 搬出する、運び出す wywozić dowieźć ~へ(車で)運ぶ dowozić 348 動詞 przewieźć 運搬する przewozić przywieźć(車で)送る przywozić 10)leźć と łazić wyleźć 這い出る przyleźć やっと到着する przyłazić przeleźć やっとのことで通過する przełazić zaleźć 重い足を引きずって歩く załazić 6.定動詞・不定動詞で注意すべきその他の点 1)定動詞に関して、単に完了体にする場合の接頭辞には po- が通常であるが、za- や od- が付く場合もある。 pójść 歩いて行く(この場合、pojść とする辞書もある。) pojechać 車で行く zanieść 持って行く odnieść 持って行く zawieźć 車で運んでくる odwieźć 車で届 ける wleźć よじ登る もっとも、po- の場合、「~し始める」という意味を表す場合もある。 pobiec 走り出す polecieć 飛び立つ popłynąć 泳ぎ出す poleźć よじ登り始める powieść 連れて行く 2)不定動詞に関しては次のことに注意すべきである。 ① 時間に関係する接頭辞である po- が付く場合は「しばらく~する」を表し、完了体 になる。pochodzić しばらく歩き回る pojeździć しばらく車で動き回る ponosić しばら く背負ったりして運ぶ powozić しばらく車で運ぶ pobiegać しばらく走り回る Wszoraj pochodziłem po parku, a potem jadłem obiad. 私は昨日公園の周りを少 し歩いた後、昼食を取った。 ② しかし、前述したように po- 以外の接頭辞が不定動詞に付く場合には、不完了体動 詞となる。dochodzić (歩いてある場所まで)行く、odchodzić (歩いてある場所から) 離れる、wynosić 運び出す wywozić 車で運び出す、wychodzić 出る(歩いて)、 przychodzić 来る、・・・ ただ、jeździć, latać は綴りがやや異なり -jeżdżać, -latywać となる。従って、 wyjeżdżać 出る、przyjeżdżać 来る、odjeżdżać ~から離れる、dojeżdżać ~まで到着する、 wylatywać 飛び立つ、przylatywać 飛び込む、odlatywać 飛び去る、となる。注意すべきはこれら の 動詞は元の jeździć や latać と動詞の活用も異なるということである。すなわち、 wyjżdżać 等の場合は czytać 等と同じく第三活用の動詞であり、wylatywać 等の場合 は polazywać 示す、等と同じく -ywa タイプの動詞である。 ・これらの動詞の用法 ア、まず、通常の不完了体動詞と同じように進行中の動作を表す。 動詞 349 On wychodzi. 彼は外出しているところだ。 イ、特別の動きを有する反復される動作を表す。 Codzienie on wynosi książki do biblioteki. 彼は毎日本を図書館に運び出す。 Często on przychodzi jej na ratunek. しばしば彼は彼女を助けに来る。 ウ、近い将来に計画していることも表す。 We wrześniu ona wychodzi za mąż. 9月に彼女は結婚する予定だ。 エ、過去において反復して行った行為を表す。 Dawno przychodziłem do nauczyciela wiele razy. 昔、私は何度も先生のところを 訪れたものだった。 7.pójść と pojechać で注意すべき用法 この両者はいずれも定動詞に po- が付加されたものであり、完了体であるが、特別な 用法として一回の往復運動に使われることがある。 Wczoraj poszedł do pracy. 昨日、彼は仕事に行った(行って帰ってきた)。 Jutro pojdę do pracy. 明日、私は仕事に行くつもりだ。 Wczroraj pojechała do kina. 昨日、 彼女は映画に行った (車で行って帰ってきた。 ) 。 Jutro pojecham do kina. 明日、私は映画に行くつもりだ(車で)。 8.配置と位置に関する動詞 ポーランド語にはロシア語と同様、横たわったり、立ったり、座ったり、掛けたりす ることに関係する動詞もあり、これらも複雑である。これらには kłaść 置く、stawiać 立 てる、 wieszać 掛ける、sadzać 座る、等がある。 1)置く、置いてある、等に関する動詞 kłaść 置く(不完)położyć (完)は他動詞で、leżeć 置いてある、は自動詞で、状態を 表し、不完了体である。また、się を使用した położyć się 横たわる、は姿勢に関する動 詞で、自動詞となり、完了体である。 położyć gazetę na biurku 新聞を机の上の置く położyć się na kanapie ソファーに横たわる leżeć na łóżku ベッドに横たわる この leżeć に po- を付加すると「しばらくの間横たわる」、という意味を表し、完了 体となる。自動詞であるのは言うまでもない。 Lekarz kazał go poleżeć w łóżku. 医師は彼にしばらくの間ベッドに休んでいるよう に言った。 2)立てる、立つ、等に関する動詞 stawiać 立てる(不完)、postawić 立てる(完)は他動詞で、これに対する自動詞は stać 立っている(不完)、である。また、się を付け、postawić się 立つ、となると自 動詞となる(もちろん完了体である)。wstać 起き上がる・立ち上がる(完) wstawać 起きる(不完)は自動詞で姿勢に関する動詞である。 postawić szklankę na stole コップをテーブルの上に立てる(他動詞) 350 動詞 stać na palcach 爪先で立っている(自動詞) postać しばらくの間立っている(完了体になるが、po- が「しばらくーする」という 意味を表す。自動詞であるのは言うまでもない。) wstać z krzesła 椅子から立ち上がる(自動詞) 3)掛ける、掛けてある、等に関する動詞 wieszać 掛ける(不完)powiesić 掛ける(完)は他動詞で、wieszać się ぶら下がる (不完)powiesić się ぶら下がる(完)は自動詞で姿勢に関する動詞であり、wisieć 掛 かっている(不完)は状態に関する自動詞である。 powiesić płaszcz na wieszakie コートをハンガーに掛ける(直接他動詞) Obraz wisi na ścianie. 絵は壁に掛かっている(自動詞)。 Dziecko się wiesza ramienie ojca. 子供は父親の肩にぶら下がっている(自動詞) powisieć しばらくの間掛かっている(完了体になるが、po- が「しばらく~する」と いう意味を表す。自動詞である。) wisieć は慣用句でも使われる wisieć na telefonie 電話で時間を費やす wisieć na włosku 危機一髪である 4)座らせる、座る、等に関する動詞 sadzać 座らせる(不完)posadzić 座らせる(完)は他動詞で、siadać 座る(不完)siąść 座る(完)は自動詞で姿勢に関する動詞であり、siedzieć 座っている(不完)posiedzieć しばらくの間座っている(完)、は自動詞で状態に関するものである。 posadzić dziecko na krześle 子供を椅子に座らせる siedzieć na krześle 椅子の上に座っている 5)配置と位置に関する動詞でも、移動の動詞のように接頭辞が付くと別の意味が加わ り、それぞれニュアンスを異にする動詞がありうる。例えば、不完了体の kładać 置く、 に prze- を付加すると、przekladać となり、「移す」と言う意味になる。そして、こ れに対する完了体は przepołożyć* になるかのごとくであるが、そのようにはならず少 し短くなり przełożyć となる。 przełożyć klucz z teczki do kieszeni 鍵を書類カバンからポケットに移す 動詞 351 第7節 動詞の不定形 ※ 定形と不定形 動詞は定形として用いられるか不定形として用いられるかのどちらかである。 定形とは文の主語の人称、数、法及び時制によって規定された、したがってそれらに ついての情報を含んでいる動詞の形である。すなわち、主語の人称・数、法、及び時制 に応じて定まったものなのである。これに対して不定形とは、主語の人称・数、法及び 時制の制約によらず、したがってそれらの情報を含んでいない動詞の形を呼ぶ時の総称 である。すなわち、主語の人称・数、法及び時制に応じて定まっていないものなのであ る。不定形に属するのは不定詞、形容分詞、副分詞、動名詞である。従って、不定詞は 不定形の一つである。 Ⅰ 不定詞 不定詞は、主語に応じた人称、時制、相の活用形を示さず、動詞と名詞の性格を併せ 持つ動詞形態である。動詞は活用するが、その元になるもので、辞書にはこの形のもの が掲載されている。ロシア語の動詞の不定詞は -ть で終わるものが多く、その他に -ти で終わるものや、-ч. -ь で終わるものがあった。ポーランド語においては不定詞は語尾 が -ć( -ść や -źć を除く) で終わるものが多いが、 それ以外に -c で終わるものや -ść, -źć で終わるものがある。-ć で終わる場合、その前は母音が来るので母音性の語末動詞とい い、ść, źć, c で終わる動詞の場合は、子音性の語末動詞と言えよう。 1.母音性語末動詞 -ć で終わる不定詞の場合で ć の前は母音が置かれる場合、その母音には、a, e, i/y, ą ,u 等がある。 1)-ać の例( -ować, -ywać, -iwać を除く):czytać 読む、brać 取る、mieszkać 住 む -ować の例:kosztować 費用がかかる、malować(絵を)描く、kupować 買う -ywać の例:dokonywać 達成する、zachowywać 維持する、wykonywać 実行する -iwać の例:oczekiwać 待つ、pomrukiwać ささやく、posługiwać 使う 2)-eć の例(-ieć を除く):trzeć こする、słyszeć 聴く、drzeć 破る -ieć の例:mieć 持つ、widzieć 見る、zapomnieć 忘れる 3)-ić の例:prosić 頼む、pić 飲む、bić 打つ、czyścić きれいにする kroić 切る 4)-yć の例:szyć 縫う、żyć 生きる、myć 洗う 5)-ąć の例(-nąć を除く):wziąć 取る、zacząć 始める、zdjąć 脱がす 6)-nąć の例:zasnąć 寝入る、ciągnąć 引く、kwitnąć (花が)咲いている 7)-uć の例:czuć 感じる、psuć 損なう、kłuć 刺す 2.子音性語末動詞 352 動詞 1)-ść の例:nieść 運ぶ、iść 行く、kłaść 置く kraść 盗む 2)-źć の例:leźć 這う、znaleźć 見つける、wieźć (車で)運ぶ 3)-c の例:piec 焼く、biec 走る、móc ~ができる、tłuc 壊す 子音性語末動詞は母音性語末動詞とはやや異なっている。それは、現在語幹から不定 詞を除くすべての活用形が形成される点である。すなわち、現在単数3人称からは命令 形、受動形容分詞、動名詞が形成されるし、現在単数1人称からはそれ以外の活用形が 形成されるのである。例えば、nieść 運ぶ、という動詞の場合、現在単数3人称は niesi であるが、命令形は nieś、受動形容分詞は niesiony、動名詞は niesienie である。現 在単数1人称は niosę で、過去形は niosłem(単数男性1人称),副分詞は niosąc、能 動形容分詞は niosący である。しかし、過去語幹からは不定詞しか形成されない。尚、 語末が -c となる動詞の場合、その前は -e- や -ó- や -u- となるので、子音性語末動詞 とは言えないのではないかという疑問が生じる。しかし、これらは元来は -kt'- や -gt'から発生しており、起源的に見て子音性語末動詞と考えて良いのである。従って、例え ば、piec 焼く、という動詞の場合、現在単数3人称は piecze であり、命令形は piecz、 受動形容分詞は pieczony、動名詞は pieczenie である。現在単数1人称は piekę で、 過去形は piekłem(単数男性1人称)、副分詞は piekąc である。しかし、過去語幹 ( pie- )からは不定詞( piec )しか、形成されない。 これに反し、母音性語末動詞では、過去語幹から不定詞、過去形、動名詞、完了体副 分詞、受動形容分詞が形成され、現在語幹から現在形、命令形、不完了体副分詞、能動 形容分詞が形成される。 3.不定詞が2つある動詞 動詞の中には不定詞が2つ以上あるものがある。その中には意味も活用も同じものと、 意味が若干異なり、しかも活用も異なるものがある。 1)意味が同じもの ① 意味が全く同じで、しかも現在形の活用も全く同じ動詞がある。ただ、それ以外の活 用は異なっている。例えば、patrzeć 見る、は patrzyć 見る、と意味は全く同じであり、 現在形の活用も同じである。ただ、それ以外の活用は異なっている。znajdować 見つけ る、と znajdywać も同じことが言える。 ② 意味が全く同じで、しかも活用がすべて同じ動詞がある。それは語尾が -c で終わる 動詞の幾らかに見られ、語尾が -ć となったものと全く同じ場合がある。例えば、biec 走 る、は biegnąć と意味も活用も全く同じである。その他に、rosnąć 成長する、と róść 成長する、przysiąć 誓う、と przysięgnąć 誓う、ulec 降伏する、と ulegnąć 降伏する、 等がある。 2)意味が若干異なるもの 語尾が -ić/ -yć の場合と -eć の場合で意味が若干異なる動詞がある。この場合、活用 も異なる。一般的に言って語尾が -ić/ -yć の場合はある動作主によって行為が行われる ことが多いが、-eć の場合は動作主なしに事象が生じることが多い。例えば、bielić 白 くする、に対して、bieleć 白くなる、と異なるのである。 動詞 353 語尾が -nąć の場合は事象が完結する意味を有するが、 -nieć の場合は事象が続くこと を表す。例えば、rzednąć 痩せる、であるが、rzednieć 徐々に細くなる、という具合に である。 4.動詞の語幹の特別形 1)通常、過去形は過去語幹から作られ、その過去語幹は不定詞の語幹と同じである。 しかし、動詞の中にはその過去語幹が不定詞の語幹と異なるものがある。この動詞では、 語幹が3種類あることになる。これは語幹に接尾辞がないタイプで r 語幹の動詞に見ら れる。不定詞 → 過去語幹の順に示す。 trzeć こする → tar-、drzeć 破る → dar-、wrzeć 沸かす → war-、przeć 促す → par-、zawrzeć 閉める → zawar-、żreć (動物が)食べる → żar-、umrzeć 死ぬ → umarまた、-nąć 動詞の中には、過去形において -ną- を欠くものがある(動詞の活用詳細 の項で説明した -(ną) タイプの動詞) 。例えば、pęknąć 破裂する・爆発する → pęk-、 gasnąć 消える → gas-、rosnąć 成長する → ros- 、chudnąć 取り除く・やせる → chud- 、等である。 2)逆に、過去語幹と、現在語幹が同一のものもある。これらの動詞では語幹は1つし かないことになる。例えば、dać 与える, nieść 運ぶ、等である。 5.不定詞の用法 ポーランド語の不定詞は、ロシア語と同じくもっぱら前置詞なしにそのまま使われる。 その用法には以下のものが挙げられる。 1)不完了体に限るが、未来形を形成する。 Będę czytać. 私は読んでいるだろう。 Będziemy czytać. 我々は読んでいるだろう。 2)不定詞を用いた命令の方法もある。特に、公共の掲示板、案内板、等に良く見られ る。 Wstać! 起きろ! Stać! 止まれ! Nie dotykać ! 触ってはいけない! 3)ある種の述語的用法の形容詞と共に、使われる場合もある。 Jestem gotów to zrobić. 私はそれをする準備ができている。 On jest zobowiązany zawiadomić ją o wyniku wyboru. 彼は選挙の結果を彼女に知 らせる義務がある。 4)不定詞が主語となる場合もある。その場合、定動詞は単数3人称となり、過去の場 合は中性形となる。 Czytać jest przyjemnie. 読書は楽しい( 定動詞は jest で現在単数3人称である。)。 Udało mi się znaleźć pracę. 私は仕事を見つけることができた(この場合、主語は znaleźć pracę であり、定動詞は過去中性形となっている。)。 354 動詞 5)無人称述語の後で使われる場合もある。 Trzeba się śpieszyć. 急ぐ必要がある。 Pora była wstawać. 起きている時間だった。 Warto przeczytać tę książkę. この本を読む価値はある。 Wstyd mówić o tym. それについて話をするのは恥ずかしい。 その他、wypada ~にふさわしい、czas ~する時間だ、szkoda ~とは残念だ、 grzch ~とは罪だ、等がある。 ※ 過去形の場合、通常は中性形を使用するが、pora だけは女性形を使用することに注 意すべきである。 6)述語副詞の後で、使われる場合もある。 これには、trudno 難しく、przyjmnie 気持ちよく、łatwo 簡単だ、miło 楽しく・愉 快に、przykro 残念だ・悲しい、等がある。 Przyjemnie jest słuchać takiej muzyki.このような音楽を聴くのは気持ちよい。 Przyjemnie jest ogłądać telewizję. テレビを見ることは楽しい。 Trudno mi odpowiedzieć to pytanie. その質問に答えるのは私には難しい。 Bardzo mi przykro rozstawać się z przyjaciółmi. 友達と別れ別れになることは非常 に悲しい。 Głupio mi o tym mówić. それについて話をするのは私にとってはばかげている。 7)提案、疑問、必要性、可能性等を表す場合に、不定詞が用いられる。この場合、主 語は文の中には表されないので、文脈によって判断するしかない。ロシア語においては 動詞の不定詞そのものが述語として用いられた場合( 例えば、Что делать? 何をすべ きか)があったが、この用法はそれに類似していると言える。 Przyjść jutro? 私は明日、来るべきだろうか? Nalać ci herbaty? 私は、あなたに紅茶を入れても良いですか? Zdjąć ten obraz? 我々は、その絵を外すべきだろうか? Nie wiem, co robić. 私は、何をするべきか分からない。 Jak to załatwić? それをどのように処理できるだろうか? 8)助動詞との関係 助動詞と結びつく動詞は不定詞が用いられる。 On chce budować dom. 彼は家を建てたいと思っている。 On umie pracować sczybko. 彼は速く仕事ができる。 Jutro mam pójść do lekarza 明日は私は医者の所へ行かなければならない。 尚、助動詞とは結びつかず、単に動詞を不定詞で表した場合に、その動詞が助動詞の 意味を伴うことがある。例えば、Przyjść jutro do ciebie? 私は明日、君の所へ行かなけ ればならない?Zaśpiewać? 私は歌うべきだろうか?、等である。 9)疑問代名詞・副詞+不定詞 ロシア語においては、不定詞は что, как, где などの疑問代名詞・副詞と結びつき、 「~すべきか」という疑問文を作った。例えば、Как поехать в центр города? 町の中 心へはどう行ったらよいのでしょうか。Когда мне прийти к вам? いつ君の所に行け 動詞 355 ばよいのか?、である。ポーランド語においても同様な用法があり、ロシア語と同じく 疑問代名詞・副詞の後に不定詞が用いられる。この用法によれば、行為の可能・不可能 を表したり、行為の必要性・不必要性を表したり、何らかの行為を要求するのを強調し たり、願望を表したりする。 Jak to załatwić? それをどのように処理するべきか。 Czemu nie porozmawiać na ten temat? なぜ、そのテーマについて話さないのか。 Gdzie nam wychodziić? 我々はどこに出発しなければならないだろうか。 尚、疑問代名詞・副詞が使われずに、不定詞だけで表されることがある(8)の後半 参照)。 Mnie jutro wcześnie wstawać. 私は明日早く起きなければならない。 10)不定詞しか用いない動詞 これには widać と słychać がある。前者は「~が見える」、後者は「~が聞こえる」、 である。 ロシア語で言えば、 前者は видно 後者は слышно という述語副詞に該当する。 これらは五感を通して感じられる継続する状態を表す。 Tu nic nie słychać. ここでは何も聞こえない。 Co słychać? 何が聞こえるの?何か変わったことは? Nie będzie słychać radia. ラジオの音は聞こえないだろう。 Nie było słychać muzyki. 音楽が聞こえなかった。 Nie będzie słychać głosów. 声は聞こえないだろう。 Stąd widać zamek. ここから城が見える。 czuć, znać, stać も同じような使い方があるが、不定詞以外でも使われることもあ る点が、słychać, widać とは異なる。しかし、不定詞で使用される場合には、同じ使い 方となる。 Czuć zapach bzu. ライラックの香りがする。 Na sukni znać każdą plamę. ドレスにあらゆるシミが付いている。 Nie stać nas na urlop. 我々はこの休みを取ることができない。 以上の場合、過去を表す場合には było、未来を表す場合には będzie を挿入する。 挿入する場合、 通常は Tu nic nie było słychać. のように不定詞の前に置くが、 Czuć było zapach bzu. のように不定形が文頭に来る場合には、不定詞の後に置く。 11)不定詞を補語に取る動詞 ① 始まりとか終わりや継続に関係する動詞に結びつく動詞は不定詞が用いられる。 このように不定詞を補語に取る動詞には、zaczynać 始める、kończyć 終了する、 przestać 中止する、rozpoczynać 始める、kontynuować 続ける、等が挙げられ、次に 続く動詞は不完了体が原則である。この点もロシア語と同じである。 Zaczyna padać. 雨が降り始める。 Kończyłem grać na gitarze. 私はギターを弾くことをやめた。 Kontynuował czytać książkę. 彼は本を読み続けた。 Unia Europejska przestanie kupować ropę z Iranu. EUはイランから原油を購入 することをやめるつもりだ。 356 動詞 ② 目的と関係する移動の動詞の後も、不定詞が用いられる。 Idę kupić chleb. 私は、パンを買うために行くところだ。 Jechał do Nowego Jorka odwiedzić swojego wuja. 彼は叔父を訪ねるためにニューヨ ークに行った。 Pójdę to zobaczyć. 私はそれを見るために行くつもりだ。 ③ 命令、妨害、禁止等を表す動詞の後も不定詞が用いられるが、この場合、主動詞の主 語と、不定詞を用いる動詞の動作主は異なっており、それについては与格で表す。 Kazał nam czekać. 彼は我々に待つように命じた。 Nauczyciel zabronił uczniom używać telefonów w klacie. 先生は生徒に授業中に携 帯電話を使うのを禁止した。 Ona pozwolił mu palić. 彼女は彼にタバコを吸うのを許した。 ※ ただ、注意すべきは動詞によっては不定詞ではなく、 do + 動名詞や従属節で表すこ としかできないものもある。 On zmusił mnie do wyjścia. 彼は私に去るように命じた。 On zmusił minie, żebym wyszedł. 彼は私に去るように命じた。 ④ 強い願望や疑念、嘆きなどを表す動詞の補語として Wstydzę się to powiedzieć. 私はそのことを話すのが恥ずかしい。 Boję się to powiedzieć. 私はそのことを話すのが怖い。 Boję się jeździć na nartach. 私はスキーをするのが怖い。 Boję się latać samalotem. 私は飛行機に乗るのが怖い。 On stara się pływać. 彼は泳ごうとした。 On starał sie nie spóźniać 彼は遅れないように努めた。 Ona obieca zwrócić do pierwszego. 彼女は最初に帰ってくることを約束する。 Postanowiłem kupić dom. 私は家を買うことを決心した。 その他には、kochać ~することが好きである、lubić ~することが好きである、 planować ~することを計画する、woleć ~することを好む、pragnąć ~することを要 望する、zamierać ~するつもりである、zdołać かろうじて~する、nienawidzić ~す ることを嫌う、等がある。 ⑤ 願望、希望、意思、好み等を表す動詞句の補語しても使われる場合がある。 być w stanie ~することができる、mieć nadzieję ~したい、mieć zamiar ~するつも りである Miała nadzieję grać w tenisa. 彼女はテニスがしたい。 Mam zamiar wrócić jutro. 私は明日帰るつもりだ。 On jest w stanie nurkować. 彼はダイビングをすることができる。 ⑥ その他に主動詞とそれに関連する動詞の主語が同じ場合には、 その関連する動詞は不 定詞になることがある。 このような関連動詞を導く動詞には uczyć się ~する方法を習得する、等、がある。 Uczyła się jeździć na nartach. 彼女はスキーで滑ることができるようになった。 12)不定詞自体が主語になる場合もある 動詞 357 Przyjemnie jest, spacerować po parku. 公園を歩くことは気持ちがよい。 Siedzieć tu jest przyjemnie. ここに座ることは気持ちがよい。 13)być 動詞の述語内容詞として(być 動詞自体は省略されることが多い。) Lepiej poczekać. 待つ方が良い。 14)名詞節で 主語になる場合や補語になる場合がある。 Nie ma co robić.することは何もない。 Nie ma gdzie usiąść. 座る場所がない。 Zapytaj, co kupić. 何を買うべきか、尋ねなさい。 Nie wiem, czy pojechać. 行くかどうかは分からない。 15)nie ma + 疑問副詞あるいは代名詞+ 動詞の不定詞、で行為の実行が不可能なこ とを表す。過去なら ma の代わりに było を、未来なら ma の代わりに będzie を使う。 Nie ma co robić.することは何もない。 Nie ma gdzie usiąść. 座る場所がない。 Nie było czym się zająć. 取りかかることは何もなかった。 Nie było z kim porozmawiać. 話すべき相手は誰もいなかった。 Nie będzie czemu się dziwić. それについて驚くことは何もないだろう。 Nie będzie kiedy skończyć. 終わりの時間はないだろう。 16)修辞疑問文の中で Co rubić? 何をしようか? Posuwać się czy wycofywać się? 進むべきか退くべきか? 17)aby や by が使われる場合には目的を表すが、その際に主語が同じ場合には、aby や by の後は不定詞となる。aby や by が使われるのは目的以外の副詞類が使われる時 が多い。なぜなら、aby や by を使用しないと目的を表すことが分かりにくいからであ る。 Pójdę tam, by zobaczyć, czy dziecko już śpi. 私は子供が既に眠ったかどうか見るた めに、そこへ行くつもりだ(この場合、tam という場所を表す副詞類が使用され ているので、目的を表すのにわざわざ by を使う必要があるのである。)。 18)動名詞との関係 ① 不定詞は避ける傾向がある。従って、不定形が使われそうなときでもできるだけ使用 されず、それ以外の品詞(特に動名詞)が使われることが多い。それはロシア語と異な り、ポーランド語には動名詞という手段があるからだと思われる。 Pływanie jest zdrowe. 水泳は健康によい。(この場合、Pływać jest zdrowe とは言 わない。しかし、ロシア語では Плавать здоровые. となる。) Jedzenie rybę jest zdrowe. 魚を食べることは健康によい。(ロシア語では Есть рыбу здоровые. となる。 ② 不定詞が使われる場合と動名詞が使われる場合とでは若干ニュアンスを異にする。 す なわち、不定詞が使われる場合には行為者がある程度名指しされるのであるが、動名詞 が使われる場合には匿名にしておきたい場合が考えられるのである。 Zaczynam budować dom. 私は家を建て始める。 358 動詞 Zaczynam budowanie domu. 家の建設に取りかかる。 Staram się przyjechać. 到着するように努力する。 Staram się o przyjazd. 到着のための条件を模索する。 Ⅱ 副分詞(ロシア語では副動詞と称されるが、ポーランド語では副分詞と称される。) 副分詞は、動詞から派生して、副詞の機能を合わせ持つものである。副分詞は変化し ない。ロシア語で言えば副動詞と称されるものに相当する。 副分詞にはロシア語と同様に、2種類がある。一つは、不完了体副動詞と同じもので あり、もう一つは完了体副動詞と同じものである。従って、前者は主節と同時進行の動 作を表し、後者は主節の動作より先に終了した動作を表すことが基本である。そして、 原則として両方とも主動詞と副分詞の主語は同じである。ただ、主文が無人称文でも用 いることができるので、その場合の主体は主文の動作主体と同じになる。 副分詞句には補語や状況語を伴うことが多く、コンマによって区切られて、主文の前 にも、後にも、中にも置くことができる。 1.不完了体副分詞 基本的な意味は「~しながら」である。 ロシア語の不完了体副動詞は現在語幹から作られたが、この点はポーランド語でも同 じである。不完了体副分詞は不完了体動詞の現在複数3人称に -c を付加するのが、基 本である。従って、pisać 書く、の場合は複数3人称が piszą であるので、pisząc 書き ながら、となる。複数3人称はどの活用形であっても語尾が -ą となるので -ąc を見た ら、不完了体副分詞とひとまず考えて良いであろう。 この場合は主動詞が表す時制と同時的である。日本語の訳文としては、「~しながら」 と訳すことが多いであろう。注意すべき点は以下のごとくである。 1)原則として、主動詞も不完了体動詞が使われる。この場合は、2つ以上の動作・状 態が平行して進行するのであり、主語も同じであるので、どちらを主動詞にし、どちら を副分詞にするかは好みの問題である。 On leżał na kanapie, czytając książkę. 「彼はソファーに寝転がって、本を読んでい た」の場合、先に副分詞を置き、Czytając książkę, on leżał na kanapie. としても良い し、副分詞と主動詞を替えて、On czytał książkę ,leżąc na kanapie. としても良いし、 先に副動詞を置き、Leżąc na kanapie,on czytał książkę. としても良い。 2)しばしば主動詞は完了体になることがある。この場合は、副分詞と主動詞の交換は できないのは言うまでもない。 Przecierając chustką oczy, skinęła głowę. 彼女はハンカチで眼を拭きながら、頷いた。 Maria przeczytała książkę, słuchając muzyki. マリアは音楽を聴きながら本を読み 終えた。 3)それ以外に、付随的行為、原因的行為、連続する行為、等を表すことができる。 Słuchała muzyki płacząc. 彼女は泣きながら音楽を聴いていた。 動詞 359 Słysząc krzyk dziecka, matka wybiegła na ulicę. 子供の叫び声を聞いたので、母親 は通りに飛び出した。 Jadąc prosto, dojedziesz do jeziora. 君がまっすぐ行けば、湖に着く。 4)慣用的な言い回しで、使われる。 prawdę mówiąc 真実を言えば ściśle mówiąc 正確に言えば 5)否定文では条件的なものや仮定的なものになることがある。 Nie mając pieniędzy, nie mogliśmy kupić samachodu. お金がなかったなら、我々は 車を買うことができない。 6)接続詞を使った複文に書き換えることができる。 Nie mając pieniędzy, nie kupiłem samochodu. Ponieważ nie miałem pieniędzy, nie kupiłem samochodu. 私はお金を持っていなか ったので、車を書くことができなかった。 2.完了体副分詞 基本的な意味は「~してから」である。 現在、この副分詞は文章語で、しかも公式文書で少し使われるだけであり、口語では 全く使われない。そして、完了体だけから派生し、また、変化もしない。この場合も主 語は主動詞と同一である。 ロシア語の完了体副動詞が過去語幹から作られたのと同様に、ポーランド語の完了体 副分詞は過去語幹から作られる。そして、完了体副分詞は過去単数3人称男性形から作 られるのが基本である。 1)過去単数3人称男性形が母音+ł の場合には、ł を取り、-wszy を付加して作る。従 って、 napisać書く、 の場合は、 過去単数3人称男性形がnapisał であるので、 napisawszy となる。 2)過去単数3人称男性形が、子音+ł の場合には、ł の後に-szy を付加して作る。従っ て、pójść 行く、の場合には、過去単数3人称男性形が poszedł であるので、その完了 体副分詞は poszedłszy となる。zgnieść ぺしゃんこにする、の場合には、過去単数3人 称男性形が zgniótł であるので、zgniótłszy となる。 3)尚、過去形が2つある動詞の場合は、それに応じて完了体副動詞も2つある。例え ば、oślepnąć 失明する、の場合は、oślepłszy と oślepnąwszy がある。 4)完了体副分詞は先立って完了した動作を基本的に表すものであるので、日本語の訳 文としては「~してから」となることが多いであろう。ただ、文脈によっては、原因、 条件、付帯的状況、譲歩等の意味になることもある。 上述したように口語では全く使われないので、同じ意味を表すのに口語では kiedy か i を用いて表すのが通常である。 ① i を用いた例 Zjadłem kolację i napisałem list. 私は夕食を取り、そして手紙を書いた。 Zjadłszy kolację, napisałem list. 私は夕食を取ってから、手紙を書いた。 ② kiedy を用いた例 Kiedy sprzedał dom, wyjechał za granicę. 彼は家を売って、外国に行った。 360 動詞 Sprzedawszy dom, wyjechał za granicę. 彼は家を売ってから、外国に行った。 5)完了体副動詞の位置であるが、主動詞の前であることが通常であるが、主動詞の後 であっても良い。特に付帯的状況を表す場合には、後になるであろう。 Siedział za stołem, podeprzawszy głowę rękami. 彼は頭を手で支えながら、机に向 かって座っていた(付帯的状況)。 Adam kupiwszy samochód, od razu pojechał do Krakowa. アダムは車を買うとすぐ に、クラクフに行った。 Obejrzawszy film, Adam wyszedł z kina. アダムは映画を見てから、映画館を出た。 6)慣用句で使われる場合もある。 prawdę rzekłszy 真実を言えば 3.主語が異なる場合には、副分詞は使わない。 1)副動詞は主文と副文の主語が同じ場合に使われるので、主語が異なる場合には使わ れない。その場合には、kiedy を使うか、あるいは文を2つにするべきである。 Kiedy Adam ogłada telewizję, jego żona gotoje. アダムがテレビを見ている間、彼の 妻は料理を作っている。 あるいは、Adam ogłada telewizję. Jego żona gotoje. Kiedy Adam otrzymał list, jego żona wyjechała. アダムが手紙を受け取った時、彼の 妻は出発した。 あるいは、Adam otrzymał list. Jego żona wyjechała. 2)また、主語が異なる場合で、主文の動詞が視覚、聴覚等、人間の感覚に関係する動 詞の場合に、接続詞の jak と副文を使うことにより表すことができる。副分詞と直接に は関係ないが、便宜上ここに言及する。 Patrzyłem, jak brat wychodził. 私は弟が去っていくのを見た。 動詞 361 Ⅲ 形容分詞(ロシア語においては形動詞と称するのであるが、ポーランド語において は形容分詞と称する。) ロシア語においては形動詞は、能動形動詞現在、能動形動詞過去、受動形動詞現在、 受動形動詞過去の4種類を区別できたが、ポーランド語においては能動形容分詞のうち 過去に関するものはほとんどないので、それは考慮するに値しない。一方、受動形動詞 現在、受動形動詞過去に相当するものは見られる。形容分詞は動詞から派生して、形容 詞の機能を合わせもつものである。そして、ロシア語と同様に修飾される名詞の性、数、 格によって語尾変化するのはいうまでもない。また、比較級、最上級は原則として認め られないのもロシア語と同様である。 1.能動形容分詞(主文の動作や状態と同時的な副次的動作や状態を表す。) ロシア語の能動形動詞現在は動詞の現在語幹から作られたが、ポーランド語の形容分 詞もそのことが該当し、動詞の現在語幹から作られる。 ロシア語においては不完了体の現在複数3人称の最後の т を取り、щ+形容詞語尾を 付加した。ポーランド語においても類似しており、不完了体動詞の現在複数3人称に -c を付加し(ここまでは不完了体副分詞と同じ)、形容詞の活用語尾を付加するのが通常 である。従って、pisać の場合は、現在複数3人称が piszą であるので、主格は男性形、 中性形、女性形、複数男性人間形、複数非男性人間形はそれぞれ piszący piszące pisząca piszący piszące となる。単数男性形と複数男性人間形の場合が同じであるが、これは c の後は、-y を書き、-i を書かないためである。従って、語幹が -c で終わる形容詞の変 化と同じである。非男性人間形の場合は、形容詞と同じく語尾が -e であり、中性形と 同じになる。 czytać 読む、の能動形容分詞の変化は次のようである。 単数 複数 男性形 中性形 女性形 男性人間形 非男性人間形 主格・呼格 czytający czytające czytająca czytający czytające 生格 czytającego czytającego czytającej czytających czytających 与格 czytającemu czytającemu czytającej czytającym czytającym 対格 czytającego czytające czytającą czytających czytające 造格 czytającym czytającym czytającą czytającymi czytającymi 前置格 czytającym czytającym czytającej czytających czytających 能動形容分詞の特徴は以下のごとくである。 1)能動形容分詞は関係代名詞によって導かれる従属節に代わるものである。この点は ロシア語と同じである。そして、ロシア語と同じようにその変化は修飾される名詞の性、 数、格に一致する。また、時制は主文の時制に一致する。従って、能動形容分詞は関係 代名詞の構文で書き換えることができるのが、原則である。 ① Każdy robotonik pracujący w tej fabryce jest zadowolony z warunków. この工場 362 動詞 で働くすべての作業員は、労働条件に満足している。 これを関係代名詞を使って書き換えると、 Każdy robotonik, którzy pracuje w tej fabryce, jest zadowolony z warunków. ② Widzę pana budującego dom. 私は家を造っている紳士を見る。 これを関係代名詞を使って書き換えると Widzę pana, który buduje dom. ③ Widziałem dziecko czekające na matkę. 私は母親を捜している子供を見た。 これを関係代名詞を使って書き換えると、 Widziałem dziecko,który czekało na matkę. ④ Rozmawiał z dziećmi oglądającymi film. 彼は映画を見ている子供たちに話しか けた。 これを関係代名詞を使って書き換えると Rozmawiał z dziećmi, które oglądały film. 2)能動形容分詞は進行する動作、過程や状態を表すものであるが、この場合、形容詞 の代わりになるものであるので、通常は名詞の前に置かれる。 Spotkałem pracującego człowieka. 私は働いている人間に会った。 Patrzę na bawiącą się córkę. 私は遊んでいる娘を見る。 3)ポーランド語において特徴的であるが(ロシア語にはなく、一部ドイツ語で見られ るが)、能動形容分詞が名詞と関係し、その間に句が入り、その句が能動形容分詞が 示す動作などを限定する場合がある。例えば、Kopnąl leżący na ścieżce kamień. 彼 は、 小道に転がっている石を蹴った。 leżacy が kamień を修飾し、 その間に na ścieżce が入り、leżacy を限定する。 4)述語的用法も見られる。 Ten problem jest bardzo interesujący. この問題は非常に興味深い。 5)ロシア語にも見られたことであるが、ある種の能動形容分詞は一時的に特別の名詞 になることがある。これは文脈で判断する。 Dla chcącego nie ma nic trudnego. やる気のある人にとって不可能なことはない。 Są ofiary wśród protestujących. 抗 議 を す る 人 々 の 間 に 犠 牲 者 が い る 。 (protestujących は protestować 抗議する、の能動形容分詞が名詞化したものであり、 主格は protestujący で、「抗議する人」、の意味になる。そして、protestujących は その複数生格形である。wśród は生格支配の前置詞である。) 6)ある種の能動形容分詞は独立の名詞になっている。この場合、名詞でありながら、 変化は形容詞のそれと同じである(要するに形容詞変化名詞である。)。 palący 喫煙者(palić タバコを吸う、の能動形容分詞が palący である。) służący 召使い( służyć 仕える、の能動形容分詞が służący である。) 等多い。 この場合、女性を表す場合は語尾が異なる。例えば、女性の喫煙者は paląca である。 7)ある種の能動形容分詞はそれが転じて、本来的な形容詞になることがある。 interesujący 興味のある rażący 騒々しい、等。 8)形容詞から派生した副詞はかなり見られたが、能動形容分詞も形容詞としての働き 動詞 363 をするし、変化も形容詞と同じ変化をするので、それから派生する副詞というのも見ら れる。 pytająco 懐疑的に( pytać 質問する、の能動形容分詞が pytający であり、それか ら派生しているのである。) drwiąco あざけって、( drwić からかう、の能動形容分詞が drwiący であり、それ から派生しているのである。) 尚、ロシア語においては能動形動詞過去というものがあるが、ポーランド語には能動 形容分詞は現在形のみであり、ロシア語の能動形動詞過去に相当するものはない。これ に替わって後述する形容詞的 ł 分詞がその役割を担う。 9)能動形容分詞は不完了動詞から導かれるだけであり、完了体動詞から導かれること はない。 10)尚、能動形容分詞は後述する受動形容分詞と異なり、再帰動詞でも作られる。そ の場合には、się は2)の例文のように能動形容分詞の直後に来る(Patrzę na bawiącą się córkę. 私は遊んでいる娘を見る。)。 2.受動形容分詞 ロシア語において受動形動詞は頻繁に使われたが(特に受動形動詞過去)、このこと はポーランド語においても同様である。受動形容分詞は形容分詞や副分詞の中で最も複 雑である。ロシア語の受動形動詞に関しては、受動形動詞過去は動詞の過去語幹から、 受動形動詞現在は動詞の現在語幹から作られた。しかし、ポーランド語においては受動 形容分詞は過去語幹から作られるものもあるし、現在語幹から作られるものもあるので やや複雑である。ただ、他動詞から作られる点、不完了体からも完了体からも作られる 点は、ロシア語と同じである。そして、不完了体からは受動形容分詞現在が、完了体か らは受動形容分詞過去が作られる。また、再帰動詞からは作られない。 受動形容分詞を形成する接尾辞及び語尾は大きく分けて次の3つがある。それぞれ、 単数男性形、単数中性形、単数女性形、複数男性人間形、複数非男性人間形の順に挙げ ると、 -any, -ane, -ana, -ani, -ane -ony,-one, -ona, -eni, -one -ty, -te, -ta, -ci, -te である。 1) -any,-ane,-ana,-ani,-ane タイプ このタイプは、動詞の不定詞の最後が -ać, -eć の場合であり、この場合の基本となる 活用形は過去語幹である。この場合は、不定詞から -ać, -eć を取り、-any -ane -ana -ani -ane を付加する。 この場合は動詞の活用形のタイプ(第一か、第二か、第三か)が何であっても構わな い。従って、brać 取る、の場合は brany brana brane brani brane となる。widzieć 見 る、の場合は、widziany widziana widziane widziani widziane となる。 2)-ony -one -ona -eni -one タイプ このタイプは、動詞の不定詞が -ić, -yć, -ść, -źć, -c で終わる場合で、基本となる活用形 364 動詞 は現在語幹である。ただ、前2者(母音性語末動詞)と後3者(子音性語末動詞)では 基本となる現在形の活用が異なるので下記のごとく区別すべきである。 ① 不定詞の語尾が -ić -yć で終わる場合 この場合は現在複数3人称が基本であり、それから作られる。すなわち、現在複数3 人称の -ą を除去し、それに -ony(単数男性形) -one(単数中性形) -ona(単数女性 形) -eni(複数男性人間形) -one(複数非男性人間形)を付加するのである。この場 合、複数男性人間形主格語尾が -eni となるのは、-ni が硬口蓋音(軟音)であるので、 その前の母音が o → e と交替するからである。 従って、kupić 買う、の場合は、現在複数3人称が、kupią であるので、主格は kupiony (単数男性形)、kupione(単数中性形)、kupiona(単数女性形)、kupieni(複数男 性人間形)、kupione(複数非男性人間形)となる。 prosić 頼む、の場合、現在複数3人称は proszą であるので、主格はそれぞれ、 proszony, proszone, proszona, proszeni, proszone となる。この場合、語幹の子音は s であるが、その子音交替があり、s → sz となるので、それが反映されているのである。 tłumaczyć 翻訳する、の場合は、現在複数3人称は tłumaczą であるので、主格はそ れぞれ、tłumaczony, tłumaczone, tłumaczona, tłumaczeni, tłumaczone となる。 ② 不定詞が -ść, -źć, -c で終わる場合も-ony -ona -one -eni -one となるが、現在単数3 人称が基本となる。s 語幹の wynieść 運び去る、の場合、現在単数3人称は wyniesie であるので、主格は、wyniesiony(単数男性形)、wyniesione(単数中性形)、 wyniesiona(単数女性形)、wyniesieni(複数男性人間形)、wyniesione(複数非男 性人間形) となる。 z 語幹の wieźć 乗り物で運ぶ、の場合は、現在単数3人称は wiezie であり、wieziony (単数男性形)となる。 t 語幹の pleść 編む、の場合、現在単数3人称は plecie であるので、pkeciony(単数 男性形)となる。 d 語幹の kłaść 置く、の場合は現在単数3人称は kładzie であるので(ちなみに単数 1人称は kłedę)。kładziony(単数男性形)となる。 注意すべきは -ść で終わる場合であっても上とは異なる形成法を有するものもある。 例えば、kraść 盗む、の場合、現在単数3人称は kradnie であるが、受動形容分詞は kradziony, kradzione, kradziona, kradzeni, kradzione であり、 -dni- が -dzi- に替わっ ているのである。この違いは活用形式が異なる点に求めることができる。すなわち、前 者の場合には、語幹に接尾辞がないタイプであるのに対して、後者は語幹に接尾辞があ るタイプ(そのうち、接尾辞が n となるタイプ)の動詞であるからである。 -c で終わる場合の例は、strzec 見守る、がある。現在単数3人称は strzeże であり、 主格は strzeżony(単数男性形)となる。 ※ 同じ現在形の語幹から派生するにしても -ić, -yć の場合は複数3人称(あるいは単数 1人称)を基本にし、この場合は単数3人称を基本にするのはなぜであろうか。それは、 子音交替がある活用形が重要であるためではなかろうか。すなわち、-ić, -yć の場合は現 在語幹に -j が入り、j の前の子音が子音交替を起こすが(第三子音交替)、その主たる 動詞 365 活用形が単数1人称及び複数3人称である。一方、-ść,-źć,-c の動詞の場合は第一活用動 詞であり、語尾 -e の前の子音が子音交替を起こすが、それが単数2人称、単数3人称 を始めとする活用形であるからなのである。 3)-ty,-te,-ta,-ci,-te タイプ このタイプは不定詞からだけで判断すると上述した1)か2)①に含まれると思われ るが、そのうちでやや特殊なものである。すなわち、一見1)と2)①に入るが、綴り の特殊性故に形容分詞がやや特殊な形を取るのである。この場合は、語尾の -ć を取り、 -ty -te -ta -ci -te を付加して作る。 ① 不定詞の終わりが母音+ć で終わる場合(但し、-ać, -eć, -ić, -yć は除く)と、-ić と -yć で終わる場合で、一音節の語(接頭辞は除いて考えるのは当然である。)である場 合には、語尾の ć を取り、-ty(単数男性形)、-te(単数中性形)、-ta(単数女性形)、 -ci(複数男性人間形)、-te(複数男性非人間形) を付加して作る。 ア、まず、不定詞の語尾が母音 + ć で終わり、1)と2)①を除く場合とは、語尾が -uć, -oć, -ąć, -ęć となる場合であるが、-oć と -ęć で終わる場合はなく、また、-ąć となる場 合は、②で特別に取り上げるので、ここでは -uć となる場合のみを取り上げればよい。 その例は、psuć 駄目にする、であり、順に、psuty psute psuta psuci psute となる。そ の他には、ukuć 思いつく・鋳造する、wyczuć 感じる、wypluć 唾液を吐く、等がある。 それぞれ単数男性主格は、ukuty, wyczuty, wypluty となる。 イ、次に、-ić, -yć で終わる場合は2)①で取り上げるものであるが、そのうち一音節に なる場合である。ただ、二音節以上であっても接頭辞や接尾辞で二音節以上になってい る動詞もここに含めるべきである。例えば、bić 打つ、の場合、-ić で終わり、一音節で あるので、bity bite bita bici bite となる。そして、zabić 殺す、の場合、二音節である が、za- は接頭辞であるので、ここに含まれ、zabity zabite zabita zabici zabite となる のである。また、pić 飲む、 (一音節で母音+ć で終わる)の場合は pity pite pita pici pite である。 -yć で終わる動詞で代表的なものは、myć 洗う、がある。それぞれ単数主格は、myty myte myta myci myte となる。その他、przeżyć 生き残る、等がある。これは2音節で あるが、prze- という接頭辞が付いているので、ここに含めるのである。 尚、複数男性人間形の主格語尾が -ci となるのは、複数男性人間形の終わりが -i とな り、その i は i1 であってその前の子音に第一子音交替を起こすからである。 t → ć と 子音交替があり、-cii となるが、母音が2つ続く場合は最初の母音は消去されるのであ る。 ウ、しかし、これには例外があり、例えば、oclić 課する、という動詞の場合、単数男性 主格は、oclony と -ony となる。この動詞の o- は clić という不完了体を完了体にする 接頭辞に過ぎないが(従って一音節と考えて良い)、-ty とはならないのである。 エ、また、受動形容分詞の形が2つあるものもある。例えば、otworzyć 開く、の場合、 otworzony と otwarty の2つがある。この場合、ot- が接頭辞であるにしても、この動 詞は二音節であり、本来から言えば前者が正しいのであるが、後者も慣用的に認められ るのである。そして、この動詞は過去形に2つの形がある。単数3人称男性形は otworzył 366 動詞 と otwarł の2つがある。過去形は不定詞と関係があるから、このことはある程度説明 できる。 ② 不定詞の終わりが -ąć となる場合もこのタイプであるが、ą が ę に交替するので、 ここで別に取り上げる。 例えば、 ciąć 切る、の場合、語尾の ć を取ると、ciąty となるはずであるが、-ty, -ta, -te 等は開音節であり、開音節の前では -ę が使われるのである(不定詞の場合は閉音節 の前であるので、-ą が使われる。)。従って、主格は cięty(単数男性形)、cięte(単 数中性形)、cięta(単数女性形)、cięci(複数男性人間形)、cięte(複数男性非人間形) となる。 また、-ąć で終わる場合の内、-nąć となるものは、-n が軟音化し、-ni-となることに も注意すべきである。従って、osiągnąć 手に入れる、の場合は、osiągnięty(単数男性 主格)となる。przesunąć 移動する、の場合も przesunięty 移動した(単数男性主格)、 となる。 ③ 不定詞の終わりが -eć となる場合は1)で取り上げたのであるが、そのうち、過去 語幹の最後の子音が -r となる動詞(語幹に接尾辞がない動詞で r 語幹の動詞)は特殊 である。前述したようにこの動詞は過去語幹と不定詞の語幹が異なるものであり、過去 語幹は特殊である。そして、受動形容分詞はこの特殊な過去語幹から作られ、それに、 -ty を付加して作る。そのようなものは不定詞が -rzeć で終わる場合が多い。 例えば、drzeć 引き裂く、の場合は、過去語幹は dar-となるので、darty(単数男性 主格)となる。その他には、trzeć こする、wrzeć 沸かす、przeć 促す、umrzeć 死ぬ、 等がある。また、żreć(動物が)食べる、も żarty(単数男性主格)となる。 4)不規則な形を取る受動形容分詞 以上のような規則に従って受動形容分詞は形成されるのであるが、中にはその規則に 当てはまらないものがある。不規則な形を取る受動形容分詞には以下のようなものがあ る。 mleć 砕くの場合は、 mielony natchnąć 息を吹きかける、の場合 natchniony otworzyć 開く、の場合、 otwarty(前述したように、otworzony .という形 もあるが、これは規則通りである。) pleć 雑草を取るの場合、 pielony znaleźć 見つける、の場合、 znaleziony となる。 5)受動形容分詞の用法には以下のようなものがある。 ① 名詞を修飾する。 ア、この場合は修飾する名詞の前に置かれることもあるし、名詞の後に置かれることも ある。 starsza tleniona kobieta 髪を脱色した老婦人 poprawione zeszty 訂正済みのノー ト bita śmietana 生クリーム list polecony 書留郵便 動詞 367 イ、同じく名詞を修飾するが、関係詞節に代わるものがある。この場合は、修飾される 名詞の後に置かれるのが原則である。 List wysłany dziś z Warszawy będzie jutro w Krakowie. 今日、ワルシャワから送ら れた手紙は、明日にはクラコフに届くだろう。(wysłać の受動形容分詞の wysłany は List を修飾している。) これを関係代名詞を使った文に書き換えると、 List, który został wysłany dziś z Warszawy, będzie jutro w Krakowie. となる。 Zagraniczni turyści i Egipcjanie, porwani na Saharze w ubiegłym tygodniu, są cali i zdrowi. サハラ砂漠で先週拉致された外国人の観光客とエジプト人は、無事であ る。 その際、修飾する名詞の性、数、格に一致する。上の例で言えば、受動形容分詞であ る porwani が修飾する名詞は複数男性人間形主格であるので、porwani となっている のである。 ② 受動態文に使われる。その場合、助動詞としては動作受動の場合、不完了体は być 、 完了体は zostać が使われ、状態受動の場合は完了体しかないが、 być が使われる(詳 しくは受動態の項参照)。 ア、不完了体を用いた動作受動 能動態 Nowak je zupa. ノバックはスープを飲んでいる。 受動態 Zupa jest jedzona przez Nowaka. スープはノバックによって飲まれている。 能動態 Ojciec pisał listy. 父は手紙を書いた。 受動態 Listy były pisane przez ojca. 手紙(複数)は父によって書かれた。 イ、完了体を用いた動作受動 能動態 Oni odwiedzili miasto. 彼らはその町を訪れた。 受動態 Miasto zostało odwiedzone przez nich. その町は彼らによって訪問された。 ウ、完了体を用いた状態受動 能動態 Lekarz zbadał pacjent. 医師はその患者を診察した。 受動態 Pacjent jest zbadany przez lekarz. その患者は医師によって診察された。 (この両者の意味は同じである。注意すべきは能動態は過去形になっているが、受態 態は現在形になっている点である。詳細は受動態の項を参照されたい。) ③ また、 能動形容分詞と同じく受動形容分詞とそれが修飾する名詞の間に句が介入する ことがある。 Zsunął zawinięty powyżej łokcia rękaw. 彼は、肘の上に巻かれてある袖をまく った。(この場合、zawinięty が rękaw 袖 を修飾しており、その間に powyżej łokcia が介入している。) Obaj milczeniem pominęli umówione na wtorek spotkanie. 二人は黙って火曜日 に予定された会談の内容に目を通した。 ④ 受動形容分詞はしばしば、精神的、身体的状態や活動を表す動詞に続くことがある。 その場合、受動形容分詞は同格の述語的形容詞としての役割を担う。 368 動詞 Ona milczała, do głębi poruszona tym gestem. 彼女はそのジェスチャーによって深 く動揺し、ずっと黙っていた。 On ciągle siedział pochylony nad krzesłem. 彼は、ずっと椅子の上にもたれながら座 っていた。 ⑤ 受動形容分詞は能動形容分詞と同じように、文脈によって名詞となることがある。 niezadowolony 不満な人 skazany 囚人 ⑥ 受動形容分詞は、独立の形容詞となり得る。特に、完了体から作られた場合が多い。 niewyspany 眠い szalony 狂気の zepsuty 荒廃した złożony 複雑な もっと特筆すべきことは、感情等と関係する完了体の動詞で się が使われる動詞の中 にも、その受動形容分詞が、独立の形容詞となるものがあると言うことである。 zadowolony 満足した(zadowolić się 満足する)、ucieszony 納得した(ucieszyć się 納得する)、zmęczony 疲れた(zmęczyć się 疲れる)zachwycony 熱中した (zachwycić się 熱中する) ⑦ 独立の名詞となる場合もある。人を表す名詞である。 duputowany 代表者、internowany 捕虜、oskarżony 被告、osadzony 囚人、等 ⑧ 述語的用法も見られる。 Kabel użyty przy naszym komputerze jest zepsuty. 我々のコンピューターに使われ たケーブルは壊れている(zepsuty が述語的用法である。)。 Ci ludzie są przemoczeni. これらの人々はびしょぬれである。 ⑨ 無人称受動文における受動形容分詞の用法 受動形容分詞には上記以外に特殊な形があり、それは語尾が -o となるものである。 これを一応、無人称過去形、と称するのであるが、それを用いて無人称受動文を作るこ とができる。行為の主体に関心が払われない場合にこの用法が使われるのが通常である。 この用法は不完了体動詞から導かれた受動形容分詞の場合にも、完了体動詞から導かれ た受動形容分詞の場合にも当てはまる。そして、通常は過去に関する事柄について述べ られる。また、受動形容分詞は他動詞しか認められなかったが、この無人称過去形は自 動詞でも認められるのが特徴である(詳細は5.を参照されたい。)。 Rozmawiano o wypadku. 事故について議論がなされていた Zbudowano dużą szkołę. 大きな学校が作られた。 O wypadku nic nie słyszano. その事故については何も聞かれなかった。 3.形容詞的 ł 分詞(日本語としての訳は形容詞的過去分詞) これは、ある限られた動詞から作られるものである。ロシア語には見られないもので あり、ポーランド語特有のものである。主として完了体自動詞から形成され、一定の事 象を表現するのに用いられる。この分詞は、過去単数3人称男性形から作られる。これ は、分詞としての特徴を失い、新たな語彙を形成することが多い。その語彙は、形容詞 としてあるいは名詞として形成される。その語尾を単数男性形、単数中性形、単数女性 形、複数男性人間形、複数非男性人間形の順に示すと、-ły, -łe, -ła, -li, -łe となる。 例え ば、umrzeć 死ぬ、の過去単数3人称男性形は umarł なので、その主格形は umarły, 動詞 369 umarłe, umarła,umarli, umarłe となる。 ① 形容詞となる例 były 以前の byly mąż 前夫 były prezydent 前大統領 zgniły 腐った( zgnić 腐る)zgniłe jabłko 腐ったリンゴ その他には、dojrzały 熟した(dojrzeć 成熟する)、osiwiały 白髪になった( osiwieć 白髪になる)skamieniały 硬直した( skamienieć 硬直する) ② 名詞となる例 これらの名詞はいずれも形容詞変化をするのは言うまでもない。 umarły 死者、故人(男性の場合)、umarła 死者、故人(女性の場合) przysięgły 陪審員( przysiąć 宣誓する)=もっともこれは①の形容詞ともなる。例 えば、sędzia przysięgły 陪審員(男性の場合)、は przysięgły が形容詞として働いて いる。 4.動詞から派生した形容詞で、可能・不可能を表す形容詞 多くの不完了体動詞で接頭辞の付いたもので、語幹に -a- を有するものは、-alny と なることにより可能・不可能を表す形容詞を形成する。例えば、sprawdzać 証明する、 からは、sprawdzalny 証明できる、という形容詞が作られる。 また、第二活用動詞で 語幹に -i- を有するものや、第一活用動詞で語幹に -nę- を有するものは、不可能を表す 形容詞として完了体形容分詞の否定形を取ることにより形容詞として働く。例えば、 ukoić いやす、 からは、 nieukojony いやすことのできない、 という形容詞が作られるし、 uniknąć さける、からは、nieunikniony さけることのできない、という形容詞が作ら れる。 5.無人称文を形成する -no / -to 構文(無人称過去形) これはロシア語の不定人称文に相当するものである。ロシア語の不定人称文は構造上 主語がなく、述語の動詞が複数3人称の形を取るが、それと類似している。動作主が誰 かを特定する必要ない場合に用いられ、ポーランド語においては動詞の受動形容分詞の 特殊形が使われるものである。この特殊形は語尾が -o で終わり、-no か -to になる。 活用はしない。これは完了体でも不完了体でも作られる。また、他動詞でも自動詞でも 作られる。 -no となるか -to となるかは、受動形容分詞で語尾が -any, -ony となる場合は -no となり、-ty となる場合は -to となるのが通常である。従って、受動形容分詞の単数男 性主格の -y を -o に替えるだけで、作られるが、自動詞でも作られるので、受動形容分 詞がない場合でも同様に考えて良い。後者の場合は、仮に受動形容分詞が考えられた場 合に、どうなるかを考えれば形成される。 1)受動形容分詞からの形成 pisany 書かれた → pisano wieziony 車で運ばれた → wieziono zabity 殺された → zabito 2)自動詞からの形成 chodzić 歩いていく → chodzono(仮定の受動形容分詞単数男性主格は chodzeony ) 370 動詞 jechać 行く → jechano(仮定の受動形容分詞単数男性主格は jechany ) wiedzieć 知る → wiedziano(仮定の受動形容分詞単数男性主格は wiedziany ) 3)これは無人称文を形成するが、新聞、雑誌等のメディアで良く使用される。 O tym wypadku pisano w gazecie.この事故について、新聞に書かれてあった。 Oczekiwano go na próżno. 彼を待ったが、無駄だった。 Zadanie wykonano. 課題は達成された。 Podano obiad. 昼食が出された。 Drogi zasypano śniegiem. 道は雪で覆われた。 Na Białorusi wykonano karę śmierci na dwóch mężczyznach. ベラルーシで2人の 男に対して死刑が執行された。 Odnaleziono zwierzę, którego nie widziano od 1924 r. 1924年以来見られなかっ た動物が発見された。 Przed białym domem podarto koran. ホワイトハウスの前でコーランが引き裂かれ た。 尚、この用法は過去に関する場合しか使用されない。現在や未来に関することで主体 を不明確にしたい場合には、再帰代名詞の się が動詞に付加されるのが通常である。詳 細は、無人称構文の項を参照されたい。 Ⅳ 動名詞 1.序 これはロシア語にはなく、ポーランド語に固有のものであるが、英語等には認められ るものである。しかも、かなり用いられ、不定詞あるいは副分詞よりも一般的である。 従って、動名詞についてその形、用法をしっかりマスターしなければならない。 これは動詞から派生した名詞である。 ただ、すべての動詞で形成されるわけではなく、動名詞が形成されない動詞もある。 それらを挙げると、iść, móc, musieć, pomóc, potrafić, umieć, wiedzieć 等である。動名 詞は基本となる動詞から派生したものであるので、動詞本来の特性をそのまま維持する。 すなわち、その動詞が他動詞なら直接補語をそのまま要求し、自動詞ならその状態を保 つ。また、基本動詞の格支配もそのまま維持するし、再帰動詞であれば再帰代名詞もそ のまま付加された形で使われるのである。 動名詞は名詞としては中性名詞である。動名詞は動詞の不定詞の語幹に接尾辞を付加 して作られる。動名詞は中性名詞であるので、中性名詞のように変化するのであるが、 その主格形は3種類しかない。それは語の終わりが -anie となるか、-enie となるか、 -cie となるかである。 この動名詞の形態は受動形容分詞と類似している。すなわち、-anie となるものは、 受動形容分詞の単数男性主格の終わりが -any となり、-enie となるものは、受動形容 分詞の単数男性主格の終わりが -ony となり、-cie となるものは受動形容分詞の男性主 格の終わりが -ty となるものが原則であるのである。しかし、受動形容分詞が認められ 動詞 371 ない動詞(例えば自動詞)でも動名詞が認められることがあるので、以下では形成に関 して述べる。 2.動名詞の形態 1)主格形の終わりが -anie となる場合 この場合は不定詞の最後が -ać で終わる場合である。これは例外がなく、活用形式が 何であっても構わない。-ać の -ć を除去し、-nie を付加するだけで、主格形が作られ る。従って、brać 取る、は branie、czytać 読む、は czytanie、pływać 泳ぐ、は pływanie 等となる。 ※ しかし、不定詞の最後が -eć で終わる場合はこれには当てはまらない。受動形容分 詞では、例えば widzieć 見る、は受動形容分詞の単数男性主格は widziany となったが、 動名詞は widzenie と異なっている。 2)主格形の終わりが -enie となる場合 この場合が最も多く、大多数の動名詞がこの形で終わる。受動形容分詞の終わりが -ony となるものが、原則としてこのような形を取る。 ① 不定詞の最後が -ić / -yć となる場合は、それぞれ -ić / -yć, を除去し、-enie を付加す ることによって形成される(但し、後述するように1音節及びそれに接頭辞が付加され ただけの動詞の場合は後述の3.に従うので、この場合は接頭辞を除いて2音節以上の 動詞の場合である。)。 その他、主な動詞と受動形容分詞及び動名詞を以下に記載する。尚、括弧は実際上は 認められないが、理論上考えられる形である。 動詞 受動形容分詞単数男性主格 動名詞 chodzić 歩く ( chodzony ) chodzenie nosić 歩いて運ぶ noszony noszenie wozić 車で運ぶ wożony wożenie czyścić きれいにする czyszczony czyszczenie jeździć 車で行く jeżdżenie robić する robiony robienie kroić 切る krojony krojenie liczyć 数える liczony lyczenie ② 不定詞の最後が -eć で終わる場合も -enie となる。 これは特殊で受動形容分詞の単数男性主格語尾は -any となったが、動名詞は -enie となる。例えば、słyszeć 聞こえる、の場合、受動形容分詞の単数男性主格は słyszany となり、動名詞は słyszenie となる。grubieć 増加する、の受動形容分詞の単数男性主 格は grubiany で、動名詞は grubienie である。この場合、不定詞から -eć を除去し、 -any を付加することにより、受動形容分詞が作られたが、動名詞は -eć を除去し、-enie を付加するのが、原則である。しかし、少し変容するものもある。 注意すべきは chcieć 欲する、である。これは受動形容分詞の単数男性主格は原則通 372 動詞 り chciany となるが、動名詞は chcenie であり、chcienie ではない。widzieć 見る、 の場合も同様で、受動形容分詞の単数男性主格は widziany であるが、動名詞は widzenie となり、widzienie ではない。 ③ 不定詞の最後が -ść, -źć, -c の場合 これらの場合、受動形容分詞の単数男性主格は -ony となったが、動名詞は -enie と なるのが原則である。受動形容分詞は単数2人称現在から複数2人称現在であり、それ らの語尾を除去し、-ony を付加して作ったが、それから -ony を -enie に変えれば良い のである。 動詞 受動形容分詞 動名詞 pleść 編む pleciony plecienie mieść ―を吹く mieciony miecienie gnieść 破壊する gnieciony gniecienie przewieźć 運ぶ przewieziony przewiezienie nieść 歩いて運ぶ niesiony niesienie gryźć 噛む gryziony gryzienie piec 焼く pieczony pieczenie strzec 咳をする strzeżony strzeżenie strzyc 短く切る strzyżony strzyżenie 3)主格形の終わりが -cie となる場合 基本的にこの場合は受動形容分詞の終わりが -ty となる場合である。 ① まず、不定詞の終わりが -ić / -yć あるいは -uć となり、しかも一音節の動詞の場合 が挙げられる(接頭辞が付加された場合はその接頭辞は音節分に含めない。)。これら の場合は、受動形容分詞は -ty に終わり、この -ty を除去し、-cie を付加して作られる。 例えば、pić 飲む、の受動形容分詞の単数男性主格は pity であり、動名詞は picie とな る。同様に być いる、は bycie 、myć 洗う、は mycie 、czuć 感じる、は czucie で ある。 ② 次に、不定詞の終わりが -ąć の場合も、-cie となる。この場合も、受動形容分詞の 終わりの -ty を -cie に交替させることにより作られる。例えば、ciąć 切る、の場合、 受動形容分詞の単数男性主格は cięty であり、動名詞は cięcie となる。 -nąć で終わる場合に n が軟音化することも同じである。したがって、moknąć 濡れ る、は moknięty から moknięcie 、zacząć 始める、は zaczęty から zaczęcie となる。 ③ 不定詞の終わりが、 -eć となる場合で特殊なものに drzeć 引き裂く、 や trzeć こする、 の場合は過去語幹が特殊の形をしており、その過去語幹から作られたが、受動形容分詞 はその過去語幹に -ty を付加することにより作られる。そして、この -ty に替えて、-cie を付加することにより動名詞が作られる。この場合の過去語幹はそれぞれ dar-, tar- で あり、動名詞はそれぞれ darcie, tarcie となる。 ※ 尚、2音節以上の -uć はどうなるかという問題があるが、-uć となる場合は、1音 節かあるいは接頭辞が付加したものしかないと考えるべきであるので、2音節以上は考 動詞 373 慮するに値しない。 ④ 例外的に iść から派生する動詞の場合、 -jście となる。 例えば、 przyjść は pryzjście と なる。 3.動名詞の用法 1)動名詞の格支配は元の動詞の格支配をそのまま維持する。もっとも、対格を除いて である。 pisać długopisem ボールペンで書く pisanie długopisem ボールペンで書くこと łaknąć wolności 自由を渇望する łaknięcie wolności 自由の渇望 ufać swojemu synowi 自分の息子を信頼する ufanie swojemu synowi 自分の息子へ の信頼 ※ 対格の場合は、生格となる。 pić wino ワインを飲む picie wina ワインを飲むこと 2)動詞が再帰動詞である場合には、再帰動詞を表す się はそのまま保持する。 domagać sie odszkodowania 補償を要求する domaganie się odszkodowania 補償 の要求 3)何かーするもの、を表す場合 coś do widzenie 何か見るもの coś do mówienie 何か言いたいこと 4)動名詞は前置詞 przy -の間、przed -の前に、po -の後に、等と共に用いられる ことが多いし、また、格支配は元の動詞のそれを保っている。さらに、動詞が再帰動 詞であった場合には、再帰動詞を表す się はそのまま保持する。 5)動名詞はそれが転じて名詞となることがほとんどである。例えば、Osiemnasta rocznica zjednoczenia 統一の18周年記念、zjednoczyć 統一する、の動名詞は zjednoczenie であるが、それが名詞となり、この場合は生格形であるので、zjednoczenia となるのである。 6)動名詞は時事ポーランド語等、新聞雑誌で盛んに使われる。 7)動名詞の終わりは、-anie か -enie か cie となるので、変化は -nie となる中性名 詞か -cie となる中性名詞と同じである。そこで、両者の変化を代表的な動名詞で示す。 