肝硬変と薬

2016 / 10 / 20
肝臓病教室
肝硬変とくすり
薬剤師
がけ晋太郎
今日の内容
1.肝硬変の薬物治療
2.薬と肝臓のはなし
2
肝臓の機能
栄養素
(糖分、アミノ酸、脂質など)
薬物
毒物
排泄物
解毒
貯蔵
(グリコーゲンなど)
合成
(コレステロール、
タンパクなど)
胆汁に
排泄
「体内の化学工場」
3
肝硬変
肝臓が硬く変化し、肝機能が減衰した状態
代償性
:肝不全症状がない状態
非代償性 :肝不全症状を伴う状態
肝不全
肝臓を損傷する疾患や物質によって、
肝臓の機能が破綻し、
肝臓の機能維持が困難となり、
意識障害、黄疸、腹水や消化管出血など
全身に多々の症状を発生する症候群
アルコール
10%
その他
10%
肝硬変の原因
肝炎ウイルス
80%
4
肝硬変の薬物治療
①原因の除去
発がんの抑制
(主に代償期)
②合併症に対する治療
(主に非代償期)
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肝がん・肝不全への進行を予防するため。それぞれの原因に応じて。
 C型慢性肝炎
インターフェロンフリー療法
経口剤+インターフェロン併用療法 など
 B型慢性肝炎
核酸アナログ(バラクルード、テノゼット など)
 肝庇護剤
ウルソ、強ミノ など
 その他
禁酒、薬剤の中止など
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肝硬変の薬物治療
①原因の除去
発がんの抑制
(主に代償期)
②合併症に対する治療
(主に非代償期)
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肝臓の機能
栄養素
(糖分、アミノ酸、脂質など)
薬物
毒物
排泄物
解毒
貯蔵
(グリコーゲンなど)
合成
(コレステロール、
タンパクなど)
胆汁に
排泄
「体内の化学工場」
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肝硬変の合併症
○肝不全の症状
肝性脳症
腹水・浮腫
黄疸 など
○門脈圧亢進症
○食道静脈瘤
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②合併症に対する治療
合併症の症状をおさえたり、発生を予防するため
合併症
肝性脳症
薬物治療
薬の例
アミノレバンEN配合散
肝不全用栄養剤
ラクツロースシロップ
難消化性二糖類
非吸収性抗生物質 カナマイシン
下剤
整腸剤
利尿剤
腹水・浮腫
BCAA製剤
(低アルブミン血症)
アルブミン製剤
門脈圧亢進症 βブロッカー
食道静脈瘤
消化性潰瘍治療薬
酸化マグネシウム、セチロ
ラックビー、ビオフェルミン
アルダクトン、ラシックス
リーバクト顆粒
インデラル
パリエット、ネキシウム
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腹水のくすり
肝臓でアルブミンの合成
⇒
水が血管から漏れ出す
利尿剤
アルダクトンA
ラシックス
ルプラック
ダイアート
サムスカ など
• 尿量・体重の推移、ミネラルバランス
等をみながら使い分け、併用します。
• 朝(または昼)に服用します。
• めまい、ふらつきに注意してください。
リーバクト顆粒
• 分岐鎖アミノ酸(BCAA)の顆粒剤です。
• 栄養バランスを改善して、アルブミン合成を促します。
• わりとまずいです。
オブラートに包む、ジュースやヨーグルトに混ぜるなどの
工夫で、ある程度飲みやすくすることが可能です。
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肝性脳症のくすり
肝臓でアンモニアの解毒
⇒
アンモニアが脳に到達
ラクツロースシロップ
• 腸管からのアンモニア吸収を抑制します。
• 糖尿病の方は血糖上昇に注意。
• 便通を良くする効果もあります。
下剤、整腸剤
• 便秘になると、腸管でアンモニアが産生されやすくなります。
• 肝硬変では、軟便になるようにコントロールすると良いです。
抗生物質(カナマイシンCap)
• 腸管内でアンモニア産生菌の増殖を抑制します。
• ほとんど体内に吸収されないものを使用します。
• 副作用:腎障害、聴覚障害(連用時には注意)
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分岐鎖アミノ酸(BCAA)
BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン




肝臓でアルブミン合成の促進
筋肉でアンモニア代謝で利用される
筋肉でエネルギー源となる
芳香族アミノ酸(AAA)の脳への移行を抑制
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肝性脳症のくすり
アミノレバンEN配合散
• BCAAを豊富に含む
肝不全用の栄養剤です。
(BCAA 5.5 g/包、Fis比38)
• 1包 200 kcalで、
就寝前軽食摂取療法(LES)
にも使用されます。
• 糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、
微量元素も含有しています。
• けっこうまずいです。
量も多いです。
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専用容器を使用して、
容器はいつも清潔に。
熱湯で溶かすとタンパク質
成分が変化するので
避けてください。
氷を入れると
混ざりやすくなります。
冷蔵庫で10時間までは
保存可能。
大塚製薬資料
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飲みやすくする工夫
 フレーバーを使ってみる
2種類のフレーバーを混ぜる方法も
パイン+ヨーグルトがおすすめ!?
 ゼリーにしてみる
調剤薬局さんに気軽にご相談ください
 ジュースを混ぜてみる
果物の生ジュース以外で
 濃さを変えてみる
加える水を80~200 mLで調節
※水分制限に注意
 温度を変えてみる
冷やしたり、温めたりすると
苦味を感じにくくなるかも
※熱湯や冷凍は避ける
T Yajima et al. J.Jpn.Soc.Hosp.Pharm 52(6):677-82 (2016) 16
今日の内容
1.肝硬変の薬物治療
2.薬と肝臓のはなし
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よく知らずに市販薬などを飲んでいませんか?
『薬剤性肝障害の7~8割は、市販薬(OTC)やサプリメント
によるもの』、という報告も…
肝臓の機能を悪化される可能性もあるので、よく相談のうえ
使用ください。
cf
熊の胆(熊胆、クマノイ)
成分:ウルソデオキシコール酸(UDCA)
含有率:25~50%
用法:1日 0.5g
⇒UDCA:125~250 mg/Day
ウルソ錠
成分:ウルソデオキシコール酸(UDCA)
用法:1日 150~900 mg
Goldberg DS et al. Gastroenterology 148(7):1353-61 (2015)
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かかりつけ医に肝臓病を伝えてありますか?
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、予備能の高い臓器ですが…
肝硬変
(特に非代償性)
•
•
•
•
薬物の解毒能力
タンパク合成
消化管出血
血小板
etc…
肝硬変など肝機能障害の方は、
使用できない薬や、使用方法を制限される薬があります。
気づかずに使用すると、薬の副作用が強く現れたり、
肝障害を悪化させたりする可能性があります。
治療中の病気や使用中のおくすりは、
病院や薬局へお知らせください
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ジェネリックで肝臓が悪くなることはない?
ジェネリック医薬品(後発医薬品)
新薬と薬効成分、含量が同一で、生物学的同等性が確認された医薬品。
添加物、製造方法は異なる場合がある。新薬に比べて安価。
• 全てのジェネリック薬は、有効性・安全性が新薬と同等で
あるか国の定めた基準で確認しています。
• 製造方法、添加物等、新薬と全く同じジェネリック医薬品
も増えてきました。
• キメラマウスを使った試験で肝障害リスクを新薬と比較
している企業も…
ご心配なことは、かかりつけの薬局
に気軽にご相談ください
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