2001 年度日中共同研究成果論文 中日関係におけるIT 中国現代国際関係研究所 情報社会研究室副主任 張 力 中日関係はアジアで最も重要な二国間関係であり、その行方の如何は両国の将来を決定づ けるばかりでなく、直接アジアの将来をも決定づける。1990 年代以来、情報技術はすさま じい発展を遂げ、情報革命を引き起こし、人類社会を情報時代へと導いた。国際関係の分 野に、情報革命ははかりしれない影響を及ぼし、この影響は不可避的に中日関係の分野に まで投影され、両国間の協力を促し、両国関係を発展させる新たな要因となった。 1.中日のIT分野における協力は両国関係を発展させる新たな原動力のひとつである 1-1. 情報技術の分野における日本の地位はアメリカに次ぎ、十分な実力を持つ 現在の日本の情報化の過程から、次のいくつかの際立った印象を受ける。 1) 日本は危機感を持っている 中国には「傍目八目―当事者よりも傍観者のほうが、ものごとの良し悪しがよくわかる」と いうことわざがある。実際、現在の日本の情報化の度合いは既に世界の先進レベルに達し、 多くの分野において先頭を行く位置にあるが、日本政府や専門家・学者は相当強い緊迫感 と危機感を抱いている。彼らのこうした危機感と緊迫感は、一方では、日本はアメリカと 比べて、ソフトウェアとハードウェアの開発生産、情報産業の管理レベルと管理パターン、 とりわけ国家全体の情報化を推進する面において依然として大きな開きがあると考えるこ とから来る。他方では、日本の周辺国家及び地域、たとえば韓国、シンガポール、中国の台 湾等における情報産業の飛躍的発展に対して圧力を感じているということもある。さらに また、おそらく心理面から来る圧力、つまり日本経済の 10 年に及ぶ不景気が社会全体にも たらす心理的ショックもある。 2) 日本は情報産業の発展に励んでいる 日本政府が将来に向けての情報化戦略を定める際、各戦略項目は実際的で、具体的な目標 と措置、確実な資金の払い込み、加えて元来の技術的優位性により、既定の目標の達成に は問題はないと思われる。日本政府の予算のうち、情報技術関連の投資は年々増加し、2000 年度には、1996 年度の 1.3 兆円から 1.7 兆円へと、4 年間で約 30%伸びている。同じ期間、 日本の情報通信産業の研究開発費は、各業種の研究開発費の総和の 3 分の1以上を占めて いる。 3) 日本のインターネットの建設はスタートが早く、発展が着実である 1984 年 8 月、東京工業大学、慶応大学、東京大学の 3 大大学の間で、大学間のインターネ ットと電子メールの交流が実現し、日本のコンピューターネットワーク時代における電子 通信の発端となった。これは JUNET 計画ネットワークと呼ばれ、2 年後に電話のダイヤル アップ接続方式で接続する WAN(WIDE ネットワーク)へと発展した。1988 年には 30 の大学と 40 の企業が参加する大規模な実験ネットを持つようになった。1993 年 12 月、日 本の IIJ 社は正式に商業インターネット接続業務を始めたが、これが日本のインターネット の商業応用への幕開けの印である。日本の企業全体の中で、インターネットの使用割合は 業種により異なる。金融・保険業が最高で 57.7%、政府、学校、教育部門が第 2 位で、46.9%。 他には、製造業、サービス業、卸売小売飲食業が 15%から 20%を占めるに過ぎない。IT はこれらの分野において依然として大きな発展の余地を持つ。 4) 日本社会の情報化の進展は速まっている 日本の総務省が発表した 2001 年「情報通信白書」によると、現在日本の情報産業は飛躍的に 発展し、社会の情報化の過程は加速し、情報技術革命は、経済、行政、国民生活等、社会 の各分野に浸透しつつある。白書が示すデータによると、日本のインターネットのユーザ ーは 4708 万人に達し、普及率は 37.1%にまで高まった。