主格 生格 与格 対格 造格 前置格 呼格 odrzucenie 拒否すること 単数 複数 odrzucenie odrzucenia odrzecenia odrzuceni odrzeceniu odrzeceniom odrzecenie odrzecenia odrzeceniem odrzeceniami odrzeceniu odrzeceniach odrzecenie odrzecenia 主格 生格 与格 対格 造格 前置格 呼格 mycie 洗うこと 単数 複数 mycie mycia mycia myć myciu myciom mycie mycia myciem myciami myciu myciach mycie mycia 374 動詞 第8節 特殊な動詞の形態 Ⅰ 再帰動詞(広義) 1.再帰動詞とは(広義) ロシア語においては再帰動詞は接尾辞が -ся である動詞によって表される。しかし、 ポーランド語においては再帰代名詞を用いて表される動詞を言う。本来、再帰動詞とは 意味上の動作主と被動者が同じであるような動詞をいうが、ポーランド語においてはそ れ以外のものも含まれ、się を始めとする再帰代名詞を用いて表されるものすべてを(広 義の)再帰動詞に含める。すなわち、ロマンス語における代名動詞と称されるものも含 む広い概念なのである。従って、再帰動詞に関する限りはポーランド語はロシア語より ロマンス語に近いと言えよう。また、イタリア語においては非人称構文というものがあ り、 その場合に再帰代名詞の si を用いて表すことがある。 これは、 ポーランド語では się を使用した無人称構文に類似しており、この点からもイタリア語との類似性を垣間見る ことができるのである。 主語と補語との関係において、広義の再帰動詞は1)代名動詞と2)狭義の再帰動詞 と3)相互再帰動詞に分けることができる。そして、2)の狭義の再帰動詞は się の機 能に応じて次の4つに分けることができる。① 再帰の意味を有する場合、② 受動の意 味を有する場合、③ 中間態と共に用いられる場合、④ 無人称動詞と共に用いられる場 合である。 1)代名動詞 これは、再帰代名詞 się が名詞の代用ではない場合がある動詞である。すなわち、się が単に動詞の構成要素にすぎない場合がある動詞である。従って、この場合の再帰代名 詞は主語や補語の性格をもたず、文法的述語成分と名付けられる動詞の構成要素であ る。再帰代名詞 się は本動詞と一体をなして一つの動詞を形成するのである。だから、 この構造の動詞は再帰代名詞とともに現れる場合があるのである。しかし、一方では再 帰代名詞がなくても動詞としての機能を果たすものもある。そこで、代名動詞は純粋代 名動詞と、部分的代名動詞がある。前者は再帰代名詞 się としか用いられないものである が、後者は再帰代名詞と一緒ではなくても使われうる場合がある動詞である。数として は、後者の方が圧倒的に多い。辞書の体裁としては、前者の場合は常に się を伴って表 してあり、後者の場合は się を伴わない場合と伴う場合が分けて表してある。 ① 純粋代名動詞 ア、このような動詞の代表的なものには、bać się 恐れる、śmiać się 笑う、uśmiechać się 微笑みかける、spóźnić się 遅れる、等がある。 bać się matki 母が怖い bać się o przyszłość 将来を心配する śmiać się z niego 彼のことを笑う śmiać się z programu telewizji テレビ番組で笑う uśmiechnąć się przyjaźnie 親しげに微笑みかける uśmiechnąć się do dziecka 子供 に微笑みかける 動詞 375 spóźnić się do zajęć 授業に遅れる spóźnieć się na samolot 飛行機に乗り遅れる イ、この部類に入る動詞には、接頭辞の na- や roz- を付けて行為を強化する動詞があ る。 例えば、czytać 読む、は代名動詞ではないが、それに na- を付加すると naczytać で あるが、それは常に naczytać się という形しか使われず、その意味も「存分に読む」と なるのである。その他の例としては、najeść się 腹一杯食べる、nasłuchać się 飽き飽き するほど聞く、napracować się くたくたになるまで働く、nacierpieć się ひどく苦しむ、 nacieszyć się 大いに喜ぶ、等がある。 ウ、また、接頭辞の roz- が付加した、rozglądać się 辺りを見渡す rozpływać się 分散 する・こぼれる、等もある。 エ、その他の純粋代名動詞を挙げる。 błąkać się 当てもなく歩き回る brzydzić się 吐き気を催す byczyć się のらくらして 遊ぶ chajtnąć się z +造格 ~と結婚する domagać się 要求する domagać się zwrotu piniędzy お金の返還を要求する domyślać się 推測する dopominać się 要求する dopominać się o zwrot piniędzy お金の返還を要求する dziać się 起きる Wypadek dział się zeszłego lata. その事故は去年の夏に起こっていた。 gnieździć się 巣を作る gramolić się よじ登る imać się ~を引き受ける jąkać się どもる kłaniać się お辞儀をする krzątać się 忙しく動き回る・忙しい krzątać się po lesie 森の中を忙しく動き回る Krzątała się po domu. 彼女は家事で忙しかった。 kwapić się ~を急ぐ kwapić się do dworca 駅に急ぐ lenić się 怠ける lenić się do ćwiczenia 練習を怠ける lęgnąć się 孵化する lękać się ~を恐れる lękać się śmierci 死を恐れる modlić się 祈る Modlił się o powrót syna. 彼は息子の帰還を祈った。 naśmiewać się 嘲る natykać się 偶然出会う opiekować się ―の世話をする piąć się 登る piąć się w górę po schodach 階段を上る podobać się ~の気に入る Film podobał się chłopcom この映画は若者に人気がある(この映画は若者の気に入 る) rozstawać się 別れる rozstawać się z żoną 妻と別れる rozpłakać się わっと泣き出す rozpłakać się nad losem syna 息子の運命にわっと泣き出す 376 動詞 ulotnić się 漏れる・蒸発する odzywać się 言う・話す On odzywał się po polsku. 彼はポーランド語で話した。 オ、助動詞として働くものもある。starać się ~しようと努める Czerwony Krzyż stara się ewakuować rannych. 赤十字は負傷者を避難させようと 努める。 starać się nie spóźnić 遅れないように努める(この場合、純粋代名動詞が二つ重なる が、このような場合には się の一つは省略する。)。 ※ もっとも、本動詞としての使い方もある。 starać się o zdanie egzamin 試験に合格するように努める カ、尚、再帰代名詞が与格( sobie )である純粋代名動詞もある。 przywłaszczyć sobie 充当する Przywłaszczył sobie pieniądze firmy. 彼は会社の金 を充当した。 ② 部分的代名動詞 ア、nadawać 送る、であるが、再帰代名詞を使うと、nadawać się ~に適する、となる。 On nadaje się do tej ważnej pracy. 彼はその重要な仕事に適任だ。 イ、udawać ~を装う、であるが、再帰代名詞を使うと、udawać się 成功する・うま く行く、となる。 ウ、zachować 保つ、であるが、再帰代名詞と使うと、zachować się ~に振る舞う、 となる。 Zachował się jak dziecko. 彼は子供のように振る舞った。 エ、stać 立っている、であるが、再帰代名詞を使うと、stać się 起こる・~になる、 となる。 Stał się cud. 奇蹟が起こった。 Stał się jeszcze bardziej nieszczęśliwy. 彼はますます不幸になった。 オ、przeprowadzać 連れて行く、であるが、再帰代名詞を使うと、przeprowadzać się 引っ越す、となる。 W przyszłym miesiącu się przeprowadzamy. 来月、我々は引っ越しするつもりだ。 カ、ostać 留まる、であるが、ostać się 抵抗する・耐える、となる。 Dom ostał się pożarom. その家は火事に耐えた。 キ、obruszać 取り除く、であるが、obruszać się ほどける ク、再帰代名詞が与格である部分的代名動詞もある。 Przypominałem sobie mojego ojca. 私は自分の父親を思い出した。 ※ この場合は部分的代名動詞であり、再帰代名詞はその構成要素であり、しかも その構成要素が与格で表される。それ故、構成要素の再帰代名詞としては sobie が使われているのである。そして、この代名動詞自体は対格支配であるから、補 語は mojego ojca と対格になっているのである。。 2)再帰動詞(狭義) これは、前述したように się の機能に応じて4つに分けることができる。そのうち、 動詞 377 ① の再帰の意味を有する場合は本来の再帰動詞の使われ方をするものである。 補語が主 語と同一であるために、当該名詞の代わりに再帰代名詞が用いられる動詞である。要す るに再帰代名詞が名詞の代用となるのである。この場合の再帰代名詞は対格が通常であ るが、動詞によっては与格の場合もある。対格の場合は、się あるいは siebie が使われ るが、与格の場合は sobie が使われる。 ア、się または siebie が使われる動詞の再帰的用法 例えば、myć という動詞の場合、Myję go.私は彼の体を洗ってやる、となり、Myję się. 私は自分の体を洗う、となる。 この場合、go が się に代わっているのである。golić ひ げを剃る、も同じである。budzić 目を覚まさせる、であるが、再帰代名詞を使うと、 budzić się 目を覚ます、となる。ożenić 結婚させる、であるが、再帰代名詞を使うと、 ożenić się 結婚する、となる。rozbić 壊す、の場合、On rozbił pudło. 彼は箱を壊した、 であるが、再帰代名詞を使うと、Pudło rozbiło się. 箱は壊れた、となる。zabić 殺す、 は zabić się 自殺する、となる。 その他の例: bronić 守る bronić się 自己防衛する gromadzić 集める gromadzić się 群がる formować ―を形成する formować się 整列する uczyć 教える uczyć się 習う przekonać 納得させる przekonać się 納得する pożegnać (立ち去る人に)別れの挨拶を述べる pożegnać się 別れを告げる poddać 任せる poddać się 屈服する wstydzić 恥ずかしい思いをさせる wstydzić się ―を恥じる イ、sobie が使われる動詞の再帰的用法 例えば、wyobrażać 見せる、という動詞の場合、Wyobrażam jej obraz. 私は彼女に絵 を見せる、となるが、Wyobrażam to sobie. 私はそのことを想像する、となる。 ② 受動の意味を表す場合 これは主格主語があって się を用いて受動の意味を表す場合である。この場合の動詞 は直接補語を取ることができる動詞であり、しかもその直接補語が受動文では主語とな り得る動詞である。 Buduje się nowy hotel. 新しいホテルが建てられる。 ③ 中間態と共に用いられる場合 この場合も主格主語がある。この点で、②と同じである。しかし、②とは動詞の質が 異なる。すなわち、この場合は動詞自体は直接補語を取ることができるが、受動文では 主語になり得ないものを się を用いることにより主格主語となり得るのである。例えば、 odmieniać się 変化する、の場合は、 Rzeczowniki odmieniają się przez przypadki. 名詞は格に応じて変化する。 Sytuacja nareszcie wyjaśniła się. 状況はついに明らかにされた。 ④ 無人称構文の際に się が用いられる場合 この場合の動詞には他動詞と自動詞があ る。 378 動詞 ②と似ているが、この場合は主格主語がない場合である。 ア、他動詞の場合 Tym ołowekiem pisze się dobrze. この鉛筆は良く書ける。 Już nie ogląda się tego filmu. もはやあの映画は見られない。 イ、自動詞の場合には、動作の普遍化、動作の状態の意を表す。 Na basenie pływa się. プールで人は泳ぐ。 Na łożku leży się. 人はベッドに横たわる。 3)相互再帰動詞 相互関係を表現する動詞である。これにも完全相互再帰動詞と部分的相互再帰動詞が ある。前者は相互再帰動詞しか用法がないものであり、後者はそれ以外にも用法がある 動詞である。前者は相互再帰動詞としてしか用法がないので、原則として単数形は存在 しない。ただ、 Bratałem się z Ewą. 私はイブと親交を結んでいた、というような使い 方もある。これは単数形による相互関係の表現であるが、z 前置詞句を義務的に要求す る再帰構造を持つものである。 ① 完全相互再帰動詞 zaprzyjaźnić się (互いに)親しくなる bratać się (互いに)親交を結ぶ ② 部分的相互再帰動詞 ア、zaręczyć 婚約させる zaręczyć się 婚約する イ、szamotać 引っ張る szamotać się とっ組み合いのけんかをする ウ、bić 打つ bić się 殴り合う Zwolennicy rządu biją się z przeciwnikami. 政府の支持者と反対派は互いに殴り合 っている。 エ、pogodzić 調和させる pogodzić się 仲直りする On umie pogodzić pracę z rozrywką. 彼は仕事と余暇を両立することができる。 Oni się wreszcie pogodzili. 彼らはついに仲直りした。 ③ 任意的相互再帰動詞 これは、2)の狭義の再帰動詞の使われ方をするとともに、相互再帰動詞としての使 い方もある再帰動詞である。例えば、nienawidzić という動詞の場合、nienawidzić kogo は、誰かを憎む、という意味になる。そして、nienawidzić się は、自分自身を憎む、と いう意味になるとともに、互いに憎み合う、という意味にもなるのである。okłamywać の場合、「騙す」という意味であるが、再帰代名詞を使うと、okłamtwać się となり、 意味は、「自分自身にうそを言う」という意味と、「互いに騙し合う」という意味の両 方が考えられる。 Oni się od dawna nienawidzą. 彼らは長い間お互いに憎み合っている。 Oni się od dawna nienawidzą. 彼らは長い間彼を憎んでいる。 On się od dawna nienawidzi. 彼は長い間自分自身が嫌いである。 2.再帰代名詞の位置 動詞 379 1)基本的には文の2番目の位置に来る。 Lekcja się zacząła o dwunastej. レッスンは12時に始まる。 Adam się myje. アダムは自分の体を洗う。 2)しかし、文が一つの述部だけから成り立っているときは、最後に来る。 Cieszę się. 私はうれしい。 Myję się. 私は自分の体を洗う。 否定文になっても同様である。 Nie cieszę się. 私はうれしくない。 3)再帰代名詞が再帰動詞の後に来る場合には、再帰代名詞は再帰動詞のすぐ後に来る。 再帰動詞が再帰代名詞の文の最後に来る場合には、再帰代名詞はその前に位置する。 Wykład się zaczął o drugiej. 講義は2時に始まった。 あるいは、動詞の後でも良い。 Wykład zaczął się o drugiej. 講義は2時に始まった。 4)多くの再帰動詞を含む場合、再帰代名詞は1つだけで良く、しかも再帰代名詞は最 初に出現する動詞の前に置く。 Oni się kłócili i godzili. 彼らは争ったり、仲直りしたりした。 このことは準動詞と本動詞がともに再帰動詞であっても同様である。 Adam starał się nie spóźnić na pociąg. アダムは列車に遅れないように努めた。 5)一つの動詞で再帰代名詞が2つ以上必要な場合には、się が関連する動詞の後に置 かれ、再帰代名詞の別の形のものはそれより遠い位置に置かれる。 Przyjrzał się sobie uważnie. 彼は自分自身を鏡で念入りに見た。 6)się と再帰代名詞ではない人称代名詞で短形のものが一緒に存在する場合には、się の方が前に来る。 Tusk intersował się nią. トゥスクは彼女に興味を持っていた。 しかし、長形が文の最初に来るときは、się は2番目に来る。 Jemu się Tusk przyglądał. 彼の方をトゥスクはじっと見ていた。 7)助動詞を使った構文で無人称構文であるものや、使わなくても無人称構文である時、 本動詞と助動詞などが連続するものでない時、się は無人称構文のすぐ後ろに置く。 Przykro się z niego śmiać. 彼について笑うことは残念だ。 Tam można się łatwo wzbogacić. そこでは、簡単に金持ちになることができる。 3.再帰代名詞の用法 1)自分自身の意味 これが再帰動詞の基本的な用法である。ロシア語においては他動詞に -ся を付加して 自分自身の動作を表した。ポーランド語においてはこの場合、się を使う。ロシア語に おいては -ся を付加した別の単語を作ったが、ポーランド語においては単語である się を挿入するのである。そして、強調する場合は się を siebie に置き換える。 Myję się. 私は自分の身体を洗う。Golę się. 私は自分のひげを剃る。 2)相互的(動作が相互に及ぶ意味=お互いに) 380 動詞 ロシア語においては他動詞に -ся を付加して、お互いにと言う意味を表した。これと 同じように、ポーランド語においては他動詞に się を挿入してお互いに、と言う意味を 表す。 Oni kochają się wzajemnie. 彼らは互いに愛し合っている。 3)代名動詞における się は単に動詞の構成要素になっているだけである。例は、上述 した所を参照されたい。 4)受動の意味を表す。これは主語が単数3人称あるいは複数3人称に限って、能動態 動詞が受け身の się の助けを借りて受動態を作るものである。この形は特定の動作主補 語や動因補語と共に用いることができないという点に特徴がある(尚、動作主補語とは 意思的動作を行うことができるもの、動因補語とは意思的行為をすることができない無 生物を言う)。従って、これが用いられる場合は、それらを曖昧にしたい場合が考えら れるであろう。イタリア語において受け身の si を使って受動態を作るものがあるが、 それに相当すると言える。後述する7)の無人称構文を使って表す用法と異なる点は、 この用法の場合は主格主語が存在すると言うことである。 się は他動詞の不完了体に受動的意味を与えることになる。ロシア語において-ся を付 加した不完了体動詞が、受動的意味になるのと同じである。 ポーランド語の受動態は zostać + 受動形容分詞(完了体の場合)あるいは być + 受 動形容分詞(不完了体の場合)で表すのが原則であるが、それ以外に、再帰代名詞 się を 使って受動の意味を表すこともできるのである。 Buduje się nowy hotel. 新しいホテルが建てられる(主語は nowy hotel)。 Gazeta się drukuje. 新聞は印刷される(主語は gazeta )。 Ta książka się dobrze sprzedaje. その本はよく売れる(主語は ta książka)。 Rozwiązanie się znajdzie. 解決策が見つけられるだろう(主語は rozwiązanie)。 We Włoszech się cztają mnogi książki. イタリアでは多くの本が読まれる(主語は mnogi książki )。 5)比喩的な再帰動詞 On poświęcił się nauce. 彼は科学に没頭する。 この場合は、się を siebie に置き換えることはできない。 6)中間態 中間態というのはロシア語でも見られるものである。これは、主体を明示せず、直接 補語となりうる物・事、事象等を主語にして表すものであり、ロシア語では -ся 動詞を 用いて表した。例えば、Дверь открылась. 窓が開いた、である。能動態と受動態の中 間に位置するものであり、能動態では行為を中心に記述するが、この中間態は出来事を 中心に記述するものである。中間態はポーランド語にもある。中間態は się を使用して 形成される。それはある他動詞を自動詞として用いて、他動詞として用いた時の直接補 語を主語にすることができるものである。中間態は、出来事のみならず、文の主語に何 らかの特性を与えるのを目的としているものも含まれるのが通常である。 出来事の例では、 Woda się gotuje. 水が沸騰している。 動詞 381 Słońce podnosi się. 太陽が昇っている。 Temperatura podwyższała się. 気温が上がっていた。 文の主語に何らかの特性を与える場合の例は、Ta książka dobrze się sprzedaje. この 本は良く売れる.。 さらに、精神的動揺や興奮を表す場合も中間動詞が用いられる。例えば、Martwię się stopniami syna. (私は息子の成績で悩まされる。)=尚、stopniami の単数主格は stopień であり、その複数造格である。stopień は dzień 日と類似の変化をする。 その他の例:Cieszę się z twojego przybyca. 私は、あなたの来訪がうれしい。 7)無人称構文で 無人称構文を使って表す用法で się が使われるものがあるが、これには直接他動詞を 用いる用法と、自動詞を用いる用法がある。いずれにしろ、この意味で使われるのは、 ある特定の主語についての思想表現をするのではなく、一般の人全体について述べるも のである。従って、この場合は主語は明示されない。この構文は -no/ -to 構文で表すも のに類似しているが、-no/ -to 構文は過去に関することしか表せないが、この構文では 過去のみならず現在、未来に関することでも表すことができる。イタリア語で非人称の si を使った構文に相当するものと言えよう。 Tym ołowekiem pisze się dobrze. この鉛筆は良く書ける。 Tym ołowekiem pisało się dobrze. この鉛筆は良く書けた。 Tym ołowekiem będzie się pisać. この鉛筆は良く書けるだろう。 Jeszcze się tańczy rumbę. ルンバはまだ踊られている。 Je się je bardzo dobrze na tym restauracji. このレストランはとてもおいしい。 Mówi się we Włoszech język włoski. イタリアではイタリア語が話される。 ① 無人称構文の一つが się を使用する場合である。この場合の się は消失した主語に 代わるものと言える。この場合、動詞は単数3人称形であり、直接補語は対格で表す(も っとも、否定文では直接補語は生格となる。)。また、過去形は単数中性形で表し、未 来形はほとんど使われない。動詞は通常は不完了体が使われる。なぜなら、習慣的な行 為と関係するからである。 Tworzy się tu wielkie dzieła sztuki. 芸術の偉大な作品がここで作れている。(この 文では、直接補語は wielkie dzieła sztuki であり、複数対格形となっている。dzieła は dzieło 作品の複数対格形である。) Już nie ogląda się tego filmu. もはやあの映画は見られない。(他動詞) W sypialni śpi się. 人はベッドルームで寝る。(自動詞) W kuchni gotuje się. 台所で食事が準備される。(自動詞) W restauracji je się. レストランでは食事がなされる。(自動詞) W barze pije się. バーでは人は酒を飲む。(自動詞) Na basenie pływa się. プールで人は泳ぐ。(自動詞) Na poszcie nadaje się listy. ポストには手紙が投函される。(他動詞) W domu mieszka się. 家では人々が住む。 (自動詞) W kinie ogląda się filmy. 映画館では人は映画を見る。(他動詞) 382 動詞 W sklepie kupuje się. 店では人は買い物をする。(自動詞) Na łożku leży się. 人はベッドに横たわる。(自動詞) Na krześle siedzi się. 人は椅子に座る。(自動詞) W biurze pracuję się. 職場では人は働くものである。(自動詞) ② 行為主は与格で表す。この場合、当然ながら名詞あるいは代名詞の与格である。 Każdemu się dobrze spało. 皆が良く眠れた。 Ludziom się tu dobrze mieszka. 人々はここで幸福に暮らしている。 ③ 同じく無人称構文であるが、外見を表す場合で、主語的従属文を導く場合 これに関する動詞は代名動詞である。この場合、意味上の主語となるものは与格で表す。 Wydawało się mi, że płakała. 彼女は泣いていたように私には見えた。 Okazało się mi, że nie przyjechał. 彼が到着していないことが私には分かった。 動詞 383 Ⅱ 助動詞 1.助動詞は動詞と同じような形態を有するが、他の動詞と結びついてその動詞の意味 を補完する作用を有するものである。助動詞はそれ単独では述部を構成できず、文法的 述部成分(不定詞等)と結びつき、述部を構成する。 ロシア語においても хотеть 等、助動詞と思われる動詞があったが、ポーランド語に おいては比較的多く使われる。助動詞の特徴を挙げれば、たいていは動詞の不定詞を必 要とするが、分詞を必要とする場合もある。助動詞自体は命令形を作らないし、動名詞 も作らない。また、受動態も形成しない。これらのことはロシア語と同じである。結び つく動詞(主として不定詞であるが)は不完了体の場合もあるし、完了体の場合もある。 2.助動詞の種類 1)時制と関係するもの być この場合、結びつく動詞は不完了体の不定詞あるいは ł 分詞であり、不完了体未 来形を形成する。 2)受動態と関係するもの ① być この場合は、 不完了体の受動形容分詞と結びついて状態的意味の受動態を形成す る。また、完了体の受動形容分詞と結びついて状態的意味の受動態を形成する。 ② zostać この場合は、完了体の受動形容分詞と結びついて動作的意味の受動態を形成 する。 3)話法の助動詞 話法の助動詞は可能性、能力、許容、希望、認容、必要性、任務、将来性、推量、見 通し、確信、蓋然性、等を表す場合に用いられる。不定詞が続く場合に、その不定詞が 完了体になるか不完了体になるかは、それが表している行為が現在のことか、繰り返さ れることか、将来に一度起こることかによって規定される。すなわち、前2者の場合に は不完了体で、後者の場合には完了体が使われるのである。また、話法の助動詞が過去 形の場合には、不定詞は通常は完了体が使われる。 話法の助動詞は未来形でも表すことができるが、注意すべきは未来形の場合には być 動詞の未来形 + 助動詞の ł 分詞が使われる。すなわち、Będę mógł iść. 私は行くこと ができるだろう、となり、Będę móc iść. とはならないのである。 ① chcieć 「欲しい、~したい」、の意味で用いられる。ロシア語の хотеть に相当する。その 活用は、 単数 複数 chcę chcemy 1人称 chcesz chcecie 2人称 chce chcą 3人称 384 1人称 2人称 3人称 動詞 単数 男性形 chciałem chciałeś chciał 女性形 chciałam chciałaś chciała 中性形 chciało 複数 男性人間 chcialiśmy chcialiście chciali 非男性人間 chciałyśmy chciałyście chciały Chcę studiować biologie. 私は生物学を勉強したい。 Nie chciał z mną iść do kina. 彼は私と一緒に映画に行きたくなかった。 ア、chcieć は動詞の不定詞と結びつくことが多いが、名詞の生格と結びつくこともある。 すなわち、生格要求動詞でもあるのである。ただ、この場合は助動詞ではなく、本動詞 としての用法であるが、便宜上ここに記載する。 Pies chce mleka. 犬はミルクを欲する。 イ、名詞節を従える場合もある。この場合も助動詞ではなく、本動詞としての用法であ る。 On chce, żeby wsystko było w porządku. 彼は万事順調に行けばと願っている。 ウ、その他の用法は、まず、無人称構文と共に使われ、主体は与格で表す。この場合の 動詞の定形は単数3人称(過去では中性形)であり、再帰代名詞 się を伴う。się の後 は不定詞が続く。 Chce mi się jeść. 私は何かを食べたい気がする。 Chce mi się pić. 私は口が渇いている。 エ、仮定法を使った用法は、 Chciałbym ci pomóc. 私は喜んであなたを助けたいのだが。 ② woleć 「~をより好む」、の意味で用いられる。ロシア語の предпочитать に相当する。 その活用は、 単数 wolę wolisz woli 複数 wolimy 1人称 wolicie 2人称 wolą 3人称 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 wolałem wolałam woleliśmy wolałyśmy 1人称 wolałeś wolałaś woleliście wolałyście 2人称 wolał wolała wolało woleli wolały 3人称 ア、woleć の後は不定詞のみ成らず、名詞も続く(もっとも、名詞が続く場合は助動詞 ではなく、本動詞としての用法である。)。ただ、chcieć との違いは、名詞が続く場合 は、その名詞は対格になるということである。 385 動詞 Wolę herbatę. 私は紅茶を好む。 イ、また、比較する場合には niż, od を用いる。 Wolę kawę niż herbatę. 私は紅茶より、コーヒーを好む。 Wolę kawę od herbaty. 私は紅茶より、コーヒーを好む。 Ona woli malować niż pisać. 私は文章を書くことよりも、絵を描くことが好きであ る。 ウ、名詞節が来る場合もある。 Wolę, żebyś się popieszył. むしろあなたが急いだ方が良い。 ③ musieć 必然性を表す。ロシア語の должен に相当する。その活用は、 単数 muszę musisz musi 1人称 2人称 3人称 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 musiałem musiałeś musiał 女性形 musiałam musiałaś musiała 中性形 musiało 複数 musimy musicie muszą 複数 男性人間 musieliśmy musieliście musieli 非男性人間 musiałyśmy musiałyście musiały .ア、「~しなければならない」、という意味 On musi jutro pojechać do Polski. 彼は明日ポーランドへ行かなければならない。 Dziecko musi iść do szkoły dziś, bo nie jest chore. その子供は今日学校へ行かなけれ ばならない。病気ではないのだから。 Dziecko musi chodzić do szkoły, bo musi się uczyć. 子供は勉強しなければならないの だから、学校へ行く必要がある。 イ、「~するはずだ、~に違いない」、という意味 On musi być zajęty. 彼は忙しいに違いない。 ウ、この musieć は助動詞としてしか機能しないので、常に動詞の不定詞が続く。chcieć, woleć と異なり、名詞が続くことはない。 ④ móc 「~できる」、という意味がある。ロシア語の мочь に相当する。事情が許す時 に使う。その点で同じ「~できる」という意味である後述の umieć, potrafić と異なる。 また、「~して良い」、という意味もある。要するに、可能、許諾、推量、想定、等を表 すのである。これに続く不定形は完了体のこともあれば、不完了体のこともある。その活 用は、 386 動詞 単数 mogę możesz może 1人称 2人称 3人称 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 mogłem mogłeś mogł 女性形 mogłam mogłaś mogła 複数 możemy możecie mogą 中性形 mogło 複数 男性人間 mogliśmy mogliście mogli 非男性人間 mogłyśmy mogłyście mogły ア、「~できる」、という意味がある。これは事情が許すので可能であることを指す。 Czy możesz przyjść jutro? あなたは明日来ることができますか。 Stram się, jak mogę. 私はできるだけベストを尽くす。 Nie mogę tego wytrzymać. 私はそれを我慢できない。 イ、権利、権力を有する、という意味もある。 Policja nie może dokonać rewizji bez nakazu. 警察は令状なしでは、捜索することが できない。 ウ、許可(~しても良い)を表すこともある。 Czy mogę pana o coś poprosić? 貴女に何かをお願いしてもよろしいでしょうか? Czy mogę tu zapalić? ここでたばこを吸ってもよろしいでしょうか? エ、推量(~するかも知れない)を表すこともある。 Weż parasol, bo moze padać. 雨が降るかも知れないので、傘を持っていけ。 ⑤ umieć(potrafić) 「~できる」、という意味であり、後天的に獲得した能力を言うことが多い。umieć と potrafić はほぼ同じであるが、違いは umieć が補語としての名詞を取ることができ るのに対して、potrafić は不定詞しか後に続かないことである。また、umieć 自体 は不完了体であるのに対して、potrafić 自体は不完了体のみならず完了体でもあると いうことである。umieć の活用は、 単数 複数 umiem umiemy 1人称 umiesz umiecie 2人称 umie umieją 3人称 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間 非男性人間 umiałem umiałam umieliśmy umiałyśmy 1人称 umiałeś umiałaś umieliście umiałyście 2人称 umiał umiała umiało umieli umiały 3人称 Umiem śpiewać. 私は歌うことができる。(習ったので) 387 動詞 Mogę śpiewać. 私は歌うことができる。( móc なので、事情が許す、という意味で ある。) Ona umie pisać, ale bez ołówka nie może pisać. 彼女は書くことができるが、鉛筆が ないので書くことができない。(umieć と móc の違いに注意) Umiem cały wiersz na pamięć. 私はその詩を全部暗記できる(不定詞ではなく、名 詞が続く例)。 On potrafi/umie czytać stare rękopisy. 彼は古文書を読むことができる。 ⑥ mieć 話法の助動詞としての mieć はかなえられる義務、期待、一般に認められること、直 接的あるいは間接的要求を表す。ロシア語の иметь に類似しているが、ロシア語の иметь は主として「持つ」という本動詞としてしか使われないが、ポーランド語の mieć は本動詞のみならず、話法の助動詞としても使われることに注意すべきである。この項 では mieć の話法の助動詞としての面だけについて言及しているのである。その活用は、 本動詞と同じであり、以下のごとくである。 単数 複数 mam mamy 1人称 masz macie 2人称 ma mają 3人称 1人称 2人称 3人称 単数 男性形 miałem miałeś miał 女性形 miałam miałaś miała 中性形 miało 複数 男性人間 mieliśmy mieliście mieli 非男性人間 miałyśmy miałyście miały ア、まず、「~すべきである(義務)」、とか、「~しなければならない(必要性)」、 という意味がある。 Mam rozwiązać jeszcze jedno zadanie. 私には解かなければならない宿題がまだある。 On ma budować mosty. 彼は橋を造らなければならない。 Czy mam zamknąć okno? 私はその窓を開けなければなりませんか。 Masz mi przynieść teczkę. あなたは私にカバンを持ってこなければならない。 イ、「~することになっている」(予定)、という意味を表す。 Adam ma przyjść o czwartej. アダムは4時に来ることになっている。 Zakaz ma obowiązywać przez kolejne dwa tygodnie. 禁止措置はこれから2週間の 間とられる予定である。 ウ、mieć は過去形の場合、その他にもいろいろな意味がある。例えば、不確実性、実 現できない行為、過去における予告された未来の行為等である。 Później miałem się o jej życiu dowiedzić. 後に、私は彼の人生について聞き知ること になった。 388 動詞 Miałem to zrobić już wczoraj. 私はすでに昨日、それをすべきだったのに。 Miałem zacząć pracę. 私は仕事を始めてしまったと考えられていた。 エ、伝聞を表すこともある。 Adam ma mieć rak. アダムは癌だということだ。 Pogoda ma się pogorzyć. 天気はますます悪くなっているそうだ。 オ、受動形容分詞を用いて結果を表す用法もある。すなわち mieć + 物の対格+受動形 容分詞の対格形で、物の状態の結果を表すことができるのである。 Obiad ma ugotowany. 私は昼食を準備した。 Pieniądze mamy schowane. 我々はお金を置いた。 カ、mieć の後は不定詞が続くのが通常であるが、前置詞句が続くことがある。 Mam coś do zrobienia. 私にはしなければならないことがある。 ⑦ powinien(話法の助動詞と言うよりも、話法語と言うべきである。「~すべき」、 という意味である。) この語自体には、不定詞がなく、時制は現在と過去のみである。現在形においては、 3人称に関しては形容詞のように(この場合の形容詞として類似しているのは winien 有罪の、である。)変化し、1人称、2人称に関しては być の現在形のように活用する。 過去形においては、現在形に był/była 等を付加する。従って、この変化は特殊であり、 前述の①から⑥までの語とは基本的に異なっている。尚、無人称構文で powinno się と いう形も存在する。 現在形 単数 男性形 1人称 powinienem 2人称 powinieneś 3人称 powinien 女性形 powinnam powinnaś powinna 中性形 powinno 複数 男性人間形 powinniśmy powinniście powinni 非男性人間形 powinnyśmy powinnyście powinny 過去形 単数 複数 男性形 女性形 中性形 男性人間形 非男性人間形 1人称 powinienem był powinnam była powinniśmy byli powinnyśmy były 2人称 powinieneś był powinnaś była powinniście byli powinnyście były 3人称 powinien był powinna była powinno było powinni byli powinny były powinien の中心的な意味は、「~すべきだ、~に違いない」、である。次に来る不定 詞が、完了体の場合は未来において起こるであろうことを表現する場合であり、不完了 体の場合は現在起こっていることや、繰り返し起こることを表現する場合である。 ア、義務を表す On nie powinien wypuszczać psa samego na dwór. 彼は自分の犬を庭に放置してお 動詞 389 くべきではない。 Powinniście mniej narzekać i więcej pracować. あなた方は不平を言うべきではなく、 もっと働くべきだ。 Ona nie powinna była tego powiedzieć. 彼女はそれを言うべきではなかった。 Dzieci powinny słuchać rodziców. 子供は両親の言うことを聞くべきである。 イ、推量・可能性を表す Oni powinni być teraz w domu. 彼らは今家にいるに違いない。 Powinien zaraz wrzocić. 彼はすぐに帰るに違いない。 ウ、定められた条件を満たすべきこと等を表す。 Zupa powinna być gorąca. スープは熱いべきだ。 エ、また、再帰代名詞を使って無人称構文にもなる。 Nie powinno się było tego powiedzieć. 人はそれを言うべきではなかった。 Powinno się tu parkować. 人はここに停めるべきではない(ここは駐車禁止だ)。 ⑧ zamierzać ~するつもりである この動詞の活用は通常の第三活用動詞と同じである。 Zamierzam napisać ksiązkę dziś. 私は今日は本を書きたい。 Zamierzał kupić nowy dom. 彼は新しい家を買うつもりであった。 Ⅲ 無人称動詞(広義) 広義の無人称動詞とは主格主語がない文で使われる述語のことを言う。それには、無人 称述語、副詞述語、名詞述語、狭義の無人称動詞がある。 1.無人称述語 ロシア語には述語副詞と呼ばれる、品詞に準ずる独特のものがあった。その多くは副詞 と同じ形をしており、状態を表す無人称文の述語となるため、形態論と統語論の考え方を 併せた名称が生じた。例えば、можно, нельзя, надо 等である。ポーランド語にも同様の ものがあるが、もう少し多く、きめ細かいと言える。そのうちの一つが無人称述語と呼ば れるものである。 無人称述語はロシア語の述語副詞と同じように、主語がなく、単数3人称形でのみ使わ れる。従って、活用することもない。また、その後には動詞の不定詞が続くのが原則であ る。しかし、節が続くことや、名詞等の語が続くこともある。ただ、potrzeba だけは例外 で、名詞等が生格で続くし、不定詞が続くことはない。尚、無人称述語の後に続く動詞の 不定詞は肯定文では完了体が、否定文では不完了体が使われるのが通常であるが、絶対的 なものではない。 現在形は無人称述語だけで表し、単数3人称形の jest は省略するのが通常である。過 去形は、無人称述語 + było で表し、未来形は、無人称述語 + będzie で表し、仮定法は、 無人称述語 + byłoby で表すのが通常である。しかし、無人称述語の中には後述のように 固有の過去形を有するものもあり、その場合には少し異なってくる。 もっとも、これと後述する3.の名詞述語とは区別が難しいものがある。ただ、論理的 390 動詞 主語を示す場合には与格で表す点は同じであり、不定詞が続く場合がある点も同じである ので、強いて区別する実益は乏しいと言えよう。従って、無人称述語と称するものを広く 捉え、若干のものを名詞述語として後で述べる。 1)trzeba 必要性、義務性を表すが、後述する należy よりは非公式である。名詞が続く場合、そ の名詞は生格となる。不定詞が続く場合もある。いずれにしろ、論理的主語になるものは 与格で表される。 Trzeba mi spokoju. 私には休養が必要である。 Trzeba pomagać ludziom. 我々は人々を助けなければならない。 Na to trzeba pieniędzy. それについてお金が必要だ。 Trzeba było pojść do miasta. 町へ行くべきだった。 Trzeba będzie kupić samochód. 車を買う必要があるだろう。 Trzeba by było wyjechać rano. 早く出発する必要があったであろう(あるであろう)。 Trzeba mi napisać list. 私は手紙を書かなければならない。 2)potrzeba 必要、という意味であるが、論理的主語に相当するものは与格で、必要とされる物、事 は生格で表す。trzeba と意味はほぼ同じであるが、この場合には不定詞は続かず、続くの は名詞のみである。 Potrzeba mi słownika. 私は辞書を必要とする。 Potrzeba nam nauczycieli. 我々は教師を必要としている。 Potrzeba było mi pieniędzy. 私はお金が必要だった。 Potrzeba mi będzie na to więcej czasu.それについて私はもっと時間が必要だろう。 3)należy, należało 道徳的、法律的、社会的義務あるいは要求を表し、前述の trzeba より公式的な用法 である。należy は należeć の現在単数3人称であるんで、過去形は他のものと異なっ て nalezało という形が使われる。未来形は należało będzie となる。 Należy się dobrze zachowywać. きちんと振る舞わなければならない。 Należy wypełnić druk. 書類に記載しなければならない。 Za lody należało zapłacić. そのアイスクリームに対して代金を払うべきだった。 Należałoby płacić wyższe podatki.もっと高い税金を払うべきだったのに。 4)wypada これは礼儀にふさわしい行為を強調する場合に使う。「~にふさわしい」、という意 味を表す。wypadać の現在単数3人称であり、過去形は wypadało という形になる。 未来形は wypadało będzie である。 Wypada ich powiadomić. 彼らに報告するのが良い。 動詞 391 Nie wypada jej nie zaprosić. 彼女を招待しないのはふさわしくない。 Wypada zaprosić naszych sąsiadki. 我々の隣人達を招待するのはふさわしい。 5)można 「~して良い」、等、許諾を表す。後述の wolno より非公式である。 ① 許諾を表す Czy można otworzyć okno? 窓を開けても良いですか。 Nie można cały dzień spać. 一日中寝ていてはいけない。 Od jutra nie będzie można tu parkować. 明日からここでは駐車してはいけません。 Tu można palić. ここで喫煙してよろしい。 ② 可能性を表す Nie można było tam czekać. そこでは待つことはできなかった。 Bez pieniędzy nie można było żyć. 人はお金なしでは生きていくことができなかった。 Można by było znowu spróbować. 再び挑戦してみるべきだったのに。 6)wolno 「~して良い」、等、許諾を表すが、前述の można より公式的である。 Nie wolno wprowadzać psów. 犬を飼ってはいけない。 Nie wolno było pałić tu. ここでは喫煙が禁止されていた。 7)da się 「~できる」という意味を表す。常に się を伴う。過去は dało się である。da は dać の単数3人称である。 Nie da się skończyć tego do jutra. 明日までにこれを終えるのは不可能だ。 Rób co się da. できることをしなさい。 Tego nie da się przewidzieć. それを予想することは不可能である。 Czytał, kiedy się dało. 彼はできる時はいつでも本を読んでいた。 8)warto 「~する価値がある」、という意味を表す。過去は warto było、未来は warto będzie で表す。 Nie warto się martwić. 心配しても無駄だ。 Warto to zobaczyć. それを見る価値はある。 Warto będzie zwiedzać ten kościół. その教会は訪れるだけの価値があるだろう。 Warto było czekać. 待つ価値があった。 Nie warto byłoby się nad tym zastanawiać. それについて考えるのは無駄だったか も知れない。 9)szkoda 392 動詞 「残念である・~しても無駄だ」、という意味を表す。対象物は生格で表す。過去は było 、未来は będzie、仮定法は by było を付ける。szkoda の後に節が来る場合もある が、その場合には接続詞 że で導く。論理的主語は与格で表す。 Szkoda, że nie przyszedł. 彼が来なかったのは、残念だ。 Szkoda czasu. 時間の浪費だった。 Szkoda o tym myśleć.それについて考えるのは無駄だ。 Szkoda było czekać. 待っても無駄であった。 Szkoda mi było dziecka. 私は子供がかわいそうだと思った。 10)wstyd 「~なのは恥ずかしい」、という意味を表す。 Wstyd mi za czyn syna. 私は息子の行為が恥ずかしい。 Wstyd mi to zrobić. 私は恥ずかしくてそれができない。 11)przystoi あるいは godzi się 「 ~にふさわしい」、という意味を表す przystoi は przystać の現在単数3人称であ り、godzi się は godzić się の現在単数3人称である。 On wie, co mu przystoi. 何が彼にふさわしいのか、彼は知っている。 Nie godzi się tego robić. それをするのはふさわしくない。 これらの過去形は、przystało あるいは godziło się であり、未来形は przystało będzie あるいは godziło się będzie である。 12)niepodobna 「~できない」、という意味を表す。 Niepodobna w duchy wierzyć. 幽霊の存在を信じることはできない。 Niepodobna było pracoować pod złym warunkiem. 悪条件下で働くことはできなか った。 13)nie sposób これも「~できない」という意味を表す。 Nie sposób zadowolić wszystkich. すべての人を満足させることはできない。 2.副詞述語 副詞の中には1.の無人称述語と同様に無人称文を構成するものがある。これを1. と区別する意味で副詞述語と称する。そのような副詞には、自然状態を表す場合や、生 理・心理的状態を表す場合が考えられる。その例には、dobrze 良く、łatwo 簡単に、 trudno 難しく、miło 快く、na próżno 無駄に、przykro 残念に、doskonale すぐれて、 chłodno 涼しく、ciemno 暗く、gorąco 暑く、smutno 悲しく、wesoło 愉快に、等が 動詞 393 ある。 W Niemczech łatwo ukraść samochód. ドイツでは車を盗むことは簡単だ。 Doskonale mu mieć czas 9.9 na sto meterów. 彼が100メートルを9秒9で走る のは素晴らしい。 Przykro mi to mówić. そのように言ってごめんなさい。 Miło mi państwa poznać. 私は、あなた方と知り合いになれてうれしい。 Chłodno jej w ręce. 彼女の手は冷たい。 Chłodno dziś na dworze. 今日、外は寒い。 Smutno mi. 私は悲しい。 3.名詞述語 また、名詞の中にも1.2.と同様に無人称文を構成するものがある。czas 時間、pora 時間、strach 恐怖、brak 不足、等がある。 Czas już iść. もう行く時間だ。 Pora zaczynać. 始める時間だ。 Strach pomyśleć, że ... ... と考えると恐ろしい。 Brak mi słów. 私は言葉に詰まる。 Brak mu talentu. 彼には能力がない。 4.(狭義の)無人称動詞 これは動詞の内、無人称で使われることがある動詞を言う。その中には、無人称動詞 としてしか使われないものもあるし、一般の動詞と同じく、人称動詞として使われるが、 無人称動詞としての形態も取ることができるものがある。 1)天候、時間、雰囲気、状況等を表す動詞は、無人称動詞として単数3人称形しか使 われない。それには、 ① świtać 夜が明ける、dnieć 夜が明ける、grzmieć 雷が鳴る、zmierzchać się 薄明る くなる、ścieminiać się 暗くなる(日が沈む)、błyskać się 稲光がする、ocieplać się, 暖 かくなる、zachmurzać się 曇ってくる、等がある。 Świata. 夜が明ける。 Dnieje. 夜が明ける。 Grzmi. 雷が鳴っている。 Błyska się. 稲妻が光っている。 Ociepla się. だんだんと暖かくなる。 Oziębia się. だんだんと冷たくなる。 Pada. 雨が降る。 Pali się! 火事だ。 Zachmurza się. だんだんと曇ってくる。 394 動詞 Ściemnia się. 暗くなる。 ② cuchnąć 臭いがする、śmierdzieć 臭いがする、pachnąć 香りがする、szumieć がん がんする、等もある。 Tu śmierdzi dymem. ここでは煙の臭いがする。 Cuchnęło tu gazem. ここではガスの臭いがした。 Pachnie mi jasminem. 私にはジャスミンの香りがする。 これらの場合、主体を示す時は与格で表すが、対象となる物は造格で表す。 2)身体の状態、物事の成功・不成功、感情・気分などを表す動詞も無人称構文を取る。 ただ、1)と異なる点は、この場合の動詞は3人称が主体となった人称構文を取ること ができる点である。例えば、boleć 痛い、の場合、Boli mnie w głowie. 私は頭が痛い、 の場合には主格主語がない無人称構文となるが、Boli mnie głowa. 私は頭が痛い(直訳 すると頭が私を痛める。)、と主格主語が głowa となるので人称構文である。 ① 身体の状態を表す動詞 boleć 痛い、kręcić się 目が回る・むずむずする、łamać 骨を折る・受傷する、kłuć ち くちく痛む、等がある。 Kłuje mnie w boku. 私は脇腹がちくちく痛む。 ※ しかし、Kłuje mnie bok. という文では無人称文とはならない。主語が bok であ り、主格主語があるからである。 Miga mi w oczach. 私の目はぱちぱちする。 Zazieleniło się na łąkach. 草原が緑になった。 Swędzi mnie. 私はかゆい。 Mdli mnie. 僕はしびれる。 Szumi mi w uszach. 私の耳はぶんぶんうなる。 Szumi mi w głowie. 私の頭はがんがん鳴る。 Burczy mu w żołądku. 彼の胃はごろごろ鳴る。 Kręci mi się w głowie. 私は頭がぐるぐる回る。 Sparaliżowało ją. 彼女は麻痺した。 ② 物事の成功、不成功等を表す場合 udać się うまく乗り越える szczęścić się 運が良い powodzić się うまく行く(行かな い)・ついている(いない)dziać się ~するようになる Udało mu się. 彼はうまく行った(この場合、例えば、Ceremonia otwarcia udała się. 開会式は成功した、という様に人称構文でも使われる。)。 Poszczęściło jej się wstąpić na uniwersytet. 彼女はうまく大学に入れた。 powodzić jej się dobrze 彼女はうまく行く W parku działo się coraz gorzej. その公園では状態はますます悪くなった。 動詞 395 ③ 感情・気分を表す場合 zachcieć się ~したい気がする、podobać się ~が気に入る、nudzić się 退屈である、 zbierać się ~しそうである、ulżyć 楽になる Zachciało mi się spać. 私は眠たくなった。 Zachciało mu się jazdy.彼はドライブをやりたい気分だった。 Podoba mi się tu. 私はここが気に入っている。 Zbiera mi się na wymioty. 私はむかむかする。 Chce mi się pić. 私は飲みたい気分だ。 Ulżyło mi, że ci zwierzyłem secret. 私は君に秘密を打ち明けて気が楽になった。 Nudzi mi się. 私は退屈だ。 Robi mi się niedobrze. 私は気分が悪くなった。 5.動詞の不定詞を使う場合 widać, słychać, czuć, znać は五感を通じて受け取れる感覚状態を、不定詞を用いて表 すことができる。その中で widać, słychać は不定詞でしか用いられないが、czuć, znać は不定詞による用法以外に通常の動詞としての用法もある。widać 見える、słychać 聞 こえる、はロシア語ではそれぞれ видно、слышно に相当する。現在形は補助動詞を 使わずに表されるが、過去形は być の過去中性形、すなわち było を、未来形は być の 未来形、すなわち będzie を補助動詞として使う。 Z okna widać morze. 窓からは海が見える。 Nic nie widać. 何も見えない。 Brzegu jeszcse nie było widać. 岸はまだ見えなかった。 Słychać było muzykę. 音楽が聞こえた。 Nie słychać dźwięk samacodu. 車の音が聞こえない。 O nim już długo niczego nie słychać. 彼についてはもう長い間、何の消息もない。 Stąd czuć zapacz kwiatów. ここから花の香りがする。 W kuchni czuć było gazem. 台所からガスの臭いがした。 Na tym materiale znać plamę. その生地にはシミが認められる。 Tego nie będzie znać. それは目立たないであろう。 396 動詞 第9節 動詞の態 1.態とは 態とは動作主と受け手の間の動作的行為の関係をいう。これには周知のごとく能動態 と受動態がある。能動態は文の主語となるものが行為を行うものをいう。これに対して、 受動態は文の主語となるものが行為の受け手となるものをいう。通常の文は能動態であ るので、本節では受動態に関する文について言及する。その際に純粋の受動態のみなら ず、受動の意味を表す文についても必要な限り言及する。 2.受動形容分詞を使う受動態 ロシア語の受動態は被動形動詞過去の短語尾に быть を加えることによって表した。 ただ、これはアスペクトの観点から言えば完了体である。それで、不完了体の受動態に ついては動詞に接尾辞 ся を付加して表した。これに対して、ポーランド語においては やや異なり、完了体の場合には受動形容分詞に zostać を使って、不完了体の場合には 受動形容分詞に być を使って表す。また、ロシア語においては быть+被動形動詞過去 短語尾形による述語には動作的意味と状態的意味の場合があったが、ポーランド語にお いては być + 完了体の受動形容分詞による受動態は状態的意味のそれとなる。 尚、受動形容分詞は主語に応じて変化することは言うまでもない。受動形容分詞は主 語の性、数に一致するのである。この点はイタリア語等と同様である。従って、下記の ように Książka zostanie przeczytana przez jego. その本は彼によって読み終えられる だろう、という場合、受動形容分詞は przecaytana と単数・女性形になっているので ある。 この点に関して注意すべきは、 数詞が関係する場合である。 例えば、 Kilku żolnierzy zostało rannych w zamachu. その爆発で数名の兵士が怪我をした(怪我を負わされた)、 という文のように、Kilku という不定数詞を使う場合、それと結びつく名詞は複数生格 の żolnierzy で動詞は単数中性となるが、受動形容分詞は主語が複数であることを反映 して、複数生格( rannych )となるのである。 1)動作的意味の受動態 ① 完了体( zostać 受動態)この場合は、未来形と過去形しかない。 能動態 受動態 On przeczyta książkę. Książka zostanie przeczytana przez jego. 彼はその本を読み終えるだろう。 その本は彼によって読み終えられるだろう。 ※ zostanie は zostać の未来単数三人称である。zostanę zostaniesz zostanie.,,,と変 化する( zoatać 自体は完了体である。)。 On przeczytal książkę. Książka została przeczytana przez jego. 彼はその本を読み終えた。 その本は彼によって読み終えられた。 ② 不完了体(być 受動態)この場合は、未来形、過去形のみならず現在形も認められる。 能動態 受動態 On czyta kaiążkę. Książka jest czytana przez jego. 動詞 397 彼はその本を読んでいる。 その本は彼によって読まれている。 On będzie czytał książkę. Książka będzie czytana przez jego. 彼はその本を読むだろう。 その本は彼によって読まれるだろう。 On czytał książkę. Książka była czytana przez jego. 彼はその本を読んでいた。 その本は彼によって読まれていた。 ※ この動作的意味の受動態の場合、zostać 受動態は完成され結果に至った動作を表 すが、być 受動態は進行中や継続中の動作を表す。 2)状態的意味の受動態(być 受動態)この場合、完了体動詞から形成されるが、時制 は未来形、過去形のみならず、現在形も認められる(最後の点が、動作的意味の受動態 と異なるところである。)。 状態的意味の受動態はいかなる出来事もいかなる過程も表さず、一つの状態を、一つ の過程の結果として提示するものである。例えば、まず窓が開けられ(過程的)、この 過程の結果として窓が開けられている(非過程的)状態になるのである。従って、動作 的意味の受動態が過程的であるのに対して、状態的意味の受動態は非過程的であること がその特徴である。状態的意味の受動態に使用される動詞は完了体である。しかし、す べての完了体によって形成されるのではなく、可能な動詞は限られている。状態的意味 の受動態の形成が不可能な動詞は、自動詞、再帰動詞(広義)、他動詞であっても継続 に関する動詞(例えば、potrzebować 必要とする、słuchać 聞こえる、等)、状態への 変更を許さない動詞(例えば、pomóc 助ける、stwierdzić 確認する、等)である。 ① 能動態(不完了体) Lekarz bada pacjenta. 医師はその患者を診察している。 ② 動作的意味の受動態(完了体) Pacjent zostanie zbadany przez lekarz. (完了体)その患者は医師によって診察され てしまうだろう。=未来 Pacjent został zbadany przez lekarz. (完了体)その患者は医師によって診察された。 =過去 ③ 動作的意味の受動態(不完了体) Pacjent jest badany przez lekarz. (不完了体)その患者は医師によって診察されて いる。=現在 Pacjent będzie badany przez lekarz. (不完了体)その患者は医師によって診察され ているだろう。=未来 Pacjent był badany przez lekarz. (不完了体)その患者は医師によって診察されて いた。=過去 ④ 状態的意味の受動態(完了体) Pacjent będzie zbadany przez lekarz.(完了体) その患者は医師によって診察されて しまったであろう。 =未来 Pacjent jest zbadany przez lekarz.(完了体) その患者は医師によって診察された。 =現在 398 動詞 Pacjent był zbadany przez lekarz.(完了体) その患者は医師によって診察された。 =過去 動作的意味の受動態の不完了体を用いた例と、状態的意味の受動態(完了体を用いる) の例では、視点が異なる。すなわち、前者では診察しているという過程に視点が置かれ ているが、後者の場合は診察した結果、どうなった(診断され、治療を施されたという こと等)という点に視点が置かれているのである。 ア、状態的意味の受動態は完了体動詞を使うものでありながら、3つの時制(未来、現 在、過去)で考えられる。その際には、未来は być の未来形+完了体受動形容分詞で、 現在は być の現在形+完了体受動形容分詞で、過去は być の過去形+完了体受動形容 分詞で作られる。そして、過程ではなく、結果に重点が置かれるのであるから、動作主 は曖昧なものとなる。従って、動作的意味の受動態の様に przez + 動作主は表さないの が通常である。また、状態的意味の受動態に使われる動詞は限られており、他動詞の一 部のものでしか使われない。だから、自動詞、再帰動詞はもちろんのこと、他動詞でも 継続相を表す動詞(例えば、potrzebować 必要とする、や słuchać 聞こえる、等)やあ る状態への変化を許さない動詞(例えば、pomagać 助ける、stwierdzać 確かめる、等) ではその性質上使われない。 イ、Rano sekretarka chiciała włączyć komputery, ale już ktoś był włączył komputery. 朝早く、秘書はコンピューターを立ち上げようとしたが、既に誰かが立ち上げていた, という文章を状態的意味の受動態を用いて表すと、Rano sekretarka chciała włączyć komputery, ale komputery już były włczone. 朝早く、秘書はコンピューターを立ち上 げようとしたが、既にコンピューターは立ち上がっていた、となる。ここで注意すべき は後半は能動態では過去完了であるが、状態的意味の受動態にすると過去になるという 点である。それ故、Rano sekretarka chce właczyć komputery, ale już ktoś włączył komputery. 朝早く、秘書はコンピューターを立ち上げようとするが、既に誰かがそれ を立ち上げていた、という文章を状態的意味の受動態を使って表すと、Rano sekretarka chce włączyć komputery, ale komputery już są włączone. 朝早く秘書はコンピュータ ーを立ち上げようとするが、既にコンピューターは立ち上がっている、となり、能動態 では過去になるが、受動態では現在になると言うことである。さらに、Rano sekretarka będzie chcieć włączyć komputery, ale już ktoś włączy komputery. 朝早く、秘書はコ ンピューターを立ち上げようとするだろうが、既に誰かが立ち上げていることだろう、 を受動態で書き換えると、Rano sekretarka będzie chcieć włączyć konputery, ale komputery już bedą włączone. 朝早く、秘書はコンピューターを立ち上げようとするだ ろうが、既にコンピューターは立ち上がっている状態にあるだろう、となり、能動態で は形の上ではは現在になるが、受動態では未来になると言うことである。 以上のことから、状態的意味の受動態を使うと、能動態に比較して一つ時制が先にな る(すなわち、能動態が現在形なら状態的意味の受動態は未来形に、能動態が過去なら 状態的意味の受動態の現在形に、能動態が過去完了なら状態的意味の受動態は過去に) と言うことになる。 Lekarz was zbada w następnym tygodniu. 医師は翌週にあなた方を診察するだろう、 動詞 399 に対して、Będziecie zbadani w następnym tygodniu. あなた方は翌週に診察されてい るだろう。 ウ、状態的意味の受動態が使われるその他の例 ・Kiedy sprzątniesz biuro ? お前はいつオフィスを片づけるの?、に対して、 Biuro jest już sprzątnięte. オフィスはもう片づけられているよ、となる場合、にも使 われる。 ・On sprzedał zegar. 彼は時計を売った。 Zegar jest sprzedany. その時計は売られた。 ・Oni kupili nowy komputer. 彼らは新しいコンピューターを購入した。 Nowy komputer jest kupiony. 新しいコンピューターは購入された。 ・Lekarz was zbada na następnym tygodniu. 医師は来週あなた方を診察するだろう。 Będziecie zbadani w następnym tygodniu. あなた方は来週診察されるだろう。 ・Ona mnie przedstawi nowemu przyjacielowi. 彼女は私に新しい友人を紹介するだ ろう。 Będę przedstawiony nowemu przyjacielowi. 私は新しい友人を紹介されるであろう。 3)受動態を形成する動詞 受動態を形成する動詞は他動詞であるが、他動詞は直接補語として対格を取るのが通 常である。しかし、別章にあるように直接補語として生格や与格や造格を取る動詞もあ る。 まず、対格を取る動詞は原則として受動態を形成することができるが、中には受動態 を形成できないものがある。そのようなものとして mieć 持っている、woleć ~をより 好む、przypominać 思い出させる、等がある。これらの動詞は状態を表すだけであり、 行為を表すものではないからである。しかし、そうは言っても同じ状態を表す posiadać 持っている、は受動態を形成することができる。 また、対格を取る動詞であるが、受動形容分詞を欠くために、受動態を形成すること ができない動詞もある。例えば、obejść 歩き回る、przejść 体験する 次に、生格を取る動詞は受動態を形成することができるのが、通常である。 しかし、与格を取る動詞は受動態を形成することができない。 また、造格を取る動作は一部は受動態を形成することができるが、ほとんどは形成す ることができない。形成することができる動詞には kierować 差し向ける、sterować 操 縦する、rządzić 支配する、等がある。 尚、直接補語を取ることができる動詞であっても受動態を形成することができない動 詞もある。それは、中間動詞である。 4)動作主の表し方 動作主は通常は、przez + 対格、で表すが、自然力等による場合には、ロシア語と同 じように造格で表す。 Dom został obalony wiatrem. 家は風によって破壊された。 400 動詞 3.無人称構文により受動の意味を表す用法 無人称構文は主語がない文であり、直接補語はそのまま対格になり、直接補語の位置 はそのままで主語に相当する位置に昇進するものではない。 これには3つの方法がある。 1)再帰代名詞 się を使う方法 この場合は動詞は単数3人称か複数3人称であり、未来形、現在形、過去形のいずれ の時制でも用いられる。動詞は通常は不完了体であるが、完了体でも用いられる。そし て、もっぱら再帰動詞以外の動詞で形成される。 Już nie ogląda się tego filmu. この映画はもはや見られない。 Już nie oglądało sie tego filmu. この映画はもはや見られなかった。 Już nie będzie się oglądało tego filmu. この映画はもはや見られないだろう。 2)-no/-to 構文を使う方法 この場合は、本質的には過去形であり、受動形容分詞の語幹に -o を付加することに より形成される。元の動詞は完了体が通常であるが、不完了体でもあり得る。 Teraz dopiero otowarto letnią werandę. 今だけ夏用のベランダが開かれていた。 W tym biurze liczono pieniądze. このオフィスではお金が数えられていた。 Dyrektora hotelu pytano często o wolne pokoje. ホテルの支配人はしばしば空き部 屋について尋ねられた。 Naszym krajem nie rządzono dobrze. 我々の国は良く治められていなかった。 ※ -no / -to 構文は話法の助動詞の場合にも可能である。 Musiano czekać. 待たなければならなかった。 3)過去中性単数形を使う方法 これは出来事を表す場合に使われ、本来は暴力的なことに使われる。 Kopnęło go. 彼は蹴られた。 4.人称構文で się を使って受動の意味を表す用法 これは3.1)と似ているが、主格主語がある点が異なっている。 これは主格主語があって się を用いて受動の意味を表す場合である。この場合の動詞 は直接補語を取ることができる動詞であり、しかもその直接補語が受動文では主語とな り得る動詞である。 Buduje się nowy hotel. 新しいホテルが建てられる。 5.中間態で się を使って受動の意味を表す用法 この場合も主格主語がある。この点で、4と同じである。しかし、4とは動詞の質が 異なる。すなわち、この場合の動詞は直接補語を取ることができるが、その動詞を用い ても、その直接補語が主語になり得ないので、受動文を形成できない場合に使われる。 Rzeczowniki odmieniają się przez przypadki. 名詞は格に応じて変化する。 Sytuacja nareszcie wyjaśniła się. 状況はついに明らかにされた。 その他、出来事を表す場合に用いられ、その例は、Woda się gotuje. 水が沸騰してい 動詞 401 る、である。 文の主語に何らかの特性を与える場合の例は、Ta książka dobrze się sprzedaje. こ の本は良く売れる。 さらに、ポーランド語においては精神的動揺や興奮を表す場合も中間態が用いられる。 例えば、Martwię się stopniami syna. 私は息子の成績で悩まされる、である。 402 前置詞 第6章 その他の品詞 第1節 前置詞 Ⅰ序 1.前置詞は語と語の関係を示す単語であり、ロシア語においては種々のものがあるが、 ポ-ランド語においても同じである。ロシア語の前置詞は主格以外の格支配を受けるが、 ポ-ランド語も同じである。通常は一つの前置詞について支配される格は一つであるが、 中には2つあるいは3つの格に支配されるものもある。この点も、ロシア語と同じであ る。 2.前置詞は、名詞や代名詞、副詞の前に置かれ、特定の格によってそれらの語を支配 する機能を持つ不変化の語であって、それぞれの語の関係を示すものである。前置詞は 連結詞の一つである。連結詞は語、句ないしは付加語、文肢あるいは文を相互的に結び つけ、ひとつの統合された単位を作り出す機能を有するものである。しかし、同じ連結 詞である接続詞と異なり、単なる語あるいは語群を結びつけるものである。また、前置 詞は、文肢の一部になったり、付加語の一部になるものである。 尚、ロシア語においては前置詞は名詞や代名詞しか結びつかないが、ポ-ランド語に おいてはそれのみならず副詞とも結びつくことがあることに注意すべきである(この点 はドイツ語やスペイン語と同じである。)。例えば、od zaraz 今すぐに、jaiko na miękko 半熟卵、がある。このような場合、実質的にそれらの前置詞は格支配を有しないと言っ て良い。なぜなら、副詞自体は変化しないからである。 3.ロシア語の前置詞には本来のものと、副詞由来のものと、名詞由来、動詞由来のも の等があったが、この点でも同じである。 1)本来の前置詞 これらの前置詞の具体的な意味と用法は多岐にわたり複雑であることが特徴である。 その主なものは下記のごとくである。 bez, w, na, dla, do, za, z, ku, nad, o, od, przed, po, pod, przy, u, przez, zza, spod 2)派生の前置詞 前置詞の中には本来の前置詞が接頭辞となって名辞類と複合前置詞を構成するもの がある。また、他品詞から派生するなどして、形成されるものもある。それらは、その 意味・用法の範囲がある程度制限されており、大部分は生格要求である。それらの中に は、独立した副詞としても用いられるものもあるが、それについては副詞の項で述べる。 派生の前置詞と考えられるものには以下のものが挙げられる。 blisko, dokoła, dookoła, koło, około, mimo, naprzeciw, obok, opodal, oprócz, podczas, poniżej, pośrodku, wśród, pośród, powyżej, według, wobec, zamiast 前置詞 403 przeciw, dzięki, między 4.尚、jako ~として、は通常は副詞あるいは接続詞に分類されているが、これは格支 配のない前置詞と考えるべきである。さらに特殊なものとしては niż がある。これは支 配される動詞によってそれに続く格が異なってくる。従って、格支配があるのではなく、 逆に動詞に支配されると言える。例えば、Minobe jest starszy niż Nakasone. 美濃部は 中曽根より年長である、は niż の後は Minobe と同じく主格になるが、Minobe woli herwatę niż kawę. 美濃部はコ-ヒ-よりも紅茶の方が好きである、の場合は、対格同 士比較(woleć は直接補語として対格を取る。)