豚の健康監視のためのくしゃみ音の 自動検出技術 P-44

P-44
農林水産
豚の健康監視のためのくしゃみ音の
自動検出技術
■ 概 要
日本国内の養豚農家では少人数で約 1,600 頭/戸もの飼育
をしており,年々その数は増加していることから効率的生産
が求められている.しかし豚は他の家畜に比して感染症の影
響を受けやすく,近年では SPF(Specific Pathogen Free)豚
として防疫管理が厳重な飼育法が提案されているが未だに
90%以上の養豚農家が一般的な飼育法であり感染症死亡率は
飼育数全体の約 7%に達する.このような影響を与える感染症
の一つとして空気伝搬する豚呼気感染症があり,発病の有無
の確認法として血液検査が挙げられるが作業の手間や結果の
判定に時間がかかることから生産効率性を阻害する要因とな
っている.そこで軽易に感染症の有無を確認する手法として
豚の咳音やくしゃみ音の発生回数を人間が測定することで豚
呼気感染症の陰陽性の有無を判別する方法が報告されている.
本研究ではマイクロフォンを用いて咳やくしゃみを自動的
に測定することで感染症の有無をモニタリングできる健康監
視システムの開発を目標としている.更に,マイクロフォン
を複数用いることでその発生位置の推定を行い画像とリンク
させることで咳やくしゃみ音の多い豚の特定までできること
が考えられる(図 1).本報告では,くしゃみ音検出において
これまで単一の標準サンプル(テンプレート)では識別率が
18%程度であり感染症の陰陽性の識別は困難であった問題点
に対し複数のテンプレートを用いる手法を提案する.本手法
の有効性を検証するため豚舎においてデータを収録し,くし
ゃみ音の検出実験を行った結果,識別率は 65%に向上し現状
のモニタリング基準を達成し,くしゃみ音を検出する本手法
での感染症の陰陽性識別が可能であることが示唆された.
代表発表者
所
属
川岸 卓司 (かわぎし たくじ)
筑波大学 大学院システム情報工学研究科
知能機能システム専攻 音響システム研究室
問合せ先
〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1
TEL: 029-853-5468
[email protected]
WEB: http://www.aclab.esys.tsukuba.ac.jp/
■ 活動内容
我々の研究室ではこの研究の他にも音響情報などを用いた
計測およびそのシステム化により,安心・安全・快適・豊か
さ等を追求する研究を行っています.研究分野の一例として
------------------------------------------------------------音楽音響・楽器音響に関連する分野
●計測に基づく楽器の発音機構の解明
●楽器の等価回路モデル・物理音源モデル作成
●新しい動作原理に基づく楽器の創生と応用
応用物理学一般に関連する分野
●フォノニック結晶を用いる音響レンズの設計
●Lamb 波における負の群速度
光・音響情報処理に関連する分野
●位相共役波(時間反転波)とその応用
●光―音響の相互作用
●各種計算機トモグラフィ法の開発研究
●音響ホログラフィ法を用いる 2D 振動面の可視化
●音源定位/音響カメラ
計測・通信に関連する分野
●ネットワークセンシング/センシンググリッド
●超音波を用いる物体の非破壊評価
●ソナー信号処理/水中・空中音響通信システム
アプリケーションに関連する分野
●CT 法を利用する食品の非破壊安全検査
●音源定位技術と画像呈示技術の融合
●電気インピーダンスを用いる食品の非破壊検査
●文化遺産保護を目的とした多点計測・環境計測
●音響反射式ヨーグルト発酵分布のモニタリング
●挿入型電極を用いる白米のカビ検出
-------------------------------------------------------------
図1は、提案するシステムの概要図である.
■キーワード: (1)豚
(2)マイクロフォン
(3)健康監視
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