店頭に出回るパソコンは 1155.4 万台で、カラーテレビ(1030 万台)を上回った。電子商取引市場は 2.3 倍に拡大し、47.8 兆円にまで増加した。サイトを開設した政府機関(中央省庁、都道府県)は 100%に達し、 市、区は 84%、町村は 61%である。しかし国民のインターネット利用率は現在まだ低く、 例えば全国 47 都道府県では、都市を含めて利用率で 50%を越すところはひとつもなく、最 高は東京とその周辺地区の 46.9%であり、経済的に遅れた北海道では 28.8%に過ぎない。 5) 情報技術産業の発展が日本経済の回復をリードした コンピューター、移動電話等の情報技術関連産業の成長にリードされて、1999 年下半期以来、 日本の鉱工業生産は成長の勢いを維持し続け、さらに企業利潤の増加をリードした。日本 の商取引市場において、各企業内でインターネットを利用する個人ユーザーは既に 1300 万 人に上り、国内の全就業人数(6358 万人)の 20.5%を占める。もちろん、日本経済は 1990 年代の初めから低迷状態にあり、その原因は根深く、多岐にわたり、「E-Japan」計画のみ によって日本経済の挽回を図るのは不可能である。しかしながら確かに、情報技術の経済 全体に対する牽引作用は見てとる必要がある。 1-2. 中国は今立上がったばかりの情報産業大国であり、一定の後発の優位性を備えている 中国の情報産業の発展には、次の特徴がある。 1) 発展の規模が大きく、普及度が早い 2001 年、中国の情報産業は工業生産額 1.35 兆人民元を達成し、増加率は 27%、輸出は 600 億ドルに達した。通信業務収入はほぼ 3700 億人民元、増加率は約 23%で、中国は既に世 界最大の IT 製品生産基地のひとつとなった。情報産業は中国経済第一の大支柱産業となり、 全国の工業割合の約 10 分の1を占めている。2000 年末までに、中国の電話普及率は 20.1% へと高まり、電話ユーザー総数は 2.3 億戸を超え、インターネットのユーザーは 2250 万戸 に達した。今後 5 年間に、中国の情報産業は 20%以上の年成長率を維持し、固定、移動電 話網の規模は、2000 年をベースにさらに倍増し、ユーザーは 5 億戸に達する見通しである。 2) 政府は高度に重視 中国政府は情報産業を発展の重点とし、情報技術を積極的に利用し、伝統産業を大いに改 造し、情報サービス業を発展させるよう提起した。専用特別資金を設立し、上場融資を奨 励する等の方式により、ハイテク企業の発展のための条件を整える。ソフトウェアや半導 体等の重点産業に対しては、特別の税制優遇政策をとる。西部大開発戦略を実施し、情報 ネットワーク・インフラの現代化建設に拍車をかける。2001 年 7 月、情報産業部は国家情 報化指標構成案を発表した。11 月末、国務院はさらに中国の「ベスト 100 の企業」に「企業 管理の情報化建設の推進を加速することについての指導意見」を提起し、5 年以内に大企業 はすべて情報化を達成するよう要求した。 3) 情報インフラの建設は各大都市において進展がとりわけ急速である 現在、全国の大都市では鳴物入りで自己の情報化システムを構築している。北京市は 8 項 目の課題をめぐって、21 の重要情報化プロジェクトを実施する予定である。それは、 「第十 次五カ年計画」期間に、「北京の数字」の基本的枠組みをつくるためである。上海は情報化 を「1 号プロジェクト」に組み込んだが、その意図は中国の新しいシリコンバレーを建設する ことにある。2001 年内に、当地の情報産業の増加額を 500 億元にし、これは全市の GDP 増加額の 9.3%を占め、年成長率を 25%以上とする。上海は、その時には大型企業の情報 化普及率は 100%に達し、中小型企業のネットワーク応用率は 80%以上に達すると揚言し ている。 