であるので、niż の後は対格となる。 その他には、 On bardziej chce chleba niż ryżu. 彼はご飯よりパンが欲しい(生格)。 Adam bardziej służy społeczeństwu niż krajowi. アダムは国家よりも社会に奉仕す る(与格)。 On bardziej włada angielskim niż polskiem. 彼はポ-ランド語より英語が堪能であ る。(造格)。 5.また、言語によっては前置詞と言いながら、関係する語の後に位置するものもある (例えば、ドイツ語の entgegen )。しかし、ポ-ランド語の前置詞は原則として前置 である。しかし、naprzeciw は後置することもある。すなわち、「反対に」とか「向か い側に」という意味の場合は通常通り前置であるが、「途中で出会う」の様な意味を表 す場合には、後置となるのである。しかも、前置する場合には生格支配であるが、後置 する場合には与格支配でもあるのである。 Księgarnia jest naprzeciw hotelu. 書店はホテルの向かい側にある。 Wyszedłem przyjacielowi naprzeciw. 私は途中で友人に出会った。 6.前置詞の特別な形 単数3人称の人称代名詞の生格形と前置詞が結びついた場合に人称代名詞の語頭音 である ń (ni) が前置詞に付着してしまう現象が起きる。これは特に文学作品で見られる。 これらの主なものを挙げると、 dla niego → dlań 彼のために、 do niego → doń 彼の所へ、 od niego → odeń 彼 から、 przez niego → przezń 彼によって、 z niego → zeń 彼から、 za niego → zań 彼のために、na niego → nań その上に、w niego → weń その中に、等 7.前置詞句の用法 前置詞とそれに続く名詞や代名詞が付いたものを前置詞句と言うが、前置詞句は、① 状況語、② 動詞の補語、③ 形容詞の補語、④ 名詞の付加語、⑤ 述語内容詞、等とし て用いられる。 ① 状況語 Czekam na most. 私は橋の上で待っている。 404 前置詞 ② 動詞の補語 Czekam na autobus. 私はバスを待っている。 ③ 形容詞の補語 On jest podobnym do swojego ojca. 彼は自分の父親に似ている。 ④ 名詞の定語 herbata bez cukru 砂糖なしの紅茶 ⑤ 述語内容詞 Gazeta była na stole. 新聞はテ-ブルの上にあった。 Ⅱ 生格支配のみの前置詞 生格支配の前置詞は原則として生格に支配されるだけであり、それ以外の格に支配さ れることはほとんどない(ただ、例外は z と za と naprzeciw であり、z と za の場 合は生格と対格と造格であり、naprzeciw は生格と与格である。)。この点は、ロシア 語と同じである。 生格支配のみの前置詞は43個を数える。それらには、 bez, blisko, dla, do, dokoła, dookoła, koło, mimo, naokoło,nieopodal, niedaleko, obok, od, około, opodał, oprócz, porócz, pośród, powyżej, prócz, spod, spomiędy, sponad, spośród, spoza, sprzed, u, według, wobec, wokoło, wokół, wskutek, podczas, podług, pomimo, poniżej, wśród, wzdłuż, względem, zamiast, znad, zza 1.bez 1)様態や手段や付随状況を否定する場合に用いられる。ロシア語では без で あり、「~なしに」の意味が基本である。ただ、ロシア語の без は時刻を表 す場合にも用いられ、「~分前に」の場合に使うことがあるが、ポ-ランド語 においてはそのような用法はない。また、「~の他に」、という意味がロシア 語の без にはあるが、ポ-ランド語にはない。例えば、ロシア語ではИ без тебя есть много желающихю 君の他にも希望者はたくさんいる、のような使い方 があるが、ポ-ランド語にはないのである。 bez trudu 楽に bez wyjątku 例外なく bez sensu 無意味に 2)構成要素が存在しないことを表す。 To jest pokój bez okien. それは窓なしの部屋である。 Piję kawę bez cukru. 私は、砂糖なしのコ-ヒ-を飲む。 Pijesz kawę z cukrem czy bez? コ-ヒ-は砂糖入りかなしかどちらを飲みま すか? 3)否定の条件の場合に用いられる。 Bez powietrza człowiek nie może żyć. 空気がなかったなら、人間は生きて 行くことはできない。 Bez deszczu uprawy zginęłyby. 雨がなかったなら、作物は駄目になったで あろう。 前置詞 405 4)マイナスを表す。 trzy miesiące bez czterech dni 3ヶ月に4日足りない 5)述語部なしの命令文を作る。 Tylko bez żartów! 冗談は言わないで。 Bez dyskusji! 言い争っている暇はない。 6)動名詞の前に使うことにより否定の小辞 nie を使用した文の代わりになる。 On weszedł bez pukania. 彼はノックせずに入ってきた( pukania は pukać ノックする、の動名詞 pukanie の生格であり、nie を使用すると、 On weszedł nie pukając. であり、その代わりになるものである。)。 2.blisko は「~の近くに」であり、ロシア語では близ に相当する。場所に 関する場合だけではなく、時間に関する場合にも使われる。注意すべきは前置 詞のみならず、副詞としても機能するということである。 blisko lotniska 空港の近くに Było już blisko pólnocy. ほとんど真夜中近くであった。 Maż jest blisko pięćdziesiątki. 私の夫は50歳に近い。 この同意語は niedaleko であり、前述の例で blisko を niedaleko に替え ても良い。blisko, niedaleko とも副詞として使われることが多い。特に、 niedaleko は副詞として使われることが多く、前置詞として使われることは少 ない。 3.dla ロシア語では для であり、「~のために」の意味が基本である。ロ シア語の для には① 奉仕の対象、② 目的、③ 用途、使命、④ 関係、⑤ 理 由、動機、原因、等があったが、ポ-ランド語においてもほぼ同様である。 1)奉仕の対象 dla ciebie 君のために On ofiarował wszystkie dla narodu. 彼は民衆のためにすべてを犠牲にした。 2)目的 spacerować dla zdrowia 健康のために歩く wyjść za mąż dla pieniędzy 金のために結婚する 3)用途、使命 wagon dla palących 喫煙者用車両 pokój dla dzieci 子供用の部屋 książki dla dorosłych 大人向けの書籍 4)関係 Dla mnie to większe wydarzenie. 私にとってこれは一大事件である。 Był to dla niego ciężki okres. それは彼にとって一つの難しい局面だった。 Palinie jest szkodliwo dla zdrowia. 喫煙は健康にとって有害である。 5)理由、動機、原因 406 前置詞 Maria zalała się łzami dla smutku. マリアは悲しみのあまりわっと泣き出 した。 6)刑罰の対象 dwa lata więzienia dla niego 彼に対して2年の懲役刑 kara dla wrogu reżimu 政府の敵に対する罰 7)尚、形容詞で dla を伴うものがある。 uprzejmy dla nas 我々に親切な、szkodliwy dla zdrowia 健康にとって有害 な、pożyteczny dla otoczenia 環境にとって有益な 4.do はロシア語では до であり、ロシア語においては1)(空間的限界) ~まで、2)(時間的限界)~まで、3)(時間的に)~の前に、4)(数量 的限界)~まで、等を表す。ポ-ランド語においてはほぼ同様の用法があるが、 それ以外にも様々な用法がある。 1)(空間的限界)~まで od Paryża do Berlina パリからベルリンまで bilet do Gdańska グダニスクまで の切符 2)方向 Idę do biblioteki. 私は図書館へ行く。pojechać do Japonii 日本へ行く pójść do kina 映画に行く 3)(時間的限界)~まで do jutra 明日まで do ostatniej chwili 最後まで Mieszkał w Warszawie do śmierci. 彼は死ぬまでワルシャワに住んでいた。do widzenia さような ら 4)~より前に、~以前に wpól do dziesiątej 9時30分に(直訳すると10時30分前)、do wybuchu wojny 戦争の勃発前に 5)(数量的限界)~まで rozbić szbkość do osiemdziesiąt kilometrów na godzinę スピ-ドを時速8 0キロまで上げる。lyczyć od jedego do dziesięciu 1から10まで数える 6)用途を表す場合もある。 przybory do pisania 筆記用具(書くための器具)、piracka machina do robienia pieniędzy お金を奪うための海賊の船、lekarstwo do użytku zewnętrznego 外用薬、 klucz do drzwi ドアの鍵、lakier do paznokci マニキュア液 7)おおよそを表す場合もある。 U nego do trzech tysięcy książek. 彼は約3000冊の本を持っている。 8)中への移動 włożyć do szuflady 引き出しに入れる、wejść do pokoju 部屋へ入る wsiąść do samolotu 飛行機に乗る 前置詞 407 9)~に属する。 należeć do stowarzyszenia 連盟に属する zapisać się do klubu クラブに加 入する 10)気分・感情を表現する。 niechęć do życia 生活に疲れたこと 11)限度を表す場合もある。 kara do pięciu lat więzienia 5年間の懲役 12) 目的を表す場合もある。 chętny do roboty 仕事への意欲、brón do ataku 攻撃のための武器、Matka ułożyła dziecko do snu. 母親は子供を寝かせた(直訳すると、夢をみるよう に子供を置いた。)。środki do pielęgnacji stóp フットケア製品、 Student przygotowuje się do egzaminów. 学生は試験のために準備する。 13)愛好・欲求の対象 miłość do żony 妻に対する愛 14)成句で Jest ci do twarzy w - ~についてあなたによく似合う 15)do +生格で動詞の補語となる。もっとも、これは前述した用法の繰り返 しと考えられる。 pasować do ~に似合う、przybyć do 到着する、dojść do ~に終わる 16)権利の対象 prawo do pracy 労働権 17)形容詞で do を取るものもある。 Twoja siostra jest podobna do twojej mamy. あなたの妹はあなたの母親にそっくり だ。 18)可能性・不可能性を表す。 hałas nie do wytrzymania 耐えられない音、wyrażenie nie do przetłumaczenia 翻 訳できない表現 19)比率を表す。 mapa w skali 1 do 50000 5万分の1の地図 5.dokoła(dookołaも同じ) 1)「~の回りに」、を表す。空間的な意味で用いられる。 dokoła はロシア語では вокруг である。 Siedzieliśmy dokoła stołu. 我々はテ-ブルの回りに座っていた。 rejs dookoła świata 世界一周航海 Ziemia obraca się dokoła Słońce. 地球は太陽の周りを回る。 2)「-~をめぐって、~に関して」、を表す。 gorące spory dokoła złożonego sprawy 複雑な問題を巡る激烈な論争 3)尚、副詞として機能する用法もあり、基本的には副詞としての用法の方が主体と言 える。 408 前置詞 6.koło, około ロシア語では около возле мимо であり、「~の回りに」、「~の そばに」、という意味である。 1)空間的な意味では「~のそばに」とか、「~の回りに」とかいう意味で用いられる。 Koło domu stała ławka.家のそばに銀行がある。 2)時間的な意味では、「~頃」の意味で用いられる。 On wrócił koło północy. 彼は午前0時頃、帰ってきた。 3)近似数を表すこともある。 Tam koło trzysta ludzi pracuje. そこでは300人近くが働いている。 4)対象を表すこともある。 krzątać się kóło dziecka 子供のことで忙しい 7.mimo 譲歩の意味を表す前置詞である。すなわち、主たる意味は「~にもかかわら ず」であり、ロシア語のнесмотря на に相当するが、ロシア語の場合は対格支 配である。ロシア語の мимо とは異なることに注意すべきである。 尚、pomimo も同じである。 mimo wszystko それでもやはり、mimo to それにもかかわらず、mimo woli 思わず Sprzeciwił się mimo ostrzeżeń. 警告にもかかわらず、彼は反論した。 mimo najlepszych chęci 幾らその気になっても Mimo deszczu Maria spacerowała po parku. 雨にもかかわらず、マリアは 公園を散歩した。 8.naokoło は「~の周囲に」であり、ロシア語では вокруг に相当する。 naokoło lasu 森の回りに、naokoło jeziora 湖の回りに 9.naprzeciw(naprzeciwko も同じ)は「~に向かって、~に対して、~に 面して」という意味であり、ロシア語ではнапротив である。 On mieszka naprzeciw kościoła. 彼は教会の向いに住んでいる。 Siadł naprzeciw gościa. 彼は客の向いに座った。 ※ 尚、与格支配の場合もある。 Wyszli naprzeciw życzeniom. 彼らは要求を満足させるために努力した。 また、この naprzeciw は特殊で、与格支配の場合は後置することもある(上述のⅠ 序 5参照)。 10.niedaleko 「~の近くに」 空間的な意味の場合と、時間的な意味の場 合がある。 Usiedł niedaleko rzeki. 彼は川の近くに座った。 Było już niedaleko pólnocy. ほとんど真夜中近くであった。 前置詞 409 11.obok 1)「~の隣に、~と並んで」である。ロシア語では рядом с + 造格が相当する。 Dziecko siedziało obok matki. その子供は母親と並んで座っていた。 Obok biurka stoi fotel. 机の隣に肘掛け椅子が立っている。 Kontakt jest obok drzwi. スイッチはドアのそばにある。 2)また、「~に加えて」、という意味もある。 Obok pensij on ma jeszcze inne dochody. 給料に加えて、彼には別の収入がある。 12.od これはロシア語では от である。しかし、それよりもいろいろな意味があり、ロシア 語の от よりは広いと言える。例えば、比較において「~よりも」、の意味である。 1)原因、主に自然現象並びに無意識的動作の原因 oczy czerwone od płaczu 泣いたために真っ赤になった目、 blednąć od strachu 恐怖のために蒼白となる、biały od śniegu 雪で白い 2)距離・位置関係の起点 na północ od Londynu ロンドンから北の方へ、 1000 metrów od brzegu 岸から1000メ-トル、 od Paryża do Berlina パリからベルリンまで 3)運動の起点 iść od przystanka autobusowej do metro バス停留所から地下鉄まで歩く 4)時間の起点 Od kiedy tu mieszkasz? あなたはいつからここに住んでいますか。 5)数の起点 On pracuje od dziewiątej do osiemnastej. 彼は9時から18時まで働く。 6)比較の対象 Córka jest wyższy od syna. 娘は息子より身体が大きい。 7)(防除・治療のため)~よけの、~止めの lekarstwo od bólu głowy 頭痛薬、 chronić oczy od słonca 太陽から眼を守る 8)構成要素等を示して Ten tekst roi się od błędów. このテキストは間違いで一杯である。 Okolica roi się od ludzi. その地域は人々でごった返している。 9)付属物の主体 kołnierz od płaszcza コ-トの襟、dziurka od klucza 鍵穴、drzwi od szafy 戸棚の扉 10)出所・源泉 Wczoraj dostałem od matki. 昨日私は母から手紙を受け取った。 list od mojej siostry 私の姉からの手紙 11)目的、用途 klucz od mieszkania 家の鍵、ubezpieczenie od ognia 火災保険 12)逸脱 410 前置詞 wyjątek od reguły 規則の例外 13)専門領域 nauczyciel od polskiego ポ-ランド語の教師、ekspert od chemii 化学の専門家 14)単位を表す。「-につき」 płacić od sztuki 1個ごとに払う 15)条件 To zależy od zgody rodziców. それは両親の同意いかんにかかっている。 16)その他、いろいろな成句で用いられる。 od czasu do czasu 時々、od przypadku do przypadku ケ-スバイケ-スで、 od stóp do głów 頭からつま先まで(日本語とは反対になることに注意=直訳すると、 つま先から頭まで、となる)、od a do z aからzまで 13.opodal 「~から遠くないところに」という意味であり、空間的意味で使われる。 正確な位置を示さない場合である。 Opodal wsi była rzeka. 村から遠くないところに川がある。 ※ 尚、nieopodal も同じ意味であり、nie- が付加されたとしても意味が変わらないこ とに注意すべきである。 14.oprócz, prócz はロシア語の кроме であり、「~の他に」、の意味であ る。この場合、この前置詞で導かれる名詞を含める場合と含めない場合がある ことに注意すべきである。もっとも、このことはポ-ランド語、ロシア語のみ ならず、ドイツ語、日本語でも同じである。 Oprócz przyjaciół byli u mnie sąsiedzi. 私のところに友人以外に隣人もい た。=含める場合 Oprócz mężczyzn były i kobiety. 男性に加えて女性もいた。=含める場合 Piję wszystko oprócz piwa.私はビ-ル以外は何でも飲む。=含めない場合 Nie przyszedł nikt oprócz niej.彼女の他には誰も来なかった。=含めない場 合 Nie chcę mówić z nikim oprócz niego. 私は彼以外とは誰とも話したくない。 =含めない場合 15.podczas ロシア語では во время であり、「~の間に」、の意味であ る。 Zachrowała podczas urlopu. 休暇の間に彼女は病気になった。 Przyszedł podczas mojej nieobencści. 私の不在の間に彼が来た。 Podczas wizyty w Polsce Aso spotkał się z Tuskiem. ポ-ランドの訪問の間に、麻生 首相はトゥスク首相に会った。 16.podług 「~によれば」、の意味である。これはwedług と全く同じであ 前置詞 411 る。 17.pomimo 「~にもかかわらず」、の意味であり、mimo と全く同じであ る。 18.poniżej 「~の下方に、~の下に」、という意味である。一応、ロシア語の ниже に相当するが、それよりも意味は広い。 1)「~の下方に、~の下に」、の意味の場合 On wędkuje poniżej mostu. 彼は橋より下流で釣りをする。 Dziś jest sześć stopni ponieżej zera. 今日は気温はマイナス6度である。 cios poniżej pasa ベルトの下を殴ること pniżej normy 規格の下に 2)特殊な意味に、「南方に」という意味がある。これは地図上、北が上で南が下にな っているためである。 miasto położone poniżej Moskwy モスクワの南に位置する町 3)比喩的な使い方で、次のような使い方もある。 być poniżej jego godności 彼の品位に関わる być poniżej krytyki 批評に値しない 19.pośrodku 「~の中間に」、という意味であり、場所的な関係で用いられる。ロ シア語の посередине に相当する。 Pośrodku dużego pokoju stał stól.大きな部屋の真ん中にテ-ブルがある。 Pomnik stał pośrodku placu. 記念碑は広場の真ん中にある。 20.pośród 「~の間に」の意味であり、wśród と同じである。 21.powyżej 「~の上方に、~の上に」、という意味である。ロシア語の выше に 相当するが、それよりも意味が広い。 1)「~の上方に、~の上に」 Dziś jest pięć stopni powyżej zera. 今日は気温は5度である。 Dziadek ma powyżej osiemdziesięciu lat. おじいさんは80歳以上である。 Skaleczył się powyżej kolana. 彼は膝の上を負傷した。 2)また、特殊な意味として、「北方に」という意味があるのは ponieżej と同じ起源 に基づいている。 miasto położone powyżej Moskwy モスクワの北に位置する町 22.spod 1)「~の下から」の意味であり、ロシア語の из-под に相当する。これは造格支配の 前置詞 pod と生格支配の前置詞 z の複合したものである。そして、p の前では z が 412 前置詞 s に交替するのである。造格支配の pod は位置を表すだけであるのに対して、spod は 方向が加わる。 Kot wychodzi spod łóżka.. 猫はベッドから出てくる。 2)そこから転じて、「~の状態から」、という意味もある。 wyzwolić się spod jego wpływu 彼の影響から自由になる On rodził się spod Warszawy. 彼はワルシャワ近郊で生まれた。 Przestępca uwolnił się spod dozoru policji. その犯罪者は警察の監視下から開放さ れた。 3)星座を表す場合もある。 Syn jest spod Raka, a córka spod Lwa. 息子は蟹座で、娘は獅子座である。 23.spośród 「~の内で」とか、「~から」、という意味である。ロシア語の из に 類似しているが、かなり異なる。pośród ~の間に、に z が付いたものと考えればよい。 従って、直訳的には「~の間から」という意味になる。 Spośród wszystklich dzwiękow polskich, cz jest szczególnie trudne. すべてのポ- ランド語の発音の内、cz が特に難しい。 Słońce wyjrzało spośród chmur. 大陽は雲の間から顔を出した。 Wybrano go spośród młodych ludzi. 若者の中から彼が選ばれた。 24.spomiędzy 「~の間から」、という意味である。ロシア語では из あるいは из-за に相当する。pomiędzy ~の間に、に z が付いたものである。 List wypadł spomiędzy notatek. 手紙がノ-トの間から出てきた。 wybrać spomiędzy kandydatów 立候補者の中から選ぶ 25.sponad 「~の向こうから」、という意味である。ponad ~の向こうに、に z が 付いたものである。 Sponad gór wiał wiatr. 風が山を越えて吹いていた。 Sponad drzew wystawał czarny komin. 木の向こうから黒い煙突がそびえ立ってい た。 26.spoza 「~の後から、~の外から、~に属していない」、という意味であり、ロ シア語では из-за に相当する。poza ~の後ろに、に z が付いたものである。 Słońce wyjrzało spoza chmur. 大陽が雲の後から現れた。 Ona pochodzi spoza Warszawy. 彼女はワルシャワ郊外の出身である。 osoby spoza klubu クラブのメンバ-でない人々 27.sprzed 「~の前から」、という意味である。時間的な意味と空間的な意味で用 いられる。przed ~の前に、に z が付いたものである。 Był u nas znajomy sprzed woiny. 我々は、戦争前から知り合いであった。 前置詞 413 Samachód odjechał sprzed domu. 自動車は家の前から出発した。 28.u u はロシア語では у であり、ロシア語の у については多様な使用法がある。1) ~ のそばに、~の近くに、2)従事・参加の対象、3)~の所で、4)~の所に(所有)、 5)付属・所有の意味を強める、6)取得・入手の源、等を表す。しかし、ポ-ランド 語においては多少異なっている。もっとも大きな違いは、ロシア語との場合、所有の表 現として「~には~がいる」と言う場合、У меня есть два сына. 私には2人の息子が いる、というように у を使うが、ポーランド語の場合はそのような表現を用いず、動詞 の mieć を使い、Mam dwóch synów. と表現し、前置詞の u を使わないことである。 また、行為の主体と推定される者を表すこともある。例えば、zamówić suknię u krawcowej 洋服を仕立屋に注文する、である。全体を表す場合もある。例えば、palec u nóg 足指、や u podnóża góry 山の麓に、である。しかし、 場所を表すのは同じである (On miezkał od zeszłego roku u rodziców. 彼は昨年より両親のところに住んでいた。 ) 。 1) ~のそばに、~の近くに u podnóża góry 山の麓に、(抽象的に)być u władzy 権力の座にある(直訳する と権力のそばにいる)、szukać pomocy u kogoś (人に)助けを求める 2) ある部分を表す場合にその全体を表す場合 palec u rąk 手の指、palec u nóg 足の趾、klamka u drzwi ドアの取っ手、mankiet u jego koszuli 彼のシャツの袖 3)~の所で、~のもとで być u ciebie 自分の家にいる Był w odwiedzinach u znajomych. 彼は友人達の所を訪れた。 4)行為の主体を表す場合 płaszcz uszyty u krawca 仕立屋によって作られたコ-ト(krawca の主格は krawiec) 5)性質・特質に関する場合 nowotwory u szczrów ラットに特有な腫瘍 29.według ロシア語ではやや異なり по である。по は与格支配である。ロシア語の по は意味 が広いが、według は基準・根拠あるいは依拠・相応を表す程度である。 według niej 彼女の考えによれば、według środowych szacunków WHO WHOの 水曜日の警報によれば、według przepisów 規則によれば、według japońskiej telewizji NHK 日本のテレビ局のNHKによれば、według niego 彼の意見によれば 30.wobec ロシア語では перед であり、これは造格支配である。「~を前にして」、という意 味があるが、по отношению к ~に対して、という意味もある。また、「~のために」、 414 前置詞 となり原因を表す場合もある。 1)「~を前にして」という意味がある。 Powiedział to wobec świadów. 彼は証人を前にしてそれを語った。 2)「~に対して」という意味もある。 On jest krytycznym wobec ojca. 彼は父親に対して批判的である。 UE złagodzi sankcje wobec Białorusi? EUはベラル-シに対して制裁を緩和する か? Wobec handlarzy narkotyków stosowano surowe kary. 麻薬商人に対して厳しい罰 が下された。 3)「~のため」という意味で原因を表す用法もある。 wobec tego faktu この事実のため、wobec braku czasu 時間がなかったため 4)「~と比較して」という意味もある。 Dostępne środki są niewilkie wobec olbrzymich potrzeb. 大きな必要性に比較して 執られる措置は小さい。 31.wokoło, wokół いずれもkoło と同じである。ロシア語では вокруг であり、例えば、wokoło domu 家 の回りに、が挙げられる。また、Ziemia obraca się wokół Słońca. 地球は太陽の周りを 回る、という使い方もある。 ただ、それから派生する別の意味もある。「~について」、という意味である。 Ona krząta się wokół chorej matki. 彼女は病気の母を気にかけている。 32.wskutek 出来事の原因を表す場合に用いられる。「~の結果」、とか「~が原因で」という意 味になる。ロシア語では вследствие に相当する。 Wskutek powodzi nie mogliśmy przejachać przez most.洪水の結果、我々は橋を渡る ことができなかった(尚、powodzi の主格は powódź である)。 wskutek wypadku 事故が原因で、wskutek choroby 病気のため Zmarł wskutek raka płuc. 彼は肺ガンで死んだ。 33.wśród ロシア語では среди であり、「~の間に」、の意味である。これは時間的の意味のみ ならず、空間的意味にも用いる。 Dom stał wśród wysokich drzew.家は、大きな木の間に立っている。 On wrócił wśród nocy. 彼は夜の間に帰ってきた。 34.wzdłuż 「~に沿って」、という意味がある。ロシア語の вдоль に相当する。 iść wzdłuż brzegu 岸伝いに歩く pływać wzdłuż rzeki. 川に沿って航行する 前置詞 415 wzdłuż zachodniej i wschodniej granicy indyjsko-chińskiej インドと中国の西側及 び東側の国境に沿って 35.względem 「~に関して」とか「~に対して」とかの意味がある。wzgląd 関 心・考慮、の造格形から派生したものである。wobec と意味が近いが、wobec よりは 意味が狭い。 Ona jest obojętną względem jego. 彼女は彼に関して関心がない。 Miała obowiązki względem rodziców. 彼女は両親に対して義務を負っている。 36.zamiast 「~の代わりに」、という意味である。ロシア語では вместо で ある。 Zamiast ojca zrobił to brat. 父の代わりに、兄がそれを行った。 Zamiast wódki Nowac pije wino. ノヴァックは、 ウオッカの代わりに、ワインを飲 む。 37.znad これは nad 上に、に z が付いたものである。これには2つの意味がある。 1)~の上の方から Zdjął obraz znad stólu. 彼は机の上の方に掛かっていた絵を降ろした。 2)近くのものから Wczoraj wróciliśmy znad morza. 昨日、我々は近くの海から帰ってきた。 38.zza これは za 後ろに、に z が付いたものである。znad と同様、2つの意味が ある。「~の後ろから」、と「遠くから」という意味である。 1)~の後ろから Zza zakrętu wyjechał samochód. 角の後ろから自動車が走り出てきた。 2)遠くのものから Wczoraj wróciliśmy zza granicy. 昨日、我々は外国から帰ってきた。 39.wewnątrz 「~の内に」という意味である。 Wewnątrz kraju nie ma oponenta. 国内には反対派はいない。 Wewnątrz sali jest siedem osób. 部屋の中には7人いる。 Ⅲ 生格、対格及び造格支配の前置詞 z 生格、対格及び造格支配の前置詞には z と za があり、いずれも多様であり、重要な 前置詞であるので、項を分けて記載する。まず、z は、生格支配の場合、ロシア語では из あるいは、с あるいは от である。 1.生格支配の場合 ある範囲からの動きの方向や事象の根拠・動機等を表す。 416 前置詞 1)場所に関する場合 ① 内から外への方向 wyjść z domu 家から出る ② 場所の起点 z południa na północ 南から北へ ③ 位置 ogród z tyłu domu 家の後ろ側にある庭(tyłu は tył 「後ろ」の生 格) Z daleka słychać pociąg. 遠くから列車の音が聞こえる。 2)時に関する場合 Dostałem twój list z czwartego kwietnia. 4月4日付のあなたからの手紙 を受け取った。 zamek z Ⅴ wieku 5世紀からある城 3)情報の源 z prasy マスコミから、wiadomość z gazety 新聞からのニュース 4)原因 z głodu 空腹が原因で Tusk śmiał się z dowcipu. トゥスクはジョ-クで笑った。 Posąg rozsypał się ze starości. 像は老朽化から崩れ落ちた。 Jordania jest zadowolona z apelu Obamy. ヨルダンはオバマ大統領の呼びかけに 満足している。 5)材料 Ten stól jest z drzewa. このテ-ブルは木でできている。 6)総体からの区分・抽出 niektórzy z was あなた方の内の数人 Ona jest najlepszą studentką ze wszystkich.彼女はすべての学生の中で最 も良い。 7)構成要素 Z pączka rozwinęła się róża. バラは蕾から生長した。 8)範囲・分野 Ona jest dobra z matematyki. 彼女は数学が得意だ。 ezamin z biologii 生物学のテスト 9)理由・動機・目的 z ciekawości 好奇心から z radości 喜びから 10)動作の様態・方法 z całych sił 全力で z całego serca 心から 11)熟語的用法 z urodzenia 生まれは 2.造格支配の場合 造格支配の場合は行為、状態、物体の随伴する状況を表す場合が多い。ロシ ア語の造格支配の場合の с に相当する。 前置詞 417 1)~と、~とともに Chodź ze mną! 私と一緒に来い 2)付加・補足(~のついた) kawa z mlekiem ミルク入りコ-ヒ- 3)具有・付属・内包 człowiek z poczuciem humoru ユ-モアを持った人 4)所持(~と共に、~を持って) sidzieć u rzeki z wędką 釣り竿を手に川岸に座っている 5)付随(~を伴って) słuchać z przyjemnością 喜んで聴く z uwagą 注意して 6)動作の方法・手段(~によって、~を使って) myć z mydłem 石けんを使って洗う 7)動作の目的(~のために) iść z wizytą 訪問するために、行く 8)隣接・接近(~と接して) sidzieć razem c bratem 弟と並んで座る granica z Czechami チェコとの国境 9)同時性(~とともに、~につれて) Z każdym rokiem jest piękniejsza. 毎年、彼女はだんだんときれいになる。 10)相手(~と) kłócić się z mężem 夫と喧嘩する Rosjanie desperacko walczą z upałem. ロシア人達は必死に炎暑と戦っている。 11)離合・比較・関係(~と) porównać przeszłość z przyszłością 過去を未来と比較する 12)祝賀の動機・根拠(~で) Gratuluję z okazji ślubu! 結婚おめでとう 13)標識 chłopiec z krótkimi włosami 短い髪をした少年 pan z brodą あごひげを生やした人 14)内容 karton z sokiem ジュ-ス入りのパック 15)付随する様態、意図 Słuchaliśmy go z uwagą. 我々は注意して彼の言うことを聞いていた。 3.対格支配の場合 この場合は概数を表す場合に限られる。 On ma chyba z dziewięćdziesiąt lat. 彼はおそらく90歳くらいだろう。 To będzie kosztowało z tysiąc złotych. それは約1000ズウォティするだ ろう。 418 前置詞 Ⅳ 生格、対格及び造格支配の前置詞 za za はロシア語においては за が相当する。ただ、ロシア語の場合は対格と造 格支配だけであり、生格支配のはない。 1.生格支配の za 1)生格支配の場合は、時間的関係で用いられるが、同時期を表すか、あるい は統治下の時期に関することとして使われる。この使い方は特殊であり、対格、 造格支配の場合と比べると遙かに使用頻度が少ない。 Za dawnych czasów tego nie było. 古い時代には、それは起こらなかった。 Za panowania ostatniego króla było dużo walk. 最後の王の支配時には、多 くの戦争があった。 ostatni premier za rządów Kaddafiego カダフィ-政権下の最後の首相 za dnia 一日中 Egipt nie będzie tak uległy jak za Mubaraka. エジプトはムバラク政権下ほど従順 ではない。 2)時間的関係以外にも生格支配の za はある。例えば、Uważano go za eksperta 彼は専門家として見なされていた、の場合、特徴を指摘する用法であ る。 2.対格支配の za いろいろな使い方がある。まず、基本的な用法として言う ならば、造格支配の場合との大きな違いは、対格支配の場合は運動の方向を表 したのに対して、造格支配の場合は存在・行為の場所を表すことである。この 点はロシア語でも同様である。 1)向こう側・外側・背後への運動(~の向こうへ、~の陰へ、~の外へ、~ の後ろへ) schować się za drzewo 木の後ろへ隠れる Ojciec wyszedl za dom. 父は家の後ろの方へ出て行った。 2)時間的隔たり(~後に) Jest za dwie trzciej 3時2分前です(2分後に3時に、という意味)。 za rok o tej porze 来年のこの時間に、za cztery lata 4年後に 3)期間(~の間に) Pracował za dwie. 彼は2時間働いた。 4)把握・接触・着手の対象(~を、~に) Matka prowadzi dziecko za rękę. 母親は子供の手をとって連れて行った。 złapać kogoś za kołnierz (人の)襟を捕まえる schwycić kogoś za rękę (人の)手を掴む 5)感情を引き起こす対象(~のことを思って) Muszę to zrobić za niego. 私は彼のためにそれをしなければならない。 前置詞 419 modliwa za binLadena ビンラディンのための祈り 6)保証・責任の対象(~に対して) Merkel została skrytykowana za bin Ladena. メルケル首相はビンラディンの件で 批判された。 odszkodowanie za masakrę na placu Tiananmen 天安門広場での虐殺に対する補償 Przepraszał za spóźnienie. 彼は、到着の遅れを謝罪した。 7)支持・擁護・獲得の対象(~のために) walczyć za wolność 自由を求めて戦う próba zemsty za śmierć bin Ladena ビンラディンの死に対する復讐の試み 8)根拠・原因(~の故に、~のために) Podziękuję ci za pomoc. 私は君の援助を感謝します。 Dziękuję za zwycięstwo. 私は勝利に感謝しています。 9)交換・売買・代償(~に対して、~の代償に、~の対価で) Kupiłem to za 5 złotych. 私はそれを5ズウォティで買った。 Kupiłem trzy jabłka za pięć złotych. 私は3つのリンゴを5ズウォティで買った。 (注意すべきは、Kupiłem trzy jabłka po pięć złotych.との違いである。この場合は、 私は一つ5ズウォティのリンゴを3つ買った、となる。) W 2008 roku na aukcji w Genewie ponad 35-karatowy niebieski diament sprzedano za 24,3 mln dolarów. 2008年のジュネ-ブで行われたオ-クショ ンで35カラット以上の青色のダイヤモンドは24.3ミリオンドルで 競り落と された。 kokaina za milion dolarów 百万ドルもするコカイン 10)代理・代行(~に代わって、~人分) pracować za dwóch 2人分働く Juppe za Alliot-Marie アリヨ・マリ-に代わってジュペ 11)認知・評価の対象(~として) ogłosić coś za nieważne 何かを重要でないものとして宣言する uzunać języka rosyjskiego za drugi język państwowy 国の第二言語としてロシア語 を認める 12)結婚・求婚の相手 wyjść za mąż 結婚する(女性のみに使用) 13)補償の対象 żadać odszkodwania za szkodę 損害に対して補償を要求する 14)~の罪で skazanie za kradzież 窃盗の罪で有罪判決 3.造格支配の za 1)存在・行為の場所(~の向こう側に、~の後ろに、~の陰に) Dziecko bawi się za domem. その子供は家の後ろで遊んでいる。 420 前置詞 2)接近・従事の対象 siedzieć za stołem 机に向かって座っている 3)追随(~のあとについて) Pies biegł za kotem. 犬が猫の後を追って走った。 gonić za chłopakami 少年達を追いかける 4)交替・継起(~に代わって、~に続いて) Za deszczami gorąco przyszło. 長雨に続いて暑さが訪れた。 5)数詞や名詞を反復して(次々と、相次いで) jeden za drugim 次々に、iść krok za krokiem 一歩一歩行く 6)従事の時(~の時に、従事中に) za każdym razem 毎回 Za śniadniem ojciec czytał gazetę. 朝食の時、父は新聞を読んでいた。 7)注意・監視・保護の対象(~に対する) opiekować się za dziećmi 子供達の世話をする 8)追求・取得の対象(~を求めて、~を迎えに) za chlebem パンを求めて、tęsknić za ~を切望して być stęskniony za ojczyzną ホ-ムシックにかかる(文字通りには「母国に対してあ こがれがこもっている」となる。) 9)原因・理由(~のために、~のゆえに) zwolnić kogoś za kaucją 保釈金で~を解放する。 On został zwolniony za kaucją wysokości 500 tysięcy dolarów. 彼は50万ドルの 保釈金で保釈された。 10)手段・方法で Rozwód za jednym kliknięciem ワンクリックでの離婚(離婚手続きをイン タ-ネット上、ワンクリックで行うこと) Ⅴ 与格支配のみの前置詞 与格支配のみの前置詞は5つである。それは、dzięki, ku, przeciw, przeciwko, wbrewである。与格支配のみの前置詞は、それ以外の格に支配されることはな く、常に与格に支配されるだけであることに注意すべきである。 ロシア語では与格支配の前置詞は比較的少なくк、по、благодаря、согласно、 навстречу、вопреки 等が見られるだけであるが、ポ-ランド語においても5 つと比較的少ないのである。 1.dzięki ロシア語ではблаголаря に相当する。「~のお陰で」という意味 である。 Dzięki twojej pomocy otrzymałem nagrodę. あなたの助けのお陰で、私は賞 を得ることができた。 Dzięki rodzicom skończyła studia. 彼女は両親のお陰で大学を卒業するこ 前置詞 421 とができた。 dzięki Bogu 神のお陰で 2.ku ロシア語の к に相当するが、ロシア語よりは使用範囲が少ない。この 前置詞は方向や、感情の向かう方や、時間的に近いことに向かう場合に使われ る。 1)方向を表す。 Ku wiosce prowadziła wąska droga. 村へ向かって狭い道が続いていた。 podejść ku stołowi テーブルの方へ行く 2)感情が向かう矛先を表す。 Ku mojemu zdziwieniu, zdał egzamin. 驚いたことに、彼は試験に合格した。 3)時間的に近いことに向かっている場合に使う。 Urlop miał się ku końcowi. 休みが終わりに近づいている。 4)目的を表す(但し、まれである。)。 Pisał ku utrzymywanie się z pracy. 彼は生活の糧を得るために書いた。 3.przeciw, przeciwko ロシア語では против に相当し、「~に反して」と いう意味である。特定の意見や地位に反する場合に用いられる。尚、ロシア語 は生格支配である。 Dostał lekarstwo przeciw grypie. 彼は感冒に対する薬を手に入れた。 To jest przeciw jej woli. そのことは彼女の意思に反している。 Czesi protestują przeciw rządowi. チェコ人達は政府に対して抗議活動をしている。 尚、przeciwko は przeciw と全く同じである。 4.wbrew ロシア語の вопреки と同じであり、「~にもかかわらず」、と か、「~に反して」、という意味である。 Wstał z łóżka wbrew zaleceniom lekarza 彼は医師の忠告にもかかわらず、ベッドから起きた。 To jest wbrew naturze. それは自然に反している。 wbrew przepisom 規則に反して wbrew wszystkiemu それにもかかわらず Ⅵ 対格支配のみの前置詞 対格支配のみの前置詞は2つであり、それは poprzez と przez である。 poprzez とprzez は同じ用法があり、一部重なっている。また、poprzez と przez との共通の用法でも前者は後者を強調したニュアンスで用いられる。し かし、特殊な場合には przez だけが、使われる。 1.両者に共通の使用法 行為や経過の道筋や期間を表す。ロシア語の через に相当する。また、否定 的な原因を表すこともある。これは、与格支配の前置詞である dzięki の反対 422 前置詞 語である。 1)行為や経過の道筋 Do domu śpieszlimy poprzez zagony. 我々は、農地を通って急いで帰宅した。 Jechali poprzez łaki i góry. 彼らは、乗り物で草地や野を越えて行った。 przeskakiwać przez płot 垣根を飛び越える 100 tys. ludzi uciekło przez granicę tunezyjsko-libijaską. 10万人の人々がチュニ ジアとリビアの国境を通って逃げた。 2)期間 Była chory poprzez cały zimę. 彼女は冬の間中、病気だった。 Nie widziałem go przez cały miesiąc. 丸1ヶ月間、彼に会っていない。 Czekałem na autobus przez pięć godzin. 私はバスを5時間待っていた(godzin と複 数生格になっているのは、数詞においては5以上の場合、関連する名詞の対格は複 数生格で表すためである。)。 3)否定的な原因 Dała mu pieniądze poprzez litość. 彼女は哀れみから彼にお金を与えた。 Przez nieuwagę zapomniałem portfel. 私は集中力を欠いていたので、財布を忘れて しまった。 przez pomyłkę 過失から przez nieuwagę 不注意から 4)手段を表す場合もある。 pić przez słomkę ストローで飲む głosować poprzez Internet インタ-ネットで投票する Co przez to rozumiesz? あなたはそれに関して何を理解しているのか(それはどうい う意味か。)。 5)~のおかげで ( dzięki と同じ意味の場合もある ) Poznałem ją przez mojego znajomego. 私は知り合いのおかげで彼女を知ることがで きた。 2.przez のみの使用法 1)最も重要な用法は受動態文で行為の主体を表すことである。 Ten dom został zbudowany przez znanego architekta.この家は、有名な建 築家によって建てられた。 Książka jest czytana przez jego. その本は彼によって読まれている。 Wszedł do pokoju niezauważony przez nikogo. 彼は誰にも気付かれずに部屋に入っ た。 2)割り算やかけ算を表す場合 Pomnóż pięć przez trzy. 5に3を掛けろ。 Osiem podzielone przez cztery jest dwa. 8÷4は2である。 3)成句で Mówili jeden przez drugiego. 彼らは互いに話し合っていた。 前置詞 423 Ⅶ 前置格支配のみの前置詞 これは przy のみである。この前置詞は空間的、時間的な接近を表す。また、これは ロシア語の при、за、у、около に相当するように、意味が広い。 1)そばに.・近くに、という意味の場合 przy mnie 私のそばに、przy oknie 窓のそばに、przy tym stoliku このテ-ブルに 2)~の前で、という意味の場合 Zrobił to przy świadkach. 彼は目撃者の前でそれをした。 3)所有者に関して ロシア語の у に相当 Nie miał przy sobie pieniędzy. 彼はお金を持っていなかった。 4)時を表す Malował tylko przy świadkach. 彼は昼間でしか絵を描かなかった。 przy przednodzeniu przez ulicę 通りを渡る時に、przy kolacji 夕食時に 5)方法、手段を表す przy muzyce 音楽に合わせて przy twojej pomocy あなたの助けで 6)比較を表す Przy nim ona wydaje się wysoka. 彼女は彼と比べて背が高いように見える。 7)付着を表す broszka przy bluzce ブラウス上のブロ-チ guziki przy płaszczu コ-トのボタン trwać przy swoim zdaniu 自分の意見に固執する 8)行為の対象 majstrować przy motorze オ-トバイをいじる 9)~に附属して、~に従属して、~付きの szkoła przy akademii ekonomicznej 経済大学の附属学校 tłumasz przy kierowniku drużyna 監督付きの通訳 10)成句で przy pracy 仕事中に przy innej okazji 別の機会に przy współpracy z +造格 ~と協力して Ⅷ 造格・対格支配の前置詞 造格支配のみの前置詞はなく、造格支配と対格支配の前置詞が7つ、造格支 配と対格支配と生格支配の前置詞が、前述したように z と za の2つである。 ここでは造格支配と対格支配の前置詞について言及する。 それらには、między, nad, poza, przed, pod, pomiędzy, ponad がある。 これらの前置詞に共通的なこととして、一般に、行為が行われたり、状態が 続いたりする場所を表す場合は造格、行為によって主語や補語が移動する方 向・到着点を表す場合は対格が用いられることが挙げられる。 1.między ( pomiędzy も同じ) 基本的な意味は「~の間に」、である。ロシ 424 前置詞 ア語の между に相当するが、ロシア語の場合には造格支配だけであるのに対して、 ポ-ランド語の場合は対格支配もあることに注意すべきである。ただ、対格支配の場合 は、かなり限られる。 1)対格支配の場合 ① この場合は空間的な意味で用いられ、 方向に関して二つあるいはそれ以上の関係する ものの間に、という意味を表す。 Postawiliśmy krzesło między szafę i okno.我々は椅子を戸棚と窓の間に置いた。 ② 分配が行われる範囲を示す場合も対格を取るのが原則である。 podziać majątek między dwóch synów 財産を2人の息子に分ける 2)造格支配の場合 ① 空間的な意味の場合は、場所に関して2つあるいはそれ以上の関係するものの間に、 という意味を表す。 Krzeslo stoi mięzdy szafą i okinem. 椅子が戸棚と窓の間にある。 Między nami nie bylo nieporozumień. 我々の間には信頼関係がある。 Między sobą rosmawiali po polsku.我々は互いにポ-ランド後で話す。 ② 時間的な意味の場合は、常に造格支配である。 Odwiedzimy was między pierwsą i drugą . 我々は1時と2時の間にあなたのとこ ろに訪問する。 ③ 方向に関するものであっても、 目的に合わせた動きに関する一定の動詞と共に使う場 合には対格ではなく、造格支配となる。 Schowałem list między książkami. 私はその手紙を本の間に隠した。 ④ 多数の同種の人や事物の間に交じっている場合も造格で表す。 Między drzewami stały posągi. 木立の間に像が立っていた。 ⑤ 相互的な関係 przyjaźń między Polską a Japonią ポ-ランドと日本の友好 2.nad 基本的な意味は「~の上に」、「上方に」、である。ロシア語の над に相当 するが、ロシア語の場合は造格支配だけであったのに対して、ポーランド語の場合は対 格支配もあることに注意すべきである。 1)対格支配の場合 空間的な意味に使われ、ある方向への動作・行為を表す。 Jutro idziemy opalać się nad jezioro. 明日は、湖の方へ日光浴に行く予定だ。 On przenosi się nad morze. 彼は海辺へ引っ越した。 2)造格支配の場合 ① 空間的な意味の場合、まず、「~の上に」「~の上方に」を表す Nad stołem wisi lampa. テ-ブルの上に、ランプが掛かっている。 Patrzymy na gwiazdy nad nami. 我々の上にある星を、我々は見ている。 Nad miastem latały niezliczone ilości ptaków. 町の上空に無数の鳥が飛び回ってい た。 「~のそばに」という意味の場合もある。 前置詞 425 nad morzem 海岸で nad rzeką 川岸で ② 時を表す場合は、常に造格である。意味は「~頃」を表す。 Wróciliśmy nad ranem. 我々は朝方帰宅した。 ③ 慣用句において動詞や動名詞の後に nad が来る場合、必ず造格である。 mieć litość nad kimś ~に対して哀れみを抱く żyć nad stan 質素な生活をする ④ 空間的意味の場合で、ある方向への行為を表していても、一定の目的にかなった行為 に向けられた場合には、造格となる。 Musimy powiesić obraz nad stołem. 我々は、その絵をテ-ブルの上に掛けなければ ならない。 ⑤ 支配、上位を表す場合、も使われる。意味は、「~に対して」である。 opieka nad dziećmi 子供に対する世話 ⑥ 地理的位置を表す場合 Nagoya leży nad zatoką Ise. 名古屋は伊勢湾に面している。 ⑦ 「~について、~に関して」、を表す dyskutować nad - ~について議論する rozpłakać się nad losem syna 息子の運命にわっと泣き出す 3.poza ロシア語では кроме に相当し、「~に加えて」、「~の他に」の意 味があり、この場合は造格支配である( кроме は生格支配であった。)。し かし、ポーランド語はそれよりは意味は広く、しかも対格支配の場合もある。 1)対格支配の場合 「~の外へ」、という意味の場合は対格支配である。 wyjechać poza miasto 町の外へ出る To wychodzi poza moje kompetencje. それは私の能力を上回る。 2)造格支配の場合 ① ~以外に Poza nim nikogo ni było w klasie.教室には彼以外には誰もいなかった。 Poza nim w pokoju było jeszcze czterech chłopaków. 彼以外に部屋にはま だ4人の少年がいた。 Jej niepodległość - poza Rosją - uznały tylko Nikaragua, Nauru i Wenezuela. ロシア以外にその独立を承認したのは、ニカラグア、ナウル とベネズエラだけだった。 Klaus nie odniósł obrażeń, poza lekkim urazem ramienia. クラウスは腕 の軽いけが以外に、けがを負わなかった。 ② 「~の向こうに」、という意味の場合は造格支配である。 On mieszka poza granicem kraju. 彼は国外に住んでいる。 ③「~の後ろに」という意味もあるが、この場合も造格支配である。 Usłuszał skowyt psa poza sobą. 彼は自分の後ろで犬の吠え声を聞いた。 426 前置詞 ④ 時間的な意味で「~外で」という意味もある。 poza godzinami pracy 仕事の時間外で poza miejscem pracy 勤務外に ⑤ 場所的な意味で「~外で」という意味もある seks poza sypialnią ベッドル-ム外でのセックス ⑥ 慣用句で być się poza nawiasem 疎外されている 4.przed ロシア語の перед とほぼ同じである。基本的な意味は、「~の前へ」(対 格支配)「~の前に」(造格支配)、という意味である。ただ、ロシア語の場合は造格 支配のみであるが、ポ-ランド語の場合は造格支配のみならず対格支配もあることが異 なっている。 1)対格支配の場合 空間的関係で方向を表す。「~の前へ」という意味である。 Dzieci poszły się bawić przed dom. 子供たちは家の前へ遊びに行く。 wyjść przed dom 家の前へ行く 2)造格支配の場合 ① 空間的関係で「~の前に」 Dzieci bawiły przed domem. 子供たちは家の前で遊んでいる。 przed nami 我々の前に ② 空間的関係の場合で、ある方向への行為を表していても、一定の目的にかなった行為 に向けられた場合には、造格となる。 Postawił rower przed domem. 彼はその家の前にその自転車を置いた。 ③ ~の前に(時間的関係) przed wojną 戦前に、przed piątą 5時前に、przed czasem 前もって・早めに Pójdę przed drugą.. 私は2時前に行くつもりだ。przed południem 午前 ④ 序列に関して、優位の意味で mieć pierwszeństwo przed innymi 何にもまして優先する ⑤ 防御、警告、回避等を表す動詞とともに bronić się przed krytyką 批判から自分の身を守る przestrzegać przed pożarem 火事警報を出す ostrzegać przed terrorem テロに対して警告する uciekać przed burzą 嵐から避難する uchronić się przed słońcem 太陽の光から保護する drżeć przed kimś ~(人)を怖がる 5.pod ロシア語の под に相当する。ロシア語においても対格支配と造格支配があっ たが、その点は同じで、基本的な意味は「~の下へ」(対格支配)、「~の下に」(造 格支配)である。 前置詞 427 1)対格支配の場合 ① ~の下へ Postawił pudło pod stół. 彼は箱をテ-ブルの下へ置いた。 ② 注意すべきは nad, przed と異なり、時を表す場合も対格支配であるということであ る。「頃」という意味がある。 Wrócę dopiero pod wieczór. 私は夕方になってやっと帰る。 Pod koniec lat 70 70年代の終わり頃 ③ ~に向かって pod wiatr 風に向かって ④ (適合・合致)~に合った、~に合わせて kapeluusz pod kolor płaszcza コ-トの色に合った帽子 podkładać słowa pod melodię 歌詞をメロディ-に合わせる ⑤(模造・模倣の対象)~に似せて、~をまねて obrazy malowane pod Moneta モネをまねた絵画 2)造格支配の場合 ① ~の下に Pudło stoi pod stołem. 箱はテ-ブルの下にある。 ② ~の近くに mieszkać pod Helsinkami ヘルシンキの近くに住む ③ 原因、条件、付帯事情などを表す pod wpływem czegoś ~の影響の元に、pod warunkiem czegoś ~するならば Zrobił to pod przymusem. 彼は強制下でそれをした。 pod zarzutem morderstwa 殺人罪で、pod ostrzałem 非難を浴びて Były mistrz świata w biatlonie zginął pod lawiną. バイアスロンの前世界チャンピ オンが雪崩で死亡した。 ④ ~という名で Występował pod nazwiskiem Nowak. 彼はノバックという名前で登場した。 ⑤ 番号と共に mieścić się pod numerem piątym 5番に位置している 6.ponad ロシア語の понад に相当するが、ロシア語の場合は廃れてしまっているが、 ポ-ランド後の場合は比較的頻繁に使われる。 1)対格支配の場合 ① 主な用法は nad と同じく、「上方へ」と方向を表す。 Samolot wzbił się ponad chmury. その飛行機は雲の上に上昇した。 ② 「~以上に」の意味を表す用法もある。 Nasz sąsiad ma ponad osiemdzieści lat. 私の隣人は80歳以上だ。 Tutaj pracuje ponad czterdzieści osób. ここには40人以上の人々が働いている。 2)造格支配の場合 nad と同じで、「上方に」と、場所を表す場合に用いられる。 428 前置詞 Samolot leciał ponad chmurami. 飛行機は雲の上を飛んでいた。 Ⅸ 前置格・対格支配の前置詞 これには4つあり、w, na, o, po である。ロシア語の в や на が頻繁に使われたよう に、これらも頻繁に使われる。ロシア語と同様に前置格支配か対格支配かで意味が異な る。 1.w ロシア語の в に相当する。 ロシア語と同様、対格支配の場合は、原則として内部への運動を表す。それに対して、 前置格支配の場合は、ロシア語と同様、一定の場所内における存在、位置関係を表す。 曜日を表す場合も対格である。これはロシア語と同じである。w sabotę 土曜日に ※ 一方、月を表す場合は前置格となる。これもロシア語と同じである。w marcu 三 月に(後述) 1) 対格支配の w ① 内部への運動 Królik wbiegł w las. ウサギは走って森に入った。 ② ~を通して(見る、のぞく、投げる)、という意味を表す patrzyć w lustro 鏡で見る ③ 接触・打撃の対象を表す bić w skałę 岩を砕く、bić pięćią w stól 拳を机にたたきつける Piorun uderzył w samolot. 稲妻が飛行機を襲った。 uderzyć w bęben ドラムを叩く、uderzyć 人対 w twarz (人)の顔を叩く、 gazem łzawiącym w protestujących 反対者に対して催涙ガスを用いて ④ 動作の目的を表す。すなわち、「~のために」、「~として」、の意になる。 obracać coś w żart 何かを冗談として扱う、w dowód wdzięczności 感謝の印に ⑤ 曜日を表す場合 w sabotę 土曜日に ⑥ 時間を表す場合 Pan musi to zrobić w godzinę. あなたはそれを1時間でしなければならない。 Skończyłem kurs w dwa miesiące. 私は2ヶ月でその講習を終了した。 ⑦ 前置詞 w を支配する動詞の場合 wierzyć w Boga 神を信じる、grać w karty カ-ドで遊ぶ uderzyć się w kolano(自分の)膝をぶつける ⑧ 前置詞 w を持つ前置詞句が、形容詞の補語となる場合 Nasz znajomy jest bagaty w doświadczenia 我々の知人は経験が豊富だ。 ⑨ ゲ-ムやスポ-ツの対象 grać w piłkę nożną サッカ-をする grać w tenisa テニスをする(tenisa は tenis の対格) 2)前置格支配の w 前置詞 429 ① 一定の場所内における所在 Uniwersytet znajduje się w mieście. 大学はその町にある。 Króliki żyją w lesie. ウサギは森の中に住んでいる。 w pobliżu domu 家の近くに ② 時代・年月・日時を表す場合 W tym roku w Warszawie było bardziej zimno, niż zawsze. 今年、ワルシャワはい つもよりずっと寒かった。 Ona odpoczywała w końcu grudnia w Turcji. 彼女は12月の終わりにトルコで休 暇を過ごした。 w XXI wieku 21世紀に、w 2011 roku 2011年に、w zimie 冬に w przyszły roku 来年、w styczniu 1月に w dniu szesnastego grudnia 12月16日に(~月~日に、と言う場合、szesnastego grudnia だけでも良いが、w dniu を付けても良い。) w dawnych czasach 昔 ③ ある種の肉体的、精神的、感情的状態、経済状況等を表す場合に用いられる。 On jest w dobrym humorze. 彼は気分が良い。w dobrym nastroju 良い気分で、 w pośpiechu 急いで、w nędzy 貧乏で On jest mężczyzną w średnim wieku. 彼は中年の男性である。 Słuchała go w milczeniu. 彼女は彼の言うことを黙って聞いていた。 w wysokości ~ ~の金額で ④ ~を着ている、という意味を表す kobieta w bieli 白の服を着ている女性 ⑤抽象的な表現として w modzie 流行して w druku 活字になって w moim guście 自分の好みに w pamięci 記憶によれば w zdumieniu 驚いて ⑥ ~の間に w podróży 旅行の間に ⑦ 構成要素 komedia w trzech atakach 3幕から成るコメディ Włoski premier jest oskarżony w trzech procesach. イタリアの首相は3つ のケ-スで起訴されている。 ⑧ 文法において格を示す場合 Mianownik liczebnika porządkowego plus nazwa miesiąca w dolełniaczu wyraża aktualną datę. 順序数詞の主格と月の名前の生格で話題となって いる日付を表す。 ※ 上の文では plus があっても全体が単数扱いになるので、wyraża と単数3 人称が使われているのである。 ⑨ 状態を表す w furii 憤慨して、w milczeniu 黙って 430 前置詞 ⑩ 自然現象を表す w osuwisku 地滑りで ⑪ 回数を表す Putin wygrał w pierwszej turze. プ-チンは第1回目の投票で勝利した。 2.na ロシア語の на に相当する。 これもロシア語と同様、対格支配の場合は、一定方向への運動、前置格支配の場合は、 場所が事物の上や表面上であることを表す。尚、w となるか、na となるかは、ロシア 語同様、難しい問題があるので、それについては別項を設けて詳述する。 1)対格支配の na ① 一定の方向への運動を表す Jedzimy na północ. 北へ行こう。kłaść coś na stół 物をテ-ブルの上に置く、 przybyć na lotnisko 飛行場に到着する 800 imigrantów przybyło na Lampedusę. 800人の移民者がランペドゥ-ザ島 (イタリアのペラ-ジェ諸島にある島)に到着した。(比較:przybyć do Warszawy) ② 期間・時を表す na wiosnę 春に (秋は前置格支配であることに注意、また、夏及び冬は w を取り、 しかも前置格支配である。w lecie 夏に、 w zimie 冬に) na obiad 昼食時に z piątku na sabotę 金曜から土曜日にかけて z 3 na 4 lutego 2月3日から4日にかけて żyć z dnia na dzień その日暮らしをする、z tygodnia na tydzień 毎週 Pożyczyłem pieniędzy na dwa lata. 私は2年間の約束でお金を貸した。 na pięć lat więzienia 5年間の拘禁 ※ 正確な時点を表す時も、na + 対格、で表す。 On zamówił taksowkę na siódmą rano. 彼は朝7時にタクシ-を予約した。 ③ ~につき czterdzieści kilometrów na godzine 時速40kmで、jeden na pięć 5分の1、 czterech na pięciu Norwegów 5人のノルウエ-人の内の4人(5分の4のノルウエ ー人) ④ 深さ、厚さ、広さ、高さ、寸法等を表す Jadła kromkę chleba na trzy centymetry. 彼女は3cm のパンを食べた。 Ten most jest szeroki na piętnaście metrów. この橋は幅が15メ-トルある。 ⑤ 求める対象を表す Pracuję na chleb. 私はパンを求めて働いている。 polować na cudzoziemców 外国人に対して攻撃を仕掛ける atak na Iran イランへの攻撃 Idę do miasta na zakupy. 私は買い物をしに町に出かける。 Idę jutro na polowanie. 私は明日、狩りに出かけるつもりだ。 前置詞 431 jechać na wakacje 休暇に出かける Ban Ki Mun liczy na porozumienia w sprawie Cypru na jesieni. バン・ギ ムン事務総長は秋にキプロス問題で合意することを予定している。 kandydat na wiceprezydenta 副大統領候補 ⑥ 様態を表す Nauczyłem się piosenkę na pamięć. 私はその歌を暗記した。 Kupił to na kredyt. それをクレジットで買った。 ⑦ 目的・用途を表す skrzynia na list 手紙を入れる箱 ⑧ 結果を表す Lekarz przyjechał na naszą prośbę. 医者は我々の要求でやってきた。 zamienić 物1 na 物2 物1を物2に交換する W 1993 Yakushima została wpisana na Listę światowego dziedzictwaUNESCO. 1993年に屋久島はUNESCOの世界遺産に 登録された。 ⑨ 期待するものを表す cieszyć się na coś 何かを楽しみにしている ⑩ 動詞の多くは、na を要求して、動詞句を作るが、その場合の na は対格支配である。 cierpieć na grypę 風邪に罹る、czekać na pociąg 列車を待つ、 patrzeć na słońce 大陽を見る、narzekać na przepisy 規則に不平を言う、 oszczędzać na przyszłość 未来のために蓄える lichyć na ~を期待する Ban Ki Mun liczy na porozumienia w sprawie Cypru na jesieni. バン・ギムン事務 総長は秋にキプロス問題で合意に達することを期待している。 ⑪ 一部の形容詞は na を要求するが、その場合は対格支配である。 odporny na zimno 寒さに対して強い、chciwy na pieniądze お金に対して貪欲であ る、 czuły na poezję 詩に対して敏感である ⑫ 薬に対する効能を表す。 lekarstwo na kaszel 咳止め ⑬ 原因を表す。 Cieszę się na twój przyjazd. あなたが到着してうれしく思う。 Umarł na dżumę. 彼はペストで死んだ。 Zmarł na atak serca. 彼は心臓発作で死亡した。 ⑭ 方角を表す。 Fudżi leży na wypie Honsiu, na południowy zachód od stolicy Tokio. 富士山は本州 で首都東京の南西に位置する。 ⑮ 手段を表す。 Złowił rybą na wędkę. 彼は釣り竿でその魚を釣った。 432 前置詞 2)前置格支配の na ① 動作の行われる場所を表す。 Na stole leży gazeta. テ-ブルの上に新聞がある。 Na ścianie wisi obraz. 壁に絵が掛けてある。na koncercie コンサ-トで ② 演奏する楽器 grać na gitarze ギターを演奏する ③ 動詞で補語として na + 前置格を取るものがある。 grać na ~を演奏する、przestawać na ~で満足する、polegać na ~に頼る、 zależeć na ~を大切にする、znać się na ~に精通している、 odpowiedziać na pytanie 質問に答える ④ 位置を示す Polska jest na ósymym miejscu w drużynowych mistrzostwach świata. ポ-ラン ドは団体の世界選手権で8番目である。 Był na miejscu przestępstwa. 彼は犯行現場にいた。 na jego miejscu 彼の立場なら ⑤ 季節を表す na jesieni 秋に(春は対格支配であることに注意) ⑥ 時を表す na wakacjach 休暇で 3)副詞を伴う na この場合は方法の副詞類となる。 na żywo 生で(放送に関して)、pranie na sucho ドライクリ-ニング、 na pewno 確かに Dom jest pomalowany na zielono. 家は緑に塗られている。(状態受動) Malował samochód na niebiesko. 彼は自動車を青に塗った。 Te jajka są ugotowane na miękko. これらの卵は緩くゆでられた。 3.w と na 場所、所在を表す前置格支配の w と na は前述したように難しい問題がある。どち らを使っても差し支えがない場合もあるが、一般的には以下のように言える。 1)すなわち、w が使われる場合は閉じられた空間や三次元的な状態を表す場合である が、na が使われる場合は開かれた空間や表面上の状態を表す場合である。例えば、Uczę się w szkole. 私は学校で習っている、と言う場合、~ na szkole. とはならないのであ る。一方、Książka leży na stole. 本は机の上にある、の場合、~ w stole. とはならな いのである。だから、Wczoraj byłem w kinie. 昨日、私は映画館にいた、となる。 従って、対立的に示すと、 On jest w domu/sklepie/teatrze/aptece. 彼は、家に/店に/劇場に/薬局に、いる。 On jest na rynku/dworcu/ulicy. 彼は、市場に/駅に/通りに、いる。 従って、方角を表す場合には、開かれた空間であるので、na を取る。 na południu 南側に、na wschodzie 東側に 前置詞 433 2)都市の名前は原則として w を取る。 w Warszawie ワルシャワで、w Krakowie クラコフで、w Łodzi ウッチで、w Pradze プラハで、 w Londynie ロンドンで、 w Kopenhadze コペンハーゲンで、 w Karaczi カ ラチで 従って、W mieście jest głosniej niż na prowincji. 