運動とアミノ酸

編集・発行/信楽園病院検査科
運動とアミノ酸
検査技術員
藤本 誠
アミノ酸とは?
他にスポーツをするカラダにプラスに作用するアミノ酸
人のカラダは 60%が水分で、残りの約半分 20%が
にアルギニン、グルタミンがあります。ともに非必須アミ
タンパク質でできています。筋肉、血液、皮膚、内
ノ酸です。アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進し、
臓などすべての組織でタンパク質は重要な働きを担
その結果筋肉中のタンパク質の合成をより促進すると
っており、その構成する最小単位がアミノ酸です。
考えられ、グルタミンは BCAA と同様に筋肉中のタン
自然界には約 500 種類以上存在しますが、人のカラダ
パク質の合成を助け同時に分解を抑制する働きがあり
のタンパク質を構成しているのは、わずか 20 種類のア
ます。
ミノ酸です。多くのアミノ酸は体内で酵素の作用によっ
運動前や運動中に BCAA を効率よく補給するためには、
て合成されますが、9 種類のアミノ酸については体内で
スポーツ飲料やサプリメントを用いるのが簡単です。アミ
合成されず、食事からとる必要があるので「必須アミノ
ノ酸は摂取してから吸収されるまでが 30 分と非常に速く、
酸」と呼び、体内で合成が可能な11種類のアミノ酸を
必要な時にすぐ利用できる特長をもっています。
「非必須アミノ酸」と呼びます。
メタボ対策
BCAA とは?
今や国民的関心事となっているメタボリックシンドロー
カラダを動かす時の重要な器官である筋肉、その主成
ムの対策にも、BCAA は役立ちます。人のカラダの基
分のタンパク質を構成しているアミノ酸の約 35%が、バ
礎代謝量は加齢に伴って年々落ちていきますが、この
リン、ロイシン、イソロイシンの必須アミノ酸で、これらは
代謝による消費エネルギーが最も多いカラダの部位が
分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸 ( BCAA=Branched Chain Amino
筋肉で、約40%を占めています。そのため筋肉量を増
Acid)と呼ばれています。BCAA は、他のアミノ酸が小
やすと基礎代謝量が高まり、その結果として体脂肪を
腸から吸収されて肝臓で代謝されるのに対し、筋肉で
減らすことも可能になります。
も代謝されるのが特徴です。
これを実現するには、適度な運動を継続して行うことは
アミノ酸の働き
不可欠ですが、筋肉の材料であり筋肉中のタンパク質
ハードなスポーツや長時間の運動(マラソン、登山な
の合成を高め、同時に分解を抑える作用がある BCAA
ど)を行うと、私たちのカラダは不足したエネルギー源
などを摂取すると、より効果的と考えられます。
を補うために、筋肉中のタンパク質を分解して BCAA
参考商品 (アミノ酸飲料)
などのアミノ酸を取り出し、エネルギー源をカラダに供
アミノバリュー (大塚製薬)---BCAA 含有量高い
給するようになります。つまり、激しい運動によって筋肉
アミノサプリ (キリン)---BCAA は低いが他のアミ
の組織は、消費されその結果、損傷してしまうのです。
ノ酸が豊富、カロリー少し高め
ところが、スポーツ開始前やその途中に BCAA をタイミ
ヴァーム (明治乳業)---BCAA はもちろん他のア
ングよく補給すると、効率よく運動エネルギーとして利
ミノ酸も豊富、少々値段が高いが一押し
用されるので、筋肉の分解、損傷を抑えられるだけでな
アミノバイタルプロ (味の素)---バランスよくビタミ
く、体内のエネルギー源に余裕ができるようになり、ス
ン、アミノ酸含有
タミナをより長く維持することも可能になり、持久力を高
燃焼式アミノ式(サントリー)---BCAA なし、カロリー
めます。
低め、代謝を助けるアミノ酸含む
さらに、スポーツ直後に補給すると、傷んだ筋肉を素早
く修復し、筋肉痛などを軽くする効果も期待でき、筋力
アップの効果もあります。