1-3. 情報産業の分野における発展協力は、中日両国の共同利益と合致し、両国関係の新た な原動力のひとつとなる 政治家、企業家から一般人まで、両国の IT 分野における協力は最終的に「双方勝ち」の結 果となることを十分に認識する必要がある。 1) 助け合って共に前進し、難関を共に乗り切る 2001 年、世界経済は減速し、ネットワークバブルは消え失せ、国際通信業も、3G(第 3 世 代の携帯電話)の営業許可証により通信会社が巨額の債務を負わされた。これらすべてが 中日両国の情報産業に一定の影響を及ぼした。2002 年に世界経済が大きく好転することは 難しい見通しであり、世界の情報産業の発展は依然として上り坂に直面している。世界の 情報産業大国として、日本と中国は助け合って共に前進し、世界の情報産業発展のために 貢献する必要がある。 2) 協力を進め、共に未来を切り開く 今年は中日両国の国交正常化 30 周年である。現実に即して言うと、現在の中日関係は依然 両国の国交樹立以来の低調にあり、昨年起こった「教科書事件」と小泉首相の靖国神社参 拝事件等により、双方の政治関係は影響を被った。もちろんその後小泉首相の中国訪問が 実現し、中日両国は国際反テロリズム陣営のメンバーとなり、両国の一部農産物に関する 貿易摩擦も円満な解決を見た。これら積極的な現象は中日関係が好転し始めたことを示し ている。情報産業界は一歩先んじて、両国関係の新世紀における発展のために原動力を提 供する必要がある。 2.中日両国は IT 産業の分野においてさまざまな方式の協力を実現することができる 2-1. 情報産業の人材分野での交流協力 情報分野での人材不足は世界人材市場の普遍的現象となった。欧米は現在積極的な措置を 講じて各国から来る人材をかき集めている状況であり、中日両国は協力を進めて、有効な 人材交流のシステムを作る必要がある。中国は現在約 18 万人のソフトウェアの設計人員を 擁しており、全国に分布する約 5000 のソフトウェア企業の設計人員は、平均すると各企業 36 人で、規模から見て名実相伴う小工場である。こうした情勢は中国のソフトウェア開発 能力の向上に影響を及ぼした。アメリカは中国の IT 人材の開発と利用を非常に重視してお り、大量の中国人留学生を吸収してアメリカに留めて IT 業界を発展させているばかりでな く、アメリカ企業は次々と中国に人材の教育育成基地を設立している。アメリカのマイク ロソフト社は中国に膨大な規模の「中国研究所」を設立し、もっぱらソフトウェアと管理 に専門に従事する人材を育成し使用している。この他、アメリカの有名な Oracle、Sun、 Cisco 等の企業は、中国でコンピューター技術の育成認証教育と審査業務を開設し、中国の 人材がアメリカの IT 業界の専門技術認証を取得することを勧誘、奨励している。アメリカ 政府は毎年中国の技術人材に 1 万余の H1-B ビザを発行しているが、そのうち相当大きな 部分を IT 人材が占める。この方面では、日本はアメリカにはるかに遅れをとっている。中 日両国は、政府と企業の両面から協力を強め、中国に相当な規模のソフトウェア開発基地 と実験室を作り、IT 人材を育成する必要がある。両国はまた、定期的に両国の IT 人材の交 流ふれあい会や各種の講習研究討論部会を催し、両国学生のコンピューターDIY 競技会を 開くことなどもできる。 2-2. 情報技術基準を共同で制定する 現在、電子商取引の運営パターン、支払い方式、取引規則、将来の移動通信の産業基準等 において、アメリカは独占的地位を占め、日本と欧州はそれぞれ優位性を持つ。当初日本 の有名な NTT DoCoMo 社は、ヨーロッパの 2G(第 2 世代の携帯電話)型との統一を放棄 し、自己の 1G(第 1 世代の携帯電話)アナログ移動通信技術をベースに高度化させた日本 型の GSM、つまり PDC に改めた。