都市は地方より騒がしい(後述 のように地方の名前に関しては na を取るので、na prowincji となるが、w mieście となる。)。 3)国の名前も原則として w を取る。 w Polsce ポーランドで、w Czechach チェコで、w Niemczech チェコで、we Włoszech イタリアで、w Rosji ロシアで、w Hiszpanii スペインで、w Egipcie エ ジプトで、w Kanadzie カナダで、w Japonii 日本で、w Stanach Zjednoczonych ア メリカ合衆国で ※ しかし、na Ukrainie ウクライナで、na Białorusi ベラルーシで、na Litwie リ トアニアで、na Łotwie ラトビアで、na Słowacji スロバキアで、na Węgrzech ハン ガリーで 4)山脈の名前も原則として w を取る。 w Sudetach ズデーデン山地で、w Karpatach カルパティア山脈で、w Tatrach タ タラ山脈で、w Beskidach ベスキッド山脈で、w Pamirze パミール高原で、w Andach アンデス山脈で. ※ しかし、na Uralu ウラル山脈で、na Kaukazie コーカサスで 5)地方の名前は原則として na を取る。 na Śląsku シレジアで、na Pomorzu ポメラニアで、na Kujawach クヤヴィエンで、 na Mazowszu マゾヴィアで、na Saharze サハラで、kościoł na Florydzie フロリダ 州の教会 ※ しかし、w prowincji Murcja ムルシア州で(スペインの州) 6)日本の県は w を使う。 w prefekturze Kagoshima 鹿児島県で 日本の地方も w である。 w regione Kantou 関東地方で 7)地方の町の名前も原則として na である。 na Pradze プラハ地方で、na Żeraniu ジェラニ地方で、na Ursynowie ウリスノフ 地方で しかし、w Wielkopolsce 大ポーランドで、w Małopolsce 小ポーランドで、w Śródmieściu ワルシャワのダウンタウンで、w Nowej Hucie クラコフの東の地方で 8)海洋の名前も原則として na を取る。 na Pacyfiku 大西洋で、na Bałtyku バルト海で、na Morzu śródziemnym 地中海で 9)島の名前も原則として na を取る。群島、半島も同様である。 na Krecie クレタ島で Prezydencki samolot wylądował na wyspie Kunaszyr. 大統領の飛行機は国後島に 434 前置詞 着陸した。 これらの場所へ行くことを表す場合にも na であり、この場合は対格支配となる。 Jedziemy na Kretę. 我々はクレタ島へ行く。 10)以上は原則であるが、w に取るか、na を取るかはある程度慣用的でもある。 Mieszkam na wsi. 私は田舎に住んでいる。 Mieszkam w mieście. 私は都会に住んでいる。 Wychowała się na przedmieściu 私は郊外に育った。 Wielu ludzi mieszka na tym osiedlu. この団地には多くの人々が住んでいる。 Ptak śpiewa na drzewie. 鳥が木にとまってさえずっている。 しかし、同じ場面でも低木となると w krzakach となる。 Postanowiłem studiować na uniwersytecie. 私は大学で学ぶことを決心した。 しかし、w akademii となる。 Stoję w środku. 私は真ん中に立っている。 しかし、na początku 先の方に、na końcu 縁に、となる。 11)さらに、同じ単語を文脈によって使い分ける場合もある。 ① 例えば、niebo 空、の場合、 Na niebie świeciły gwiazdy. 空には、星が輝いていた、と na niebie の場合には「空」 を意味するが、Czuć się jak w niebie. 私は天にも昇る心地である、とか、Panie Juzu w niebie. 天国にいるイエス様、のように w niebie の場合には「天国」を意味するのが通 常である。 ② Ziemie 地球、の場合は、 Człowiek to jeden z wielu gatunków żyjących na Ziemi. 人間は地球上における大 きな生き物の一つである。 Jestem najszczęśliwszym mężczyzną na ziemi. 私は地球上で最も幸福な男である。 Wykopałem dziurę w ziemi. 私は地面に穴を掘った。 ③ しかし、しばしばどちらでも使われる場合がある。例えば、私はこのベッドでよく眠 った、という場合、 Dobrze mi się spało w tym łóżku.でも良いし、Dobrze mi się spało na tym łóżku. で も良い。 また、 Zabrania się postoju w tym miejscu. この場所では駐車は禁止される、 でも良いし、Na tym miejscu wybudowano katedrę. この場所に大聖堂が建てられた、 でも良い。 4.o 1)対格支配の場合は、ロシア語と同様、 接触・衝突の対象物を表したり、 比較構文 において程度の差を表したり、 目的、努力、感情の対象となったり、する。 ① 接触・衝突の対象物の場合 uderzyć się o ścianę 壁を叩く、potykać się o kamień 石につまずく ② 比較構文における程度の差 po spadku o 3,85 proc. 3.85%も低下の後に 前置詞 435 wyższy od ciebie o całą głowę 君より頭分だけ背が高い、o wiele lepszy 遙かに良い 比較構文ではなくても、程度の差を表す場合には o + 対格となる。 Szczyt generalny Ligi Arabskiej został odroczony o rok. アラブ連盟の首脳会議は1 年間延期された。 ③ 目的・努力の対象 walczyć o pokój 平和を求めて戦う、bać się o przyszłość 将来を心配する、 dbać o czystość 清潔さについて心配する、prosić o pomoc 助けを求める ④ また、慣用句での用法もある。 Trudno jest o dobrą pracę. 良い仕事を見つけるのは難しい。 2)前置格支配の場合はロシア語と同様、「~について」や、「~に関して」を表す。 また、 時刻を表す場合もある。もっとも、これはロシア語ではほとんど使われなくなっ てきている用法である。さらに、 特徴を表す場合や、 手段を表す場合もある。 ①「~について」や、「~に関して」を表す。 artykuł o lasach tropikalnych 熱帯林に関する論文 biżuteria o wartości 30 mln euro 3000万ユ-ロの価値のある宝石 ② 時刻を表す場合 o godzinie piątej 5時に、o świcie 明け方に、o zmroku 日暮れ時に ③ 特徴を示す場合 dziewczyna o jasnych włosach 明るい髪をした少女 ④ 手段を表す場合 o własnych siłach 他人の手を借りずに 5.po これは対格支配、前置格支配に加えて、与格支配の場合もあり、やや複雑であ る。 1)対格支配の場合は、ロシア語の по + 対格と類似している。「~まで」、という意 味になる。価格、量を表す場合も対格である。 ① ~まで woda po kolana 膝までの水 po horyzont 水平線まで od Tunezji po Egipt チュニジアからエジプトまで ②「~を求めて」、という目的を表す場合も対格支配である。 ロシア語では за +造格に相当する。 Pacjent przyszedł do lekarza po radę. その患者は診察を受けに医者の所に来た。 iść po zakupy 買い物に行く po co? 何のために。wyjść po zakupy 買い物に出かける Poszedł do mistrza po radę. 彼は助言を求めに師匠の所へ行った。 ③ 価格、量を表す場合も対格である。 Pomiodor jest po trzy złote. このトマトは3ズウォティする。 Dostała po kilka cukierków. 彼女は数個のキャンデ-を手に入れた(cukierków と 複数生格になっているのは、kilka の後の対格は生格で表すためである。)。 436 前置詞 ④ 序数詞と共に用いて「~番目に」を表す po czwarte 4番目に po raz pierwszy 初めて ⑤ 「~ずつ」を表す。すなわち、物や人がそれぞれに分配されたことに関して示すので ある。 On pracuje po osiem godzin dziennie. 彼は毎日8時間ずつ働く。 2)前置格支配の場合 ① 前置格支配の場合は、まず、ロシア語の после とほぼ同じで意味の使い方がある。 「~の後に」、という意味である(もっともロシア語の場合は生格支配である。)。 po chwili しばらくして、po obiedzie 昼食後に、pięc po ósmej 8時5分 Wrócił po kilku latach. 彼は、数年後に帰ってきた。 この種の用法には、完了体から派生した動名詞が来ることも多い。 po wyjściu 去った後に ② 順序が下位であることを示す Jest tu drugi po szefie. 彼はここではシェフに続いて2番手である。 ③ 空間的な意味で「~に沿って」を表す。ロシア語では по +与格に相当する。「~の 周りに」とか「~を通って」とかを表す。 po ulicy 通りに沿って、Statek płynie po rzece. 船は川に沿って進んでいく。 ④「~の周りに」を表す。ロシア語では вдоль、по +与格に相当する。 po sklepach 店の周りに、chodzić po pokoju 部屋の周りを回って歩く po całej Europe ヨ-ロッパ全土に ⑤「~の中を」を表す。 podróżować po świecie 世界中を旅行する、błądzić po lesie 森の中をぶらぶらする ⑥ 体の部分 przejechać dłonią po włosach 手で髪をなでる ⑦ 連続したものを表すこともある。 po nocach 夜ごとに(nocach は複数前置格)、あるいは noc po nocy 夜ごとに(nocy は単数前置格) chodzić po sklepach 買い物に行く(店から店へと行く) ⑧ ~ずつ、を表す wchodzić po dwóch 二人ずつ入る krok po kroku 一歩ずつ Daj im po jablku 彼らそれぞれにリンゴ一個ずつ与えなさい。 Dałem dzieciom po jabłku. 子供達それぞれにリンゴを与えた。 jeden po drugim 次から次へと ⑨ 用途、を表す butelka po mleku ミルク用の容器 ⑩ ~を越えて Mąż jest po pięćdziesiątce. 私の夫は50を越えている。この場合の po は 「~を越えて」、という意味である。 ⑪ 認識の対象を表す 前置詞 437 sądzić po wyglądzie 容姿によって判断する rozpoznać kogoś po głosie 声によって誰かを認める ocenić po pozorach 外見によって判断する ⑫ 受け継ぐ対象 Ma talent po matce. 彼は母親から才能を受け継いでいる。 spadek po rodzicach 両親の遺産 ⑬ ある位置を表す Kościól jest po prawej stronie, stacja po lewej. 教会は右側に、駅は左側にある。 ⑭ 慣用的に po całych dniach 一日中、po całych nocach 夜中 3)po +与格支配の場合も難しい。 po imieniu ファ-ストネ-ムで、mówić po polsku ポ-ランド語で話す miasto Bielce (po rumuńsku Balti) ビエルツエ(ル-マニア語でバルチ) 4)po + 副詞の場合もあるが、この場合は、方法の副詞類となる。 zrobić coś po swojemu 自分のやり方で何かをする po cichu 静かに、po trochu 徐々に、po prostu 簡単に Ⅹ 特殊な前置詞 これには jako, niż, co がある。 1.jako は「~として」の意味がある。 On jest znany jako wybitny specjalista w dziedzinie genetyki. 彼は、遺伝学の専門 家として有名である(この場合、wybitny specjalista は主格で on と格が一致す る。)。 Znałem go jako studenta. 私は学生の頃の彼を知っていた(この場合、studenta は 対格で go と格が一致する。)。 2.niż 前述のⅠ 序 4を参照されたい。 3.co 「毎~」を表し、主格あるいは対格支配の前置詞である。 co sabota 毎土曜日毎に(主格支配) co sabotę 毎土曜日毎に(対格支配) co dwa tygodnie 2週毎に co drugi tydzień 2週毎に co pięciu tygodni 5週毎に co piąty tydzień 5週毎に ※ ここで注意すべきは時を表す語が複数の場合には数詞は個数詞が使われ、単数の 場合には数詞は序数詞が使われると言うことである。(これらは数詞との関係があ るので、数詞の項も参照されたい。) ⅩⅠ 2つ以上の語から成る前置詞 前置詞として扱われるものには2つ以上の語から成るものがある。 1.2つの語から成る前置詞 438 前置詞 1)これらの前置詞は本来の前置詞と名詞から形成され、生格支配であるのが原則であ る。 ① na domiar - ~に加えて na domiar złego さらに悪いことには ② na mocy ~によれば(mocy は moc 力、の単数前置格) na mocy nowego ustawy 新しい法律によれば、na mocy nowego porozuminenia 新 しい協定によれば ③ na przekór - ~に反して wbrew と同じである ④ na skutek - ~の結果 na skutek złego pagody 悪天候の結果 ④ pod względem - ~に関して pod względem jakości 質に関して ⑤ przy pomocy - ~の援助で przy pomocy ojca 父の援助で ⑥ z wyjątkiem - ~を例外として、~以外に、~を除いて Wszyscy byli zadowoleni z wyjątkiem brata. 私の兄を除いて、皆が喜んでいた。 ⑦ co do ~に関する限り、~としては co do mnie 私に関する限り 2)もっとも、造格支配の場合も見られる。 ① wraz z - ~と一緒に wraz z grupą ekspertów 専門家のグル-プと共に wraz z swym partnem 自分のパ-トナ-と一緒に ② zgodnie z ~に従って、~によると、~に応じて zgodnie z umową 契約によると 2.3つの語から成る前置詞 これらの前置詞は、本来の前置詞が2つと1つの名詞から形成される。そして、その 格支配は直接関係する本来の前置詞によって規定されるので、格支配は様々なものとな る。 ① bez względu na +対格 ~にも関わらず bez względu na pogodę 天候にも関わらず ② ze względu na +対格 ~を配慮して、~のために ze względu na stan zdrowia 健康状態を配慮して ze wzgędu na małoletniość 年少 のため ze względu na nieobecność 不在のため ③ w porównaniu z +造格 ~と比較して w porównaniu z sąsiadami 隣人達と比較して ④ w związku z +造格 ~と関連して、 w związku z tym これと関連して w związku z referatem 報告によると 前置詞 439 ⅩⅡ 前置詞の繰り返しに関する問題 1.前置詞が2つ以上必要な場合で、それが同じものであり、しかも格支配も同じ場合 で同じ節で使用される場合には省略されるのが原則である。例えば、rozwawiać z bratem i siostrą 弟と妹と会話する、と言う場合、本来は、rozwawiać z bratem i z siostrą であるが、後の z は省略するのである。 człowiek ze krwi i kości 生身の人間(この場合の z は生格支配) しかし、強調する場合には繰り返すし、節が異なれば繰り返す。 Roswawiam z bratem, nie z siostrą. 私は弟と会話しているのであって、妹とではな い。 Rano poszedłem do szpitala, a wieczorem do kina. 朝は病院へ行き、夕方は映画に行 った。 2.前置詞が異なっていても格支配が同じ前置詞が2つ以上必要な場合には、最後の前 置詞の後に名詞が来るだけであり、それ以前の名詞は省略される。 Pudło stoi nad i pod stołem. 箱はテーブルの上と下にある。 3.しかし、前置詞が異なって格支配も異なる場合には、それに支配される名詞が同じ ものであってもその名詞は省略されない。例えば、例えば、前述の、「本は机の上と下 にある」、と言う場合に、 Pudło stoi nad i pod stołem. 箱はテーブルの上と下にある、だが、Pudło stoi na stole i pod stołem. 箱はテーブルの上と下にある、となる。この場合、nad, pod は造格支 配であるのに対して、na は前置格支配であるので、前者では名詞が一部省略可能で あるが、後者では省略できないのである。 そして、この後者の場合、2つ目以降の名詞は代名詞を使うのが通常である。従っ て、前述の文は、Pudło stoi na stole o pod nim. とするのが、通常である。 4.前置詞が連続する場合 文によっては、前置詞を2つ以上連続しなければならないものが出てくる。例えば、 約4年後に、と言う場合、直訳すれば za około cztery lata となるが、このように前置 詞 za と około を連続して使うのは好ましくない。そこで、このような場合には za miniej więcej cztery lata とするべきである。 しかし、連続する前置詞が回避できないこともある。 ⅩⅢ 対になる前置詞 ロシア語でも見られたが、ポーランド語でも対になって使用される前置詞がある。そ れらには、od ... do ... や od ... po ..., z ... do ... や z ... na ... である。 1.od ... do ... 440 前置詞 最も典型的なものである。主として、「~から~まで」の意味がある。これには、時 に関するもの、空間に関するもの、等がある。 1)時に関するもの od poniedziałku do środy 月曜日から水曜日まで od rano do wieczora 朝から晩まで od trzeciej do ósmej po południu 午後3時から8時まで 2)空間に関するもの chodzić od sklepu do sklepu 店から店まで行く od Paryża do Berlina パリからベルリンまで Przemókła od pasa do kolan. 彼女は腰から膝までびしょ濡れになった。 3)慣用句で od czasu do czasu 時々 od stóp do głów 頭からつま先まで(日本語と逆であることに注意) 2.z .... do .... Inflacja spadła z dziesięciu do osiemu procent. インフレは10パーセントから8パ ーセントまで低下した。 Wrócił z Madryta do Amsterdama. 彼はマドリードからアムステルダムまで帰った。 3.z .... na ... na の後は対格が来るが、連続する時を表すのが通常である。慣用句として使われる ものが多い。 z roku na rok 毎年 z miesiąca na miesiąc 毎月 z dnia na dzień 毎日 z godziny na godzinę 1時間毎に z minuty na minutę 1分毎 Winda jeździ z góry na dół. エレベーターが昇り降りしている。 wznieść się z pierwszego piętra na trzeciego piętro 1階から3階まで上がる 副詞 441 第2節 副詞 Ⅰ序 ロシア語においては、副詞は変化はしないで、動詞、形容詞、他の副詞、名詞、代名 詞を修飾する単語であるが、この点ではポーランド語でも同じである。また、句、節、 文全体を修飾することがあるのも同様である。また、その一部で比較級、最上級等、等 級があるのも同じである。そして、統語論上は副詞は文肢となりうる点で後述する接続 詞、助詞、間投詞と異なる。 動詞を修飾する例:pracować dobrze よく働く siedzieć razem 一緒に座る 形容詞を修飾する例:bardzo dobry 非常に良い niemal gotowy ほとんど準備のできた 副詞を修飾する例:zupelnie wolno まったくゆっくり śmiertelnie nudno 死ぬほど退屈に 名詞を修飾する例:Nawet dziecko to zrozumie. 子供だって、それは分かる。 代名詞を修飾する例:On także lubi kawę. 彼もまたコーヒーが好きである。 文全体を修飾する例:Niestety zoatał ranny w wypadku dorogowym. 運悪く、彼は 交通事故でけがをした。 副詞はロシア語と同じく形容詞(といってもそのうちの記述的形容詞)から派生する ものが多いが、さらに、ロシア語と同じく名詞、動詞、数詞、代名詞から派生するもの もあり、また、副詞固有のものもある。 Ⅱ 形容詞由来の副詞 1.ロシア語においては形容詞の短語尾中性形と形が同じであることが多い。従って、 語尾は о か е になる。ポーランド語においては原則として短語尾中性形は見られない のであるが、語尾は -o か -e になる。ただ、特殊なのがあり、po + -u となって全体が 副詞となるものもある(ただ、これは副詞句と称すべきものである)。 1) 語幹が軟口蓋音で終わる形容詞から派生する副詞は語尾が -o となる。 cichy → cicho 静かに、 bliski → blisko 近くに、 drogi → drogo 高価に 2)語幹が(広義の)軟音で終わる形容詞から派生する副詞も語尾が -o となる。 głupi → głupio 愚かに、tani → tanio 安く、świeży → świeżo 新鮮に、 gorący → gorąco 熱く、obcy → obco 外国に 3)語幹が p, b, s, t, d で終わる形容詞から派生する副詞も語尾が -o となる。 ślepy → ślepo 盲目的に、słaby → słabo 弱く、gruby → grubo 太く、bosy → boso 裸足で、czysty → czysto きれいに、bogaty → bogato 豊かに、lodowaty → lodowato 非常に寒く、kraczasty → kraczasto 毛深く、młody → młodo 若く、 chudy → chudo やせて 442 副詞 4) 語幹が子音+ n で終わる形容詞から派生する副詞は語尾が -e となるものが多い が、-o となるものもある。 ① -e となる場合 solidny → solidnie 信頼できる、 cudny → cudnie すばらしく、 żyzny → żyznie 実り多く silny → silnie 強く その他には、biednie 貧乏で、dziecinnie 子供らしく、fizycznie 物理的に、 grzecznie 控えめに 、 jesiennie 秋に、 ładnie 可愛らしく、podejrzanie 疑わしく、 przyjemnie 喜んで、wojennie 戦いで、 zdecydowanie 決定的に、等がある。 この場合は、語尾が -nie となることに注意すべきである。なぜなら、-e は e2 で あり、その前の子音に第二子音交替を起こさせるからである。 ② -o となる場合 しかし、数は少ないが、-o となる場合もある。例えば、pilny → pilno 急いで、trudny → trudno 難しく、等である。 その他には、brudno 汚く、 chłodno 寒く、 ciemno 暗く、czarno 黒く、duszno 息苦しく、głodno 空腹で、głośno 大声で、jasno 明る く、 kwaśno 酸っぱく、mocno しっかりと、parno 蒸し暑く、pełno 十分に、próżno 無駄に、wolno 自由に、zimno 冬に、等がある。 5)語幹が母音+ n で終わる形容詞から派生する副詞は原則として -nie となる。この 場合は受動形容分詞から派生するものが多い。もっとも、受動形容分詞から派生する 副詞は少ないが、受動形容分詞の中には形容詞化されているものもあり、そのような 形容詞から派生する副詞がこれに含まれる。 nieoczekiwany → nieoczekiwanie 思いがけず、szalony → szalonie 正気でなく 但し、色に関係する形容詞から派生する副詞は -o となる。 czerwony → czerwono 赤に、zielony → zielono 緑に、( 子音 + n で終わるが、 czarny → czarno 黒に) 6)語の終わりが -omy となる形容詞から派生する副詞の語尾は -o となるものが多い。 nieruchomy → nieruchomo 動かなく、niewiadomy → niewiadomo 知られずに、 nieznajomy → nieznajomo 変に、ruchomy → ruchomo 動いて、 rzekomy → rzekomo 嫌疑のかかった、wiadomy → wiadomo 知られて、znajomy → znajomo 知られて、znikomy → znikomo わずかに、等である。 ※ しかし、łakomy → łakomie 貪欲に、nieświadomy → nieświadomie 無意識に、 świadomy → świadomie 意識的に 7)語の終わりが -ły となる形容詞から派生する副詞は語尾が -le となる。そして、注 意すべきは l の前の子音に子音交替があるものがあることである。 biegły → biegle 流暢に、dojrzały → dojrzale 熟して、doniosły → doniośle 重点的 に、dorosły → dorośle 大人になって、doskonały → doskonale 上手に(例文:mówić doskonale po polsku ポーランド語で上手に話す)、oziębły → ozięble 寒く、trwały → trwale 永久に、zawiły → zawile 複雑に、zły → źle 悪く、ścisły → ściśle 狭く 8)語の終わりが -iwy, -ywy となる形容詞から派生する副詞は語尾が -iwie, -ywie と なる。 副詞 443 dokuczliwy → dokuczliwie いらいらして、fałszywy → fałszywie だまして、 piskliwy → piskliwie 耳をつんざくように、 prawdziwy → prawdziwie 本当に、 przeraźliwy → przeraźliwie 恐ろしく 9)語の終わりが -owy となる形容詞から派生する副詞は語尾が -o となる。 brązowy → brązowo 青銅色に、fioletowy→ fioletowo スミレ色に、nerwowy → nerwowo 神経質に、papierowy → papierowo 紙に、pionowy → pionowo 垂直に、 pokojowy → pokojowo 平和に、purpurowy → purpurowo 深紅色に、różowy → różowo バラ色に、 środkowy → środkowo 中心に、zimowy → zimowo 冬に 10)語尾が -awy となる形容詞から派生する副詞の中には語尾が -awie となるもの もある。例えば、ciekawy → ciekawie 興味深く、łaskawy → łaskawie 親切に 11)語尾が -isty, -ysty となる形容詞から派生する副詞は語尾が -e となる。また、こ の e は e2 であるので、第二一子音交替があり、st は ść に子音交替が起きる。 wieczysty → wieczyście 永遠に、 wyrazisty → wyraziście 表情豊かに 12)その他の形容詞から派生する副詞は語尾が -o となったり -e となったりする。そ れらには規則性はないので、個々に覚えるしかない。 całkowity → całkowicie 完全に、dobry → dobrze 良く、 łakomy → łakomie 貪 欲に、mądry → mądrze 賢く、nieświadomy → nieświadomie 無意識に、otwarty → otwarcie 開いて、skryty → skrycie 秘密裏に、świadomy → świadomie 意識 的に、uprzejmy → uprzejmie 丁寧に. 13)さらに、2種類の副詞を有し、使い方が異なるものもある。 例えば、smutny 悲しい、から派生する副詞には、smutno と smutnie があるが、 smutno の場合は、Jest nam smutno bez niego. 彼がいないと我々は悲しい、という様 に無人称文で使われる。一方、smutnie の方は、Siedziała smutnie. 彼女は悲しげに座 っていた、という様に動詞を修飾する用法で使われる。 また、nudy 退屈だ、から派生する副詞には nudno と nudnie があり、nudno は Było mi nudno. 私は退屈だった、という様に無人称述語の用法で、nudnie は Mówiła nudnie. 彼女は退屈そうに話した、という様に動詞を修飾する用法で使われる。miły 可 愛い、から派生した miło と mile の場合も同様である。 2.副詞の縮小辞 形容詞に縮小辞が見られたように副詞にも縮小辞が見られる。ただ、これが見られ るのは少なく副詞の一部だけである。 trochę 少し → troszkę → troszeczkę ほんの少し cicho 静かに → cichutko ひっそりと cienko 薄く→ cieniutko 非常に薄く słabo 弱く→ słabiutko 全く弱く blisko 近く → bliziutko 非常に近く mało 小さく → malutko → malusieńtko 非常に小さく krótko 短く → króciutko 非常に短く 444 副詞 szybko 速く → szybciutko 今すぐに 3.副詞の位置 形容詞から派生した副詞の位置は原則として修飾されるものの前後に置く。動詞を修 飾するものであればその動詞の前後に置くのが通常である。また、形容詞を修飾するも のであればその形容詞の前に、副詞を修飾するものであれば、その副詞の前に、名詞を 修飾するものであれば、名詞の直後に置かれる。 1)Adam cicho zamknął drzwi. アダムは静かにドアを閉めた。 2)On jest cudnie dobry w piłkę nożną. 彼は素晴らしくサッカーが上手だ。 3)Adam mówi nieznajomo wolno. アダムは変にゆっくりと話す。 4)jajko na miękko 半熟卵 Ⅲ 比較級 形容詞に比較級があるのと同じく形容詞から派生した副詞にも比較級がある。しかし、 本来的な副詞には原則として比較級は見られない。そこで、ここでは形容詞から派生し た副詞についてのみ言及する。形容詞派生の副詞の比較級は、語の最後の e または o を 取って、ej を付加するのが原則である。すなわち元の形容詞の語幹に接尾辞 ‘ej を付加 して作るのである。 しかし、 詳細に見ると語尾が e か o によって作り方が異なっている。 1. 語の最後が -e か -ie の場合。 この場合は、単純に -j を付加すれば良い。 例えば、ładnie 良く、の場合、比較級は ładniej となる。mądrze 賢く、の場合、mądrzej となる。この場合は、2.と異なって子音交 替は起きない。原級自体に e があるので、既に子音交替が起きているからである。 2.語の最後が -o または -io の場合(但し、語尾が -ko,-eko,-oko となる場合は除く) この場合はやや複雑である。まず、原則としては -o を取って、-ej を付加する。例えば、 tanio 安く、の場合、taniej となる。ただ、-ej の e は e2 であるので第二子音交替が起 きる。従って、硬子音の場合は i を付加することによって子音を軟音化する。。 1)元の形容詞の語幹が b, p, n, m, w, c, s, z で終わる場合は i を付加することによって軟 音化が生じる。 słabo 弱く、は słabiej、skąpo 節約して、は skąpiej 、trudno 難しく、は trudniej、 ruchomo 動いて、は ruchomiej、 łatwo 簡単に、は łatwiej、等となる。 2)元の形容詞の語幹が ł, d, g, r, t, ch で終わる場合は軟子音に交替する。-ej の e が e2 であり、第二子音交替が起きるからである。 ł は l になる。例えば、ciepło 暖かく、の場合は cieplej となる。また、wesoło 快活に、 は weselej となる( o → e への母音交替があることに注意。)。 d は dzi となる。例えば、młodo 若く、の場合は młodziej となる。 g は ż となる。例えば、drogo 高く、の場合は drożej となる。długo 長く、は dłużej と なる。 副詞 445 r は rz となる。例えば、ostro 鋭く、の場合は ostrzej となる。 st は ści となる。例えば、prosto まっすぐに、の場合は prościej となる。 ch は sz となる。例えば、cicho 静かに、の場合は ciszej となる。 3) 副詞の終わりが -ko, -eko, -oko となる場合 この場合は、それぞれ -ko, -eko, -oko を取り、ej を付加する。この場合の e も e2 で あるので、その前が基本的子音である場合には第二子音交替が起きる。 ciężko 重く→ciężej cienko 薄く→ cieniej rzadko 珍しく→ rzadziej głęboko 深く→ głebiej daleko 遠く→ dalej しかし、原則通りの子音交替が起きない場合もある。例えば、prędko 素早く → prędzej の場合は、d が dz となる(これは d の第三子音交替である。)。また、 blisko 近くに→ bliżej 、nisko 低く → niżej (これらの場合は、s が ż になり、通常の子音 交替とは異なる。)、wąsko 狭く→ węziej (この場合は、s が ź になる点で、blisko と異なるし、また、ą → ę への母音交替が起こっている点でも特殊である。)、krótko 短く → krócej ( t が c に替わる点が特殊である。) 3.不規則な比較級 これは、1.2で説明した比較級の作り方では説明できないものである。 dobrze 良く→ lepiej、 dużo 多く・大きく→ więcej、lekko 軽く→ lżej、mało 少な く→ mniej、szybko 速く → szybciej、bardzo 非常に → bardziej、źle 悪く→ gorzej、 gorąco 熱く → goręcej 4.bardziej を加える場合 形容詞の比較級と同じく、副詞の原級に bardziej を加えて示す場合もある。 blisko 近くに → bardziej blisko より近くに 5.劣等比較の場合 形容詞の劣等比較と同じように、副詞の原級に mniej を付けて表す。 blisko 近くに → mniej blisko より近くなく Ⅳ 最上級 1.最上級の場合は比較級に接頭辞として naj を付加する。また、稀ではあるが、原級 の前に najbardziej を置く場合もある。 dalej さらに → naidalej、ciszej より静かに → najciszej、lepiej より良く → najlepiej、daleko 遠くに → najbardziej daleko 2.劣等最上級の場合には、mniej に接頭辞として naj を付加したものを用いる。 daleko 遠くに → najmniej daleko 446 副詞 Ⅴ 比較級の対象の表現 これは、形容詞の比較級と同じく、niż を用いる方法と od を用いる方法がある。形 容詞の比較級の項を参照されたい。 Ⅵ 比較級・最上級に関する諸問題 比較級や最上級を用いなくても、比較級や最上級を使用したのと同じ意味を表すこと ができる。また、比較級や最上級を用いて、さらにその意味をアレンジしてニュアンス を強調したり緩和したりすることがある。 1. 原級の場合 これには bardzo-bardziej-najbardziej を使ったり、mało-mniej-najmniej を使う場合 がある。また、szczególnie 特別に、nadzwyczaj 著しく、fantastycznie 驚くべき、za ~し過ぎる、を使う場合もある。 późno 遅く・遅れて、を使った例を示すと、 bardzo późno 非常に遅く、bardziej późno より遅く、naibardziej późno 最も遅く、 mało późno わずかに遅く mniej późno より遅くなく、 najmniej późno 最も遅くなく、 szczególnie późno 特に遅く、nadzwyczaj późno ものすごく遅く、 fantastycznie późno とてつもなく遅く、za późno 遅すぎる 2.比較級の場合 1)これには dużo, znacznie, jeszcze, o wiele, nieco, niewiele, trochę, szczególnie, coraz 等を用いる方法がある。 duźo później 遙かに遅く、znacznie później 遙かに遅く、o wiele później 遙かに遅く、 jeszcze później 遙かに遅く、trochę później 少し遅く、nieco później 少し遅く、 niewiele później ほとんど遅くなく、coraz później ますます遅く、 coraz więcej ます ます多く 2)特殊な使用 im ... , tym .... ~すればするほど~だ 例えば、Im szybciej, tym lepiej. 速ければ速いほど良い.。 3)比較の対象を表現する場合には、形容詞と同じく、niż を使う場合と od を使う場 合がある。 Mój syn pisze ładniej niż ja. 私の息子は私より字がうまい。 Mój syn pisze ładniej od mnie. 私の息子は私より字がうまい。 4)劣等比較の対象は jak +主格で表す。 Dziś nie czuję się zimniej jak wszoraj. 今日は昨日より寒くない。 3.最上級の場合 1)ze wszystkich これは「すべての中で最も・・・」を表す場合に用いられる。 副詞 447 Adam biegnie najszybiej ze wszytkich. アダムは誰よりも速く走る。 2)jak あるいは jak można を用いるもの 最上級と同時に使われると「できるだけ・・・」の意味になる。 Zrób pracę domową jak najwcześniej. できるだけ早く宿題をせよ。 Wyjaśniaj wypadek jak można najkrócej. できるだけ簡潔にその事故について説明 せよ。 Chcę otwierać sklep jak najbliżej. 私はできるだけ近くに店を開きたい。 尚、「できるだけ・・・」、という場合、jak を用いずに czym を用いる方法がある が、この場合は副詞は比較級となる。czym późiej できるだけ遅く、czym prędzej でき るだけ速く 3)慣用句として co najmniej 少なくとも co najmniej 20 osób zginęło. 少なくとも20人が死亡した。 Ⅶ 本来の副詞 本来的副詞の場合には原則として比較級、最上級は考えられないので、ここで項を改 めて記載する。 代表的なものに以下のようなものがある。 tylko ただ、zawsze 常に、przedtem 以前に、czasami しばしば、 niedługo すぐに、wkrótce すぐに・直ちに potem それから、dziś 今日、jutro 明日(名詞と全く同じであることに注意)、zbyt ~過ぎる、zwykle 普通に、teraz 今、rzadko まれに、razem 一緒に、akurat 丁度、 codziennie 毎日、nagle 突然に、chyba おそらく 本来の副詞は意味と形式から次のように分類できる。しかし、この分類は理解のため の便宜上のものなので、重複もあり、相対的区別に留まることに注意すべきである。ま た、2語以上の組み合わせで副詞の働きをする語である副詞句も含めて記載する。 1.時を表す副詞 1)dzisiaj 「今日」、を表す。 dziś も「今日」を表す。 Dzisiaj idę z Janem do koncertu. 今日、私はジョンと一緒にコンサートに 行く。 Dziś rano padało. 今日の朝雨が降っていた。 2)jutro 明日 pojutrze 明後日 Jutro jeżdżę do Warszawy. 私は明日ワルシャワへ行く予定だ。 3)wczoraj 昨日 Dostałam wczoraj list od Adama. 昨日私はアダムから手紙を受け取った。 4)teraz 今 Rano padało, ale teraz już się rozpogodziło. 朝は雨が降っていたが、今はす でに天気は晴れ渡っていた。 448 副詞 5)zaraz すぐに od zaraz 即刻 niedługo すぐに Zaraz wracam. 私はすぐ戻ります。 6)natychmiast すぐに Zrób to natychmiast! すぐにそれをしなさい。 7)wtedy ① 当時、② それから、を表す ① Miał wtedy trzynaście lat. 当時、彼は13歳だった。 ② Jeśli wrócisz wcześniej, wtedy gram w tenisa z tobą. もしあなたが早く帰 ってくるなら、それから私はあなたとテニスをする。 I co wtedy? それから何? 8)wtem 突然に Zmarła wtem. 彼女は突然に死んだ。 9)obecnie 目下の所、今、現在 Obecnie on jest kierowcą dyrektora. 目下のところ、彼は社長の運転手をし ている。 10)potem その後に Najpierw zjedz obiad, a potem dostaniesz deser. まず、食事を取りなさい。 その後に、デザートを取ることができる。 11)zawsze 常に On jest zawsze zadowolony z sobie. 彼は常に自分自身に満足している。 12)przedtem 以前は Przedtem Adam mieszkał w Paryżu, teraz mieszka tu. 私は以前はパリに 住んでいた。今はここに住んでいる。 13)kiedyś ある時、以前、かつて Była kiedyś piękną kobietą. かつて、彼女は美しい婦人であった。 14)jak długo どれくらい Jak długo spałem? どのくらい私は眠っただろうか。 15)prędzej czy później 遅かれ早かれ Prędzej czy później muszę rozwiązywać tą probremę. 遅かれ早かれ私はこ の問題を解決しなければならない。 16)nadal 依然として、まだ Stalin jest nadal popularny. スターリンは依然として(まだ)人気がある。 17)wkrótce すぐに On został odwieziony do szpitala, wkróce wyszedł z tego. 彼は病院に入院 したが、すぐに退院した。 2.場所を表す副詞 1)na przodzie 前に、do przodu 前の方へ・先に、z przodu 前から、w przód 前へ 副詞 449 これらは przód 前、という名詞から作られた副詞句である。 Pójdę do przodu. 私は先に行きます。 2)do tyłu 後ろへ z tyłu 後ろから これらは tył 後ろ、という名詞から作られた副詞句である。 Odsuń się do tyłu! 後ろへ下がれ。 3)wszędzie 至るところに Wszędzie się je sprzedaje. 至る所でこれらの物は売られている。 Chodziła wszędzie. 彼女は至る所を歩き回った。 4)nigdzie どこにも~でない Nigdzie ją nie widzę. 私はどこにも彼女を見かけないだろう。 5)zewsząd あらゆる所から Zewsząd zbiegli się ludzie. あらゆる所から、人々が走ってくる。 3.様態を表す副詞 1)jako tako まあまあ Jako ci poszedł egzamin? 試験はどうだった? Jako tako. まあまあです。 2)nagle 突然に Autobas nagle zatrzymał się. バスは急に停車した。 3)naraz 突然に、同時に、一緒に Naraz zachciało mi się spać. 突然、私は眠たくなった。 4)pomału 徐々に Na dworze robi się pomału jasno. 外は徐々に明るくなる。 5)powoli ゆっくりと Ona idzie powoli. 彼女はゆっくりと歩く。 Śpiesz się powoli. 急がば回れ。 6)wolno ゆっくりと(話法の助動詞と区別せよ) On idzie bardzo wolno. 彼は非常にゆっくりと歩く。 7)jakoś 何となく Czuł się jakoś nieswojo. 彼は何となく嫌な感じを抱いた。 8)wraz 一緒に wraz z kimś/ czymś (人の造格)と一緒に、あるいは(物の造格) と一緒に Zjadła obiad wraz z kolcją. 彼女は夕食と一緒に昼食を食べた。 Opuścił Hiszpanię wraz z rodzinami. 彼は家族と一緒にスペインを出発した。 4.程度を表す副詞 1)za ~しすぎる On jest za młody na to stanowisko. 彼はこのポストに着くには若すぎる。 Te buty są za ciasne. この靴はきつすぎる。 2)zbyt ~し過ぎる 450 副詞 zbyt krótki 短すぎる 3)bardzo 非常に On jest bardzo dobry w piłkę nożną. 彼は非常にサッカーが上手だ。 4)wcale nie 全く~でない(wcale の後は常に否定形が来る) Wcale ją nie znam. 私は彼女を全く知らない。 5)ledwo かろうじて、ほとんど~でない (否定の nie とは一緒に使われな いことに注意すべきである。) Jestem ledwo żywy. 私はかろうじて生きている(死んだも同然だ)。 同意語ledwie, z trudem 6)nieco わずかに mieć nieco czasu わずかな時間しかない 7)równie ~と同様に Anna jest równie piękna jak jej sistra. アンナは妹と同様に美しい。 8)okropnie 恐ろしく strasznie 恐ろしく okropnie zmarznąć ひどく冷え込む Ona ma strasznie dużo pieniędzy. 彼女は非常にたくさんのお金を持って いる。 9)dosyć かなり、dość かなり dosyć zimny かなり寒い dość zimny かなり寒い 10)niemal ほとんど Fajerwerki zabiły niemal sto osób 花火が約100人の人間を殺した。 5.頻度を表す副詞 頻度を表す副詞を導く疑問文は通常は、「Jak często? どのくらい?」であ る。それに関する副詞には zawsze 常に、czasami しばしば、czasem 時々、 rzadko めったに・まれに、zwykle 普通は、zazwyczaj 一般的に、等がある。 1)znowu 再び Tłumy zbierali znowu na placu. 群衆は再び広場に集まった。 2)wciaż 絶えず、いつも powtarzać wciąż to samo 絶えず、同じことを繰り返す 3)rzadko めったに Adam rzadko czyta książkę. アダムはめったに本を読まない。 4)zwykle 普通は jak zwykle いつものように Co zwykle robisz po klasie? いつも授業後は何をしますか。 5)zawsze 常に Adam zawsze czyta książkę. アダムは常に本を読んでいる。 6)czasami しばしば On czasami ogląda telewizję. 彼はしばしばテレビを見る。 副詞 451 7)zazwyczaj 一般的に、通常 On zazwyczaj wraca o siódmej. 彼は通常7時に帰宅する。 6.語及び文に意味を添加する副詞 1)właśnie 正確に、丁度 Właśnie przyjechał. 彼は丁度着いたところだ。 2)niestety 運悪く、不幸にも Niestety tego komputera nie da się naprawić. 運悪く誰もそのコンピュー ターを修理することはできない。 3)ponadto さらに Ona jest ładna, a ponadto inteligentna. 彼女は可愛い上に、賢い。 4)również また Ona może mówić po polsku i po angielsku, a również po niemiecku. 彼女 はポーランド語、英語で話すことができるし、さらにまたドイツ語で話す こともできる。 Przyszedł również i on. 彼もまた来た。 7.因果副詞 これは、理由、原因、条件、結果及び目的等を表す副詞である。 1)z jakiegoś powodu ある理由から Z jakiegoś powodu chodził do szkoły. ある理由から、彼は学校へ行かなかっ た。 2)po co? 何のために? po co to robisz? 何のためにあんたはそれをするのか。 3)umyślnie わざと Nie zrobiłem tego umyślnie. 私はわざとそれをしなかった。 8.本来的副詞の位置 本来的副詞の位置は形容詞派生の副詞と同じく、動詞の前や後に置くのが通 常である。例えば、Wyjechaliśmy stamtąd w czwartek. 我々は木曜日にここ から出発する、である。また、形容詞を修飾するものであればその形容詞の前に、副 詞を修飾するものであれば、その副詞の前に置かれる。 On jest bardzo dobry w piłkę nożną. 彼は非常にサッカーが上手だ。 Adam mówi bardzo wolno. アダムは非常にゆっくりと話す。 Ⅷ 代名詞的副詞 副詞の中には具体的な内容を示さず、「そこ」「そのとき」「そんな風に」などのよ うに一定の不特定の範囲の意味のみを示す、代名詞のような副詞がある。これを代名詞 的副詞という。これには、指示的、疑問的、関係的、強調的疑問的、否定的、不定的代 452 副詞 名詞的副詞を区別することができる。 1.指示的代名詞的副詞 これには tak, tu, tutaj, tam, ówdzie, dalej, stąd, stamtąd, tędy, tamtędy, wtedy, wtenczas, odtąd, dotąd, dopóty, dlatego を挙げることができる。 1)tak そのように Zrób to tak ,żeby cię nie zauważył. 彼に気づかれないように、それをしなさい。 Myślę tak. 私はそう思う。 2)tu ここで Czy tu wolno palić? ここでたばこを吸っても良いですか? 3)tutaj ここで(tu とほぼ同じである。) Mieszkam tutaj. 私はここに住んでいる。 4)tam あそこで Kto tam? あそこにいるのは誰ですか? tam i z powrotem 往復の bilet tam i z powrotem 往復切符 Tam jest toaleta. トイレはあそこにある。 5)ówdzie あそこで( tam の雅語) tu i ówdzie あちこちに 6)dalej 次に Nie wiedzieli, co dalej zrobić. 彼らは次に何をすべきか分からなかった。 7)stąd ここから niedaleko stąd ここから遠くなく 8)stamtąd そこから blisko stamtąd そこから近くに 9)tędy こちらへ Chodzę tędy. 私はこちらへ行く。 tędy i owędy あちこち 10)tamtędy あちらへ (owędy も同じである。) nie tędy, tamtędy proszę. こちらではなく、あちらへどうぞ。 11)wtedy その時に Miał wtedy osiem lat. その時、彼は8歳だった。 12)wtenczas その時に Wtenczas jeszcze był studentem. その時彼はまだ学生だった。 13)odtąd ここから(場所)、その時から、以後(時) Pobiegnij odtąd. ここから走りなさい。 Odtąd wszystko się zmieni. 今後、すべてが変わるだろう。 14)dotąd ここまで(場所)、これまで(時) odtąd dotąd ここからここまで Dotąd nie było takich problemów. これまでそのような問題はなかった。 15)dlatego それ故 副詞 453 Późno wyszedłem, dlatego spóźniłem się na pociąg. 家を出るのが遅かったので、列 車に乗り損ねた。 16)inaczej 違った風に Ona wygląda inaczej z tymi krótkimi włosami. 彼女はそのような短い髪をすると違 った風に見える。 Tak czy inaczej on jest leniwy. とにかく彼は怠惰だ。 17)na tyle それほど Nie myślałem, że on jest na tyle mściwy. 彼がそれほど執念深いとは思わなかった。 On jest na tyle bogaty, że może kupić ten samochód. 彼はその車を買うことができ るほど、金持ちである。 2.疑問代名詞的副詞 これには jak, gdzie, skąd, dokąd, którędy, kiedy, gdy, odkąd がある。 1)jak どのように Jak się masz? お元気ですか? 2)gdzie どこに Gdzie on jest? 彼はどこですか? 3)skąd どこから Skąd Pan jest? あなたはどこの出身ですか? 4)dokąd どこへ Dokąd Pan pójdzie? あなたはどこへ行くのですか? 5)którędy どちらの方に Którędy przebiega granica? 国境はどちらの方にあるのですか(走っているのです か)? 6)kiedy いつ Kiedy wrócisz? あなたはいつ帰るのですか? Kiedy muszę zwrócić samochód? いつ私は自動車を返さなければなりませ んか。 7)odkąd いつから Odkąd się znacie? いつからあなた方は知り合いなの? 8)jak długo どれくらい Jak długo tam będziesz? あなたはどのくらいそこにいるつもりですか。 9)dlaczego なぜ Dlaczego spóźniłeś się na zajęcię? なぜ、あなたは授業に遅れたのですか。 Dlaczego jej nie lubisz? なぜあなたは彼女が好きではないのか? 10)czemu なぜ(この場合は非難めいた意味で用いる) Czemu tak mizernie wyglądasz? なぜ、あなたはそんなにみすぼらしく見えるの? 3.関係代名詞的副詞 454 副詞 関係代名詞的副詞は原則として疑問代名詞的副詞と同じものがなりうるのであるが、 次のものは例外で関係代名詞副詞としてのみ機能する。 gdy Lubię spać, gdy pada. 私は雨が降る時に眠るのが好きだ。 尚、関係代名詞的副詞は従属節のみで使われ、主節や単文では使われない。 4.強調的疑問代名詞的副詞 それぞれの疑問代名詞的副詞に対して、以下のごとく強調的疑問代名詞的副詞がある。 jakże, gdzież, skądże, dokądże, którędyż, kiedyż, dlaczegoż, czemuż 等があるが、 gdizeiż の例は、 Gdzież położyła swój klucz? 一体全体彼女は鍵をどこに置いたのか。 5.否定代名詞的副詞 1)nijak 全く~でない Nijak nie mogę zasnąć. 私は全く眠ることができない。 Nijak nie możesz wchodzić do domu. 決して家に入ってはいけない。 2)nigdy 決して~でない Ona nigdy nie zmienia fryzurę. 彼女は決して髪型を変えない。 jak gdyby nigdy nic 何も起こらなかったかのごとく 3)nigdzie どこにも~でない Nie widzieliśmy go nigdzie. 我々はどこにも彼を見なかった。 4)znikąd どこからも~でない nie oczekiwać znikąd pomocy どこからも援助は期待できない 5)donikąd どこへも~でない On donikąd nie wyjdzie w święto. 彼は祝日にどこへも行かない。 6.不定代名詞的副詞 1)jakoś 何とかして Jakoś mu się udało to zrobić 彼は何とかしてそれをやった。 2)gdzieś どこかで Ona gdzieś sobie kupi dom.彼女はどこかで家を買うだろう。 3)skądś どこからか Skądś śmierdzi dymem. どこからか煙の臭いがする。 4)dokądś どこかあるところへ Dokądś położyłem książkę, ale teraz nie mogę znaleźć. 本をどこかへ置いたのだが、 今はそれを見つけることができない。 5)kiedyś いつかある時、かつて Był kiedyś ucziwym człowiekiem. 彼はかつて誠実な男であった。 6)jakkolwiek 何らかの方法で・何とかして・どんなに~でも 副詞 455 Mogę pomalować ten dom jakkolwiek. 私はその家を何とかして塗ることができる。 Ⅸ 副詞句の形成方法 副詞句とは副詞以外に副詞としての機能を果たすものであり、ポーランド語において は次のようなものが認められる。尚、Ⅶ 本来の副詞の項で述べたものの中には2単語以 上のものもあるが(例えば、na przodzie、jak długo 等)それらは慣用的に2単語以 上で一つの副詞として扱われているので、この副詞句とは区別すべきである。 1. po + 言語あるいは国民を表す形容詞で終わりが -u となるもの これらの形容詞は 終わりが -ski となるものが多い。 polski ポーランド人の・ポーランド語の、から po polsku ポーランド語で angielski イギリス人の・英語の、から po angielsku 英語で 2.同じく終わりが -ski となる形容詞に po + -u として、作られるもの。 chamski 不作法な、から po chamsku 不作法に mistrzowski 見事な、から po mistrzowsku 見事に 3.ある種の形容詞の単数中性与格の形に、po を付けて作られるもの。すなわち、po + ...-emu となる。 domowy 家の、から po domowemu 家の様に pijany 酔っぱらった、から po pijanemu 酔っぱらって boży 神の、から po bożemu 神の御心にかなって stary 年取った、から po staremu 老練な方法で ※ po cichu 黙って(しかし、これは作り方が、やや異なり、基本の形容詞は cichy 静 かな、である。)czytać po cichu 黙読する 4.あるいは代名詞からも形成されることがある。 mój 私の、から po mojemu 私のやり方で nasz 我々の、から po naszemu 我々のやり方で 5.数詞から作られる副詞類 po pierwsze 第一に、po drugie 第二に、po trzecie 第三に また、w + 集合名詞の対格、で「~人で」を表す。例えば、we troje 3人で、となる 6.na + -o として慣用句を形成する場合もある。この場合、-o となるものの元になる ものは形容詞であり、語尾の代わりに -o が付加される。 ubierać się na czarno 黒い服を着る、na czczo 空腹で、 na długo 長い間、 na lewo 左へ、na pewno 確かに、na prawo 右へ、na miękko 半熟で iść na lewo 左へ行く 456 副詞 7.na + 対格または前置格で副詞類を形成することもある。その場合の、対格または 前置格は名詞である。 na ogól 全体として(名詞の対格)、na razie 当分の間・現在の所(名詞の前置格)、 na górze 上で(名詞の前置格)、na dole 下で(名詞の前置格)、na boku 脇へ(名 詞の前置格) 8.その他、それぞれの前置詞から副詞類が形成される。この場合、前置詞+形容詞、 という形になるが、形容詞自体は女性形が使われるのが通常である。 1)od + ... -a od dawna ずっと以前から、od niedawna 先頃から、od nowa 新たに・改めて、od naga 裸で、do sucha 乾くまで 2)z + ...-a z bliska 近くから、z daleka 遠くから、z dawna 以前から、z lekka 軽く、z rzadka めったに.、z angielska イギリス風に、z cudzoziemska 外国風に、z francuska フラ ンス風に、z hiszpańska スペイン風に、z pańska 威厳のある風に、z węgierska. ハ ンガリー風に 3)その他の前置詞 + 形容詞 za ciemna 暗闇の中に 9.名詞の造格から作られる副詞 wierczorem 夕方に(wierczór 夕、の造格)、czaasem 時々(czas 時間、の造格) 10.w + 名詞の前置格あるいは対格で形成される副詞句 w nocy 夜に( w+名詞の前置格)、tej nocy その夜に(生格の用法の一つで時間の生 格である。)、w górę 上へ(w+ 名詞の対格)、w dół 下へ(w+ 名詞の対格)、w prawo 右の方へ、w tył 後ろへ(対格であるので、方向を表す)、w tyle 後ろに(前置格で あるので、位置を表す。)、w pobliżu 近くに、w przód 前に(空間的にも時間的に も) 11.前置詞と関連した代名詞から作られる副詞類 po co 何のために(この場合の co は対格である。) 12.前置詞付きの分詞から作られる副詞類 na siedząco 座ったまま na leżąco 横になったまま 13.本来の副詞に前置詞が付いた副詞類 na zawsze きっぱりと・これを最後に(zawsze は「常に」であるが、na の後に来 ると、このような意味になるのである。) Zakazuję to ci na zawsze. おまえには金 輪際、それを許さないからな。w lewo 左の方へ、za dużo 多すぎ、za mało 少なすぎ 副詞 457 14.その他の前置詞 + 名詞、で副詞類を形成するもの od niechcenia 偶然に、od razu すぐに、do szczętu 完全に、ze szcztem 完全に、z reguły 概して Ⅹ 名詞から派生した副詞 ロシア語においては名詞の造格から派生した副詞、例えば утром 朝に летом 夏に шагом 徒歩で、 名詞の対格から派生した副詞、例えば минуту しばらく сейчас 今、 前置詞と共に用いられた名詞から派生した副詞、例えば вперёд 前へ наверху 上で、 等があった。ポーランド語においても同様のものが見られる。naprzód 前へ、wciąż 絶 えず、wkrótce まもなく、zaprawdę 本当に、zaraz 直ちに.、wstecz 後ろへ、 ⅩⅠ 無人称構文を構成する副詞 これは副詞述語と呼ばれ、無人称構文を構成するものである。ロシア語にも同様のも のがあったが、ポーランド語では比較的良く使われる。 そのような副詞には、自然状態を表す場合や、生理・心理的状態を表す場合が考えら れる。その例には、dobrze 良く、łatwo 簡単に、trudno 難しく、miło 快く、na próżno 無駄に、przykro 残念に、doskonale すぐれて、chłodno 涼しく、ciemno 暗く、gorąco 暑く、smutno 悲しく、wesoło 愉快に、等がある。 W Niemczech łatwo ukraść samochód. ドイツでは車を盗むことは簡単だ。 Doskonale mu mieć czas 9,9 na sto meterów. 彼が100メートルを9秒9で走る のは素晴らしい。 Przykro mi to mówić. そのように言ってごめんなさい。 Miło mi państwa poznać. 私は、あなた方と知り合いになれてうれしい。 Chłodno jej w ręce. 彼女の手は冷たい。 Chłodno dziś na dworze. 今日、外は寒い。 Smutno mi. 私は悲しい。 458 接続詞 第3節 接続詞 Ⅰ序 接続詞は、文と文同士、または、主節と文肢文、あるいは文肢と文肢同士を繋ぐ品詞 である。そして、接続詞自体は文肢ではなく、変化もしない。 この場合の文とは単一文を表し、文肢文とは文肢の代わりをする副文のことである。 そして、文肢とは、主語、述語、補語、副詞規定詞/状況語という4つの文構成要素を 指す術語である。従って、文肢の代わりをする、とは文肢としての働きをする、ことを 意味する。そして、文肢は文の一構成要素にしか当たらず、文肢文は副文となるのであ る。例えば、Nie wychodziłem, albowiem padał. 雨が降っていたので、私は外出しなか った、という文の場合、「Nie wychodziłem」が主節で 「albowiem padał」が副文と なるが、主節が単一文であり、副文が文肢文となり、それを結びつける albowiem が接 続詞なのである。(単一)文と(単一)文同士を繋ぐ接続詞が使われる例は、Ona wróciła do domu i zjadła obiad.彼女は家に帰り、そして食事をした、という文の i である。文 肢と文肢同士を繋ぐ接続詞が使われる例は、Będę u jego pojutrze albo jutro. 彼のとこ ろへ、明後日か明日、行きます、という文の albo である。 接続詞は、大きく分けると並立接続詞、従属接続詞がある。並立接続詞は対等な関係 にある(単一)文、文肢等を繋ぐものである。一方、従属接続詞は一方が他方に対し、 意味上従属的な関係にある文や文肢を繋ぐものである。そして、注意すべき点は、従属 接続詞の場合は、副文の文肢の一つになるが、並立接続詞はあくまでも二つの単一文の どちらにも所属せず、二つの単一文の間に立って、両者の論理的関係を表すという点で ある。尚、単に形態からみると、① 一つの単語から成るもの(例えば、jeśli)、② 2 つ以上の連続した単語から成るもの(例えば、mimo że)、③ 2つ以上の単語から成る が、文の中で離れているもの(例えば、nie tylko..., lecz i)に分けることができる。た だ、形態から見た分類は重要ではないので、ここでは並立接続詞、従属接続詞の観点か ら接続詞を分類して述べることにする。 Ⅱ 並立接続詞 これには1.連辞的接続詞、2.排除的接続詞、3.離接的接続詞、4.逆説的接続 詞、5.説明的接続詞、6.結果的接続詞、がある。 1.連辞的接続詞 1)i ~と ① 基本的な働きはもっぱら(単一)文と(単一)文、文肢文と文肢文、文肢と文肢を情 報単位として繋いだり、付け加えたりすることである。 brat i siostra 弟と妹 On śpiewa i gra. 彼は歌い、そして遊ぶ。 接続詞 459 Ona wróciła do domu i zjadła obiad. 彼女は家に帰り、そして食事をした。 ② 先行する文の内容が、後行する文の内容の原因となっている場合は i は因果関係を 表すことができる。 Nauczył się dużo i zdał egzamin. 彼は一生懸命勉強して、試験に合格した。 ③ 先行する文の内容が条件を表し、後行する文の内容がその帰結を表す場合もある。 Będzie być pogodnie, i pójdziemy na wycieczkę. 明日、晴れれば、我々は遠足に行く。 ④ 並立接続詞 i の対比・対照的な性格が特に現れる場合もある。 On mam kaszel, i pali. 彼は咳が出るにもかかわらず、タバコを吸っている。 2)oraz ~及び Kupiła sera oraz kiełbasę. 彼女はチーズと同様にソーセージも買った。 Wesołych świąt Bożego Narodzenia oraz Szczęśliwego Nowego Roku メリークリ スマスと新年おめでとう 3)a także さらに Kupił sera, a także szynki. 彼はチーズとさらにハムも買った。 4)jak również ~と同様(jak też も同じ) Musimy pomóc bratu jak również sąsiadom. 我々は、兄弟を助けると同様に隣人も 助けなければならない。 5)i...i... ...も...も On i kompetentny i pracowity.彼は有能でもあり、かつ、勤勉でもある。 Lubię jabłka i banany, i pomidory. 私は卵、バナナ、トマトが好きだ(3つ以上のも のを並列的に言及する場合、最後の i の前にカンマを付けるのが通常である。)。 Kupił chleb, masło i szynkę oraz galaretkę. 彼はパンと肉とハムとゼリーを買った (4つ以上のものを並列的に言及する場合、最後は i よりも oraz を使うのが通 常である。あるいは Kupił chleb i miasło oraz szynkę, a także galaretkę. というように ..i ... oraz.... , a także とする方法もある。)。 6)~のみならず、~も この意味を表す表現はいろいろあって、下記のものが挙げられる。 nie tylko..., ale nie tylko..., ale/lecz też nie tylko..., ale/lecz także nie tylko..., ale/lecz również(również 自体は「~もまた」という副詞である) zarówno..., jak i 例文は、 On jest nie tylko leniwy, ale głupi. 彼は怠惰のみならず、愚かでもある。 Ona jest nie tylko ładna, ale również inteligentna. 彼女は可愛いばかりではなく、 賢 くもある。 zarówno on, jak i ona 彼のみならず、彼女も 7)~と同様、~も 460 接続詞 tak..., jak i tak syn, jak i córka 息子と同様、娘も 8)そして a (逆接的接続詞にもなり、文脈で判断するしかないが、a の前にカンマがあるかどうか がある程度判断する基準になる。連辞的接続詞の場合はなく、逆説的接続詞の場合には、 カンマがあるのが原則である。) między mną a tobą 私とあなたの間には 2.排除的接続詞 1)ni..., ni... ...でもなく...でもない(この場合は、2番目の ni の前にカンマが必要であ ることに注意すべきである。) On nie otrzmał ni list, ni gazetę. 彼は手紙も新聞も受け取らなかった。 慣用句で、 ni stąd, ni zowąd どこからともなく・知らないうちに 2)ani..., ani... ...でもなく、...でもない(この場合も、2番目の ani の前にカンマが 必要であることに注意すべきである。) ani dziś, ani jutro 今日でもなく、明日でもなく Pogoda jest ani gorąca, ani zimna. 天気は暑くもないし、寒くもない。 Ten plan nie jest ani mądry, ani ciekawy. このプランは良くもないし、興味も引か ない。 3. 離接的接続詞 この接続詞は選択的あるいは交換的表現に用いられるものである。 1)albo または Będę u jego pojutrze albo jutro. 彼のところへ、明後日か明日、行きます。 2)albo..., albo... ~か、または~ albo dziś, albo jutro 今日か、または明日 3)bądź または Można tam dojechać tramwajem bądź autobusem.そこへは電車もしくはバスで行 くことができる。 4)lub Chcę jeść jabłko lub mandarynka. 私はリンゴかミカンが食べたい。 Jutro pojadę gdzieś lub zostanę w domu. 明日はどこかへ出かけるか、家にとどまる かします。 5)czy 並立接続詞としては、文肢同士で選択的表現の場合(~か~か)に用いられる。 Tak czy inaczej, muszę tam być. いずれにしろ、私はそこへ行かなければならない。 Co pan woli, kawę czy herbatę? コーヒーか紅茶かどちらが好きですか? 6)bądź...bądź... ~か、あるいは~ Można pójść bądź do parku bądź do kina. 公園か、あるいは映画に行くことができる。 接続詞 461 Złodziej wszedł bądź zepstymi drzwiami, bądź otwartym oknem. 窃盗がドアを壊し たか、あるいは窓を開けたかして侵入した。 4.逆接的接続詞 1)a 一方では Dziś wstałem o szóstej, a wczoraj o wpół do siódmej. 僕は今日は午前6時に起きた が、昨日は6時30分であった。 2)zaś 一方では Pewne zdarzenia pozostają w pamięci, inne zaś nie. ある出来事は記憶に残る一方、 別の出来事はそうではない。 3)natomiast しかしながら、一方では ロシア語では зато に相当する。 Ja jestem tu, ty natomiast tam. 私はここにいる。一方では、あなたはあそこにいる。 4)podczas gdy 一方では Lubię psy, podczas gdy on woli koty. 私は犬が好きだ。一方、彼は猫をより好む。 5)ale しかし Ona nie jest bogata, ale szczęsliwa. 彼女は金持ちではないが、幸福だ。 6)jednak しかし jednakże しかし To jest niewiarygodne, jednak prawdziwe. それは信じられないが、本当だ。 7)lecz しかし(雅語) Czekałem, lecz nie przyszedł. 私は待ったが、彼は来なかった。 8)inaczej さもないと Pośpiesz się, inaczej się spóźnisz na pociąg. 急ぎなさい。さもないと君は列車に乗り 遅れるだろう。 5.説明的接続詞 つまり、すなわち、もっと正確に言うと、等 1)a mianowicie Przychodzę dziś, a mianowicie o siedemnastej. 私は今日行きます。もっと正確に言 うと17時に。 2)czyli 換言すれば Nie poszedła do dentysty, czyli stchórzyła. 彼女は歯医者に行かなかった。換言すれ ば、怖かったのだ。 3)lub też というか On przydzie, lub też ona zadzwoni. 彼は来るだろう、というか彼女が電話をかける だろう。 4)to jest すなわち・つまり On rozumie dwa języki, to jest polski i rosyjski. 彼は2つの言語が分かる。つまり、 ポーランド語とロシア語だ。 5)to znaczy すなわち・つまり 462 接続詞 On pracowa tutaj od 1962, to znaczy prawie pół wieku. 彼は1962年から、すなわ ちほとんど半世紀、ここで働いている。 6.結果的接続詞 これは後方の主節が前方の主節の内容から生じる結果を表す際に使われる接続詞で ある。これには i, a, więc, tak więc, tak że, dlatego, w wyniku czego, skutkiem tego, zatem, toteż, tedy, to, to i, przeto, stąd がある。 1)więc Była piękna pogoda, więc poszedłem na spacer. すばらしい天気だったので、私は散 歩に出かけた。 Nie nauczyłem się, więc dostałem dwójkę. 私は勉強しなかった。それ故、成績は2だった。 2)dlatego それ故、そのため Wniosek wpłynął po terminie, dlatego nie został rozpatrzony. その申請書は期日後 に届いた。そのため、受け付けられなかった。 3)zatem だから Masz gorączkę, a zatem jesteś chory. あなたは熱がある。だから、病気である。 4)przeto それ故 Był młody, przeto niedoświadczony. 