PDC はヨーロッパの GSM とは相容れない。2G の経 験は NTT DoCoMo に「鎖国」のやり方では世界の支配権を握るという目標を達成できない ことを認識させた。しかも 3G 基準での世界統一化についても、 家に閉じこもって車を造 る ようなことは二度と許されない。そこで 3G の問題については、日本は完全にヨーロッ パの基準を受入れて、3G の携帯電話を開発した。NTT DoCoMo は中国が提起した 3G 基 準―TD―SCDMA にも興味を示している。3G 基準の確定後、それが世界で唯一の型とな るであろう。営業者についていうと、その 3G 基準を国際電気通信連合(ITU)に採用され た者が、世界拡張戦略を実現させて移動通信のボスとなることができる。情報技術基準の 分野における競争は非常に激烈で、アメリカとヨーロッパの力が強く、日本がこの分野で 成果をあげたいと思うなら、中国が信頼できる協力パートナーである。「連合早報」2002 年 12 月 31 日の報道によると、日本の総務省の片山虎之助大臣は、NEC、富士通、日本電 信電話、NTT 移動通信網を含む企業の責任者を率いて 1 月中旬北京を訪問し、中国の情報 産業部の呉基伝部長と調印し、次世代の移動電話とインターネット業務で協力する予定で ある。 2-3. ソフトウェア、ハードウェア等の分野において資金及び技術協力を展開する 1) ソフトウェア開発分野における協力 中国国内では一般にソフトウェアは 3 つに分類される。オペレーティング・システムは第 1 類に属し、システム・ソフトウェアである。例えば目下最も脚光を浴びている Windows XP がそれである。システム・ソフトウェア市場は、ほとんどアメリカ製品が独占している。 第 2 類のソフトウェアはソフトウェアを支えるといわれ、そのうちシェアが最大なのはデ ータバンクの管理ソフト、ネットワークと通信ソフト、言語とツール開発ソフトである。 この市場分野も、主にアメリカ製品によって占領されており、新興の中間ソフトもここに 属する。第 3 類のソフトウェアはアプリケーション・ソフトウェアで、財務ソフト、字表 処理ソフト、教育ソフトといった特定業種の特定需要のために開発される専門的ソフトウ ェアである。この分野においてはまた、一大部分のソフトウェアが、注文あつらえであり、 最終的に市場規模を備えたソフトウェア製品を形成することができない。ソフトウェア業 界は労働集約型の分野に属し、往々にして投入と産出で価格の逆転が起こる。中国の国産 ソフトウェアは大部分第 3 類に属する。両国の業界は例えば「中日 LINUX 愛好家協会」の ような方式を共同で作り、まずオペレーション・システム・ソフトウェアの分野での協力 を展開し、LINUX オペレーション・システムの共同開発と改善の実行可能性を探る必要が ある。また 2 国間のソフトウェア市場の調査研究活動を組織し、双方の需要に見合ったア プリケーション・ソフトウェアを開発することもできる。 2) 生産協力は新たな一歩を踏み出すであろう 中日両国の IT 分野での協力は事実上早くに動き出しており、1998 年 7 月、 「日中経済協会 北京事務所情報化協力組」が正式に設立され、組長は小森聡(Komori Satoshi)である。 協力組は中日両国の業界の IT 分野での協力のために力を尽くした。日本の多くの情報技術 製品は、既に中国に工場を建設して生産し、製品の一部は世界のその他の国に輸出され、 一部は日本に逆輸入され、他は、中国の市場で販売される。2001 年 7 月 8 日から 7 月 15 日まで、日本の大電気通信業者と設備メーカー数社のボスが連合訪問団をつくり中国に視 察に訪れた。隊を率いる団長は NTT DoCoMo 社の大星公二会長で、東芝、松下電器、Anritsu、 住友、NEC、日立、三菱、電通等有名ブランドのメーカーがこうした揃った陣容でひとつ の団体を形成して海外市場を視察することは、日本の IT 業界では大変珍しい。日本の電気 通信業界の各位は中国の WTO 加入後の電気通信開放に向けてあらかじめ「道調べ」をして おくことができる。欧米の電気通信メーカーが先に中国電気通信市場に進出した後で、日 本は既に一歩遅れている。中国市場での次の戦いにおいて、日本のメーカーがもしリード するならば、日本の低迷する経済の苦境からの脱出、日本の海外市場の配置調整に対し、 連鎖反応を引き起こすであろう。中国の有名な IT 企業方正(Founder)は日本に子会社― 方正株式会社を設立し、現在日本に上場する事前準備を行っている。上場に成功した場合、 中国企業の持株会社の日本での上場開拓に先鞭をつけたことになる。現在、方正株式会社 は第二弾の戦略的投資家の引き入れ作業を推進中で、これらの仕事の完成を待って、方正 株式会社は日本本土における上場手続きを正式に始める。方正株式会社は日本本土の証券 会社 3-4 社の中から販売請負会社を選び、同時に国際的に有名なアンダーソン会計士事務所 から上場財務顧問を招聘する予定である。方正株式会社は、第一弾の戦略的投資家の引き 入れ過程で国際的に有名な財団である三菱商事と SOFTBANK の強い支持を受けた。商談 は 2000 年 9 月に始まり、2001 年初めに終わった。両財団は方正株式会社に 1300 万ドルの 株式投資を行い、そのうち三菱商事の投資が 300 万ドル、ソフトバンクの投資が 1000 万ド ルである。 2-4. 両国は協力して中国の電子ゲーム市場に進出する 中国の電子ゲーム市場への進出については、日本は以前から懸念している。その主な原因 は中国にはびこる海賊版で、日本のメーカーは進出後利益が得られないことを心配してい た。しかし、中国の WTO への加入に伴い中国政府は海賊版の取締りに全力を尽くすように なり、今後海賊版は中国ではある程度抑えられるであろう。 1) 街機市場 以前、日本のメーカーの中国の電子ゲーム業への関与は主に大型電子ゲーム機(中国での 俗称は「街機」で、例えば SEGA 社生産のもの)の販売であった。現在中国では、街機の 数は減少しつつある。それは、一部の都市の電子ゲームセンターに管理上混乱が生じて、 日本から輸入した電子ゲーム機の多くが賭博の道具となったため、多くの青少年が学業を 疎かにしたり、学業に影響が出たりして、社会的に悪い影響を及ぼしたからである。した がって今後街機の中国における数は減少する傾向が続くであろう。 2) コンピューターゲーム市場 日本のコンピューターゲームの中国市場への進出を制約する最大の障害は、海賊版の問題 にあるが、日本のメーカーの意識の問題ももちろんある。日本のコンピューターゲームソ フトの中国市場の占有シェアは小さく、欧米から来る製品にはるかに及ばない。例えば有 名な KOEI 社の「三国志」シリーズ、 「大航海時代」シリーズ、KONAMI 社の「ときめきメ モリアル」等、毎年わずかで、しかもこれらは数量が少ない製品に過ぎず、台湾企業例え ば第三波等の代理によるものでもあり、中国市場における価格ランクが高く、問い合わせ てくる者も少ない。しかし欧米のコンピューターゲームは中国市場にしっかりと立ち、そ のうち多くのゲームは欧米と同歩調の販売ができているばかりでなく、内容上、文字上も 漢字化の処理を行い、消費者に大変受けている。欧米製品の中国国内での販売の制約は価 格にあるが、中国の一般の収入階層との距離は近づいており、コンピューターゲーム 1 セ ットは 100 元前後で手に入り、中国市場で販売される日本製品の約 3 分の 1 に過ぎない。 