彼は若かった。それ故、未熟者であった。 5)toteż それ故、の意味。文頭には来ない。 Zagrzmiało, toteż zostaliśmy w domu. 雷が鳴った。それ故、我々は家に留まっていた。 Ⅲ 従属接続詞 1.多機能的接続詞 これには że, aby, żeby, ażeby, czy 等があるが、内容を説明した り、目的を表したり、結果を表したり、提案内容を導いたり、命令内容を説明したり、 考え、説得内容、信頼内容、心情を表す等、多機能性を有する。また、これらの接続詞 の用法に関しては主節と従属節の主語が一致する場合と異なる場合で少し注意を要す る。すなわち、主節の主語と従属節の主語が一致する場合には、従属節の動詞は不定詞 が用いられるが、異なる場合には定形が用いられることである。 1)że ロシア語の что に該当するものである。陳述内容を説明する接続詞として働く ことが最も多い。そして、ほとんどの場合、相関詞と結びつく。陳述内容を説明する接 続詞としては、① 主語的従属節を導く場合、② 述語的従属節を導く場合、③ 補語的従 属節を導く場合、④ 定語的従属節を導く場合、等がある。その他には、⑤ 状況語的従 属節の内で、結果を表す場合がある。 ① 主語的従属節を導く場合 相関詞を使うことが多い。 To prawda, że ją nie lubię. 私が彼女を好きでないのは本当だ。 Okazało się, że Maria przyjechała wcześniej. マリアが早く到着したことが分かった。 ② 述語的従属節を導く場合 Najważniejsza rzecz jest taka, że on jest zdrowy. 重要なことは彼が健康であるとい 接続詞 463 うことである。 ③ 補語的従属節を導く場合 この場合は相関詞を欠くことが多い。 On powiedział, że Maria mnie pomoga. 彼は、マリアが私を助けると言った。 Obawiam się, że on to zrobił. 彼がそれをしたということが怖い。 ④ 定語的従属節を導く場合 Dobre miałem przeczucie, że zdam ten egzamin. 私はその試験に合格して気持ちが 良い(良い感情を持つ)。 ⑤ 結果を表す接続詞としての że この場合は、状況語的従属節を導くものとなる。 主節の陳述内容が原因・理由となって、結果的に、あるいは陳述内容の影響を受けて 生じた出来事や事柄を表すものである。 Był tak zmęczony, że zaraz usnął. 彼は疲れていたので、すぐに眠ってしまった。 Przez to, że ją szybko operowano, uratowano jej życie.彼女はすぐに手術をされたの で、一命を取り留めることができた。 2)żeby ロシア語の чтобы に相当する。主語的従属節を導く場合や、述語的従属節を 導く場合、補語的従属節と結びつく場合や状況語的従属節を導く場合がある。状況語的 従属節を導く場合には、目的を表す場合と結果を表す場合がある。żeby を用いた場合 には、従属節の動詞は過去形か、不定詞となる。 ① 主語的従属節を導く場合 「~することに、~であることに」の意となる。 To bardzo ważne, żeby on mi pomógł. 彼が私を助けることが重要だ。 Nie przyszło mi do głowy, żeby do niego zadzwonić. 私には彼に電話をすることにつ いて頭に浮かばなかった。 To nieprawa, żeby sportowcy zawsze byli uczciwi. スポーツマンが常に正直である と言うことは、真実ではない。 ② 述語的従属節を導く場合 Byłoby takie dobrze, żeby on zdał egzamin. 彼が試験に受かったら良かったのに。 ③ 補語的従属節を導く場合 Nie chcę, żebyś tam jechał. あなたがそこへ行くことを私は望まない。 ④ 状況語的従属節を導く場合 Wуstаrсzą mi trzу dni, żeby skоńсzуć prасę. その仕事を終えるために、私には3日 間で十分である(目的)。 Tusk ciężko pracuje, żeby się dostać na uniwersytet. トゥスクは大学に入るために 一生懸命勉強している(目的)。 Jest zbyt ambitny, żeby zrezygnować. 彼は、自尊心が高いので、引き下がることは しない(結果)。 ⑤ byle と同じ用法もある。 Może być jakikolwiek samochód, żeby jeździł. 動きさえすれば、どのような車でも良 い。 Ona zrobi wszystko, żeby zarabia dużo pieniędzy. 彼女はたくさんのお金を得さえ すれば、何でもやるだろう。 464 接続詞 ⑥ gdyby もし~ならば、と同じ用法もある。。 Żebym miała pieniądze, to już dawno bym to kupiła. もし彼女がお金を持っていた ならば、とうの昔にそれを買ったのだが。 3)aby これも目的を表す場合と結果を表す場合がある。さらに、że と同じく「~と いうこと」を表す場合もある。 Przyszedłam, aby jego zobaczyć. 私は彼に会うためにやって来た。 Był zbyt chory, aby iść do szkoły. 彼は病気だったので、学校に行かなかった。 Jest za młody, aby to zrozumieć. 彼はそれを理解するには若すぎる。 Niemożliwe, aby to udała się. 彼女がそれに成功することは不可能だ。 4)by これも目的を表すのが主たる用法であるが、補語的従属節を導く場合もある。。 Powidziałem mu, by przyszedł. 私は彼に来るように言った。 Biegła przez całą drogę, by zdążyć na pociąg. 彼女は列車に乗るために、途中の道を 走った。 Podniosła rękę, by zadać pytanie. 彼女は質問するために、手を挙げた。 5)byle 「~しさえすれば」等の意味であり、条件を表すのが基本である。 Ona wyjdzie za każdego, byle miał pieniądze.彼女はお金を持っている人なら、誰と でも結婚するであろう。 「ただ、~するために」の意味で目的を表す場合もある。 On zrobi wszystko, byle osiągnąć swój cel. 彼は自分の目的を達成するためだったら、 何でもする。 ※ 尚、byleby は「~しさえすれば」等の意味であるが、単に byle に by が付加され ただけであり byle と同様に考えれば良いであろう。 Byleby tylko nie zachrował. 彼がただ病気にならなければなあ。 6)czy 従属接続としては、副文において「~かどうか」というあまり深い意味のない 疑問文の繋ぎとして使われる。 ① 主語的従属節を導く場合 Czy to jest prawda, jest niepewno. それが真実かどうかは不確かだ。 ② 述語的従属節を導く場合 Pytanie jest takie, czy on może obiecywać pomoc. 問題は彼が援助を約束できるか どうかだ。 ③ 補語的従属節を導く場合 Nie wiem, czy on zdał egzamin. 彼が試験に受かったかどうか、私は知らない。 Nie wiem, czy przyjdę. 彼が来るかどうか、私は知らない。 ④ 定語的従属節を導く場合 Pytanie, czy on jest chory, zostało postawione. 彼が病気かどうか、という質問は出 されなかった。 2.原因 1)dzięki temu, że ~のお陰で 接続詞 465 Dzięki temu, ze nastawiłem budzik, nie zaspałem. 目覚まし時計をセットしたお 陰で私は寝過ごさなかった。 2)bo ~なので Nie wychodż teraz, bo pada. 雨が降っているので、今、外出するな。 3)dlatego że ~なので Krzyczał, dlatego że się zdenervował. 彼は、怒ったので、叫んだ。 Dlatego że miał wpadek, spóźnił się. 事故にあったので、彼は遅刻した。 4)ponieważ 従属節が主節の前に来る場合でも、逆に従属節が主節の後に来る場合で も使うことができる。 Ponieważ padało, zostałam w domu. 私は、雨が降ったので、家にいた。 Listonosz zostawił list pod drzwiami, ponieważ bał się groźnego psa. 郵便配達員は、 手紙をドアの下に置いた。なぜなら、吠える犬が怖かったからだ。 5)bowiem ~なので Nie kupił książki, bowiem zapominiał pieniędzy. 彼はお金を忘れたので、本を買わ なかった。 6)albowiem ~なので Nie wychodziłem, albowiem padał. 雨が降っていたので、私は外出しなかった。 7)gdyż ~なので Nie zastałem go, gdyź nie było go w domu. 彼が家にいなかったので、私は彼に会え なかった。 Zaimiki pan, pani itd.są gramatycznie zaimkami trzciej osoba, gdyż łączą się z trzecią osobą czasownika. pan や pani といった代名詞は文法的には3人称の代 名詞 である。なぜなら、動詞の3人称と結びつくからである。 8)jako że ~なので Jako że padał, nie wychodzili. 雨が降っていたので、彼らは外出しなかった。 9)wskutek tego że ~の結果(主として不随意的な理由の時に使用する。) Wskutek tego że padał, mecz się nie odbył. 雨が降った結果、試合は行われなかった。 10)w związku z tym że ~の結果 W związku z tym że lekaratwo blokuje receptory alfa, może wystąpić niedociśnienie. その薬がα受容体をブロックする結果、低血圧が起こりうる。 11)wobec tego, że ~を勘案すれば Wobec tego, że nie ma czasu, to jest wspaniały. 時間がないことを勘案すれば、それ は素晴らしい。 12)na tyle ..., że ・・・なので、~である。 Przyjechaliśmy na tyle wcześnie, że znaleźliśmy wolne miejsce na parkingu. 我々 は朝早く着いたので、駐車場で空いている場所を見つけた。 13) o tyle ...o ile... それだけ、 その限りにおいては постольку.....поскольку...(столько は tyle に相当し、 сколько は ile に相当する。 そして、 постольку は o tyle に相当し、 поскольку は o ile に相当する。そして、o tyle は主節中で、o ile は従属節中で用いら 466 接続詞 れる。 O ile rozwiązanie już przyjemnie, o tyle potrzeba wypełniać go dokładnie. 決議が 採択された以上、それを正確に履行することが必要となる。 3.様態、比較、制限等 1)im ...., tym ~すればするほど~だ Im dłużej czekam, tym bardziej się denerwję. 私は長く待てば待つほど不安になる。 2)jak ~ほど、~より、~のように、~と同じように Nie ma nic bardziej zajmującego, jak podróż. 旅行ほど面白いものはない。 biały jak śnieg 雪のように白い On mówi po polsku jak urodzony Polak. 彼はポーランド語をネイティブスピーカー のように話す。 włosy czarne jak heban 黒檀(植物の一種)の様に黒い髪 3) niż ~より Ojciec wydawał się młodszy, niż był. 父は以前より若く見えた。 Raczej się z nim rozstanę, niż mu to wybaczę. 私は彼を許すと言うよりもむしろ彼 とは関わりたくない。 4)tak...., jak ~のように・・・である Defilada był tak miły, jak się spodziewałem. パレードは私が期待していたように、 楽しいものだった。 5)jakby あたかも~のように Stała prosto, jakby niczego nie widziała. 彼女はまるであたかも何も見なかったよう に立っていた。 6)jak gdyby まるで~のように Spojrzała na mnie, jak gdyby chciała o coś zapytać. 彼女はまるで何かを質問したい かのように私を見た。 Zbladła, jakby zobaczyła ducha. 彼女はあたかも幽霊を見たかの如く、青ざめた。 Zachowywał się, jakby nic się nie stało.彼は、まるであたかも何も起きなかったよう に振る舞った。 7)w miarę jak ~に応じて W miarę jak czas mija, niemiecki mi coraz się podoba. 時間が経つにつれて、私はま すますドイツ語が好きになる。 W miarę jak dziecko rośnie, ono poznaje nowe słowa. 子供は成長するに連れて、新 しい言葉を獲得する。 4. 仮定、条件 1)jeśli もし~なら jeśli +直説法(現在、または未来=従属節)、直説法(主節) Jeśli nikt nie zwycięży w pierwszej turze, odbywa się drugie głosowanie.もし、第一 回目のラウンドで勝者がいなければ、2回目の投票が行われる。 接続詞 467 2)jeżeli もしも~なら jeśli の雅語 3)jeśliby もし~なら Jeślibyś ją zobaczył, to pozdrów ją ode minie. もし、彼女に会うようなことがあれば、 私からよろしくと伝えて下さい(pozdrów は pozdrowić の命令形)。 4)jeżeliby jeśliby の雅語 5)gdyby もし~なら Gdyby +仮定法(従属節)、仮定法(主節) Gdybym wiedział że ona lubi kwiaty, to kupiłbym je dla niej. もし、彼女が花が好 きだと言うことを知っていたなら、彼女に花を買うのだが( je は複数非男性人間 形対格で、ここでは kwiaty を指す)。 Gdybyś się pospieszył, zdążyłbyś na pociąg. もしあなたが急げば、その電車に乗るこ とができるのだが。 6)jakby もし~なら Jakbym był zdrowy, mógłbym jeździć na rowerze. もし、健康なら、自転車で行くこ とができるのだが。 7)skoro もし~なら、という意味もある。その他に、skoro tylko ~するやいなや、と いう意味があるが、こちらの方が良く使われる。 Skoro nie masz ochoty, to nie musisz. あなたがやる気がないなら、それをする必要 はない。 8)chyba że もし~でないなら On chodzi na spacer codziennie, chyba że pada deszcz. 雨が降らないなら、彼は毎日 散歩に出かける。 9)jak もし~なら Jak nie masz ochoty, to nie musisz. あなたがやる気がないなら、それをする必要は ない。 5.譲歩 ~とはいえ、たとえ~であろうとも、~にもかかわらず 1)choć(chociaż も同じ) ~だけれども Było zimno, choć świeciło słońce. 大陽が照っていたけれども、寒かった。 2)choćby ~としても Nic nie powiem, choćby mnie zmusali. 彼らが、私に促したとしても、私は何も言わ ない。 3)mimo że ~にもかかわらず Kwiaty pięknie wyrosły, mimo że słońce było mało. 太陽の光は少なかったにもかか わらず、花は美しく生長した。 4)jakkolwiek ~にもかかわらず Jakkolwiek go nie lubiła, poszedła z nim do kina. 彼女は彼が嫌いだったにもかか わらず、彼と一緒に映画に行った。 5)żeby も譲歩を表すことがある。 żeby mnie zmusali, nic nie powiem. たとえ彼らが私に促したにしても、私は何も 468 接続詞 言わない。 6. 時 これは比較的多い。言語においては、発話がなされる時点を、「現在」と呼び、 それ以前を「過去」と呼び、発話時点から先を「未来」と呼ぶ。発話時点である「現在」 がほんの一瞬の時点である場合ばかりではなく、長さを持つ時間帯をも意味するが、こ のことは過去及び未来においても当てはまる。このような言語上の「現在」と「過去」 と「未来」の互いの関係が主節の陳述内容と副文の陳述内容としてどのようにして示さ れるかを表す接続詞を一括して「時を表す接続詞」と言う。 そして、従属節の陳述内容が主節の陳述内容に対して時間的に先行していれば、前時 性といい、従属節の陳述内容が主節の陳述内容の後に続く場合には、後時性といい、双 方の陳述内容が同時的である場合には、同時性という。 1)同時性 ① kiedy ~する時 Kiedy zobaczył psa, uciekł. 彼が犬を見た時、彼は走り去った。 ② gdy ~する時 Otrzymam dyplom, gdy zdam ostatni egzamin. 最後の試験が終われば、卒業証書を 受け取れるだろう。 ※kiedy, gdy とも同時性に関する接続詞であるが、gdy の方が時間的に幅があると言 える。 ③ jak ~する時 Tak nauczyciela spotkasz, pozdrów go. 先生に会う時は、挨拶をしなさい。 ④ skoro ~する時 skoro tylko ~するやいなや Skoto tylko on jest w domu, telefonuje. 彼は家に着くやいなや、電話をする。 Skoro tylko się dowiem, poinformuję cię. 私は見つけるやいなや、すぐにあなたに知 らせます。(dowiem は dowiedzieć の単数1人称) ⑤ podczas gdy ~する間に Podczas gdy szybko biegł, machał ręką. 彼は速く走る間に、合図をした。 ⑥ póki ~する間は、~する限りは Póki byłem zdrów, pracowałem. 私が健康であった間は、働いた。 ⑦ dopóty -, dopóki - ~さえすれば、~する限り、~である以上 Dopóki świeciło słońce, było ciepło. 太陽が照っている限りは、暖かかった。 Grał w kasynie, dopóki wygrywał. 彼はカジノで勝っている限り、ゲームをした。 ~の間、という意味もある。 Czekała, dopóki ją nie wpuścił. 彼女は、彼が入らせない間は待っていた。 2)後時性 従属節の陳述内容が主節の陳述内容に続く場合である。すなわち、主節、 従属節の順に進むのである。 ① nim(zanim) ~する前に ロシア語では прежде чем に相当する。 Chiny mogą się zestarzeć, zanim się wzbogacą 中国は、成長する前に年を取ってし 接続詞 469 まうだろう。 Zanim położysz się spać, odrób pracę domową. 眠る前に、宿題をやりなさい。 Zanim odpowiemy, musimy się zastanowić. 我々は答える前に、よく考えなければ ならない。 ② aż ~まで Poczekaj, aż zadzwonię. 私が呼ぶまで、待ちなさい(この場合、待つことが先であ り、呼ぶのが後であるので、後時性となる。)。 ③ dopóki, póki ~まで これは主節が継続的な出来事を述べている場合に、dopóki/póki が導く従属節はその 継続的な出来事がいつ終了するかを指定するものである。そのため、dopóki/póki が導 く従属節の陳述内容の後時性が示されるのである。 Czekałem, dopóki wrocił do domu. 彼が帰ってくるまで、私は待っていた。 3)前時性 従属節の陳述内容が主節の陳述内容よりも時間的に先行している場合であ る。すなわち、従属節、主節の順に陳述内容が進むのである。これに関係する接続詞に は、od czasu jak, aż, dopóki, dopóki - nie, jak tylko, ledwi, zanim - nie, 等がある。 ① od czasu jak ~して以来 Od czasu jak on jest tu, czuje się dobrze. 彼がここに来て以来、彼は気分がよい。 ② dopóki ~する限り・~する間 dopóki - nie ~するまで 条件的前時性を表すことになる。すなわち、主節と従属節が共に否定文の場合には「~ するまでは~する」という関係が「~しないうちは~しない」となる。これは従属節で 達成されるべき事項が実現されない内は主文の出来事も生じないことを意味するので、 実際に従属節で達成される時点ないし時間帯は主文の陳述内容が達成されるよりも前 になる。 Nie mogę wrocić do domu, dopóki odpowie na pytanie. 私はその疑問に答えないと 帰宅することを許されない。 Czekał, dopóki go nie wpuścili. 彼らが彼を入れるまで、彼は待っていた。 ③ jak tylko ~するやいなや Jak tylko skończę obiad, pójdę na spacer.私は朝食を終えるやいなや、散歩に出かけ る。 ④ ledwie ~するやいなや Ledwie wyszliśmy, zaczęło padać 我々が、出発するやいなや、雨が降り出した。 ⑤ zanim - nie Zanim on nie przyjdzie, nie mogę wyjść. 彼が来ない内は、私は外出することは許さ れない(この場合、「来る」のが先で、「外出する」のが後であるので、従属節が 先に来ており、前時性となるのである。)。 ※ dopóki, póki についてはこれが後時性であることは分かりにくい。 これは主節が継続 的な出来事を述べている場合に、dopóki/póki が導く従属節はその継続的な出来事がい つ終了するかを指定するものである。そのため、dopóki/póki が導く従属節の陳述内容 の後時性が示されるのである。 470 助詞 第4節 助詞 Ⅰ序 助詞は変化もしないし、直接的な意味に乏しいし、文法的には重要な位置を占めない ものである。そして、文肢にはならないので、状況語でもない。しかし、個々の単語や 文全体に特定の意味やニュアンスを付加する役割を担っている。そして、主として話さ れている内容に対する話者の態度を示すものであると言って良い。助詞はこのように単 語や文章に様々なニュアンスを付け加えるのである。 尚、同じ単語が接続詞となったり、副詞になったりすることがあるが、それは副詞が 文肢となりうるのに助詞はなり得ない点で区別できるし、接続詞が文肢と文肢を繋ぐも のであるのに対して、助詞はそのような機能を有しない点でそれと区別できると言えよ う。 さらに、副詞は単独で補足疑問文に対する答えになることができるが、助詞は単独で は補足疑問文に対する答えになることができない、といえる。 副詞の例:Kiedy on wróci? Jutro. 彼はいつ帰ってきますか。明日です。 助詞の場合:Kiedy on wróci? *Chyba. 彼はいつ帰ってきますか。おそらく。 後者の文は成立しないのである。 このような観点から、助詞と副詞を区別できるのであるが、実際には区別が困難な場 合も少なくない。従って、助詞の範疇に含めるか副詞の範疇に含めるか難しい語もある が、基本としてはこのような観点から取り上げるものである。従って、下記の格助詞は 便宜上分類したものに過ぎない。それ故、副詞の範疇に入るものは原則的には取り上げ ていないが、一部、ここでも取り上げているものがある。それらは一つの単語が用法に よって副詞となったり助詞になったりするからであり、その助詞の部分をここで取り上 げているのである。 Ⅱ 各助詞 1. a 1)前の文や語句を結びつけることに使われる。 A nie mówiłem, że będzie padać? それで、雨が降るとは僕は言わなかった。 Kraje bałtyckie, a mianowicie Litwa, łotwa i Estonia ... バルト海の国、すなわちリ トアニア、ラトビア、エストニア・・・ 2)語句や単語を強める場合に使われる。 Nigdy a nigdy bym tego nie powiedział. 私は決してそのように言うつもりはない。 Wcale a wcale nie będę tego tobić. 私は全くそれをする気持ちになれない。 Powiedział to lekarz taki a taki. 医者はこれこれ、しかじか、と言った。 a tam! えっ、何だって。 助詞 471 2.aby 助詞としての aby は希望や疑問を表す。 Aby zdążyć przed deszczem! 雨が降る前にやり遂げたい。 Czy to aby prawa? それは果たして本当に正しいのか? 3.albo/ alboż 質問や呼びかけを強調する働きをする。助詞の czy と同じ働きである。 Albo mi to mówiono? 誰か私に何か言いましたか? Alboż mi to źle tutaj? ここで、私に悪いことが起きるだろうか。 4.ale, ależ 何と 接続詞としても用いられるが、助詞として使われるときは、驚き、感動を強調したり、 強烈な否定となったりする。 Ale szybki! 何と速いことか。 Ale głupiec z nim. 彼は何と愚かなことか。 Ależ ona brzydka! 彼女の何と醜いことよ! 5.ani これは慣用的な言い回しの中で使われる否定詞を強調する。 Nie powiedział ani słowa. 彼は一言もしゃべらなかった。 Nie wypił ani kropli. 彼はアルコールが一滴も飲めなかった。 6.aż これは強調したり、 逆に語句の意味を限定したりする時に使われる。 動詞のみならず、 形容詞、副詞、数詞、名詞、前置詞句の前に置かれる。 Dom jest aż czarny od brudu. 屋根は汚染物でほとんど真っ黒だ。 Siedział aż do wieczora. 彼は夕方までそこに座っていた。 Pozostawała niezamężna aż do śmierci. 彼女は死ぬまで独身であった。 Nie będę tam aż tak długo. 私はそんなに長くはそこにいないつもりだ。 7.bądź これは主として疑問代名詞や疑問副詞と関係があり、不定のものや場所を表す。 Możemy pójść dokąd bądź. 我々はどこでも行くことができる。 Zjemy szybko co bądź. 我々はすぐに何でも食べる。 kiedy bądź いつでも jak bądź とにかく 8.bo 繰り返す言葉を結びつける場合に使われる。疑問文ではとりわけ疑念を表現する場合 に使われる。 472 助詞 Ładna bo ładna, ale głupia, 彼女は非常に美しいが、愚かだ。 Bo to prawda? それは果たして正しいか。 Bo on zapłacił? 彼は払ったでしょうね。 9.bodaj 推測、疑念、希望等を表す。強いて訳せば、「おそらく」「少なくとも」になる。 Miał bodaj dziewiętnastu lat. 彼はおそらく19歳だったろう。 Daj mi bodaj 50 złotych. 私に少なくとも50ズウォチ下さい。 Bodaj by odpocząć. 休息が取れれば良かったんだが。 10.by, żeby, oby, ażeby これらは非現実のことや願望あるいは驚きを表現する場合に使われる。 Żeby tylko zaczęło padać! そろそろ雨が降ってくれたらなあ! Oby się nie rozmyśliła. 彼女が心変わりしないなら良いのに。 Aby tylko była jutro pododa! 明日は良い天気だったらなあ! Żeby tylko nic wam się nie stało! あなた方に何も起こりませんように。 Ażeby to cholera! なんと言うことだ。 Oby tak było. そう祈ろう。 11.byle 不特定の人や物や場所を表現する場合に用いる。「どんな~も」「何らかの~」「少 しの~」等を表す。主として軽蔑的な意味で使う。 Byle głupiec to potrafi. どんな愚か者でもそれをすることができる。 Możesz to położyć byle gdzie. あなたはそれをどこかに置いて良い。 Ona śmiała się z byle czego. 彼女はちょっとしたことにでも笑う。 Ona płacze z byle powodu. 彼女はちょっとした原因で泣く。 12.bynajmniej, wcale これらは否定を強調するために使われる。 O tym wcale nie myślę. それについて私は全く考えない。 To nie jest bynajminiej proste. それは全く簡単ではない。 Bynajmniej nie uważam, że ... ~ということを全く考えない。 13.ci ty の与格と同じであるが、はっきりとした意味なしで強調の助詞として使われる。 A to ci dopiero historia! それは、私にとってとんでもない話だ。 Masz ci los! 心配していたとおりになったじゃないか。 14.chyba 助詞 473 可能性を表す。「おそらく」、という意味になるであろう。 Jesteś chyba bardzo zmęczona. おそらくあなたは非常に疲れているだろう。 Chyba ona będzie na wakacjach. おそらく彼女は休暇中だろう。 To chyba on. おそらくそれは彼だろう。 Chyba Adam teraz śpi. おそらくアダムは今眠っているだろう。 15.co 多彩な機能を有している。何度も繰り返される場合や繰り返される特質の連続するこ とを示したり、副詞の比較級をより強く表現するために使われたりする。疑問を表す場 合もある。 1)強調 Co prawda, to prawda. 本当のことは本当だ。 co najmniej 少なくとも co najwyżej せいぜい Ona urosła, co? 彼女は本当に成長したのかな。 co nieco 少しの co prawda もちろん co niemiara 過度に co więcej むしろ 2)繰り返し co chwila 今にも co drugą stronę 1ページおきに co dwa tygodnie 2週間ごとに co dzień 毎日 co niedziela 毎日曜日に co tydzień 毎週 co miesiąc 毎月 co rok 毎年 尚、co + 主格以外に、co + 対格あるいは co + 生格 でも表される。 3)正確性 co do jednego 例外なくすべてに co do sekundy 1秒たりとも正確に 16.czy 疑問文で使われ、疑問文であることを表す。また、決定疑問文で「または」の意味を 持つ。 Czy masz jutro czas? 明日、時間がありますか。 Pijesz herbatę czy kawę? あなたは、紅茶かコーヒーのどちらを飲みますか? 17.dopiero 表現を高めたり、強くしたり、たとえたりする。あるいは表現に色をを付けたりする。 表現に対して、言葉の感情的なニュアンスを強調することもある。 1)ただ~だけ Dziecko ma dopiero rok. その子供はたった1歳だ。 Dopiero co wrócił. 彼はたった今、帰ってきた。 On ma dopiero trzy lata. 彼はたった3歳だ。 2)やっと、ようやく Dopiero teraz zrozumiałem. 今になってやっと私は分かった。 dopiero jutro 明日になってやっと Dopiero wczoraj dostałem list od ciebie. 昨日になって初めて彼はあなたからの手紙 を受け取った。 Zrobił dopiero połowę. 彼はやっと半分やった。 474 助詞 3)感情的なニュアンスを強調する。 To dopiero pech! なんと言うことだ。 18.dosyć, dość nie dość na tym それに加えて 19.jakby 一種の、という意味を添える。表現の意味を和らげる働きをする。 On się jakby zawahał. 彼は少しためらった。 Czuł się jakby odrętwienie. 彼は少しこわばった感じがした。 W tym roku lata tak jakby nie było. 今年は夏はほとんどなかった。 20.jakoby 表現の正しさについて確認するものである。 Mówiono, jakoby był nieucziwy. 彼は不誠実のように疑われているが、果たしてそう か。 On jest jakoby bogaty. 彼は金持ちとの評判である。 21.jednak これは対立するものや異なったことに関する事象を強調する場合に使われる。 Ma bóle, a jednak się nie skarży. 彼には痛みがある。が、訴えない。 22.jeszcze 1)日本語で言えば、まだ、とか、なお、の意である。自分が予期したよりも従来の事 象が長く続く場合に使用される。 Jeszcze wczoraj padał śnieg. 昨日はまだ雪が降っていた。 Jeszcze nie skończyłem. 私はまだ準備していない。 2)比較級を強める場合にも用いる。jeszcze później 遙かに遅く 3)「さらに、その上」、の意味を有する。 Maria chciałaby się z nim jeszcze raz spotokać. マリアはもう一度彼に会 いたがっている。 4)事象が自分が予期したよりも早く実現した場合に使われる。この使い方は 後述の juź と同じである。 Wyjechał jeszcze w zeszłym tygodniu. 彼は既に(もう)先週、出発した。 23.już この助詞は頻繁に出てくるものであり、ある事象が自分が予期したよりも早く実現し た場合に使用される。肯定文では「既に、もう」、否定文では「もはや~でない」を意 味する。また、疑問文では「もう」を意味する。 助詞 475 Widziałem już ten film. 僕はその映画は既に見た。 Już tam nie pracuję. 私はもはやそこでは働いていない。 Czy zrobiłeś już to zadanie? あなたはもうこの宿題を済ませましたか。 Jest już godzina dziewiąta. もう9時だ。 Nie mamy już nic do roboty. 我々にはもはやすることはない。 ※ już と jeszcze は類似しているが、実際的にはjuż の反意語が jeszcze nie であり、jeszcze の反意語が już nie である。もっとも、22)④で示したよ うに同じ使い方の場合もある。 Czy już tam pracujesz? あなたは既にそこで働いているのですか?に対し て、 Nie jeszcze tam nie pracuję.いいえ、私はまだそこでは働いていません、と なる。 一方、 Czy jeszcze tam pracujesz? あなたはまだそこで働いているのですか?に対 して、 Nie, już tam nie pracuję. いいえ、もうそこでは働いていません。 24.lada 事象が重要でないことや選択したものの任意性を強調する場合や、すぐに実現する時 点を強調する。 nie lada sukces かなりの成功 Musisz wrócić lada chwila あなたは今すぐにでも帰らなければならない。 25.li これは現代ではほとんど廃れてしまった助詞である。ただ、jeśli や jeżeli 等の接続 詞の一部に残っている。 26.może 表現に推量やためらいや緩和のニュアンスを与える。また、疑問文においては控えめ な依頼を表す。 Spotkaliśmy się może trzykrotnie. 多分、我々は3回会ったであろう。 Może się przejedzie-my? 散歩に出かけてくれませんか? Może masz rację. 多分あなたは正しい。 27.nadzwyczaj, niezwykle 非常に 事象の特別性や一回性を強調するものである。 Lato było nadzwyczaj upalne. 夏は非常に暑かった。 Wykład był niezwykle żywy. 講演は非常に活気に満ちたものだった。 476 助詞 28.nawet ①「 ~すら」、「~さえも」、の意味を表す。通常は後に続く語句を強調する。すな わち、当該事象に対して異常であること、予想外であること、典型的ではないこと等 のニュアンスを与えるのである。 Mam tylko parę złotych. Nawet za mało na kawę. 私は数ズウォティしか 持っていない。コーヒーすら飲むのに少なすぎる。 Nie mam nawet trochę pieniędzy. 私は少しのお金すら持っていない。 Nawet 40 tys. ludzi uciekło z Jemena. 4万人もの人々がイエメンから逃げた。 Nie chcę nawet słyszeć o tym. 私はそれについて聞きたくもない。 Nie mam trochę pieniędzy. 私は少しのお金さえも持っていない。 ② ~(する、になる)ほどに=最高の程度や限界を表す文などを付加する W pоkоju jеst сiеpłо, nawet gоrąсо. 部屋は暖かくて、暑いくらいだった。 尚、同義語としては、co więcej がある。 29.niby 「~のように」、の意味を表す。 Niby mądry a nic nie wie. 彼は賢いと見られているが、何も知らない。 robić coś na niby 見せかけに何かをする。 30.nie nie は否定を表すものであるが、いろいろな品詞と関係する。 1)まず、決定疑問文の否定である。 Czy byłeś w szkole?- Nie. あなたは学校へ行きましたか。いいえ。 2)文全体を否定する場合もある。 To nie jest mój zeszyt. これは私の帽子ではない。 3)否定代名詞が使われる時に必要とされる。 Nigdy tam nie byłam. 私は決してそこにはいなかった(行ったことがない?)。 4)nie が文の述語ではなく、文の成分と関係する場合には、述語ではなく、否定する 文の成分の前に nie を置く。 Widzieliśmy nie tragedię, lecz komedię. 我々は悲劇ではなく、喜劇を見た。 31.niech 1)三人称単数、複数に対する命令形で用いられるのであるが、丁寧な命令となる。も っとも、pan, państwo を使う場合には形式上は三人称単数、複数であるものの二人称 に対する命令形となる。 Niech pan zrobi. やって下さい。 Niech on zrobi. 彼にやらせて下さい。 Niech państwo zrobią. やって下さい。 Niech oni zrobią. 彼らにやらせて下さい。 助詞 477 2)命令法以外にも暗示とか動機付け等の意味に使う場合もある。 Niech on dzwoni do minie o każdej porze dnia i nocy. 彼はいつでも私を訪ねてくる だろう。 3)また、呪いを含んだニュアンスの場合もある。 Niech go czort trafi. 悪魔が彼を連れて行くように。 4)また、一人称で使う場合もある。 Niech ja to zrobię za ciebie.どうして、私があなたの代わりにそれをすることができ ようか。 32.no これはいろいろな意味があり、命令、威嚇、指示、驚き等を強める働きが主たるもの である。 1)命令文において促しを活発化する。 Chodź no tutaj. 早くここに来なさい。 Siedź no spokojnie! 静かに座れ! 2)説得の意味を表す Zrób no to dla mnie. 私のためにそれをやってくれません。 33.oto (目前の人・物・事象を指して)ほら、そら、これ、ここに Oto nasz dom. ほら、これが我が家です。 34.owszem 1)決定疑問文で tak の代わりに用いられる。 Widziałeś go? – Owszem. 彼を見ましたか。はい、もちろん。 2)反対の意味を表す場合もある。「それどころか」 Deszcz nie ustawał, owszem, padał coraz większy. 雨はやまなかった。それどころ かますます強くなってきた。 35.precz , won 命令法で使われる。 Idź precz! 出て行け! 36.przecież 1)(発話の主内容を強調して)本当に、実際 To przecież jasne. どのみち、それは明らかだ。 2)(疑問文で)自分の欲する答えを相手に求めて ~でしょう、~ではないか Przecież wiesz o tym? あなたはそれについて知らないのですね。 Przecież そうでしょうが、そうじゃないですか。 478 助詞 37.rzekomo niby や jakoby に類似した意味を有する。とりわけ文の内容が正しいかどうか疑問が ある時に使われる。 Nie było go wczoraj . Rzekomo był chory. 昨日、彼はそこにいなかった。おそらく病 気だったに違いない。 38.tak 決定疑問文で肯定する時に使われる。また、文において同格を示すとか、関係する語 を強める時に使われる。 Widzisz to drzewo? – Tak. 木を見ますか?-はい。 Mam tak dużo pracy. 私はそんなに多くの仕事を抱えている。 39.tam 物事に対する批判的なあるいは強めの態度を少し、和らげるために用いることが多い。 Kto tam wie? 一体全体、誰が知ろうか。 Gdzie tam! まさか、とんでもない。 gdzieś tam どこかに kiedyś tam いつか 40.też, także 1)「~もまた」を表す。 Ja też cię kocham. 私もまた、あなたが好きです。 Adam spotokał się z Maią wczoraj. I Tusk też. アダムは昨日マリアにあった。 トゥ スクもだ。 Jeśli państwo nie pojadą, ja też nie pojadę. もしあなた方が行かないの なら、私もまた行きません。 Jeśli państwo nie pojadą, ja też nie pojadę. もしあなた方が行かないの なら、私もまた行きません。 2) 非難の意味を込めて言う場合にも使う。 Co też mówisz? 君は何を言っているのか? 41.to これは、他の語や文や別の小辞を強めるものである。 Kogo to ja widzę? 私は一体誰を見ているのか。 A to pech! 何という不運だ。 42.właśnie 表現を高めたり、強調したり、肯定的にしたり、より具体的にしたりする。 Właśnie tego mi było trzeba. 私はちょうどそれをする必要がある。 助詞 479 ta właśnie kobieta まさにこの婦人 Ona to własnie powidziała. それがまさしく彼女が言った言葉です。 43.wprawdzie 確かに~だが 物事の正しさを強調すると同時に、反対の概念を伝える場合に使われる。 Jest wprwdzie zdolny, ale mało zdecydowany. 彼は確かに有能だが、決断力に劣る。 44.zawsze いずれにしろ、という意味を表す。 Zawsze to coś znaczy. いずれにしろこれは重要だ。 45.zwłaszcza 特に Lubię muzykę poważną, zwłaszcza sonatę. 私はクラシック音楽が好きだ。特に、ソ ナタが。, 46.-że/-ż 疑問詞やその他の表現を強調したり、驚きを示す場合に使われる。 Chodźże do mnie! 僕の所へ来い! Ależ to pogoda! それにしても良い天気だなあ。 cóż? 何!? gdzież? しかし、どこ!? czyż 本当に! 47.zbyt ~しすぎる Był zbyt dummy, żeby prosić o pomoc. 彼は自尊心が高いので、助けを求めることは しない。 48.chociaż せめて~でも、少なくとも Mógłbyś chociaż podziękować. せめてありがとうぐらい言ってくれても良いのに。 Chociaż w sobotę on odpoczywa. 彼は少なくとも土曜日は休みを取る。 49.także 同様に On także interesuje się piłką nożną. 彼はサッカーにも興味がある。 Ona mówi po francusku, także po niemiecku. 彼女はフランス語と同様にドイツ語 も話す。 480 間投詞 第5節 間投詞 Ⅰ序 間投詞は文の他の部分と文法上の関係なしに文中に投入される言葉であり、各種の 感情を表したり、何かを促したり、擬声や擬態を表したりする。また、相手に影響を 与え、話者の真に発言したいことのためにニュアンスを与えるものである。従って、 助詞との違いは、助詞が文肢ではないとはいえ、文の中に組み込まれるが、間投詞は 文の外に現れる、間投詞は変化もしないが、それだけで一文を構成することもある。 間投詞は文法上は特別なものでポーランド語の綴りや発音や規則に抵触する場合も 多い。例えば、子音だけの単語 brr, psst や、ポーランド語にない発音 hu もある。 hu の h はポーランド語では ch と同じであるが、この場合は無声の声門音となる。 この発音は英語と同じである。 Ⅱ 個々の間投詞 1.a! あー、おー A! to ty! あー、それはあなただったの! 2.ach! ああ、まあ、おお、を表す間投詞 Ach, co za nieszczęście. ああ、何という不運だ。 Ach naprawdę? あー、本当? 3.bee 羊の鳴き声 4.bum ドカーン・ドスン(擬音語) nagle bum 突然ドカートンという音がした。 na zewnątrz słychać bum 外でドカーンという音がする 5.cyk かちかちという音(時計の鳴る音) 6.cześć やあ、こんにちわ。 Cześć, jak się masz? やあ、元気? 7.dość もうたくさんだ。 Dość jego historii. 彼の話にはうんざりだ。 8.ech(eh) 仕方ないか Ech, szkoda gadać! そのような話は残念だが、仕方ないか。 9.ejże まあね・やれやれ 10.fe ゲー・オエー Fe, jakie to brudne! ゲー、何と汚い! 11.ha ほう・まあ ha! ha! あはは(相手を小馬鹿にするような笑い) 12.hej ねえ・ちょっと・おい 間投詞 Hej! jest tam kto? ちょっと、そこにいるのは誰? 13.hejże ねえ・ちょっと(呼びかけ) Hejże, co tam robisz? ちょっと、そこで何をしているの? 14.hopla ジャンプ! 15.kura 羊の鳴き声 16.łup バシッ・ビシッ(擬音語) Ona go nagle łup w głowe. 彼女は突然彼の頭をバシッと叩いた。 17.mee 山羊の鳴き声 18.miau 猫の鳴き声 19.mrr 猫の鳴き声 20.no うん(肯定表現)no pewnie 確かに 1)驚き、警戒、不確実性、忍耐などを表す。 Mam do Pana pytanie. No? あなたに質問があるが、どうかな? No, no. さあさあ。 Było ich, no, może siedemdziesięciu. おそらく彼らはは70人ほどいたかな。 2)最終的状態を表す。 No, dobrze, dobrze. 万事OK。 3)肯定表現 No, czasami. ウン、時々ね。 21.och おお! Och, jaku tu pięknie! おお!ここは何と美しいことか。 22.oho おお! Oho, jaki ciężki! おお!何と重いことか。 23.oj 痛い!・ワーッ! Oj, brzydlo ワーッ、何という悲惨なことか。 24.ojej おやまあ!・何てことだ Ojej, co z tobą! おやまあ!どうしたの? 25.paf ドスンという音 26.puk トントン(ノックする音) "puk, puk!" "kto to?" 「トントン」「どちら様?」 27.uwaga 注意して uwaga, zły pies 猛犬に注意 28.wara 干渉しない・触らない wara ode mnie 私から離れて 29.witaj ようこそ! 30.właśnie まさに no właśnie! まさにその通り! 481 482 第Ⅲ部 統語論(構文論)語結合、 文の種類、文の構成 序論・語結合 483 第1章 序論 Ⅰ 統語論とは 形態論が語の構成と形態変化を扱うのに対して、統語論は語の結びつきと文の構造・ 機能を扱うものである。 単語はしばしば2つ以上組み合わされ、形態上・意味上一体のものとして機能する場 合がある。そのような語群は語結合と呼ばれるが、これには述語と補語、述語と状況語、 定語と被限定語の結びつきなどが含まれる。そして、その中には自由語結合、固定的語 結合、慣用句、熟語等がある。 語結合や語が組み合わされて一定の文が形成されるが、その文の内容を理解するため には、文の構造を分析する必要が生じる。そして、分析する際には、統語論では単語と 品詞分類とは異なるカテゴリーで分類するのが通常である。もちろん必要に応じて品詞 分類も利用するが、文の構造分析ではそれに加え、単語及び語結合が文の中で果たす機 能を重視し、文の成分(文肢)というものを分類単位とするのが妥当である。そこで、 まず、文の成分の全体像を理解するために、下記のごとく例示的に一つの文を取り上げ る。 Premier Japonii Yoshihiko Noda wyraził zgodę na deportację 14 obywateli Chin aresztowanych w czasie protestu w rejonie wysepek na Morzu Wschodniochińskim, które są przedmiotem sporu między Pekinem a Tokio. 野田佳彦首相は中国と日本の 間で争いのテーマになっている東シナ海の諸島で抗議活動をした際に逮捕された14 人の中国の活動家を国外追放することに同意した。 上の文で、主語は Yoshihiko Noda であり、述語は wyraził であり、それに関する 直接補語が zgodę である。na deportację は前置詞付きの定語であり、被限定語は zgodę である。そして、14 obywateli Chin aresztowanych は名詞 deportację の補語 になっている。さらに、w czasie protestu は時の状況語であり、w rejonie wysepek は 場所の状況語であり、na Morzu Wschodnichińskim は定語であり、被限定語は wysepek である。そして、関係代名詞で導かれた które są przedmiotem sporu między Pekinem a Tokio は定語的従属節で主節内の名詞の一つである wysepek na Morzu Wschodniochińskim の内容を説明するものである。尚、Premier japonii は Yoshihiko Noda の付語となっている。 以上は単なる例示であるが、文の構造を把握するためにはそれぞれの内容を把握する ことが必要である。統語論はこのようなことを扱っているのである。 Ⅱ 文の成り立ち ポーランド語は以下のような文の成分によって成り立っている。 484 序論・語結合 1.主成分 1)主語 まず、主語は主に主格に立つ名詞、代名詞によって表現される。また、それ以外の品 詞でも、名詞あるいは代名詞の機能を果たす場合には主語になることができる。形容詞、 形容分詞、数詞、副詞、不定詞でもこのような機能を果たす場合には主語になることが できるのである。 Adam krzyczał. アダムは叫んでいた。 On krzyczał. 彼は叫んでいた。 Czarny krzyczał. 黒人は叫んでいた。 Skazany krzyczał. 囚人は叫んでいた。 Pięć jest większe niż cztery. 5は4より大きい。 Dziś jest cieplejsze niż wczoraj. 今日は昨日より暖かい。 Czytać jest przyjemnie. 読書は楽しい。 2)述語 述語には以下の3つが挙げられる。 ① 単純動詞述語 動詞の定形(変化形)だけで表される述語である。 Adam krzyczał. アダムは叫んでいた。 ② 合成動詞述語 動詞定形(変化形)+動詞不定詞で表されるものである。 Adam umie gotować. アダムは料理をすることができる。 ③ 合成名辞述語 być を代表とする非独立のつなぎの動詞、すなわち連辞+名辞類 で構成される述語である。 Tom jest studentem. トムは学生です。 2.二次的成分 1)補語 動詞、形容詞、名詞等の意味を補って明らかにするものである。主に名詞・代名詞 がなるが、その他の品詞や語結合の場合もある。 ① 動詞と結合する補語 Ojciec lubi córkę. 父は娘が好きである。 Dziecko boi się ciemności. 子供は暗闇を怖がる。 ② 形容詞と結合する補語 Fabryka jest pełna kurzu. 工場は埃で一杯だった。 ③ 名詞と結合する補語 Jego zainteresowanie jest czytaniem książki. 彼の趣味は本を読むことである。 2)状況語 述語その他を修飾・形容する副詞や副詞句をいう。 On wrócił do domu wieczorem. 彼は夕方に、家に帰った。 3)定語 これには一致定語と不一致定語がある。 ① 一致定語 被限定語(修飾・形容される語)に性・数・格が一致する限定語をいう。形容詞、 序論・語結合 485 所有代名詞、指示代名詞、形容分詞、順序数詞、個数詞で表され、通常、名詞の前に 置かれる。 Adam kupił nową książkę. アダムは新しい本を買った。 Mój pokój jest cichy. 私の部屋は静かである。 Ta ulica jest szeroka. その通りは広い。 Widziałem dziecko czekające na matkę. 私は母親を捜している子供を見た。 ② 不一致定語 被限定語と性・数・格が一致しない限定語をいう。 Artykuł ojca jest ceniony wysoko. 父の論文は高く評価されている。 Jego obraz jest wspaniały. 彼の絵は素晴らしい。 4)付語 限定される語と同格の、名詞による修飾・限定語をいう。 profesor Eva エバ教授 3.文外詞 文の構造に関わらない部分をいう。これは文の中には存在するが、文を構成する成 分ではないものである。これには助詞、呼びかけ、間投詞、挿入語がある。 Ach, co za nieszczęście. おお、何という不運。 第2章 語結合 Ⅰ 概説 語結合とは、2つ以上の独立語が形態的・意味的に一体化したものである。生きたポ ーランド語において文を構成する単位となっているのは単語と言うよりも、一つのまと まった意味を持つ語結合であるのでこれを取り上げることは重要である。 語結合には並立結合と従属結合がある。前者は2つ以上の語が同格で結びついたもの であり、後者は語と語の間に主従の関係があるものである。例えば、Ojciec i syn mieszkają w domek jednorodzinnym. 父と息子は一戸建ての家に住んでいる、の場合、 Ojciec i syn は並立結合であり、w domek jednorodzinnym は従属結合である。 文の構造を理解するためには語結合にも留意しなければならないので、ここに取り上 げるのである。 Ⅱ 語結合の型 1.並立結合 並立接続詞またはコンマによって2つ以上の同格の語が結びつけられている場合で ある。 例えば、 Kupiłem gazetę i czasopismo. 私は新聞と雑誌を買った、 の場合の gazetę 486 序論・語結合 i czasopismo で gazetę と czasopismo はそれぞれ kupiłem の直接補語となっており、 それが i という接続詞によって結びつけられているのである。 2.従属結合 圧倒的多数の語結合である従属結合は、主要語と従属語からなる。従属結合には基本 的には次の3つの型がある。 1)一致 これは従属する語の性・数・格が主要語と同じになるものをいう。定語形容詞と名詞 の関係がその典型である。この場合、定語形容詞が従属語、名詞が主要語となるのは言 うまでもない。 ciekawa gazeta 興味深い新聞、mój ojciec 私の父、czwarta nagród 4等賞 ※ 尚、主語・述語関係については、厳密な意味では従属結合とは言えないが、主語の文 法上の型が述語の文法上の型を決定するので、この関係も一致に含めて良い。 Ona pisze list. 彼女は手紙を書いている、の場合、pisze は主語の ona に合わせて 単数3人称形になっているのである。 2)支配 従属する語が、主要語の要求で一定の文法的な形を取る関係をいう。 ① 典型的には動詞の格支配が挙げられる。 lubić tenisa テニスが好きである、sterować samochodem 自動車を運転する ② 次に、形容詞の格支配が挙げられる。 godny podziwu 賞賛に値する、zdziwiony psem 犬に驚いている ③ 名詞と名詞の斜格の組み合わせもこれに含まれる。 dom ojca 父の家、budowa mosta 橋の建設、 rządzenie państwem 国を支配すること ④ 前置詞は主要語とは言えないが、前置詞の格支配もこの範疇に含まれるであろう。 na stole テーブルの上に、w styczniu 1月に ⑤ 数詞と名詞の関係もこれに含まれる。 pięc lamp 5つのランプ 3)付加 従属する語と主要語の間に一致や支配の関係がなく、主要語に何か語が付け加わるも のである。その場合、従属語は不変化語の場合もあるし、付語の関係の場合もある。そ して、付語の関係の場合には従属語は主要語と数・格が同じとなるが、文法上の性は必 ずしも一致しない。もっとも、品詞は同じになる。 ① 動詞・形容詞・副詞+副詞(あるいは副分詞)の型 この場合は、副詞が従属語とな り、しかも不変化語である。 On pracuje dobrze. 彼はよく働く。bardzo dobry obraz 非常に良い絵 bardzo głosno 非常に大きく ② 動詞・名詞・形容詞+動詞不定詞 この場合は、動詞不定詞が従属語となり、しかも 不変化語である。 序論・語結合 487 On kończył pracować. 彼は仕事を終えた。 Czas spać. 寝る時間だ。(この場合は、無人称述語として名詞の czas を使い、動詞 不定詞が従属語となっている。) Należy wypełnić druk. 書類を書かなければならない。 ③ その他 名詞+名詞で生じる付語の関係も付加とされるが、これは同格と考えて良い。 miasto Warszawa ワルシャワ市 ksiąz August アウグスト司祭 Ⅲ 主要語から見た従属結合の種類 圧倒的多数の語結合である従属結合を主要語の品詞によって分類すると、以下のごと くになる。 1.動詞が主要語 1)動詞+名詞(支配の関係)これには前置詞なしと前置詞付きがある。 ① 前置詞なし kupić samochód 車を買う(対格) łaknąć miłości 愛を求める(生格) pomóc mu 彼を助ける(与格) ② 前置詞付き czekać na wiadomość ニュースを期待する myśleć o niej 彼女のことを考える 2)動詞+副詞(付加の関係) spać głęboko ぐっすり眠る pracować dorywczo 片手間に仕事をする 3)動詞+動詞不定詞(付加の関係) ① 不定詞の主体が主語と同じ場合 mieć ~すべきである、musieć ~しなければならない、móc ~できる、potrafić ~ する必要がある、zechcieć 進んで~する、 raczyć ~してくれる、woleć ~をより 好む、chcieć ~したい ② 不定詞の主体が主語と異なる場合 prosić kogoś ~に頼む、kazać komuś ~に命令する 2.名辞類が主要語(主要語は品詞(下線)で示す。) 1)形容詞+名詞(一致の関係) これは枚挙にいとまがない。 2)名詞+副詞(付加の関係) jajko na miękko 半熟卵 3)名詞+名詞(支配の関係) 488 序論・語結合 koniec wojny 戦争の終わり miłość do niej 彼女に対する愛 walka z terroryzmem テロとの闘争 czytanie artykułu 論文を読むこと 4)形容詞+名詞(支配の関係) pełny smutku 悲しみが一杯で bliski sercu いつも気に掛かっている zajęty pracą 仕事で忙しい 5)数詞+名詞(支配の関係) piąta strona 5ページ 6)代名詞+その他の名辞類(一致の関係) ktoś inny 他の誰か 文の種類・語順・イントネーション 489 第3章 文の種類、語順、イントネーション 文には平叙文、疑問文、命令文、祈願文、感嘆文のように、発話の意図(話し手が言 いたい内容)によって分けることができる。また、一方では文の構造によって分けられ る。ロシア語では、主語と述語をもつ通常の文以外に、無人称文、不定人称文、普遍人 称文のような無主語文があったが、ポーランド語においては無人称文、不定人称文を認 めることができる。 次に語順に関しては、ロシア語と同様、語順が話し手の意図を伝えるという重要な役 割を果たしている。語順は状況の中で相対的に決まるので、語順から話し手の意図が読 み取れるのである。 イントネーションは語順と結びついており、口語言語にとって極めて重要な役割を果 たすが、その理論的解明は難しい。 第1節 文の種類 Ⅰ 発話の意図による分類 これは、話者の伝達意図の種類に応じて、分けるものである。 1.平叙文 平叙文は、事柄を極めて一般的に、伝達意図に関しては中立的な形で表示する文で、 すべての派生の基本になる構造を有する。平叙文には純粋平叙文と拡張平叙文とがある。 純粋平叙文は主語と述語のみからなる平叙文であり、拡張平叙文は主語と述語のみなら ず補語等を持つ平叙文である。 2.疑問文 疑問文は不明な点を尋ねる文で、疑問詞のつくものとつかないものがあり、書く時に は文末には疑問符「?」が置かれ、口頭の場合なら、疑問文であることが分かるイント ネーションになる。 1)疑問詞のない疑問文 疑問詞のない疑問文は、3種類に分かれ、tak か nie の答えを求めるものである。 ① 平叙文と同じ語順で、口頭ではイントネーションだけが変わり、書く時はピリオドの 代わりに疑問符が付くだけのもの Czekasz na pociąg? あなたは列車を待っているのですか? ② 平叙文の冒頭に Czy を付けるもの Czy umiesz pływać? あなたは泳げますか。 ③ 丁寧な疑問文の場合は、しばしば by 構造や話法の助動詞を用いて表す。 Poszedłbyś ze mną do kina? 私と一緒に映画に行ってくれませんか? 490 文の種類・語順・イントネーション 2)疑問詞付きの疑問文 疑問代名詞や疑問副詞を付けることによって、質問する文を作るものである。 Kto ma samochód? 誰が自動車を持っていますか? Co kupujesz? あなたは何を買っているのですか? Gdzie mieszka Adam? アダムはどこに住んでいますか? 途中書き=平成22年10月13日午前9時30分 3.命令文 命令文は他者に動作を促す文で、強圧的なものから、丁寧な依頼までニュアンスは 様々である。通常は2人称に向けられるもので、動詞命令形が使われるが、その他の形 もあり得る。 依頼 Pokaż zdjęcie. どうぞ写真を見せて下さい。 Chodźmy do parku. 公園へ行こう。 Niech oni długo żyją. 彼らが長生きできますように。 Przetłumasz ten list na język polski! この手紙をポーランド語に訳しなさい。 Powiedz mi coś. 私に何か言え。 Nie mów tego. そんなことを言うな。 呼びかけ 自分を含む共同の動作への相手を誘う場合は、対一人称の命令文となる。 第三者に対する命令・依頼を口にする場合は対三人称の命令文となる。文頭に niech が置かれ、文章は通常の現在または未来形で良い。 Niech pan spocznie どうぞお座り下さい。 Niech pani mi pomoże! 私を助けて下さい。 Niech pan tego nie robi! 命令形の用法 ・動作の対象が第三者だけに向けられるのではなく、話者自身も対象となる。 ・命令形に強調のニュアンスを持たせるために助詞 no, że がしばしば用いられる。 ・命令を緩和するための言い回し Proszę cię,daj mi cukier. すみませんが、砂糖を下さい。 Bądź łaskaw, podaj mi cukier. ・三人称の命令形は単なる命令だけではなく、丁寧な言い回しの表現もできる。 ・命令形はある事柄への態度を表す場合がある。(条件、譲歩など) 誘い 希望 要求 命令 4.感嘆文 感嘆文は、話し手の評価や感情的反応を表す文である。疑問詞が使われていても疑問 の意味ではなく、感嘆(良い意味でも、悪い意味でも)の意味になる。感嘆文は主観的 な感嘆の表現なので、原則的にはどんな文も感嘆文になり得る。文末には感嘆符(!) がつけられ、口頭の場合は、平叙文とは異なるイントネーションとなる。 文の種類・語順・イントネーション 491 感嘆文ではしばしば jaki, taki, ile 等の代名詞が用いられる。また、ach, uf 等の間投 詞を伴うことも多い。感嘆文は主観的な感情がこもるので、極めて豊かなイントネーシ ョンをもち得る。 Jaki piękny obraz! なんと美しい絵だことか。 Jest taka piękna! 彼女はなんと美しいのだろう。 Ile wody! なんとたくさんの水があふれている。 Ilu ludzi! なんとたくさんの人がいることよ。 Ach jaki piękny widok! ああ、なんと美しい眺めだ。 Ⅱ 文の構造による分類 1.ポーランド語の文の構造はロシア語と同じく構造上一応次のように分類される。 1)単文 ① 二肢文 これは文の主成分である主語と述語の両方を備えた文であり、 普通の文であ る。 ② 一肢文 これは主語を欠く、述語(または二次成分)のみの文である。これには、無 人称文、不定人称文、普遍人称文、不定詞文、名詞文がある。 2)複文 ① 並立複文 主語と述語が異なる同等の文が二つ以上並ぶものである。 ② 従属複文 主文に対して一つ以上の従属文が従属するものである。 2.以上のようにポーランド語とロシア語の文の構造はほぼ同じである。ただ、一肢文 の種類については多少異なっている。一肢文とは、主成分の一つ、主語を欠いた文で ある。ロシア語には、独特の無主語文が無人称文と不定人称文と普遍人称文の3つが あったが、ポーランド語においては普遍人称文というのはあまり見られず、無人称文 と不定人称文が主体である。そのうち、特に無人称文は豊かであり、これはロシア語 よりも多く見られる。詳細は無人称文の項を参照されたい。 Ⅲ 一肢文の種類 ロシア語においては文成分が一つの文はかなり多く見られた。これらは英語、ドイツ 語、フランス語などにはほとんど認められないものであり、スラヴ語の一つであるロシ ア語の特徴でもあった。ロシア語と同じスラヴ語であるポーランド語においても同じよ うに文成分が一つの文はかなり見られるものである。 一肢文は、 主成分の一つである主語を欠いた文である。 名詞だけの文もあるが、 słońce ! 太陽だ、tęcza! 虹だ、のような名詞だけの文はの名詞は、主語とはなく述語と考えられ る。ポーランド語においてはロシア語と同じように構造上主語を持たない、独特の無主 語文が上述のようにあるが、主たるものは無人称文である。 492 文の種類・語順・イントネーション 1.無人称文 これについてはいろいろなものがあり、ロシア語同様ポーランド語でも豊かであり、 別項で記載する。 2.不定人称文 ロシア語においては不定人称文はかなり頻繁に出てきた。その特徴は、① 主語が存在 しないこと、②3人称述語形をもつこと(過去、現在、未来の全時制において)、③ 話 し手が主語を意識しないことを示す、というものであった。 これは、主語が文には現れないが、複数の第三者を想定しているため、述語が3人称 複数形となるものである。例えば、ロシア語では Его убили на войне. 彼は戦争で亡く なった、ポーランド語では Zabili go na wojnie. となる。Стоят новый завод. 新しい 工場が建てられる、はポーランド語では Budoją nową fabrykę. となる。 しかし、ロシア語に比較して、この構文が使われる場合は少ないと言える。例えば、 В клубе пели и плясали. クラブでは、歌われ、民族舞踊が踊られていた、と不定人 称文となるが、ポーランド語では W kludie tańczono i śpiewano. と無人称文となる。 また、Из кустов стреляли. 灌木の間から銃声がした、も、Strzelano za krzaków. となる。さらに、Меня зовут сергей. 私はセルゲイと申します、とする不定人称文で も、ポーランド語では Nazywam się Sergiej. と再帰代名詞を使って表す。 3.普遍人称文 これは述語動詞が Ты の形を取りながら Ты(主語)が示されない文で、すべての人 に該当する可能性などを表すものである。ロシア語ではある程度見られたが、ポーラン ド語ではほとんど見られないものである。 4.不定詞文 ロシア語において動詞不定詞が、述語副詞や補助的な動詞を持たず、単独で述語にな る場合、一肢文となった。例えば、Что делать? 何をすべきか、の様に疑問を表す場合 とかとか、Не курить!禁煙、の様な強い命令になる場合である。このようなものはポー ランド語でも見られる。 Przyjść jutro? 私は明日、 来るべきだろうか?、 とか Wstać! 起 きろ、等である。詳しくは動詞不定詞の項を参照されたい。 5.名詞文 ロシア語の名詞文は、名詞だけが表現され(もっとも、定語、間投詞、ある種の助詞、 前置詞などが付くこともある。)、それ以上は何もない文であるが、これらも一肢文で あったが、 ポーランド語でも見られる。 例えば、 表示で Dla mężczyzn 男性用 (トイレ) 、 とある場合である。 Ⅳ 二肢文の種類 文の種類・語順・イントネーション 493 1.単純的述語による二肢文 1)主語と述語だけの文 Adam biegnie. アダムは走っている。 2)主語と述語と補語を含んだ文 Adam czyta książkę. アダムは本を読む。 2.複合的述語による二肢文 1)AはBであるという形式の文 ① 述語内容詞が名詞の場合にはその名詞は造格となる。 Nowak jest artystą. ノヴァックは芸術家である。 この場合は後述の同定文とややニュアンスが異なる。すなわち、この場合の artystą をいうのは一連の芸術家の集団の中の1人という意味であるのに対して、同定文で述べ る場合には、主語となるものと述語となるものが同一であることを示しているのである。 このことから、その名詞の付加語的形容詞が付く場合には、その形容詞も造格となる。 Nowak jest wiekim artystą. ノヴァックは偉大な芸術家である。 ② 一方、述語内容詞が形容詞である場合には、ロシア語とは異なり(ロシア語では造格 となる。)その形容詞は主格となる。 Nowak jest głodny. ノヴァックは空腹である。 ※しかし、主語のない無人称文で使われる形容詞は、造格となる。 Szkoda być mu leniwym. 彼が怠惰なのは残念だ。 ① と同一の文構造としては、On zostanie prezydentem Niemiec. 彼はドイツの大統領 になる。 Kowalski stał się wiekim artystą. コワルスキーは偉大な芸術家になった。 ② と同一の文構造としては Ta sukienka była czarna. その衣装は黒であった。Adam stał się podejrzliwy. アダムは疑い深くなった。Monika zrobiła się blada. モニカは青白 くなった。 2)存在文 Jest Bóg. 神は存在する。 Na drzewie był ptak. 木に鳥がいた。 Będzie na to dość pieniądza. それについて十分なお金はないだろう。 複数のものが存在する場合には、być の複数3人称形を使う。もっともその複数のも のが、5以上に関係する場合には複数形ではなく、単数形を使う(過去では単数3人称 中性形)。 Są róże bez kolców. とげのないバラがある。 W parku są dzieci. 公園には子供がいる。 W parku są dwa dzieci. 公園には2人の子供がいる。 W parku jest pięciu dzieci. 公園には5人の子供がいる。 494 文の種類・語順・イントネーション W parku było pięciu dzieci. 公園には5人の子供がいた。 しかし、存在を否定する文にすると、無人称文となり対象(存在文で主語に相当する ものであり、存在否定文では論理上の主語となるもの)は生格となり、しかも動詞が mieć となる。また、その動詞は単数3人称であり、過去では単数3人称中性形となる。 Na drzewie nie miało ptak. 木には鳥はいなかった。 3)To を使用した文(導入文) To jest ołówek. これは鉛筆である。 To są książki. これらは本である。 To jest moja żona. これは私の妻である。 To była moja żona. これは私の妻であった。 注:この場合、注意すべきは動詞が符合するのは、To ではなくて、名詞の主格の方 である。 4)同定文 この場合は、to を使用した文であるが、コプラを明示しても、しなくても 良い。述語内容詞が形容詞でも良い。1.との違いは述語内容詞が名詞の場合でも主格 となることである。 Warszawa to ( jest ) stolica Polski. ワルシャワはポーランドの首都である。 Ci ludzie to ( są ) nasi przyjaciele. これらの人々は我々の友人である。 Dzień jesień to ekscytujące. 秋の日は刺激的だ。 Ⅴ 無人称文 1.序 通常主語は主格で表される。この点、英語やドイツ語やフランス語などのロマンス語 では原則として主格としての主語が現れる。しかし、ロシア語では主語を曖昧にしたり、 あるいは主語はあっても主格では表さない場合が頻繁に見られる。スラヴ語の一つであ るポーランド語でもこの点は同様である。従って、本章で言う無人称文とは主格として の主語を持たない文全体を指すことにする。ロシア語においては、存在否定の無人称文、 述語副詞による無人称文、無人称動詞で表される無人称文等があった。、ポーランド語 においてもほぼ同様に無人称文が現れる。 2.存在否定の無人称文 ロシア語においては、存在が否定されると、主格で表されるべき主語がないために生 格が使われ、その結果、無人称文となった。同様のことはポーランド語においても見ら れる。しかし、厳密に言えばこの文は主語はあるが、主語が主格ではない場合である。 文の種類・語順・イントネーション 495 論理上の主語というものがあり、それが生格になっているのである。 Matki nie ma w domu. 母は家にはいない(この場合、matki は生格である。主語に 相当するものがない。ちなみに肯定文では、Matka jest w domu. となる。)。 Tu nie ma mojego zeszytu. ここには私のノートがない。(肯定文では Tu jest mój zeszyt. となる。) 3.数量の増加、減少、不足等の動詞と共に現れる無人称文 これらの場合、数量生格が使われるので主格で表されるべき主語がないために存在否 定と同じく無人称文となる。 Wody ubywa. 次第に水が減る。 Brakuje mi czasu. 私には時間が足りない。 Brakuje wody. 水が不足している。 Starczy jedzenia na trzy dni.3日分の食料しかない。 Wody przybywało. ますます水かさが増してきた。 4.述語副詞による無人称文 ロシア語には述語副詞と呼ばれる、品詞に準ずる独特のカテゴリーがあった。その多 くは副詞と同じ形をしており、状態を表す無人称文の述語となった。この点、ポーラン ド語においても同様のものが見られる。その場合に主体を示すときは与格が用いられる こともロシア語と同じである。 述語副詞は意味によって次の2種類に分類できる。 1)自然状態 この場合は、動詞として主に być が使われる。 これには zimno 寒い gorąco 暑い jasno 明るい ciemno 暗い ciepłó 暖かい chłodno 涼しい、等がある。 Mi jest gorąco. 私は暑く感じる(私は暑い)。 Robi się ciemno. 暗くなる。 Jest ciemno. 暗い。 Duszno mi było. 私は蒸し暑い。 2)生理・心理的状態 これには trudno 難しい łatwo 易しい nudno 退屈な smutno 悲しい przykro 残 念な、wiadomo 知っている、等がある。 Jemu jest smutno. 彼は悲しい。 Mi jest nudno. 私は退屈だ。 Nic mi o tym nie wiadomo. それについては私は何も知りません。 5.無人称動詞を使う場合 496 文の種類・語順・イントネーション 天候、時間、雰囲気、状況等を表す動詞は、無人称動詞として単数3人称形しか使わ れない。また、身体の状態、物事の成功・不成功、感情・気分などを表す動詞も無人称 構文を取る。