また、ここ数年中国国内のゲーム産業の発展に伴い、中国本土で生産されたコンピュータ ーゲームの一部が、日本市場にも進出を始めた。 3) テレビゲーム市場 1980 年代末から 1990 年代中期にかけて、日本の有名な電子ゲームメーカー任天堂を代表 とするゲーム機とその製品が、中国のテレビゲーム市場に支配的地位を占めた。しかし日 本はその有名な「次世代ゲーム機」 (代表機種は SONY 社の PlayStation)の生産から始め、 中国市場を日本のテレビゲームの発展範囲外に置いた。もちろん、その最主要原因はやは り海賊版問題である。2000 年末、日本は新世代ゲーム機 PlayStation2 を発売したが、依 然として中国市場には注意を払わなかった。実際は、筆者の調査によると、PlayStation2 は技術上高い海賊版防止機能を備えており、特に DVD 型を採用した専用ディスクには、今 日まで海賊版製作者は手を出せないでいる。周知のとおり、テレビゲーム機はハイテク製 品であり、メーカーはこうしたゲーム機を 1 台売るごとにコスト価格を割ることになり、 その損失は主にゲームソフトの販売によって埋め合わされており、もし海賊版の被害に遭 うなら、元手も戻らなくなる。2001 年 11 月、アメリカのマイクロソフト社はアメリカの 新世代ゲーム機 X-BOX を発売し、PlayStation2 を生産する日本の SONY 社に対して大き な挑戦を企てており、悲惨な市場争奪戦は避けがたい。現在は両社とも中国市場に進出す る意思はないが、日本のメーカーは、中国の代理商と協力して、中国政府の海賊版の大幅 な取締まりのチームワークのもとに、一歩先んじることができる。 4) オンライン・ゲーム(Online Game)市場 日本のメーカーと鮮明な対照をなすのは、この 1 年、韓国と中国台湾が中国大陸のオンラ イン・ゲーム市場に進出してきたことである。喝采され人気を呼んでいる一群のゲーム、 例えば「石器時代」、「龍族」、「紅月」、「万王之王」、「金庸群侠伝」、「大話西遊」等が登場 した。これらのゲームのデザインは精美で、ストーリーは感動的で、オンライン料金徴収 方式をとり、大きな成功を収めた。不完全な統計によると、各ゲームの 1 日のオンライン 人数は 1 万人を超え、中韓両国のゲーマーは企業の支持の下に何度もふれあい活動やオン ライン対抗試合を行い、企業の影響力を拡大するとともに、両国の若い世代の交流を促進 している。日本には中国のゲーマーが憧れ続ける有名な一大企業群(例えば Square、Enix、 Konami、Koei、Namco、Capcom 等)があり、製品のゲームはいずれも逸品である。中国 の電信部門と協議して、中国のオンライン・ゲーム市場で成果をあげるべきである。 3.情報安全協力 情報産業の発展とりわけインターネットの膨張に伴い、情報ネットワークの安全は既に中 日両国がともに重大な注意を払う問題となり、両国の安全協力を議事日程に上らせる必要 がある。 2001 年は多事の秋というべきで、国際上一連の政治事件が発生し、国際情勢にも重大な変 化が生じた。中日両国についていうと、ネットワークもユートピアではなく、ネット空間 から来る抗議は次第に増加し、手法も先進性を増している。過去に起こったネット襲撃事 件の国家の情報インフラへの影響は小さかったが、コンピューター技術がより速く良くな るにつれ、ハッカーの道具もますます進歩し使い易くなり、ネット抗議やハッカー行為が、 国家の利益に及ぼす影響はますます大きくなった。ネットワークと通じて抗議を行う抗議 者はますます組織化されたが、依然としてホームページの改竄、磁気ディスク・オペレー ション・システムへの攻撃が中心である。この類の事件は数の上で明らかに増加している。 一般的に、最も普遍的な目標サイトは政府、教育、商取引、文化機関である。