それには、 1)świtać 夜が明ける、dnieć 夜が明ける、grzmieć 雷が鳴る、zmierzchać się 薄明る くなる、ścieminiać się 暗くなる(日が沈む)、błyskać się 稲光がする、ocieplać się, 暖 かくなる、zachmurzać się 曇ってくる Świta. 夜が明ける。 Dnieje. 夜が明ける。 Grzmi. 雷が鳴っている。 Błyska się. 稲妻が光っている。 Ociepla się. だんだんと暖かくなる。 Oziębia się. だんだんと冷たくなる。 Pada.雨が降る。 Pali się! 火事だ。 Zachmurza się. だんだんと曇ってくる。 Świta ciemnia się. 暗くなる。 2)cuchnąć 臭いがする、śmierdzieć 臭いがする、pachnąć 香りがする、szumieć が んがんする、 Tu śmierdzi dymem. ここでは煙の臭いがする。 Cuchnęło tu gazem. ここではガスの臭いがした。 Pachnie mi jasminem. 私にはジャスミンの香りがする。 ※ これらの場合、主体は与格で表すが、対象となる物は造格で表すのが通常である。 3)boleć 痛い、kręcić się 目が回る・むずむずする、łamać 骨を折る・受傷する、kłuć ちくちく痛む、等 Kłuje mnie w boku. 私は脇腹がちくちく痛む。 Miga mi w oczach. 私の目はぱちぱちする。 Zazieleniło się na łąkach. 草原が緑になった。 Swędzi mnie. 私はかゆい。 Mdli mnie. 僕はしびれる。 Szumi mi w uszach. 私の耳はぶんぶんうなる。 Szumi mi w głowie. 私の頭はがんがん鳴る。 Burczy mu w żołądku. 彼の胃はごろごろ鳴る。 Kręci mi się w głowie. 私は頭がぐるぐる回る。 Sparaliżowało ją. 彼女は麻痺した。 4)物事の成功、不成功等を表す場合 文の種類・語順・イントネーション 497 udać się うまく乗り越える、szczęścić się 運が良い、powodzić się うまく行く・ついて いる、dziać się 起こる Udało mu się.. 彼はうまく行った。 Poszczęściło jej się wstąpić na uniwersytet. 彼女はうまく大学に入れた。 Poszczęściło im się. 彼らはウンが良かった。 Stało się. たまたま~する。~する機会がある。 Jak leci? ご機嫌いかが? 5)感情・気分を表す場合 zachcieć się ~したい、podobać się ~が気に入る、nudzić się 退屈である、zbierać się ~しそうである、ulżyć 楽になる Zachciało mi się spać. 私は眠たくなった。 Zachciało mu się jazdy.彼はドライブをやりたい気分だった。 Podoba mi się tu. 私はここが気に入っている。 Zbiera mi się na wymioty. 私はむかむかする。 Chce mi się pić. 私は飲みたい気分だ。 Ulżyło mi. 私は気が楽になった。 Ulżyło mu w pracy. 彼の仕事量を楽にした。 Nudzi mi się. 私は退屈だ。 Robi mi się niedobrze. 私は気分が悪くなった。 6.無人称述語を使う場合 必要性とか可能性、許容性、判断などを表すものには無人称述語がある。無人称述語 となるのは名詞の場合もあるし、助詞の場合もある。通常は動詞の不定詞がそれに続く。 それには、trzeba, należy, można, wolno, warto, szkoda, wypada がある。尚、肯定文 ではそれらに続く動詞は完了体が使われ、否定文では不完了体が使われるのが通常であ る。例えば、Warto przeczytać tę książkę.その本は読む価値がある。Nie warto czytać tej książki.その本は読む価値がない。この場合、直接目的語は肯定文では対格であるが、 否定文では生格で表すことにも注意が必要である。 ① trzeba と należy 共に、必要性とか義務を表すが、trzeba と należy では należy の方がフォーマルで ある。 Trzeba posprzątać. 我々は掃除をした方が良い。 Trzeba pomagać ludziom. 人は他人を助けるべきだ。 Należy się dobrze zachowywać.人は正しく振る舞わなければならない。 Należy wypełnić druk. 書類を書かなければならない。 Należy go żałować. 彼には気の毒に思う。 Należy to zrobić. それをしなければならない。 ※ potrzeba も無人称述語であるが、これはその後には動詞の不定詞は続かない。名詞 498 文の種類・語順・イントネーション の生格が続くのみである。一方、trzeba は不定詞が続くと共に、名詞の生格も続く。し かし、należy の場合は動詞の不定詞しか続かない。 ② można と wolno 共に、許容性を表すが、wolno の方がフォーマルである。 Czy można otoworzyć okno? 窓を開けても良いですか。 Nie można cały dzień spać. 一日中、寝ていてはいけない。 Wolno patrzeć, ale nie dotykać.見ても良いが、触ってはいけない。 Nie wolno wprowadzać psów. 犬を連れてきてはいけない。 ③ warto と szkoda 共に、価値についての判断を表すが、前者は肯定的な局面で、後者は否定的な局面で 使う。 Warto to zobaczyć. それは一見に値する。 Nie warto się martwić. 心配するには及ばない。 Szkoda nawet o tym myśleć.それに関して、考える価値はない。 Szkoda gadać. 話す価値がない。 ④ wypada 社会的あるいは道徳的な認容を表す。現在のみならず過去や仮定法でも用いられる。 Wypada wysłać kartkę. カードを送るべきだ。 Nie wypada pluć. つばを吐いてはいけない。 Wypada chyba zaczekać. おそらく待たなければならないだろう。 Nie wypada śpiewać przy jedzeniu. 食事中に歌うのはふさわしくない。 Nie wypadało śpiewać przy jedzeniu. 食事中に歌うのはふさわしくなかった。 Nie wypadałoby śpiewać przy jedzeniu. 食事中に歌うのはふさわしくないだろう。 ⑤ grzech, czas, pora, wstyd, niepodobna,brak, nie sposób, żal 等 これらは名詞で無 人称述語となる。 Żal rozstawać się z przyjaciółmi. 友人と別れ別れになるのが悲しい。 Grzech tracić tam tyle papiery. 紙をそんなにたくさん使うのは良くない。 Pora było się żegnać. さよならを言う時だった。 Czas zaras spać. そろそろ寝る時間だ。 Brak mi słów. 言葉に窮する。 Nie sposób tego teraz rozmieć. 今それを決めることはできない。 Wstyd się przyznać do błądu. 過ちを認めるのは恥だ。 Strach wychodzić w nocy. 夜に外出するのは怖い。 7.動詞の不定詞を使う場合 widać, słychać, czuć, znać は五感を通じて受け取れる感覚状態を、不定詞を用いて表 すことができる。その中で widać, słychać は不定詞でしか用いられないが、czuć, znać は不定詞による用法以外に通常の動詞としての用法もある。widać 見える、słychać 聞 こえる、はロシア語ではそれぞれ видно、слышно に相当し、これらは述語副詞であ 文の種類・語順・イントネーション 499 るのでやや異なっている。しかし、無人称文を形成する点では同じである。現在形は助 動詞を使わずに表されるが、過去形は być の過去中性形、すなわち było を、未来形は być の未来形、すなわち będzie を助動詞として使う。 Z okna widać morze. 窓からは海が見える。 Nic nie widać. 何も見えない。 Brzegu jeszcse nie było widać. 岸はまだ見えなかった。 Słychać było muzykę. 音楽が聞こえた。 Nie słychać dźwięk samachodu. 車の音が聞こえない。 O nim już długo niczego nie słychać. 彼についてはもう長い間、何の消息もない。 Stąd czuć zapacz kwiatów. ここから花の香りがする。 W kuchni czuć było gazem. 台所からガスの臭いがした。 Czuć go jeszcze wojskiem. 彼は依然として軍隊じみている。 Na tym materiale znać plamę. その生地にはシミが認められる。 Tego nie będzie znać. それは目立たないであろう。 8.無人称過去形を使う場合 -no / -to 構文 これは動詞の受動形容分詞の語幹から作られるものである。この場合は、過去の意味 の場合しか使われない。これはロシア語の不定人称文に該当すると思われる。すなわち、 ロシア語では構造上主語がなく、述語の動詞が三人称複数の形を取るものがあるが、話 し手の関心が述語の表す動作そのものに向けられるため、主語、すなわち誰がその動作 を行うのかが、不明または重要ではなく、話し手が明示しようとしない時に広く用いら れるが、これと似た用法である。これは元の動詞が完了体でも不完了体でも用いられる が、両者では若干ニュアンスを異にする。すなわち、不完了体では過去の一般的な事象 に言及する場合が通常であり、完了体では過去に行われた行為であるが、誰が行ったか を明らかにしない場合である。 ① O tym wypadku pisano w gazecie.この事故について、新聞に書かれてあった(不完 了体)。 ② Wybrano go spośród młodych ludzi. 若者の中から彼が選ばれた(完了体)。 ③ W Teheranie powieszono Holenderkę. テヘランでオランダ人女性が絞首 刑された(完了体)。 ④ W kuchni gotowano obiad. 台所では昼食が用意された(不完了体)。 ⑤ Dyrektora hotelu pytano często o wolne pokoje. ホテルのマネージャーは しばしば部屋の静謐について尋ねられた(不完了体)。 ⑥ Naprawiano czarny samachód. 黒い車が修理されていた(完了体)。 ⑦ W 2002 roku pito dużo wino. 2002年に人々は多くのワインを飲んだ (不完了体)。 ⑧ Trzysta lat temu nie odbierano radio. 300年前は人々はラジオを聴い ていなかった(不完了体)。 500 文の種類・語順・イントネーション ⑨ Całe nasze wino wypito przedwczoraj. 我々は一昨日にワイン全部を飲ん でしまった(完了体)。 ⑩ Tą książkę wydano w Anglii. この本はイギリスで出版された(完了体)。 ※この無人称過去形はロシア語では ся 動詞を使った過去形か、被動形動詞過去の短語 尾を使った過去形で表されるものである。 例えば、⑤ Otwarto wystawę malarstwa francuskiego. フランス画の展覧会が開かれ た、はロシア語では、Открылась выставка французсской живописию あるいは Была открыта выставка французсской живописию. となる。 この構文では、文脈から推定できる主語の数は多くは複数であるが、不明な場合も多 いし、明白に単数である場合もある。上述の例で、③は主語は単数であると言える。 この構文では主体が漠然としているので、状況語などで範囲を示すことが多い。場合 によると、これによってかなり明確に主体が示されることになる。 9.się を使った無人称文で主体を与格で表す場合 Jak wam się chodzi w tych butach? あなた方はこの靴でどのように行くの? Dobrze mi się spało w tym łóżku. 私はこのベッドでよく眠れた。 Jak wam się tu mieszka? あなた方はここでどのように過ごすのですか。 Lepiej mi się zrobiło po tym leku. Zachciało mu się jazdy. Zebrało jej się na płacz. Przyjemnie mi się czyta tę książkę. この本を読むことは私にとっては心地よい。 10.się を使った無人称文で主体が不定の場合 この場合は重点が行為に置かれ、行為者を問題にしない場合である。 Tym ołowekiem pisze się dobrze. この鉛筆は良く書ける。 Tym ołowekiem pisało się dobrze. この鉛筆は良く書けた。 Tym ołowekiem będzie się pisać. この鉛筆は良く書けるだろう。 Tu się nie pali. ここでは喫煙をしてはいけない。(ここでは喫煙はされない。) U nas się nie pali. ここでは喫煙をしてはいけない。(我々の所では喫煙はされな い。) W hotelu się mówi po polsku. ホテルではポーランド語が話される。 主体が不明の場合には、受動態は使われず、無人称の się 構文だけが使われる。 Woda się gotuje. お湯が沸いている。 Herbata się robi. 紅茶ができる。 Robi się chłodno. 涼しくなる。 ※ ロシア語の不定人称文は主語がなく、動詞複数3人称を使って表すが、ポーランド語 ではこれと同じ意味を表すのに się を使った無人称文とするのが通常である。この構文 は、誰がするかは問題とせず、どんな事柄が行われるかをもっぱら示すものである。 例:Tu mówi się w wielu językach. ここでは多くの言語が話されている、は、ロシア語 文の種類・語順・イントネーション 501 では Здесь говорят на многих яазыках. となり動詞複数3人称が使われる。この場合、 誰が話すかは問題ではなく、言語が話されている、という事柄だけを示すのである。同 様に、Sprzedaje się dużo upominków. 多くの土産が売られている。 尚、次を比較されたい。 ① Tu sprzedaje się bilet. ここでは切符が売られている。 ② Tu sprzedaje się bilety. ここでは切符が売られている。 上の文で分かるように、切符は①では単数であり、②では複数であるが、動詞は常に 単数3人称であると言うことである。主語がないから当然である。 11.命令文で不定詞を使用する場合も無人称文となる。 Prać na sucho. ドライクリーニングをせよ。 Rozejść się! 分けろ! Nie rozmawiać! しゃべるな! Nie deptać trawników!芝生を踏むな! 12.proszę を使った命令文で不定詞を使う場合 Proszę siadać. お座り下さい。 Proszę się rozgościć. くつろいで下さい。 13.不定人称文 ロシア語では不定人称文というものがあり、動詞は複数3人称を使用し、主 語がない文があった。ポーランド語においてもロシア語ほどではないが、その ような文が見られる。例えば、Odnaleźli ciało Polki. ポーランド女性の死体が 発見された、という場合の、Odnaleźli は過去複数3人称男性人間形である。 主語は明示していないが、動詞が複数3人称男性人間形であることから不定人 称文と言える。不定人称文は人や生物が関わる文で、実質は受け身の意味を表 す。尚、事物に関する場合には不定人称文は用いられない。その他の例として は以下のものがある。 Często Kradną tu psy. ここではしばしば犬が盗まれる(誰かが、しばしば 犬を盗む)。 W Warszawie otwarli nowy sklep. ワルシャワで新しい店がオープンした。 Zabili pięć tysięcy słoni w pięć lat. 5年間で5千頭の象が殺された。 502 文の種類・語順・イントネーション 第2節 語順 Ⅰ序 ポーランド語の語順はロシア語と同じく比較的緩やかである。しかし、ある程度ルー ルがあり、ポーランド語をきちんと把握するためには、それらをマスターしなければな らない。 ロシア語と同様ポーランド語では、原則的に文中に並ぶ単語の形から品詞を判別でき、 その単語がのどの成分になっているかも、形から判別できる。すなわち、二つ並んだ単 語のうちどちらが名詞でどちらが動詞であるか、どちらが定語でどちらが被限定語であ るかは、前後関係ではなく、形の上から大体判断できるのである。主語、述語、補語、 状況語などはそれが文頭に置かれても、あるいは文中に置かれても、あるいは文尾に置 かれても、それぞれの役割は異ならないのである。 この点、英語では原則として主語・動詞・補語の順になるのであるが、ポーランド語 ではそのようにはならず、語順は別の機能(話し手の意図、新たな情報は何か、等を示 す役割)を負っているのである。 イントネーションは語順と結びついており、口語においては極めて重要な役割を果た すが、これにはかなり難しい面も含んでいるし、文章語を中心として本書ではこれに関 しては最低限の規則のみに留める。 Ⅱ テーマとレーマ 1.ポーランド語において語順は、文法的形式的区分とは別のカテゴリーである。しか し、それによって語順の問題は複雑化している。なぜなら、ある意味で自由になった語 順を使って、話し手は文脈との関係、自分の意図、強調などを表現するからである。 例えば、Ojciec kupił książkę. 父は本を買った、という場合、発話意図を考えると、 「父は本を買った」という、父がした行為を伝えることか、「父が買ったのは本だ」と、 父が買った物を指すかのどちらかである。もし「本を買ったのは父だ」と言いたいなら、 Książkę kupił ojciec. となり、「(もらったのではなく)買ったのだ」と言いたいのな ら、 Ojciec książkę kupił. となる。 正誤が明確である単語の形態や構文規則に比較すると、語順は前後との関連、意図、 強調などによって相対的に微妙であり、主観的なものであるので、理論化・規則化する のは困難である。これらは例えば日本語における助詞、「は」、「が」の使い分けに類 似していると言えよう。 語順を考える時には、まず語結合内の語順と、文になった時の語順を区別しなければ ならない。前者での規則は単純である。例えば、一致定語の場合、形容詞定語は被限定 語である名詞の前に来るし、不一致定語の場合で、名詞の生格の場合には、被限定語の 後に来るなど、通常の語順は決まっている。そして、この語順は、通常は文中でも維持 される。 文の種類・語順・イントネーション 503 問題は後者である。主語と述語のどちらを先に置くべきか、規則が存在するのか、等 問題である。また、文法的に固定された語結合も、話し手の意図によって変形しうる。 例えば、 Ojciec kupił dużą książkę.「父は大部の本を買った。 」 という場合、 dużą książkę 「大部の本」という語順は、Książkę ojciec kupił dużą.「父が買った本は大部であった。」 というニュアンスでは異なった語順となるのである。 語順を決定する際に通常用いられる理論に、文の現実的区分、というものがある。こ れは文を、文の話題、文の発信者と受信者の間の広義の了解事項、既知の事項を等を示 す部分と、話題に関する実質的内容や新たな情報を等を示す部分に二分することをいう。 前者はテーマ(主題)、後者はレーマ(述部の核)と呼ばれる。話の中心はレーマであ る。文の成分はいずれも単独あるいは複合して、テーマにもレーマにもなり得る。また、 同一の文でも置かれた文脈によって、テーマとレーマの区分は異なってくる。すなわち、 この区別は意味論的なものである。 2.質問と回答 テーマとレーマが最も端的に現れ、従って正しい語順が明確になるのは、疑問文とそ れに対する回答である。疑問文では、文の中心が明確に示され、回答文はそれに対応し たものになる。 ① Co robił Nowak. ノヴァックは何をしていたか。 On pisał list. 彼は手紙を書いていた。 Pisał list. 手紙を書いていた。(省略文) ② Kto przyszedł? 誰が来たのか。 Nowak przyszedł. ノヴァックが来た。 Przyszedł Nowak. 来たのはノヴァックだ。 Nowak. ノヴァックだ。(省略文) この質問に対しては2つの回答があるが、同じ Nowak で答えるにしても、前者の回 答はテーマを表すものであり、後者はレーマを表すものと言える。ニュアンスとして前 者は既知の事項を示すものと考えられるが、後者は新たな情報を示すという側面がある からである。 疑問文に対する回答では、通常は聞かれていること(レーマ)以外はすべて了解され ていること(テーマ)になるので、レーマは文末に来る。① ② の最後の文のように省 略文ではレーマだけになる。 Ⅲ 主語と述語の語順 1.主語が一つの場合の語順と述語の関係 ① ロシア語の場合、主語と述語の語順は固定されたものではなく、置き換えることがで きたが、このことはポーランド語でも該当する。主語が文頭に置かれる語順の文は中立 の文で文体的特徴はない。一方、主語と述語の語順が入れ替わると重要な情報の伝達が 強調される。その際に、イントネーションが関係する。 ・主語(群)がテーマで述語(群)がレーマである場合、主語が前に来て、述語が後に 504 文の種類・語順・イントネーション 来る。 Nowak przyjechał. ノヴァックが到着した。 ・逆に述語(群)がテーマで、主語(群)がレーマの場合、主語は文末に来ることにな る。 Przyjechał Nowak. 到着したのはノヴァックだ。 Trwa akcja ratunkowa. 主語が akcja で述語が trwa (続いている)である。強調構 文である。 ② 主語・述語以外の文の二次成分を有する文でも語順の規則は同じである。 主語、述語がレーマであり、状況語がテーマの場合はテーマが後に来る。 2.主語が二つ以上の場合の語順と述語の関係 Ⅳ 合成述語の語順 1)受動構文の合成述語は「主語・連辞・受動形容分詞」の語順である。 2)定語を持つ構文では合成述語の語順を置き換えることができる。 3)未来時制の合成述語である連辞と不定詞の語順は、主語の位置によって置き換える ことができる。 4)相や話法の動詞と不定詞との結合文では、語順は固定し、不定詞は常に後ろに置か れる。 Ⅴ 否定の助詞 nie を伴う語順 1)否定文で否定の助詞 nie は述語の前に置かれるのが通常である。 Nowak nie przyjechał. ノヴァックは来なかった。 Syn nie jest lekarzem. 息子は医師ではない。 2)主語の前に否定の助詞が置かれる場合は、動作そのものが否定されるのではなく、 動作主を否定する。 Nie brat gra w tenisa, ale siostra. テニスをするのは兄ではなく、姉です。 3)否定代名詞や否定の語がある場合にも否定の助詞 nie が現れるが、nie はそれらの 後である。 Nikt nie przyszedł. 誰も来なかった。 Nikt nie doskonały. 誰も完璧ではない。 Nikt mnie nigdy nie odwiedza. 誰も決して私に会おうとしない。 Ⅵ 疑問の助詞 czy を伴う語順 疑問の助詞 czy は常に文頭に置かれる。 Czy Nowak przyjdzie? ノヴァックは来ますか? この疑問の助詞 czy は必ずしも必要はなく、特に口語では省略されることが多い。そ の際はイントネーションがその代わりをする。イントネーションの山は、レーマの単語 の力点部分に来て、文末では下がる。 文の種類・語順・イントネーション 505 Turyści nocowali w hotelu. 旅行者はホテルに泊まった。 Turyści nocowali w hotelu? ホテルに泊まったのは旅行者か。 Turyści nocowali w hotelu? 旅行者はホテルに泊まったのか。 Turyści nocowali w hotelu? 旅行者が泊まったのはホテルか。 Ⅶ 疑問詞 kto, co を伴う語順 物や人の名前に関する質問文では語順は固定している。 Co to jest? これは何ですか。 Kto to jest? これは誰ですか。 これらの場合、連辞は省略できる。Co to? Kto to? Ⅷ 疑問詞 gdzie, kiedy, dlaczego を伴う語順 これらの疑問詞を使った疑問文では、述語が主語の前に置かれることが多い。 Gdzie mieszka ojciec? 父はどこに住んでいますか。 Kiedy przyjdzie Nowak? ノヴァックはいつ来ますか。 Dlaczego pisze list Nowak? ノヴァックはなぜ手紙を書いているのですか。 Ⅸ 再帰代名詞 się の位置 再帰代名詞の się は原則として動詞の前に置かれる。しかし、文の最初に置かれるこ とはない。 Kot się myje. その猫は自分の身体を洗う。 Myję się. 私は自分の身体を洗う。 しかし、命令形では通常は動詞の後に置かれる。 Dzisiaj ucz się języka polskiego. 今日はポーランド語を学びなさい。 Ⅹ 仮定の助詞 by の位置 仮定の助詞 by は動詞から離れて用いられたり、他の語句に接合されるので、一定し ない。 1.動詞から離れる。通常は動詞に接合されるが、代名詞や固有名詞を強調する場合に は、動詞から離れると言うことである。 Ja bym pisał list dobrze. 私だったら、手紙をうまく書けるのに。 2.従属の接続詞がある場合には、その接続詞に接合する。 Gdybym miał czas, poszedłem go teatru. もし私に時間があれば、劇を見に行くのだ が。 ⅩⅠ 人称代名詞の位置 人称代名詞の短形は文頭には置かれない。また、文末にも置かれないが、短い文の場 合(特に2つの単語からなる場合)は文末に置かれる。 Szukam cię. 私は君を捜している。 506 文の種類・語順・イントネーション 再帰代名詞 się と共に用いられる場合、通常、się が他の代名詞の後ろに置かれる。 Ten pomysł bardzo mu się podobał. その考えは彼に大きくアピールした。 ⅩⅡ 補語の位置 1)補語は通常動詞の後ろに置かれる。 Nowak lubię ją. ノヴァックは彼女を愛している。 2)直接補語と間接補語がある場合には、間接補語が先行し、直接補語が後に来る。 Dałem mu książkę. 私は彼に本を与えた。 ⅩⅢ 定語の位置 1)形容詞的定語 ① 形容詞に関するものは形容詞の項を参照されたい。 ② 数詞、所有代名詞、指示代名詞は原則として名詞の前に置かれる。但し、単音節の指 示代名詞(例えば、ten この、や ów あの)は特に強調されない場合、しばしば名詞の 後ろに置かれることがある。 ⅩⅣ 付語の位置 付語は関係する名詞の格と数に一致することによって、当該名詞の説明を補うもので ある。これは名詞の後ろに置かれるのが原則である。 lekarz laryngolog 耳鼻科医 人名に関しては、名前が苗字の前に置かれる。 Donald Tusk 称号、地位、身分、職業等を表すものは固有名詞の前に置かれる prezydent Obama オバマ大統領 文の種類・語順・イントネーション 507 第3節 イントネーション ポーランド語はロシア語と同じく、それほど変調が強い言語ではない。しかし、文の 内容に応じてイントネーションがあることは否定できない。文には平叙文、疑問文、命 令文などがあるが、それぞれに応じてイントネーションは認められる。 1.平叙文 平叙文の場合、通常は文の最初はやや高いかあるいは中程度かであるが、文の終わり は低く抑える。しかし、強調する場合には最後の単語のアクセントがある部分で高くす るが、最後は低く抑える。並立複文などで対比する場合には、対比する単語が含まれる 最初の文の終わりを高くし、後の文の終わりを低く抑えて対比をある程度はっきり示す。 2.選択疑問文 この場合は、文の最初は中程度にして、文の終わり頃に少し低くし、最後を高く上げ る。 3.補足疑問文 この場合は、文の最初の疑問詞はやや高くし、残りの部分はやや低く抑える。しかし、 強調する場合には最後の単語のアクセントのある部分をやや高くし、最後を低く抑える。 重要なことは、選択疑問文と異なり、決して最後を高くしてはいけないということであ る。 4.命令文 通常は、文の最初は高くして、少しずつ低くしていく。しかし、選択的に平叙文で強 調する場合と同じイントネーションを取る場合もある。すなわち、中程度の高さで開始 し、最後の単語のアクセントがある部分で高くし、最後を低く抑えるのである。 5.付加疑問符を付ける場合 ポーランド語において時々平叙文のあとに付加疑問符を付ける場合がある。それには tak? nie? prawda? nieprawdaż? co? 等がある。これらを付加した場合のイントネーシ ョンは平叙文の最後は低くし、これらの付加疑問符の部分で少し高くする。 508 単文の構成 第4章 単文の構成 第1節 文の成分・文外詞 単文を構成する成分には大きく分けて、文の一次成分と二次成分があり、また、これ とは別に文外詞というものがある。そのうち、前2者は文の成分であり、文肢という概 念に入るものであるが、後者はそれとは別のものである。そして、文の一次成分は文の 中心であり、二次成分はそれを補足するものである。文の一次成分には、主語と述語が、 文の二次成分には、補語と状況語と定語と付語が該当する。文外詞は呼びかけや間投詞 や助詞や挿入語が該当する。 例えば、Tak, wczoraj nieznani stdenty rzucili butelkę z substancją zapalającą w kierunku chińskiej ambasady w Tokio. 「はい、昨日特定できない数名の学生が、東京 の中国大使館の方向に向けて火炎瓶を投げていました。」、という文の場合、主語とな るのは、studenty であり、述語となるのは、rzucili であり、補語は butelkę であり、 状況語は、wczoraj と w kierunku と w Tokio であり、文外詞は tak である。そして、 定語は、主語に係るのが nieznani であり、補語に係るのが z substancją zapalającą で あり、状況語の一部である kierunku に係るのが chińskiej ambasady である。さらに、 分析すれば、zapalającą は substancją に係る定語であり、chińskiej は ambasady に 係る定語の関係になっている。 Ⅰ 主語 1.まず、主語は主格に立つ名詞、代名詞によって表現される。また、それ以外の品詞 でも、名詞あるいは代名詞の機能を果たす場合には主語になることができる。形容詞、 形容分詞、数詞、副詞、前置詞句、不定詞でもこのような機能を果たす場合には主語に なることができるのである。さらに、別章(第5章 複文の構成)で述べるように従属節 でも主語になることができる。 1)不定詞が主語となる場合 Czytać jest przyjemnie. 読書は楽しい。 2)前置詞句が主語となる場合 Na domu ni oznacza w domu. 「na domu」というのは「 w domu」を意味しない。 3)数詞が主語となる場合 Pięć jest większe niż cztery. 5は4より大きい。 4)マークが主語となる場合 „I” jest spójnikiem. 「 i 」は接続詞である。 5)副詞が主語となる場合 Dziś jest wtorek. 今日は木曜日である。 単文の構成 509 2.もっとも、ロシア語と同じく主語は必ず必要ではなく、主語のない文も見られる。 主語のない文には3種類があり、一つは文の中に主語が登場しない場合であり、一つは 述語が主語を要求しない場合である。また、主語はあるが、それが主格ではなく、斜格 (主格以外の格)で表す文もある。 1)主語が登場しない場合 これには大きく分けて6つの場合を分けることができる。 ① 直接法や仮定法の場合で、主語が1人称、2人称の場合である。この場合は、動詞の 活用形で主語が何であるか、分かるため、あえて主語を登場させないのである。例えば、 Nazywam się Henryk. 私の名前はヘンリーです、と言い、ja は登場させないのである。 しかし、強調する時には ja は省略しない。A ja nazywam się Piotr. そして、私はペ ーターです、と ja が登場する。また、対比させる時は省略しないことが多い。例えば、 次の例文を比較すればその使い方がもっと分かるであろう。 Jesteś Amerykaninem? あなたはアメリカ人ですか。 Tak, jestem Amerykaninem. はい、私はアメリカ人です。 Nie, John jest Amerykaninem, a ja jestem Anglikiem. いいえ、ジョーンはアメリカ 人ですが、一方、私はイギリス人です。 ※ 第二文と第三文は、第一文に対する答えとなっている。そして、第二文は単に自分が アメリカ人であることを言うに過ぎないが、第三文はジョーンとの対比において自分が アメリカ人ではなく、イギリス人だと言うことを強調しているのである。 ② 過去の場合には3人称の人称代名詞も省略する。 これは過去形においては語尾で男性 か、中性か、女性か、等が分かるからである。 ③ 命令法の場合である。2人称単数、2人称複数及び1人称複数では主語を登場させな い。しかし、3人称単数、3人称複数に関する命令法では主語を必ず登場させる。 ④ 無人称構文の場合である。この場合は通常は動詞は再帰動詞が多いが、そうでない場 合もある。 Tu mówi się po polsku. ここではポーランド語が話される。 ⑤ 無人称過去形である no/to 構文を使う場合である。 Krytykowano styl jego pracy. 彼の仕事ぶりは批判された。 O tym wypadku pisano w gazecie. その事故について新聞に書かれてあった。 Aresztowano kilkanaście osób. 10数人が逮捕された。 ⑥ 主語を明示しない場合 これはロシア語の不定人称文に類似しているが、構造上主語がなく、述語の動詞が3 人称複数形を取るものである。これは話し手の関心が述語の表す動作そのものに向けら れるために、主語、すなわち誰がその動作を行うのかが、不明または重要ではなく、話 し手が明示しない時に広く用いられる。 W czwartek wypłacają pensję. 木曜日に給料が支払われる。 2)述語が主語を要求しない場合 510 単文の構成 これには2つの場合を分けることができる。 ① 天候、一日の移り変わり、災害、感覚等を表す場合 Padało. 雨が降った。 Się ściamniło. 暗くなった。 Pali się! 火事だ。 Swędzi mnie za uchem. 私は耳がかゆい。 ② 補語あるいは副詞句だけが必要で、主語に相当するものを与格で表す場合 Dobrze się mi powodzi. 私は元気です。 Szumi mu w uszach. 彼は耳鳴りがする。 3)論理的主語を生格で表す場合 この場合の述語は現在形は単数3人称となり、過去形は単数中性3人称となる。これ には3つの場合を分けることができる。 ① 数の減少や増加の意味、あるいは数量、不足の量等を表す語句と結びついた場合 Brakuje (mu) czasu. (彼には)時間がない。 Brakuje (mi) pieniędzy. (私には)金がない。 Ubywa mu sił. 彼の力が弱まる( sił は siła 力、の複数生格)。 ② 名詞が量を表す語と結びついた場合、その名詞は生格で表す。その場合、可算名詞の 場合は複数生格で、不可算名詞の場合は単数生格で表す。 Dużo osób chodził. たくさんの人々が歩いていた。 Tłum ludzi chodził. 人々の一つの群れが歩いていた。 Zostało mało czasu. ほとんど時間が残っていなかった。 Dużo miejsca jest. 多くのスペースがある。 ③ 否定生格の場合 肯定文で主語であったものは、否定文になると生格で表す。 Stołu w pokoju nie ma. 部屋にはテーブルがない。 Ojcieca nie było w domu. 父は部屋にはいなかった。 4)論理的主語を与格で表す場合 Szumi mi w uszach. 私の耳はぶんぶんうなる。 5)論理的主語を対格で表す場合 Swędzi mnie. 私はかゆい。 6)論理的主語を造格で表す場合 Drogę zawiało śniegiem. 雪が道路を覆い隠した。 Ⅱ 述語 主語の動作や状態を表す動詞からなり、文において最も重要な役割を果たす文成分で ある。述語は定動詞形態と述語内容詞から構成されるものであるが、述語内容詞がない 文もある。ほぼすべての文で定動詞形態はあると言えるが、例外的に定動詞形態を欠く 単文の構成 511 文も見られる。ただ、これは定動詞形態が省略されていると考えるべきであろう。例え ば、Deszcz. 雨が降っている、という文の場合、本来は Pada deszcz. という文であり、 Pada が省略されているのである。 1.単純的述語 これは一つの定動詞形態からなるものである。 述語はまず単項述語と多項述語に分けられる。単項述語とは一つの語で表される述語 であり、それには現在形、過去形、完了体で表す未来形、no/to 構造文がある。 多項述語とは複合的時制文、話法の助動詞、相に関係する動詞、by 構造文、再帰動 詞を使った構文あるいは受動構文に見られるものである。 1)単項述語(単純動詞述語) これは単に単一の動詞の変化形のみからなる述語である。 Adam czyta książkę. アダムは本を読む。 Adam czytał książkę. アダムは本を読んだ。 Adam przeczyta książkę. アダムは本を読んでしまうだろう。 Wczoraj napisano wszystkie listy. 昨日すべての手紙が書かれた(これは主語のない 文である。)。 2)多項述語(合成動詞述語) これは2つの要素から成り、最初の要素は動詞の変化形であり、2番目の要素は不定 詞や過去形や受動形容分詞がついた形のものである。 ① 複合的時制文 Adam będzie czytał/czytać książkę. アダムは本を読むだろう。 ② 話法の助動詞 これに関係する動詞には、mieć ~すべきである、musieć ~しなければならない、 móc ~できる、potrafić ~する必要がある、chcieć ~したい、zechcieć 進んで~する、 raczyć ~してくれる、woleć ~をより好む、等がある。 Adam musi czytać książkę. アダムは本を読まなければならない。 ③ by 構造文 Chciałbym rozmawiać z panem. あなたと話がしたいのですが。 ④ 再帰動詞を使った構文 Tę książkę czyta się lekko. この本は簡単に読める(これは主語のない文である。)。 ⑤ 受動構文 List został napisany. 手紙は書かれた。 Książka jest czytana przez jego. その本は彼によって読まれている。 ※ 動作相に関係する動詞(開始、終了、継続を表す動詞)、例えば zaczynać, zacząć, kończyć, skończyć, przestawać, przestać 等、に付加する不定詞についてはここに含め る見解もあるが、こられは補語を取る動詞としてⅢの補語の項に記載する。これらの動 詞に続く不定詞は補語と考えるべきである。なぜなら、これらの動詞(zaczynać, zacząć, kończyć, skończyć, przestawać, przestać 等)は付加する不定詞を支配していると言え るからである。 512 単文の構成 2.複合的述語 複合的述語とは一つの定動詞形態すなわちコプラ(連辞)と一つの非動詞の部分すな わち述語内容詞から構成されるものである。 1)コプラ(つなぎの動詞) ① コプラとしては次の様な動詞が挙げられる。 być, nazywać się, nazwać się, pozostawać, pozostać, przezywać, przezwać, stawać się, stać się, On jest ojcem. 彼は父である。 Nazywam się Anna. 私はアンナと言います。 Jak się pani nazywa? あなたのお名前は何ですか。 Kurs EUR/PLN pozostawa spokoiny. ユーロとポーランド通貨の為替レートは安定 している(穏やかなままでいる。)。 Wolność będzie stawać się pustym słowem. 自由は空虚な言葉になる。 その他のコプラとしては、czuć się/ poczuć się ~と感じる、okazywać się/ okazać się ~と分かる、robić się/ zrobić się ~になる、wydawać się / wydać się ~の様に見える、 zdawać się / zdać się ~の様に見える、stanowić を形成する、wyglądać ~の様に見え る、等がある。 Czuję się dobrze. 気分爽快だ。 Porwanie okazał się pomyłką. 誘拐は間違いだと分かった。 Maria robi się coraz bardziej ponętna. マリアはますます魅惑的になる。 Wydała się zmęczona. 彼女は疲れているように見えた。 On wygląda bardzo młodo. 彼は非常に若く見える。 ② 口語ではコプラは省略されることがある。その場合には、oto や to がコプラの役割 を担う。 (「これはAである」といった類の文であるが、ロシア語においては Это книга. これは本である、と表す文であるが、ポーランド語においては To jest książka. と表す。 ロシア語ともポーランド語とも「これ」及びAに該当するものはいずれも主格である。 そして、現在形の場合にはロシア語は英語の be 動詞に該当するものは省略するし、ポ ーランド語においても省略する。しかし、これが過去や未来形になるとロシア語、ポー ランド語とも省略しない。) ア、To książka それは本である。( To は主語であり、コプラの役割を担っている。) Oto nasza kuchnia. ここは我々の台所です。( Oto は主語であり、コプラの役割を 担っている。) イ、等位型の文( AはBである)でもコプラは省略される。 Ten film to komedia. この映画はコメディーです。( to はコプラの役割を担ってい る。ちなみに主語は Ten film である。) ウ、しかし、等位型の文でも現在形以外はコプラは省略できない。 Mikołaj Kopernik był to słynny polski astronom. ミコワイ・コペルニクは有名なポ ーランドの天文学者であった。 単文の構成 513 ③ これは何ですか、これは誰ですか、を表す文では Co to jest? Kto to jest? となるが、 この場合も Co to? Kto to? のように動詞は省略しても良く、to がコプラとしての役割 を担う。そして、注意すべきはポーランド語の場合、前者の形( jest を使用した文) でも後者の形( jest を使用しない文)でも対象の複数、単数、近い、遠い等に関係な く使われることである。 ④ 無人称述語を使う場合(主語がない文)はコプラは省略されるべきである。 Pora wstawać. 起きる時間である。 Trzeba słuchać rodziców. 両親の言うことを聞く必要がある。 2)述語内容詞 述語内容詞は基本的には名詞は造格で、形容詞(形容分詞を含めて)は主格で表され る。また、副詞や不定詞の場合もあるし、前置詞句である場合もある。 ① 名詞的述語内容詞 ア、この場合は、基本的には造格で表される。 Moja siostra była nauczycielką. 私の妹は学校の教師だった。 Nowy student jest Rosjaninem. 新しい学生はロシア人である。 主語と述語は数の点では、一致する(すなわち単数形は単数形と、複数形は複数形と) が、格は一致しないのである。 Moi synowie zostaną lekarzami. 私の息子たちは医師になった。 この場合、主語は複数主格であり、述語は複数造格となっているように、数の点では 一致しているが、格が異なっているのである。 イ、主語が男性であるならば、述語内容詞も男性形、主語が女性であるならば、述語内 容詞も女性形であるのが、通常である。 On jest studentem. Ona jest studentką. しかし、主語が女性であっても、男性形を使う場合もある。例えば、Ona jest inżynierem. である。 ウ、後述のように形容詞の場合は、原則として主格になるが、その形容詞が定語として 名詞を修飾する場合には、その形容詞はその名詞と数、性、格が一致するので、造格と なる。 Adam jest zdolnym lekarzem. アダムは有能な医師である。 Maria jest dobrą kucharką. マリアは良い料理人である。 Maria jest dobrym inżynierem. マリアは良い技術者である。 エ、しかし、名詞の場合でも軽蔑するような場合には主格を使うし、また、固有名詞の 場合で自分を表す場合には主格を使う。nazywać się ~と呼ばれる、という場合も主格 となる。 On jest marnotrawca. 彼は浪費家だ。 Jestem Jaruzelski. 僕はヤルゼルスキーです。 Nazywam się Jaruzelski. 僕の名前はヤルゼルスキーです(僕はヤルゼルスキーと言 います。)。 オ、また、to あるいは oto 構造文の場合は主格で表される。 514 単文の構成 To jest nasz dyrektor. こちらはわれわれのマネージャーだ。 To są książki. これらは本である。 Oto jest mapa japońska. これは日本の地図である。 カ、コプラを省略する場合も主格となる。 Maria to zdolna lekarka. マリアは優秀な医師だ。 キ、co, coś, nic の主格と、形容詞の生格で表される名詞的内容詞がある。この場合、し ばしば to が使われるが、to は主語となる。 To było coś nowego. それは新しいことだった( To は主語となる)。 To coś nowego. それは新しいことである( To はコプラの役割を果たす)。 ク、所有代名詞が使われる場合にも主格となる。 Ta książka była moja. その本は私の物だった。 ② 形容詞的述語内容詞 ア、この場合は、基本的に主格で表される。 Śnieg jest biały. 雪は白い。 イ、数と性は主語に一致する。上の例で śnieg は単数男性なので biały は単数男性形と なっている。 (その他の例:Zadanie jest trudne. 宿題は難しい。zadanie は単数中性なので trudne は単数中性形となっている。 Dziewczyniki są małe. 少女達は小さい。 ウ、主語が数量を表す名詞句の場合には形容詞は複数生格となる。 Wiele zeszytów było brudnych. 多くのノートが汚れていた。 Wiele moich koleżanek jest pięknych. 私の友人の多くは美しい。 エ、コプラは省略されることもある。 Wstęp wolny. 入場は自由。 オ、しかし、感情を含んだ表現をする場合には、造格で表される。 Było się kiedyś bogatym i młodym. かつては人は裕福で若かった。 カ、名詞と並べる場合も形容詞は造格となる。 On nie jest ani kawalerem, ani młodym. 彼は独身でもないし、若くもない。 キ、「~の中で~を」表す場合も造格となる。 Płetwal błękitny jest największym ze zwierząt. シロナガスクジラは動物の中で最 も大きい。 ク、主語と反対の意味を表す語に言及する場合も造格となる。 Jej długie włosy stały się krótką. 彼女の長い髪は短くなった。 ケ、wydawać się や zdawać się がコプラとなる時も形容詞は造格を取る。 Miasto wydawało się wymarłym. 町は荒涼としたように見えた。 コ、また、不定詞の być、副動詞の będąc、動名詞の bycie、無人称動詞の być の用法 の後は、造格を取る。 Bądąc zajętym, nie można długo spać. 忙しいと、人は長い時間寝ることができない。 サ、さらに、以前はある種の動詞の後には造格で表すこともあった。例えば、okazać się 単文の構成 515 の場合である。On okazał się starym znajomym. 彼は古い知り合いであった。 ③ 副詞的述語内容詞 これらは主語のない文や、主語があってもその主語が不定詞あるいは副詞の場合にも 登場する。 Temperatura jest zimno. 気温は冷たい。(主語が名詞) Robi się cięplo. 暖かくなる。(主語がない文) Po deszczu stało się ciępło. 雨の後、暖かくなった。(主語がない文) Jutro będzie zimno. 明日は寒いだろう。(主語が副詞) Czytać jest przyjemnie. 読むこと(読書)は心地よい。(主語が不定詞の czytać ) これらの場合、動詞は省略することが多い。 Jutro zimno. 明日は寒い。 ④ 前置詞句による述語内容詞 Ten przedział jest dla palących. この区画は喫煙者のためのものである。 Lekarze są teraz w cinie. こんにちでは医師が非常に必要とされている。 ⑤ 比喩句による述語内容詞 Jej oczy są jak gwiazdy. 彼女の目は星のようだ。 ⑥ 場所に関する状況語による述語内容詞 Gazeta jest na stole. 新聞はテーブルの上にある。 Przystanek autobusowy jest przed bankiem. パスの停留所は銀行の前にある。 ⑦ 時に関する状況語による述語内容詞 Kokacja jest o szóstej. 夕食は6時です。 3.述語の省略 Jesień! 秋だ!Cisza. 静かだ。Deszcz. 雨が降っている。 これらはそれぞれ、Przyszła jesień! Jest cisza. Pada deszcz. の動詞が省略されたもの と言える。これらは文脈で明らかとなるであろう。 4.主語と述語の関係 1)主語と述語は人称、数が一致するのが原則である。 Córka czytała książkę. 娘は本を読んでいた。 Córki czytały książki. 娘達は本を読んでいた。 Rajstopy są czarne. タイツは黒い。 Ja jestem niski. 私は背が低い Ty jesteś niski. あなたは背が低い。 My jesteśmy niskie. 私たち(全員女性)は背が低い。 2)主語が複合している場合には少し注意が必要である。 ① 主語が接続詞の i や oraz で結合された場合には述語は複数形となる。 516 単文の構成 Brat i siostra śpiewają. 弟と妹は歌っている。 ② ani ・・・, ani ・・・ で結合された場合にも述語は複数形となるのが原則である。 Ani brat, ani siostra nie śpiewają. 弟と妹も歌っていない。 ③ lub または、で結合された場合にも複数形となるのが原則である。 Adam lub Jan zrobili meble. アダムかヤンのどちらかが家具を作った。 ④ z + 造格の形が主語で文頭にある場合、述語は複数になるときと単数になる時がある。 そして、複数になる時は主語となる2つ以上のものが対等の関係や一つを強調しない場 合である。 Ojciec z synem idą na spacer. 父と息子は散歩している。(これに対して、単数の場 合は、Ojciec z synem idzie na spacer. 父は息子を連れて散歩している、となり、ニュ アンスが異なるのである。) 3)次の場合には常に述語は単数形となる。 ① 主語が2人以上考えられるが、 1人を強調する場合や階層があったりして主従の関係 にある場合 Prezydent z żoną przyjechał do Warszawy. 大統領は妻を連れてワルシャワに着い た。 Premier Japonii z ministerem spraw zagranicznych brał udział na szczycie. 日本 の首相は外部大臣を引き連れてサミットに参加した。 ② 主語が集合体である場合 Większość Polaków dobrze ocenia Kościół. 大部分のポーランド人は教会を良いと評 価している。 Tam pracuje wielu lekarzy. そこではたくさんの医師が働いている。 あとは、数詞の章を参照されたい。 ③ 離接的接続詞の一つである albo で結ばれた語が主語になる場合 Teresa albo Adam zapłaciła za kolację. テレサかアダムのどちらかが夕食代を払っ た。 Adam albo Teresa zapłacił za kolację. アダムかテレサのどちらかが夕食代を払っ た。 この場合、動詞の性は最初のものに一致する。 ④ 不存在を表す nie ma と結びつく場合は主語が複数でも動詞は単数3人称となる。 Córki nie ma w domu. 娘は家にいない。 Córek nie ma w domu. 娘達は家にいない。 過去の場合は nie było となり、動詞は常に(論理的主語が単数であろうが、複数であろ うが)単数3人称中性形である。 Córki nie było w domu. 娘は家にいなかった。 Córek nie było w domu. 娘達は家にいなかった。 4)動詞の過去形や複合未来形や仮定法では動詞の過去基本形が用いられる。過去基本 単文の構成 517 形は単数では人称により区別されるのは言うまでもないが、さらに主語の性により区別 される。また、複数では男性人間形と非男性人間形により区別される。そこで、一番難 しいのは男性人間形か非男性人間形かの区別である。 ① 原則として一人でも男性の人間が含まれていれば、男性人間形が使われる。従って、 非男性人間形が使われるのは、主語がすべて女性の場合、すべて人間以外の場合、女性 と人間以外の組み合わせの場合が考えられる。 ② しかし、 例外として男性の人間が含まれていない場合でも男性人間形が使われる場合 がある。それは、女性と人間以外の動物の組み合わせの場合である。その場合、女性が 複数でも男性人間形が使われる。また、主語が女性と子供の組み合わせの場合も男性人 間形が使われる。 Maria i pies poszli na spacer. マリアとその飼い犬は散歩に行った。 Nauczycielki i pies poszli na spacer. 女性教師達と犬は散歩に行った。 Maria i jej dziecko poszli razem na spacer. マリアと子供は散歩に行っ た。 5)付語の場合、主要語となる名詞の性・数は影響されないのが原則である。 Wojna i pokój, powieść historyczna rosyjskiego pisarza Lwa Tołstoja, są wielkim utworem. ロシアの作家レフ・トルストイによって書かれた歴史小説の「戦争と平 和」は偉大な作品である。(この場合、powieść は女性名詞であるが、その付語で ある woina i pokój が複数であることには影響されず、そのまま単数である。しか し、動詞は付語となる名詞と関係し、są と複数である。従って、この場合は、付 語によって主となる名詞の性・数は影響を受けないと言える。) ※ 称号や肩書きの場合による付語の場合にも、同様に影響を受けない。 Sekretarz stanu USA Hillary Clinton rozpoczęła wizytę w Pekinie. アメリカ合衆 国国務長官のヒラリー・クリントンは北京への訪問を開始した。 (この場合、 Hillary Clinton は女性であるので、主要語である Sekretarz stanu USA が男性名詞であ っても影響を受けず、動詞は rozpoczęła と女性形になっているのである。ちなみ に、sekretarz は本来は秘書を表す単語であり、女性秘書は女性形である sekretarka となるのであるが、長官を表す場合にはそれが女性であっても sekretarz という男性形が使用される。) Ⅲ 補語 補語とは、主として述語が表す動作の対象となるもの、または述語を補完するもので ある。補語はポーランド語の場合は、ロシア語と同じく名詞及び名詞に準ずる語(形容 詞、代名詞、数詞、語結合)、副詞、動詞不定形によって表される。名詞及び名詞に準 ずる語は生格、与格、対格、造格あるいは前置詞句で表現される。補語を持つ述語は動 詞とは限らず、形容詞、名詞または語結合等もあり得る。したがって、補語には動詞の 補語、形容詞の補語、名詞の補語等があることになる。 動詞に付く補語には直接補語と間接補語がある。その区別はかなり難しい面を含んで 518 単文の構成 いるが、本書は次の様に考えて区別する。 まず、前置詞付きの補語はすべて間接補語となり、直接補語にはなり得ない。 次に、前置詞なしの場合は、その補語が対格の場合には間接補語にはなり得ず、常に 直接補語となる。問題は、補語が生格、与格、造格の場合である。直接補語になるか間 接補語になるかは当該補語が主語として受動態を形成できるかどうかで決定すべきで ある。すなわち、受動態を形成できる場合はそれは直接補語であり、受動態を形成でき ない場合には間接補語となるのである。 ちなみに動詞の種類として直接他動詞、間接他動詞、中間動詞、自動詞を区別できる が(動詞の種類の項参照)、直接他動詞は当該補語が主語として受動態を形成できるも のであり、間接他動詞は当該補語が主語として受動態を形成できないものと一応言える。 ただ、間接他動詞となるのは間接補語を取るものだけであり、直接補語を取るものは原 則として直接他動詞となる。そして、中間動詞は対格補語を取るが、その補語が主語と して受動態を形成できないものである。また、自動詞は補語を取ることがなく、主語と 述語と状況語だけで構成されるものをいう。 1.直接補語 1)序論 ロシア語と同じく述語が補語の格を決定する。ただ、述語である動詞によっては補語 を必要としないものもあるし、補語が必要的なものもあるし、選択的なものもある。例 えば、spać 寝る、という動詞の場合は補語を必要としない。一方、mieć 持つ、とい う動詞の場合は常に補語を必要とする。また、czytać の場合は補語を必要とする場合も あるし、必要としない場合もある。例えば、On czyta. 彼は読書する、の場合は補語は ないし、On czyta książkę. 彼は本を読む、の場合は補語があるのである。 補語には直接補語、間接補語、形容詞・名詞に付く補語、その他、がある。直接補語 か間接補語かは、直接補語の場合は受動態において主語になりうるが(もっとも、前述 したように中間動詞の場合には直接補語として対格補語を取るが、それは受動態におい て主語にはなり得ない。)、間接補語はそれが不可能であることにより区別できる。直 接補語になるのは対格が原則であるが、ロシア語と同様、生格、造格も動詞によっては 直接補語になり得る。形容詞・名詞に付く補語のように動詞以外に付く補語には直接、 間接の区別はない。 2)直接補語を取る動詞の種類 ① 対格を直接補語に取る動詞の例 On czyta książkę. 彼は本を読む 対格は直接補語の典型であり、このような動詞には枚挙に暇がない。 ② 生格を直接補語に取る動詞の例 Armia broni miasta. 軍隊はその町を守る。受動態では、 Miasto jest bronione przez armię.その町は軍隊によって守られる、となる。 ③ 造格を直接補語に取る動詞の例 単文の構成 519 Dawniej król rządził państwem. 以前、王がその国を支配していた。受動態では、 Dawniej państwo było rządzone przez króla. 以前、その国は王によって支配されて いた。 ④ 直接補語と間接補語の両方を取る動詞もある。この場合は、直接補語は対格であり、 間接補語は与格であるのが原則である。 Ona dała klientowi kwit. 彼女は客に花を与えた。受動態では、 Kwit był dany klientowi przez ją. 花は彼女によって客に与えられた。 On zwrócił koledze pieniądze. 彼は友人に借金を返した。受動態では、 Pieniądze zostały zwrócone koledze przez go. 借金は彼によって友人に返された。 また、直接補語は対格で、間接補語が生格である動詞もある。 Adam uczy ucznia matematyki. アダムは生徒に数学を教えている。 一方、直接補語は対格で、間接補語が造格である動詞もある。 それには minować 指名する、wybrać 選ぶ、nazywać 名付ける、等がある。 Nazywałem go leniuchem. 私は彼を怠け者と呼んだ。 3)個々の動詞の詳細 ① 対格を直接補語に取る動詞 これは最も多く、例を挙げるのに枚挙に暇がない。例えば、Nauczyciel chwalił ucznia. 教師は生徒を褒めた、である。 元来、自動詞であった動詞に接頭辞を付加すると、対格を直接補語に取る動詞が形成 されることがある。これはロシア語でも見られたことである。例えば、служить に обを付加し、обслужить になると対格を直接補語に取る動詞になったのである。ポーラ ンド語では例えば、 służyć サービスする、に ob- を付加すると obsłużyć gościa 客に サービスする、となる。その他の接頭辞としては prze- があり、spać 寝る、に prze- を 付加すると przespać niedzielę 日曜日を寝て過ごす、と言う意味になる。 ア、対格補語になるのは、まず、名詞・名詞句である。 Piotr kupił drogą książkę. ペーターは高い本を買った、の drogą książkę である。 イ、次に、代名詞である。 Piotr lubi ją. ペーターは彼女を愛している、の ją である。 ウ、次に、従属節である。詳細は複文の項を参照されたい。 Chciał, żeby następnego dnia do niego przyszedła. 彼は次の日に彼女のところに来 るのを欲した。 エ、次に、動詞の不定詞の場合である。 On zaczał uczyć się języka angielskiego. 彼は英語を学び始めた。 しかし、これらの動詞も次のような場合には直接補語が生格になる。 ② 生格が直接補語になる場合 ア、否定文の場合 On nie posiada samochodu. 彼は自動車を持っていない。(肯定文では、On posiada samochód. 彼は自動車を持っている、となる。) このことは、主動詞ではなく、助動詞を否定する場合も当てはまる。例えば、Nie mogę 520 単文の構成 kupić tego samochodu. 私はその車を買うことができない、である。 イ、当該動詞が直接補語を否定する動詞と実質的に同意義を有する場合 例えば、uniknąć ~を避ける、という動詞の場合、nie otrzymać とほぼ同義であり、 nie otrzymać の後は否定生格が続くのと同じく、uniknąć の後も直接補語として生 格が続くのである。 ウ、部分生格の場合 直接補語を取る動詞が、補語として全体の中の一部を指す場合には対象は生格となる。 Zjadła sera, który jest w lodówce. 彼女は冷蔵庫にあるチーズを食べた(冷蔵庫に あるチーズの一部を)。 しかし、Zjadła ser, który jest w lodówce. は、彼女は冷蔵庫にあるチーズを全部食べ た、ということになる。 ※ 注意すべきは、上のことが当てはまるのは完了体動詞だけであり、不完了体動詞の場 合は常に対格が使われることである。従って、kupić jabłka や kupić jabłek というこ とは言えるが、kupować jabłek とは言えない。( jabłka は jabłko 「リンゴ」の複数 対格であり、jabłek は複数生格である。) エ、一時的あるいは短時間の行為を表す場合 Pożycz mi ołówka. 僕に(与格)ちょっと鉛筆を貸して。 Podaj mi pilota od telewizora. ちょっとテレビのリモコンをくれ。 Daj mi długopisu. 僕にちょっとボールペンを取ってくれ。 オ、接頭辞として na-, do- が付いた動詞。付け加える場合に使われる動詞である。 Dołożył drew do ognia. 彼は木に火を加えた。 Nazbierałem jagód 私はベリーをつみ取った。 Dolej mi herbaty. 僕に紅茶を注いで。 nadużyć 濫用する nadużyć alkoholu アルコールを多飲する dolać śmientanki do herbaty 紅茶にクリームを注ぐ カ、願望、請求、禁止、接触、要望等を表す動詞と共に使われる場合 życzyć ~を欲する、pragnąć ~を望む・~を欲する、potrzebować ~が必要である、 szukać ~を探す、żądać ~を求める、zabraniać ~を禁止する、等。 これらの動詞については、第2節 格の用法、を参照されたい。 キ、濫用、利用、使用等を表す動詞と共に使われる場合 użyć 利用する、użyć przemocy 暴力を使う、等。 これらの動詞については、第2節 格の用法を参照されたい。 ケ、注意すべきは、対格を取る場合もあるし、生格を取る動詞もあるということである。 その場合には意味を異にするのが通常である。例えば、dotknąć(完了体)dotykać(不 完了体) の場合、「触る・接触する」、という意味の場合には、生格を取るが、「傷つ ける」、という場合には、対格を取る。 Adam dotknął mi czoła. アダムは私の額に触った(生格)。※ 尚、mi は与格である。 Adam dotyka butelki. アダムは瓶を触っている。 Adam dotknął ją. アダムは彼女を傷つけた(対格)。 単文の構成 521 Bardzo mnie dotknęły twoje słowa. あんたの言葉が私を非常に傷つけた。 ③ 造格を直接補語に取る動詞 第2節 格の用法を参照されたい。 2.間接補語 これには前置詞が付かないものと前置詞が付くものがある。前者は、主として与格で 表されるが、生格、造格で表されるものもある。しかし、対格で表されるものはない。 1)前置詞が付かないもの ① 生格の場合 この場合の述語は間接他動詞である。 doczekać 待つ、życzyć ~を欲する、pragnąć ~を望む・~を欲する、potrzebować ~ が必要である、szukać ~を探す、słuchać 聞く、等。 ※ 注意すべき点は、例えば、Nowak słucha rodziców. という場合、rodziców は rodzice 両親の、複数生格であるが、Rodzice są sluchani prez Nowaka. とは言えな い。なぜなら、能動文は「ノヴァックは両親の言うことを聞く」、であるが、受動文 の「両親はノヴァックによって言うことを聞かされる」、という文は成立しないから である。従って、この場合の rodziców は間接補語になる。もっとも、注意すべきは słuchać の補語は常に間接補語になるわけではなく、直接補語になる場合もある。例 えば、Nowak słucha muzyki. の場合、受動文にすると Muzyka jest słuchana przes Nowaka. となるが、この文は成立する。従って、この場合の muzyki は直接補語に なるのである。結局、この動詞は人を直接補語に取ることができるが、物を直接補語 に取ることはできないということである。 間接補語と生格との関係が問題となる動詞に uczyć, uczyć się, nauczyć, wykładać がある。 Nowak uczy syna. ノヴァックは息子を教える。 Nowak uczy muzyki. ノヴァックは音楽を教える。 Nowak uczy syna muzyki. ノヴァックは息子に音楽を教える。 Nowak uczy się muzyki. ノヴァックは音楽を習う。 Nowak naucza muzyki. ノヴァックは音楽を教える。 Nowak naucza syna muzyki. ノヴァックは息子に音楽を教える。 Nowak wykłada synowi muzykę. ノヴァックは息子に音楽を講義する。 上の例から分かるように、uczyć の場合は直接補語として対格を取り、その直接補語 は人である。一方、物の場合にはそれは間接補語であり、生格を取る。従って、受動態 においては物は主語となり得ない。uczyć się の場合には物しか補語にはなり得ない(間 接補語である)。 一方、nauczyć の場合には、物は直接補語となり、生格である。従って、受動態にお いて物は主語となりうる。人に関しては対格であり、これも受動態において主語となり うる。動詞としては直接他動詞であるが、補語を2つ取ることができ、人は対格であり、 物は生格となるのである。そして、さらに注意すべきは補語を2つ取る場合には 522 単文の構成 nauczyć であっても受動態において物は主語となり得ない。要するに、nauczyć におい て物は主語となりうる。しかし、補語を二つ取る場合には物は主語とはなり得ないので ある。 尚、生格とは関係がないが、wykładać の場合には、典型的な2つの補語を取る動詞 であり、直接補語は物であり対格に、間接補語は人であり与格となる。従って、受動態 において物は主語になりうるが、人は主語になり得ない。 ② 与格の場合 この場合の述語は直接他動詞のことが多い。 しかも、 2つの補語を取り、 間接補語が与格となる。そして、もう一方は直接補語であり、典型的には対格を取る。 与格となるのは利益を受ける対象や逆に不利益を受ける対象である。また、間接他動詞 の場合には補語は1つしかなく、その補語は間接補語である。 Ojciec kupił synowi książkę. 父は息子のために本を買った。 Ofiarował jej prezent. 彼は彼女にプレゼントを渡した。 Ufam mojemu adwokatowi. 私は自分の弁護士を信じる。 Warunki klimаtусznе sprzуjаją plоnоm. 気象条件は収穫にとって重要である ③ 造格の場合 この場合の述語は直接他動詞の場合と間接他動詞の場合がある。 そして、 直接他動詞の場合は、補語を2つ取る。そして、直接補語になるものは対格で表し、間 接補語になるものを造格で表す。間接他動詞の場合はその補語は間接補語である。 Nazywałem go głupcem. 私は彼を馬鹿者と呼んだ。 czynić go nieszczęśliwym 彼を不幸にする On handlował kwiatami. 彼は花を商売にしていた。 On gardzi starym myślą. 彼は古い考えを軽蔑している。 2)前置詞が付くもの 間接補語として前置詞が付くものは後述する状況語と区別しにくいことがある。その 区別は一応その語と動詞の結びつきが密である場合には補語、そうでない場合には状況 語と考えられる。例えば、On idzie w szkołę. 彼は学校へ行くところだ、の w szkołę は 状況語であるのに対して、On wszedł w pokój. 彼は部屋に入った、の w pokój は補語 とされる。これは iść の場合は一般的な移動の動詞であり、w szkłe との結びつきが弱 いが、wejść の場合は、「中へ」という意味の接頭辞である w- が付加されており、そ れと w pokój の前置詞である w との結びつきが強いからである。しかし、そうは言っ てもこれらを常にクリアカットに区別できるものではなく、ケースバイケースで判断せ ざるを得ないであろう。前置詞が付く場合に間接補語となりうるその前置詞には、生格 支配のものとしては dla, do, od, z、与格支配のものとしては ku, przeciw, o、対格支配 のものとしては o, na, w, za, pod, przez 等があり、造格支配のものとしては nad, przed, z, za、前置格支配のものとしては o, w, na, po, przy 等がある。 ① 前置詞が生格支配の場合 Adam pracuje dla matki. アダムは母のために働いている。 Adam pisze do ojca. アダムは父に手紙を書いている。 Bronili miasto od najedźdźcy. 彼らは侵略者から町を守った。 Cieszył się z tego widoku. 彼はその光景を見て喜んだ。 単文の構成 523 ② 前置詞が与格支配の場合 Ludzie protestowali przciwko tyranii. 人々は独裁者に対して抗議活動をしていた。 Kampania burmistrza zmierza ku końcowi. 市長の選挙運動は終わりに近づいてい る。 ③ 前置詞が対格支配の場合 Maria martwi się o swego syna. マリアは自分の息子を心配している。 Żołnierze walczyli na noże. 兵士達はナイフで戦っていた。 sięgać po władzę 権力を求める wyjść po zakupy 買い物に出かける Chory został zbadany przez lekarza. 患者は医師に診察された。 wierzyć w duchy 幽霊の存在を信じる grać w piłkę nożną サッカーをする przepraszać za kłopot トラブルの件で謝罪する Narzekał na zły stan zdrowia. 彼は自分の悪い健康状態を嘆いていた。 Przechodzień pytał o drogę. 歩行者は道を尋ねた。 ④ 前置詞が造格支配の場合 uciekać przed policją 警察から逃れる Żołnierze walczyli z wrogiem. 兵士達は敵と戦っていた。 ⑤ 前置詞が前置格支配の場合 grać na gitarze ギターを弾く polegać na przyjaciołach 友人達を頼りにする Myślała o przyszłości. 彼女は将来のことを考えていた。 Wczasowicze spacerowali po jeziorze. 行楽客は湖の周りを散歩した。 Ona obstaje przy swoim zdaniu. 彼女は自分の意見に固執する。 On kocha się w koniach. 彼は馬がすごく気に入っている。 On kąpie się w wannie. 彼は入浴している。 3.動詞の不定詞が補語になる場合 1)不定詞の項でも述べたように、動詞の不定詞はある特定の定形の動詞の後に付いて 補語になる。これらの動詞(定形となるもの)には動作の開始・終了・継続を表す動詞や、 命令・依頼、強制・使役、許可・禁止、他への働きかけ、自分の行動を表すもの、等が ある。 ① 命令・依頼を表す動詞 kazać 命令する、procić 依頼する ② 許可・禁止を表す動詞 pozwolić 許す zabronić 禁止する ③ 自分の行動を表す動詞 zapomnieć 忘れる、postanowić 決める、uczyć się 学ぶ zamierzać 予定である ④ 動作の開始・終了・継続を表す動詞 zaczynać 始める、kończyć 終了する、przestać 中 止する、rozpoczynać 始める、kontynuować 続ける 2)統語論の観点から言えば、これらの動詞(定形となるもの)は次の2つに分けるこ 524 単文の構成 とができる。 ① 補語として不定詞しか取ることができない動詞 ② 補語として不定詞のみならず名詞も取ることができる動詞 ※ この場合の名詞は直接補語になるのが通常である。 ① に該当する動詞 zamierzać ~したい zamierzać kupić nowy dom 新しい家を買いたい kazać 命令する Kazał nam czekać. 彼は我々に待つように命じた。 ośmielać się あえて~する nie ośmierać się mówić あえて話そうとしない przestać やめる przestać palić 喫煙をやめる Adam przestał czekać na Marią. アダムはマリアを待つことをやめた。 pozwolić ~させる・許す Rodzice pozwolili mu palić. 両親は彼に喫煙するのを許 した。 postanowić 決心する Postanowiła przychodzić 彼女は来ようと決心した。 śmieć あえて~する Nie śmiał coś zrobić. 彼はあえて何かをしようとしなかっ た。 usiłować ~しようとする Z początku usiłowałem zapisywać wszystko w notesiku. 最初はすべてのことを手帳に書き留めようとした。Usiłowała wstać 彼女は立ち上がろうとした。 zwyknąć ~する習慣がある zwyknąć grać tenisa テニスをする習慣がある powiniem ~するべきである Dzieci powinny słuchać rodziców. 子供は両親の言 うことを聞くべきだ。 これに該当する動詞は、不定詞以外には主語が同一であれば接続詞 aby, żeby, by を用いて従属節を従えることができる。しかし、補語として名詞が来ることはない。 ② に該当する動詞 kończyć 終える kończyć studiować na uniwersytecie 大学で勉強することを終え る(卒業する)kończyć pranie 洗濯を終える zacząć 始める zacząć mówić o historii 歴史について語り始める zacząć nową pracę 新しい仕事を始める zdecydować się 決心する・決定する zdecydować się zdawać egzamin 試験を受け よ う と 決 心 す る zdecydować się zdawanie egzamin uczyć 教える uczyć dziecko pisać 子供に書くことを教える uczyć dziecko matematyki 子供に数学を教える uczyć się 学ぶ uczyć się czytać i pisać 読むことと書くことを学ぶ zapomnieć 忘れる zapomnieć sprzątać mieszkanie 住居を清掃することを忘れる zapomnieć sprzątanie mieszkania 住居の清掃を忘れる pragnąć 切望する Pragnę zobaczyć film dla dorosłych. 