たとえ今日 のネットワーク抗議者がもたらす損害が大きくなくとも、今後彼らの攻撃は大きな経済的 損失をもたらし、国家のインフラに危害を及ぼし、世界市場と公共の安全に悪影響を及ぼ すであろう。インターネット上のラジカルは電子メールとサイトによって調整組織し、ホ ームページを改竄し、「サービス拒絶」攻撃を行う。こうした政治的動機を持ち、コンピュ ーター技術に基づいて始まった攻撃は「ハッカー行為主義」といわれ、ハッカー行為と政 治的ラジカルの結合体である。彼らは世界の至る所に通じ、いかなるコンピューター使用 者にも適用され、地域的な制限を受けない。 1995 年 5 月、アメリカがユーゴスラビアの中国大使館を誤爆した後、アメリカのサイトは 中国のハッカーの大規模な攻撃に遭った。1999 年 8 月と 9 月、台湾の選挙期間中にも、中 国のハッカーは行動した。ネット抗議者とハッカー行為主義者は、台湾の 165 のサイトを 攻撃し、しかもそのうちの大多数はもとの字を消して書き直すというもので、約 2 ヶ月間 続いた。2001 年 4 月末から 5 月初めにかけて、中国とアメリカの戦闘機衝突事件の後、中 国を支持するハッカー行為主義者とネット抗議者がアメリカのサイトに新たな攻撃を仕掛 け、中国のハッカーは 1000 以上の随時選択のアメリカのサイトを書き替えたり麻痺させた りした。アメリカとアメリカを支持するハッカーも攻撃を行い、3000 余りの中国のサイト が破壊された。 2001 年 4 月の第 1 週、日本政府が新たに改定された教科書を採択したために、韓国を支持 するハッカーが日本に攻撃を仕掛け、主に高麗大学から来た学生が、電子メール爆弾を使 ってサービス遮断攻撃を行った。学生達は、文部省、自民党、教科書の印刷に責任を負う 企業のサイトを含む、いくつかのサーバーを攻撃したが、これらは持続時間が短く、規模 も大きくはなかった。8 月、小泉首相の靖国神社参拝後、中国のハッカーが日本のサイトを 攻撃した。 ハッカーの攻撃とネット抗議者による嫌がらせが、現在の技術的条件下で引き起す損失は 結局限られており、その程度はネット戦争というには程遠い。しかしこうした無政府的行 為の最大の破壊的意義は、両国関係から言うと、両国国民の対抗意識を激化させ、両国の 若い世代にわだかまりと敵対意識を生むことであり、両国関係の長期的発展に役立たない。 中日両国は両国関係の発展の維持という大局から出発し、情報安全の信頼システムと交流 システムをつくる必要がある。当該分野は、計算の安全、ネットワークの安全等の分野を 含むべきで、相互信頼を打ち立て、定期協議システムを実現し、緊急状況下では通報し合 い、対抗がエスカレートするのを避けなければならない。 「9.11」事件は全世界を驚愕させた。両国はともに、地球規模でテロリズムに打撃を加える という困難な課題に直面している。現在の状況から見て、ネットワーク・テロリズムは今 にも動き出そうとしており、中日両国が手を携えて共に対処する必要がある。また、ハッ カー、ウィルスの拡散、ネットワーク・マネー・ロンダリング、窃盗等を含むネット犯罪 に対しても、全力でともに打撃を加えていく必要がある。 結論 (1) 中日両国は IT 業界の各分野において深い協力を展開する大きな潜在力を持ち、あ る程度この協力は、「強者と強者が連合する」「双方勝ち」協力である。 (2) 両国の国交樹立 30 周年を契機とした IT 分野における発展協力は、新世紀の両国関 係がより多くの新たな原動力を得るのに役立つ。 (3) ともにテロリズムに打撃を加えるという国際陣営の中にあって、両国は情報安全協 力を強化し、相互信頼を促進する必要がある。 (4) 知的所有権の保持、意識の転換は、中日の IT 分野における更なる協力展開の必要 条件である。 以上
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