私は、アダルトビデオを見 ることを切望する。 単文の構成 525 On pragnie pokoju. 彼は平和を切望している( pragnąć は生 格支配の動詞である。)。 lubić ~が好きである lubić jeździć na nartach スキーで滑るのが好きである Lubię kawę. 私はコーヒーが好きだ。 4.形容詞の補語 形容詞の述語的用法の場合には、その形容詞に補語が付加されることがある。これに は前置詞なしの場合と、前置詞付きの場合がある。 1)前置詞なしの場合 ① 生格支配の場合 On jest godny podziwu. 彼は称賛に値する。 On jest chciwy zysku. 彼は利益を貪欲に求める。 その他には、żądny 切望している ciekawy 興味がある、等がある。 ② 与格支配の場合 Jestem wam bardzo wdzięczny. 私はあなたに非常に感謝している。 On jest posłusznym ojcu. 彼は父親に服従する。 Jestem przeciwnym wyborom. 私は選挙に反対である。 ※ przeciwnym と述語内容詞が造格になっているのは感情を含んだ表現であるから である。この点、posłusznym も同じである。 ③ 造格支配の場合 Jestem zdziwiony twoją reakcją. 私はあなたの反応に驚く。 Dzieci były zachwycone cyrkiem. 子供達はサーカスを見て喜んでいた。 Byłem rozczarowany tobą. 私は君には失望した。 2)前置詞付きの場合 ① dla + 生格 niebezpieczny dla zdrowia 健康にとって害がある(危険である) trujący dla psa 犬にとって害がある ② do + 生格 On jest podobny do ojca. 彼は父親似だ。 skłonny do przesady 誇張する傾向がある podobny do mnie 私に似ている gotowy do obiadu 食事の準備ができている。 ③ z + 生格 On jest dumny z syna. 彼は自分の息子を誇りに思う。 Nauczyciel jest zadowolony z uczenia. 教師は生徒に満足している。 ④ w + 対格 Owoce jest bogaty w witaminy. 果物はビタミンが豊富である。 ubogi w tlen 酸素に乏しい ⑤ z + 造格 526 単文の構成 jednakowy z ojcem 父とうり二つである ⑥ na + 対格 odporny na choroby 病気への抵抗力がある chciwy na pieniądze お金に対して貪欲である。 5.名詞の補語 動詞から派生した名詞に結合し、動作の対象を示唆する。動詞から派生した名詞は動 名詞の場合がほとんどであるが、そうでないこともある。これには動詞の補語と同様に 前置詞なしの場合と前置詞付きの場合がある。しかし、難しいのは後述する定語との区 別である。動作名詞の主体は通常定語とされ、動作名詞の客体は補語とされるのが一般 であるが、通常の名詞との結びつきの場合は判別することが困難である。 1)前置詞なしの場合 この場合、注意すべきことはその補語名詞は決して対格を取らないことである。なぜ なら、対格支配の動詞と関連する名詞の場合、それに関連する補語名詞はすべて生格と なり、それ以外の場合には当該関連名詞の格がそのまま使われるからである。従って、 ① 対格支配の動詞から派生した名詞と関連する補語名詞は生格となる。 czytać książkę → czytanie książki 本を読むこと pisać list → pisanie listu 手紙を書くこと ② 対格支配以外の動詞から派生した名詞と関連する補語名詞は当該格になる。 pomogać słabemu → pomoganie słabemu 弱者を助けること(与格支配) rządzić państwem → rządzenie państwem 国を支配すること(造格支配) 2)前置詞付きの場合 skłonność do przesady 誇張する傾向 jazda na rowerze 自転車で行くこと odporność na choroby 病気への抵抗力 rozmawianie o sporcie スポーツについて語ること rozmowa z przyjacielem 友との語らい 6.補語と他の成分との区別 補語、定語、状況語をクリアカットに区別することはそもそも不可能である。従って、 境界領域にあるものもかなりある。特に問題となるものを以下に挙げる。 1)主語と補語 述語の主体となるものが主格でない場合(例えば、与格)はそれは補語となる。 Brak mu współczucia. 彼には同情心が欠けている。 2)状況語と補語 前置詞のついた斜格名詞からなるあるものは、状況語と区別しにくい。その語と動詞 との結びつきが密である場合は補語、そうでない場合は状況語とされるのが通常である。 例えば、On idzie w park. 彼は公園へ行くところだ、の w park は状況語であるが、 Wszedł w pokój. 彼は部屋へ入った、の w pokój は補語とされるのは、後者では動詞の 単文の構成 527 接頭辞 we- と前置詞 w が密な関係にあるのに、前者では動詞 iść と前置詞 w の間に そのような関係がない付加の関係だからである。 3)定語と補語 名詞+名詞斜格(前置詞のないもの、あるもの)の関係には、補語であるものと定語 であるものがある。動作名詞の主体は通常は定語とされ、客体は補語とされる。ただ、 判別が難しいのもかなりある。例えば、spotkanie przyjaciół 友人達の出会い、の場合、 przyjaciół が複数生格であるとすると定語となるが、複数対格であるとすると補語と考 えられるのである。 4)述語と補語 区別が難しいのは動詞の不定詞の場合である。一般的には、不定詞である当該動詞が 本動詞に支配されているか否かによって区別されるべきであろう。すなわち、不定詞が 本動詞に支配されている場合には補語であり、支配されていない場合には述語の一部と 言えるのである。例えば、複合未来形の場合、być の未来形+不定詞で表すが、その不 定詞は być に支配されているとは言えないので、その不定詞は述語の一部と言える。し かし、kazać 命令する + 不定詞、の場合、その不定詞は kazać に支配されていると言 えるので、補語となるのである。 Ⅳ 状況語 1.序論 状況語(副詞句)は主に動詞を修飾・限定して、その行為・状態・現象がどのような 状況の下に(いつ、どこで、どのように、なぜ、等)起こるか、ということを表す。状 況語は形容詞または副詞を修飾・限定することもあり、程度や数量を表す。状況語は、 時、場所、方向、態様、補、結果等、状況を詳細に規定する副詞、名詞、名詞に準じる 語、前置詞句、副詞節等を指す。例えば、副詞には dziś 今日、ładnie きちんと、名詞・ 名詞に準じる語には造格として nocą 夜に、生格として pewnego dnia ある日、対格と して cały dzień 一日中、前置詞句には po obiedzie 昼食後に、が挙げられる。 状況語は個々の文肢や文全体と関係する。全体の文と関係するものには prawdopodobnie 多分、może おそらく、pewie 確かに、jutro 明日は、等がある。 前述したように状況語は補語と区別しにくい場合がある。補語は動詞との結びつきが 強く、支配される関係にあるが、状況語は動詞との結びつきが薄く、支配される関係に ないと一応区別されうる。しかし、具体的には困難なこともあり、その場合には当該語 が疑問文ではどのような形で尋ねられるかを考慮すれば一応解決が得られると言える。 例えば、場所を表す語句が補語か状況語かは、前者の場合には na czym ? で尋ねられる のに対して、後者の場合には gdzie ? で尋ねられるということで解決が得られる。Adam siadł na krześle. アダムは椅子に座っていた、 という場合の na krześle は間接補語であ るが、Adam siadł na krześle w pokoju? という場合の w pokoju は場所の状況語であ る。 前者については Na czym Adam siadł? と質問されるが、 後者は Gdzie Adam siadł? と質問されるのである。 528 単文の構成 2.状況語の種類 状況語は意味の上から、1)時を表す状況語、2)場所を表す状況 語、3)動作態様の状況語、4)程度の状況語、5)理由の状況語、6)目的の状況語、 7)その他、等に分類される。 3.個々の状況語 1)時を表す状況語 一般的に kiedy ? に対する返答になるものである。 時の状況語を作るのは副詞、名詞、前置詞+名詞、語結合である。時を表す名詞は造 格となって状況語になるものが多い。 副詞の例:dziś 今日 teraz 今 potem 後で rano 朝に 名詞の例:nocą 夜に latem 夏に 前置詞+名詞の例:w poniedziałek 月曜日に w tym tygodniu 今週に 語結合の例:cały dzień 一日中 trzy lata 3年間 時を表す状況語には、時点を表すもの、時間的広がりを表すもの、反復を表すもの、 相対的時間を表すもの、がある。 ① 相対的時間を表すもの ア、現在あるいは同時期を表す場合 teraz, dziś, w tej chiwili, w czasie+生格 w trakcie+生格 podczas+生格 イ、過去や以前であることを表す場合 wczoraj 昨日 przedwczoraj 一昨日 przed godziną 1時間前に w zeszłym roku 去 年 przed obiadem 昼食前に ウ、未来やこれから先のことを表す場合 zaraz すぐに potem その後 Pociąg odjeżdża za dwie minuty. 列車は2分後に出発する。 Julia wychodzi za mąż w przysłym roku. ジュリアは来年お嫁に行く予定だ。 ② 時点・時刻を表す場合 ア、公式には24時間制で「~時」は序数詞で表す。詳細は数詞の項を参照されたい。 イ、曜日を表す場合 「~曜日に」という場合は、w + 曜日の対格で表す。 w sobotę 土曜日に ウ、月を表す場合 「~月に」という場合は、w + 月名の前置格で表す。 w kwietniu 4月に ③ 期間を表す場合 この場合は、Jak długo どれくらい、や Ile czasu どれくらい、の問いに答えるもの である。これに答えるには以下の方法がある。 単文の構成 529 ア、対格を使う方法 Czekałem na niego trzy miesiące 私は、彼を3ヶ月待っていた。 Sześć lat mieszkałem w Moskwe. 私は6年間、モスクワに住んでいた。 Nie spałem całą noc. 私は一晩中、眠らなかった。 イ、przez +対格を使う方法(これは期間を表す przez の用法である。) Czekałem na autobus przez trzy godziny. 私は3時間バスを待っていた。 Nie spałem przez całą noc. 私は一晩中、眠らなかった。 ウ、複数造格を使う方法 Całymi dniami ciężko pracowaliśmy. 毎日、我々は一生懸命働いている。 エ、po+前置格を使う方法 Myślał o niej po całych dniach i nocach. 私は夜ごと日ごとに彼女のことを考えてい た。 オ、副詞を使う方法 Długo na ciebie czekałem. 長期間、私はあなたを待っていた。 ※ 一方、na jak długo で尋ねる場合は、na+対格で答えるべきである。 Pożyczyłem pieniędzy na dwa miesiące. 私は2ヶ月間お金を貸した。 ※ 一定の期間当たりに何度も行われる行為の頻度を表す場合に、その期間は na + 対格、 w + 前置格、w ciąg + 生格、で表す。 Autobus wykonuje pięc kursów na dobę. バスは1昼夜に5本、運行する。 Samalot wykonuje pięc rejsów w tygodniu. 飛行機は1週間に5便航行する。 Samalot wykonuje pięc rejsów w ciąg tygodnia. 飛行機は1週間に5便航行する。 ※ 期間の幅を表す場合は、od + 生格 + do + 生格、で表す。 To zajmie od pięciu do ośmiu godzin. それは5時間から8時間掛かるだろう。 ④ 行為・状態の始まりや終わりを表す方法 ア、まず、始まりを表すには、od kiedy いつから、か odkąd いつから、で質問を発す るが、それらに答えるには od +生格、で答える。 Znam Adama od trzech lat temu. 私は3年前からアダムを知っている。 Zaczynam od tej chwili. 私はその瞬間から始める。 イ、行為・状態の終わりを表す時は、do kiedy いつまで、で質問を発するが、それに答 えるには、do + 生格、で答える。 Przeczytam tę książkę do czwartku. 木曜日までにその本を読んでしまうだろう。 ⑤ 頻度・回数を表す場合 jak często? の質問に対する答えになるものである。 ア、副詞・副詞句を使う方法 これに関する副詞には、zawsze いつも、często しばしば、zazwyczaj 普通、zwykle 通常、z reguły 概して、nieraz 時々、czasem しばしば、czasami しばしば、od czasu do czasu 時々、rzadko めったに、z rzadka わずかに、nigdy nie 決して~でない、 等がある。 Zawsze wstaję wcześnie. 私はいつも早く起きる。 イ、raz を使う方法 530 単文の構成 ~ raz w + 前置格、で表す方法 zrobić dwa razy w tygodniu 1週間に2回行う ~ raz na + 対格、で表す方法 Adam spotykał się z Marią trzy razy na dwa tygodnie. アダムはマリアと2週間に 3回会った。 ウ、co を使う方法 co + 主格で表す方法 co tydzień 毎週 co środa 毎水曜日 co rok 毎年 co + 生格で表す方法 co roku 毎年 co + 対格で表す方法 co tydzień 毎週 co sobotę 毎土曜日 ⑥ 速度を表す場合 これは、jak prędko, z jaką prędkością, w ciągu jakiego czasu 等の質問に答えるもの である。 ア、副詞を使う方法 prędko 速く、szybko 速く、wolno ゆっくりと On biegnie szybko. 彼は速く走る。 イ、w + 対格 Skończył kurs w trzy miesiące. 彼は3ヶ月でそのコースを終えた。 ウ、za + 対格 On może biec dwadzieście kilometrów za godzinę. 彼は1時間に20km走ること ができる。 エ、主格 + na + 対格 Jechaliśmy sześćdziesięciu kilometrów na godzinę. 我々は時速60kmで運転した。 オ、w ciągu + 生格、~の間に・~以内に、という意味を表す。w przeciągu + 生格、 の場合も同じである。 Musisz odpowiedzieć w ciągu czterech godzin. あなたは4時間以内に答えなければ ならない。 Zrobię to w przeciągu dwóch miesięcy. 私は2ヶ月以内にそれをするつもりだ。 カ、z prędkością + 生格 + na + 対格 On biegnie z prędkością dwadzieściu kilometrów na godzinę. 彼は1時間に20k mのスピードで走る。 2)場所を表す状況語 これには、① どこで、② どこへ、③ どこから、④ どこを通って、と4つの質問に 答えるものがある。 ① gdzie どこで、の質問に答えるもの 場所を表す状況語を導き出す場合、その疑問副詞は gdzie である。 ア、副詞あるいは副詞的代名詞を使う方法 tu (tutaj) ここ・そこ、tam あそこ、ówdzie あそこに、gdzieś どこかに、 gdzieniegdzie あちこちに、dalej 遠くに Tu mieszka mój brat. ここに私の弟が住んでいる。 単文の構成 531 イ、前置格支配の前置詞を使う方法 w + 前置格、 na + 前置格、przy + 前置格、等があり、詳細は前置詞の項を参照さ れたい。 ウ、生格支配の前置詞を使う方法 u + 生格、obok + 生格、koło + 生格、等があり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 エ、造格支配の前置詞を使う方法 przed + 造格、za + 造格、nad + 造格、między + 造格、等があり、詳細は前置詞の 項を参照されたい。 ② dokąd どこへ、の質問に答えるもの ア、副詞あるいは副詞的代名詞を使う方法 tu( tutaj ) ここへ、tam あそこへ Połóż to tam. それをあそこへ置け。 イ、生格支配の前置詞を使う方法 do + 生格、があり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 ウ、対格支配の前置詞を使う方法 w + 対格、na + 対格、przed + 対格、za + 対格、nad + 対格、pod + 対格、等が あり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 エ、与格支配の前置詞を使う方法 k + 与格、があり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 ③ skąd どこから、の質問に答えるもの ア、副詞を使う方法 stąd ここから、stamtąd そこから Stąd widać kościół. ここから教会が見える。 イ、生格支配の前置詞を使う方法 z + 生格、od + 生格、sprzed + 生格、zza + 生格、spod + 生格、等があり、詳細は 前置詞の項を参照されたい。 ④ którędy どこを通って、の質問に答えるもの ア、副詞あるいは副詞的代名詞を使う方法 tędy こちらの方へ、tamtędy あちらの方へ イ、名詞の造格を使う方法 Wolę podróżować morzem. 私は海を通って旅行したい。 iść lasem 森を通っていく ウ、対格支配の前置詞を使う方法 przez + 対格、があり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 エ、生格支配の前置詞を使う方法 obok + 生格、koło + 生格、等があり、詳細は前置詞の項を参照されたい。 オ、造格支配の前置詞を使う方法 przed + 造格、za + 造格、nad + 造格、pod + 造格、między + 造格、等があり、 詳細は前置詞の項を参照されたい。 532 単文の構成 3)様態や様式・方法を表す状況語 これらを導き出す場合、その疑問副詞は jak ?,ile ?,jak bardzo? o ile? z czego ? czym ? z kim? przez co? 等であるが、この状況語には副詞、副分詞、名詞の造格、前置詞句、 比喩的表現が含まれる。 ① 副詞を使う方法 dobrze うまく po polsku ポーランド語で zrozumiale 明瞭に ② 副分詞を使う方法 この方法は不完了体副分詞で表すことが多い Sportwiec biegł rozglądając się. そのスポーツマンは辺りを見回しながら、走ってい た。 ③ 名詞の造格を使う方法 Jechałem samochodem( taksówką). 私は自動車で(タクシーで)行った。 Odpowiedziała półgłosem. 彼女は小声で答えた。 Jaskółka leci lotem strzały. ツバメは矢のように飛ぶ(光陰矢のごとし)。 ④ 前置詞句を使う方法 Idziemy na piechotę. 我々は徒歩で行きましょう。 ⑤ 比喩的構造 jak + 名詞の主格 Ona śpiewa jak aktorka. 彼女は女優のように歌う。 4)原因、理由の状況語 dlaczego?, z jakiego powodu?, z jakiej przyczyny?, z czego?. 等の質問に答えるもの である。 ① 前置詞を使う方法 ア、na+対格:Umarł na dżumę. 彼はペストで死亡した。 イ、z powodu+生格、で表す。 Nie był w szkole z powodu grypy. 彼はインフルエンザのため学校に行かなかった。 ウ、od+生格、で表す。 Zblandła od strachu. 彼女は恐怖で青ざめた。 エ、wskutek + 生格、で表す。 Wskutek burzy samolot nie mógł wyjechać. 嵐のため、飛行機は離陸できなかった。 ② 名詞の造格を使う方法 Ludzie przymierali głodem. 人々は飢えで死んだ。 5)目的の状況語 po co ? na co? w jakim celu? 等の質問に答えるものである。 ① 前置詞を使う方法 Idę sklepu po mleko. 私は牛乳を買うために、店に行く。 Idę na koncert. 私はコンサートに行く。 Ułożyła dziecko do snu. 彼女は子供を寝かしつけた。 単文の構成 533 ② aby/ by に不定詞を用いる方法 Przyjechłam tu, aby was odwidzić. 私はあなた方を訪問するためにここに来た。 Kupił kwiaty, żeby obchodzić jej urodziny. 彼女の誕生日を祝うために花を買った。 6)程度の状況語 jak bardzo? w jakim stopniu? 等の質問に答えるものである。 ① 副詞を使う場合 Ta książka jest bardzo drogi. この本は大変高価です。 ② 副詞 za + 形容詞または副詞あるいは zbyt + 副詞、を使う場合 Nie pal za dużo. タバコを吸いすぎないようにしなさい。 Biegł zbyt szybko. 彼は速く走りすぎた。 7)度量の状況語 ile? jak dużo? jak daleko? 等の質問に答えるものである。 ① 前置詞なしで数詞を使う方法 この場合は大きく分けて4つを区別できる。 ア、対格で表す方法 Ile razy przygłąndasz się sobie w lustrze? 何回鏡で自分を見ているの? On waży pięćdziesiąt kilogramów. 彼は体重が50kgです。 Szedł trzy klometry. 彼は3キロメートル歩きました。 イ、不定数詞を使う方法 Mam kilka ksiązek. 私は数冊の本を持っている。 ウ、副詞的数詞を使う方法 Spotykamy się wielekroć. 我々は何度も会っている。 エ、複数造格で表す方法 Wychodzili parami. 彼らはペアになって外出した。 ② 前置詞を使う方法 ア、na + 対格 Napadało śniegu na pięć metrów. 雪が5メートル降り積もった。 Chleb jest gruby na trzy centymetry. そのパンは厚さが3cmある。 イ、o + 対格 Adam jest o trzy lata młodszy od brata. アダムは兄より3歳若い。 Adam mieszka o trzy kilometry od Moniki. アダムはモニカの所より3キロ離れた 所に住んでいる。 ウ、po + 対格 On pracuje po osiem godzin dziennie. 彼は毎日8時間ずつ働く。 Zapłacił za watęp po osiem złotych. 彼は入場のために8ズウォティ支払った。 エ、z + 対格 On ma chyba z dziewięćdziesiąt lat. 彼はおそらく90歳くらいだろう。 To będzie kosztowało z tysiąc złotych. それは約1000ズウォティするだ 534 単文の構成 ろう。 8)付帯状況の状況語 ① 前置詞句的表現 ア、z + 造格 Śpiewak śpiewa z towarzyszeniem orkiestry. 歌手はオーケストラの伴奏に合わせ て歌う。 イ、przy + 前置格 Oni tańczą przy muzyce. 彼らは音楽に合わせて踊っている。 ウ、w + 前置格 Adam leży od wczoraj w gorączce. アダムは昨日から熱を出して寝ている。 ② 副分詞を使う方法 Lubię uczę się oglądać telewizję. 私はテレビを見ながら勉強するのが好きである。 9)譲歩の状況語 pomimo czego? mimo co?, wbrew czemu?, na przekór komu? 等の質問に答えるも のである。通常、mimo + 生格、で表す。 Mimo deszczu Maria spacerowała po parku. 雨にもかかわらず、マリアは 公園を散歩した。 10)関係の状況語 pod jakim względem?, ze względu na co?, z jakiego punktu widzenia? 等の質問に 答えるものである。 ア、pod względem + 生格、で表す。 Pod względem jakości piwo nie jest dobre. 質に関してはそのビールは良くない。 イ、w związku z +造格、で表す。 W związku z sprawem zabójstwa on nie jest winny. その殺人事件に関する限り、彼 は無実である。 11)比喩的な状況語 jak を使ったものである。 Adam traktuje Marka jak idiotę. アダムはマレクを愚か者として扱う。 Adam jest silny jak lew. 彼はライオンの様に強い。 12)条件の状況語 pod jakim wrunkiem? 等の質問に答えるものである。 Zadzwoń do mnie w razie potrzeby. 用があれば私に電話しなさい。 Przy dobrej pagodzie będę spacerować po parku. 天気が良ければ公園を散歩する つもりだ。 単文の構成 535 Ⅴ 定語(限定詞) 定語は名詞を限定・修飾するものである。定語によって限定・修飾される文の成分に は主語、補語、状況語や述語の内の述語内容詞がある。定語には一致定語と不一致定語 がある。一致定語は限定・修飾される名詞と性・数・格が一致する定語である。それに 対して、それらが一致しないのが不一致定語である。尚、後述する、付語といわれるも のがある。これは定語と類似しているが、区別するべきである。なぜなら、一致定語は 限定・修飾される名詞とは性・数・格が一致するが、品詞は異なるし、不一致定語の場 合は、品詞が同じとしても性・数・格の点で異なる。しかし、付語は品詞及び数・格と も同じものだからである。従って、付語を定語に含めることはできないので、別に項を 改めて記載する。 1.一致定語 前述したようにこれは限定・修飾される名詞と性・数・格が一致するものであるが、 これに含まれるのは、通常の形容詞、所有形容詞、指示形容詞、形容分詞、順序数詞、 個数詞等が挙げられる。 długa ulica 長い通り、mój pokój 私の部屋、taka książka そのような本 、pracujący robotnik 働いている労働者、trzecia nagroda 三等賞、dwa miasta 二つの町 On miał trecią nagrodę. 彼は三等賞を取った。 一致定語は通常は名詞の前に置かれる場合と、名詞の後ろに置かれる場合があるが、 これらの詳細については形容詞の限定的用法の項を参照されたい。 2.不一致定語 これには 1)名詞の生格、2)前置詞を伴うもの、3)3人称の所有形容詞、4)副 詞、5)不定詞、6)形容詞または数詞の生格+名詞の生格、がある。 1)名詞の生格 名詞の生格は不一致定語として、様々な意味関係を表すものである。不一致定語は主 要語の格が異なっても常に生格である。また、主要語が複数になっても複数になるわけ ではない。 dom ojca 父の家が do domu ojca 父の家へ domowi ojca(domowi は dom の与格) 父の家に domem ojca 父の家で w domu ojca 父の家で domy ojca 父の家よ! 大きく分けて4タイプのものがある。 ① 質的な不一致定語 ア、用語の範囲を明確にするものがある。 kierownik biura オフィス・マネージャー、minister skarbu 財務大臣、 historia woiny 戦争の歴史 イ、状態や様態を表す。 gest przyjaźni 友好のジェスチャー、chwila spokoju 平和の時間 ウ、被修飾語をを限定する生格定語 536 単文の構成 czas obiadu 夕食の時間、rozwiązanie ucznia 生徒の解答 エ、形容詞で限定されたもの uczony światowej sławo 世界的な名声の学者 ② 用途を表す不一致定語 dzienniczek studentów 学生用の日記 ③ 所有等を表す不一致定語 ア、所有の生格 zeszyt brata 弟の有するノート、włosy żony 妻の髪、 stolica Polski ポーランドの首都 イ、作者の生格(創作の関係) utwór poetki その詩人の作品 ウ、部分を表す生格 ściana budynku 建物の壁、dach domu 家の屋根 zbocze góry 山の斜面 ④ ある物の量や数を表す生格 kilo soli 塩1kg、dwa litry mleka 牛乳2リットル butelka szampana シャンパン1本 ćwiartka studentów 学生の4分の1 ⑤ 集合体の中身や要素を表す grupa domów 家の集落、zbiornik wody 水の容器 詳細は格の用法の章を参照されたい。 2)前置詞を伴うもの これにはいろいろな種類のものがある。 ① 生格支配の前置詞を伴うもの ア、bez この場合は、構成要素や成分が欠如することを表す。 kawa bez cukru 砂糖なしのコーヒー、stól bez nóg 脚なしのテーブル イ、od ・この場合はまず送り主を表す。 list od matki 母からの手紙 ・一部の物の全体を表す korek od butelki 瓶のコルク ・用途を表す klucz od mieszkania 家の鍵 ・(防除・治療のため)~よけの、~止めの lekarstwo od bólu głowy 頭痛薬 ウ、dla 用途・目的を表す wagon dla palących 喫煙者用車両、buda dla psa 犬用の掘っ立て小屋、 siano dla krowy 牛のための干し草 エ、do ・まず、宛先を表す。すなわち、od と対比する用法である。 list do matka 母への手紙 ・方向を表す droga do biblioteki 図書館への道 ・用途を表す przybory do pisania 筆記用具(書くための器具) zeszyt do matematyki 数学用のノート 単文の構成 537 オ、u 全体を表す palec u nóg 足指、koło u wozu 車の車輪 カ、z ・材料・原料を表す budynek z cegieł 煉瓦造りの建物、sok z jabłek リンゴジュース ・出身・起源を表す wiatr z zachodu 西からの風、samolot z Moskwy モスクワからの飛行機、 dziewczyna z miasta 町から来た少女 ・範囲・分野 ezamin z biologii 生物学の試験 ② 与格支配の前置詞を伴うもの ア、ku 方向を表す droga ku zagładzie 破滅への道 イ、przeciw ~に反する・抵抗する、という意味を表す lekarstwo przeciw grypie 感冒に対する薬剤 ③ 対格支配の前置詞を伴うもの ア、na ・何らかの別の物のため kosz na śmieci ゴミバケツ、siatka na zakupy 買い物用の網、 skrzynia na listy 手紙を入れる箱 ・対処用のもの lekarstwo na kaszel 咳止め ・行為に対する定まった時間 modlitwa na wiezór 夜の祈り ・ある定まった機会 podarunek na urodziny 誕生日の贈り物 ・方向 droga na wieś 村への道 ・求める対象 atak na Iran イランに対する攻撃 イ、pod 基礎や土台をなすものを表す stolik pod telewizor テレビの下の小テーブル、dywanik pod nogi 足の下のマット ウ、w ・デザインの要素を表す zeszyt w linię 線入りのノートブック koc w kratę チェック模様の入った毛布 ・ゲームの種類 gra w szachy チェス、zabawa w ciuciubabkę かくれんぼ エ、za 価格を表す kokaina za milion dolarów 百万ドルもするコカイン ④ 造格支配の前置詞を伴うもの ア、nad 対象物の位置を表す dymy nad miastem 町の煙 538 単文の構成 イ、pod 対象物の位置を表す bitwa pod Wiedniem ベトナム戦争、przejście pod ulicą 通りの通過 ウ、przed 対象物の位置を表す trawnik przed domem 家の前の芝生 エ、z ・中味を表す sklep z rybami 魚屋、pojemnik z nabojami 弾丸入りの容器、、 koszyk z jedzeniem 食事用の籠 ・一定のものの特徴や特質 kubek z uchwytem ハンドル付きのカップ、mężczyzna z brodą あごひげを 生やした男、krzesło z oparciem 背もたれ椅子、film z dreszczykiem ぶれて いる写真、pokój z widokiem na morze 海の見える部屋、dom z gankiem ギ ャラリー付きの部屋、sukienka z falbanami フラウンスの付いたドレス ・付加物を表す kobieta z torebką バッグを持った女性、kawa z mlekiem ミルク入りコーヒ ー、chleb z masłem バター付きパン、pokój z łazienką バスルーム付きの部 屋 オ、za 対象物の位置を表す dolina za górami 山々の間にある谷 ⑤ 前置格支配の前置詞を伴うもの ア、na ・土台、基礎、素材、物質の特徴を表す dom na palach 高床式の家、fotel na biegunach. 揺り椅子 ・対象物の位置を表す śniadanie na powietrzu 機内での朝食、 chata na polanie 低湿地にある小屋、 dom na rogu 角にある家、pokój na poddaszu 屋根裏にある部屋 イ、o: ・話題、夢に関すること、行為に関することなど ustawa o pornografi ポルノ雑誌に関する法律、sen o kobiecie 恋人に関する夢、 wiedza o nauce 科学に関する知識、wiersz o lecie 森に関する詩 ・対象物に関する特徴 dziewczyna o jasnych włosach 明るい髪をした少女、chłopiec dziewczyna o perłowych oczach パール色の眼をした少年、człowiek o siwych włosach 白髪の男性 ウ、przy 対象物の特徴、位置 pokój przy rodzinie 家族用の部屋、przystatek przy lesie 森にある停留所 単文の構成 539 エ、w ・対象物の形 cukier w kostach 立方体の砂糖 ・対象物を特徴づけること kobieta w kapeluszu 帽子をかぶった女性 3)3人称の所有形容詞 jego, jej, ich jego książka 彼の本 jej portret 彼女の肖像画 ich komputer 彼らのコンピューター 4)副詞 Siedzieła przy stoliku obok. 彼女は机の隣に座っていた。 5)不定詞 Nie mieliśmy okazji podziękować. 私たちは考える機会がない。 6)形容詞または数詞の生格+名詞の生格 człowiek surowego charakteru 厳しい性格の人 student pierwszego roku 大学1年生 Ⅵ 付語 1.これは、格と数が一致することによって、当該名詞の説明を補うものである。例え ば、artysta malarz 絵画芸術家、は artysta 芸術家、の中でどのような種類の芸術家で あるかが問題となる時に、その芸術家が「絵画」関するものであることを示すのである が、artysta と malarz は格と数が一致している。このようなものは地理的名称に多く 見られる。例えば、miasto Warszawa, rzeka Wisła である。 付語の特殊性は次の点にある。 1)名詞のみによって形成される。 2)意味的にみて指示されるものは主要語と同一である。 3)主要語の代用表現になることができる。 4)主要語と格、数が一致する。しかし、文法上の性の一致は必ずしも要求されない。 例えば、wagon cysterna タンク車両(wagon 車両、は男性名詞であり、主要語である が、cysterna タンク、は女性名詞であり、付語であるが、主要語と付語の性の一致はな い。)przez prezydenta Obamę オバマ大統領による、の場合、prezydenta、Obamę と も前置詞 preze に支配されており、いずれも対格である。 また、Były prezydent RPA i laureat Pokojowej Nagrody Nobla Nelson Mandela 前 南アフリカ共和国大統領でノーベル平和賞受賞者のネルソン・マンデラ、といった場合、 były prezydent RPA と laureat Pokojowej Nagrody が一体となって一人を表すので、 Nelson Mandela が単数であるのは当然である。 2.注意すべきは述語は付語に一致することである。従って、 Wagon cysterna wyjeżdżała. となる。また、Sekretarz stanu USA Hillary Clinton 540 単文の構成 rozpoczęła wizytę w Pekinie. アメリカ合衆国国務長官のヒラリー・クリントンは北京 への訪問を開始した、と言う場合、付語は Hirary Clinton であり、これは女性である から、動詞が rozpoczęła と女性形になっているのである(主要語である sekretarz stanu USA は男性形である。)。 3.苗字と名前についてはポーランド語では常に名前が苗字に先行する。そして、この 点から、苗字が名前を限定すると言える。この意味で、名前が主要語であり、苗字が付 語となる。そして、格変化がおきる場合には、苗字と名前の双方が起きるのが原則であ る。 Donald Tusk wspólnie z Andrzejem Olechowskim i Maciejem Płażyńskim założył Platformę Obywatelską. ドナルド・トゥスクはアンドレイ・オレフォウスキーとマチ エイ・プワズニスキーと一緒に市民プラットホームを設立した。 4.付語のその他の例 doktor Nowak ノバック博士 ksiąz August アウグスト司祭 hrabina Anna Nowogrodzka アンナ・ノボグローズカ伯爵夫人 Kim Dzong Unowi zastąpił swego zmarłego ojca Kim Dzong Ila. キムジョンウンは 父である故金正日に取って代わった。swego zamarłego ojca と Kim Dzong Ila は いずれも対格であり、前者は後者の付語となっている。 Prezydent Iranu Ahmadineżad zaprosił Benedykta XVI. イラン大統領のアフマデ ィーネジャードはベネディクト16世に依頼した。 Eksplozja w stolicy Somalii, Mogadiszu, zabiła co najmniej dziewięć osób. ソマリ アの首都モガディシュで、爆発があり、少なくとも9人が死亡した。(この場合、 Mogadiszu は前置格である。stolicy が stolica 首都、の前置格なので、それと一 致しているのである。) Ⅶ 文外詞、 文の構造と関係のない語を文外詞というが、文外詞は文の成分とはなり得ない。文外 詞には呼びかけ、助詞、間投詞、挿入語、がある。文外詞は助詞以外は必ずコンマ(時 には括弧、ダッシュ)で区切られる。 1.呼びかけ 呼びかけはロシア語では名詞の主格で表されたが、ポーランド語では呼格があるので 呼格で表されるのが原則である。 Dzień dobry, panie dyrektorze! こんにちわ。先生。 2.間投詞 間投詞は、文の他の部分と文法上の関係なしに文中に投入されることばであり、各種 単文の構成 541 の感情を表したり、何かを促したり、擬声を表したり、擬態を表したりするものである。 Oj, to boli! おお、痛い! Hop przez rów! 急げ、防空壕へ! Tak! はい。 その他詳細は、第2部第6章第5節 間投詞の項を参照されたい。 3.挿入語 挿入語は文外詞の一種に過ぎないので、文法の上からは重要なものとは言えないが、 話者の主観的表現を豊かなものにするために必要である。その意味では、等閑視できな い文の一部と言える。挿入語にはいろいろのものがあるが、以下のものが挙げられる。 1)内容の出所 Jak wiadomo, on jest bogatym człowiekiem. 周知の通り、彼は金持ちである。 その他には、moim zdaniem 私の考えでは według mnie 私の考えでは 2)確実性 On, czywiście, powiedzał prawdę. 確かに、彼は真実を言った。 その他には、naturalinie, bezspornie 疑いもなく 3)不確実性、仮定 Może spóźniła się na pociąg たぶん、彼女は列車に乗り遅れたであろう。 その他には、prawdopodobnie たぶん・おそらく 4)感情 niestety 残念ながら Niestety, ona nie wróci. 残念ながら、彼女は帰ってこないだろ う。 na szczęście 運良く Na szczęście, miałem przy sobie jakieś pieniądze. 運良く私は 幾らかのお金の持ち合わせがあった。 5)発言の整理 po pierwsze 第一に po drugie 第二に Po pierwsze muszę robić pracę domową. 第 一に私は宿題をしなければならない。 na przykład 例えば Lubię kwiaty, na przykład róże i lilie. 私は花が好きだ。例えば、 バラやユリの様な。 szczerze mówiąc 率直に言えば ※ 尚、na przykład の後は、複数主格が来るのが通常である。 6)発言の性格づけ及び婉曲 na odwrót 逆に On jest domatorem, na odwrót nie podróżuje. 彼は家にいるのが好 きである。逆に旅行はしない。 prawdę mówiąc 実は Prawdę mówiąc, nie wiem, co o tym rubić. 実は、それについ て何をすべきか私は分からない。 7)相手の注意の喚起 proszę 542 単文の構成 4.助詞 第2部第6章第4節 助詞の項を参照されたい。 Ⅷ 同種成分 これは、機能が同じ成分が二つ以上並んだものである。これは並立接続詞またはコン マで結ばれるものであるが、今までのものとは異なり、新たな成分ではなく、今まで述 べた成分が2つ以上あるものである。従って、例えば一つの述語に対して二つ以上の主 語がある時は、同種成分の主語があることになるし、一つの主語に対して二つ以上の述 語がある時は、同種成分の述語があることになる。そして、これらの場合、文としては 一つであり、二つ以上あることにはならない。 主語、述語と同じく、補語、状況語、定語等にも同種成分はありうることは当然であ る。 1.同種成分の主語 Na daczy żyli ojciec, matka, i ja. 別荘には父と母と私が住んでいた。 2.同種成分の述語 On jest mądry i odważny. 彼は賢いし、勇敢である。 Oni śpiewali, żarotowali i śmiali się. 彼らは歌い、ふざけ、笑っていた。 3.同種成分の二次成分 Na rynku sprzedawali jarzyny, mięso i ryby. 市場では野菜も肉も魚も売っていた。 Ⅸ 孤立成分 これは、状況語、定語が文中の他の成分から、コンマまたはダッシュ「-」で分離さ れたものである(口頭では間とイントネッションによることにより、意識される)。孤 立成分は通常の定語または状況語より独立性が強くなるため、ある程度従属節のような 感じとなり、孤立していない成分にはない意味合いが加わる。 1.孤立状況語 1)副分詞によるもの Maria przeczytała książkę, słuchając muzyki. マリアは音楽を聴きながら、本を読み 終えた。 2)譲歩の前置詞によるもの Pacjent, mimo zażycia nowych leków, wcale nie czuł się lepiej. 新しい薬を服用した にもかかわらず、その患者は全く気分が良くならなかった。 2.孤立定語 1)代名詞に付く定語 Zmęczoni, brudni, mokrzy, oni wrócili do kraju rodzinnego. 疲れ果て、汚れ、びしょ 単文の構成 543 ぬれになって彼らは国にたどり着いた。 2)被限定語のあとに置かれる2つ以上の形容詞 Ścieżka, wąska i kręta, przyprowadził mnie ku rzece. 私が、狭く、曲がりくねった 小道に沿って行くと 川に出た。 3.孤立付語 1)普通名詞または代名詞につくもの Około tysiąca osób, w tym przedstawiciele rady miejskiej i obwodowej, wzięło udział w wiecu. 約1000人、その中には住民と市民の評議会の代表者が含まれ ているが、ラリーに参加した。 W piątek w Syrii zginęły co najmniej 103 osoby, głównie cywile, z czego 22 w Hims. 金曜日にシリアでは少なくとも103人が死亡した。その103人のうちの主なも のは市民であり、その中の22人はヒムスで死亡したものである( co naimniej 103 osoby に対して głownie cywile が孤立名詞定語となっている。)。 2)固有名詞の後につくもの Adam, nasz nauczyciel, wczoraj dał mnie książkę. 我々の教師であるアダムは、昨日 私に1冊の本をくれた。 Niakliajeu, kandydat opozycji w grudniowych wyborach prezydenckich, zaprezentował w czwartek w Mińsku koncepcję polityki zagranicznej. 12月の大統領選挙での野党候補であるニアクリアエウは、木曜日にミンスクで 外国政策に関する考えを示した。 人名のあとにつく役職なども同じである。 Marek Kowalski, lekarz, nie zgadzał się. 医師のマレク・コワルスキーは、賛成しな かった。 3)czyli や mianowicie の後に付く語 Mój ojciec bada astronomię, czyli wiedzę o gwiazdach. 私の父は天文学、すなわち星 に関する学問を研究している。 Odwiedziła dwa kraje, mianowicie Polskę i Włochy. 彼女は2つの国を訪れた。すな わち、ポーランドとイタリアである。 544 単文の構成 第2節 格の用法 Ⅰ 格 przypadek とは、名詞類(名詞、代名詞、形容詞、数詞、形容分詞)に付加され る様々な語尾を通して、語順に依拠することなく、主語・補語といった統語的関係や、 行為の行なわれる場所・物体の所有者といった意味的関係を表す文法的概念である。 ロシア語の格には主格、生格、与格、対格、造格、前置格と6つあったが、ポーラン ド語においてはさらに呼格が加わるので、計7つとなる。それに複数形が加わるので、 一つの名詞に対して変化形は14個あることになる。しかし、ロシア語にもあったよう に主格と対格、生格と対格が同じ名詞があり、また、複数形の呼格の場合、複数形の主 格と同じなので、変化形が14個あるものはなく、最大13個と考えればよい。ロシア 語においてすべての格は、問いに答えるものであったように、ポーランド語の場合もそ うである。ただ、呼格だけは独立のもので、問いに答えるものではない。 Ⅱ 主格 1.これは、基本的な格であり、辞書にはこの形で掲載されているのはロシア語と同じ である。主格において名詞あるいは名詞句は文の主語になるものであり、kto や co と いった疑問詞に対する答えになるものである。 Kto kupił ten komputer? 誰がそのコンピューターを買ったのか。Brat. 弟です。 Co to jest? それは何ですか。To jest ołowek. それは鉛筆です。 2.また、jaki どういう、który どちらの、に対する答えにもなるものである。 Jaki jest dzisiaj dzień? 今日は何曜日ですか。Dzisiaj jest poniedziałek. 今日は月曜 日です。 Który dzień jest dzisiaj? 今日は何日ですか? Dzisiaj jest dwudziesty piąty kwietnia. 今日は4月25日です。 3.その用法には以下のものがある。 1)文の主語になる。 最も基本的な主格の用法である。 Brat mieszka teraz w hotelu. 弟は今、ホテルに住んでいる。 2)to jest, to są や oto で導かれる文の述語内容詞になる。 ロシア語も同様である。ロシア語の場合は、be 動詞は原則として省略した。 例えば、Это моя книга. のようにである。ポーランド語の場合は原則としては省略 しないが、ロシア語のように省略しても良い。 To jest moja książka.これは私の本です。To moja książka. これは私の本です。 To są moje okulary. これは私のメガネです。To moje okulary. これは私のメガネ 単文の構成 545 です。 しかし、oto ここに、の場合はロシア語と同様に常に be 動詞を省略する。 Oto mój klucz. ここに、私の鍵がある。 3)等位型の文で両者を表す場合、両者とも主格となる。ロシア語も同様で、ロシア語 の場合、それらはハイフンで繋いだが(例えば、Мой отец - врач のように)、ポーラ ンド語の場合は to を使う。 Moi ojciec jest to lekarz.私の父は医師です。 もっとも、ロシア語と同様に表しても良い。 Moi ojciec - lekarz. 4)形容詞の述語的用法の場合 この場合に使われる動詞は być ~である、wydawać się ~の様に見える、robić się ~になる、stawać się ~になる、等がある。 Jestem zdrowy. 私は健康である。 On wydawa się zmęczony. 彼は疲れているように見える。 Zrobiłem się smutny. 私は悲しくなった。 Stawała się piękna. 彼女は美しくなった。 5)主語と同じ格の形容詞の場合 Urodził się jako pierwszy. 彼は長男として生まれた。 Siedział nieruchomy, głęboko dotknięty jej słowami. 彼は彼女の言葉に深く動揺し て、じっと座っていた(dotknięty が主語である On と同格である。)。 6)主語と同じ格の名詞あるいは名詞句の場合 Ojciec procował jako adwokat. 父は弁護士として働いた。 7)前置詞としての jak の後 Pies jest czarny jak węgiel その犬は石炭のように黒い Ewa płakała jak dziecko. エヴァは子供のように泣いた。 ※ jako の場合は、比較するものと同じ格になるが、jak の場合は、常に主格である。 Znali ją jako pielęgniarkę. 彼らは彼女が看護師であることを知っていた(この場合、 ją と pielęgniarkę は同格でどちらも対格になっている) 。 Adam jest głodny jak wilk. アダムは狼のようにがつがつしている。 Adam wyglada na głodnego jak wilk. アダムは狼のようにがつがつしているように 見える(この場合、głodnego は対格であるが、それと同じものを指している wilk は主格である。)。 8)感嘆文の場合 Cud! 奇蹟だ! Jaki ładny pies! なんと可愛い犬だ! Jaki on jest wysoki! なんと彼は背の高いことか! 9)述語的疑問文の場合 例えば jaki どのような種類の、czyj 誰の、który どの・・・ で導かれる場合 Jaki to jest samochód? それはどの様な種類の車ですか。 Jaka jest pagoda dziś? 今日はどんな天気ですか。 546 単文の構成 Która torba jest twoja? どのバッグがあなたの物ですか。 Czyj to jest samochód? それは誰の車ですか。To mój samochód. 私の車です( mój は主格である。)。 To samochód Adama. アダムの車です(Adama は生格である。)。 ※ czyj を使用する場合、それ自体は主格であるが、その答えは原則として生格となる。 ただ、所有代名詞を使う場合には主格となる。 10)呼格の代わりに用いられる直接的な呼びかけの言葉 呼格は主に文語で用いられるが、口語では主に主格が用いられる。 Maria! Chodź tu! マリア、こちらに来なさい。 Adam! Tak się cieszę, że ty wróciłeś do domu. アダム、君が家に帰ってきてくれて僕 はうれしい。 11)タイトル名、名前、引用句など Mam na imię Jan. 私の名前はヤンです。 Nazywam się Edward Kowalski. 私はエドワード・コワルスキーと申します。 Czytaem powieść "Leopold Tyrmand". 私はレオポルト・チルマントという 小説を読んでいる。 Ⅲ 生格 1.生格はロシア語においてもかなり頻繁に使われる用法であり、種々の用法が見られ るが、ポーランド語においても同じである。しかも用法はロシア語のそれと類似してい る点が多い。 生格は kogo や czego や czyj 等の疑問詞に答えるものである。 Kogo szukasz? あなたは誰を探しているのですか。Adama. アダムです。 Czego szukasz? あなたは何を探しているのですか。Książki. 本です。 Czyj to samachód? それは誰の車ですか。Adama. アダムのです。 2.生格の用法には以下のようなものがある。 1)名詞を修飾する場合 ① 所有関係 この所有関係にも種々のものがあるという文法書があり、 作者等はここに 含めるものもある。しかし、それは次の動作の主体であろう。 dom ojca 父の家、teczka brata 弟の手提げカバン、samochód siostry 妹の自動車 ② 動作の主体 artykuł ojca 父の論文(父が書いた論文)、 przemówienie ojca 父の演説(父がした演説) ③ 動作の客体 czytanie artykułu 論文を読むこと、budowa mosta 橋の建設、 najazd sąsiada 隣国への侵入 ④ 内容を説明する生格 かかっていく名詞の語義内容を説明する働きをする生格であ 単文の構成 547 る。 artykuł medycyny 医学の論文 ⑤ 対象物の部分に対する全体を表す生格 dach domu 家の屋根(この場合、全体が家 dom で屋根 dach はその部分である。)、 ostrze strzały 矢の先、koniec meczu 試合の終わり ⑥ 物質の特徴・性質を表す生格 krzesło żelaza 鉄の椅子(鉄で作られた椅子) ⑦ 対象物の性質 wino dobrej jakości 良質のワイン、ruda żeleza 鉄の鉱石 ⑧ 関係を表す生格 przyjaciel ojca 父の友人、dyrektor firmy 会社社長 ⑨ 物の特徴の担い手 skutek aresztowania 逮捕の効果、pożar lasu 森林火災、smak miodu 密の味 ※ これらの用法の場合、その意味が曖昧なことがある。特に動名詞を修飾する生格の 場合である。例えば、jedzenie kota の場合、「猫の食事=内容を説明する生格」か「猫 を食べること=動作の客体」の両方の意味に取れる。従って、このような場合には文脈 によって判断する必要が生じる。 2)数量生格 ロシア語において名詞が数量を示す語と結びつく場合、その名詞は生格となった。こ のことはポーランド語においても当てはまる。ただ、ロシア語においてはその名詞が個 数詞2、3、4と結びつく場合には単数生格が、5以上の個数詞と結びつく場合は複数 生格が用いられた。ポーランド語においても似たような現象が見られるが、もう少し複 雑である。そして、数詞に関しては非常に難しい問題が横たわっているのでそれについ ては数詞の箇所で述べる。 ① 数量を示す代名詞、副詞と結びつく生格 これには dużo, trochę, mało, dosyć, sporo, więcej, mniej 等がある。 dużo pieniędzy たくさんのお金(複数生格)、dużo czasu たくさんの時間(単数生 格)、trochę czasu 少しの時間(単数生格)、trochę pieniędzy 少しのお金、 dosyć mleka 十分にあるミルク(単数生格)、 sporo ludzi 多くの人々、 więcej pieniędzy より多くのお金、 mniej czasu より少ない時間 ② 数量を示す名詞と結びつく生格 litr mleka 1リットルのミルク、kilo cukru 砂糖1キログラム、kawałek sera 一切 れのチーズ、gram soli 塩1グラム ③ 不定数詞と結びつく生格 kilka studentów 数人の学生、wiele domów たくさんの家、wiele czasu たくさんの 時間、wiele lat 多くの年、parę minut 2~3分、Ile masz wzrostu? 君の身長はど 548 単文の構成 れだけですか? Ile mleka? どのくらいのミルク? ④ 分数を表す数詞と結びつく生格 pół godziny 30分、pół ceny 半分の価格、 ćwiartka wódki 4分の1リットルのウオッカ ⑤ 容器等も数量を表すことができるので生格と結びつく butelka wina ワイン1本 、szklanka wody 1杯の水 ⑥ 5以上の数詞と結合する名詞は複数生格を取る(詳しくは数詞の項参照)。また、2、 3、4の場合であっても、男性人間形名詞と結びつく場合には、その名詞は複数生格を 取ることがある。尚、2、3、4の場合で非男性人間形名詞と結びつく場合は、ロシア 語と異なり複数主格である。 3)部分生格 ロシア語においては、ある種の他動詞は対象を対格のみならず生格に立てることがあ った。この場合、対格の場合は動作が対象全体に渡り、生格の場合は対象の一部分、一 定量に及ぶことを表したが、これはポーランド語においても当てはまる。従って、原則 として部分生格が用いられる場合、動詞は完了体になる。 Wczoraj on wypił wina(生格).昨日、彼はワインを飲んだ。 Zwykle on pije wino.(対格)普通、彼はワインを飲んでいる。 Dziś na obiedzie zjadłem ryża.(生格)今日、昼食の時、ご飯を食べた。 Zwykle jemy ryż.(対格)私たちは、米を常食としている。 ※ この場合の名詞は物質名詞、集合名詞が多い。もっとも、物質などの部分を表す場合 に生格を使うかどうかは義務的ではなく、対格で表しても良い。従って、Wczoraj on wypił wino. 昨日、彼はワインを飲んだ、としても良い。従って、対格の場合には文脈 によって判断することが必要となる。 ※ また、物質名詞等が修飾を受け、限定されたものである場合には、対格にすることで ある。 Przyniosłem ci pieniędzy.(生格)君にお金を持ってきた。 Przyniosłem ci pieniądz(対格), który otrzymałem wczoraj z matki. 私が昨日母か ら受け取ったお金を君に持ってきた。 4)否定生格 これはロシア語を始めとしてスラヴ語に特徴的なものでもちろんポーランド語にも 認められるものである。これには① 他動詞を述語とする文が否定になって、直接補語が 対格から生格になるものと、 ② 存在文が否定になって主格主語が生格になるものがある。 ① 本来なら対格が用いられるところ、 それを否定する場合には対格に代わって生格が用 いられる。 Mam pieniądze. 私はお金を持っている(対格)。 Nie mam pieniędzy. 私はお金を持っていない(生格)。 Lubię kawę. 私はコーヒーが好きだ(対格)。 Nie lubię kawy. 私はコーヒーが好きではない(生格)。 否定生格が用いられる場合は、動詞自体が否定される場合のみならず助動詞が否定さ 単文の構成 549 れる場合でも用いられる。 Nie chcę oglądać telewizji. 私はテレビを見たくない。 Nie mogę przypomnieć jego nazwiska. 私は彼の名前を思い出すことができない。 ※ 注意すべきは、 否定生格が用いられるのは肯定文において対格が直接補語となる直接 他動詞の場合である。対格が用いられても、直接他動詞ではない場合、例えば中間動詞 の場合、否定文となっても対格のままのことが多い。 Gardło ją boli. 彼女は喉が痛い、の場合、主語が gardło で、ją は対格であるが、動 詞 boleć の直接補語である。しかし、これを主語にして受動態を形成することはできな い。この場合は、Gardło ją nie boli. 彼女は喉が痛くない、となり、そのまま ją という 対格のままである(もっとも、Gardło jej nie boli と生格にしても良い。)。 また、時間とか物の量を表す場合に対格が用いられることがあるが、その場合は否定 しても否定生格とはならず、対格がそのまま用いられる。これも対格が直接補語ではな いからである。 Nie czekam tu nawet godzinę. 私はここで1時間も待っていない。 逆に、直接補語であっても、動詞の性質上、対格以外の格を取る動詞の場合には否定 しても生格にはならず、元の格のままである。 Nie wierzę mu. 私は彼を信じない。mu は与格であり、wierzyć は直接補語として与 格を取る動詞であり、否定文になっても変わらないのである。 ※ 注意すべきは bardzo や頻度に関係する副詞が否定文に付く場合である。 否定詞であ る nie が動詞の直前に置かれる場合には生格となるが、そうでない場合には対格のまま である。例えば、Bardzo nie lubię kawy. となるが、Nie bardzo lubię kawę. となる。 ② 存在の否定 ロシア語においては、不在の主体は生格で表したが、このことはポーランド語におい ても当てはまる。例えば、Его теперь в Токио нет.彼は今東京にいない、である。ポ ーランド語においては Nie ma teraz w Tokio go. となる。従って、主語がない、無人称 文になるのも同様である。現在、過去、未来で表すと、 Leon jest tu. Leona tu nie ma. レオンはここにいる。レオンはここにいない。 Leon był tu. Leona tu nie było. レオンはここにいた。レオンはここにいなかった。 Leon będzie tu. Leona tu nie będzie. レオンはここにいるだろう。レオンはここに いないだろう(注意すべきは、否定の場合、現在形のみが mieć が使われ、それ以外 は być が使われることである。)。 しかし、同じように存在を表す動詞である istnieć 存在する、の場合は、それを否定 しても、対象物は否定生格になるわけではない。 Ten pogląd nie istnieje od dawna.その光景は長い間存在しない。 5)生格を要求する動詞 動詞の直接補語としては対格が用いられるのが、通常である が、ロシア語にもあったように生格を取る動詞がかなりある。それらには以下のものが ある。 ① 回避、嫌悪、恐怖、後悔等を表す動詞で się を伴う場合と、伴わない場合がある。 ・bać się ~を恐れている 550 単文の構成 Pies boi się kota. その犬は猫を怖がる。Boję się ojca. 私は父が怖い。 ・nienawidzić ~を憎む、嫌いである(się が付かないことに注意) On niewawidzi pisania listów. 彼は手紙を書くことが嫌いである。尚、nienawidzić się は「お互いに憎む」、あるいは、「~を後悔する」、という意味である。 ・obawiać się ~を恐れる Obawiam się prawdy. 私は真実を恐れている。 ・odmówić ~を拒否する(完了体で się が付かないことに注意) On odmówił mi propozycji. 彼は私の提案を拒否した。(この場合、間接補語は与格 で、直接補語を生格で表すのである。 ) ・uniknąć 避ける (完了体) Uniknął śmierci. 彼は死を免れた。 ・wstydzić się 恥ずかしがる Ona wstydzi się swojego brata. 彼女は自分の兄が恥ずかしい。 ・wyrzec się 断念する(この動詞の変化には k が入ることに注意) Wyrzekę się baseballa. 私は野球を断念する。 ・zabronić 禁止する On zabrania mi palenia w jego domu. 彼は私に彼の家でたばこを吸うのを禁止する。 ・zaprzeć się 否認する On zaparł się mordestwa prezydentta. 彼は大統領の殺害を否認した。 ・żałować 後悔する On żałuje prawie wszystkiego w swoim życiu. 彼は自分の人生のほとんどすべてを 後悔している。 ・pozbyć się 取り除く On pozby się złudzeń. 彼は錯覚を取り除く。 ② 接近あるいは回避を表す動詞で対格を取る動詞の中には、się を伴う場合には生格を 取る動詞がある。 ・chwytać これは「捕まえる」という他動詞で対格を要求するのであるが、chwytać się となると意味はほぼ同じで直接補語として生格を取る。Tonący chwyta się brzytwy. 溺 れる者は藁をもつかむ。 ・trzymać się ~を守る trzymać は「支える」という意味の動詞で対格を要求するが、 się が付くと、「固執する」等の意味となり、生格を取る。 trzymać się tematu 主題に固執する ③ 必要、要求、希望等を表す動詞の場合 ・chcieć ~したい domagać się ~を要求する łaknąć ~を渇望する potrzebować ~を必要とする łaknąć wolności 自由を渇望する ・pragnąć ~を欲する wymagać ~を要求する żądać ~を要求する życzyć ~を望 む oczekiwać ~を期待する żądać odszkodowania 補償を要求する 単文の構成 551 ④ 試み、経験、利用等を表す動詞の場合 doświadczyć 経験する kosztować 試食をする・試飲をする próbować 試みる użyć 利用する zaczerpnąć すくい上げる zaczerpnąć wody ze studni 井戸から水をすくい上げる użyć słownika 辞書を利用する kosztować wina ワインを試飲する(注意すべきは kosztować は常に生格支配ではな く、この意味に使われる場合だけ生格支配になることである。「費用がかかる」等 の場合は対格支配である。) ⑤ 不足、充足、喪失、付加、過剰等を表す動詞で、無人称構文で使われる場合 この場合、主体は与格で表されるのが通常である。 ・brakować 欠けている Brakuje mi teraz czasa. 私は今時間が足りない。 ・ubywać 少なくなる Mnie sił ubywa. 私の影響力は小さくなっている(主語はなく、Mnie は与格であり、 sił は複数生格である。)。 W jeziorze ubywa wody. 湖の水位は低下している(この場合は主語はもちろんのこ と主体もなく、wody は woda の単数生格である。)。 ・wystarczyć 十分である Wystarczy wody na stu ludzi. 百人分の十分な水がある。 Jedzenia wystarczy nam już tylko na trzy dni. 食料は我々にはもう3日分しかない (主語はなく、nam は与格であり、jedzenia は単数生格である。)。 ・przybywać 増加する Przybyło dużo pracy. 仕事が増えた。 ⑥ do- で始まる動詞の場合 ・dobyć 物を~から引き出す ・dochować 守る dochować przysięgi 誓いを守る ・doczekać (生き長らえて)体験する doczekać upadeku komunizmu 共産主義の崩壊を体験する ・dokonać は機能動詞として作用することが多い。 dokonać agresji 攻撃する、dokonać mordestwa 殺人を犯す、dokonać operacji 手 術をする、dokonać wyboru 選定する、dokonać czynności prawnej 合法行為をす る ・dogladać 世話をする doglądać chorego ojca 病気の父の世話をする ・dolać(完了体)dolewać(不完了体)注ぐ dolać śmientanki do herbaty 紅茶にクリームを注ぐ ・dotrzymać 守る dotrzymać słowa 言葉を守る、dotrzymać obietnicy 約束を守る 552 単文の構成 ・doznawać (損害・病苦等を)受ける doznawać rozczarowania 落胆を受ける(がっかりする) ⑦ na- で始まる再帰動詞の場合 この場合は、完成あるいは過剰の状態を示す。 napić się 飲み干す najeść się 全部食べる naczytać się 読み終える nauczyć się 学び 終える Olek napił się mleka. オレックはミルクを飲み干した。 ⑧ na- で始まる「積み立て」を表す動詞の場合 ・nabrać 集める nabyć 獲得する(この意味の場合には生格支配である。一方、購入す る、という意味もあるが、この場合は対格支配である。) nabyć doświadczenia 経験を積む(参考:nabyć książkę 本を購入する) ・nakupić 買い上げる nakupić jedzenia 食料を買い上げる ⑨ その他 bronić 守る pilonować 世話をする・守る słuchać ~に耳を傾ける・従う gratulować ~を祝う strzec się ~に気を付ける Słuchamy śpiewającego dziewczynka. 我々は歌っている少女に耳を傾ける。 pilonować porządku 秩序を守る ⑩ 生格も対格も取る動詞 ロシア語においては生格も対格も取る動詞があった。その場合、主として生格の場合 は抽象的なもの、対格の場合は具体的なものがその対象となった。このことはポーラン ド語においても当てはまる。そして、上述した動詞の中には、対格を取ることもあるの である。 nabrać siana (生格) ある干し草を集める nabrać siano(対格)その干し草を集める Trzeba będzie użyć siły.(生格)私は力を使う必要がある。 Czy mogę użyć twój ołówek? (対格)私はあなたの鉛筆を使っても良いですか。 6)ある種の無人称述語のあと ポーランド語には無人称述語というものがあるが、これはロシア語の нужно 等と同 じである。ポーランド語の無人称述語で生格を取るものには、 brak, trzeba, potrzeba, szkoda, wstyd, żal 等がある。これらの無人称述語を使うと、主 体は与格で、対象が生格で表されることになる。 Brak mi słow. 私は言葉に詰まった。 Ludzi tu nie brak. ここにはたくさんの人がいる。 Trzeba czasu, aby to zrozumieć. それを理解するには時間が必要だ。 Potrzeba mi czasu. 私には時間が必要だ。 Szkoda mu swojej matki. 彼は自分の母親を哀れに思う。 Wstyd mu swojego ojca. 彼は自分の父親が恥ずかしい。(mu 与格、smojego ojca 生 格) Mu jej żal. 彼は彼女がかわいそうだと思う。(mu 与格、jej 生格) 単文の構成 553 7)ある種の形容詞のあと ロシア語においてはある種の形容詞の述語的用法の場合にその補語として生格形を 取るものが見られた。例えば、полный достойный 等である。このことはポーランド 語においても当てはまる。例えば、ciekawy ~に関心のある、chciwy ~を切望する、 godny ~の価値がある、żądny ~を切望する・飢えた、pełen ~で満ちた、pozbawiony ~を奪われた、świadomy ~に気づいている、wart ~の価値がある、winien winna ~ に責任がある、bliski ~しそうである、等である。 Turyści są chciwi wrażen. 旅行者は感動を切望する。 On jest godny podziwu. 彼は称賛に値する。 Oni są żądni władzy. 彼らは権力を切望している。 Jestem świadom swoich braków. 私は自分の欠点に気づいている(この場合、形容 詞は短形を使っている。)。 To jest wart wspomnienia. それは思い出す価値がある。 bliski płaczu 今にも泣き出しそうである (但し、bliski は与格支配の場合もあるこ とに注意すべきである。Ⅲ与格の項参照)。 8)時間を表す生格 ロシア語において時を表す場合に様々な格が使われた。その場合に、生格を使って表 す場合もあり、例えば日付を示す場合は тринадцатого июня (6月13日に)のよう に生格形を用いた。この点は、ポーランド語においても同じであり trzynastego czerwca 6月13日に、となる。また、「本年には」は tego roku、「この夏に」は tego lata と いうように生格を用いる表現もある。また、następnego dnia 次の日に、tej nocy その 夜に、のような場合も生格となる。「~年に」という場合は w + 前置格で表すが、「~ 年~月~日に」という場合は「~月~日」のみならず「~年」の部分も生格となる。例 えば、pierwszego marca tysiąc dziewięćset osiemdziesiątego piątego roku 1985年 3月1日に、となる。この場合、1985年のうちの1900年の部分は主格であり、 85年の部分がそれぞれ生格になることに注意すべきである。その他には次のような場 合にも生格が使われる。 każdego dnia 毎日、każdego roku 毎年、każdego jesieni 毎秋 9)生格を要求する前置詞 この前置詞はかなり多いが、詳細は前置詞の項を参照されたい。 10)要求の生格 これはポーランド語に特有な用法である。これは、生格を要求する希望、要望等の動 詞が省略されたような形になったものである。例えば、Pomocy ! 助けて!の場合、こ れ自体は生格であるが、あたかも chcę pomocy の chcę が省略された形になっている のである。 Ⅳ 与格 1.与格の最も基本的な用法は間接補語を表すことである。これはロシア語と同じであ 554 単文の構成 る。 与格は komu, czemu 等の疑問詞に答えるものである。 Komu dałeś tę książkę? あなたはこの本を誰にあげたのですか。 Czemu on dziwił się? 彼は何に驚いていたのか。 2.その他にはいろいろな用法があるが、基本的にはロシア語と変わらない。 1)間接補語 Dałem mu kota. 私は彼に猫を与えた。 Ojciec kupił synowi prezent. 父は息子にプレゼントを買ってあげた。 Kupuję Jankowi rower. 私はヤネックのためにバイクを買う。 Mąż pomoga żonie. 夫は妻を助ける。 On sprzedał kwiaty przyjaciołom. 彼は友人達に花を売った。 Adam pożyczył ksiązkę przyjacielowi. アダムは友人から本を借りた。 2)利益の主体 この場合は、1)の間接補語と紛らわしい場合がある。 Uszyję córce nową sukienkę. 私は娘のために新しいドレスを縫う。 Ojciec ustąpił synowi miejsce. 父は息子にその地位を譲った。 3)行為の委託 Oddałem samchód michanikowi do naprawy. 私はその機械工に車を修理してもら った。 Zleciłem mu tłumaczenie swojego pracy. 私は彼に、私の論文の翻訳を依頼した。 zlecić mu namalowanie portretu żony. 彼に妻の肖像画を描くことを依頼する 4)身体の部分の保持者 この用法は少し難しい。身体部分と不可分な関係のある主体 を与格で表す。例えば、 ① Drgnęły jej plecy. 彼女の肩が震えた。 ※ この文の場合、主語は plecy (肩=複数主格)で、動詞が Drgnęły (drgnać の複数非男 性人間形過去)で jej が与格となっている。その肩は彼女のもので、彼女と不可分の関係 にあるのである。 ② Serce mu bije jak młot. 彼の心臓はハンマーのように打っている。 ※ 主語は Serce(心臓=単数主格)で、動詞が bije (bić の単数3人称形)で mu が与格とな っている。 ③ Mojemu oponentowi mina zbladła. 私の対立者の顔が青ざめた。 ※ 主語は mina (顔、表情=女性単数主格)で、動詞は zblała (zblać の3人称単数女性過 去形)で与格となっているのは oponentowi であり、mojemu は mój の単数与格形であ る。 ④ Ze strachu włosy stanęły mu dęba. 恐怖から彼の髪の毛は逆立った。 ※ 主語は włosy 髪の毛(通常は複数)で、動詞は stanęły で、与格となっているのは mu である。włosy stanąć dęba は「髪の毛が逆立つ」という意味。 5)ある行為によって失った人や不利を受けた人を表す。 ① Zdechł mi pies. 私の犬が死んだ(直訳すると私にとって犬が死んだ)。 単文の構成 555 ※ 主語は pies 犬、で動詞が zdechł で、mi が与格となっている。 ② Zepsułem ci samochód. 私は君の車を壊した。 ※ 主語は私(男性)で、動詞は zepsułem( zepsuć の過去単数1人称男性形=これは 完了体であり、不完了体は psuć )である。そして、ci 君に、が与格で、samochód 車、 は直接補語で対格形である。 ③ Zginął mi zegarek. 私の時計がなくなった。 ※ 主語は zegarek (時計)で、動詞は Zginął(zginać の過去単数3人称男性形=これは 完了体であり、不完了体は ginać )である。そして、mi が与格である。 ④ Ukradli mi portfel. 彼らは私の財布を盗んだ。 ※ 主語は特に明記していないが、動詞が Ukradli という過去複数3人称男性人間形で あるので、「彼らは」として良い。与格は mi であり、目的語は portfel であり、対格 形である。 ⑤ Tomasz psuje jej opinię. トーマスは彼女の名声を損なわせている。 ※ 主語が Tomasz であり、jej が与格となっている。 6)与格を取る動詞 ロシア語において補語として与格を要求する動詞はかなり見られた。例えば、 аккопаниравать 同行する・伴奏する、аплодировать 拍手喝采する、вредить 害を 及ぼす、верить 信じる、грозить 脅す、доверять 信頼する、等である。この点は、 ポーランド語でも同じであり、同様に考えて良い。それには、次のような動詞がある。 ① 援助、協力、命令、使役等、を表す動詞 pomóc(完)pomogać(不完) 助ける、sprzyjać ~に好意的である To lekarstwo zawsze pomoga mi na ból głowy. この薬は常に私を頭痛から助けてく れる。 Warunki klimаtусznе sprzуjаją plоnоm. 気象条件は収穫にとって有利である。 ② 加害、妨害、反対等を表す動詞 odmówić(完)odmawiać(不完) 拒否する(この動詞は拒否する物は生格で表し、 拒否する相手を与格で表す。)、sprzeciwić się 反対する、zaprzeczyć 反論する・否認 する、szkodzić 損害を与える、przeszkadzać 妨害する、grozić 脅かす(対象の人が 与格となり、手段たる物は造格となる)、ulegać ~に屈する、przeczyć 矛盾する On odmówił mi propozycji. 彼は私の提案を拒否した。 Opozycja sprzciwi się decyzji władzy. 野党は政府の決定に反対する。 On zaprzeczył aktowi oskarżenia. 彼は罪状を否認した。 Palenie szkodzi ludzikiemu zdrowiu. 喫煙は人間の健康に害を与える。 Ego wizyta przeszkodziła mi w odpoczynku. 彼が訪問したために、私は休憩を取る ことができなかった(彼の訪問が私に休憩することを邪魔した。)。 Kradzież z włamaniem groził strażnikowi nożem. 強盗はガードマンをナイフで脅 した。 Nasza drużyna uległa drużynie rezerwowej. 我々のチームは予備軍(二軍)に敗れ てしまった。 556 単文の構成 Ten pomysł przczy zdowemu rozsądkowi. その考えは常識に矛盾する。 Przeciwnikom prezydenta grodzi areszt. 大統領の反対派に対して、逮捕をすること で脅かすだろう。 ③ 喜び、驚き、羨望等を表す動詞 dziwić się 驚く、zazdrościć うらやましがる Dziwiłem się wiadomości. 私はそのニュースに驚いた。 Zazdroszczę zawsze mu talenta. 私はいつも彼の才能がうらやましい。 ④ 信頼、追随、感謝、同情等を表す動詞 ufać 信用する、towarzyszyć ~について行く、dziękowac 感謝する、kłaniać się お 辞儀をする、służyć 仕える、poddać się, poświęcić 捧げる、współczuć 同情する、 odpowiadać 適合する Nie można ufać tym ludziom. これらの人々を信用してはいけない。※ tym ludziom が与格形 Syn towarzyszy ojcu. 息子は父について行く。 Dziękuję ci za pomoc. あなたの援助に感謝します。 Jan zawsze kłania się nauczycielowi. ジョンはいつも先生にお辞儀をする。 Adam służy społeczeństwu, pisząc książkę. アダムは本を書くことによって社会に 貢献する。 On współczuje jej smutnej okolicznosci. 彼は彼女の悲しい境遇に同情している。 Poświęcała wiele czasu oświacie dziecku. 彼女は多くの時間を子供の教育に捧げた。 Ta kawa nie odpowiada mojemu gustowi. そのコーヒーは私の好みに合わない。 7)述語副詞の主体 ロシア語においては、Мне скучно. のように、述語副詞においてその主体を与格で表 すことがあるが、同様のことはポーランド語においても見られる。これらは感情や感覚 や気持ちを表すものである。 ポーランド語においては、例えば、Duszno mi. 私は息が詰まる、の場合、duszno が 述語副詞である、 mi が与格となっているのである。その他には、 chłodno 寒く、 ciepło 暖かく、 gorąco 暑く、 łatwo 簡単に、 mdło 不快に、miło 心地よく、przyjemnie 心地よく、ponuro どんよりした、przykro 残念だ、smutno 悲しく、 trudno 難しく、 wesoło 陽気に、wygodnie 気持ちよく、zimno 寒く、źle 悪く、等である。 Zimno mi. 私は寒く感じる。 Jest mi przykro, że on nie przyjdzie. 彼が来なくて、残念だ(私は残念に思う)。 Jest mu teraz źle. 彼は今、体調が悪い。 Przyjemnie mi Pana poznać. 私は、あなたとお知り合いになれてうれしい。 8)3人称でしか用法がない動詞で、特定の主語をもって表すものは、主体を与格にし て表す。ロシア語においては нравиться 等の動詞で見られたものである。 これに関する動詞には、należec się 当然~されるべきである、podobać się ~に好ま れる、 przysługiwać ~に値する、udać się ~に成功する、等がある。 単文の構成 557 Przysługuje mu wolny wstęp. 彼には自由に入場できる資格がある(主語は wolny wstęp で、mu が与格である)。 Ona mi się padoba. 私は彼女が好きである(主語は Ona で、mi が与格である。)。 Należy jej się nagroda. 彼女は賞を受けるに値する(主語は nagroda で、jej が与格 である。)。 Udało mi się znaleźć pracę. 私は仕事を見つけることができた。 9)特定の主語がない文(無人称構文)での主体を表す場合 これに関する動詞には brakować 不足する、iść 行く、wydawać się ~の様に見える、zdawać się ~の様に 見える、等がある。 Brakuje mi czasu. 私には時間がない(主語がなく、目的語たる czasu は生格であり、 主体が mi という与格となっている。)。 Wydaje mi się, że on jest chory. 私は彼が病気であるように思われる。 Jak panu idzie? ご機嫌はいかがですか( panu が与格であり、主語はなく、idzie は iść の3人称単数現在)。 10)ある種の無人称述語の主体となる。そのような無人称述語には brak, szkoda, potrzeba, wstyd, żal 等がある。対象は生格で表すので、生格とも関係があり、そち らも参照されたい。 Brak mu współczucia. 彼には同情心が欠けている。 ※ この文の mu は与格であり、współczucia は生格である。 11)与格支配の前置詞 次の5つであるが、詳細は前置詞の項を参照されたい。 dzięki ~のお陰で, przeciw(ko) ~に反して ku ~に対して wbrew ~にもかかわらず na przekór ~にもかかわらず 12)与格支配の形容詞 ロシア語において形容詞の述語的用法の場合に、与格支配の形容詞があった。例えば、 благлдарный である。このようなものはポーランド語においてもかなり見られる。 ① bliski 近い Ona jest mi bliska. 彼女は私とは親密だ。 ※ しかし、場所的に近い場合には生格を取ることに注意すべきである。resutauracja bliska hotelu ホテルに近いレストラン ② dłużny 借りがある Jestem mu dłużnym za pomoc. 私は助けてもらったことで彼に借りがある(恩義が ある。) ③ drogi 親しい On jest drogi mojemu sercu. 彼は私とは非常に親密だ。 ④ obcy 異質な Jej sposób jest mi obcy. 彼女のやり方は私のとは異質である。 ⑤ przeciwny 反対している To jest przeciwne naturze.それは自然に反する。 ⑥ przychylny 好意的な przyjazny 好意的な 558 単文の構成 Nauczyciel jest mi przchylny. 先生は私に好意的である。 ⑦ rad うれしい Jestem rad jego przyjściu. 彼が到着して私はうれしい。 ⑧ równy 等しい Dla dziennikarza przesada jest równa kłamastwu. ジャーナリストにとって誇張は 嘘に等しい。 ⑨ wdzięczny 感謝している Jestem wam bardzo wdzięczny. 私はあなたに非常に感謝している。 ⑩ właściwy 特有の Rozum jest właściwy człowiekowi. 智恵は人間にとって特有のものである。 ⑪ wiadomy 知られた Wypadek jest wiadomy wszystkim. その事故は皆に知られている。 ⑫ wierny 忠実な Jan jest wiernym swoim przekonaniom. ヤンは自分の信念に忠実である。(この場 合、wiernym は造格であるが、swoim przekonaniom は複数与格となっている。) ⑬ winny 負債を負っている、責任がある Adam jest jej winny wyjśnienie. アダムは彼女に対して説明する義務を負っている。 ⑭ znany 知られた Czy ten pies jest ci znany? この犬をあなたは知っていますか。 ⑮ zobowiązany ~に恩義がある Jestem panu bardzo zobowiązany. 私はあなたにたいへん感謝している。 13)不定詞の主語として 論理上の主語を与格で表すのである。しかし、現在では話し言葉では主格を用いて表 す。 ① Jest komu to zrobić. それをすることができる人がいる。 ※ komu は誰かある人という意味の与格であるが、話し言葉では kto となる。 ② Nie ma komu nim się zajmować. 彼の世話をする人は誰もいない。 ※この文の場合の論理上の主語は与格の komu で表す。ma は mieć の単数3人称であ り、nim は単数造格形である。zajimować się が造格を取る代名動詞だからである。 14)精神状態や身体的感覚を表す動詞を使った無人称文の場合、主体は与格で表す。 これには、burczeć ごろごろ鳴る、chcieć się ~を欲する、dzwonić 耳鳴りがする、 nudzić się 退屈である、kręcić się めまいがする、odbić się げっぷが出る、szumieć ぶ んぶん鳴る、等がある。 Burczy mi w brzuchu. 私の胃がごろごろ鳴っている。 Jeść mu się chec. 彼は腹が減っている。 Dzwoniło mi w uszach. 私は耳鳴りがする(uszach は ucho 耳、の複数前置格) Nudzi mi się. 私は退屈だ。 Kręci mi się w głowie. 私はめまいがする。 単文の構成 559 Ⅴ 対格 1.対格は基本的には他動詞の直接補語となる。この点はロシア語と同じである。また、 対格支配の前置詞も多く見られる。ただ、対格支配の前置詞には前置格支配の前置詞に なることも多いので、その区別が難しい。ただ、その点も、ロシア語と同じである。対 格は kogo や co の問いに対する答えになるものである。 Kogo on kochasz? 彼は誰を愛しているのですか。 Co John kupił? ジョンは何を買ったのか。 2.用法 1)直接他動詞の直接補語として 但し、直接他動詞の中には直接補語として生格、与格、造格を要求する動詞もある ので、それ以外のものということになる。しかし、対格支配の他動詞は非常に多いの でいちいち挙げることはできないが、ここでは代表的なものを挙げておく。 ① 所有に関する直接他動詞 これには、mieć, posiadać, obejmować, zawierać, osiągać 等がある。 Mam książkę. 私は本を持っている。 Adam posiada majątek. アダムは資産を持っている。 Matka obejmowała syna. 母は息子を抱きしめた。 Herbata zawiera znaczene ilości katechin. 紅茶は重要なカテキン類の多くを含 んでいる。 Osiągać porozumienie 同意を得る ② 消費に関する直接他動詞 これには、jeść 食べる、pić 飲む、konsumować 消費 する、 spożywać 飲食する、pochłaniać 吸収する、等がある。 ③ 感覚に関する直接他動詞 これには、widzieć 見る、ogładać 見つめる、 obserwować 観察する、dotykać 触れる、czuć 感じる、stwierdzać 証明する、znać 知る、等がある。 Znam tę książkę.私はその本を知っている。 ④ 原因に関する直接他動詞 これには powodować ~を引き起こす、 robić ~をする ⑤ 話したり書いたりすることに関する直接他動詞 これには mówić 話す、 opowiadać 話す、opisywać 記述する、oznajmiać 伝える、przekazać 書き写す ⑥ 学ぶことに関する直接他動詞 これには studiować 学習する、czytać 読む、 analizować 分析する、powtarzać 繰り返す、pisać 書く、prowadzić 導く、 rozumieć 理解する Przecztałem twój artykuł. 私は君の記事を読んだ。 ⑦ 出来事に関する直接他動詞 これには gotować 準備する、sprzątać 掃除をする、 przygatowywać 準備をする、prasować 働く、załatwiać 処理する ⑧ 喪失に関する直接他動詞 これには gubić 紛失する、tracić なくす、przegrywać なくす、等がある。 560 単文の構成 2)時間とか物の量を表す対格 Czekam tu godzinę. 私はここで1時間待っている。 Jestem cały dzień zajęty. 私は一日中忙しい。 ※ cały dzień は対格で一日中を表す。 Trzy lata, mieszkałem tu. 私はここに3年間住んでいた。 少し特殊なのは、回数を表す場合も対格となることである。 Jestem w Polsce pierwszy raz. 私は初めてポーランドにいる。 3)物の量を表す対格 Okręt waży trzydzieści tysięcy ton. その船は3万トンの重さがある。 ※ 主語は Okręt で動詞は waży であるが、これは現在単数3人称である。 4)対格を取る前置詞 これについては前置詞の項を参照されたい。 5)健康状態を表す場合にその主体を対格で表すことがある。 Boli mnie głowa. 私は頭が痛い。 Matkę bolą oczy. 母は眼が痛い。 Ⅵ 造格 1.ロシア語においては造格は様々な用法があり、ロシア語の表現を豊かなものにして いたのであるが、ポーランド語においても同じである。造格を考える場合に、重要なこ とは、ある行為を完結するために用いられる道具を表すものと、行為を共にする行為者 を表す際には文法上、異なることである。すなわち、前者の場合には前置詞なしの造格 形が用いられるのに対して、後者の場合には前置詞 z と造格形が用いられるのである。 例えば、myć włosy szamponem シャンプーで髪を洗う、というのは正しいが、myć włosy z szamponem というのは正しくない。一方、prać koszulę z żoną 妻と一緒にシ ャツを洗う、と言えるが、prać koszulę żoną とは言えない。 造格は疑問詞である z kim または czym あるいは z czym に対する問いに答えるも のである。 ・Z kim zwinkle chodzisz do szkoły? 普通、あなたは誰と一緒に学校へ行きますが。 Z przyjacielem. 友人とです。 ・Czym napisałeś dokument? あなたはその書類を何で書きましたか。 Długopisem. ボールペンです。 ・Z czym chcesz kawy? あなたは何入りのコーヒーが欲しいですか。 Z mlekiem. ミルク入りです。 2.造格の用法の主なものには以下のものがある。 1)動作が行われる時に使用されるものを表す。特に、道具や身体の部分、あるいは行 い方、等を表す。しかし、それのみならず比喩的な表現に使われることもある。 myć szamponem シャンプーで洗う、pisać długopisem ボールペンで書く、 単文の構成 561 smarować farbą 絵の具で塗る、przekonać teorią 理論で説得する、 widzieć oczami duszy 心眼で見る このような用法は受動形容分詞が用いられる場合もよく使われる。例えば、 zachwycony filmem その映画に魅了される( zachwycić 魅了する、から派生したも のであるが、形容詞として働いている。)、zniszczony wojskem 部隊によって破壊 された、等である。 2)運搬する手段を表す jechać taksówką タクシーで行く、płynąć statkiem 船で行く、 lecieć samalotem 飛行機で飛ぶ しかし、バイク rower の場合は、造格で表すのではなく、na + 前置格、で表すの が通常である。jechać na rowerze バイクに乗って行く、とする。もっとも、jechać rowerem としても良い。 3)原因を表す 受動態の動詞と結びつき、動作状態の主体を表すことがある。この点もロシア語と同 じである。 obudzić krzykiem 叫び声で目を覚まされる Dom został zniszczony wiatrem.その家は風によって破壊された。 On został zmoczony deszczem. 彼は、雨によってずぶぬれになった。 Izrael został sparaliżowany strajkiem. イスラエルはストライキで麻痺状態にな った。 原因を表す場合は、受動形容分詞と共に用いられる場合もある。例えば、grzany słońcem 大陽で暖められた、である。 4)覆う物とか物質を表す nakryć obrusem テーブルクロスでカバーする、napełnić wodą 水で一杯にする、 napełnić koszyk owocami かごを果物で一杯にする 比喩的に用いられることもある。例えば、napełnić +(人の対格)+ radością 人 の心を喜びで一杯にする、である。 5)通る所を表す ロシア語においては、例えば Мы шли лесом. (私たちは森を通って行った。)の ように移動が行われる道筋を表す場合に造格が使われるが、同じことはポーランド語 でも見られる。 iść lasem 森を通って行く、zejść schodami 階段を降りる 6)動かす身体の部分を表す ロシア語においては мигать глазом (片目をつぶる)のように動かす身体の部分 を表す場合に造格を使うが、この点はポーランド語でも見られる。 bębnić palcami 指でとんとん叩く、trząść głową 頭を振る 7)随伴する動作、表情、姿勢、様態、等を表す ロシア語においてもこの用法は見られる。例えば、Мы шли быстрыми шагами. 我々は早足で歩いた、である。これは、ポーランド語においても見られるものである。 562 単文の構成 例えば、odpowiedzieć uśmiechem 笑顔で答える、のように随伴する表情を表す場合 に造格が使われる。また、pomijać coś milczniem 黙って~に目を通す、も同様の使い方である。 Moim zdaniem chemia jest trudna. 私の意見では、化学は難しい。 mówić szeptem 小声で話す pływać kraulem クロールで泳ぐ 8)比喩を示す ロシア語においては、Он летел стрелой.(彼は矢のように飛んでいった)のよう に比喩的表現の場合に造格形が用いられるが、このことはポーランド語でも同じであ る。 biec lotem strzały 矢のように飛んでいく ※ biec 走るという意味であるが、この動詞は特殊で不定形の最後が ć ではなく c で ある。lotem は lot(飛ぶこと)の造格形であり、strzały は strzała(矢=女性名詞) の生格形である。 9)季節や朝・昼・晩を表す。また、継続期間も表すことができる。 ロシア語においては、季節や朝・昼・晩を表す場合に造格形が用いられることがあ るが、その点はポーランド語でも同じである。zimą 冬に、wiosną 春に、letem 夏 に、jesienią 秋に、等である。また、nocą 夜に、等もある。 ロシア語においては、造格となって時の副詞となったが、ポーランド語においても 同様のことが見られる。例えば、czasem 時々、等である。 継続期間も造格で表すことができる。例えば、On pracował na fabryke całymi latami. 彼は何年も続けて工場で働いた、である。 尚、「~月に」、を表す場合はロシア語は в +前置格で表したが、ポーランド語に おいても同じで w + 前置格で表す。 10)述語内容詞となる造格 ロシア語においては Он был учителем. (彼は教師をしていた。)のような場合、 述語の名詞が造格となったが、そのようなものはポーランド語でも見られる。 On jest Polakiem. 彼はポーランド人である。 On był nauczycielem.彼は教師をしていた。 ただ、注意すべきはロシア語の場合は Он учитель. 彼は教師である、のように恒 常的状態の場合には主格が用いられるが、ポーランド語の場合には恒常的状態であっ ても、造格形になるということである。ただ、動詞なしで to を使って恒常的状態を 表す場合には、述語内容詞となるものは主格となることに注意すべきである。上の例 から言えば、On to Polak. となる。 また、形容詞が述語となる場合は通常は主格であった。しかし、「~のように見え る」、とか、「~になる」、とかいう場合、文語では造格を取ることが多い。例えば、 On okazał się zdrowym. 彼は、健康であることが分かった、On wydaje się zdolnym. 彼は、能力があるように見える、である。もっとも、現代ポーランド語ではその場合 でも主格が用いられることが多い。 11)補語を2つ取る動詞の場合に、第2の補語が造格になることがある。これはロシ ア語において、認定、選定、規定、想定、命名等を表す動詞の場合、その行為の結果現 単文の構成 563 れる状態を造格にして表すのと同じである。 ポーランド語においても同様であり、On mianował mnie biurokratem. 彼は私を官 僚に任命した、の biurokratem である。 この場合、第1の補語は直接補語であり、対格で表し、第2の補語は間接補語であり、 造格で表すのである。 On został wybrany księciem.彼は王子に選ばれた。 zastąpić naftę elektrycznością 石油を電気に換える。 12)造格と結びつく形容詞 ロシア語において形容詞の述語的用法の場合に、補語と して造格を取る形容詞があった。例えば、больной、богатый、гордый、довольный 等、である。ポーランド語においても同様のことが見られる。 Jestem zdziwiony twoją reakcją. 私はあなたの反応に驚く。 Byłem rozczarowany tobą. 私は君には失望した。 しかし、zadowolony z + 生格 ~に満足する、は前置詞 z を介する。 13)造格による名詞の限定 これは上述した各造格の用法と関係したものであり、主として動詞が名詞化された場 合(抽象名詞化や動名詞化等)に、それと関係する名詞の格はそのまま維持される場合 である。 jazda autobusem バスでの出発(バスで行く、という場合、jechać autobusem とな るが、jechać が名詞化されても、関係する名詞の格は造格のまま維持されるのである。) pisanie długopisem ボールペンでの筆記(ボールペンで書く、という場合は、pisać długopisem であり、pisać が動名詞となっても、関係する名詞の格は造格のまま維持 されるのである。) 14)造格を取る動詞 ロシア語においては直接補語として造格を取る動詞があり、支配、指導、領有、利用 等を表す動詞は、補語を造格にする。この点はポーランド語も同様である。例えば、 rządzić 支配する、kierować 指導する、handlować 商売する、władać ~を操る、であ る。また、造格支配の動詞で特徴的なことは się を伴うものが多いということである。 例えば、zajmować się ~の面倒を見る、interesować się ~に興味がある、opiekować się ~の世話をする、 cieszyć się ~を楽しむ、等である。これらのうち opiekować się 以 外は再帰代名詞を伴わなくても、ある意味を表すが、その場合には造格支配ではない。 例えば、zajmować 占める、の場合は、tłum zaimował cały plac 群衆が広場全体を占 めていた、のように直接補語は対格である。一方、opiekować się は純粋代名動詞であ り、補語が造格を取る。以下は、再帰動詞(広義の)とそうではない動詞を含めて、造 格を取る動詞の例を示す。 Interesuję się tenisem. 私はテニスに興味がある。 On gardzi starym myślą. 彼は古い考えを軽蔑している。 Generał dwodzi wojskiem. 大将は軍隊を率いている。 Wojna zakończył się zwycięstwem. その戦争は勝利に終わった。 Posługiwałem się siłą. 私は力を利用した。 564 単文の構成 Ona opiekowała się chorym. 彼女は病人の世話をした。 On sterował samochodem. 彼は自動車を運転した。 On włada angielskim. 彼は英語を自由に操る(英語が堪能である)。 On handlował kwiatami. 彼は花を商売にしていた。 Ojciec obdarzył syna pieniędzmi. 父は息子にお金を与えた。 On para się baseballem. 彼は野球にちょっと手を出している。 Prezydent rządzi państwem. 大統領はその国を支配している。 Ahmadineżad mianował się ministrem. アフマディーネジャード大統領は 大臣を任命した。 (区別すべきは例えば grozić 警告する、の場合である。Iran grozi odwetem. イランは報復を警告する、であるが、この場合の grozić は自動詞であり、 odwetem は造格であるが、直接補語ではない。 3)の原因としての用法であ る。) 15)再帰代名詞を使った構文や無人称構文において動作の主体を造格で表すことがあ る。 Aula wypełniła się studentami. ホールは学生達で一杯である。(この場合は、主語 は aula であるが、受動の意味を有する再帰代名詞が使われており、動作主は studentami という造格で表されている。従って、再帰代名詞を使わないと、 Studenci wypełnili aulę となる。 ) Łaka porkryła się kwiatami. 草原は花で覆われていた。(主語は łaka であるが、 受動の意味を有する再帰代名詞が使われており、主体となるものが kwiatami と いう造格で表されている。従って、再帰代名詞を使わないと、Kwiaty pokryły łakę. となる。) Piwnicę zalało wodą. 地下は水浸しになった。(無人称構文で主語はなく、wodą が 造格で、piwnicę は対格となっている。従って、造格を使用しない場合には、Woda zalała piwnicę. となる。) Powiało chłodem. すきま風が吹いていた。 16)造格を取る前置詞 造格を取る前置詞については前置詞の項を参照されたい。 Ⅶ 前置格 前置格は前置詞とともにしか使用されないのはロシア語と同じである。そこで、前置 格を取る前置詞を挙げると、na, przy , o , w , po であり、przy は前置格のみしか取らな いが、それ以外は対格支配でもある。しかし、対格の場合と前置格の場合で意味が異な るのは前述したとおりである。前置格が使われるのは、前置詞の後であり、前置詞の項 を参照されたい。 単文の構成 565 Ⅷ 呼格 呼格はロシア語にはないものであり、文中の他の語とは結びつかない。呼格は話し手 が受け手に対して呼びかける時に使われるものであり、今日では徐々にすたれつつある (特に話し言葉では。)。 呼格が使われる場合は、尊敬の念や、愛情を伴った感情が随伴していることが多い。 複数形においては呼格は主格と全く同じ形である。これはどの名詞においてもである。 従って、呼格を取り上げるのに意味があるのは単数形だけである。挨拶に関して呼格が 使われる場合には、必ず panie か pani を伴っている。 ただ、次の特徴を有している。 1.書き言葉 書き言葉では手紙の宛名とか、証明書の宛名、申請書の宛名で使われることが多い。 Szanowny Panie 拝啓(男性に対して) Szanowna Pani 拝啓(女性に対して) Szanowny Panie profesorze 拝啓、先生 Drogi Janeku 親愛なるヤネックさん Cześć, Filipie! Jak się masz? はーい、フィリッペ。元気? 2.話し言葉 呼びかけの場合でも話し言葉では前述したように呼格は避けられる傾向にある。特に、 pani や panie を使わない場合にはその傾向がある。そして、それに代わって、主格が 使われる。 Adam! アダムよ。Panie Adamu! アダムさん。 Dzień dobry, panie profesorze! おはようございます。先生! 3.感嘆の声等の場合 O Boże! 信じられない! Ojczyzno moja! 我が祖国よ! Ty świnio! おまえは豚だ。 566 複文の構成 第5章 複文の構成 複文は、主語(もっとも一肢文はその限りではない。)と述語を備えた単文が2つ以 上結びついていて一つの文を構成するものである。複文には並立複文と従属複文があり、 前者はそれぞれの単文が同格のもの、後者は単文の間に主従関係のあるものをいう。複 文を構成する単文を節と呼ぶ。並立複文ではいずれの単文も主節となり、従属複文では いずれかの単文が主なもの(主節)となり、その他の単文はそれに従属し(従属節)、 従属節全体としては主節のいずれかの成分になっている。 尚、主節と従属節との関係は1対1とは限らず、一つの従属節のいずれかの成分にさ らに従属節がついて、いわば直列的に長くなっていくもの、主節の一つの成分にいくつ もの従属節がついて、いわば並列的な構造になるもの、その両方が混在するもの等があ る。 Ⅰ 並立複文 並列結合を2つあるいはそれ以上の主節に適用してできる複合体を並立複文と呼ぶ。 並立複文には、形態的連結手段によるものと形態的連結手段を用いないものがある。 形態的連結手段の主たるものは接続詞であるが、それは後方の文の直前に置かれるのが 通常である。 Mąż jest w domu i żona rubi zakupy w supermarkecie. 夫は家にいて、妻はスー パーで買い物をする。 一方、形態的連結手段を用いないものは、形態的連結手段が何もないので、意味や文 脈や終止符(コンマなど)、ハイフン、コロン等によって意味内容を判断することにな る。 1.形態的連結手段のない並立複文は次のように分類できる。 1)各単文が同時に起こる事象を表す。 Deszcz padał, wiatr miał. 雨が降り、風が吹いていた。 Niebo jest jasne, wiatru nie ma. 空は明るく、風はない。 Nie uczył się, nie pracował. 彼は勉強も仕事もしなかった。 2)後続の単文が最初の単文に続く事象を表す。 Deszcz zaczął padać, ludzie otworzyli parasole. 雨が降り始めた。そして、人々は 傘をさした。 3)各単文が対比を表す。 Obiecywał dużo- nie zrobił nic. 彼は多くのことを約束した。それに反して、何 もしなかった。 Mój brat jest ode mnie starszy, ja jestem wyższy. 私の兄は私より年上だ。しかし、 私の方が背が高い。 複文の構成 567 4)後続の単文が最初の単文の原因を表す。 Premier jest zadowolony - wszystko w porządku. 首相は満足だった。すべて順 調だったから。 5)後続の単文が最初の単文の説明を表す。 Zdałem wszystkie egzaminy – ukończyłem już studia. 私はすべての試験に合格 した。つまり、学士を取得したのであった。 Zdałem wszystkie egzaminy: ukończyłem już studia. 6)最初の単文が後続の単文の条件を表す。 Deszcz ustanie - mogę grać tenesa. 雨がやんだら、私はテニスをすることがで きる。 7)離接的内容を表す。 Idziesz, nie idziesz? 行くの行かないの? 2.形態的連結手段のある並立複文 1)連辞的 これは単に2つ以上の主節を結合し、併置するだけの場合であり、論理的 な関係が存在しないものである。これに用いられる形態的連結手段には、i, a, oraz, a także, jak i, jak również, jak też 等がある。その他、aż, tudzież, a także, a następnie, a potem, i… i, to, to… to, czy… czy, czyli (przestarzałe), lecz, nie tylko… lecz także, nie tylko… ale i, nie dość że… to jeszcze, nie dość że… ale jeszcze 等も使われる。 但し、 上述したようにこのような形態的連結手段を用いなくても、連辞的並立複文は作ること ができる。主なものは以下のごとくである。 ① i そして Donald jest w domu i czyta. ドナルドは家にいて、そして、本を読んでいる。 ② a そして Donald rano był tu, a wieczorem tam. ドナルドは朝方はここにいた。そして、夕方 はあそこにいた。(この場合、a 以下は był が省略されており、複文となっている。) ③ a następnie それから Studiowała angielski, a następnie matematykę. 彼女は英語を勉強した後に、数学を 勉強した。 ④ nie tylko ... lecz także ... ~ばかりでなく、~も(nie tylko ... ale i ) 同じようなものとして、nie dość że..., to jeszcze... あるいは nie dość że...., ale jeszcze がある。 Nie tylko byłem już w tej okolicy , lecz także spędzałem noc w tym domu. 私は、既 にその地域にいたばかりでなく、その家で一晩過ごした。 Nie dość że musiałem zostac w domu, to jeszcze musiałem go posprzątać. 私は家 に留まらなければならないばかりではなく、家を片付けなければならない。 2)排除的 この場合は述べられたものが発生しないことを指す。 ① ani ~も、~もない 568 複文の構成 Maria napisała ani nie zadzwoniła. マリアは手紙も書かなかったし、 電話もしてこな かった。 Nie uczył się ani nie pracował. 彼は勉強も仕事もしなかった。 ② ani .... ani ~も、~もない Donald nie ma ani czasu, ani ochoty. ドナルドは時間もないし、その気もない。 ③ ani też Nie wyjechał, ani też nie zamierzał wyjechać. 彼は出発しなかったし、 出発しようと もしなかった。 3)離接的 これは、前方の主節の内容と後方の主節の内容が相容れない関係に立つ場合である。 これに関係する接続詞には albo, lub, bądź, czy, albo też, albo… albo, lub, lub też, czy, czy… czy, czy też, czy może raczej, bądź, bądź… bądź, to… to 等がある。 ① albo On poszedł już na spacer albo jest jeszcze w domu. 彼は既に散歩に出かけたか、あ るいはまだ家にいる。 ② czy Wychodzisz czy zostajesz w domu? あなたは出かけますか、それとも家にいますか。 ③ lub Napiszę list lub przeczytam książkę. 私は手紙を書くか、読書をするつもりだ。 ④ bądź Wyjedziemy nad morze bądź spędzimy lato w górach. 我々は夏には海水浴をする か、あるいは山登りをする。 4)逆接的 これは、後方の主節の内容が前方の主節の内容と対立する関係にある場合である。こ れに関係する接続詞には ale, lecz, jednak, a 等がある。その他には、zaś, jednakże, a jednak, natomiast, tymczasem, a tymczasem, za to, a mimo to, atoli, wszak, wszakże, przecież, owszem, tylko がある。 ① ale しかし Mój dom jest duży, ale niewgodny. 私の家は大きいが、住み心地が悪い。 ② lecz しかし Wiem, lecz nie powiem. 私はそれを知っているが、言わない。 ③ a 一方では Maż czyta książkę, a żona gazetę. 夫は本を読んでいる。一方、妻は新聞を読んでい る。 ※ この a が連辞的になるか、逆説的になるかは文脈によって判断する他はない。 ④ zaś それに反して Obiecywał dużo, nie zrobił zaś nic. 彼は多くのことを約束した。それに反して、何も しなかった。 ⑤ jednak ~にもかかわらず 複文の構成 569 Spróbował, jednak nie udało mu się. 彼はやろうとしたが、うまく行かなかった。 5)説明的 これは後方の主節が前方の主節の内容を説明するものである。これに関係する接続詞 には czyli, to jest, to znaczy, to znaczy że, innymi słowy, więc, a więc, mianowicie, bowiem 等がある。 ① czyli Zdałem wszystkie egzaminy, czyli ukończyłem już studia. 私はすべての試験に合格 した。つまり、学士を取得したのであった。 ② to jest Adam nie poszedł do dentysty, to jest stchórzył. アダムは歯医者に行かなかった。 つまり、臆病者だったのだ。 6)結果的 これは後方の主節が前方の主節の内容から生じる結果を表すものである。これに関係 する接続詞には i, a, więc, tak więc, tak że, dlatego, w wyniku czego, zatem, toteż, tedy, to, to i, przeto, za to, stąd. がある。 ① więc Była piękna pogoda, więc poszedłem na spacer. すばらしい天気だったので、私は散 歩に出かけた。 ② dlatego Wniosek wpłynął po terminie, dlatego nie został rozpatrzony. その申請書は期日後 に届いた。そのため、受け付けられなかった。 ③i Deszcz zaczął padać i Nowak otworzył parasole. 雨が降り始めた。それで、ノヴァ ックは傘をさした。 3.副分詞を用いた並立複文 並立複文は副分詞を用いても作ることができる。 Zjadłszy kolację, napisałem list. 私は夕食を取ってから、手紙を書いた。 Maria przeczytała książkę, słuchając muzyki. マリアは音楽を聴きながら本を読み 終えた。 Ⅱ 従属複文 従属の複文は主節と従属節から構成されるが、従属節は主節とは、接続詞あるいは関 係代名詞や疑問代名詞によって結合される。ロシア語において従属節は、1.主語的従 属節、2.述語的従属節、3.補語的従属節、4.定語的従属節、5.状況語的従属節、 があり、その中には 1)場所の従属節、2)時の従属節、3)様態の従属節、4)目的 の従属節、5)原因・理由の従属節、6)比較程度の従属節、7)条件仮定の従属節、 570 複文の構成 8)譲歩の従属節、があり、さらに6.付加の従属節、があったが、ポーランド語にお いてもほぼ同様である。 1.主語的従属節 これは、従属節自体が主節の主語となる場合である。主語は他の文成分と同様に、従 属節によって取って代わられたり、補われたりする。そして、主節は接続詞 że, żeby, by, jakoby, kiedy, gdy, czy や関係代名詞の kto, co, który, czyj 等と結びつく。主節が、従 属節の表現との関係において、問い、否定、懐疑、不確定などの状態である時は、従属 節は kto, co, jaki, który,jak, gdzie, kiedy, czy と結びつく。疑問文の場合には相関詞は通 常は必要ないが、kiedy, gdy, że と関係する主節には、相関詞である to や fakt が必要 である。主として、kto? 誰が、や co? 何が、という問いに答えるものである。その場 合に、関係代名詞による場合と、接続詞による場合と、疑問詞による場合がある 1)関係代名詞による場合 この場合は、関係代名詞 kto, co ときに który を通して、主節と従属節が結ばれる。 その主節は指示代名詞 ten で受けるが、それがない場合もある。 Kto dobrze pracuje, ten zbiera plonów. 一生懸命働く人は、多くのものを手に入れる ことができる。 Kto skończył, może wyjść. 物事をなし終えた人は誰でも、行くことができる。 Co się stało, to się nie odstanie. 起こってしまったことは取り戻せない。 Ci, którzy skończyli, mogą wyjść. 物事をなし終えた人々は行くことができる。 2)接続詞による場合 この場合に主節と従属節を結ぶのは、że, żeby, czy 等である。 Okazało się, że Alicja przyjechała wcześniej. アリスが以前やってきたことが判明し た。 Możliwe, że mu się uda. 彼が成功することは可能だ。 To prawda, że Janek lubi Alicję. ヤンがアリスを愛しているのは本当だ。 To ważne, żeby ona mnie pomógła. 彼女が私を助けてくれることが重要だ。 Jest wątpliwe, czy on przyjedzie. 彼が来るかどうかは疑わしい。 To nieprawa, żeby sportowcy zawsze byli uczciwi,. スポーツマンが常に正直である と言うことは、真実ではない。 To pewnie, że on przyjdzie. 彼が来るのは確かだ。 Interesuje mnie, dlaczego przyjdziesz. あなたがなぜ来るかは私には興味がある。 3)疑問詞による場合 この場合に主節と従属節を結ぶのは、gdzie, kiedy, skąd, czyj, kto, kogo 等である。 Nie obchodzi mnie, kiedy przyjadziesz. 君がいつ来るかは、私には興味がない。 2.述語的従属節 述語内容詞には通常、名詞や形容詞が当てられるが、それを文で表したものであり、 複文の構成 571 主節と従属節を結ぶものは、関係詞 co, kto, który, jaki, ile や接続詞 że, aby である。 また、指示代名詞を相関詞として表すのが通常である。 1)関係詞による場合 Jestem tym, czym byłem. 今の私は、昔のままの私である。 Nie byłem taki, jaki jestem. 以前の私は、今のような私ではなかった。 On dziś jest tym, czym był przed rokiem. 今日の彼は1年前と同じことをしている。 On jest tym, kto pomaga sąsiadowi. 彼は隣人を助ける様な人だ。 Chleb powinien być taki, żeby wszystkim smakował. パンはすべての者に味わわせ るようにしなければならない。 Opinii o tym samochodzie będzie tyle, ilu jest jego użytkowników. その車に関する 意見は、その利用者と同じくらいあるだろう。 Zwolenników Napoleona jest tylu, ilu jego przeciwników. ナポレオンの支持 者はその反対者と同じくらいいる。 2)接続詞による場合 Sytuacja była taka, że trzeba było mu pomoc. 彼を助けなければならない状況であ った。 Wiatr był taki, że łamał drzewa. 風は戸を壊すほどだった。 3.補語的従属節 これは、従属節自体が主節の補語となる場合である。主節と結合するのは、1.と同 じく関係代名詞、接続詞、疑問詞がある。 1)関係代名詞による場合 この場合は、多くは相関詞が必要である。 Nie pamięta tego, co napisał w liście. 彼は手紙で書いたことを思い出せない。 Dziadek kupił wruczkowi, co zechciał 祖父は自分が欲しいものを孫に買ってやった。 Lubię, kiedy pada. 私は雨が降っている時が好きである。 Lubię, kiedy ojciec czyta mi gazetę. 私は父が私に新聞を読み聞かせてくれる時が好 きだ。 2)接続詞による場合 ア、接続詞 że(ロシア語の что に相当)を伴う従属節 On pоinfоrmоwаł, żе niе mоżе przуjесhаć. 彼は来られないと伝えた。 Wiem, że przyszedła. 私は彼女が来たことを知っている。 Szkoda, że nie było mnie tam wtedy. その時、私がそこにいなかったのは残念である。 イ、接続詞 czy を伴う従属節 Waham się, czy jadę na wycieczkę. 遠足に行くかどうか、僕は迷っている。 Nie wiem,czy on przyjedzie.彼が来るかどうか、私は知らない。 Nie wiadomo, czy on przyjdzie. 彼が来るかどうかは分からない( wiadomo は述語 副詞であり、無人称文を構成するので、 czy 以下は直接補語になるのである。)。 Nie było widać, czy pies jest tam. 犬がそこにいるか誰も知らなかった。 ウ、接続詞 żeby は本来は目的を表す従属節を導くものであるが、補語的従属節も導く ことができる。この場合、主節の動詞は依頼、願望、希望、要望、命令等の意味を持つ。 572 複文の構成 On prosił, żeby Tusk do niego przyszł. 彼はトゥスクが自分の所に来るように頼んだ。 Tomek chce, żebym się uczyłe języka angielskiego. トメックは私が英語を学ぶこと を望んでいる。 Adam prosił żonę, żeby go obudziła o siódmej. アダムは妻に7時に起こしてくれる ように頼んだ。 ※1 尚、口語では従属節の動詞を不定詞で表すことがある。この場合は、従属節の行 為主を問題にしない。 Poprosił, by go obudzić o szóstej. 彼は6時に起こしてくれるように頼んだ。 ※2 主節の主語と、従属節の主語が同じ場合には、従属節の動詞は不定詞を用いなけ ればならない。 Marzył o tym, by zostać mistrzem w tenisie. 彼はテニスのチャンピオンになること を夢見ていた。 ※3 相関詞が使われる場合もある。 Powiedział o tym, że Adam przyjdzie. アダムが来ると彼は言った。 Pytała mnie o to, czy Adam przyjdzie. 彼女は私にアダムが来るかどうか尋ねた。 3)疑問詞による場合 Wiem, czego on domaga się. 彼が何を要求しているのか、私は知っている.。 Wiem, kto to powiedział. 私は誰がそれを言ったのか、知っている。 Myślę, jak rozwiązać to zdanie. 私はどのようにしてその課題を解決するのかを考え ている。 Nie wiem, kto malował obraz. 誰がその絵を描いたのか、私は知らない。 4.定語的従属節 定語的従属節は主節にある名詞の内容を付加する従属節である。これは czego? z czego?, ile?, czyj?, jaki?, który?等が使われた質問文に答えるものである。そして、主節 と従属節を結びつけるものは、関係詞 który, jaki, ile, kiedy, gdzie, kto や接続詞の że である。そして、相関詞を用いる場合もあるが、その場合には ten や taki を用いる。 1)関係詞による場合 Ten chlopiec, który wczoraj przychodził, to kolega mojego brata. 昨日来た青年は、 私の兄の友人である。 Jest to ten pociąg, którym zwykle wracamy do domu. 通常私達が帰宅するのはその 電車です。 Opowiedam wam historię, która zdarzyła się dawno temu. ずっと以前に起こった 出来事をあなた達に話そう(この場合、主節の指示代名詞の省略がある)。 Mój dom jest otwarty dła każdego, kto chce mnie odwiedzić. 私の家は訪ねたい人 には誰にでも開かれている。 Były tam obrazy, jakie widziała w muzeum. 彼女が美術館で見た(と同じような) 絵がそこにあった。 Te są powieści, jakie pisał pod koniec życia. それらは彼が人生の最後に書いた小説 複文の構成 573 である。 Wydał tyle pieniędzy, ile zarobił. 彼は稼いだ分のお金を使った。 Lubię czasę, kiedy pada. 私は雨が降る時が好きだ。 Niedziela jest dniem, gdy ludzie idą do kościoła. 日曜日は人々が教会へ行く日であ る。 To jest miasto, gdzie spędziłem dzieciństwo. それは私が幼年時代に過ごした町であ る。 Zwykły jest ten, kto pragnie pieniądza. お金を欲しがる者は普通である。 2)接続詞による場合 これには że, iż, żeby, ażeby, aby, by がある。 Otrzymał wiadomość, że mój ojciec zginął. 彼は父親が死んだというニュースを受 け取った。 Czekał na okazję, by jej to powiedzieć. 彼は彼女にそれを言う機会を待っていた。 5.状況に関する従属節 1)場所の従属節 主節と従属節を結ぶ関係詞には、gdzie, skąd, dokąd, którędy 等が挙げられる。この 場合は、接続詞で結ばれることはなく、常に関係詞のみで結ばれる。相関詞としては tam, stamtąd, tędy が挙げられるが、常に用いられるわけではない。 場所の従属節は、gdzie? どこに、skąd? どこから、dokąd? どこへ、którędy? どこ を通って、等の質問文に対する答えになるものである。 Pojadę tam, gdzie będą jechać moi przyjaciele. 私は、自分の友人達が行くであろう 場所に行くつもりだ。 Ona pochodzi stamtąd, skąd pochodzisz. 彼女はあなたが来る場所から、来る。 Idę, dokąd mi każą. 私は命じられた所へ行く。 Wróciliśmy do domu, gdzie czekał na nas. 私たちは、彼が私たちを待っている家に 帰った。 場所の従属節は、行為・出来事の場所、方向あるいは空間的範囲を表す副詞類文であ る。したがって、これは場所に関する副詞類によって書き換えることができる。 2)時の従属節 時の従属節とは、主節の行為・出来事と一定の時間関係にある他の行為・出来事を表 す副詞類文である。時の従属節には関係詞か接続詞が必要である。これらは、時の従属 節の時制と関連し合い、主節との時間関係を明らかにする。従属節と主節との時間関係 には、同時性、前時性及び後時性の3種類がある。 時の従属節は、kiedy? いつ、jak długo? どのくらい、dokąd? いつまで、do kiedy? い つまで、odkąd? いつから、od kiedy? いつから、等が使われる疑問文の答えになるもの であるが、上述したように関係詞で結合される場合と接続詞で結合される場合がある。 ① 関係詞で結合される場合 この場合も3つを区別することができる。すなわち、従属節で表現される動作が、主 574 複文の構成 節で表現される動作と同時か、先行しているか、後行しているか、である。 ア、同時性の場合 ここで使われる関係詞には、kiedy, gdy, dopóki, ilekroć, co, odkąd 等がある。 Lubię spać, kiedy pada. 私は雨が降る時に寝るのが好きだ。 Gdy weszła do pokoju, siedziałem przy biurku. 彼女が部屋に入った時、彼は机のそ ばに座っていた。 Dopóki miezkał u niej, był szczęśliwy. 彼は彼女の所に住んでいた間は、幸福だった。 イ、後時性の場合 ここで使われる関係詞には、kiedy, gdy, dopóki, póki 等がある。 Pociąg już odszedł, kiedy Maria wpadła na peron. マリアがプラットホームに駆け 込んだ時、既に列車は出発していた。 Czekała, dopóki przysedli. 彼らが来るまで、彼女は待っていた。 ウ、前時性の場合 ここで使われる関係詞には、kiedy, gdy, odkąd, dopóki nie, póki nie, aż 等がある。 Odwiedzisz mnie, gdy przyjedziesz. あなたが来る時には、私を訪問しなさい。 Kiedy zarobię pieniędzy, wtedy kupię sobie rower. お金を稼いだら、自分で自転車を 購入するつもりだ。 Nie pójdziesz na spacer, dopóki nie odrobisz lekcji. 宿題をする前に、遊びに行くな。 ② 接続詞で結合される場合 この場合も3つを区別することができる。すなわち、従属節で表現される動作が、主 節で表現される動作と同時か、先行しているか、後行しているか、である。 ア、同時性の場合 podczas gdy, podczas kiedy, skoro, jak 等の接続詞あるいは接続詞 句を使う。 Podczas kiedy brałem kąpiel, ktoś narobił hałasu na dworze. 私が入浴していた時、 誰かが外で音を立てた。 Kiedy wróciłem, zadzwonił telefon,. 私が家に帰った時、電話が鳴った。 Jak będziesz wychodził, zawołaj mnie. あなたが出て行く時には、私を呼びなさい。 Jak robiłem zakupy w mieście, spotkałem swoją przyjaciółkę. 私が町で買い物をし ていた時に、女友達に会った。 イ、後時性の場合 zanim, nim, aż, dopóki, póki 等を使う。 Zanim cokorowiek się zrobi, trzeba dobrze pomyśleć. 何かをする前に、よく考える 必要がある。 Monika czekała, aż Adam przyszedł. モニカはアダムが来るまで待った。 Zanim wróciliśmy do domu, zapadł zmrok. 我々が家へ帰る前に、暗くなった。 ウ、前時性の場合 skoro tylko, gdy tylko, jak tylko, ledwie 等を使う。 Skoro tylko on przyjdzie, niech się zgłosisz do mnie. 彼が来たら、 私に知らせてくれ。 Ledwie się położył, natychmiast zasnął. 彼は横たわるやいなや寝入った。 Nie pójdziesz na spacer, aż odrobisz zadanie. 宿題をするまで、遊びに行くな。 複文の構成 575 詳細は接続詞の項を参照されたい。 ※ 尚、副分詞を使えば、同様の意味を表すことができる。 Idąc przez park, podziwiałem przyrodę. 公園を散歩しながら、私は自然を満喫した。 Skonczywszy list, włoży go do koperty. 彼は手紙を読み終わると、それを封筒に入れ る。 3)比喩の従属節 これは動詞+形容詞あるいは副詞からなる主節に述べられる行為・出来事そのものを たとえるものである。jak? jak co? 等が使われる疑問文に答えるものである。これには 関係詞を用いて表すものがほとんどである。それに関する関係詞には、jak, jakby, jak gdyby 等がある。 Rób, jak choesz. 君が好きなようにしなさい。 Pogoda jest chłodny, jak było w ostatnich dniach. 気候はここ数日来と同じように 涼しい。 Stał prosto, jakby niczego nie widział. 彼は、まるであたかも何も見なかったように 真っ直ぐに立っていた。 Stał nieruchomo, jak gdyby kij połknął. 彼は、まるであたかも棒を飲み込んでしまっ たかのようにじっと立っていた。 4)目的の従属節 この従属節の主語は人間である。これは、意図、目標、目的を表すもので、行為・出 来事の実現を求める意思的要素が潜在的に含まれている。これは、po co?, na co? w jakim celu? 等が使われる疑問文に答えるものである。これに使用される接続詞には、 aby, by, żeby, ażeby, byle 等がある。この従属節で注意すべきは主節と従属節の主語が 同じ場合には、従属節の動詞は不定詞を用いると言うことである。 ① 目的の従属節の事柄を要求する人とその事柄の動作主が同一の場合 Jemy, aby żyć. 我々は生きるために食べる。 Tusk ciężko pracuje, żeby się dostać na uniwersytet. トゥスクは大学に入るため 一生懸命勉強する。 ② 目的の従属節の事柄を要求する人とその事柄の動作主が異なる場合 Dała mu pieniądze, ażeby mógł zapłacić. 彼女は、彼が支払うことができるように彼 に金を与えた。 Posłałem syna do lasu, żeby nazbierał grzyby. 私はキノコを集めるために息子を森 に行かせた。 ※ 尚、移動の動詞が主節に使われる場合、接続詞を省略することができる。 Przyszliśmy pograć w tenisa. テニスをするために我々は行った。(これは、 Przyszliśmy, żeby pograć w tenisa. と同じ意味になる。) 5)原因・理由の従属節 原因・理由の従属節は、dlaczego?, czemu?, z jakiej przyczyny?, z jakiego powodu?. 等が使われる疑問文に答えるものである。これを表すには、接続詞を用いる場合と用い ない場合がある。 576 複文の構成 ① 接続詞を用いる場合 これに関する接続詞には ponieważ, bo, bowiem, gdyż, że, jako że, dlatego że 等がある。bo, gdyż は主節の後に置かれるが、ponieważ は主節の 後のみならず、前にも置かれることがある。 Wróciliśmy do domu, bo zabawa się już kończyła. 我々は帰宅した。というのはパー ティがすでに終わったからだ。 Listonosz zostawił list pod drzwiami, ponieważ bał się groźnego psa. 郵便配達員は、 手紙をドアの下に置いた。なぜなら、吠える犬が怖かったからだ。 Ponieważ bał się groźnego psa, listonosz zostawił list pod drzwiami. 吠える犬が怖 かったので、郵便配達員は、手紙をドアの下に置いた。 ② 接続詞を用いない場合 この場合は、文脈によって判断すべきである。 Nie pojechałem na wycieczkę, źle się czułem. 私は遠足に行かなかった。気分が悪か ったからだ。 6)比較の従属節 比較の従属節は、他の従属節とは異なり、従属節だけで独立できるわけではない。む しろ、主節と従属節とが常に一体化している感じである。 Im wcześniej, tym lepiej. 早ければ早いほど良い。 比較の従属節には、同等比較と、非同等比較の2種類があり、さらに後者は優等比較 と、劣等比較に分けられる。 ① 同等比較 Był tak zmęczony, że zaraz zasnął. 彼はすぐに寝入ってしまうほど疲れていた。 ② 非同等比較 Problem jest trudniejszy, niż sądziłem.その問題は私が思っていたよりも、難しい。 To nie jest tak prosta, jak się wydaje. それは思ったほど単純なことではない。 Nie miałem dość silnej woli, żeby się uczyć. 学習するほどの強い意志を私は持って いなかった。 7)条件・仮定の従属節 ある結果が実現されるための条件を表すのが、条件・仮定の従属節である。 これに関する接続詞には、byle, jeśli, jeżeli, jeśliby, jeżeliby, gdyby, jakby, kiedy 等が ある。jeśli, jeżeli, kiedy は現実の条件に使われる。その後には、現在形、過去形、未来 形あるいは不定詞が続く。これに対して、jeśliby, jeżeliby は非現実の条件に使われる。 そして、主節の前に従属節がある場合には、to で受ける。gdyby, jakby も基本的には 非現実の条件に使用される。そして、jeśliby, jeżeliby が使われると、主節は未来形とな り、gdyby, jakby が使われると、主節は仮定法が使われるのが原則であるが、これは絶 対的なものではない。 Jeśli masz pieniądze, to kup mi ten sweter. もしあなたがお金を持っているなら、そ のセーターを買って下さい。 Wstąpię na kawe, jeżeli będę miał czas. もし時間があれば、そのカフェーに寄ろう。 Kiedy nie chcesz jeść, to nie musisz. もし、あなたが食べたくなければ、食べなくて も良い。 複文の構成 577 Jeśli się przyjrzeć bliżej, to widać małe listeczki. もっと近くで観察すれば、小さな葉 が見える。 Jeśliby nie było pociągu, to pojadę autobusem. もし、列車がないなら、バスで行く つもりだ。 Jeżeliby on nie zdał egzaminu, to nie pójdzie na uniwersytet. もし、彼が試験に合格 しなければ、大学に行かないだろう。 Jeśliby znalazł ją godzinę później, zamarzłaby na śmierć. もし、彼が彼女を発見す るのが1時間遅かったら、彼女は凍死していただろう。 Gdybyś był mądry, to postąpiłbyś inaczej. もし、あなたが賢いなら、異なった風にや るだろうに。 Jakbym wiedział, to bym nie pytał. もし、私が知らないなら、質問しないだろうに。 8)譲歩の従属節 譲歩の従属節は、期待される因果関係が生じないこと、すなわち譲歩の従属節に述べ られる要因が因果関係の原理から当然期待される結果を引き起こさないことを表すも のである。 これに関係する接続詞には、一般には、choć, chociaż, choćby, mimo że 等がある。ほ とんど使われないが、aczkolwiek, a mimo to, a przecie, owszem, tylko 等もこれに関 係する接続詞である。 Choć mało zarabiam, mogę trochę zaoszczędzić. 私はほとんど稼ぎがないけれど、少 し貯金することができる。 Chociaż nie jast zdolny, dostał się jednak na studia. 賢くはないが、彼は依然として 大学に通っている。 Choćby wyszłabym za jego, choćby był milionerem. たとえ彼が百万長者であったと しても、私は彼とは結婚しない。 Idę na spacer, mimo że pada śnieg. 雪が降るにもかかわらず、 私は散歩をするつもり だ。 ※ 尚、副動詞を使って譲歩の内容を表すことがある。通常は nawet を使って表す。 Kochł ją, nawet widząc jej wady. 彼女の欠点を知っているにもかかわらず、 彼は彼女 を愛していた。 Nawet będąc chorym, studiował. 彼は病気であったにもかかわらず、勉強した。 9)結果の従属節 これは z jakim skutkiem 等が使われる疑問文に答えるものである。 これに関係する接続詞には、aż, że, żeby, aby, by 等がある。相関詞には tak, taki, ten が使われる。 Wiatr był tak silny, że łamał drzewa. 風が強かったので、ドアは壊れた。 Tak dziecku bolał ząb, że one płakało. 歯が痛かったので、その子供は泣いていた。 Był tak przejęty, że mógł czytać książkę. 彼は興奮していたので、本を読むことがで きなかった。 Tak mnie bolał ząb, że nie spałem. 私は歯が痛かったので、眠らなかった。 578 複文の構成 ※ 尚、byle が使われることがあるが、その場合には、従属節の動詞は不定詞が使わ れる。 Stosował radykalną dietę, byle szybko schudnąć. 激しいダイエットをしたので、す ぐにやせた。 10)付帯状況の従属節 この場合は不完了体副分詞を使うのが通常である。 Czytając książkę, on leżał na kanapie. 彼は本を読みながら、ソファーに寝転がって いた。 Kilkaset osób maszerowało, śpiewając. 何百人の人々が歌を歌いながら、行進した。 6.付加の従属節 これは主節の一部の品詞に関係するものではなく、主節全体に関係するものである。 その際、関係詞 co が用いられる。 Mój syn zdał egzamin, co mnie bardzo ucieszyło. 私の息子が試験に合格したが、そ のことは私を大変喜ばせた。 7.同格の従属節 これは定語の従属節と類似している。定語の従属節で導かれる対象は主格の内容を限 定するものであるが、同格の従属節で導かれる対象は主節の内容と一致する点が異なっ ている。 Mój dom, który stoi przed kościołem, jest biały. 教会の前に立っている私の家は白 い。 Dominique de Villepin, który był ministrem spraw zagranicznych, został zatrzymany przez policję. 前外務大臣のドミニク・デ・ヴィレピンは警察によ って逮捕された。 ※ 定語の従属節は下記のものが挙げられる。 Rosjanka, która tu studiuje, kupiła dla siebie dużo książek. ここで学んでいるロ シア女性は自分のために多くの書籍を購入した(ロシア女性の一部がここで学ん でいる。)。 Rosjanin, który pracuje w Niemczech, opowiada o sobie. ドイツで働いているロシ ア人は自分のことについて語った(ロシア人の一部がドイツで働いている)。 8.挿入節 この節の特徴的なことは、jak で導かれることである。 Pilka nożna, jak sądzi mój syn, jest fascynującą grą. 私の息子の考えでは、 サッカ ー は魅力的なスポーツである。 この文は、補語的従属説を伴った従属複文に書き換えることができる。 Mój syn sądzi, że pilka nożna jest fascynującą grą. 579 主要参考書目 ★ポーランド語関係 神山孝夫「日欧比較音声学入門」鳳書房 1996 ヘンルィク・リプシッツ、吉上昭三、松本照男「標準ポーランド語会話―改訂版」白水 社 2001 渡辺克義編「簡明 日本語-ポーランド語 ポーランド語―日本語 辞典」国際語学社 2008 渡辺克義「ポーランド人の姓名-ポーランド固有名詞学研究序説」ふくろう出版 2005 三谷恵子「スラヴ語入門」三省堂 2011 角田三枝他編「他動性の通言語的研究」くろしお出版 2007 原 求作「共通スラヴ語音韻論概説」水声社 2008 石井哲士郎他「微笑んでポーランド語 第一部」東京外語大学 2006 同上「微笑んでポーランド語 第二部」東京外語大学 2006 塚本桂子「よくわかる現代ポーランド語文法」南雲堂フェニックス 2008 ジェフリー・K・プラム他「世界音声記号辞典」三省堂 2003 小泉 保「改訂 音声学入門」大学書林 2003 Arkadiusz Wróbel「Substantiv-Tabellen POLNISCH」PONS 2008 Arkadiusz Wróbel「Verbtabellen POLNISCH」PONS 2008 Alexander M. Schenker「BEGINNING POLISH VOLUME ONE revised edition」 Yale University Press 1973 Alexander M. Schenker「BEGINNING POLISH VOLUME TWO revised edition」 Yale University Press 1973 Ron F. Feldstein 「A Concise Polish Grammar」SEELRC 2001 OSCAR E. SWAN「A GRAMMAR OF CONTEMPORARY POLISH」Slaviica Publishers Indiana University 2002 OSCAR E. SWAN 「Polish Grammar in a Nutshell」インターネット OSCAR E. SWAN「polish Verbs &Essentials of Grammar」Mc Graw Hill 2009 Joseph Francis John「Practical Handbook of the Polish Language」BIBLIOLIFE 2009 Paweł Rutkowski「SPOKEN WORLD POLISH a complete course for beginners」 LIVING LANGUAGE 2009 Nigel Gotteri and Joanna Michalak-Gray「teach yourself polish」Mc Graw Hill 2008 Monika Skibicki「Grammtikübungsbuch POLNISCH」BUSKE 2011 Monika Skibicki「Polnische Grammtik」BUSKE 2007 Danuta Samek「UNIWERSALNY Słownik polsko-rosyjski rosyjsko-polski」rea Iwona Sadowska「Polish: A Comprehensive Grammar」 Routledge 2011 580 Dana Bielec「Polish: An Essential Grammar」Routledge 2012 Dana Bielec「Basic Polish: A Grammar and Workbook (Grammar Workbooks 」 Routledge Dana Bielec 「 Intermediate Polish: A Grammar and Workbook (Grammar Workbooks 」Routledge Fernando Presa Gonzalez「Gramatica Polasa」Catedra 2008 「Deutsch-polnische kontrastive Grammatik」Groos Edition Julius 1999 「Oxford-PWN Polish-English Dictionary」OXFORD UNIVERSITY PRESS 2005 「Oxford-PWN English-Polish Dictionary」OXFORD UNIVERSITY PRESS 2005 「Pocket Oxford-PWN Polish Dictionary」 OXFORD UNIVERSITY PRESS 2007 「Cambridge Klett Concise Polish-English Dictionary」Cambridge University Press 2003 「PONS Großwörterbuch Polnisch-Deutsch」PONS Gmbh 2011 Edmund Gussmann「The Phonology of Polish」OXFORD UNIVERSITY PRESS 2007 ★ロシア語関係 Terence Wade「A Comprehensive Russian Grammar」Wiley-Blackwell 2010 神山孝夫「ロシア語音声概説」研究者2012 佐藤純一「基本ロシア語文法」昇龍堂出版株式会社 1990 原 求作「ロシア語の体の用法」水声社 1996 城田 俊「現代ロシア語文法 改訂新版」東洋書店 2010 城田 俊「現代ロシア語文法 中・上級編」東洋書店 2003 宇多文雄「ロシア語文法便覧」東洋書店 2009 ★イタリア語関係 坂本鉄男「現代イタリア文法」白水社 1990 ★ドイツ語関係 福元圭太、嶋崎啓「ドイツ語 不定詞・分詞」大学書林 2012
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